説明

液滴吐出ヘッドの制御方法、描画方法及び液滴吐出装置

【課題】吐出量を精度良く制御できる液滴吐出ヘッドの制御方法、描画方法及び液滴吐出装置を提供する。
【解決手段】液滴吐出ヘッド15のキャビティを加圧して、キャビティと連通するノズル31から微小液滴36を基板8に吐出して塗布する液滴吐出装置に係る。液滴吐出装置1は、液滴吐出ヘッド15と基板8とを相対移動するキャリッジ13とステージ4とを備える。液滴吐出ヘッド15は、キャビティを加圧する圧電素子を備えている。圧電素子は、ノズル31から微小液滴36を吐出しないとき、ノズル31から微小液滴36が吐出しない程度に、キャビティを複数回連続して加圧して、キャビティ内の機能液を圧力変動させる。液滴吐出ヘッド15に接する空気の流れ37の風速に合わせて、圧電素子は、キャビティを加圧する圧力の周波数を、変更して加圧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出ヘッドの制御方法、描画方法及び液滴吐出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ワークに対して液滴を吐出する装置として、インクジェット式の液滴吐出装置が知られている。液滴吐出装置は、基板等のワークを載置してワークを一方向に移動させるテーブルと、テーブルの上方位置において、テーブルの移動方向と直交する方向に配置されるガイドレールに沿って移動するキャリッジとを備えている。キャリッジはインクジェットヘッド(以下、液滴吐出ヘッドと称す)を配置し、ワークに対して液滴を吐出して、塗布していた。
【0003】
ワークに対して、液滴にして吐出して塗布する機能液は、各種の材料が用いられている。機能液は、温度により粘度の変わる物が多く、粘度が変わることにより流体抵抗が変化する。流体抵抗が変わることにより、液滴吐出ヘッド内の流路を流れる機能液の流速が変化する。機能液の流速が変化することにより、1ドットあたりの吐出量が変動し、所望する量の機能液を塗布することが困難であった。
【0004】
この課題を解決するために、特許文献1において、1ドットあたりの吐出量を制御する方法が開示されている。これによれば、液滴吐出ヘッドのキャビティを加圧する圧電素子を駆動する駆動波形と、駆動電圧と、吐出する液体の温度を制御するものであった。また、液体の温度を制御するために、液滴吐出ヘッド、供給パイプ、タンクにヒータを設置していた。
【0005】
【特許文献1】特開2003−26679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
液滴吐出ヘッドのキャビティを加圧するとき、圧電素子の動作に加えられるエネルギの一部は、熱に変換し、液滴吐出ヘッドの温度を上昇させる要因となっている。また、圧電素子が駆動されていないとき、圧電素子は発熱せず、液滴吐出ヘッドは放熱するため、温度が変動する要因となっている。液滴吐出ヘッド、供給パイプ、タンクにヒータを用いて加熱する方法は、装置を暖め、短い時間で液温を所定の温度にするのに有効であった。一方、液滴吐出ヘッドの動作による温度変動を、ヒータ加熱で一定の温度にする方法では、液温の変動に追従した制御をなし得ない場合があった。
【0007】
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたもので、その目的は、吐出量を精度良く制御できる液滴吐出ヘッドの制御方法、描画方法及び液滴吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の液滴吐出装置は、液滴吐出ヘッドのキャビティを加圧して、キャビティと連通するノズルから機能液をワークに吐出する液滴吐出装置であって、液滴吐出ヘッドとワークとを相対移動するテーブルとを備え、液滴吐出ヘッドは、キャビティを加圧する加圧部を備え、加圧部は、ノズルから機能液が吐出しないとき、ノズルから機能液が吐出しない程度に、キャビティを複数回連続して加圧して、機能液を圧力変動させ、加圧部は、キャビティを加圧する圧力の周波数を、変更して加圧することを特徴とする。
【0009】
この液滴吐出装置によれば、液滴吐出装置は、キャビティと、キャビティと連通するノズルとを有する液滴吐出ヘッドを備えている。また、液滴吐出ヘッドは、キャビティを加圧する加圧部を備え、キャビティを加圧してノズルから機能液を吐出する。そして、液滴吐出装置は、テーブルを備え、液滴吐出ヘッドとワークとを相対移動することにより、ワークの所望の場所に機能液を吐出して塗布する。また、加圧部は、ノズルから機能液が吐出しない程度に、キャビティを複数回連続して加圧し、機能液を圧力変動させる。
【0010】
機能液は、温度が変わると粘性が変わる為、液滴吐出ヘッド内で、機能液に圧力が加わり、ノズル等の流路を通過するとき、流体抵抗が変化して、ノズルから吐出される機能液の吐出量が変化する。従って、温度変化が少ない状態にて吐出する方が、温度変化が大きい場合に比べて、吐出量を精度良く制御して、吐出することができる。
【0011】
加圧部を動作しない場合には、液滴吐出ヘッドは、放熱して温度が下がる。一方、機能液を吐出しない程度に加圧部を動作する場合には、加圧部により加圧するときのエネルギの一部が熱に変換されて、液滴吐出ヘッドが発熱する。そして、発熱する液滴吐出ヘッドの温度は下がり難くなる。
【0012】
加圧部は、ノズルから機能液を吐出しないとき、ノズルから機能液が吐出しない程度に、キャビティを複数回連続して加圧して、機能液を圧力変動させ、加圧部は、キャビティを加圧する圧力における、圧力変動の周波数を、変更して加圧する。
【0013】
加圧部がキャビティを加圧するとき、圧力変動の周波数を、変更することにより、加圧部が吐出ヘッドに加えるエネルギを変更することが可能である。加圧部が吐出ヘッドに加えるエネルギの量が複数の段階で変更するとき、吐出ヘッドが放熱する熱量に相当するエネルギに近いエネルギを供給することにより、吐出ヘッドの温度を一定に保ち易くなる。
【0014】
一方、ノズルから機能液が吐出しないとき、加圧部が液滴吐出ヘッドに加えるエネルギの量が1種類しかない場合には、予め決められた量のエネルギを液滴吐出ヘッドに供給することとなる。このとき、液滴吐出ヘッドが放出するエネルギ量は、液滴吐出ヘッドの周囲を流動する流体の温度及び流速により異なる為、液滴吐出ヘッドが放出するエネルギ量と、液滴吐出ヘッドに供給するエネルギ量とが異なることがある。その結果、液滴吐出ヘッドの温度は、液滴吐出ヘッドの周囲を流動する流体の状態により変動してしまう。
【0015】
従って、液滴吐出ヘッドの温度に応じて、加圧部がキャビティに加えるエネルギの量を変更する方が、加圧部がキャビティに加えるエネルギの量が1種類しかない場合に比べて、液滴吐出ヘッドの温度を一定に保ち易くなる。その結果、吐出量を精度良く制御して吐出することができる。
【0016】
本発明の液滴吐出装置は、液滴吐出装置が発熱する熱を移動して、除去する気体の流れを生成する送風部を備え、ノズルから機能液が吐出しないとき、風速の遅い場所に液滴吐出ヘッドが、位置するときに、加圧部が、キャビティを加圧する圧力の周波数に比べて、風速の早い場所に液滴吐出ヘッドが位置するとき、加圧部は、キャビティを加圧する圧力の周波数を高くして、キャビティを加圧することを特徴とする。
【0017】
ここで、風速とは、液滴吐出装置に存在する気体が流れるときの流体の流速を示す。
この液滴吐出装置によれば、液滴吐出装置は、送風部を備えており、液滴吐出装置の内部に流体が流れることにより、液滴吐出装置が発熱する熱を、液滴吐出装置から移動して、除去する。液滴吐出ヘッドが、風速の遅い場所に位置するときに比べて、液滴吐出ヘッドが、風速の早い場所に位置する場合の方が、液滴吐出ヘッドが発熱する熱が、液滴吐出ヘッドから早く除去され、早く冷却される。ここで、流体は、空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスの流体が含まれる。
【0018】
同じ熱容量の液滴吐出ヘッドにおいて、液滴吐出ヘッドを一定の温度に保つ為には、遅く冷却される液滴吐出ヘッドに比べて、早く冷却される液滴吐出ヘッドに大きな熱量に相当するエネルギの供給が必要となる。
【0019】
加圧部は、キャビティを加圧する圧力における、圧力変動の周波数を高くした方が、圧力変動の周波数を小さくする場合に比べて、大きなエネルギが供給できる。供給されるエネルギの一部が熱に変換されることから、加圧部は、キャビティを加圧する圧力における、圧力変動の周波数を高くした方が、液滴吐出ヘッドに大きな熱量の熱を供給することができる。
【0020】
従って、風速の遅い場所に液滴吐出ヘッドが、位置するときに比べて、風速の早い場所に液滴吐出ヘッドが位置するとき、加圧部は、キャビティを加圧する圧力における、圧力変動の周波数を高くする方が、液滴吐出ヘッドの温度を一定に保ち易くなる。その結果、吐出量を精度良く制御して吐出することができる。
【0021】
上記課題を解決するために、本発明の液滴吐出装置は、上記に記載の液滴吐出装置であって、液滴吐出ヘッドを複数備え、ノズルから機能液が吐出しないとき、風速の遅い場所に位置する液滴吐出ヘッドの加圧部が、キャビティを加圧する圧力の周波数に比べて、風速の早い場所に位置する液滴吐出ヘッドの加圧部は、キャビティを加圧する圧力の周波数を高くして、キャビティを加圧することを特徴とする。
【0022】
この液滴吐出装置によれば、液滴吐出ヘッドを複数備えている。液滴吐出装置に流れる気体の風速は一様でなく、流れる気体の風速が早い場所と遅い場所がある。複数の液滴吐出ヘッドを移動するとき、流れる気体の風速が早い場所に位置する液滴吐出ヘッドと遅い場所に位置する液滴吐出ヘッドが存在する。流れる気体の風速が早い場所に位置する液滴吐出ヘッドは、遅い場所に位置する液滴吐出ヘッドに比べて、熱が移動して除去され易いことから、早く冷却される。
【0023】
同じ熱容量の液滴吐出ヘッドにおいて、液滴吐出ヘッドを一定の温度に保つ為には、遅く冷却される液滴吐出ヘッドに比べて、早く冷却される液滴吐出ヘッドに大きな熱量に相当するエネルギの供給が必要となる。
【0024】
従って、複数の液滴吐出ヘッドの中で、風速の遅い場所に位置する液滴吐出ヘッドに比べて、風速の早い場所に位置する液滴吐出ヘッドの加圧部は、キャビティを加圧する圧力における、圧力変動の周波数を高くする方が、複数の液滴吐出ヘッドの温度を一定に保ち易くなる。その結果、吐出量を精度良く制御して吐出することができる。
【0025】
本発明の液滴吐出装置は、液滴吐出ヘッドの温度を測定する測定部を備え、ノズルから機能液を吐出しないとき、液滴吐出ヘッドの温度が高いときに、加圧部がキャビティを加圧する圧力の周波数に比べて、液滴吐出ヘッドの温度が低いときには、加圧部がキャビティを加圧する圧力の周波数を高くして、キャビティを加圧することを特徴とする。
【0026】
この液滴吐出装置によれば、液滴吐出装置は、測定部を備え、液滴吐出ヘッドの温度を測定する。そして、ノズルから機能液が吐出しないとき、キャビティを加圧する。液滴吐出ヘッドは、液滴吐出ヘッドの温度が相対的に高いときと、低いときがある。測定部が、液滴吐出ヘッドの温度を測定し、液滴吐出ヘッドの温度が高いときには、加圧部は、低い周波数でキャビティを加圧する。また、液滴吐出ヘッドの温度が低いときには、加圧部は、高い周波数でキャビティを加圧する。
【0027】
加圧部は、低い周波数でキャビティを加圧するときに比べて、高い周波数でキャビティを加圧する方が、高いエネルギを液滴吐出ヘッドに供給できる。エネルギの一部が、熱に変換されることから、加圧部は、低い周波数でキャビティを加圧するときに比べて、高い周波数でキャビティを加圧する方が、液滴吐出ヘッドに大きな熱量を供給できる。
【0028】
液滴吐出ヘッドの温度が低いときには、低い周波数でキャビティを加圧するときに比べて、高い周波数でキャビティを加圧する方が、短い時間で、液滴吐出ヘッドの温度を上昇することができる。一方、液滴吐出ヘッドの温度が高いときには、低い周波数でキャビティを加圧して、小さい熱量で加熱することにより、液滴吐出ヘッドの温度が上昇しすぎることを防止できる。従って、液滴吐出ヘッドの温度を一定に保ち易くなる。その結果、吐出量を精度良く制御して吐出することができる。
【0029】
上記課題を解決するために、本発明の液滴吐出装置は、上記に記載の液滴吐出装置であって、液滴吐出ヘッドを複数備え、ノズルから機能液が吐出しないとき、温度の高い液滴吐出ヘッドの加圧部が、キャビティを加圧する圧力の周波数に比べて、温度の低い液滴吐出ヘッドの加圧部は、キャビティを加圧する圧力の周波数を高くして、キャビティを加圧することを特徴とする。
【0030】
この液滴吐出装置によれば、液滴吐出ヘッドを複数備えている。液滴吐出装置における液滴吐出ヘッドの温度は一様でなく、温度の低い液滴吐出ヘッドと温度の高い液滴吐出ヘッドがある。測定部が、個々の液滴吐出ヘッドの温度を測定し、温度の高い液滴吐出ヘッドにおいて、加圧部は、低い周波数でキャビティを加圧する。また、温度の低い液滴吐出ヘッドにおいて、加圧部は、高い周波数でキャビティを加圧する。
【0031】
複数の液滴吐出ヘッドにおいて、液滴吐出ヘッドの温度が低いときには、低い周波数でキャビティを加圧するときに比べて、高い周波数でキャビティを加圧する方が、大きなエネルギを供給できることから、短い時間で、液滴吐出ヘッドの温度を上昇することができる。一方、液滴吐出ヘッドの温度が高いときには、低い周波数でキャビティを加圧して、小さい熱量で加熱することにより、液滴吐出ヘッドの温度が上昇しすぎることを防止できる。従って、複数の液滴吐出ヘッドの温度を一定に保ち易くなる。その結果、吐出量を精度良く制御して吐出することができる。
【0032】
本発明の液滴吐出装置では、加圧部は、キャビティを加圧する圧力の周波数を、変更して加圧する換わりに、キャビティを加圧する圧力の振幅を、変更して加圧することを特徴とする。
【0033】
この液滴吐出装置によれば、ノズルから機能液が吐出しないとき、加圧部は、圧力変動の圧力振幅を、変更して加圧する。加圧部が、キャビティを加圧するとき、大きく加圧するには、大きなエネルギを要し、小さく加圧するには、小さなエネルギを要する。従って、キャビティを加圧するときの圧力変動の圧力振幅と供給するエネルギには相関関係がある。また、液滴吐出ヘッドに供給するエネルギの一部が熱に変換されることから、加圧部が、圧力変動の圧力振幅を、変更して加圧することにより、液滴吐出ヘッドに供給する熱量を、液滴吐出ヘッドの温度に応じて供給することができる。
【0034】
本発明の液滴吐出装置では、加圧部は、キャビティを加圧する圧力の周波数を、変更して加圧する換わりに、キャビティを加圧する圧力における圧力変動のデューティー比を、変更して加圧することを特徴とする。
【0035】
ここで、圧力変動のデューティー比は、圧力変動の1波長内における、キャビティを加圧する時間の割合を示す。例えば、圧力変動のデューティー比が0.1のとき、1波長において、1波長の1割に相当する時間の間、キャビティを加圧することとなる。
【0036】
この液滴吐出装置によれば、ノズルから機能液を吐出しないとき、加圧部は、圧力変動のデューティー比を、複数の段階で変更して加圧する。加圧部が、キャビティを加圧するとき、長い時間の間、加圧するには、大きなエネルギを要し、短い時間の間、加圧するには、小さなエネルギを要する。従って、キャビティを加圧するときの圧力変動のデューティー比と供給するエネルギには相関関係がある。また、液滴吐出ヘッドに供給するエネルギの一部が熱に変換されることから、加圧部が、圧力変動のデューティー比を、複数の段階で変更して加圧することにより、液滴吐出ヘッドに供給する熱量を、液滴吐出ヘッドの温度に応じて、供給することができる。
【0037】
上記課題を解決するために、本発明の描画方法は、液滴吐出ヘッドの加圧部を用いて、キャビティを加圧して、キャビティと連通するノズルから機能液をワークに吐出して描画する描画方法であって、ノズルから機能液をワークに吐出する描画工程と、ノズルを洗浄する洗浄工程または、ノズルから吐出する機能液の吐出量を測定する吐出量測定工程または、ノズルから吐出しない待機工程などからなる保守工程とを有し、加圧部は、ノズルから機能液が吐出しないとき、ノズルから機能液が吐出しない程度に、キャビティを複数回連続して加圧し、機能液を圧力変動させ、描画工程と保守工程とでは、異なる周波数で加圧することを特徴とする。
【0038】
この描画方法によれば、描画方法は、キャビティと、キャビティと連通するノズルとを備えている液滴吐出ヘッドを用いる。また、液滴吐出ヘッドは、キャビティを加圧する加圧部を備え、キャビティを加圧してノズルから機能液を吐出する。また、この描画方法は、描画工程と保守工程とを有している。
【0039】
描画工程において、機能液をワークに吐出して描画する。保守工程は、洗浄工程、吐出量測定工程、待機工程などからなっている。洗浄工程では、フラッシングユニットに機能液を吐出して液滴吐出ヘッド内の機能液を入れ替えている。さらに、液滴吐出ヘッド内の流路に固形物が存在するとき、液滴吐出ヘッドは、機能液と一緒に固形物を吐出することにより、流路を洗浄する。さらに、ノズルが形成されている板状のノズルプレートを拭取って、清浄する。吐出量測定工程では、ノズルから吐出する機能液の吐出量を測定する。待機工程では、機能液を吐出せずに、待機する。
【0040】
機能液は、液の温度が変わると粘性が変わる為、液滴吐出ヘッド内で、機能液に圧力が加わり、ノズル等の流路を通過するとき、流体抵抗が変化して、ノズルから吐出される機能液の吐出量が変化する。従って、温度変化が少ない状態にて吐出する方が、温度変化が大きい場合に比べて、吐出量を精度良く制御して、吐出することができる。
【0041】
描画工程では、液滴吐出ヘッドと対向する場所に、ワークが存在し、保守工程では、液滴吐出ヘッドと対向する場所に、洗浄するための装置や吐出量を測定する装置などが存在する。描画工程及び保守工程において、液滴吐出ヘッドの周囲を気体が流れている。ただし、描画工程と保守工程とで、液滴吐出ヘッドと対向する場所に位置する物が異なることから、液滴吐出ヘッドの周囲における流体の流体抵抗が異なり、流れる気体の風速が異なる。又、空気制御装置から流れる気体の風速が異なることから、液滴吐出ヘッドの周囲に、流れる気体の風速が異なる。
【0042】
液滴吐出ヘッドに接触して流体が通過するとき、流体が液滴吐出ヘッドの熱を奪って冷却する。このとき、流速の早い流体の方が、流速の遅い流体に比べて、早く熱量を奪う為、流速の早い流体と接する液滴吐出ヘッドの方が早く冷却する。
【0043】
同じ熱容量の液滴吐出ヘッドにおいて、液滴吐出ヘッドを一定の温度に保つ為には、遅く冷却される液滴吐出ヘッドに比べて、早く冷却される液滴吐出ヘッドに大きな熱量に相当するエネルギの供給が必要となる。
【0044】
加圧部は、キャビティを加圧する圧力における、圧力変動の周波数を高くした方が、圧力変動の周波数を小さくする場合に比べて、大きなエネルギを供給できる。供給されるエネルギの一部が熱に変換されることから、加圧部は、キャビティを加圧する圧力における、圧力変動の周波数を高くした方が、液滴吐出ヘッドに大きな熱量の熱を供給することができる。
【0045】
従って、流速の遅い流体と接触する場所に、液滴吐出ヘッドが位置するときの工程に比べて、流速の早い流体と接触する場所に、液滴吐出ヘッドが位置する工程のとき、加圧部は、キャビティを加圧する圧力における、圧力変動の周波数を高くする方が、液滴吐出ヘッドの温度を一定に保ち易くなる。その結果、吐出量を精度良く制御して吐出することができる。
【0046】
上記課題を解決するために、本発明の描画方法は、複数の液滴吐出ヘッドの加圧部を用いて、キャビティを加圧して、キャビティと連通するノズルから機能液をワークに吐出して描画する描画方法であって、加圧部は、ノズルから機能液が吐出しないとき、ノズルから機能液が吐出しない程度に、キャビティを複数回連続して加圧し、機能液を圧力変動させ、風速の遅い場所に位置する液滴吐出ヘッドの加圧部が、キャビティを加圧する圧力の周波数に比べて、風速の早い場所に位置する液滴吐出ヘッドの加圧部は、キャビティを加圧する圧力の周波数を高くして、キャビティを加圧することを特徴とする。
【0047】
この描画方法によれば、液滴吐出ヘッドは、キャビティとキャビティと連通するノズルとキャビティを加圧する加圧部とを備えている。加圧部は、複数の液滴吐出ヘッドのキャビティを加圧して、ノズルから、機能液をワークに吐出して描画する。
【0048】
加圧部は、ノズルから機能液が吐出しないとき、ノズルから機能液が吐出しない程度に、キャビティを複数回連続して加圧して、機能液を圧力変動させる。このとき、キャビティを加圧するエネルギの一部が、熱に変換され、液滴吐出ヘッドが加熱される。
【0049】
複数の液滴吐出ヘッドを駆動するとき、各液滴吐出ヘッドが接する気体の風速は、液滴吐出ヘッド毎に異なる。例えば、液滴吐出ヘッドを、隙間無く複数並べて配置するとき、中央部は、気体が流れる空間が無く、端部に位置する液滴吐出ヘッドの近くには、気体が流れる空間が存在する。このとき、中央部は、気体が流れにくいことから風速が遅くなり、端部は、気体が流れ易いことから風速が早くなる。流れる気体の風速が早い場所に位置する液滴吐出ヘッドは、遅い場所に位置する液滴吐出ヘッドに比べて、熱が移動して除去され易いことから、早く冷却される。
【0050】
同じ熱容量の液滴吐出ヘッドにおいて、液滴吐出ヘッドを一定の温度に保つ為には、遅く冷却される液滴吐出ヘッドに比べて、早く冷却される液滴吐出ヘッドに大きな熱量の供給が必要となる。
【0051】
従って、複数の液滴吐出ヘッドの中で、風速の遅い場所に位置する液滴吐出ヘッドに比べて、風速の早い場所に位置する液滴吐出ヘッドの加圧部は、キャビティを加圧する圧力変動の周波数を高くする方が、複数の液滴吐出ヘッドの温度を一定に保ち易くなる。その結果、吐出量を精度良く制御して吐出することができる。
【0052】
上記課題を解決するために、本発明の描画方法は、液滴吐出ヘッドの加圧部を用いて、キャビティを加圧して、キャビティと連通するノズルから機能液をワークに吐出して描画する描画方法であって、加圧部は、ノズルから機能液が吐出しないとき、ノズルから機能液が吐出しない程度に、キャビティを複数回連続して加圧し、機能液を圧力変動させ、測定部を用いて、液滴吐出ヘッドの温度を測定し、液滴吐出ヘッドの温度が高いときに、加圧部がキャビティを加圧する圧力の周波数に比べて、液滴吐出ヘッドの温度が低いときには、加圧部がキャビティを加圧する圧力の周波数を高くして、キャビティを加圧することを特徴とする。
【0053】
この描画方法によれば、液滴吐出ヘッドは、キャビティとキャビティと連通するノズルとキャビティを加圧する加圧部と測定部とを備えている。加圧部は、複数の液滴吐出ヘッドのキャビティを加圧して、ノズルから、機能液をワークに吐出して描画する。測定部は、液滴吐出ヘッドの温度を測定する。
【0054】
加圧部は、ノズルから機能液が吐出しないとき、ノズルから機能液が吐出しない程度に、キャビティを複数回連続して加圧して、機能液を圧力変動させる。このとき、キャビティを加圧するエネルギの一部が、熱に変換され、液滴吐出ヘッドが加熱される。
【0055】
液滴吐出ヘッドは、液滴吐出ヘッドの温度が相対的に高いときと、低いときがある。測定部を用いて、液滴吐出ヘッドの温度を測定し、液滴吐出ヘッドの温度が高いときには、加圧部は、低い周波数でキャビティを加圧する。また、液滴吐出ヘッドの温度が低いときには、加圧部は、高い周波数でキャビティを加圧する。
【0056】
加圧部は、低い周波数でキャビティを加圧するときに比べて、高い周波数でキャビティを加圧する方が、高いエネルギを液滴吐出ヘッドに供給できる。エネルギの一部が、熱に変換されることから、加圧部は、低い周波数でキャビティを加圧するときに比べて、高い周波数でキャビティを加圧する方が、液滴吐出ヘッドに大きな熱量を供給できる。
【0057】
液滴吐出ヘッドの温度が低いときには、低い周波数でキャビティを加圧するときに比べて、高い周波数でキャビティを加圧する方が、短い時間で、液滴吐出ヘッドの温度を上昇することができる。一方、液滴吐出ヘッドの温度が高いときには、低い周波数でキャビティを加圧して、小さい熱容量で加熱することにより、液滴吐出ヘッドの温度が上昇しすぎることを防止できる。従って、液滴吐出ヘッドの温度を一定に保ち易くなる。その結果、吐出量を精度良く制御して吐出することができる。
【0058】
本発明の描画方法では、加圧部は、キャビティを加圧する圧力の周波数を、変更して加圧する換わりに、キャビティを加圧する圧力の振幅を、変更して加圧することを特徴とする。
【0059】
この描画方法によれば、ノズルから機能液が吐出しないとき、加圧部は、圧力変動の圧力振幅を、変更して加圧する。加圧部が、キャビティを加圧するとき、大きく加圧するには、大きなエネルギを要し、小さく加圧するには、小さなエネルギを要する。従って、キャビティを加圧するときの圧力変動の圧力振幅と供給するエネルギには相関関係がある。また、液滴吐出ヘッドに供給するエネルギの一部が熱に変換されることから、加圧部が、圧力変動の圧力振幅を、変更して加圧することにより、液滴吐出ヘッドに供給する熱量を、吐出ヘッドの温度に応じて供給することができる。
【0060】
本発明の描画方法では、加圧部は、キャビティを加圧する圧力の周波数を、変更して加圧する換わりに、キャビティを加圧する圧力における圧力変動のデューティー比を、変更して加圧することを特徴とする。
【0061】
この描画方法によれば、ノズルから機能液を吐出しないとき、加圧部は、圧力変動のデューティー比を、複数の段階で変更して加圧する。加圧部が、キャビティを加圧するとき、長い時間の間、加圧するには、大きなエネルギを要し、短い時間の間、加圧するには、小さなエネルギを要する。従って、キャビティを加圧するときの圧力変動のデューティー比と供給するエネルギには相関関係がある。また、液滴吐出ヘッドに供給するエネルギの一部が熱に変換されることから、加圧部が、圧力変動のデューティー比を、複数の段階で変更して加圧することにより、液滴吐出ヘッドに供給する熱量を、液滴吐出ヘッドの温度に応じて、供給することができる。
【0062】
上記課題を解決するために、本発明の液滴吐出ヘッドの制御方法は、液滴吐出ヘッドの加圧部を用いて、キャビティを加圧して、キャビティと連通するノズルから機能液をワークに吐出する液滴吐出ヘッドの制御方法であって、加圧部は、加圧制御部の駆動信号を受けて、キャビティを加圧して、機能液を圧力変動させ、液滴吐出ヘッドが、ノズルから機能液を吐出しないとき、加圧部は、ノズルから機能液が吐出しない程度に、キャビティを複数回連続して加圧し、加圧制御部は、キャビティを加圧する圧力の周波数を、変更して、加圧部を制御することを特徴とする。
【0063】
この液滴吐出ヘッドの制御方法によれば、液滴吐出ヘッドは、キャビティと、キャビティと連通するノズルとを備えている。また、液滴吐出ヘッドは、キャビティを加圧する加圧部を備え、キャビティを加圧してノズルから機能液を吐出する。この加圧部は、加圧制御部の駆動信号を受けて、キャビティを加圧する。そして、ノズルから機能液を吐出しない加圧部は、ノズルから機能液が吐出しない程度に、キャビティを複数回連続して加圧し、機能液を圧力変動させる。このとき、加圧制御部は、キャビティを加圧する圧力の周波数を、変更して、加圧部を制御する。
【0064】
機能液は、液の温度が変わると粘性が変わる為、液滴吐出ヘッド内で、機能液に圧力が加わり、ノズル等の流路を通過するとき、流体抵抗が変化して、ノズルから吐出される機能液の吐出量が変化する。従って、温度変化が少ない状態にて吐出する方が、温度変化が大きい場合に比べて、吐出量を精度良く制御して、吐出することができる。
【0065】
加圧部を動作しない場合には、液滴吐出ヘッドは、放熱して温度が下がる。一方、機能液を吐出しない程度に加圧部を動作する場合には、加圧部により加圧するときのエネルギの一部が熱に変換されて、液滴吐出ヘッドが発熱する。そして、発熱する液滴吐出ヘッドの温度は下がり難くなる。
【0066】
加圧部は、ノズルから機能液が吐出しないとき、ノズルから機能液が吐出しない程度に、キャビティを複数回連続して加圧して、機能液を圧力変動させ、加圧部は、キャビティを加圧する圧力における、圧力変動の周波数を、変更して加圧する。
【0067】
加圧部がキャビティを加圧するとき、加圧制御部がキャビティを加圧する圧力の周波数を、変更することにより、加圧部が液滴吐出ヘッドに加えるエネルギを変更することが可能である。加圧部が液滴吐出ヘッドに加えるエネルギの量が複数の段階で変更するとき、液滴吐出ヘッドが放熱する熱量に相当するエネルギに近いエネルギを供給することにより、液滴吐出ヘッドの温度を一定に保ち易くなる。
【0068】
一方、ノズルから機能液を吐出しないとき、加圧部が液滴吐出ヘッドに加えるエネルギの量が1種類しかない場合には、予め決められた量のエネルギを液滴吐出ヘッドに供給することとなる。このとき、液滴吐出ヘッドが放出するエネルギ量と、液滴吐出ヘッドに供給するエネルギ量とが異なることがある。この場合において、液滴吐出ヘッドの温度が目標とする温度になるまで、加圧部を動作し、エネルギを供給する。そして、液滴吐出ヘッドの温度が上昇し過ぎるのを防止するため、液滴吐出ヘッドの温度が目標とする温度で、加圧部を停止し、エネルギの供給を停止する。エネルギの供給を停止すると、液滴吐出ヘッドが放熱して、液滴吐出ヘッドの温度が下がる。所定の温度まで降下するとき、再度、エネルギを供給する。つまり、液滴吐出ヘッドへのエネルギ供給と供給停止が反復される頻度が多くなり、液滴吐出ヘッドの温度が変動してしまう。
【0069】
従って、液滴吐出ヘッドの温度に応じて、加圧制御部がキャビティを加圧する圧力の周波数を変更し、加圧部がキャビティに加えるエネルギの量を変更する方が、加圧部がキャビティに加えるエネルギの量が1種類しかない場合に比べて、液滴吐出ヘッドの温度を一定に保ち易くなる。その結果、吐出量を精度良く制御して吐出することができる。
【0070】
本発明の液滴吐出ヘッドの制御方法では、加圧制御部は、複数の液滴吐出ヘッドを同時に制御し、加圧部がノズルから機能液を吐出しないとき、風速の遅い場所に位置する液滴吐出ヘッドの加圧部を用いて、キャビティを加圧する圧力の周波数に比べて、風速の早い場所に位置する液滴吐出ヘッドの加圧部が、キャビティを加圧する圧力の周波数を高くする様に、加圧制御部が加圧部を制御することを特徴とする。
【0071】
この液滴吐出ヘッドの制御方法によれば、加圧制御部は、複数の液滴吐出ヘッドを同時に制御する。
【0072】
複数の液滴吐出ヘッドを駆動するとき、各液滴吐出ヘッドが接する気体の風速は、液滴吐出ヘッド毎に異なる。例えば、液滴吐出ヘッドを、隙間無く複数並べて配置するとき、中央部は、気体が流れる空間が無く、端部に位置する液滴吐出ヘッドの近くには、気体が流れる空間が存在する。このとき、中央部は、気体が流れにくいことから風速が遅くなり、端部は、気体が流れ易いことから風速が早くなる。流れる気体の風速が早い場所に位置する液滴吐出ヘッドは、遅い場所に位置する液滴吐出ヘッドに比べて、熱が移動して除去され易いことから、早く冷却される。
【0073】
同じ熱容量の液滴吐出ヘッドにおいて、液滴吐出ヘッドを一定の温度に保つ為には、遅く冷却される液滴吐出ヘッドに比べて、早く冷却される液滴吐出ヘッドに大きな熱量に相当するエネルギの供給が必要となる。
【0074】
従って、複数の液滴吐出ヘッドの中で、風速の遅い場所に位置する液滴吐出ヘッドに比べて、風速の早い場所に位置する液滴吐出ヘッドの加圧部が、キャビティを加圧する圧力の周波数を高くする方が、複数の液滴吐出ヘッドの温度を一定に保ち易くなる。この様に、加圧制御部が、複数の液滴吐出ヘッドを制御する結果、吐出量を精度良く制御して吐出することができる。
【0075】
本発明の液滴吐出ヘッドの制御方法は、ノズルから機能液を吐出しないとき、測定部を用いて、液滴吐出ヘッドの温度を測定し、液滴吐出ヘッドの温度が高いときに、加圧部がキャビティを加圧する圧力の周波数に比べて、液滴吐出ヘッドの温度が低いときには、加圧部がキャビティを加圧する圧力の周波数を高くする様に、加圧制御部が加圧部を制御することを特徴とする。
【0076】
この液滴吐出ヘッドの制御方法によれば、液滴吐出ヘッドは、液滴吐出ヘッドの温度を測定する測定部を備える。
【0077】
液滴吐出ヘッドは、液滴吐出ヘッドの温度が相対的に高いときと、低いときがある。測定部を用いて、液滴吐出ヘッドの温度を測定し、液滴吐出ヘッドの温度が高いときには、加圧部は、低い周波数でキャビティを加圧する。また、液滴吐出ヘッドの温度が低いときには、加圧部は、高い周波数でキャビティを加圧する。
【0078】
加圧部は、低い周波数でキャビティを加圧するときに比べて、高い周波数でキャビティを加圧する方が、高いエネルギを液滴吐出ヘッドに供給できる。エネルギの一部が、熱に変換されることから、加圧部は、低い周波数でキャビティを加圧するときに比べて、高い周波数でキャビティを加圧する方が、液滴吐出ヘッドに大きな熱量を供給できる。
【0079】
液滴吐出ヘッドの温度が低いときには、低い周波数でキャビティを加圧するときに比べて、高い周波数でキャビティを加圧する方が、短い時間で、液滴吐出ヘッドの温度を上昇することができる。一方、液滴吐出ヘッドの温度が高いときには、低い周波数でキャビティを加圧して、小さい熱量で加熱することにより、液滴吐出ヘッドの温度が上昇しすぎることを防止できる。従って、液滴吐出ヘッドの温度を一定に保ち易くなる。この様に、加圧制御部が、液滴吐出ヘッドを制御する結果、吐出量を精度良く制御して吐出することができる。
【0080】
本発明の液滴吐出ヘッドの制御方法は、加圧部が、キャビティを加圧する圧力の周波数を、変更して加圧する換わりに、キャビティを加圧する圧力の振幅を、変更して加圧する様に、加圧制御部が加圧部を制御することを特徴とする。
【0081】
この液滴吐出ヘッドの制御方法によれば、ノズルから機能液が吐出しないとき、加圧制御部が加圧部を制御して、加圧部は、圧力変動の圧力振幅を、変更して加圧する。加圧部が、キャビティを加圧するとき、大きく加圧するには、大きなエネルギを要し、小さく加圧するには、小さなエネルギを要する。従って、キャビティを加圧するときの圧力変動の圧力振幅と供給するエネルギには相関関係がある。また、液滴吐出ヘッドに供給するエネルギの一部が熱に変換されることから、加圧部が、圧力変動の圧力振幅を、変更して加圧することにより、液滴吐出ヘッドに供給する熱量を、液滴吐出ヘッドの温度に応じて供給することができる。
【0082】
本発明の液滴吐出ヘッドの制御方法は、加圧部が、キャビティを加圧する圧力の周波数を、変更して加圧する換わりに、キャビティを加圧する圧力における圧力変動のデューティー比を、変更して加圧する様に、加圧制御部が加圧部を制御することを特徴とする。
【0083】
この液滴吐出ヘッドの制御方法によれば、ノズルから機能液が吐出しないとき、加圧制御部が加圧部を制御して、加圧部は、圧力変動のデューティー比を、複数の段階で変更して加圧する。加圧部が、キャビティを加圧するとき、長い時間の間、加圧するには、大きなエネルギを要し、短い時間の間、加圧するには、小さなエネルギを要する。従って、キャビティを加圧するときの圧力変動のデューティー比と供給するエネルギには相関関係がある。また、液滴吐出ヘッドに供給するエネルギの一部が熱に変換されることから、加圧部が、圧力変動のデューティー比を、複数の段階で変更して加圧することにより、液滴吐出ヘッドに供給する熱量を、液滴吐出ヘッドの温度に応じて、供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0084】
以下、本発明を具体化した実施例について図面に従って説明する。
尚、各図面における各部材は、各図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせて図示している。
(第1の実施形態)
本実施形態では、本発明の特徴的な液滴吐出装置と、この液滴吐出装置を用いて液滴を吐出する場合の例について図1〜図11に従って説明する。
【0085】
(液滴吐出装置)
最初に、ワークに液滴を吐出して塗布する液滴吐出装置1について図1〜図7に従って説明する。液滴吐出装置に関しては様々な種類の装置があるが、インクジェット法を用いた装置が好ましい。インクジェット法は微小液滴の吐出が可能であるため、微細加工に適している。
【0086】
図1は、液滴吐出装置1の構成を示す概略斜視図である。液滴吐出装置1により、機能液が吐出され塗布される。
図1に示すように、液滴吐出装置1には、直方体形状に形成される基台2が備えられている。本実施形態では、この基台2の長手方向をY方向とし、同Y方向と直交する方向をX方向とする。
【0087】
基台2の上面2aには、Y方向に延在する一対の案内レール3a,3bが同Y方向全幅にわたり凸設されている。その基台2の上側には、一対の案内レール3a,3bに対応する図示しない直動機構を備えた走査手段を構成するテーブルとしてのステージ4が取付けられている。そのステージ4の直動機構は、例えば案内レール3a,3bに沿ってY方向に延びるネジ軸(駆動軸)と、同ネジ軸と螺合するボールナットを備えたネジ式直動機構であって、その駆動軸が、所定のパルス信号を受けてステップ単位で正逆転するY軸モータ(図示しない)に連結されている。そして、所定のステップ数に相対する駆動信号がY軸モータに入力されると、Y軸モータが正転又は逆転して、ステージ4が同ステップ数に相当する分だけ、Y軸方向に沿って所定の速度で往動又は、復動する(Y方向に走査する)ようになっている。
【0088】
さらに、基台2の上面2aには、案内レール3a,3bと平行に主走査位置検出装置5が配置され、ステージ4の位置が計測できるようになっている。
【0089】
基台2において、案内レール3aと主走査位置検出装置5との間、及び案内レール3bと主走査位置検出装置5との間には、通気孔6が形成されている。そして、液滴吐出装置1の上部の空気が、通気孔6を通過して、床の方向(図中Z方向の逆方向)に流動するようになっている。
【0090】
そのステージ4の上面には、載置面7が形成され、その載置面7には、図示しない吸引式の基板チャック機構が設けられている。そして、載置面7にワークとしての基板8を載置すると、基板チャック機構によって、その基板8が載置面7の所定位置に位置決め固定されるようになっている。
【0091】
基台2のX方向両側には、一対の支持台9a,9bが立設され、その一対の支持台9a,9bには、X方向に延びる案内部材10が架設されている。
【0092】
案内部材10の上側には、吐出する液体を供給可能に収容する収容タンク11が配設されている。一方、その案内部材10の下側には、X方向に延びる案内レール12がX方向全幅にわたり凸設されている。
【0093】
案内レール12に沿って移動可能に配置されるテーブルとしてのキャリッジ13は、略直方体形状に形成されている。そのキャリッジ13の直動機構は、例えば案内レール12に沿ってX方向に延びるネジ軸(駆動軸)と、同ネジ軸と螺合するボールナットを備えたネジ式直動機構であって、その駆動軸が、所定のパルス信号を受けてステップ単位で正逆転するX軸モータ(図示しない)に連結されている。そして、所定のステップ数に相当する駆動信号をX軸モータに入力すると、X軸モータが正転又は逆転して、キャリッジ13が同ステップ数に相当する分だけX方向に沿って往動又は復動する(X方向に走査する)。案内部材10とキャリッジ13との間には、副走査位置検出装置14が配置され、キャリッジ13の位置が計測できるようになっている。そして、キャリッジ13の下面(ステージ4側の面)には、液滴吐出ヘッド15が凸設されている。
【0094】
基台2の上側であって、ステージ4の片側の一方(図中Y方向の逆方向)には、クリーニングユニット16が配置されている。クリーニングユニット16は、保守ステージ17と、保守ステージ17の上に配置されている、フラッシングユニット18、キャッピングユニット19、ワイピングユニット20、重量測定装置21等により構成されている。
【0095】
保守ステージ17は、案内レール3a,3b上に位置し、ステージ4と同様の直動機構を備えている。主走査位置検出装置5を用いて位置を検出し、直動機構で移動することにより、所望の場所に移動し、停止することが可能となっている。
【0096】
フラッシングユニット18は、液滴吐出ヘッド15内の流路を洗浄するとき、液滴吐出ヘッド15から吐出する液滴を受ける装置である。液滴吐出ヘッド15内に固形物が混入した場合に、固形物を液滴吐出ヘッド15から排除するため、液滴吐出ヘッド15から液滴を吐出して洗浄する。この液滴を受ける機能をフラッシングユニット18が行う。本実施形態では、7個の受け皿が配置され、7個の液滴吐出ヘッド15からフラッシングユニット18に液滴を吐出できるようになっている。
【0097】
キャッピングユニット19は、液滴吐出ヘッド15に蓋をする装置である。液滴吐出ヘッド15から吐出する液滴は、揮発性を有する場合があり、液滴吐出ヘッド15に内在する機能液の溶媒がノズルから揮発すると、機能液の粘度が変わり、ノズルが目詰まりすることがある。キャッピングユニット19は、液滴吐出ヘッド15に蓋をすることで、ノズルが目詰まりすることを防止するようになっている。
【0098】
ワイピングユニット20は、液滴吐出ヘッド15のノズルが配置されているノズルプレートを拭く装置である。ノズルプレートは、液滴吐出ヘッド15において、基板8と対向する側の面に配置されている部材である。ノズルプレートに液滴が付着しているとき、ノズルプレートに付着している液滴と基板8とが接触して、基板8において、予定外の場所に液滴が付着してしまうことがある。ワイピングユニット20は、ノズルプレートを拭くことにより、基板8において、予定外の場所に液滴が付着してしまうことを防止している。
【0099】
重量測定装置21には、電子天秤が7台設置され、各電子天秤には、受け皿が配置されている。液滴が、液滴吐出ヘッド15から受け皿に吐出され、電子天秤が液滴の重量を測定するようになっている。受け皿は、スポンジ状の吸収体を備え、吐出される液滴が、跳ねて、受け皿の外に出ないようになっている。電子天秤は、液滴吐出ヘッド15が液滴を吐出する前後で、受け皿の重量を測定する。吐出前後の受け皿の重量の差分を演算して、吐出する液滴の重量を測定する。
【0100】
保守ステージ17が、案内レール3a,3bに沿って移動することにより、液滴吐出ヘッド15と対向する場所に、フラッシングユニット18、キャッピングユニット19、ワイピングユニット20、重量測定装置21のいずれか一つの装置が配置されるようになっている。
【0101】
キャリッジ13が、案内レール12に沿って、X方向に移動することにより、液滴吐出ヘッド15は、クリーニングユニット16、または、基板8と対向する場所に移動し、液滴を吐出することができるようになっている。
【0102】
液滴吐出装置1は、四隅に支柱22を備え、上部(図中Z方向)に、送風部としての空気制御装置23を備えている。空気制御装置23は、ファン、フィルタ、冷暖房装置、湿度調整装置などを備えている。ファン(送風機)は、工場内の空気を取り込んで、フィルタを通過することにより、空気内の塵、埃を除去し、清浄化された空気を供給する。
【0103】
冷暖房装置は、液滴吐出装置1の雰囲気温度を所定の温度範囲に保持するように、供給する空気の温度を制御する装置である。湿度調整装置は、液滴吐出装置1の雰囲気湿度を所定の湿度範囲に保持するように、空気を除湿、または加湿して供給する空気の湿度を制御する装置である。
【0104】
4本の支柱22の間には、シート24が配置され、空気の流れを遮断するようになっている。空気制御装置23から供給される空気は、空気制御装置23から床25に向かって(図中Z方向の反対方向)流れ、シート24に囲まれる空間内の塵や埃は、床25に向かって流動する。それにより、基板8に塵や埃が付着しにくいようになっている。
【0105】
図2は、液滴吐出ヘッド15の構造を説明するための要部模式断面図である。
図2に示すように、液滴吐出ヘッド15は、ノズルプレート30を備え、ノズルプレート30には、ノズル31が形成されている。ノズルプレート30の上側であってノズル31と相対する位置には、ノズル31と連通するキャビティ32が形成されている。そして、液滴吐出ヘッド15のキャビティ32には、収容タンク11に貯留されている機能液33が供給される。
【0106】
キャビティ32の上側には、上下方向(Z方向)に振動して、キャビティ32内の容積を拡大縮小する振動板34と、上下方向に伸縮して振動板34を振動させる加圧部としての圧電素子35が配設されている。圧電素子35が上下方向に伸縮して振動板34を加圧して振動し、振動板34がキャビティ32内の容積を拡大縮小してキャビティ32を加圧する。それにより、キャビティ32内の圧力が変動し、キャビティ32内に供給された機能液33は、ノズル31を通って吐出されるようになっている。
【0107】
そして、液滴吐出ヘッド15が圧電素子35を制御駆動するためのノズル駆動信号を受けると、圧電素子35が伸張して、振動板34がキャビティ32内の容積を縮小する。その結果、液滴吐出ヘッド15のノズル31からは、縮小した容積分の機能液33が微小液滴36として吐出される。
【0108】
図3は、液滴吐出装置1内の気体の流れを説明するための図である。
図3(a)は、液滴吐出ヘッド15と対向する場所にステージ4が位置している状態を示す。図3(a)に示すように、空気制御装置23から空気が噴出され、気体の流れとしての空気の流れ37が形成される。図において、空気の流れ37の矢印の向きは、空気が流れる方向を示し、矢印の長さは、風速の大きさを示している。
【0109】
空気制御装置23の付近では、空気の流れ37は、基台2に向かって流れている。空気制御装置は、塵を除去するフィルタを備えている。このフィルタは、保守ステージ17上に比べて、基台2上では、細かい塵を除去するように、異なるフィルタを備えている。フィルタを通過する空気の流れ37は、荒い塵を除去するフィルタに比べて、細かい塵を除去するフィルタを通過するほうが、空気の流れ37が遅くなる。その為、基台2上では、保守ステージ17上に比べて、空気の流れ37は、風速が小さくなっている。
【0110】
液滴吐出ヘッド15が、ステージ4と対向する場所にあるとき、液滴吐出ヘッド15の周辺における空気の流れ37は、風速が小さい状態となっている。
【0111】
図3(b)は、液滴吐出ヘッド15と対向する場所にクリーニングユニット16の保守ステージ17が位置している状態を示している。図3(b)に示すように、空気制御装置23から空気が噴出され、空気の流れ37が形成される。
【0112】
空気制御装置23の付近では、空気の流れ37は、基台2に向かって流れている。空気の流れ37が保守ステージ17に近づくとき、空気の流れ37は保守ステージ17を通過できないことから、空気の流れ37は、保守ステージ17の周辺部17aに移動する。空気制御装置23は、基台2上に比べて、荒い塵を除去するフィルタを用いている。従って、保守ステージ17上では、基台2上に比べて、空気の流れ37は、風速が大きくなっている。
【0113】
保守ステージ17の上では、空気の流れ37が、風速を減速せずに流動することから、液滴吐出ヘッド15の周辺における空気の流れ37は、風速が小さくない状態となっている。従って、液滴吐出ヘッド15が、ステージ4と対向する場所にあるときに比べて、保守ステージ17と対向する場所にあるときの方が、液滴吐出ヘッド15の周辺における空気の流れ37の風速は、早くなっている。
【0114】
図4は、液滴吐出装置の電気制御ブロック図である。図4において、液滴吐出装置1はプロセッサとして各種の演算処理を行うCPU(演算処理装置)40と、各種情報を記憶するメモリ41とを有する。
【0115】
主走査駆動装置42、副走査駆動装置43、主走査位置検出装置5、副走査位置検出装置14、液滴吐出ヘッド15を駆動するヘッド駆動回路44は、入出力インターフェース45およびデータバス46を介してCPU40に接続されている。さらに、入力装置47、ディスプレイ装置48、図1に示す重量測定装置21を構成する電子天秤49、フラッシングユニット18、キャッピングユニット19、ワイピングユニット20も入出力インターフェース45およびデータバス46を介してCPU40に接続されている。そして、電子天秤49、フラッシングユニット18、キャッピングユニット19、ワイピングユニット20のうち、1つのユニットを選択するクリーニング選択装置50も入出力インターフェース45およびデータバス46を介してCPU40に接続されている。
【0116】
主走査駆動装置42は、ステージ4の移動を制御する装置であり、副走査駆動装置43は、キャリッジ13の移動を制御する装置である。主走査位置検出装置5が、ステージ4の位置を認識し、主走査駆動装置42が、ステージ4の移動を制御することにより、ステージ4を所望の位置に移動及び停止することが可能になっている。同じく、副走査位置検出装置14が、キャリッジ13の位置を認識し、副走査駆動装置43が、キャリッジ13の移動を制御することにより、キャリッジ13を所望の位置に移動及び停止することが可能になっている。
【0117】
入力装置47は、液滴を吐出する各種加工条件を入力する装置であり、例えば、基板8に液滴を吐出する座標を図示しない外部装置から受信し、入力する装置である。ディスプレイ装置48は、加工条件や、作業状況を表示する装置であり、操作者は、ディスプレイ装置48に表示される情報を基に、入力装置47を用いて操作を行う。
【0118】
電子天秤49は、液滴吐出ヘッド15が吐出する液滴を、受ける受け皿の重量を測定する装置である。液滴が吐出される前後の受け皿の重量を測定して、測定値をCPU40に送信する。図1に示す重量測定装置21は、受け皿と電子天秤49などから構成される。
【0119】
クリーニング選択装置50は、フラッシングユニット18、キャッピングユニット19、ワイピングユニット20、重量測定装置21から1つの装置を選択して、液滴吐出ヘッド15と対向する場所に位置するように、保守ステージ17を移動する装置である。
【0120】
メモリ41は、RAM、ROM等といった半導体メモリや、ハードディスク、CD−ROMといった外部記憶装置を含む概念である。機能的には、液滴吐出装置1における動作の制御手順が記述されたプログラムソフト51を記憶する記憶領域が設定される。さらに、基板8内における吐出位置の座標データである吐出位置データ52を記憶するための記憶領域も設定される。他にも、液滴吐出ヘッド15の暖機駆動における液滴吐出ヘッド15の場所と駆動周波数との関係データである暖機駆動周波数データ53などが設定される。さらに、基板8を主走査方向(Y方向)へ移動する主走査移動量と、キャリッジ13を副走査方向(X方向)へ移動する副走査移動量とを記憶するための記憶領域や、CPU40のためのワークエリアやテンポラリファイル等として機能する記憶領域やその他各種の記憶領域が設定される。
【0121】
CPU40は、メモリ41内に記憶されたプログラムソフト51に従って、基板8における表面の所定位置に機能液を液滴吐出するための制御を行うものである。具体的な機能実現部として、電子天秤49を用いた重量測定を実現するための演算を行う重量測定演算部54を有する。さらに、液滴吐出ヘッド15を洗浄するタイミングを演算する洗浄演算部55や、液滴吐出ヘッド15を暖機駆動するときに、駆動周波数を演算する加圧制御部としてのヘッド暖機制御演算部56を有する。他に、液滴吐出ヘッド15によって液滴を吐出するための演算を行う吐出演算部57などを有する。
【0122】
吐出演算部57を詳しく分割すれば、液滴吐出ヘッド15を液滴吐出のための初期位置へセットするための吐出開始位置演算部58を有する。さらに、吐出演算部57は、基板8を主走査方向(Y方向)へ所定の速度で走査移動させるための制御を演算する主走査制御演算部59を有する。加えて、吐出演算部57は、液滴吐出ヘッド15を副走査方向(X方向)へ所定の副走査量で移動させるための制御を演算する副走査制御演算部60を有する。さらに、吐出演算部57は液滴吐出ヘッド15内に複数あるノズルのうち、どのノズルを作動させて機能液を吐出するかを制御するための演算を行うノズル吐出制御演算部61等といった各種の機能演算部を有する。
【0123】
図5は、ヘッド駆動回路44の電気制御ブロック図である。図5に示すように、ヘッド駆動回路44は、波形制御回路62、発振回路63、波形成形回路64、電力増幅回路65などから構成される。波形制御回路62は、CPU40に対するインターフェースとなる回路であり、CPU40から受信した信号を解読し、他の回路を統合して制御する回路である。
【0124】
発振回路63は、波形制御回路62に指定される周波数で発振し、パルス波形を形成する回路である。波形成形回路64は、発振回路63が出力するパルス波形と同期して、波形制御回路62の指示する波形を形成する回路である。電力増幅回路65は、波形成形回路64が出力する波形を電力増幅して、液滴吐出ヘッド15を駆動可能な電流を出力する回路である。
【0125】
液滴吐出ヘッド15が暖機駆動をするとき、まず、CPU40が、主走査位置検出装置5の出力に基づき、液滴吐出ヘッド15と対向する場所の状況を検出する。つまり、液滴吐出ヘッド15と対向する場所に、ステージ4又はクリーニングユニット16が配置しているか、もしくは、空間となっているかを検出する。続いて、ヘッド暖機制御演算部56が、暖機駆動周波数データ53を参照して、この、液滴吐出ヘッド15の状態において、液滴吐出ヘッド15を駆動する駆動周波数を演算し、駆動周波数のデータと暖機駆動の波形条件を波形制御回路62に出力する。
【0126】
液滴吐出ヘッド15が吐出駆動をするとき、CPU40が、吐出時における駆動周波数のデータと暖機駆動の波形条件を波形制御回路62に出力する。
【0127】
波形制御回路62は、駆動周波数のデータを入力し、発振回路63に指示された駆動周波数で発振する指示信号を発振回路63に出力する。次に、波形制御回路62は、波形形成データを波形成形回路64に出力する。この波形形成データは、波形のパルス幅、立ち上がり時間、立ち下り時間等の波形形状に係るデータである。
【0128】
発振回路63は、駆動周波数と発振指示信号を入力し、指示された駆動周波数で発振して、パルス信号を波形成形回路64に出力する。波形成形回路64は、発振回路63からのパルス信号と、波形制御回路62から波形形成データを入力する。続いて、波形成形回路64は、波形形成データの指示する波形信号を形成し、パルス信号と同期した駆動波形を電力増幅回路65に出力する。
【0129】
電力増幅回路65は、駆動波形を入力し、電力増幅する。そして、電力増幅回路65は、液滴吐出ヘッド15の圧電素子35を駆動可能な電流を液滴吐出ヘッド15に出力する。
【0130】
図6及び図7は液滴吐出ヘッドの駆動波形を説明する図である。図6(a)は、発振回路63が出力するパルス信号の波形を示す図である。図の横軸は時間66の経過を示し、縦軸は、電圧67の変化を示す。図に示すように、発振回路63が出力するパルス信号の第1波形68は矩形の波形であり、CPU40により指定された周波数に対応する第1周期69の波形となっている。パルス信号の第1波形68の波形間隔である第1周期69は、圧電素子35が振動して、微小液滴36を連続吐出可能な周期に設定する。
【0131】
図6(b)は、液滴吐出ヘッド15から微小液滴36を連続吐出するときの一例である吐出駆動波形70を3個分表示している。図の横軸は時間66の経過を示し、縦軸は、駆動電圧71の変化を示す。吐出駆動波形70は、略台形の波形形状をしており、吐出時の駆動電圧のピーク値である吐出電圧72は、所定の電圧に設定されている。また、吐出駆動波形70の周期である吐出波形周期73は、パルス信号の第1波形68の第1周期69と同一の時間間隔で形成されている。吐出電圧72及び、第1周期69は、圧電素子35や振動板34の動特性に合わせて設定する必要がある。従って、実際に吐出する予備試験を実施して、最適な吐出条件を導くことが望ましい。
【0132】
図6(c)は、液滴吐出ヘッド15から微小液滴36を吐出せずに駆動するとき、つまり暖機駆動するときの一例である第1非吐出駆動波形74を3個分表示している。第1非吐出駆動波形74は、略台形の波形形状をしており、非吐出時の駆動電圧のピーク値である第1非吐出電圧75は、微小液滴36を吐出しない範囲で、圧電素子35を大きく振動させる方が良い。本実施形態において、例えば、第1非吐出電圧75は、吐出電圧63の約3分の1程度の電圧を採用している。また、第1非吐出駆動波形74の波形周期である第1非吐出波形周期76は、圧電素子35が振動する範囲で駆動して良い。第1非吐出波形周期76は、本実施形態では、例えば、吐出波形周期73と同じく、パルス信号の第1波形68の第1周期69と同一の時間間隔で形成されている。
【0133】
図7(a)は、液滴吐出ヘッド15から微小液滴36を吐出しないときの発振回路63が出力するパルス信号の波形一例を示す図である。図の横軸は時間66の経過を示し、縦軸は、電圧67の変化を示す。図に示すように、発振回路63が出力するパルス信号の第2波形77は矩形の波形であり、CPU40により指定された周波数に対応する第2周期78の波形となっている。
【0134】
パルス信号の第2波形77の波形間隔である第2周期78は、圧電素子35が振動する範囲で、パルス信号の第1波形68より短い間隔で圧電素子35が振動可能な周期に設定する。第2周期78は、本実施形態では、例えば、パルス信号の第1波形68の第1周期69の半分の時間間隔で形成されている。
【0135】
図7(b)は、液滴吐出ヘッド15から微小液滴36を吐出しないときの一例である第2非吐出駆動波形79を5個分表示している。第2非吐出駆動波形79は、略台形の波形形状をしており、非吐出時の駆動電圧のピーク値である第2非吐出電圧80は、微小液滴36を吐出しない範囲で、圧電素子35を大きく振動させる方が良い。本実施形態において、例えば、第2非吐出電圧80は、吐出電圧63の約3分の1程度の電圧を採用している。また、第2非吐出駆動波形79の周期である第2非吐出波形周期81は、第2周期78と同一の時間間隔で形成されている。
【0136】
図8は、液滴吐出ヘッド15の温度変化を説明するための模式図である。図8において、図の横軸は時間66の経過を示し、縦軸は液滴吐出ヘッド温度82の変化を示す。実線は、液滴吐出ヘッド15から微小液滴36を吐出しないときに、液滴吐出ヘッド15を暖機駆動しない場合である非振動時温度変化線83を示す。
【0137】
一点鎖線の第1振動時温度変化線84は、液滴吐出ヘッド15に風速の早い空気の流れ37が液滴吐出ヘッド15に接触する場所における液滴吐出ヘッド15の温度変化を示す。第1振動時温度変化線84は、液滴吐出ヘッド15から微小液滴36を吐出しないとき、第1非吐出駆動波形74を用いて、暖機駆動するときの液滴吐出ヘッド15の温度変化を示す。
【0138】
同じく、破線の第2振動時温度変化線85も、液滴吐出ヘッド15に風速の早い空気の流れ37が液滴吐出ヘッド15に接触する場所における液滴吐出ヘッド15の温度変化を示す。第2振動時温度変化線85は、液滴吐出ヘッド15から微小液滴36を吐出しないとき、第2非吐出駆動波形79を用いて、暖機駆動するときの液滴吐出ヘッド15の温度変化を示す。
【0139】
横軸において、液滴吐出ヘッド15が、ノズル31から微小液滴36を吐出しない非吐出時86と、ノズル31から微小液滴36を吐出する吐出時87を繰り返すとき、非振動時温度変化線83、第1振動時温度変化線84及び第2振動時温度変化線85は、液滴吐出ヘッド温度82が変化する様子を示している。
【0140】
非振動時温度変化線83において、液滴吐出ヘッド温度82が、非吐出時86に最低温度83aまで下がり、吐出時87に最高温度83bまで上昇する。最高温度83bと最低温度83aとの差は温度差83cとなる。同様に、第1振動時温度変化線84において、液滴吐出ヘッド温度82が、非吐出時86に最低温度84aまで下がり、吐出時87に最高温度84bまで上昇する。最高温度84bと最低温度84aとの差は温度差84cとなる。同じく、第2振動時温度変化線85において、液滴吐出ヘッド温度82が、非吐出時86に最低温度85aまで下がり、吐出時87に最高温度85bまで上昇する。最高温度85bと最低温度85aとの差は温度差85cとなる。
【0141】
非振動時温度変化線83と第1振動時温度変化線84とを比較すると、最高温度83bと最高温度84bとは略同じ温度となる。一方、最低温度83aは、最高温度84bに比べて温度が下がる。非振動時温度変化線83においては、非吐出時86に圧電素子35を振動させないことから、液滴吐出ヘッド温度82が低下する。第1振動時温度変化線84においては、非吐出時86に圧電素子35を振動させていることから、圧電素子35の発熱による影響を受けて、液滴吐出ヘッド温度82が低下しにくくなっている。従って、温度差83cが、非振動時温度変化線83に比べて、第1振動時温度変化線84の方が、温度差84cが少なくなっている。
【0142】
第1振動時温度変化線84と第2振動時温度変化線85とを比較すると、最高温度84bと最高温度85bとは略同じ温度となる。一方、最低温度84aは、最高温度85bに比べて温度が下がる。第1振動時温度変化線84においては、非吐出時86に圧電素子35を振動させる周波数が低いことから、液滴吐出ヘッド温度82が低下する。第2振動時温度変化線85においては、非吐出時86に圧電素子35を高い周波数で振動させていることから、圧電素子35の発熱による影響を大きく受けて、液滴吐出ヘッド温度82が低下しにくくなっている。従って、温度差85cが、第1振動時温度変化線84に比べて、第2振動時温度変化線85の方が、温度差85cが少なくなっている。
【0143】
小さな風速の空気の流れ37が液滴吐出ヘッド15に接触する場所では、液滴吐出ヘッド15は、冷却し難くなる。このとき、液滴吐出ヘッド15の温度変化は、液滴吐出ヘッド15に第1非吐出駆動波形74により圧電素子35を振動させて、暖機駆動させる場合においても、第2振動時温度変化線85と同様の温度変化を示す。つまり、風速の空気の流れ37が大きい場所では、高い周波数で液滴吐出ヘッド15を振動する方が良く、風速の空気の流れ37が小さい場所では、低い周波数で液滴吐出ヘッド15を振動しても良い。液滴吐出ヘッド15に接触する空気の流れ37に合わせて、液滴吐出ヘッド15を振動する周波数を変更することが好ましい。
【0144】
(描画方法)
次に、上述した液滴吐出装置1を使って、基板8に描画する描画方法について図3、図9〜図11にて説明する。図9は、基板に描画する製造工程を示すフローチャートであり、図10及び図11は、液滴吐出装置を使った描画方法を説明する図である。
【0145】
図9のフローチャートを用いて、基板への描画方法に相当する製造工程のステップを説明する。
図9において、ステップS1からステップS4まで、同一の液滴吐出装置1によって製造するステップである。ステップS1は、保守工程の1つである洗浄工程に相当し、ノズルから機能液をフラッシングユニットに吐出し、液滴吐出ヘッドを洗浄する工程である。次にステップS2に移行する。ステップS2は、描画工程に相当し、ノズルから基板に微小液滴を吐出して、機能液を塗布する工程である。この工程では、1つの工程で所定の領域を塗布する。次にステップS3に移行する。ステップS3は、予定した領域総てに機能液を塗布したかを判断する工程に相当し、CPUが、機能液を塗布する予定の領域と、既に塗布した領域とを比較して、塗布する予定で、まだ塗布していない領域があるかを判断する工程である。塗布していない領域があるとき(NOのとき)、ステップS1に移行する。ステップS3において、塗布していない領域がないとき(YESのとき)、ステップS4に移行する。ステップS4は、洗浄工程に相当し、ノズルから機能液をフラッシングユニットに吐出し、液滴吐出ヘッドを洗浄するする工程である。以上の工程により、基板に描画する製造工程を終了する。
【0146】
次に、図3、図10、図11を用いて、図9に示したステップと対応させて、製造方法を詳細に説明する。
図10は、ステップS1及びステップS4に対応する図である。図10(a)に示すように、液滴吐出ヘッド15と対向する場所に、フラッシングユニット18が位置するように、保守ステージ17をY方向に移動する。続いて、液滴吐出ヘッド15とフラッシングユニット18とが対向するように、キャリッジ13をX方向に移動する。
【0147】
液滴吐出ヘッド15とフラッシングユニット18とが対向する場所に位置した後、液滴吐出ヘッド15のノズル31から微小液滴36をフラッシングユニット18に吐出する。微小液滴36を吐出することにより、液滴吐出ヘッド15内の機能液33を入れ替える。液滴吐出ヘッド15の流路に固形物が存在するとき、液滴吐出ヘッド15は、機能液33と一緒に固形物を吐出することにより、流路を洗浄する。
【0148】
このとき、液滴吐出ヘッド15には、吐出駆動波形70が入力される。液滴吐出ヘッド15は、キャビティ32を加圧することにより加熱され、温度が高くなる。
【0149】
図3(b)に示すように、クリーニングユニット16では、空気の流れ37が流れ易くなっており、ステージ4上に比べて、流速が早くなっている。
【0150】
図10(b)は、液滴吐出ヘッド15から微小液滴36をフラッシングユニット18に吐出するのを停止している状態を示す。液滴吐出ヘッド15は、流路の洗浄を終了し、次の動作までの間、待機する。このとき、液滴吐出ヘッド15の周辺における空気の流れ37は流速が早いことに対応して、液滴吐出ヘッド15には、第2非吐出駆動波形79を入力する。液滴吐出ヘッド15は、微小液滴36を吐出しない程度に、キャビティ32を加圧することにより加熱し、温度の低下を防止する。
【0151】
図11は、ステップS2に対応する図である。図11(a)に示すように、液滴吐出ヘッド15と対向する場所に、ステージ4が位置するように、ステージ4をY方向に移動する。ステージ4には、基板8が搭載され、固定されている。続いて、液滴吐出ヘッド15と基板8に機能液33を塗布する場所とが対向するように、キャリッジ13をX方向に移動する。
【0152】
液滴吐出ヘッド15は、機能液33を塗布する場所と対向する場所に、ノズル31が位置するとき、吐出駆動波形70の信号に駆動されて、微小液滴36を吐出する。液滴吐出装置1は、微小液滴36の吐出とステージ4及びキャリッジ13の移動とを繰り返して実施し、所望のパターンを描画する。
【0153】
図11(b)は、液滴吐出ヘッド15から微小液滴36を基板8に吐出するのを停止し、暖機駆動している状態を示す。液滴吐出ヘッド15が、次の動作に移行するまで、待機する場合が該当する。他に、液滴吐出ヘッド15が、次に、微小液滴36を吐出する場所に、ステージ4が基板8を移動し、キャリッジ13が、液滴吐出ヘッド15を移動するまでの間、液滴吐出ヘッド15が、待機する場合も該当する。
【0154】
キャリッジ13には、液滴吐出ヘッド15が7個、一列に配列して配置されている。空気の流れ37が、キャリッジ13の周囲を通過して、液滴吐出ヘッド15の周囲を通過するとき、配列された液滴吐出ヘッド15のうち、両端に位置する液滴吐出ヘッド15aには、空気の流れ37が接して流れる。一方、配列された液滴吐出ヘッド15のうち、中央に位置する液滴吐出ヘッド15bには、空気の流れ37が接しにくくなっている。つまり、液滴吐出ヘッド15aは、風速の早い場所に位置し、液滴吐出ヘッド15bは風速の遅い場所に位置している。
【0155】
液滴吐出ヘッド15aは、風速の早い場所に位置していることから、空気の流れ37に熱を奪われ易く、液滴吐出ヘッド15bは、風速の遅い場所に位置していることから、空気の流れ37に熱を奪われ難くなっている。
【0156】
液滴吐出ヘッド15aの周辺における空気の流れ37は流速が早いことに対応して、液滴吐出ヘッド15aには、周波数の高い第2非吐出駆動波形79を入力する。液滴吐出ヘッド15bの周辺における空気の流れ37は流速が遅いことに対応して、液滴吐出ヘッド15bには、周波数の低い第1非吐出駆動波形74を入力する。液滴吐出ヘッド15a及び液滴吐出ヘッド15bは、微小液滴36を吐出しない程度に、キャビティ32を加圧することにより加熱し、温度の低下を防止する。
【0157】
つまり、液滴吐出ヘッド15aは、液滴吐出ヘッド15bに比べて、熱が奪われ易いことから、液滴吐出ヘッド15aを高い周波数で駆動することにより、供給する熱量を大きくする。同様に、洗浄工程における液滴吐出ヘッド15は、描画工程における液滴吐出ヘッド15bに比べて、熱が奪われ易いことから、液滴吐出ヘッド15を高い周波数で駆動することにより、供給する熱量を大きくする。
以上のように、基板8に機能液33を塗布する予定の場所総てに、機能液33を塗布して、描画工程を終了する。
【0158】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、圧電素子35は、ノズルから機能液33が吐出しない程度に、キャビティ32を複数回連続して加圧し、機能液33を圧力変動させて、暖機駆動している。
【0159】
機能液33は、温度が変わると粘性が変わる為、液滴吐出ヘッド15内で、機能液33に圧力が加わり、ノズル31等の流路を通過するとき、流体抵抗が変化して、ノズル31から吐出される機能液33の吐出量が変化する。従って、温度変化が少ない状態にて吐出する方が、温度変化が大きい場合に比べて、吐出量を精度良く制御して、吐出することができる。
【0160】
圧電素子35を暖機駆動しない場合には、液滴吐出ヘッド15は、放熱して温度が下がる。一方、暖機駆動して、機能液33を吐出しない程度に圧電素子35を動作する場合には、圧電素子35により加圧するときのエネルギの一部が熱に変換されて、液滴吐出ヘッドが発熱する。そして、発熱する液滴吐出ヘッド15の温度は下がり難くなる。
【0161】
圧電素子35は、ノズル31から機能液33を吐出しないとき、ノズル31から機能液33が吐出しない程度に、キャビティ32を複数回連続して加圧して、機能液33を圧力変動させ、圧電素子35は、キャビティ32を加圧する圧力における、圧力変動の周波数を、変更して加圧する。
【0162】
圧電素子35がキャビティ32を加圧するとき、圧力変動の周波数を、変更することにより、圧電素子35が液滴吐出ヘッド15に加えるエネルギを変更することが可能である。圧電素子35が液滴吐出ヘッド15に加えるエネルギの量が複数の段階で変更するとき、液滴吐出ヘッド15が放熱する熱量に相当するエネルギに近いエネルギを供給することにより、液滴吐出ヘッド15の温度を一定に保ち易くなる。
【0163】
一方、ノズルから機能液33を吐出しないとき、圧電素子35が液滴吐出ヘッド15に加えるエネルギの量が1種類しかない場合には、予め決められた量のエネルギを液滴吐出ヘッド15に供給することとなる。このとき、液滴吐出ヘッド15が放出するエネルギ量と、液滴吐出ヘッド15に供給するエネルギ量とが異なることがある。この場合において、液滴吐出ヘッド15の温度が目標とする温度になるまで、圧電素子35を動作し、エネルギを供給する。そして、液滴吐出ヘッド15の温度が上昇し過ぎるのを防止するため、液滴吐出ヘッド15の温度が目標とする温度で、圧電素子35を停止し、エネルギの供給を停止する。エネルギの供給を停止すると、液滴吐出ヘッド15が放熱して、液滴吐出ヘッド15の温度が下がる。所定の温度まで降下するとき、再度、エネルギを供給する。つまり、液滴吐出ヘッド15へのエネルギ供給と供給停止が反復される頻度が多くなり、液滴吐出ヘッドの温度が変動してしまう。
【0164】
従って、液滴吐出ヘッド15の温度に応じて、圧電素子35がキャビティ32に加えるエネルギの量を変更する方が、圧電素子35がキャビティ32に加えるエネルギの量が1種類しかない場合に比べて、液滴吐出ヘッド15の温度を一定に保ち易くなる。その結果、吐出量を精度良く制御して吐出することができる。
【0165】
(2)本実施形態によれば、液滴吐出装置1は、空気制御装置23を備えており、液滴吐出装置1の内部に空気の流れ37があることにより、液滴吐出装置1が発熱する熱を、液滴吐出装置1から移動して、除去する。液滴吐出ヘッド15が、風速の遅い場所に位置するときに比べて、液滴吐出ヘッド15が、風速の早い場所に位置する場合の方が、液滴吐出ヘッド15が発熱する熱は、液滴吐出ヘッド15から早く除去され、早く冷却される。
【0166】
同じ熱容量の液滴吐出ヘッド15において、液滴吐出ヘッド15を一定の温度に保つ為には、遅く冷却される液滴吐出ヘッド15に比べて、早く冷却される液滴吐出ヘッド15に大きな熱量に相当するエネルギの供給が必要となる。
【0167】
圧電素子35は、キャビティ32を加圧する圧力における、圧力変動の周波数を高くした方が、圧力変動の周波数を小さくする場合に比べて、大きなエネルギが供給できる。供給されるエネルギの一部が熱に変換されることから、圧電素子35は、キャビティ32を加圧する圧力における、圧力変動の周波数を高くした方が、液滴吐出ヘッド15に大きな熱量の熱を供給することができる。
【0168】
従って、風速の遅い場所に液滴吐出ヘッド15が、位置するときに比べて、風速の早い場所に液滴吐出ヘッド15が位置するとき、圧電素子35は、キャビティ32を加圧する圧力における、圧力変動の周波数を高くする方が、液滴吐出ヘッド15の温度を一定に保ち易くなる。その結果、吐出量を精度良く制御して吐出することができる。
【0169】
(3)本実施形態によれば、液滴吐出装置1は、液滴吐出ヘッド15を複数備えている。液滴吐出装置1の空気の流れ37の風速は一様でなく、空気の流れ37の風速が早い場所と遅い場所がある。例えば、図11(b)に示すように、液滴吐出ヘッド15がステージ4と対向する場所にあるとき、空気の流れ37の風速が早い場所に位置する液滴吐出ヘッド15aと遅い場所に位置する液滴吐出ヘッド15bが存在する。流れる気体の風速が早い場所に位置する液滴吐出ヘッド15aは、遅い場所に位置する液滴吐出ヘッド15bに比べて、熱が移動して除去され易いことから、早く冷却される。
【0170】
同じ熱容量の液滴吐出ヘッド15において、液滴吐出ヘッド15を一定の温度に保つ為には、遅く冷却される液滴吐出ヘッド15bに比べて、早く冷却される液滴吐出ヘッド15aに大きな熱量に相当するエネルギの供給が必要となる。
【0171】
従って、複数の液滴吐出ヘッド15の中で、風速の遅い場所に位置する液滴吐出ヘッド15bに比べて、風速の早い場所に位置する液滴吐出ヘッド15aの圧電素子35は、キャビティ32を加圧する圧力における、圧力変動の周波数を高くする方が、複数の液滴吐出ヘッド15の温度を一定に保ち易くなる。その結果、吐出量を精度良く制御して吐出することができる。
【0172】
(4)本実施形態によれば、この描画方法は、描画工程と洗浄工程とを有している。描画工程において、微小液滴36を基板8に吐出して描画する。洗浄工程では、フラッシングユニット18に微小液滴36を吐出して液滴吐出ヘッド15内の機能液33を入れ替えている。さらに、液滴吐出ヘッド15内の流路に固形物が存在するとき、液滴吐出ヘッド15は、機能液33と一緒に固形物を吐出することにより、流路を洗浄する。
【0173】
描画工程では、液滴吐出ヘッド15と対向する場所に、基板8が存在し、洗浄工程では、液滴吐出ヘッド15と対向する場所に、フラッシングユニット18が存在する。描画工程及び洗浄工程において、液滴吐出ヘッド15の周囲に空気の流れ37が存在する。ただし、描画工程と洗浄工程とで、液滴吐出ヘッド15と対向する場所に位置する物が異なることから、液滴吐出ヘッド15の周囲における空気の流れ37の流体抵抗が異なり、空気の流れ37の風速が異なる。
【0174】
液滴吐出ヘッド15に接触して流体が通過するとき、流体が液滴吐出ヘッド15の熱を奪って冷却する。このとき、流速の早い空気の流れ37の方が、流速の遅い空気の流れ37に比べて、早く熱量を奪う為、流速の早い空気の流れ37と接する液滴吐出ヘッド15の方が早く冷却する。
【0175】
描画工程では、流速の遅い空気の流れ37と接触する場所に、液滴吐出ヘッド15が位置する。一方、洗浄工程では、流速の早い空気の流れ37と接触する場所に、液滴吐出ヘッド15が位置する。従って、圧電素子35がキャビティ32を加圧する圧力変動の周波数は、描画工程における周波数よりも、洗浄工程のときの周波数を高くする方が、液滴吐出ヘッド15の温度を一定に保ち易くなる。その結果、吐出量を精度良く制御して吐出することができる。
【0176】
(第2の実施形態)
次に、本発明を具体化した液滴吐出装置の一実施形態について図5〜図7、図12〜図14を用いて説明する。
この実施形態が第1の実施形態と異なるところは、図2に示した液滴吐出ヘッド15の内部に温度センサが配置され、液滴吐出ヘッド15の温度が検出可能となっている点にある。
【0177】
図12は液滴吐出ヘッドの構造を説明するための要部模式断面図を示す。すなわち、本実施形態では、図12に示すように、液滴吐出ヘッド90の内部に温度センサ91が配置されている。温度センサ91は、液滴吐出ヘッド90の温度を電気信号に変換可能であるセンサであれば良い。本実施形態では、例えば、サーミスタを採用している。温度センサ91は、ノズルプレート30と接触して配置され、ノズルプレート30の温度を測定可能となっている。
【0178】
図13は、液滴吐出装置の電気制御ブロック図である。液滴吐出装置92は、液滴吐出ヘッド90を7個配置している。そして、温度センサ91は、各液滴吐出ヘッド90に、1個配置されている。つまり、液滴吐出ヘッド90が7個配置されていることから、温度センサ91も7個配置されている。
【0179】
温度センサ91は、測定部としてのヘッド温度検出装置93と接続されている。また、ヘッド温度検出装置93は、入出力インターフェース45及びデータバス46を介してCPU40と接続されている。
【0180】
温度センサ91は、液滴吐出ヘッド90の温度に対応する電圧信号をヘッド温度検出装置93に出力する。ヘッド温度検出装置93は、電圧信号を入力して、温度に対応するデジタル信号に変換し、CPU40に出力する。ヘッド温度検出装置93には、各液滴吐出ヘッド90に配置されている温度センサ91の電圧信号が入力される。ヘッド温度検出装置93は、各液滴吐出ヘッド90の温度に対応するデジタル信号を、CPU40に出力する。従って、CPU40は、各液滴吐出ヘッド90の温度を検出可能となっている。
【0181】
メモリ41には、暖機駆動周波数データ94が設定される。暖機駆動周波数データ94は、液滴吐出ヘッド90を暖機駆動するときにおいて、液滴吐出ヘッド90の温度と、圧電素子35を駆動する周波数との関係を示すデータである。
【0182】
図14は、液滴吐出ヘッドを暖機駆動する製造工程を示すフローチャートである。
図14において、ステップS11は、ヘッド温度計測工程に相当し、ヘッド温度検出装置を用いて、液滴吐出ヘッドの温度を検出する工程である。次にステップS12に移行する。ステップS12は、ヘッド駆動周波数演算工程に相当し、液滴吐出ヘッドの温度に対応して、液滴吐出ヘッドを駆動する周波数を演算する工程である。次にステップS13に移行する。ステップS13は、ヘッド駆動工程に相当し、ステップS12で演算した周波数に基づいて、圧電素子を駆動して、キャビティを加圧する工程である。次にステップS14に移行する。ステップS14は、暖機駆動を終了するかを判断する工程に相当し、CPUが、液滴吐出ヘッドの温度が所定の温度になっているかを判断する。さらに、CPUが、暖機駆動の次工程の準備ができているかを判断する。そして、液滴吐出ヘッドの温度が、所定の温度になっていないとき、及び、暖機駆動の次工程の準備が、できていないとき、(NOのとき)、ステップS11に移行する。ステップS14において、液滴吐出ヘッドの温度が、所定の温度になり、さらに、暖機駆動の次工程の準備が、できているとき(YESのとき)、液滴吐出ヘッドを暖機駆動する製造工程を終了する。
【0183】
次に、図5〜図7及び、図13を用いて、図14に示したステップと対応させて、液滴吐出ヘッドを暖機駆動する製造方法を詳細に説明する。
ステップS11において、図13に示す温度センサ91が、液滴吐出ヘッド90の温度に対応する電圧信号を、ヘッド温度検出装置93に出力する。ヘッド温度検出装置93は、各液滴吐出ヘッド90の当該電圧信号をデジタル信号に変換して、CPU40に出力する。従って、CPU40は、各液滴吐出ヘッド90の温度を認識する。
【0184】
ステップS12において、CPU40のヘッド暖機制御演算部56が、圧電素子35を駆動する駆動電圧と周波数を演算して設定する。CPU40は、ノズル31から微小液滴36を吐出しない駆動電圧を設定する。さらに、CPU40は、各液滴吐出ヘッド90の温度に対応する周波数を演算して設定する。
【0185】
詳細には、液滴吐出ヘッド90の温度が高いときに、圧電素子35を駆動する周波数に比べて、液滴吐出ヘッド90の温度が低いときには、圧電素子35を駆動する周波数を高くする様に、CPU40が、周波数を演算して設定する。
【0186】
液滴吐出ヘッド90の温度の閾値が設けられ、暖機駆動周波数データ94に記憶されている。CPU40は、液滴吐出ヘッド90の温度の閾値とヘッド温度検出装置93から出力される、液滴吐出ヘッド90の温度とを比較する。液滴吐出ヘッド90の温度が閾値より高いとき、図6(c)に示す第1非吐出駆動波形74を選択する。一方、液滴吐出ヘッド90の温度が閾値より低いとき、図7(b)に示す第2非吐出駆動波形79を選択する。つまり、液滴吐出ヘッド90の温度が低いときには、圧電素子35を駆動する周波数を高くすることにより、液滴吐出ヘッド90を加熱する熱量を増やして、温度を高くする。
【0187】
ステップS13において、CPU40が圧電素子35を駆動する駆動電圧と周波数とを図5に示すヘッド駆動回路44の波形制御回路62に出力する。ヘッド駆動回路44は、指定された駆動電圧と周波数とで形成される駆動波形を、各液滴吐出ヘッド90に出力する。液滴吐出ヘッド90の圧電素子35は、駆動波形に基づいてキャビティ32を加圧して、液滴吐出ヘッド90を加熱する。
【0188】
ステップS14において、各液滴吐出ヘッド90が、所定の温度となっており、次工程の準備ができているとき暖気駆動を終了する。
上述したように、本実施形態によれば、第1の実施形態における効果(1)に加え、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、液滴吐出装置92は、ヘッド温度検出装置93を備え、液滴吐出ヘッド90の温度を測定する。そして、液滴吐出ヘッド90から微小液滴36を吐出しないとき、暖機駆動する。ヘッド暖機制御演算部56は、液滴吐出ヘッド90の温度に応じて、圧電素子35を駆動する信号を制御する。そして、液滴吐出ヘッド90の温度が高いときには、圧電素子35は、低い周波数でキャビティ32を加圧する。また、液滴吐出ヘッド90の温度が低いときには、圧電素子35は、高い周波数でキャビティ32を加圧する。
【0189】
液滴吐出ヘッド90の温度を検出して、温度が低いとき、低い周波数で圧電素子35を駆動するときに比べて、高い周波数で圧電素子35を駆動する方が、短い時間で、液滴吐出ヘッド90の温度を上昇することができる。一方、液滴吐出ヘッド90の温度が高いときには、低い周波数でキャビティ32を加圧することにより、小さい熱量で加熱し、液滴吐出ヘッド90の温度が上昇しすぎることを防止できる。従って、液滴吐出ヘッド90の温度を一定に保ち易くなる。その結果、吐出量を精度良く制御して吐出することができる。
【0190】
(2)本実施形態によれば、温度センサ91は、液滴吐出ヘッド90毎に備えられている。複数の液滴吐出ヘッド90の温度は一様でなく、温度の低い液滴吐出ヘッド90と温度の高い液滴吐出ヘッド90がある。ヘッド温度検出装置93が、個々の液滴吐出ヘッド90の温度を測定し、温度の高い液滴吐出ヘッド90では、圧電素子35は、低い周波数で駆動する。また、温度の低い液滴吐出ヘッド90において、圧電素子35は、高い周波数で駆動する。
【0191】
複数の液滴吐出ヘッド90において、液滴吐出ヘッド90の温度が低いときに、圧電素子35が、低い周波数で駆動するときに比べて、高い周波数で駆動する方が、大きなエネルギを供給できることから、短い時間で、液滴吐出ヘッド90の温度を上昇することができる。一方、液滴吐出ヘッド90の温度が高いときには、振動板34が低い周波数で駆動することにより、小さい熱量で加熱することにより、液滴吐出ヘッド90の温度が上昇しすぎることを防止できる。従って、複数の液滴吐出ヘッド90の温度を一定に保ち易くなる。その結果、吐出量を精度良く制御して吐出することができる。
【0192】
(第3の実施形態)
次に、本発明を具体化した液滴吐出装置の一実施形態について図15を用いて説明する。
この実施形態が第1の実施形態と異なるところは、周波数の異なる駆動波形で圧電素子35を駆動したのに換えて、電圧の異なる駆動波形で圧電素子35を駆動するところにある。
【0193】
図15は液滴吐出ヘッドの駆動波形を説明する図を示す。図15(a)は、吐出駆動波形70を示し、図15(b)は、第1非吐出駆動波形74を示す。吐出駆動波形70と第1非吐出駆動波形74とは第1の実施形態と同一の波形である。図15(c)は、第3非吐出駆動波形95を示し、第3非吐出駆動波形95のピーク値である第3非吐出電圧96は、第1非吐出電圧75より高い電圧に設定されている。
【0194】
第3非吐出駆動波形95の周期である第3非吐出波形周期97は、吐出波形周期73及び第1非吐出波形周期76と同じ周期に設定されている。第3非吐出駆動波形95を駆動波形として圧電素子35を駆動するとき、ノズル31から微小液滴36を吐出しない様に、第3非吐出電圧96が設定されている。
【0195】
液滴吐出ヘッド15が圧電素子35を暖機駆動して、微小液滴36を吐出しない程度に、キャビティ32を加圧することにより加熱するときがある。液滴吐出ヘッド15の周辺における空気の流れ37は流速が遅い場合、この液滴吐出ヘッド15における圧電素子35には、第1非吐出駆動波形74を入力する。一方、液滴吐出ヘッド15の周辺における空気の流れ37は流速が早い場合、この液滴吐出ヘッド15の圧電素子35には、第2非吐出駆動波形79を入力する。
【0196】
第1非吐出駆動波形74の第1非吐出電圧75に比べて、第3非吐出駆動波形95の第3非吐出電圧96が、高いことから、圧電素子35にはより大きいエネルギが供給され、大きい熱量が供給される。熱の奪われ易い液滴吐出ヘッド15に大きい熱量が供給されることから、液滴吐出ヘッド15の温度を一定に保ち易くなる。その結果、吐出量を精度良く制御して吐出することができる。従って、第1の実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0197】
(第4の実施形態)
次に、本発明を具体化した液滴吐出装置の一実施形態について図16を用いて説明する。
この実施形態が第1の実施形態と異なるところは、周波数の異なる駆動波形で圧電素子35を駆動したのに換えて、デューティー比の異なる駆動波形で圧電素子35を駆動するところにある。
【0198】
図16は液滴吐出ヘッドの駆動波形を説明する図を示す。図16(a)は、吐出駆動波形70を示し、図16(b)は、第1非吐出駆動波形74を示す。吐出駆動波形70と第1非吐出駆動波形74とは第1の実施形態と同一の波形である。図16(c)は、第4非吐出駆動波形98を示す。
【0199】
第4非吐出駆動波形98のピーク値である第4非吐出電圧99は、第1非吐出電圧75と同じ電圧に設定されている。そして、第4非吐出駆動波形98を駆動波形として圧電素子35を駆動するとき、ノズル31から微小液滴36を吐出しない様に、第4非吐出電圧99が設定されている。また、第4非吐出駆動波形98の周期である第4非吐出波形周期100は、吐出波形周期73及び第1非吐出波形周期76と同じ周期に設定されている。
【0200】
第1非吐出駆動波形74のパルス幅を、第1非吐出波形パルス幅101とし、第4非吐出駆動波形98のパルス幅を、第4非吐出波形パルス幅102とする。第4非吐出波形パルス幅102は、第1非吐出波形パルス幅101よりパルス幅が広く設定されている。パルス幅を波形周期で割算した数値をデューティー比とする。このとき、第4非吐出駆動波形98のデューティー比は、第1非吐出駆動波形74のデューティー比より大きく設定されている。
【0201】
デューティー比の小さい駆動波形で圧電素子35を駆動するときに比べて、デューティー比が大きいときには、圧電素子35に電圧を印加する時間が長くなる。圧電素子35は、電圧が印加されている間、収縮し、発熱する。従って、デューティー比が大きい駆動波形で、圧電素子35を駆動する方が、液滴吐出ヘッド15に大きい熱量を供給することとなる。
【0202】
液滴吐出ヘッド15が圧電素子35を暖機駆動して、微小液滴36を吐出しない程度に、キャビティ32を加圧することにより加熱するときがある。液滴吐出ヘッド15の周辺における空気の流れ37は流速が遅い場合、この液滴吐出ヘッド15における圧電素子35には、第1非吐出駆動波形74を入力する。一方、液滴吐出ヘッド15の周辺における空気の流れ37は流速が早い場合、この液滴吐出ヘッド15の圧電素子35には、第4非吐出駆動波形98を入力する。
【0203】
第1非吐出駆動波形74に比べて、第4非吐出駆動波形98は、デューティー比が大きいことから、圧電素子35にはより大きい熱量が供給される。熱の奪われ易い液滴吐出ヘッド15に大きい熱量が供給されることから、液滴吐出ヘッド15の温度を一定に保ち易くなる。その結果、吐出量を精度良く制御して吐出することができる。従って、第1の実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0204】
尚、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更や改良を加えることも可能である。変形例を以下に述べる。
(変形例1)
前記第1の実施形態〜第4の実施形態において、圧電素子35を用いて、キャビティ32を加圧したが、圧電素子35以外の方法で、キャビティ32を加圧する方法を活用しても良い。例えば、静電気を利用して振動板を変形させて、微小液滴36を吐出する方法、電極を加熱して機能液33内の気泡を発生させて、微小液滴36を吐出する方法にも応用することができる。いずれの場合も、電極を用いて駆動するヘッドであり、圧電素子35を用いないことから、圧電素子35を製造する必要がなく、生産性よく製造することができる。
【0205】
(変形例2)
前記第2の実施形態において、圧電素子35を駆動する駆動波形の周波数を切り換えて、液滴吐出ヘッド90に供給する熱量を変更しているが、前記第3の実施形態で実施するように、駆動波形の電圧を切り換えて、液滴吐出ヘッド90に供給する熱量を切り換えてもよい。この場合においても、前記第2の実施形態と同様な効果を得ることができる。また、液滴吐出ヘッド90の吐出特性の良い駆動方法を選択することができる。
【0206】
(変形例3)
前記第2の実施形態において、圧電素子35を駆動する駆動波形の周波数を切り換えて、液滴吐出ヘッド90に供給する熱量を変更しているが、前記第4の実施形態で実施するように、駆動波形のデューティー比を切り換えて、液滴吐出ヘッド90に供給する熱量を切り換えてもよい。この場合においても、前記第2の実施形態と同様な効果を得ることができる。また、液滴吐出ヘッド90の吐出特性の良い駆動方法を選択することができる。
【0207】
(変形例4)
前記第1の実施形態において、図3(a)に示す、描画工程より、図3(b)に示す洗浄工程の方が、液滴吐出ヘッド15周辺の空気の流れ37おける風速が早い場合に、洗浄工程における圧電素子35の駆動波形の周波数を高くしている。一方、清浄工程より、描画工程の方が、液滴吐出ヘッド15周辺の空気の流れ37おける風速が早い場合には、描画工程における圧電素子35の駆動波形の周波数を高くしても良い。工程の状況に応じて、周波数を高くする場所を変更しても良い。
【0208】
(変形例5)
前記第1の実施形態において、ノズル31から微小液滴36を吐出しないとき、駆動波形の周期は、第1非吐出波形周期76と第2非吐出波形周期81との2種類を切り換えて、圧電素子35を駆動している。駆動波形の周期は、2種類に限らず、3種類以上でも良い。選択可能な種類が多い程、状況に合った制御が可能である。
【0209】
さらに、種類数を増やして、駆動波形の周期を、無段階に変更しても良い。選択可能な種類が多くなることから、さらに、状況に合った制御が可能となる。
【0210】
同様に、前記第2の実施形態〜第4の実施形態においても、駆動波形の周波数、駆動電圧、デューティー比の段階を3種類以上、もしくは、無段階に増やしても良い。選択可能な種類が多くなり、状況に合った制御が可能となる。
【0211】
前記第2の実施形態において、駆動波形の周波数を無段階にするとき、液滴吐出ヘッド90の温度と駆動波形の周波数との関係を、例えば、4次関数や指数関数等の数式の形式にして、関係付けても良い。このとき、液滴吐出ヘッド90の温度に対して、適切な駆動波形の周波数を、簡便に算出可能となり、生産性良く制御することができる。これについては、駆動波形の駆動電圧、デューティー比を切り換えて制御する場合にも同様に応用することができる。
【0212】
(変形例6)
前記第1の実施形態及び第2の実施形態においては、圧電素子35を駆動する駆動波形の周波数を切り換えて、液滴吐出ヘッド15,90に供給する熱量を変更している。前記第3の実施形態においては、圧電素子35を駆動する駆動波形の駆動電圧を切り換えて、液滴吐出ヘッド15に供給する熱量を変更している。また、前記第4の実施形態においては、圧電素子35を駆動する駆動波形のデューティー比を切り換えて、液滴吐出ヘッド15に供給する熱量を変更している。
【0213】
駆動波形の周波数と、駆動波形の駆動電圧と、駆動波形のデューティー比とを組み合わせて、駆動波形を形成して、圧電素子35を駆動しても良い。どの組み合わせにおいても、液滴吐出ヘッド15が放熱する程度に合わせて、圧電素子35を駆動すると良い。いずれの方法においても、同様の効果を得ることができる。また、液滴吐出ヘッド15,90を制御し易い制御方法を選択することができる。
【0214】
(変形例7)
前記第2の実施形態において、温度センサ91にサーミスタを採用しているが、液滴吐出ヘッド90の温度を検出可能であれば良い。他に、例えば、熱電対、白金測温抵抗体、水晶振動子等を、温度センサ91として使用することができる。機能液33の温度に対して感度の良いセンサを用いることにより、精度良く温度を検出することができる。
【0215】
(変形例8)
前記第2の実施形態において、温度センサ91は、ノズルプレート30の温度を検出しているが、これに限らず、振動板34、キャビティ32の温度を検出しても良い。また、直接キャビティ32内の機能液33の温度を検出しても良い。温度センサ91が温度に反応する部分を配置する場所を、振動板34、キャビティ32、キャビティ32内の機能液33に接触する場所に配置することが可能であり、液滴吐出ヘッド90の温度を計測することが可能となる。液滴吐出ヘッド90の形状に合わせて、温度センサ91を配置し易い設計とすることができる。
【0216】
(変形例8)
前記第1の実施形態において、図9のステップS1に保守工程の1つである洗浄工程の例を示しているが、ステップS2は、吐出量測定工程でも良い。吐出量測定工程は、保守工程の1つであり、電子天秤49に微小液滴36を吐出して、微小液滴36の重量を測定する工程である。この場合にも、第1の実施形態と同様に、液滴吐出ヘッド15の温度を一定に保ち易くなる。その結果、吐出量を精度良く制御して吐出することができる。
【0217】
(変形例9)
前記第1の実施形態において、図9のステップS1に保守工程の1つである洗浄工程の例を示しているが、ステップS2は、待機工程でも良い。待機工程は、保守工程の1つであり、液滴吐出ヘッド15から微小液滴36を吐出せずに待機する工程である。この場合にも、第1の実施形態と同様に、液滴吐出ヘッド15の温度を一定に保ち易くなる。その結果、吐出量を精度良く制御して吐出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0218】
【図1】第1の実施形態に係る液滴吐出装置の構成を示す概略斜視図。
【図2】液滴吐出ヘッドの構造を説明するための要部模式断面図。
【図3】液滴吐出装置内の気体の流れを説明する図。
【図4】液滴吐出装置の電気制御ブロック図。
【図5】ヘッド駆動回路の電気制御ブロック図。
【図6】液滴吐出ヘッドの駆動波形を説明する図。
【図7】液滴吐出ヘッドの駆動波形を説明する図。
【図8】液滴吐出ヘッドの温度変化を説明するための模式図。
【図9】基板に描画する製造工程を示すフローチャート。
【図10】液滴吐出装置を使った描画方法を説明する図。
【図11】液滴吐出装置を使った描画方法を説明する図。
【図12】第2の実施形態に係る液滴吐出ヘッドの構造を説明するための要部模式断面図。
【図13】液滴吐出装置の電気制御ブロック図。
【図14】液滴吐出ヘッドを暖機駆動する製造工程を示すフローチャート。
【図15】第3の実施形態に係る液滴吐出ヘッドの駆動波形を説明する図。
【図16】第4の実施形態に係る液滴吐出ヘッドの駆動波形を説明する図。
【符号の説明】
【0219】
4…テーブルとしてのステージ、8…ワークとしての基板、13…テーブルとしてのキャリッジ、15,90…液滴吐出ヘッド、23…送風部としての空気制御装置、31…ノズル、32…キャビティ、33…機能液、35…加圧部としての圧電素子、37…気体の流れとしての空気の流れ、56…加圧制御部としてのヘッド暖機制御演算部、93…測定部としてのヘッド温度検出装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴吐出ヘッドのキャビティを加圧して、前記キャビティと連通するノズルから機能液をワークに吐出する液滴吐出装置であって、
前記液滴吐出ヘッドと前記ワークとを相対移動するテーブルとを備え、
前記液滴吐出ヘッドは、前記キャビティを加圧する加圧部を備え、
前記加圧部は、前記ノズルから前記機能液が吐出しないとき、前記ノズルから前記機能液が吐出しない程度に、前記キャビティを複数回連続して加圧して、前記機能液を圧力変動させ、
前記加圧部は、前記キャビティを加圧する圧力の周波数を、変更して加圧することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液滴吐出装置であって、
液滴吐出装置が発熱する熱を移動して、除去する気体の流れを生成する送風部を備え、
前記ノズルから前記機能液が吐出しないとき、
風速の遅い場所に液滴吐出ヘッドが、位置するときに、前記加圧部が、前記キャビティを加圧する圧力の周波数に比べて、
風速の早い場所に液滴吐出ヘッドが位置するとき、前記加圧部は、前記キャビティを加圧する圧力の周波数を高くして、キャビティを加圧することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項3】
請求2に記載の液滴吐出装置であって、
前記液滴吐出ヘッドを複数備え、
前記ノズルから前記機能液が吐出しないとき、
風速の遅い場所に位置する前記液滴吐出ヘッドの前記加圧部が、前記キャビティを加圧する圧力の周波数に比べて、
風速の早い場所に位置する前記液滴吐出ヘッドの前記加圧部は、前記キャビティを加圧する圧力の周波数を高くして、キャビティを加圧することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項4】
請求項1に記載の液滴吐出装置であって、
前記液滴吐出ヘッドの温度を測定する測定部を備え、
前記ノズルから前記機能液を吐出しないとき、
前記液滴吐出ヘッドの温度が高いときに、前記加圧部が前記キャビティを加圧する圧力の周波数に比べて、前記液滴吐出ヘッドの温度が低いときには、前記加圧部が前記キャビティを加圧する圧力の周波数を高くして、キャビティを加圧することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項5】
請求4に記載の液滴吐出装置であって、
前記液滴吐出ヘッドを複数備え、
前記ノズルから前記機能液が吐出しないとき、
温度の高い前記液滴吐出ヘッドの前記加圧部が、前記キャビティを加圧する圧力の周波数に比べて、
温度の低い前記液滴吐出ヘッドの前記加圧部は、前記キャビティを加圧する圧力の周波数を高くして、キャビティを加圧することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の液滴吐出装置であって、
前記加圧部は、前記キャビティを加圧する圧力の周波数を、変更して加圧する換わりに、前記キャビティを加圧する圧力の振幅を、変更して加圧することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の液滴吐出装置であって、
前記加圧部は、前記キャビティを加圧する圧力の周波数を、変更して加圧する換わりに、前記キャビティを加圧する圧力における圧力変動のデューティー比を、変更して加圧することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項8】
液滴吐出ヘッドの加圧部を用いて、キャビティを加圧して、前記キャビティと連通するノズルから機能液をワークに吐出して描画する描画方法であって、
前記ノズルから前記機能液を前記ワークに吐出する描画工程と、
前記ノズルを洗浄する洗浄工程または、前記ノズルから吐出する前記機能液の吐出量を測定する吐出量測定工程または、前記ノズルから吐出しない待機工程などからなる保守工程とを有し、
前記加圧部は、前記ノズルから前記機能液が吐出しないとき、前記ノズルから前記機能液が吐出しない程度に、前記キャビティを複数回連続して加圧し、前記機能液を圧力変動させ、前記描画工程と前記保守工程とでは、異なる周波数で加圧することを特徴とする描画方法。
【請求項9】
複数の液滴吐出ヘッドの加圧部を用いて、キャビティを加圧して、前記キャビティと連通するノズルから機能液をワークに吐出して描画する描画方法であって、
前記加圧部は、前記ノズルから前記機能液が吐出しないとき、前記ノズルから前記機能液が吐出しない程度に、前記キャビティを複数回連続して加圧し、前記機能液を圧力変動させ、
風速の遅い場所に位置する前記液滴吐出ヘッドの前記加圧部が、前記キャビティを加圧する圧力の周波数に比べて、
風速の早い場所に位置する前記液滴吐出ヘッドの前記加圧部は、前記キャビティを加圧する圧力の周波数を高くして、キャビティを加圧することを特徴とする描画方法。
【請求項10】
液滴吐出ヘッドの加圧部を用いて、キャビティを加圧して、前記キャビティと連通するノズルから機能液をワークに吐出して描画する描画方法であって、
前記加圧部は、前記ノズルから前記機能液が吐出しないとき、前記ノズルから前記機能液が吐出しない程度に、前記キャビティを複数回連続して加圧し、前記機能液を圧力変動させ、
測定部を用いて、前記液滴吐出ヘッドの温度を測定し、
液滴吐出ヘッドの温度が高いときに、前記加圧部が前記キャビティを加圧する圧力の周波数に比べて、液滴吐出ヘッドの温度が低いときには、前記加圧部が前記キャビティを加圧する圧力の周波数を高くして、キャビティを加圧することを特徴とする描画方法。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれか一項に記載の描画方法であって、
前記加圧部は、前記キャビティを加圧する圧力の周波数を、変更して加圧する換わりに、前記キャビティを加圧する圧力の振幅を、変更して加圧することを特徴とする描画方法。
【請求項12】
請求項8〜10のいずれか一項に記載の描画方法であって、
前記加圧部は、前記キャビティを加圧する圧力の周波数を、変更して加圧する換わりに、前記キャビティを加圧する圧力における圧力変動のデューティー比を、変更して加圧することを特徴とする描画方法。
【請求項13】
液滴吐出ヘッドの加圧部を用いて、キャビティを加圧して、前記キャビティと連通するノズルから機能液をワークに吐出する液滴吐出ヘッドの制御方法であって、
前記加圧部は、加圧制御部の駆動信号を受けて、前記キャビティを加圧して、前記機能液を圧力変動させ、
前記液滴吐出ヘッドが、前記ノズルから前記機能液を吐出しないとき、
前記加圧部は、前記ノズルから前記機能液が吐出しない程度に、前記キャビティを複数回連続して加圧し、
前記加圧制御部は、前記キャビティを加圧する圧力の周波数を、変更して、前記加圧部を制御することを特徴とする液滴吐出ヘッドの制御方法。
【請求項14】
請求項13に記載の液滴吐出ヘッドの制御方法であって、
前記加圧制御部は、複数の前記液滴吐出ヘッドを同時に制御し、
前記加圧部が前記ノズルから前記機能液を吐出しないとき、
風速の遅い場所に位置する前記液滴吐出ヘッドの前記加圧部が、前記キャビティを加圧する圧力の周波数に比べて、
風速の早い場所に位置する前記液滴吐出ヘッドの前記加圧部が、前記キャビティを加圧する圧力の周波数を高くする様に、
前記加圧制御部が前記加圧部を制御することを特徴とする液滴吐出ヘッドの制御方法。
【請求項15】
請求項13に記載の液滴吐出ヘッドの制御方法であって、
前記ノズルから前記機能液を吐出しないとき、
前記測定部を用いて、前記液滴吐出ヘッドの温度を測定し、
前記液滴吐出ヘッドの温度が高いときに、前記加圧部が前記キャビティを加圧する圧力の周波数に比べて、
前記液滴吐出ヘッドの温度が低いときには、前記加圧部が前記キャビティを加圧する圧力の周波数を高くする様に、
前記加圧制御部が前記加圧部を制御することを特徴とする液滴吐出ヘッドの制御方法。
【請求項16】
請求項13〜15のいずれか一項に記載の液滴吐出ヘッドの制御方法であって、
前記加圧部が、前記キャビティを加圧する圧力の周波数を、変更して加圧する換わりに、前記キャビティを加圧する圧力の振幅を、変更して加圧する様に、前記加圧制御部が前記加圧部を制御することを特徴とする液滴吐出ヘッドの制御方法。
【請求項17】
請求項13〜15のいずれか一項に記載の液滴吐出ヘッドの制御方法であって、
前記加圧部が、前記キャビティを加圧する圧力の周波数を、変更して加圧する換わりに、前記キャビティを加圧する圧力における圧力変動のデューティー比を、変更して加圧する様に、
前記加圧制御部が前記加圧部を制御することを特徴とする液滴吐出ヘッドの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−104965(P2008−104965A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−290816(P2006−290816)
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】