説明

液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子

【課題】本発明は、高速応答が可能であり、かつ電圧保持率、残像特性及び耐光性に優れた液晶表示素子を作製することができ、均一塗布性にも優れる液晶配向剤を提供することである。
【解決手段】本発明は、[A]ポリアミック酸、ポリイミド、(メタ)アクリル重合体、ポリシロキサン及びポリアミック酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種の重合体を含有し、かつ上記重合体が下記式(1)で表される基を有する液晶配向剤である。上記Rは、下記式(2)で表される基であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示素子は消費電力が小さいことや、小型化及びフラット化が容易であること等の利点を有しているため、携帯電話等の小型の液晶表示装置から液晶テレビ等の大画面液晶表示装置まで幅広い用途で適用されている。
【0003】
液晶表示装置の駆動モードとしては、液晶分子の配向(配列)状態の変化に応じ、TN(Twisted Nematic)、STN(Super Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、VA(Vertical Alignment)等が知られている。また、VAモードでは配向分割により視野角を高めるため、MVA(Multi domain Vertical Alignment)方式やPVA(Patterned Vertical Alignment)方式が採用されており、さらに高速応答性やパネル開口率を向上させ、液晶にプレチルト角を付与することで光垂直配向方式、PSA(Polymer Sustained Alignment)方式等に採用することが検討されている。これらのいずれの駆動モードにおいても、液晶分子の配向状態は液晶配向膜で直接制御されており、液晶配向膜は液晶表示素子の機能特性の発現や制御をかなりのウェイトで担っている。
【0004】
かかる液晶表示装置は携帯電話や液晶テレビ等の動画表示用装置として期待されていることから、液晶表示素子に求められる特性として、動画を滑らかに表示しつつ残像を極力抑えるべく、電気光学効果の応答時間のさらなる高速化が求められている。この要求に対して、液晶配向膜に用いるポリマー側鎖に誘電異方性を与える構造を付与することで改善を図る技術が報告されている(特表2007−521361号公報及び特表2007−521506号公報参照)。しかし、本特許文献には電気光学応答時間の高速化以外に実用面で重要となる電圧保持率、残像特性等の電気特性については全く記載されていない。
【0005】
このような状況から、液晶素子の高速応答を実現しつつ、電圧保持率等の諸性能に優れた液晶表示素子を作製可能な液晶配向剤の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2007−521361号公報
【特許文献2】特表2007−521506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は高速応答が可能であり、かつ電圧保持率、残像特性及び耐光性に優れた液晶表示素子を作製することができ、均一塗布性にも優れる液晶配向剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた発明は、
[A]ポリアミック酸、ポリイミド、(メタ)アクリル重合体、ポリシロキサン及びポリアミック酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種の重合体(以下、「[A]重合体」とも称する)を含有し、かつ上記重合体が下記式(1)で表される基を有する液晶配向剤である。
【化1】

(式(1)中、
は、メチレン基、炭素数2〜30のアルキレン基、−(C2bO)−、フェニレン基又はシクロヘキシレン基である。bは、0〜20の整数である。cは、0〜10の整数である。但し、これらの基の水素原子の一部又は全部は、置換されていてもよい。
は、炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合、エーテル結合、エステル結合又はアミド結合を含む連結基である。
は、少なくとも2個の単環構造を有する基である。
aは、0又は1の整数である。)
【0009】
当該液晶配向剤が、上記式(1)で表される特定構造の基を有する[A]重合体を含有することで、高速応答を実現することができる。また、ポリマー主鎖構造の異なるポリアミック酸、ポリイミド、(メタ)アクリル重合体、ポリシロキサン及びポリアミック酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種の重合体を適宜選択する事で、液晶表示素子に所望の特性(電圧保持率、残像特性、均一塗布性、耐光性)を付与することができる。
【0010】
上記Rは、下記式(2)で表される基であることが好ましい。
【化2】

(式(2)中、
及びRは、それぞれ独立してフェニレン基、ビフェニレン基、ナフタレン基、シクロヘキシレン基、ビシクロヘキシレン基、シクロへキシレンフェニレン基又は複素環である。但し、これらの基の水素原子の一部又は全部は、置換されていてもよい。
は、メチレン基、炭素数2〜10のアルキレン基、炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合、エーテル結合、エステル結合又は複素環を含む連結基である。但し、上記連結基の水素原子の一部又は全部は、置換されていてもよい。
は、水素原子、シアノ基、フッ素原子、トリフルオロメチル基、アルコキシカルボニル基、アルキル基、アルコキシ基、トリフルオロメトキシ基又はアルキルカルボニルオキシ基である。
bは、0又は1である。cは、1〜9の整数である。但し、Rが複数の場合、複数のRは同一でも異なっていてもよい。)
【0011】
[A]重合体の側鎖として、上記式(2)で表される構造を導入することで、得られる液晶配向素子の応答速度をより向上することができる。
【0012】
本発明には、当該液晶表示素子から形成される液晶配向膜及び当該液晶配向膜を備える液晶表示素子が好適に含まれる。上述したように当該液晶配向剤によれば、高速応答が可能であり、かつ電圧保持率、残像特性、均一塗布性、耐光性等の諸性能に優れた液晶表示素子を作製可能であることから、当該液晶表示素子はTN、STN、IPS、FFS、Ht−VA(VA−IPS)、VA(MVA、PVA、光垂直配向、PSA等の方式を含む)等の駆動モードにおいても好適に適用できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高速応答が可能であり、かつ電圧保持率、残像特性、耐光性等の諸性能に優れた液晶表示素子を作製することができ、均一塗布性にも優れる液晶配向剤を提供できる。従って、当該液晶表示素子はTN、STN、IPS、FFS、Ht−VA(VA−IPS)、VA(MVA、PVA、光垂直配向、PSA等の方式を含む)等の駆動モードにおいても好適に適用できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<液晶配向剤>
本発明の液晶配向剤は、[A]重合体を含有する。また、当該液晶配向剤は、本発明の効果を損なわない範囲でその他の任意成分を含有することができる。以下、各成分を詳述する。
【0015】
<[A]重合体>
[A]重合体は、ポリアミック酸、ポリイミド、(メタ)アクリル重合体、ポリシロキサン及びポリアミック酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種の重合体を含有し、かつ上記重合体が上記式(1)で表される基を有する。当該液晶配向剤が、上記式(1)で表される特定構造の基を有する[A]重合体を含有することで、高速応答を実現することができる。また、ポリマー主鎖構造の異なるポリアミック酸、ポリイミド、(メタ)アクリル重合体、ポリシロキサン及びポリアミック酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種の重合体を適宜選択する事で、液晶表示素子に所望の特性(電圧保持率、残像特性、均一塗布性、耐光性)を付与することができる。以下、上記式(1)で表される基、各重合体の順に詳述する。
【0016】
[式(1)で表される基]
上記式(1)中、Rは、メチレン基、炭素数2〜30のアルキレン基、−(C2bO)−、フェニレン基又はシクロヘキシレン基である。bは、0〜20の整数である。cは、0〜10の整数である。但し、これらの基の水素原子の一部又は全部は、置換されていてもよい。Rは、炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合、エーテル結合、エステル結合又はアミド結合を含む連結基である。Rは、少なくとも2個の単環構造を有する基である。aは、0又は1の整数である。
【0017】
上記Rで表される連結基としては、エーテル基、エステル基、アミド基が好ましい。
【0018】
上記Rが示す炭素数2〜30のアルキレン基としては、例えばエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、テトラデシレン基、ヘキサデシレン基、オクタデシレン基、ノナデシレン基、イコシレン基、ヘンイコシレン基、ドコシレン基、トリコシレン基、テトラコシレン基、ペンタコシレン基、ヘキサコシレン基、ヘプタコシレン基、オクタコシレン基、ノナコシレン基、トリアコンチレン基等が挙げられる。
【0019】
上記Rが示す少なくとも2個の単環構造を有する基としては、上記式(2)で表される基であることが好ましい。[A]重合体の側鎖として、上記式(2)で表される構造を導入することで、得られる液晶配向素子の応答速度をより向上することができる。
【0020】
上記式(2)中、R及びRは、それぞれ独立してフェニレン基、ビフェニレン基、ナフタレン基、シクロヘキシレン基、ビシクロヘキシレン基、シクロへキシレンフェニレン基又は複素環である。但し、これらの基の水素原子の一部又は全部は、置換されていてもよい。Rは、メチレン基、炭素数2〜10のアルキレン基、炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合、エーテル結合、エステル結合又は複素環を含む連結基である。但し、上記連結基の水素原子の一部又は全部は、置換されていてもよい。Rは、水素原子、シアノ基、フッ素原子、トリフルオロメチル基、アルコキシカルボニル基、アルキル基、アルコキシ基、トリフルオロメトキシ基又はアルキルカルボニルオキシ基である。bは、0又は1である。cは、1〜9の整数である。但し、Rが複数の場合、複数のRは同一でも異なっていてもよい。なお、本明細書においては上記ナフタレン基等の縮合環は、単環に含まれるものとする。
【0021】
上記R及びRが示す複素環としては、例えばピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環等が挙げられる。上記Rが示す炭素数2〜10のアルキレン基を含む連結基の炭素数2〜10のアルキレン基としては、例えばエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基等が挙げられる。上記Rが示す複素環としては、例えばピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環等が挙げられる。Rが示すアルコキシカルボニル基としては、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基等が挙げられる。Rが示すアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基等の炭素数1〜20の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基等が挙げられる。Rが示すアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられる。Rが示すアルキルカルボニルオキシ基としては、例えばメトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、プロポキシカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0022】
当該液晶配向剤を用いた液晶表示素子の高速応答の観点から、上記Rとしては、アルキル基が好ましく、炭素数1〜20の直鎖状のアルキル基がより好ましい。また、上記R〜Rの少なくとも1つの基がフッ素原子を有していることが好ましい。
【0023】
上記式(2)で表される基としては、例えば下記式で表される基等が挙げられる。
【0024】
【化3】

【0025】
【化4】

【0026】
【化5】

【0027】
【化6】

【0028】
【化7】

【0029】
【化8】

【0030】
【化9】

【0031】
上記式(2−1)〜(2−123)中、Rは、炭素数1〜20のアルキル基又はアルコキシ基である。Xは、それぞれ独立して、水素原子又はフッ素原子である。
【0032】
上記Rとしては、炭素数1〜20のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜10のアルキル基であることがより好ましい。
【0033】
上記式(2)で表される基としては、当該液晶配向剤を用いた液晶表示素子の高速応答の観点から、上記式(2−1)、式(2−4)、式(2−6)、式(2−41)、式(2−50)〜(2−60)、式(2−64)、式(2−65)〜(2−123)で表される基が好ましく、式(2−41)、式(2−50)〜(2−58)、式(2−65)〜(2−123)のようにフッ素原子を有し、末端にアルキル基を有している基、式(2−72)で表される基及び式(2−90)で表される基がより好ましい。
【0034】
[ポリアミック酸]
[A]重合体としてのポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを反応させることにより得られる。上記ジアミン化合物の一部は上記式(1)で表される基を含むジアミン化合物とする必要がある。
【0035】
テトラカルボン酸二無水物としては、例えば脂肪族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらのテトラカルボン酸二無水物は、単独又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0036】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えばブタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0037】
脂環式テトラカルボン酸二無水物としては、例えば1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシメチルノルボルナン−2:3,5:6−二無水物、2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2:4,6:8−二無水物、4,9−ジオキサトリシクロ[5.3.1.02,6]ウンデカン−3,5,8,10−テトラオン等が挙げられる。
【0038】
芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えばピロメリット酸二無水物等が挙げられるほか特願2010−97188号に記載のテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0039】
これらのテトラカルボン酸二無水物のうち、脂環式テトラカルボン酸二無水物が好ましく、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物がより好ましい。
【0040】
ジアミン化合物としては、例えば脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、ジアミノオルガノシロキサン、芳香族ジアミン等が挙げられる。これらジアミン化合物は、単独又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0041】
脂肪族ジアミンとしては、例えばメタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
【0042】
脂環式ジアミンとしては、例えば1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0043】
ジアミノオルガノシロキサンとしては、例えば1,3−ビス(3−アミノプロピル)−テトラメチルジシロキサン等が挙げられるほか、特願2009−97188号に記載のジアミンが挙げられる。
【0044】
芳香族ジアミンとしては、例えばp−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、1,5−ジアミノナフタレン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,7−ジアミノフルオレン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、3,6−ジアミノアクリジン、3,6−ジアミノカルバゾール、N−メチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−エチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−フェニル−3,6−ジアミノカルバゾール、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−ベンジジン、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−N,N’−ジメチルベンジジン、1,4−ビス−(4−アミノフェニル)−ピペラジン、3,5−ジアミノ安息香酸、ドデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、テトラデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ドデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、テトラデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸コレスタニル、3,5−ジアミノ安息香酸コレステニル、3,5−ジアミノ安息香酸ラノスタニル、3,6−ビス(4−アミノベンゾイルオキシ)コレスタン、3,6−ビス(4−アミノフェノキシ)コレスタン、4−(4’−トリフルオロメトキシベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート、4−(4’−トリフルオロメチルベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ブチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェノキシ)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−(4−ヘプチルシクロヘキシル)シクロヘキサン、2,4−ジアミノーN,N―ジアリルアニリン、4−アミノベンジルアミン、3−アミノベンジルアミン、下記式(3)で表される化合物、下記式(4)で表される化合物等が挙げられる。
【0045】
【化10】

【0046】
上記式(3)中、R、R9’’及びR9’’’は、それぞれ独立して単結合、−O−、*−COO−又は−OCO−である。但し、Rの*はジアミノフェニル基と結合する部位である。また、R9’’及びR9’’’の*はフェニレン基側に結合する部位である。R9’は、炭素数1〜3のアルカンジイル基である。dは、0又は1である。eは、0〜2の整数である。fは、0又は1である。R10は、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基である。ジアミノフェニル基における2つのアミノ基は、2,4位又は3,5位に結合することが好ましい。
【0047】
【化11】

【0048】
上記式(4)中、R、d及びeは、上記式(3)と同義である。R〜R及びaは、上記式(1)と同義である。ジアミノフェニル基における2つのアミノ基は、2,4位又は3,5位に結合することが好ましい。gは、1〜5の整数である。
【0049】
上記R〜Rについては、上記[式(1)で表される基]におけるそれぞれの定義の説明及び好ましい基の説明をそのまま適用できる。
【0050】
上記gとしては、当該液晶配向剤を用いた液晶表示素子の高速応答の観点から、1〜3が好ましく、2又は3がより好ましい。
【0051】
上記式(4)で表されるジアミンとしては、例えば下記式で表されるジアミン等が挙げられる。
【0052】
【化12】

【0053】
【化13】

【0054】
【化14】

【0055】
これらのジアミンのうち、[A]重合体としてポリアミック酸を選択する場合においては、上記式(1)で表される基を重合体中に導入する観点から、ジアミンの1つとして少なくとも上記式(4)で表される化合物等の式(1)で表される基を有するジアミンを使用する必要がある。なお、他のジアミンを併用する場合としては、上記式(3)で表される化合物を使用することが好ましい。
【0056】
ポリアミック酸の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物の使用割合としては、ジアミン化合物に含まれるアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2当量〜2当量が好ましく、0.3当量〜1.2当量がより好ましい。
【0057】
合成反応は、有機溶媒中において行うことが好ましい。反応温度としては、−20℃〜150℃が好ましく、0℃〜100℃がより好ましい。反応時間としては、0.5時間〜24時間が好ましく、2時間〜12時間がより好ましい。
【0058】
有機溶媒としては、合成されるポリアミック酸を溶解できるものであれば特に制限はなく、例えばN−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミド、m−クレゾール、キシレノール、フェノール、ハロゲン化フェノール、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル等が挙げられる。
【0059】
有機溶媒の使用量としては、テトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物の総量100質量部に対して、0.1質量部〜50質量部が好ましく、5質量部〜40質量部がより好ましい。
【0060】
反応後に得られるポリアミック酸溶液は、そのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸を単離した上で液晶配向剤の調製に供してもよく、単離したポリアミック酸を精製した上で液晶配向剤の調製に供してもよい。ポリアミック酸の単離方法としては、例えば反応溶液を大量の貧溶媒中に注いで得られる析出物を減圧下乾燥する方法、反応溶液をエバポレーターで減圧留去する方法等が挙げられる。ポリアミック酸の精製方法としては、単離したポリアミック酸を再び有機溶媒に溶解し、貧溶媒で析出させる方法、エバポレーターで有機溶媒等を減圧留去する工程を1回若しくは複数回行う方法が挙げられる。
【0061】
[ポリイミド]
ポリイミドは、上記ポリアミック酸の有するアミック酸構造を脱水閉環してイミド化することにより製造できる。ポリイミドは、その前駆体であるポリアミック酸が有しているアミック酸構造の全てを脱水閉環した完全イミド化物であってもよく、アミック酸構造の一部のみを脱水閉環し、アミック酸構造とイミド環構造とが併存している部分イミド化物であってもよい。
【0062】
ポリイミドの合成方法としては、例えば(i)ポリアミック酸を加熱する方法(以下、「方法(i)」とも称する)、(ii)ポリアミック酸を有機溶媒に溶解し、この溶液中に脱水剤及び脱水閉環触媒を添加し、必要に応じて加熱する方法(以下、「方法(ii)」とも称する)等のポリアミック酸の脱水閉環反応による方法が挙げられる。
【0063】
方法(i)における反応温度としては、50℃〜200℃が好ましく、60℃〜170℃がより好ましい。反応温度が50℃未満では、脱水閉環反応が十分に進行せず、反応温度が200℃を超えると得られるポリイミドの分子量が低下することがある。反応時間としては、0.5時間〜48時間が好ましく、2時間〜20時間がより好ましい。
【0064】
方法(i)において得られるポリイミドはそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、ポリイミドを単離した上で液晶配向剤の調製に供してもよく又は単離したポリイミドを精製した上で又は得られるポリイミドを精製した上で液晶配向剤の調製に供してもよい。
【0065】
方法(ii)における脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸等の酸無水物が挙げられる。
【0066】
脱水剤の使用量としては、所望のイミド化率により適宜選択されるが、ポリアミック酸のアミック酸構造1モルに対して0.01モル〜20モルが好ましい。
【0067】
方法(ii)における脱水閉環触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミン等が挙げられる。
【0068】
脱水閉環触媒の使用量としては、含有する脱水剤1モルに対して0.01モル〜10モルが好ましい。なお、イミド化率は上記脱水剤及び脱水閉環剤の含有量が多いほど高くできる。
【0069】
方法(ii)に用いられる有機溶媒としては、例えばポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒と同様の有機溶媒等が挙げられる。
【0070】
方法(ii)における反応温度としては、0℃〜180℃が好ましく、10℃〜150℃がより好ましい。反応時間としては、0.5時間〜20時間が好ましく、1時間〜8時間がより好ましい。反応条件を上記範囲とすることで、脱水閉環反応が十分に進行し、また、得られるポリイミドの分子量を適切なものとできる。
【0071】
方法(ii)においてはポリイミドを含有する反応溶液が得られる。この反応溶液をそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液から脱水剤及び脱水閉環触媒を除いたうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、ポリイミドを単離した上で液晶配向剤の調製に供してもよく又は単離したポリイミドを精製した上で液晶配向剤の調製に供してもよい。反応溶液から脱水剤及び脱水閉環触媒を除く方法としては、例えば溶媒置換の方法等が挙げられる。ポリイミドの単離方法及び精製方法としては、例えばポリアミック酸の単離方法及び精製方法として例示したものと同様の方法等が挙げられる。
【0072】
[(メタ)アクリル重合体]
[A]重合体としての(メタ)アクリル重合体は、上記式(1)で表される基を含む(メタ)アクリル重合体であれば特に限定されることはなく、公知のエチレン性不飽和化合物を公知の方法で重合させることにより得られる。例えば、(a)エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物(以下、「(a)不飽和化合物」とも称する)と(b1)エチレン性不飽和カルボン酸及び/又は重合性不飽和多価カルボン酸無水物(以下、「(b1)不飽和化合物」とも称する)と(a)不飽和化合物及び(b1)不飽和化合物以外の重合性不飽和化合物(以下、「(b2)不飽和化合物」とも称する)との共重合体とを重合することで得られる。
【0073】
(a)不飽和化合物としては、例えば(メタ)アクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸グリシジル、α−n−プロピルアクリル酸グリシジル、α−n−ブチルアクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシブチル、α−エチルアクリル酸3,4−エポキシブチル、(メタ)アクリル酸6,7−エポキシヘプチル、α−エチルアクリル酸6,7−エポキシヘプチル等が挙げられる。
【0074】
(b1)不飽和化合物としては、例えば
(メタ)アクリル酸、クロトン酸、α−エチルアクリル酸、α−n−プロピルアクリル酸、α−n−ブチルアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸類;
無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、シス−1,2,3,4−テトラヒドロフタル酸無水物等の不飽和多価カルボン酸無水物類等が挙げられる。
【0075】
(b2)不飽和化合物としては、例えば
上記式(1)で表される基を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシル基を有するエステル類;
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;
(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル、(メタ)アクリル酸2−ジシクロペンタニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸イソボロニル、(メタ)アクリル酸コレスタニル等の(メタ)アクリル酸脂環式エステル類;
(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル類;
マレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジエチル等の不飽和ジカルボン酸ジエステル類;
N−フェニルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−スクシンイミジル−3−マレイミドベンゾエート、N−スクシンイミジル−4−マレイミドブチレート、N−スクシンイミジル−6−マレイミドカプロエート、N−スクシンイミジル−3−マレイミドプロピオネート、N−(9−アクリジル)マレイミド等の不飽和ジカルボニルイミド誘導体;
(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、シアン化ビニリデン等のシアン化ビニル化合物;
(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド化合物;
スチレン、α−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メトキシスチレン等の芳香族ビニル化合物;
インデン、1−メチルインデン等のインデン誘導体類;
1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等の共役ジエン系化合物の他、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル等が挙げられる。
【0076】
(a)不飽和化合物としては(メタ)アクリル酸グリシジルが好ましく、(b1)不飽和化合物としては、(メタ)アクリル酸が好ましく、(b2)不飽和化合物としては(メタ)アクリル酸コレスタニルが好ましい。[A]重合体としての(メタ)アクリル重合体を、例えばラジカル重合により合成する場合においては、上記式(1)で表される基を重合体中に導入する観点から、不飽和化合物の1つとして少なくとも上記式(1)で表される基を有する不飽和化合物を使用する必要がある。一方、例えば上記式(1)で表される基を有さない重合体中のエポキシ基を利用し、従来公知の高分子反応により上記式(1)で表される基を導入することもできる。
【0077】
(メタ)アクリル重合体の合成方法としては、各不飽和化合物を適当な溶媒及び重合開始剤の存在下、例えばラジカル重合によって合成することが簡便である。有機溶媒としては、例えばポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒と同様の有機溶媒等が挙げられる。
【0078】
重合開始剤としては、例えば
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物;
ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシピバレート、1,1’−ビス−(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン等の有機過酸化物;
過酸化水素;
これらの過酸化物と還元剤とからなるレドックス型開始剤等が挙げられる。これらの重合開始剤は、単独又は2種以上を混合して使用することができる。
【0079】
[ポリシロキサン]
[A]重合体としてのポリシロキサンは、上記式(1)で表される基を含むポリシロキサンであれば特に限定されないが、例えばアルコキシシラン化合物及びハロゲン化シラン化合物からなる群より選択される少なくとも1種のシラン化合物(以下、「原料シラン化合物」とも称する)を、好ましくは適当な有機溶媒中で、水及び触媒の存在下において加水分解又は加水分解・縮合することにより合成できる。
【0080】
原料シラン化合物としては、例えば
テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラクロロシラン等;
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリ−iso−プロポキシシラン、メチルトリ−n−ブトキシシラン、メチルトリ−sec−ブトキシシラン、メチルトリ−tert−ブトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ−n−プロポキシシラン、エチルトリ−iso−プロポキシシラン、エチルトリ−n−ブトキシシラン、エチルトリ−sec−ブトキシシラン、エチルトリ−tert−ブトキシシラン、エチルトリクロロシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリクロロシラン等;
ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジクロロシラン等;
トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルクロロシラン等;
上記式(1)で表される基を有するシラン等が挙げられる。
【0081】
これらの原料シラン化合物のうち、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、上記式(1)で表される基を有するシランが好ましい。[A]重合体としてポリシロキサンを選択する場合においては、上記式(1)で表される基を重合体中に導入する観点から、原料シラン化合物の1つとして少なくとも上記式(1)で表される基を有するシランを使用する必要がある。
【0082】
ポリシロキサンを合成する際に、任意的に使用できる有機溶媒としては、例えばアルコール化合物、ケトン化合物、アミド化合物、エステル化合物又はその他の非プロトン性化合物が挙げられる。これらは単独又は2種以上組合せて使用できる。
【0083】
ポリシロキサンを合成する際の反応温度としては、0℃〜100℃が好ましく、15℃〜80℃がより好ましい。反応時間としては、0.5時間〜24時間が好ましく、1時間〜8時間がより好ましい。
【0084】
[ポリアミック酸エステル]
ポリアミック酸エステルは、上述したポリアミック酸と、有機ハロゲン化物、アルコール類又はフェノール類とを反応させることにより得られる重合体である。
【0085】
なお、[A]重合体は、ポリアミック酸、ポリイミド、(メタ)アクリル重合体、ポリシロキサン及びポリアミック酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種の重合体であるところ、[A]重合体が複数種の重合体を選択した場合、少なくとも1種の重合体が上記式(1)で表される基を有していれば本願所望の効果である高速応答性を実現することができる。
【0086】
[A]重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるスチレン換算での重量平均分子量(Mw)は特に限定されないが、ポリアミック酸、ポリイミド又はポリアミック酸エステルの場合は、1,000〜500,000が好ましく、2,000〜300,000がより好ましい。(メタ)アクリル重合体の場合は、1,000〜1,000,000が好ましく、2,000〜500,000がより好ましい。ポリシロキサンの場合は、1,000〜200,000が好ましく、2,000〜100,000がより好ましい。このような分子量範囲にあることで、液晶表示素子の良好な配向性及び安定性を確保することができる。
【0087】
<その他の任意成分>
当該液晶配向剤は、本発明の効果を損なわない限り、例えば硬化剤、硬化触媒、硬化促進剤、エポキシ化合物、界面活性剤等のその他の任意成分を含有してもよい。なお、これらのその他の任意成分は、それぞれの成分を単独で使用してもよいし2種以上を混合して使用してもよい。また、その他の任意成分の配合量は、その目的に応じて適宜決定することができる。以下、各成分を詳述する。
【0088】
[硬化剤、硬化触媒及び硬化促進剤]
硬化剤及び硬化触媒は、[A]重合体の架橋反応をより強固にする目的で当該液晶配向剤に含有することができる。硬化促進剤は、硬化剤の司る硬化反応を促進する目的で当該液晶配向剤に含有することができる。
【0089】
硬化剤としては、エポキシ基を有する硬化性化合物、又はエポキシ基を有する化合物を含有する硬化性組成物の硬化に一般に用いられている硬化剤を用いることができる。このような硬化剤としては、例えば多価アミン、多価カルボン酸無水物等が挙げられる。
【0090】
多価カルボン酸無水物としては、例えばシクロヘキサントリカルボン酸の無水物及びその他の多価カルボン酸無水物が挙げられる。シクロヘキサントリカルボン酸無水物としては、例えばシクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物、シクロヘキサン−1,3,5−トリカルボン酸−3,5−無水物、シクロヘキサン−1,2,3−トリカルボン酸−2,3−酸無水物等が挙げられる。その他の多価カルボン酸無水物としては、例えば4−メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルナジック酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、無水こはく酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸等が挙げられる。
【0091】
硬化触媒としては、例えば6フッ化アンチモン化合物、6フッ化リン化合物、アルミニウムトリスアセチルアセトナート等が挙げられる。これらの触媒は、加熱によりエポキシ基のカチオン重合を触媒することができる。
【0092】
硬化促進剤としては、例えばイミダゾール化合物;4級リン化合物;4級アミン化合物;1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7やその有機酸塩等のジアザビシクロアルケン;オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、アルミニウムアセチルアセトン錯体等の有機金属化合物;三フッ化ホウ素、ホウ酸トリフェニル等のホウ素化合物;塩化亜鉛、塩化第二錫等の金属ハロゲン化合物;ジシアンジアミド、アミンとエポキシ樹脂との付加物等のアミン付加型促進剤等の高融点分散型潜在性硬化促進剤;4級フォスフォニウム塩等の表面をポリマーで被覆したマイクロカプセル型潜在性硬化促進剤;アミン塩型潜在性硬化促進剤;ルイス酸塩、ブレンステッド酸塩等の高温解離型の熱カチオン重合型潜在性硬化促進剤等が挙げられる。
【0093】
[エポキシ化合物]
エポキシ化合物は、形成される液晶配向膜の基板表面に対する接着性を向上させる観点から、当該液晶配向剤に含有することができる。
【0094】
エポキシ化合物としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,3,5,6−テトラグリシジル−2,4−ヘキサンジオール、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N,−ジグリシジル−ベンジルアミン、N,N−ジグリシジル−アミノメチルシクロヘキサンが好ましい。
【0095】
[界面活性剤]
界面活性剤としては、例えばノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、シリコーン界面活性剤、ポリアルキレンオキシド界面活性剤、含フッ素界面活性剤等が挙げられる。
【0096】
<液晶配向剤の調製方法>
当該液晶配向剤は、上述の通り[A]重合体を必須成分として含有し、必要に応じてその他の任意成分を含有できるが、好ましくは各成分が有機溶媒に溶解された溶液状の組成物として調製される。
【0097】
当該液晶配向剤を調製するために使用することのできる有機溶媒としては、[A]重合体及びその他の任意成分を溶解し、これらと反応しないものが好ましい。有機溶媒としては、例えば上記ポリアミック酸の合成に用いられるものとして上記に例示した有機溶媒等が挙げられる。また、ポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した貧溶媒を併用してもよい。なお、これらの有機溶媒は、単独又は2種以上を使用してもよい。
【0098】
当該液晶配向剤の調製に用いられる好ましい溶媒としては、後述する好ましい固形分濃度において当該液晶配向剤に含有される各成分が析出せず、かつ液晶配向剤の表面張力が25mN/m〜40mN/mの範囲となるものである。
【0099】
当該液晶配向剤の固形分濃度、即ち液晶配向剤中の溶媒以外の全成分の重量が液晶配向剤の全重量に占める割合としては、粘性、揮発性等を考慮して選択されるが、好ましくは1質量%〜10質量%の範囲である。当該液晶配向剤は、基板表面に塗布され、液晶配向膜となる塗膜を形成するが、固形分濃度が1質量%以上である場合には、この塗膜の膜厚が過小となりにくくなって良好な液晶配向膜を得ることができる。一方、固形分濃度が10質量%以下の場合には、塗膜の膜厚が過大となることを抑制して良好な液晶配向膜を得ることができる。また、液晶配向剤の粘性が増大することを防止して塗布特性を良好なものとすることができる。より好ましい固形分濃度の範囲としては、例えばスピンナー法による場合には1.5質量%〜4.5質量%である。印刷法による場合には、3質量%〜9質量%である。インクジェット法による場合には、1質量%〜5質量%である。
【0100】
<液晶表示素子>
本発明の液晶表示素子は、その駆動方式に特に制限はなく、TN、STN、IPS、FFS、Ht−VA(VA−IPS)、VA(VA−MVA方式、VA−PVA方式等を含む)等公知の各種方式に本技術を適用することが可能であり、上記液晶配向剤から形成された上記液晶配向膜を備える。上述したように当該液晶配向剤によれば、高速応答が可能であり、かつ電圧保持率、残像特性、均一塗布性、耐光性等の諸性能に優れた液晶表示素子を作製可能である。一般的に、液晶表示素子は表面に透明電極及び液晶配向膜がこの順に積層された一対の基板を備え、この一対の基板が内側に対向配設されており、この一対の基板間に液晶が充填され、周辺部がシール剤でシールされている。
【0101】
<液晶表示素子の製造方法>
本発明の液晶表示素子は、例えば以下のようにして製造することができる。当該液晶表示素子が備える液晶配向膜は、基板上に当該液晶配向剤を塗布し、次いで塗布面を加熱することにより基板上に形成される。基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラス等のガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、脂環式ポリオレフィン等のプラスチックからなる透明基板を用いることができる。上記のようにして液晶配向膜が形成された基板を2枚準備し、この2枚の基板間に液晶を配置することにより、液晶セルを製造する。液晶セルを製造する方法としては、例えば以下の方法等が挙げられる。
【0102】
第一の方法としては、それぞれの液晶配向膜が対向するように間隙(セルギャップ)を介して2枚の基板を対向配置し、2枚の基板の周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、基板表面及びシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶を注入充填した後、注入孔を封止することにより、液晶セルを製造することができる。
【0103】
第二の方法としては、ODF(One Drop Fill)方式と呼ばれる手法が挙げられる。液晶配向膜を形成した2枚の基板のうちの一方の基板上の所定の場所に例えば紫外光硬化性のシール材を塗布し、さらに液晶配向膜面上に液晶を滴下した後、液晶配向膜が対向するように他方の基板を貼り合わせ、次いで基板の全面に紫外光を照射してシール剤を硬化することにより、液晶セルを製造することができる。
【0104】
いずれの方法による場合でも、次いで液晶セルを用いた液晶が等方相をとる温度まで加熱した後、室温まで徐冷することにより、注入時の流動配向を除去することが望ましい。そして、液晶セルの外側表面に偏光板を貼り合わせることにより、当該液晶表示素子を得ることができる。
【0105】
上記シール剤としては、例えばスペーサーとしての酸化アルミニウム球及び硬化剤を含有するエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0106】
上記液晶としては、例えばネマティック型液晶、スメクティック型液晶等を用いることができる。TN型液晶セル又はSTN型液晶セルの場合、ネマティック型液晶を形成する正の誘電異方性を有するものが好ましい。このような液晶としては、例えばビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶、エステル系液晶、ターフェニル系液晶、ビフェニルシクロヘキサン系液晶、ピリミジン系液晶、ジオキサン系液晶、ビシクロオクタン系液晶、キュバン系液晶等が用いられる。また上記液晶に、例えばコレスチルクロライド、コレステリルノナエート、コレステリルカーボネート等のコレステリック液晶;商品名C−15、CB−15(メルク社)として販売されているようなカイラル剤;p−デシロキシベンジリデン−p−アミノ−2−メチルブチルシンナメート等の強誘電性液晶等を、さらに添加して使用することもできる。
【0107】
一方、垂直配向型液晶セルの場合には、ネマティック型液晶を形成する負の誘電異方性を有するものが好ましい。このような液晶としては、例えばジシアノベンゼン系液晶、ピリダジン系液晶、シッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶等が用いられる。
【0108】
液晶セルの外側に使用される偏光板としては、特に限定されないが、ポリビニルアルコールフィルムを延伸配向させながらヨウ素を吸収させた「H膜」と呼ばれる偏光膜を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板、又はH膜そのものからなる偏光板等が挙げられる。
【実施例】
【0109】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0110】
以下の実施例において得られた[A]重合体の重量平均分子量(Mw)は、下記仕様のGPCにより測定したポリスチレン換算値である。
カラム:東ソー社、TSKgelGRCXLII
溶媒:テトラヒドロフラン
温度:40℃
圧力:68kgf/cm
【0111】
[合成例1]
下記反応スキームに従い化合物1、2及び3を合成した。
【0112】
【化15】

【0113】
冷却管を備えた500mLの三口フラスコに4−シアノ−4’−ヒドロキシビフェニル12.6g(0.0645モル)、10−ブロモ−1−デカノール17.0g(0.0717モル)、炭酸カリウム28.4g及びN,N−ジメチルホルムアミド350mLを加え、160℃で5時間加熱撹拌した。TLCで反応の終了を確認した後、反応溶液を室温まで冷却した。反応溶液を水1,000mLに投入し、混合撹拌した。析出した白色固体をろ別し、水で更に洗浄した。得られた固体を80℃で真空乾燥することで、上記化合物1を20.6g得た。次に得られた化合物1の20g(0.0569モル)を150mLの脱水テトラヒドロフラン(THF)に溶解し、トリエチルアミン7.49g(0.0740モル)を加えた後、150mLのTHFに溶解した3,5−ジニトロベンゾイルクロリド14.4g(0.0625モル)を氷冷下で30分かけて徐々に滴下し、その後、室温で3時間攪拌した。反応終了後、濾過によりトリエチルアミン塩酸塩を取り除き、減圧蒸留によりTHFを取り除いた後にクロロホルム400mLを加えた。この溶液を水洗し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、クロロホルムを減圧蒸留により除去した。その後、エタノールで再結晶を実施し、80℃で真空乾燥することで上記化合物2を23.8g得た。窒素気流下、上記化合物2の20g(0.0367モル)及び5%Pd/Cを1g(化合物2に対して5wt.%)をエタノール500mLに加え、さらに28%アンモニア水4.2g(化合物2に対して2倍モル)を添加した。この溶液を15±5℃に保持しつつ、ヒドラジン一水和物(80%純度)21gを徐々に滴下した後、約20時間攪拌して反応させた。その後、反応液を熱時濾過しながら、純水中に滴下し、室温で攪拌洗浄後、濾過して白色〜淡黄色固体を得た。これを35℃で真空乾燥させて上記化合物3を16.8g得た。
【0114】
[合成例2]
下記反応スキームに従い化合物4を合成した。
【0115】
【化16】

【0116】
合成例1と同様の操作により得た化合物1の20g(0.0569モル)を300mLのTHFに溶解し、トリエチルアミン7.49g(0.0740モル)を加えた後、メタクリロイルクロリド6.53g(0.0625モル)を氷冷下で30分かけて徐々に滴下し、その後室温で3時間攪拌した。反応終了後、濾過によりトリエチルアミン塩酸塩を取り除き、減圧蒸留によりTHFを取り除いた後にクロロホルム400mLを加えた。この溶液を水洗し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、クロロホルムを減圧蒸留により除去した。その後、エタノールで再結晶を実施し、80℃で真空乾燥することで上記化合物4を17.7g得た。
【0117】
[合成例3]
下記反応スキームに従い化合物5及び6を合成した。
【0118】
【化17】

【0119】
冷却管を備えた500mLの三口フラスコに4−シアノ−4’−ヒドロキシビフェニル12.6g(0.0645モル)、11−ブロモ−1−ウンデセン16.7g(0.0717モル)、炭酸カリウム28.4g及びN,N−ジメチルホルムアミド350mLを加え、160℃で5時間加熱撹拌した。TLCで反応の終了を確認した後、反応溶液を室温まで冷却した。反応溶液を水1,000mLに投入し、混合撹拌した。析出した白色固体をろ別し、水で更に洗浄した。得られた固体を80℃で真空乾燥することで、上記化合物5を19.8g得た。還流管及び窒素導入管を備えた100mLの三口フラスコに化合物6を8.69g(0.0250モル)、トリメトキシシラン15g及び0.2M塩化白金酸六水和物のイソプロパノール溶液を40μLを仕込み、脱気を行った後、窒素下で10時間還流下に反応を行った。反応混合物をシリカゲルのショートカラムに通した後、シリカカラムで精製を行い、さら溶媒を除去することにより、上記化合物6を3.5g得た。
【0120】
[合成例4]
下記スキームに従い化合物7〜11を合成した。
【0121】
【化18】

【0122】
冷却管を備えた500mLの三口フラスコに4−[ジフルオロ(4−ペンチルシクロヘキシル)メトキシ]−2,3−ジフルオロフェノール12.5g、11−ブロモウンデカン酸メチル10g、炭酸カリウム14.2g、N,N−ジメチルホルムアミド200mLを加え、160℃で5時間加熱撹拌した。TLCで反応の終了を確認した後、反応溶液を室温まで冷却した。反応溶液を水500mLに投入し、混合撹拌した。析出した白色固体をろ別し、水で更に洗浄した。得られた固体を80℃で真空乾燥することで、化合物7を14.8g得た。
【0123】
冷却管を備えた200mLの三口フラスコに、化合物7を10g、水酸化リチウム・1水和物1.6g、メタノール30mL、水15mLを加え、80℃で4時間加熱撹拌した。TLCで反応の終了を確認した後、反応溶液を室温まで冷却した。反応溶液を撹拌した状態で、希塩酸を反応溶液にゆっくり滴下した。析出固体をろ過し、水、エタノールの順で洗浄した。得られた固体を80℃で真空乾燥することで、化合物8を6g得た。
【0124】
冷却管を備えた100mLの三口フラスコに、化合物8を5g、塩化チオニル5mLを混合し、80℃で1時間加熱攪拌し反応させた。水流式アスピレーターで減圧し未反応の塩化チオニルを除去した後、テトラヒドロフラン50mLと混合し、溶液(1)とした。次いで滴下ロートを備えた200ml三口フラスコにエチレングリコール8.9g、テトラヒドロフラン20mL、トリエチルアミン2.2gを混合し、氷浴中で攪拌した。そこに溶液(1)を滴下した後、室温で3時間攪拌し反応させた。反応後酢酸エチル300mLを加え、分液精製にて水洗した。その後、有機層を濃縮し固体を得た。得られた固体をエタノール/蒸留水中で再結晶し、析出した固体をろ過、乾燥することで、化合物9を4.3g得た。
【0125】
滴下ロートを備えた100mL三口フラスコに化合物9を4.0g、テトラヒドロフラン35mL、トリエチルアミン1.0gを氷浴中で攪拌した。そこへ3,5−ジニトロ安息香酸クロリド1.8gをゆっくりと滴下した後、室温で3時間攪拌し反応させた。反応後、酢酸エチル300mLを加え、分液精製にて水洗した。その後、有機層を濃縮し固体を得た。得られた固体をエタノールで再結晶し、析出した固体をろ過、乾燥することで、化合物10を4.8g得た。
【0126】
滴下ロートを備えた100mL三口フラスコに化合物10を4g、亜鉛7g、塩化アンモニウム1.1gを混合し、真空脱気、窒素置換した。次いで、テトラヒドロフラン10mL、エタノール10mLを加え氷浴中で攪拌混合した。次いで、蒸留水5mLをゆっくり滴下した。尚、反応に用いた溶媒はあらかじめ窒素バブリングしておいた。滴下中は、氷浴にて冷却しながら攪拌し、その後室温にて4時間反応させた。次いで、反応液をろ過し触媒を除去した。次いで、酢酸エチル300mLを加え、蒸留水にて分液精製を行った。次いで有機層を濃縮し溶媒を除去することで固体が得られた。エタノールにて再結晶させ、固体をろ過、減圧乾燥することで濾過しこれを35℃で真空乾燥させることで化合物11を2.4g得た。
【0127】
[合成例5]
下記スキームに従い化合物12〜14を合成した。
【0128】
【化19】

【0129】
冷却管を備えた500mLの三口フラスコに3,5-ジニトロフルオロベンゼン18.6g、11-ブロモウンデカノール24.4g、トリエチルアミン20g、テトラヒドロフラン100mLを混合し、窒素雰囲気下100℃にて30時間反応させた。反応後、酢酸エチル200mLを加え、蒸留水50mLで4回分液精製を行った。次いで有機層を濃縮し溶媒を除去することで黄褐色の液体が得られた。これにエタノールを少量加え0℃以下にて冷却することで固体を析出させた。次いで、析出した個体をろ過、乾燥することで化合物12を30g得た。
【0130】
冷却管を備えた300mLの三口フラスコに化合物12を8.3g、2,3−ジフルオロ−4−(4−ペンチルシクロヘキシル)フェノール6g、炭酸カリウム6g、ジメチルホルムアミド100mLを混合し、80℃にて5時間反応させた。反応終了を確認し、酢酸エチル200mLを加え、蒸留水50mLで4回分液精製を行った。次いで有機層を濃縮し溶媒を除去することで黄褐色の液体が得られた。これにエタノールを少量加え0℃以下にて冷却することで固体を析出させた。次いで、析出した個体をろ過、乾燥することで化合物13を10g得た。
【0131】
滴下ロートを備えた200mL三口フラスコに化合物13を9.8g、亜鉛20g、塩化アンモニウム3.4gを混合し、真空脱気、窒素置換した。次いで、テトラヒドロフラン30mL、エタノール30mLを加え氷浴中で攪拌混合した。次いで、蒸留水10mLをゆっくり滴下した。尚、反応に用いた溶媒はあらかじめ窒素バブリングしておいた。滴下中は、氷浴にて冷却しながら攪拌し、その後室温にて6時間反応させた。次いで、反応液をろ過し触媒を除去した。次いで、酢酸エチル300mLを加え、蒸留水にて分液洗浄を行った。次いで有機層を濃縮し溶媒を除去することで固体が得られた。エタノールにて再結晶させ、固体をろ過、減圧乾燥することで化合物14を5g得た。
【0132】
[合成例6]
下記スキームに従い化合物15〜17を合成した。
【0133】
【化20】

【0134】
3’,4’,5’−トリフルオロ−4−ヒドロキシビフェニル4.48g、2−[2−(2−クロロエトキシ)エトキシ]エタノール3.38g、炭酸カリウム8.3g、ジメチルホルムアミド100mLを混合し、窒素雰囲気下85℃にて24時間反応させた。次いで、酢酸エチル200mLを加え、蒸留水にて分液精製を行った。有機層を濃縮し溶媒を除去することで化合物15(淡黄色の液体)を6g得た。
【0135】
化合物15を5g、2,4−ジニトロフルオロベンゼン2.9g、テトラヒドロフラン50mL、トリエチルアミン1.9gを混合し80℃にて10時間反応させた。酢酸エチル200mLを加え、蒸留水にて分液精製を行った。有機層を濃縮し溶媒を除去することで化合物16を4.8g得た。
【0136】
滴下ロートを備えた100mL三口フラスコに化合物16を4g、亜鉛10g、塩化アンモニウム1.6gを混合し、真空脱気、窒素置換した。次いで、窒素気流下、テトラヒドロフラン10ml、エタノール10mlを加え氷浴中で攪拌混合した。次いで、蒸留水5mlをゆっくり滴下した。尚、反応に用いた溶媒はあらかじめ窒素バブリングしておいた。滴下中は、氷浴にて冷却しながら攪拌し、その後室温にて2時間反応させた。次いで、反応液をろ過し触媒を除去した。次いで、酢酸エチル300mlを加え、蒸留水にて分液精製を行った。次いで有機層を濃縮し溶媒を除去することで固体が得られた。エタノールにて再結晶させ、固体をろ過、減圧乾燥することで濾過しこれを乾燥させることで化合物17を3.3g得た。
【0137】
[合成例7]
下記スキームに従い化合物18及び19を合成した。
【0138】
【化21】

【0139】
4−[ジフルオロ(4−ペンチルシクロヘキシル)メトキシ]−2,3−ジフルオロフェノール50g、11−ブロモウンデカノール38g、炭酸カリウム60g、ジメチルホルムアミド100mLを混合し、窒素雰囲気下85℃にて24時間反応させた。次いで、酢酸エチル200mLを加え、蒸留水にて分液精製を行った。有機層を濃縮し溶媒を除去することで化合物18を38.7g得た。
【0140】
化合物18を10g、テトラヒドロフラン20mLに溶解し、トリエチルアミン3.9gを加えた後、アクリル酸クロリド2.6gをテトラヒドロフラン10mLに溶解させた溶液を氷冷下で15分かけて徐々に滴下し、その後室温で2時間攪拌した。反応終了後、濾過によりトリエチルアミン塩酸塩を取り除き、減圧蒸留により溶媒を取り除いた後にクロロホルム400mLを加えた。この溶液を水洗し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、クロロホルムを減圧蒸留により除去した。その後、エタノールで再結晶を実施し、80℃で真空乾燥することで化合物19を11g得た。
【0141】
<[A]重合体の合成>
[ポリアミック酸の合成]
[合成例8]
1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物26.08g、下記式で表されるジアミン(G−1)7.90g及び上記化合物3のジアミン66.0gをNMP400gに溶解し、室温で6時間反応させた。次いで、反応混合物を大過剰のメタノール中に注ぎ、反応生成物を沈澱させた。沈殿物をメタノールで洗浄し、減圧下40℃で15時間乾燥することにより、ポリアミック酸(PA−1)を78.5g得た。
【0142】
【化22】

【0143】
[合成例9]
化合物3の代わりに化合物11を96.6g用いた以外は合成例8と同様に操作することにより、ポリアミック酸(PA−2)を100.1g得た。
【0144】
[ポリイミドの合成]
[合成例10]
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物13.45g、ジアミン化合物として3,5−ジアミノ安息香酸3.72g、下記式で表されるジアミン(G−2)3.02g及び化合物3のジアミン14.81gをNMP140gに溶解させ、60℃で4時間反応させた。この重合液の粘度を測定したところ2,200mPa・sであった。反応溶液を大過剰のメチルアルコール中に注いで反応生成物を沈澱させた。その後、メチルアルコールで洗浄し、減圧下40℃で24時間乾燥させることによりポリアミック酸を得た。得られたポリアミック酸を全てNMP465gに再溶解させ、ピリジン7.12g及び無水酢酸9.19gを添加し110℃で4時間脱水閉環させ、上記と同様に操作して沈殿、洗浄、減圧乾燥を行い、イミド化率68%のポリイミド(PI−1)を21.5g得た。
【0145】
【化23】

【0146】
[合成例11]
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物10.89g、ジアミン化合物として上記ジアミン(G−2)7.33g及び化合物3のジアミン16.78gをNMPに溶解させ、60℃で4時間反応させた。この重合液の粘度を測定したところ1,250mPa・sであった。反応溶液を大過剰のメチルアルコール中に注いで反応生成物を沈澱させた。その後、メチルアルコールで洗浄し、減圧下40℃で24時間乾燥させることによりポリアミック酸を得た。得られたポリアミック酸を全てNMP465gに再溶解させ、ピリジン3.84g及び無水酢酸4.96gを添加し110℃で4時間脱水閉環させ、上記と同様に操作して沈殿、洗浄、減圧乾燥を行い、イミド化率49%のポリイミド(PI−2)を23.1g得た。
【0147】
[合成例12]
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物15.17g、ジアミン化合物として上記ジアミン(G−1)3.60g、化合物3のジアミン6.68g及び4,4’−ジアミノジフェニルメタン9.55gをNMP140gに溶解させ、60℃で4時間反応させた。この重合液の粘度を測定したところ、2,700mPa・sであった。反応溶液を大過剰のメチルアルコール中に注いで反応生成物を沈澱させた。その後、メチルアルコールで洗浄し、減圧下40℃で24時間乾燥させることによりポリアミック酸を得た。得られたポリアミック酸を全てNMP465gに再溶解させ、ピリジン10.70g及び無水酢酸13.82gを添加し110℃で4時間脱水閉環させ、上記と同様に操作して沈殿、洗浄、減圧乾燥を行い、イミド化率76%のポリイミド(PI−3)を22.4g得た。
【0148】
[合成例13]
化合物3の代わりに化合物14を7.69g用いた以外は合成例10と同様に操作することにより、イミド化率76%のポリイミド(PI−4)を22.9g得た。
【0149】
[合成例14]
化合物3の代わりに化合物17を6.36g用いた以外は合成例10と同様に操作することにより、イミド化率76%のポリイミド(PI−5)を21.9g得た。
【0150】
[メタクリル重合体の合成]
[合成例15]
下記反応スキームに従いメタクリル酸コレスタニルを合成した。
【0151】
【化24】

【0152】
β‐コレスタノール80gを800mLのTHFに溶解し、トリエチルアミン27.2gを加えた後、塩化メタクリロイル35.6gを徐々に滴下し、室温で3時間攪拌させた。反応終了後、ろ過によりトリエチルアミン塩酸塩を取り除き、減圧蒸留によりTHFを取り除いた後にクロロホルム400mLを加えた。この溶液を水洗し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、クロロホルムを減圧蒸留により除去した。その後、エタノールによる再結晶を実施し、上記反応式に示す白色固体のメタクリル酸コレスタニル54g(収率:57.4%)を得た。攪拌棒、三方コック、温度計をセットした四つ口フラスコにモノマーとして上記メタクリル酸コレスタニル15.16g(0.033モル)、メタクリル酸グリシジル12.8g(0.09モル)、メタクリル酸7.2g(0.084モル)及び上記化合物4を45.85g(0.109モル)仕込み、溶媒としてジエチレングリコールエチルメチルエーテル52.8g、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2.24g及び連鎖移動剤としてα−メチルスチレンダイマー0.96gを添加した。これを窒素気流で約10分間バブリングして系内の窒素置換を行った後、窒素雰囲気下、70℃で5時間反応させてメタクリル重合体(PM−1)を得た。GPCによりメタクリル重合体(PM−1)の分子量測定を行ったところ、Mw=96,000、Mw/Mn=7.87であり、残留モノマーに起因するピークは認められなかった。なお、重合体溶液において仕込みモノマーは全量メタクリル重合体(PM−1)に転換されたと仮定し、そのまま希釈して本発明の液晶配向剤調製に使用した。
【0153】
[合成例16]
メタクリル酸コレスタニル10.0g(0.0219モル)、メタクリル酸グリシジル15.0g(0.1055モル)、メタクリル酸9.0g(0.1045モル)及び化合物4を19.3g(0.046モル)仕込み、溶媒としてジエチレングリコールエチルメチルエーテル43.0g、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.83g及び連鎖移動剤としてα−メチルスチレンダイマー0.78gを用いた以外は合成例15と同様に操作して、メタクリル重合体(PM−2)を得た。GPCによりメタクリル重合体(PM−2)の分子量測定を行ったところ、Mw=125,000、Mw/Mn=9.54であり、残留モノマーに起因するピークは認められなかった。なお、本重合体溶液において仕込みモノマーは全量メタクリル重合体(PM−2)に転換されたと仮定し、そのまま希釈して本発明の液晶配向剤作成に使用した。
【0154】
[合成例17]
化合物4の代わりに化合物19を25.6g(0.046モル)用いた以外は合成例16と同様に操作することによりメタクリル重合体(PM−3)を得た。GPCによりメタクリル重合体(PM−3)の分子量測定を行ったところ、Mw=131,000、Mw/Mn=9.43であり、残留モノマーに起因するピークは認められなかった。なお、本重合体溶液において仕込みモノマーは全量メタクリル重合体(PM−3)に転換されたと仮定し、そのまま希釈して本発明の液晶配向剤作成に使用した。
【0155】
[ポリシロキサンの合成]
[合成例18]
撹拌機、温度計、滴下漏斗及び還流冷却管を備えた反応容器に、シュウ酸12.4g及びエタノール22.2gを投入し、攪拌してシュウ酸のエタノール溶液を調製した。次いでこの溶液を窒素雰囲気下、70℃まで加熱した後、ここに原料であるシラン化合物として、テトラエトキシシラン11.1g及び化合物6が10.6gからなる混合物を滴下した。滴下終了後、70℃の温度を6時間維持した後に25℃まで冷却し、次いでブチルセロソルブ40.0gを加えることによりポリオルガノシロキサン(PS−1)を含有する溶液を調製した。この溶液に含有されるポリオルガノシロキサン(PS−1)のMwは9,000であった。
【0156】
[合成例19]
撹拌機、温度計、滴下漏斗及び還流冷却管を備えた反応容器に、シュウ酸13.9g及びエタノール19.5gを投入し、攪拌してシュウ酸のエタノール溶液を調製した。次いでこの溶液を窒素雰囲気下、70℃まで加熱した後、ここに原料であるシラン化合物として、テトラエトキシシラン15.1g及び化合物6が3.95gからなる混合物を滴下した。滴下終了後、70℃の温度を6時間維持した後に25℃まで冷却し、次いでブチルセロソルブ40.0gを加えることによりポリオルガノシロキサン(PS−2)を含有する溶液を調製した。この溶液に含有されるポリオルガノシロキサン(PS−2)のMwは12,000であった。
【0157】
[合成例20]
撹拌機、温度計、滴下漏斗及び還流冷却管を備えた反応容器に、シュウ酸10.2g及びエタノール26.3gを投入し、攪拌してシュウ酸のエタノール溶液を調製した。次いでこの溶液を窒素雰囲気下、70℃まで加熱した後、ここに原料であるシラン化合物として、テトラエトキシシラン5.54g、化合物6が12.49g及びオクタデシルトリエトキシシラン2.5gからなる混合物を滴下した。滴下終了後、70℃の温度を6時間維持した後に25℃まで冷却し、次いでブチルセロソルブ40.0gを加えることによりポリオルガノシロキサン(PS−3)を含有する溶液を調製した。この溶液に含有されるポリオルガノシロキサン(PS−3)のMwは6,000であった。
【0158】
[合成例21]
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物19.88g、ジアミン化合物としてp−フェニレンジアミン6.83g、ジアミノジフェニルメタン3.58g及び上記ジアミン(G−1)4.72gをNMP140gに溶解させ、60℃で4時間反応させた。この重合液の粘度を測定したところ、2,100mPa・sであった。次いで、反応溶液を大過剰のメチルアルコール中に注いで反応生成物を沈澱させた。その後、メチルアルコールで洗浄し、減圧下40℃で24時間乾燥させることによりポリアミック酸32.8gを得た。得られたポリアミック30gをNMP400gに溶解させ、ピリジン12.0g及び無水酢酸15.5gを添加し110℃で4時間脱水閉環させ、上記と同様にして沈殿、洗浄、減圧乾燥を行い、イミド化率79%のポリイミド(PI−6)を25g得た。
【0159】
[合成例22]
攪拌棒、三方コック、温度計をセットした四つ口フラスコにモノマーとしてメタクリル酸コレスタニル15.16g(0.0332モル)、メタクリル酸グリシジル12.8g(0.09モル)、メタクリル酸7.2g(0.0836モル)、スチレン7.2g(0.0691モル)及びN−シクロヘキシルマレイミド7.2g(0.0402モル)を仕込み、さらに溶媒としてジエチレングリコールエチルメチルエーテル52.8g、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2.24g及び連鎖移動剤としてα−メチルスチレンダイマー0.96gを添加した。これを窒素気流で約10分間バブリングして系内の窒素置換を行った後、窒素雰囲気下、70℃で5時間反応させてプレチルト角発現成分を有するメタクリル重合体(PM−4)を得た。GPCによりメタクリル重合体(PM−4)の分子量測定を行ったところ、Mw=96,000、Mw/Mn=7.87であり、残留モノマーに起因するピークは認められなかった。なお、本重合体溶液において仕込みモノマーは全量メタクリル重合体(PM−4)に転換されたと仮定し、そのまま希釈して本発明の液晶配向剤調製に使用した。
【0160】
[合成例23]
撹拌機、温度計、滴下漏斗及び還流冷却管を備えた反応容器に、シュウ酸10.2g及びエタノール26.3gを投入し、攪拌してシュウ酸のエタノール溶液を調製した。次いでこの溶液を窒素雰囲気下、70℃まで加熱した後、ここに原料であるシラン化合物として、テトラエトキシシラン11.1g及びオクタデシルトリエトキシシラン2.5gからなる混合物を滴下した。滴下終了後、70℃の温度を6時間維持した後に25℃まで冷却し、次いでブチルセロソルブ40.0gを加えることによりポリオルガノシロキサン(PS−4)を含有する溶液を調製した。この溶液に含有されるポリオルガノシロキサン(PS−4)のMwは6,900であった。
【0161】
<液晶配向剤の調製>
[実施例1]
上記ポリアミック酸(PA−1)に溶媒組成がNMP:ブチルセロソルブ=50:50(質量比)となるようにNMP及びブチルセロソルブを加えて、固形分濃度が3.5質量%(液晶セル作成用)及び固形分濃度が7.0%(均一塗布性評価用)の溶液とした。これら溶液を十分に攪拌後、それぞれ孔径0.2μmのフィルターで濾過することにより、液晶配向剤(S−1)を調製した。
【0162】
[実施例2]
上記ポリアミック酸(PA−1)の代わりに上記ポリアミック酸(PA−2)を用いた以外は実施例1と同様に操作することにより、液晶配向剤(S−2)を調製した。
【0163】
[実施例3]
上記ポリイミド(PI−1)に溶媒組成がNMP:ブチルセロソルブ=50:50(質量比)となるようにNMP及びブチルセロソルブを加えて、固形分濃度が3.5質量%(液晶セル作成用)及び固形分濃度が7.0%(均一塗布性評価用)の溶液とした。これら溶液を十分に攪拌後、それぞれ孔径0.2μmのフィルターで濾過することにより、液晶配向剤(S−3)を調製した。
【0164】
[実施例4]
上記ポリイミド(PI−2)に溶媒組成がNMP:ブチルセロソルブ=50:50(質量比)となるようにNMP及びブチルセロソルブを加えて、固形分濃度が3.5質量%(液晶セル作成用)及び固形分濃度が7.0%(均一塗布性評価用)の溶液とした。これら溶液を十分に攪拌後、それぞれ孔径0.2μmのフィルターで濾過することにより、液晶配向剤(S−4)を調製した。
【0165】
[実施例5]
上記ポリイミド(PI−3)に溶媒組成がNMP:ブチルセロソルブ=70:30(質量比)となるようにNMP及びブチルセロソルブを加えて、固形分濃度が3.5質量%(液晶セル作成用)及び固形分濃度が7.0%(均一塗布性評価用)の溶液とした。これら溶液を十分に攪拌後、それぞれ孔径0.2μmのフィルターで濾過することにより、液晶配向剤(S−5)を調製した。
【0166】
[実施例6]
上記ポリイミド(PI−1)の代わりに上記ポリイミド(PI−4)を用いた以外は実施例3と同様に操作することにより、液晶配向剤(S−6)を調製した。
【0167】
[実施例7]
上記ポリイミド(PI−1)の代わりに上記ポリイミド(PI−5)を用いた以外は実施例3と同様に操作することにより、液晶配向剤(S−7)を調製した。
【0168】
[実施例8]
上記メタクリル重合体(PM−1)溶液にさらにジエチレングリコールメチルエチルエーテルを添加し、固形分濃度が3.5質量%(液晶セル作成用)及び固形分濃度が7.0%(均一塗布性評価用)の溶液とした。これら溶液を十分に攪拌後、それぞれ孔径0.2μmのフィルターを用いて濾過し、液晶配向剤(S−8)を調製した。
【0169】
[実施例9]
上記メタクリル重合体(PM−2)溶液にさらにジエチレングリコールメチルエチルエーテルを添加し、固形分濃度が3.5質量%(液晶セル作成用)及び固形分濃度が7.0%(均一塗布性評価用)の溶液とした。これら溶液を十分に攪拌後、それぞれ孔径0.2μmのフィルターを用いて濾過し、液晶配向剤(S−9)を調製した。
【0170】
[実施例10]
上記メタクリル重合体(PM−1)の代わりに上記メタクリル重合体(PM−3)を用いた以外は実施例8と同様に操作することにより、液晶配向剤(S−10)を調製した。
【0171】
[実施例11]
上記ポリオルガノシロキサン(PS−1)を含有する溶液にブチルセロソルブを加えて、固形分濃度5重量%(液晶セル作成用)及び固形分濃度が10.0%(均一塗布性評価用)の溶液とした。これら溶液を十分に攪拌後、それぞれ孔径1μmのフィルターを用いて濾過することにより、液晶配向剤(S−11)を調製した。
【0172】
[実施例12]
上記ポリオルガノシロキサン(PS−2)を含有する溶液にブチルセロソルブを加えて、固形分濃度5重量%(液晶セル作成用)及び固形分濃度が10.0%(均一塗布性評価用)の溶液とした。これら溶液を十分に攪拌後、それぞれ孔径1μmのフィルターを用いて濾過することにより、液晶配向剤(S−12)を調製した。
【0173】
[実施例13]
上記ポリオルガノシロキサン(PS−3)を含有する溶液にブチルセロソルブを加えて、固形分濃度5重量%(液晶セル作成用)及び固形分濃度が10.0%(均一塗布性評価用)の溶液とした。これら溶液を十分に攪拌後、それぞれ孔径1μmのフィルターを用いて濾過することにより、液晶配向剤(S−13)を調製した。
【0174】
[比較例1]
上記ポリイミド(PI−6)に溶媒組成がNMP:ブチルセロソルブ=50:50(質量比)となるようにNMP及びブチルセロソルブをそれぞれ加えて、固形分濃度が3.5質量%(液晶セル作成用)及び固形分濃度が7.0%(均一塗布性評価用)の溶液とした。これら溶液を十分に攪拌後、それぞれ孔径0.2μmのフィルターで濾過することにより、液晶配向剤(CS−1)を調製した。
【0175】
[比較例2]
上記メタクリル重合体(PM−4)溶液にさらにジエチレングリコールメチルエチルエーテルを添加し、固形分濃度が3.5質量%(液晶セル作成用)及び固形分濃度が7.0%(均一塗布性評価用)の溶液とした。これら溶液を十分に攪拌後、それぞれ孔径0.2μmのフィルターを用いて濾過することにより、液晶配向剤(CS−2)を得た。
【0176】
[比較例3]
上記ポリオルガノシロキサン(PS−4)を含有する溶液にブチルセロソルブを加えて、固形分濃度5重量%(液晶セル作成用)及び固形分濃度が10.0%(均一塗布性評価用)の溶液とした。これら溶液を十分に攪拌後、それぞれ孔径1μmのフィルターを用いて濾過することにより、液晶配向剤(CS−3)を調製した。
【0177】
<液晶表示素子の製造>
調製した各液晶配向剤を、ITO膜からなる透明電極付きガラス基板の透明電極面上にスピンナーを用いて塗布し、80℃のホットプレートで1分間プレベークを行った後、窒素に置換したオーブン中、200℃で1時間加熱して溶媒を除去することにより、膜厚0.08μmの塗膜(液晶配向膜)を形成した。この操作を繰り返し、液晶配向膜を有する基板を一対(2枚)作成した。上記基板のうちの1枚の液晶配向膜を有する面の外周に直径3.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤をスクリーン印刷により塗布した後、一対の基板の液晶配向膜面を、対向させて重ね合わせて圧着し、150℃で1時間加熱して接着剤を熱硬化した。次いで、液晶注入口より基板の間隙にネガ型液晶(メルク製、MLC−6608)を充填した後、エポキシ系接着剤で液晶注入口を封止し、さらに液晶注入時の流動配向を除くために、これを150℃で10分間加熱した後に室温まで徐冷した。さらに、基板の外側両面に、偏光板を2枚の偏光板の偏光方向が互いに直交するように貼り合わせることにより、液晶表示素子を製造した。
【0178】
<評価>
製造した液晶表示素子について以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0179】
[応答速度(msec.)]
偏光顕微鏡、光検出器、及びパルス発生機を含む装置で応答速度(液晶応答の立ち上がりの時間)を測定した。ここで液晶応答速度とは、作製した液晶表示素子に電圧無印加状態から5Vの電圧を最大1秒間印加した際に、透過率10%から透過率90%に変化するのに要した時間(msec.)とした。
【0180】
[電圧保持率(%)]
上記で製造した液晶表示素子に、5Vの電圧を60マイクロ秒の印加時間、167ミリ秒のスパンで印加した後、印加解除から167ミリ秒後の電圧保持率(%)を測定した。測定装置は東陽テクニカ製VHR−1を使用した。
【0181】
[残像特性(mV)]
上記と同様に操作して製造した液晶表示素子につき、100℃の環境温度において直流17Vの電圧を20時間印加し、直流電圧を切った直後の液晶セル内に残留した電圧(残留DC電圧(mV))を、フリッカ−消去法により求めた。
【0182】
[均一塗布性]
6インチシリコンウエハー上に直径約4.1μmの樹脂スペーサー(積水化学製、ミクロパール EX−0041−AC4)を散布し、120℃に設定したホットプレート上で10分間加熱処理を行い、固着スペーサーを有するシリコンウエハーを準備した。また前記液晶配向剤組成において、印刷用に調整した液晶配向剤(固形分濃度が7.0%〜10.0%)を液晶配向膜印刷機(日本写真印刷製)を用いて上記固着スペーサー付きシリコンウエハーに塗布し、80℃のホットプレート上で1分間プレベークして溶媒を除去した後、200℃のホットプレート上で10分間ポストベークして、平均膜厚800Åの塗膜を形成した。この塗膜を倍率20倍の顕微鏡で観察して均一塗布性の評価を行った。印刷ムラ及び固着スペーサー部分におけるハジキの有無により評価を実施し、印刷ムラと固着スペーサー部分のハジキが全く観察されないものを「A」(優良と判断)、わずかに塗布不良が観察されるが、ほぼ塗布不良がないと判断できるものを「B」(良好と判断)、印刷ムラと固着スペーサー部分のはじきのいずれか一方でも多数観察されたものを「C」(不良と判断)とした。
【0183】
[耐光性]
カーボンアークを光源とするウェザーメーターで3,000時間照射後の電圧保持率を上記同様に操作して測定し、照射前の測定値と比べて電圧保持率の変化量が0.5%以下の場合を「A」(優良と判断)、0.5%を超えて1%以下の場合を「B」(良好と判断)、1%を超えて3%以下の場合を「C」(やや良好と判断)、3%を超える場合を「D」(不良と判断)とした。
【0184】
【表1】

【0185】
表1の結果から明らかなように、実施例1〜13の液晶配向剤を用いて形成した液晶配向膜を備える液晶表示素子は、良好な液晶応答速度を示した。ポリイミド又はポリシロキサンを含有する当該液晶配向剤から形成された液晶配向膜を備える液晶表示素子は高い電圧保持率を示した。また、ポリアミック酸又はメタクリル重合体を含有する当該液晶配向剤は優れた均一塗布性を示した。さらに、ポリシロキサン又はポリアミック酸を含有する当該液晶配向剤から形成された液晶配向膜を備える液晶表示素子は優れた残像特性を示した。ポリシロキサンを含有する当該液晶配向剤から形成された液晶配向膜を備える液晶表示素子は優れた耐光性を示した。従って、当該液晶配向剤は液晶表示素子の高速応答性を可能とし、かつポリマー主鎖構造を適宜選択する事で、所望の特性(電圧保持率、残像特性、均一塗布性、耐光性)をより優れたものとすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0186】
本発明によれば、高速応答が可能であり、かつ電圧保持率、残像特性、耐光性等の諸性能に優れた液晶表示素子を作製することができ、均一塗布性にも優れる液晶配向剤を提供できる。従って、当該液晶表示素子はTN、STN、IPS、FFS、Ht−VA(VA−IPS)、VA(MVA、PVA、光垂直配向、PSA等の方式を含む)等の駆動モードにおいても好適に適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
[A]ポリアミック酸、ポリイミド、(メタ)アクリル重合体、ポリシロキサン及びポリアミック酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種の重合体を含有し、かつ上記重合体が下記式(1)で表される基を有する液晶配向剤。
【化1】

(式(1)中、
は、メチレン基、炭素数2〜30のアルキレン基、−(C2bO)−、フェニレン基又はシクロヘキシレン基である。bは、0〜20の整数である。cは、0〜10の整数である。但し、これらの基の水素原子の一部又は全部は、置換されていてもよい。
は、炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合、エーテル結合、エステル結合又はアミド結合を含む連結基である。
は、少なくとも2個の単環構造を有する基である。
aは、0又は1の整数である。)
【請求項2】
上記Rが、下記式(2)で表される基である請求項1に記載の液晶配向剤。
【化2】

(式(2)中、
及びRは、それぞれ独立してフェニレン基、ビフェニレン基、ナフタレン基、シクロヘキシレン基、ビシクロヘキシレン基、シクロへキシレンフェニレン基又は複素環である。但し、これらの基の水素原子の一部又は全部は、置換されていてもよい。
は、メチレン基、炭素数2〜10のアルキレン基、炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合、エーテル結合、エステル結合又は複素環を含む連結基である。但し、上記連結基の水素原子の一部又は全部は、置換されていてもよい。
は、水素原子、シアノ基、フッ素原子、トリフルオロメチル基、アルコキシカルボニル基、アルキル基、アルコキシ基、トリフルオロメトキシ基又はアルキルカルボニルオキシ基である。
bは、0又は1である。cは、1〜9の整数である。但し、Rが複数の場合、複数のRは同一でも異なっていてもよい。)
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の液晶配向剤から形成される液晶配向膜。
【請求項4】
請求項3に記載の液晶配向膜を備える液晶表示素子。

【公開番号】特開2012−208471(P2012−208471A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−10523(P2012−10523)
【出願日】平成24年1月20日(2012.1.20)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】