説明

液晶表示装置

【課題】視野角特性が改善され、開口率の向上が見込める液晶表示装置を提供する。
【解決手段】縦横方向に間隙を隔ててタイル状に配列された矩形状の表示電極81、82,83と、上記矩形状の表示電極に対して信号を供給するための信号線71,72,73とを有する駆動電極構造において、上記タイル状に配列された表示電極には、隣接する上記各表示電極間で互いに逆極性の信号が印加されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置の駆動電極構造及び該駆動電極構造を有する液晶表示装置に関し、特に、IPS等の横電界モードを利用する液晶表示装置に用いて好適な駆動電極構造及び該駆動電極構造を用いた液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置では、見る方向により画面全体の表示が薄くなる等の視野角特性に関する課題が指摘されており、その課題を解決するため、種々の提案がなされている。
【0003】
特許文献1には、視野角特性を改善する技術として、基板面に対して平行に電界がかかるように構成された電極構造を用いた液晶表示装置が開示されている。
【0004】
図5(a)、図5(b)は、上記の特許文献1に記載の液晶表示装置を説明するための図であり、図5(a)は液晶表示装置の一部を断面で示した図、図5(b)は電極構成の一例を示す図である。
【0005】
図5(a)において、51、52は透明ガラス基板であり、図示されていないスペーサーを介して所定の間隙を保持して対向配置されている。ガラス基板51の上記ガラス基板52に対向した側の面上には、平行配置された複数の電極61、62、63が設けられており、更に、電極61、62、63上を含め上記ガラス基板51上には配向膜55が設けられている。また、ガラス基板51の上記配向膜55が設けられた側の面とは反対側の面に偏光板57が設けられている。
【0006】
ガラス基板52の上記ガラス基板51に対向した側の面には、上記ガラス基板51の場合と同様、配向膜56が設けられており、上記ガラス基板52の上記配向膜56が設けられた面と反対側の面には偏光板58が設けられている。上記ガラス基板51及びガラス基板52が対向配置されて形成された空隙には、液晶53が封入されている。なお、54は液晶分子を表したものであり、図示のとおり液晶分子の配向状況が判るように楕円形状で模式的に示されている。
【0007】
図5(a)の場合、上記液晶53の液晶分子54は、無電界の状態で2枚のガラス基板51、52に対して垂直に配列されるように配向されている。電極61、62、63には実際にはスイッチングトランジスタを介して電圧が印加されることになるが、図5(a)では、基本的な原理を説明するため電池が接続された場合の様子が示されている。
【0008】
図5(a)に示すように、電極62と電極61間、電極62と電極63間に電圧が印加されると、電極62と電極61間、及び電極62と電極63間には、夫々の電極間の中央部分でガラス基板51、ガラス基板52に平行で、電極61、電極62、電極63に近接するほど下方に歪んだ放物線状の電場が形成されることになる。一方、ガラス基板51、ガラス基板52の配向膜55、配向膜56上では、配向膜55、配向膜56による配向力が強いので、液晶分子54は垂直に配向された元のままを維持する。従って、電場による液晶分子54を配向する力と、配向膜55、配向膜56によって液晶分子54を配向する力が均衡するように液晶分子54が連続的に配向することになる。図5(a)は、このときの状況を模式的に示している。
【0009】
図5(a)から明らかなとおり、電極62と電極61、電極62と電極63の間では夫々の電極の中心面(破線C)を基準にして、液晶分子54は左右対称に配列される。詳細な理由については上記の特許文献1に記載されているのでここでは詳細な説明は省略するが、これによって、視野角を広くすることができる。
【0010】
図5(b)は、ガラス基板51、52に対して垂直方向から見た場合の電極の構成例を示す図である。図5(b)の場合には、液晶表示装置としての全体の電極構成を、互いに平行に配置した表示電極を全体としてある方向に配置した領域64、64と、互いに平行に配置した表示電極を全体として領域64とは直交する方向に配置した領域65、65とによって構成した場合を示している。これによれば、左右方向の視野角特性のみならず、上下方向の視野角特性をも改善できる。
【0011】
特許文献2には、基板面に対して平行に電界をかける技術において、別の電極構成が示されている。図6は、引用文献2に記載された電極構成の例であり、互いに平行配置された一対の表示電極66、67が全体として山形になるように配置されている。このような表示電極の配置によっても、左右方向の視野角特性のみならず上下方向の視野角特性をも改善できる。
【0012】
図4には、基板面に対して平行に電界をかける技術において、更に、別の電極構成が示されている。図4において、43、44、45、46はいずれも互いに平行配置された表示電極群であり、表示電極43、44は信号線41に、表示電極45、46は信号線42に夫々接続されている。表示電極43、44、45、46は図示のとおり、途中で直角に折り曲げられている。
【0013】
この状態において、信号線41、42間に電圧が印加されると、電極43と電極45の間、電極45と電極44の間、電極44と電極46の間に電界が生ずる。前記各電極間に引かれている平行線の方向は、各電極間に印加された電圧によって生ずる電界の方向を示している。これから明らかなように、領域47、48、49に図示のとおりの電界がかかることになる。図4の例では領域47と領域49には同方向の電界がかかるが、領域48には領域47、48に対して直角方向の電界がかかることになる。なお、互いに異なる方向の電界がかかる領域の面積がほぼ等しくなるように折り曲げ部分の表示電極の長さが調整されていることがわかる。これにより、左右方向の視野角特性のみならず上下方向の視野角特性をも改善できる。
【特許文献1】特開平10−333171号公報(平成10年12月18日公開)
【特許文献2】特開平07−134301号公報(平成7年5月23日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述特許文献1、2に記載の技術では、視野角特性を改善することはできるが、いずれも、平行な直線状の電極を長手方向に延在させ、その間での電界を利用したものであり、視野角特性の改善にはその電極に複数の分岐部分を設けて長手方向を変更することで達成している。従って、配線全体が非常に長くなり、線幅が細くなると断線の確率が大きくなってしまうという課題を有する。そして、線幅を細くした場合には配線自体の抵抗の増大をも無視できなくなり、更に浮遊容量の増大と合わせて、大画面の表示装置においては信号遅延の問題も出てくる。
【0015】
また、分岐部分の長さを抑えるために図4のような構成とすることも提案されているが、この場合には図4中に領域40で示すとおりの表示に寄与できない領域が増えてしまい、表示に有効な面積が減少するという課題を有する。また、開口率の低下と共に、画面を近くで見ると各領域が分離して見え粗い表示に見えてしまうという課題をも有する。
【0016】
本発明は、上述のような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、視野角特性が改善され、開口率の向上が見込める液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述の課題を解決するために、本願の発明に係る駆動電極構造では、
縦横方向に間隙を隔ててタイル状に配列された矩形状の表示電極と、上記矩形状の表示電極に対して信号を供給するための信号線とを有し、
上記信号線は上記表示電極の対角方向に配設されており、上記信号線と上記表示電極は上記信号線と上記表示電極の重なる位置で相互に接続され、隣接する上記各表示電極間で互いに逆極性の信号が印加されることを特徴としている。
【0018】
このような構成とすることにより、視野角特性が改善された、開口率の高い液晶表示装置を得ることができる。また、信号線を設ける際の自由度が大きく、断線等のリスクを減ずることができる。特に、信号線はタイル状に配置された電極間を最短で結ぶ(対角線で結ぶ)ことができ、この場合には、更に、断線のリスクを抑えることができ、配線の浮遊容量を最小にできることから大画面構造とした際の信号の遅れをも最小にできる。
【0019】
上述の問題点を解決するため、本願の発明に係る駆動電極構造では、上記表示電極が縦と横の辺の長さが略等しい正方形状であり、上記タイル状に配置された上記表示電極の間隔が、表示電極の一辺の長さに等しいことを特徴としている。
【0020】
このような構成とすることにより、表示電極をタイル状に配置した場合における単位面積あたりの有効表示面積(表示に有効となる部分の面積)を最大とすることができ、開口率の向上に資することができる。
【0021】
上述の問題点を解決するため、本願の発明に係る駆動電極構造では、逆極性の信号を印加するための信号線が互いに絶縁された2層構造に構成されていることを特徴としている。
【0022】
このような構成とすることにより、更に、信号線を設ける際の自由度を大きくすることができ、断線のリスクを減らすことができる。
【0023】
上述の問題点を解決するため、本願の発明に係る駆動電極構造では、2層構造に形成された上記信号線に重なり部分を設けて蓄積容量を形成したことを特徴としている。
【0024】
このような構成によれば、信号線同士の重なり面積、絶縁層の種類、厚さ等を調整することにより、有効表示面積を減らすことなく容易に必要とする容量の蓄積容量を形成することができるため、結果として開口率を向上させることができる。
【0025】
上述の課題を解決するために、本願の別の発明に係る液晶表示装置では、スペーサーを介して対向配置された2枚の基板と、上記2枚の基板間に封入された液晶とを有し、上記2枚の基板の内の少なくとも一方の基板に、上記の駆動電極構造を有することを特徴としている。
【0026】
このような構成とすることにより、視野角特性の改善された、開口率の高い液晶表示装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0027】
以上述べたとおり、本願の発明に係る駆動電極構造は、縦横方向に間隙を隔ててタイル状に配列された矩形状の表示電極と、上記矩形状の表示電極に対して信号を供給するための信号線とを有し、
上記信号線は上記表示電極の対角方向に配設されており、上記信号線と上記表示電極は上記信号線と上記表示電極の重なる位置で相互に接続され、隣接する上記各表示電極間で互いに逆極性の信号が印加されることを特徴としている。
【0028】
また、本願の別の発明に係る液晶表示装置は、スペーサーを介して対向配置された2枚の基板と、上記2枚の基板間に封入された液晶とを有し、上記2枚の基板の内の少なくとも一方の基板に、上記の駆動電極構造を有することを特徴としている。
【0029】
これにより、視野角特性が改善され、開口率を向上させた液晶表示装置を得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明の実施の形態1を、図1(a)、図1(b)、図1(c)、図1(d)を用いて説明し、本発明の実施の形態2を図2(a)、図2(b)を用いて説明する。また、図3を用いて本発明によって開口率が向上できることを説明する。なお、以下の説明では、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の技術的範囲は以下の実施の形態及び図面に限定されるものではない。
【0031】
〔実施の形態1〕
以下に、本発明の実施の形態1を説明する。図1(a)、図1(b)は、本発明に従った液晶表示装置及びその電極構造を示す図であり、図1(a)は、電極の構成を説明するための平面図、図1(b)は、図1(a)のA−A’線に沿った断面を示す図である。また、図1(c)、図1(d)は、本願の発明に係る電極構造において表示電極間の最適な距離を考察するための図であり、図1(c)は、表示電極間の距離を表示電極の一辺の長さより大きくした場合を示しており、図1(d)は、表示電極間の距離を表示電極の一辺の長さより小さくした場合を示している。
【0032】
図1(a)、図1(b)において、1、2はガラス等の透明部材から作成された基板である。基板1には、その表面に複数の信号線からなる信号線群7が設けられ、更に、絶縁体5を介して複数の表示電極からなる表示電極群8が設けられている。図1(a)、図1(b)では、説明の都合上、個々の信号線を夫々信号線71、72、73とし、A−A’線に沿った断面に現れた個々の表示電極を夫々表示電極81、82、83としている。
【0033】
図1(a)に示されるように、個々の表示電極81、82、83等は、矩形状に形成されており、縦方向、横方向に夫々整列されたタイル状に並べて配置されている。各表示電極と隣り合う表示電極は逆極性となるように信号線に接続され、従って、隣り合う表示電極間の隙間に電界が印加されることになる。図1(a)において、隣接した表示電極間に記載されている縦方向或いは横方向の線は、表示電極間の間隙に印加される電界の方向を示している。これから明らかなように、特に、画素内に複数の領域を形成しなくとも視角特性の異なる領域を作ることができ、視野角特性を向上させることができる。
【0034】
各々の表示電極は、各々の表示電極の下に設けられた信号線に接続孔を介して接続されている。即ち、例えば、信号線71と表示電極81は接続孔91を介して接続され、信号線72と表示電極82は接続孔92を介して接続され、信号線73と表示電極83は接続孔93を介して接続されている。既に説明したとおり、縦方向及び横方向に整列されたタイル状に並べて配置された表示電極81、82、83等は、隣接する各表示電極間で互いに逆極性となるように各信号線に接続されることとなる。これを実現するためには、信号線71、72、73・・等を各表示電極に対して対角線方向に延びた配線に接続すればよい。図1(a)は、各信号線71、72、73が上述のとおりの構成となっていることを示している。
【0035】
この液晶表示装置を透過型として用いる場合、上記表示電極及び上記信号線は透明な導電体で形成することが望ましい。また、図1(a)では、信号線群7は右肩上がりの方向に形成されているが、対角線方向で左肩上がりに形成しても良く、信号線群7を設ける上での自由度が大きい。
【0036】
また、信号線は、表示電極間にかかる電場の方向とは45°ずれた方向で、その一部分を表示に寄与しない部分に形成できるため、開口率の低下を最小限に抑えながら、抵抗率の高い透明電極の代わりに金属配線等の低抵抗配線を用いることができる。
【0037】
図1(b)は、図1(a)のA−A’線に沿った断面を示している。図1(b)に示されるように、基板1、基板2は、所定の間隔を有して対向配置されており、図示されていないスペーサーを介して貼着されている。3は、上記基板1、基板2の間の空隙に封入された液晶を示しており、4は、封入された液晶の液晶分子の状態を模式的に示している。上記基板1上には第1の配線層として信号線71、72、73が設けられており、更に、絶縁層5を挟んで絶縁層5上に電極層として表示電極81、82、83が設けられていることが分かる。
【0038】
図1(b)では、基板1と絶縁層5が空隙を介して設けられているように描かれているが、実際には、基板1上に信号線71、72、73等をフォトリソグラフ技術で形成後、絶縁層を蒸着等の適宜の方法で形成し、更にその上に表示電極81、82、83等をフォトリソグラフ技術で形成してもよく、この場合には、上記基板1、絶縁層5は信号線71、72、73等を挟んでお互いに密着して形成されている。また、この表示装置を透過型として用いる場合、上記基板1、2を含め、表示電極、信号線、絶縁層5等は透明な部材で形成することが望ましい。
【0039】
上記の基板1と基板2との間に封入された液晶3は、表示電極間に電圧が印加されない状態で、基板1、基板2に対して垂直方向に配向されている。これを実現するために、図示されていないが、基板1及び基板2の表面に配向膜を設けておいても良い。
【0040】
図1(b)に示されるように、信号線71、信号線72間に電源70を接続して表示電極81及び表示電極82に電圧を印加すると、表示電極81、表示電極82間の領域21において、液晶分子は表示電極81と表示電極82との間に形成される電界に沿った形で配向される。一方、電圧を印加しない表示電極82と表示電極83との間の領域22では、液晶分子は依然として垂直方向に配向されている。従って、表示電極間の電界を制御し、液晶分子4の向きを制御することによって表示を制御することができる。
【0041】
視野角特性の均一化を図るためには、図面において、縦方向の電界がかかる領域の面積と横方向の電界がかかる領域の面積ができる限り等しいことが望ましい。この観点からは、表示電極81、82、83等は、縦、横の辺の長さが略等しい正方形状とすることが好ましい。
【0042】
次に、表示電極を正方形状とした場合の表示電極間の距離の最適値について考察する。図1(c)には、表示電極を正方形状とした場合において、表示電極81、82、84、85等の一辺の長さよりも長い間隔で表示電極81、82、84、85を配置したものが示されている。この図から明らかように、この場合、有効に電界がかからない広い領域87が生ずる。一方、図1(d)には、表示電極を正方形状とした場合において、表示電極81、82、84、85等の一辺の長さよりも短い間隔で表示電極81、82、84、85を配置したものが示されている。この図から明らかように、この場合、有効に電界がかからない領域88は非常に小さくなるが、表示電極間の距離が短くなるため、有効に電界がかかる表示に寄与する部分の面積が小さくなる。単純な計算から明らかであるが(計算は省略)、単位面積当たりの有効表示面積を最大にするためには、結局、表示電極間の距離を、表示電極の一辺に等しくすればよい。実際には、もちろん正確な正方形でなくともよく、形状についても、例えば角が多少丸くなっているような電極であってもよい。
【0043】
以上述べたとおり、本発明の実施の形態1においては、タイル状に配置した矩形状の表示電極の境界部分で電場が形成され、これにより視野角の良い方向が上下と左右に自動的に形成されるため、意図的に画素内に複数の領域を形成しなくとも視野角特性が改善でき、表示を細かくすることもできる。
【0044】
また、信号線の取り出し方向を自由に設定できる等、信号線を設ける際の設計の自由度が増し、信号線を最短距離で結ぶこともでき、断線のリスクを大幅に減らすことができる。更に、信号線の大部分を表示に寄与しない部分に設けることができるため、例えば信号線として透明電極に代えて低抵抗の金属材料を用いることもできる。
【0045】
〔実施の形態2〕
次に、図2(a)、図2(b)を参照して本発明の実施の形態2を説明する。図2(a)は本発明の実施の形態2に従った液晶表示装置及びその電極構造を説明するための斜視図であり、特に、表示電極と信号線の関係を示している。また、図2(b)は、図2(a)のA−A’線に沿った断面を模式的に示した図である。図2(a)、図2(b)において、図1(a)、図1(b)、図1(c)、図1(d)と同一の部材には同一の番号を付与しているので、それらの部材に関する詳細な説明は省略する。
【0046】
図2(a)、図2(b)に示す本発明の実施の形態2においては、信号線71、72、73の構成が、実施の形態1と異なる。即ち、実施の形態2においては、夫々逆の極性となる信号線を異なる配線層として構成している。図2(a)において、同極性となる信号線71、73が基板1上に第1の配線層として形成されており、逆極性となる信号線72が絶縁層5上に第2の配線層として形成されている。そして、表示電極81、82、83が絶縁層6上に電極層として形成されている。
【0047】
図2(b)には、上記図2(a)に示された構成が断面で示されている。図2(b)に示されるとおり、表示電極81は、絶縁層6に設けられた接続孔91、絶縁層5に設けられた接続孔96を介して、信号線71に接続されており、表示電極83は絶縁層6に設けられた接続孔93、絶縁層5に設けられた接続孔97を介して信号線73に接続される。信号線71と信号線73には同極性の信号が印加されることから、図2(a)に示されるようにお互いに接続された配線層として構成されている。特に、この信号線71、信号線72を構成する配線層は、信号線として線状に構成する必要はなく、全面に設けた所謂ベタ電極であっても良い。このため、バスラインとの接続に都合の良い取り出しができることとなり、所望の方向で、最短距離の配線ができ、断線のリスクを大幅に減ずることができる。
【0048】
また、図2(b)に示されるとおり表示電極82は、絶縁層6に設けられた接続孔92を介して信号線72に接続されている。信号線72は、図2(a)に示されるように線状に構成されていても良いが、接続孔96、97の箇所を避ければ、特に線状に設ける必要はなく、信号線の方向を制御する必要も無い。このため、信号線71と信号線73の場合と同様、バスラインとの接続に都合の良い取り出しができることとなり、所望の方向で、最短距離の配線ができ、断線のリスクを大幅に現ずることができる。
【0049】
なお、この液晶表示装置を透過型として用いる場合、上記表示電極、上記信号線、上記絶縁層5、6は透明な部材で形成することが望ましい。また、図1(b)を参照して説明したと同様、信号線71、72、73、絶縁層5、6、表示電極81、82、83等は周知のフォトリソグラフ技術で作成してよく、その場合には、上記の部材は夫々密着して設けられている。
【0050】
なお、信号線71、73と信号線72とを絶縁層5を介して異なる層に設けたため、絶縁層5の上下の信号線の一部を、意図的に重ならせ、必要な容量の蓄積容量を形成することができる。蓄積容量の値は、重なりの面積の調整、絶縁体の種類の選択(誘電率の選択)、厚さの制御等によって調整できる。これは、有効な表示領域を減らすことなく実現できるものであり、従って、これによっても開口率を向上させることができる。
【0051】
以上述べたとおり、本発明の実施の形態2においては、各信号線を形成する際の形状等に関する自由度が大幅に大きくなり、断線の恐れが少ない、低抵抗の信号線を実現できる。
【0052】
また、大画面の液晶表示装置においては、電極の長さが長くなるが、本実施例では、信号線の距離を最短距離で設計することが容易であり、この点からも断線の少ない信号線を実現できる。更に、最短での配線が可能なことから信号の遅延を防止する効果も期待できるものである。
【0053】
特に、最下層に設けられた信号線71、73は場合によっては基板1の全面に設けるベタ電極であってよく、半透過型液晶表示装置を構成するような場合には、ベタ電極の一部領域に容易に反射層を構成できる等種々の応用が期待できる。
【0054】
更に、2層構造に形成された上記信号線に意図的に重なり部分を設け、信号線同士の重なり面積、絶縁層の種類、厚さ等を調整することにより、有効表示面積を減らすことなく容易に必要とする容量の蓄積容量を形成することができるため、結果として開口率を向上させることができる。
【0055】
次に、図3(a)、図3(b)を参照して、本発明に従った駆動電極構造とした場合の開口率について検討する。図3(a)は、従来の電極構造の一例を示す図であり、広視野角特性とするために帯状の電極を曲げて複数の駆動方向を得たものであり、図3(b)は、本願発明に従った電極構造を示した図である。
【0056】
図3(a)において、31、32、33は夫々正負の信号電圧が印加される表示電極であり、図示のごとく、対向して配置されている。そして、表示電極31、32間には所定の駆動電圧が印加され、それにより表示電極31、32間に電界が生ずる。表示電極間に引かれた平行線の方向は電界の方向を示している。なお、表示電極31と表示電極33には同じ電圧が印加される。
【0057】
表示電極31、32、33は視野角特性を改善するため、途中で90°曲がって延長されている。曲がって延長された部分の表示電極31、32間には、曲がる前の箇所における電界とは90°異なる方向の電界34が印加されることになる。即ち、領域34には図面で横方向の電界がかかっているのに対して、領域35では図面で縦方向の電界がかかっている。帯状の表示電極31、32及びこれらの表示電極によって電界が形成された領域には、後で単位面積あたりの有効表示領域(開口率)の比較を容易にするために、ほぼ正方形状の区切り線が入れられている。
【0058】
図3(b)は、本発明に従った駆動電極構造を示しており、図1(a)に示した駆動電極構造の一部を記載したものである。図3(b)において、81、82、83は表示電極を示しており、隣接する表示電極間で逆の極性となるように信号が印加される。図では、同極性の電圧が印加される電極を同じ模様の矩形で表している。
【0059】
図3(a)において、正方形状に区切られた部分を、縦及び横に夫々4個とった領域36、領域37を単位領域として考察してみる。領域36は、表示電極31、32、33がまっすぐに伸びている箇所での領域であり、領域37は、表示電極32、33が直角に曲げられた箇所を含む領域である。図3(a)において、正方形状に区切られた部分の個数を数えることから明らかなように、領域36では、表示電極31、32部分と表示に寄与する駆動電場が印加された部分は同じ面積であり、したがって、開口率は50%となる。一方、表示電極31、32が折り曲げられた部分を含む領域37では、表示電極31、32の折り曲げ部分で表示に寄与しない箇所38、39が生ずるため、単位面積あたりの開口率は明らかに50%以下となる。
【0060】
図3(b)において、正方形状の区切りを、縦及び横に夫々4個とった領域80を考察してみる。図3(b)中の領域80で開口率を計算すると、表示電極部分(4個)、表示に寄与しない部分(4個)に対して、有効な表示可能部分(8個)であり、開口率は50%となる。これは、領域としてどの部分をとっても変わらない。これに対して、上述のとおり、図3(a)に示した電極構成では、一部領域に開口率が50%に満たない箇所がどうしても生ずることになり、全体として、開口率は50%以下になる。
【0061】
従って、本発明の表示電極構造によれば、途中に折り曲げ部分を形成した表示電極に対して高い開口率を実現できることになる。
【0062】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明によれば、広い視野角特性を有し、高い開口率を持った液晶表示装置を提供することができ、優れた性能の液晶テレビを実現できる等産業上極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明に係る液晶表示装置及びその駆動電極構造の概略を示す図である。
【図2】本発明に係る液晶表示装置及びその駆動電極構造の他の実施形態を示す図である。
【図3】本発明の駆動電極構造における開口率と従来技術における開口率とを比較するための図である。
【図4】従来の液晶表示装置における電極構造を示す図である。
【図5】従来の液晶表示装置における電極構造を示す図である。
【図6】従来の液晶表示装置における電極構造を示す図である。
【符号の説明】
【0065】
1 基板
2 基板
3 液晶
4 液晶分子
5 絶縁層
6 絶縁層
7 信号線群
71、72、73 信号線
8 表示電極群
81、82、83 表示電極
91、92、93 接続孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦横方向に間隙を隔ててタイル状に配列された矩形状の表示電極と、上記矩形状の表示電極に対して信号を供給するための信号線とを有し、
上記信号線は上記表示電極の対角方向に配設されており、上記信号線と上記表示電極とは上記信号線と上記表示電極との重なる位置で相互に接続され、隣接する各上記表示電極間で互いに逆極性の信号が印加されることを特徴とする駆動電極構造。
【請求項2】
上記表示電極が縦と横の辺の長さが略等しい正方形状であり、上記タイル状に配置された上記表示電極の間隔が、表示電極の一辺の長さに等しいことを特徴とする請求項1に記載の駆動電極構造。
【請求項3】
逆極性の信号を印加するための信号線が互いに絶縁された2層構造に構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の駆動電極構造。
【請求項4】
2層構造に形成された上記信号線に重なり部分を設けて蓄積容量を形成したことを特徴とする請求項3に記載の駆動電極構造。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の駆動電極構造を用いた液晶表示装置。
【請求項6】
スペーサーを介して対向配置された2枚の基板と、上記2枚の基板間に封入された液晶とを有し、上記2枚の基板の内の少なくとも一方の基板に、請求項1から4のいずれか一項に記載の駆動電極構造を有することを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−38977(P2010−38977A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−198640(P2008−198640)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】