説明

液晶表示装置

【課題】ベンド配向モードの液晶セルを光学的に補償し、コントラストが高く、色味が良く、階調反転の生じない液晶表示装置を提供する。
【解決手段】光学異方性層1(31A,31B)と光学異方性層2(32A,32B)から構成される光学フィルムを有する液晶表示装置であって、該光学異方性層1が下記の数式(1)を、該光学異方性層2が下記の数式(2)を満足する。 数式(1) Re1(450)/Re1(650)<1.25 数式中Re1(450)、Re1(650)は波長450nm、650nmにおける光学異方性層1の面内レタデーション値である。 数式(2) 2≦(Δn(550)×d)/Rth2(550)≦5 数式中Δn(550)は波長550nmにおける液晶セル中の液晶分子の複屈折であり、dはnm単位とする液晶セルの厚さであり、Rth2(550)は光学異方性層2の波長550nmにおける厚み方向のレタデーション値である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学フィルム、および該光学フィルムを具備する偏光板ならびに液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(LCD)は、CRT(Cathode Ray Tube)と比較して、薄型、軽量、低消費電力との大きな利点を有する。液晶表示装置は、液晶セルおよび液晶セルの両側に配置された一対の偏光板からなる。液晶セルは、棒状液晶性分子、それを封入するための二枚の基板および棒状液晶性分子に電圧を加えるための電極層からなる。封入した棒状液晶性分子を配向させるため、二枚の基板には配向膜が設けられる。液晶セルに表示される画像の着色を除去するため、液晶セルと偏光板との間に光学補償シート(位相差板)を設けることが多い。偏光板(偏光膜)と光学補償シートとの積層体は、楕円偏光板として機能する。光学補償シートに、液晶セルの視野角を拡大する機能を付与する場合もある。延伸複屈折フィルムが、光学補償シートとして従来から使用されている。
【0003】
延伸複屈折フィルムに代えて、ディスコティック化合物を含む光学異方性層を有する光学補償シートを使用することも提案されている(例えば、特許文献1〜4参照)。光学異方性層は、ディスコティック化合物を配向させ、その配向状態を固定することにより形成する。ディスコティック化合物は、一般に大きな複屈折率を有する。また、ディスコティック化合物には、多様な配向形態がある。従って、ディスコティック化合物を用いることで、従来の延伸複屈折フィルムでは得ることができない光学的性質を有する光学補償シートを製造することができる。
【0004】
棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置が提案されている(例えば、特許文献5、6参照)。棒状液晶性分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensatory Bend)液晶モードとも呼ばれる。ベンド配向モードの液晶表示装置は、応答速度が速いとの利点がある。
【0005】
ベンド配向モードには、一般的な液晶モード(TNモード、STNモード)と比較すると、視野角が広く、応答速度が速いとの特徴がある。しかし、CRTと比較すると、さらに改良が必要である。ベンド配向モードの液晶表示装置をさらに改良するため、一般的な液晶モードと同様に光学補償シートを用いることが考えられる。しかし、従来の延伸複屈折フィルムからなる光学補償シートは、ベンド配向モードの液晶表示装置では、光学補償機能が不十分であった。前述したように、延伸複屈折フィルムに代えて、ディスコティック化合物を含む光学的異方性層と透明支持体とを有する光学補償シートを使用することが提案されている。さらに、ディスコティック化合物を含む光学補償シートを使用したベンド配向モードの液晶表示装置も提案されている(例えば、特許文献7、8参照)。ディスコティック化合物を含む光学補償シートを使用することで、ベンド配向モードの液晶表示装置の視野角は著しく改善される。
【0006】
しかしながら、ベンド配向モードの液晶表示装置にディスコティック化合物を含む光学補償シートを使用すると、特定の波長の光が漏れて、表示画像に着色を生じる問題が指摘されている(例えば、特許文献9参照)。この着色の原因は、楕円偏光板(偏光膜と光学補償シートとの積層体)の透過率の波長依存性にある旨が記載されている。
そして、ディスコティック化合物の円盤面の法線の光学異方性層への正射影の平均方向と偏光膜の面内透過軸との角度が実質的に45゜になるように光学異方性層と偏光膜とを配置することで、ベンド配向モードの液晶セルに対する最大の光学補償効果が得られることが報告されている。ディスコティック化合物を含む光学補償シートを使用したベンド配向液晶装置について、色味変化を低減し、階調反転を防止するために、様々な方法が提案されている(例えば、特許文献10、11参照)。
【特許文献1】特開平6−214116号公報
【特許文献2】米国特許第5583679号明細書
【特許文献3】米国特許第5646703号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第3911620号明細書
【特許文献5】米国特許第4583825号明細書
【特許文献6】米国特許第5410422号明細書
【特許文献7】特開平9−197397号公報
【特許文献8】国際公開第96/37804号パンフレット
【特許文献9】特開平11−316378号公報
【特許文献10】特許第3056997号公報
【特許文献11】特開2002−40429号公報
【0007】
また、ベンド配向モード要液晶表示装置に適用されている光学補償シートにセルローストリアセテートのような水分の吸収や透過が大きい化合物を適用すると光学補償性能が温湿度によって変化する場合があり、パネルの設置場所の雰囲気温度・湿度によって表示性能・表示品位が変化してしまうという問題があることが解った。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、液晶セル、特にベンド配向モードの液晶セルを適切に光学的に補償する光学フィルムを提供することである。
本発明の他の目的は、該光学フィルムを用い、黒表示時の正面および左右上下の極角方向での透過率を著しく低下させ、コントラストが高く、視角特性に優れ、黒表示の色味に問題がなく、かつ階調反転の生じない良好な画像を表示する液晶表示装置を提供することである。更にはパネルの設置雰囲気温度・湿度によって表示性能、表示品位が変化しない液晶表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らの鋭意検討により、液晶セルに用いられる液晶分子の異方性の波長依存性と、光学補償シート(たとえばディスコティック液晶)の異方性の波長依存性が異なるために、ベンド配向モードの液晶表示装置では一般的に短波長(青)の光が漏れることが判明した。即ち、液晶分子と光学補償シートの波長分散を一致させることで上記の課題、特に黒表示時の色味を改良することができることを知見した。
本発明の目的は下記[1]〜[13]により達成された。
〔1〕
光学異方性層1と光学異方性層2とを有する光学フィルムにおいて、該光学異方性層1が下記の数式(1)を満足する光学特性を有し、該光学異方性層2が環状オレフィン系付加重合体を含んでなるフィルムであることを特徴とする光学フィルム。
数式(1) Re1(450)/Re1(650)<1.25
数式中Re1(450)、Re1(650)は波長450nm、650nmにおける光学異方性層1の面内レタデーション値である。
〔2〕
前記環状オレフィン系付加重合体が、一般式(II)で表される繰り返し単位を少なくとも1種以上含む付加(共)重合体環状ポリオレフィン、または該一般式(II)で表される繰り返し単位を少なくとも1種以上と、一般式(I)で表される繰り返し単位の少なくとも1種以上とを含む付加(共)重合体環状ポリオレフィンであることを特徴とする上記〔1〕に記載の光学フィルム。
【0010】
【化5】

【0011】
【化6】

【0012】
一般式(I)および一般式(II)中、mは0〜4の整数を表す。R1〜Rは水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基、X1〜XおよびY1〜Yは、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜10の炭化水素基、−(CH2)nCOOR11、−(CH2)nOCOR12、−(CH2)nNCO、−(CH2)nNO2、−(CH2)nCN、−(CH2)nCONR1314、−(CH2)nNR1314、−(CH2)nOZ、−(CH2)nW、またはX1とY1あるいはX2とY2から構成された、(−CO)2O、(−CO)2NR15を示す。なお、R11、R12、R13、R14、R15は水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基、Zは炭化水素基またはハロゲンで置換された炭化水素基、WはSiR16p3−p(R16は炭素数1〜10の炭化水素基、Dはハロゲン原子、−OCOR16または−OR16、pは0〜3の整数を示す)、nは0〜10の整数を示す。
【0013】
〔3〕
前記環状オレフィン系付加重合体が、一般式(III)で表される繰り返し単位を少なくとも1種以上含む付加(共)重合体環状ポリオレフィン、または該一般式(III)で表される繰り返し単位を少なくとも1種以上と、一般式(I)で表される繰り返し単位の少なくとも1種以上とを含む付加(共)重合体環状ポリオレフィンであることを特徴とする上記〔1〕に記載の光学フィルム。
【0014】
【化7】

【0015】
【化8】

【0016】
一般式(I)および一般式(III)中、mは0〜4の整数を表す。R、R、R5およびR6は、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基、X、Y、X3、およびY3は、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜10の炭化水素基、−(CH2)nCOOR11、−(CH2)nOCOR12、−(CH2)nNCO、−(CH2)nNO2、−(CH2)nCN、−(CH2)nCONR1314、−(CH2)nNR1314、−(CH2)nOZ、−(CH2)nW、またはXとYあるいはX3とY3から構成された、(−CO)2O、(−CO)2NR15を示す。なお、R11,R12,R13,R14,R15は水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、Zは炭化水素基またはハロゲンで置換された炭化水素基、WはSiR16p3−p(R16は炭素数1〜10の炭化水素基、Dはハロゲン原子−OCOR16または−OR16、pは0〜3の整数を示す)、nは0〜10の整数を示す。
〔4〕
前記光学異方性層2が一次粒子径1nm〜20μmの微粒子を、環状ポリオレフィン系樹脂に対して0.01〜0.3質量%の割合で含有することを特徴とする上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の光学フィルム。
〔5〕
偏光膜および該偏光膜の両面に保護フィルムを有する偏光板であって、該保護フィルムの一方が、上記(1)〜〔4〕のいずれかに記載の光学フィルムであることを特徴とする偏光板。
〔6〕
液晶セルの両側に偏光板を有する液晶表示装置において、該偏光板の少なくとも1枚が上記〔5〕に記載の偏光板であることを特徴とする液晶表示装置。
〔7〕
上記〔6〕に記載の液晶表示装置において、該光学異方性層2が下記の数式(2)を満足する光学特性を有することを特徴とする液晶表示装置。
数式(2) 2≦(Δn(550)×d)/Rth2(550)≦5
数式中Δn(550)は波長550nmにおける液晶セル中の液晶分子の複屈折であり、dはnmを単位とする液晶セルの厚さであり、Rth2(550)は光学異方性層2の波長550nmにおける厚み方向のレタデーション値である。
【0017】
〔8〕
前記光学異方性層1の波長550nmにおける面内レタデーション値Re1(550)が0〜40nmであることを特徴とする上記〔6〕または〔7〕に記載の液晶表示装置。
〔9〕
前記光学異方性層2の波長550nmにおける面内レタデーション値Re2(550)が30〜60nmであり、波長550nmにおける厚み方向のレタデーション値Rth2(550)が100〜300nmであることを特徴とする上記〔6〕〜〔8〕のいずれかに記載の液晶表示装置。
〔10〕
前記光学異方性層1が、光学異方性層1の遅相軸をあおり軸とし、あおり角を±40°として測定した波長550nmにおけるレタデーション値Re1(40°)とRe1(−40°)の比:Re1(40°)/Re1(−40°)を3〜20あるいは1/20〜1/3の範囲に有することを特徴とする上記〔6〕〜〔9〕のいずれかに記載の液晶表示装置。
〔11〕
前記光学異方性層1が液晶性化合物から形成されたことを特徴とする上記〔6〕〜〔10〕のいずれかに記載の液晶表示装置。
〔12〕
前記液晶性化合物が、ディスコティック化合物であることを特徴とする上記〔6〕〜〔11〕のいずれかに記載の液晶表示装置。
〔13〕
前記液晶セルがベンド配向モードであることを特徴とする上記〔7〕〜〔12〕のいずれかに記載の液晶表示装置。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、液晶セル、特にベンド配向モードの液晶セルを適切に光学的に補償し、黒表示時の正面および左右上下の極角方向での透過率を著しく低下させ、コントラストが高く、視角特性に優れ、黒表示の色味に問題がなく、かつ階調反転の生じない良好な画像を表示するとともに、パネルの設置雰囲気温度・湿度によって表示性能、表示品位が変化しない液晶表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0020】
本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のリターデーションおよび厚さ方向のリターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。Rth(λ)は前記Re(λ)、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して+40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値、および面内の遅相軸を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値の計3つの方向で測定したレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHが算出する。ここで平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する: セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx,ny,nzよりNz=(nx-nz)/(nx-ny)が更に算出される。
尚、本明細書では、特に断りのない限りは波長550nmで測定した値を示す。
【0021】
[液晶表示装置]
図1は、ベンド配向液晶セル内の液晶性化合物の配向を模式的に示す断面図である。図1に示すように、ベンド配向液晶セル(10)は、上基板(14a)と下基板(14b)の間に液晶性化合物(11)を封入した構造を有する。ベンド配向液晶セルに使用する液晶性化合物(11)は、一般に正の誘電率異方性を有する。液晶セルの上基板(14a)と下基板(14b)は、それぞれ、配向膜(12a、12b)と電極層(13a、13b)を有する。配向膜は棒状液晶性分子(11a〜11j)を配向させる機能を有する。RDは配向膜のラビング方向である。電極層は棒状液晶性分子(11a〜11j)に電圧を印加する機能を有する。
【0022】
ベンド配向液晶セルの印加電圧が低い時、図1のoffに示すように、液晶セルの上基板(14a)側の棒状液晶性分子(11a〜11e)と下基板(14b)側の棒状液晶性分子(11f〜11j)とは、逆向きに(上下対称に)に配向する。また、基板(14a、14b)近傍の棒状液晶性分子(11a、11b、11i、11j)は、ほぼ水平方向に配向し、液晶セル中央部の棒状液晶性分子(11d〜11g)は、ほぼ垂直方向に配向する。
【0023】
図1のonに示すように、印加電圧が高いと、基板(14a、14b)近傍の棒状液晶性分子(11a、11j)は、ほぼ水平に配向したままである。また、液晶セル中央部の棒状液晶性分子(11e、11f)は、ほぼ垂直に配向したままである。電圧の増加により配向が変化するのは、基板と液晶セル中央部との中間に位置する棒状液晶性分子(11b、11c、11d、11g、11h、11i)であり、これらはoffの状態よりも垂直に配向する。しかし、液晶セルの上基板(14a)側の棒状液晶性分子(11a〜11e)と下基板(14b)側の棒状液晶性分子(11f〜11j)とが、逆向きに(上下対称に)に配向することは、offの状態と同様である。
【0024】
図2は、本発明に従う偏光板の一例を示す模式図である。図2に示す偏光板は、ディスコティック化合物(31a〜31e)を含む光学異方性層1(31)と、少なくとも1枚の環状オレフィン系付加重合体を含む光学異方性層2(33)とを有してなる光学フィルム(35)、および偏光膜(34)の積層体からなる。図2に示す偏光板は、光学異方性層1(31)と光学異方性層2(33)との間に配向膜(32)を有する。光学異方性層1(31)のディスコティック化合物(31a〜31e)は、平面分子である。ディスコティック化合物(31a〜31e)は、分子中にはただ一個の平面、すなわち円盤面を持つ。円盤面は、光学異方性層2(33)の面に対して傾斜している。円盤面と光学異方性層2面との間の角度(傾斜角)は、ディスコティック化合物と配向膜からの距離が増加するに伴って増加している。平均傾斜角は、15〜50°の範囲であることが好ましい。図2に示すように傾斜角を変化させると、偏光板の視野角拡大機能が著しく向上する。また、傾斜角を変化させた偏光板には、表示画像の反転、階調変化あるいは着色の発生を防止する機能もある。ディスコティック化合物(31a〜31e)の円盤面の法線(NL)を光学異方性層2(33)へ正射影した方向(PL)の平均は、配向膜(32)のラビング方向(RD)と反平行の関係になる。
【0025】
本発明の好ましい態様は、ディスコティック化合物の円盤面の法線の光学異方性層2への正射影の平均方向と、光学異方性層2(33)の面内遅相軸(SA)と、の角度を実質的に45°にする。よって、偏光板の製造工程では、配向膜(32)のラビング方向(RD)と光学異方性層2の面内遅相軸(SA)との角度(θ)が実質的に45゜になるように調節すればよい。さらに本発明では、光学異方性層2の面内遅相軸(SA)と偏光膜(34)の面内透過軸(TA)とが実質的に平行または実質的に垂直になるように光学異方性層2と偏光膜とを配置する。図2に示す偏光板では、一枚の光学異方性層2を平行に配置している。光学異方性層2(33)の面内遅相軸(SA)は、原則として光学異方性層2の延伸方向に相当する。偏光膜(34)の面内透過軸(TA)は、原則として偏光膜の延伸方向に垂直な方向に相当する。
【0026】
図3は、本発明に従うベンド配向型液晶表示装置の一例を示す模式図である。図3に示す液晶表示装置は、ベンド配向液晶セル(10)、液晶セルの両側に配置された一対の偏光板(31A〜34A、31B〜34B)およびバックライト(BL)からなる。ベンド配向液晶セル(10)は、図1に示した液晶セルに相当する。液晶セル(10)の上下のラビング方向(RD2、RD3)は、同一方向(平行)である。偏光板は、液晶セル(10)側から、光学異方性層1(31A、31B)、光学異方性層2(33A、33B)および偏光膜(34A、34B)がこの順に積層されている。光学異方性層1(31A、31B)のディスコティック化合物のラビング方向(RD1、RD4)は、対面する液晶セルのラビング方向(RD2、RD3)とは反平行の関係にある。前述したように、ディスコティック化合物のラビング方向(RD1、RD4)は、円盤面の法線を光学異方性層2へ正射影した平均方向と反平行になる。光学異方性層2(33A、33B)の面内遅相軸(SA1、SA2)および偏光膜(34A、34B)の面内透過軸(TA1、TA2)は、ディスコティック化合物のラビング方向(RD1、RD4)と同一平面では実質的に45°の角度になる。そして、二枚の偏光膜(34A、34B)は、面内透過軸(TA1、TA2)が互いに直交するよう(クロスニコル)に配置されている。
【0027】
[光学フィルム]
本発明の光学フィルムは、光学異方性層1と光学異方性層2とを有してなる。
【0028】
(光学異方性層1)
本発明の光学異方性層1は、下記数式(I)を満たす。
数式(1) Re1(450)/Re1(650)<1.25
数式中Re1(450)、Re1(650)は波長450nm、650nmにおける光学異方性層1の面内レタデーション値である。
光学異方性層を上記範囲とすることにより、コントラストアップ及び色味改良の効果が得られる。
Re1(450)/Re1(650)は、より好ましくは1.20以下であり、更に好ましくは1.15以下である。
【0029】
本発明の光学異方性層1は液晶性化合物から形成されることが好ましい。前記光学異方性層1は、光学異方性層2の表面に直接形成してもよく、光学異方性層2上に配向膜を形成し、該配向膜上に形成してもよい。
光学異方性層1の形成に用いる液晶性化合物としては、上記範囲を満たすものであれば特に限定されないが、ディスコティック化合物が好ましい。
光学異方性層1のフィルム法線方向から測定したレタデーション値は、0〜40nmであることが好ましく、20〜40nmであることが更に好ましい。
また、光学異方性層1を、光学異方性層1の遅相軸をあおり軸とし、あおり角を±40°として測定した波長550nmにおけるレタデーション値Re1(40°)とRe1(−40°)の比〔Re1(40°)/Re1(−40°)〕を3〜20あるいは1/20〜1/3の範囲にすることが好ましい。
上記範囲とすることにより、視野角拡大効果が得られる。
Re1(40°)/Re1(−40°)は、より好ましくは5〜15あるいは1/15〜1/5である。
【0030】
光学異方性層1は、液晶表示装置の黒表示における液晶セル中の液晶性化合物を補償するように設計することが好ましい。液晶セル中の液晶性化合物の配向状態に関しては、IDW’00、FMC7−2、P411〜414に記載がある。
ディスコティック化合物は、高分子液晶でも低分子液晶でもよく、さらに、低分子液晶が架橋され液晶性を示さなくなったものも含まれる。
【0031】
(ディスコティック化合物)
ディスコティック化合物には、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physics Lett,A,78巻、82頁(1990)に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)に記載されたシクロヘキサン誘導体およびJ.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Commun.,1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年)に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルが含まれる。
【0032】
前記ディスコティック化合物には、分子中心の母核に対して、直鎖のアルキル基、アルコキシ基または置換ベンゾイルオキシ基が母核の側鎖として放射線状に置換した構造の、液晶性を示す化合物も含まれる。分子または分子の集合体が、回転対称性を有し、一定の配向を付与できる化合物であることが好ましい。
ディスコティック化合物から光学異方性層1を形成した場合、最終的に光学異方性層1に含まれる化合物は、もはや液晶性を示す必要はない。例えば、低分子のディスコティック化合物が熱または光で反応する基を有しており、熱または光によって該基が反応して、重合または架橋し、高分子量化することによって光学異方性層1が形成される場合などは、光学異方性層1中に含まれる化合物は、もはや液晶性を失っていてもよい。ディスコティック化合物の好ましい例は、特開平8−50206号公報に記載されている。また、ディスコティック化合物の重合については、特開平8−27284号公報に記載がある。
【0033】
ディスコティック化合物を重合により固定するためには、ディスコティック化合物の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させる必要がある。ただし、円盤状コアに重合性基を直結させると、重合反応において配向状態を保つことが困難になる。そこで、円盤状コアと重合性基との間に、連結基を導入する。従って、重合性基を有するディスコティック化合物は、下記式(DI)で表わされる化合物であることが好ましい。
【0034】
一般式(DI)
【化9】

【0035】
一般式(DI)中、Y11、Y12およびY13は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表す。
【0036】
11、Y12およびY13がメチンの場合、メチンの水素原子は置換基によって置換されていてもよい。ここで、メチンとは、メタンから水素原子を3個除いて得られる原子団をいう。
メチンの炭素原子が有していてもよい置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン原子およびシアノ基を好ましい例として挙げることができる。これらの置換基の中では、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子およびシアノ基がさらに好ましく、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数2〜12アルコキシカルボニル基、炭素数2〜12アシルオキシ基、ハロゲン原子およびシアノ基が最も好ましい。
11、Y12およびY13は、いずれもメチンであることがより好ましく、メチンは無置換であることが最も好ましい。
【0037】
一般式(DI)中、L1、L2およびL3は、それぞれ独立に単結合または二価の連結基を表す。L1、L2およびL3が二価の連結基の場合、それぞれ独立に、−O−、−S−、−C(=O)−、−NR7−、−CH=CH−、−C≡C−、二価の環状基およびこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。上記R7は炭素原子数1〜7のアルキル基または水素原子であり、炭素原子数1〜4のアルキル基または水素原子であることが好ましく、メチル基、エチル基または水素原子であることがさらに好ましく、水素原子であることが最も好ましい。
【0038】
1、L2およびL3における二価の環状基とは、少なくとも1種類の環状構造を有する二価の連結基(以下、環状基と呼ぶことがある)である。環状基は5員環、6員環、または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましく、6員環であることが最も好ましい。環状基に含まれる環は、縮合環であっても良い。ただし、縮合環よりも単環であることがより好ましい。また、環状基に含まれる環は、芳香族環、脂肪族環、および複素環のいずれでもよい。芳香族環としては、ベンゼン環およびナフタレン環が好ましい例として挙げられる。脂肪族環としては、シクロヘキサン環が好ましい例として挙げられる。複素環としては、ピリジン環およびピリミジン環が好ましい例として挙げられる。環状基は、芳香族環および複素環がより好ましい。なお、本発明における2価の環状基は、環状構造のみ(但し、置換基を含む)からなる2価の連結基であることがより好ましい(以下、同じ)。
【0039】
1、L2およびL3で表される二価の環状基のうち、ベンゼン環を有する環状基としては、1,4−フェニレン基が好ましい。ナフタレン環を有する環状基としては、ナフタレン−1,5−ジイル基およびナフタレン−2,6−ジイル基が好ましい。シクロヘキサン環を有する環状基としては1,4−シクロへキシレン基であることが好ましい。ピリジン環を有する環状基としてはピリジン−2,5−ジイル基が好ましい。ピリミジン環を有する環状基としては、ピリミジン−2,5−ジイル基が好ましい。
【0040】
1、L2およびL3で表される二価の環状基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数が2〜16アルキニル基、炭素原子数1〜16のハロゲン置換アルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアシル基、炭素原子数1〜16のアルキルチオ基、炭素原子数2〜16のアシルオキシ基、炭素原子数2〜16のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜16のアルキル基で置換されたカルバモイル基および炭素原子数2〜16のアシルアミノ基が含まれる。
【0041】
1、L2およびL3としては、単結合、*−O−CO−、*−CO−O−、*−CH=CH−、*−C≡C−、*−二価の環状基−、*−O−CO−二価の環状基−、*−CO−O−二価の環状基−、*−CH=CH−二価の環状基−、*−C≡C−二価の環状基−、*−二価の環状基−O−CO−、*−二価の環状基−CO−O−、*−二価の環状基−CH=CH−および*−二価の環状基−C≡C−が好ましい。特に、単結合、*−CH=CH−、*−C≡C−、*−二価の環状基−O−CO−、*−CH=CH−二価の環状基−および*−C≡C−二価の環状基−が好ましく、単結合が最も好ましい。ここで、*は一般式(DI)中のY11、Y12およびY13を含む6員環側に結合する位置を表す。
【0042】
1、H2およびH3は、それぞれ独立に下記一般式(DI−A)または下記一般式(DI−B)を表す。
【0043】
一般式(DI−A)
【化10】

【0044】
一般式(DI−A)中、YA1およびYA2は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表す。YA1およびYA2は、少なくとも一方が窒素原子であることが好ましく、両方が、窒素原子であることがより好ましい。XAは、酸素原子、硫黄原子、メチレンまたはイミノを表し、酸素原子が好ましい。*は上記一般式(DI)におけるL1〜L3側と結合する位置を表し、**は上記一般式(DI)におけるR1〜R3側と結合する位置を表す。ここで、イミノは、−NH−で表されるものをいう。
【0045】
一般式(DI−B)
【化11】

【0046】
一般式(DI−B)中、YB1およびYB2は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表す。YB1およびYB2は、少なくとも一方が窒素原子であることが好ましく、両方が、窒素原子であることがより好ましい。XBは、酸素原子、硫黄原子、メチレンまたはイミノを表し、酸素原子が好ましい。*は上記一般式(DI)におけるL1〜L3側と結合する位置を表し、**は上記一般式(DI)におけるR1〜R3側と結合する位置を表す。
【0047】
1、R2およびR3は、それぞれ独立に下記一般式(DI−R)を表す。
【0048】
一般式(DI−R)
*−(−L21−Q2n1−L22−L23−Q1
【0049】
一般式(DI−R)中、*は一般式(DI)におけるH1〜H3側と結合する位置を表す。
【0050】
21は単結合または二価の連結基である。L21が二価の連結基の場合、−O−、−S−、−C(=O)−、−NR7−、−CH=CH−および−C≡C−ならびにこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。上記R7は炭素原子数1〜7のアルキル基または水素原子であり、炭素原子数1〜4のアルキル基または水素原子であることが好ましく、メチル基、エチル基または水素原子であることがさらに好ましく、水素原子であることが最も好ましい。
【0051】
21は単結合、ならびに、***−O−CO−、***−CO−O−、***−CH=CH−および***−C≡C−(ここで、***は一般式(DI−R)中の*側を表す)のいずれかが好ましく、単結合がより好ましい。
【0052】
2は少なくとも1種類の環状構造を有する二価の基(環状基)を表す。このような環状基としては、5員環、6員環、または7員環を有する環状基が好ましく、5員環または6員環を有する環状基がより好ましく、6員環を有する環状基がさらに好ましい。上記環状基に含まれる環状構造は、縮合環であっても良い。ただし、縮合環よりも単環であることがより好ましい。また、環状基に含まれる環は、芳香族環、脂肪族環、および複素環のいずれでもよい。芳香族環としては、ベンゼン環およびナフタレン環が好ましい例として挙げられる。脂肪族環としては、シクロヘキサン環が好ましい例として挙げられる。複素環としては、ピリジン環およびピリミジン環が好ましい例として挙げられる。
【0053】
上記Q2のうち、ベンゼン環を有する環状基としては、1,4−フェニレン基が好ましい。ナフタレン環を有する環状基としては、ナフタレン−1,5−ジイル基およびナフタレン−2,6−ジイル基が好ましい。シクロヘキサン環を有する環状基としては1,4−シクロへキシレン基であることが好ましい。ピリジン環を有する環状基としてはピリジン−2,5−ジイル基が好ましい。ピリミジン環を有する環状基としては、ピリミジン−2,5−ジイル基が好ましい。これらの中でも、特に、1,4−フェニレン基および1,4−シクロへキシレン基が好ましい。
【0054】
2は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数2〜16のアルキニル基、炭素原子数1〜16のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアシル基、炭素原子数1〜16のアルキルチオ基、炭素原子数2〜16のアシルオキシ基、炭素原子数2〜16のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜16のアルキル置換カルバモイル基および炭素原子数2〜16のアシルアミノ基が含まれる。これらの中でも、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲンで置換されたアルキル基が好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のハロゲンで置換されたアルキル基がより好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜3のアルキル基、トリフルオロメチル基がさらに好ましい。
【0055】
n1は、0〜4の整数を表す。n1としては、1〜3の整数が好ましく、1もしくは2がさらに好ましい。
【0056】
22は、**−O−、**−O−CO−、**−CO−O−、**−O−CO−O−、**−S−、*−N(R)−、**−CH2−、**−CH=CH−または**−C≡C−を表し、**はQ2側と結合する位置を表す。Rは特に限定されるものでは無い。
22は、好ましくは、**−O−、**−O−CO−、**−CO−O−、**−O−CO−O−、**−CH2−、**−CH=CH−、**−C≡C−であり、より好ましくは、**−O−、**−O−CO−、**−O−CO−O−、**−CH2−である。
【0057】
23は、−O−、−S−、−C(=O)−、−NH−、−CH2−、−CH=CH−および−C≡C−ならびにこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す。ここで、−NH−、−CH2−、−CH=CH−の水素原子は、置換基で置換されていてもよい。このような置換基として、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数2〜6のアシル基、炭素原子数1〜6のアルキルチオ基、炭素原子数2〜6のアシルオキシ基、炭素原子数2〜6のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜6のアルキルで置換されたカルバモイル基および炭素原子数2〜6のアシルアミノ基が好ましい例として挙げられ、ハロゲン原子、炭素原子数1〜6のアルキル基がより好ましい。
【0058】
23は、−O−、−C(=O)−、−CH2−、−CH=CH−および−C≡C−ならびにこれらの組み合わせからなる群より選ばれることが好ましい。L23は、炭素原子を1〜20個含有することが好ましく、炭素原子を2〜14個を含有することがより好ましい。さらに、L23は、−CH2−を1〜16個含有することが好ましく、−CH2−を2〜12個含有することがさらに好ましい。
【0059】
1は重合性基または水素原子を表す。本発明で用いる液晶性化合物を位相差の大きさが熱により変化しないものが好ましい光学補償シート等に用いる場合には、Q1は重合性基であることが好ましい。重合反応は、付加重合(開環重合を含む)または縮合重合であることが好ましい。すなわち、重合性基は、付加重合反応または縮合重合反応が可能な官能基であることが好ましい。以下に重合性基の例を示す。
【0060】
【化12】

【0061】
さらに、重合性基は付加重合反応が可能な官能基であることが特に好ましい。そのような重合性基としては、重合性エチレン性不飽和基または開環重合性基が好ましい。
【0062】
重合性エチレン性不飽和基の例としては、下記の式(M−1)〜(M−6)が挙げられる。
【0063】
【化13】

【0064】
式(M−3)、(M−4)中、Rは水素原子またはアルキル基を表し、水素原子またはメチル基が好ましい。
上記式(M−1)〜(M−6)の中、(M−1)または(M−2)が好ましく、(M−1)がより好ましい。
【0065】
開環重合性基は、環状エーテル基が好ましく、エポキシ基またはオキセタニル基がより好ましく、エポキシ基が最も好ましい。
【0066】
本発明で用いる液晶性化合物としては、下記一般式(DII)で表される液晶性化合物が特に好ましい。
【0067】
一般式(DII)
【化14】

【0068】
一般式(DII)中、Y31、Y32およびY33は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表し、一般式(DI)中の、Y11、Y12およびY13と同義であり、好ましい範囲も同義である。
【0069】
一般式(DII)中、R31、R32およびR33は、それぞれ独立に下記一般式(DII−R)を表す。
【0070】
一般式(DII−R)
【化15】

【0071】
一般式(DII−R)中、A31およびA32は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表し、少なくとも一方が窒素原子であることが好ましく、両方が窒素原子であることがさらに好ましい。X3は酸素原子、硫黄原子、メチレンまたはイミノを表し、酸素原子が好ましい。
【0072】
31は、6員環状構造を有する二価の連結基(以下、6員環環状基と呼ぶことがある)を表す。6員環は、縮合環であっても良い。ただし、縮合環よりも単環であることがより好ましい。また、6員環環状基に含まれる環は、芳香族環、脂肪族環、および複素環のいずれでもよい。芳香族環としては、ベンゼン環およびナフタレン環が好ましい例として挙げられる。脂肪族環としては、シクロヘキサン環が好ましい例として挙げられる。複素環としては、ピリジン環およびピリミジン環が好ましい例として挙げられる。
【0073】
31のうち、ベンゼン環を有する6員環環状基としては、1,4−フェニレン基、および1,3−フェニレン基が好ましい。ナフタレン環を有する環状構造としては、ナフタレン−1,5−ジイル基およびナフタレン−2,6−ジイル基が好ましい。シクロヘキサン環を有する環状構造としては1,4−シクロへキシレン基であることが好ましい。ピリジン環を有する環状構造としてはピリジン−2,5−ジイル基が好ましい。ピリミジン環を有する環状構造としては、ピリミジン−2,5−ジイル基が好ましい。これらの中でも、特に、1,4−フェニレン基および、1,3−フェニレン基がより好ましい。
【0074】
31の環状構造は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数2〜16のアルキニル基、炭素原子数1〜16のハロゲン原子で置換されたアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアシル基、炭素原子数1〜16のアルキルチオ基、炭素原子数2〜16のアシルオキシ基、炭素原子数2〜16のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜16のアルキル置換カルバモイル基および炭素原子数2〜16のアシルアミノ基が含まれる。6員環環状基の置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲン原子で置換されたアルキル基が好ましく、さらに、ハロゲン原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のハロゲン原子で置換されたアルキル基が好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数1〜3のアルキル基、トリフルオロメチル基がより好ましい。
【0075】
n3は、1〜3の整数を表し、1もしくは2が好ましい。
【0076】
31は、*−O−、*−O−CO−、*−CO−O−、*−O−CO−O−、*−S−、*−N(R)−、*−CH2−、*−CH=CH−または*−C≡C−を表し(Rは特に限定されるものでは無い。)、*はQ31側と結合する位置を表し、具体的には、一般式(DI−R)中のL22と同義であり、好ましい範囲も同義である。
【0077】
32は、−O−、−S−、−C(=O)−、−NH−、−CH2−、−CH=CH−および−C≡C−ならびにこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表し、具体的には、一般式(DI−R)中のL23と同義であり、好ましい範囲も同義である。
【0078】
一般式(DII−R)中のQ32は、重合性基または水素原子を表す。具体的には、一般式(DI−R)中のQと同義であり、好ましい範囲も同義である。
【0079】
以下に、一般式(DI)ないし(DII)で表される液晶性化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0080】
【化16】

【0081】
【化17】

【0082】
【化18】

【0083】
【化19】

【0084】
【化20】

【0085】
【化21】

【0086】
【化22】

【0087】
【化23】

【0088】
【化24】

【0089】
【化25】

【0090】
【化26】

【0091】
【化27】

【0092】
【化28】

【0093】
【化29】

【0094】
【化30】

【0095】
【化31】

【0096】
【化32】

【0097】
【化33】

【0098】
【化34】

【0099】
【化35】

【0100】
【化36】

【0101】
【化37】

【0102】
【化38】

【0103】
【化39】

【0104】
【化40】

【0105】
【化41】

【0106】
【化42】

【0107】
【化43】

【0108】
【化44】

【0109】
【化45】

【0110】
【化46】

【0111】
【化47】

【0112】
【化48】

【0113】
【化49】

【0114】
【化50】

【0115】
【化51】

【0116】
【化52】

【0117】
【化53】

【0118】
【化54】

【0119】
【化55】

【0120】
【化56】

【0121】
【化57】

【0122】
【化58】

【0123】
【化59】

【0124】
【化60】

【0125】
【化61】

【0126】
【化62】

【0127】
光学異方性層1の形成に用いられる液晶性化合物は、良好なモノドメイン性を示す液晶相を発現することが望ましい。モノドメイン性を良好なものとすることにより、得られる構造がポリドメインとなりドメイン同士の境界に配向欠陥が生じ、光を散乱するようになるのを効果的に防ぐことができる。さらに、良好なモノドメイン性を示すと、位相差板がより高い光透過率を有するため好ましい。
【0128】
本発明で用いる液晶性化合物が発現する液晶相としては、カラムナー相およびディスコティックネマチック相(ND相)を挙げることができる。これらの液晶相の中では、良好なモノドメイン性を示し、かつ、ハイブリッド配向が可能なディスコティックネマチック相(ND相)が最も好ましい。
【0129】
本発明で用いる液晶性化合物は異方性の波長分散性が小さいほど良い。具体的には液晶性化合物が発現する位相差をRe(λ)としたとき、Re(450)/Re(650)が1.25以下であり、1.20以下であることがより好ましく、1.15以下であることが特に好ましい。
【0130】
ハイブリッド配向では、本発明の液晶性化合物の物理的な対称軸と支持体の面との角度、すなわち傾斜角が、光学異方性層の深さ(すなわち、(透明)支持体に垂直な)方向でかつ偏光膜の面からの距離の増加と共に増加または減少している。角度は、距離の増加と共に減少することが好ましい。さらに、傾斜角の変化としては、連続的増加、連続的減少、間欠的増加、間欠的減少、連続的増加と連続的減少を含む変化、または、増加および減少を含む間欠的変化が可能である。間欠的変化は、厚さ方向の途中で傾斜角が変化しない領域を含んでいる。角度が変化しない領域を含んでいても、全体として増加または減少していればよい。しかしながら、傾斜角は連続的に変化することが好ましい。
【0131】
一般に、ディスコティック液晶性化合物の物理的な対称軸の平均方向は、一般にディスコティック液晶性化合物あるいは配向膜の材料を選択することにより、またはラビング処理方法を選択することにより、調整することができる。また、表面側(空気側)のディスコティック液晶性化合物の物理的な対称軸方向は、一般にディスコティック液晶性化合物あるいはディスコティック液晶性化合物と共に使用する添加剤の種類を選択することにより調整することができる。
ディスコティック液晶性化合物と共に使用する添加剤の例としては、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマー、ポリマーおよび低分子化合物などを挙げることができる。長軸の配向方向の変化の程度も、上記と同様に、液晶性化合物と添加剤との選択により調整できる。
【0132】
本発明の液晶性化合物と共に使用する可塑剤、重合性モノマーは、本発明の液晶性化合物と相溶性を有し、ディスコティック液晶性化合物の傾斜角の変化を与えられるか、あるいは配向を阻害しないものが採用される。
【0133】
本発明で用いる液晶性化合物は、液晶相を20℃〜300℃の範囲で発現することが好ましい。さらに好ましくは40℃〜280℃であり、最も好ましくは60℃〜250℃である。ここで20℃〜300℃で液晶相を発現するとは、液晶温度範囲が20℃をまたぐ場合(具体的に例えば、10℃〜22℃)や、300℃をまたぐ場合(具体的に例えば、298℃〜310℃)も含む趣旨である。40℃〜280℃と60℃〜250℃に関しても同様である。
【0134】
界面活性剤は、フッ素系化合物が好ましい。界面活性剤は、特開2001−330725号公報に記載がある。
ポリマーおよび低分子化合物は、ディスコティック化合物の傾斜角に変化を与えることが好ましい。
ポリマーは、セルロースエステルが好ましい。セルロースエステルは、特開2000−155216号公報の段落番号0178に記載がある。ディスコティック化合物の配向を阻害しないようにポリマーの添加量は、ディスコティック化合物に対して0.1〜10質量%であることが好ましく、0.1〜8質量%であることがさらに好ましい。
【0135】
光学異方性層1は、ディスコティック化合物および必要に応じて後述の重合性開始剤や任意の成分を含む塗布液を、配向膜の上に塗布することで形成できる。
塗布液の調製に使用する溶媒は、有機溶媒が好ましい。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラクロロエタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0136】
塗布液の塗布は、公知の方法(例、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。
【0137】
光学異方性層1の厚さは、0.1〜20μmであることが好ましく、0.3〜10μmであることがさらに好ましく、0.5〜5μmであることが最も好ましい。
【0138】
配向させたディスコティック化合物を、配向状態を維持して固定することができる。固定化は、重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。光重合反応が好ましい。
光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許第4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書記載)が含まれる。
【0139】
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%の範囲にあることが好ましく、0.5〜5質量%の範囲にあることがさらに好ましい。
液晶性分子の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。
照射エネルギーは、20mJ/cm2〜50J/cm2が好ましく、20〜5000mJ/cm2がさらに好ましく、100〜800mJ/cm2が最も好ましい。光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。
保護層を、光学異方性層1の上に設けてもよい。
【0140】
(光学異方性層2)
光学異方性層2は、少なくとも一枚のポリマーフィルムからなる。複数のポリマーフィルムで光学異方性層2を構成して、本発明が定義する光学異方性を達成することもできる。ただし、本発明が定義する光学異方性は、一枚のポリマーフィルムで実現することが可能である。従って、光学異方性層2は、一枚のポリマーフィルムからなることが特に好ましい。
該光学異方性層2は、具体的には、波長550nmの光で測定したRthレタデーション値が、100〜300nmの範囲であることが好ましく、150〜200nmであることがさらに好ましい。また光学異方性層2のReレタデーション値は、30〜60nmであることが好ましく、35〜50nmであることがさらに好ましい。
【0141】
本発明では、光学異方性層2を形成するポリマーフィルムとして環状オレフィン系付加重合体を含んでなるフィルム(環状ポリオレフィンフィルム)を用いる。本明細書において環状オレフィン系重合体とは、環状オレフィン構造を有する重合体樹脂を表す。
環状オレフィン構造を有する重合体樹脂(以下、「環状ポリオレフィン系樹脂」あるいは「環状ポリオレフィン」ともいう)の例には、(1)ノルボルネン系重合体、(2)単環の環状オレフィンの重合体、(3)環状共役ジエンの重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素重合体、及び(1)〜(4)の水素化物などがある。本発明に好ましい重合体は下記一般式(II)で表される繰り返し単位を少なくとも1種以上含む付加(共)重合体環状ポリオレフィン、および必要に応じて一般式(I)で表される繰り返し単位の少なくとも1種以上を更に含んでなる付加(共)重合体環状ポリオレフィンである。また、一般式(III)で表される環状繰り返し単位を少なくとも1種含む付加(共)重合体(開環(共)重合体も含む)も好適に使用することができる。また、一般式(III)で表される繰り返し単位を少なくとも一種に、必要に応じて一般式(I)で表される繰り返し単位の少なくとも1種以上を更に含んでなる付加(共)重合体環状ポリオレフィンも好ましく使用することができる。
【0142】
【化63】

【0143】
【化64】

【0144】
【化65】

【0145】
式中、mは0〜4の整数を表す。R1〜R6は水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基、X1〜X3およびY1〜Y3は、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜10の炭化水素基、−(CH2)nCOOR11、−(CH2)nOCOR12、−(CH2)nNCO、−(CH2)nNO2、−(CH2)nCN、−(CH2)nCONR1314、−(CH2)nNR1314、−(CH2)nOZ、−(CH2)nW、またはX1とY1、X2とY2あるいはX3とY3から構成された(−CO)2O、(−CO)2NR15を示す。なお、R11,R12,R13,R14,R15は水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、Zは炭化水素基またはハロゲンで置換された炭化水素基、WはSiR16p3−p(R16は炭素数1〜10の炭化水素基、Dはハロゲン原子−OCOR16または−OR16、pは0〜3の整数を示す)、nは0〜10の整数を示す。
【0146】
1〜X3 、Y1 〜Y3の置換基に分極性の大きい官能基を導入することにより、光学フィルムの厚さ方向レターデーション(Rth)を大きくし、面内レターデーション(Re)の発現性を大きくすることが出来る。Re発現性の大きなフィルムは、製膜過程で延伸することによりRe値を大きくすることができる。
ノルボルネン系付加(共)重合体は、特開平10−7732号、特表2002−504184号、US2004229157A1号あるいはWO2004/070463A1号等に開示されている。ノルボルネン系多環状不飽和化合物同士を付加重合する事によって得られる。また、必要に応じ、ノルボルネン系多環状不飽和化合物と、エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエン、イソプレンのような共役ジエン;エチリデンノルボルネンのような非共役ジエン;アクリロニトリル、アクリル酸、メタアクリル酸、無水マレイン酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、マレイミド、酢酸ビニル、塩化ビニルなどの線状ジエン化合物とを付加重合することもできる。このノルボルネン系付加(共)重合体は、三井化学(株)よりアペルの商品名で発売されており、ガラス転移温度(Tg)の異なる例えばAPL8008T(Tg70℃)、APL6013T(Tg125℃)あるいはAPL6015T(Tg145℃)などのグレードがある。ポリプラスチック(株)よりTOPAS8007、同6013、同6015などのペレットが発売されている。更に、Ferrania社よりAppear3000が発売されている。
【0147】
ノルボルネン系重合体水素化物は、特開平1−240517号、特開平7−196736号、特開昭60−26024号、特開昭62−19801号、特開2003‐159767号あるいは特開2004‐309979号等に開示されているように、多環状不飽和化合物を付加重合あるいはメタセシス開環重合したのち水素添加することにより作られる。本発明に用いるノルボルネン系重合体において、R5〜R6は水素原子又は−CH3 が好ましく、X3、及びY3 は水素原子、Cl、−COOCH3 が好ましく、その他の基は適宜選択される。このノルボルネン系樹脂は、JSR(株)からアートン(Arton)GあるいはアートンFという商品名で発売されており、また日本ゼオン(株)からゼオノア(Zeonor)ZF14、ZF16、ゼオネックス(Zeonex)250あるいはゼオネックス280という商品名で市販されており、これらを使用することができる。
【0148】
(微粒子)
本発明では、上記環状ポリオレフィン系樹脂に微粒子を添加することにより、フィルムの製膜安定性、加工適性を更に向上させ、巻き取りきしみ等に由来するフィルムの光学ムラを低減することができる。微粒子の添加により、フィルム表面の動摩擦係数が低下することによりフィルムハンドリング時にフィルムに加わる応力を低減することに起因すると推測される。本発明で使用できる微粒子としては、有機あるいは無機化合物の微粒子を使用することができる。
【0149】
無機化合物としては、ケイ素を含む化合物、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化バリウム、酸化ジルコニウム、酸化ストロングチウム、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化スズ・アンチモン、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等が好ましく、更に好ましくはケイ素を含む無機化合物や金属酸化物であるが、フィルムの濁度を低減できるので、二酸化ケイ素が特に好ましく用いられる。二酸化ケイ素の微粒子としては、例えば、アエロジルR972、R974、R812、200、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。酸化ジルコニウムの微粒子としては、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)等の商品名で市販されているものが使用できる。
【0150】
有機化合物としては、ポリテトラフルオロエチレン、セルロースアセテート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチレンカーボネート、澱粉等があり、またそれらの粉砕分級物もあげられる。あるいは懸濁重合法で合成した高分子化合物や、スプレードライ法あるいは分散法等により球型にした高分子化合物を用いることができる。
【0151】
これらの微粒子の1次平均粒子径としては、ヘイズを低く抑えるという観点から、好ましくは、1〜20000nmであり、より好ましくは1〜10000nmであり更に好ましくは、2〜1000nmであり、特に好ましくは、5〜500nmである。微粒子の1次平均粒子径の測定は、透過型電子顕微鏡で粒子を平均粒径で求められる。購入した微粒子は凝集していることが多く、使用の前に公知の方法で分散することが好ましい。分散により二次粒子径を200〜1500nmにすることが好ましく、300〜1000nmが更に好ましい。微粒子の添加量は環状ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して0.01〜0.3質量部が好ましく、0.05〜0.2質量部がさらに好ましく、0.08〜0.12質量部が最も好ましい。
微粒子を添加した環状ポリオレフィンフィルムの好ましいヘイズの範囲は2.0%以下であり、1.2%以下が更に好ましく、0.5%以下が特に好ましい。微粒子を添加した環状ポリオレフィンフィルムの好ましい動摩擦係数は0.8以下であり、0.5以下が特に好ましい。動摩擦係数は、JISやASTMが規定する方法に従い、鋼球を用いて測定できる。ヘイズは日本電色工業(株)製1001DP型ヘイズ計を用いて測定できる。
【0152】
(溶剤)
次に、本発明の環状ポリオレフィンが溶解される溶剤について記述する。本発明においては、環状ポリオレフィンが溶解し流延,製膜できる範囲において、その目的が達成できる限りは、使用できる溶剤は特に限定されない。本発明で用いられる溶剤は、例えばジクロロメタン、クロロホルムの如き塩素系溶剤、炭素原子数が3〜12の、鎖状炭化水素、環状炭化水素、芳香族炭化水素、エステル、ケトンおよびエーテルから選ばれる溶剤が好ましい。エステル、ケトン、エーテルは、環状構造を有していてもよい。炭素原子数が3〜12の鎖状炭化水素類の例としては、ヘキサン、オクタン、イソオクタン、デカンなどが挙げられる。炭素原子数が3〜12の環状炭化水素類としてはシクロペンタン、シクロヘキサン及びその誘導体が挙げられる。炭素原子数が3〜12の芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテートが挙げられる。炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノンが挙げられる。炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトールが挙げられる。また、2種類以上の官能基を有する有機溶剤であっても良く、例えば2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノールが挙げられる。有機溶剤の好ましい沸点は35℃以上且つ150℃以下である。本発明に使用される溶剤は、乾燥性、粘度等の溶液物性調節のために2種以上の溶剤を混合して用いることができ、更に、混合溶媒で環状ポリオレフィンが溶解する限りは、貧溶媒を添加することも可能である。
【0153】
好ましい貧溶媒は使用するポリマー種により適宜選択することができる。良溶媒として塩素系有機溶剤を使用する場合は、アルコール類を好適に使用することができる。アルコール類としては、好ましくは直鎖であっても分枝を有していても環状であってもよく、その中でも飽和脂肪族炭化水素であることが好ましい。アルコールの水酸基は、第一級〜第三級のいずれであってもよい。アルコールの例には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノールおよびシクロヘキサノールが含まれる。なおアルコールとしては、フッ素系アルコールも用いられる。例えば、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールなども挙げられる。貧溶媒のなかでも特に1価のアルコール類は、剥離抵抗低減効果があり、好ましく使用することができる。選択する良溶剤によって特に好ましいアルコール類は変化するが、乾燥負荷を考慮すると、沸点が120℃以下のアルコールが好ましく、炭素数が1〜6の1価アルコールが更に好ましく、炭素数1〜4の1価アルコール類が特に好ましく使用することができる。環状ポリオレフィン溶液を作成する上で特に好ましい混合溶剤は、ジクロロメタンを主溶剤とし、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールあるいはブタノールから選ばれる1種以上のアルコール類を貧溶媒にする組み合わせである。
【0154】
(添加剤)
本発明の環状ポリオレフィン溶液には、各調製工程において用途に応じた種々の添加剤(例えば、劣化防止剤、紫外線防止剤、レターデーション(光学異方性)調節剤、剥離促進剤、可塑剤、赤外吸収剤、など)を加えることができ、それらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。さらにまた、赤外吸収染料としては例えば特開平2001−194522号公報に記載されている。またその添加する時期は環状ポリオレフィン溶液(ドープ)作製工程において何れで添加しても良いが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。更にまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。また、環状ポリオレフィンフィルムが多層から形成される場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよい。
【0155】
(劣化防止剤)
本発明の環状ポリオレフィン溶液には公知の劣化(酸化)防止剤、例えば、2,6−ジ−t−ブチル,4−メチルフェノール、4,4’−チオビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートなどのフェノール系あるいはヒドロキノン系酸化防止剤を添加することができる。さらに、トリス(4−メトキシ−3,5−ジフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリストールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどのリン系酸化防止剤をすることが好ましい。酸化防止剤の添加量は、環状ポリオレフィン100質量部に対して、0.05〜5.0質量部を添加する。
【0156】
(紫外線吸収剤)
本発明の環状ポリオレフィン溶液には、偏光板または液晶等の劣化防止の観点から、紫外線吸収剤が好ましく用いられる。紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。本発明に好ましく用いられる紫外線吸収剤の具体例としては、例えばヒンダードフェノール系化合物、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。ヒンダードフェノール系化合物の例としては、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイトなどが挙げられる。ベンゾトリアゾール系化合物の例としては、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、(2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2(2’−ヒドロキシ−3’,5‘−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、(2(2’−ヒドロキシ−3’,5‘−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕などが挙げられる。これらの紫外線防止剤の添加量は、環状ポリオレフィンに対して質量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmが更に好ましい。
【0157】
(レターデーション発現剤)
本発明ではレターデーション値を発現するため、少なくとも二つの芳香族環を有する化合物をレターデーション発現剤として用いることができる。レターデーション発現剤を使用する場合は、ポリマー100質量部に対して、0.05乃至20質量部の範囲で使用することが好ましく、0.1乃至10質量部の範囲で使用することがより好ましく、0.2乃至5質量部の範囲で使用することがさらに好ましく、0.5乃至2質量部の範囲で使用することが最も好ましい。二種類以上のレターデーション発現剤を併用してもよい。
レターデーション発現剤は、250乃至400nmの波長領域に最大吸収を有することが好ましく、可視領域に実質的に吸収を有していないことが好ましい。
【0158】
本明細書において、「芳香族環」は、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。芳香族炭化水素環は、6員環(すなわち、ベンゼン環)であることが特に好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。芳香族性ヘテロ環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、トリアゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1,3,5−トリアジン環が含まれる。芳香族環としては、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1,3,5−トリアジン環が好ましく、特に1,3,5−トリアジン環が好ましく用いられる。具体的には例えば特開2001−166144号公報に開示の化合物が好ましく用いられる。
【0159】
レターデーション発現剤が有する芳香族環の数は、2乃至20であることが好ましく、2乃至12であることがより好ましく、2乃至8であることがさらに好ましく、2乃至6であることが最も好ましい。二つの芳香族環の結合関係は、(a)縮合環を形成する場合、(b)単結合で直結する場合および(c)連結基を介して結合する場合に分類できる(芳香族環のため、スピロ結合は形成できない)。結合関係は、(a)〜(c)のいずれでもよい。
【0160】
(a)の縮合環(二つ以上の芳香族環の縮合環)の例には、インデン環、ナフタレン環、アズレン環、フルオレン環、フェナントレン環、アントラセン環、アセナフチレン環、ビフェニレン環、ナフタセン環、ピレン環、インドール環、イソインドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、インドリジン環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、プリン環、インダゾール環、クロメン環、キノリン環、イソキノリン環、キノリジン環、キナゾリン環、シンノリン環、キノキサリン環、フタラジン環、プテリジン環、カルバゾール環、アクリジン環、フェナントリジン環、キサンテン環、フェナジン環、フェノチアジン環、フェノキサチイン環、フェノキサジン環およびチアントレン環が含まれる。ナフタレン環、アズレン環、インドール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環およびキノリン環が好ましい。
(b)の単結合は、二つの芳香族環の炭素原子間の結合であることが好ましい。二以上の単結合で二つの芳香族環を結合して、二つの芳香族環の間に脂肪族環または非芳香族性複素環を形成してもよい。
【0161】
(c)の連結基も、二つの芳香族環の炭素原子と結合することが好ましい。連結基は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−CO−、−O−、−NH−、−S−またはそれらの組み合わせであることが好ましい。組み合わせからなる連結基の例を以下に示す。なお、以下の連結基の例の左右の関係は、逆になってもよい。
c1:−CO−O−
c2:−CO−NH−
c3:−アルキレン−O−
c4:−NH−CO−NH−
c5:−NH−CO−O−
c6:−O−CO−O−
c7:−O−アルキレン−O−
c8:−CO−アルケニレン−
c9:−CO−アルケニレン−NH−
c10:−CO−アルケニレン−O−
c11:−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−
c12:−O−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−O−
c13:−O−CO−アルキレン−CO−O−
c14:−NH−CO−アルケニレン−
c15:−O−CO−アルケニレン−
【0162】
芳香族環および連結基は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、アミノ、ニトロ、スルホ、カルバモイル、スルファモイル、ウレイド、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、脂肪族アシル基、脂肪族アシルオキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、脂肪族アミド基、脂肪族スルホンアミド基、脂肪族置換アミノ基、脂肪族置換カルバモイル基、脂肪族置換スルファモイル基、脂肪族置換ウレイド基および非芳香族性複素環基が含まれる。
アルキル基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。環状アルキル基よりも鎖状アルキル基の方が好ましく、直鎖状アルキル基が特に好ましい。アルキル基は、さらに置換基(例、ヒドロキシ、カルボキシ、アルコキシ基、アルキル置換アミノ基)を有していてもよい。アルキル基の(置換アルキル基を含む)例には、メチル、エチル、n−ブチル、n−ヘキシル、2−ヒドロキシエチル、4−カルボキシブチル、2−メトキシエチルおよび2−ジエチルアミノエチルが含まれる。
【0163】
アルケニル基の炭素原子数は、2乃至8であることが好ましい。環状アルケニル基よりも鎖状アルケニル基の方が好ましく、直鎖状アルケニル基が特に好ましい。アルケニル基は、さらに置換基を有していてもよい。アルケニル基の例には、ビニル、アリルおよび1−ヘキセニルが含まれる。
アルキニル基の炭素原子数は、2乃至8であることが好ましい。環状アルキケニル基よりも鎖状アルキニル基の方が好ましく、直鎖状アルキニル基が特に好ましい。アルキニル基は、さらに置換基を有していてもよい。アルキニル基の例には、エチニル、1−ブチニルおよび1−ヘキシニルが含まれる。
【0164】
脂肪族アシル基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましい。脂肪族アシル基の例には、アセチル、プロパノイルおよびブタノイルが含まれる。
脂肪族アシルオキシ基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましい。脂肪族アシルオキシ基の例には、アセトキシが含まれる。
アルコキシ基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。アルコキシ基は、さらに置換基(例、アルコキシ基)を有していてもよい。アルコキシ基の(置換アルコキシ基を含む)例には、メトキシ、エトキシ、ブトキシおよびメトキシエトキシが含まれる。
アルコキシカルボニル基の炭素原子数は、2乃至10であることが好ましい。アルコキシカルボニル基の例には、メトキシカルボニルおよびエトキシカルボニルが含まれる。
アルコキシカルボニルアミノ基の炭素原子数は、2乃至10であることが好ましい。アルコキシカルボニルアミノ基の例には、メトキシカルボニルアミノおよびエトキシカルボニルアミノが含まれる。
【0165】
アルキルチオ基の炭素原子数は、1乃至12であることが好ましい。アルキルチオ基の例には、メチルチオ、エチルチオおよびオクチルチオが含まれる。
アルキルスルホニル基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。アルキルスルホニル基の例には、メタンスルホニルおよびエタンスルホニルが含まれる。
脂肪族アミド基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましい。脂肪族アミド基の例には、アセトアミドが含まれる。
脂肪族スルホンアミド基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。脂肪族スルホンアミド基の例には、メタンスルホンアミド、ブタンスルホンアミドおよびn−オクタンスルホンアミドが含まれる。
脂肪族置換アミノ基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましい。脂肪族置換アミノ基の例には、ジメチルアミノ、ジエチルアミノおよび2−カルボキシエチルアミノが含まれる。
【0166】
脂肪族置換カルバモイル基の炭素原子数は、2乃至10であることが好ましい。脂肪族置換カルバモイル基の例には、メチルカルバモイルおよびジエチルカルバモイルが含まれる。
脂肪族置換スルファモイル基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。脂肪族置換スルファモイル基の例には、メチルスルファモイルおよびジエチルスルファモイルが含まれる。
脂肪族置換ウレイド基の炭素原子数は、2乃至10であることが好ましい。脂肪族置換ウレイド基の例には、メチルウレイドが含まれる。
非芳香族性複素環基の例には、ピペリジノおよびモルホリノが含まれる。レターデーション発現剤の分子量は、300乃至800が好ましい。
【0167】
本発明では1,3,5−トリアジン環を用いた化合物の他に直線的な分子構造を有する棒状化合物も好ましく用いることができる。直線的な分子構造とは、熱力学的に最も安定な構造において棒状化合物の分子構造が直線的であることを意味する。熱力学的に最も安定な構造は、結晶構造解析または分子軌道計算によって求めることができる。例えば、分子軌道計算ソフト(例、WinMOPAC2000、富士通(株)製)を用いて分子軌道計算を行い、化合物の生成熱が最も小さくなるような分子の構造を求めることができる。分子構造が直線的であるとは、上記のように計算して求められる熱力学的に最も安定な構造において、分子構造で主鎖の構成する角度が140度以上であることを意味する。
【0168】
少なくとも二つの芳香族環を有する棒状化合物としては、下記一般式(IV)で表される化合物が好ましい。
一般式(IV): Ar1−L1−Ar2
【0169】
上記一般式(IV)において、Ar1およびAr2は、それぞれ独立に、芳香族基である。本明細書において、芳香族基は、アリール基(芳香族性炭化水素基)、置換アリール基、芳香族性ヘテロ環基および置換芳香族性ヘテロ環基を含む。アリール基および置換アリール基の方が、芳香族性ヘテロ環基および置換芳香族性ヘテロ環基よりも好ましい。芳香族性へテロ環基のヘテロ環は、一般には不飽和である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましい。芳香族性へテロ環は一般に最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子または硫黄原子が好ましく、窒素原子または硫黄原子がさらに好ましい。芳香族基の芳香族環としては、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環およびピラジン環が好ましく、ベンゼン環が特に好ましい。
【0170】
一般式(IV)において、L1は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−O−、−CO−およびそれらの組み合わせからなる基から選ばれる二価の連結基である。アルキレン基は、環状構造を有していてもよい。環状アルキレン基としては、シクロヘキシレンが好ましく、1,4−シクロへキシレンが特に好ましい。鎖状アルキレン基としては、直鎖状アルキレン基の方が分岐を有するアルキレン基よりも好ましい。アルキレン基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましく、より好ましくは1乃至15であり、さらに好ましくは1乃至10であり、さらに好ましくは1乃至8であり、最も好ましくは1乃至6である。
【0171】
アルケニレン基およびアルキニレン基は、環状構造よりも鎖状構造を有することが好ましく、分岐を有する鎖状構造よりも直鎖状構造を有することがさらに好ましい。アルケニレン基およびアルキニレン基の炭素原子数は、好ましくは2乃至10であり、より好ましくは2乃至8であり、さらに好ましくは2乃至6であり、さらに好ましくは2乃至4であり、最も好ましくは2(ビニレンまたはエチニレン)である。アリーレン基は、炭素原子数は6乃至20であることが好ましく、より好ましくは6乃至16であり、さらに好ましくは6乃至12である。一般式(IV)の分子構造において、L1を挟んで、Ar1とAr2とが形成する角度は、140度以上である。
棒状化合物としては、下記式一般式(V)で表される化合物がさらに好ましい。
一般式(V):Ar1−L2−X−L3−Ar2
上記一般式(V)において、Ar1およびAr2は、それぞれ独立に、芳香族基である。芳香族基の定義および例は、一般式(IV)のAr1およびAr2と同様である。
【0172】
一般式(V)において、L2およびL3は、それぞれ独立に、アルキレン基、−O−、−CO−およびそれらの組み合わせからなる基より選ばれる二価の連結基である。アルキレン基は、環状構造よりも鎖状構造を有することが好ましく、分岐を有する鎖状構造よりも直鎖状構造を有することがさらに好ましい。アルキレン基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましく、より好ましくは1乃至8であり、さらに好ましくは1乃至6であり、さらに好ましくは1乃至4であり、1または2(メチレンまたはエチレン)であることが最も好ましい。L2およびL3は、−O−CO−または−CO−O−であることが特に好ましい。一般式(V)において、Xは、1,4−シクロへキシレン、ビニレンまたはエチニレンである。溶液の紫外線吸収スペクトルにおいて最大吸収波長(λmax)が250nmより短波長である棒状化合物を、二種類以上併用してもよい。レターデーション発現剤の添加量は、環状ポリオレフィン量の0.1乃至30質量%であることが好ましく、0.5乃至20質量%であることがさらに好ましい。
【0173】
(剥離促進剤)
環状ポリオレフィンフィルムの剥離抵抗を小さくする添加剤としては界面活性剤に効果の顕著なものが多くみつかっている。好ましい剥離剤としては燐酸エステル系の界面活性剤、カルボン酸あるいはカルボン酸塩系の界面活性剤、スルホン酸あるいはスルホン酸塩系の界面活性剤、硫酸エステル系の界面活性剤が効果的である。また上記界面活性剤の炭化水素鎖に結合している水素原子の一部をフッ素原子に置換したフッ素系界面活性剤も有効である。以下に剥離剤を例示する。
【0174】
RZ−1 C8 17O−P(=O)−(OH)2
RZ−2 C1225O−P(=O)−(OK)2
RZ−3 C1225OCH2 CH2 O−P(=O)−(OK)2
RZ−4 C1531(OCH2 CH2 5 O−P(=O)−(OK)2
RZ−5 {C1225O(CH2 CH2 O)5 2 −P(=O)−OH
RZ−6 {C1835(OCH2 CH2 8 O}2 −P(=O)−ONH4
RZ−7 (t−C4 9 3 −C6 2 −OCH2 CH2 O−P(=O)−(OK)2
RZ−8 (iso−C9 19−C6 4 −O−(CH2 CH2 O)5 −P(=O)−(OK)(OH)
RZ−9 C1225SO3 Na
RZ−10 C1225OSO3 Na
RZ−11 C1733COOH
RZ−12 C1733COOH・N(CH2 CH2 OH)3
RZ−13 iso−C8 17−C6 4 −O−(CH2 CH2 O)3 −(CH2 2 SO3 Na
RZ−14 (iso−C9 192 −C6 3 −O−(CH2 CH2 O)3 −(CH2 4 SO3 Na
RZ−15 トリイソプロピルナフタレンスルフォン酸ナトリウム
RZ−16 トリ−t−ブチルナフタレンスルフォン酸ナトリウム
RZ−17 C1733CON(CH3 )CH2 CH2 SO3 Na
RZ−18 C1225−C6 4 SO3 ・NH4
【0175】
剥離剤の添加量は環状ポリオレフィンに対して0.05〜5質量%が好ましく、0.1〜2質量%が更に好ましく、0.1〜0.5質量%が最も好ましい。
【0176】
(可塑剤)
環状ポリオレフィン系樹脂は、一般的に、セルロースアセテートに比較して柔軟性に乏しく、フィルムに曲げ応力やせん断応力がかかると、フィルムに割れ等が生じ易い。また、光学フィルムとして加工する際に、切断部にひびが入りやすく、切り屑が発生しやすい。発生した切り屑は、光学フィルムを汚染し、光学的欠陥の原因となっていた。これらの問題点を改良するため、可塑剤を添加することができる。具体的には、フタル酸エステル系、トリメリット酸エステル系、脂肪族二塩基酸エステル系、正リン酸エステル系、酢酸エステル系、ポリエステル・エポキシ化エステル系、リシノール酸エステル系、ポリオレフィン系、ポリエチレングリコール系化合物を挙げることができる。
【0177】
使用できる可塑剤としては、常温、常圧、液状で、かつ沸点が200℃以上の化合物から選択することが好ましい。具体的な化合物名としては、以下を例示することができる。
脂肪族二塩基酸エステル系としては、例えばジオクチルアジペート(230℃/760mmHg)、ジブチルアジペート(145℃/4mmHg)、ジ−2−エチルヘキシルアジペート(335℃/760mmHg)、ジブチルジグリコールアジペート(230〜240℃/2mmHg)、ジ−2−エチルヘキシルアゼレート(220〜245℃/4mmHg)、ジ−2−エチルヘキシルセバケート(377℃/760mmHg)等;フタル酸エステル系としては、例えばジエチルフタレート(298℃/760mmHg)、ジヘプチルフタレート(235〜245℃/10mmHg)、ジ−n−オクチルフタレート(210℃/760mmHg)、ジイソデシルフタレート(420℃/760mmHg)等;ポリオレフィン系としては、ノルマルパラフィン、イソパラフィン、シクロパラフィン等のパラフィンワックス類(平均分子量330〜600、融点45〜80℃)、流動パラフィン類(JIS規格K2231ISOVG8、同VG15、同VG32、同VG68、同VG100等)、パラフィンペレット類(融点56〜58℃、58〜60℃、60〜62℃等)、塩化パラフィン、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリイソブテン、水添ポリブタジエン、水添ポリイソプレン、スクアラン等を挙げることが出きる。
【0178】
可塑剤の添加量としては、環状ポリオレフィン系樹脂に対して、0.5から40.0質量%、好ましくは1.0質量%から30.0質量%、より好ましくは3.0%から20.0質量%である。可塑剤の添加量がこれより少ないと可塑効果が不十分で、加工適性が向上しない。また、これ以上になると長時間経時した場合に、可塑剤ご分離溶出する場合が有り、光学的ムラ、他部品への汚染等が発生し、好ましくない。
【0179】
(ドープ調製)
次に本発明の環状ポリオレフィン溶液(ドープ)の調製については、室温攪拌溶解による方法、室温で攪拌してポリマーを膨潤させた後−20℃から−100℃まで冷却し再度20℃から100℃に加熱して溶解する冷却溶解法、密閉容器中で主溶剤の沸点以上の温度にして溶解する高温溶解方法、さらには溶剤の臨界点まで高温高圧にして溶解する方法などがある。溶解性のよいポリマーは室温溶解が好ましいが、溶解性の悪いポリマーは密閉容器中で加熱溶解する。ジクロロメタンを主溶剤に選んだときは、多くの環状ポリオレフィンは20℃〜100℃の加熱により溶解することが出来る。
【0180】
本発明の環状ポリオレフィン溶液の粘度は25℃で1Pa・s〜500Pa・sの範囲であることが好ましい。さらに好ましくは5Pa・s〜200Pa・sの範囲である。粘度の測定は次のようにして行った。試料溶液1mLをレオメーター(CLS 500)に直径 4cm/2°のSteel Cone(共にTA Instrumennts社製)を用いて測定した。試料溶液は予め測定開始温度にて液温一定となるまで保温した後に測定を開始した。
【0181】
更に溶解し易くするために低い濃度で溶解してから、濃縮手段を用いて濃縮してもよい。濃縮の方法としては、特に限定するものはないが、例えば、低濃度溶液を筒体とその内部の周方向に回転する回転羽根外周の回転軌跡との間に導くとともに、溶液との間に温度差を与えて溶剤を蒸発させながら高濃度溶液を得る方法(例えば、特開平4−259511号公報等)、加熱した低濃度溶液をノズルから容器内に吹き込み、溶液をノズルから容器内壁に当たるまでの間で溶剤をフラッシュ蒸発させるとともに、溶剤蒸気を容器から抜き出し、高濃度溶液を容器底から抜き出す方法(例えば、米国特許第2,541,012号、米国特許第2,858,229号、米国特許第4,414,341号、米国特許第4,504,355号各明細書等などに記載の方法)等で実施できる。
【0182】
溶液は流延に先だって金網やネルなどの適当な濾材を用いて、未溶解物やゴミ、不純物などの異物を濾過除去しておくのが好ましい。環状ポリオレフィン溶液の濾過には絶対濾過精度が0.1μm〜100μmのフィルターが用いられ、さらには絶対濾過精度が0.5μm〜25μmであるフィルターを用いることが好ましく用いられる。フィルターの厚さは、0.1mm〜10mmが好ましく、更には0.2mm〜2mmが好ましい。その場合、濾過圧力は1.6MPa以下、より好ましくは1.3MPa以下、更には1.0MPa以下、特に好ましくは0.6MPa以下で濾過することが好ましい。濾材としては、ガラス繊維、セルロース繊維、濾紙、四フッ化エチレン樹脂などのフッ素樹脂等の従来公知である材料を好ましく用いることができ、またセラミックス、金属等も好ましく用いられる。
環状ポリオレフィン溶液の製膜直前の粘度は、製膜の際に流延可能な範囲であればよく、通常5Pa・s〜1000Pa・sの範囲に調製されることが好ましく、15Pa・s〜500Pa・sがより好ましく、30Pa・s〜200Pa・sが更に好ましい。なお、この時の温度はその流延時の温度であれば特に限定されないが、好ましくは−5℃〜70℃であり、より好ましくは−5℃〜35℃である。
【0183】
環状ポリオレフィン溶液を用いたフィルムの製造方法について述べる。
本発明の環状ポリオレフィンフィルムを製造する方法は、公知の溶融製膜および溶液製膜方法等の各種の方法を使用することができるが、光学用フィルム用途としては、平面性、膜厚均一性等に優れる溶液流延法を好適に使用することができる。図4は環状ポリオレフィンフィルムの製膜ラインの一例を示している。環状ポリオレフィン系樹脂と溶媒とはミキシングタンク10内に注入され、撹拌翼11で撹拌されてドープ12が調製される。この時、ドープ12には、微粒子分散物、可塑剤及び紫外線吸収剤などの添加剤を混合してもよい。ドープ12は、ポンプ13により濾過装置14に送られて不純物が除去される。さらに、ドープ12は、一定の流量で流延ダイ15に送られ、ベルト16上に流延される。そして、駆動装置(図示せず)により回転駆動されるベルト16上で徐々に溶剤が揮発し、フィルム17が形成される。なお、ベルトに代えてドラムに流延してもよい。さらに特開2000−301555号、特開2000−301558号、特開平7−032391号、特開平3−193316号、特開平5−086212号、特開昭62−037113号、特開平2−276607号、特開昭55−014201号、特開平2−111511号、および特開平2−208650号の各公報に記載のセルロースアシレート製膜技術を本発明では応用できる。
【0184】
溶液の流延方法としては、調製されたドープを加圧ダイから金属支持体上に均一に押し出す方法、一旦金属支持体上に流延されたドープをブレードで膜厚を調節するドクターブレードによる方法、或いは逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があるが、加圧ダイによる方法が好ましい。加圧ダイにはコートハンガータイプやTダイタイプ等があるがいずれも好ましく用いることができる。また、ここで挙げた方法以外にも従来知られているセルローストリアセテート溶液を流延製膜する種々の方法で実施でき、用いる溶剤の沸点等の違いを考慮して各条件を設定することによりそれぞれの公報に記載の内容と同様の効果が得られる。本発明の環状ポリオレフィンフィルムを製造するのに使用されるエンドレスに走行する金属支持体としては、表面がクロムメッキによって鏡面仕上げされたドラムや表面研磨によって鏡面仕上げされたステンレスベルト(バンドといってもよい)が用いられる。本発明の環状ポリオレフィンフィルムの製造に用いられる加圧ダイは、金属支持体の上方に1基或いは2基以上の設置でもよい。好ましくは1基または2基である。2基以上設置する場合には流延するドープ量をそれぞれのダイに種々な割合にわけてもよく、複数の精密定量ギヤアポンプからそれぞれの割合でダイにドープを送液してもよい。流延に用いられる環状ポリオレフィン溶液の温度は、−10℃〜55℃が好ましくより好ましくは25℃〜50℃である。その場合、工程のすべてが同一でもよく、あるいは工程の各所で異なっていてもよい。異なる場合は、流延直前で所望の温度であればよい。
【0185】
図5に流延ダイ15の一例を示す。流延ダイ15のリップ15aには、そのクリアランスCを調整するための調整ボルト25が設けられており、これを回動することにより、クリアランスCの調整が可能になる。この調整ボルト25は、流延ダイ15の幅方向に適宜間隔で設けられており、本実施形態ではピッチpは30mmピッチにしてある。この調整ボルト25の回動によって、クリアランスCは300μm〜3000μmの範囲で調整可能にされる。このクリアランスCを変更することにより、後に説明するように、フィルム17の厚みムラの発生を抑えることができる。なお、調整ボルト25のピッチは、好ましくは10μm〜100mmである。また、調整ボルト25は等間隔で配置する必要はなく、各調整ボルト25の間隔を適宜変更してよい。また、調整ボルト25は、流延ダイ15の流延方向に配置し、調整ボルトの回動によりダイリップを僅かに回転変位させることで、クリアランスCを変更するようにしているが、このクリアランスの変更は上記の方法に限定されるものではなく、他の種々の方法で行ってよい。
【0186】
環状ポリオレフィンフィルムの製造に係わる金属支持体上におけるドープの乾燥は、一般的には金属支持体(例えばドラム或いはバンド)の表面側、つまり金属支持体上にあるウェブの表面から熱風を当てる方法、ドラム或いはバンドの裏面から熱風を当てる方法、温度コントロールした液体をバンドやドラムのドープ流延面の反対側である裏面から接触させて、伝熱によりドラム或いはバンドを加熱し表面温度をコントロールする液体伝熱方法などがあるが、裏面液体伝熱方式が好ましい。流延される前の金属支持体の表面温度はドープに用いられている溶剤の沸点以下であれば何度でもよい。しかし乾燥を促進するためには、また金属支持体上での流動性を失わせるためには、使用される溶剤の内の最も沸点の低い溶剤の沸点より1℃〜10℃低い温度に設定することが好ましい。尚、流延ドープを冷却して乾燥することなく剥ぎ取る場合はこの限りではない。
【0187】
生乾きのフィルムを金属支持体から剥離するとき、剥離抵抗(剥離荷重)が大きいと、製膜方向にフィルムが不規則に伸ばされて光学的な異方性ムラを生じる。特に剥離荷重が大きいときは、製膜方向に段状に伸ばされたところと伸ばされていないところが交互に生じて、レターデーションに分布を生じる。液晶表示装置に装填すると線状あるいは帯状にムラが見えるようになる。このような問題を発生させないためには、フィルムの剥離荷重をフィルム剥離幅1cmあたり0.25N以下にすることが好ましい。剥離荷重はより好ましくは0.2N/cm以下、さらに好ましくは0.15N以下、特に好ましくは0.10N以下である。剥離荷重0.2N/cm以下のときはムラが現れやすい液晶表示装置においても剥離起因のムラは全く認められず、特に好ましい。剥離荷重を小さくする方法としては、前述のように剥離剤を添加する方法と、使用する溶剤組成の選択による方法がある。
剥離荷重の測定は次のようにして行う。製膜装置の金属支持体と同じ材質・表面粗さの金属板上にドープを滴下し、ドクターブレードを用いて均等な厚さに展延し乾燥する。カッターナイフでフィルムに均等幅の切れ込みを入れ、フィルムの先端を手で剥がしてストレンゲージにつながったクリップで挟み、ストレンゲージを斜め45度方向に引き上げながら、荷重変化を測定する。剥離されたフィルム中の揮発分も測定する。乾燥時間を変えて何回か同じ測定を行い、実際の製膜工程における剥離時残留揮発分と同じ時の剥離荷重を定める。剥離速度が速くなると剥離荷重は大きくなる傾向があり、実際に近い剥離速度で測定することが好ましい。
剥離時の好ましい残留揮発分濃度は5質量%〜60質量%である。10質量%〜50質量%が更に好ましく、20質量%〜40質量%が特に好ましい。高揮発分で剥離すると乾燥速度が稼げて、生産性が向上して好ましい。一方、高揮発分ではフィルムの強度や弾性が小さく、剥離力に負けて切断したり伸びてしまう。また剥離後の自己保持力が乏しく、変形、シワ、クニックを生じやすくなる。またレターデーションに分布を生じる原因になる。なお、フィルムの乾量を基準とした揮発分Xは、 揮発分X(質量%)={(フィルムサンプルの質量(g)−B)/B}×100 から求めている。フィルムサンプルの質量は、テンターに導入する前のフィルムの一部をフィルムサンプルとして取り出して測定した値である。また、Bは、そのサンプルフィルムを115℃で空気恒温槽にて1時間乾燥した後に測定した質量(g)である。
【0188】
本発明の環状ポリオレフィンフィルムを延伸処理する場合は、剥離のすぐ後の未だフィルム中に溶剤が十分に残留している状態で行うのが好ましい。延伸の目的は、(1)シワや変形のない平面性に優れたフィルムを得るため及び、(2)フィルムの面内レターデーションを大きくするために行う。(1)の目的で延伸を行うときは、比較的高い温度で延伸を行い、延伸倍率も1%からせいぜい10%までの低倍率の延伸を行う。2から5%の延伸が特に好ましい。(1)と(2)の両方の目的、あるいは(2)だけの目的で延伸する場合は、比較的低い温度で、延伸倍率も2から150%で延伸する。
【0189】
フィルム中に残留溶媒が残っているときに延伸すると乾燥フィルムに比べて低い温度で延伸できる。環状ポリオレフィンは高いガラス転移点(Tg)を有するポリマーが多いが、ポリマー固有のTgよりも低い温度で延伸することができる。
フィルムの延伸は、縦あるいは横だけの一軸延伸でもよく同時あるいは逐次2軸延伸でもよい。VA液晶セルやOCB液晶セル用位相差フィルムの複屈折は、幅方向の屈折率が長さ方向の屈折率よりも大きくなることが好ましい。従って幅方向により多く延伸することが好ましい。
【0190】
フィルム17がテンター18に導入される時の、フィルム17中の揮発分は、5質量%〜250質量%であることが好まく、10質量%〜120質量%が特に好ましい。250質量%を超えるとフィルムの自己支持性がなくなり、テンター18による延伸が困難になる。また、反対に10質量%より小さい時には、フィルム17の乾燥が進んでいるためフィルム17の延伸が困難になる。
【0191】
テンター18では、クリップによりフィルム17の両側縁部が挟持され、引っ張り装置によりフィルム17の幅方向で引っ張られることでフィルム17が延伸される。なお、テンター18はクリップを用いているが、これに代えてピンを用いたテンターであってもよい。なお、延伸時の幅方向におけるフィルム17の張力は、フィルム17の組成や延伸率によって異なるが250〜5000N/cm2 が好ましい。
【0192】
図4に示すように、テンター18を出たフィルム17はローラ23、24により乾燥ゾーン20に送られて複数のローラ19で搬送されながら乾燥されたのち、冷却ゾーン21を通過して常温まで冷却されて巻き取り機22で巻き取られる。環状ポリオレフィンフィルムは延伸後更に乾燥し、残留揮発分を2質量%以下にして巻き取る。巻き取る前にフィルムの両端にナーリング26を施すことも可能である。好ましいナーリングの幅は3mm〜50mm、より好ましくは5mm〜30mm、高さは1〜50μmであり、好ましくは2〜20μm、より好ましくは3〜10μmである。これは片押しであっても両押しであっても良い。このようにして巻き取られたフィルム17を用いて、偏光板保護フィルムや位相差フィルムが製造される。
【0193】
なお、上記実施形態では、単層のフィルムを製膜する際に用いる流延ダイ15を用いたが、この他に、マルチマニフォールド型の共流延ダイを用いて複層構成のフィルムを製造する場合にも、本発明を適用することができる。同様にして、フィードブロック型の共流延ダイを用いてもよい。さらには、2個の流延口を用いて、第1の流延ダイから支持体に成型したフィルム上に第2の流延ダイから流延を行う製造方法においても、総厚みが本発明の範囲に入るように各流延ダイを調節して、本発明を適用してもよい。なお、各流延ダイはコートハンガーダイを使用しているが、これに限定されるものではなく、Tダイ等の他の形状であってもよい。特開昭61−158414号、特開平1−122419号、特開平11−198285号、特公昭60−27562号、特開昭61−94724号、特開昭61−947245号、特開昭61−104813号、特開昭61−158413号、特開平6−134933号、特開昭56−162617号、特開昭61−94724号、特開昭61−94725号、特公昭44−20235号公報に記載されている方法を使用することもできる。
【0194】
本発明の出来上がり(乾燥後)の環状ポリオレフィンフィルムの厚さは、使用目的によって異なるが、通常5μm〜500μmの範囲であり、30μm〜200μmの範囲が好ましく、特に液晶表示装置用には30μm〜110μmであることが好ましい。
フィルム厚さの調製は、所望の厚さおよび本発明に厚さ分布になるように、ドープ中に含まれる固形分濃度、ダイの口金のスリット間隙、ダイからの押し出し圧力、金属支持体速度等を調節すればよい。以上のようにして得られた環状ポリオレフィンフィルムの幅は0.5m〜3mが好ましく、より好ましくは0.6m〜2.5m、さらに好ましくは0.8m〜2.2mである。長さは1ロールあたり100m〜10000mで巻き取るのが好ましく、より好ましくは500m〜7000mであり、さらに好ましくは1000m〜6000mである。全幅のRe値のばらつきが±5nmであることが好ましく、±3nmであることが更に好ましい。また、Rth値のバラツキは±10nmが好ましく、±5nmであることが更に好ましい。また、長さ方向のRe値、及びRth値のバラツキも幅方向のバラツキの範囲内であることが好ましい。
【0195】
環状オレフィン系付加重合体を含んでなるフィルムは従来偏光板に使用されているセルロースアシレートフィルムに比べて、透湿度や平衡含水率が小さいことが大きな利点である。好ましい透湿度は60℃、95%RH24時間で1平方メートル当たり1000g以下である。さらに好ましくは400g以下である。好ましい平衡含水率は25℃、80%RHにおける測定値が2.0%以下である。さらに好ましくは1.0%以下である。紫外線吸収剤やレターデーション発現剤などの添加剤に揮発性や分解性があってフィルムの質量変化や寸法変化が発生すると光学特性変化が起こる。従って80℃90%RHで48時間経時した後のフィルムの質量変化量は5%以下であることが好ましい。同様に60℃95%RHで24時間経時後の寸法変化量は5%以下であることが好ましい。また寸法変化や質量変化が少々あっても、フィルムの光弾性係数が小さいと光学特性の変化量は少なくなる。従ってフィルムの光弾性係数が30×10-13cm2/dyne(3×10-13N/m)以下であることが好ましく、15×10-13cm2/dyne(1.5×10-13N/m)以下であることがさらに好ましい。
【0196】
環状オレフィン系付加重合体のフィルムには、表面処理を施すことが好ましい。表面処理には、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、酸処理、アルカリ鹸化処理および紫外線照射処理が含まれる。表面処理は、発明協会公開技報公技番号2001−1745号の30頁〜32頁に記載がある。
【0197】
アルカリ鹸化処理は、環状オレフィン系付加重合体のフィルムを鹸化液中に浸漬するか、鹸化液を環状オレフィン系付加重合体のフィルムに塗布することにより実施する。塗布による方法が好ましい。塗布方法には、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、バーコーティング法、E型塗布法がある。アルカリは、アルカリ金属(例、カリウム、ナトリウム)の水酸化物が好ましい。すなわち、アルカリ処理液は、アルカリ金属の水酸化物の溶液であることが好ましい。溶液中の水酸化イオンの規定濃度は、0.1〜3.0Nであることが好ましい。
アルカリ処理液には、フィルムに対する濡れ性が良好な溶媒、界面活性剤、湿潤剤(例、ジオール、グリセリン)を添加し、アルカリ処理液の第2光学異方性層に対する濡れ性や処理液の安定性を改善できる。フィルムに対する濡れ性が良好な溶媒は、アルコール(例、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、メタノール、エタノール)が好ましい。アルカリ処理液の添加剤は、特開2002−82226号公報、国際公開第02/46809号パンフレットに記載がある。
【0198】
表面処理に代えて、または表面処理に加えて、下塗り層(特開平7−333433号公報記載)を設けてもよい。複数の下塗り層を設けてもよい。例えば、疎水性基と親水性基との両方を含有するポリマー層を第1下塗り層として設け、その上に配向膜とよく密着する親水性のポリマー層を第2下塗り層として設けること(特開平11−248940号公報記載)もできる
【0199】
(配向膜)
配向膜は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、あるいはラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例、ω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で設けることができる。さらに、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。
【0200】
配向膜は、ポリマーのラビング処理により形成することが好ましい。配向膜に使用するポリマーは、原則として、液晶性分子を配向させる機能のある分子構造を有する。
配向膜に用いるポリマーには、液晶性分子を配向させる機能に加えて、液晶性分子の配向を固定する機能を有することが好ましい。例えば、架橋性官能基(例、二重結合)を有する側鎖をポリマーの主鎖に結合させるか、あるいは、液晶性分子を配向させる機能を有する架橋性官能基をポリマーの側鎖に導入することが好ましい。
配向膜に使用されるポリマーは、それ自体架橋可能であるか、あるいは架橋剤の使用により架橋可能になることが好ましい。架橋可能なポリマーは、特開平8−338913号公報の段落番号0022に記載がある。架橋可能なポリマーの例には、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、ポリエステル、ポリイミド、ポリ酢酸ビニル、カルボキシメチルセルロース、ポリカーボネートおよびこれらの共重合体が含まれる。シランカップリング剤をポリマーとして用いることもできる。水溶性ポリマー(例、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール)が好ましく、ゼラチン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールがさらに好ましく、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールが最も好ましい。重合度が異なるポリビニルアルコールまたは変性ポリビニルアルコールを2種類以上併用することが特に好ましい。
【0201】
ポリビニルアルコールの鹸化度は、70〜100%が好ましく、80〜100%がさらに好ましい。ポリビニルアルコールの重合度は、100〜5000であることが好ましい。
液晶性分子を配向させる機能を有する側鎖は、一般に疎水性基を官能基として有する。具体的な官能基の種類は、液晶性分子の種類および必要とする配向状態に応じて決定する。
変性ポリビニルアルコールの変性基は、共重合変性、連鎖移動変性またはブロック重合変性により導入できる。変性基の例は、親水性基(例、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、アミノ、アンモニオ、アミド、チオール)、炭素原子数10〜100の炭化水素基、フッ素原子置換の炭化水素基、アルキルチオ基、重合性基(例、不飽和重合性基、エポキシ基、アジリニジル基)、アルコキシシリル基(トリアルコキシシリル、ジアルコキシシリル、モノアルコキシシリル)を含む。
変性ポリビニルアルコールは、特開2000−155216号、同2002−62426号の各公報に記載がある。
【0202】
架橋性官能基を有する側鎖を配向膜ポリマーの主鎖に結合させるか、あるいは、液晶性分子を配向させる機能を有する側鎖に架橋性官能基を導入すると、配向膜のポリマーと光学異方性層1に含まれる多官能モノマーとを共重合させることができる。その結果、多官能モノマーと多官能モノマーとの間だけではなく、配向膜ポリマーと配向膜ポリマーとの間、そして多官能モノマーと配向膜ポリマーとの間も共有結合で強固に結合される。従って、架橋性官能基を配向膜ポリマーに導入することで、光学補償シートの強度を著しく改善することができる。
配向膜ポリマーの架橋性官能基は、多官能モノマーと同様に、重合性基が好ましい架橋性官能基は、特開2000−155216号公報の段落番号0080〜0100に記載がある。
【0203】
配向膜ポリマーは、架橋性官能基とは別に、架橋剤を用いて架橋させることもできる。架橋剤は、アルデヒド、N−メチロール化合物、ジオキサン誘導体、カルボキシル基を活性化することにより作用する化合物、活性ビニル化合物、活性ハロゲン化合物、イソオキサゾールおよびジアルデヒド澱粉を含む。二種類以上の架橋剤を併用してもよい。架橋剤は、特開2002−62426号公報に記載がある。反応活性の高いアルデヒド、特にグルタルアルデヒドが好ましい。
架橋剤の添加量は、ポリマーに対して0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜15質量%がさらに好ましい。配向膜に残存する未反応の架橋剤の量は、1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。架橋剤の残留量を削減することで、液晶表示装置を長期使用する場合、あるいは液晶表示装置を高温高湿の雰囲気下に長期間放置する場合でも、レチキュレーション発生のない充分な耐久性が得られる。
【0204】
配向膜は、上記ポリマーおよび架橋剤を含む塗布液を、光学異方性層2上に塗布した後、加熱乾燥し(架橋させ)、ラビング処理することにより形成できる。架橋反応は、光学異方性層2上に塗布した後に行なう。ポリビニルアルコールのような水溶性ポリマーを配向膜形成材料として用いる場合には、塗布液は消泡作用のある有機溶媒(例、メタノール)と水の混合溶媒とすることが好ましい。水とメタノールの混合溶媒の場合、溶媒全体に対してメタノールが1質量%以上含まれることが好ましく、9質量%以上含まれることがさらに好ましい。有機溶媒を加えることで、泡の発生が抑えられ、配向膜および光学異方性層1の表面の欠陥が著しく減少する。
【0205】
配向膜の塗布方法は、スピンコーティング法、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、ロッドコーティング法またはロールコーティング法が好ましい。特にロッドコーティング法が好ましい。
乾燥後の膜厚は0.1〜10μmが好ましい。
加熱乾燥は、20〜110℃で行うことができる。充分な架橋を形成するためには60〜100℃が好ましく、80〜100℃がさらに好ましい。乾燥時間は1分〜36時間で行うことができる。好ましくは1〜30分である。pHは、使用する架橋剤に最適な値に設定することが好ましい。グルタルアルデヒドを使用する場合、好ましいpHは4.5〜5.5である。
【0206】
配向膜は、表面をラビング処理することにより得ることができる。
ラビング処理は、LCDの液晶配向処理工程として広く採用されている処理方法と同様である。すなわち、配向膜の表面を、紙やガーゼ、フェルト、ゴムあるいはナイロン、ポリエステル繊維を用いて一定方向に擦ることにより、配向を得る。一般には、長さおよび太さが均一な繊維を平均的に植毛した布を用いて、数回程度ラビングを行う。
【0207】
[偏光板]
偏光板としては、偏光膜と偏光膜の両面に配置される2枚の保護フィルムとを有するものが好ましく、該保護フィルムのうち少なくとも片方として本発明の光学フィルムを好適に用いることができる。
偏光膜は、配向型偏光膜または塗布型偏光膜(Optiva Inc.製)を含む。配向型偏光膜は、バインダーとヨウ素もしくは二色性色素とからなる。ヨウ素および二色性色素は、バインダー中で配向することで偏光性能を発現する。ヨウ素および二色性色素は、バインダー分子に沿って配向するか、もしくは二色性色素が液晶のような自己組織化により一方向に配向することが好ましい。
市販の配向型偏光膜は、延伸したポリマーを、浴槽中のヨウ素もしくは二色性色素の溶液に浸漬し、バインダー中にヨウ素、もしくは二色性色素をバインダー中に浸透させることで作製されている。また、市販の偏光膜は、ポリマー表面から4μm程度(両側合わせて8μm程度)にヨウ素もしくは二色性色素が分布しており、充分な偏光性能を得るためには、少なくとも10μmの厚みが必要である。浸透度は、ヨウ素もしくは二色性色素の溶液濃度、浴槽温度および浸漬時間により制御することができる。
偏光膜の厚みは、現在市販の偏光板(約30μm)以下であることが好ましく、25μm以下がさらに好ましく、20μm以下が最も好ましい。20μm以下であると、光漏れ現象が、17インチの液晶表示装置では観察されなくなる。
【0208】
偏光膜のバインダーは架橋していてもよい。偏光膜のバインダーとして、それ自体架橋可能なポリマーを用いてもよい。官能基を有するポリマー、またはポリマーに官能基を導入して得られたポリマーに、光、熱あるいはpH変化を与えて、官能基を反応させてポリマー間を架橋させ、偏光膜を形成することができる。また、架橋剤によりポリマーに架橋構造を導入してもよい。反応活性の高い化合物である架橋剤を用いてバインダー間に架橋剤に由来する結合基を導入して、バインダー間を架橋することにより形成することができる。
架橋は一般に、架橋可能なポリマーまたはポリマーと架橋剤との混合物を含む塗布液を、透明支持体上に塗布した後、加熱することにより実施できる。最終商品の段階で耐久性が確保できればよいため、架橋させる処理は、最終の偏光板を得るまでのいずれの段階で行なってもよい。
【0209】
偏光膜のバインダーとして、それ自体架橋可能なポリマーあるいは架橋剤により架橋されるポリマーを使用できる。ポリマーの例には、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、ポリビニルトルエン、クロロスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、塩素化ポリオレフィン(例、ポリ塩化ビニル)、ポリエステル、ポリイミド、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、カルボキシメチルセルロース、ポリプロピレン、ポリカーボネートおよびそれらのコポリマー(例、アクリル酸/メタクリル酸共重合体、スチレン/マレインイミド共重合体、スチレン/ビニルトルエン共重合体、酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体)が含まれる。シランカップリング剤をポリマーとして用いてもよい。水溶性ポリマー(例、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコール)が好ましく、ゼラチン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールがさらに好ましく、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールが最も好ましい。
【0210】
ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールのケン化度は、70〜100%が好ましく、80〜100%がさらに好ましく、95〜100%が最も好ましい。ポリビニルアルコールの重合度は、100〜5000が好ましい。
変性ポリビニルアルコールは、ポリビニルアルコールに対して、共重合変性、連鎖移動変性あるいはブロック重合変性により変性基を導入して得られる。共重合で導入する変性基の例は、−COONa、−Si(OX)3(Xは、水素原子またはアルキル基)、−N(CH3)3・Cl、−C919、−COO、−SO3Na、−C1225を含む。連鎖移動で導入する変性基の例は、−COONa、−SH、−SC1225を含む。変性ポリビニルアルコールの重合度は、100〜3000が好ましい。変性ポリビニルアルコールについては、特開平8−338913号、同9−152509号および同9−316127号の各公報に記載がある。
ケン化度が85〜95%の未変性ポリビニルアルコールおよびアルキルチオ変性ポリビニルアルコールが特に好ましい。
ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールは、二種以上を併用してもよい。
【0211】
架橋剤については、米国再発行特許第23297号明細書に記載がある。ホウ素化合物(例、ホウ酸、硼砂)も、架橋剤として用いることができる。
バインダーの架橋剤は、多く添加すると、偏光膜の耐湿熱性を向上させることができる。ただし、バインダーに対して架橋剤を50質量%以上添加すると、ヨウ素、もしくは二色性色素の配向性が低下する。架橋剤の添加量は、バインダーに対して、0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜15質量%がさらに好ましい。バインダーは、架橋反応が終了した後でも、反応しなかった架橋剤をある程度含んでいる。ただし、残存する架橋剤の量は、バインダー中に1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。バインダー中に1.0質量%を超える量で架橋剤が含まれていると、耐久性に問題が生じる場合がある。すなわち、架橋剤の残留量が多い偏光膜を液晶表示装置に組み込み、長期使用、あるいは高温高湿の雰囲気下に長期間放置した場合に、偏光度の低下が生じることがある。
【0212】
二色性色素は、アゾ系色素、スチルベン系色素、ピラゾロン系色素、トリフェニルメタン系色素、キノリン系色素、オキサジン系色素、チアジン系色素あるいはアントラキノン系色素を含む。二色性色素は、水溶性であることが好ましい。二色性色素は、親水性置換基(例、スルホ、アミノ、ヒドロキシル)を有することが好ましい。二色性色素の例には、C.I.ダイレクト・イエロー12、C.I.ダイレクト・オレンジ39、C.I.ダイレクト・オレンジ72、C.I.ダイレクト・レッド39、C.I.ダイレクト・レッド79、C.I.ダイレクト・レッド81、C.I.ダイレクト・レッド83、C.I.ダイレクト・レッド89、C.I.ダイレクト・バイオレット48、C.I.ダイレクト・ブルー67、C.I.ダイレクト・ブルー90、C.I.ダイレクト・グリーン59、C.I.アシッド・レッド37が含まれる。二色性色素については、特開平1−161202号、同1−172906号、同1−172907号、同1−183602号、同1−248105号、同1−265205号、同7−261024号の各公報に記載がある。
【0213】
二色性色素は、遊離酸または塩(例、アルカリ金属塩、アンモニウム塩もしくはアミン塩)として用いられる。二種類以上の二色性色素を配合することにより、各種の色相を有する偏光膜を製造することができる。偏光軸を直交させた時に黒色を呈する化合物(色素)を用いた偏光膜、あるいは黒色を呈するように各種の二色性分子を配合した偏光膜は、単板透過率および偏光率が優れている。
【0214】
偏光膜は、バインダーを偏光膜の長手方向(MD方向)に対して延伸する(延伸法)。あるいは、ラビングした後に、ヨウ素、二色性染料で染色する(ラビング法)。
延伸法の場合、延伸倍率は2.5〜30.0倍が好ましく、3.0〜10.0倍がさらに好ましい。延伸は、空気中でのドライ延伸で実施できる。また、水に浸漬した状態でのウェット延伸を実施してもよい。ドライ延伸の延伸倍率は、2.5〜5.0倍が好ましく、ウェット延伸の延伸倍率は、3.0〜10.0倍が好ましい。延伸工程は、数回に分けて行ってもよい。数回に分けることによって、高倍率延伸でもより均一に延伸することができる。延伸前に、横あるいは縦に若干の延伸(幅方向の収縮を防止する程度)を行ってもよい。
【0215】
歩留まりの観点から、長手方向に対して10〜80°傾斜して延伸することが好ましい。その場合は、延伸は、二軸延伸におけるテンター延伸を左右異なる工程で行うことによって実施できる。上記二軸延伸は、通常のフィルム製膜において行われている延伸方法と同様である。二軸延伸では、左右異なる速度によって延伸されるため、延伸前のバインダーフィルムの厚みが左右で異なるようにする必要がある。流延製膜では、ダイにテーパーを付けることにより、バインダー溶液の流量に左右の差をつけることができる。
傾斜角度は、液晶表示装置を構成する液晶セルの両側に貼り合わされる2枚の偏光板の透過軸と液晶セルの縦または横方向のなす角度にあわせるように延伸することが好ましい。通常の傾斜角度は45°である。しかし、最近は、透過型、反射型および半透過型液晶表示装置において必ずしも45°でない装置が開発されており、延伸方向は液晶表示装置の設計にあわせて任意に調整できることが好ましい。
以上のように、偏光膜のMD方向に対して10〜80度斜め延伸されたバインダーフィルムが製造される。
【0216】
ラビング法では、液晶表示装置の液晶配向処理工程として広く採用されているラビング処理方法を応用することができる。すなわち、膜の表面を、紙やガーゼ、フェルト、ゴムあるいはナイロン、ポリエステル繊維を用いて一定方向に擦ることにより配向を得る。一般には、長さおよび太さが均一な繊維を平均的に植毛した布を用いて数回程度ラビングを行うことにより実施される。ロール自身の真円度、円筒度、振れ(偏芯)がいずれも30μm以下であるラビングロールを用いて実施することが好ましい。ラビングロールへのフィルムのラップ角度は、0.1〜90゜が好ましい。ただし、特開平8−160430号公報に記載されているように、360°以上巻き付けることで、安定なラビング処理を得ることもできる。
長尺フィルムをラビング処理する場合は、フィルムを搬送装置により一定張力の状態で1〜100m/minの速度で搬送することが好ましい。ラビングロールは、任意のラビング角度設定のためフィルム進行方向に対し水平方向に回転自在とされることが好ましい。0〜60°の範囲で適切なラビング角度を選択することが好ましい。液晶表示装置に使用する場合は、40〜50°が好ましい。45°が特に好ましい。
【0217】
偏光膜の両面には、保護フィルムを配置するのが好ましく、一方の面の保護フィルムとして、本発明の光学フィルムをロール状で貼り付けることが好ましい。例えば、保護フィルム/偏光膜/光学異方性層2/光学異方性層1、または保護フィルム/偏光膜/光学異方性層2/配向膜/光学異方性層1の順に積層された積層体が好ましい。偏光膜と光学異方性層1の表面側とを貼りあわせてもよい。貼り合せには接着剤を用いることができる。ポリビニルアルコール系樹脂(アセトアセチル基、スルホン酸基、カルボキシル基、オキシアルキレン基による変性ポリビニルアルコールを含む)やホウ素化合物水溶液を接着剤として用いることができる。ポリビニルアルコール系樹脂が好ましい。
保護膜としては、セルロースアセテートフィルムなどを用いることができる。
接着剤層の厚みは、乾燥後に0.01〜10μmの範囲が好ましく、0.05〜5μmの範囲がさらに好ましい。
偏光板の表面には、光拡散フィルムまたは防眩性フィルムを貼り合わせてもよい。
【0218】
[光拡散または防眩性フィルム]
図6は、光拡散フィルムの代表的な形態を示す断面模式図である。
図6に示す光拡散フィルム(1)は、透明基材フィルム(2)と、透光性樹脂(40)中に、例えば、第1の透光性微粒子(41)及び第2の透光性微粒子(42)とを含む光拡散層(3)とを積層してなる。ここでは2種類の(屈折率が異なり)二つの粒径分布のピークを有する透光性微粒子にて説明を行なうが、同じ種類で(屈折率が同じで)二つの粒径分布線のピークを有する透光性微粒子を用いてもよいし、一種類の透光性微粒子を用いてもよい。
【0219】
第1の透光性微粒子(41)は、透光性樹脂、例えばシリカ微粒子(平均粒子径1.0μm、屈折率1.51)から構成され、第2の透光性微粒子(42)は、透光性樹脂、例えばスチレンビーズ(平均粒子径3.5μm、屈折率1.61)から構成されている。光拡散機能は、透光性微粒子(41及び42)と透光性樹脂(40)との屈折率の差によって得られる。屈折率の差は、0.02以上、0.15以下であることが好ましい。屈折率差が0.02未満であると、光拡散効果を得られない場合がある。屈折率差が0.15よ
りも大きい場合は、光拡散性が高すぎて、フィルム全体が白化する場合がある。屈折率差は、0.03以上、0.13以下がより好ましく、0.04以上、0.10以下が最も良い。
【0220】
偏光膜を液晶表示装置に用いる場合、視認側表面に反射防止層を設置するのが好ましい。反射防止層を偏光膜の視認側の保護層と兼用してもよい。液晶表示装置の視角による色味変化抑制の観点から、反射防止層の内部ヘイズを50%以上にすることが好ましい。反射防止層は、特開2001−33783号、同2001−343646号および同2002−328228号の各公報に記載がある。
【0221】
(OCBモード液晶表示装置)
上記本発明の光学フィルムを有する偏光板は、液晶表示装置、特にOCBモード液晶表示装置に好適に用いられる。
OCBモードの液晶セルは、棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルである。ベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置は、米国特許第4583825号、同5410422号の各明細書に開示されている。棒状液晶性分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensatory Bend)液晶モードとも呼ばれる。
OCBモードの液晶セルもTNモード同様、黒表示においては、液晶セル中の配向状態は、セル中央部で棒状液晶性分子が立ち上がり、セルの基板近傍では棒状液晶性分子が寝た配向状態にある。
液晶セルのΔn×d(nm単位)の値は、50〜1000nmであることが好ましく、500〜1000nmであることがさらに好ましい。
上記本発明の光学フィルムを有する偏光板を、液晶セルの両面に配置される偏光板のうち、少なくとも一方に用いることが好ましい。
【0222】
上記液晶表示装置において、本発明の光学フィルムにおける光学異方性層2が下記の数式(2)を満足する光学特性を有することが好ましい。
数式(2) 2≦(Δn(550)×d)/Rth2(550)≦5
数式中Δn(550)は波長550nmにおける液晶セル中の液晶分子の複屈折であり、dはnmを単位とする液晶セルの厚さであり、Rth2(550)は光学異方性層2の波長550nmにおける厚み方向のレタデーション値である。
上記範囲とすることにより色味変化を抑制する効果が得られる。
(Δn(550)×d)/Rth2(550)は、より好ましくは3〜4の範囲である。
【0223】
液晶表示装置の色味は本発明中ではCIE1976(u’v’)色度図上で評価を行った。具体的には分光輝度計(TOPCON製SR−3)を用いて黒状態での色味測定を行い、内部での演算によりu’v’を算出する。一般的な偏光板による黒状態を評価すると青みを表すv’は0.45付近であり、液晶表示装置の黒表示時のv’がこの値に近づくほど黒表示に問題がないといえる。
【0224】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、割合、操作などは本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に制限されるものではない。
【実施例】
【0225】
〔実施例1〕
<環状ポリオレフィン重合体P−1の合成>
精製トルエン100質量部とノルボルネンカルボン酸メチルエステル100質量部を反応釜に投入した。次いでトルエン中に溶解したエチルヘキサノエート−Ni25mmol%(対モノマー質量)、トリ(ペンタフルオロフェニル)ボロン0.225mol%(対モノマー質量)及びトルエンに溶解したトリエチルアルミニウム0.25mol%(対モノマー質量)を反応釜に投入した。室温で攪拌しながら18時間反応させた。反応終了後過剰のエタノール中に反応混合物を投入し、重合物沈殿を生成させた。沈殿を精製し得られた重合体(P−1)を真空乾燥で65℃24時間乾燥した。
【0226】
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解した後、平均孔径34μmのろ紙及び平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した。
【0227】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
環状ポリオレフィン溶液 D−1
―――――――――――――――――――――――――――――――――
環状ポリオレフィンP−1 150質量部
ジクロロメタン 380質量部
メタノール 70質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0228】
次に上記方法で作成した環状ポリオレフィン溶液を含む下記組成物を分散機に投入し、微粒子分散液を調製した。
【0229】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
微粒子分散液 M−1
―――――――――――――――――――――――――――――――――
一次平均粒径16nmのシリカ粒子
(aerosil R972 日本アエロジル(株)) 2質量部
ジクロロメタン 73質量部
メタノール 10質量部
環状ポリオレフィン溶液 D−1 10質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0230】
(光学異方層2の作製)
上記環状ポリオレフィン溶液D‐1を100質量部、微粒子分散液M‐1を1.35質量を混合し、製膜用ドープを調製した。上述のドープをバンド流延機を用いて流延した。残留溶剤量が15から25質量%でバンドから剥ぎ取ったフィルムを、テンターを用いて15%の延伸率で幅方向に延伸して、フィルムに皺が入らないように保持しながら、120℃の熱風を当てて乾燥した。その後テンター搬送からロール搬送に移行し、更に120℃から140℃で乾燥し巻き取った。できた光学異方性層2の厚さは45μm、KOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)を用い波長550nmの光でレタデーション値Re2(550)を測定したところ45nmであった。また面内の遅相軸をあおり軸として±40°あおった時のレタデーション値Re2(40°)およびRe2(−40°)を測定し、これらの実測結果からKOBRA 21ADHが算出するRth2(550)は150nmであった。
【0231】
(光学異方層2の表面処理)
光学異方層2を、真鍮製の上下電極間(アルゴンガス雰囲気)で、グロー放電処理(周波数3000Hz、4200Vの高周波数電圧を上下電極間に引加、20秒処理)した。グロー放電処理したフイルム表面の純水の接触角はすべて36°から41°の間であった。接触角は協和界面科学株式会社製の接触角計CA−X型により測定した。
【0232】
(配向膜の形成)
グロー放電処理した光学異方性層2の一方の面に、下記の組成の配向膜塗布液を#14のワイヤーバーコーターで24ml/m2塗布した。60℃の温風で60秒、さらに90℃の温風で150秒乾燥した。
次に、光学異方性層2の延伸方向(遅相軸とほぼ一致)と45゜の方向に、形成した膜にラビング処理を実施した。
【0233】
────────────────────────────────────
配向膜塗布液組成
────────────────────────────────────
下記の変性ポリビニルアルコール 10質量部
水 371質量部
メタノール 119質量部
グルタルアルデヒド(架橋剤) 0.5質量部
────────────────────────────────────
【0234】
【化66】

【0235】
(光学異方性層1の作製)
400.0質量部のメチルエチルケトンに、D−89に示すディスコティック化合物100質量部、下記に示す空気界面配向制御剤を0.4質量部、光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製)3質量部、増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)1質量部を溶解して塗布液を調製した。配向膜上に塗布液を、#3.0のワイヤーバーで塗布した。これを金属の枠に貼り付けて、95℃の恒温槽中で2分間加熱し、ディスコティック化合物を配向させた。次に、80℃で120W/cm高圧水銀灯を用いて、1分間紫外線照射しディスコティック化合物を重合させた。その後、室温まで放冷した。このようにして、光学異方性層1を形成し、光学補償シートを作製した。
【0236】
【化67】

【0237】
同様の手法でガラス上に配向膜を作製し、その配向膜上に光学異方性層1を形成し、KOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて波長550nmの光で、光学異方性層1のレタデーション値Re1(550)を測定したところ30nmであった。また面内の遅相軸をあおり軸として±40°あおってRe1(40°)およびRe1(−40°)を測定したところ、Re1(40°)/Re1(−40°)は10.5であった。またKOBRA 21ADHを用いて波長450nmと650nmの光でレタデーションを測定したところ、Re1(450)/Re1(650)は1.15であった。
【0238】
(楕円偏光板の作製)
延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光膜を作製した。次に、作製した光学補償シートの光学異方性層2側を、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて偏光膜の片側に貼り付けた。光学異方性層2の遅相軸と偏光膜の透過軸とが平行になるように配置した。
市販のセルローストリアセテートフィルム(フジタックTD80UF、富士写真フイルム(株)製)を前記と同様にグロー放電処理し、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の反対側(光学補償シートを貼り付けなかった側)に貼り付けた。このようにして、楕円偏光板を作製した。
【0239】
(ベンド配向液晶セルの作製)
ITO電極付きのガラス基板に、ポリイミド膜を配向膜として設け、配向膜にラビング処理を行った。得られた二枚のガラス基板をラビング方向が平行となる配置で向かい合わせ、セルギャップを4.1μmに設定した。セルギャップにΔn(550)が0.1396の液晶性化合物(ZLI1132、メルク社製)を注入し、ベンド配向液晶セルを作製した。
【0240】
(ベンド配向モード液晶表示装置の作製および評価)
液晶セルと偏光板二枚を組み合わせて実施例1の液晶表示装置を作製した。液晶セルと二枚の偏光板との配置は、偏光板が光学異方性層および液晶セルの基板が対面し、液晶セルのラビング方向とそれに対向する光学異方性層のラビング方向とが反平行になるように配置した。
【0241】
作製した液晶表示装置をバックライト上に配置し、ベンド配向液晶セルに55Hz矩形波で電圧を印加した。電圧を調整しながら輝度計(TOPCON製BM−5)を用い、黒輝度(正面輝度)が最も小さくなる電圧を判定した。次に、同様に輝度計(TOPCON製BM−5)を用い、画面中央での黒輝度と白輝度(正面輝度)を測定し、コントラストを算出した。さらに、電圧を変えて画面の上下左右方向の輝度を輝度計(TOPCON製BM−5)で測定し、階調反転の発生の有無を測定した。また、分光輝度計(TOPCON製SR−3)を用いて黒状態での色味測定を行った。さらに、測定機(EZ−CONTRAST)を用い、視野角測定を行った。以上の結果を表1に示す。
また市販の直線偏光板2枚を透過軸が直交するように構成し、バックライト上に配置して分光輝度計(TOPCON製SR−3)で黒状態での色味を測定したところ、v’は0.45であった。
【0242】
〔比較例1〕
(セルロースアセテート溶液の調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。
【0243】
────────────────────────────────────
セルロースアセテート溶液組成
────────────────────────────────────
酢化度60.9%のセルロースアセテート 100質量部
トリフェニルフォスフェート 7.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート 3.9質量部
メチレンクロライド 300質量部
メタノール 45質量部
────────────────────────────────────
【0244】
(レタデーション上昇剤溶液)
別のミキシングタンクに、酢化度60.9%のセルロースアセテート(リンター)4質量部、下記のレタデーション上昇剤25質量部、シリカ微粒子(平均粒径:20nm)0.5質量部、メチレンクロライド80質量部およびメタノール20質量部を投入し、加熱しながら攪拌して、以下レタデーション上昇剤溶液を調製した。
【0245】
【化68】

【0246】
(光学異方性層2の作製)
セルロースアセテート溶液470質量部に、レタデーション上昇剤溶液18.5質量部を混合し、十分に攪拌してドープを調製した。レタデーション上昇剤のセルロースアセテートに対する質量比は3.5%であった。残留溶剤量が35質量%のフィルムをバンドから剥離した後、140℃の温度で、フィルムのテンターを用いて38%の延伸倍率で横延伸した後、クリップを外して130℃で45秒間乾燥させ光学異方性層2としてのセルロースアセテートフィルムを製造した。製造された光学異方性層2の残留溶剤量は0.2質量%であり、膜厚は88μmであった。
【0247】
(光学特性の測定)
作製した光学異方性層2について、KOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)を用い、波長550nmの光でレタデーション値Re2(550)を測定したところ45nmであった。また面内の遅相軸をあおり軸として±40°あおった時のレタデーション値Re2(40°)およびRe2(−40°)を測定し、これらの実測結果からKOBRA 21ADHが算出するRth2(550)は150nmであった。
【0248】
(光学異方性層2のケン化処理)
作製した光学異方性層2の一方の面に、1.5規定水酸化カリウムのイソプロピルアルコール溶液を25ml/m2塗布し、25℃で5秒間放置した後、流水で10秒洗浄し、
25℃の空気を吹き付けることでフィルムの表面を乾燥した。このようにして、光学異方性層2の一方の表面のみをケン化した。
【0249】
実施例1と同様に光学異方性層1、楕円偏光板、ベンド配向液晶セル、液晶表示装置を作製した。結果を表1に示す。
〔実施例2〕
(光学異方性層2の作製)
テンターで10%の延伸倍率で幅方向に延伸するほかは実施例1と同じようにして製膜し、光学異方性層2を作成した。できた光学異方性層2の厚さは54μm、KOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)を用い、波長550nmの光でレタデーション値Re2(550)を測定したところ38nmであった。また面内の遅相軸をあおり軸として±40°あおった時のレタデーション値Re2(40°)およびRe2(−40°)を測定し、これらの実測結果からKOBRA 21ADHが算出するRth2(550)は200nmであった。また、比較例1と同様にケン化処理および配向膜の作製を行った。
【0250】
(光学異方性層1の作製)
400.0質量部のメチルエチルケトンに、D−109に示すディスコティック化合物100質量部、上記の空気界面配向制御剤を0.4質量部、光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製)3質量部、増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)1質量部を溶解して塗布液を調製した。配向膜上に塗布液を、#3.0のワイヤーバーで塗布した。これを金属の枠に貼り付けて、120℃の恒温槽中で2分間加熱し、ディスコティック化合物を配向させた。次に、100℃で120W/cm高圧水銀灯を用いて、1分間紫外線照射しディスコティック化合物を重合させた。その後、室温まで放冷した。このようにして、光学異方性層1を形成し、光学補償シートを作製した。
【0251】
同様の手法でガラス上に配向膜を作製し、その配向膜上に光学異方性層1を形成し、KOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて波長550nmの光で、光学異方性層1のレタデーション値Re1(550)を測定したところ30.5nmであった。また面内の遅相軸をあおり軸として±40°あおってRe1(40°)およびRe1(−40°)を測定したところ、Re1(40°)/Re1(−40°)は11.2であった。またKOBRA 21ADHを用いて波長450nmと650nmの光でレタデーションを測定したところ、Re1(450)/Re1(650)は1.19であった。
また実施例1と同様の方法で楕円偏光板を作製した。
【0252】
(ベンド配向モード液晶表示装置の作製)
セルギャップを5.3μmとした以外は実施例1と同様にベンド配向液晶セル、液晶表示装置を作製した。
【0253】
〔実施例3〕
(光学異方性層2の作製)
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解した後、平均孔径34μmのろ紙及び平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した。
【0254】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
環状ポリオレフィン溶液 D−2
―――――――――――――――――――――――――――――――――
アートンG(JSR(株)製) 150質量部
ジクロロメタン 550質量部
エタノール 50質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0255】
次に上記方法で作成した環状ポリオレフィン溶液を含む下記組成物を分散機に投入し、マット剤分散液を調製した。
【0256】
――――――――――――――――――――――――――――――――――
マット剤分散液 M−3
――――――――――――――――――――――――――――――――――
平均粒径16nmのシリカ粒子
(aerosil R972 日本アエロジル(株)製) 2質量部
ジクロロメタン 75質量部
エタノール 5質量部
環状ポリオレフィン溶液 D−2 10質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0257】
上記環状ポリオレフィン溶液を100質量部、マット剤分散液を1.1質量を混合し、製膜用ドープを調製した。
上述のドープをバンド流延機を用いて流延した。残留溶剤量が約22質量%でバンドから剥ぎ取ったフィルムを、テンターを用いて2%の延伸率で幅方向に延伸して、フィルムに皺が入らないように保持しながら、180℃の熱風を当てて乾燥した。その後テンター搬送からロール搬送に移行し、更に120℃から140℃で乾燥し巻き取った。できた光学異方性層2の厚さは86μm、KOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)を用い、波長550nmの光でレタデーション値Re2(550)を測定したところ40nmであった。また面内の遅相軸をあおり軸として±40°あおった時のレタデーション値Re2(40°)およびRe2(−40°)を測定し、これらの実測結果からKOBRA 21ADHが算出するRth2(550)は200nmであった。また、比較例1と同様にケン化処理および配向膜の作製を行った。
【0258】
(光学異方性層1の作製)
400.0質量部のメチルエチルケトンに、D−109に示すディスコティック化合物100質量部、上記の空気界面配向制御剤を0.4質量部、光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製)3質量部、増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)1質量部を溶解して塗布液を調製した。配向膜上に塗布液を、#3.0のワイヤーバーで塗布した。これを金属の枠に貼り付けて、120℃の恒温槽中で2分間加熱し、ディスコティック化合物を配向させた。次に、100℃で120W/cm高圧水銀灯を用いて、1分間紫外線照射しディスコティック化合物を重合させた。その後、室温まで放冷した。このようにして、光学異方性層1を形成し、光学補償シートを作製した。
【0259】
同様の手法でガラス上に配向膜を作製し、その配向膜上に光学異方性層1を形成し、KOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて波長550nmの光で、光学異方性層1のレタデーション値Re1(550)を測定したところ30.5nmであった。また面内の遅相軸をあおり軸として±40°あおってRe1(40°)およびRe1(−40°)を測定したところ、Re1(40°)/Re1(−40°)は11.2であった。またKOBRA 21ADHを用いて波長450nmと650nmの光でレタデーションを測定したところ、Re1(450)/Re1(650)は1.19であった。
また実施例1と同様の方法で楕円偏光板を作製した。
【0260】
(ベンド配向モード液晶表示装置の作製)
セルギャップを5.3μmとした以外は実施例1と同様にベンド配向液晶セル、液晶表示装置を作製した。
【0261】
〔比較例2〕
比較例1と同様に光学異方性層2および配向膜を作製した。
【0262】
(光学異方性層1の作製)
204.0質量部のメチルエチルケトンに、下記に示すディスコティック化合物91質量部、エチレンオキサイド変成トリメチロールプロパントリアクリレート(V#360、大阪有機化学(株)製)9質量部、セルロースアセテートブチレート(CAB531−1、イーストマンケミカル社製)1質量部、光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製)3質量部、増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)1質量部を溶解して塗布液を調製した。配向膜上に塗布液を、#3.4のワイヤーバーで塗布した。これを金属の枠に貼り付けて、130℃の恒温槽中で2分間加熱し、ディスコティック化合物を配向させた。次に、110℃で120W/cm高圧水銀灯を用いて、1分間紫外線照射しディスコティック化合物を重合させた。その後、室温まで放冷した。このようにして、光学異方性層1を形成し、光学補償シートを作製した。
【0263】
【化69】

【0264】
同様の手法でガラス上に配向膜を作製し、その配向膜上に光学異方性層1を形成し、KOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて波長550nmの光で、光学異方性層1のレタデーション値Re1(550)を測定したところ30.2nmであった。また面内の遅相軸をあおり軸として±40°あおってRe1(40°)およびRe1(−40°)を測定したところ、Re1(40°)/Re1(−40°)は10.4であった。またKOBRA 21ADHを用いて波長450nmと650nmの光でレタデーションを測定したところ、Re1(450)/Re1(650)は1.27であった。
また実施例1と同様の方法で楕円偏光板を作製した。
【0265】
(ベンド配向モード液晶表示装置の作製)
実施例1と同様にベンド配向液晶セル、液晶表示装置を作製した。結果を表1に示す。
【0266】
〔比較例3〕
実施例2と同様に光学異方性層2および配向膜を作製した。また比較例2と同様に光学異方性層1を作製し、楕円偏光板を作製した。
【0267】
(ベンド配向モード液晶表示装置の作製)
セルギャップを2.6μmとした以外は実施例1と同様にベンド配向液晶セル、液晶表示装置を作製した。結果を表1に示す。
【0268】
〔比較例4〕
比較例2と同様に光学異方性層2および配向膜を作製した。また比較例2と同様に光学異方性層1を作製し、楕円偏光板を作製した。
(ベンド配向モード液晶表示装置の作製)
セルギャップを5.8μmとした以外は実施例1と同様にベンド配向液晶セル、液晶表示装置を作製した。結果を表1に示す。
【0269】
【表1】

【0270】
(まとめ)
表1からも明らかなとおり、本発明の液晶表示装置は、正面コントラストが高く、コントラスト視野角、反転視野角が上下左右ともに広く、黒表示時の青みが少ない上に、温湿度の異なる環境下における反転視野角変化も無い。一方光学異方性層2にセルロースアセテートフィルムを用いた比較例1、2は温湿度の異なる環境下においた場合反転視野角が変化する為、好ましくない。Re1(450)/Re1(650)<1.25を満たさない比較例2では正面コントラストが低く、黒表示時の青みが強い。また2≦(Δn(550)×d)/Rth2(550)≦5を満たさない比較例3,4ではコントラスト視野角、反転視野角が悪化する。
【図面の簡単な説明】
【0271】
【図1】ベンド配向液晶セル内の液晶性化合物の配向を模式的に示す断面図である。
【図2】偏光板を示す模式図である。
【図3】本発明に従うベンド配向型液晶表示装置を示す模式図である。
【図4】本発明にかかる溶液製膜方法を説明するための概略図である。
【図5】フィルムの幅方向における厚みを変えるための流延ダイのリップ周りを示す概略図である。
【図6】光拡散フィルムの代表的な形態を示す断面模式図である。
【符号の説明】
【0272】
10 ベンド配向液晶セル
11 液晶性化合物
11a〜11j 棒状液晶性分子
12a、12b 配向膜
13a、13b 電極層
14a 上基板
14b 下基板
31、31A、31B 光学異方性層1
31a〜31e 円盤状化合物
32 配向膜
33、33A、33B 光学異方性層2
34、34A、34B 偏光膜
35 光学フィルム
NL 円盤状化合物の円盤面の法線
PL 円盤面の法線を光学異方性層2面へ正射影した方向
RD、RD1、RD2、RD3、RD4 ラビング方向
SA、SA1、SA2 面内遅相軸
TA、TA1、TA2 面内透過軸
BL バックライト
θ 配向膜のラビング方向(RD)と光学異方性層2の面内遅相軸(SA)との角度
1 光拡散フィルム
2 透明基材フィルム
3 光拡散層
40 透光性樹脂
41 第1の透光性微粒子
42 第2の透光性微粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学異方性層1と光学異方性層2とを有する光学フィルムにおいて、該光学異方性層1が下記の数式(1)を満足する光学特性を有し、該光学異方性層2が環状オレフィン系付加重合体を含んでなるフィルムであることを特徴とする光学フィルム。
数式(1) Re1(450)/Re1(650)<1.25
数式中Re1(450)、Re1(650)は波長450nm、650nmにおける光学異方性層1の面内レタデーション値である。
【請求項2】
前記環状オレフィン系付加重合体が、一般式(II)で表される繰り返し単位を少なくとも1種以上含む付加(共)重合体環状ポリオレフィン、または該一般式(II)で表される繰り返し単位を少なくとも1種以上と、一般式(I)で表される繰り返し単位の少なくとも1種以上とを含む付加(共)重合体環状ポリオレフィンであることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルム。
【化1】

【化2】

一般式(I)および一般式(II)中、mは0〜4の整数を表す。R1〜Rは水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基、X1〜XおよびY1〜Yは、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜10の炭化水素基、−(CH2)nCOOR11、−(CH2)nOCOR12、−(CH2)nNCO、−(CH2)nNO2、−(CH2)nCN、−(CH2)nCONR1314、−(CH2)nNR1314、−(CH2)nOZ、−(CH2)nW、またはX1とY1あるいはX2とY2から構成された、(−CO)2O、(−CO)2NR15を示す。なお、R11、R12、R13、R14、R15は水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基、Zは炭化水素基またはハロゲンで置換された炭化水素基、WはSiR16p3−p(R16は炭素数1〜10の炭化水素基、Dはハロゲン原子、−OCOR16または−OR16、pは0〜3の整数を示す)、nは0〜10の整数を示す。
【請求項3】
前記環状オレフィン系付加重合体が、一般式(III)で表される繰り返し単位を少なくとも1種以上含む付加(共)重合体環状ポリオレフィン、または該一般式(III)で表される繰り返し単位を少なくとも1種以上と、一般式(I)で表される繰り返し単位の少なくとも1種以上とを含む付加(共)重合体環状ポリオレフィンであることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルム。
【化3】

【化4】

一般式(I)および一般式(III)中、mは0〜4の整数を表す。R、R、R5およびR6は、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基、X、Y、X3、およびY3は、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜10の炭化水素基、−(CH2)nCOOR11、−(CH2)nOCOR12、−(CH2)nNCO、−(CH2)nNO2、−(CH2)nCN、−(CH2)nCONR1314、−(CH2)nNR1314、−(CH2)nOZ、−(CH2)nW、またはXとYあるいはX3とY3から構成された、(−CO)2O、(−CO)2NR15を示す。なお、R11,R12,R13,R14,R15は水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、Zは炭化水素基またはハロゲンで置換された炭化水素基、WはSiR16p3−p(R16は炭素数1〜10の炭化水素基、Dはハロゲン原子−OCOR16または−OR16、pは0〜3の整数を示す)、nは0〜10の整数を示す。
【請求項4】
前記光学異方性層2が一次粒子径1nm〜20μmの微粒子を、環状ポリオレフィン系樹脂に対して0.01〜0.3質量%の割合で含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光学フィルム。
【請求項5】
偏光膜および該偏光膜の両面に保護フィルムを有する偏光板であって、該保護フィルムの一方が、請求項1〜4のいずれかに記載の光学フィルムであることを特徴とする偏光板。
【請求項6】
液晶セルの両側に偏光板を有する液晶表示装置において、該偏光板の少なくとも1枚が請求項5に記載の偏光板であることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項7】
請求項6に記載の液晶表示装置において、該光学異方性層2が下記の数式(2)を満足する光学特性を有することを特徴とする液晶表示装置。
数式(2) 2≦(Δn(550)×d)/Rth2(550)≦5
数式中Δn(550)は波長550nmにおける液晶セル中の液晶分子の複屈折であり、dはnmを単位とする液晶セルの厚さであり、Rth2(550)は光学異方性層2の波長550nmにおける厚み方向のレタデーション値である。
【請求項8】
前記光学異方性層1の波長550nmにおける面内レタデーション値Re1(550)が0〜40nmであることを特徴とする請求項6または7に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記光学異方性層2の波長550nmにおける面内レタデーション値Re2(550)が30〜60nmであり、波長550nmにおける厚み方向のレタデーション値Rth2(550)が100〜300nmであることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項10】
前記光学異方性層1が、光学異方性層1の遅相軸をあおり軸とし、あおり角を±40°として測定した波長550nmにおけるレタデーション値Re1(40°)とRe1(−40°)の比:Re1(40°)/Re1(−40°)を3〜20あるいは1/20〜1/3の範囲に有することを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項11】
前記光学異方性層1が液晶性化合物から形成されたことを特徴とする請求項6〜10のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項12】
前記液晶性化合物が、ディスコティック化合物であることを特徴とする請求項6〜11のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項13】
前記液晶セルがベンド配向モードであることを特徴とする請求項7〜12のいずれかに記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−140184(P2007−140184A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−334406(P2005−334406)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】