説明

液化ガス処理システム、この制御方法、これを備えた液化ガス運搬船およびこれを備えた液化ガス貯蔵設備

【課題】余剰とされたガス化した液化ガスの処理をコンパクトかつ効率的に処理することが可能な液化ガス処理システムを提供することを目的とする。
【解決手段】外気を圧縮する圧縮手段2、圧縮された外気がジャケット空気及び燃焼用空気として導かれて貯蔵槽から導かれたガス化した液化ガスと燃焼用空気とが燃焼する火炉3と火炉3を形成する火炉壁4の周囲を覆っておりジャケット空気が導かれるジャケット部5とを有する加圧型燃焼手段6、加圧型燃焼手段6から導出される燃焼ガスと熱交換して蒸気を発生する高圧側蒸気発生手段7、8、高圧側蒸気発生手段7、8において発生した蒸気が導かれる蒸気タービン9、圧縮手段2と同軸上に設けられて高圧側蒸気発生手段7、8から導かれる燃焼ガスによって駆動するガスタービン12とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化ガス処理システム、この制御方法、これを備えた液化ガス運搬船およびこれを備えた液化ガス貯蔵設備に関し、特に、余剰とされガス化した、液化ガスの処理に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、液化天然ガスや液化石油ガスといった液化ガスを液状態で貯蔵している貯蔵タンク(以下、「貨物タンク」という。)では、貨物タンク内に貯蔵されていた液化ガスが外部からの入熱により自然に気化した液化ガス(以下、「ボイルオフガス」という。)を再液化装置によって再液化したり、ボイルオフガスを原動機等の燃料として燃焼したりすることにより貨物タンク内の圧力の上昇を防止している。
【0003】
しかし、前述した再液化装置の不稼働や、原動機の燃料として用いる以上にボイルオフガスが発生した場合に備えて、この余剰のボイルオフガスを燃焼処理するガス燃焼ボイラやガス焼却炉が設けられている(例えば、特許文献1)。
【0004】
これらガス燃焼ボイラやガス焼却炉といったガス燃焼装置では、ボイルオフガスの全量を燃焼処理する場合と、再液化装置などから発生する少量のボイルオフガスを燃焼処理する場合がある。そのため、ガス燃焼装置の燃焼負荷範囲は、広くかつ貨物タンク内の圧力上昇防止手段としての高い信頼性が要求される。
【0005】
このようなガス燃焼ボイラやガス焼却炉では、ボイルオフガスをほぼ大気圧状態で燃焼空気と混合させたのちに、油による火種または電気スパークにより強制着火してボイルオフガスを燃焼させている。この燃焼により生じた燃焼ガスは、安全な不燃ガスとして煙突などにより外部に排気される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−1339号公報
【特許文献2】特開2006−200885号公報
【特許文献3】特開2007−23976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ガス燃焼ボイラやガス焼却炉から排出された燃焼ガスが導かれる煙道は、それを構成している配管材料の選定において高温耐性の点から燃焼ガスの温度が低いことが望まれる。ガス燃焼ボイラの場合には、しばしば用途として需要される蒸気を発生させるために、水(蒸気)との熱交換があり、それを適切に計画することにより、排出される燃焼ガスの温度は所定温度まで減温される。
【0008】
一方、ガス焼却炉の場合には、燃焼用空気に希釈用空気を混同させて空気過剰率(火炉に導かれる空気量と燃焼用空気量との比)を大きくして、煙道ガスの温度を抑制している。つまり、ガス焼却炉の場合には、ガス燃焼ボイラとは異なり燃焼後の熱交換による減温機構がないため、炉自体が大型化し、配置スペース確保が困難であるという問題があった。
【0009】
また、ガス燃焼ボイラ、ガス焼却炉ともに、ボイルオフガスを大気圧状態で燃焼させており、加圧燃焼に比較して火炎サイズが大きく、従って火炉も大きいものが要求されるため、これも装置自体の大型化の要因であった。
さらに、引用文献2には、ガス焼却炉装置の一部を構成しているバッファタンクの容積を低減することについて開示されているが、ガス化した液化ガスを燃焼するガス燃焼ボイラやガス焼却炉の火炉の小型化については開示されていない。
【0010】
また、特許文献3には、ガスタービン発電装置内を循環する燃焼料ガス(循環ガス)のエネルギを有効に利用することやエネルギの回収については開示されているが、熱回収ボイラの小型化については開示されていない。
【0011】
さらには、船舶の場合、通常は燃焼用空気および/または希釈用空気をガス燃焼ボイラまたはガス焼却炉の火炉に送り込む際に船内電力等によって給電される電動式空気ファンが用いられているため、船内電力供給の遮断によってガス燃焼装置の運転継続が不能になることも考えられ、ガス処理装置自体の信頼性に影響が及ぶこととなる。そのため、船舶に設けられる電力供給システムには、場合によっては過剰な冗長性の要求を考慮する必要があった。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、余剰とされたガス化した液化ガスの処理をコンパクト、かつ、効率的に処理することが可能な液化ガス処理システム、この制御方法、これを備えた液化ガス運搬船およびこれを備えた液化ガス貯蔵設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の液化ガス処理システム、この制御方法、これを備えた液化ガス運搬船およびこれを備えた液化ガス貯蔵設備は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明に係る液化ガス処理システムによれば、外気を圧縮する圧縮手段と、該圧縮手段によって圧縮された外気がジャケット空気及び燃焼用空気として導かれ、貯蔵槽から導かれたガス化した液化ガスと前記燃焼用空気とが燃焼する火炉と、該火炉を形成する火炉壁の周囲を覆っており前記ジャケット空気が導かれるジャケット部と、を有する加圧型燃焼手段と、該加圧型燃焼手段から導出される燃焼ガスと熱交換して蒸気を発生する高圧側蒸気発生手段と、該高圧側蒸気発生手段において発生した前記蒸気が導かれる蒸気タービンと、前記圧縮手段と同軸上に設けられて、前記高圧側蒸気発生手段から導かれる前記燃焼ガスによって回転するガスタービンと、を備えることを特徴とする。
【0014】
従来、液状の液化ガスを運搬する船舶や貯蔵設備等に搭載されている貯蔵槽内に貯蔵されている液状の液化ガスがガス化(ボイルオフ)した際には、ボイルオフガス(ガス化した液化ガス)を推進用原動機の燃料に用いたり、再液化して貯蔵槽に戻すことが行われている。このように、ボイルオフガスを推進用原動機の燃料に用いたり再液化したりすることができない場合や更なる余剰ガスが生じた場合には、ガス燃焼ボイラやガス燃焼炉を有している液化ガス処理システムへと導いて燃焼している。しかし、これらガス燃焼ボイラやガス燃焼炉は、大気圧燃焼のため火炎が大きくなり、それらの火炉自体が大型となる。そのため、液化ガス処理システムの小型化の要望があった。
【0015】
そこで、本発明では、加圧型燃焼手段を用いて、ガス化した液化ガスを燃焼することにより発生した燃焼ガスによって回転させられるガスタービンにより、同軸上に設けられる圧縮手段を駆動させ、圧縮された空気を、加圧型燃焼手段のジャケット空気及び燃焼用空気として加圧型燃焼手段へと導くこととした。これにより、加圧型燃焼手段の火炉自体を小型化することができる。さらに、本発明では、貯蔵槽内で発生したガス化した液化ガスを燃焼する燃焼条件として加圧燃焼を用いることができるので、大気圧燃焼のガス燃焼ボイラやガス燃焼炉を有する従来の液化ガス処理システムに比べて、煙道を通過する燃焼ガスの密度を高く、煙道サイズが抑えられるとともに燃焼ガスと熱交換する高圧側蒸気発生手段を、大気圧煙道ガスのものと比べて小型化することができる。したがって、液化ガス処理システムのコンパクト化を図ることができる。
【0016】
さらに、小型化された高圧側蒸気発生手段やジャケット空気によって火炉が覆われる加圧型燃焼手段を用いることによって、火炉からの放熱は空気で冷却され、火炉や煙道の断熱施工を軽減し、同部位からの放熱ロスを抑制することができる。
また、ガスタービンの駆動ガス入口には、高圧側蒸気発生手段を通過して減温された燃焼ガスが導かれる。そのため、ガスタービンを構成するタービンブレード等の高温に晒される部品の長寿命化が期待できる。
【0017】
さらに、本発明に係る液化ガス処理システムによれば、前記ジャケット空気は、ジャケット空気用熱交換手段を介して冷媒と熱交換して前記加圧型燃焼手段の前記ジャケット部へと導かれることを特徴とする。
【0018】
ジャケット空気用熱交換手段において冷媒(清水等、後述するタービン駆動蒸気系統の給水を利用することで、システム効率を向上させることができる)と熱交換させたジャケット空気を加圧型燃焼手段のジャケット部へと導くこととした。そのため、加圧型燃焼手段のジャケット部外面にはやけど防止等の目的で設ける断熱材は不要である。さらに、火炉内でガス化した液化ガスが燃焼する際に生じる火炎は、その放射熱により火炉を形成している火炉壁を加熱する。しかし、火炉壁の周囲を覆っているジャケット部には、ジャケット空気用熱交換手段において熱交換したジャケット空気が導かれる。そのため、ジャケット空気によって火炉壁を冷却して加圧型燃焼手段からの放熱ロスを軽減することができる。したがって、加圧型燃焼手段から導出された燃焼ガスが導かれる高圧側蒸気発生手段の熱交換効率を向上させることができる。
【0019】
さらに、本発明に係る液化ガス処理システムによれば、前記火炉壁は、前記ジャケット部に貫通する複数の通気孔を有することを特徴とする。
【0020】
火炉を形成している火炉壁には、複数の通気孔を設けることとした。これにより、ジャケット部に導かれたジャケット空気が火炉内に流れ込みながらジャケット自体の冷却を行い、燃焼専用用空気と混合してガス化した液化ガスの燃焼空気に用いることができる。また、燃焼用空気とジャケット空気の混合によっては燃焼ガス温度も抑制される。加圧型燃焼手段からガスタービンへと導かれる燃焼ガスの温度を減温することができるので、ガスタービンを構成しているタービンブレード等の高温に晒される部品の長寿命化が期待される。
【0021】
また、本発明に係る液化ガス処理システムによれば、前記圧縮手段と前記ガスタービンとを接続する前記軸には、発電手段および/または電動機が設けられることを特徴とする。
【0022】
ガスタービンと圧縮手段との間を接続する軸には、発電手段および/または電動機を設けることとした。これにより、燃焼ガスによって駆動されるガスタービンの動力が圧縮手段の所要動力よりも高い場合には、余剰動力を電力として回収することができる。
また、電動機として用いた場合には、軸を駆動させて圧縮手段を回転駆動させることによって、ガス化した液化ガスを圧縮して火炉に送風するための動力源とすることができる。したがって、外部からの給電が期待できない場合にも加圧燃焼の運用が可能となり、冗長性を向上させられる。
【0023】
また、本発明に係る液化ガス処理システムによれば、前記ガスタービンの下流には、該ガスタービンを駆動した前記燃焼ガスと熱交換して蒸気を発生させる低圧側蒸気発生手段を備え、前記蒸気タービンの入口には、前記高圧側蒸気発生手段において発生した蒸気が導かれ、前記蒸気タービンの中段部には、前記低圧側蒸気発生手段において発生した蒸気が導かれることを特徴とする。
【0024】
加圧型燃焼手段とガスタービンとの間に設けられる高圧側蒸気発生手段において発生した蒸気を蒸気タービンの入口に導き、ガスタービンの下流側に設けられる低圧側蒸気発生手段において発生した蒸気を蒸気タービンの中段部へと導くこととした。これにより、液化ガス処理システム全体における熱回収効率を向上させると共に、蒸気タービンのタービン効率を向上させることができる。
【0025】
また、本発明に係る液化ガス処理システムによれば、前記火炉へと導かれるガス化した前記液化ガスを加圧する加圧手段と、該加圧手段を駆動する加圧手段用電動機と、前記蒸気タービンに駆動されて発電する蒸気タービン駆動用発電手段と、を設けて、該蒸気タービン駆動用発電手段は、液化ガス処理システム全体の電力需要を賄うものであり、前記加圧型燃焼手段へと導かれるガス化した前記液化ガスの圧力が略大気圧の場合には、前記圧縮手段に設けられた前記発電手段の電力が、前記蒸気タービン駆動用発電手段の電力よりも優先的に前記加圧手段用電動機へと送電されることを特徴とする。
【0026】
加圧型燃焼手段へ導かれるガス化した液化ガスを加圧する加圧手段を駆動する加圧手段用電動機には、外気を圧縮する圧縮手段と同軸的に設けられた発電手段の電力を、蒸気タービン駆動用発電手段の電力よりも優先的に送電することとした。これにより、加圧手段の駆動を船内電力や設備内電力などの外部配電システムより送電することなく、外部配電システムから分離して給電することができる。したがって、従来よりも信頼性を向上させた燃焼手段とすることができ、液化ガス処理システムの信頼性も向上させることができる。
【0027】
また、本発明に係る液化ガス運搬船によれば、液化ガス運搬船におけるボイルオフガスを加圧型燃焼手段で燃焼して発生した燃焼ガスを、ガスタービンに供給して該ガスタービンを回転させ、該ガスタービンの回転軸に連結された圧縮手段を駆動し、該圧縮手段により圧縮された空気を、前記加圧型燃焼手段にジャケット空気および/または燃焼用空気として供給することを特徴とする。
【0028】
また、本発明に係る液化ガス貯蔵設備によれば、液化ガス貯蔵設備におけるボイルオフガスを加圧型燃焼手段で燃焼して発生した燃焼ガスを、ガスタービンに供給して該ガスタービンを回転させ、該ガスタービンの回転軸に連結された圧縮手段を駆動し、該圧縮手段により圧縮された空気を、前記加圧型燃焼手段にジャケット空気および/または燃焼用空気として供給することを特徴する。
【0029】
また、本発明に係る液化ガス処理システムの制御方法によれば、外気を圧縮する圧縮手段と、該圧縮手段によって圧縮された外気がジャケット空気及び燃焼用空気として導かれ、貯蔵槽から導かれたガス化した液化ガスと前記燃焼用空気とが燃焼する火炉と、該火炉を形成する火炉壁の周囲を覆っており前記ジャケット空気が導かれるジャケット部と、を有する加圧型燃焼手段と、該加圧型燃焼手段から導出される燃焼ガスと熱交換して蒸気を発生させる高圧側蒸気発生手段と、該高圧側蒸気発生手段において発生した蒸気が導かれる蒸気タービンと、前記圧縮手段と同軸上に設けられて、前記高圧側蒸気発生手段から導かれる前記燃焼ガスによって駆動するガスタービンと、を備え、前記加圧型燃焼手段から導出される前記燃焼ガスは、前記ガスタービンが前記圧縮手段を駆動するために必要な出力に応じた温度に制御されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明によると、加圧型燃焼手段を用いて、ガス化した液化ガスを燃焼することにより発生させた燃焼ガスによって駆動されるガスタービンと同軸上に設けられる圧縮手段により圧縮された外気を、加圧型燃焼手段のジャケット空気及び燃焼用空気として加圧型燃焼手段へと導くこととした。これにより、加圧型燃焼手段の火炉自体を小型化することができる。さらに、本発明では、貯蔵槽内でガス化した液化ガスを燃焼する燃焼手段として、加圧型燃焼手段を用いることとしたので、大気圧燃焼のガス燃焼ボイラやガス燃焼炉を有する従来の液化ガス処理システムに比べて、煙道を通過する燃焼ガスの密度を高くすることができる。そのため、燃焼ガスと熱交換する高圧側蒸気発生手段の出入口における差圧を大きくして、高圧側蒸気発生手段を従来に比べて小型化することができる。したがって、液化ガス処理システムのコンパクト化を図ることができる。
【0031】
さらに、小型化された高圧側蒸気発生手段やジャケット空気によって火炉が覆われる加圧型燃焼手段を用いることによって、液化ガス処理システム内の断熱施工部分を軽減して、高圧側蒸気発生手段や火炉からの放熱ロスを抑制することができる。
【0032】
また、ガスタービンの入口には、高圧側蒸気発生手段を通過することにより減温された燃焼ガスが導かれる。そのため、ガスタービンを構成するタービンブレード等の高温に晒される部品の長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態に係る液化天然ガス運搬船に搭載されている液化ガス処理システムの概略構成図である。
【図2】図1に示した液化ガス処理システムの燃焼ガスと蒸気との熱回収を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の実施形態に係る液化天然ガス運搬船の液化ガス処理システムについて図1に基づいて説明する。
図1には、本実施形態に係る液化天然ガス運搬船に搭載されている液化ガス処理システムの概略構成図が示されている。
図示しない液化天然ガス運搬船(液化ガス運搬船)には、液化天然ガス(液化ガス)を貯蔵している図示しない貨物タンク(貯蔵槽)内のボイルオフガス(ガス化した液化ガス)を燃焼する液化ガス処理システム1として、空気(外気)を吸引して圧縮する圧縮機(圧縮手段)2と、圧縮機2によって圧縮された空気が希釈用空気(ジャケット空気)および燃焼用空気として導かれて、貨物タンクから導かれたボイルオフガスと燃焼用空気とが燃焼する火炉3と、火炉3を形成している火炉壁4の周囲を覆っており希釈用空気が導かれるジャケット部5とを有している加圧型燃焼炉(加圧型燃焼手段)6と、加圧型燃焼炉6から導出された燃焼ガスと熱交換して高圧蒸気(蒸気)を発生する高圧過熱器(高圧側蒸気発生手段)7および高圧蒸発器(高圧側蒸気発生手段)8と、高圧蒸発器8および高圧過熱器7において発生または過熱された高圧蒸気が導かれる蒸気タービン9と、圧縮機2と同軸上に設けられており、高圧蒸発器8および高圧過熱器7を通過した燃焼ガスによって駆動されるガスタービン12とが主に設けられている。
【0035】
貨物タンクは、略大気圧近傍の圧力状態で、貨物である液状の液化天然ガスを貯蔵するものである。この貨物タンクへ外部からの入熱が生じることにより、自然に気化したボイルオフガスが生じることとなる。
【0036】
加圧型燃焼炉6は、圧縮機2によって圧縮された圧縮空気がエアダクト13内を経て燃焼用空気として導かれる加圧型の燃焼炉である。この加圧型燃焼炉6に導かれる燃焼用空気は、大気圧よりも高いものとされ、大気圧〜4気圧程度の圧力とされている。
【0037】
加圧型燃焼炉6は、火炉3と、火炉3の外周を覆うように設けられているジャケット部5とが略同心円状に形成されている略円筒形状とされている。火炉3とジャケット部5との間には火炉壁4が設けられており、火炉壁4には複数の通気孔(図示せず)が設けられている。これにより、火炉3とジャケット部5とは、連通状態とされている。
【0038】
火炉3の入口(図1において火炉3の底部)には、種火を生成するパイロット燃料式バーナー(図示せず)と、貨物タンクから導かれたボイルオフガスを噴射するメインバーナー(図示せず)とを有しているガスバーナーシステム6aが設けられている。パイロット燃料式バーナーには、例えば点火用の油が供給されて、種火を生成することが可能とされている。なお、パイロット燃料式バーナーには、液化天然ガス等のガス(ボイルオフガス)が供給されてもよく、また、パイロット燃料式バーナーの代わりにスパーク装置を設けるものとしても良い。
【0039】
加圧型燃焼炉6のジャケット部5には、エアダクト13から分岐された圧縮空気の一部が希釈用空気として導かれる。希釈用空気は、エアダクト13と加圧型燃焼炉6との間に設けられているエアクーラー(ジャケット空気用熱交換手段)14において、冷媒である清水(後述する蒸気コンデンサ16から導かれた水)と熱交換されて、例えば常温近傍にまで減温される。
【0040】
加圧型燃焼炉6の火炉3には、エアダクト13内の残りの圧縮空気が燃焼用空気として導かれる。この燃焼用空気は、加圧型燃焼炉6の入口近傍に設けられている開度制御弁(図示せず)により空気量が調整される。なお、開度制御弁の代わりに可変式のノズルなどを用いて空気量を調整しても良い。エアダクト13の中間部には、バックアップエアを導入するための逆止弁状の外気導入部13aが設けられている。
【0041】
加圧型燃焼炉6の下流に設けられている高圧過熱器7は、高圧蒸発器8および後述する給水加熱器(低圧側蒸気発生手段)15から導かれた高圧蒸気および混気蒸気を燃焼ガスと熱交換させるものである。
【0042】
高圧過熱器7の下流側に設けられている高圧蒸発器8は、給水加熱器15において加温された水と燃焼ガスとが熱交換して、高圧蒸気を発生するものである。
【0043】
蒸気タービン9は、その入口に高圧蒸発器8、高圧過熱器7の順に通過することにより過熱された高圧蒸気が導かれ、中段部に給水加熱器15、高圧過熱器7の順に通過することにより過熱された混気蒸気が導かれて混気(蒸気挿入混気)することにより駆動される混圧タービンである。蒸気タービン9を回転駆動した蒸気(排気)は蒸気コンデンサ16へと導かれて再凝縮される。この蒸気コンデンサ16としては、海水冷却方式の真空凝縮方式が好適であるが、大気圧凝縮でもよい。
【0044】
また、蒸気タービン9には、蒸気タービン9が回転駆動することにより発電する軸発電機(蒸気タービン駆動用発電手段)17が減速歯車18を介して設けられている。この軸発電機17により発電された電気は、外部配電システム(図示せず)とは異なる高圧電線22へと給電される。ここで、高圧電線22は、図1に示すように変圧器23を介して、後述する電動・発電機20から給電される中圧電線21に電気的に接続可能となっている。
【0045】
ガスタービン12は、高圧過熱器7および高圧蒸発器8において熱交換して温度が低下した燃焼ガスによって回転駆動される。ガスタービン12には、回転軸(軸)11が接続されており、その回転軸11の他端には圧縮機2が接続されている。そのため、燃焼ガスによってガスタービン12が回転駆動することにより、圧縮機2が空気を吸引して圧縮することとなる。
【0046】
また、回転軸11上には、減速機19を介して電動・発電機(発電手段および/または電動機)20が設けられている。この電動・発電機20は、ガスタービン12が駆動された際には発電機となって発電し、液化ガス処理システム1を起動する際には逆給電されることによって電動機となり、回転軸11を駆動して圧縮機2を回転駆動する。なお、ガスタービン12を介して電動・発電機20が発電した電力は、図1に示すように中圧電線21へと給電される。尚、減速機19を介さず、電動・発電機(発電手段および/または電動機)20を回転軸11と一体型とすることにより、減速機構をなくす発電手段としてもよい。
【0047】
ガスタービン12の下流側に設けられている給水加熱器15には、前述した蒸気コンデンサ16において凝縮された水(給水)が導かれる。給水加熱器15には、それを構成しているチューブ(図示せず)に耐食性のフィンチューブが用いられることが望ましい。これにより、給水加熱器15出口における燃焼ガスの温度低下によって、腐食性凝縮水が析出した場合であってもチューブの腐食を防止することができる。
【0048】
蒸気コンデンサ16から給水加熱器15の最下流側に導かれた水は、ガスタービン12から排出された燃焼ガスと熱交換して加温されて脱気器などの給水加熱器(図示せず)へと導かれる。脱気器は、給水加熱器15により加温された水中に溶け込んでいる酸素や非凝縮性ガスを取り除いて腐食が生じない様に水質管理を行うものである。この脱気器により酸素や非凝縮性ガスが取り除かれた加温された水は、給水加熱器15の最上流側である混合蒸発器15aと、混気蒸発器15aと給水加熱器15の最下流側との間に設けられている低圧蒸発器15bと、高圧蒸発器8へと導かれる。
【0049】
混気蒸発器15aに導かれた水は、給水加熱器15の最上流側に導かれた燃焼ガスと熱交換して混気蒸気とされる。低圧蒸発器15bに導かれた水は、混気蒸発器15aを通過して温度が低下した燃焼ガスと熱交換して低圧蒸気とされて船内の雑用蒸気として用いられる。また、高圧蒸発器8に導かれた給水は、高圧過熱器7を通過した燃焼ガスと熱交換して高圧蒸気とされる。
【0050】
次に、液化ガス処理システム1の流れと制御方法について、図1および図2を用いて説明する。図2には、図1に示す液化ガス処理システム1における燃焼ガスと蒸気との熱回収のグラフが示されており、縦軸は、燃焼ガスまたは蒸気の温度[K]を示し、横軸は蒸気回収熱交換内熱負荷[kW]を示している。
【0051】
図1に示すように、圧縮機2が駆動することによって、圧縮機2が空気を吸引・圧縮する。圧縮機2によって圧縮された圧縮空気は、その圧力が例えば2〜4Barとされ、温度が上昇して例えば150℃とされる(図1の(E)および図2中のE点)。温度が上昇した圧縮空気は、エアダクト13へと導かれる。エアダクト13に導かれた圧縮空気は、その一部が希釈用空気として分岐されてエアクーラー14へと導かれる。
【0052】
エアクーラー14に導かれた高温の希釈用空気は、蒸気コンデンサ16から導かれた水(給水)と熱交換して常温近くまで減温することができる(図1の(F)および図2中のF点)。減温した希釈用空気は、加圧型燃焼炉6のジャケット部5へと導く。エアダクト13に導かれた残りの高温の圧縮空気は、燃焼用空気として加圧型燃焼炉6の火炉3へと供給する。
【0053】
火炉3には、火炉3の入口に設けられているパイロット燃料式バーナーによって火種が形成されている。また、本実施形態では、貨物タンク内に生じたボイルオフガスが略大気圧付近の圧力であるため、中圧電線21から給電された燃料ガス昇圧ポンプ用電動機(加圧手段用電動機)26によって駆動される燃料ガス昇圧ポンプ(加圧手段)24によってボイルオフガスを昇圧(加圧)して火炉3に供給する。この昇圧されたボイルオフガスとエアダクト13から供給された燃焼用空気とが火炉3に供給されて、燃焼することにより火炎が形成される。
【0054】
火炎が形成されている火炉3内には、その火炉壁4に設けられている通気孔からジャケット部5に導かれた減温された希釈用空気が流れ込む。これにより、火炉3内では、燃焼用空気と希釈用空気とが混合して燃焼用空気の温度が減温される。なお、燃焼用空気に混合される希釈用空気の流量は、ガスタービン12や高圧過熱器7、高圧蒸発器8、給水加熱器15、蒸気タービン9における動力回収割合によって決める。
【0055】
この際、火炉3内に供給される燃焼用空気は、火炉3の入口に設けられている開度制御弁によって、希釈用空気よりも圧力が低くなるように所要差圧(希釈用空気の圧力と燃焼用空気の圧力との差)を調整しなければならない。これによって、ジャケット部5から火炉壁4の通気孔を経て火炉3内へと流れ込む希釈用空気の流れ込みが阻害されないようになっている。
【0056】
このような加圧型燃焼炉6は、火炉3と加圧型燃焼炉6の外壁6bとの間にジャケット部5を有しているので、火炉3内の火炎の放射熱(または放射光)が外壁6bに直接伝熱して外壁6bが加熱されることを抑制することができる。また、火炉3を覆っている火炉壁4は火炎の放射熱により加熱されるが、ジャケット部5には減温された希釈用空気が導かれるため、この冷却熱により火炉壁4が冷却される。このように、火炉壁4は、火炎の放射熱が外壁6bに直接伝熱して外壁6bを加熱するのを抑制することができるように、孔形状、また通気孔の数が決定され、その温度に適した材料を選定する。
【0057】
加圧型燃焼炉6で生成された燃焼ガスは、希釈用空気が混合した燃焼用空気とボイルオフガスとが燃焼することによって、例えば約860℃とされる(図1の(A)および図2中の点線のA点)。この燃焼ガスは、火炉3から排出されて高圧過熱器7へと導かれる。
【0058】
高圧過熱器7に導かれた燃焼ガスは、高圧蒸発器8から導かれた高圧蒸気(図1の(J)および図2中のJ点)、給水加熱器15の混気蒸発器15aから導かれた混気蒸気(図1の(K)および図2中のK点)の順に熱交換して、それぞれを過熱された高圧蒸気または混気蒸気とする。高圧蒸気および混気蒸気と熱交換して減温された燃焼ガスは、高圧過熱器7から排出されて高圧蒸発器8へと導かれる。高圧蒸発器8に導かれた燃焼ガスは、給水加熱器15から脱気器を経て加温された水と熱交換して高圧蒸気を発生する。
【0059】
加圧型燃焼炉6から導出された燃焼ガスは、高圧過熱器7および高圧蒸発器8を通過することによって、図2中の点線で示すようにその温度が例えば約420℃まで低下する(図1の(B)および図2中の点線のB点)と共に減圧される。なお、高圧過熱器7および高圧蒸発器8を通過した燃焼ガスの減温の程度は、ガスタービン12に回転軸11を介して接続されている過給機2が空気を圧縮するために必要な動力をガスタービン12が出力することが可能な範囲とされている。
【0060】
ここで、加圧型燃焼炉6から導出された燃焼ガスは、従来の燃焼炉(図示せず)から導出される燃焼ガスに比べて、燃焼ガスの密度が高く高圧となっている。これにより、この燃焼ガスが通過する高圧過熱器7および高圧蒸発器8では、それらの出入口における燃焼ガスの差圧を大きくすることができる。そのため、高圧過熱器7や高圧蒸発器8を小型化することができる。なお、燃焼ガスが通過する高圧過熱器7および高圧蒸発器8は、その外周25が防熱施工されている。
【0061】
高圧過熱器7および高圧蒸発器8を通過して減温された燃焼ガスは、ガスタービン12へと導かれる。ガスタービン12に導かれた燃焼ガスは、ガスタービン12に設けられているタービンブレード(図示せず)に作用してガスタービン12を回転駆動する。燃焼ガスが導かれることによって回転駆動したガスタービン12によって、回転軸11が回転駆動する。回転軸11が回転駆動することによって、回転軸11の他端に設けられている圧縮機2が駆動して、空気を吸引・圧縮することとなる。さらに、回転軸11上には、減速機19を介して電動・発電機20が接続されているので、回転軸11が回転駆動することにより、電動・発電機20が発電する。
【0062】
ガスタービン12を回転駆動した燃焼ガス(図1の(C)および図2中のC点)は、その出口温度が例えば130℃以上、好ましくは200℃以上とされてガスタービン12から導出される。このように、ガスタービン12の出口温度を130〜160℃以上にすることによって、高圧過熱器7および高圧蒸発器8を通過して低温化した燃焼ガスの結露によって生じる酸性水腐食を防いで、ガスタービン12を保護する必要がある。
【0063】
ガスタービン12から給水加熱器15に導かれた燃焼ガスは、給水加熱器15の混気蒸発器15a、低圧蒸発器15bの順に通過して、蒸気コンデンサ16から導かれた水を加温(図2中のM)した後、図示しない煙突等から液化ガス処理システム1外へと排出される。なお、給水加熱器15から排気される燃焼ガスの排気温度としては100℃以下(図1の(D)および図2中のD点)であることが望ましい。これにより、液化ガス処理システム1の総合熱効率を上げることができる。
【0064】
一方、燃焼ガスによって加温された水(図1の(M)および図2中のM点)は、図示しない脱気器を経て高圧蒸発器8または給水加熱器15の混気蒸発器15aまたは低圧蒸発器15bに導かれる。給水加熱器15の混気蒸発器15aに導かれた加温された水は、燃焼ガスと熱交換して混気蒸気(図1の(K)および図2中のK点)とされ、高圧過熱器7へと導かれる。高圧過熱器7へと導かれた混気蒸気は、ここで燃焼ガスと熱交換して過熱され(図1の(H)および図2中のH点)、蒸気タービン9の中段部へと導かれる。
【0065】
また、蒸気タービン9の入口には、脱気器から高圧蒸発器8を経て高圧過熱器7により過熱された高圧蒸気が導かれる(図1の(G)および図2中のG点)。これら過熱された高圧蒸気と混気蒸気とによって、蒸気タービン9が回転し、軸発電機17を駆動する。
【0066】
なお、給水加熱器15の低圧蒸発器15bに導かれた加温された水は、燃焼ガスと熱交換して(図1の(L)および図2中のL点)、低圧蒸気とされて船内に供給する雑用蒸気とされる。
【0067】
以上の通り、本実施形態に係る液化ガス処理システム1、この制御方法及びこれを備えている液化天然ガス運搬船によれば、以下の作用効果を奏する。
加圧型燃焼炉(加圧型燃焼手段)6を用いて、ボイルオフガス(ガス化した液化天然ガス(液化ガス))を燃焼することにより発生させた燃焼ガスによって駆動されるガスタービン12と同軸上に設けられている圧縮機(圧縮手段)2により圧縮された空気(外気)を、希釈用空気(ジャケット空気)及び燃焼用空気として加圧型燃焼炉6へと導くこととした。これにより、加圧型燃焼炉6の火炉3自体を小型化することができる。さらに、貨物タンク(貯蔵槽)内で発生したボイルオフガスを燃焼する燃焼手段として、加圧型燃焼炉6を用いることとしたので、大気圧燃焼のガス燃焼ボイラ(図示せず)やガス燃焼炉(図示せず)を有する従来の液化ガス処理システム(図示せず)に比べて、高圧過熱器(蒸気発生手段)7および高圧蒸発器(蒸気発生手段)8を通過する燃焼ガスの密度を高くすることができる。これにより、高圧蒸発器8および高圧過熱器7は大気圧燃焼ガスの熱交換器に比べて小型化することができる。したがって、液化ガス処理システム1の小型化を図ることができる。
【0068】
さらに、小型化された高圧蒸発器8および高圧過熱器7や、希釈用空気が導かれるジャケット部5により火炉3が覆われている加圧型燃焼炉6を用いることによって、液化ガス処理システム1内の断熱施工部分を軽減して、高圧蒸発器8および高圧過熱器7の外周25や火炉3からの放熱ロスを抑制することができる。
【0069】
また、ガスタービン12の入口には、高圧蒸発器8および高圧過熱器7を通過することにより減温された燃焼ガスが導かれる。そのため、ガスタービン12を構成し、高温に晒される部品の長寿命化を図ることができる。
【0070】
エアクーラー(ジャケット空気用熱交換手段)14において蒸気コンデンサ16から導かれた給水(冷媒)と熱交換させた希釈用空気を加圧型燃焼炉6のジャケット部5へと導くこととした。そのため、加圧型燃焼炉6のジャケット部5の外壁6bに設ける断熱材が不要となる。さらに、火炉3内でボイルオフガスが燃焼する際に生じる火炎は、その放射熱により火炉3を形成している火炉壁4を加熱する。しかし、火炉壁4の周囲を覆っているジャケット部5には、エアクーラー14において熱交換して温度の低下した希釈用空気が導かれる。そのため、火炉壁4を希釈用空気によって冷却して加圧型燃焼炉6からの放熱ロスを軽減することができる。したがって、加圧型燃焼炉6から導出された燃焼ガスが導かれる高圧蒸発器8および高圧過熱器7の熱交換効率を向上させることができる。
【0071】
火炉3を形成している火炉壁4には、複数の通気孔(図示せず)を設けることとした。これにより、ジャケット部5に導かれた希釈用空気が火炉3内に流れ込み、燃焼用空気に加えて希釈用空気もボイルオフガスとの燃焼に用いることができる。そのため、燃焼用空気と、エアクーラー14において熱交換して温度の低下した希釈用空気とを混合させて、生成する燃焼ガスの温度を低くすることができる。加圧型燃焼炉6からガスタービン12へと導かれる燃焼ガスの温度を減温することができるので、ガスタービン12を構成しているタービンブレード(図示せず)等の高温に晒される部品の長寿命化を図ることができる。
【0072】
ガスタービン12と圧縮機2との間を接続している回転軸11には、電動・発電機(発電手段および/または電動機)20を設けることとした。これにより、燃焼ガスによって駆動されるガスタービン12の動力が圧縮機2の所要動力よりも高い場合には、余剰動力を電力として回収して中圧電線21へと給電することができる。
【0073】
また、電動・発電機20を電動機として用いた場合には、回転軸11を駆動させて圧縮機2を回転駆動させることによって、加圧型燃焼炉6を起動する際に必要な起動用空気を圧縮機2により圧縮して送風することができる。したがって、加圧型燃焼炉6を起動する際の起動用空気用の電動ファン(図示せず)などの設備が不要となる。
【0074】
加圧型燃焼炉6とガスタービン12との間に設けられている高圧蒸発器8において発生した高圧蒸気を高圧過熱器7によって過熱して蒸気タービン9の入口に導き、ガスタービン12の下流側に設けられている給水加熱器(低圧側蒸気発生手段)15の混気蒸発器15aにおいて発生した混気蒸気を高圧蒸発器8により過熱して蒸気タービン9の中段部へと導くこととした。これにより、液化ガス処理システム1全体における熱回収効率を向上させると共に、蒸気タービン9のタービン効率を向上させることができる。
【0075】
加圧型燃焼炉6へ導かれるボイルオフガスを昇圧(加圧)する燃料ガス昇圧ポンプ(加圧手段)24を駆動する燃料ガス昇圧ポンプ用電動機(加圧手段用電動機)26には、ガスタービン20が駆動することにより発電する軸発電機(蒸気タービン駆動用発電手段)17から高圧電線22、変圧器23を介して送電することとした。そのため、燃料ガス昇圧ポンプ24の駆動を蒸気タービン9に接続されている軸発電機17からの電力によって送電し、外部配電システム(図示せず)から分離して給電することができる。したがって、従来よりも信頼性を向上させた加圧型燃焼炉6とすることができ、液化ガス処理システム1の信頼性も向上させることができる。
【0076】
なお、本実施形態では、蒸気タービン9を混気タービンとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、低圧タービンと高圧タービンとを同軸上に配置するものであっても良い。
また、蒸気タービン9には高圧および混気蒸気の2系統が導かれるものとして説明したが、高圧蒸発器8および高圧過熱器7から蒸気タービン9へと蒸気が導かれる1系統のみ、または2系統以上としても良い。
【0077】
さらに、本発明に係る液化ガス処理システム1は、液化天然ガス運搬船にのみに適用されるものではなく、液化天然ガスを貯蔵する液化天然ガス貯蔵設備(図示せず)にも適用可能である。
【0078】
また、液化ガスとして液化天然ガスを用いて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、液化ガスとして、液化石油ガス(LPG)やエタン、エチレン、アンモニアやそれらの混合物であってもよい。
【0079】
さらに、貨物タンク側に設けられている貨物コンプレッサー(図示せず)等により加圧型燃焼炉6に供給されるボイルオフガスの元圧が確保されている場合には、貨物タンクから貨物コンプレッサーにより導出されるボイルオフガスの圧力の方が火炉3内圧力よりも通常は高いものとされている。そのため、この場合には、燃料ガス昇圧ポンプ24にてボイルオフガスを昇圧することなく、単に減圧してボイルオフガスを火炉3内に供給するものとしても良い。
【符号の説明】
【0080】
1 液化ガス処理システム
2 圧縮手段(圧縮機)
3 火炉
4 火炉壁
5 ジャケット部
6 加圧型燃焼手段(加圧型燃焼炉)
7 高圧側蒸気発生手段(高圧過熱器)
8 高圧側蒸気発生手段(高圧蒸発器)
9 蒸気タービン
11 軸(回転軸)
12 ガスタービン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気を圧縮する圧縮手段と、
該圧縮手段によって圧縮された外気がジャケット空気及び燃焼用空気として導かれ、貯蔵槽から導かれたガス化した液化ガスと前記燃焼用空気とが燃焼する火炉と、該火炉を形成する火炉壁の周囲を覆っており前記ジャケット空気が導かれるジャケット部と、を有する加圧型燃焼手段と、
該加圧型燃焼手段から導出される燃焼ガスと熱交換して蒸気を発生する高圧側蒸気発生手段と、
該高圧側蒸気発生手段において発生した前記蒸気が導かれる蒸気タービンと、
前記圧縮手段と同軸上に設けられて、前記高圧側蒸気発生手段から導かれる前記燃焼ガスによって回転するガスタービンと、
を備えることを特徴とする液化ガス処理システム。
【請求項2】
前記ジャケット空気は、ジャケット空気用熱交換手段を介して冷媒と熱交換して前記加圧型燃焼手段の前記ジャケット部へと導かれることを特徴とする請求項1に記載の液化ガス処理システム。
【請求項3】
前記火炉壁は、前記ジャケット部に貫通する複数の通気孔を有することを特徴とする請求項2に記載の液化ガス処理システム。
【請求項4】
前記圧縮手段と前記ガスタービンとを接続する前記軸には、発電手段および/または電動機が設けられることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の液化ガス処理システム。
【請求項5】
前記ガスタービンの下流には、該ガスタービンを駆動した前記燃焼ガスと熱交換して蒸気を発生させる低圧側蒸気発生手段を備え、
前記蒸気タービンの入口には、前記高圧側蒸気発生手段において発生した蒸気が導かれ、前記蒸気タービンの中段部には、前記低圧側蒸気発生手段において発生した蒸気が導かれることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の液化ガス処理システム。
【請求項6】
前記火炉へと導かれるガス化した前記液化ガスを加圧する加圧手段と、
該加圧手段を駆動する加圧手段用電動機と、
前記蒸気タービンに駆動されて発電する蒸気タービン駆動用発電手段と、を設けて、
該蒸気タービン駆動用発電手段は、液化ガス処理システム全体の電力需要を賄うものであり、
前記加圧型燃焼手段へと導かれるガス化した前記液化ガスの圧力が略大気圧の場合には、前記圧縮手段に設けられた前記発電手段の電力が、前記蒸気タービン駆動用発電手段の電力よりも優先的に前記加圧手段用電動機へと送電されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の液化ガス処理システム。
【請求項7】
液化ガス運搬船におけるボイルオフガスを加圧型燃焼手段で燃焼して発生した燃焼ガスを、ガスタービンに供給して該ガスタービンを回転させ、該ガスタービンの回転軸に連結された圧縮手段を駆動し、該圧縮手段により圧縮された空気を、前記加圧型燃焼手段にジャケット空気および/または燃焼用空気として供給することを特徴とする液化ガス運搬船。
【請求項8】
液化ガス貯蔵設備におけるボイルオフガスを加圧型燃焼手段で燃焼して発生した燃焼ガスを、ガスタービンに供給して該ガスタービンを回転させ、該ガスタービンの回転軸に連結された圧縮手段を駆動し、該圧縮手段により圧縮された空気を、前記加圧型燃焼手段にジャケット空気および/または燃焼用空気として供給することを特徴する液化ガス貯蔵設備。
【請求項9】
外気を圧縮する圧縮手段と、
該圧縮手段によって圧縮された外気がジャケット空気及び燃焼用空気として導かれ、貯蔵槽から導かれたガス化した液化ガスと前記燃焼用空気とが燃焼する火炉と、該火炉を形成する火炉壁の周囲を覆っており前記ジャケット空気が導かれるジャケット部と、を有する加圧型燃焼手段と、
該加圧型燃焼手段から導出される燃焼ガスと熱交換して蒸気を発生させる高圧側蒸気発生手段と、
該高圧側蒸気発生手段において発生した蒸気が導かれる蒸気タービンと、
前記圧縮手段と同軸上に設けられて、前記高圧側蒸気発生手段から導かれる前記燃焼ガスによって駆動するガスタービンと、
を備え、
前記加圧型燃焼手段から導出される前記燃焼ガスは、前記ガスタービンが前記圧縮手段を駆動するために必要な出力に応じた温度に制御されることを特徴とする液化ガス処理システムの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−92053(P2013−92053A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232734(P2011−232734)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】