説明

液処理装置

【課題】複雑な機構を用いることなく液が基板の表面に到達することを阻止した状態で基板の裏面、または基板の裏面およびエッジ部を液処理することができる液処理装置を提供すること。
【解決手段】液処理装置100は、ウエハWを水平に保持し、ウエハWとともに回転可能なウエハ保持部2と、ウエハ保持部2をウエハWとともに回転させる回転機構3と、ウエハ保持部2に保持されたウエハWの裏面に液を供給する裏面側液供給ノズル6と、ウエハ保持部2に保持されたウエハWの周囲を囲繞するように設けられた排液カップ51と、ウエハ保持部2に保持されたウエハの外側に、裏面側液供給ノズル6からウエハ裏面に供給された液がウエハWの表面側に回り込むことを阻止するように環状に設けられ、ウエハWから振り切られた液を排液カップ51に導く仕切り部材35とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体ウエハ等の基板の裏面、または裏面およびエッジ部を液処理する液処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスやフラットパネルディスプレー(FPD)の製造プロセスにおいては、被処理基板である半導体ウエハやガラス基板に処理液を供給して液処理を行うプロセスが多用されている。このようなプロセスとしては、例えば、基板に付着したパーティクルやコンタミネーション等を除去する洗浄処理、フォトリソグラフィ工程におけるフォトレジスト液や現像液の塗布処理等を挙げることができる。
【0003】
このような液処理としては、半導体ウエハ等の基板を回転可能に保持し、基板を回転させた状態でウエハの裏面、または裏面およびエッジ部(ベベルまたは表面側エッジ部分)を処理液(薬液)にて処理するものがあるが、この場合、処理中に基板の表面を清浄な状態に保つ必要があり、そのために処理液が基板の表面に到達しないようにするための機構を用いている(例えば特許文献1)。
【0004】
しかしながら、このような機構は複雑なものとならざるを得ず、装置が高価で汎用性が低いものとなってしまう。
【特許文献1】特開2004−140345号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、複雑な機構を用いることなく液が基板の表面に到達することを阻止した状態で基板の裏面、または基板の裏面およびエッジ部を液処理することができる液処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、基板を水平に保持し、基板とともに回転可能な基板保持部と、前記基板保持部を基板とともに回転させる回転機構と、前記基板保持部に保持された基板の裏面に液を供給する裏面側液供給手段と、前記基板保持部に保持された基板の周囲を囲繞するように設けられた排液カップと、前記基板保持部に保持された基板の外側に、前記液供給手段から基板裏面に供給された液が基板の表面側に回り込むことを阻止するように環状に設けられ、基板から振り切られた液を前記排液カップに導く仕切り部材とを具備することを特徴とする液処理装置を提供する。
【0007】
本発明において、前記仕切り部材は、前記基板保持部および基板とともに回転するものとすることができる。この場合に、基板保持部材として基板を外方から機械的に保持するものを用いた場合でも、前記仕切り部材に前記基板保持部材を避けるように設けられた切り欠きを設けて、前記仕切り部材を前記基板保持部に保持された基板の外周に近接して設けることができる。
【0008】
また、前記仕切り部材は、基板の端面に対向する面が、その面と基板端面との間に毛細管現象により液が保持可能な形状を有しており、前記液供給手段から供給された液により基板の裏面および基板の端面を液処理可能に構成することができる。あるいは、前記仕切り部材は、基板の端面に対向する面が、その面と基板端面との間に液が保持されない形状を有しており、前記液供給手段から供給された液により基板の裏面のみを液処理可能に構成することもできる。
【0009】
さらに、前記排液カップの内側に前記基板保持部に保持された基板を囲繞するように設けられ、前記基板保持部および基板とともに回転し、基板を回転した際に基板から振り切られた液を受けて前記排液カップに導く回転カップをさらに具備してもよい。
【0010】
さらにまた、前記基板保持部に保持された基板の表面側エッジ部に液を供給する表面側液供給手段をさらに具備してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、前記基板保持部に保持された基板の外側に、前記液供給手段から基板裏面に供給された液が基板の表面側に回り込むことを阻止するように環状に設けられ、基板から振り切られた液を前記カップに導く仕切り部材を設けたので、複雑な機構を用いることなく、基板の表面に到達することを阻止した状態で基板の裏面、または基板の裏面およびエッジ部を液処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の実施形態について詳細に説明する。
まず、本発明を半導体ウエハ(以下、単にウエハと記す)の裏面およびベベルの洗浄を行う液処理装置に適用した第1の実施形態について示す。
【0013】
図1は本発明の第1の実施形態に係る液処理装置の概略構成を示す断面図、図2はその平面図、図3は図1の液供給機構を示す概略図、図4は図1の液処理装置の液吐出プレートを配置した部分を拡大して示す断面図、図5は図1の液処理装置の排気・排液部を拡大して示す断面図である。
【0014】
この液処理装置100は、ベースプレート1と、被処理基板であるウエハWを回転可能に保持するウエハ保持部2と、このウエハ保持部2を回転させる回転モータ3と、ウエハ保持部2に保持されたウエハWを囲繞するように設けられ、ウエハ保持部2とともに回転する回転カップ4と、ウエハWの裏面に処理液を供給する裏面側液供給ノズル6と、回転カップ4の周縁部に設けられた排気・排液部7とを有している。また、排気・排液部7の周囲およびウエハWの上方を覆うようにケーシング8が設けられている。ケーシング8の上部には液処理システムのファン・フィルター・ユニット(FFU)からの気流を側部に設けられた導入口9aを介して導入する気流導入部9が設けられており、ウエハ保持部2に保持されたウエハWに清浄空気のダウンフローが供給されるようになっている。
【0015】
ウエハ保持部2は、水平に設けられた円板状をなす回転プレート11と、その裏面の中心部に接続され、下方鉛直に延びる円筒状の回転軸12とを有している。回転プレート11の中心部には、回転軸12内の孔12aに連通する孔11aが形成されている。そして、中心部に垂直に裏面側液供給ノズル6が形成された昇降部材13が孔12aおよび孔11a内を昇降可能に設けられている。回転プレート11には、ウエハWの外縁を保持する保持部材14が設けられており、図2に示すように、これらは3つ等間隔で配置されている。この保持部材14は、ウエハWが回転プレート11から少し浮いた状態で水平にウエハWを保持するようになっている。この保持部材14はウエハWの端面を保持可能な保持部14aと、保持部14aから回転プレート裏面側中心方向に延材する着脱部14bと、保持部14aを垂直面内で回動させる回転軸14cとを有し、着脱部14bの先端部を図示しないシリンダ機構により上方に押し上げることにより、保持部14aが外側に回動してウエハWの保持が解除される。保持部材14は、図示しないバネ部材により保持部14aがウエハWを保持する方向に付勢されており、シリンダ機構を作動させない場合には保持部材14によりウエハWが保持された状態となる。
【0016】
回転軸12は、2つのベアリング15aを有する軸受け部材15を介してベースプレート1に回転可能に支持されている。回転軸12の下端部にはプーリー16が嵌め込まれており、プーリー16にはベルト17が巻き掛けられている。ベルト17はモータ3の軸に取り付けられたプーリー18にも巻き掛けられている。そして、モータ3を回転させることによりプーリー18、ベルト17およびプーリー16を介して回転軸12を回転するようになっている。
【0017】
裏面側液供給ノズル6は昇降部材13の中心に設けられており、その内部に長手方向に沿って延びるノズル孔6aが形成されている。図3に示すように、ノズル孔6aの下端には配管84が接続されている。そして、配管84は液供給機構85に接続されており、液供給機構85から配管84を介して裏面液供給ノズル6へ所定の液が供給される。
【0018】
液供給機構85は、洗浄処理またはエッチング処理のための薬液として、例えば酸薬液である希フッ酸(DHF)を供給するDHF供給源86、アルカリ薬液であるアンモニア過水(SC1)を供給するSC1供給源87、リンス液として例えば純水(DIW)を供給するDIW供給源88を有している。DHF供給源86、SC1供給源87、DIW供給源88からは配管89,90,91が延びており、これら配管89,90,91が配管84に開閉バルブ92,93,94を介して接続されている。したがって、開閉バルブ92,93,94を操作することにより、アンモニア過水(SC1)、希フッ酸(DHF)、純水(DIW)を選択的に裏面側液供給ノズル6に供給可能となっている。また、配管84の開閉バルブ94の下流側には開閉バルブ95が設けられており、この開閉バルブ95には排出ライン96が接続されている。この排出ライン96は、液の自重により、またはアスピレータ等の吸引によりノズル孔6a内の液を排出可能となっている。なお、DIW供給源88から延びる配管91が、配管84の最も上流側に接続されている。
【0019】
図4の拡大図にも示すように、昇降部材13の上端部には中央に裏面側液供給ノズル6のノズル孔6aに連続し、液を吐出するための液吐出口24aを有する液吐出プレート24を有している。液吐出プレート24の上面には、ウエハWを支持するための3本のウエハ支持ピン25(2本のみ図示)を有している。液吐出プレート24は、上に広がった円錐台状をなし、処理中には図示のように孔11a内に収容されて、その表面の高さが回転プレート11の表面の高さとほぼ一致するようになっている。孔11aは液吐出プレート24に対応するような円錐台状をなしている。回転プレート11と液吐出プレート24との間には隙間24bが形成されていて、回転軸12の下方から回転軸12と昇降部材13との間の隙間を通って供給されたNガスを隙間24bからウエハWの裏面側に吹き出すようになっている。これにより回転軸12の内部への液の侵入が防止される。
【0020】
昇降部材13の下端には接続部材26を介してシリンダ機構27が接続されており、このシリンダ機構27によって昇降部材13を昇降させることによりウエハWを昇降させてウエハWのローディングおよびアンローディングを行う。
【0021】
回転カップ4は、回転プレート11の端部上方から内側斜め上方に延びる円環状の庇部31と、庇部31の外端部から垂直下方へ延びる筒状の外側壁部32を有している。そして、図5の拡大図に示すように、外側壁部32と回転プレート11との間には円環状の隙間33が形成されており、この隙間33からウエハWが回転プレート11および回転カップ4とともに回転されて飛散した処理液やリンス液が下方に導かれる。
【0022】
庇部31と回転プレート11との間にはウエハWとほぼ同じ高さの位置に板状のリング状をなす仕切り部材35が介在されている。仕切り部材35と回転プレート11との間には、処理液やリンス液を通過させる開口37が形成されている。この開口37は、仕切り部材35と回転プレート11との間に周方向に沿って介装された複数のスペーサ部材(図示せず)により形成される。仕切り部材35の表面側には通常は液が流れないので処理液やリンス液を通過させる必要はないが、少量の液が流れ込む可能性もあるので、複数のスペーサ部材(図示せず)により開口36が形成されている。そして、庇部31と、仕切り部材35と、回転プレート11と、スペーサ部材とは、ねじ40によりねじ止めされている(図5参照)。したがって、仕切り部材35は、回転プレート11とともに回転される。
【0023】
仕切り部材35は、ウエハWと略連続するように設けられている。そして、モータ3によりウエハ保持部2および回転カップ4をウエハWとともに回転させて裏面側液供給ノズル6からウエハWの裏面の中心に液を供給した際に、液がウエハWの表面側へ回り込むことを阻止することができるようになっている。すなわち、裏面側液供給ノズル6からウエハWの裏面に供給された液は遠心力でウエハWの裏面を外方に向けて広がり、ウエハWの周縁から振り切られるが、略連続して仕切り部材35が設けられているため、液が表面側に回り込まずに仕切り部材35の裏面に案内されて開口37から外方へ排出され、外側壁部32によって下方へ導かれる。なお、図2に示すように、仕切り部材35のウエハ保持部材14に対応する位置にウエハ保持部材14を避けるように切り欠き部41が設けられており、仕切り部材35をウエハWに極力近接させることができる。
【0024】
仕切り部材35の内周面の構造を異ならせることにより、ウエハWの洗浄形態を調整することができる。すなわち、図6の(a)に示すように、仕切り部材35の内周面をウエハWのベベルBに対応する形状としてこれらをわずかに離間させた状態とすることによって、液が毛細管現象によりその隙間を上昇するため、ウエハWの裏面のみならずベベルBの洗浄も行える。これに対して図6の(b)に示すように、仕切り部材35の上面にテーパを形成することによって毛細管現象が生じないようにすれば、ウエハWの裏面のみを洗浄することができる。
【0025】
なお、仕切り部材35は裏面から振り切られた処理液を案内するので、ウエハWの周縁から脱離した処理液が乱流化し難く、処理液をミスト化させずに回転カップ4外へ導くことができる。
【0026】
排気・排液部7は、主に回転プレート11と回転カップ4に囲繞された空間から排出される気体および液体を回収するためのものであり、図5の拡大図にも示すように、回転カップ4から排出された処理液やリンス液を受ける環状をなす排液カップ51と、排液カップ51を収容するように排液カップ51と同心状の環状をなす排気カップ52とを備えている。
【0027】
図1および図5に示すように、排液カップ51は、回転カップ4の外側に、外側壁部32に近接して垂直に設けられた筒状をなす外周壁53と、外周壁53の下端部から内側に向かって延びる内側壁54とを有している。内側壁54の内周には内周壁54aが垂直に形成されている。これら外周壁53および内側壁54によって規定される環状の空間が回転カップ4から排出された処理液やリンス液を収容する液収容部56となっている。また、外周壁53の上端には、排液カップ51からの処理液の飛び出しを防止するために回転カップ4の上方部分に張り出した張り出し部53aが設けられている。液収容部56の保持部材14の外側に対応する位置には、内側壁54から回転プレート11の下面近傍まで延び、排液カップ51の周方向に沿って環状に設けられた仕切り壁55を有している。そして、液収容部56は、この仕切り壁55によって、隙間33から排出される液を受ける主カップ部56aと、保持部材14の保持部14a近傍部分から滴下される液を受ける副カップ部56bに分離されている。液収容部56の底面57は、仕切り壁55により主カップ部56aに対応する第1部分57aと、副カップ部56bに対応する第2部分57bとに分かれており、これらはいずれも外側から内側(回転中心側)に向かって上昇するように傾斜している。そして、第2部分57bの内側端は保持部材14の保持部14aよりも内側(回転中心側)に対応する位置に達している。仕切り壁55は、回転プレート11が回転した際に、保持部材14の回転プレート11の下方に突出した部分によって形成された気流がミストを随伴してウエハW側に到達することを阻止する役割を有している。仕切り壁55には、副カップ部56bから主カップ部56aに処理液を導くための孔58が形成されている(図1参照)。
【0028】
排液カップ51の内側壁54の最外側部分には液収容部56から排液する1箇所の排液口60が設けられており、排液口60には排液管61が接続されている(図1参照)。排液管61には排液切替部(図示せず)が設けられており、処理液の種類に応じて分別して回収または廃棄されるようになっている。なお、排液口60は複数箇所設けられていてもよい。
【0029】
排気カップ52は、排液カップ51の外周壁53の外側部分に垂直に設けられた外側壁64と、保持部材14の内側部分に垂直にかつその上端が回転プレート11に近接するように設けられた内側壁65と、ベースプレート1上に設けられた底壁66と、外側壁64から上方へ湾曲するとともに、回転カップ4の上方を覆うように設けられた上側壁67とを有している。そして、排気カップ52は、その上側壁67と回転カップ4の庇部31との間の環状をなす導入口68から回転カップ4内およびその周囲の主にガス成分を取り込んで排気するようになっている。また、排気カップ52の下部には、図1および図5に示すように、排気口70が設けられており、排気口70には排気管71が接続されている。排気管71の下流側には図示しない吸引機構が設けられており、回転カップ4の周囲を排気することが可能となっている。排気口70は複数設けられており、処理液の種類に応じて切り替えて使用することが可能となっている。
【0030】
排液カップ51の外側壁である外周壁53と排気カップ52の外側壁64との間には環状をなす外側環状空間99aが形成されており、また排液カップ51の底部と排気カップ52の底部との間の排気口70の外側部分には、周方向に沿って多数の通気孔98が形成された環状の気流調整部材97が設けられている。そして、外側環状空間99aと気流調整部材97は排気カップ52に取り入れられ、排気口70に至る気流を調整して均一に排気する機能を有している。すなわち、このように環状の空間である外側環状空間99aを通って気流を全周に亘って均一に下方へ導き、多数の通気孔98を形成した気流調整部材97を設けて圧力損失つまり気流の抵抗を与えるとともに気流を分散することにより、排気口70からの距離によらず比較的均一に排気を行うことができる。
【0031】
また、排液カップ51の内周壁54aと排気カップ52の内側壁65との間には環状をなす内側環状空間99bが形成されており、さらに、排液カップ51の内周側には排気カップ52との間の隙間77が形成されている。そして、導入口68から取り入れられた気体成分は、外側環状空間99aのみならず、排液カップ51の液収容部56にも多少流れ、その気流は液収容部56から内側環状空間99bを通って全周に亘って均一に下方に導かれ、隙間77を通って排気口70から比較的均一に排気を行うことができる。
【0032】
このように、排液カップ51からの排液と排気カップ52からの排気が独立して行われるようになっているので、排液と排気を分離した状態で導くことが可能となる。また、排液カップ51からミストが漏出しても排気カップ52がその周囲を囲繞しているので速やかに排気口70を介して排出され、ミストが外部に漏出することが確実に防止される。
【0033】
液処理装置100はマイクロプロセッサ(コンピュータ)からなるプロセスコントローラ121を有しており、液処理装置100の各構成部がこのプロセスコントローラ121に接続されて制御される構成となっている。また、プロセスコントローラ121には、工程管理者が液処理装置100の各構成部を管理するためにコマンドの入力操作などを行うキーボードや、液処理装置100の各構成部の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなるユーザーインターフェース122が接続されている。さらに、プロセスコントローラ121には、液処理装置100で実行される各種処理をプロセスコントローラ121の制御にて実現するための制御プログラムや、処理条件に応じて液処理装置100の各構成部に所定の処理を実行させるための制御プログラムすなわちレシピが格納された記憶部123が接続されている。レシピは記憶部123の中の記憶媒体に記憶されている。記憶媒体は、ハードディスクや半導体メモリであってもよいし、CDROM、DVD、フラッシュメモリ等の可搬性のものであってもよい。また、他の装置から、例えば専用回線を介してレシピを適宜伝送させるようにしてもよい。
【0034】
そして、必要に応じて、ユーザーインターフェース122からの指示等にて任意のレシピを記憶部123から呼び出してプロセスコントローラ121に実行させることで、プロセスコントローラ121の制御下で、液処理装置100での所望の処理が行われる。
【0035】
次に、以上のように構成される液処理装置100の動作について図7の模式図に基づいて説明する。本実施形態における以下の洗浄処理動作は、記憶部123に格納されたレシピに基づいてプロセスコントローラ121によって制御される。
【0036】
この洗浄処理においては、ウエハW裏面を処理液(薬液)で洗浄処理した後、純水でリンス処理を行う。
処理液(薬液)を用いた洗浄処理においては、まず、図7の(a)に示すように、昇降部材13を上昇させた状態で、図示しない搬送アームから液吐出プレート24の支持ピン25上にウエハWを受け渡す。次いで、図7の(b)に示すように、昇降部材13を、ウエハWを保持部材14により保持可能な位置まで下降させ、保持部材14によりウエハWをチャッキングする。そして、図7の(c)に示すように、モータ3によりウエハWを保持部材2および回転カップ4とともに回転させながら、裏面側液供給ノズル6から所定の処理液を供給してウエハ裏面の洗浄処理を行う。
【0037】
このとき、ウエハWが回転された状態で、裏面側液供給ノズル6からウエハWの表面および裏面の中央に処理液が供給され、処理液が遠心力によりウエハWの外側に広がり、その過程で洗浄処理がなされ、その後ウエハWの外方へ振り切られる。このとき仕切り部材35が存在しない場合には、ウエハWから振り切られた処理液がウエハWの表面側に回り込んでウエハWの表面を汚染するおそれがある。
【0038】
これに対して、本実施形態では、ウエハWの外側に略連続するように仕切り部材35を設けたので、図7の(d)に示すように、ウエハWから振り切られた処理液は、表面側に回り込まずに仕切り部材35の裏面に案内されて開口37から外方へ排出され、外側壁部32によって下方へ導かれる。このため、ウエハWの表面を汚染させずに清浄に保ったままウエハWの洗浄を行うことができる。また、ウエハWのベベルを洗浄する場合には、仕切り部材35の内周面の形状を上述の図6の(a)に示すようなベベルに対応する形状としてこれらをわずかに離間させた状態とすることにより毛細管現象によりこれらの隙間に処理液を満たすようにすることができ、ウエハWの裏面のみならずベベルの洗浄を行うこともできる。
【0039】
振り切られた後外側壁部32によって下方に導かれた処理液は、回転カップ4の隙間33および保持部14aを挿入する穴の部分から排液カップ51における液収容部56に排出され、その中を旋回しながら排液口60から排液管61を通って排出される。
【0040】
このようにして処理液による処理が行われた後、引き続きリンス処理が行われる。このリンス処理においては、従前の処理液の供給を停止した後、裏面側液供給ノズル6からウエハWの裏面にリンス液として純水を供給し、処理液による洗浄処理の場合と同様に、モータ3によりウエハWを保持部材2および回転カップ4とともに回転させながら、裏面側液供給ノズル6からウエハWの裏面の中央にリンス液として純水が供給され、遠心力によりウエハWの外方に広がる過程でウエハWのリンス処理がなされる。そして、このようにリンス処理に供された純水は、ウエハWの周縁から振り切られるが、この場合にも処理液と同様に、仕切り部材35により純水がウエハW表面側に回り込むことが阻止され、ウエハWの表面を汚染させずに清浄に保ったままウエハW裏面の洗浄を行うことができる。
【0041】
このようにして振り切られたリンス液としての純水は、処理液の場合と同様、回転カップ4の隙間33および保持部14aを挿入する穴の部分から排液カップ51における液収容部56に排出され、その中を旋回しながら排液口60から排液管61を通って排出される。
【0042】
以上のようなウエハ裏面の洗浄処理においては、ウエハWの外側を囲繞するように設けられているカップがウエハWとともに回転する回転カップ4であるから、ウエハWから振り切られた処理液が回転カップ4に当たった際に処理液に遠心力が作用し、固定カップの場合のような飛び散り(ミスト化)は発生し難い。
【0043】
また、排気カップ52には、その上側壁67と回転カップ4の庇部31との間の環状をなす導入口68から回転カップ4内およびその周囲の主にガス成分が取り込まれ排気口70から排気管71を通って排気される。
【0044】
さらに、回転カップ4が存在しているため、排液カップ51は排液可能な程度の極小さいものでよく、また、排液カップ51と排気カップ52がそれぞれ独立して設けられ、かつ排液および排気を別々に取り入れて排液口60および排気口70から別個に排出するので、排気・排液を分離するための特別の機構を設ける必要がない。また、排液カップ51が排気カップ52に収容された状態で設けられているので、排気・排液を別々に取り入れる構造でありながらスペースを小さくすることができ、結果的に装置のフットプリントを小さくすることができる。また、排液カップ51が排気カップ52に収容された状態であるので、処理液のミストが排液カップ51から漏出しても排気カップ52でトラップすることができ、装置外へ処理液のミストが飛散して悪影響を与えることを防止することができる。
【0045】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。上記第1の実施形態では、ウエハW裏面の洗浄、または裏面およびベベルの洗浄を行う場合について説明したが、本実施形態ではエッジ部としてベベルのみならずウエハW表面のエッジも洗浄する場合について説明する。
【0046】
図8は、本発明の第2の実施形態に係る液処理装置の概略構成を示す断面図である。図8に示す液処理装置は、ウエハW表面のエッジに液を供給するための表面側液供給ノズル5が設けられている以外は、図1と同様に構成されているので、図1と同じものには同じ符号を付して説明を省略する。
【0047】
表面側液供給ノズル5は、ウエハWの径方向に沿って形成された複数のノズル口22を有しており、ノズルアーム23に取り付けられている。ノズル口22はウエハWの径方向外側に傾斜しており、吐出された液がウエハWの周縁側に供給され、ウエハWの表面中央部側へは供給されないようになっている。
【0048】
このノズルアーム23はウエハWの径方向にリニアスキャン可能となっている。これにより、ウエハW表面のエッジ部分の所望の位置まで洗浄可能となっている。また、この表面側液供給ノズル5からの液によりウエハWのベベルも洗浄可能となっている。
【0049】
上記液供給機構85からは配管97がアーム23の流路(図示せず)に接続されており、液供給機構85から上記処理液および純水がこの流路を介して表面側液供給ノズル5のノズル口22から吐出可能となっている。
【0050】
この実施形態においては、ウエハWの裏面は第1の実施形態と同様に裏面側液供給ノズル6から液を供給することにより行われ、その際の液は仕切り部材35の存在によりウエハWの表面側に到達することが阻止される。そして、ウエハW表面のエッジおよびベベルを洗浄する際には表面側液供給ノズル5により洗浄の必要なエッジ部分のみ洗浄されて、ウエハ表面の中央部分には液が到達しない。このため、ウエハW表面の洗浄不要な中央部分を汚染させることなく清浄な状態に保ったまま、洗浄が必要なウエハ裏面およびベベルおよびウエハ表面のエッジの洗浄を行うことができる。
【0051】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々変形可能である。例えば、上記実施形態では本発明を洗浄処理に適用した場合について説明したが、他の液処理であってもよい。また、上記実施形態では被処理基板として半導体ウエハを用いた場合について示したが、液晶表示装置(LCD)用のガラス基板に代表されるフラットパネルディスプレイ(FPD)用の基板等、他の基板に適用可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、液処理、特に、半導体ウエハに付着したパーティクルやコンタミネーションを除去する洗浄処理に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る液処理装置の概略構成を示す断面図。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る液処理装置を一部切り欠いて示す概略平面図。
【図3】図1の液処理装置の液供給機構を示す概略図。
【図4】図1の液処理装置の液吐出プレートを配置した部分を拡大して示す断面図。
【図5】図1の液処理装置の排気・排液部を拡大して示す断面図。
【図6】図1の液処理装置に設けられた仕切り部材の形状例を示す図。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る液処理装置の処理動作を説明するための模式図。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る液処理装置の概略構成を示す断面図。
【符号の説明】
【0054】
1;ベースプレート
2;ウエハ保持部
3;回転モータ
4;回転カップ
5;表面側液供給ノズル
6;裏面側液供給ノズル
7;排気・排液部
8;ケーシング
9;気流導入部
11;回転プレート
11a;孔
12;回転軸
13;昇降部材
14;保持部材
24;液吐出プレート
35;仕切り部材
51;排液カップ
52;排気カップ
85;液供給機構
100;基板処理装置
121;プロセスコントローラ
122;ユーザーインターフェース
123;記憶部
W;半導体ウエハ(基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を水平に保持し、基板とともに回転可能な基板保持部と、
前記基板保持部を基板とともに回転させる回転機構と、
前記基板保持部に保持された基板の裏面に液を供給する裏面側液供給手段と、
前記基板保持部に保持された基板の周囲を囲繞するように設けられた排液カップと、
前記基板保持部に保持された基板の外側に、前記液供給手段から基板裏面に供給された液が基板の表面側に回り込むことを阻止するように環状に設けられ、基板から振り切られた液を前記排液カップに導く仕切り部材と
を具備することを特徴とする液処理装置。
【請求項2】
前記仕切り部材は、前記基板保持部および基板とともに回転することを特徴とする請求項1に記載の液処理装置。
【請求項3】
前記基板保持部は基板を外方から機械的に保持する基板保持部材を有し、前記仕切り部材は、前記基板保持部材を避けるように設けられた切り欠きを有して前記基板保持部に保持された基板の外周に近接して設けられていることを特徴とする請求項2に記載の液処理装置。
【請求項4】
前記仕切り部材は、基板の端面に対向する面が、その面と基板端面との間に毛細管現象により液が保持可能な形状を有しており、前記液供給手段から供給された液により基板の裏面および基板の端面を液処理可能に構成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の液処理装置。
【請求項5】
前記仕切り部材は、基板の端面に対向する面が、その面と基板端面との間に液が保持されない形状を有しており、前記液供給手段から供給された液により基板の裏面のみを液処理可能に構成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の液処理装置。
【請求項6】
前記排液カップの内側に前記基板保持部に保持された基板を囲繞するように設けられ、前記基板保持部および基板とともに回転し、基板を回転した際に基板から振り切られた液を受けて前記排液カップに導く回転カップをさらに具備することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の液処理装置。
【請求項7】
前記基板保持部に保持された基板の表面側エッジ部に液を供給する表面側液供給手段をさらに具備することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の液処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−117971(P2008−117971A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−300673(P2006−300673)
【出願日】平成18年11月6日(2006.11.6)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】