液圧ブレーキユニットと液圧ブレーキユニットの制御方法
【課題】迅速かつ容易に失陥有無を判断し、液圧媒体の漏れによる枯渇を抑制する液圧ブレーキユニットと液圧ブレーキユニットの制御方法とする。
【解決手段】リザーバから供給された液圧媒体を加圧し、ブレーキ操作量に応じた液圧を生成するマニュアル液圧供給部と、マニュアル液圧供給部と第一のホイールシリンダとの間を連通する第一液圧系統と、マニュアル液圧供給部と第二のホイールシリンダとの間を連通する第二液圧系統と、第一液圧系統と第二液圧系統との間を連通する主流路に設けられた分離弁と、分離弁を開閉制御する分離弁制御部と、リザーバに貯留された液圧媒体が所定量より少ないか否かを検出する液圧媒体量検出部と、を有するブレーキECUとを備える液圧ブレーキユニットであって、分離弁制御部は、液圧媒体量検出部が、液圧媒体が所定量より少ないことを検出した場合に、分離弁を閉状態とする液圧ブレーキユニットとする。
【解決手段】リザーバから供給された液圧媒体を加圧し、ブレーキ操作量に応じた液圧を生成するマニュアル液圧供給部と、マニュアル液圧供給部と第一のホイールシリンダとの間を連通する第一液圧系統と、マニュアル液圧供給部と第二のホイールシリンダとの間を連通する第二液圧系統と、第一液圧系統と第二液圧系統との間を連通する主流路に設けられた分離弁と、分離弁を開閉制御する分離弁制御部と、リザーバに貯留された液圧媒体が所定量より少ないか否かを検出する液圧媒体量検出部と、を有するブレーキECUとを備える液圧ブレーキユニットであって、分離弁制御部は、液圧媒体量検出部が、液圧媒体が所定量より少ないことを検出した場合に、分離弁を閉状態とする液圧ブレーキユニットとする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液圧ブレーキユニットと液圧ブレーキユニットの制御方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧系統内の油圧の供給や停止をアクチュエータにより電子制御して、各ホイールシリンダに供給する油圧を調整するブレーキ制御装置が知られている。このようなブレーキ制御装置は、動力液圧源としてアキュムレータを備えることもでき、ブレーキペダルからの操作に応じたマスタシリンダユニットからの油圧とともに、ホイールシリンダを動作させる動力源となる。
【0003】
また、ブレーキ制御装置は、適切な油圧系統の制御を行なうために複数の油圧センサを備えている。そして、油圧センサで検出した油圧に基づいて、油圧系統に設けられた制御弁を開閉して連通遮蔽することにより、油圧の伝達供給と遮断とを制御して油圧を所望の値に調整して供給する。
【0004】
また、油圧系統に何らかの失陥が生じ、失陥個所からブレーキフルードが漏れ出した場合には、所望の油圧を保持生成困難な状況も生じ得る。このような失陥状態を可能な限り回避し、油圧系統が所望の油圧を生成できず制動動作に大きな支障を来すことがないように様々な提案が為されている。
【0005】
例えば、下記特許文献1には、失陥の発生等によりブレーキ回生協調制御を行なわない場合の予備的な制御モードとして、ハイドロブースタモードを用いることが記載されている。また、ハイドロブースタモードでは、分離弁を閉状態とすることにより、第一の系統と第二の系統とを分離する。これにより、配管からの液漏れが仮に生じた場合においても、液漏れの生じていない系統により制動力を付与することを可能とすることが提案されている。
【0006】
また、下記特許文献2には、複数のブレーキシリンダと低圧源との間に設けられた複数の電磁減圧用制御弁の一部が、電磁リニア弁とされて、その減圧用の電磁リニア弁の制御により複数のブレーキシリンダの液圧が共通に制御されることが記載されている。そして、油圧センサで検出する液圧の関係に基づいて、液漏れが生じているか否かを判断することが提案されている。
【特許文献1】特開2007−131247号公報
【特許文献2】特開2006−264675号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、仮に液圧媒体に漏れが生じた場合に、速やかに液圧媒体の漏れによる枯渇を抑止させて、かつ制動動作への影響を低減させることについては改善の余地がある。
【0008】
本発明は、上述のような問題点に鑑み為されたものであり、迅速かつ容易に失陥有無を判断し、液圧媒体の漏れによる枯渇を抑制する液圧ブレーキユニットと液圧ブレーキユニットの制御方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある態様では、液圧媒体を貯留するリザーバから供給された液圧媒体を加圧し、運転者によるブレーキ操作量に応じた液圧を生成するマニュアル液圧供給部と、マニュアル液圧供給部で生成した液圧を第一のホイールシリンダへ伝達するように、マニュアル液圧供給部と第一のホイールシリンダとの間を連通する第一液圧系統と、マニュアル液圧供給部で生成した液圧を第二のホイールシリンダへ伝達するように、マニュアル液圧供給部と第二のホイールシリンダとの間を連通する第二液圧系統と、第一液圧系統と第二液圧系統との間を連通する主流路に設けられた分離弁と、分離弁を開閉制御する分離弁制御部と、リザーバに貯留された液圧媒体が所定量より少ないか否かを検出する液圧媒体量検出部と、を有するブレーキECUとを備える液圧ブレーキユニットであって、分離弁制御部は、液圧媒体量検出部が、液圧媒体が所定量より少ないことを検出した場合に、分離弁を閉状態とする液圧ブレーキユニットとする。
【0010】
また、本発明のある態様では好ましくは分離弁制御部が、液圧媒体量検出部が、液圧媒体が所定量より少ないことを検出した状態が低下検出所定時間継続した場合に、分離弁を閉状態とする液圧ブレーキユニットとしてもよい。
【0011】
また、本発明の他の態様では、第一液圧系統は液圧媒体を連通遮断する第一カット弁を備え、かつ第二液圧系統は液圧媒体を連通遮断する第二カット弁を備え、液圧媒体量検出部は、リザーバに貯留された液圧媒体の低下量を検出可能であって、ブレーキECUは、分離弁が閉状態である場合に、第一カット弁または第二カット弁のいずれかを閉状態として液圧媒体を遮断するカット弁制御部と、カット弁制御部が第一カット弁または第二カット弁のいずれかを閉状態とした場合に、液圧媒体量検出部が検出したリザーバに貯留された液圧媒体の低下量が、所定の低下量より大きいか否かにより、失陥の発生が第一液圧系統と第二液圧系統とのいずれであるのかを判断する失陥系統判断部を備える液圧ブレーキユニットとしてもよい。
【0012】
また、本発明の他の態様では、第一液圧系統は液圧媒体を連通遮断する第一カット弁を有し、第二液圧系統は液圧媒体を連通遮断する第二カット弁を有し、ブレーキECUは、分離弁が閉状態である場合に、第一カット弁または第二カット弁のいずれかを閉状態として液圧媒体を遮断するカット弁制御部と、リザーバの振動が所定の振動範囲内か否かを判断する振動判断部と、カット弁制御部が第一カット弁または第二カット弁のいずれかを閉状態とした場合かつ振動判断部がリザーバの振動が所定の振動範囲内であると判断した場合に、液圧媒体量検出部が液圧媒体が所定量より少ないと検出したか否かにより、失陥の発生が第一液圧系統と第二液圧系統とのいずれであるのかを判断する失陥系統判断部と、を備える液圧ブレーキユニットとしてもよい。
【0013】
また、本発明の他の態様では、好ましくはリザーバが、第一液圧系統に供給する液圧媒体を貯留する第一リザーバ部と、第二液圧系統に供給する液圧媒体を貯留し、かつ第一リザーバ部よりも容量が大きい第二リザーバ部と、を具備し、カット弁制御部は、分離弁が閉状態である場合に、第一液圧系統が備える第一カット弁を閉状態として液圧媒体を遮断する液圧ブレーキユニットとしてもよい。
【0014】
また、本発明の他の態様では、好ましくは失陥系統判断部が、液圧媒体量検出部が、所定時間内に所定回数より多く、液圧媒体が所定量より少ないことの検出と非検出とを繰り返したか否かを判断する信頼性確認部を備え、カット弁制御部が第一カット弁または第二カット弁のいずれかを閉状態とした場合かつ振動判断部がリザーバの振動が所定の振動範囲内であると判断した場合に、信頼性確認部が、液圧媒体量検出部が、所定時間内に所定回数より多く、液圧媒体が所定量より少ないことの検出と非検出とを繰り返したと判断すると、第一液圧系統または第二液圧系統のいずれか閉状態とした系統に失陥が生じていると判断する失陥系統判断部である液圧ブレーキユニットとしてもよい。
【0015】
また、本発明の他の態様では、さらに好ましくは失陥系統判断部が、第一液圧系統または第二液圧系統のいずれの系統に失陥が生じているかを判断した後、カット弁制御部は、失陥系統判断部が失陥が生じていると判断した系統を遮断状態とし、失陥系統判断部が失陥が生じていないと判断した系統を連通状態とするように、第一カット弁と第二カット弁とを制御する液圧ブレーキユニットとしてもよい。
【0016】
また、本発明の他の態様では、さらに好ましくは第一液圧系統または第二液圧系統が、各々の系統が備える第一カット弁または第二カット弁とマニュアル液圧供給部との間に、シミュレータカット弁を介して、運転者によるブレーキ踏力に応じた反力を創出するストロークシミュレータを備え、ブレーキECUは、シミュレータカット弁を開閉制御するシミュレータカット弁制御部を備え、失陥系統判断部が、第一液圧系統または第二液圧系統のいずれの系統に失陥が生じているかを判断した後、カット弁制御部は、失陥系統判断部が失陥が生じていると判断した系統を遮断状態とし、失陥系統判断部が失陥が生じていないと判断した系統を連通状態とするように、第一カット弁と第二カット弁とを開閉制御し、シミュレータカット弁制御部は、失陥系統判断部が失陥が生じていると判断した系統にシミュレータカット弁が備えられている場合には、シミュレータカット弁を開状態とし、失陥系統判断部が失陥が生じていないと判断した系統にシミュレータカット弁が備えられている場合には、シミュレータカット弁を閉状態とする液圧ブレーキユニットとしてもよい。
【0017】
また、本発明の他の態様では、さらに好ましくは液圧媒体量検出部が、液圧媒体が所定量より少ないことを検出した状態が低下検出所定時間継続した場合に、分離弁制御部が分離弁を閉状態とし、液圧媒体量検出部が、液圧媒体が所定量より少ないことを検出した状態が低下検出所定時間より長い所定のバックアップモード移行判断時間継続した場合に、ブレーキECUがマニュアル液圧供給部の液圧を、運転者のブレーキ操作の有無に依存せず、第一のホイールシリンダと第二のホイールシリンダとに伝達するバックアップモードに移行させるとともに、車両の運転者に失陥の発生を通知する液圧ブレーキユニットとしてもよい。
【0018】
また、本発明の他の態様では、さらに好ましくは第一のホイールシリンダまたは第二のホイールシリンダの少なくともいずれか一方に伝達される液圧を、運転者によるブレーキ操作有無とは独立に制御する自動制動制御部を備え、分離弁制御部が、分離弁を閉状態とする場合に、運転者によるブレーキ操作または自動制動制御による制動指示があると、分離弁制御部が、分離弁を開状態とし、ブレーキECUは、液圧媒体を動力的に加圧する動力液圧源から第一のホイールシリンダと第二のホイールシリンダとに液圧を伝達するリニア制御モードとする液圧ブレーキユニットとしてもよい。
【0019】
また、本発明のある態様では、液圧媒体を貯留するリザーバから供給された液圧媒体を加圧し、運転者によるブレーキ操作量に応じた液圧を生成するマニュアル液圧供給部と、マニュアル液圧供給部で生成した液圧を第一のホイールシリンダへ伝達するように、マニュアル液圧供給部と第一のホイールシリンダとの間を連通する第一液圧系統と、マニュアル液圧供給部で生成した液圧を第二のホイールシリンダへ伝達するように、マニュアル液圧供給部と第二のホイールシリンダとの間を連通する第二液圧系統と、第一液圧系統と第二液圧系統との間を連通する主流路に設けられた分離弁と、分離弁を開閉制御する分離弁制御部と、リザーバに貯留された液圧媒体が所定量より少ないか否かを検出する液圧媒体量検出部と、を有するブレーキECUと、を備える液圧ブレーキユニットの制御方法であって、液圧媒体量検出部が、液圧媒体が所定量より少ないことを検出する検出工程と、検出工程において、液圧媒体が所定量より少ないことが検出されると、分離弁制御部が、分離弁を閉状態とする工程とを有する液圧ブレーキユニットの制御方法とする。
【発明の効果】
【0020】
迅速かつ容易に失陥有無を判断し、液圧媒体の漏れによる枯渇を抑制する液圧ブレーキユニットと液圧ブレーキユニットの制御方法とを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(第一の実施形態)
本実施形態に示す液圧ブレーキユニットは、典型的にはリザーバタンクに貯留されたブレーキフルードの低下を検出する。そして、前輪側のホイールシリンダへのブレーキフルード供給路と後輪側のホイールシリンダへのブレーキフルード供給路とを連通する主流路を遮断する。
【0022】
これにより、前輪側のホイールシリンダ周辺の失陥により、ブレーキフルードの流出が生じたとしても、その流出は最大でも、前輪側へ供給するブレーキフルード対応分ですむので、リザーバタンク内のブレーキフルードが枯渇することを抑止できる。また、逆に、後輪側のホイールシリンダ周辺の失陥により、ブレーキフルードの流出が生じたとしても、その流出は最大でも、後輪側へ供給するブレーキフルード対応分ですむので、リザーバタンク内のブレーキフルードが枯渇することを抑止できる。
【0023】
従って、前輪側と後輪側とのいずれか一方の失陥によるブレーキフルードの流出が、失陥が生じていない側のブレーキフルードまで枯渇させないので、失陥が生じていない側のブレーキ効果を損なわない。
【0024】
そこで、以下図面に基づいて、第一の実施形態の液圧ブレーキユニットについて詳細に説明する。図1は、第一の実施形態にかかる液圧ブレーキユニット120の概略構成を概念的に示すブロック構成図である。液圧ブレーキユニット120は、例えばいわゆるECBRである。
【0025】
図1に示すように、液圧ブレーキユニット120は、リザーバ134に貯留されたブレーキフルードを、車両の運転者によるブレーキペダル124の踏み込み操作量に応じて、第一液圧系統161または/及び第二液圧系統162へと送出するマニュアル液圧供給部127を備える。
【0026】
また、第一液圧系統161は、マニュアル液圧供給部127から第一のホイールシリンダ123Fへブレーキフルードを供給するように、マニュアル液圧供給部127と第一のホイールシリンダ123Fとの間を連通している。また、第二液圧系統162は、マニュアル液圧供給部127から第二のホイールシリンダ123Rへブレーキフルードを供給するように、マニュアル液圧供給部127と第二のホイールシリンダ123Rとの間を連通している。
【0027】
また、液圧ブレーキユニット120は、第一液圧系統161と第二液圧系統162との間で、ブレーキフルードを供給可能なように連通する主流路145を備える。また、主流路145は、開閉動作により、主流路145を連通または遮断する分離弁160を具備する。
【0028】
また、液圧ブレーキユニット120はブレーキECU170により制御され、分離弁160は、ブレーキECU170が備える分離弁制御部110により開閉制御されるものとする。また、ブレーキECU170は、リザーバ134に貯留されているブレーキフルードの残量が所定の残量よりも少なくなったことを検出する液圧媒体量検出部111aを備える。
【0029】
次に、図2を用いて液圧ブレーキユニット120の動作処理の概要について説明する。図2は、液圧ブレーキユニット120の動作処理を概念的に説明するフロー図である。そこで、図2に示す各ステップごとに説明する。
【0030】
(ステップS21)
液圧ブレーキユニット120の液圧媒体量検出部111aは、リザーバ134に貯留されるブレーキフルードの液量が、所定量より少ないか否かを検出する。液圧媒体量検出部111aが、リザーバ134に貯留されるブレーキフルードの液量が、所定量より少ないことを検出すれば、ステップS22へと進む。また、液圧媒体量検出部111aが、リザーバ134に貯留されるブレーキフルードの液量が、所定量より少ないことを検出しなければ、ステップS21で待機する。
【0031】
なお、リザーバ134に貯留されるブレーキフルードの液量が、所定量より少ないという状態は、液圧ブレーキユニット120の失陥により、ブレーキフルードの漏れが生じているとの判断に対応する。
【0032】
(ステップS22)
ブレーキECU170の分離弁制御部110は、分離弁160を閉状態とする。分離弁制御部110のこのステップS22での動作により、第一液圧系統161と第二液圧系統162とが遮断されて、ブレーキフルードの枯渇を抑制できる。
【0033】
すなわち、ステップS21でブレーキフルードの漏れが生じていると判断されて、仮に第二のホイールシリンダ123Rの周辺での失陥に起因する漏れである場合には、リザーバ134内のブレーキフルードが、第一液圧系統161から分離弁160を介して主流路145を流れて、失陥部位から流出する状況を回避可能となる。
【0034】
従って、ブレーキフルードの枯渇を遅延させて、制動力を確保することが可能となる。また、リザーバ134のタンク内が第一液圧系統161に供給する側と、第二液圧系統162に供給する側とに分割されている場合には、失陥にかからない側のブレーキフルードの主流路145を介した流出を抑止できるので、好ましい。
【0035】
ここで、液圧ブレーキユニット120の液圧系統等の典型例について、図3を用いてさらに詳細に説明する。図3は、本発明の実施形態に係る液圧ブレーキユニット20を示す系統図である。図3に記載の液圧ブレーキユニット20は、図1に記載する液圧ブレーキユニット120に対応する。ただし、図3に示す液圧ブレーキユニット20は、他の実施形態での液圧ブレーキユニットの構成も含むような典型例として、図1に示す液圧ブレーキユニット120よりも詳細に説明するものとする。
【0036】
また、液圧ブレーキユニット20は、図3に示されるように、各車輪に対応して設けられたディスクブレーキユニット21FR、21FL、21RRおよび21RLと、マスタシリンダユニット27と、動力液圧源30と、液圧アクチュエータ40とを含む。以下、図3を用いて液圧ブレーキユニット20の構成について詳述する。なお、マスタシリンダユニット27は、マニュアル液圧供給部127に対応する。
【0037】
ディスクブレーキユニット21FR、21FL、21RRおよび21RLは、車両の右前輪、左前輪、右後輪、および左後輪のそれぞれに制動力を付与する。マニュアル液圧源としてのマスタシリンダユニット27は、ブレーキ操作部材としてのブレーキペダル24の運転者による操作量に応じて加圧されたブレーキフルードを、ディスクブレーキユニット21FR〜21RLに対して送出することが可能である。
【0038】
動力液圧源30は、動力の供給により加圧されたブレーキフルードを、運転者によるブレーキペダル24の操作から独立してディスクブレーキユニット21FR〜21RLに対して送出することが可能である。
【0039】
また、液圧アクチュエータ40は、動力液圧源30またはマスタシリンダユニット27から供給されたブレーキフルードの液圧を適宜調整してディスクブレーキユニット21FR〜21RLに送出する。
【0040】
次に、ディスクブレーキユニット21FR〜21RL、マスタシリンダユニット27、動力液圧源30、および液圧アクチュエータ40のそれぞれについて以下で更に詳しく説明する。
【0041】
各ディスクブレーキユニット21FR〜21RLは、それぞれブレーキディスク22と、不図示のブレーキキャリパに内蔵されたホイールシリンダ23FR、23FL、23RR、23RLとを含む。ホイールシリンダ23FR、23FLは、典型的には第一のホイールシリンダ123Fに対応する。また、ホイールシリンダ23RR、23RLは、典型的には第二のホイールシリンダ123Rに対応する。
【0042】
そして、各ホイールシリンダ23FR、23FL、23RR、23RLは、それぞれ異なる流体通路を介して液圧アクチュエータ40に接続されている。なお以下では適宜、ホイールシリンダ23FR、23FL、23RR、23RLを総称して「ホイールシリンダ23」という。
【0043】
ディスクブレーキユニット21FR〜21RLにおいては、ホイールシリンダ23に液圧アクチュエータ40からブレーキフルードが供給されると、車輪と共に回転するブレーキディスク22に、摩擦部材としてのブレーキパッドが押し付けられる。
【0044】
これにより、各車輪に制動力が付与される。なお、本実施形態においてはディスクブレーキユニット21FR〜21RLを用いているが、例えばドラムブレーキ等のホイールシリンダ23を含む他の制動力付与機構を用いてもよい。
【0045】
マスタシリンダユニット27は、本実施形態では液圧ブースタ付きマスタシリンダであり、液圧ブースタ31、マスタシリンダ32、レギュレータ33、およびリザーバ34を具備する。また、液圧ブースタ31は、ブレーキペダル24に加えられたペダル踏力を増幅してマスタシリンダ32に伝達する。
【0046】
動力液圧源30からレギュレータ33を介して液圧ブースタ31にブレーキフルードが供給されることにより、ペダル踏力は増幅される。そして、マスタシリンダ32は、ペダル踏力に対して所定の倍力比を有するマスタシリンダ圧を発生する。
【0047】
マスタシリンダ32とレギュレータ33との上部には、ブレーキフルードを貯留するリザーバ34が配置されている。マスタシリンダ32は、ブレーキペダル24の踏み込みが解除されているときにリザーバ34と連通する。
【0048】
一方、レギュレータ33は、リザーバ34と動力液圧源30のアキュムレータ35との双方と連通しており、リザーバ34を低圧源とすると共に、アキュムレータ35を高圧源とし、マスタシリンダ圧とほぼ等しい液圧を発生する。レギュレータ33における液圧を以下では適宜、「レギュレータ圧」という。
【0049】
動力液圧源30は、アキュムレータ35およびポンプ36を具備する。アキュムレータ35は、ポンプ36により昇圧されたブレーキフルードの圧力エネルギを窒素等の封入ガスの圧力エネルギ、例えば14〜22MPa程度に変換して蓄えるものである。ポンプ36は、駆動源としてモータ36aを有し、その吸込口がリザーバ34に接続される一方、その吐出口がアキュムレータ35に接続される。
【0050】
また、アキュムレータ35は、マスタシリンダユニット27に設けられたリリーフバルブ35aにも接続されている。アキュムレータ35におけるブレーキフルードの圧力が異常に高まって例えば25MPa程度になると、リリーフバルブ35aが開状態となり、高圧のブレーキフルードはリザーバ34へと戻される。
【0051】
上述のように、液圧ブレーキユニット20は、ホイールシリンダ23に対するブレーキフルードの供給源として、マスタシリンダ32、レギュレータ33およびアキュムレータ35を有している。マスタシリンダ32にはマスタ配管37が、レギュレータ33にはレギュレータ配管38が、アキュムレータ35にはアキュムレータ配管39が接続されている。
【0052】
これらのマスタ配管37、レギュレータ配管38およびアキュムレータ配管39は、それぞれ液圧アクチュエータ40に接続される。すなわち、マスタシリンダ32、レギュレータ33およびアキュムレータ35のそれぞれは、ホイールシリンダ23への液圧源として液圧アクチュエータ40に並列に接続されている。
【0053】
本実施形態における作動液供給系統としての液圧アクチュエータ40は、複数の流路が形成されるアクチュエータブロックと、複数の電磁制御弁を含む。アクチュエータブロックに形成された流路には、個別流路41、42、43および44と、主流路45とが含まれる。
【0054】
また、個別流路41〜44は、それぞれ主流路45から分岐されて、対応するディスクブレーキユニット21FR、21FL、21RR、21RLのホイールシリンダ23FR、23FL、23RR、23RLに接続されている。これにより、各ホイールシリンダ23は、主流路45と独立して連通可能となる。
【0055】
また、個別流路41、42、43および44の中途には、各々ABS保持弁51、52、53および54が設けられている。各ABS保持弁51〜54は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングをそれぞれ有しており、何れもソレノイドが非通電状態にある場合に開とされる常開型電磁制御弁である。
【0056】
また、開状態とされた各ABS保持弁51〜54は、ブレーキフルードを双方向に流通させることができる。典型的には、主流路45からホイールシリンダ23へとブレーキフルードを供給して液圧を供給することができる。
【0057】
また、逆にホイールシリンダ23から主流路45へもブレーキフルードを流すこともできる。ソレノイドに通電されて各ABS保持弁51〜54が閉弁されると、個別流路41〜44におけるブレーキフルードの流通は遮断され、典型的には液圧の供給が遮断される。
【0058】
更に、ホイールシリンダ23は、個別流路41〜44にそれぞれ接続された減圧用流路46、47、48および49を介してリザーバ流路55に接続されている。減圧用流路46、47、48および49の中途には、各々ABS減圧弁56、57、58および59が設けられている。
【0059】
また、各ABS減圧弁56〜59は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングをそれぞれ有しており、何れもソレノイドが非通電状態にある場合に閉とされる常閉型電磁制御弁である。各ABS減圧弁56〜59が閉状態であるときには、減圧用流路46〜49におけるブレーキフルードの流通は遮断される。
【0060】
また、ソレノイドに通電されて各ABS減圧弁56〜59が開状態とされると、減圧用流路46〜49におけるブレーキフルードの流通が許容され、ブレーキフルードがホイールシリンダ23から減圧用流路46〜49およびリザーバ流路55を介してリザーバ34へと還流する。これにより、典型的にはホイールシリンダ23の液圧が増圧状態から低減されて減圧状態となる。なお、リザーバ流路55は、リザーバ配管77を介してマスタシリンダユニット27のリザーバ34に接続されている。
【0061】
主流路45は、中途に分離弁60を有する(なお、分離弁を連通弁とも称呼するが、実施形態においては分離弁とする)。この分離弁60により、主流路45は、個別流路41および42と接続される第1流路45aと、個別流路43および44と接続される第2流路45bとに区分けされている。
【0062】
第1流路45aは、個別流路41および42を介して前輪側のホイールシリンダ23FRおよび23FLに接続され、第2流路45bは、個別流路43および44を介して後輪側のホイールシリンダ23RRおよび23RLに接続される。
【0063】
分離弁60は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングを有しており、ソレノイドが非通電状態にある場合に閉とされる常閉型電磁制御弁である。分離弁60が閉状態であるときには、主流路45におけるブレーキフルードの流通は遮断される。ソレノイドに通電されて分離弁60が開状態とされると、第1流路45aと第2流路45bとの間でブレーキフルードを双方向に流通させることができる。
【0064】
また、液圧アクチュエータ40においては、主流路45に連通するマスタ流路61およびレギュレータ流路62が形成されている。より詳細には、マスタ流路61は、主流路45の第1流路45aに接続されており、レギュレータ流路62は、主流路45の第2流路45bに接続されている。また、マスタ流路61は、マスタシリンダ32と連通するマスタ配管37に接続される。レギュレータ流路62は、レギュレータ33と連通するレギュレータ配管38に接続される。
【0065】
典型的には、マスタ配管37とマスタ流路61とが、第一液圧系統161に対応する。また、典型的には、レギュレータ配管38とレギュレータ流路62とが、第二液圧系統162に対応する。
【0066】
マスタ流路61は、中途にマスタカット弁64を有する。マスタカット弁64は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングを有しており、ソレノイドが非通電状態にある場合に開とされる常開型電磁制御弁である。
【0067】
開状態とされたマスタカット弁64は、マスタシリンダ32と主流路45の第1流路45aとの間でブレーキフルードを双方向に流通させることができる。ソレノイドに通電されてマスタカット弁64が閉弁されると、マスタ流路61におけるブレーキフルードの流通は遮断され、典型的にはマスタシリンダ32から第1流路45aの液圧供給が遮断される。
【0068】
また、マスタ流路61には、マスタカット弁64よりも上流側において、シミュレータカット弁68を介してストロークシミュレータ69が接続されている。すなわち、シミュレータカット弁68は、マスタシリンダ32とストロークシミュレータ69とを接続する流路に設けられている。シミュレータカット弁68は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングを有しており、ソレノイドが非通電状態にある場合に閉とされる常閉型電磁制御弁である。
【0069】
また、シミュレータカット弁68が閉状態であるときには、マスタ流路61とストロークシミュレータ69との間のブレーキフルードの流通は遮断される。ソレノイドに通電されてシミュレータカット弁68が開状態とされると、マスタシリンダ32とストロークシミュレータ69との間でブレーキフルードを双方向に流通させることができる。
【0070】
また、ストロークシミュレータ69は、複数のピストンやスプリングを含むものであり、シミュレータカット弁68の開放時に運転者によるブレーキペダル24の踏力に応じた反力を創出する。ストロークシミュレータ69としては、運転者によるブレーキ操作のフィーリングを向上させるために、好ましくは多段のバネ特性を有するものが採用され、本実施形態のストロークシミュレータ69は多段のバネ特性を有するものとする。
【0071】
また、レギュレータ流路62は、中途にレギュレータカット弁65を有する。レギュレータカット弁65も、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングを有しており、ソレノイドが非通電状態にある場合に開とされる常開型電磁制御弁である。
【0072】
開状態とされたレギュレータカット弁65は、レギュレータ33と主流路45の第2流路45bとの間でブレーキフルードを双方向に流通させることができる。ソレノイドに通電されてレギュレータカット弁65が閉弁されると、レギュレータ流路62におけるブレーキフルードの流通は遮断され、典型的にはレギュレータ33から第2流路45bへの液圧供給が遮断される。
【0073】
液圧アクチュエータ40には、マスタ流路61およびレギュレータ流路62に加えて、アキュムレータ流路63も形成されている。アキュムレータ流路63の一端は、主流路45の第2流路45bに接続され、他端は、アキュムレータ35と連通するアキュムレータ配管39に接続される。
【0074】
アキュムレータ流路63は、中途に増圧リニア制御弁66を有する。また、アキュムレータ流路63および主流路45の第2流路45bは、減圧リニア制御弁67を介してリザーバ流路55に接続されている。増圧リニア制御弁66と減圧リニア制御弁67とは、それぞれリニアソレノイドおよびスプリングを有しており、何れもソレノイドが非通電状態にある場合に閉とされる常閉型電磁制御弁である。増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67は、それぞれのソレノイドに供給される電流に比例して弁の開度が調整される。
【0075】
増圧リニア制御弁66は、各車輪に対応して複数設けられた各ホイールシリンダ23に対して共通の増圧用制御弁として設けられている。また、減圧リニア制御弁67も同様に、各ホイールシリンダ23に対して共通の減圧用制御弁として設けられている。
【0076】
つまり、本実施形態においては、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67は、動力液圧源30から送出される作動流体を、各ホイールシリンダ23へ給排制御する1対の共通の制御弁として設けられている。典型的には増圧リニア制御弁66を開とすれば、アキュムレータ35からの液圧を第2流路45bに供給することができ、減圧リニア制御弁67を開とすれば、第2流路45bのブレーキフルードを排出して液圧を低減することができる。
【0077】
なお、増圧リニア制御弁66の出入口間の差圧は、アキュムレータ35におけるブレーキフルードの圧力と、主流路45におけるブレーキフルードの圧力と、の差圧に対応する。また、減圧リニア制御弁67の出入口間の差圧は、主流路45におけるブレーキフルードの圧力と、リザーバ34におけるブレーキフルードの圧力と、の差圧に対応する。
【0078】
また、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67のリニアソレノイドへの供給電力に応じた電磁駆動力をF1とし、スプリングの付勢力をF2とし、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67の出入口間の差圧に応じた差圧作用力をF3とすると、F1+F3=F2という関係が成立する。
【0079】
従って、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67のリニアソレノイドへの供給電力を連続的に制御することにより、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67の出入口間の差圧を制御することができる。
【0080】
液圧ブレーキユニット20において、動力液圧源30および液圧アクチュエータ40は、本実施形態における制御部としてのブレーキ電子制御部(Electrical Control Unit:ブレーキECU)70により制御される。ブレーキ電子制御部70は、CPUを含むマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に各種プログラムを記憶するROM、データを一時的に記憶するRAM、入出力ポートおよび通信ポート等を備える。
【0081】
また、ブレーキ電子制御部70は、上位のハイブリッドECUなどと通信可能である。また、ブレーキ電子制御部70は、ハイブリッドECUからの制御信号や、各種センサからの信号に基づいて動力液圧源30のポンプ36や、液圧アクチュエータ40を構成する電磁制御弁51〜54、56〜59、60、64〜68を制御して、液圧制動力を制御可能である。
【0082】
また、ブレーキ電子制御部70には、レギュレータ圧センサ71、アキュムレータ圧センサ72、および制御圧センサ73が接続される。レギュレータ圧センサ71は、レギュレータカット弁65の上流側でレギュレータ流路62内のブレーキフルードの圧力、すなわちレギュレータ圧を検知し、検知した値を示す信号をブレーキ電子制御部70に与える。
【0083】
また、アキュムレータ圧センサ72は、増圧リニア制御弁66の上流側でアキュムレータ流路63内のブレーキフルードの圧力、すなわちアキュムレータ圧を検知し、検知した値を示す信号をブレーキ電子制御部70に与える。
【0084】
また、制御圧センサ73は、主流路45の第1流路45a内のブレーキフルードの圧力を検知し、検知した値を示す信号をブレーキ電子制御部70に与える。また、分離弁60が開となって第1流路と第2流路とが連通している場合には、制御圧センサ73は主流路45内のブレーキフルードの圧力を検知する。各圧力センサ71〜73の検出値は、所定時間おきにブレーキ電子制御部70に順次与えられ、ブレーキ電子制御部70の所定の記憶領域に所定量ずつ格納保持される。
【0085】
従って、分離弁60が開状態とされて主流路45の第1流路45aと第2流路45bとが互いに連通している場合、制御圧センサ73の出力値は、増圧リニア制御弁66の低圧側の液圧を示すと共に減圧リニア制御弁67の高圧側の液圧を示す。従って、制御圧センサ73のこの出力値を、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67の制御に利用することができる。
【0086】
また、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67が閉鎖されていると共に、マスタカット弁64が開状態とされている場合、制御圧センサ73の出力値は、マスタシリンダ圧を示す。更に、分離弁60が開放されて主流路45の第1流路45aと第2流路45bとが互いに連通し、かつ各ABS保持弁51〜54が開放される一方、各ABS減圧弁56〜59が閉鎖されている場合には、制御圧センサの73の出力値は、各ホイールシリンダ23に作用する作動流体圧、すなわちホイールシリンダ圧を示す。
【0087】
また、分離弁60が開状態とされて主流路45の第1流路45aと第2流路45bとが互いに連通している場合にレギュレータカット弁65を開状態とすれば、制御圧センサ73の出力値は、通常はレギュレータ圧センサ71の出力値と等しくなる。
【0088】
典型的には、車両が停止状態にあるときに、ブレーキペダル24の踏力がホイールシリンダ23へ伝達されるように、増圧リニア制御弁66と減圧リニア制御弁67とを共に閉状態とし、分離弁60が開状態とされて、かつレギュレータカット弁65が開状態とされる。この状態が、後に詳述する停止中レギュレータ増圧モードである。
【0089】
さらに、ブレーキ電子制御部70に接続されるセンサには、ブレーキペダル24に設けられたストロークセンサ25も含まれる。ストロークセンサ25は、ブレーキペダル24の操作量としてのペダルストロークを検知し、検知した値を示す信号をブレーキ電子制御部70に与える。ストロークセンサ25の出力値も、所定時間おきにブレーキ電子制御部70に順次与えられ、ブレーキ電子制御部70の所定の記憶領域に所定量ずつ格納保持される。
【0090】
なお、ストロークセンサ25以外のブレーキ操作状態検出手段をストロークセンサ25に加えて、あるいは、ストロークセンサ25に代えて設け、ブレーキ電子制御部70に接続してもよい。ブレーキ操作状態検出手段としては、例えば、ブレーキペダル24の操作力を検出するペダル踏力センサや、ブレーキペダル24が踏み込まれたことを検出するブレーキスイッチなどがある。また、ブレーキ電子制御部70には、図示されない車輪速度センサ等も接続され、検知された信号が所定時間おきに与えられ、所定の記憶領域に格納保持される。
【0091】
また、ブレーキ操作入力手段は、ブレーキ操作部材としてのブレーキペダル24に限定されることはなく、例えば押圧ボタンによるブレーキ操作入力手段とすることもできる。押圧ボタンによるブレーキ操作入力手段とした場合においても、押圧ボタンのストローク検知に加え、押圧ボタンの操作力を検出する押圧力センサや、押圧ボタンが押し込まれたことを検出する押圧ボタンスイッチなどがある。
【0092】
上述のように構成された液圧ブレーキユニット20は、リニア制御モード、走行中レギュレータ増圧モード、停止中レギュレータ増圧モードの例えば3つの制御モードを取ることができる。いずれの制御モードにおいても、液圧ブレーキユニット20はブレーキ電子制御部70により制御される。なお、以下では、走行中レギュレータ増圧モードを走行中Reg増モードと呼び、停止中レギュレータ増圧モードを停止中Reg増モードと呼ぶ。
【0093】
また、液圧ブレーキユニット20は、走行中に急制動をかけた場合に、アキュムレータ配管39を介した油圧供給に、レギュレータ配管38を介した油圧供給も加えて制動するリニアREGアシストモードをとる場合もある。なお、走行中からの通常の制動は、アキュムレータ配管39を介した油圧供給によるリニア制御モードとなる。また、液圧ブレーキユニット20は、配管系統等に何らかの異常が検出された場合に、ブレーキ電子制御部70が、全ての弁の通電制御を放棄し、レギュレータ33とマスタシリンダ32の圧を、ホイールシリンダ23に供給するバックアップモードも取り得るものとする。
【0094】
リニア制御モードにおいては、各ホイールシリンダ23は、マスタシリンダユニット27から遮断される。すなわち、ブレーキ電子制御部70は、レギュレータカット弁65を閉状態とし、レギュレータ33から送出されるブレーキフルードが主流路45へ供給されないようにする。
【0095】
またブレーキ電子制御部70は、マスタカット弁64を閉状態とするとともにシミュレータカット弁68を開状態とする。これは、運転者によるブレーキペダル24の操作に伴ってマスタシリンダ32から送出されるブレーキフルードがストロークシミュレータ69へと供給されるようにするためである。またブレーキ電子制御部70は、分離弁60を開状態とする。
【0096】
また、リニア制御モードにおいては、ブレーキ電子制御部70は、要求制動力から回生制動力を減じることにより、液圧ブレーキユニット20により発生させるべき液圧制動力を算出する。ここで、回生制動力の値は、ハイブリッドECUからブレーキ電子制御部70に供給される。
【0097】
そして、ブレーキ電子制御部70は、算出した液圧制動力に基づいて各ホイールシリンダ23FR〜23RLの目標液圧を算出する。ブレーキ電子制御部70は、ホイールシリンダ圧が目標液圧となるように、フィードバック制御則により増圧リニア制御弁66及び減圧リニア制御弁67に対する供給電流の値を決定する。
【0098】
その結果、液圧ブレーキユニット20においては、動力液圧源30から増圧リニア制御弁66を介してブレーキフルードが各ホイールシリンダ23に供給されて車輪に所定目標の制動力が付与される。また、各ホイールシリンダ23からブレーキフルードが減圧リニア制御弁67を介して必要に応じて排出され、車輪に付与される制動力が適宜調整される。このようにして、リニア制御モードにおいては、液圧制動と回生制動とを併用して、要求制動力を発生させるブレーキ回生協調制御が実行される。
【0099】
また、いわゆるオートクルーズコントロール(Auto Cruise Control:ACC)や車両挙動安定化制御(Vehicle Stability Control:VSC)等の自動制動制御においても、上述したリニア制御モードと同様の油圧制御により制動動作が実行される。
【0100】
また、走行中Reg増モードにおいては、ブレーキ電子制御部70は、増圧リニア制御弁66への制御電流の供給を停止して増圧リニア制御弁66を閉状態とし、各ホイールシリンダ23から動力液圧源30を遮断する。更にブレーキ電子制御部70は、レギュレータカット弁65及びマスタカット弁64を開状態とするとともにシミュレータカット弁68を開状態とする。またブレーキ電子制御部70は、分離弁60を開状態とする。
【0101】
さらに、停止中Reg増モードにおける各電磁制御弁の開閉状態は、上述の走行中Reg増モードとはレギュレータカット弁65の開閉状態が異なり、他の電磁制御弁の開閉状態は同様である。つまり、停止中Reg増モードにおいては、レギュレータカット弁65が閉状態とされるという点で、走行中Reg増モードとは異なる。
【0102】
その結果、停止中Reg増モードにおいては、レギュレータ圧がそのままホイールシリンダ23に伝達されるので、運転者によるブレーキペダル24の操作量に応じた液圧制動力を発生させることができる。
【0103】
ブレーキ電子制御部70は、これらのリニア制御モード、走行中Reg増モード、及び停止中Reg増モード等のいずれかを、車両の走行速度、あるいは回生制動力の値などの車両の状態、またはオペレータからの指示に応じて選択する。
【0104】
(第二の実施形態)
次に、第一の実施形態で説明した分離弁制御部110が、リザーバ134に貯留されたブレーキフルードの低下状態が一定時間継続した場合に、分離弁160を閉状態とする第二の実施形態について説明する。第二の実施形態で示す例においては、リザーバ134に貯留されたブレーキフルードの低下状態を示す継続時間を積算し、低下検出所定時間よりも長い時間となった場合に、失陥があったものとして分離弁160を閉じる。
【0105】
このため、より信頼性の高い失陥有無の判断が可能となる。なお、第二の実施形態で説明する典型例は、分離弁制御部110を除いて、第一の実施形態で説明した液圧ブレーキユニット120と同じ構成であるので、重複する部分については説明を省略する。また、液圧ブレーキユニット120と同一部分については、同一の番号を付与して、その説明を省略する。
【0106】
図4は、第二の実施形態にかかるブレーキECU170(2)の概念的な構成を例示するブロック図である。図4に示すようにブレーキECU170(2)は、リザーバ134のブレーキフルード貯留量の低下を検出する液圧媒体量検出部111aを備える。
【0107】
また、分離弁制御部110(2)は、リザーバ134のブレーキフルード貯留量の低下検出状態の継続時間を算出する継続時間積算部114を備える。また、分離弁制御部110(2)は、リザーバ134のブレーキフルードの貯留量の低下検出時間の閾値となる低下検出所定時間記憶部112を備える。また、分離弁制御部110(2)は、継続時間積算部114で積算した継続時間と、低下検出所定時間記憶部112に予め記憶された閾値時間と、を比較する比較部113を備える。
【0108】
次に、図5を用いてブレーキECU170(2)の動作処理について、その概要を説明する。図5は、主としてブレーキECU170(2)での処理について、概念的に示すフロー図である。そこで、図5に示すステップごとに以下に順次説明する。
【0109】
(ステップS51)
液圧媒体量検出部111aは、リザーバ134が貯留するブレーキフルードの液量が、所定量よりも少なくなったことを検出したか否かを判断する。液圧媒体量検出部111aが、リザーバ134が貯留するブレーキフルードの液量が、所定量よりも少なくなったことを検出すれば、ステップS52へと進む。
【0110】
また、液圧媒体量検出部111aが、リザーバ134が貯留するブレーキフルードの液量が、所定量よりも少なくなったことを検出しなければ、ステップS51で待機する。
【0111】
(ステップS52)
分離弁制御部110(2)は、ステップS51での検出時間が、予め定められた低下検出所定時間よりも長いか否かを判断する。具体的には、継続時間積算部114が、液圧媒体量検出部111aからの検出信号を受信し、検出信号の継続時間を積算する。
【0112】
また、比較部113が、予め低下検出所定時間記憶部112に記憶されている閾値時間と、継続時間積算部114が積算した継続時間と、を比較する。そして、継続時間が閾値時間よりも長くなれば、ステップS53へと進む。また、継続時間が閾値時間よりも長くならなければ、ステップS51に戻る。
【0113】
なお、継続時間積算部114による継続時間の積算と、比較部113での比較判断とは、リアルタイムで同時並行的に処理し得るものとする。すなわち、継続時間積算部114が継続時間の積算をすると同時並行して、ごく短い周期間隔で比較部113が随時比較処理を行なっているものとする。このため、比較部113は、常時積算時間が閾値時間を超えたか否かをいわば監視していることとなり、積算された継続時間が閾値時間を超えた場合には、遅滞なくステップS53に進むものとする。
【0114】
(ステップS53)
分離弁制御部110(2)は、分離弁160を閉状態とする。換言すれば、ステップS51とステップS52との処理を通じて、ブレーキECU170(2)が、失陥が生じていると判断したことに相当する。そして、失陥が生じたと判断する場合に、分離弁制御部110(2)が、分離弁160を閉状態とすることで、主流路145でのブレーキフルードの流通経路を遮断して、ブレーキフルードの枯渇を抑止することができる。
【0115】
第二の実施形態においては、リザーバ134のブレーキフルードの貯留量の低下が、失陥に起因しない一時的な低下状態であるのか、失陥に起因する低下状態であるのか、をより迅速かつ正確に判断することができるので好ましい。これにより、仮に、失陥に起因しないブレーキフルードの突発的な低減現象が生じたとしても、誤判定により過剰に安全処置を行なうことがなくなり、適切な制動機能の維持とブレーキフィーリングの維持とを保つことができる。
【0116】
(第三の実施形態)
次に、ブレーキECU170(3)が、失陥が生じた系統を判断する場合について、第三の実施形態として説明する。第三の実施形態においては、ブレーキECU170(3)が失陥系統判断部6172を備えており、液圧ブレーキユニット620の所望の弁制御と、リザーバ134のブレーキフルード低下状態とから、失陥が生じた系統を判断するものとする。
【0117】
なお、以下の説明において、液圧ブレーキユニット620は典型例を示すものであって、第一の実施形態で説明した液圧ブレーキユニット120と同じ構成で説明が重複する部分については、冗長となるので説明を省略する。また、液圧ブレーキユニット120と同一部分については、同一の番号を付与して、その説明を省略するものとする。
【0118】
図6は、第三の実施形態にかかる液圧ブレーキユニット620を概念的に示すブロック構成図である。図6に示すように、液圧ブレーキユニット620は、第一液圧系統161に第一カット弁664を具備する。また、液圧ブレーキユニット620は、第二液圧系統162に第二カット弁665を具備する。第一カット弁664は、典型的には図3に示すマスタカット弁64に対応し、また第二カット弁665は、典型的には図3に示すレギュレータカット弁65に対応する。
【0119】
また、液圧ブレーキユニット620のブレーキECU170(3)は、第一カット弁664と第二カット弁665と、の開閉を制御するカット弁制御部6171を備える。また
、ブレーキECU170(3)は、失陥が生じた系統が、第一液圧系統161であるのか第二液圧系統162であるのかを判断する失陥系統判断部6172を備える。
【0120】
また、液圧ブレーキユニット620の液圧媒体量検出部111a(3)は、リザーバ134に貯留されたブレーキフルードが所定量より少なくなったことを検出するだけではなく、ブレーキフルードの低下量をリアルタイムで検出できるものとする。
【0121】
液圧媒体量検出部111a(3)が、リザーバ134に貯留されたブレーキフルードが所定量より少なくなったことを検出すると、分離弁制御部110が分離弁160を閉状態とし、かつカット弁制御部6171が第一カット弁664または第二カット弁665のいずれかを閉状態とする。
【0122】
その後、液圧媒体量検出部111a(3)が、リザーバ134に貯留されたブレーキフルードの貯留量の低下状況をリアルタイムに検出する。液圧媒体量検出部111a(3)の低下状況の検出値は、失陥系統判断部6172に入力され、仮にブレーキフルードの貯留量が低下し続ける場合には、失陥系統判断部6172が、カット弁制御部6171が閉状態とした系統と異なる系統に失陥があるものと判断する。
【0123】
また、仮にブレーキフルードの貯留量の低下が停止した場合には、失陥系統判断部6172が、カット弁制御部6171が閉状態とした系統に失陥があるものと判断する。すなわち、失陥系統判断部6172には、分離弁制御部110とカット弁制御部6171とから弁制御情報が入力され、液圧媒体量検出部111a(3)からフルードの低下状態がリアルタイムで入力される。
【0124】
失陥系統判断部6172は、入力された情報から、失陥系統を判断する。例えば、カット弁制御部6171が、第二カット弁665を閉状態としたにも拘わらずブレーキフルードが低下し続けるのであれば、失陥系統判断部6172は、第一カット弁664に失陥が生じているものと判断する。
【0125】
ここで、第二カット弁665を閉状態とすると、分離弁160が閉状態であることから、第二液圧系統162及び第二のホイールシリンダ123Rでのブレーキフルードの漏れは停止するものと考えられる。この場合においても、ブレーキフルードの低下が検出されるということは、第一液圧系統161で失陥が発生し、その失陥によりブレーキフルードが漏れていると推定されることとなる。
【0126】
次に、図7を用いて、液圧ブレーキユニット620の動作処理フローについて説明する。図7は、液圧ブレーキユニット620の動作処理の概要を概念的に説明するフロー図である。そこで、図7に示す各ステップごとに、液圧ブレーキユニット620の動作処理を順次説明することとする。
【0127】
(ステップS71)
液圧媒体量検出部111a(3)は、リザーバ134に貯留されているブレーキフルードの量が、所定量より少なくなったか否かを判断する。液圧媒体量検出部111a(3)は、リザーバ134に貯留されているブレーキフルードの量が、所定量より少なくなったことを検出すると、その検出信号を分離弁制御部110とカット弁制御部6171とに送出する。
【0128】
液圧媒体量検出部111a(3)が、リザーバ134に貯留されているブレーキフルードの量が、所定量より少なくなったことを検出すれば、ステップS72に進む。また、液圧媒体量検出部111a(3)が、リザーバ134に貯留されているブレーキフルードの量が、所定量より少なくなったことを検出しなければ、ステップS71で待機する。
【0129】
(ステップS72)
分離弁制御部110は、分離弁160を閉状態とする。このステップS72での動作処理により、ブレーキフルードが第一液圧系統161と第二液圧系統162との間で主流路145を介して流通することを遮断できる。
【0130】
(ステップS73)
カット弁制御部6171は、第一カット弁664を閉状態をする。このステップS73での動作処理により、ブレーキフルードが第一液圧系統161の第一カット弁664から下流側に供給されることを抑止できる。仮に、第一のホイールシリンダ123Fの周辺に失陥が発生した場合においては、このステップS73での処理により、ブレーキフルードのさらなる漏れを停止させることが可能である。
【0131】
(ステップS74)
液圧媒体量検出部111a(3)は、リザーバ134のブレーキフルードの低下量が、所定の低下量より大きいか否かを判断する。液圧媒体量検出部111a(3)が、リザーバ134のブレーキフルードの低下量が、所定の低下量より大きいと判断すれば、ステップS75へと進む。また、液圧媒体量検出部111a(3)が、リザーバ134のブレーキフルードの低下量が、所定の低下量より大きくないと判断すれば、ステップS76へと進む。
【0132】
また、液圧媒体量検出部111a(3)は、リザーバ134のブレーキフルードの低下量が、所定の低下量より大きいか否かの検出結果を、失陥系統判断部6172へと送出する。また、このステップ74における所定の低下量の場合のフルードの残量は、ステップS71での所定量よりも、少ない状態であるものとする。すなわち、液圧媒体量検出部111a(3)は、ステップS72とステップs73との処理にも拘わらず、さらにブレーキフルードが減り続けていることを検出するものとする。
【0133】
(ステップS75)
失陥系統判断部6172は、第二液圧系統162で失陥が生じているものと判断する。すなわち、ステップS73で第一カット弁664を閉状態としたにも拘わらず、リザーバ134のフルード貯留量が低下し続ける状態は、第二液圧系統162特に第二のホイールシリンダ123R周辺での失陥による液漏れであると判断できる。
【0134】
(ステップS76)
失陥系統判断部6172は、第一液圧系統161で失陥が生じているものと判断する。すなわち、ステップS73で第一カット弁664を閉状態としたことにより、リザーバ134のフルード貯留量の低下が停止した状態は、第一液圧系統161の特に第一のホイールシリンダ123F周辺での失陥による液漏れであると判断できる。
【0135】
なお、液圧媒体量検出部111a(3)は、リザーバ134の液量をリアルタイムで検出できるものが好ましい。また、リザーバ134の液量をリアルタイムで検出できると共に、どの程度の低下量を所定の低下量としてステップS74の処理を実行するか、予め設定するか、車両メンテナンス時等に設定変更できるものが好ましい。車両状態等に応じて、ステップS74で実行する所定の低下量を適宜設定変更することで、失陥系統の判断をより適切なものとできる。
【0136】
また、ステップS71に用いる所定量についても、予め設定するか、車両メンテナンス時等に設定変更できるものが好ましい。これにより、車両状態等により、分離弁160を閉状態とする判断基準を適切に調整可能となるので好ましい。さらに、誤判定を避けるだけでなく、誤判定により通常のブレーキモードを中断して、分離弁160を閉状態とすることにより、不要な安全動作を実行し、かつブレーキフィーリングの変更が生じる事態を回避可能となるので好ましい。
【0137】
また、本実施形態における液圧媒体量検出部111a(3)を図8に示す変形例のように構成してもよい。図8は、液圧媒体量検出部111a(3)の変形例を概念的に示すブロック図である。この変形例においては、液量の低下誤判定を低減できるものである。
【0138】
図8に示すように液圧媒体量検出部111a(3b)は、リザーバ134に貯留されるブレーキフルードの液量が所定量より少なくなったことを検出するリザーバ液量低下検出部810を備える。また、液圧媒体量検出部111a(3b)は、動力液圧源30のモータ36aの駆動時間を積算するモータ駆動時間積算部820を備える。
【0139】
また、リザーバ液量低下検出部810とモータ駆動時間積算部820とからの出力は、低下検出部830に入力される。低下検出部830は、リザーバ液量低下検出部810がリザーバ134の液量が所定量より少なくなった事を出力し、かつモータ駆動時間積算部820が例えば10秒間の積算駆動時間となったことを出力すれば、リザーバ134の液量が何らかの失陥による低下状態であるものと判断する。
【0140】
モータ36aが駆動されるのは、例えばブレーキペダル124の踏み込みによる制動指示か、自動制動制御による制動指示があった場合である。従って、液圧媒体量検出部111a(3b)は、リザーバ134の一時的な液量低下による誤判断を回避し、失陥に基づく液量の低下状態を信頼性高く検出することが可能となるので好ましい。
【0141】
(第四の実施形態)
次に、リザーバ134の揺れを利用してブレーキフルードの低下状態を正確に認識し、これにより失陥系統の誤判断が為されることを抑止可能な液圧ブレーキユニット920について、第四の実施形態で図9を用いて説明する。
【0142】
図9は、第四の実施形態にかかる液圧ブレーキユニット920の構成概念を例示するブロック図である。なお、以下の説明において、液圧ブレーキユニット920は典型例を示すものであって、第一乃至第三の実施形態で説明した液圧ブレーキユニット120等と同じ構成で説明が重複する部分については、冗長となるので説明を省略する。また、上述の液圧ブレーキユニット120等と同一部分については、同一の番号を付与して、その説明を省略するものとする。
【0143】
図9に示すように、液圧ブレーキユニット920のブレーキECU170(4)は、リザーバ134が、ある所定の振動範囲内で揺れているか否かを判断する振動判断部910を備える。振動判断部910は、例えば車両が備えるヨーレイトセンサや重力(G)センサの出力を検出して利用するものでもよい。
【0144】
リザーバ134が揺れている場合、また例えば車両が揺れている場合には、リザーバ134内に貯留されたブレーキフルードもその揺れの影響を受ける。リザーバ134の揺れにより、ブレーキフルードが波打ち状態となり、その液面も上下に波打つこととなる。このため、ブレーキフルードの液面が、検出すべき所定量よりもやや少ない程度であれば、検出すべき所定量の液面レベルを上下することとなり、液圧媒体量検出部111aは、所定量より少ないことの検出と非検出とを反復し、例えば検出信号のオンオフを繰り返すこととなる。
【0145】
液圧ブレーキユニット920の失陥系統判断部6172は、リザーバ134が振動した場合に上述のオンオフ状態を利用して、リザーバ134内のブレーキフルードの液量を相当の正確さで検出できる。ここで、仮にリザーバ134が相当な強度で振動したとすれば
、リザーバ134内のブレーキフルードが検出すべき所定量よりもかなり少ない(すなわち液面がかなり低い)場合であっても、振動による液面の上下動が激しいことにより、上述した検出信号のオンオフを繰り返すことが想定される。
【0146】
また、逆に、リザーバ134の振動が全くなければ、リザーバ134内のブレーキフルードの液面の上下動は生じず、検出すべき所定量からどの程度少ないのかの情報が得られないこととなる。
【0147】
このため、振動判断部910は、車両の振動、典型的にはリザーバ134の振動が、リザーバ134内のブレーキフルードの液面が適宜上下する程度の、所定の範囲内であるか否かを検出し、検出信号を失陥系統判断部6172に出力する。また、失陥系統判断部6172は、振動判断部910から、振動が所定の範囲内である検出信号を受け取る場合に、液圧媒体量検出部111aからの検出信号に基づいて、失陥系統を判断する。
【0148】
このため、液圧媒体量検出部111aが、リアルタイムにブレーキフルードの量を検出できる検出部ではないとしても、失陥系統判断部6172は、所定量からどの程度少ないのかについてのブレーキフルードの液量状態を推定でき、この推定したブレーキフルードの液量に基づいて失陥系統を正確に判断することが可能となる。
【0149】
なお、振動判断部910は、例えば図10に示すようなブロック構成としてもよい。図10は、振動判断部910の概念的な構成を例示するブロック図である。図10に示すように振動判断部910は、所定の振動範囲を予め設定されて記憶する所定振動範囲記憶部1001を備える。
【0150】
また、振動判断部910は、リザーバ134または車両の振動検出値と、所定振動範囲記憶部1001に記憶された所定の振動範囲と、を比較する振動比較部1002を備える。また、振動比較部1002は、振動検出値が所定の振動範囲内にあれば、失陥系統判断部6172に、振動検出値が所定の振動範囲内にあることを示す判断信号を出力する。
【0151】
次に、図11を用いて液圧ブレーキユニット920の動作処理について説明する。図11は、液圧ブレーキユニット920の動作処理の概要を説明するフロー図である。そこで、以下図11に示す各ステップに基づいて順次説明する。
【0152】
(ステップS110)
液圧媒体量検出部111aは、リザーバ134に貯留されているブレーキフルードの量が、所定量より少なくなったか否かを判断する。液圧媒体量検出部111aは、リザーバ134に貯留されているブレーキフルードの量が、所定量より少なくなったことを検出すると、その検出信号を分離弁制御部110(2)とカット弁制御部6171とに送出する。
【0153】
液圧媒体量検出部111aが、リザーバ134に貯留されているブレーキフルードの量が、所定量より少なくなったことを検出すれば、ステップS111へと進む。また、液圧媒体量検出部111aが、リザーバ134に貯留されているブレーキフルードの量が、所定量より少なくなったことを検出しなければ、ステップS110で待機する。
【0154】
(ステップS111)
分離弁制御部110(2)は、ステップS110での検出時間が、予め定められた低下検出所定時間よりも長いか否かを判断する。具体的には、継続時間積算部114が、液圧媒体量検出部111aからの検出信号を受信し、検出信号の継続時間を積算する。
【0155】
また、比較部113が、予め低下検出所定時間記憶部112に記憶されている閾値時間と、継続時間積算部114が積算した継続時間と、を比較する。そして、継続時間が閾値時間よりも長くなれば、ステップS112へと進む。また、継続時間が閾値時間よりも長くならなければ、ステップS110に戻る。
【0156】
なお、継続時間積算部114による継続時間の積算と、比較部113での比較判断とは、リアルタイムで同時並行的に処理し得るものとする。すなわち、継続時間積算部114が継続時間の積算をすると同時並行して、ごく短い周期間隔で比較部113が随時比較処理を行なっているものとする。このため、比較部113は、常時積算時間が閾値時間を超えたか否かをいわば監視していることとなり、積算された継続時間が閾値時間を超えた場合には、遅滞なくステップS112に進むものとする。
【0157】
(ステップS112)
分離弁制御部110(2)は、分離弁160を閉状態とする。換言すれば、ステップS110とステップS111との処理を通じて、ブレーキECU170(4)が、液圧系統等に失陥が生じ、液漏れが生じていると判断したことに相当する。そして、失陥が生じたと判断する場合に、分離弁制御部110(2)が、分離弁160を閉状態とすることで、主流路145でのブレーキフルードの、第一液圧系統161と第二液圧系統162との間での流通経路を遮断して、ブレーキフルードの枯渇を抑止する。
【0158】
なお、分離弁160は、このフローにおいて説明する以下の各ステップの間において、常に閉状態を維持するものとする。
【0159】
(ステップS113)
カット弁制御部6171は、典型的には第一カット弁664を閉状態とする。このステップS113までの処理により、分離弁160と第一カット弁664とが、閉状態とされ、次のステップS114以降における失陥系統部位の判断処理の為の準備が整うこととなる。
【0160】
(ステップS114)
振動判断部910は、車両の振動、典型的にはリザーバ134の振動が所定の振動範囲内であるか否かを判断する。振動判断部910が、リザーバ134の振動が所定の振動範囲内であると判断すれば、ステップS115へと進む。また、振動判断部910が、リザーバ134の振動が所定の振動範囲内ではないと判断すれば、ステップS114で待機する。
【0161】
より具体的には、振動判断部910が備える振動比較部1002が、リザーバ134から検出された揺れと、所定振動範囲記憶部1001に予め記憶された所定の振動範囲と、を比較する。そして、振動比較部1002は、その比較結果を失陥系統判断部6172へと出力する。例えば、振動比較部1002は、リザーバ134の振動が所定の振動範囲内である場合には、振動が所定の振動範囲内であることを示す通知信号”1”を失陥系統判断部6172へと出力してもよい。
【0162】
(ステップS115)
液圧媒体量検出部111aは、リザーバ134内に貯留されるブレーキフルードの液量が、所定量よりも少なくなったことを検出する信号が解除されたか否かを、失陥系統判断部6172に出力する。ここで、リザーバ134内のブレーキフルードの液面は、振動によりある程度波打っているものと考えられ、液圧媒体量検出部111aによる所定量より少ないことを示す検出信号が、オンとオフとを繰り返される場合も想定できる。
【0163】
従って、ステップS110での検出信号が、ステップS115において一度でも解除されれば、ステップS116へと進むものとする。また、ステップS110での検出信号が、ステップS115において一度も解除されなければ、ステップS117へと進むものとする。
【0164】
(ステップS116)
失陥系統判断部6172は、分離弁160と第一カット弁664とが閉状態である場合であって、所定の振動範囲内である場合に、リザーバ134の液量が所定量より少ないことを検出した信号が解除されれば、第一液圧系統161の失陥と判断する。また、失陥系統判断部6172は、第一のホイールシリンダ123Fの失陥と判断する。
【0165】
すなわち、分離弁160と第一カット弁664とが閉状態であるので、仮に第一液圧系統161または第一のホイールシリンダ123Fに失陥があったとしても、第一液圧系統161及び第一のホイールシリンダ123Fからの液漏れは停止している。この状態で、所定の振動範囲内である場合に、リザーバ134の液量が所定量より少ないことを検出した信号が解除されれば、分離弁160と第一カット弁664とを閉状態とする処置により、当該失陥からのリザーバ134内の液量低下が止まったものと考えられる。従って、失陥系統判断部6172は、第一液圧系統161の失陥または第一のホイールシリンダ123Fの失陥と判断する。
【0166】
なお、このフローでは説明を省略したが、液圧ブレーキユニット920は、このステップS116における失陥系統の判断後、失陥系統に対応して適宜必要なバックアップ処理や安全処置を行なうものとする。
【0167】
(ステップS117)
失陥系統判断部6172は、分離弁160と第一カット弁664とが閉状態である場合であって、所定の振動範囲内である場合に、リザーバ134の液量が所定量より少ないことを検出した信号が解除されなければ、第二液圧系統162の失陥または第二のホイールシリンダ123Rの失陥と判断する。
【0168】
すなわち、分離弁160と第一カット弁664とが閉状態であるので、仮に第一液圧系統161または第一のホイールシリンダ123Fに失陥があったとしても、第一液圧系統161及び第一のホイールシリンダ123Fからの液漏れは停止しているはずである。また、分離弁160と第一カット弁664とを閉状態としても、仮に第二液圧系統162または第二のホイールシリンダ123Rに失陥があったとすれば、第二液圧系統162及び第二のホイールシリンダ123Rからの液漏れは停止しないものと考えられる。
【0169】
すなわち、所定の振動範囲内である場合に、リザーバ134の液量が所定量より少ないことを検出した信号が解除されなければ、分離弁160と第一カット弁664とが閉状態とする処置によっても、失陥からのリザーバ134内の液量低下が止まらなかったものと考えられる。従って、この場合に、失陥系統判断部6172は、第二液圧系統162の失陥または第二のホイールシリンダ123Rの失陥と判断する。
【0170】
なお、このフローでは説明を省略したが、液圧ブレーキユニット920は、このステップS117における失陥系統の判断後、失陥系統に対応して適宜必要なバックアップ処理や安全処置を行なうものとする。
【0171】
上述の動作処理により、液圧ブレーキユニット920は、より正確に失陥系統の判断を行なうことができるので好ましい。
【0172】
次に、上述のステップS113において、第一カット弁664に替えて第二カット弁665を閉状態とする場合の動作処理について、図12を用いて簡略に説明する。図12は、液圧ブレーキユニット920の動作処理の変形例を例示するフロー図である。なお、図12及び以下の説明において、図11に示す各ステップの説明と重複する部分については、説明を省略するか、または簡略に行なうものとする。
【0173】
(ステップS120)
上述したステップS110に対応するので、ここでは説明を省略する。
【0174】
(ステップS121)
上述したステップS111に対応するので、ここでは説明を省略する。
【0175】
(ステップS122)
上述したステップS112に対応するので、ここでは説明を省略する。
【0176】
(ステップS123)
カット弁制御部6171は、第二カット弁665を閉状態とする。このステップS123までの処理により、分離弁160と第二カット弁665とが、閉状態とされ、次のステップS124以降における失陥系統部位の判断処理の為の準備が整うこととなる。
【0177】
また、第二カット弁665は、典型的にはレギュレータカット弁65に対応することから、このステップS123以下での処理の前提として、車両の運転者または自動制動制御による制動指示が無い状態であることが好ましい。仮に、車両の運転者または自動制動制御による制動指示があった場合には、いわゆるリニア制御モードへと移行することが制動力を維持して速やかに車両を停止させる観点から好ましい。
【0178】
(ステップS124)
上述したステップS114に対応するので、ここでは説明を省略する。
【0179】
(ステップS125)
上述したステップS115に対応するので、ここでは説明を省略する。
【0180】
(ステップS126)
失陥系統判断部6172は、分離弁160と第二カット弁665とが閉状態である場合であって、所定の振動範囲内である場合に、リザーバ134の液量が所定量より少ないことを検出した信号が解除されれば、第二液圧系統162の失陥と判断する。また、失陥系統判断部6172は、第二のホイールシリンダ123Rの失陥と判断する。
【0181】
すなわち、分離弁160と第二カット弁665とが閉状態であるので、仮に第二液圧系統162または第二のホイールシリンダ123Rに失陥があったとしても、第二液圧系統162及び第二のホイールシリンダ123Rからの液漏れは停止している。この状態で、所定の振動範囲内である場合に、リザーバ134の液量が所定量より少ないことを検出した信号が解除されれば、分離弁160と第二カット弁665とを閉状態とする処置により、当該失陥からのリザーバ134内の液量低下が止まったものと考えられる。従って、失陥系統判断部6172は、第二液圧系統162の失陥または第二のホイールシリンダ123Rの失陥と判断する。
【0182】
なお、このフローでは説明を省略したが、液圧ブレーキユニット920は、このステップS126における失陥系統の判断後、失陥系統に対応して適宜必要なバックアップ処理や安全処置を行なうものとする。
【0183】
(ステップS127)
失陥系統判断部6172は、分離弁160と第二カット弁665とが閉状態である場合であって、所定の振動範囲内である場合に、リザーバ134の液量が所定量より少ないことを検出した信号が解除されなければ、第一液圧系統161の失陥または第一のホイールシリンダ123Fの失陥と判断する。
【0184】
すなわち、分離弁160と第二カット弁665とが閉状態であるので、仮に第二液圧系統162または第二のホイールシリンダ123Rに失陥があったとしても、第二液圧系統162及び第二のホイールシリンダ123Rからの液漏れは停止しているはずである。また、分離弁160と第二カット弁665とを閉状態としても、仮に第一液圧系統161または第一のホイールシリンダ123Fに失陥があったとすれば、第一液圧系統161及び第一のホイールシリンダ123Fからの液漏れは停止しないものと考えられる。
【0185】
すなわち、所定の振動範囲内である場合に、リザーバ134の液量が所定量より少ないことを検出した信号が解除されなければ、分離弁160と第二カット弁665とを閉状態とする処置によっても、失陥からのリザーバ134内の液量低下が止まらなかったものと考えられる。従って、この場合に、失陥系統判断部6172は、第一液圧系統161の失陥または第一のホイールシリンダ123Fの失陥と判断する。
【0186】
なお、このフローでは説明を省略したが、液圧ブレーキユニット920は、このステップS127における失陥系統の判断後、失陥系統に対応して適宜必要なバックアップ処理や安全処置を行なうものとする。
【0187】
上述の動作処理により、液圧ブレーキユニット920は、より正確に失陥系統の判断を行なうことができるので好ましい。
【0188】
第四の実施形態で例示した液圧ブレーキユニット920は、液圧媒体量検出部111aが、リザーバ134の貯留液量をリアルタイムに実測できなくても、車両の振動等を利用して、適切に貯留液量の低下状態を判断できる。また、これにより、ブレーキECU170(4)は、失陥が生じている系統を適切かつ迅速に判断することができるので、その後の復旧処置を迅速かつ適切に行えるので好ましい。
【0189】
(第五の実施形態)
次に、リザーバ134が、典型的にはマスタ配管37側とレギュレータ配管38側とで異なる貯留槽を備える場合について、図13を用いて説明する。図13は、第五の実施形態にかかる液圧ブレーキユニット920(5)の概略構成を例示するブロック図である。なお、液圧ブレーキユニット920(5)においては、第四の実施形態で説明した液圧ブレーキユニット920と同一の部位については、同一の符号を付し、重複を避ける為にその説明を省略することとする。
【0190】
図13に示すように、マニュアル液圧供給部127(5)のリザーバ134(5)は、第一液圧系統161に供給するブレーキフルードを貯留する第一リザーバ部1301と、第二液圧系統162に供給するブレーキフルードを貯留する第二リザーバ部1302と、を備える。第一リザーバ部1301と第二リザーバ部1302とは、各々別個にブレーキフルードを貯留することが好ましい。
【0191】
また、液圧ブレーキユニット920(5)は、第一リザーバ部1301と第二リザーバ部1302とを備えるので、第一液圧系統161と第一のホイールシリンダ123Fとに供給するブレーキフルードと、第二液圧系統162と第二のホイールシリンダ123Rとに供給するブレーキフルードと、をリザーバ134(5)内においては、個々に貯留し維持できるので好ましい。
【0192】
換言すれば、仮にいずれかの液圧系統に失陥が発生したとしても、リザーバ134(5)内でのフルードは独立に貯留され、共に枯渇する事態を回避可能である。特に、第四の実施形態で説明した図11または図12に示す動作処理フローを実行する液圧ブレーキユニット920(5)は、適切な弁制御により、各々の液圧系統が保存されるので、制動力を確保できることとなり好ましい。
【0193】
なお、液圧ブレーキユニット920(5)における動作処理は、上述した液圧ブレーキユニット920の動作処理と同じ動作処理とできるので、ここではその説明を省略する。また、図14(a)は、第五の実施形態にかかるリザーバ134(5)の構造を概念的に例示する図である。
【0194】
図14(a)に示すように、リザーバ134(5)には、MaxとMinの間で、高さhにまでブレーキフルードが貯留されている。また、リザーバ134(5)の内部は、パーティション1401で部分的に仕切られている。図14(a)では、パーティション1401は、Minのレベルの数センチメートル程度低いレベルまでの高さとして示しているが、これに限られることはなく、適宜高さを設計して調節してもよい。
【0195】
また、パーティション1401により、パーティション1401の高さよりも液面高さが低くなった場合には、第二の液圧系統162に供給されるブレーキフルード、典型的にはレギュレータ配管38に供給されるブレーキフルードと、第一の液圧系統161に供給されるブレーキフルード、典型的にはマスタ配管37に供給されるブレーキフルードと、が分離される。
【0196】
このため、リザーバ134(5)においては、例えば失陥によりブレーキフルードの貯留量が減少してきた場合に、第一リザーバ部1301(5)と第二リザーバ部1302(5)とに、各々ブレーキフルードを独立して貯留できる。従って、液圧ブレーキユニット920(5)が備える複数の弁の開閉制御を、例えば図11または図12に例示するように適宜制御することで、リザーバ134(5)内のブレーキフルードの貯留量を適切に維持し、制動力を付与し続けることが可能となるので好ましい。
【0197】
また、図14(b)と図14(c)とは、図14(a)に示すリザーバ134(5)を備えた液圧ブレーキユニット920(5)において、図11に第四の実施形態として示した動作処理を実行した場合の、リザーバ134(5)の貯留液面の高さhの経過時間変化を模式的に示す図である。
【0198】
より詳細には、図14(b)は、仮に第一液圧系統161または第一のホイールシリンダ123Fでの失陥により、ブレーキフルードの液漏れが生じた場合の状態を示す図である。また、図14(c)は、仮に第二液圧系統162または第二のホイールシリンダ123Rでの失陥により、ブレーキフルードの液漏れが生じた場合の状態を示す図である。
【0199】
図14(b)に示すように、高さhであったリザーバ134(5)内の貯留量が、失陥により減少し、リザーバ液量低下検出ラインを下回ったことを液圧媒体量検出部111aが検出してから所定の処理時間T1が経過した後、カット弁制御部6171が第一カット弁664を閉状態とする。ここで、所定の処理時間T1は、典型的には分離弁制御部110(2)が、ブレーキフルード貯留量の低下検出状態の継続時間が、低下検出所定時間記憶部112に予め記憶された閾値時間を超えたことを確認する時間に相当する。
【0200】
第一液圧系統161または第一のホイールシリンダ123Fでの失陥により、ブレーキフルードの液漏れが生じた場合においては、分離弁160を閉状態として引き続いて第一カット弁664を閉状態とすることにより、フルード貯留量の低下が停止する。このため、リザーバ134(5)の振動により、液面が上下し、典型的には図14(b)に示すように、リザーバ液量低下検出ラインを超えたり下回ったりする。これにより、液圧媒体量検出部111aの検出信号がオンとオフとを繰り返すこととなる。
【0201】
また、図14(c)に示すように、高さhであったリザーバ134(5)内の貯留量が、失陥により減少し、リザーバ液量低下検出ラインを下回ったことを液圧媒体量検出部111aが検出してから所定の処理時間T1が経過した後、カット弁制御部6171が第一カット弁664を閉状態とする。ここで、所定の処理時間T1は、典型的には分離弁制御部110(2)が、ブレーキフルード貯留量の低下検出状態の継続時間が、低下検出所定時間記憶部112に予め記憶された閾値時間を超えたことを確認する時間に相当する。
【0202】
第二液圧系統162または第二のホイールシリンダ123Rでの失陥により、ブレーキフルードの液漏れが生じた場合においては、分離弁160を閉状態として引き続いて第一カット弁664を閉状態としたとしても、フルード貯留量の低下が停止せず減少し続ける。このため、リザーバ134(5)の振動により、液面が上下したとしても、典型的には図14(c)に示すように、リザーバ液量低下検出ラインを超えたり下回ったりすることがない。すなわち、液圧媒体量検出部111aの検出信号がオンとオフとを繰り返すことがない。
【0203】
上述したように、失陥が生じた系統がいずれの系統であるのかにより、所定の弁制御をした後、リザーバ134(5)内のフルードの低下現象が異なる。液圧ブレーキユニット920(5)は、このようなフルードの液面低下の相違状態を、複雑な検出機構や制御機構を用いることなく、簡易かつ迅速に検知可能である。特に、リザーバ134(5)の振動が所定範囲内であるか否かを、車両が備えるヨーレイトセンサ等の出力を利用して算出することで、より正確かつ迅速簡易に図14(b)と図14(c)とに示す、低下状態の相違の検知に基づき、失陥系統を特定することが可能となるので好ましい。
【0204】
(第六の実施形態)
次に、上述した第四の実施形態と第五の実施形態とにおいて、液圧媒体量検出部111aが、所定の一定時間内に複数の所定回数だけオンとオフとを繰り返した場合に、失陥系統がいずれであるのかを判断する失陥系統判断部6172(6)について、以下に説明する。第六の実施形態で例示する失陥系統判断部6172(6)は、図14(b)に示すように、車両の振動により、リザーバ134内の液面がリザーバ液量低下検出ラインを上下し、これにより、液圧媒体量検出部111aが検出と非検出とを複数回繰り返す場合に、失陥系統を判断する。従って、一回のオンオフでの判断と比較して、さらに信頼性が高く、かつ確実に失陥系統を判断することが可能となるので好ましい。
【0205】
図15は、失陥系統判断部6172(6)の構成概要を例示するブロック図である。図15においては、第五の実施形態等と同一の部位については、同一の符号を付すこととする。また、同一の部位については、第五の実施形態等において上述した説明と重複を避けるため、ここでは説明を省略する。
【0206】
図15に示すように、失陥系統判断部6172(6)は、液圧媒体量検出部111aで検出した液面の低下検出信号についての信頼性を確認する信頼性確認部1410を備える。また、失陥系統判断部6172(6)は、予め所定回数を記録された所定回数記憶部1430と、予め所定時間を記録された所定時間記憶部1420とを備える。
【0207】
また、信頼性確認部1410は、所定時間記憶部1420が記憶する所定の一定時間内に、所定回数記憶部1430が記憶する所定回数だけ、液圧媒体量検出部111aが検出と非検出と(例えばオンとオフと)を繰り返したか否かを確認する。このため、信頼性確認部1410は、所定時間記憶部1420に記憶する所定の一定時間の間に、液圧媒体量検出部111aが検出と非検出と(例えばオンとオフと)を繰り返した回数を積算する積算部1411を備える。また、信頼性確認部1410は、積算部1411で積算した回数と、所定回数記憶部1430が記憶する所定回数と、を比較する比較部1412を備える。
【0208】
失陥系統判断部6172(6)は、例えば何らか理由により一時的な大きな振動が生じて、液圧媒体量検出部111aが単発で液面の低下を検出したとしても、これによる失陥系統の判断を実行しないので、誤って失陥系統を判断する懸念を低減できる。
【0209】
次に、図16を用いて、失陥系統判断部6172(6)に関連する動作処理について、説明する。図16は、失陥系統判断部6172(6)の動作処理を概念的に例示して説明するフロー図である。なお、図16の説明においては、上述した第五の実施形態等における動作処理と同一の処理については、説明の重複を避けるため説明を省略することとする。
【0210】
(ステップS1610)
上述したステップS110に対応するので、ここでは説明を省略する。
【0211】
(ステップS1620)
上述したステップS111に対応するので、ここでは説明を省略する。
【0212】
(ステップS1630)
上述したステップS112に対応するので、ここでは説明を省略する。
【0213】
(ステップS1640)
上述したステップS113に対応するので、ここでは説明を省略する。
【0214】
(ステップS1650)
上述したステップS114に対応するので、ここでは説明を省略する。
【0215】
(ステップS1660)
液圧媒体量検出部111aは、リザーバ134内に貯留されるブレーキフルードの液量が、所定量よりも少なくなったことを検出する信号が解除されたか否かを、失陥系統判断部6172に出力する。ここで、リザーバ134内のブレーキフルードの液面は、振動によりある程度波打っているものと考えられ、液圧媒体量検出部111aによる所定量より少ないことを示す検出信号は、図14(b)に例示するようにオンとオフとを繰り返される。
【0216】
従って、ステップS1610での検出信号が、ステップS1660において所定時間内に所定回数より多く、解除されれば、ステップS1670へと進むものとする。また、ステップS1610での検出信号が、ステップS1660において所定時間内に所定回数より多く、解除されなければ、ステップS1680へと進むものとする。
【0217】
より具体的には、積算部1411が、所定時間記憶部1420が記憶する予め定められた所定時間内に、液圧媒体量検出部111aが液量低下の検出と非検出とを繰り返した回数を、積算する。また、比較部1412が所定回数記憶部1430が記憶する予め定められた所定回数と、積算部1411が積算した回数と、を比較する。
【0218】
そして、比較部1412での比較により、積算部1411が積算した回数のほうが所定回数よりも大きければ、ステップS1670へと進む。また、比較部1412での比較により、積算部1411が積算した回数のほうが所定回数よりも大きくなければ、ステップS1680へと進む。
【0219】
(ステップS1670)
上述したステップS116に対応するので、ここでは説明を省略する。
【0220】
(ステップS1680)
上述したステップS117に対応するので、ここでは説明を省略する。
【0221】
失陥系統判断部6172(6)は、より安全かつ確実に失陥系統の判断処理を行なうので、判断処理後のバックアップ処理や復旧処理を適切かつ迅速に行なうことが可能となり、好ましい。
【0222】
(第七の実施形態)
次に、上述した第三の実施形態乃至第六の実施形態に示したブレーキECU170(3)またはブレーキECU170(4)において、カット弁制御部6171が、失陥系統判断部6172から判断結果のフィードバックにより、失陥が生じている系統のカット弁を閉状態とし、他方を開状態とする動作処理を実行する場合について、第七の実施形態として以下に説明する。
【0223】
また、第六の実施形態で示したブレーキECU170(4)において、カット弁制御部6171が、失陥系統判断部6172(6)から判断結果のフィードバックにより、失陥が生じている系統のカット弁を閉状態とし、他方を開状態とする動作処理を実行してもよい。
【0224】
なお、以下の説明においては、説明の重複を避けるため、第三の実施形態乃至第六の実施形態との比較において、異なる部位を例示して説明し、その余についてはここでは説明を省略することとする。また、図17は、第三の実施形態で説明した液圧ブレーキユニット620と同一の部位には同一の符号を付して、その説明を省略する。図17は、第七の実施形態にかかる不図示の液圧ブレーキユニットが具備するブレーキECU170(7)の構成を概念的に例示する図である。
【0225】
図17に示すように、ブレーキECU170(7)においては、カット弁制御部6171に失陥系統判断部6172から、失陥系統の判断結果のフィードバックを入力される。そして、カット弁制御部6171は、第一液圧系統161または第二液圧系統162のいずれかのうち、失陥系統判断部6172が失陥が生じていると判断した系統に具備された第一カット弁664または第二カット弁665を閉状態とし、失陥が生じていない側の第一カット弁664または第二カット弁665を開状態とする。
【0226】
この実施形態で示すブレーキECU170(7)は、失陥が生じた系統のブレーキフルードの流通を遮断するので、遮断後のフルードの漏れを停止させることができる。また、ブレーキECU170(7)は、失陥が生じていない系統のブレーキフルードの流通を確保するので、液圧を供給して制動力を付与することができる。従って、ブレーキECU170(7)は、ブレーキフルードの漏れを速やかに停止させてかつ制動力を維持し、失陥発生時においても安全かつ確実なブレーキ動作が可能な液圧ブレーキユニットを実現できる。
【0227】
次に、図18を用いてブレーキECU170(7)を備える不図示の液圧ブレーキユニットの動作処理について説明する。図18は、ブレーキECU170(7)を具備する液圧ブレーキシステムの動作処理を例示するフロー図である。なお、図18に示すフロー図は、第三の実施形態で示した液圧ブレーキユニット620がブレーキECU170(7)を具備する場合の動作を例示するものである。そこで、以下図18に示す各ステップに基づいて順次説明する。
【0228】
(ステップS180)
上述したステップS71に対応するので、ここでは説明を省略する。
【0229】
(ステップS181)
上述したステップS72に対応するので、ここでは説明を省略する。
【0230】
(ステップS182)
上述したステップS73に対応するので、ここでは説明を省略する。
【0231】
(ステップS183)
上述したステップS74に対応するので、ここでは説明を省略する。
【0232】
(ステップS184)
失陥系統判断部6172は、第二液圧系統162で失陥が生じているものと判断する。すなわち、ステップS182で第一カット弁664を閉状態としたにも拘わらず、リザーバ134のフルード貯留量が低下し続ける状態は、第二液圧系統162の特に第二のホイールシリンダ123R周辺での失陥による液漏れであると判断できる。
【0233】
また、失陥系統判断部6172は、第二液圧系統162に失陥が生じているという失陥情報をカット弁制御部6171にフィードバックする。
【0234】
(ステップS185)
カット弁制御部6171は、フィードバックされた失陥情報に基づいて、失陥が生じている第二液圧系統162側の第二カット弁665を閉状態とし、失陥が生じていない第一液圧系統161側の第一カット弁664を開状態とする。
【0235】
このステップS185での動作処理により、ブレーキフルードの漏れを速やかに停止させると共に、車両の制動力の低下を抑制して制動力を確保する液圧ブレーキユニットとできる。具体的には、第一液圧系統161を利用して液圧を第一のホイールシリンダ123Fに供給できるので、例えば失陥がリア側で生じた場合にも、リア側の漏れを止めて、フロント側でブレーキを効かせることも可能となる。
【0236】
(ステップS186)
失陥系統判断部6172は、第一液圧系統161で失陥が生じているものと判断する。すなわち、ステップS182で第一カット弁664を閉状態としたことにより、リザーバ134のフルード貯留量の低下が停止した状態は、第一液圧系統161の特に第一のホイールシリンダ123F周辺での失陥による液漏れであると判断できる。
【0237】
また、失陥系統判断部6172は、第一液圧系統161に失陥が生じているという失陥情報をカット弁制御部6171にフィードバックする。
【0238】
(ステップS187)
カット弁制御部6171は、フィードバックされた失陥情報に基づいて、失陥が生じている第一液圧系統161側の第一カット弁664を閉状態とし、失陥が生じていない第二液圧系統162側の第二カット弁665を開状態とする。
【0239】
このステップS187での動作処理により、ブレーキフルードの漏れを速やかに停止させると共に、車両の制動力の低下を抑制して制動力を確保する液圧ブレーキユニットとできる。具体的には、第二液圧系統162を利用して液圧を第二のホイールシリンダ123Rに供給できるので、例えば失陥がフロント側で生じた場合にも、フロント側の漏れを止めて、リア側でブレーキを効かせることも可能となる。
【0240】
この実施形態で例示したブレーキECU170(7)を具備する液圧ブレーキユニットは、失陥系統を判断した後、迅速かつ適切な弁制御を行なうので、失陥による液漏れを抑制しつつ、安全かつ確実に車両を停止させるのに必要な制動力を確保することができるので好ましい。
【0241】
(第八の実施形態)
次に、第三の実施形態乃至第七の実施形態においてストロークシミュレータ69を備えた液圧ブレーキユニット1920について、第八の実施形態として例示して説明する。液圧ブレーキユニット1920は、失陥系統を判断した後に、シミュレータカット弁68を適宜開閉制御することで、ブレーキペダル24の踏み込み動作に障害が発生することを低減することが可能である。また、液圧ブレーキユニット1920は、ストロークシミュレータ69にブレーキフルードが消費されてフルード残量の低下を早めたりすることを抑制可能である。
【0242】
なお、液圧ブレーキユニット1920は、上述した液圧ブレーキユニットの構成と同一の部位については、同一の符号を付して、その説明を省略する。図19は、液圧ブレーキユニット1920の構成概要を概念的に例示するブロック図である。
【0243】
液圧ブレーキユニット1920は、第一液圧系統161の第一カット弁664のマニュアル液圧供給部127側に、シミュレータカット弁68を介してストロークシミュレータ69を備える。
【0244】
シミュレータカット弁68は、ブレーキECU170(8)が備えるシミュレータカット弁制御部1930により開閉制御される。また、シミュレータカット弁制御部1930は、失陥系統判断部6172から失陥系統の判断結果を入手し、判断結果に対応してシミュレータカット弁68を開閉制御する。
【0245】
具体的には、シミュレータカット弁制御部1930は、失陥系統判断部6172から入手した判断結果が第一液圧系統161に失陥があるとの判断であれば、シミュレータカット弁68を開状態とする。また、シミュレータカット弁制御部1930は、失陥系統判断部6172から入手した判断結果が第二液圧系統162に失陥があるとの判断であれば、シミュレータカット弁68を閉状態とする。
【0246】
すなわち、第一液圧系統161に失陥がある場合にはカット弁制御部6171が第一カット弁664を閉状態とするので、このままでは、仮にブレーキペダル124の踏み込まれた場合のブレーキフルードの流路がいわば閉塞された状態となり、いわゆる油圧剛性が高くてペダル踏み込み困難な状況が生じることが懸念される。このようなペダル踏み困難な状況を回避するために、シミュレータカット弁制御部1930は、シミュレータカット弁68を開状態とする。これにより、ブレーキペダル124の踏み込み困難が解消され、例えばリニアREGアシストモード等を行なうことも可能となる。
【0247】
また、第二液圧系統162に失陥がある場合にはカット弁制御部6171が第二カット弁665を閉状態として、残存するブレーキフルードで第一液圧系統161を介して制動力を確保する必要があるところ、このままでは、第一液圧系統161からストロークシミュレータ69にブレーキフルードが流れて消費される懸念が生じる。このようにストロークシミュレータ69にブレーキフルードが消費されることに起因する第一のホイールシリンダ123Fでの制動力の低減を回避するために、シミュレータカット弁制御部1930は、シミュレータカット弁68を閉状態とする。これにより、失陥から漏れずに残存しているブレーキフルードを有効に活用する液圧ブレーキユニット1920を実現できる。
【0248】
また、図20は、図19に示した液圧ブレーキユニット1920に対して、ブレーキECU170(8)が、さらに振動判断部910を具備したブレーキECU170(8a)を例示するブロック概念図である。なお、図20において、液圧ブレーキユニットの構成は、ブレーキECU170(8a)を除き図19及び上述の実施形態に示すものと同一であるので同一の符号を付与し、説明が重複するのでここでは説明を省略する。
【0249】
ブレーキECU170(8a)は、振動判断部910を具備し、リザーバ134(5)の振動が、所定の振動範囲内にある場合に失陥系統を判断する。このため、さらに正確に失陥系統を判断できると共に、失陥系統の判断後、シミュレータカット弁制御部1930が上述のように適切にシミュレータカット弁68を制御するので、さらに好ましい。
【0250】
次に、ブレーキECU170(8a)を備える液圧ブレーキユニットの典型的な動作処理例について図21を用いて説明する。図21は、ブレーキECU170(8a)を備える第八の実施形態の液圧ブレーキユニットの動作処理の典型例を示すフロー図である。そこで、図21に示す各ステップごとに、ブレーキECU170(8a)を具備する液圧ブレーキユニット1920の動作処理について、図19及び図20を参照しながら詳細に説明する。
【0251】
(ステップS2100)
液圧媒体量検出部111a(3)は、リザーバ134(5)が貯留するブレーキフルードの液量が、所定量よりも少なくなったことを検出した否かを判断する。液圧媒体量検出部111a(3)が、リザーバ134(5)が貯留するブレーキフルードの液量が、所定量よりも少なくなったことを検出したらステップS2110へと進む。液圧媒体量検出部111a(3)が、リザーバ134(5)が貯留するブレーキフルードの液量が、所定量よりも少なくなったことを検出しなければステップS2100で待機する。
【0252】
液圧ブレーキユニット1920の液圧媒体量検出部111a(3)は、例えば液量が所定量より低下した場合にオンとなり、液量が所定量より低下していない場合にはオフとなるものでよい。また、液圧媒体量検出部111a(3)は、リザーバ134(5)のブレーキフルードの液量をリアルタイムかつリニアに検出できるものであれば、液量減少状態がより正確に認識できるので、好ましい。
【0253】
なお、液圧媒体量検出部111a(3)は、ブレーキフルードの液量が所定量よりも少なくなったことを検出した検出信号(例えばオン信号)を、分離弁制御部110(2)とカット弁制御部6171と失陥系統判断部6172とに通知するものとする。
【0254】
(ステップS2110)
分離弁制御部110(2)は、液圧媒体量検出部111a(3)から通知されたブレーキフルード低下の検出信号の継続時間が、予め定められた低下検出所定時間よりも長いか否かを判断する。ブレーキフルード低下の検出信号の継続時間が、予め定められた低下検出所定時間よりも長ければ、ステップS2120へと進む。また、ブレーキフルード低下の検出信号の継続時間が、予め定められた低下検出所定時間よりも長くなければ、ステップS2100へと戻る。
【0255】
具体的には、分離弁制御部110(2)の比較部113が、低下検出所定時間記憶部112に記録された所定時間と、継続時間積算部114が積算した液圧媒体量検出部111a(3)からの検出オンの継続時間と、を比較し、いずれが長いのかを判断する。比較部113が比較した結果、継続時間積算部114が積算した液圧媒体量検出部111a(3)からの検出オンの継続時間が、低下検出所定時間記憶部112に記録された所定時間よりも長ければ、ステップS2120へと進む。また、比較部113が比較した結果、継続時間積算部114が積算した液圧媒体量検出部111a(3)からの検出オンの継続時間が、低下検出所定時間記憶部112に記録された所定時間よりも長くなければ、ステップS2100へと戻る。
【0256】
(ステップS2120)
分離弁制御部110(2)は、分離弁160を閉状態とする。このステップS2120での動作処理により、液圧ブレーキユニット1920は、第一液圧系統161と第二液圧系統162との間で、主流路145を介したブレーキフルードの流通を遮断することができる。
【0257】
従って、失陥が生じた液圧系統とは異なる液圧系統から、ブレーキフルードが主流路145を経由して流出し続けたり、その結果リザーバ134(5)の貯留するブレーキフルードが枯渇することを回避して制動力を確保可能となる。また、ブレーキフルードの減少速度を低減させていわゆる時間を稼ぐことができるので、その間に安全の確保と必要な所望の制動処理やバックアップ処理を実行することも可能となる。
【0258】
なお、分離弁制御部110(2)は、分離弁160を閉状態としたことを示す確認信号を、カット弁制御部6171に送出し、この確認信号によりカット弁制御部6171は、分離弁160が閉状態とされたことを認識するものとする。また、分離弁制御部110(2)は、分離弁160を閉状態としたことを示す確認信号を、失陥系統判断部6172にも送出するものとする。
【0259】
(ステップS2130)
カット弁制御部6171は、第一カット弁664を閉状態とする。このステップS2130での動作処理は上述したステップS2120での処理と共に、ブレーキフルードの貯留量を減少させる原因となっている失陥からのブレーキフルードの漏れを停止させ、および/または後述の各ステップで説明する失陥部位を特定するための準備動作となる。
【0260】
なお、カット弁制御部6171は、第一カット弁664を閉状態としたことを示す確認信号を、失陥系統判断部6172に送出するものとする。
【0261】
(ステップS2140)
振動判断部910は、ヨーレイトセンサまたはGセンサ等からの出力に基づいて、車両の揺れが所定の揺れ範囲内であるか否かを判断する。振動判断部910が、車両の揺れが所定の揺れ範囲内であると判断すればステップS2150へと進む。また、振動判断部910が、車両の揺れが所定の揺れ範囲内ではないと判断すればステップS2140で待機する。
【0262】
また、振動判断部910は、好ましくはリザーバ134(5)の振動が所定の振動範囲内であるか否かを判断できることがよい。このため、リザーバ134(5)に、不図示の振動ピックアップセンサまたは揺れ検出計等を取り付け、その出力を振動判断部910に入力してもよい。
【0263】
より具体的には、振動判断部910が備える振動比較部1002は、リザーバ134(5)から入力されたリザーバ134(5)の振動や揺れを検出する検出信号と、所定振動範囲記憶部1001に予め記録されている所定振動範囲と、を比較し、リザーバ134(5)の揺れや振動が、所定の範囲内であるか否かを判断することとなる。
【0264】
なお、上述したように、所定振動範囲記憶部1001に予め記録されている所定振動範囲は、リザーバ134(5)内のブレーキフルードの液面が、検出ラインよりもある程度低下した場合に、その揺れにより液面が検出ラインを上下する程度の振動範囲であることが好ましい。
【0265】
所定の振動範囲が、大きすぎればリザーバ134(5)内のブレーキフルードの液面が、検出ラインよりも極端に低下し、典型的には枯渇寸前であるような場合においても、大きな振動により、液面が検出ラインを超えて検出オンオフされる状況も想定されるので好ましくない。
【0266】
また、所定の振動範囲が、小さすぎればリザーバ134(5)内のブレーキフルードの液面が、検出ラインよりも若干低化した程度でも、液面が検出ラインを超えずに検出オンオフがされないこととなり、液面が大きく低下した場合との峻別が不可能となる事態も想定されるので、好ましくない。
【0267】
このため、好ましくは、リザーバ134(5)の形状や大きさ、構造等により、オンオフ検出ラインと低下量と液面の揺れ状況との関係から、適宜所定の振動範囲を設定するものとする。
【0268】
(ステップS2150)
失陥系統判断部6172は、液圧媒体量検出部111a(3)によるリザーバ134(5)の液量低下の検出が、解除されたか否かを判断する。失陥系統判断部6172が、液圧媒体量検出部111a(3)によるリザーバ134(5)の液量低下の検出が、解除されたと判断すれば、ステップS2160へと進む。また、失陥系統判断部6172が、液圧媒体量検出部111a(3)によるリザーバ134(5)の液量低下の検出が、解除されていないと判断すれば、ステップS2190へと進む。
【0269】
ここで、液圧媒体量検出部111a(3)は、リザーバ134(5)内の液面高さが、所定の検出ラインより下がっている間は、継続して検出オン信号を出力し続けるものとする。また、失陥系統判断部6172は、液圧媒体量検出部111a(3)からの検出信号を監視し、上述したステップS2140の条件が満たされる場合に、検出オンが解除されたか否か(検出オフとなったか否か)を判断する。
【0270】
(ステップS2160)
上述のステップS2150において、検出オンが解除されたということは、リザーバ134(5)内の液面低下が、枯渇または枯渇に向けて低下し続けていることはなく、検出ラインから所望の程度で留まっていることを示すものと考えられる。
【0271】
そして、液圧ブレーキユニット1920は、分離弁160と第一カット弁664とを閉状態としている。従って、これらの閉状態において、ブレーキフルードの漏れが留保されるということは、第一液圧系統161に失陥が生じているものと考えられる。
【0272】
従って、失陥系統判断部6172は、第一液圧系統161及び/または第一のホイールシリンダ123Fの失陥であると判断する。なお、失陥系統判断部6172は、その判断結果をカット弁制御部6171とシミュレータカット弁制御部1930とに出力するものとする。
【0273】
(ステップS2170)
カット弁制御部6171は、第一カット弁664を閉状態とし、第二カット弁665を開状態とする。すなわち、カット弁制御部6171は、失陥が生じている側のカット弁を閉状態としてさらなる液漏れを止め、失陥が生じていない側のカット弁を開状態として液圧の供給及びそれによる制動を可能とする。
【0274】
(ステップS2180)
シミュレータカット弁制御部1930は、シミュレータカット弁68を開状態とする。ブレーキECU170(8a)は、シミュレータカット弁68を開状態とすることにより、第一液圧系統161内への液圧封じ込めを回避し、ブレーキフルードの回避先を確保する。このステップS2180での動作処理により、車両の運転者はブレーキペダル124を踏み込むことが可能となり、走行時からの緊急制動動作すなわちリニア制御モードにレギュレータ圧を加重して制動するREGアシストモードによる制動等も可能となる。
【0275】
(ステップS2190)
上述のステップS2150において、検出オンが解除されなかったということは、リザーバ134(5)内の液面低下が、枯渇または枯渇に向けて低下し続けており、検出ラインから所望の程度で留まらずに、さらに液面低下していることを示すものと考えられる。
【0276】
そして、液圧ブレーキユニット1920は、分離弁160と第一カット弁664とを閉状態としている。従って、これらの閉状態において、ブレーキフルードの漏れが止まらず漏れ続けるということは、第二液圧系統162に失陥が生じているものと考えられる。
【0277】
従って、失陥系統判断部6172は、第二液圧系統162及び/または第二のホイールシリンダ123Rの失陥であると判断する。なお、失陥系統判断部6172は、その判断結果をカット弁制御部6171とシミュレータカット弁制御部1930とに出力するものとする。
【0278】
(ステップS2200)
カット弁制御部6171は、第二カット弁665を閉状態とし、第一カット弁664を開状態とする。すなわち、カット弁制御部6171は、失陥が生じている側のカット弁を閉状態としてさらなる液漏れを止め、失陥が生じていない側のカット弁を開状態として液圧の供給及びそれによる制動を可能とする。
【0279】
(ステップS2210)
シミュレータカット弁制御部1930は、シミュレータカット弁68を閉状態とする。ブレーキECU170(8a)は、シミュレータカット弁68を閉状態とすることにより、ストロークシミュレータ69でのブレーキフルードの消費を阻止し、典型的には第一のホイールシリンダ123Fのみにブレーキフルードを供給する。このため、漏れずに残余するブレーキフルードを、車両の制動の為に有効に利用することができる。
【0280】
上述するように、第八の実施形態においては、ストロークシミュレータ69を備える場合においても、他の複数の弁制御と連携して失陥からの液漏れを停止させ、また失陥部位を特定し、かつ制動力を確保できる液圧ブレーキユニットとなるので、さらに好ましい。
【0281】
(第九の実施形態)
第九の実施形態では、上述した第1の実施形態乃至第八の実施形態において、液圧媒体量検出部111a、111a(3)、111a(3b)が、所定量より液量が少ないことを検出する継続時間によって、ブレーキECUが、上述した第1の実施形態乃至第八の実施形態に示した処理をする場合と、バックアップモードに移行する場合と、を分別処理する典型例について、図22を用いて説明する。
【0282】
図22は、第九の実施形態にかかるブレーキECU170(9)の概要を例示した概念ブロック図である。図22においては、第一の実施形態乃至第八の実施形態で各々上述した各ブレーキECUの構成と機能とを具備するものとする。また、説明の重複を避けるため、異なる部位をブレーキECU170(9)として示すこととし、また同一の部位には同一の符号を付して説明を省略すると共に、図面への記載を省略するものとする。
【0283】
ブレーキECU170(9)は、液圧媒体量検出部111a(3)がリザーバ134(5)の液量低下を検出する継続時間を積算する継続時間積算部22114を備える。また、ブレーキECU170(9)は、分離弁制御部110(2)が分離弁160を閉状態とするか否かの判断閾値時間となる低下検出所定時間(X)を記憶する低下検出所定時間記憶部22112を備える。
【0284】
また、ブレーキECU170(9)は、液圧ブレーキユニットをバックアップモードに移行させるか否かの判断閾値時間となるバックアップモード移行判断時間(Z)を記憶するバックアップモード移行判断時間記憶部2220を備える。また、ブレーキECU170(9)は、継続時間積算部22114が積算した液量低下検出継続時間と、低下検出所定時間(X)及びバックアップモード移行判断時間(Z)とを比較する比較部22113を備える。
【0285】
また、ブレーキECU170(9)は、継続時間積算部22114が積算した液量低下検出継続時間が、低下検出所定時間(X)より長ければ第一の実施形態乃至第八の実施形態で説明した各処理のうちいずれかの処理動作を実行する。また、この際に、通知部2230を利用して、軽いランプ点灯や簡便な警告音などにより車両の運転者に、この処理が実行されることを通知する。
【0286】
また、ブレーキECU170(9)は、継続時間積算部22114が積算した液量低下検出継続時間が、バックアップモード移行判断時間(Z)より長ければ、全ての弁の通電制御を放棄して無通電とするバックアップモードに移行する。また、この際に、通知部2230を利用して、ランプ点灯や警告音などにより車両の運転者に、バックアップモードに移行処理がされ、ブレーキフィーリングが変化することを通知する。バックアップモードは、典型的にはレギュレータ33とマスタシリンダ32の圧を、ホイールシリンダ23に供給するHBモード(ハイドロブースターモード)である。
【0287】
次に、図23を用いてブレーキECU170(9)の処理動作について、各ステップごとに説明する。図23は、第九の実施形態の動作処理の典型例を例示するフロー図である。また、図23は、第八の実施形態で説明した動作処理に加重して、処理を行なう例を示すものである。なお、下記の説明においては、既に説明した各ステップと同一の処理についてはステップ番号を引用し、その説明を省略することとする。
【0288】
(ステップS2300)
上述したステップS2100に対応するので、ここでは説明を省略する。
【0289】
(ステップS2310)
ブレーキECU170(9)は、液圧媒体量検出部111a(3)から通知されたブレーキフルード低下の検出信号の継続時間が、予め定められた低下検出所定時間(X)よりも長いか否かを判断する。ブレーキフルード低下の検出信号の継続時間が、予め定められた低下検出所定時間よりも長ければ、ステップS2320へと進む。また、ブレーキフルード低下の検出信号の継続時間が、予め定められた低下検出所定時間よりも長くなければ、ステップS2300へと戻る。
【0290】
具体的には、比較部22113が、低下検出所定時間記憶部22112に記録された所定時間と、継続時間積算部22114が積算した液圧媒体量検出部111a(3)からの検出オンの継続時間と、を比較し、いずれが長いのかを判断する。比較部22113が比較した結果、継続時間積算部22114が積算した液圧媒体量検出部111a(3)からの検出オンの継続時間が、低下検出所定時間記憶部22112に記録された所定時間よりも長ければ、ステップS2320へと進む。また、比較部22113が比較した結果、継続時間積算部22114が積算した液圧媒体量検出部111a(3)からの検出オンの継続時間が、低下検出所定時間記憶部22112に記録された所定時間よりも長くなければ、ステップS2300へと戻る。
【0291】
(ステップS2320)
ブレーキECU170(9)は、通知部2230から車両の運転者に事前警告通知を行なう。通知部2230は、例えば一回のランプ点滅をしたり、一回の警告音を出力したりして、未だバックアップモードに移行はしていないものの、失陥の発生が疑われる状況にあることを通知する。
【0292】
(ステップS2330)
ブレーキECU170(9)は、液圧媒体量検出部111a(3)から通知されたブレーキフルード低下の検出信号の継続時間が、予め定められたバックアップモード移行判断時間(Z:但しZ>Xとする)よりも長いか否かを判断する。ブレーキフルード低下の検出信号の継続時間が、予め定められたバックアップモード移行判断時間よりも長ければ、ステップS2340へと進む。また、ブレーキフルード低下の検出信号の継続時間が、予め定められたバックアップモード移行判断時間よりも長くなければ、図21に示したステップS2120へと進む。
【0293】
具体的には、比較部22113が、バックアップモード移行判断時間記憶部2220に記録された所定時間と、継続時間積算部22114が積算した液圧媒体量検出部111a(3)からの検出オンの継続時間と、を比較し、いずれが長いのかを判断する。比較部22113が比較した結果、継続時間積算部22114が積算した液圧媒体量検出部111a(3)からの検出オンの継続時間が、バックアップモード移行判断時間記憶部2220に記録された所定時間よりも長ければ、ステップS2340へと進む。また、比較部22113が比較した結果、継続時間積算部22114が積算した液圧媒体量検出部111a(3)からの検出オンの継続時間が、バックアップモード移行判断時間記憶部2220に記録された所定時間よりも長くなければ、図21に示したステップS2120へと進む。
【0294】
なお、図21に示したフロー工程を実行する間においても、このステップS2330の条件を満足する継続時間となった場合には、図21での処理を中断し、ステップS2340へと進むものとする。
【0295】
(ステップS2340)
ブレーキECU170(9)は、液圧ブレーキユニットの弁開閉制御を放棄し通電をせずに、バックアップモードへと移行する。なお、バックアップモードでは、典型的には、常開型電磁制御弁であるマスタカット弁64に対応する第一カット弁664と、レギュレータカット弁65に対応する第二カット弁665が開状態とされ、マスタシリンダユニット27に対応するマニュアル液圧供給部127の液圧が、ホイールシリンダ123R,123Fに供給される。
【0296】
(ステップS2350)
ブレーキECU170(9)は、通知部2230を用いて車両の運転者に、バックアップモードへの移行を警告通知する。これにより、バックアップモード移行に伴うブレーキフィーリングの変化を、運転者に知らせることができ、運転者が違和感を覚えることを低減できる。なお、ステップS2350とステップS2340とは、その工程順序を差し替えてもよい。
【0297】
この実施形態で示す動作例においては、バックアップモードへ移行する前段階として、事前警告処理をしたり、失陥からの液漏れや失陥部位の特定等の処理を行なう。このため、より慎重かつ適切にバックアップモードへの移行可否を判断するので、不用意にブレーキフィーリングを悪化させることがないので、好ましい。
【0298】
(第十の実施形態)
次に、第一の実施形態乃至第八の実施形態で示した処理(以下、暫定処置という)に加えて、その暫定処置の間に、車両の運転者または自動制動制御からの制動指示があった場合に、リニア制御モードに移行する動作例について説明する。
【0299】
第十の実施形態は、液量の低下による失陥の発生を検出し、液漏れ停止処置や失陥部位の特定処置等をしている間に、制動指示(制動オン)があった場合には、制動指示を優先的に動作させて車両を停止または減速させることができる。
【0300】
図24は、第十の実施形態の動作処理の典型例を示すフロー図ある。
【0301】
(ステップS2400)
上述したステップS2300に対応するので、ここでは説明を省略する。
【0302】
(ステップS2410)
上述したステップS2310に対応するので、ここでは説明を省略する。
【0303】
(ステップS2420)
上述のステップS2320の警告処理を行なう。また、第一の実施形態乃至第八の実施形態で示した暫定処理、すなわち分離弁160の閉状態、液漏れの停止処置、失陥部位の特定処置、制動力確保の処置等を実行する。
【0304】
(ステップS2430)
ブレーキECU70は、車両の運転者からブレーキペダル124の踏み込みによる制動指示があるか否かを判断する。制動指示があれば、ステップS2450へと進む。制動指示がなければ、ステップS2440へと進む。
【0305】
(ステップS2440)
ブレーキECU70は、自動制動制御による制動指示があるか否かを判断する。制動指示があれば、ステップS2450へと進む。制動指示がなければ、ステップS2460へと進む。
【0306】
(ステップS2450)
ブレーキECU70は、その制御をリニア制御モードとする。これにより、動力液圧源30からの液圧をホイールシリンダ23に供給し、制動力を付与することが可能となる。
【0307】
(ステップS2460)
上述したステップS2330に対応するので、ここでは説明を省略する。また、継続時間が所定のバックアップモード移行判断時間よりも長くなければ、ステップS2410へと戻る。
【0308】
(ステップS2470)
上述したステップS2340に対応するので、ここでは説明を省略する。
【0309】
(ステップS2480)
上述したステップS2350に対応するので、ここでは説明を省略する。
【0310】
第十の実施形態に示す動作処理においては、失陥が生じた場合に暫定処理をする間においても、制動指示があった場合には、可能な限り通常の制動動作とすることができるので、違和感のない制動の実現と、失陥への対応処理とをバランス良く両立できることとなり、好ましい。
【0311】
また、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、自明な範囲で適宜構成を変更し、また自明な範囲で動作及び処理を変更して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0312】
【図1】第一の実施形態にかかる液圧ブレーキユニットの構成を概念的に示すブロック構成図である。
【図2】液圧ブレーキユニットの動作処理を概念的に説明するフロー図である。
【図3】液圧ブレーキユニットを示す系統図である。
【図4】第二の実施形態のブレーキECUの概念的な構成を例示するブロック図である。
【図5】ブレーキECUでの処理について、概念的に示すフロー図である。
【図6】第三の実施形態にかかる液圧ブレーキユニットを概念的に示すブロック構成図である。
【図7】液圧ブレーキユニットの動作処理の概要を概念的に説明するフロー図である。
【図8】液圧媒体量検出部の変形例を概念的に示すブロック図である。
【図9】第四の実施形態にかかる液圧ブレーキユニットの構成概念を例示するブロック図である。
【図10】振動判断部の概念的な構成を例示するブロック図である。
【図11】液圧ブレーキユニットの動作処理の概要を説明するフロー図である。
【図12】液圧ブレーキユニットの動作処理の変形例を例示するフロー図である。
【図13】第五の実施形態にかかる液圧ブレーキユニットの概略構成を例示するブロック図である。
【図14】(a)は第五の実施形態にかかるリザーバの構造を概念的に例示する図である。(b)は仮に第一液圧系統または第一のホイールシリンダでの失陥により、ブレーキフルードの液漏れが生じた場合の状態を示す図である。(c)は仮に第二液圧系統または第二のホイールシリンダでの失陥により、ブレーキフルードの液漏れが生じた場合の状態を示す図である。
【図15】失陥系統判断部の構成概要を例示するブロック図である。
【図16】失陥系統判断部の動作処理を概念的に例示して説明するフロー図である。
【図17】第七の実施形態にかかるブレーキECUの構成を概念的に例示する図である。
【図18】第七の実施形態のブレーキECUを具備する液圧ブレーキシステムの動作処理を例示するフロー図である。
【図19】第八の実施形態の液圧ブレーキユニットの構成概要を概念的に例示するブロック図である。
【図20】第八の実施形態のブレーキECUが、振動判断部を具備するブロック概念図である。
【図21】第八の実施形態の液圧ブレーキユニットの動作処理の典型例を示すフロー図である。
【図22】第九の実施形態にかかるブレーキECUの概要を例示した概念ブロック図である。
【図23】第九の実施形態の動作処理の典型例を例示するフロー図である。
【図24】第十の実施形態の動作処理の典型例を示すフロー図ある。
【符号の説明】
【0313】
20・・液圧ブレーキユニット、21・・ディスクブレーキユニット、22・・ブレーキディスク、23・・ホイールシリンダ、24・・ブレーキペダル、25・・ストロークセンサ、27・・マスタシリンダユニット、30・・動力液圧源、31・・液圧ブースタ、32・・マスタシリンダ、33・・レギュレータ、34・・リザーバ、35・・アキュムレータ、35a・・リリーフバルブ、36・・ポンプ、36a・・モータ、37・・マスタ配管、38・・レギュレータ配管、39・・アキュムレータ配管、40・・液圧アクチュエータ、41・・個別流路、45・・主流路、45a・・第1流路、45b・・第2流路、46・・減圧用流路、51・・ABS保持弁、55・・リザーバ流路、56・・ABS減圧弁、60・・分離弁、61・・マスタ流路、62・・レギュレータ流路、63・・アキュムレータ流路、64・・マスタカット弁、65・・レギュレータカット弁、66・・増圧リニア制御弁、67・・減圧リニア制御弁、68・・シミュレータカット弁、69・・ストロークシミュレータ、70・・ブレーキ電子制御部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、液圧ブレーキユニットと液圧ブレーキユニットの制御方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧系統内の油圧の供給や停止をアクチュエータにより電子制御して、各ホイールシリンダに供給する油圧を調整するブレーキ制御装置が知られている。このようなブレーキ制御装置は、動力液圧源としてアキュムレータを備えることもでき、ブレーキペダルからの操作に応じたマスタシリンダユニットからの油圧とともに、ホイールシリンダを動作させる動力源となる。
【0003】
また、ブレーキ制御装置は、適切な油圧系統の制御を行なうために複数の油圧センサを備えている。そして、油圧センサで検出した油圧に基づいて、油圧系統に設けられた制御弁を開閉して連通遮蔽することにより、油圧の伝達供給と遮断とを制御して油圧を所望の値に調整して供給する。
【0004】
また、油圧系統に何らかの失陥が生じ、失陥個所からブレーキフルードが漏れ出した場合には、所望の油圧を保持生成困難な状況も生じ得る。このような失陥状態を可能な限り回避し、油圧系統が所望の油圧を生成できず制動動作に大きな支障を来すことがないように様々な提案が為されている。
【0005】
例えば、下記特許文献1には、失陥の発生等によりブレーキ回生協調制御を行なわない場合の予備的な制御モードとして、ハイドロブースタモードを用いることが記載されている。また、ハイドロブースタモードでは、分離弁を閉状態とすることにより、第一の系統と第二の系統とを分離する。これにより、配管からの液漏れが仮に生じた場合においても、液漏れの生じていない系統により制動力を付与することを可能とすることが提案されている。
【0006】
また、下記特許文献2には、複数のブレーキシリンダと低圧源との間に設けられた複数の電磁減圧用制御弁の一部が、電磁リニア弁とされて、その減圧用の電磁リニア弁の制御により複数のブレーキシリンダの液圧が共通に制御されることが記載されている。そして、油圧センサで検出する液圧の関係に基づいて、液漏れが生じているか否かを判断することが提案されている。
【特許文献1】特開2007−131247号公報
【特許文献2】特開2006−264675号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、仮に液圧媒体に漏れが生じた場合に、速やかに液圧媒体の漏れによる枯渇を抑止させて、かつ制動動作への影響を低減させることについては改善の余地がある。
【0008】
本発明は、上述のような問題点に鑑み為されたものであり、迅速かつ容易に失陥有無を判断し、液圧媒体の漏れによる枯渇を抑制する液圧ブレーキユニットと液圧ブレーキユニットの制御方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある態様では、液圧媒体を貯留するリザーバから供給された液圧媒体を加圧し、運転者によるブレーキ操作量に応じた液圧を生成するマニュアル液圧供給部と、マニュアル液圧供給部で生成した液圧を第一のホイールシリンダへ伝達するように、マニュアル液圧供給部と第一のホイールシリンダとの間を連通する第一液圧系統と、マニュアル液圧供給部で生成した液圧を第二のホイールシリンダへ伝達するように、マニュアル液圧供給部と第二のホイールシリンダとの間を連通する第二液圧系統と、第一液圧系統と第二液圧系統との間を連通する主流路に設けられた分離弁と、分離弁を開閉制御する分離弁制御部と、リザーバに貯留された液圧媒体が所定量より少ないか否かを検出する液圧媒体量検出部と、を有するブレーキECUとを備える液圧ブレーキユニットであって、分離弁制御部は、液圧媒体量検出部が、液圧媒体が所定量より少ないことを検出した場合に、分離弁を閉状態とする液圧ブレーキユニットとする。
【0010】
また、本発明のある態様では好ましくは分離弁制御部が、液圧媒体量検出部が、液圧媒体が所定量より少ないことを検出した状態が低下検出所定時間継続した場合に、分離弁を閉状態とする液圧ブレーキユニットとしてもよい。
【0011】
また、本発明の他の態様では、第一液圧系統は液圧媒体を連通遮断する第一カット弁を備え、かつ第二液圧系統は液圧媒体を連通遮断する第二カット弁を備え、液圧媒体量検出部は、リザーバに貯留された液圧媒体の低下量を検出可能であって、ブレーキECUは、分離弁が閉状態である場合に、第一カット弁または第二カット弁のいずれかを閉状態として液圧媒体を遮断するカット弁制御部と、カット弁制御部が第一カット弁または第二カット弁のいずれかを閉状態とした場合に、液圧媒体量検出部が検出したリザーバに貯留された液圧媒体の低下量が、所定の低下量より大きいか否かにより、失陥の発生が第一液圧系統と第二液圧系統とのいずれであるのかを判断する失陥系統判断部を備える液圧ブレーキユニットとしてもよい。
【0012】
また、本発明の他の態様では、第一液圧系統は液圧媒体を連通遮断する第一カット弁を有し、第二液圧系統は液圧媒体を連通遮断する第二カット弁を有し、ブレーキECUは、分離弁が閉状態である場合に、第一カット弁または第二カット弁のいずれかを閉状態として液圧媒体を遮断するカット弁制御部と、リザーバの振動が所定の振動範囲内か否かを判断する振動判断部と、カット弁制御部が第一カット弁または第二カット弁のいずれかを閉状態とした場合かつ振動判断部がリザーバの振動が所定の振動範囲内であると判断した場合に、液圧媒体量検出部が液圧媒体が所定量より少ないと検出したか否かにより、失陥の発生が第一液圧系統と第二液圧系統とのいずれであるのかを判断する失陥系統判断部と、を備える液圧ブレーキユニットとしてもよい。
【0013】
また、本発明の他の態様では、好ましくはリザーバが、第一液圧系統に供給する液圧媒体を貯留する第一リザーバ部と、第二液圧系統に供給する液圧媒体を貯留し、かつ第一リザーバ部よりも容量が大きい第二リザーバ部と、を具備し、カット弁制御部は、分離弁が閉状態である場合に、第一液圧系統が備える第一カット弁を閉状態として液圧媒体を遮断する液圧ブレーキユニットとしてもよい。
【0014】
また、本発明の他の態様では、好ましくは失陥系統判断部が、液圧媒体量検出部が、所定時間内に所定回数より多く、液圧媒体が所定量より少ないことの検出と非検出とを繰り返したか否かを判断する信頼性確認部を備え、カット弁制御部が第一カット弁または第二カット弁のいずれかを閉状態とした場合かつ振動判断部がリザーバの振動が所定の振動範囲内であると判断した場合に、信頼性確認部が、液圧媒体量検出部が、所定時間内に所定回数より多く、液圧媒体が所定量より少ないことの検出と非検出とを繰り返したと判断すると、第一液圧系統または第二液圧系統のいずれか閉状態とした系統に失陥が生じていると判断する失陥系統判断部である液圧ブレーキユニットとしてもよい。
【0015】
また、本発明の他の態様では、さらに好ましくは失陥系統判断部が、第一液圧系統または第二液圧系統のいずれの系統に失陥が生じているかを判断した後、カット弁制御部は、失陥系統判断部が失陥が生じていると判断した系統を遮断状態とし、失陥系統判断部が失陥が生じていないと判断した系統を連通状態とするように、第一カット弁と第二カット弁とを制御する液圧ブレーキユニットとしてもよい。
【0016】
また、本発明の他の態様では、さらに好ましくは第一液圧系統または第二液圧系統が、各々の系統が備える第一カット弁または第二カット弁とマニュアル液圧供給部との間に、シミュレータカット弁を介して、運転者によるブレーキ踏力に応じた反力を創出するストロークシミュレータを備え、ブレーキECUは、シミュレータカット弁を開閉制御するシミュレータカット弁制御部を備え、失陥系統判断部が、第一液圧系統または第二液圧系統のいずれの系統に失陥が生じているかを判断した後、カット弁制御部は、失陥系統判断部が失陥が生じていると判断した系統を遮断状態とし、失陥系統判断部が失陥が生じていないと判断した系統を連通状態とするように、第一カット弁と第二カット弁とを開閉制御し、シミュレータカット弁制御部は、失陥系統判断部が失陥が生じていると判断した系統にシミュレータカット弁が備えられている場合には、シミュレータカット弁を開状態とし、失陥系統判断部が失陥が生じていないと判断した系統にシミュレータカット弁が備えられている場合には、シミュレータカット弁を閉状態とする液圧ブレーキユニットとしてもよい。
【0017】
また、本発明の他の態様では、さらに好ましくは液圧媒体量検出部が、液圧媒体が所定量より少ないことを検出した状態が低下検出所定時間継続した場合に、分離弁制御部が分離弁を閉状態とし、液圧媒体量検出部が、液圧媒体が所定量より少ないことを検出した状態が低下検出所定時間より長い所定のバックアップモード移行判断時間継続した場合に、ブレーキECUがマニュアル液圧供給部の液圧を、運転者のブレーキ操作の有無に依存せず、第一のホイールシリンダと第二のホイールシリンダとに伝達するバックアップモードに移行させるとともに、車両の運転者に失陥の発生を通知する液圧ブレーキユニットとしてもよい。
【0018】
また、本発明の他の態様では、さらに好ましくは第一のホイールシリンダまたは第二のホイールシリンダの少なくともいずれか一方に伝達される液圧を、運転者によるブレーキ操作有無とは独立に制御する自動制動制御部を備え、分離弁制御部が、分離弁を閉状態とする場合に、運転者によるブレーキ操作または自動制動制御による制動指示があると、分離弁制御部が、分離弁を開状態とし、ブレーキECUは、液圧媒体を動力的に加圧する動力液圧源から第一のホイールシリンダと第二のホイールシリンダとに液圧を伝達するリニア制御モードとする液圧ブレーキユニットとしてもよい。
【0019】
また、本発明のある態様では、液圧媒体を貯留するリザーバから供給された液圧媒体を加圧し、運転者によるブレーキ操作量に応じた液圧を生成するマニュアル液圧供給部と、マニュアル液圧供給部で生成した液圧を第一のホイールシリンダへ伝達するように、マニュアル液圧供給部と第一のホイールシリンダとの間を連通する第一液圧系統と、マニュアル液圧供給部で生成した液圧を第二のホイールシリンダへ伝達するように、マニュアル液圧供給部と第二のホイールシリンダとの間を連通する第二液圧系統と、第一液圧系統と第二液圧系統との間を連通する主流路に設けられた分離弁と、分離弁を開閉制御する分離弁制御部と、リザーバに貯留された液圧媒体が所定量より少ないか否かを検出する液圧媒体量検出部と、を有するブレーキECUと、を備える液圧ブレーキユニットの制御方法であって、液圧媒体量検出部が、液圧媒体が所定量より少ないことを検出する検出工程と、検出工程において、液圧媒体が所定量より少ないことが検出されると、分離弁制御部が、分離弁を閉状態とする工程とを有する液圧ブレーキユニットの制御方法とする。
【発明の効果】
【0020】
迅速かつ容易に失陥有無を判断し、液圧媒体の漏れによる枯渇を抑制する液圧ブレーキユニットと液圧ブレーキユニットの制御方法とを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(第一の実施形態)
本実施形態に示す液圧ブレーキユニットは、典型的にはリザーバタンクに貯留されたブレーキフルードの低下を検出する。そして、前輪側のホイールシリンダへのブレーキフルード供給路と後輪側のホイールシリンダへのブレーキフルード供給路とを連通する主流路を遮断する。
【0022】
これにより、前輪側のホイールシリンダ周辺の失陥により、ブレーキフルードの流出が生じたとしても、その流出は最大でも、前輪側へ供給するブレーキフルード対応分ですむので、リザーバタンク内のブレーキフルードが枯渇することを抑止できる。また、逆に、後輪側のホイールシリンダ周辺の失陥により、ブレーキフルードの流出が生じたとしても、その流出は最大でも、後輪側へ供給するブレーキフルード対応分ですむので、リザーバタンク内のブレーキフルードが枯渇することを抑止できる。
【0023】
従って、前輪側と後輪側とのいずれか一方の失陥によるブレーキフルードの流出が、失陥が生じていない側のブレーキフルードまで枯渇させないので、失陥が生じていない側のブレーキ効果を損なわない。
【0024】
そこで、以下図面に基づいて、第一の実施形態の液圧ブレーキユニットについて詳細に説明する。図1は、第一の実施形態にかかる液圧ブレーキユニット120の概略構成を概念的に示すブロック構成図である。液圧ブレーキユニット120は、例えばいわゆるECBRである。
【0025】
図1に示すように、液圧ブレーキユニット120は、リザーバ134に貯留されたブレーキフルードを、車両の運転者によるブレーキペダル124の踏み込み操作量に応じて、第一液圧系統161または/及び第二液圧系統162へと送出するマニュアル液圧供給部127を備える。
【0026】
また、第一液圧系統161は、マニュアル液圧供給部127から第一のホイールシリンダ123Fへブレーキフルードを供給するように、マニュアル液圧供給部127と第一のホイールシリンダ123Fとの間を連通している。また、第二液圧系統162は、マニュアル液圧供給部127から第二のホイールシリンダ123Rへブレーキフルードを供給するように、マニュアル液圧供給部127と第二のホイールシリンダ123Rとの間を連通している。
【0027】
また、液圧ブレーキユニット120は、第一液圧系統161と第二液圧系統162との間で、ブレーキフルードを供給可能なように連通する主流路145を備える。また、主流路145は、開閉動作により、主流路145を連通または遮断する分離弁160を具備する。
【0028】
また、液圧ブレーキユニット120はブレーキECU170により制御され、分離弁160は、ブレーキECU170が備える分離弁制御部110により開閉制御されるものとする。また、ブレーキECU170は、リザーバ134に貯留されているブレーキフルードの残量が所定の残量よりも少なくなったことを検出する液圧媒体量検出部111aを備える。
【0029】
次に、図2を用いて液圧ブレーキユニット120の動作処理の概要について説明する。図2は、液圧ブレーキユニット120の動作処理を概念的に説明するフロー図である。そこで、図2に示す各ステップごとに説明する。
【0030】
(ステップS21)
液圧ブレーキユニット120の液圧媒体量検出部111aは、リザーバ134に貯留されるブレーキフルードの液量が、所定量より少ないか否かを検出する。液圧媒体量検出部111aが、リザーバ134に貯留されるブレーキフルードの液量が、所定量より少ないことを検出すれば、ステップS22へと進む。また、液圧媒体量検出部111aが、リザーバ134に貯留されるブレーキフルードの液量が、所定量より少ないことを検出しなければ、ステップS21で待機する。
【0031】
なお、リザーバ134に貯留されるブレーキフルードの液量が、所定量より少ないという状態は、液圧ブレーキユニット120の失陥により、ブレーキフルードの漏れが生じているとの判断に対応する。
【0032】
(ステップS22)
ブレーキECU170の分離弁制御部110は、分離弁160を閉状態とする。分離弁制御部110のこのステップS22での動作により、第一液圧系統161と第二液圧系統162とが遮断されて、ブレーキフルードの枯渇を抑制できる。
【0033】
すなわち、ステップS21でブレーキフルードの漏れが生じていると判断されて、仮に第二のホイールシリンダ123Rの周辺での失陥に起因する漏れである場合には、リザーバ134内のブレーキフルードが、第一液圧系統161から分離弁160を介して主流路145を流れて、失陥部位から流出する状況を回避可能となる。
【0034】
従って、ブレーキフルードの枯渇を遅延させて、制動力を確保することが可能となる。また、リザーバ134のタンク内が第一液圧系統161に供給する側と、第二液圧系統162に供給する側とに分割されている場合には、失陥にかからない側のブレーキフルードの主流路145を介した流出を抑止できるので、好ましい。
【0035】
ここで、液圧ブレーキユニット120の液圧系統等の典型例について、図3を用いてさらに詳細に説明する。図3は、本発明の実施形態に係る液圧ブレーキユニット20を示す系統図である。図3に記載の液圧ブレーキユニット20は、図1に記載する液圧ブレーキユニット120に対応する。ただし、図3に示す液圧ブレーキユニット20は、他の実施形態での液圧ブレーキユニットの構成も含むような典型例として、図1に示す液圧ブレーキユニット120よりも詳細に説明するものとする。
【0036】
また、液圧ブレーキユニット20は、図3に示されるように、各車輪に対応して設けられたディスクブレーキユニット21FR、21FL、21RRおよび21RLと、マスタシリンダユニット27と、動力液圧源30と、液圧アクチュエータ40とを含む。以下、図3を用いて液圧ブレーキユニット20の構成について詳述する。なお、マスタシリンダユニット27は、マニュアル液圧供給部127に対応する。
【0037】
ディスクブレーキユニット21FR、21FL、21RRおよび21RLは、車両の右前輪、左前輪、右後輪、および左後輪のそれぞれに制動力を付与する。マニュアル液圧源としてのマスタシリンダユニット27は、ブレーキ操作部材としてのブレーキペダル24の運転者による操作量に応じて加圧されたブレーキフルードを、ディスクブレーキユニット21FR〜21RLに対して送出することが可能である。
【0038】
動力液圧源30は、動力の供給により加圧されたブレーキフルードを、運転者によるブレーキペダル24の操作から独立してディスクブレーキユニット21FR〜21RLに対して送出することが可能である。
【0039】
また、液圧アクチュエータ40は、動力液圧源30またはマスタシリンダユニット27から供給されたブレーキフルードの液圧を適宜調整してディスクブレーキユニット21FR〜21RLに送出する。
【0040】
次に、ディスクブレーキユニット21FR〜21RL、マスタシリンダユニット27、動力液圧源30、および液圧アクチュエータ40のそれぞれについて以下で更に詳しく説明する。
【0041】
各ディスクブレーキユニット21FR〜21RLは、それぞれブレーキディスク22と、不図示のブレーキキャリパに内蔵されたホイールシリンダ23FR、23FL、23RR、23RLとを含む。ホイールシリンダ23FR、23FLは、典型的には第一のホイールシリンダ123Fに対応する。また、ホイールシリンダ23RR、23RLは、典型的には第二のホイールシリンダ123Rに対応する。
【0042】
そして、各ホイールシリンダ23FR、23FL、23RR、23RLは、それぞれ異なる流体通路を介して液圧アクチュエータ40に接続されている。なお以下では適宜、ホイールシリンダ23FR、23FL、23RR、23RLを総称して「ホイールシリンダ23」という。
【0043】
ディスクブレーキユニット21FR〜21RLにおいては、ホイールシリンダ23に液圧アクチュエータ40からブレーキフルードが供給されると、車輪と共に回転するブレーキディスク22に、摩擦部材としてのブレーキパッドが押し付けられる。
【0044】
これにより、各車輪に制動力が付与される。なお、本実施形態においてはディスクブレーキユニット21FR〜21RLを用いているが、例えばドラムブレーキ等のホイールシリンダ23を含む他の制動力付与機構を用いてもよい。
【0045】
マスタシリンダユニット27は、本実施形態では液圧ブースタ付きマスタシリンダであり、液圧ブースタ31、マスタシリンダ32、レギュレータ33、およびリザーバ34を具備する。また、液圧ブースタ31は、ブレーキペダル24に加えられたペダル踏力を増幅してマスタシリンダ32に伝達する。
【0046】
動力液圧源30からレギュレータ33を介して液圧ブースタ31にブレーキフルードが供給されることにより、ペダル踏力は増幅される。そして、マスタシリンダ32は、ペダル踏力に対して所定の倍力比を有するマスタシリンダ圧を発生する。
【0047】
マスタシリンダ32とレギュレータ33との上部には、ブレーキフルードを貯留するリザーバ34が配置されている。マスタシリンダ32は、ブレーキペダル24の踏み込みが解除されているときにリザーバ34と連通する。
【0048】
一方、レギュレータ33は、リザーバ34と動力液圧源30のアキュムレータ35との双方と連通しており、リザーバ34を低圧源とすると共に、アキュムレータ35を高圧源とし、マスタシリンダ圧とほぼ等しい液圧を発生する。レギュレータ33における液圧を以下では適宜、「レギュレータ圧」という。
【0049】
動力液圧源30は、アキュムレータ35およびポンプ36を具備する。アキュムレータ35は、ポンプ36により昇圧されたブレーキフルードの圧力エネルギを窒素等の封入ガスの圧力エネルギ、例えば14〜22MPa程度に変換して蓄えるものである。ポンプ36は、駆動源としてモータ36aを有し、その吸込口がリザーバ34に接続される一方、その吐出口がアキュムレータ35に接続される。
【0050】
また、アキュムレータ35は、マスタシリンダユニット27に設けられたリリーフバルブ35aにも接続されている。アキュムレータ35におけるブレーキフルードの圧力が異常に高まって例えば25MPa程度になると、リリーフバルブ35aが開状態となり、高圧のブレーキフルードはリザーバ34へと戻される。
【0051】
上述のように、液圧ブレーキユニット20は、ホイールシリンダ23に対するブレーキフルードの供給源として、マスタシリンダ32、レギュレータ33およびアキュムレータ35を有している。マスタシリンダ32にはマスタ配管37が、レギュレータ33にはレギュレータ配管38が、アキュムレータ35にはアキュムレータ配管39が接続されている。
【0052】
これらのマスタ配管37、レギュレータ配管38およびアキュムレータ配管39は、それぞれ液圧アクチュエータ40に接続される。すなわち、マスタシリンダ32、レギュレータ33およびアキュムレータ35のそれぞれは、ホイールシリンダ23への液圧源として液圧アクチュエータ40に並列に接続されている。
【0053】
本実施形態における作動液供給系統としての液圧アクチュエータ40は、複数の流路が形成されるアクチュエータブロックと、複数の電磁制御弁を含む。アクチュエータブロックに形成された流路には、個別流路41、42、43および44と、主流路45とが含まれる。
【0054】
また、個別流路41〜44は、それぞれ主流路45から分岐されて、対応するディスクブレーキユニット21FR、21FL、21RR、21RLのホイールシリンダ23FR、23FL、23RR、23RLに接続されている。これにより、各ホイールシリンダ23は、主流路45と独立して連通可能となる。
【0055】
また、個別流路41、42、43および44の中途には、各々ABS保持弁51、52、53および54が設けられている。各ABS保持弁51〜54は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングをそれぞれ有しており、何れもソレノイドが非通電状態にある場合に開とされる常開型電磁制御弁である。
【0056】
また、開状態とされた各ABS保持弁51〜54は、ブレーキフルードを双方向に流通させることができる。典型的には、主流路45からホイールシリンダ23へとブレーキフルードを供給して液圧を供給することができる。
【0057】
また、逆にホイールシリンダ23から主流路45へもブレーキフルードを流すこともできる。ソレノイドに通電されて各ABS保持弁51〜54が閉弁されると、個別流路41〜44におけるブレーキフルードの流通は遮断され、典型的には液圧の供給が遮断される。
【0058】
更に、ホイールシリンダ23は、個別流路41〜44にそれぞれ接続された減圧用流路46、47、48および49を介してリザーバ流路55に接続されている。減圧用流路46、47、48および49の中途には、各々ABS減圧弁56、57、58および59が設けられている。
【0059】
また、各ABS減圧弁56〜59は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングをそれぞれ有しており、何れもソレノイドが非通電状態にある場合に閉とされる常閉型電磁制御弁である。各ABS減圧弁56〜59が閉状態であるときには、減圧用流路46〜49におけるブレーキフルードの流通は遮断される。
【0060】
また、ソレノイドに通電されて各ABS減圧弁56〜59が開状態とされると、減圧用流路46〜49におけるブレーキフルードの流通が許容され、ブレーキフルードがホイールシリンダ23から減圧用流路46〜49およびリザーバ流路55を介してリザーバ34へと還流する。これにより、典型的にはホイールシリンダ23の液圧が増圧状態から低減されて減圧状態となる。なお、リザーバ流路55は、リザーバ配管77を介してマスタシリンダユニット27のリザーバ34に接続されている。
【0061】
主流路45は、中途に分離弁60を有する(なお、分離弁を連通弁とも称呼するが、実施形態においては分離弁とする)。この分離弁60により、主流路45は、個別流路41および42と接続される第1流路45aと、個別流路43および44と接続される第2流路45bとに区分けされている。
【0062】
第1流路45aは、個別流路41および42を介して前輪側のホイールシリンダ23FRおよび23FLに接続され、第2流路45bは、個別流路43および44を介して後輪側のホイールシリンダ23RRおよび23RLに接続される。
【0063】
分離弁60は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングを有しており、ソレノイドが非通電状態にある場合に閉とされる常閉型電磁制御弁である。分離弁60が閉状態であるときには、主流路45におけるブレーキフルードの流通は遮断される。ソレノイドに通電されて分離弁60が開状態とされると、第1流路45aと第2流路45bとの間でブレーキフルードを双方向に流通させることができる。
【0064】
また、液圧アクチュエータ40においては、主流路45に連通するマスタ流路61およびレギュレータ流路62が形成されている。より詳細には、マスタ流路61は、主流路45の第1流路45aに接続されており、レギュレータ流路62は、主流路45の第2流路45bに接続されている。また、マスタ流路61は、マスタシリンダ32と連通するマスタ配管37に接続される。レギュレータ流路62は、レギュレータ33と連通するレギュレータ配管38に接続される。
【0065】
典型的には、マスタ配管37とマスタ流路61とが、第一液圧系統161に対応する。また、典型的には、レギュレータ配管38とレギュレータ流路62とが、第二液圧系統162に対応する。
【0066】
マスタ流路61は、中途にマスタカット弁64を有する。マスタカット弁64は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングを有しており、ソレノイドが非通電状態にある場合に開とされる常開型電磁制御弁である。
【0067】
開状態とされたマスタカット弁64は、マスタシリンダ32と主流路45の第1流路45aとの間でブレーキフルードを双方向に流通させることができる。ソレノイドに通電されてマスタカット弁64が閉弁されると、マスタ流路61におけるブレーキフルードの流通は遮断され、典型的にはマスタシリンダ32から第1流路45aの液圧供給が遮断される。
【0068】
また、マスタ流路61には、マスタカット弁64よりも上流側において、シミュレータカット弁68を介してストロークシミュレータ69が接続されている。すなわち、シミュレータカット弁68は、マスタシリンダ32とストロークシミュレータ69とを接続する流路に設けられている。シミュレータカット弁68は、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングを有しており、ソレノイドが非通電状態にある場合に閉とされる常閉型電磁制御弁である。
【0069】
また、シミュレータカット弁68が閉状態であるときには、マスタ流路61とストロークシミュレータ69との間のブレーキフルードの流通は遮断される。ソレノイドに通電されてシミュレータカット弁68が開状態とされると、マスタシリンダ32とストロークシミュレータ69との間でブレーキフルードを双方向に流通させることができる。
【0070】
また、ストロークシミュレータ69は、複数のピストンやスプリングを含むものであり、シミュレータカット弁68の開放時に運転者によるブレーキペダル24の踏力に応じた反力を創出する。ストロークシミュレータ69としては、運転者によるブレーキ操作のフィーリングを向上させるために、好ましくは多段のバネ特性を有するものが採用され、本実施形態のストロークシミュレータ69は多段のバネ特性を有するものとする。
【0071】
また、レギュレータ流路62は、中途にレギュレータカット弁65を有する。レギュレータカット弁65も、ON/OFF制御されるソレノイドおよびスプリングを有しており、ソレノイドが非通電状態にある場合に開とされる常開型電磁制御弁である。
【0072】
開状態とされたレギュレータカット弁65は、レギュレータ33と主流路45の第2流路45bとの間でブレーキフルードを双方向に流通させることができる。ソレノイドに通電されてレギュレータカット弁65が閉弁されると、レギュレータ流路62におけるブレーキフルードの流通は遮断され、典型的にはレギュレータ33から第2流路45bへの液圧供給が遮断される。
【0073】
液圧アクチュエータ40には、マスタ流路61およびレギュレータ流路62に加えて、アキュムレータ流路63も形成されている。アキュムレータ流路63の一端は、主流路45の第2流路45bに接続され、他端は、アキュムレータ35と連通するアキュムレータ配管39に接続される。
【0074】
アキュムレータ流路63は、中途に増圧リニア制御弁66を有する。また、アキュムレータ流路63および主流路45の第2流路45bは、減圧リニア制御弁67を介してリザーバ流路55に接続されている。増圧リニア制御弁66と減圧リニア制御弁67とは、それぞれリニアソレノイドおよびスプリングを有しており、何れもソレノイドが非通電状態にある場合に閉とされる常閉型電磁制御弁である。増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67は、それぞれのソレノイドに供給される電流に比例して弁の開度が調整される。
【0075】
増圧リニア制御弁66は、各車輪に対応して複数設けられた各ホイールシリンダ23に対して共通の増圧用制御弁として設けられている。また、減圧リニア制御弁67も同様に、各ホイールシリンダ23に対して共通の減圧用制御弁として設けられている。
【0076】
つまり、本実施形態においては、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67は、動力液圧源30から送出される作動流体を、各ホイールシリンダ23へ給排制御する1対の共通の制御弁として設けられている。典型的には増圧リニア制御弁66を開とすれば、アキュムレータ35からの液圧を第2流路45bに供給することができ、減圧リニア制御弁67を開とすれば、第2流路45bのブレーキフルードを排出して液圧を低減することができる。
【0077】
なお、増圧リニア制御弁66の出入口間の差圧は、アキュムレータ35におけるブレーキフルードの圧力と、主流路45におけるブレーキフルードの圧力と、の差圧に対応する。また、減圧リニア制御弁67の出入口間の差圧は、主流路45におけるブレーキフルードの圧力と、リザーバ34におけるブレーキフルードの圧力と、の差圧に対応する。
【0078】
また、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67のリニアソレノイドへの供給電力に応じた電磁駆動力をF1とし、スプリングの付勢力をF2とし、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67の出入口間の差圧に応じた差圧作用力をF3とすると、F1+F3=F2という関係が成立する。
【0079】
従って、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67のリニアソレノイドへの供給電力を連続的に制御することにより、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67の出入口間の差圧を制御することができる。
【0080】
液圧ブレーキユニット20において、動力液圧源30および液圧アクチュエータ40は、本実施形態における制御部としてのブレーキ電子制御部(Electrical Control Unit:ブレーキECU)70により制御される。ブレーキ電子制御部70は、CPUを含むマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に各種プログラムを記憶するROM、データを一時的に記憶するRAM、入出力ポートおよび通信ポート等を備える。
【0081】
また、ブレーキ電子制御部70は、上位のハイブリッドECUなどと通信可能である。また、ブレーキ電子制御部70は、ハイブリッドECUからの制御信号や、各種センサからの信号に基づいて動力液圧源30のポンプ36や、液圧アクチュエータ40を構成する電磁制御弁51〜54、56〜59、60、64〜68を制御して、液圧制動力を制御可能である。
【0082】
また、ブレーキ電子制御部70には、レギュレータ圧センサ71、アキュムレータ圧センサ72、および制御圧センサ73が接続される。レギュレータ圧センサ71は、レギュレータカット弁65の上流側でレギュレータ流路62内のブレーキフルードの圧力、すなわちレギュレータ圧を検知し、検知した値を示す信号をブレーキ電子制御部70に与える。
【0083】
また、アキュムレータ圧センサ72は、増圧リニア制御弁66の上流側でアキュムレータ流路63内のブレーキフルードの圧力、すなわちアキュムレータ圧を検知し、検知した値を示す信号をブレーキ電子制御部70に与える。
【0084】
また、制御圧センサ73は、主流路45の第1流路45a内のブレーキフルードの圧力を検知し、検知した値を示す信号をブレーキ電子制御部70に与える。また、分離弁60が開となって第1流路と第2流路とが連通している場合には、制御圧センサ73は主流路45内のブレーキフルードの圧力を検知する。各圧力センサ71〜73の検出値は、所定時間おきにブレーキ電子制御部70に順次与えられ、ブレーキ電子制御部70の所定の記憶領域に所定量ずつ格納保持される。
【0085】
従って、分離弁60が開状態とされて主流路45の第1流路45aと第2流路45bとが互いに連通している場合、制御圧センサ73の出力値は、増圧リニア制御弁66の低圧側の液圧を示すと共に減圧リニア制御弁67の高圧側の液圧を示す。従って、制御圧センサ73のこの出力値を、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67の制御に利用することができる。
【0086】
また、増圧リニア制御弁66および減圧リニア制御弁67が閉鎖されていると共に、マスタカット弁64が開状態とされている場合、制御圧センサ73の出力値は、マスタシリンダ圧を示す。更に、分離弁60が開放されて主流路45の第1流路45aと第2流路45bとが互いに連通し、かつ各ABS保持弁51〜54が開放される一方、各ABS減圧弁56〜59が閉鎖されている場合には、制御圧センサの73の出力値は、各ホイールシリンダ23に作用する作動流体圧、すなわちホイールシリンダ圧を示す。
【0087】
また、分離弁60が開状態とされて主流路45の第1流路45aと第2流路45bとが互いに連通している場合にレギュレータカット弁65を開状態とすれば、制御圧センサ73の出力値は、通常はレギュレータ圧センサ71の出力値と等しくなる。
【0088】
典型的には、車両が停止状態にあるときに、ブレーキペダル24の踏力がホイールシリンダ23へ伝達されるように、増圧リニア制御弁66と減圧リニア制御弁67とを共に閉状態とし、分離弁60が開状態とされて、かつレギュレータカット弁65が開状態とされる。この状態が、後に詳述する停止中レギュレータ増圧モードである。
【0089】
さらに、ブレーキ電子制御部70に接続されるセンサには、ブレーキペダル24に設けられたストロークセンサ25も含まれる。ストロークセンサ25は、ブレーキペダル24の操作量としてのペダルストロークを検知し、検知した値を示す信号をブレーキ電子制御部70に与える。ストロークセンサ25の出力値も、所定時間おきにブレーキ電子制御部70に順次与えられ、ブレーキ電子制御部70の所定の記憶領域に所定量ずつ格納保持される。
【0090】
なお、ストロークセンサ25以外のブレーキ操作状態検出手段をストロークセンサ25に加えて、あるいは、ストロークセンサ25に代えて設け、ブレーキ電子制御部70に接続してもよい。ブレーキ操作状態検出手段としては、例えば、ブレーキペダル24の操作力を検出するペダル踏力センサや、ブレーキペダル24が踏み込まれたことを検出するブレーキスイッチなどがある。また、ブレーキ電子制御部70には、図示されない車輪速度センサ等も接続され、検知された信号が所定時間おきに与えられ、所定の記憶領域に格納保持される。
【0091】
また、ブレーキ操作入力手段は、ブレーキ操作部材としてのブレーキペダル24に限定されることはなく、例えば押圧ボタンによるブレーキ操作入力手段とすることもできる。押圧ボタンによるブレーキ操作入力手段とした場合においても、押圧ボタンのストローク検知に加え、押圧ボタンの操作力を検出する押圧力センサや、押圧ボタンが押し込まれたことを検出する押圧ボタンスイッチなどがある。
【0092】
上述のように構成された液圧ブレーキユニット20は、リニア制御モード、走行中レギュレータ増圧モード、停止中レギュレータ増圧モードの例えば3つの制御モードを取ることができる。いずれの制御モードにおいても、液圧ブレーキユニット20はブレーキ電子制御部70により制御される。なお、以下では、走行中レギュレータ増圧モードを走行中Reg増モードと呼び、停止中レギュレータ増圧モードを停止中Reg増モードと呼ぶ。
【0093】
また、液圧ブレーキユニット20は、走行中に急制動をかけた場合に、アキュムレータ配管39を介した油圧供給に、レギュレータ配管38を介した油圧供給も加えて制動するリニアREGアシストモードをとる場合もある。なお、走行中からの通常の制動は、アキュムレータ配管39を介した油圧供給によるリニア制御モードとなる。また、液圧ブレーキユニット20は、配管系統等に何らかの異常が検出された場合に、ブレーキ電子制御部70が、全ての弁の通電制御を放棄し、レギュレータ33とマスタシリンダ32の圧を、ホイールシリンダ23に供給するバックアップモードも取り得るものとする。
【0094】
リニア制御モードにおいては、各ホイールシリンダ23は、マスタシリンダユニット27から遮断される。すなわち、ブレーキ電子制御部70は、レギュレータカット弁65を閉状態とし、レギュレータ33から送出されるブレーキフルードが主流路45へ供給されないようにする。
【0095】
またブレーキ電子制御部70は、マスタカット弁64を閉状態とするとともにシミュレータカット弁68を開状態とする。これは、運転者によるブレーキペダル24の操作に伴ってマスタシリンダ32から送出されるブレーキフルードがストロークシミュレータ69へと供給されるようにするためである。またブレーキ電子制御部70は、分離弁60を開状態とする。
【0096】
また、リニア制御モードにおいては、ブレーキ電子制御部70は、要求制動力から回生制動力を減じることにより、液圧ブレーキユニット20により発生させるべき液圧制動力を算出する。ここで、回生制動力の値は、ハイブリッドECUからブレーキ電子制御部70に供給される。
【0097】
そして、ブレーキ電子制御部70は、算出した液圧制動力に基づいて各ホイールシリンダ23FR〜23RLの目標液圧を算出する。ブレーキ電子制御部70は、ホイールシリンダ圧が目標液圧となるように、フィードバック制御則により増圧リニア制御弁66及び減圧リニア制御弁67に対する供給電流の値を決定する。
【0098】
その結果、液圧ブレーキユニット20においては、動力液圧源30から増圧リニア制御弁66を介してブレーキフルードが各ホイールシリンダ23に供給されて車輪に所定目標の制動力が付与される。また、各ホイールシリンダ23からブレーキフルードが減圧リニア制御弁67を介して必要に応じて排出され、車輪に付与される制動力が適宜調整される。このようにして、リニア制御モードにおいては、液圧制動と回生制動とを併用して、要求制動力を発生させるブレーキ回生協調制御が実行される。
【0099】
また、いわゆるオートクルーズコントロール(Auto Cruise Control:ACC)や車両挙動安定化制御(Vehicle Stability Control:VSC)等の自動制動制御においても、上述したリニア制御モードと同様の油圧制御により制動動作が実行される。
【0100】
また、走行中Reg増モードにおいては、ブレーキ電子制御部70は、増圧リニア制御弁66への制御電流の供給を停止して増圧リニア制御弁66を閉状態とし、各ホイールシリンダ23から動力液圧源30を遮断する。更にブレーキ電子制御部70は、レギュレータカット弁65及びマスタカット弁64を開状態とするとともにシミュレータカット弁68を開状態とする。またブレーキ電子制御部70は、分離弁60を開状態とする。
【0101】
さらに、停止中Reg増モードにおける各電磁制御弁の開閉状態は、上述の走行中Reg増モードとはレギュレータカット弁65の開閉状態が異なり、他の電磁制御弁の開閉状態は同様である。つまり、停止中Reg増モードにおいては、レギュレータカット弁65が閉状態とされるという点で、走行中Reg増モードとは異なる。
【0102】
その結果、停止中Reg増モードにおいては、レギュレータ圧がそのままホイールシリンダ23に伝達されるので、運転者によるブレーキペダル24の操作量に応じた液圧制動力を発生させることができる。
【0103】
ブレーキ電子制御部70は、これらのリニア制御モード、走行中Reg増モード、及び停止中Reg増モード等のいずれかを、車両の走行速度、あるいは回生制動力の値などの車両の状態、またはオペレータからの指示に応じて選択する。
【0104】
(第二の実施形態)
次に、第一の実施形態で説明した分離弁制御部110が、リザーバ134に貯留されたブレーキフルードの低下状態が一定時間継続した場合に、分離弁160を閉状態とする第二の実施形態について説明する。第二の実施形態で示す例においては、リザーバ134に貯留されたブレーキフルードの低下状態を示す継続時間を積算し、低下検出所定時間よりも長い時間となった場合に、失陥があったものとして分離弁160を閉じる。
【0105】
このため、より信頼性の高い失陥有無の判断が可能となる。なお、第二の実施形態で説明する典型例は、分離弁制御部110を除いて、第一の実施形態で説明した液圧ブレーキユニット120と同じ構成であるので、重複する部分については説明を省略する。また、液圧ブレーキユニット120と同一部分については、同一の番号を付与して、その説明を省略する。
【0106】
図4は、第二の実施形態にかかるブレーキECU170(2)の概念的な構成を例示するブロック図である。図4に示すようにブレーキECU170(2)は、リザーバ134のブレーキフルード貯留量の低下を検出する液圧媒体量検出部111aを備える。
【0107】
また、分離弁制御部110(2)は、リザーバ134のブレーキフルード貯留量の低下検出状態の継続時間を算出する継続時間積算部114を備える。また、分離弁制御部110(2)は、リザーバ134のブレーキフルードの貯留量の低下検出時間の閾値となる低下検出所定時間記憶部112を備える。また、分離弁制御部110(2)は、継続時間積算部114で積算した継続時間と、低下検出所定時間記憶部112に予め記憶された閾値時間と、を比較する比較部113を備える。
【0108】
次に、図5を用いてブレーキECU170(2)の動作処理について、その概要を説明する。図5は、主としてブレーキECU170(2)での処理について、概念的に示すフロー図である。そこで、図5に示すステップごとに以下に順次説明する。
【0109】
(ステップS51)
液圧媒体量検出部111aは、リザーバ134が貯留するブレーキフルードの液量が、所定量よりも少なくなったことを検出したか否かを判断する。液圧媒体量検出部111aが、リザーバ134が貯留するブレーキフルードの液量が、所定量よりも少なくなったことを検出すれば、ステップS52へと進む。
【0110】
また、液圧媒体量検出部111aが、リザーバ134が貯留するブレーキフルードの液量が、所定量よりも少なくなったことを検出しなければ、ステップS51で待機する。
【0111】
(ステップS52)
分離弁制御部110(2)は、ステップS51での検出時間が、予め定められた低下検出所定時間よりも長いか否かを判断する。具体的には、継続時間積算部114が、液圧媒体量検出部111aからの検出信号を受信し、検出信号の継続時間を積算する。
【0112】
また、比較部113が、予め低下検出所定時間記憶部112に記憶されている閾値時間と、継続時間積算部114が積算した継続時間と、を比較する。そして、継続時間が閾値時間よりも長くなれば、ステップS53へと進む。また、継続時間が閾値時間よりも長くならなければ、ステップS51に戻る。
【0113】
なお、継続時間積算部114による継続時間の積算と、比較部113での比較判断とは、リアルタイムで同時並行的に処理し得るものとする。すなわち、継続時間積算部114が継続時間の積算をすると同時並行して、ごく短い周期間隔で比較部113が随時比較処理を行なっているものとする。このため、比較部113は、常時積算時間が閾値時間を超えたか否かをいわば監視していることとなり、積算された継続時間が閾値時間を超えた場合には、遅滞なくステップS53に進むものとする。
【0114】
(ステップS53)
分離弁制御部110(2)は、分離弁160を閉状態とする。換言すれば、ステップS51とステップS52との処理を通じて、ブレーキECU170(2)が、失陥が生じていると判断したことに相当する。そして、失陥が生じたと判断する場合に、分離弁制御部110(2)が、分離弁160を閉状態とすることで、主流路145でのブレーキフルードの流通経路を遮断して、ブレーキフルードの枯渇を抑止することができる。
【0115】
第二の実施形態においては、リザーバ134のブレーキフルードの貯留量の低下が、失陥に起因しない一時的な低下状態であるのか、失陥に起因する低下状態であるのか、をより迅速かつ正確に判断することができるので好ましい。これにより、仮に、失陥に起因しないブレーキフルードの突発的な低減現象が生じたとしても、誤判定により過剰に安全処置を行なうことがなくなり、適切な制動機能の維持とブレーキフィーリングの維持とを保つことができる。
【0116】
(第三の実施形態)
次に、ブレーキECU170(3)が、失陥が生じた系統を判断する場合について、第三の実施形態として説明する。第三の実施形態においては、ブレーキECU170(3)が失陥系統判断部6172を備えており、液圧ブレーキユニット620の所望の弁制御と、リザーバ134のブレーキフルード低下状態とから、失陥が生じた系統を判断するものとする。
【0117】
なお、以下の説明において、液圧ブレーキユニット620は典型例を示すものであって、第一の実施形態で説明した液圧ブレーキユニット120と同じ構成で説明が重複する部分については、冗長となるので説明を省略する。また、液圧ブレーキユニット120と同一部分については、同一の番号を付与して、その説明を省略するものとする。
【0118】
図6は、第三の実施形態にかかる液圧ブレーキユニット620を概念的に示すブロック構成図である。図6に示すように、液圧ブレーキユニット620は、第一液圧系統161に第一カット弁664を具備する。また、液圧ブレーキユニット620は、第二液圧系統162に第二カット弁665を具備する。第一カット弁664は、典型的には図3に示すマスタカット弁64に対応し、また第二カット弁665は、典型的には図3に示すレギュレータカット弁65に対応する。
【0119】
また、液圧ブレーキユニット620のブレーキECU170(3)は、第一カット弁664と第二カット弁665と、の開閉を制御するカット弁制御部6171を備える。また
、ブレーキECU170(3)は、失陥が生じた系統が、第一液圧系統161であるのか第二液圧系統162であるのかを判断する失陥系統判断部6172を備える。
【0120】
また、液圧ブレーキユニット620の液圧媒体量検出部111a(3)は、リザーバ134に貯留されたブレーキフルードが所定量より少なくなったことを検出するだけではなく、ブレーキフルードの低下量をリアルタイムで検出できるものとする。
【0121】
液圧媒体量検出部111a(3)が、リザーバ134に貯留されたブレーキフルードが所定量より少なくなったことを検出すると、分離弁制御部110が分離弁160を閉状態とし、かつカット弁制御部6171が第一カット弁664または第二カット弁665のいずれかを閉状態とする。
【0122】
その後、液圧媒体量検出部111a(3)が、リザーバ134に貯留されたブレーキフルードの貯留量の低下状況をリアルタイムに検出する。液圧媒体量検出部111a(3)の低下状況の検出値は、失陥系統判断部6172に入力され、仮にブレーキフルードの貯留量が低下し続ける場合には、失陥系統判断部6172が、カット弁制御部6171が閉状態とした系統と異なる系統に失陥があるものと判断する。
【0123】
また、仮にブレーキフルードの貯留量の低下が停止した場合には、失陥系統判断部6172が、カット弁制御部6171が閉状態とした系統に失陥があるものと判断する。すなわち、失陥系統判断部6172には、分離弁制御部110とカット弁制御部6171とから弁制御情報が入力され、液圧媒体量検出部111a(3)からフルードの低下状態がリアルタイムで入力される。
【0124】
失陥系統判断部6172は、入力された情報から、失陥系統を判断する。例えば、カット弁制御部6171が、第二カット弁665を閉状態としたにも拘わらずブレーキフルードが低下し続けるのであれば、失陥系統判断部6172は、第一カット弁664に失陥が生じているものと判断する。
【0125】
ここで、第二カット弁665を閉状態とすると、分離弁160が閉状態であることから、第二液圧系統162及び第二のホイールシリンダ123Rでのブレーキフルードの漏れは停止するものと考えられる。この場合においても、ブレーキフルードの低下が検出されるということは、第一液圧系統161で失陥が発生し、その失陥によりブレーキフルードが漏れていると推定されることとなる。
【0126】
次に、図7を用いて、液圧ブレーキユニット620の動作処理フローについて説明する。図7は、液圧ブレーキユニット620の動作処理の概要を概念的に説明するフロー図である。そこで、図7に示す各ステップごとに、液圧ブレーキユニット620の動作処理を順次説明することとする。
【0127】
(ステップS71)
液圧媒体量検出部111a(3)は、リザーバ134に貯留されているブレーキフルードの量が、所定量より少なくなったか否かを判断する。液圧媒体量検出部111a(3)は、リザーバ134に貯留されているブレーキフルードの量が、所定量より少なくなったことを検出すると、その検出信号を分離弁制御部110とカット弁制御部6171とに送出する。
【0128】
液圧媒体量検出部111a(3)が、リザーバ134に貯留されているブレーキフルードの量が、所定量より少なくなったことを検出すれば、ステップS72に進む。また、液圧媒体量検出部111a(3)が、リザーバ134に貯留されているブレーキフルードの量が、所定量より少なくなったことを検出しなければ、ステップS71で待機する。
【0129】
(ステップS72)
分離弁制御部110は、分離弁160を閉状態とする。このステップS72での動作処理により、ブレーキフルードが第一液圧系統161と第二液圧系統162との間で主流路145を介して流通することを遮断できる。
【0130】
(ステップS73)
カット弁制御部6171は、第一カット弁664を閉状態をする。このステップS73での動作処理により、ブレーキフルードが第一液圧系統161の第一カット弁664から下流側に供給されることを抑止できる。仮に、第一のホイールシリンダ123Fの周辺に失陥が発生した場合においては、このステップS73での処理により、ブレーキフルードのさらなる漏れを停止させることが可能である。
【0131】
(ステップS74)
液圧媒体量検出部111a(3)は、リザーバ134のブレーキフルードの低下量が、所定の低下量より大きいか否かを判断する。液圧媒体量検出部111a(3)が、リザーバ134のブレーキフルードの低下量が、所定の低下量より大きいと判断すれば、ステップS75へと進む。また、液圧媒体量検出部111a(3)が、リザーバ134のブレーキフルードの低下量が、所定の低下量より大きくないと判断すれば、ステップS76へと進む。
【0132】
また、液圧媒体量検出部111a(3)は、リザーバ134のブレーキフルードの低下量が、所定の低下量より大きいか否かの検出結果を、失陥系統判断部6172へと送出する。また、このステップ74における所定の低下量の場合のフルードの残量は、ステップS71での所定量よりも、少ない状態であるものとする。すなわち、液圧媒体量検出部111a(3)は、ステップS72とステップs73との処理にも拘わらず、さらにブレーキフルードが減り続けていることを検出するものとする。
【0133】
(ステップS75)
失陥系統判断部6172は、第二液圧系統162で失陥が生じているものと判断する。すなわち、ステップS73で第一カット弁664を閉状態としたにも拘わらず、リザーバ134のフルード貯留量が低下し続ける状態は、第二液圧系統162特に第二のホイールシリンダ123R周辺での失陥による液漏れであると判断できる。
【0134】
(ステップS76)
失陥系統判断部6172は、第一液圧系統161で失陥が生じているものと判断する。すなわち、ステップS73で第一カット弁664を閉状態としたことにより、リザーバ134のフルード貯留量の低下が停止した状態は、第一液圧系統161の特に第一のホイールシリンダ123F周辺での失陥による液漏れであると判断できる。
【0135】
なお、液圧媒体量検出部111a(3)は、リザーバ134の液量をリアルタイムで検出できるものが好ましい。また、リザーバ134の液量をリアルタイムで検出できると共に、どの程度の低下量を所定の低下量としてステップS74の処理を実行するか、予め設定するか、車両メンテナンス時等に設定変更できるものが好ましい。車両状態等に応じて、ステップS74で実行する所定の低下量を適宜設定変更することで、失陥系統の判断をより適切なものとできる。
【0136】
また、ステップS71に用いる所定量についても、予め設定するか、車両メンテナンス時等に設定変更できるものが好ましい。これにより、車両状態等により、分離弁160を閉状態とする判断基準を適切に調整可能となるので好ましい。さらに、誤判定を避けるだけでなく、誤判定により通常のブレーキモードを中断して、分離弁160を閉状態とすることにより、不要な安全動作を実行し、かつブレーキフィーリングの変更が生じる事態を回避可能となるので好ましい。
【0137】
また、本実施形態における液圧媒体量検出部111a(3)を図8に示す変形例のように構成してもよい。図8は、液圧媒体量検出部111a(3)の変形例を概念的に示すブロック図である。この変形例においては、液量の低下誤判定を低減できるものである。
【0138】
図8に示すように液圧媒体量検出部111a(3b)は、リザーバ134に貯留されるブレーキフルードの液量が所定量より少なくなったことを検出するリザーバ液量低下検出部810を備える。また、液圧媒体量検出部111a(3b)は、動力液圧源30のモータ36aの駆動時間を積算するモータ駆動時間積算部820を備える。
【0139】
また、リザーバ液量低下検出部810とモータ駆動時間積算部820とからの出力は、低下検出部830に入力される。低下検出部830は、リザーバ液量低下検出部810がリザーバ134の液量が所定量より少なくなった事を出力し、かつモータ駆動時間積算部820が例えば10秒間の積算駆動時間となったことを出力すれば、リザーバ134の液量が何らかの失陥による低下状態であるものと判断する。
【0140】
モータ36aが駆動されるのは、例えばブレーキペダル124の踏み込みによる制動指示か、自動制動制御による制動指示があった場合である。従って、液圧媒体量検出部111a(3b)は、リザーバ134の一時的な液量低下による誤判断を回避し、失陥に基づく液量の低下状態を信頼性高く検出することが可能となるので好ましい。
【0141】
(第四の実施形態)
次に、リザーバ134の揺れを利用してブレーキフルードの低下状態を正確に認識し、これにより失陥系統の誤判断が為されることを抑止可能な液圧ブレーキユニット920について、第四の実施形態で図9を用いて説明する。
【0142】
図9は、第四の実施形態にかかる液圧ブレーキユニット920の構成概念を例示するブロック図である。なお、以下の説明において、液圧ブレーキユニット920は典型例を示すものであって、第一乃至第三の実施形態で説明した液圧ブレーキユニット120等と同じ構成で説明が重複する部分については、冗長となるので説明を省略する。また、上述の液圧ブレーキユニット120等と同一部分については、同一の番号を付与して、その説明を省略するものとする。
【0143】
図9に示すように、液圧ブレーキユニット920のブレーキECU170(4)は、リザーバ134が、ある所定の振動範囲内で揺れているか否かを判断する振動判断部910を備える。振動判断部910は、例えば車両が備えるヨーレイトセンサや重力(G)センサの出力を検出して利用するものでもよい。
【0144】
リザーバ134が揺れている場合、また例えば車両が揺れている場合には、リザーバ134内に貯留されたブレーキフルードもその揺れの影響を受ける。リザーバ134の揺れにより、ブレーキフルードが波打ち状態となり、その液面も上下に波打つこととなる。このため、ブレーキフルードの液面が、検出すべき所定量よりもやや少ない程度であれば、検出すべき所定量の液面レベルを上下することとなり、液圧媒体量検出部111aは、所定量より少ないことの検出と非検出とを反復し、例えば検出信号のオンオフを繰り返すこととなる。
【0145】
液圧ブレーキユニット920の失陥系統判断部6172は、リザーバ134が振動した場合に上述のオンオフ状態を利用して、リザーバ134内のブレーキフルードの液量を相当の正確さで検出できる。ここで、仮にリザーバ134が相当な強度で振動したとすれば
、リザーバ134内のブレーキフルードが検出すべき所定量よりもかなり少ない(すなわち液面がかなり低い)場合であっても、振動による液面の上下動が激しいことにより、上述した検出信号のオンオフを繰り返すことが想定される。
【0146】
また、逆に、リザーバ134の振動が全くなければ、リザーバ134内のブレーキフルードの液面の上下動は生じず、検出すべき所定量からどの程度少ないのかの情報が得られないこととなる。
【0147】
このため、振動判断部910は、車両の振動、典型的にはリザーバ134の振動が、リザーバ134内のブレーキフルードの液面が適宜上下する程度の、所定の範囲内であるか否かを検出し、検出信号を失陥系統判断部6172に出力する。また、失陥系統判断部6172は、振動判断部910から、振動が所定の範囲内である検出信号を受け取る場合に、液圧媒体量検出部111aからの検出信号に基づいて、失陥系統を判断する。
【0148】
このため、液圧媒体量検出部111aが、リアルタイムにブレーキフルードの量を検出できる検出部ではないとしても、失陥系統判断部6172は、所定量からどの程度少ないのかについてのブレーキフルードの液量状態を推定でき、この推定したブレーキフルードの液量に基づいて失陥系統を正確に判断することが可能となる。
【0149】
なお、振動判断部910は、例えば図10に示すようなブロック構成としてもよい。図10は、振動判断部910の概念的な構成を例示するブロック図である。図10に示すように振動判断部910は、所定の振動範囲を予め設定されて記憶する所定振動範囲記憶部1001を備える。
【0150】
また、振動判断部910は、リザーバ134または車両の振動検出値と、所定振動範囲記憶部1001に記憶された所定の振動範囲と、を比較する振動比較部1002を備える。また、振動比較部1002は、振動検出値が所定の振動範囲内にあれば、失陥系統判断部6172に、振動検出値が所定の振動範囲内にあることを示す判断信号を出力する。
【0151】
次に、図11を用いて液圧ブレーキユニット920の動作処理について説明する。図11は、液圧ブレーキユニット920の動作処理の概要を説明するフロー図である。そこで、以下図11に示す各ステップに基づいて順次説明する。
【0152】
(ステップS110)
液圧媒体量検出部111aは、リザーバ134に貯留されているブレーキフルードの量が、所定量より少なくなったか否かを判断する。液圧媒体量検出部111aは、リザーバ134に貯留されているブレーキフルードの量が、所定量より少なくなったことを検出すると、その検出信号を分離弁制御部110(2)とカット弁制御部6171とに送出する。
【0153】
液圧媒体量検出部111aが、リザーバ134に貯留されているブレーキフルードの量が、所定量より少なくなったことを検出すれば、ステップS111へと進む。また、液圧媒体量検出部111aが、リザーバ134に貯留されているブレーキフルードの量が、所定量より少なくなったことを検出しなければ、ステップS110で待機する。
【0154】
(ステップS111)
分離弁制御部110(2)は、ステップS110での検出時間が、予め定められた低下検出所定時間よりも長いか否かを判断する。具体的には、継続時間積算部114が、液圧媒体量検出部111aからの検出信号を受信し、検出信号の継続時間を積算する。
【0155】
また、比較部113が、予め低下検出所定時間記憶部112に記憶されている閾値時間と、継続時間積算部114が積算した継続時間と、を比較する。そして、継続時間が閾値時間よりも長くなれば、ステップS112へと進む。また、継続時間が閾値時間よりも長くならなければ、ステップS110に戻る。
【0156】
なお、継続時間積算部114による継続時間の積算と、比較部113での比較判断とは、リアルタイムで同時並行的に処理し得るものとする。すなわち、継続時間積算部114が継続時間の積算をすると同時並行して、ごく短い周期間隔で比較部113が随時比較処理を行なっているものとする。このため、比較部113は、常時積算時間が閾値時間を超えたか否かをいわば監視していることとなり、積算された継続時間が閾値時間を超えた場合には、遅滞なくステップS112に進むものとする。
【0157】
(ステップS112)
分離弁制御部110(2)は、分離弁160を閉状態とする。換言すれば、ステップS110とステップS111との処理を通じて、ブレーキECU170(4)が、液圧系統等に失陥が生じ、液漏れが生じていると判断したことに相当する。そして、失陥が生じたと判断する場合に、分離弁制御部110(2)が、分離弁160を閉状態とすることで、主流路145でのブレーキフルードの、第一液圧系統161と第二液圧系統162との間での流通経路を遮断して、ブレーキフルードの枯渇を抑止する。
【0158】
なお、分離弁160は、このフローにおいて説明する以下の各ステップの間において、常に閉状態を維持するものとする。
【0159】
(ステップS113)
カット弁制御部6171は、典型的には第一カット弁664を閉状態とする。このステップS113までの処理により、分離弁160と第一カット弁664とが、閉状態とされ、次のステップS114以降における失陥系統部位の判断処理の為の準備が整うこととなる。
【0160】
(ステップS114)
振動判断部910は、車両の振動、典型的にはリザーバ134の振動が所定の振動範囲内であるか否かを判断する。振動判断部910が、リザーバ134の振動が所定の振動範囲内であると判断すれば、ステップS115へと進む。また、振動判断部910が、リザーバ134の振動が所定の振動範囲内ではないと判断すれば、ステップS114で待機する。
【0161】
より具体的には、振動判断部910が備える振動比較部1002が、リザーバ134から検出された揺れと、所定振動範囲記憶部1001に予め記憶された所定の振動範囲と、を比較する。そして、振動比較部1002は、その比較結果を失陥系統判断部6172へと出力する。例えば、振動比較部1002は、リザーバ134の振動が所定の振動範囲内である場合には、振動が所定の振動範囲内であることを示す通知信号”1”を失陥系統判断部6172へと出力してもよい。
【0162】
(ステップS115)
液圧媒体量検出部111aは、リザーバ134内に貯留されるブレーキフルードの液量が、所定量よりも少なくなったことを検出する信号が解除されたか否かを、失陥系統判断部6172に出力する。ここで、リザーバ134内のブレーキフルードの液面は、振動によりある程度波打っているものと考えられ、液圧媒体量検出部111aによる所定量より少ないことを示す検出信号が、オンとオフとを繰り返される場合も想定できる。
【0163】
従って、ステップS110での検出信号が、ステップS115において一度でも解除されれば、ステップS116へと進むものとする。また、ステップS110での検出信号が、ステップS115において一度も解除されなければ、ステップS117へと進むものとする。
【0164】
(ステップS116)
失陥系統判断部6172は、分離弁160と第一カット弁664とが閉状態である場合であって、所定の振動範囲内である場合に、リザーバ134の液量が所定量より少ないことを検出した信号が解除されれば、第一液圧系統161の失陥と判断する。また、失陥系統判断部6172は、第一のホイールシリンダ123Fの失陥と判断する。
【0165】
すなわち、分離弁160と第一カット弁664とが閉状態であるので、仮に第一液圧系統161または第一のホイールシリンダ123Fに失陥があったとしても、第一液圧系統161及び第一のホイールシリンダ123Fからの液漏れは停止している。この状態で、所定の振動範囲内である場合に、リザーバ134の液量が所定量より少ないことを検出した信号が解除されれば、分離弁160と第一カット弁664とを閉状態とする処置により、当該失陥からのリザーバ134内の液量低下が止まったものと考えられる。従って、失陥系統判断部6172は、第一液圧系統161の失陥または第一のホイールシリンダ123Fの失陥と判断する。
【0166】
なお、このフローでは説明を省略したが、液圧ブレーキユニット920は、このステップS116における失陥系統の判断後、失陥系統に対応して適宜必要なバックアップ処理や安全処置を行なうものとする。
【0167】
(ステップS117)
失陥系統判断部6172は、分離弁160と第一カット弁664とが閉状態である場合であって、所定の振動範囲内である場合に、リザーバ134の液量が所定量より少ないことを検出した信号が解除されなければ、第二液圧系統162の失陥または第二のホイールシリンダ123Rの失陥と判断する。
【0168】
すなわち、分離弁160と第一カット弁664とが閉状態であるので、仮に第一液圧系統161または第一のホイールシリンダ123Fに失陥があったとしても、第一液圧系統161及び第一のホイールシリンダ123Fからの液漏れは停止しているはずである。また、分離弁160と第一カット弁664とを閉状態としても、仮に第二液圧系統162または第二のホイールシリンダ123Rに失陥があったとすれば、第二液圧系統162及び第二のホイールシリンダ123Rからの液漏れは停止しないものと考えられる。
【0169】
すなわち、所定の振動範囲内である場合に、リザーバ134の液量が所定量より少ないことを検出した信号が解除されなければ、分離弁160と第一カット弁664とが閉状態とする処置によっても、失陥からのリザーバ134内の液量低下が止まらなかったものと考えられる。従って、この場合に、失陥系統判断部6172は、第二液圧系統162の失陥または第二のホイールシリンダ123Rの失陥と判断する。
【0170】
なお、このフローでは説明を省略したが、液圧ブレーキユニット920は、このステップS117における失陥系統の判断後、失陥系統に対応して適宜必要なバックアップ処理や安全処置を行なうものとする。
【0171】
上述の動作処理により、液圧ブレーキユニット920は、より正確に失陥系統の判断を行なうことができるので好ましい。
【0172】
次に、上述のステップS113において、第一カット弁664に替えて第二カット弁665を閉状態とする場合の動作処理について、図12を用いて簡略に説明する。図12は、液圧ブレーキユニット920の動作処理の変形例を例示するフロー図である。なお、図12及び以下の説明において、図11に示す各ステップの説明と重複する部分については、説明を省略するか、または簡略に行なうものとする。
【0173】
(ステップS120)
上述したステップS110に対応するので、ここでは説明を省略する。
【0174】
(ステップS121)
上述したステップS111に対応するので、ここでは説明を省略する。
【0175】
(ステップS122)
上述したステップS112に対応するので、ここでは説明を省略する。
【0176】
(ステップS123)
カット弁制御部6171は、第二カット弁665を閉状態とする。このステップS123までの処理により、分離弁160と第二カット弁665とが、閉状態とされ、次のステップS124以降における失陥系統部位の判断処理の為の準備が整うこととなる。
【0177】
また、第二カット弁665は、典型的にはレギュレータカット弁65に対応することから、このステップS123以下での処理の前提として、車両の運転者または自動制動制御による制動指示が無い状態であることが好ましい。仮に、車両の運転者または自動制動制御による制動指示があった場合には、いわゆるリニア制御モードへと移行することが制動力を維持して速やかに車両を停止させる観点から好ましい。
【0178】
(ステップS124)
上述したステップS114に対応するので、ここでは説明を省略する。
【0179】
(ステップS125)
上述したステップS115に対応するので、ここでは説明を省略する。
【0180】
(ステップS126)
失陥系統判断部6172は、分離弁160と第二カット弁665とが閉状態である場合であって、所定の振動範囲内である場合に、リザーバ134の液量が所定量より少ないことを検出した信号が解除されれば、第二液圧系統162の失陥と判断する。また、失陥系統判断部6172は、第二のホイールシリンダ123Rの失陥と判断する。
【0181】
すなわち、分離弁160と第二カット弁665とが閉状態であるので、仮に第二液圧系統162または第二のホイールシリンダ123Rに失陥があったとしても、第二液圧系統162及び第二のホイールシリンダ123Rからの液漏れは停止している。この状態で、所定の振動範囲内である場合に、リザーバ134の液量が所定量より少ないことを検出した信号が解除されれば、分離弁160と第二カット弁665とを閉状態とする処置により、当該失陥からのリザーバ134内の液量低下が止まったものと考えられる。従って、失陥系統判断部6172は、第二液圧系統162の失陥または第二のホイールシリンダ123Rの失陥と判断する。
【0182】
なお、このフローでは説明を省略したが、液圧ブレーキユニット920は、このステップS126における失陥系統の判断後、失陥系統に対応して適宜必要なバックアップ処理や安全処置を行なうものとする。
【0183】
(ステップS127)
失陥系統判断部6172は、分離弁160と第二カット弁665とが閉状態である場合であって、所定の振動範囲内である場合に、リザーバ134の液量が所定量より少ないことを検出した信号が解除されなければ、第一液圧系統161の失陥または第一のホイールシリンダ123Fの失陥と判断する。
【0184】
すなわち、分離弁160と第二カット弁665とが閉状態であるので、仮に第二液圧系統162または第二のホイールシリンダ123Rに失陥があったとしても、第二液圧系統162及び第二のホイールシリンダ123Rからの液漏れは停止しているはずである。また、分離弁160と第二カット弁665とを閉状態としても、仮に第一液圧系統161または第一のホイールシリンダ123Fに失陥があったとすれば、第一液圧系統161及び第一のホイールシリンダ123Fからの液漏れは停止しないものと考えられる。
【0185】
すなわち、所定の振動範囲内である場合に、リザーバ134の液量が所定量より少ないことを検出した信号が解除されなければ、分離弁160と第二カット弁665とを閉状態とする処置によっても、失陥からのリザーバ134内の液量低下が止まらなかったものと考えられる。従って、この場合に、失陥系統判断部6172は、第一液圧系統161の失陥または第一のホイールシリンダ123Fの失陥と判断する。
【0186】
なお、このフローでは説明を省略したが、液圧ブレーキユニット920は、このステップS127における失陥系統の判断後、失陥系統に対応して適宜必要なバックアップ処理や安全処置を行なうものとする。
【0187】
上述の動作処理により、液圧ブレーキユニット920は、より正確に失陥系統の判断を行なうことができるので好ましい。
【0188】
第四の実施形態で例示した液圧ブレーキユニット920は、液圧媒体量検出部111aが、リザーバ134の貯留液量をリアルタイムに実測できなくても、車両の振動等を利用して、適切に貯留液量の低下状態を判断できる。また、これにより、ブレーキECU170(4)は、失陥が生じている系統を適切かつ迅速に判断することができるので、その後の復旧処置を迅速かつ適切に行えるので好ましい。
【0189】
(第五の実施形態)
次に、リザーバ134が、典型的にはマスタ配管37側とレギュレータ配管38側とで異なる貯留槽を備える場合について、図13を用いて説明する。図13は、第五の実施形態にかかる液圧ブレーキユニット920(5)の概略構成を例示するブロック図である。なお、液圧ブレーキユニット920(5)においては、第四の実施形態で説明した液圧ブレーキユニット920と同一の部位については、同一の符号を付し、重複を避ける為にその説明を省略することとする。
【0190】
図13に示すように、マニュアル液圧供給部127(5)のリザーバ134(5)は、第一液圧系統161に供給するブレーキフルードを貯留する第一リザーバ部1301と、第二液圧系統162に供給するブレーキフルードを貯留する第二リザーバ部1302と、を備える。第一リザーバ部1301と第二リザーバ部1302とは、各々別個にブレーキフルードを貯留することが好ましい。
【0191】
また、液圧ブレーキユニット920(5)は、第一リザーバ部1301と第二リザーバ部1302とを備えるので、第一液圧系統161と第一のホイールシリンダ123Fとに供給するブレーキフルードと、第二液圧系統162と第二のホイールシリンダ123Rとに供給するブレーキフルードと、をリザーバ134(5)内においては、個々に貯留し維持できるので好ましい。
【0192】
換言すれば、仮にいずれかの液圧系統に失陥が発生したとしても、リザーバ134(5)内でのフルードは独立に貯留され、共に枯渇する事態を回避可能である。特に、第四の実施形態で説明した図11または図12に示す動作処理フローを実行する液圧ブレーキユニット920(5)は、適切な弁制御により、各々の液圧系統が保存されるので、制動力を確保できることとなり好ましい。
【0193】
なお、液圧ブレーキユニット920(5)における動作処理は、上述した液圧ブレーキユニット920の動作処理と同じ動作処理とできるので、ここではその説明を省略する。また、図14(a)は、第五の実施形態にかかるリザーバ134(5)の構造を概念的に例示する図である。
【0194】
図14(a)に示すように、リザーバ134(5)には、MaxとMinの間で、高さhにまでブレーキフルードが貯留されている。また、リザーバ134(5)の内部は、パーティション1401で部分的に仕切られている。図14(a)では、パーティション1401は、Minのレベルの数センチメートル程度低いレベルまでの高さとして示しているが、これに限られることはなく、適宜高さを設計して調節してもよい。
【0195】
また、パーティション1401により、パーティション1401の高さよりも液面高さが低くなった場合には、第二の液圧系統162に供給されるブレーキフルード、典型的にはレギュレータ配管38に供給されるブレーキフルードと、第一の液圧系統161に供給されるブレーキフルード、典型的にはマスタ配管37に供給されるブレーキフルードと、が分離される。
【0196】
このため、リザーバ134(5)においては、例えば失陥によりブレーキフルードの貯留量が減少してきた場合に、第一リザーバ部1301(5)と第二リザーバ部1302(5)とに、各々ブレーキフルードを独立して貯留できる。従って、液圧ブレーキユニット920(5)が備える複数の弁の開閉制御を、例えば図11または図12に例示するように適宜制御することで、リザーバ134(5)内のブレーキフルードの貯留量を適切に維持し、制動力を付与し続けることが可能となるので好ましい。
【0197】
また、図14(b)と図14(c)とは、図14(a)に示すリザーバ134(5)を備えた液圧ブレーキユニット920(5)において、図11に第四の実施形態として示した動作処理を実行した場合の、リザーバ134(5)の貯留液面の高さhの経過時間変化を模式的に示す図である。
【0198】
より詳細には、図14(b)は、仮に第一液圧系統161または第一のホイールシリンダ123Fでの失陥により、ブレーキフルードの液漏れが生じた場合の状態を示す図である。また、図14(c)は、仮に第二液圧系統162または第二のホイールシリンダ123Rでの失陥により、ブレーキフルードの液漏れが生じた場合の状態を示す図である。
【0199】
図14(b)に示すように、高さhであったリザーバ134(5)内の貯留量が、失陥により減少し、リザーバ液量低下検出ラインを下回ったことを液圧媒体量検出部111aが検出してから所定の処理時間T1が経過した後、カット弁制御部6171が第一カット弁664を閉状態とする。ここで、所定の処理時間T1は、典型的には分離弁制御部110(2)が、ブレーキフルード貯留量の低下検出状態の継続時間が、低下検出所定時間記憶部112に予め記憶された閾値時間を超えたことを確認する時間に相当する。
【0200】
第一液圧系統161または第一のホイールシリンダ123Fでの失陥により、ブレーキフルードの液漏れが生じた場合においては、分離弁160を閉状態として引き続いて第一カット弁664を閉状態とすることにより、フルード貯留量の低下が停止する。このため、リザーバ134(5)の振動により、液面が上下し、典型的には図14(b)に示すように、リザーバ液量低下検出ラインを超えたり下回ったりする。これにより、液圧媒体量検出部111aの検出信号がオンとオフとを繰り返すこととなる。
【0201】
また、図14(c)に示すように、高さhであったリザーバ134(5)内の貯留量が、失陥により減少し、リザーバ液量低下検出ラインを下回ったことを液圧媒体量検出部111aが検出してから所定の処理時間T1が経過した後、カット弁制御部6171が第一カット弁664を閉状態とする。ここで、所定の処理時間T1は、典型的には分離弁制御部110(2)が、ブレーキフルード貯留量の低下検出状態の継続時間が、低下検出所定時間記憶部112に予め記憶された閾値時間を超えたことを確認する時間に相当する。
【0202】
第二液圧系統162または第二のホイールシリンダ123Rでの失陥により、ブレーキフルードの液漏れが生じた場合においては、分離弁160を閉状態として引き続いて第一カット弁664を閉状態としたとしても、フルード貯留量の低下が停止せず減少し続ける。このため、リザーバ134(5)の振動により、液面が上下したとしても、典型的には図14(c)に示すように、リザーバ液量低下検出ラインを超えたり下回ったりすることがない。すなわち、液圧媒体量検出部111aの検出信号がオンとオフとを繰り返すことがない。
【0203】
上述したように、失陥が生じた系統がいずれの系統であるのかにより、所定の弁制御をした後、リザーバ134(5)内のフルードの低下現象が異なる。液圧ブレーキユニット920(5)は、このようなフルードの液面低下の相違状態を、複雑な検出機構や制御機構を用いることなく、簡易かつ迅速に検知可能である。特に、リザーバ134(5)の振動が所定範囲内であるか否かを、車両が備えるヨーレイトセンサ等の出力を利用して算出することで、より正確かつ迅速簡易に図14(b)と図14(c)とに示す、低下状態の相違の検知に基づき、失陥系統を特定することが可能となるので好ましい。
【0204】
(第六の実施形態)
次に、上述した第四の実施形態と第五の実施形態とにおいて、液圧媒体量検出部111aが、所定の一定時間内に複数の所定回数だけオンとオフとを繰り返した場合に、失陥系統がいずれであるのかを判断する失陥系統判断部6172(6)について、以下に説明する。第六の実施形態で例示する失陥系統判断部6172(6)は、図14(b)に示すように、車両の振動により、リザーバ134内の液面がリザーバ液量低下検出ラインを上下し、これにより、液圧媒体量検出部111aが検出と非検出とを複数回繰り返す場合に、失陥系統を判断する。従って、一回のオンオフでの判断と比較して、さらに信頼性が高く、かつ確実に失陥系統を判断することが可能となるので好ましい。
【0205】
図15は、失陥系統判断部6172(6)の構成概要を例示するブロック図である。図15においては、第五の実施形態等と同一の部位については、同一の符号を付すこととする。また、同一の部位については、第五の実施形態等において上述した説明と重複を避けるため、ここでは説明を省略する。
【0206】
図15に示すように、失陥系統判断部6172(6)は、液圧媒体量検出部111aで検出した液面の低下検出信号についての信頼性を確認する信頼性確認部1410を備える。また、失陥系統判断部6172(6)は、予め所定回数を記録された所定回数記憶部1430と、予め所定時間を記録された所定時間記憶部1420とを備える。
【0207】
また、信頼性確認部1410は、所定時間記憶部1420が記憶する所定の一定時間内に、所定回数記憶部1430が記憶する所定回数だけ、液圧媒体量検出部111aが検出と非検出と(例えばオンとオフと)を繰り返したか否かを確認する。このため、信頼性確認部1410は、所定時間記憶部1420に記憶する所定の一定時間の間に、液圧媒体量検出部111aが検出と非検出と(例えばオンとオフと)を繰り返した回数を積算する積算部1411を備える。また、信頼性確認部1410は、積算部1411で積算した回数と、所定回数記憶部1430が記憶する所定回数と、を比較する比較部1412を備える。
【0208】
失陥系統判断部6172(6)は、例えば何らか理由により一時的な大きな振動が生じて、液圧媒体量検出部111aが単発で液面の低下を検出したとしても、これによる失陥系統の判断を実行しないので、誤って失陥系統を判断する懸念を低減できる。
【0209】
次に、図16を用いて、失陥系統判断部6172(6)に関連する動作処理について、説明する。図16は、失陥系統判断部6172(6)の動作処理を概念的に例示して説明するフロー図である。なお、図16の説明においては、上述した第五の実施形態等における動作処理と同一の処理については、説明の重複を避けるため説明を省略することとする。
【0210】
(ステップS1610)
上述したステップS110に対応するので、ここでは説明を省略する。
【0211】
(ステップS1620)
上述したステップS111に対応するので、ここでは説明を省略する。
【0212】
(ステップS1630)
上述したステップS112に対応するので、ここでは説明を省略する。
【0213】
(ステップS1640)
上述したステップS113に対応するので、ここでは説明を省略する。
【0214】
(ステップS1650)
上述したステップS114に対応するので、ここでは説明を省略する。
【0215】
(ステップS1660)
液圧媒体量検出部111aは、リザーバ134内に貯留されるブレーキフルードの液量が、所定量よりも少なくなったことを検出する信号が解除されたか否かを、失陥系統判断部6172に出力する。ここで、リザーバ134内のブレーキフルードの液面は、振動によりある程度波打っているものと考えられ、液圧媒体量検出部111aによる所定量より少ないことを示す検出信号は、図14(b)に例示するようにオンとオフとを繰り返される。
【0216】
従って、ステップS1610での検出信号が、ステップS1660において所定時間内に所定回数より多く、解除されれば、ステップS1670へと進むものとする。また、ステップS1610での検出信号が、ステップS1660において所定時間内に所定回数より多く、解除されなければ、ステップS1680へと進むものとする。
【0217】
より具体的には、積算部1411が、所定時間記憶部1420が記憶する予め定められた所定時間内に、液圧媒体量検出部111aが液量低下の検出と非検出とを繰り返した回数を、積算する。また、比較部1412が所定回数記憶部1430が記憶する予め定められた所定回数と、積算部1411が積算した回数と、を比較する。
【0218】
そして、比較部1412での比較により、積算部1411が積算した回数のほうが所定回数よりも大きければ、ステップS1670へと進む。また、比較部1412での比較により、積算部1411が積算した回数のほうが所定回数よりも大きくなければ、ステップS1680へと進む。
【0219】
(ステップS1670)
上述したステップS116に対応するので、ここでは説明を省略する。
【0220】
(ステップS1680)
上述したステップS117に対応するので、ここでは説明を省略する。
【0221】
失陥系統判断部6172(6)は、より安全かつ確実に失陥系統の判断処理を行なうので、判断処理後のバックアップ処理や復旧処理を適切かつ迅速に行なうことが可能となり、好ましい。
【0222】
(第七の実施形態)
次に、上述した第三の実施形態乃至第六の実施形態に示したブレーキECU170(3)またはブレーキECU170(4)において、カット弁制御部6171が、失陥系統判断部6172から判断結果のフィードバックにより、失陥が生じている系統のカット弁を閉状態とし、他方を開状態とする動作処理を実行する場合について、第七の実施形態として以下に説明する。
【0223】
また、第六の実施形態で示したブレーキECU170(4)において、カット弁制御部6171が、失陥系統判断部6172(6)から判断結果のフィードバックにより、失陥が生じている系統のカット弁を閉状態とし、他方を開状態とする動作処理を実行してもよい。
【0224】
なお、以下の説明においては、説明の重複を避けるため、第三の実施形態乃至第六の実施形態との比較において、異なる部位を例示して説明し、その余についてはここでは説明を省略することとする。また、図17は、第三の実施形態で説明した液圧ブレーキユニット620と同一の部位には同一の符号を付して、その説明を省略する。図17は、第七の実施形態にかかる不図示の液圧ブレーキユニットが具備するブレーキECU170(7)の構成を概念的に例示する図である。
【0225】
図17に示すように、ブレーキECU170(7)においては、カット弁制御部6171に失陥系統判断部6172から、失陥系統の判断結果のフィードバックを入力される。そして、カット弁制御部6171は、第一液圧系統161または第二液圧系統162のいずれかのうち、失陥系統判断部6172が失陥が生じていると判断した系統に具備された第一カット弁664または第二カット弁665を閉状態とし、失陥が生じていない側の第一カット弁664または第二カット弁665を開状態とする。
【0226】
この実施形態で示すブレーキECU170(7)は、失陥が生じた系統のブレーキフルードの流通を遮断するので、遮断後のフルードの漏れを停止させることができる。また、ブレーキECU170(7)は、失陥が生じていない系統のブレーキフルードの流通を確保するので、液圧を供給して制動力を付与することができる。従って、ブレーキECU170(7)は、ブレーキフルードの漏れを速やかに停止させてかつ制動力を維持し、失陥発生時においても安全かつ確実なブレーキ動作が可能な液圧ブレーキユニットを実現できる。
【0227】
次に、図18を用いてブレーキECU170(7)を備える不図示の液圧ブレーキユニットの動作処理について説明する。図18は、ブレーキECU170(7)を具備する液圧ブレーキシステムの動作処理を例示するフロー図である。なお、図18に示すフロー図は、第三の実施形態で示した液圧ブレーキユニット620がブレーキECU170(7)を具備する場合の動作を例示するものである。そこで、以下図18に示す各ステップに基づいて順次説明する。
【0228】
(ステップS180)
上述したステップS71に対応するので、ここでは説明を省略する。
【0229】
(ステップS181)
上述したステップS72に対応するので、ここでは説明を省略する。
【0230】
(ステップS182)
上述したステップS73に対応するので、ここでは説明を省略する。
【0231】
(ステップS183)
上述したステップS74に対応するので、ここでは説明を省略する。
【0232】
(ステップS184)
失陥系統判断部6172は、第二液圧系統162で失陥が生じているものと判断する。すなわち、ステップS182で第一カット弁664を閉状態としたにも拘わらず、リザーバ134のフルード貯留量が低下し続ける状態は、第二液圧系統162の特に第二のホイールシリンダ123R周辺での失陥による液漏れであると判断できる。
【0233】
また、失陥系統判断部6172は、第二液圧系統162に失陥が生じているという失陥情報をカット弁制御部6171にフィードバックする。
【0234】
(ステップS185)
カット弁制御部6171は、フィードバックされた失陥情報に基づいて、失陥が生じている第二液圧系統162側の第二カット弁665を閉状態とし、失陥が生じていない第一液圧系統161側の第一カット弁664を開状態とする。
【0235】
このステップS185での動作処理により、ブレーキフルードの漏れを速やかに停止させると共に、車両の制動力の低下を抑制して制動力を確保する液圧ブレーキユニットとできる。具体的には、第一液圧系統161を利用して液圧を第一のホイールシリンダ123Fに供給できるので、例えば失陥がリア側で生じた場合にも、リア側の漏れを止めて、フロント側でブレーキを効かせることも可能となる。
【0236】
(ステップS186)
失陥系統判断部6172は、第一液圧系統161で失陥が生じているものと判断する。すなわち、ステップS182で第一カット弁664を閉状態としたことにより、リザーバ134のフルード貯留量の低下が停止した状態は、第一液圧系統161の特に第一のホイールシリンダ123F周辺での失陥による液漏れであると判断できる。
【0237】
また、失陥系統判断部6172は、第一液圧系統161に失陥が生じているという失陥情報をカット弁制御部6171にフィードバックする。
【0238】
(ステップS187)
カット弁制御部6171は、フィードバックされた失陥情報に基づいて、失陥が生じている第一液圧系統161側の第一カット弁664を閉状態とし、失陥が生じていない第二液圧系統162側の第二カット弁665を開状態とする。
【0239】
このステップS187での動作処理により、ブレーキフルードの漏れを速やかに停止させると共に、車両の制動力の低下を抑制して制動力を確保する液圧ブレーキユニットとできる。具体的には、第二液圧系統162を利用して液圧を第二のホイールシリンダ123Rに供給できるので、例えば失陥がフロント側で生じた場合にも、フロント側の漏れを止めて、リア側でブレーキを効かせることも可能となる。
【0240】
この実施形態で例示したブレーキECU170(7)を具備する液圧ブレーキユニットは、失陥系統を判断した後、迅速かつ適切な弁制御を行なうので、失陥による液漏れを抑制しつつ、安全かつ確実に車両を停止させるのに必要な制動力を確保することができるので好ましい。
【0241】
(第八の実施形態)
次に、第三の実施形態乃至第七の実施形態においてストロークシミュレータ69を備えた液圧ブレーキユニット1920について、第八の実施形態として例示して説明する。液圧ブレーキユニット1920は、失陥系統を判断した後に、シミュレータカット弁68を適宜開閉制御することで、ブレーキペダル24の踏み込み動作に障害が発生することを低減することが可能である。また、液圧ブレーキユニット1920は、ストロークシミュレータ69にブレーキフルードが消費されてフルード残量の低下を早めたりすることを抑制可能である。
【0242】
なお、液圧ブレーキユニット1920は、上述した液圧ブレーキユニットの構成と同一の部位については、同一の符号を付して、その説明を省略する。図19は、液圧ブレーキユニット1920の構成概要を概念的に例示するブロック図である。
【0243】
液圧ブレーキユニット1920は、第一液圧系統161の第一カット弁664のマニュアル液圧供給部127側に、シミュレータカット弁68を介してストロークシミュレータ69を備える。
【0244】
シミュレータカット弁68は、ブレーキECU170(8)が備えるシミュレータカット弁制御部1930により開閉制御される。また、シミュレータカット弁制御部1930は、失陥系統判断部6172から失陥系統の判断結果を入手し、判断結果に対応してシミュレータカット弁68を開閉制御する。
【0245】
具体的には、シミュレータカット弁制御部1930は、失陥系統判断部6172から入手した判断結果が第一液圧系統161に失陥があるとの判断であれば、シミュレータカット弁68を開状態とする。また、シミュレータカット弁制御部1930は、失陥系統判断部6172から入手した判断結果が第二液圧系統162に失陥があるとの判断であれば、シミュレータカット弁68を閉状態とする。
【0246】
すなわち、第一液圧系統161に失陥がある場合にはカット弁制御部6171が第一カット弁664を閉状態とするので、このままでは、仮にブレーキペダル124の踏み込まれた場合のブレーキフルードの流路がいわば閉塞された状態となり、いわゆる油圧剛性が高くてペダル踏み込み困難な状況が生じることが懸念される。このようなペダル踏み困難な状況を回避するために、シミュレータカット弁制御部1930は、シミュレータカット弁68を開状態とする。これにより、ブレーキペダル124の踏み込み困難が解消され、例えばリニアREGアシストモード等を行なうことも可能となる。
【0247】
また、第二液圧系統162に失陥がある場合にはカット弁制御部6171が第二カット弁665を閉状態として、残存するブレーキフルードで第一液圧系統161を介して制動力を確保する必要があるところ、このままでは、第一液圧系統161からストロークシミュレータ69にブレーキフルードが流れて消費される懸念が生じる。このようにストロークシミュレータ69にブレーキフルードが消費されることに起因する第一のホイールシリンダ123Fでの制動力の低減を回避するために、シミュレータカット弁制御部1930は、シミュレータカット弁68を閉状態とする。これにより、失陥から漏れずに残存しているブレーキフルードを有効に活用する液圧ブレーキユニット1920を実現できる。
【0248】
また、図20は、図19に示した液圧ブレーキユニット1920に対して、ブレーキECU170(8)が、さらに振動判断部910を具備したブレーキECU170(8a)を例示するブロック概念図である。なお、図20において、液圧ブレーキユニットの構成は、ブレーキECU170(8a)を除き図19及び上述の実施形態に示すものと同一であるので同一の符号を付与し、説明が重複するのでここでは説明を省略する。
【0249】
ブレーキECU170(8a)は、振動判断部910を具備し、リザーバ134(5)の振動が、所定の振動範囲内にある場合に失陥系統を判断する。このため、さらに正確に失陥系統を判断できると共に、失陥系統の判断後、シミュレータカット弁制御部1930が上述のように適切にシミュレータカット弁68を制御するので、さらに好ましい。
【0250】
次に、ブレーキECU170(8a)を備える液圧ブレーキユニットの典型的な動作処理例について図21を用いて説明する。図21は、ブレーキECU170(8a)を備える第八の実施形態の液圧ブレーキユニットの動作処理の典型例を示すフロー図である。そこで、図21に示す各ステップごとに、ブレーキECU170(8a)を具備する液圧ブレーキユニット1920の動作処理について、図19及び図20を参照しながら詳細に説明する。
【0251】
(ステップS2100)
液圧媒体量検出部111a(3)は、リザーバ134(5)が貯留するブレーキフルードの液量が、所定量よりも少なくなったことを検出した否かを判断する。液圧媒体量検出部111a(3)が、リザーバ134(5)が貯留するブレーキフルードの液量が、所定量よりも少なくなったことを検出したらステップS2110へと進む。液圧媒体量検出部111a(3)が、リザーバ134(5)が貯留するブレーキフルードの液量が、所定量よりも少なくなったことを検出しなければステップS2100で待機する。
【0252】
液圧ブレーキユニット1920の液圧媒体量検出部111a(3)は、例えば液量が所定量より低下した場合にオンとなり、液量が所定量より低下していない場合にはオフとなるものでよい。また、液圧媒体量検出部111a(3)は、リザーバ134(5)のブレーキフルードの液量をリアルタイムかつリニアに検出できるものであれば、液量減少状態がより正確に認識できるので、好ましい。
【0253】
なお、液圧媒体量検出部111a(3)は、ブレーキフルードの液量が所定量よりも少なくなったことを検出した検出信号(例えばオン信号)を、分離弁制御部110(2)とカット弁制御部6171と失陥系統判断部6172とに通知するものとする。
【0254】
(ステップS2110)
分離弁制御部110(2)は、液圧媒体量検出部111a(3)から通知されたブレーキフルード低下の検出信号の継続時間が、予め定められた低下検出所定時間よりも長いか否かを判断する。ブレーキフルード低下の検出信号の継続時間が、予め定められた低下検出所定時間よりも長ければ、ステップS2120へと進む。また、ブレーキフルード低下の検出信号の継続時間が、予め定められた低下検出所定時間よりも長くなければ、ステップS2100へと戻る。
【0255】
具体的には、分離弁制御部110(2)の比較部113が、低下検出所定時間記憶部112に記録された所定時間と、継続時間積算部114が積算した液圧媒体量検出部111a(3)からの検出オンの継続時間と、を比較し、いずれが長いのかを判断する。比較部113が比較した結果、継続時間積算部114が積算した液圧媒体量検出部111a(3)からの検出オンの継続時間が、低下検出所定時間記憶部112に記録された所定時間よりも長ければ、ステップS2120へと進む。また、比較部113が比較した結果、継続時間積算部114が積算した液圧媒体量検出部111a(3)からの検出オンの継続時間が、低下検出所定時間記憶部112に記録された所定時間よりも長くなければ、ステップS2100へと戻る。
【0256】
(ステップS2120)
分離弁制御部110(2)は、分離弁160を閉状態とする。このステップS2120での動作処理により、液圧ブレーキユニット1920は、第一液圧系統161と第二液圧系統162との間で、主流路145を介したブレーキフルードの流通を遮断することができる。
【0257】
従って、失陥が生じた液圧系統とは異なる液圧系統から、ブレーキフルードが主流路145を経由して流出し続けたり、その結果リザーバ134(5)の貯留するブレーキフルードが枯渇することを回避して制動力を確保可能となる。また、ブレーキフルードの減少速度を低減させていわゆる時間を稼ぐことができるので、その間に安全の確保と必要な所望の制動処理やバックアップ処理を実行することも可能となる。
【0258】
なお、分離弁制御部110(2)は、分離弁160を閉状態としたことを示す確認信号を、カット弁制御部6171に送出し、この確認信号によりカット弁制御部6171は、分離弁160が閉状態とされたことを認識するものとする。また、分離弁制御部110(2)は、分離弁160を閉状態としたことを示す確認信号を、失陥系統判断部6172にも送出するものとする。
【0259】
(ステップS2130)
カット弁制御部6171は、第一カット弁664を閉状態とする。このステップS2130での動作処理は上述したステップS2120での処理と共に、ブレーキフルードの貯留量を減少させる原因となっている失陥からのブレーキフルードの漏れを停止させ、および/または後述の各ステップで説明する失陥部位を特定するための準備動作となる。
【0260】
なお、カット弁制御部6171は、第一カット弁664を閉状態としたことを示す確認信号を、失陥系統判断部6172に送出するものとする。
【0261】
(ステップS2140)
振動判断部910は、ヨーレイトセンサまたはGセンサ等からの出力に基づいて、車両の揺れが所定の揺れ範囲内であるか否かを判断する。振動判断部910が、車両の揺れが所定の揺れ範囲内であると判断すればステップS2150へと進む。また、振動判断部910が、車両の揺れが所定の揺れ範囲内ではないと判断すればステップS2140で待機する。
【0262】
また、振動判断部910は、好ましくはリザーバ134(5)の振動が所定の振動範囲内であるか否かを判断できることがよい。このため、リザーバ134(5)に、不図示の振動ピックアップセンサまたは揺れ検出計等を取り付け、その出力を振動判断部910に入力してもよい。
【0263】
より具体的には、振動判断部910が備える振動比較部1002は、リザーバ134(5)から入力されたリザーバ134(5)の振動や揺れを検出する検出信号と、所定振動範囲記憶部1001に予め記録されている所定振動範囲と、を比較し、リザーバ134(5)の揺れや振動が、所定の範囲内であるか否かを判断することとなる。
【0264】
なお、上述したように、所定振動範囲記憶部1001に予め記録されている所定振動範囲は、リザーバ134(5)内のブレーキフルードの液面が、検出ラインよりもある程度低下した場合に、その揺れにより液面が検出ラインを上下する程度の振動範囲であることが好ましい。
【0265】
所定の振動範囲が、大きすぎればリザーバ134(5)内のブレーキフルードの液面が、検出ラインよりも極端に低下し、典型的には枯渇寸前であるような場合においても、大きな振動により、液面が検出ラインを超えて検出オンオフされる状況も想定されるので好ましくない。
【0266】
また、所定の振動範囲が、小さすぎればリザーバ134(5)内のブレーキフルードの液面が、検出ラインよりも若干低化した程度でも、液面が検出ラインを超えずに検出オンオフがされないこととなり、液面が大きく低下した場合との峻別が不可能となる事態も想定されるので、好ましくない。
【0267】
このため、好ましくは、リザーバ134(5)の形状や大きさ、構造等により、オンオフ検出ラインと低下量と液面の揺れ状況との関係から、適宜所定の振動範囲を設定するものとする。
【0268】
(ステップS2150)
失陥系統判断部6172は、液圧媒体量検出部111a(3)によるリザーバ134(5)の液量低下の検出が、解除されたか否かを判断する。失陥系統判断部6172が、液圧媒体量検出部111a(3)によるリザーバ134(5)の液量低下の検出が、解除されたと判断すれば、ステップS2160へと進む。また、失陥系統判断部6172が、液圧媒体量検出部111a(3)によるリザーバ134(5)の液量低下の検出が、解除されていないと判断すれば、ステップS2190へと進む。
【0269】
ここで、液圧媒体量検出部111a(3)は、リザーバ134(5)内の液面高さが、所定の検出ラインより下がっている間は、継続して検出オン信号を出力し続けるものとする。また、失陥系統判断部6172は、液圧媒体量検出部111a(3)からの検出信号を監視し、上述したステップS2140の条件が満たされる場合に、検出オンが解除されたか否か(検出オフとなったか否か)を判断する。
【0270】
(ステップS2160)
上述のステップS2150において、検出オンが解除されたということは、リザーバ134(5)内の液面低下が、枯渇または枯渇に向けて低下し続けていることはなく、検出ラインから所望の程度で留まっていることを示すものと考えられる。
【0271】
そして、液圧ブレーキユニット1920は、分離弁160と第一カット弁664とを閉状態としている。従って、これらの閉状態において、ブレーキフルードの漏れが留保されるということは、第一液圧系統161に失陥が生じているものと考えられる。
【0272】
従って、失陥系統判断部6172は、第一液圧系統161及び/または第一のホイールシリンダ123Fの失陥であると判断する。なお、失陥系統判断部6172は、その判断結果をカット弁制御部6171とシミュレータカット弁制御部1930とに出力するものとする。
【0273】
(ステップS2170)
カット弁制御部6171は、第一カット弁664を閉状態とし、第二カット弁665を開状態とする。すなわち、カット弁制御部6171は、失陥が生じている側のカット弁を閉状態としてさらなる液漏れを止め、失陥が生じていない側のカット弁を開状態として液圧の供給及びそれによる制動を可能とする。
【0274】
(ステップS2180)
シミュレータカット弁制御部1930は、シミュレータカット弁68を開状態とする。ブレーキECU170(8a)は、シミュレータカット弁68を開状態とすることにより、第一液圧系統161内への液圧封じ込めを回避し、ブレーキフルードの回避先を確保する。このステップS2180での動作処理により、車両の運転者はブレーキペダル124を踏み込むことが可能となり、走行時からの緊急制動動作すなわちリニア制御モードにレギュレータ圧を加重して制動するREGアシストモードによる制動等も可能となる。
【0275】
(ステップS2190)
上述のステップS2150において、検出オンが解除されなかったということは、リザーバ134(5)内の液面低下が、枯渇または枯渇に向けて低下し続けており、検出ラインから所望の程度で留まらずに、さらに液面低下していることを示すものと考えられる。
【0276】
そして、液圧ブレーキユニット1920は、分離弁160と第一カット弁664とを閉状態としている。従って、これらの閉状態において、ブレーキフルードの漏れが止まらず漏れ続けるということは、第二液圧系統162に失陥が生じているものと考えられる。
【0277】
従って、失陥系統判断部6172は、第二液圧系統162及び/または第二のホイールシリンダ123Rの失陥であると判断する。なお、失陥系統判断部6172は、その判断結果をカット弁制御部6171とシミュレータカット弁制御部1930とに出力するものとする。
【0278】
(ステップS2200)
カット弁制御部6171は、第二カット弁665を閉状態とし、第一カット弁664を開状態とする。すなわち、カット弁制御部6171は、失陥が生じている側のカット弁を閉状態としてさらなる液漏れを止め、失陥が生じていない側のカット弁を開状態として液圧の供給及びそれによる制動を可能とする。
【0279】
(ステップS2210)
シミュレータカット弁制御部1930は、シミュレータカット弁68を閉状態とする。ブレーキECU170(8a)は、シミュレータカット弁68を閉状態とすることにより、ストロークシミュレータ69でのブレーキフルードの消費を阻止し、典型的には第一のホイールシリンダ123Fのみにブレーキフルードを供給する。このため、漏れずに残余するブレーキフルードを、車両の制動の為に有効に利用することができる。
【0280】
上述するように、第八の実施形態においては、ストロークシミュレータ69を備える場合においても、他の複数の弁制御と連携して失陥からの液漏れを停止させ、また失陥部位を特定し、かつ制動力を確保できる液圧ブレーキユニットとなるので、さらに好ましい。
【0281】
(第九の実施形態)
第九の実施形態では、上述した第1の実施形態乃至第八の実施形態において、液圧媒体量検出部111a、111a(3)、111a(3b)が、所定量より液量が少ないことを検出する継続時間によって、ブレーキECUが、上述した第1の実施形態乃至第八の実施形態に示した処理をする場合と、バックアップモードに移行する場合と、を分別処理する典型例について、図22を用いて説明する。
【0282】
図22は、第九の実施形態にかかるブレーキECU170(9)の概要を例示した概念ブロック図である。図22においては、第一の実施形態乃至第八の実施形態で各々上述した各ブレーキECUの構成と機能とを具備するものとする。また、説明の重複を避けるため、異なる部位をブレーキECU170(9)として示すこととし、また同一の部位には同一の符号を付して説明を省略すると共に、図面への記載を省略するものとする。
【0283】
ブレーキECU170(9)は、液圧媒体量検出部111a(3)がリザーバ134(5)の液量低下を検出する継続時間を積算する継続時間積算部22114を備える。また、ブレーキECU170(9)は、分離弁制御部110(2)が分離弁160を閉状態とするか否かの判断閾値時間となる低下検出所定時間(X)を記憶する低下検出所定時間記憶部22112を備える。
【0284】
また、ブレーキECU170(9)は、液圧ブレーキユニットをバックアップモードに移行させるか否かの判断閾値時間となるバックアップモード移行判断時間(Z)を記憶するバックアップモード移行判断時間記憶部2220を備える。また、ブレーキECU170(9)は、継続時間積算部22114が積算した液量低下検出継続時間と、低下検出所定時間(X)及びバックアップモード移行判断時間(Z)とを比較する比較部22113を備える。
【0285】
また、ブレーキECU170(9)は、継続時間積算部22114が積算した液量低下検出継続時間が、低下検出所定時間(X)より長ければ第一の実施形態乃至第八の実施形態で説明した各処理のうちいずれかの処理動作を実行する。また、この際に、通知部2230を利用して、軽いランプ点灯や簡便な警告音などにより車両の運転者に、この処理が実行されることを通知する。
【0286】
また、ブレーキECU170(9)は、継続時間積算部22114が積算した液量低下検出継続時間が、バックアップモード移行判断時間(Z)より長ければ、全ての弁の通電制御を放棄して無通電とするバックアップモードに移行する。また、この際に、通知部2230を利用して、ランプ点灯や警告音などにより車両の運転者に、バックアップモードに移行処理がされ、ブレーキフィーリングが変化することを通知する。バックアップモードは、典型的にはレギュレータ33とマスタシリンダ32の圧を、ホイールシリンダ23に供給するHBモード(ハイドロブースターモード)である。
【0287】
次に、図23を用いてブレーキECU170(9)の処理動作について、各ステップごとに説明する。図23は、第九の実施形態の動作処理の典型例を例示するフロー図である。また、図23は、第八の実施形態で説明した動作処理に加重して、処理を行なう例を示すものである。なお、下記の説明においては、既に説明した各ステップと同一の処理についてはステップ番号を引用し、その説明を省略することとする。
【0288】
(ステップS2300)
上述したステップS2100に対応するので、ここでは説明を省略する。
【0289】
(ステップS2310)
ブレーキECU170(9)は、液圧媒体量検出部111a(3)から通知されたブレーキフルード低下の検出信号の継続時間が、予め定められた低下検出所定時間(X)よりも長いか否かを判断する。ブレーキフルード低下の検出信号の継続時間が、予め定められた低下検出所定時間よりも長ければ、ステップS2320へと進む。また、ブレーキフルード低下の検出信号の継続時間が、予め定められた低下検出所定時間よりも長くなければ、ステップS2300へと戻る。
【0290】
具体的には、比較部22113が、低下検出所定時間記憶部22112に記録された所定時間と、継続時間積算部22114が積算した液圧媒体量検出部111a(3)からの検出オンの継続時間と、を比較し、いずれが長いのかを判断する。比較部22113が比較した結果、継続時間積算部22114が積算した液圧媒体量検出部111a(3)からの検出オンの継続時間が、低下検出所定時間記憶部22112に記録された所定時間よりも長ければ、ステップS2320へと進む。また、比較部22113が比較した結果、継続時間積算部22114が積算した液圧媒体量検出部111a(3)からの検出オンの継続時間が、低下検出所定時間記憶部22112に記録された所定時間よりも長くなければ、ステップS2300へと戻る。
【0291】
(ステップS2320)
ブレーキECU170(9)は、通知部2230から車両の運転者に事前警告通知を行なう。通知部2230は、例えば一回のランプ点滅をしたり、一回の警告音を出力したりして、未だバックアップモードに移行はしていないものの、失陥の発生が疑われる状況にあることを通知する。
【0292】
(ステップS2330)
ブレーキECU170(9)は、液圧媒体量検出部111a(3)から通知されたブレーキフルード低下の検出信号の継続時間が、予め定められたバックアップモード移行判断時間(Z:但しZ>Xとする)よりも長いか否かを判断する。ブレーキフルード低下の検出信号の継続時間が、予め定められたバックアップモード移行判断時間よりも長ければ、ステップS2340へと進む。また、ブレーキフルード低下の検出信号の継続時間が、予め定められたバックアップモード移行判断時間よりも長くなければ、図21に示したステップS2120へと進む。
【0293】
具体的には、比較部22113が、バックアップモード移行判断時間記憶部2220に記録された所定時間と、継続時間積算部22114が積算した液圧媒体量検出部111a(3)からの検出オンの継続時間と、を比較し、いずれが長いのかを判断する。比較部22113が比較した結果、継続時間積算部22114が積算した液圧媒体量検出部111a(3)からの検出オンの継続時間が、バックアップモード移行判断時間記憶部2220に記録された所定時間よりも長ければ、ステップS2340へと進む。また、比較部22113が比較した結果、継続時間積算部22114が積算した液圧媒体量検出部111a(3)からの検出オンの継続時間が、バックアップモード移行判断時間記憶部2220に記録された所定時間よりも長くなければ、図21に示したステップS2120へと進む。
【0294】
なお、図21に示したフロー工程を実行する間においても、このステップS2330の条件を満足する継続時間となった場合には、図21での処理を中断し、ステップS2340へと進むものとする。
【0295】
(ステップS2340)
ブレーキECU170(9)は、液圧ブレーキユニットの弁開閉制御を放棄し通電をせずに、バックアップモードへと移行する。なお、バックアップモードでは、典型的には、常開型電磁制御弁であるマスタカット弁64に対応する第一カット弁664と、レギュレータカット弁65に対応する第二カット弁665が開状態とされ、マスタシリンダユニット27に対応するマニュアル液圧供給部127の液圧が、ホイールシリンダ123R,123Fに供給される。
【0296】
(ステップS2350)
ブレーキECU170(9)は、通知部2230を用いて車両の運転者に、バックアップモードへの移行を警告通知する。これにより、バックアップモード移行に伴うブレーキフィーリングの変化を、運転者に知らせることができ、運転者が違和感を覚えることを低減できる。なお、ステップS2350とステップS2340とは、その工程順序を差し替えてもよい。
【0297】
この実施形態で示す動作例においては、バックアップモードへ移行する前段階として、事前警告処理をしたり、失陥からの液漏れや失陥部位の特定等の処理を行なう。このため、より慎重かつ適切にバックアップモードへの移行可否を判断するので、不用意にブレーキフィーリングを悪化させることがないので、好ましい。
【0298】
(第十の実施形態)
次に、第一の実施形態乃至第八の実施形態で示した処理(以下、暫定処置という)に加えて、その暫定処置の間に、車両の運転者または自動制動制御からの制動指示があった場合に、リニア制御モードに移行する動作例について説明する。
【0299】
第十の実施形態は、液量の低下による失陥の発生を検出し、液漏れ停止処置や失陥部位の特定処置等をしている間に、制動指示(制動オン)があった場合には、制動指示を優先的に動作させて車両を停止または減速させることができる。
【0300】
図24は、第十の実施形態の動作処理の典型例を示すフロー図ある。
【0301】
(ステップS2400)
上述したステップS2300に対応するので、ここでは説明を省略する。
【0302】
(ステップS2410)
上述したステップS2310に対応するので、ここでは説明を省略する。
【0303】
(ステップS2420)
上述のステップS2320の警告処理を行なう。また、第一の実施形態乃至第八の実施形態で示した暫定処理、すなわち分離弁160の閉状態、液漏れの停止処置、失陥部位の特定処置、制動力確保の処置等を実行する。
【0304】
(ステップS2430)
ブレーキECU70は、車両の運転者からブレーキペダル124の踏み込みによる制動指示があるか否かを判断する。制動指示があれば、ステップS2450へと進む。制動指示がなければ、ステップS2440へと進む。
【0305】
(ステップS2440)
ブレーキECU70は、自動制動制御による制動指示があるか否かを判断する。制動指示があれば、ステップS2450へと進む。制動指示がなければ、ステップS2460へと進む。
【0306】
(ステップS2450)
ブレーキECU70は、その制御をリニア制御モードとする。これにより、動力液圧源30からの液圧をホイールシリンダ23に供給し、制動力を付与することが可能となる。
【0307】
(ステップS2460)
上述したステップS2330に対応するので、ここでは説明を省略する。また、継続時間が所定のバックアップモード移行判断時間よりも長くなければ、ステップS2410へと戻る。
【0308】
(ステップS2470)
上述したステップS2340に対応するので、ここでは説明を省略する。
【0309】
(ステップS2480)
上述したステップS2350に対応するので、ここでは説明を省略する。
【0310】
第十の実施形態に示す動作処理においては、失陥が生じた場合に暫定処理をする間においても、制動指示があった場合には、可能な限り通常の制動動作とすることができるので、違和感のない制動の実現と、失陥への対応処理とをバランス良く両立できることとなり、好ましい。
【0311】
また、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、自明な範囲で適宜構成を変更し、また自明な範囲で動作及び処理を変更して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0312】
【図1】第一の実施形態にかかる液圧ブレーキユニットの構成を概念的に示すブロック構成図である。
【図2】液圧ブレーキユニットの動作処理を概念的に説明するフロー図である。
【図3】液圧ブレーキユニットを示す系統図である。
【図4】第二の実施形態のブレーキECUの概念的な構成を例示するブロック図である。
【図5】ブレーキECUでの処理について、概念的に示すフロー図である。
【図6】第三の実施形態にかかる液圧ブレーキユニットを概念的に示すブロック構成図である。
【図7】液圧ブレーキユニットの動作処理の概要を概念的に説明するフロー図である。
【図8】液圧媒体量検出部の変形例を概念的に示すブロック図である。
【図9】第四の実施形態にかかる液圧ブレーキユニットの構成概念を例示するブロック図である。
【図10】振動判断部の概念的な構成を例示するブロック図である。
【図11】液圧ブレーキユニットの動作処理の概要を説明するフロー図である。
【図12】液圧ブレーキユニットの動作処理の変形例を例示するフロー図である。
【図13】第五の実施形態にかかる液圧ブレーキユニットの概略構成を例示するブロック図である。
【図14】(a)は第五の実施形態にかかるリザーバの構造を概念的に例示する図である。(b)は仮に第一液圧系統または第一のホイールシリンダでの失陥により、ブレーキフルードの液漏れが生じた場合の状態を示す図である。(c)は仮に第二液圧系統または第二のホイールシリンダでの失陥により、ブレーキフルードの液漏れが生じた場合の状態を示す図である。
【図15】失陥系統判断部の構成概要を例示するブロック図である。
【図16】失陥系統判断部の動作処理を概念的に例示して説明するフロー図である。
【図17】第七の実施形態にかかるブレーキECUの構成を概念的に例示する図である。
【図18】第七の実施形態のブレーキECUを具備する液圧ブレーキシステムの動作処理を例示するフロー図である。
【図19】第八の実施形態の液圧ブレーキユニットの構成概要を概念的に例示するブロック図である。
【図20】第八の実施形態のブレーキECUが、振動判断部を具備するブロック概念図である。
【図21】第八の実施形態の液圧ブレーキユニットの動作処理の典型例を示すフロー図である。
【図22】第九の実施形態にかかるブレーキECUの概要を例示した概念ブロック図である。
【図23】第九の実施形態の動作処理の典型例を例示するフロー図である。
【図24】第十の実施形態の動作処理の典型例を示すフロー図ある。
【符号の説明】
【0313】
20・・液圧ブレーキユニット、21・・ディスクブレーキユニット、22・・ブレーキディスク、23・・ホイールシリンダ、24・・ブレーキペダル、25・・ストロークセンサ、27・・マスタシリンダユニット、30・・動力液圧源、31・・液圧ブースタ、32・・マスタシリンダ、33・・レギュレータ、34・・リザーバ、35・・アキュムレータ、35a・・リリーフバルブ、36・・ポンプ、36a・・モータ、37・・マスタ配管、38・・レギュレータ配管、39・・アキュムレータ配管、40・・液圧アクチュエータ、41・・個別流路、45・・主流路、45a・・第1流路、45b・・第2流路、46・・減圧用流路、51・・ABS保持弁、55・・リザーバ流路、56・・ABS減圧弁、60・・分離弁、61・・マスタ流路、62・・レギュレータ流路、63・・アキュムレータ流路、64・・マスタカット弁、65・・レギュレータカット弁、66・・増圧リニア制御弁、67・・減圧リニア制御弁、68・・シミュレータカット弁、69・・ストロークシミュレータ、70・・ブレーキ電子制御部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液圧媒体を貯留するリザーバから供給された液圧媒体を加圧し、運転者によるブレーキ操作量に応じた液圧を生成するマニュアル液圧供給部と、
前記マニュアル液圧供給部で生成した液圧を第一のホイールシリンダへ伝達するように、前記マニュアル液圧供給部と前記第一のホイールシリンダとの間を連通する第一液圧系統と、
前記マニュアル液圧供給部で生成した液圧を第二のホイールシリンダへ伝達するように、前記マニュアル液圧供給部と前記第二のホイールシリンダとの間を連通する第二液圧系統と、
前記第一液圧系統と前記第二液圧系統との間を連通する主流路に設けられた分離弁と、
前記分離弁を開閉制御する分離弁制御部と、前記リザーバに貯留された液圧媒体が所定量より少ないか否かを検出する液圧媒体量検出部と、を有するブレーキECUと、
を備える液圧ブレーキユニットであって、
前記分離弁制御部は、
前記液圧媒体量検出部が、前記液圧媒体が所定量より少ないことを検出した場合に、前記分離弁を閉状態とする
ことを特徴とする液圧ブレーキユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の液圧ブレーキユニットにおいて、
前記分離弁制御部は、
前記液圧媒体量検出部が、前記液圧媒体が所定量より少ないことを検出した状態が低下検出所定時間継続した場合に、前記分離弁を閉状態とする
ことを特徴とする液圧ブレーキユニット。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の液圧ブレーキユニットにおいて、
前記第一液圧系統は前記液圧媒体を連通遮断する第一カット弁を備え、かつ前記第二液圧系統は前記液圧媒体を連通遮断する第二カット弁を備え、
前記液圧媒体量検出部は、前記リザーバに貯留された液圧媒体の低下量を検出可能であって、
前記ブレーキECUは、
前記分離弁が前記閉状態である場合に、前記第一カット弁または前記第二カット弁のいずれかを閉状態として前記液圧媒体を遮断するカット弁制御部と、
前記カット弁制御部が前記第一カット弁または前記第二カット弁のいずれかを閉状態とした場合に、前記液圧媒体量検出部が検出した前記リザーバに貯留された液圧媒体の低下量が、所定の低下量より大きいか否かにより、失陥の発生が前記第一液圧系統と前記第二液圧系統とのいずれであるのかを判断する失陥系統判断部
を備えることを特徴とする液圧ブレーキユニット。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の液圧ブレーキユニットにおいて、
前記第一液圧系統は前記液圧媒体を連通遮断する第一カット弁を有し、前記第二液圧系統は前記液圧媒体を連通遮断する第二カット弁を有し、
前記ブレーキECUは、
前記分離弁が前記閉状態である場合に、前記第一カット弁または前記第二カット弁のいずれかを閉状態として前記液圧媒体を遮断するカット弁制御部と、
前記リザーバの振動が所定の振動範囲内か否かを判断する振動判断部と、
前記カット弁制御部が前記第一カット弁または前記第二カット弁のいずれかを閉状態とした場合かつ前記振動判断部が前記リザーバの振動が所定の振動範囲内であると判断した場合に、前記液圧媒体量検出部が前記液圧媒体が所定量より少ないと検出したか否かにより、失陥の発生が前記第一液圧系統と前記第二液圧系統とのいずれであるのかを判断する失陥系統判断部と、
を備えることを特徴とする液圧ブレーキユニット。
【請求項5】
請求項4に記載の液圧ブレーキユニットにおいて、
前記リザーバは、前記第一液圧系統に供給する液圧媒体を貯留する第一リザーバ部と、前記第二液圧系統に供給する液圧媒体を貯留し、かつ前記第一リザーバ部よりも容量が大きい第二リザーバ部と、を具備し、
前記カット弁制御部は、
前記分離弁が前記閉状態である場合に、前記第一液圧系統が備える前記第一カット弁を閉状態として前記液圧媒体を遮断する
ことを特徴とする液圧ブレーキユニット。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の液圧ブレーキユニットにおいて、
前記失陥系統判断部は、
前記液圧媒体量検出部が、所定時間内に所定回数より多く、前記液圧媒体が所定量より少ないことの検出と非検出とを繰り返したか否かを判断する信頼性確認部を備え、
前記カット弁制御部が前記第一カット弁または前記第二カット弁のいずれかを閉状態とした場合かつ前記振動判断部が前記リザーバの振動が所定の振動範囲内であると判断した場合に、
前記信頼性確認部が、前記液圧媒体量検出部が、所定時間内に所定回数より多く、前記液圧媒体が所定量より少ないことの検出と非検出とを繰り返したと判断すると、
前記第一液圧系統または前記第二液圧系統のいずれか閉状態とした系統に失陥が生じていると判断する失陥系統判断部である
ことを特徴とする液圧ブレーキユニット。
【請求項7】
請求項3乃至請求項6のいずれか一項に記載の液圧ブレーキユニットにおいて、
前記失陥系統判断部が、前記第一液圧系統または前記第二液圧系統のいずれの系統に失陥が生じているかを判断した後、
前記カット弁制御部は、
前記失陥系統判断部が失陥が生じていると判断した系統を遮断状態とし、前記失陥系統判断部が失陥が生じていないと判断した系統を連通状態とするように、前記第一カット弁と前記第二カット弁とを制御する
ことを特徴とする液圧ブレーキユニット。
【請求項8】
請求項3乃至請求項7のいずれか一項に記載の液圧ブレーキユニットにおいて、
前記第一液圧系統または前記第二液圧系統は、各々の系統が備える前記第一カット弁または前記第二カット弁と前記マニュアル液圧供給部との間に、シミュレータカット弁を介して、運転者によるブレーキ踏力に応じた反力を創出するストロークシミュレータを備え、
前記ブレーキECUは、前記シミュレータカット弁を開閉制御するシミュレータカット弁制御部を備え、
前記失陥系統判断部が、前記第一液圧系統または前記第二液圧系統のいずれの系統に失陥が生じているかを判断した後、
前記カット弁制御部は、
前記失陥系統判断部が失陥が生じていると判断した系統を遮断状態とし、前記失陥系統判断部が失陥が生じていないと判断した系統を連通状態とするように、前記第一カット弁と前記第二カット弁とを開閉制御し、
前記シミュレータカット弁制御部は、
前記失陥系統判断部が失陥が生じていると判断した系統に前記シミュレータカット弁が備えられている場合には、前記シミュレータカット弁を開状態とし、
前記失陥系統判断部が失陥が生じていないと判断した系統に前記シミュレータカット弁が備えられている場合には、前記シミュレータカット弁を閉状態とする
ことを特徴とする液圧ブレーキユニット。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の液圧ブレーキユニットにおいて、
前記液圧媒体量検出部が、前記液圧媒体が所定量より少ないことを検出した状態が低下検出所定時間継続した場合に、
前記分離弁制御部が前記分離弁を前記閉状態とし、
前記液圧媒体量検出部が、前記液圧媒体が所定量より少ないことを検出した状態が前記低下検出所定時間より長い所定のバックアップモード移行判断時間継続した場合に、
前記ブレーキECUが前記マニュアル液圧供給部の液圧を、前記運転者のブレーキ操作の有無に依存せず、前記第一のホイールシリンダと第二のホイールシリンダとに伝達するバックアップモードに移行させるとともに、車両の運転者に失陥の発生を通知する
ことを特徴とする液圧ブレーキユニット。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の液圧ブレーキユニットにおいて、
前記第一のホイールシリンダまたは前記第二のホイールシリンダの少なくともいずれか一方に伝達される液圧を、前記運転者によるブレーキ操作有無とは独立に制御する自動制動制御部を備え、
前記分離弁制御部が、前記分離弁を前記閉状態とする場合に、
前記運転者によるブレーキ操作または前記自動制動制御による制動指示があると、
前記分離弁制御部が、前記分離弁を開状態とし、
前記ブレーキECUは、
前記液圧媒体を動力的に加圧する動力液圧源から前記第一のホイールシリンダと前記第二のホイールシリンダとに液圧を伝達するリニア制御モードとする
ことを特徴とする液圧ブレーキユニット。
【請求項11】
液圧媒体を貯留するリザーバから供給された液圧媒体を加圧し、運転者によるブレーキ操作量に応じた液圧を生成するマニュアル液圧供給部と、
前記マニュアル液圧供給部で生成した液圧を第一のホイールシリンダへ伝達するように、前記マニュアル液圧供給部と前記第一のホイールシリンダとの間を連通する第一液圧系統と、
前記マニュアル液圧供給部で生成した液圧を第二のホイールシリンダへ伝達するように、前記マニュアル液圧供給部と前記第二のホイールシリンダとの間を連通する第二液圧系統と、
前記第一液圧系統と前記第二液圧系統との間を連通する主流路に設けられた分離弁と、
前記分離弁を開閉制御する分離弁制御部と、前記リザーバに貯留された液圧媒体が所定量より少ないか否かを検出する液圧媒体量検出部と、を有するブレーキECUと、
を備える液圧ブレーキユニットの制御方法であって、
前記液圧媒体量検出部が、前記液圧媒体が所定量より少ないことを検出する検出工程と、
前記検出工程において、前記液圧媒体が所定量より少ないことが検出されると、前記分離弁制御部が、前記分離弁を閉状態とする工程と、
を有することを特徴とする液圧ブレーキユニットの制御方法。
【請求項1】
液圧媒体を貯留するリザーバから供給された液圧媒体を加圧し、運転者によるブレーキ操作量に応じた液圧を生成するマニュアル液圧供給部と、
前記マニュアル液圧供給部で生成した液圧を第一のホイールシリンダへ伝達するように、前記マニュアル液圧供給部と前記第一のホイールシリンダとの間を連通する第一液圧系統と、
前記マニュアル液圧供給部で生成した液圧を第二のホイールシリンダへ伝達するように、前記マニュアル液圧供給部と前記第二のホイールシリンダとの間を連通する第二液圧系統と、
前記第一液圧系統と前記第二液圧系統との間を連通する主流路に設けられた分離弁と、
前記分離弁を開閉制御する分離弁制御部と、前記リザーバに貯留された液圧媒体が所定量より少ないか否かを検出する液圧媒体量検出部と、を有するブレーキECUと、
を備える液圧ブレーキユニットであって、
前記分離弁制御部は、
前記液圧媒体量検出部が、前記液圧媒体が所定量より少ないことを検出した場合に、前記分離弁を閉状態とする
ことを特徴とする液圧ブレーキユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の液圧ブレーキユニットにおいて、
前記分離弁制御部は、
前記液圧媒体量検出部が、前記液圧媒体が所定量より少ないことを検出した状態が低下検出所定時間継続した場合に、前記分離弁を閉状態とする
ことを特徴とする液圧ブレーキユニット。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の液圧ブレーキユニットにおいて、
前記第一液圧系統は前記液圧媒体を連通遮断する第一カット弁を備え、かつ前記第二液圧系統は前記液圧媒体を連通遮断する第二カット弁を備え、
前記液圧媒体量検出部は、前記リザーバに貯留された液圧媒体の低下量を検出可能であって、
前記ブレーキECUは、
前記分離弁が前記閉状態である場合に、前記第一カット弁または前記第二カット弁のいずれかを閉状態として前記液圧媒体を遮断するカット弁制御部と、
前記カット弁制御部が前記第一カット弁または前記第二カット弁のいずれかを閉状態とした場合に、前記液圧媒体量検出部が検出した前記リザーバに貯留された液圧媒体の低下量が、所定の低下量より大きいか否かにより、失陥の発生が前記第一液圧系統と前記第二液圧系統とのいずれであるのかを判断する失陥系統判断部
を備えることを特徴とする液圧ブレーキユニット。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の液圧ブレーキユニットにおいて、
前記第一液圧系統は前記液圧媒体を連通遮断する第一カット弁を有し、前記第二液圧系統は前記液圧媒体を連通遮断する第二カット弁を有し、
前記ブレーキECUは、
前記分離弁が前記閉状態である場合に、前記第一カット弁または前記第二カット弁のいずれかを閉状態として前記液圧媒体を遮断するカット弁制御部と、
前記リザーバの振動が所定の振動範囲内か否かを判断する振動判断部と、
前記カット弁制御部が前記第一カット弁または前記第二カット弁のいずれかを閉状態とした場合かつ前記振動判断部が前記リザーバの振動が所定の振動範囲内であると判断した場合に、前記液圧媒体量検出部が前記液圧媒体が所定量より少ないと検出したか否かにより、失陥の発生が前記第一液圧系統と前記第二液圧系統とのいずれであるのかを判断する失陥系統判断部と、
を備えることを特徴とする液圧ブレーキユニット。
【請求項5】
請求項4に記載の液圧ブレーキユニットにおいて、
前記リザーバは、前記第一液圧系統に供給する液圧媒体を貯留する第一リザーバ部と、前記第二液圧系統に供給する液圧媒体を貯留し、かつ前記第一リザーバ部よりも容量が大きい第二リザーバ部と、を具備し、
前記カット弁制御部は、
前記分離弁が前記閉状態である場合に、前記第一液圧系統が備える前記第一カット弁を閉状態として前記液圧媒体を遮断する
ことを特徴とする液圧ブレーキユニット。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の液圧ブレーキユニットにおいて、
前記失陥系統判断部は、
前記液圧媒体量検出部が、所定時間内に所定回数より多く、前記液圧媒体が所定量より少ないことの検出と非検出とを繰り返したか否かを判断する信頼性確認部を備え、
前記カット弁制御部が前記第一カット弁または前記第二カット弁のいずれかを閉状態とした場合かつ前記振動判断部が前記リザーバの振動が所定の振動範囲内であると判断した場合に、
前記信頼性確認部が、前記液圧媒体量検出部が、所定時間内に所定回数より多く、前記液圧媒体が所定量より少ないことの検出と非検出とを繰り返したと判断すると、
前記第一液圧系統または前記第二液圧系統のいずれか閉状態とした系統に失陥が生じていると判断する失陥系統判断部である
ことを特徴とする液圧ブレーキユニット。
【請求項7】
請求項3乃至請求項6のいずれか一項に記載の液圧ブレーキユニットにおいて、
前記失陥系統判断部が、前記第一液圧系統または前記第二液圧系統のいずれの系統に失陥が生じているかを判断した後、
前記カット弁制御部は、
前記失陥系統判断部が失陥が生じていると判断した系統を遮断状態とし、前記失陥系統判断部が失陥が生じていないと判断した系統を連通状態とするように、前記第一カット弁と前記第二カット弁とを制御する
ことを特徴とする液圧ブレーキユニット。
【請求項8】
請求項3乃至請求項7のいずれか一項に記載の液圧ブレーキユニットにおいて、
前記第一液圧系統または前記第二液圧系統は、各々の系統が備える前記第一カット弁または前記第二カット弁と前記マニュアル液圧供給部との間に、シミュレータカット弁を介して、運転者によるブレーキ踏力に応じた反力を創出するストロークシミュレータを備え、
前記ブレーキECUは、前記シミュレータカット弁を開閉制御するシミュレータカット弁制御部を備え、
前記失陥系統判断部が、前記第一液圧系統または前記第二液圧系統のいずれの系統に失陥が生じているかを判断した後、
前記カット弁制御部は、
前記失陥系統判断部が失陥が生じていると判断した系統を遮断状態とし、前記失陥系統判断部が失陥が生じていないと判断した系統を連通状態とするように、前記第一カット弁と前記第二カット弁とを開閉制御し、
前記シミュレータカット弁制御部は、
前記失陥系統判断部が失陥が生じていると判断した系統に前記シミュレータカット弁が備えられている場合には、前記シミュレータカット弁を開状態とし、
前記失陥系統判断部が失陥が生じていないと判断した系統に前記シミュレータカット弁が備えられている場合には、前記シミュレータカット弁を閉状態とする
ことを特徴とする液圧ブレーキユニット。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の液圧ブレーキユニットにおいて、
前記液圧媒体量検出部が、前記液圧媒体が所定量より少ないことを検出した状態が低下検出所定時間継続した場合に、
前記分離弁制御部が前記分離弁を前記閉状態とし、
前記液圧媒体量検出部が、前記液圧媒体が所定量より少ないことを検出した状態が前記低下検出所定時間より長い所定のバックアップモード移行判断時間継続した場合に、
前記ブレーキECUが前記マニュアル液圧供給部の液圧を、前記運転者のブレーキ操作の有無に依存せず、前記第一のホイールシリンダと第二のホイールシリンダとに伝達するバックアップモードに移行させるとともに、車両の運転者に失陥の発生を通知する
ことを特徴とする液圧ブレーキユニット。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の液圧ブレーキユニットにおいて、
前記第一のホイールシリンダまたは前記第二のホイールシリンダの少なくともいずれか一方に伝達される液圧を、前記運転者によるブレーキ操作有無とは独立に制御する自動制動制御部を備え、
前記分離弁制御部が、前記分離弁を前記閉状態とする場合に、
前記運転者によるブレーキ操作または前記自動制動制御による制動指示があると、
前記分離弁制御部が、前記分離弁を開状態とし、
前記ブレーキECUは、
前記液圧媒体を動力的に加圧する動力液圧源から前記第一のホイールシリンダと前記第二のホイールシリンダとに液圧を伝達するリニア制御モードとする
ことを特徴とする液圧ブレーキユニット。
【請求項11】
液圧媒体を貯留するリザーバから供給された液圧媒体を加圧し、運転者によるブレーキ操作量に応じた液圧を生成するマニュアル液圧供給部と、
前記マニュアル液圧供給部で生成した液圧を第一のホイールシリンダへ伝達するように、前記マニュアル液圧供給部と前記第一のホイールシリンダとの間を連通する第一液圧系統と、
前記マニュアル液圧供給部で生成した液圧を第二のホイールシリンダへ伝達するように、前記マニュアル液圧供給部と前記第二のホイールシリンダとの間を連通する第二液圧系統と、
前記第一液圧系統と前記第二液圧系統との間を連通する主流路に設けられた分離弁と、
前記分離弁を開閉制御する分離弁制御部と、前記リザーバに貯留された液圧媒体が所定量より少ないか否かを検出する液圧媒体量検出部と、を有するブレーキECUと、
を備える液圧ブレーキユニットの制御方法であって、
前記液圧媒体量検出部が、前記液圧媒体が所定量より少ないことを検出する検出工程と、
前記検出工程において、前記液圧媒体が所定量より少ないことが検出されると、前記分離弁制御部が、前記分離弁を閉状態とする工程と、
を有することを特徴とする液圧ブレーキユニットの制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2010−58667(P2010−58667A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−226462(P2008−226462)
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]