説明

液処理装置、液処理方法及び記憶媒体

【課題】パターン倒れや処理むらの発生を抑制しつつ被処理基板の液処理を行う液処理装置等を提供する。
【解決手段】内部に被処理基板Wを収容し、液処理が行われる処理槽22は上部に開口部222が形成されると共に、下部には流体の供給、排出が行われる下部ポート226が設けられ、前記開口部222を塞ぐ蓋部23には流体の供給、排出を行うための上部ポート234が設けられている。下部ポート226からは液体が供給されて処理槽22内の気体が置換され、上部ポート234からは前記液体と置換され、被処理基板Wを処理する処理液及びその乾燥を防止する液体が供給される。さらに高圧流体雰囲気形成部は乾燥防止用の液体が満たされた処理槽22内を高圧流体の雰囲気とした後、減圧して被処理基板Wを乾燥する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理基板に対して処理液を用いて液処理を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
被処理基板である例えば半導体ウエハ(以下、ウエハという)の表面に集積回路の積層構造を形成する半導体装置の製造工程においては、薬液などの処理液によりウエハ表面の微小なごみや自然酸化膜を除去するなど、液体を利用してウエハ表面を処理する液処理工程が設けられている。
【0003】
液処理に際してウエハ表面に供給された処理液は、例えばウエハを鉛直軸周りに回転させて処理液を振り切る振切乾燥などにより除去されるが、半導体装置の高集積化に伴い、いわゆるパターン倒れの問題が大きくなってきている。パターン倒れは、例えばウエハ表面に残った液体を乾燥させる際に、パターンを形成する凹凸の例えば凸部の左右に残っている液体が不均一に乾燥することにより、この凸部を左右に引っ張る表面張力のバランスが崩れて液体の多く残っている方向に凸部が倒れる現象である。
【0004】
こうしたパターン倒れを抑えつつウエハ表面に残った液体を除去する手法として超臨界状態や亜臨界状態の流体(以下、これらをまとめて高圧流体という)を用いた乾燥方法が知られている。乾燥処理では超臨界流体と亜臨海流体は、ほぼ同じ作用を示すので以下超臨界流体の例について説明すると、超臨界流体は、液体と比べて粘度が小さく、また液体を溶解する能力も高いことに加え、超臨界流体と平衡状態にある液体や気体との間で界面が存在しない。そこで、液体の付着した状態のウエハを超臨界流体と置換し、しかる後、超臨界流体を気体に状態変化させると、表面張力の影響を受けることなく液体を乾燥させることができる。
【0005】
しかし、ウエハ表面に供給する処理液の種類を交換する際などに、ウエハ表面が気体に晒されて乾燥してしまうと、液処理の工程内であってもパターン倒れが発生するおそれがある。またウエハを収容した処理槽内に処理液を供給することにより、ウエハを処理液に浸漬して液処理を行う場合などに、しぶきや気泡などを発生させながら処理液を供給すると、ウエハ表面に気泡が残り、処理むらやパーティクル残存の要因になる。この現象はウエハ表面が疎水性である場合などに顕著である。
【0006】
ここで特許文献1や特許文献2には、処理槽の下部から各種の処理液を供給してウエハの処理を行う装置が記載されている。また特許文献3には、タンクの上下に設けられたタンク口の一方側から処理流体を供給しつつ、他方側のタンク口から供給された処理流体に相当する量の流体を抜き出してウエハの処理を行う装置が記載されている。またこの装置では上部側のタンク口からIPA蒸気などの乾燥用媒体を供給することにより処理後のウエハを乾燥している。しかしながら、これらの特許文献には高圧流体を利用してウエハを乾燥する技術は何ら記載されておらず、パターン倒れや処理むらなどの発生を抑えつつウエハの液処理を行う手法を導き出すことはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−271188号公報:請求項1、図1
【特許文献2】特開平9−219386号公報:段落0035、図4
【特許文献3】特開昭62−136825号公報:請求項2、5、12ページの左上欄の4〜10行目、図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、パターン倒れや処理むらの発生を抑制しつつ被処理基板の液処理を行う液処理装置、液処理方法及びこの方法を記憶した記憶媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る液処理装置は、上部には開口が形成されると共に、下部には流体の供給、排出が行われる下部ポートが設けられ、内部に収容された被処理基板の液処理を行うための処理槽と、
流体の供給、排出を行うための上部ポートが設けられ、前記開口を塞いで処理槽内を密閉するための蓋部と、
前記下部ポートに接続され、密閉された処理槽内の気体と置換される液体を供給するための置換液供給部と、
前記上部ポートに接続され、被処理基板を処理する処理液を前記処理槽内に供給して前記液体と置換するための処理液供給部と、
前記上部ポートに接続され、被処理基板の処理を終えた後の処理槽内に、乾燥防止用の液体を供給して前記処理液と置換するための乾燥防止液供給部と、
前記上部ポート及び下部ポートの各々に接続され、処理槽内の流体を排出するための上部流体排出部及び下部流体排出部と、
前記乾燥防止用の液体が満たされた処理槽内を超臨界状態または亜臨界状態の高圧流体の雰囲気とするための高圧流体雰囲気形成部と、を備え、
前記高圧流体の雰囲気にされた処理槽内を減圧して気体にして被処理基板を乾燥するように構成したことを特徴とする。
【0010】
前記液処理装置は以下の特徴を備えていてもよい。
(a)前記上部ポートは、前記処理槽内に流体供給するための供給ポートと、この供給ポートよりも高い位置から当該処理槽内の流体を排出するための排出ポートとに分けて設けられ、前記排出ポートを介して前記上部流体排出部へ向けて流体を排出しつつ、供給ポートから液体を供給することにより、前記蓋部の下面に溜まった気体を排出することができること。
(b)前記高圧雰囲気形成部は、処理槽内の乾燥防止用液体を加熱して超臨界状態または亜臨界状態に状態変化させる加熱機構であること。
(c)前記高圧雰囲気形成部は、前記処理槽に接続され、当該処理槽内に高圧流体を供給する高圧流体供給部であること。
(d)前記置換液供給部は、密閉された処理槽内の気体を液体と置換した後に、前記上部ポートから上部流体排出部側の系内に残存している気体を液体と置換するために、当該上部ポートに接続されていることを特徴とすること。
【0011】
(e)さらに前記蓋部を取り外した状態で処理槽を収容し、処理槽内を高圧流体雰囲気とする処理が行われる外部容器を備え、当該処理槽には、蓋部の取り付け、取り外しが行われる位置と、外部容器との間で処理槽を移動させる移動機構が設けられていること。
(f)前記蓋部には、処理槽の開口を塞いで密閉する密閉位置と、この密閉位置から上方側に退避した開放位置との間で当該蓋部を昇降させる昇降機構が設けられていること。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、被処理基板を収容し、蓋部によって密閉された処理槽内に、当該処理槽の下部に設けられた下部ポートから液体を供給して処理槽内の気体を液体と置換し、しかる後、この液体を処理液と置換して被処理基板の処理を開始するので、処理液のしぶきや気泡の発生を抑え、処理むらの少ない処理を行うことができる。また液処理を行った後は、処理槽内を乾燥防止用の液体で満たした状態で高圧流体による被処理基板の乾燥を開始するので、被処理基板が気体の雰囲気に晒されず、パターン倒れの発生が抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施の形態の液処理装置及びウエハの受け渡し機構の一例を示す斜視図である。
【図2】前記液処理装置の全体構成を示す模式図である。
【図3】前記液処理装置に設けられる処理槽の一部破断斜視図である。
【図4】前記処理槽及び超臨界処理用の外部容器の構成を示す第1の説明図である。
【図5】前記処理槽及び外部容器の第2の説明図である。
【図6】前記処理槽の開口に配置される整流板の平面図である
【図7】前記液処理装置の作用を示す第1の説明図である。
【図8】前記液処理装置の作用を示す第2の説明図である
【図9】前記液処理装置の作用を示す第3の説明図である
【図10】前記液処理装置の作用を示す第4の説明図である
【図11】前記液処理装置の作用を示す第5の説明図である
【図12】前記液処理装置の作用を示す第6の説明図である
【図13】前記液処理装置の作用を示す第7の説明図である
【図14】前記液処理装置の作用を示す第8の説明図である
【図15】前記液処理装置の作用を示す第9の説明図である
【図16】前記液処理装置の作用を示す第10の説明図である
【図17】前記液処理装置の作用を示す第11の説明図である
【図18】第2の実施の形態に関わる液処理装置の処理槽及び蓋部の構成を示す説明図である。
【図19】前記第2の実施の形態に関わる液処理装置の作用を示す第1の説明図である。
【図20】前記第2の実施の形態に関わる液処理装置の作用を示す第2の説明図である。
【図21】前記第2の実施の形態に関わる液処理装置の蓋部の変形例を示す説明図である。
【図22】処理槽内で超臨界処理を行う液処理装置の説明図である。
【図23】外部から超臨界流体を供給して超臨界処理を行う液処理装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の基板処理装置を備えた基板処理システムの一例として、被処理基板であるウエハWに処理液を供給して液処理を行う液処理装置2について説明する。図1は本実施の形態の液処理装置2及びこの液処理装置2にウエハWを搬入する機構の構成を示す一部破断斜視図である。液処理装置2は外部に設けられたウエハの搬送機構からのアクセスが可能な筐体101内の例えば床面上に配置されており、その上方側の空間には、液処理装置2と外部の搬送機構との間でウエハWの受け渡しを行う受け渡し機構が設けられている。本例では、この受け渡し機構として、ウエハWを保持して搬送する受け渡しアーム11と、液処理装置2への搬入出前後のウエハWが載置される搬入出棚12とが設けられている。図1では搬入出棚12の設けられている方向を前方として説明を行う。
【0015】
受け渡しアーム11は、例えば筐体101内の底部に配置されている液処理装置2の上方側、後方寄りの位置に配置されており、真空チャックが設けられたフォーク111などによってウエハWを1枚ずつ保持することが可能な、例えば6軸の多関節アームである。また受け渡しアーム11は、仕切板105や支持台106によって仕切られた空間内に設置されており、受け渡しアーム41の作動によって発生するパーティクルなどがウエハWの搬送される空間へと進入しにくくなるようにしている。図中、104はウエハWの受け渡しを行う空間に受け渡しアーム11を進入させるためのアクセス口である。
【0016】
搬入出棚12は、例えば液処理装置2の上方側、前方寄りの位置に設けられており、ウエハWを1枚ずつ水平に保持する例えば3本の昇降ピンを介して外部の搬送機構と受け渡しアーム11との間でのウエハWの受け渡しを可能にする。搬入出棚12を手前側から見ると、上面に向かって開口している処理槽22の上方側、側方寄りの位置に配置されている。この配置によりウエハWを上下方向に搬送するための搬送経路が確保され、搬入出棚12と干渉することなく迅速にウエハWを処理槽22から搬入出することができる。搬入出棚12は図1に示した如く1つだけ設ける場合に限定されず、搬入用と搬出用の2つの搬入出棚12を設け、液処理後のウエハWの再汚染を抑えてもよい。
【0017】
図1中、103は液処理の前後のウエハWが搬入出される搬入出口であり、外部の搬送機構は、この搬入出口103を介して筐体101内に進入する。また図1中、102は筐体101内に清浄空気のダウンフローを形成するためのFFU(Fan Filter Unit)、107は当該ダウンフローの排気口である。
【0018】
この筐体101内に設けられた液処理装置2は、液処理を行った後、高圧流体、例えば超臨界流体を利用することにより表面に気液界面を形成せずにウエハWを乾燥することができる。図2に示すように液処理装置2は、ウエハWに対する液処理が実行される処理槽22と、液処理を行う際にこの処理槽22を密閉する蓋部23と、超臨界流体を用いてウエハWを乾燥する処理を行う際に処理槽22を収容する外部容器21とを備えている。
【0019】
図4、図5に示すように外部容器21は、例えば縦方向に扁平な直方体形状の耐圧容器として構成されており、その内部には処理槽22を収容することが可能な空間が形成されている。図2に示すように外部容器21には例えば抵抗発熱体からなるヒーター212が設けられていて、電源部213からの給電により、外部容器21の本体を加熱し、これにより後述する乾燥防止用の液体を加熱して超臨界状態にすることができる。ヒーター212などにより構成される加熱機構は、本実施の形態の高圧流体雰囲気形成部に相当する。
【0020】
図3に示すように処理槽22は1枚、または複数枚のウエハWを縦向きに格納することが可能な容器であり、後述する処理液や乾燥防止用の液体中に浸漬した状態でウエハWを保持することができる。処理槽22は、外部容器21の内部空間より幅の狭い、縦方向に扁平な形状となっており、外部容器21は前記空間内に処理槽22を収容することができる。
【0021】
ここで処理槽22に複数枚のウエハWを格納する場合には、例えば隣り合うウエハWにて、パターンが形成される面同士を対向させるように配置することにより当該面へのパーティクル等の付着を避けるようにするとよい。ウエハWの枚数が奇数枚の場合には、残る1枚のウエハWは、パターンの形成面を他のウエハW側に向け、処理槽22の壁面に対向させないようにすることが好ましい。
【0022】
図3に示すように処理槽22の上面には開口部222が設けられており、受け渡しアーム11に保持されたウエハWはこの開口部を介して処理槽22内に搬入される。
一方、処理槽22の底部はウエハWの形状に沿って湾曲した形状となっており、ウエハを格納する空間の下部にはウエハWを保持するためのウエハ保持部材223が設けられている。ウエハ保持部材223には、ウエハWの形状に沿った不図示の溝が形成されており、ウエハWの周縁部をこの溝内に嵌合させることによりウエハWを縦向きに保持することができる。またウエハ保持部材223は、処理槽22に供給された液体が各ウエハWの表面に十分に接触し、且つ、ウエハWを保持したフォーク111が処理槽22内に進入しても、ウエハWやフォーク111が他のウエハWや処理槽22本体と干渉しないように溝の配置位置や溝同士の間隔が調整されている。
【0023】
図3に示すように処理槽22の底面には、処理槽22内の気体と置換される液体であるDIW(DeionIzed Water)供給し、また超臨界流体を排出するための開口部224が設けられている。図2に示すように、この開口部224は流体の供給・排出ポート226を介して供給・排出ライン34に接続されている。後述するように処理槽22は横方向に移動することができるので、供給・排出ライン34は例えば耐圧性を備えたフレキシブル配管などにより構成され、処理槽22の移動に伴って変形することができる。供給・排出ポート226は本実施の形態の下部ポートに相当する。
【0024】
供給・排出ポート226に接続された供給・排出ライン34の他端側には、複合バルブなどからなる切り替えバルブV6が設けられており、この切り替えバルブV6は、処理槽内の気体と置換される液体であるDIWを供給するDIW供給部311及び、例えば外部の除害設備や処理液の回収設備などへと続く配管ラインが接続されている。気体と置換される流体を供給するという観点において、DIW供給部311は本実施の形態の置換液供給部に相当し、外部へ続く配管ラインなどは下部流体排出部に相当する。
【0025】
図2に示すように処理槽22は、例えば幅の狭い側面部にて厚板状の封止板221に固定されている。そしてこの封止板221を横方向に移動させることによって、受け渡しアーム11との間でのウエハWの受け渡しが行われる受け渡し位置と後述する蓋部23の取り付け、取り外しが行われる位置や、外部容器21との間で処理槽22を移動させることができる。また図2に破線で示すように、封止板221は、処理槽12が外部容器21内に収容されたときに、当該外部容器21の開口部211を塞ぐ役割も果たしている。外部容器21の開口部211の周囲には不図示のOリングが設けられており、封止板221は、このOリングを押しつぶして処理空間310内を密閉することができる。
【0026】
図4、図5に示すように封止板221は台座部26に支持されており、例えばこの台座部26には処理槽22を移動させる方向に沿って当該台座部26を切り抜いた走行軌道261が形成されている。一方、封止板221の下端部には、当該走行軌道261内に向けて下方側に伸びだした走行部材225が設けられている。そして図2、図4に示すように、この走行部材225には走行軌道261に沿って掛け渡されたボールネジ263が貫通していて、これら走行部材225とボールネジ263とはボールネジ機構を構成している。
【0027】
そしてボールネジ263の一端に設けられた駆動部262(図2)により当該ボールネジ263を左右いずれかの方向に回転させることにより、走行軌道261内で走行部材225が走行し、これによりウエハWの受け渡し位置から、蓋部23の下方位置や外部容器21に処理槽22を移動させることができる。そしてこれとは反対に、ボールネジ263を反対方向に回転させることにより、外部容器21の内部から受け渡し位置へ向けて処理槽22を移動させることができる。これらの観点において、ボールネジ263や走行部材225、駆動部262は、本実施の形態の移動機構に相当する。但し処理槽22を移動させる移動機構は、上述したボールネジ機構の例に限定されるものではなく、例えばリニアモータや伸縮アーム、エアシリンダーなどを用いてもよい。
【0028】
また図1〜2、図4〜5に示すように液処理装置2には、封止板221や処理槽22が移動する領域を側面から覆うように、壁部24が設けられている。壁部24は封止板221の走行方向に沿って伸びる2枚の側壁部材241と、外部容器21の開口部211と対向するように設けられた前方壁部材242とから構成されている。そして前記2枚の側壁部材241の奥手側の一端は、例えば外部容器21の側壁面に強固に固定されており、これにより壁部24は外部容器21と一体になっている。
【0029】
また液処理装置2は、外部容器21内で超臨界流体を利用したウエハWの乾燥を行う際に封止板221が受ける内圧に抗して、当該封止板221を外部容器21側へ向けて押さえつけるための固定板25を備えている。この固定板25は、処理槽22及び封止板221が横方向に移動する領域から退避した位置と、封止板221を外部容器21側へ向けて側面側から押さえる位置との間を、不図示の駆動機構により横方向に移動可能なように構成されている。
【0030】
一方、2枚の側壁部材241には、左右方向に移動する固定板25を貫通させることが可能な嵌入孔243が形成されており、壁部24(側壁部材241)の外方で待機している固定板25は、一方側の側壁部材241の嵌入孔243を通り抜けて封止板221を固定する位置へと移動することができる。また封止板221を固定する位置まで移動した固定板25は、その左右両端部が各側壁部材241の嵌入孔243に嵌め込まれた状態となり、この結果、固定板25がかんぬきのように側壁部材241に係止され、外部容器21内の圧力に抗して封止板221を押さえつけることができる(図5参照)。
【0031】
次いで処理槽22に処理液や乾燥防止用の液体などを供給する蓋部23について説明する。図1、図2に示すように蓋部23は既述のウエハWの受け渡し位置と、外部容器21との間に配置されており、これらの位置の間を横方向に移動する処理槽22の上方側にて、例えば壁部24(側壁部材241)に支持されている。
【0032】
蓋部23は、処理槽22の上面に形成された開口部222を塞いで当該処理槽22内を密閉する役割を果たし、当該開口部222の形状に合わせて例えば前後方向に細長い部材により形成されている。蓋部23の下面には、周縁部から中央部へ向けて深くなる凹部233が形成されており、この凹部233の頂端には、蓋部23を形成する部材内を貫通し、処理槽22に流体を供給し、また処理槽22内の流体を排出するための上部ポートである供給・排出ポート234が開口している。
【0033】
一方、蓋部23の下面(凹部233の下端)には、供給・排出ポート234から凹部233内に供給された流体を処理槽22内に分散して供給するための整流板231が設けられている。図6に示すように整流板231には、複数の通流孔232が設けられており、これらの通流孔232を介して処理槽22と凹部233との間で流体が供給、排出される。
【0034】
図6に示すように、各通流孔232は供給・排出ポート234の開口部の下方位置(図6中に破線で示してある)からずれた位置に配置されている。これにより、供給・排出ポート234から吐出された流体は、整流板231にぶつかって流れ方向を変えてから各通流孔232を通流するので整流板231を設けることによる分散作用が発揮される。本例では蓋部23に整流板231を固定した構成となっているが、蓋部23と整流板231を別体として構成し、処理槽22にウエハWを収容した後、これら蓋部23と整流板231とを別々に処理槽22上に載置する構成としてもよい。
【0035】
図2に示すように供給・排出ポート234は、複合バルブなどからなる切り替えバルブV4と接続されており、当該バルブV4には液供給ライン32を介してDIW供給部311、DHF供給部312及びIPA供給部313が接続されている。DHF供給部312は供給・排出ポート234を介して処理槽22内に処理液であるDHF(Diluted Hydro Fluoric acid、希フッ酸)を供給する処理液供給部としての役割を果たす。
【0036】
またDIW供給部311は既述の置換用の液体の供給に加え、DHFによる処理を終えた後の処理槽22にDIWを供給する役割も兼ね備え、この場合のDIWは液処理を終えたあとのウエハWのリンス洗浄を行うリンス液に相当する。そしてIPA供給部313は、リンス洗浄を終えた後のウエハWの乾燥を防ぐために、乾燥防止用の液体であるIPAを供給する乾燥防止液供給部としての役割を果たしている。ここで図2中に示したV1〜V3は開閉弁である。
【0037】
また既述の切り替えバルブV4には、外部の除害設備や処理液の回収設備などへと続く排出ライン33が接続されており、当該排出ライン33やここに設けられている開閉バルブV5などは、供給・排出ポート234側に接続された上部流体排出部に相当している。
【0038】
このような構成を備えた蓋部23は、図1に示すように昇降機構238を介して壁部24に支持されている。この結果、蓋部23を処理槽22に取り付け、開口部222を塞いで密閉する密閉位置と、この密閉位置から上方側へ退避させることにより処理槽22から蓋部23を取り外し、開口部222を開放する開放位置との間で蓋部23を昇降させることができる。蓋部23を取り外すことにより、横方向に処理槽22を自由に移動させて、受け渡しアーム11との間でウエハWの受け渡しを行ったり、外部容器21内に処理槽22を収容したりすることが可能になる。
このように蓋部23は昇降機構238によって昇降自在に構成されているので、供給・排出ポート234に接続された液供給ライン32や排出ライン33は、フレキシブル配管などにより構成され、蓋部23の移動に伴って変形することができる。なお、図示の便宜上、図1以外の図においては蓋部23の昇降機構238の記載は省略してある。
【0039】
以上に説明した構成を備えた液処理装置2は、図2に示すように制御部4と接続されている。制御部4は例えば図示しないCPUと記憶部とを備えたコンピュータからなり、記憶部には液処理装置2の作用、即ち外部からウエハWを受け取って処理槽22に搬入して液処理を行い、次いで超臨界流体を利用して乾燥を行ってから、外部の搬送機構に処理後のウエハWを受け渡すための動作に係わる制御についてのステップ(命令)群が組まれたプログラムが記録されている。このプログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク、メモリーカード等の記憶媒体に格納され、そこからコンピュータにインストールされる。
【0040】
特に制御部4は、図2に示すように各種バルブV1〜V6や駆動部262、電源部213などに制御信号を出力し、処理槽22や蓋部23の移動タイミングや移動距離、処理槽22内に供給される流体の供給位置やタイミング、流体の種類の切り替え、処理槽22から流体を排出する位置やタイミングの切り替え、並びに流体の供給、排出量の調整などを行うことができる。また外部容器21内の温度についても不図の温度検出部にて検出した温度に基づき、電源部213から供給される電力量を増減して、外部容器21に収容された処理槽22内の流体を所望の温度に加熱することができるようになっている。
【0041】
以上に説明した構成を備えた液処理装置2の作用について図7〜図17を参照しながら説明する。はじめに、外部の搬送機構が搬入出口103を介して筐体101内に進入し、ウエハWを搬入出棚12の昇降ピンに受け渡したら、受け渡しアーム11は昇降ピンで支持されたウエハWの下方にフォーク111を進入させ、次いで昇降ピンを降下させることによりフォーク111にウエハWを受け取る。このとき、ウエハWを搬入可能な処理槽22は、内部に液体が満たされていない、空の状態で受け渡し位置にて待機している。
【0042】
搬入出棚12からウエハWを受け取った受け渡しアーム11は、ウエハWを縦向きに起こすと共にフォーク111の先端が処理槽22の開口部に向くように各回転軸を回転させた後、図7に示すようにフォーク111を降下させてウエハWを処理槽22内に搬入する(但し図7ではフォーク111の記載を省略してある)。こうして処理槽22内に所定枚数のウエハWが収容されたら、処理槽22からフォーク111を退避させ、受け渡し位置から、蓋部23の取り付けが行われる位置へ処理槽22を移動させる。
【0043】
図8に示すように、蓋部23の取り付け位置にウエハWを収容した処理槽22が到着したら、開放位置にて待機していた蓋部23を降下させ、処理槽22上に蓋部23を載置して開口部222を塞ぎ、処理槽22内を密閉する。このとき切り替えバルブV4、V6は、例えばいずれのラインに対しても閉の状態となっていて(図8中に「S」の符号を付してある。他図においても同じ)、処理槽22に対しては流体の供給、排出は行われていない。
【0044】
蓋部23が取り付けられたら、図9に示すように下部側の切り替えバルブV6のDIW供給部311に接続されたバルブ部を開として(図9中に「O」の符号を付してある。他図においても同じ)、DIWを受け入れる一方、上部側の切り替えバルブV4では排出ライン33に接続されたバルブ部を開として、処理槽22内の気体を排出する。この動作により、密閉された処理槽22内は、下部側から上部側へ向けて気体が液体であるDIWへと次第に置換されてく。このようにDIWを下方側の供給・排出ポート226から供給することにより、処理槽22内にはしぶきや気泡が形成されにくく、表面に気泡などが付着したままの状態でウエハWがDIW内に浸漬されるといった状態の発生を抑えることができる。
【0045】
こうして処理槽22及び蓋部23の凹部233内がDIWで置換された状態となったら、図10に示すように上部側の切り替えバルブV4の液供給ライン32に接続されたバルブ部を開とすると共に、液供給ライン32から排出ライン33へ向けてDIW供給部311よりDIWを流す。この動作により、供給・排出ポート234の上流側である液供給ライン32、切り替えバルブV4内及び供給・排出ポート234よりも排出ライン33側の系内に残存している気体(気泡)をDIWで置換し、後段のDHFなどの供給動作の際における処理槽22内への気体の再進入を抑えることができる。このとき、下部側の切り替えバルブV6は全閉として、液供給ライン32側に向けて流れるDIWが処理槽22側へと流入しないようにするとよい。これらの動作に加えて、下部側の切り替えバルブV6におけるDIW供給部311に接続されたバルブ部を開とすると共に、当該DIW供給部311から外部の除害設備などへと続く下流側の配管ラインへに向けてDIWを流してもよい。これにより供給・排出ポート226の上流側である供給・排出ライン34、切り替えバルブV6内、及び供給・排出ポート226の下流側である排出側の系内に残存している気体(気泡)をDIWで置換できる。
【0046】
こうして、処理槽22、蓋部23の凹部233内、供給・排出ポート234やこれよりも上流側の液供給ライン32、下流側の排出ライン33内がDIWに置換されたら、図11に示すように上部側の切り替えバルブV4では、排出ライン33へ接続されたバルブ部は閉とし、液供給ライン32側は開のままとしておく。一方、下部側の切り替えバルブV6では、処理槽22内の液体を外部へ排出する配管ラインに接続されたバルブ部を開く。こうして下部側の供給・排出ポート226から処理槽22内の液体を抜きつつ、上部側の供給・排出ポート234では例えば排出量と同量の処理液であるDHFをDHF供給部312より供給する。
【0047】
この結果、上部側の供給・排出ポート234から供給されたDHFが整流板231の通流孔232を通過して処理槽22内に分散供給され、処理槽22内のフッ化水素濃度が上昇して、ウエハWの表面に形成された不要な自然酸化膜などが除去される。このとき、処理槽22内がDIWで満たされていることにより、上部側の供給・排出ポート234よりDHFを供給しても、しぶきや泡が発生しにくい。また予め処理槽22内を満たしているDIWについても、下部側の供給・排出ポート226より供給され、ウエハWの表面に付着している気泡が少ないことから、ウエハWの表面にDHFが満遍なく行き渡り、処理むらの発生が抑えられる。
【0048】
また、処理槽22内に上部側から下部側へ向けて流れるDHFの流れを形成することにより、処理槽22のパーティクルの巻き上げを抑え、ウエハWへの再付着を抑制しつつパーティクルを処理槽22から排出することができる。このような上部側から下部側へ向けた流れを形成することによるパーティクルの再付着抑制効果は、後段のリンス液(DIW)や乾燥防止液(IPA)への置換動作においても同様に発揮される。
【0049】
処理槽22内のDIWをDHFと置換し、予め設定した時間だけ液処理を行ったら、図12に示すように上部側の供給・排出ポート234へ向けて供給される液体をDHFからDIWに切り替えて処理槽22内をDIWに置換する。このとき処理槽22内に供給されるDIWは、ウエハWの表面からDHFを除去するリンス液としての役割を果たし、DHFがDIWに置換されることにより、ウエハWの液処理が停止される。
【0050】
処理槽22内のDHFをDIWに置換したら、上部側の供給・排出ポート234へ向けて供給される液体をDIWからIPAに切り替えて処理槽22内をIPAに置換する(図13)。このIPAは液処理を行った後のウエハWの乾燥を防止し、パターン倒れの発生を防ぐ役割を果たすと共に、超臨界流体を用いてウエハWを乾燥する後段の処理において、超臨界流体の原料となる。
【0051】
ここでIPAは、DIW中に溶解可能であるが、下部側からDIWを抜き出しつつ上部側からIPAを供給すると、IPAとDIWとの比重差により、図13にイメージ的に示すように両液体の相がほぼ分離した状態を維持したまま処理槽22内のDIWを効率的に置換することが可能であることを発明者らは把握している。
【0052】
そして処理槽22内がIPAに置換されたら、上部側、下部側の切り替えバルブV4、V6を全て閉にして、処理槽22における液体の供給、排出を停止した後、蓋部23を開放位置まで上昇させて処理槽22から蓋部23を取り外す(図14)。このとき蓋部23の凹部233内はIPAで満たされた状態となっているので、このIPAは整流板231の通流孔232を介して流れ落ちる可能性がある。
【0053】
そこで蓋部23の取り外し位置における処理槽22の下方側に、IPAの受け皿を設け、流れ落ちたIPAを外部に排出したり、回収したりするようにしてもよい。また、例えば蓋部23と整流板231との間から気体を供給するためのラインを設け、当該ラインから気体を供給しつつ、切り替えバルブV4の排出ライン33に接続されたバルブ部を開き、凹部233内のIPAを押し出して排出するようにしてもよい。
【0054】
処理槽22から蓋部23が取り外されたら、処理槽22を移動させ外部容器21内に処理槽22を収容する(図15)。そして固定板25を移動させ、封止板221を側面側から押さえたら、図16に示すように電源部213をオンの状態にして、ヒーター212に電力を供給し、処理槽22内を例えば100℃〜300℃の範囲の270℃に加熱する。なお、処理槽22を外部容器21に収容したら直ちにIPAの蒸発が開始されるようにヒーター212は常時、加熱状態にしておくようにしてもよい。
【0055】
このとき外部容器21の開口部211は封止板221で封止され、供給・排出ポート226の下流の切り替えバルブV6も全て閉の状態となっているので、処理槽22内のIPAが蒸発して気体となる際に、IPAの体積の膨張に伴って外部容器21(処理槽22)内の圧力が上昇する。さらにこの密閉された雰囲気内での加熱を継続し、IPAを昇温、昇圧すると、IPAの温度及び圧力が臨界点に到達し、処理槽22の内部が超臨界状態のIPAで満たされた状態となる。
【0056】
この結果、ウエハWの表面は液体のIPAから超臨界状態のIPAに置換されていくことになるが、平衡状態において液体と超臨界流体との間には界面が形成されないので、パターン倒れを引き起こすことなくウエハW表面の流体を超臨界流体に置換することができる。こうしてIPAの加熱を開始して所定の時間が経過し、処理槽22内のIPAが液体から超臨界流体に変化して超臨界流体雰囲気となったら、図17に示すように切り替えバルブV6の外部に接続されたバルブ部を開き、IPAを排出して外部容器21(処理槽22)内の超臨界雰囲気を減圧する。
【0057】
このとき外部容器21内をIPAの凝縮温度以上に維持しておくことにより、再度の液化を防ぎつつIPAを排出することが可能となり、パターン倒れの発生を防ぎつつウエハWを乾燥することができる。
ウエハWの乾燥が終了したら固定板25を移動させて封止板221の固定を解除し、受け渡し位置まで処理槽22を移動させ、搬入時とは逆の順序でウエハWを取り出し、外部の搬送手段に乾燥したウエハWを受け渡して液処理を終える。
【0058】
本実施の形態に関わる液処理装置2によれば以下の効果がある。ウエハWを収容し、蓋部23によって密閉された処理槽22内に、当該処理槽22の下部に設けられた供給・排出ポート226からDIWを供給して処理槽22内の気体を液体と置換し、しかる後、このDIWを処理液(DHF)と置換してウエハWの処理を開始するので、処理液のしぶきや気泡の発生を抑え、処理むらの少ない処理を行うことができる。また液処理を行った後は、処理槽22内を乾燥防止用の液体で満たした状態で超臨界流体によるウエハWの乾燥を開始するので、ウエハWが気体の雰囲気に晒されず、パターン倒れの発生が抑えられる。
【0059】
また下部側の供給・排出ポート226に接続される配管は、DIW供給部311及び外部に接続される配管ラインの2本だけとする一方、上部側の供給・排出ポート234にはDIW供給部311、DHF供給部312、IPA供給部313及び外部への4本の配管ラインが接続されている。このように高圧雰囲気となる外部容器21内に収容される供給・排出ポート226に接続される配管ラインを減らすことにより、例えば耐圧構造を必要とする配管を短くするなどして装置コストの上昇を抑えることができる。
【0060】
図18〜図20は、第2の実施の形態に関わる蓋部23Aを備えた液処理装置2の例を示している。第2の実施の形態に関わる蓋部23Aは、処理槽22に流体を供給するための専用の供給ポート235及び、処理槽22から流体を排出するための排出ポート236とが分けて設けられている点が、これらのポートが共通化されている第1の実施の形態に関わる蓋部23と異なる。そして図18に示すように、供給ポート235から流体が供給される高さ位置よりも、排出ポート236から流体が排出される高さ位置の方が高くなっている。
【0061】
蓋部23Aをこのような構成とした理由について図19、図20を参照しながら説明すると、発明者らは、図19に示すように処理槽22内のDIWをIPAに置換すると、蓋部23Aの凹部233の頂部付近に気体溜まりが形成されることを確認した。このような空気溜まりが形成される理由は明らかでないが、DIWとIPAとの気体の溶解度の違いにより、IPAに溶解したDIWの一部から気体が放出された結果とも考えられる。
【0062】
このように蓋部23Aの凹部233に溜まった気体が処理槽22にまで到達してウエハWが気体の雰囲気に晒されると、パターン倒れの発生やパーティクルの再付着などのおそれが生じる。そこで第2の実施の形態に関わる蓋部23Aでは、図20に示すように供給ポート235からIPAを供給しつつ排出ポート236の開閉バルブV5を開いて気体を排出することが可能となる。この結果、処理槽22から供給された液体内から気体が発生する場合であっても、処理槽22内の全体をIPAで満たすことが可能となる。
【0063】
また図18〜図20に示すように複数本の供給ポート235を設けることにより、整流板231を設けなくても処理液(DHF)などを分散供給して、処理むらの発生を抑えることができる。この考え方に基づき、図21に示すように例えば図6に示した通流孔232に対応する位置に吐出口が来るように供給ポート235を設け、これらの吐出口よりも高い位置に排出口が来るように排出ポート236を設ける構成としてもよい。
【0064】
また超臨界流体雰囲気の形成は、処理槽22を外部容器21内に収容して行う場合に限定されない。例えば図22に示すように処理槽22Cと蓋部23Cとを耐圧構造として互いに強く締結し、これら処理槽22Cと蓋部23Cにヒーター227、237を設けて内部のIPAを加熱し、処理槽22C内を超臨界流体雰囲気としてウエハWの乾燥を行ってもよい。
【0065】
さらに高圧流体雰囲気形成部は、処理槽22内のIPAを加熱して超臨界流体雰囲気とする場合に限定されない。図23に示すように例えば二酸化炭素の超臨界流体を溜めた容器などからなる高圧流体供給部54を処理槽22(外部容器21)に接続し、外部から超臨界流体を供給しながら乾燥防止用の液体(IPAなど)を排出することにより、処理槽22内を超臨界流体雰囲気としてもよい。この後、処理槽22内を減圧することにより、ウエハWの乾燥が行われる。ここで図23に示した214は高圧流体供給部54を外部容器21に接続するための超臨界流体供給ポートである。
【0066】
このように処理槽22に接続された高圧流体供給部54から超臨界流体を供給することにより、超臨界流体雰囲気を形成する手法は、外部容器21内に処理槽22を収容した状態で行う場合に限らず、図22に示したように処理槽22Cに蓋部23Cを取り付けた状態のまま超臨界流体によるウエハWの乾燥を行う場合にも適用することができる。
【0067】
以上、ウエハWに対する液処理を行ったあと、超臨界流体を利用してウエハWを乾燥する各種の液処理装置2について説明したが、ウエハWを処理する処理液はDHFに限定されるものではない。例えばウエハWに付着したパーティクルや有機性の汚染物質を除去するためのSC1液(アンモニアと過酸化水素水の混合液)などで他の種類の処理液を利用した液処理にも本発明は適用できる。また上述の各種の液処理装置2ではウエハWを縦置きの状態で保持する処理槽22の例を示したが、ウエハWを横置きの状態で保持する処理槽22にも本発明は適用することができる。
またウエハWを乾燥する高圧流体雰囲気は、超臨界流体雰囲気に限らず、亜臨界流体雰囲気であってもよいことはもちろんである。
【符号の説明】
【0068】
V1〜V3、V5
開閉バルブ
V4、V6 切り替えバルブ
W ウエハ
2 液処理装置
21、21A
外部容器
211 開口部
212 ヒーター
22 処理槽
221 封止板
222 開口部
23、23A〜23C
蓋部
231 整流板
234 供給・排出ポート
238 昇降機構
311 DIW供給部
312 DHF供給部
313 IPA供給部
34 供給・排出ライン
4 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部には開口が形成されると共に、下部には流体の供給、排出が行われる下部ポートが設けられ、内部に収容された被処理基板の液処理を行うための処理槽と、
流体の供給、排出を行うための上部ポートが設けられ、前記開口を塞いで処理槽内を密閉するための蓋部と、
前記下部ポートに接続され、密閉された処理槽内の気体と置換される液体を供給するための置換液供給部と、
前記上部ポートに接続され、被処理基板を処理する処理液を前記処理槽内に供給して前記液体と置換するための処理液供給部と、
前記上部ポートに接続され、被処理基板の処理を終えた後の処理槽内に、乾燥防止用の液体を供給して前記処理液と置換するための乾燥防止液供給部と、
前記上部ポート及び下部ポートの各々に接続され、処理槽内の流体を排出するための上部流体排出部及び下部流体排出部と、
前記乾燥防止用の液体が満たされた処理槽内を超臨界状態または亜臨界状態の高圧流体の雰囲気とするための高圧流体雰囲気形成部と、を備え、
前記高圧流体の雰囲気にされた処理槽内を減圧して気体にして被処理基板を乾燥するように構成したことを特徴とする液処理装置。
【請求項2】
前記上部ポートは、前記処理槽内に流体供給するための供給ポートと、この供給ポートよりも高い位置から当該処理槽内の流体を排出するための排出ポートとに分けて設けられ、
前記排出ポートを介して前記上部流体排出部へ向けて流体を排出しつつ、供給ポートから液体を供給することにより、前記蓋部の下面に溜まった気体を排出することができることを特徴とする請求項1に記載の液処理装置。
【請求項3】
前記高圧雰囲気形成部は、処理槽内の乾燥防止用液体を加熱して超臨界状態または亜臨界状態に状態変化させる加熱機構であることを特徴とする請求項1または2に記載の液処理装置。
【請求項4】
前記高圧雰囲気形成部は、前記処理槽に接続され、当該処理槽内に高圧流体を供給する高圧流体供給部であることを特徴とする請求項1または2に記載の液処理装置。
【請求項5】
前記置換液供給部は、密閉された処理槽内の気体を液体と置換した後に、前記上部ポートから上部流体排出部側の系内に残存している気体を液体と置換するために、当該上部ポートに接続されていることを特徴とすることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載の液処理装置。
【請求項6】
さらに前記蓋部を取り外した状態で処理槽を収容し、処理槽内を高圧流体雰囲気とする処理が行われる外部容器を備え、当該処理槽には、蓋部の取り付け、取り外しが行われる位置と、外部容器との間で処理槽を移動させる移動機構が設けられていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一つに記載の液処理装置。
【請求項7】
前記蓋部には、処理槽の開口を塞いで密閉する密閉位置と、この密閉位置から上方側に退避した開放位置との間で当該蓋部を昇降させる昇降機構が設けられていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一つに記載の液処理装置。
【請求項8】
上部には開口が形成されると共に、下部には流体の供給、排出が行われる下部ポートが設けられた処理槽に被処理基板を収容する工程と、
流体の供給、排出を行うための上部ポートが設けられた蓋部により、前記処理槽の開口を塞いで密閉する工程と、
前記密閉された処理槽内の気体と置換される液体を、前記下部ポートから供給する工程と、
前記処理槽内に、前記上部ポートから処理液を供給して前記液体と置換し、被処理基板を処理する工程と、
前記処理槽内に、前記上部ポートから乾燥防止用の液体を供給して前記処理液と置換する工程と、
前記乾燥防止用の液体が満たされた処理槽内を超臨界状態または亜臨界状態の高圧流体の雰囲気とする工程と、
前記高圧流体の雰囲気にされた処理槽内を減圧して気体にして被処理基板を乾燥する工程と、を含むことを特徴とする液処理方法。
【請求項9】
前記上部ポートは、前記処理槽内に流体供給するための供給ポートと、この供給ポートよりも高い位置から当該処理槽内の流体を排出するための排出ポートとに分けて設けられ、
前記排出ポートを介して流体を排出しつつ、供給ポートから液体を供給することにより、前記蓋部の下面に溜まった気体を排出する工程を含むことを特徴とする請求項8に記載の液処理方法。
【請求項10】
密閉された処理槽内の気体を液体と置換した後に、前記上部ポートから流体が排出される系に液体を供給して、この系内に残存している気体を液体と置換する工程を含むことを特徴とする請求項8または9に記載の液処理方法。
【請求項11】
密閉された処理槽内の気体を液体と置換した後に、前記下部ポートから流体が排出される系に液体を供給して、この系内に残存している気体を液体と置換する工程を含むことを特徴とする請求項8ないし10のいずれか一つに記載の液処理方法。
【請求項12】
前記処理槽内の乾燥防止用液体を加熱して超臨界状態または亜臨界状態に状態変化させることにより、当該処理槽内を高圧流体の雰囲気とすることを特徴とする請求項8ないし11に記載の液処理方法。
【請求項13】
前記処理槽に接続された高圧流体形成部から高圧流体を供給することにより、当該処理槽内を高圧流体の雰囲気とすることを特徴とする請求項8ないし11に記載の液処理方法。
【請求項14】
前記処理槽内に乾燥防止用の液体を満たした後、前記蓋部を取り外し、当該処理槽を外部容器に搬入する工程を含み、この処理槽内を高圧流体雰囲気とする工程は、当該処理槽を外部容器に搬入してから行われることを特徴とする請求項8ないし13のいずれか一つに記載の液処理方法。
【請求項15】
処理液により被処理基板を処理する液処理装置に用いられるコンピュータプログラムを格納した記憶媒体であって、
前記プログラムは請求項8ないし14のいずれか一つに記載された液処理方法を実行するためにステップが組まれていることを特徴とする記憶媒体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2012−119391(P2012−119391A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265537(P2010−265537)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】