説明

液体用小袋およびこれに液体を充填した液体小袋包装体

【課題】ガスバリア性、機械的強度、引裂き性に優れる液体用小袋および液体小袋包装体を提供する。
【解決手段】基材フィルム、炭素含有酸化珪素の蒸着膜の薄膜およびコーティング層からなるガスバリア性積層フィルムの前記コーティング層に、アンカーコート剤によるアンカーコート層および/またはラミネート用接着剤によるラミネート用接着剤層、およびヒートシール性樹脂層を順次積層させた積層材からなる液体用小袋である。引裂き性、機械的強度、ガスバリア性に優れ、かつ透明性が確保される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体用小袋および液体小袋包装体に関し、更に詳しくは、強度を有して諸堅牢性に優れ、更に、酸素ガス、水蒸気等のバリア性に優れ、かつ、優れたラミネート強度を有し、その貯蔵・保管ないし流通中に内容物の風味および食味等を損なうことがない液体用小袋および、該小袋に、醤油、ソース、出し汁、香辛料、料理用酒類、その他等の液体ないし粘調体からなる調味料類、スープ類、果汁類、その他等の各種の液状ないし粘体状の飲食物を充填包装してなる液体小袋包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飲食品、化成品、雑貨品、その他を充填包装する包装用材料としては、内容物の変質、変色、その他を防止するために酸素ガス、水蒸気等の透過を遮断、阻止し、かつ内容物を透視できる種々の形態からなるバリア性積層材が開発され、提案されている。
【0003】
例えば、蒸着層の上にさらにバリア性を向上させるためにバリアコート層を設けたフィルムがある(特許文献1、特許文献2)。特許文献1では、透明プラスチック材料に、プライマー層、蒸着薄膜層、ガスバリア性被膜層、およびシール層を順次積層するものである。密着性を向上するためプライマー層を設け、該プライマー層として、ポリエステル樹脂単体、ポリエステル樹脂とイソシアネート系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂のうちから選ばれる1種類以上の混入樹脂との混合物が例示されている。上記構成により、透明性およびガスバリア性に優れ、ボイルおよびレトルト殺菌後のシールなどにデラミなどの発生がない、とする。
【0004】
また、特許文献2記載のガスバリアフィルム積層体は、プラスチック材料に、プライマー層、蒸着薄膜層、ガスバリア性被膜層、オーバーコート層を順次積層するものである。密着性を向上するためプライマー層を設け、該プライマー層として、アクリルポリオール、イソシアネート化合物、シランカップリング剤などが例示されている。特許文献2では、プラスチック基材の少なくとも片面に、耐熱性および寸法安定性に優れる密着プライマー層を設けた後、ガスバリア層として蒸着薄膜層・ガスバリア性被膜層を有し、更に耐熱性に優れた保護層を有するため、金属箔なみのガスバリア性を持つと共にボイル殺菌やレトルト殺菌などの各種殺菌処理後もバリア性などの劣化を抑えることができる、とする。なお、前記オーバーコート層は、スチレン/無水マレイン酸共重合体を含む組成物からなり、これによってボイル・レトルト処理によって接着部やシーラント層からの応力を吸収・緩和し、蒸着薄膜層およびガスバリア性被覆層を保護する、という。
【0005】
一方、蒸着膜を有するガスバリア性積層フィルムにおいて、基材と蒸着膜層との間にプライマー層を設けることなく密着性を向上させる技術もある(特許文献3)。特許文献3には、無機酸化物からなる蒸着層を設けたポリエチレンテレフタレートフィルムを処理水に浸漬し、前記蒸着層の一部を取り除いた後に、該フィルム表面のX線光電子分光測定を行い、C1s波形の解析から求めた官能基比率(COO/C−C)が0.23以下である、強密着蒸着フィルムが開示されている。アミン系アルカリを添加した水溶液中に浸漬して無機酸化物を除去し、前記官能基比率(COO/C−C)が0.23以下となる場合には、PETフィルムと無機酸化物層とが極めて良好な密着性を示す、という。
【0006】
更に、基材フィルム上に炭素含有酸化珪素の蒸着膜、ガスバリア性塗布膜、中間基材およびヒートシール性樹脂層とからなるレトルト用途向けフィルムもある(特許文献4)。該特許文献によれば、中間基材により強度等を有し、かつ、耐熱性、防湿性、ヒートシール性、耐ピンホール性、耐突き刺し性、透明性、その他等の種々の特性を有する積層材である、といる。
【0007】
更に、包装用材料に要求される特性としては、上記レトルト処理やボイル処理における強度のほか、開封時の易引裂き性も要求される。Vノッチ、Uノッチ、Iノッチなどによって易開封性を確保しても、フィルム自体の引裂き性が悪いと、ノッチ以降の開封が容易でなく、引裂けたとしても必要以上に力を要したり、直線的に引裂けないというトラブルが発生し、衣類や調度品を汚したりする場合がある。このため、ガスバリア性と共に引裂き性を確保したガスバリア性積層フィルムもある(特許文献5)。特許文献5では、所定の変性PBTとPETとを所定割合で混合した原料からなる二軸延伸フィルムの少なくとも片面にガスバリア性有機物層を積層したガスバリアー性易引裂きポリエステルフィルムを開示する。該ガスバリア性有機物層は、分子内に2個以上の水酸基を有する化合物(A)と、分子内の連続する3個以上の炭素原子のそれぞれにカルボキシル基が少なくとも1個ずつ結合されている化合物(B)とを含有し、かつAとBの質量比(A/B)が65/35〜15/85である、というものである。
【0008】
一方、醤油、ソース、出し汁、香辛料、料理用酒類、その他の液体ないし粘調体からなる調味料類、スープ類、果汁類、その他の各種の液状ないし粘体状の飲食物醤油、ソース等の液状の調味料を充填包装する液体用小袋としては、ガスバリア性に加え、特に、堅牢性、耐薬品性が要求され、機械的強度に優れるポリアミドを基材フィルムとして使用する技術もある。例えば、芳香族ポリアミド、脂肪族ポリアミド、および上記芳香族ポリアミドと上記脂肪族ポリアミドとの混合物との3層のうちいずれか2層を含むポリアミド系積層2軸延伸フィルムの少なくとも片面に、厚さ100〜3000Åの範囲で珪素酸化物薄膜層が形成されてなるガスバリア性の優れた透明積層プラスチックフィルムがある(特許文献6)。ポリアミドを基材として使用するためガスバリア性と機械的強度が共に優れ、透明性が確保されたバリア性積層材となる、という。
【0009】
一方、ポリアミドは機械的強度に優れるが、蒸着時の巻き取り不良や剥離帯電の問題など、加工工程でトラブルを起こす場合がある。このようなポリアミドフィルムの蒸着時の巻き取り不良を改善するものとして、静摩擦係数0.7以下、動摩擦係数0.6以下の2軸延伸ポリアミドフィルムを使用する技術がある(特許文献7)。特許文献7では、2軸延伸ポリアミドフィルムの摩擦係数を小さくする手段として、ポリアミドに無機質粒子、有機高分子を添加し、または滑り剤を塗布する方法を例示し、動摩擦係数が0.34〜0.73のポリアミドフィルムを製造している。
【特許文献1】特開平10−722号公報
【特許文献2】特開2004−106443号公報
【特許文献3】特開2005−59265号公報
【特許文献4】特開2005−178802号公報
【特許文献5】特開2006−21378号公報
【特許文献6】特開平6−190961号公報
【特許文献7】特開昭59−219337号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献1〜4記載の積層材は、開封時の引裂き性が十分でなく、特許文献5記載の積層材は、ガスバリア性が十分でない。
【0011】
また、前記特許文献6記載のフィルムは酸素透過度を低減させることができ、ポリアミドを基材フィルムとするため耐衝撃性や機械的強度に優れる点で有利であるが、アミド基の水素結合に基づく吸湿性によって容易に寸法変化を生じやすく、このため、蒸着膜がポリアミドフィルムの伸縮に追従できない場合には、クラックやピンホールが生じ、バリア性能を維持することが困難となる。特に、摩擦係数とフィルムの透明性とは二律背反の関係があり、特許文献7のように、動摩擦係数を低くするために無機質粒子や有機高分子粒子を添加すると、フィルムの透明性を確保することが困難となる。加えて、これら粒子の添加によってフィルム表面の凹凸が大きくなると蒸着層の間隙が発生し易くなり、ガスバリア性が低下する。
【0012】
また、液体用小袋は、各種の内容物を収納するため、内容物によっては充填時や輸送時に内容物の形状によって小袋が突き破られたり、ピンホールが発生して内容物の保存性が損なわれる場合がある。
【0013】
そこで本発明は、機械的強度、酸素ガス、水蒸気等の透過を阻止するバリア性に優れ、透明性が確保され、および優れたラミネート強度を有する液体用小袋および液体小袋包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、液体用小袋を構成するガスバリア性積層フィルムについて詳細に検討した結果、動摩擦係数0.4以下、ヘイズ6.0%以下、アッシュテスト性能15mm以下であり、少なくも一方の表面の表面粗さが2000nm以下の2軸延伸ポリアミドフィルムを基材フィルムとして使用すると、滑り性が改良され、静電気トラブルが防止されるため、充填機での後工程で発生するトラブルを回避することができること、このポリアミドフィルムの表面粗さが2000nm以下の面に、化学気相成長法によって有機含有酸化珪素などを蒸着して炭素含有酸化珪素の蒸着膜を形成すると、前記基材フィルム上に柔軟性の高い炭素含有酸化珪素の蒸着膜を形成することができ、更にこの蒸着薄膜の上に、所定のポリウレタン系樹脂組成物からなるコーティング膜を設けるとヒートシール層との密着性を確保することができ、上記密着性および柔軟性の確保によって層間剥離を防止することができ、かつ層間剥離の回避によってガスバリア性積層フィルムの引裂き性が向上すること、該ガスバリア性積層フィルムの使用によって輸送時にも耐付き刺し性、耐ピンホール性などの機械的強度に優れる液体用小袋となることを見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0015】
本発明の液体用小袋は、温度23±2℃、相対湿度50±10%での動摩擦係数が0.4以下の2軸延伸ポリアミドフィルムを基材フィルムとして使用することで、ガスバリア性、透明性に優れる。
【0016】
また、本発明の液体用小袋は、プラズマ化学気相成長法により有機含有酸珪素酸化物を蒸着したガスバリア性積層フィルムを使用するため、ガスバリア性と共に基材フィルムと有機含有酸珪素酸化物との密着性を確保でき、かつ前記蒸着層に延展性、屈曲性、可撓性等の柔軟性を付与することができる。
【0017】
本発明の液体用小袋に使用されるガスバリア性積層フィルムは、有機含有酸珪素酸化物の蒸着層上にシランカップリング剤と充填剤とを含むポリウレタン系樹脂組成物によるコーティング層を有するため、ラミネート強度が更に向上し、耐付き指し性に特に優れる。
【0018】
更に、上記密着強度の向上と相まって、本発明の液体用小袋は、引裂き性にも優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の第一は、基材フィルムおよび無機酸化物の蒸着膜からなるおよびコーティング薄膜からなるガスバリア性積層フィルムの前記コーティング薄膜に、アンカーコート剤によるアンカーコート層および/またはラミネート用接着剤によるラミネート用接着剤層、およびヒートシール性樹脂層を順次積層させた積層材からなる液体用小袋であって、
前記ガスバリア性積層フィルムは、前記基材フィルムが、動摩擦係数0.4以下、ヘイズ6.0%以下、アッシュテスト性能15mm以下であり、少なくも一方の表面の表面粗さが2000nm以下の2軸延伸ポリアミドフィルムであり、前記表面粗さが2000nm以下の前記基材フィルム面に無機酸化物の蒸着膜を設け、かつ無機酸化物の蒸着膜の面上にシランカップリング剤と充填剤とを含むポリウレタン系樹脂組成物によるコーティング薄膜を設けたものであり、
前記液体用小袋は、前記積層材を、そのヒートシール性樹脂層面を対向させて重ね合わせその外周周辺の端部をヒートシールしてヒートシール部を設けて袋体を構成したものである、液体用小袋である。以下、本発明を詳細に説明する。
【0020】
(1)ガスバリア性積層フィルムおよび積層材
本発明で使用するガスバリア性積層フィルムは、図1(a)に示すように、基材フィルム(10)、無機酸化物の蒸着膜(20)とコーティング薄膜(30)とを有する。更に、図1(b)に示すように、基材フィルム(10)および蒸着膜(20)上にそれぞれ表面処理層(10’)、(20’)を有していても良い。また、図1(c)に示すように、更にコーティング薄膜(30)上に印刷層(50)を有していてもよい。また、本発明で使用する積層材は、例えば図1(b)で示すガスバリア性積層フィルムのコーティング薄膜(30)に、図1(d)に示すように、アンカーコート剤によるアンカーコート層および/またはラミネート用接着剤によるラミネート用接着剤層(60)、およびヒートシール性樹脂層(70)を順次積層させたものである。例えば図1(c)で示すガスバリア性積層フィルムのコーティング薄膜(30)に、図1(e)に示すように、アンカーコート剤によるアンカーコート層および/またはラミネート用接着剤によるラミネート用接着剤層(60)、およびヒートシール性樹脂層(70)を順次積層させたものであってもよい。なお、前記印刷層(50)は、全面印刷であっても、部分印刷であってもよい。
【0021】
(2)基材フィルム
本発明では、ポリアミドフィルムを基材フィルムとして使用する。本発明で使用する基材フィルムは、化学的ないし物理的強度に優れ、無機酸化物の蒸着膜を製膜化する条件等に耐え、また、その無機酸化物の蒸着膜の膜特性を損なうことなく良好に保持し得ることができるポリアミドフィルムであり、温度23±2℃、相対湿度50±10%での動摩擦係数が0.4以下、より好ましくは0.3以下、ヘイズが6.0%以下、より好ましくは4.0%以下、アッシュテスト性能が15mm以下、より好ましくは8〜12mmであり、少なくも一方の表面の表面粗さが2000nm以下、より好ましくは1500nmの2軸延伸ポリアミドフィルムである。
【0022】
本発明は、高い耐久性を有するガスバリア性積層フィルムを目的とするため機械的強度に優れる2軸延伸ポリアミドフィルムを使用するものであるが、ポリアミドフィルムは吸湿しやすく滑り性に劣る。一方、滑り性の確保とガスバリア性の確保との両立は困難であり、滑り性確保のために無機粒子を配合すると、ガスバリア性確保のために無機酸化物の蒸着膜を製膜する意義をそこなう場合があり、透明性も低下する。そこで、本発明では、滑り性、透明性に優れ、巻き取り時のシワの発生を防止してロール巻き取り外観に優れ、かつラミネート接着強度を向上して高いガスバリア性を有するガスバリア性積層フィルムを製造するため、基材フィルムを、温度23±2℃、相対湿度50±10%での動摩擦係数が0.4以下であり、ヘイズが6.0%以下、アッシュテスト性能が15mm以下であり、少なくも一方の表面の表面粗さが2000nm以下である2軸延伸ポリアミドフィルムに限定した。
【0023】
このようなポリアミドフィルムとしては、脂肪族ポリアミドであっても、芳香族ポリアミドであっても、これらを混合した組成物であってもよい。好ましいポリアミドの具体例としては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリ‐ε‐アミノへプタン酸(ナイロン7)、ポリ‐ε‐アミノノナン酸(ナイロン9)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリラウリンラクタム(ナイロン12)、ポリエチレンジアミンアジパミド(ナイロン2・6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン4・6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン6・6)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン6・10)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン6・12)、ポリオクタメチレンドデカミド(ナイロン6・12)、ポリオクタメチレンアジパミド(ナイロン8・6)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン10・6)、ポリデカメチレンセバカミド(ナイロン10・10)、ポリドデカメチレンドデカミド(ナイロン12・12)、メタキシレンジアミン‐6ナイロン(MXD6)などを挙げることができ、これらを主成分とする共重合体であってもよく、その例としては、カプロラクタム/ラウリンラクタム共重合体、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジぺート共重合体、ラウリンラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジぺート共重合体、ヘキサメチレンジアンモニウムアジぺート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体、エチレンジアンモニウムアジぺート/ヘキサメチレンジアンモニウムアジぺート共重合体、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジぺート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体などを挙げることができる。これらのポリアミドには、フィルムの柔軟性改質成分として、芳香族スルホンアミド類、p‐ヒドロキシ安息香酸、エステル類などの可塑剤や低弾性率のエラストマー成分やラクタム類を配合することも有効である。また、従前公知のポリアミドフィルムであって、ヘイズが6.0%以下、動摩擦係数が0.4以下のポリアミドフィルムの中から、アッシュテスト性能が15mm以下、少なくも一方の表面の表面粗さが2000nm以下のものを選択して使用することができる。
【0024】
本発明において、上記基材フィルムの膜厚としては、6〜2000μm位、より好ましくは、9〜100μm位が望ましい。
【0025】
なお、上記ポリアミドの製膜化に際して、例えば、フィルムの加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、離形性、難燃性、抗カビ性、強度、その他等を改良、改質する目的で、種々のプラスチック配合剤や添加剤等を添加することができ、その添加量としては、極く微量から数十%まで、その目的に応じて、任意に添加することができる。
【0026】
上記において、一般的な添加剤としては、例えば、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料、その他等を使用することができ、更には、改質用樹脂等も使用することができる。
【0027】
(3)表面処理
本発明において、上記の基材フィルムの一方の面に無機酸化物の蒸着膜を形成するが、予め基材フィルムに表面処理をおこなってもよい。これによって基材フィルムと無機酸化物の蒸着膜との密着性を向上させることができる。
【0028】
このような表面処理としては、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス若しくは窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理、化学薬品等を用いて処理する酸化処理、その他等の前処理などがある。
【0029】
また、本発明で使用する基材フィルムの表面に、予め、プライマーコート剤、アンダーコート剤、アンカーコート剤、あるいは、蒸着アンカーコート剤等を任意に塗布し、表面処理とすることもできる。なお、前記コート剤としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエチレンあるいはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂あるいはその共重合体ないし変性樹脂、セルロース系樹脂、その他等をビヒクルの主成分とする樹脂組成物を使用することができる。
【0030】
このような表面処理の中でも、特に、コロナ処理やプラズマ処理を行うことが好適である。例えばプラズマ処理としては、気体をアーク放電により電離させることにより生じるプラズマガスを利用して表面改質を行なうプラズマ処理がある。プラズマガスとしては、上記のほかに、酸素ガス、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等の無機ガスを使用することができる。例えば、後記する化学気相成長法による無機酸化物の蒸着膜を形成する直前に、インラインでプラズマ処理を行うことにより、基材フィルムの表面の水分、塵などを除去すると共にその表面の平滑化、活性化、その他等の表面処理を可能とすることができる。また、蒸着後に、プラズマ処理を行い、蒸着層とその上に積層される他の層との密着性を向上することもできる。なお、プラズマ処理としては、プラズマ出力、プラズマガスの種類、プラズマガスの供給量、処理時間、その他の条件を考慮してプラズマ放電処理を行うことが好ましい。また、プラズマを発生する方法としては、直流グロー放電、高周波放電、マイクロ波放電、その他の装置を使用することができる。また、大気圧プラズマ処理法によりプラズマ処理を行なうこともできる。
【0031】
(4)無機酸化物の蒸着膜
無機酸化物の蒸着膜としては、例えば、化学気相成長法、物理気相成長法またはこれらを複合して、無機酸化物の蒸着膜の1層からなる単層膜あるいは2層以上からなる多層膜または複合膜を形成して製造することができる。
【0032】
化学気相成長法としては、例えば、プラズマ化学気相成長法、低温プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)等がある。具体的には、基材フィルムの一方の面に、有機珪素化合物等の蒸着用モノマーガスを原料とし、キャリヤーガスとして、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスを使用し、更に、酸素供給ガスとして、酸素ガス等を使用し、低温プラズマ発生装置等を利用する低温プラズマ化学気相成長法を用いて酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。
【0033】
上記において、低温プラズマ発生装置としては、例えば、高周波プラズマ、パルス波プラズマ、マイクロ波プラズマ等の発生装置を使用することができる。高活性の安定したプラズマが得られる点で、高周波プラズマ方式による発生装置を使用することが好ましい。
【0034】
上記の低温プラズマ化学気相成長法による無機酸化物の蒸着膜の形成法の一例を低温プラズマ化学気相成長装置の概略的構成図である図2を用いて説明する。
【0035】
本発明では、プラズマ化学気相成長装置221の真空チャンバー222内に配置された巻き出しロール223から基材フィルム201を繰り出し、更に、該基材フィルム201を、補助ロール224を介して所定の速度で冷却・電極ドラム225周面上に搬送する。一方、ガス供給装置226、227および、原料揮発供給装置228等から酸素ガス、不活性ガス、有機珪素化合物等の蒸着用モノマーガスその他等を供給して蒸着用混合ガス組成物を調製し、これを原料供給ノズル229を通して真空チャンバー222内に導入する。該蒸着用混合ガス組成物を上記冷却・電極ドラム225周面上に搬送された基材フィルム201の上に供給し、グロー放電プラズマ230によってプラズマを発生させ照射し、酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を製膜化する。次いで、上記で酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を形成した基材フィルム201を補助ロール233を介して巻き取りロール234に巻き取れば、プラズマ化学気相成長法による無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。なお、冷却・電極ドラム225は、真空チャンバー222の外に配置されている電源231から所定の電力が印加され、冷却・電極ドラム225の近傍には、マグネット232を配置してプラズマの発生が促進されている。このように冷却・電極ドラムに電源から所定の電圧が印加されているため、真空チャンバー内の原料供給ノズルの開口部と冷却・電極ドラムとの近傍でグロー放電プラズマが生成される。このグロー放電プラズマは、混合ガスなかの1つ以上のガス成分から導出されるものであり、この状態で基材フィルムを一定速度で搬送させると、グロー放電プラブマによって、冷却・電極ドラム周面上の基材フィルムの上に、酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。なお、図2中、符号235は真空ポンプを表す。
【0036】
本発明では、真空チャンバー内を真空ポンプにより減圧し、真空度1×10-1〜1×10-8Torr位、好ましくは、真空度1×10-3〜1×10-7Torr位に調整することが好ましい。
【0037】
原料揮発供給装置は、原料である有機珪素化合物を揮発させ、ガス供給装置から供給される酸素ガス、不活性ガス等と混合させ、この混合ガスを原料供給ノズルを介して真空チャンバー内に導入させる。この際、混合ガス中の有機珪素化合物の含有量は、1〜40%、酸素ガスの含有量は10〜70%、不活性ガスの含有量は10〜60%の範囲とすることが好ましく、例えば、有機珪素化合物:酸素ガス:不活性ガスの混合比を1:6:5〜1:17:14程度とすることができる。なお、上記有機珪素化合物、不活性ガス、酸素ガスなどを供給する際の真空チャンバー内の真空度は、1×10-1〜1×10-4Torr、好ましくは真空度1×10-1〜1×10-2Torrであることが好ましく、また、基材フィルムの搬送速度は、10〜300m/分、好ましくは50〜150m/分である。このようにして得られる酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜の形成は、基材フィルムの上に、プラズマ化した原料ガスを酸素ガスで酸化しながらSiOXの形で薄膜状に形成されるので、当該形成される酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜は、緻密で隙間の少ない、可撓性に富む連続層となり、従って、酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜のバリア性は、従来の真空蒸着法等によって形成される酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜と比較してはるかに高く、薄い膜厚で十分なバリア性を得ることができる。また、SiOXプラズマにより基材フィルムの表面が清浄化され、基材フィルムの表面に、極性基やフリーラジカル等が発生するので、形成される酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜と基材フィルムとの密接着性が高いものとなる。更に、酸化珪素等の無機酸化物の連続膜の形成時の真空度は、1×10-1〜1×10-4Torr、好ましくは、1×10-1〜1×10-2Torrであって、従来の真空蒸着法により酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を形成する時の真空度、1×10-4〜1×10-5Torrに比較して低真空度であるから、基材フィルムの原反交換時の真空状態設定時間を短くすることができ、真空度が安定しやすく製膜プロセスも安定化する。
【0038】
本発明において、有機珪素化合物等の蒸着モノマーガスを使用して形成される酸化珪素の蒸着膜は、有機珪素化合物等の蒸着モノマーガスと酸素ガス等とが化学反応し、その反応生成物が、基材フィルムの一方の面に密接着し、緻密な、柔軟性等に富む薄膜を形成するものであり、通常、一般式SiOX(ただし、Xは、0〜2の数を表す)で表される酸化珪素を主体とする連続状の薄膜である。上記酸化珪素の蒸着膜としては、透明性、バリア性等の点から、一般式SiOX(ただし、Xは、1.3〜1.9の数を表す。)で表される酸化珪素の蒸着膜を主体とする薄膜であることが好ましい。なお、Xの値は、蒸着モノマーガスと酸素ガスのモル比、プラズマのエネルギー等により変化するが、一般的に、Xの値が小さくなればガス透過度は小さくなるが、膜自身が黄色性を帯び、透明性が悪くなる。
【0039】
本発明において、酸化珪素の蒸着膜は、酸化珪素を主体とし、更に、炭素、水素、珪素または酸素の1種類、または2種類以上の元素からなる化合物の少なくとも1種類を化学結合等により含有する蒸着膜からなることを特徴とするものである。例えば、C−H結合を有する化合物、Si−H結合を有する化合物、または、炭素単位がグラファイト状、ダイヤモンド状、フラーレン状等になっている場合、更に、原料の有機珪素化合物やそれらの誘導体を化学結合等によって含有する場合があるものである。例えば、CH3部位を持つハイドロカーボン、SiH3シリル、SiH2シリレン等のハイドロシリカ、SiH2OHシラノール等の水酸基誘導体等を挙げることができる。なお、上記以外でも、蒸着過程の条件等を変化させることにより、酸化珪素の蒸着膜中に含有される化合物の種類、量等を変化させることができる。この際、上記の化合物が酸化珪素の蒸着膜中に含有する含有量としては、0.1〜50質量%、好ましくは5〜20質量%である。含有率が0.1質量%未満であると、酸化珪素の蒸着膜の耐衝撃性、延展性、柔軟性等が不十分となり、曲げなどにより、擦り傷、クラック等が発生し易く、高いバリア性を安定して維持することが困難になる場合があり、一方、50質量%を越えるとバリア性が低下する場合がある。
【0040】
更に、本発明では、酸化珪素の蒸着膜において、上記の化合物の含有量が酸化珪素の蒸着膜の表面から深さ方向に向かって減少していることが好ましい。これにより、酸化珪素の蒸着膜の表面では上記化合物等により耐衝撃性等が高められ、他方、基材フィルムとの界面では、上記化合物の含有量が少ないために基材フィルムと酸化珪素の蒸着膜との密接着性が強固なものとなる。
【0041】
本発明において、上記の酸化珪素の蒸着膜は、例えばX線光電子分光装置(Xray Photoelectron Spectroscopy、XPS)、二次イオン質量分析装置(Secondary Ion Mass Spectroscopy、SIMS)等の表面分析装置を用い、深さ方向にイオンエッチングする等して分析し、酸化珪素の蒸着膜の元素分析を行うことで、上記の物性を確認することができる。
【0042】
本発明において、上記酸化珪素の蒸着膜の膜厚は、50Å〜4000Å位であることが好ましく、より好ましくは100〜1000Åである。4000Åより厚くなると、その膜にクラック等が発生する場合があり、一方、50Å未満であると、バリア性の効果を奏することが困難になる場合がある。なお、膜厚は、例えば、株式会社理学製の蛍光X線分析装置(機種名、RIX2000型)を用いて、ファンダメンタルパラメーター法で測定することができる。また、酸化珪素の蒸着膜の膜厚を変更する手段としては、蒸着膜の体積速度を大きくする方法、すなわち、モノマーガスと酸素ガス量を多くする方法や蒸着する速度を遅くする方法等によって行うことができる。
【0043】
本発明では、無機酸化物の蒸着膜として、無機酸化物の蒸着膜の1層だけでなく、2層あるいはそれ以上を積層した多層膜の状態でもよく、また、使用する材料も1種または2種以上の混合物で使用し、また、異種の材質で混合した無機酸化物の蒸着膜を構成することもできる。
【0044】
本発明において、酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を形成する有機珪素化合物等の蒸着用モノマーガスとしては、例えば、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、その他等を使用することができる。これらの中でも、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、または、ヘキサメチルジシロキサンを原料として使用することが、その取り扱い性、形成された連続膜の特性等から、特に好ましい。なお、上記において、不活性ガスとしては、例えば、アルゴンガス、ヘリウムガス等を使用することができる。
【0045】
一方、本発明では、物理気相成長法によっても無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。このような物理気相成長法として、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレ−ティング法、イオンクラスタービーム法等の物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)などにより無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。
【0046】
具体的には、金属または金属の酸化物を原料とし、これを加熱して蒸気化し、これを基材フィルムの一方の上に蒸着する真空蒸着法、または、原料として金属または金属の酸化物を使用し、酸素を導入して酸化させて基材フィルムの一方の上に蒸着する酸化反応蒸着法、更に酸化反応をプラズマで助成するプラズマ助成式の酸化反応蒸着法等を用いて蒸着膜を形成することができる。なお、蒸着材料の加熱方式としては、例えば、抵抗加熱方式、高周波誘導加熱方式、エレクトロンビーム加熱方式(EB)等にて行うことができる。物理気相成長法による無機酸化物の薄膜膜を形成する方法について、巻き取り式真空蒸着装置の一例を示す概略的構成図を示す図3を参照して説明する。
【0047】
まず、巻き取り式真空蒸着装置241の真空チャンバー242の中で、巻き出しロール243から繰り出す基材フィルム201は、ガイドロール244、245を介して、冷却したコーティングドラム246に案内される。上記の冷却したコーティングドラム246上に案内された基材フィルム201の上に、るつぼ247で熱せられた蒸着源248、例えば、金属アルミニウム、あるいは、酸化アルミニウム等を蒸発させ、更に、必要ならば、酸素ガス吹出口249より酸素ガス等を噴出し、これを供給しながら、マスク250、250を介して、例えば、酸化アルミニウム等の無機酸化物の蒸着膜を成膜化し、次いで、上記において、例えば、酸化アルミニウム等の無機酸化物の蒸着膜を形成した基材フィルム201を、ガイドロール251、252を介して送り出し、巻き取りロール253に巻き取ると物理気相成長法による無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。なお、上記巻き取り式真空蒸着装置を用いて、まず第1層の無機酸化物の蒸着膜を形成し、次いで、その上に無機酸化物の蒸着膜を更に形成し、または、上記巻き取り式真空蒸着装置を2連に連接し、連続的に、無機酸化物の蒸着膜を形成して、2層以上の多層膜からなる無機酸化物の蒸着膜を形成してもよい。
【0048】
金属または無機酸化物の蒸着膜としては、基本的には、金属の酸化物を蒸着した薄膜であればよく、例えば、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、スズ(Sn)、ナトリウム(Na)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)等の金属の酸化物の蒸着膜を使用することができる。好ましくは、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)等の金属の酸化物の蒸着膜を挙げることができる。よって、上記の金属の酸化物の蒸着膜は、ケイ素酸化物、アルミニウム酸化物、マグネシウム酸化物等のように金属酸化物と称することができ、その表記は、例えば、SiOX、AlOX、MgOX等のようにMOX(ただし、式中、Mは、金属元素を表し、Xの値は、金属元素によってそれぞれ範囲がことなる。)で表される。
【0049】
また、上記のXの値の範囲としては、ケイ素(Si)は0を超え2以下、アルミニウム(Al)は0を超え1.5以下、マグネシウム(Mg)は0を超え1以下、カルシウム(Ca)は0を超え1以下、カリウム(K)は0を超え0.5以下、スズ(Sn)は0を超え2以下、ナトリウム(Na)は0を超え0.5以下、ホウ素(B)は0を超え1、5以下、チタン(Ti)は0を超え2以下、鉛(Pb)は0を超え1以下、ジルコニウム(Zr)は0を超え2以下、イットリウム(Y)は0を超え1.5以下の範囲である。上記においてX=0の場合は完全な金属であり、Xの範囲の上限は、完全に酸化した値である。本発明において、Mとしてケイ素やアルミニウムが好ましく、その際これらのXの値は、ケイ素(Si)は1.0〜2.0、アルミニウム(Al)は0.5〜1.5の範囲である。なお、無機酸化物の蒸着膜の膜厚は、使用する金属や金属の酸化物の種類等によって異なるが、例えば、50〜2000Å、好ましくは、100〜1000Åの範囲内で任意に選択することができる。また、無機酸化物の蒸着膜としては、使用する金属または金属の酸化物としては、1種または2種以上の混合物で使用し、異種の材質で混合した無機酸化物の蒸着膜を構成することもできる。
【0050】
更に、本発明では、例えば物理気相成長法と化学気相成長法の両者を併用して異種の無機酸化物の蒸着膜の2層以上からなる複合膜を形成して使用することもできる。
【0051】
上記の異種の無機酸化物の蒸着膜の2層以上からなる複合膜としては、まず、基材フィルムの上に、化学気相成長法により、緻密で柔軟性に富み、比較的にクラックの発生を防止し得る無機酸化物の蒸着膜を設け、次いで、該無機酸化物の蒸着膜の上に、物理気相成長法による無機酸化物の蒸着膜を設けて、2層以上からなる複合膜からなる無機酸化物の蒸着膜を構成することが好ましいものである。上記とは逆くに、基材フィルムの上に、先に、物理気相成長法により、無機酸化物の蒸着膜を設け、次に、化学気相成長法により、緻密で、柔軟性に富み、比較的にクラックの発生を防止し得る無機酸化物の蒸着膜を設けて、2層以上からなる複合膜からなる無機酸化物の蒸着膜を構成することもできる。
【0052】
(5)コーティング薄膜
本発明のポリウレタン系樹脂組成物によるコーティング薄膜は、シランカップリング剤と充填剤とを含むポリウレタン系樹脂組成物により、該コーティング薄膜は、上記無機酸化物の蒸着膜もしくはその表面処理層上に形成される。
【0053】
該コーティング薄膜に使用するシランカップリング剤としては、二元反応性を有する有機官能性シランモノマー類を使用することができ、例えば、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルートリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルシリコ−ンの水溶液等の1種ないしそれ以上を使用することができる。
【0054】
上記のようなシランカップリング剤は、その分子の一端にある官能基、通常、クロロ、アルコキシ、または、アセトキシ基等が加水分解し、シラノール基(SiOH)を形成し、これが、前記バリア性塗布膜に含まれるケイ素、あるいは該バリア性塗布膜上の活性な基、例えば、水酸基等の官能基と何らかの作用、例えば、脱水縮合反応等の反応を起こして、バリア性塗布膜上にシランカップリング剤が共有結合等で修飾され、更に、シラノール基自体のバリア性塗布膜への吸着や水素結合等により強固な結合を形成する。他方、シランカップリング剤の他端にあるビニル、メタクリロキシ、アミノ、エポキシ、あるいは、メルカプト等の有機官能基が、そのシランカップリング剤の薄膜の上に形成される、例えば、ラミネート用接着剤層、アンカーコート層、その他の層等を構成する物質と反応して強固な結合を形成する。これにより、本発明においては、上記のような化学結合等により、ラミネート用接着剤層、アンカーコート層等を介して、バリア性塗布膜とヒートシール性樹脂層とが強固に密接着してラミネート強度を高め、ラミネート強度の高い強固な積層構造を形成可能とする。特に本発明では、炭素含有酸化珪素の蒸着膜の形成に有機珪素化合物を蒸着用モノマーが使用されるが、蒸着膜の形成に使用されるテトラエトキシシランなどの有機珪素化合物は、前記コーティング薄膜にも含まれ、成分が共通することで各薄膜が強固に結合すると考えられる。特に、シランカップリン剤を含有するコーティング層を積層することでアンカーコート層との密着性が確保され、このためこれらの上に積層されるヒートシール層との密着性も確保され、ラミネート強度等が向上する。
【0055】
また、充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナホワイト、シリカ、タルク、ガラスフリット、樹脂粉末、その他等のものを使用することができる。これは、ポリウレタン系樹脂組成物について、その粘度等を調整し、そのコーティング適性等を高めるものである。
【0056】
また、ポリウレタン系樹脂としては、具体的には、例えば、多官能イソシアネートとヒドロキシル基含有化合物との反応により得られるポリマー、具体的には、例えば、トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアナート等の芳香族ポリイソシアナート、あるいは、ヘキサメチレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナート等の脂肪族ポリイソシアナート等の多官能イソシアネートと、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリアクリレートポリオール等のヒドロキシル基含有化合物との反応により得られる一液ないし二液型ポリウレタン系樹脂を使用することができる。而して、本発明において、上記のようなポリウレタン系樹脂を使用することにより、コーティング薄膜の伸長度を向上させ、例えば、ラミネート加工、あるいは、製袋加工等の後加工適性を向上させ、後加工時における無機酸化物の薄膜のクラック等の発生を防止するものである。
【0057】
上記のポリウレタン系樹脂組成物としては、ポリウレタン系樹脂、1〜30質量%に対し、シランカップリング剤、0.05〜10質量%位、好ましくは、0.1〜5質量%位、充填剤0.1〜20質量%位、好ましくは、1〜10質量%位の割合で添加し、更に、必要ならば、安定剤、硬化剤、架橋剤、滑剤、紫外線吸収剤、その他等の添加剤を任意に添加し、溶媒、希釈剤等を加えて充分に混合してポリウレタン系樹脂組成物を調整する。而して、本発明においては、上記のようなポリウレタン系樹脂組成物を、例えば、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、デップコート、スプレイコート、その他のコーティング法で無機酸化物の薄膜の上にコーティングし、しかる後コーティング膜を乾燥させて溶媒、希釈剤等を除去して、本発明にかかるガスバリア性積層フィルムを形成することができる。なお、本発明において、ポリウレタン系樹脂組成物によるコーティング薄膜の膜厚としては、例えば、0.01〜50μm位、好ましくは、0.1〜5μm位が望ましい。
【0058】
(6)ラミネート用接着剤
本発明では、上記コーティング層の面にラミネート用接着剤を介してヒートシール層などの基材フィルムをドライラミネート積層法を用いて積層することができる。その他、いずれかの2層を積層する際に、ラミネート用接着剤を介してドライラミネート積層法により接着することができる。
【0059】
ラミネート用接着剤としては、ポリ酢酸ビニル系接着剤、アクリル酸のエチル、ブチル、2−エチルへキシルエステルなどのホモポリマーもしくはこれらとメタクリル酸メチル、アクリロニトリル、スチレンなどとの共重合体などからなるポリアクリル酸エステル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エチレンと酢酸ビニル、アクリル酸エチル、アクリル酸、メタクリル酸などのモノマーとの共重合体などからなるエチレン共重合体系接着剤、セルロース系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系接着剤、尿素樹脂またはメラミン樹脂などからなるアミノ樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、反応型(メタ)アクリル酸系接着剤、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴムなどからなる無機系接着剤、シリコーン系接着剤、アルカリ金属シリケート、低融点ガラスなどからなる無機系接着剤、その他の接着剤を使用することができる。
【0060】
より好ましくは、例えば、トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアナートなどの芳香族ポリイソシアナート、またはヘキサメチレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナートなどの脂肪族ポリイソシアナート等の多官能イソシアナートと、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリアクリレートポリオール、その他のヒドロキシル基含有化合物との反応によって得られるポリエーテルポリウレタン系樹脂、ポリエステル系ポリウレタン系樹脂、ポリアクリレートポリウレタン系樹脂を主成分とするものである。これらによれば、柔軟性と屈曲性に富む薄膜を形成することができ、その引っ張り伸長度を向上させ、無機酸化物からなるバリア性薄膜層に対し、柔軟性、屈曲性などを有する被膜として作用し、ラミネート加工、印刷加工などの加工適性を向上させ、無機酸化物からなるバリア性薄膜層へのクラックなどの発生を回避することができる。上記ラミネート用接着剤からなるラミネート接着剤層は、JIS規格K7113に基づいて、100〜300%の引っ張り伸長度を有することが好ましい。
【0061】
これらの接着剤の組成系は、水性型、溶液型、エマルジョン型、分散型などのいずれの組成物形態でもよく、その性状はフィルム、シート状、粉末状、固形状などのいずれでもよい。更に、反応機構として、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶着型、熱圧型などのいずれでもよい。
【0062】
ラミネート用接着剤の使用量には特に限定はないが、一般には、0.1〜10g/m2(乾燥状態)である。上記ラミネート用接着剤は、ロールコート、グラビアコート、キスコートその他のコート法や印刷法によって行うことができる。
【0063】
(7)印刷層
本発明においては、上記ガスバリア性積層フィルムを形成するいずれかの層間や後記する基材層に所望の印刷模様層を形成することができるものである。上記の印刷模様層としては、例えば、上記のコーティング層の上に、通常のグラビアインキ組成物、オフセットインキ組成物、凸版インキ組成物、スクリーンインキ組成物、その他のインキ組成物を使用し、例えば、グラビア印刷方式、オフセット印刷方式、凸版印刷方式、シルクスクリーン印刷方式、その他の印刷方式を使用し、例えば、文字、図形、絵柄、記号、その他からなる所望の印刷絵柄を形成することにより構成することができる。
【0064】
上記インキ組成物について、インキ組成物を構成するビヒクルとしては、例えば、ポリエチレン系樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、フッ化ビニリデン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アルキッド系樹脂、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、熱硬化型ポリ(メタ)アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂、マレイン酸樹脂、ニトロセルロース、エチルセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルオキシエチルセルロースなどの繊維素系樹脂、塩化ゴム、環化ゴムなどのゴム系樹脂、石油系樹脂、ロジン、カゼインなどの天然樹脂、アマニ油、大豆油などの油脂類、その他の樹脂の1種ないし2種以上の混合物を使用することができる。本発明において、上記のようなビヒクルの1種ないし2種以上を主成分とし、これに、染料・顔料などの着色剤の1種ないし2種以上を加え、さらに必要ならば、充填剤、安定剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの光安定剤、分散剤、増粘剤、乾燥剤、滑剤、帯電防止剤、架橋剤、その他の添加剤を任意に添加し、溶剤、希釈剤などで充分に混練してなる各種の形態からなるインキ組成物を使用することができる。
【0065】
印刷層は、文字、図形、記号、絵柄、模様等の所望の印刷絵柄を表刷り印刷しても、あるいは裏刷り印刷してもよく、全面印刷でも、部分印刷でもよい。
【0066】
(8)アンカーコート層
本発明では、前記コーティング層上にヒートシールを押出し形成によって積層することができる。ヒートシール層を押出し形成する際に、前記コーティング層上にアンカーコート剤を介してヒートシール層を形成することが好ましい。使用するアンカーコート剤としては、イソシアネート系(ウレタン系)、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系、有機チタン系、その他のアンカーコーティング剤が例示できる。より好ましくは、例えば、トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアナートなどの芳香族ポリイソシアナート、またはヘキサメチレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナートなどの脂肪族ポリイソシアナート等の多官能イソシアナートと、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリアクリレートポリオール、その他のヒドロキシル基含有化合物との反応によって得られるポリエーテルポリウレタン系樹脂、ポリエステル系ポリウレタン系樹脂、ポリアクリレートポリウレタン系樹脂を主成分とするものである。これらによれば、柔軟性と屈曲性に富む薄膜を形成することができ、その引っ張り伸長度を向上させ、無機酸化物からなるバリア性薄膜層に対し、柔軟性、屈曲性などを有する被膜として作用し、ラミネート加工、印刷加工などの加工適性を向上させ、無機酸化物からなるバリア性薄膜層へのクラックなどの発生を回避することができ、ガスバリア性積層フィルムとヒートシール層との密接着性を向上させ、無機酸化物からなるバリア性薄膜層へのクラックの発生を防止し、ラミネート強度を向上させることができる。
【0067】
本発明においては、アンカーコート剤を、例えば、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、デップコート、スプレイコート、その他のコーティング法でコーティングし、溶剤、希釈剤等を乾燥して、本発明にかかるアンカーコート剤によるアンカーコート層を形成することができる。アンカーコート剤の塗布量としては、0.1〜5g/m2(乾燥状態)位が望ましい。また、上記アンカーコート剤からなるアンカーコート層は、JIS規格K7113に基づいて、100〜300%の引っ張り伸長度を有することが好ましい。
【0068】
(9)ヒートシール層
ヒートシール層としては、熱によって溶融し相互に融着し得る各種のヒートシール性を有するポリオレフィン系樹脂等を使用することができる。具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、メタロセン触媒を使用して重合したエチレン−α・オレフィン共重合体、ポリプロピレン、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテンポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の樹脂からなる1種以上のフィルムもしくはシートまたは塗布膜などを使用することができる。
【0069】
ヒートシール層は、上記樹脂の1種からなる単層でも多層でもよく、ヒートシール層の厚さとしては、15〜130μmである。15μmを下回ると炭素含有酸化珪素の蒸着膜に擦り傷やクラックを発生する場合がある。
【0070】
(10)基材層
本発明の液体用小袋は、前記基材フィルムの他方の面に、更に、基材層を積層してもよい。基材層は、液体用小袋の基本素材となるものであり、機械的、物理的、化学的に優れ、特に、強度を有して強靱であり、かつ耐熱性を有する樹脂のフィルムないしシートを使用することができ、具体的には、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアラミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアセタール系樹脂、フッ素系樹脂、その他等の強靱な樹脂のフィルムないしシート、その他等を使用することができる。上記樹脂のフィルムないしシートとしては、未延伸フィルム、あるいは一軸方向または二軸方向に延伸した延伸フィルム等のいずれのものでも使用することができる。そのフィルムの厚さとしては、5μmないし100μm位、好ましくは、10μmないし50μm位が望ましい。なお、基材層には、例えば、文字、図形、記号、絵柄、模様等の所望の印刷絵柄を通常の印刷法で表刷り印刷あるいは裏刷り印刷等が施されていてもよい。
【0071】
基材層としては、例えば、紙層を構成する各種の紙基材であってもよい。紙基材としては、賦型性、耐屈曲性、剛性等を持たせるものであり、例えば、強サイズ性の晒または未晒の紙基材、あるいは純白ロール紙、クラフト紙、板紙、加工紙等の紙基材、その他等を使用することができる。上記において、紙層を構成する紙基材としては、坪量約80〜600g/m2位のもの、好ましくは、坪量約100〜450g/m2位のものを使用することが望ましい。紙層を構成する紙基材と、上記に挙げた基材層としての各種の樹脂のフィルムないしシート等を併用してもよい。
【0072】
また、液体用小袋は、物理的にも化学的にも過酷な条件におかれることから、液体用小袋を構成する積層材には、厳しい包装適性が要求され、変形防止強度、落下衝撃強度、耐ピンホール性、耐熱性、密封性、品質保全性、作業性、衛生性等の種々の条件が要求される。上記の諸条件を充足する材料を任意に選択して基材層として使用することができる。具体的には、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸またはメタクリル酸共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリアクリルニトリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS系樹脂)、アクリロニトリル−ブタジェン−スチレン共重合体(ABS系樹脂)、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物、フッ素系樹脂、ジエン系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ニトロセルロース、その他等の公知の樹脂のフィルムないしシートから任意に選択して使用することができる。その他、例えば、セロハン等のフィルム、合成紙等も使用することができる。本発明において、上記のフィルムないしシートは、未延伸、一軸ないし二軸方向に延伸されたもの等のいずれのものでも使用することができる。また、その厚さは、任意であるが、数μmから300μm位の範囲から選択して使用することができる。更に、本発明においては、フィルムないしシートとしては、押し出し成膜、インフレーション成膜、コーティング膜等のいずれの性状の膜でもよい。
【0073】
(11)液体用小袋
本発明の液体用小袋は、予め基材フィルム(10)の一方の面に、無機酸化物の蒸着膜(20)を設け、更に、該蒸着膜(20)の面上に、コーティング層(40)を積層してなるガスバリア性積層フィルムの前記コーティング層に、アンカーコート剤によるアンカーコート層および/またはラミネート用接着剤によるラミネート用接着剤層、およびヒートシール性樹脂層を順次積層させた積層材からなる液体用小袋である。
【0074】
積層材の製造方法としては、通常の包装材料をラミネートする方法、例えば、ウエットラミネーション法、ドライラミネーション法、無溶剤型ドライラミネーション法、押し出しラミネーション法、Tダイ押し出し成形法、共押し出しラミネーション法、インフレーション法、共押し出しインフレーション法、その他で行うことができる。而して、本発明においては、上記の積層を行う際に、必要ならば、前記したように、コロナ処理、オゾン処理等の表面処理を施すことができる。
【0075】
本発明において、上記積層材を使用して液体用小袋を製造することができる。例えば、前記積層材の内層のヒートシール性フィルムの面を対向させて、それを折り重ねるか、或いはその二枚を重ね合わせ、更にその周辺端部をヒートシールしてシール部を設けて袋体を構成することができる。その製袋方法としては、上記の積層材を、その内層の面を対向させて折り曲げるか、あるいはその二枚を重ね合わせ、更にその外周の周辺端部を、例えば、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型(ピローシール型)、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型、その他等のヒートシール形態によりヒートシールして、本発明にかかる種々の形態の液体用小袋を製造することができる。また、例えば、自立性包装袋(スタンディングパウチ)等も製造することが可能である。
【0076】
上記において、ヒートシールの方法としては、例えば、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール等の公知の方法で行うことができる。なお、本発明においては、上記のような液体用小袋には、例えば、ワンピースタイプ、ツウーピースタイプ、その他等の注出口、あるいは開閉用ジッパー等を任意に取り付けることができる。また、その形状は、角形容器、丸形等の円筒状等のいずれのものでも製造することができる。
【0077】
(12)液体小袋包装体
本発明の液体小袋包装体は、上記液体用小袋に醤油、ソース、出し汁、香辛料、料理用酒類、その他等の液体ないし粘調体からなる調味料類、スープ類、果汁類、その他等の各種の液状ないし粘体状の飲食物を充填包装したものである。内容物としては、上記のような飲食品の他に、例えば、接着剤、粘着剤等の化学品、化粧品、医薬品、その他等の種々の物品の充填包装に使用することができる。
【0078】
本発明の液体小袋包装体は、上記積層材を使用して成型されたものであり、上記積層材が耐付き指し性などの機械的強度に優れるポリアミドであり、炭素含有酸化珪素の蒸着膜の薄膜を積層することでガスバリア性と柔軟性とが確保され、更にコーティング層の積層によってガスバリア性とラミネート強度とが確保されるため、得られる液体小袋包装体は、内容物の保存性に優れ、かつ輸送時に発生する付き指しやピンホールに対して堅牢であり、その貯蔵・保管ないし流通中に内容物の風味および食味等を損なうことが少ない。
【実施例】
【0079】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。
【0080】
実施例1
(1) 一方にコロナ処理面を有する厚さ15μmの2軸延伸ポリアミドフィルム(動摩擦係数0.3、ヘイズ3.2%、アッシュテスト性能12mm、表面粗さ1500nm)を使用し、これを図2に示すプラズマ化学気相成長装置に装着した。次に、プラズマ化学気相成長装置のチャンバー内を減圧した。
【0081】
一方、原料である有機珪素化合物であるヘキサメチルジシロキサン(以下、HMDSOという。)を原料揮発供給装置おいて揮発させ、ガス供給装置から供給された酸素ガスおよび不活性ガスであるヘリウムと混合させて原料ガスとした。
【0082】
製膜室で使用する原料ガスとして、原料ガスの混合比を、HMDSO:O2:He:Ar=1.2:6.0:0.5:0.5(単位;slm、スタンダードリッターミニット))、製膜出力:10kWとし、次いで、上記の厚さ12μmの2軸延伸ポリアミドフィルムをライン速度200m/minで搬送させながら、厚さ12μmの2軸延伸ポリアミドフィルムの前記コロナ処理面の上に膜厚15nmの酸化珪素の蒸着膜を製膜した。
【0083】
次いで、無機酸化物の蒸着膜面に、グロー放電プラズマ発生装置を使用し、パワー9kw、酸素ガス(O2):アルゴンガス(Ar)=7.0:2.5(単位:slm)からなる混合ガスを使用し、混合ガス圧6×10-5Torr、処理速度420m/minで酸素/アルゴン混合ガスプラズマ処理を行って、無機酸化物の蒸着膜面の表面張力を54dyne/cm以上向上させてプラズマ処理面を形成してガスガスバリア性積層フィルム1を製造した。
【0084】
(2) シランカップリング剤として、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを使用し、該シランカップリング剤1.2質量%、シリカ粉末1.0質量%、ポリウレタン系樹脂13〜15質量%、トルエン31〜32質量%、メチルエチルケトン(MEK)29〜30質量%、イソプロピルアルコール(IPA)15〜16質量%からなるポリウレタン系樹脂組成物を調整した。
【0085】
次に、上記のポリウレタン系樹脂組成物を使用して、前記(2)の蒸着膜に、グラビアロールコート法を利用してコーティングし、次いで、100℃で5秒間乾燥して、上記のポリウレタン系樹脂組成物によるコーティング層(厚さ0.3g/m2、乾燥状態)を形成した。
【0086】
(3) 上記コーティング層の上に、ポリウレタン系アンカーコーティング剤を上記と同様にしてコーティングして、厚さ0.2g/m2(乾燥状態)のアンカーコート層を形成した。
【0087】
(4) 更に、上記のアンカーコート層の上に、チーグラー系触媒を用いて重合されたエチレン・α−オレフィン共重合体(LDPE、MI=8.0、密度=0.911)を溶融押し出し、その際、溶融押し出し樹脂面にオゾン処理を施しながら押し出し加工法により押し出し加工して、厚さ20μmの接着剤層を形成した。次いで、上記の接着剤層の上に、シングルサイト系触媒により重合されたエチレン・α−オレフィン共重合体(LLDPE、MI=7.3、密度=0.900)80重量%とエチレン・ブテン共重合体(MI=3.5、密度=0.885、ブテン含有量20%)20重量%とからなるブレンド物を、押し出し温度290℃、加工速度100m/minで溶融押し出しコーティングして、厚さ20μmのヒートシール性樹脂層を形成して積層材1を製造した。
【0088】
実施例2
実施例1の(1)〜(3)と同様に操作してアンカーコート層を形成した。
【0089】
ついで、上記アンカーコート層の上に、チーグラー系触媒を用いて重合されたエチレン・α−オレフィン共重合体(LDPE、MI=8.0、密度=0.911)を溶融押し出し、その際、溶融押し出し樹脂面にオゾン処理を施しながら押し出し加工法により押し出し加工して、厚さ20μmの接着剤層を形成した。次いで、この接着剤層の上に、シングルサイト系触媒により重合されたエチレン・α−オレフィン共重合体(LLDPE、MI=7.3、密度=0.900)80質量%とエチレン・ブテン共重合体(MI=3.5、密度=0.885、ブテン含有量20%)20質量%とからなるブレンド物をインフレーション法を利用して製膜化した厚さ20μmのヒートシール性樹脂フィルムを積層して、積層材2を製造した。
【0090】
比較例1
実施例1において、厚さ15μmの2軸延伸ポリアミドフィルム(動摩擦係数0.3、ヘイズ2.4%、アッシュテスト性能12mm、表面粗さ1500nm)に代えて、厚さ15μmの2軸延伸ポリアミドフィルム(動摩擦係数0.6、ヘイズ2.4%、アッシュテスト性能12mm、表面粗さ1500nm)を使用した以外は、実施例1と同様に操作して比較積層材1を作成した。
【0091】
比較例2
実施例1の(3)に記載するポリウレタン系樹脂組成物によるコーティング層を設けない以外は実施例1と同様に操作して、比較積層材2を作成した。
【0092】
評価方法
I. 実施例1、実施例2、比較例1、比較例2で製造した積層材について、ラミネート強度試験とヒートシール強度試験とを行なった。結果を下記の表1に示す。
【0093】
(i)ラミネート強度試験:
剥離試験機(株式会社オリエンテック製、機種名、テンシロン万能試験機)を使用し、試料15mm巾、剥離角度90度、剥離速度50mm/min、支点間距離50mm、剥離方法T字型剥離の条件でラミネート強度試験を行なった。
【0094】
(ii)ヒートシール強度:
シール条件140℃×1kg/cm2×1秒で行い、上記の剥離試験機を使用し、試料15mm巾、剥離速度、300mm/min、支点間距離、50mm、T字型剥離の条件でヒートシール強度試験を行った。
【0095】
【表1】

II.
実施例1、実施例2、比較例1、比較例2で製造した積層材および該積層材で構成した液体用小袋について、印刷、貼り合せ、スリット、充填工程でのトラブルについて観察を実施した。結果を下記の表2に示す。
【0096】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明による液体用小袋は、特に、機械的強度、ガスバリア性、ラミネート強度、透明性に優れ、内容物の保存性に優れる液体用小袋であり、有用である。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】図1(a)〜(e)は、本発明のガスガスバリア性積層フィルムを説明する横断面図である。
【図2】低温プラズマ化学蒸着装置の一例を示す概略的構成図である。
【図3】巻き取り式真空蒸着装置の一例を示す概略的構成図である。
【符号の説明】
【0099】
10・・・基材フィルム、
10’ ・・・プラズマ表面処理面
20・・・無機酸化物の蒸着膜、
20’ ・・・コロナ表面処理面、
30・・・コーティング薄膜、
50・・・印刷層、
60・・・ラミネート用接着剤層、
70・・・ヒートシール層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムおよび無機酸化物の蒸着膜およびコーティング薄膜からなるガスバリア性積層フィルムの前記コーティング薄膜に、アンカーコート剤によるアンカーコート層および/またはラミネート用接着剤によるラミネート用接着剤層、およびヒートシール性樹脂層を順次積層させた積層材からなる液体用小袋であって、
前記ガスバリア性積層フィルムは、前記基材フィルムが、動摩擦係数0.4以下、ヘイズ6.0%以下、アッシュテスト性能15mm以下であり、少なくも一方の表面の表面粗さが2000nm以下の2軸延伸ポリアミドフィルムであり、前記基材フィルムの表面粗さが2000nm以下の面に無機酸化物の蒸着膜を設け、かつ無機酸化物の蒸着膜の面上にシランカップリング剤と充填剤とを含むポリウレタン系樹脂組成物によるコーティング薄膜を設けたものであり、
前記液体用小袋は、前記積層材を、そのヒートシール性樹脂層面を対向させて重ね合わせその外周周辺の端部をヒートシールしてヒートシール部を設けて袋体を構成したものである、液体用小袋。
【請求項2】
前記基材フィルムの他方の面に、更に、基材層を積層してなることを特徴とする上記の請求項1に記載の液体用小袋。
【請求項3】
前記無機酸化物の蒸着膜は、酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜または酸化アルミニウム等の無機酸化物の蒸着膜である、請求項1または2記載の液体用小袋。
【請求項4】
前記無機酸化物の薄膜が、化学気相成長法による無機酸化物の蒸着膜からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の液体用小袋。
【請求項5】
アンカーコート剤によるアンカーコート層および/またはラミネート用接着剤によるラミネート用接着剤層が、JIS規格K7113に基づいて、100〜300%の範囲内からなる引っ張り伸度を有することを特徴とする上記の請求項1〜4のいずれかに記載の液体用小袋。
【請求項6】
前記基材層、無機酸化物の蒸着膜、前記コーティング薄膜またはこれらの表面処理層上に印刷層が積層されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の液体用小袋。
【請求項7】
前記充填剤が、シリカ粒子からなることを特徴とする上記の請求項1〜6のいずれかに記載の液体用小袋。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかの液体用小袋に、その開口部から液体または粘調体を充填包装してなることを特徴とする液体小袋包装体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−143582(P2008−143582A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−334816(P2006−334816)
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】