説明

液滴吐出ヘッド

【課題】共通液室基板の剛性が高く、割れの発生が低減され、生産性が高く、かつ高い歩留まりで製作することができる液滴吐出ヘッドを提供する。
【解決手段】複数のノズル孔30が形成されたノズル基板3と、
ノズル孔30に対応する複数の圧力室21、及び振動板20を壁面の一部とする流路の水平面上に形成された共通電極23と、圧電素子25と、個別電極24とからなるアクチュエータ26が積層された個別液室基板2と、
ドライバIC4を設置保護する空間、アクチュエータ26の動作領域を確保する振動個室8、及び圧力室21に液滴を供給する共通液室10が形成された共通液室基板1とを備え、共通液室基板1は、共通液室10の上部にノズル配列方向と直交する方向に梁状部7を有するとともに、両側から異なるパターンでエッチングされたときのパターン重複部分を開口させてなる液滴供給貫通孔6を複数有する液滴吐出ヘッドである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出ヘッドに関し、さらに該液滴吐出ヘッドを備えるインクカートリッジ、画像形成装置、液滴吐出装置、及び前記液滴吐出ヘッドを応用したマイクロポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、記録時の騒音が極めて小さいこと、高速印字が可能であること、インクの自由度が高く安価な普通紙を使用できることなど多くの利点を有する。この中でも記録が必要な時にのみインク液滴を吐出する、いわゆるインク・オン・デマンド方式が、記録に不要なインク液滴の回収を必要としないため、現在主流となってきている。
【0003】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置等の画像記録装置或いは画像形成装置として用いるインクジェット記録装置において使用する液滴吐出ヘッドであるインクジェットヘッドとしては、インク滴を吐出するノズルと、このノズルが連通する吐出室(加圧液室、圧力室、インク流路等とも称される。)と、吐出室内のインクを加圧する圧力を発生する圧力発生手段とを備えて、圧力発生手段で発生した圧力で吐出室内インクを加圧することによってノズルからインク滴を吐出させる。
【0004】
このような液滴吐出ヘッドとしては、圧力発生手段として圧電素子などの電気機械変換素子を用いて吐出室の壁面を形成している振動板を変形変位させることでインク滴を吐出させるピエゾ型のもの、吐出内に配設した発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いてインクの膜沸騰でバブルを発生させてインク滴を吐出させるバブル型(サーマル型)のものなどがある。
【0005】
ピエゾ型のものにはD33方向の変形を利用した縦振動型、D31方向の変形を利用した横振動(ベンドモード)型、更には剪断変形を利用したシェアモード型等がある。その中で近年、半導体プロセスやマイクロマシニング技術の進歩により、パターンニング加工技術が確立されていて、かつ、低コストのSi基板に加圧室及びピエゾ素子を直接形成するアクチュエータ構成が考案されている。
【0006】
また、ヘッドの小型化の要求から高集積化の傾向にあり、ドライバICを個別液室基板に直接搭載する構成の液滴吐出ヘッドが考案されてきている。高集積化による変化としては、例えば、ノズル密度、液室幅、及び液室ピッチが小さくなる傾向が挙げられる。さらにヘッドの長尺化に伴い、連続ノズル配列や連続個別液室配列のために、共通液室の形成パターンが細長く、かつ大きくなる傾向にある。これらの条件を満たすために、ヘッドの構成部品の製造における改良が求められているが、低コストで歩留まり良く製造可能なヘッドであることが重要である。
【0007】
例えば、特許文献1では、電極取り出し口の開口部の面積を縮小することなく、キャビティ基板(シリコン)をエッチングした後のシリコンの薄膜部のみからなる部分の面積を少なくして薄膜部の割れを低減し、生産性を向上させ、且つ高い歩留まりで製作することができる液滴吐出ヘッドの製造方法が提案されている。また、特許文献2では、アクチュエータ制御用のICをインクジェットヘッド内に埋め込む構造で、電極基板には個別電極が形成される凹部よりも深い第2の凹部である凹部が作成されており、第2の凹部に個別電極を駆動するための電力を外部から取り入れるための入力配線を形成した構造のインクジェットヘッドが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載のインクジェットヘッドは、構造的にシリコンのエッチング残し部は電極取り出しに邪魔になり好適ではない。また特許文献2に記載のインクジェットヘッドは、電極基板に凹部を形成するのに対し、吐出室が形成されて該吐出室の底壁が振動板となるキャビティ基板には貫通孔をあけるため、キャビティ基板の剛性が低下し、割れが発生しやすくなり、結果的に生産性が低下するという問題がある。
【0009】
本発明の課題は、以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであり、ノズル孔に連通する圧力室へ液滴を供給する共通液室が形成された共通液室基板の剛性が高く、割れの発生が低減され、生産性が高く、かつ高い歩留まりで製作することができる液滴吐出ヘッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る液滴吐出ヘッド、インクカートリッジ、液滴吐出装置、マイクロポンプ、及び画像形成装置は以下のとおりである。
〔1〕 複数のノズル孔が形成されたノズル基板と、
前記ノズル孔に対応する複数の圧力室、及び該圧力室に連通し振動板を壁面の一部とする流路の水平面上に形成された共通電極と、該共通電極上に形成された圧電素子と、該圧電素子上に形成された個別電極とからなるアクチュエータが積層された個別液室基板と、
前記アクチュエータを駆動する信号を出力するドライバICを設置保護する空間、前記アクチュエータの動作領域を確保する振動個室、及び前記圧力室に液滴を供給する共通液室が形成された共通液室基板とを備え、
前記共通液室基板は、前記共通液室の上部にノズル配列方向と直交する方向に梁状部を有するとともに、両側から異なるパターンでエッチングされたときのパターン重複部分を開口させてなる液滴供給貫通孔を複数形成有することを特徴とする液滴吐出ヘッドである。
〔2〕 前記共通液室基板は、シリコン基板をウェットエッチングにより加工してなることを特徴とする前記〔1〕に記載の液滴吐出ヘッドである。
〔3〕 前記共通液室基板との接合面に前記圧力室に液滴を供給する共通液室を形成したフレーム部材を備え、該フレーム部材の前記共通液室が、前記共通液室基板の前記共通液室とともに液滴フィルターを形成することを特徴とする前記〔1〕または〔2〕に記載の液滴吐出ヘッドである。
〔4〕 前記個別液室基板の外部から前記ドライバICへ、前記個別電極の駆動信号を入力するための入力配線が設けられ、該入力配線が金属材料から形成されていることを特徴とする前記〔1〕から〔3〕のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドである。
〔5〕 前記〔1〕から〔4〕のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドと、前記液滴吐出ヘッドと一体化され、前記液滴吐出ヘッドにインクを供給するためのインクタンクを備えることを特徴とするインクカートリッジである。
〔6〕 前記〔1〕から〔4〕のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドを備え、該液滴吐出ヘッドによる液滴吐出動作を行うことを特徴とする液滴吐出装置である。
〔7〕 前記〔1〕から〔4〕のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドを備え、前記振動板の変形により液体を輸送することを特徴とするマイクロポンプである。
〔8〕 前記〔1〕から〔4〕のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドから吐出される液滴により画像を形成することを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、請求項1の発明によれば、複数のノズル孔が形成されたノズル基板と、前記ノズル孔に対応する複数の圧力室、及び該圧力室に連通し振動板を壁面の一部とする流路の水平面上に形成された共通電極と、該共通電極上に形成された圧電素子と、該圧電素子上に形成された個別電極とからなるアクチュエータが積層された個別液室基板と、前記アクチュエータを駆動する信号を出力するドライバICを設置保護する空間、前記アクチュエータの動作領域を確保する振動個室、及び前記圧力室に液滴を供給する共通液室が形成された共通液室基板とを備え、前記共通液室基板は、前記共通液室の上部にノズル配列方向と直交する方向に梁状部を有するとともに、両側から異なるパターンでエッチングされたときのパターン重複部分を開口させてなる液滴供給貫通孔を複数有する液滴吐出ヘッドであるため、前記共通液室基板の剛性が高く、割れの発生が低減され、生産性が高く、製造過程での破損も防ぐことができ、高い歩留まりで製作することができる。また、前記共通液室基板の材質選択の自由度が増し、設計が容易になり、材料コストの低減が可能になる。
請求項2の発明によれば、請求項1に記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記共通液室基板は、シリコン基板をウェットエッチングにより加工してなるため、前記共通液室基板の製造方法として、両側から同時にエッチング加工を実施できるため、工程の短縮や製造コスト低減を図ることができる。
請求項3の発明によれば、請求項1または2に記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記共通液室基板との接合面に前記圧力室に液滴を供給する共通液室を形成したフレーム部材を備え、該フレーム部材の前記共通液室が、前記共通液室基板の前記共通液室とともに液滴フィルターを形成するため、インク内に混入している異物による影響を、前記共通液室の段階で取り除くことができ、液滴供給不良の発生を防止できるとともに、製品寿命を延ばすことができる。
請求項4の発明によれば、請求項1から3のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記個別液室基板の外部から前記ドライバICへ、前記個別電極の駆動信号を入力するための入力配線が設けられ、該入力配線が金属材料から形成されているため、外部からの入力信号をドライバICの長手方向に集約して配線することでフレキシブルプリント配線基板(FPC)との接合が容易になり、小型化を図ることができ、さらに印字速度を向上させることができる。
請求項5の発明によれば、請求項1から4のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドと、前記液滴吐出ヘッドと一体化され、前記液滴吐出ヘッドにインクを供給するためのインクタンクを備えるインクカートリッジであるため、生産性が高く、かつ高い歩留まりで製作することができるとともに、該液滴吐出ヘッドにインクを供給するインクタンクを一体化したので、製品の信頼性確保と、低コスト化を図ることができる。また、チップの小型化により印字速度を向上させることができ、該インクカートリッジを用いることにより、高画質記録が可能になる。
請求項6の発明によれば、請求項1から4のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドを備え、該液滴吐出ヘッドによる液滴吐出動作を行う液滴吐出装置であるため、生産性が高く、かつ高い歩留まりで製作することができる。
請求項7の発明によれば、請求項1から4のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドを備え、前記振動板の変形により液体を輸送するマイクロポンプであるため、共通液室基板の剛性が高く、割れの発生が低減され、生産性が高く、かつ高い歩留まりで製作することができる。
請求項8の発明によれば、請求項1から4のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドから吐出される液滴により画像を形成する画像形成装置であるため、生産性が高く、かつ高い歩留まりで製作された前記液滴吐出ヘッドを備え、製品の信頼性確保と、低コスト化を図ることができ、高画質記録が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の液滴吐出ヘッドの部分上面図であり、上は共通液室基板上からの透視図であり、下は個別液室基板からの透視図である。
【図2】図1のY−Y’部の断面図である。
【図3】図1のX−X’部の断面図である。
【図4】図1のX−X’部の断面図で示した製造の流れ図である。
【図5】本発明の液滴吐出ヘッドの共通液室基板の概略斜視図である。
【図6】本発明の液滴吐出ヘッドの第2の実施態様における断面図(Y−Y’)である。
【図7】本発明の液滴吐出ヘッドの第3の実施態様における断面図(Y−Y’)である。
【図8】本発明のインクカートリッジの一実施態様を示す斜視図である。
【図9】本発明の画像形成装置の一実施態様を示す斜視図である。
【図10】本発明の画像形成装置の一実施態様を示す断面図である。
【図11】本発明のマイクロポンプの一実施態様の要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る液滴吐出ヘッド、インクカートリッジ、画像形成装置、液滴吐出装置、及び前記液滴吐出ヘッドを応用したマイクロポンプについて、図面を参照して説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0014】
〔第1の実施態様〕
図1は本発明の第1の実施形態にかかる液滴吐出ヘッドの基板を真上から見た図であり、図2は、図1の液滴吐出ヘッドのY−Y’断面図であり、図3は、図1の液滴吐出ヘッドのX−X’断面図である。
図1〜図3に示す本発明の液滴吐出ヘッドは、ノズル基板3に設けたノズル孔30から液滴を吐出するサイドシュータータイプのものであり、圧電型アクチュエータにより駆動される方式のものである。
【0015】
図1〜図3に示すように、本発明の液滴吐出ヘッドは、共通液室基板1、個別液室基板2、ノズル基板3の3つの基板から構成されている。個別液室基板2の一方の面には、共通液室基板1が接合されており、個別液室基板2の他方の面にはノズル基板3が接合されている。
また、本発明の液滴吐出ヘッドには、アクチュエータ26の個別電極24に駆動信号を供給するドライバIC4が設けられている。
【0016】
個別液室基板2は、圧力室21の一部壁面を形成する振動板20と、振動板20を介して圧力室21と対向する側にアクチュエータ26が形成され、アクチュエータ26は、共通電極23と圧電素子25と個別電極24とから形成されている。また、圧力室21は、流体抵抗22を通じて共通液室基板1の貫通穴11に連通している。
共通液室基板1は、共通液室10と各圧力室21にインクを供給する貫通穴11が形成されている。
【0017】
図1〜図3に示すように、各圧力室21は細長い直方体の形状をしており、主走査方向に沿って2列、副走査方向にそって複数配置されており、例えば300dpiの解像度で配列されている。
個別電極24は、圧電アクチュエータ26から図1のように引き出され、ドライバIC4とバンプ接合される。
【0018】
本発明の液滴吐出ヘッドの動きについて説明する。各圧力室21内に液体(例えば、インクなどの記録液)が満たされた状態において、ドライバIC4を通じて個別電極24に電圧パルスが印加されることにより、アクチュエータ26が振動板20と平行な方向に収縮を起こし、振動板20が圧力室21側に撓む。これにより、圧力室21内の圧力が急激に上昇して、圧力室21に連通するノズル孔30から記録液が吐出される。
パルス印加後は、縮んだアクチュエータ26が元に戻り、撓んだ振動板20も元の位置に戻るため、圧力室21内が共通液室10内に比べて負圧となり、共通液室10から流体抵抗部22を介して液体が圧力室21に供給される。これを繰り返すことにより、液滴が連続的にノズル孔30から吐出される。例えば、インクを吐出する液滴吐出ヘッドであれば、対向して配置した被記録媒体(用紙)に画像が形成される。
【0019】
次に、本発明の液体吐出ヘッドの製造方法及び構成について、図4により説明する。
図4に示すフロー図は、図1のX−X’における断面図である。本実施態様においては、シリコン基板に振動板材料及び圧電素子材料を成膜していくことでアクチュエータを作成していく例を説明する。
【0020】
まず、(a)に示すように、個別液室基板2となる厚み250μmの<100>シリコン基板の表面に、シリコン酸化膜5aを0.5μm、及びシリコン1.0μmを張り合わせた振動板20となるSOI基板を用いる。SOI基板の表面にパイロ酸化法によりシリコン酸化膜5bを0.6μm成膜する。
【0021】
次に(b)に示すように、アクチュエータ26の共通電極23となるPt層をスパッタ法により0.1μm成膜し、共通電極23としてリソエッチ法によりパターニングを行なう。更にスパッタ法により圧電素子25、個別電極24をそれぞれ1.0μm、0.1μmづつ成膜する。
【0022】
そして(c)に示すように、リソエッチ法により両方の膜を同じマスクでパターニングし、圧力室21に対応する部分にアクチュエータ26を形成する。
【0023】
次に(d)に示すように、個別液室基板2となるシリコン基板の反対面にシリコン酸化膜を形成した際に同時に形成されていたしシリコン酸化膜5cをリソエッチ法によりパターニングする。更にこの酸化膜をマスクにシリコンをICPドライエッチングによりエッチングし圧力室21、流体抵抗部22及び共通液室10となる凹部を形成する。
【0024】
その後(e)に示すように、スルファミン酸浴で高速電鋳法により製作したノズル基板3を、個別液室基板2の圧力室21側に接着する。
【0025】
次に、(f)に示すように、アクチュエータ26の個別電極24及び共通電極23から引き出された入力端子に、ドライバIC4をバンプ接合する。別途、シリコン基板にリソエッチ法で凹部(アクチュエータの動作領域を確保する振動個室8)を形成してある共通液室基板1を製作しておき、(g)に示すように、個別液室基板2のアクチュエータ形成面に接着する。
【0026】
ここで、共通液室基板1をドライバIC4と冷却媒体流路12が接するように形成しておく。共通液室基板1は、<110>シリコン基板をTMAH、KOHなどのアルカリエッチング液を用いたウェットエッチングにより加工したものでもよく、また樹脂モールドやメタルインジェクションモールドなどの成型部品で代用しても構わない。
【0027】
最後に、吐出液及び冷却溶媒の供給口および排出口を有するフレーム13を、共通液室基板1の上部に接合して、本実施態様の液滴吐出ヘッドが完成する。
【0028】
上述のように、本発明の液滴吐出ヘッドは、複数のノズル孔30が形成されたノズル基板4と、ノズル孔30に対応する複数の圧力室21、及び圧力室21に連通し振動板20を壁面の一部とする流路の水平面上に形成された共通電極23と、共通電極23上に形成された圧電素子25と、圧電素子25上に形成された個別電極24とからなるアクチュエータ26が積層された個別液室基板2と、アクチュエータ26を駆動する信号を出力するドライバIC4を設置保護する空間、アクチュエータ26の動作領域を確保する振動個室8、及び圧力室21に液滴を供給する共通液室10が形成された共通液室基板1とを備える。
そして、図6に示すように、共通液室基板1は、共通液室10の上部にノズル配列方向と直交する方向に梁状部7を有するとともに、両側から異なるパターンでエッチングされたときのパターン重複部分を開口させてなる液滴供給貫通孔6が、複数形成されている。
【0029】
各ビットへ液滴を供給する液滴供給貫通孔6は、従来、連続して開口した形状の貫通孔であったが、本発明の液滴吐出ヘッドのようにフレーム13側(上表面)に梁状部7を形成することで、共通液室基板1の剛性を向上させることができ、製造過程などにおける破損を防止することができる。
また、上述のとおり、共通液室基板1はシリコン製であり、両側から異なるパターンでウェットエッチングされる。個別液室基板2側には、共通液室10の空間を設けて各ビットへ均等に液滴を供給することができ、各ビットの配置ピッチを変えないようにしてある。
【0030】
〔第2の実施態様〕
図6は、本発明の第2の実施態様の液滴吐出ヘッドのY−Y’断面図である。
本実施態様の液滴吐出ヘッドは、ドライバIC4をバンプ接合した後に、共通液室基板1を、ドライバIC4の裏面が覗くように凹部エッチング加工している。また、冷却媒体の流路12が形成されている。
接合部分には冷却媒体接液性を有する接着剤を用いる。
【0031】
〔第3の実施態様〕
図7は、本発明の第3の実施態様の液滴吐出ヘッドのY−Y’断面図である。
本発明実施態様の液滴吐出ヘッドは、フレーム13にも共通液室10bを形成することで、共通液室基板1の共通液室10aと合わせた構造で、液滴フィルター10cを形成するものである。なお、フィルターの目はエッチング用マスクの設計寸法で調節できる。
インク内異物の影響を共通液室10で取り除くことができ、製品寿命を延ばすことができる。
また、外部からの入力信号をドライバIC4へ接続するための入力配線35を長手方向に集約することで、FPCとの接合を容易にし、小型化を図ることができる。
【0032】
〔インクカートリッジ〕
本発明のインクカートリッジについて図8を参照して説明する。
図8に示すように、インクカートリッジ100は、ノズル孔101等を有する本発明の液滴吐出ヘッドであるインクジェットヘッド102と、このインクジェットヘッド102に対してインクを供給するインクタンク103とを一体化したものである。
このように液滴吐出ヘッド102と、インクを供給するインクタンク(液体タンク)103とを一体化することにより、液滴吐出特性のバラツキが少なく、信頼性の高い液滴吐出ヘッドを一体化した液体カートリッジ(インクタンク一体型ヘッド)が低コストで得られる。
【0033】
〔画像形成装置〕
次に、本発明の液滴吐出ヘッドであるインクジェットヘッドを搭載した本発明の画像形成装置であるインクジェット記録装置について、図22及び図23を用いて説明する。
なお、図22は同記録装置の斜視説明図、図23は同記録装置の機構部の側面説明図である。
本発明の画像形成装置(インクジェット記録装置)111は、装置本体の内部に主走査方向に移動可能なキャリッジ123、キャリッジ123に搭載した本発明に係るインクジェットヘッドからなる記録ヘッド124、記録ヘッドへインクを供給するインクカートリッジ125等で構成される印字機構部112等を収納し、装置本体111の下方部には前方側から多数枚の用紙113を積載可能な給紙カセット(或いは給紙トレイでもよい)114を抜き差し自在に装着することができ、また、用紙113を手差しで給紙するための手差しトレイ115を開倒することができ、給紙カセット114或いは手差しトレイ115から給送される用紙113を取り込み、印字機構部112によって所要の画像を記録した後、後面側に装着された排紙トレイ116に排紙する。
【0034】
印字機構部112は、図示しない左右の側板に横架したガイド部材である主ガイドロッド121と従ガイドロッド122とでキャリッジ123を主走査方向(紙面垂直方向)に摺動自在に保持し、このキャリッジ123にはイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する本発明の液滴吐出ヘッドからなる記録ヘッド124を複数のインク吐出口を主走査方向と交叉する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けるように装着している。
またキャリッジ123には、記録ヘッド124に各色のインクを供給するための各インクカートリッジ125を交換可能に装着している。なお、本発明のインクカートリッジを搭載する構成とすることもできる。
【0035】
インクカートリッジ125は、上方に大気と連通する大気口、下方にはインクジェットヘッド124へインクを供給する供給口を、内部にはインクが充填された多孔質体を有しており、多孔質体の毛管力によりインクジェットヘッド124へ供給されるインクをわずかな負圧に維持している。
また、記録ヘッドとしてここでは各色のヘッド124を用いているが、各色のインク滴を吐出するノズルを有する1個のヘッドでもよい。
【0036】
ここで、キャリッジ123は後方側(用紙搬送方向下流側)を主ガイドロッド121に摺動自在に嵌装し、前方側(用紙搬送方向上流側)を従ガイドロッド122に摺動自在に載置している。そして、このキャリッジ123を主走査方向に移動走査するため、主走査モータ127で回転駆動される駆動プーリ128と従動プーリ129との間にタイミングベルト130を張装し、このタイミングベルト130をキャリッジ123に固定しており、主走査モータ127の正逆回転によりキャリッジ123が往復駆動される。
【0037】
一方、給紙カセット114にセットした用紙113をヘッド124の下方側に搬送するために、給紙カセット114から用紙113を分離給装する給紙ローラ131及びフリクションパッド132と、用紙113を案内するガイド部材133と、給紙された用紙113を反転させて搬送する搬送ローラ134と、この搬送ローラ134の周面に押し付けられる搬送コロ135及び搬送ローラ134からの用紙113の送り出し角度を規定する先端コロ136とを設けている。搬送ローラ134は副走査モータ137によってギヤ列を介して回転駆動される。
【0038】
そして、キャリッジ123の主走査方向の移動範囲に対応して、搬送ローラ134から送り出された用紙113を、記録ヘッド124の下方側で案内する用紙ガイド部材である印写受け部材139を設けている。この印写受け部材139の用紙搬送方向下流側には、用紙113を排紙方向へ送り出すために回転駆動される搬送コロ141、拍車142を設け、さらに用紙113を排紙トレイ116に送り出す排紙ローラ143及び拍車144と、排紙経路を形成するガイド部材145,146とを配設している。
【0039】
記録時には、キャリッジ123を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド124を駆動することにより、停止している用紙113にインクを吐出して1行分を記録し、用紙113を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号、または用紙113の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了させ、用紙113を排紙する。
【0040】
キャリッジ123の移動方向右端側の記録領域を外れた位置には、ヘッド124の吐出不良を回復するための回復装置147を配置している。回復装置147はキャップ手段と吸引手段とクリーニング手段を有している。キャリッジ123は印字待機中にはこの回復装置147側に移動されてキャッピング手段でヘッド124をキャッピングされ、吐出口部を湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。
また、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出することにより、全ての吐出口のインク粘度を一定にし、安定した吐出性能を維持する。
吐出不良が発生した場合等には、キャッピング手段でヘッド124の吐出口(ノズル)を密封し、チューブを通して吸引手段で吐出口からインクとともに気泡等を吸い出し、吐出口面に付着したインクやゴミ等はクリーニング手段により除去され吐出不良が回復される。また、吸引されたインクは、本体下部に設置された廃インク溜(不図示)に排出され、廃インク溜内部のインク吸収体に吸収保持される。
【0041】
このように、本発明の画像記録装置は、本発明の液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)を搭載しており、共通液室基板の剛性が高く、割れの発生が低減され、生産性が高く、かつ高い歩留まりで製作された本発明の液滴吐出ヘッドにより、インク滴の吐出特性のバラツキが少なく、高い画像品質の画像を記録できる画像形成装置が得られる。また、画像形成装置としては、プリンタ、ファクシミリ、コピア、MFPなどが挙げられる。
【0042】
〔液滴吐出装置〕
本発明の液滴吐出ヘッドを備えた液滴吐出装置としては、例えば、液体レジストを液滴として吐出する装置や、DNAの試料を液滴として吐出する装置などが挙げられる。
なお、本発明の液滴吐出ヘッドのアクチュエータは、光学走査ミラーや光学バルブなどの光学デバイスとしても利用できるものである。
【0043】
〔マイクロポンプ〕
本発明のマイクロポンプについて、図11を参照して説明する。
本発明のマイクロポンプは、本発明の液滴吐出ヘッドを応用したものであり、振動板20の変形により液体を輸送するものである。
図11に示すように、振動個室8が電極23,24に挟まれた圧電素子25を含む振動板20を挟んで対峙しており、この組み合わせが複数設けられており、流路33の中を流体が流れる構造となっている。圧電素子25を含む振動板20を図中右側から順次駆動することによって、流路33内の流体は矢印方向へ流れが生じ、流体の輸送が可能となる。
【符号の説明】
【0044】
1 共通液室基板
2 個別液室基板
3 ノズル基板
4 ドライバIC
6 インク供給貫通孔
7 梁状部
8 振動個室
10 共通液室
11 貫通穴
13 フレーム
20 振動板
21 圧力室
23 共通電極
24 個別電極
25 圧電素子
26 アクチュエータ
30 ノズル孔
【先行技術文献】
【特許文献】
【0045】
【特許文献1】特開2007−62281
【特許文献2】特開2008−87208

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズル孔が形成されたノズル基板と、
前記ノズル孔に対応する複数の圧力室、及び該圧力室に連通し振動板を壁面の一部とする流路の水平面上に形成された共通電極と、該共通電極上に形成された圧電素子と、該圧電素子上に形成された個別電極とからなるアクチュエータが積層された個別液室基板と、
前記アクチュエータを駆動する信号を出力するドライバICを設置保護する空間、前記アクチュエータの動作領域を確保する振動個室、及び前記圧力室に液滴を供給する共通液室が形成された共通液室基板とを備え、
前記共通液室基板は、前記共通液室の上部にノズル配列方向と直交する方向に梁状部を有するとともに、両側から異なるパターンでエッチングされたときのパターン重複部分を開口させてなる液滴供給貫通孔を複数有することを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項2】
前記共通液室基板は、シリコン基板をウェットエッチングにより加工してなることを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項3】
前記共通液室基板との接合面に前記圧力室に液滴を供給する共通液室を形成したフレーム部材を備え、該フレーム部材の前記共通液室が、前記共通液室基板の前記共通液室とともに液滴フィルターを形成することを特徴とする請求項1または2に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項4】
前記個別液室基板の外部から前記ドライバICへ、前記個別電極の駆動信号を入力するための入力配線が設けられ、該入力配線が金属材料から形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドと、前記液滴吐出ヘッドと一体化され、前記液滴吐出ヘッドにインクを供給するためのインクタンクを備えることを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項6】
請求項1から4のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドを備え、該液滴吐出ヘッドによる液滴吐出動作を行うことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項7】
請求項1から4のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドを備え、前記振動板の変形により液体を輸送することを特徴とするマイクロポンプ。
【請求項8】
請求項1から4のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドから吐出される液滴により画像を形成することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図4】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−51236(P2012−51236A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195645(P2010−195645)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】