液滴吐出装置の液滴吐出方法及び液滴吐出装置
【課題】 液状体の吐出による放熱によって生じる温度変化を補償し、各吐出領域に吐出する液状体の容量の均一性を向上した液滴吐出装置の液滴吐出方法及び液滴吐出装置を提供することにある。
【解決手段】 マザー対向基板15上の各吐出領域Sに相対してマザー対向基板15を加熱する基板ヒータHを設けた。基板ヒータHは各行の吐出領域Sに相対するX軸ヒータHXと各列の吐出領域Sに相対するY軸ヒータHYを備えている。そして、Y軸ヒータは、液晶の吐出による吐出ヘッド31の温度低下を補償するように制御温度を設定している。また、X軸ヒータHXは、マザー対向基板15との熱交換による吐出ヘッド31の温度変化を補償するように、外縁近傍では制御温度を中心位置近傍よりも高く設定している。
【解決手段】 マザー対向基板15上の各吐出領域Sに相対してマザー対向基板15を加熱する基板ヒータHを設けた。基板ヒータHは各行の吐出領域Sに相対するX軸ヒータHXと各列の吐出領域Sに相対するY軸ヒータHYを備えている。そして、Y軸ヒータは、液晶の吐出による吐出ヘッド31の温度低下を補償するように制御温度を設定している。また、X軸ヒータHXは、マザー対向基板15との熱交換による吐出ヘッド31の温度変化を補償するように、外縁近傍では制御温度を中心位置近傍よりも高く設定している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出装置の液滴吐出方法及び液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置の製造工程には、透明基板の吐出領域に液状体としての液晶を吐出し、その吐出領域を対向基板で封止する封止工程が行われている。この封止工程では、吐出領域に吐出した液晶の容量が変動すると、透明基板と対向基板との間の距離(セルギャップ)が変動して、液晶表示装置の表示画質を劣化させる問題があった。そこで、吐出する液晶の容量変動を抑制する方法として、液晶を微小な液滴として吐出する、いわゆるインクジェット法が提案されている(例えば、特許文献1)。このインクジェット法は、一般的に、圧電素子の伸縮等によって吐出ノズルに形成される液状体の界面(メニスカス)を強制的に振動させ、その振動過程において、液状体を液滴として吐出させるようにしている。
【0003】
ところが、例えば粘度が50cp〜100cpとなる液晶では、メニスカスの液晶を、振動によって吐出させることが困難となり、液滴の容量を変動させたり、液滴を形成不能にしたりするといった問題があった。
【0004】
そこで、こうしたインクジェット法では、従来より、高粘度の液状体を、均一な容量の液滴として吐出可能にする提案がなされている(例えば、特許文献2)。特許文献2では、吐出ノズルを有した液滴吐出ヘッドや同液滴吐出ヘッドに液晶を供給する供給ラインを、チューブヒータ等の加熱装置によって加熱して、メニスカス近傍の液晶の粘度を低下させている。これによって、高粘度の液状体(液晶)を、均一な容量の液滴として吐出を可能にしている。
【特許文献1】特開平5−281562号公報
【特許文献2】特開2004−358352号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載のインクジェット法では、液滴吐出ヘッドの吐出ノズルから液状体を吐出することにより放熱が生じて、液滴吐出ヘッドの温度が変動していた。その結果、吐出ノズル内の液晶の温度、すなわち液晶の粘度が変動し、吐出領域に吐出する液晶の容量を変動させる問題があった。
【0006】
本発明は、前述した上記問題点を解消するためになされたものであって、その目的は、液状体の吐出による放熱によって生じる温度変化を補償し、各吐出領域に吐出する液状体の容量の均一性を向上した液滴吐出装置の液滴吐出方法及び液滴吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の液滴吐出装置の液滴吐出方法は、基板に形成された複数の吐出領域上を相対移動可能に設けられた液滴吐出手段にて、前記各吐出領域に対して予め定められた順序で液状体の液滴を吐出するとき、液状体加熱手段にて予め前記液状体を加熱して吐出するようにした液滴吐出装置の液滴吐出方法において、前記各吐出領域での前記液状体の吐出によって放熱される前記液滴吐出手段の熱量を補償するために、前記各吐出領域を前記液状体の吐出に基づいて放熱される熱量に応じて温度を制御した状態で、前記液状体を前記各吐出領域に吐出するようにした。
【0008】
本発明の液滴吐出装置の液滴吐出方法によれば、液状体の吐出によって放熱される液滴吐出手段の熱量に応じて、基板に形成された各吐出領域の温度を制御した状態で、液状体を各吐出領域に吐出することができる。そのため、液状体の吐出に基づいて放熱される熱量を補償した状態で、液状体を各吐出領域に吐出することができる。従って、液状体を各吐出領域に吐出する際に、液状体の吐出による放熱によって生じる液滴吐出手段の温度低下を好適に抑制することができ、液状体の粘度の変動を好適に抑制することができる。その結果、各吐出領域に吐出する液状体の容量の均一性を向上することができる。
【0009】
この液滴吐出装置の液滴吐出方法において、前記各吐出領域は、外気に晒される吐出領域ほど温度を高くするようにしてもよい。
この液滴吐出装置の液滴吐出方法によれば、さらに外気との熱交換によって温度低下の起こりやすい基板の吐出領域ほど温度を高くした状態で、液状体を各吐出領域に吐出することができる。そのため、外気に晒される吐出領域の温度低下を抑制した状態で、液状体を各吐出領域に吐出することができる。従って、液滴吐出手段が液状体を各吐出領域に吐出する際に、基板側から受ける熱量の変動を抑制することができるため、基板側との熱交換によって生じる液滴吐出手段の温度変化を好適に抑制することができる。その結果、液状体の粘度の変動を好適に抑制することができるため、各吐出領域に吐出する液状体の容量をより均一にすることができる。
【0010】
本発明の液滴吐出装置は、基板に形成された複数の吐出領域上を相対移動可能に設けられ、前記各吐出領域に対して予め定められた順序で液状体の液滴を吐出する液滴吐出手段と、前記液滴吐出手段から吐出する前記液状体を加熱する液状体加熱手段とを備えた液滴吐出装置において、前記基板を加熱する加熱手段と、前記各吐出領域での前記液状体の吐出によって放熱される前記液滴吐出手段の熱量を補償するために、前記各吐出領域を前記液状体の吐出に基づいて放熱される熱量に応じて温度を前記加熱手段によって制御する温度制御手段とを備えた。
【0011】
本発明の液滴吐出装置によれば、温度制御手段が加熱手段を制御することによって、液状体の吐出によって放熱される液滴吐出手段の熱量に応じて、基板に形成された各吐出領域の温度を制御することができる。そのため、液滴吐出手段と基板との熱交換により、液状体の吐出に基づいて放熱される熱量を補償することができる。従って、液状体の吐出による放熱によって生じる液滴吐出手段の温度低下を好適に抑制することができ、液状体の粘度の変動を好適に抑制することができるため、各吐出領域に吐出する液状体の容量の均一性を向上することができる。
【0012】
この液滴吐出装置において、前記温度制御手段は、さらに前記加熱手段を制御して、前記各吐出領域のうち、外気に晒される前記吐出領域ほど温度を高くするようにしてもよい。
【0013】
この液滴吐出装置によれば、さらに温度制御手段が加熱手段を制御することによって、外気との熱交換によって温度低下の起こりやすい基板の吐出領域ほど温度を高くすることができる。そのため、外気に晒される吐出領域の温度低下を抑制することができる。従って、液滴吐出手段が各吐出領域上を相対移動する際に、基板側から受ける熱量の変動を抑制することができるため、基板側との熱交換によって生じる液滴吐出手段の温度変化を好適に抑制することができる。その結果、液状体の粘度の変動を好適に抑制することができるため、各吐出領域に吐出する液状体の容量をより均一にすることができる。
【0014】
この液滴吐出装置において、前記加熱手段は、第1方向に向かって延設され、第2方向に沿って複数並設される第1加熱手段と、前記第2方向に向かって延設され、前記第1方
向に沿って複数並設される第2加熱手段とを備え、前記温度制御手段は、前記第1加熱手段を前記各吐出領域での前記液状体の吐出によって放熱された前記液滴吐出手段の熱量を補償するように制御するとともに、前記第2加熱手段を外気に晒される前記吐出領域ほど温度を高くするようにしてもよい。
【0015】
この液滴吐出装置によれば、第1加熱手段の制御によって液状体の吐出に基づいて放熱される熱量を補償することができ、第2加熱手段の制御によって、外気との熱交換によって温度低下の起こりやすい基板の吐出領域ほど温度を高くすることができる。そのため、第1加熱手段によって、液状体の吐出による放熱によって生じる液滴吐出手段の温度低下を抑制することができ、第2加熱手段によって、液滴吐出手段が各吐出領域上を相対移動する際に、基板側との熱交換によって生じる液滴吐出手段の温度変化を好適に抑制することができる。従って、簡単な加熱手段の構成によって、液滴吐出手段の温度変化をより好適に抑制することができ、液状体の粘度の変動もより好適に抑制することができるため、各吐出領域に吐出する液状体の容量をより均一にすることができる。
【0016】
この液滴吐出装置において、前記加熱手段は、前記各吐出領域毎に配置されるようにしてもよい。
この液滴吐出装置によれば、温度制御手段が加熱手段を制御することによって、液滴吐出手段と対峙する各吐出領域毎に温度制御をすることができるため、液滴吐出手段の温度変化を抑制するように細かく温度制御することができる。従って、各吐出領域に吐出する液状体の容量をより均一にすることができる。
【0017】
この液滴吐出装置において、前記液状体は液晶である。
この液滴吐出装置によれば、液状体の粘度の変動を好適に抑制することができるため、各吐出領域に吐出する液晶の容量の均一性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を液晶表示装置に具体化した実施形態を図1〜図11に従って説明する。
図1に示すように、液晶表示装置1は、液晶パネル2と、同液晶パネル2と相対向する位置に配設され、平面状の光Lを同液晶パネル2に照射する面状照明装置3を備えている。液晶パネル2は、平面状の光Lの照射側に備えられた対向基板4と、同対向基板4と相対向する素子基板5を有している。
【0019】
対向基板4は、四角形状に形成される無アクリルガラス基板であって、素子基板5側(上側)の面(対向電極形成面4a)には、図2に示すように、ITO等の透明導電層からなる対向電極6が積層されている。対向電極6には、図示しない電源回路からの所定の共通電位が供給されるようになっており、その対向電極6の上側には第1配向膜7aが積層されている。第1配向膜7aには、ラビング処理等による配向処理が施されている。
【0020】
図1に示すように、素子基板5は、四角形状に形成された無アクリルガラス基板であって、対向基板4側(下側)の面(素子形成面5a)には、X矢印方向に延びる複数の走査線8が所定の間隔で形成されている。各走査線8は、図示しない走査線駆動回路に電気的に接続されて、所定のタイミングで選択駆動され、対応する走査信号が所定のタイミングで出力されるようになっている。また、素子形成面5aには、走査線8と直交するY矢印方向に延びる複数のデータ線9が所定の間隔で形成されている。各データ線9は、図示しないデータ線駆動回路に電気的に接続されて、表示データに基づくデータ信号が、対応するデータ線9に所定のタイミングで入力されるようになっている。
【0021】
走査線8とデータ線9の交差する位置には、マトリクス状に配列された複数の画素領域10が形成されており、画素領域10には対応する走査線8及びデータ線9が接続されて
いる。各画素領域10内には、それぞれTFT等からなる図示しない制御素子と、ITO等の透明導電膜からなる画素電極11(図2参照)が形成されている。
【0022】
図2に示すように、データ線9(走査線8)及び画素電極11の下側には、第2配向膜7bが積層されている。第2配向膜7bは、ラビング処理等による配向処理が施されている。
【0023】
また、対向基板4と素子基板5との間隙(セルギャップ)の外縁には、長方形状のシール部材12が配設されている。シール部材12が各基板4,5の外縁に配設されることによって、対向基板4と素子基板5とが所定の距離だけ離間して配設されている。また、この対向基板4と素子基板5との間隙には、シール部材12によって封止される液状体としての液晶13からなる液晶層13Lが形成されている。
【0024】
そして、走査線8が走査に基づいて1本ずつ順次選択されると、対応する画素領域10の制御素子(図示しない)が選択期間中だけオン状態となり、対応するデータ線9及び制御素子を介して、対応する画素電極11にデータ信号が出力される。すると、素子基板5の画素電極11と対向電極6の電位差に応じて、液晶13の配向状態が平面状の光Lを変調するように維持されて、変調された光が図示しない偏向板を通過するか否かによって、所望する画像が液晶パネル2に表示される。
【0025】
上記した液晶パネル2では、各液晶パネル2間で液晶13の容量を等しくすることによって、対向基板4と素子基板5との間隙を均一にすることができ、各液晶パネル2の表示画質を維持することができる。なお、本実施形態の液晶表示装置1は、画素領域10に制御素子であるTFTを備えた、いわゆるアクティブマトリクス方式の液晶表示装置であるが、例えばパッシブマトリクス方式の液晶表示装置であってもよい。また、本実施形態では、対向基板4を照射側に配置する構成にしているが、これに限らず素子基板5を照射側に配置する構成であってもよい。
【0026】
次に、上記した液晶パネル2の製造方法を説明する。
図3に示すように、基板としてのマザー対向基板15は、複数の対向基板4を形成するための領域(2点鎖線で示す)がマトリクス状に区画形成されている。マザー対向基板15の一側面(吐出面15a)に、各対向基板4を形成する領域に対応して四角枠状のシール部材12を形成する。これによって、マザー対向基板15の吐出面15aには、マトリクス状に配列されたシール部材12によって囲まれる領域(吐出領域S)が形成される。なお、各吐出領域Sに対応する吐出面15aには、それぞれ前記対向電極6及び前記第1配向膜7a(図2参照)が形成されている。また、マザー対向基板15の反Y矢印方向側端部には、マザー対向基板15の製造番号等を刻印したマーキングMが形成されている。
【0027】
図4に示すように、本実施形態では、説明の便宜上、マザー対向基板15に形成された最もX矢印方向側にあってY矢印方向に配列された各吐出領域Sを1列目の吐出領域SA1とし、その1列目の各吐出領域SをY方向側(マーキングMの反対側)から順にS1〜S4という。また、図4において、1列目の吐出領域SA1の右側のY矢印方向に配列された各吐出領域Sを2列目の吐出領域SA2とし、その2列目の各吐出領域Sを反Y方向側から順にS5〜S8とする。同様に、3列目の吐出領域SA3とし、その3列目の各吐出領域SをY方向側から順にS9〜S12といい、4列目の吐出領域SA4とし、その4列目の各吐出領域Sを反Y方向側から順にS13〜S16といい、5列目の吐出領域SA5とし、その5列目の各吐出領域SをY方向側から順にS17〜S20という。また、本実施形態では、各吐出領域SのX矢印方向の幅を吐出幅Wsという。
【0028】
マザー対向基板15にシール部材12によって各吐出領域S(S1〜S20)が形成さ
れると、図3に示すように、液晶13の液滴Dを所定の量だけ各吐出領域S内に吐出する。続いて、マザー対向基板15に形成される各対向基板4に対応する素子基板5がマトリクス状に配列されたマザー素子基板16を、対応する各対向基板4と素子基板5とが相対向するようにマザー対向基板15に貼り合わせて、シール部材12を硬化させる。なお、マザー素子基板16の吐出面15a側の側面には、各吐出領域Sに対応する前記走査線8、データ線9、画素領域10及び画素電極11(図2参照)等が形成されている。
【0029】
そして、シール部材12の硬化によって貼り合わせたマザー対向基板15及びマザー素子基板16をダイシングすることによって、図2に示すような対向基板4と素子基板5の間隙に液晶層13Lが形成された液晶パネル2が形成される。
【0030】
次に、マザー対向基板15の各吐出領域Sに液晶13を吐出するための液滴吐出装置20について説明する。図5は、液滴吐出装置20を説明するための斜視図である。図6は、図5のY矢印方向に沿う断面図である。
【0031】
図5に示すように、液滴吐出装置20には、略直方体状に形成される基台21が備えられている。基台21の上面には、一対の案内溝22がY矢印方向全幅に渡って形成され、その案内溝22には、基板ステージ23が摺動可能に取付けられている。基板ステージ23には、Y軸モータMY(図11参照)が連結されており、Y軸モータMYの正逆回転によって、基板ステージ23がY矢印方向及び反Y矢印方向に移動される。すなわち、所定の駆動信号がY軸モータMYに入力されると、Y軸モータMYが正転又は逆転して、基板ステージ23が、Y矢印方向に沿って所定の速度で往動又は復動するようになっている。
【0032】
また、基板ステージ23の上面には、マザー対向基板15の吐出面15a(吐出領域S)を上側にしてマザー対向基板15を載置可能にする載置面23aが形成され、載置したマザー対向基板15が、基板ステージ23に対して所定の載置位置に位置決めされるようになっている。なお、本実施形態のマザー対向基板15は、1列目の吐出領域SA1(S1〜S4)を、基板ステージ23の最もX矢印方向側に配置するように位置決めされる。
【0033】
図6に示すように、基板ステージ23の内部には、載置面23aに載置したマザー対向基板15を加熱する加熱手段としての基板ヒータHが備えられている。図7に示すように、基板ヒータHは、基板ステージ23の内部を第2方向としてのX矢印方向に向かって延設された第2加熱手段としてのX軸ヒータHXと、基板ステージ23の内部を第1方向としてのY矢印方向に向かって延設された第1加熱手段としてのY軸ヒータHYとを備えている。X軸ヒータHXは、本実施形態では、6本有し、各X軸ヒータHX(HX0〜HX5)が等間隔にY矢印方向に並設されている。Y軸ヒータHYは、本実施形態では、7本有し、各Y軸ヒータHY(HY0〜HY6)が等間隔にX矢印方向に並設されている。
【0034】
詳しくは、X軸ヒータHX0は、最もY矢印方向側に配設され、載置面23aに載置されたマザー対向基板15の外周に相対する位置に形成されている。X軸ヒータHX1,HX2,HX3,HX4は、載置面23aに載置されたマザー対向基板15のそれぞれ1行目の吐出領域SB1(S1,S8,S9,S16,S17)、2行目の吐出領域SB2(S2,S7,S10,S15,S18)、3行目の吐出領域SB3(S3,S6,S11,S14,S19)、4行目の吐出領域SB4(S4,S5,S12,S13,S20)と相対する位置に形成されている。X軸ヒータHX5は、最も反Y矢印方向側に配設され、載置面23aに載置されたマザー対向基板15の外周に相対する位置に形成されている。
【0035】
また、Y軸ヒータHY0は、最もX矢印方向側に配設され、載置面23aに載置されたマザー対向基板15の外周に相対する位置に形成されている。Y軸ヒータHY1,HY2
,HY3,HY4,HY5は、載置面23aに載置されたマザー対向基板15のそれぞれ1列目の吐出領域SA1(S1〜S4)、2列目の吐出領域SA2(S5〜S8)、3列目の吐出領域SA3(S9〜S12)、4列目の吐出領域SA4(S13〜S16)、5列目の吐出領域SA5(S17〜S20)と相対する位置に形成されている。Y軸ヒータHY6は、最も反X矢印方向側に配設され、載置面23aに載置されたマザー対向基板15の外周に相対する位置に形成されている。
【0036】
すなわち、各吐出領域S(S1〜S20)にX軸ヒータHX及びY軸ヒータHYがそれぞれ相対向するように基板ヒータHはマトリクス状に形成されている。例えば、吐出領域S1では、X軸ヒータHX1とY軸ヒータHY1とが相対するように形成され、吐出領域S1は、これら二つのヒータHX1,HY1によって温度調節(加熱)される。なお、これらX軸ヒータHXとY軸ヒータHYとの間には、図示しない断熱部材が配設されている。
【0037】
そして、X軸ヒータHX(HX0〜HX5)及びY軸ヒータHY(HY0〜HY6)は、各吐出領域S1〜S20を予め定めた温度(目標温度To)にするためのヒータ駆動信号HCX(HCX0〜HCX5),HCY(HCY0〜HCY6:図11参照)をそれぞれ受けて、対応する各吐出領域S(S1〜S20)に相対した載置面23aを加熱するようになっている。
【0038】
そして、X軸ヒータHX及びY軸ヒータHYに、それぞれヒータ駆動信号HCX,HCYが供給されると、載置面23aに載置されたマザー対向基板15の各吐出領域S(S1〜S20)の温度は、載置面23aを介した各基板ヒータHからの熱量の伝達によって、目標温度Toまで昇温される。
【0039】
図6及び図7に示すように、基板ステージ23の内部であって、載置面23aに載置されたマザー対向基板15の各吐出領域S(S1〜S20)に相対する位置には、温度センサTS(TS1〜TS20)がそれぞれ備えられている。各温度センサTS1〜TS20は、それぞれ対応する各吐出領域S1〜S20からの赤外線等を検出するセンサである。そして、温度センサTS1〜TS20は、それぞれ検出した各吐出領域S1〜S20の実温度に応じた信号を温度検出信号TA(TA1〜TA20:図11参照)として出力するようになっている。
【0040】
また、図5に示すように、基台21のX矢印方向両側には、一対の支持台26a、26bが立設されて、その一対の支持台26a、26bには、X矢印方向に延びる案内部材27が架設されている。その案内部材27の上側には、収容タンク28が配設されて、その収容タンク28内には、液晶13が収容されている。なお、本実施形態における液晶13の粘度は50cp〜100cpであるが、これに限られるものではない。
【0041】
案内部材27の下側には、一対の案内レール29がX矢印方向の全幅に渡って形成され、その案内レール29には、キャリッジ30が移動可能に取付けられている。キャリッジ30には、X軸モータMX(図11参照)が連結されており、X軸モータMXの正逆回転によって、キャリッジ30がX矢印方向及び反X矢印方向に移動される。すなわち、所定の駆動信号がX軸モータMXに入力されると、X軸モータMXが正転又は逆転して、キャリッジ30が、X矢印方向に沿って所定の速度で往動又は復動するようになっている。
【0042】
キャリッジ30の下側には、液滴吐出手段としての液滴吐出ヘッド(以下単に、吐出ヘッド31という)が配設されている。吐出ヘッド31は、収容タンク28と連通しており、収容タンク28に収容されている液晶13が吐出ヘッド31に供給されている。また、図8に示すように、吐出ヘッド31は略長方体状に形成され、その下側には、ノズルプレ
ート32が備えられている。ノズルプレート32の下面(ノズル形成面32a)には、Z矢印方向に貫通形成される複数の吐出ノズル(以下単に、ノズルNという。)が、X矢印方向に一列に配列され、1列のノズル列NLを形成している。このノズル列NLのX方向の幅(ノズル幅Wn)は、吐出領域S(S1〜S20)の吐出幅Wsと略同じサイズで形成されている。
【0043】
図6に示すように、吐出ヘッド31の外周には、液状体加熱手段としてのヘッドヒータ31Hが配設されている。ヘッドヒータ31Hは、吐出ヘッド31内の液晶13を所定の温度領域(本実施形態では約60℃)まで加熱するようになっている。そして、ヘッドヒータ31Hが各吐出ヘッド31内の液晶13を加熱することによって液晶13の粘度をノズルNの近傍で低下させた状態で、さらに吐出ヘッド31内の圧電素子35(図11参照)を伸縮させることにより、液晶13が液滴Dとして吐出される。なお、本実施形態では、吐出ヘッド31の外周のみにヘッドヒータ31Hを配設する構成にしたが、収容タンク28から吐出ヘッド31までの液晶13の供給配管等の外周にも、別途加熱ヒータを配設する構成にしてもよい。
【0044】
そして、本実施形態の吐出ヘッド31は、基板ステージ23及びキャリッジ30の移動によって、図9の2点鎖線で示す複数回の略U字状の相対移動経路に沿って、マザー対向基板15上を相対移動するようになっている。
【0045】
詳しくは、本実施形態の液滴吐出装置20は、キャリッジ30(吐出ヘッド31)を移動して、マザー対向基板15をY矢印方向に移動するときに、ノズル列NLが1列目の吐出領域SA1(S1〜S4)と対峙する位置(図9に示す実線)に配置する。そして、基板ステージ23をY矢印方向に沿って移動して、ノズル列NL(吐出ヘッド31)を、1列目の吐出領域SA1のX矢印方向全幅にわたり、反Y矢印方向(吐出領域Sの列方向)に沿って相対移動する。すなわち、吐出ヘッド31が吐出領域S1,S2,S3,S4の順に対峙して移動する。
【0046】
続いて、液滴吐出装置20は、キャリッジ30を反X矢印方向に移動し、マザー対向基板15を反Y矢印方向に移動するときに、ノズル列NLが2列目の吐出領域SA2(S5〜S8)と対峙する位置に配置する。そして、基板ステージ23を反Y矢印方向に沿って移動して、ノズル列NL(吐出ヘッド31)を、2列目の吐出領域SA2のX矢印方向全幅にわたり、Y矢印方向(吐出領域Sの列方向)に相対移動する。すなわち、吐出ヘッド31が吐出領域S5,S6,S7,S8の順に対峙して移動する。
【0047】
続いて、液滴吐出装置20は、キャリッジ30を反X矢印方向に移動し、マザー対向基板をY矢印方向に移動するときに、ノズル列NLが3列目の吐出領域SA3(S9〜S12)と対峙する位置に配置する。そして、基板ステージ23をY矢印方向に沿って移動して、ノズル列NL(吐出ヘッド31)を、3列目の吐出領域SA3のX矢印方向全幅にわたり、反Y矢印方向(吐出領域Sの列方向)に相対移動する。すなわち、吐出ヘッド31が吐出領域S9,S10,S11,S12の順に対峙して移動する。
【0048】
続いて、液滴吐出装置20は、キャリッジ30を反X矢印方向に移動し、マザー対向基板15を反Y矢印方向に移動するときに、ノズル列NLが4列目の吐出領域SA4(S13〜S16)と対峙する位置に配置する。そして、基板ステージ23を反Y矢印方向に沿って移動して、ノズル列NL(吐出ヘッド31)を、4列目の吐出領域SA4のX矢印方向全幅にわたり、Y矢印方向(吐出領域Sの列方向)に相対移動する。すなわち、吐出ヘッド31が吐出領域S13,S14,S15,S16の順に対峙して移動する。
【0049】
続いて、液滴吐出装置20は、キャリッジ30を反X矢印方向に移動し、マザー対向基
板15をY矢印方向に移動するときに、ノズル列NLが5列目の吐出領域SA5(S17〜S20)と対峙する位置に配置する。そして、基板ステージ23をY矢印方向に沿って移動して、ノズル列NL(吐出ヘッド31)を、5列目の吐出領域SA5のX矢印方向全幅にわたり、反Y矢印方向(吐出領域Sの列方向)に相対移動する。すなわち、吐出ヘッド31が吐出領域S17,S18,S19,S20の順に対峙して移動する。
【0050】
そして、Y矢印方向に搬送される各吐出領域S(S1〜S20)が吐出ヘッド31の直下に侵入すると、対応するノズルNの圧電素子35(図11参照)が収縮・伸張する。これにより液晶13のメニスカスが振動する。すると、液晶13は、ヘッドヒータ31Hの加熱によって、その粘度を低下させた分だけ、液滴Dとして円滑に吐出される。吐出された液滴Dは、対応するノズルNの反Z矢印方向に沿って飛行して、各吐出領域S1〜S20に着弾する。
【0051】
この際、従来の液滴吐出装置では、図10に示すように、各吐出領域S1〜S20に吐出される液晶13の量(吐出量P)が吐出領域S1〜S20の位置によって変化していた(1点鎖線参照)。詳しくは、吐出ヘッド31の温度変化、特に温度の低下によって液晶13の粘度が高くなるため、圧電素子35の収縮・伸張による振動によって吐出される液晶13の量が減少していた。すなわち、一つのある吐出領域Sに液晶13を吐出すると、吐出ヘッド31は放熱によって温度が低下し、吐出ヘッド31が吐出領域S1から吐出領域S20に進むに連れて、液晶13の吐出総量が増加するため、吐出ヘッド31の温度の低下が大きくなり、液晶13の粘度が高くなって液晶13の吐出量Pが徐々に減少する。この原因によって、吐出ヘッド31が吐出領域S1から吐出領域S20に進むに連れて、全体的に吐出量Pが減少していた。
【0052】
また、マザー対向基板15の外縁近傍は、中央位置近傍に比べて、外気に晒される領域が広くなる。そして、マザー対向基板15の外縁近傍は、外気に晒される領域が広い分だけ、外気との熱交換を加速して、放熱しやすくなる。従って、外気に晒される領域が広くなるに連れて、マザー対向基板15の温度の低下が大きくなる。そのため、マザー対向基板15と熱交換を行う吐出ヘッド31は、マザー対向基板15の中心位置近傍と相対向した位置よりも外縁近傍と相対向する位置の方が温度の低下が大きい。
【0053】
そして、吐出ヘッド31は、図9に示すように、外縁近傍(1行目及び4行目の吐出領域S)及び中心位置近傍(2行目及び3行目の吐出領域S)の上を略交互に通過するため、図10に1点鎖線で示すように、波打つように吐出量Pが変動する。例えば、吐出領域S1,S4はX矢印方向及びY矢印方向の外縁近傍であり、Y矢印方向の外縁近傍である吐出領域S2,S3よりも外気に晒される領域が広くなる。これにより、吐出領域S1,S4上では、吐出領域S2,S3上よりもマザー対向基板15の温度が低くなるため、そのマザー対向基板15と熱交換を行う吐出ヘッド31の温度が吐出領域S2,S3に比べて低下する。そのため、吐出領域S2,S3よりも吐出領域S1,S4に吐出される液晶13の吐出量Pが減少していた。
【0054】
上述のように、従来の液滴吐出装置では、吐出ヘッド31が相対するマザー対向基板15の位置及び液晶13の吐出によって、吐出ヘッド31の温度が変化して各吐出領域S1〜S20に吐出する液晶13の吐出量Pが変動していた。
【0055】
そこで、本実施形態の液滴吐出装置20は、液晶13の吐出による吐出ヘッド31の温度変化及びマザー対向基板15との熱交換による吐出ヘッド31の温度変化を補償するために、各X軸ヒータHX0〜HX5及び各Y軸ヒータHY0〜HY6を制御して、図10の実線に示すように、各吐出領域S1〜S20における目標温度Toを設定している。なお、本実施形態における各吐出領域S1〜S20の目標温度Toは、予め実施した試験等
に基づいて設定されて、吐出ヘッド31から各吐出領域S1〜S20に吐出する液晶13の容量が略同じとなる温度に設定されている。
【0056】
詳しくは、各Y軸ヒータHY0〜HY6は、液晶13の吐出による吐出ヘッド31の温度低下を補償するように、制御温度が、1列目の吐出領域SA1(S1〜S4)から5列目の吐出領域SA5(S17〜S20)に進む(液晶13の吐出総量が大きくなる)に連れて高くなるように設定されている。例えば、本実施形態では、Y軸ヒータHY0,HY1,HY2,HY3,HY4,HY5,HY6の制御温度をそれぞれ20℃,20℃,21℃,22℃,23℃,24℃,25℃に設定しているが、これに限られるものではない。なお、本実施形態では、液滴吐出装置20は、20℃に維持された雰囲気下に設置されている。
【0057】
一方、各X軸ヒータHX0〜HX5は、マザー対向基板15との熱交換による吐出ヘッド31の温度変化を補償するように、中心位置近傍(2行目及び3行目の吐出領域SB2,SB3)に相対するX軸ヒータHX2,HX3に比べて外縁近傍(1行目及び4行目の吐出領域SB1,SB4)に相対するX軸ヒータHX1,HX4の制御温度を高く設定している。例えば、本実施形態では、X軸ヒータHX0,HX1の制御温度を21℃、X軸ヒータHX2,HX3の制御温度を20℃、X軸ヒータHX4,HX5の制御温度を21℃としているが、これに限られるものではない。
【0058】
このように、各Y軸ヒータHY0〜HY6及び各X軸ヒータHX0〜HX5によって、各吐出領域S1〜S20の目標温度Toを図10に示すように設定すると、目標温度Toは、液晶13の吐出量Pの変動と対称線L1を中心に略対称な変動となる。これによって、マザー対向基板15上を移動する吐出ヘッド31の温度を略一定に維持することができるため、各吐出領域Sに吐出される液晶13の吐出量Pの変動を好適に抑制することができる。
【0059】
次に、上記のように構成した液滴吐出装置20の電気的構成を図11に従って説明する。
図11に示すように、制御装置40は、CPU等からなる制御部41、DRAM及びSRAM等からなり各種データを格納するRAM42、各種データや各種制御プログラムを格納するROM43を有している。また、制御装置40は、圧電素子駆動信号COMを生成する駆動信号生成回路44等を有している。そして、制御装置40では、これら制御部41、RAM42、ROM43及び駆動信号生成回路44が、図示しないバスを介して接続されている。
【0060】
制御装置40には、入力装置51が接続されている。入力装置51は、起動スイッチ、停止スイッチ等の操作スイッチを有し、各スイッチの操作による操作信号を制御装置40に出力する。また、入力装置51は、吐出面15aに吐出する液晶13の吐出位置(吐出面15aにおける各吐出領域S1〜S20の位置)やマザー対向基板15の目標温度To等を所定の形式の吐出データIaとして制御装置40に出力する。制御装置40は、入力装置51からの吐出データIaと、ROM43等に格納された制御プログラム(例えば、液晶吐出プログラム)に従って、基板ステージ23を移動させてマザー対向基板15の搬送処理動作を行い、吐出ヘッド31の各圧電素子35を駆動させて吐出面15aに対する液晶13の液滴吐出処理動作を行う。
【0061】
詳述すると、制御部41は、入力装置51からの吐出データIaに所定の展開処理を施して、二次元描画平面(吐出面15a)上における位置に、液滴Dを吐出するか否かを示すビットマップデータBMDを生成し、生成したビットマップデータBMDをRAMに格納するようになっている。このビットマップデータBMDは、各ビットの値(0あるいは
1)に応じて、圧電素子35のオンあるいはオフ(液滴Dを吐出するか否か)を規定するものである。
【0062】
また、制御部41は、入力装置51からの吐出データIaにビットマップデータBMDの展開処理と異なる展開処理を施し、圧電素子駆動信号COMの波形データを生成して駆動信号生成回路44に出力するようになっている。駆動信号生成回路44は、制御部41からの波形データを図示しない波形メモリに格納して、格納した波形データをデジタル/アナログ変換し、アナログ信号の波形信号を増幅して、圧電素子35を駆動するための圧電素子駆動信号COMを生成するようになっている。そして、制御部41は、圧電素子駆動信号COMを、吐出ヘッド駆動回路52に出力するようになっている。
【0063】
制御装置40には、吐出ヘッド駆動回路52が接続されて、その吐出ヘッド駆動回路52に、圧電素子駆動信号COMを出力するようになっている。そして、吐出ヘッド駆動回路52は、その圧電素子駆動信号COMを、対応する各圧電素子35に出力するようになっている。
【0064】
制御装置40には、X軸モータ駆動回路53が接続されて、X軸モータ駆動回路53にX軸モータ駆動制御信号を出力するようになっている。X軸モータ駆動回路53は、制御装置40からのX軸モータ駆動制御信号に応答して、キャリッジ30を往復移動させるX軸モータMXを正転又は逆転させるようになっている。そして、例えば、X軸モータMXを正転させると、キャリッジ30はX矢印方向に移動し、逆転させると、キャリッジ30は反X矢印方向に移動するようになっている。
【0065】
制御装置40には、Y軸モータ駆動回路54が接続され、Y軸モータ駆動回路54にY軸モータ駆動制御信号を出力するようになっている。Y軸モータ駆動回路54は、制御装置40からのY軸モータ駆動制御信号に応答して、基板ステージ23(マザー対向基板15)を往復移動させるY軸モータMYを正転又は逆転させるようになっている。例えば、Y軸モータMYを正転させると、基板ステージ23はY矢印方向に移動し、逆転させると、基板ステージ23は反Y矢印方向に移動する。
【0066】
制御装置40には、基板ヒータ駆動回路55が接続されて、その基板ヒータ駆動回路55に、制御部41で生成される各Y軸ヒータHY0〜HY6及び各X軸ヒータHX0〜HX5に対応する温度制御信号TPが出力されるようになっている。その基板ヒータ駆動回路55には、各吐出領域S1〜S20の温度センサTS1〜TS20が接続されて、それぞれ温度センサTS1〜TS20からの温度検出信号TA1〜TA20が入力されるようになっている。
【0067】
そして、基板ヒータ駆動回路55は、制御装置40からの温度制御信号TPと各温度センサTS1〜TS20からの温度検出信号TA1〜TA20に基づいて、各吐出領域S1〜S20の温度を目標温度Toにするためのヒータ駆動信号HCX0〜HCX5,HCY0〜HCY6を生成する。そのヒータ駆動信号HCX0〜HCX5,HCY0〜HCY6をX軸ヒータHX0〜HX5及びY軸ヒータHY0〜HY6にそれぞれ出力するようになっている。
【0068】
例えば、制御装置40からのX軸ヒータHX1及びY軸ヒータHY1の温度制御信号TPX1,TPY1と、吐出領域S1の温度センサTS1からの温度検出信号TA1とに基づいて、吐出領域S1を目標温度To(41℃:図10参照)にするためのヒータ駆動信号HCX1,HCY1を生成する。そのヒータ駆動信号HCX1,HCY1をそれぞれX軸ヒータHX1及びY軸ヒータHY1に出力するようになっている。そして、基板ヒータ駆動回路55は、各吐出領域S1〜S20の実温度が、それぞれ目標温度Toになると、
各吐出領域S1〜S20の実温度が目標温度Toに到達したことを示す目標温度到達信号TRを生成して、その目標温度到達信号TRを制御装置40に出力するようになっている。
【0069】
次に、液滴吐出装置20を使ってマザー対向基板15の各吐出領域S1〜S20に液晶13を吐出する液滴吐出方法について以下に説明する。
まず、基板ステージ23上に、吐出面15aを上側にしてマザー対向基板15を配置固定する。この状態から、入力装置51に吐出データIaを入力して、液晶吐出プログラムを開始するための操作信号を入力する。
【0070】
すると、制御装置40は、吐出データIaに基づいて、温度制御信号TPを生成する。そして、制御装置40は、基板ヒータ駆動回路55に、温度制御信号TPに基づくヒータ駆動信号HCX0〜HCX5,HCY0〜HCY6を生成させて、そのヒータ駆動信号HCX0〜HCX5,HCY0〜HCY6を、それぞれX軸ヒータHX0〜HX5及びY軸ヒータHY0〜HY6に出力させる。そして、制御装置40は、X軸ヒータHX0〜HX5及びY軸ヒータHY0〜HY6を駆動して、載置面23aに載置されたマザー対向基板15の各吐出領域S1〜S20の実温度を、それぞれ目標温度Toに昇温維持させる。
【0071】
制御装置40は、各吐出領域S1〜S20の実温度が、それぞれ目標温度Toに昇温維持されると、基板ヒータ駆動回路55からの目標温度到達信号TRを受けて、X軸モータMXを駆動制御してキャリッジ30を移動させる。そして、制御装置40は、マザー対向基板15がY矢印方向に移動したときに、吐出ヘッド31(ノズル列NL)の直下を、1列目の吐出領域SA1(S1〜S4)が通過する位置にキャリッジ30をセットさせる。また、制御装置40は、Y軸モータMYを駆動制御して、基板ステージ23(マザー対向基板15)をY矢印方向に搬送させる。すなわち、制御装置40は、吐出ヘッド31に向かって、1列目の吐出領域SA1を、吐出領域S1から吐出領域S4へ順に搬送させる。
【0072】
このとき、制御装置40は、各吐出領域S(S1〜S4)と相対する位置に吐出ヘッド31が配置されると、圧電素子駆動信号COMを吐出ヘッド駆動回路52に出力する。そして、制御装置40は、吐出ヘッド駆動回路52に、入力された圧電素子駆動信号COMを対応する圧電素子に出力させ、液滴Dを吐出させる。すなわち、吐出領域S1から吐出領域S4の順に液滴Dが吐出される。
【0073】
この際、マザー対向基板15の1列目の吐出領域SA1(S1〜S4)は、X軸ヒータHX及びY軸ヒータHY(特に、Y軸ヒータHY1)からの熱量を受けてそれぞれ目標温度Toに維持されている。
【0074】
そのため、吐出ヘッド31(各ノズルN内の液晶13)には、1列目の吐出領域SA1において、マザー対向基板15からそれぞれ異なる熱量が伝達されて、この熱量によって、各吐出領域S1〜S20の位置の違いによる熱交換量の変化及び液晶13の吐出による熱放出量の変化を補償している。これによって、吐出ヘッド31は、各吐出領域S上において略等しい温度に維持された状態で、各吐出領域Sに圧電素子駆動信号COMに対応した等しい容量の液晶13を吐出する。
【0075】
以後、同様に、制御装置40は、2列目〜5列目の各吐出領域SA2〜SA5がノズル列NLの直下に搬送される度に、圧電素子駆動信号COMに対応した等しい容量の液晶13を吐出する。そして、制御装置40は、全ての吐出領域S(S1〜S20)に略均一な容量の液晶13を吐出すると、マザー対向基板15を吐出ヘッド31の直下から退避するように基板ステージ23を移動して、液晶吐出プログラムを終了する。
【0076】
これによって、マザー対向基板15の全ての吐出領域S1〜S20に、等しい容量の液晶13を吐出することができ、対向基板4と素子基板5との間の間隙の距離(セルギャップ)を均一にした液晶パネル2を製造することができる。
【0077】
次に、上記のように構成した本実施形態の効果を以下に記載する。
(1)本実施形態によれば、Y軸ヒータHY0〜HY6の制御温度を、1列目の吐出領域SA1(S1〜S4)から5列目の吐出領域SA5(S17〜S20)に進む(液晶13の吐出総量が大きくなる)に連れて高くなるように設定した。これによって、液晶13の吐出による放熱によって生じる吐出ヘッド31の温度低下を補償することができるため、吐出ヘッド31の温度低下を好適に抑制することができる。従って、液晶13の粘度の変動を好適に抑制することができ、各吐出領域S1〜S20に吐出する液晶13の容量の均一性を向上することができる。
【0078】
(2)本実施形態によれば、中心位置近傍(2行目及び3行目の吐出領域SB2,SB3)に相対するX軸ヒータHX2,HX3に比べて外縁近傍(1行目及び4行目の吐出領域SB1,SB4)に相対するX軸ヒータHX1,HX4の制御温度を高く設定した。これによって、外気との熱交換によって温度低下の起こりやすい吐出領域S(1行目及び4行目の吐出領域SB1,SB4等)ほど温度が高くなるため、マザー対向基板15との熱交換による吐出ヘッド31の温度低下を好適に抑制することができる。従って、液晶13の粘度の変動を好適に抑制することができ、各吐出領域S1〜S20に吐出する液晶13の容量の均一性を向上することができる。
【0079】
(3)本実施形態によれば、基板ヒータHは、X軸ヒータHX0〜HX5及びY軸ヒータHY0〜HY6を備え、そのX軸ヒータHX0〜HX5とY軸ヒータHY0〜HY6とによってマトリクス状に配設された。そして、X軸ヒータHX0〜HX5は、マザー対向基板15との熱交換による吐出ヘッド31の温度低下を補償する制御温度に設定されている。また、Y軸ヒータHY0〜HY6は、液晶13の吐出による放熱によって生じる吐出ヘッド31の温度低下を補償する制御温度に設定されている。その結果、二つの異なる原因による吐出ヘッド31の温度低下を、2つの方向(X矢印方向及びY矢印方向)に沿って形成された単純な構造のX軸ヒータHX0〜HX5及びY軸ヒータHY0〜HY6によって抑制することができる。また、制御装置40は、各吐出領域S1〜S20がそれぞれ目標温度Toになるように、X軸ヒータHX0〜HX5及びY軸ヒータHY0〜HY6を制御温度に昇温するだけであるので制御が容易である。さらに、X軸ヒータHX0〜HX5及びY軸ヒータHY0〜HY6は、マトリクス状に形成されているため、制御装置40はX軸ヒータHX0〜HX5及びY軸ヒータHY0〜HY6をそれぞれ調整制御することにより自由な温度分布を作ることができる。
【0080】
なお、上記各実施形態は、以下の態様に変更してもよい。
・上記実施形態における吐出ヘッド31の動きに特に制限されない。吐出ヘッド31の動きが変更された場合は、その吐出ヘッド31の動きに応じて各吐出領域S1〜S20の目標温度Toを適宜変更する。
【0081】
・上記実施形態における各吐出領域S1〜S20の目標温度Toに特に制限されない。例えば、外気の温度、マザー対向基板15のサイズ又は液状体の種類等に応じて適宜変更してもよい。
【0082】
・上記実施形態におけるX軸ヒータHX及びY軸ヒータHYの本数に特に制限されない。例えば、各吐出領域S毎に一つの基板ヒータHを配置し、その基板ヒータHを制御することにより各吐出領域Sの温度制御を行うようにしてもよい。
【0083】
・上記実施形態では、X軸ヒータHX及びY軸ヒータHYを直交するように配設したが、これに限られるものではない。例えば、X軸ヒータHX及びY軸ヒータHYの内少なくとも一方を、X矢印方向及びY矢印方向とは異なる第3の方向に延びるように形成してもよい。
【0084】
・上記実施形態では、X軸ヒータHXをX矢印方向に延びるように形成し、Y軸ヒータHYをY矢印方向に延びるように形成したが、これに限られるものではない。例えば、X軸ヒータHX及びY軸ヒータHYに加えて、さらに第3方向に延びる第3方向ヒータを形成してもよい。また、X軸ヒータHX及びY軸ヒータHYに代えて、X軸方向及びY軸方向とは異なる複数の方向に延びるように複数のヒータを形成してもよい。
【0085】
・上記実施形態では、X軸ヒータHXをマザー対向基板15との熱交換による吐出ヘッド31の温度変化を補償するために使用し、Y軸ヒータHYを液晶13の吐出による吐出ヘッド31の温度低下を補償するために使用した。これを、Y軸ヒータHYの一部をマザー対向基板15との熱交換による吐出ヘッド31の温度変化を補償するために使用してもよい。また、X軸ヒータHXの少なくとも一部を液晶13の吐出による吐出ヘッド31の温度低下を補償するために使用してもよい。
【0086】
・上記実施形態では、基板温度制御手段を、基板ステージ23に内設した基板ヒータHとして具体化した。これに限らず、例えば、マザー対向基板15の吐出面15aから赤外線等の光を照射する光源として具体化し、マザー対向基板15の温度を、前記光の照射量によって制御するようにしてもよい。つまり、マザー対向基板15に伝達する熱量を制御可能であればよい。
【0087】
・上記実施形態では、熱交換による吐出ヘッド31の温度変化を補償するために、マザー対向基板15を加熱する構成にしたが、これに限らず、マザー対向基板15を冷却する構成にしてもよい。また、加熱手段と冷却手段とを混合して配置してもよい。
【0088】
・上記実施形態では、各吐出領域S(S1〜S20)と相対する位置に温度センサTS(TS1〜TS20)をそれぞれ設けたが、温度センサTSを設置する位置及び個数は特に制限されない。
【0089】
・上記実施形態では、吐出ヘッド31の外周のみにヘッドヒータ31Hを配設する構成にしたが、収容タンク28から吐出ヘッド31までの液晶13の供給配管等の外周にも、別途加熱ヒータを配設する構成にしてもよい。
【0090】
・上記実施形態では、液滴吐出手段として吐出ヘッド31を採用したが、これに限られず、例えば、エアー式ディスペンサ等に変更して実施してもよい。
・上記実施形態では、シール部材12をマザー対向基板15に形成し、液晶13の液滴Dを、そのマザー対向基板15に吐出する構成にした。これに限らず、例えばシール部材12をマザー素子基板16に形成し、液晶13をマザー対向基板15に吐出する構成にしてもよい。また、シール部材12をマザー対向基板15に形成し、液晶13をマザー素子基板16に吐出する構成にしてもよい。さらに、シール部材12をマザー素子基板16に形成し、液晶13をマザー素子基板16に吐出する構成にしてもよい。すなわち、シール部材12を形成する基板及び液晶13を吐出する基板は、マザー対向基板15及びマザー素子基板16のどちらの基板で構成してもよい。
【0091】
・上記実施形態では、液晶表示装置1は、画素領域10に制御素子であるTFTを備えた、いわゆるアクティブマトリクス方式の液晶表示装置としたが、これを例えばパッシブマトリクス方式の液晶表示装置に変更して実施してもよい。
【0092】
・上記実施形態では、液状体として液晶13を採用した。これに限らず、加熱することによって低粘度化して、液滴として吐出可能になる液状体であればよい。
・上記実施形態では、液晶13を吐出して液晶表示装置1を製造する構成にした。これに限らず、例えば液状体を金属インクとして具体化し、液晶表示装置1の各種金属配線や、平面状の電子放出素子を備え、同素子から放出された電子による蛍光物質の発光を利用した電界効果型装置(FEDやSED等)を備えた表示装置の金属配線を製造する構成にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本実施形態の液晶表示装置を説明するための概略斜視図。
【図2】同じく、液晶表示装置を説明するための概略断面図。
【図3】同じく、液晶表示装置の製造方法を説明するための概略斜視図。
【図4】同じく、液晶表示装置の製造方法を説明するための平面図。
【図5】同じく、液滴吐出装置を説明するための概略斜視図。
【図6】同じく、液滴吐出装置を説明するための概略断面図。
【図7】同じく、基板ヒータを説明するための平面図。
【図8】同じく、液滴吐出ヘッドを説明するための概略斜視図。
【図9】同じく、液滴吐出ヘッドの相対移動経路を説明するための作用平面図。
【図10】同じく、各吐出領域の目標温度を説明するためのグラフ図。
【図11】同じく、液滴吐出装置の電気的構成を説明するための電気ブロック回路図。
【符号の説明】
【0094】
D…液滴、H…加熱手段としての基板ヒータ、HX…第2加熱手段としてのX軸ヒータ、HY…第1加熱手段としてのY軸ヒータ、S…吐出領域、1…液晶表示装置、4…対向基板、5…素子基板、13…液状体としての液晶、15…基板としてのマザー対向基板、20…液滴吐出装置、31…液滴吐出手段としての液滴吐出ヘッド、31H…液状体加熱手段としてのヘッドヒータ、40…温度制御手段を構成する制御装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出装置の液滴吐出方法及び液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置の製造工程には、透明基板の吐出領域に液状体としての液晶を吐出し、その吐出領域を対向基板で封止する封止工程が行われている。この封止工程では、吐出領域に吐出した液晶の容量が変動すると、透明基板と対向基板との間の距離(セルギャップ)が変動して、液晶表示装置の表示画質を劣化させる問題があった。そこで、吐出する液晶の容量変動を抑制する方法として、液晶を微小な液滴として吐出する、いわゆるインクジェット法が提案されている(例えば、特許文献1)。このインクジェット法は、一般的に、圧電素子の伸縮等によって吐出ノズルに形成される液状体の界面(メニスカス)を強制的に振動させ、その振動過程において、液状体を液滴として吐出させるようにしている。
【0003】
ところが、例えば粘度が50cp〜100cpとなる液晶では、メニスカスの液晶を、振動によって吐出させることが困難となり、液滴の容量を変動させたり、液滴を形成不能にしたりするといった問題があった。
【0004】
そこで、こうしたインクジェット法では、従来より、高粘度の液状体を、均一な容量の液滴として吐出可能にする提案がなされている(例えば、特許文献2)。特許文献2では、吐出ノズルを有した液滴吐出ヘッドや同液滴吐出ヘッドに液晶を供給する供給ラインを、チューブヒータ等の加熱装置によって加熱して、メニスカス近傍の液晶の粘度を低下させている。これによって、高粘度の液状体(液晶)を、均一な容量の液滴として吐出を可能にしている。
【特許文献1】特開平5−281562号公報
【特許文献2】特開2004−358352号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載のインクジェット法では、液滴吐出ヘッドの吐出ノズルから液状体を吐出することにより放熱が生じて、液滴吐出ヘッドの温度が変動していた。その結果、吐出ノズル内の液晶の温度、すなわち液晶の粘度が変動し、吐出領域に吐出する液晶の容量を変動させる問題があった。
【0006】
本発明は、前述した上記問題点を解消するためになされたものであって、その目的は、液状体の吐出による放熱によって生じる温度変化を補償し、各吐出領域に吐出する液状体の容量の均一性を向上した液滴吐出装置の液滴吐出方法及び液滴吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の液滴吐出装置の液滴吐出方法は、基板に形成された複数の吐出領域上を相対移動可能に設けられた液滴吐出手段にて、前記各吐出領域に対して予め定められた順序で液状体の液滴を吐出するとき、液状体加熱手段にて予め前記液状体を加熱して吐出するようにした液滴吐出装置の液滴吐出方法において、前記各吐出領域での前記液状体の吐出によって放熱される前記液滴吐出手段の熱量を補償するために、前記各吐出領域を前記液状体の吐出に基づいて放熱される熱量に応じて温度を制御した状態で、前記液状体を前記各吐出領域に吐出するようにした。
【0008】
本発明の液滴吐出装置の液滴吐出方法によれば、液状体の吐出によって放熱される液滴吐出手段の熱量に応じて、基板に形成された各吐出領域の温度を制御した状態で、液状体を各吐出領域に吐出することができる。そのため、液状体の吐出に基づいて放熱される熱量を補償した状態で、液状体を各吐出領域に吐出することができる。従って、液状体を各吐出領域に吐出する際に、液状体の吐出による放熱によって生じる液滴吐出手段の温度低下を好適に抑制することができ、液状体の粘度の変動を好適に抑制することができる。その結果、各吐出領域に吐出する液状体の容量の均一性を向上することができる。
【0009】
この液滴吐出装置の液滴吐出方法において、前記各吐出領域は、外気に晒される吐出領域ほど温度を高くするようにしてもよい。
この液滴吐出装置の液滴吐出方法によれば、さらに外気との熱交換によって温度低下の起こりやすい基板の吐出領域ほど温度を高くした状態で、液状体を各吐出領域に吐出することができる。そのため、外気に晒される吐出領域の温度低下を抑制した状態で、液状体を各吐出領域に吐出することができる。従って、液滴吐出手段が液状体を各吐出領域に吐出する際に、基板側から受ける熱量の変動を抑制することができるため、基板側との熱交換によって生じる液滴吐出手段の温度変化を好適に抑制することができる。その結果、液状体の粘度の変動を好適に抑制することができるため、各吐出領域に吐出する液状体の容量をより均一にすることができる。
【0010】
本発明の液滴吐出装置は、基板に形成された複数の吐出領域上を相対移動可能に設けられ、前記各吐出領域に対して予め定められた順序で液状体の液滴を吐出する液滴吐出手段と、前記液滴吐出手段から吐出する前記液状体を加熱する液状体加熱手段とを備えた液滴吐出装置において、前記基板を加熱する加熱手段と、前記各吐出領域での前記液状体の吐出によって放熱される前記液滴吐出手段の熱量を補償するために、前記各吐出領域を前記液状体の吐出に基づいて放熱される熱量に応じて温度を前記加熱手段によって制御する温度制御手段とを備えた。
【0011】
本発明の液滴吐出装置によれば、温度制御手段が加熱手段を制御することによって、液状体の吐出によって放熱される液滴吐出手段の熱量に応じて、基板に形成された各吐出領域の温度を制御することができる。そのため、液滴吐出手段と基板との熱交換により、液状体の吐出に基づいて放熱される熱量を補償することができる。従って、液状体の吐出による放熱によって生じる液滴吐出手段の温度低下を好適に抑制することができ、液状体の粘度の変動を好適に抑制することができるため、各吐出領域に吐出する液状体の容量の均一性を向上することができる。
【0012】
この液滴吐出装置において、前記温度制御手段は、さらに前記加熱手段を制御して、前記各吐出領域のうち、外気に晒される前記吐出領域ほど温度を高くするようにしてもよい。
【0013】
この液滴吐出装置によれば、さらに温度制御手段が加熱手段を制御することによって、外気との熱交換によって温度低下の起こりやすい基板の吐出領域ほど温度を高くすることができる。そのため、外気に晒される吐出領域の温度低下を抑制することができる。従って、液滴吐出手段が各吐出領域上を相対移動する際に、基板側から受ける熱量の変動を抑制することができるため、基板側との熱交換によって生じる液滴吐出手段の温度変化を好適に抑制することができる。その結果、液状体の粘度の変動を好適に抑制することができるため、各吐出領域に吐出する液状体の容量をより均一にすることができる。
【0014】
この液滴吐出装置において、前記加熱手段は、第1方向に向かって延設され、第2方向に沿って複数並設される第1加熱手段と、前記第2方向に向かって延設され、前記第1方
向に沿って複数並設される第2加熱手段とを備え、前記温度制御手段は、前記第1加熱手段を前記各吐出領域での前記液状体の吐出によって放熱された前記液滴吐出手段の熱量を補償するように制御するとともに、前記第2加熱手段を外気に晒される前記吐出領域ほど温度を高くするようにしてもよい。
【0015】
この液滴吐出装置によれば、第1加熱手段の制御によって液状体の吐出に基づいて放熱される熱量を補償することができ、第2加熱手段の制御によって、外気との熱交換によって温度低下の起こりやすい基板の吐出領域ほど温度を高くすることができる。そのため、第1加熱手段によって、液状体の吐出による放熱によって生じる液滴吐出手段の温度低下を抑制することができ、第2加熱手段によって、液滴吐出手段が各吐出領域上を相対移動する際に、基板側との熱交換によって生じる液滴吐出手段の温度変化を好適に抑制することができる。従って、簡単な加熱手段の構成によって、液滴吐出手段の温度変化をより好適に抑制することができ、液状体の粘度の変動もより好適に抑制することができるため、各吐出領域に吐出する液状体の容量をより均一にすることができる。
【0016】
この液滴吐出装置において、前記加熱手段は、前記各吐出領域毎に配置されるようにしてもよい。
この液滴吐出装置によれば、温度制御手段が加熱手段を制御することによって、液滴吐出手段と対峙する各吐出領域毎に温度制御をすることができるため、液滴吐出手段の温度変化を抑制するように細かく温度制御することができる。従って、各吐出領域に吐出する液状体の容量をより均一にすることができる。
【0017】
この液滴吐出装置において、前記液状体は液晶である。
この液滴吐出装置によれば、液状体の粘度の変動を好適に抑制することができるため、各吐出領域に吐出する液晶の容量の均一性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を液晶表示装置に具体化した実施形態を図1〜図11に従って説明する。
図1に示すように、液晶表示装置1は、液晶パネル2と、同液晶パネル2と相対向する位置に配設され、平面状の光Lを同液晶パネル2に照射する面状照明装置3を備えている。液晶パネル2は、平面状の光Lの照射側に備えられた対向基板4と、同対向基板4と相対向する素子基板5を有している。
【0019】
対向基板4は、四角形状に形成される無アクリルガラス基板であって、素子基板5側(上側)の面(対向電極形成面4a)には、図2に示すように、ITO等の透明導電層からなる対向電極6が積層されている。対向電極6には、図示しない電源回路からの所定の共通電位が供給されるようになっており、その対向電極6の上側には第1配向膜7aが積層されている。第1配向膜7aには、ラビング処理等による配向処理が施されている。
【0020】
図1に示すように、素子基板5は、四角形状に形成された無アクリルガラス基板であって、対向基板4側(下側)の面(素子形成面5a)には、X矢印方向に延びる複数の走査線8が所定の間隔で形成されている。各走査線8は、図示しない走査線駆動回路に電気的に接続されて、所定のタイミングで選択駆動され、対応する走査信号が所定のタイミングで出力されるようになっている。また、素子形成面5aには、走査線8と直交するY矢印方向に延びる複数のデータ線9が所定の間隔で形成されている。各データ線9は、図示しないデータ線駆動回路に電気的に接続されて、表示データに基づくデータ信号が、対応するデータ線9に所定のタイミングで入力されるようになっている。
【0021】
走査線8とデータ線9の交差する位置には、マトリクス状に配列された複数の画素領域10が形成されており、画素領域10には対応する走査線8及びデータ線9が接続されて
いる。各画素領域10内には、それぞれTFT等からなる図示しない制御素子と、ITO等の透明導電膜からなる画素電極11(図2参照)が形成されている。
【0022】
図2に示すように、データ線9(走査線8)及び画素電極11の下側には、第2配向膜7bが積層されている。第2配向膜7bは、ラビング処理等による配向処理が施されている。
【0023】
また、対向基板4と素子基板5との間隙(セルギャップ)の外縁には、長方形状のシール部材12が配設されている。シール部材12が各基板4,5の外縁に配設されることによって、対向基板4と素子基板5とが所定の距離だけ離間して配設されている。また、この対向基板4と素子基板5との間隙には、シール部材12によって封止される液状体としての液晶13からなる液晶層13Lが形成されている。
【0024】
そして、走査線8が走査に基づいて1本ずつ順次選択されると、対応する画素領域10の制御素子(図示しない)が選択期間中だけオン状態となり、対応するデータ線9及び制御素子を介して、対応する画素電極11にデータ信号が出力される。すると、素子基板5の画素電極11と対向電極6の電位差に応じて、液晶13の配向状態が平面状の光Lを変調するように維持されて、変調された光が図示しない偏向板を通過するか否かによって、所望する画像が液晶パネル2に表示される。
【0025】
上記した液晶パネル2では、各液晶パネル2間で液晶13の容量を等しくすることによって、対向基板4と素子基板5との間隙を均一にすることができ、各液晶パネル2の表示画質を維持することができる。なお、本実施形態の液晶表示装置1は、画素領域10に制御素子であるTFTを備えた、いわゆるアクティブマトリクス方式の液晶表示装置であるが、例えばパッシブマトリクス方式の液晶表示装置であってもよい。また、本実施形態では、対向基板4を照射側に配置する構成にしているが、これに限らず素子基板5を照射側に配置する構成であってもよい。
【0026】
次に、上記した液晶パネル2の製造方法を説明する。
図3に示すように、基板としてのマザー対向基板15は、複数の対向基板4を形成するための領域(2点鎖線で示す)がマトリクス状に区画形成されている。マザー対向基板15の一側面(吐出面15a)に、各対向基板4を形成する領域に対応して四角枠状のシール部材12を形成する。これによって、マザー対向基板15の吐出面15aには、マトリクス状に配列されたシール部材12によって囲まれる領域(吐出領域S)が形成される。なお、各吐出領域Sに対応する吐出面15aには、それぞれ前記対向電極6及び前記第1配向膜7a(図2参照)が形成されている。また、マザー対向基板15の反Y矢印方向側端部には、マザー対向基板15の製造番号等を刻印したマーキングMが形成されている。
【0027】
図4に示すように、本実施形態では、説明の便宜上、マザー対向基板15に形成された最もX矢印方向側にあってY矢印方向に配列された各吐出領域Sを1列目の吐出領域SA1とし、その1列目の各吐出領域SをY方向側(マーキングMの反対側)から順にS1〜S4という。また、図4において、1列目の吐出領域SA1の右側のY矢印方向に配列された各吐出領域Sを2列目の吐出領域SA2とし、その2列目の各吐出領域Sを反Y方向側から順にS5〜S8とする。同様に、3列目の吐出領域SA3とし、その3列目の各吐出領域SをY方向側から順にS9〜S12といい、4列目の吐出領域SA4とし、その4列目の各吐出領域Sを反Y方向側から順にS13〜S16といい、5列目の吐出領域SA5とし、その5列目の各吐出領域SをY方向側から順にS17〜S20という。また、本実施形態では、各吐出領域SのX矢印方向の幅を吐出幅Wsという。
【0028】
マザー対向基板15にシール部材12によって各吐出領域S(S1〜S20)が形成さ
れると、図3に示すように、液晶13の液滴Dを所定の量だけ各吐出領域S内に吐出する。続いて、マザー対向基板15に形成される各対向基板4に対応する素子基板5がマトリクス状に配列されたマザー素子基板16を、対応する各対向基板4と素子基板5とが相対向するようにマザー対向基板15に貼り合わせて、シール部材12を硬化させる。なお、マザー素子基板16の吐出面15a側の側面には、各吐出領域Sに対応する前記走査線8、データ線9、画素領域10及び画素電極11(図2参照)等が形成されている。
【0029】
そして、シール部材12の硬化によって貼り合わせたマザー対向基板15及びマザー素子基板16をダイシングすることによって、図2に示すような対向基板4と素子基板5の間隙に液晶層13Lが形成された液晶パネル2が形成される。
【0030】
次に、マザー対向基板15の各吐出領域Sに液晶13を吐出するための液滴吐出装置20について説明する。図5は、液滴吐出装置20を説明するための斜視図である。図6は、図5のY矢印方向に沿う断面図である。
【0031】
図5に示すように、液滴吐出装置20には、略直方体状に形成される基台21が備えられている。基台21の上面には、一対の案内溝22がY矢印方向全幅に渡って形成され、その案内溝22には、基板ステージ23が摺動可能に取付けられている。基板ステージ23には、Y軸モータMY(図11参照)が連結されており、Y軸モータMYの正逆回転によって、基板ステージ23がY矢印方向及び反Y矢印方向に移動される。すなわち、所定の駆動信号がY軸モータMYに入力されると、Y軸モータMYが正転又は逆転して、基板ステージ23が、Y矢印方向に沿って所定の速度で往動又は復動するようになっている。
【0032】
また、基板ステージ23の上面には、マザー対向基板15の吐出面15a(吐出領域S)を上側にしてマザー対向基板15を載置可能にする載置面23aが形成され、載置したマザー対向基板15が、基板ステージ23に対して所定の載置位置に位置決めされるようになっている。なお、本実施形態のマザー対向基板15は、1列目の吐出領域SA1(S1〜S4)を、基板ステージ23の最もX矢印方向側に配置するように位置決めされる。
【0033】
図6に示すように、基板ステージ23の内部には、載置面23aに載置したマザー対向基板15を加熱する加熱手段としての基板ヒータHが備えられている。図7に示すように、基板ヒータHは、基板ステージ23の内部を第2方向としてのX矢印方向に向かって延設された第2加熱手段としてのX軸ヒータHXと、基板ステージ23の内部を第1方向としてのY矢印方向に向かって延設された第1加熱手段としてのY軸ヒータHYとを備えている。X軸ヒータHXは、本実施形態では、6本有し、各X軸ヒータHX(HX0〜HX5)が等間隔にY矢印方向に並設されている。Y軸ヒータHYは、本実施形態では、7本有し、各Y軸ヒータHY(HY0〜HY6)が等間隔にX矢印方向に並設されている。
【0034】
詳しくは、X軸ヒータHX0は、最もY矢印方向側に配設され、載置面23aに載置されたマザー対向基板15の外周に相対する位置に形成されている。X軸ヒータHX1,HX2,HX3,HX4は、載置面23aに載置されたマザー対向基板15のそれぞれ1行目の吐出領域SB1(S1,S8,S9,S16,S17)、2行目の吐出領域SB2(S2,S7,S10,S15,S18)、3行目の吐出領域SB3(S3,S6,S11,S14,S19)、4行目の吐出領域SB4(S4,S5,S12,S13,S20)と相対する位置に形成されている。X軸ヒータHX5は、最も反Y矢印方向側に配設され、載置面23aに載置されたマザー対向基板15の外周に相対する位置に形成されている。
【0035】
また、Y軸ヒータHY0は、最もX矢印方向側に配設され、載置面23aに載置されたマザー対向基板15の外周に相対する位置に形成されている。Y軸ヒータHY1,HY2
,HY3,HY4,HY5は、載置面23aに載置されたマザー対向基板15のそれぞれ1列目の吐出領域SA1(S1〜S4)、2列目の吐出領域SA2(S5〜S8)、3列目の吐出領域SA3(S9〜S12)、4列目の吐出領域SA4(S13〜S16)、5列目の吐出領域SA5(S17〜S20)と相対する位置に形成されている。Y軸ヒータHY6は、最も反X矢印方向側に配設され、載置面23aに載置されたマザー対向基板15の外周に相対する位置に形成されている。
【0036】
すなわち、各吐出領域S(S1〜S20)にX軸ヒータHX及びY軸ヒータHYがそれぞれ相対向するように基板ヒータHはマトリクス状に形成されている。例えば、吐出領域S1では、X軸ヒータHX1とY軸ヒータHY1とが相対するように形成され、吐出領域S1は、これら二つのヒータHX1,HY1によって温度調節(加熱)される。なお、これらX軸ヒータHXとY軸ヒータHYとの間には、図示しない断熱部材が配設されている。
【0037】
そして、X軸ヒータHX(HX0〜HX5)及びY軸ヒータHY(HY0〜HY6)は、各吐出領域S1〜S20を予め定めた温度(目標温度To)にするためのヒータ駆動信号HCX(HCX0〜HCX5),HCY(HCY0〜HCY6:図11参照)をそれぞれ受けて、対応する各吐出領域S(S1〜S20)に相対した載置面23aを加熱するようになっている。
【0038】
そして、X軸ヒータHX及びY軸ヒータHYに、それぞれヒータ駆動信号HCX,HCYが供給されると、載置面23aに載置されたマザー対向基板15の各吐出領域S(S1〜S20)の温度は、載置面23aを介した各基板ヒータHからの熱量の伝達によって、目標温度Toまで昇温される。
【0039】
図6及び図7に示すように、基板ステージ23の内部であって、載置面23aに載置されたマザー対向基板15の各吐出領域S(S1〜S20)に相対する位置には、温度センサTS(TS1〜TS20)がそれぞれ備えられている。各温度センサTS1〜TS20は、それぞれ対応する各吐出領域S1〜S20からの赤外線等を検出するセンサである。そして、温度センサTS1〜TS20は、それぞれ検出した各吐出領域S1〜S20の実温度に応じた信号を温度検出信号TA(TA1〜TA20:図11参照)として出力するようになっている。
【0040】
また、図5に示すように、基台21のX矢印方向両側には、一対の支持台26a、26bが立設されて、その一対の支持台26a、26bには、X矢印方向に延びる案内部材27が架設されている。その案内部材27の上側には、収容タンク28が配設されて、その収容タンク28内には、液晶13が収容されている。なお、本実施形態における液晶13の粘度は50cp〜100cpであるが、これに限られるものではない。
【0041】
案内部材27の下側には、一対の案内レール29がX矢印方向の全幅に渡って形成され、その案内レール29には、キャリッジ30が移動可能に取付けられている。キャリッジ30には、X軸モータMX(図11参照)が連結されており、X軸モータMXの正逆回転によって、キャリッジ30がX矢印方向及び反X矢印方向に移動される。すなわち、所定の駆動信号がX軸モータMXに入力されると、X軸モータMXが正転又は逆転して、キャリッジ30が、X矢印方向に沿って所定の速度で往動又は復動するようになっている。
【0042】
キャリッジ30の下側には、液滴吐出手段としての液滴吐出ヘッド(以下単に、吐出ヘッド31という)が配設されている。吐出ヘッド31は、収容タンク28と連通しており、収容タンク28に収容されている液晶13が吐出ヘッド31に供給されている。また、図8に示すように、吐出ヘッド31は略長方体状に形成され、その下側には、ノズルプレ
ート32が備えられている。ノズルプレート32の下面(ノズル形成面32a)には、Z矢印方向に貫通形成される複数の吐出ノズル(以下単に、ノズルNという。)が、X矢印方向に一列に配列され、1列のノズル列NLを形成している。このノズル列NLのX方向の幅(ノズル幅Wn)は、吐出領域S(S1〜S20)の吐出幅Wsと略同じサイズで形成されている。
【0043】
図6に示すように、吐出ヘッド31の外周には、液状体加熱手段としてのヘッドヒータ31Hが配設されている。ヘッドヒータ31Hは、吐出ヘッド31内の液晶13を所定の温度領域(本実施形態では約60℃)まで加熱するようになっている。そして、ヘッドヒータ31Hが各吐出ヘッド31内の液晶13を加熱することによって液晶13の粘度をノズルNの近傍で低下させた状態で、さらに吐出ヘッド31内の圧電素子35(図11参照)を伸縮させることにより、液晶13が液滴Dとして吐出される。なお、本実施形態では、吐出ヘッド31の外周のみにヘッドヒータ31Hを配設する構成にしたが、収容タンク28から吐出ヘッド31までの液晶13の供給配管等の外周にも、別途加熱ヒータを配設する構成にしてもよい。
【0044】
そして、本実施形態の吐出ヘッド31は、基板ステージ23及びキャリッジ30の移動によって、図9の2点鎖線で示す複数回の略U字状の相対移動経路に沿って、マザー対向基板15上を相対移動するようになっている。
【0045】
詳しくは、本実施形態の液滴吐出装置20は、キャリッジ30(吐出ヘッド31)を移動して、マザー対向基板15をY矢印方向に移動するときに、ノズル列NLが1列目の吐出領域SA1(S1〜S4)と対峙する位置(図9に示す実線)に配置する。そして、基板ステージ23をY矢印方向に沿って移動して、ノズル列NL(吐出ヘッド31)を、1列目の吐出領域SA1のX矢印方向全幅にわたり、反Y矢印方向(吐出領域Sの列方向)に沿って相対移動する。すなわち、吐出ヘッド31が吐出領域S1,S2,S3,S4の順に対峙して移動する。
【0046】
続いて、液滴吐出装置20は、キャリッジ30を反X矢印方向に移動し、マザー対向基板15を反Y矢印方向に移動するときに、ノズル列NLが2列目の吐出領域SA2(S5〜S8)と対峙する位置に配置する。そして、基板ステージ23を反Y矢印方向に沿って移動して、ノズル列NL(吐出ヘッド31)を、2列目の吐出領域SA2のX矢印方向全幅にわたり、Y矢印方向(吐出領域Sの列方向)に相対移動する。すなわち、吐出ヘッド31が吐出領域S5,S6,S7,S8の順に対峙して移動する。
【0047】
続いて、液滴吐出装置20は、キャリッジ30を反X矢印方向に移動し、マザー対向基板をY矢印方向に移動するときに、ノズル列NLが3列目の吐出領域SA3(S9〜S12)と対峙する位置に配置する。そして、基板ステージ23をY矢印方向に沿って移動して、ノズル列NL(吐出ヘッド31)を、3列目の吐出領域SA3のX矢印方向全幅にわたり、反Y矢印方向(吐出領域Sの列方向)に相対移動する。すなわち、吐出ヘッド31が吐出領域S9,S10,S11,S12の順に対峙して移動する。
【0048】
続いて、液滴吐出装置20は、キャリッジ30を反X矢印方向に移動し、マザー対向基板15を反Y矢印方向に移動するときに、ノズル列NLが4列目の吐出領域SA4(S13〜S16)と対峙する位置に配置する。そして、基板ステージ23を反Y矢印方向に沿って移動して、ノズル列NL(吐出ヘッド31)を、4列目の吐出領域SA4のX矢印方向全幅にわたり、Y矢印方向(吐出領域Sの列方向)に相対移動する。すなわち、吐出ヘッド31が吐出領域S13,S14,S15,S16の順に対峙して移動する。
【0049】
続いて、液滴吐出装置20は、キャリッジ30を反X矢印方向に移動し、マザー対向基
板15をY矢印方向に移動するときに、ノズル列NLが5列目の吐出領域SA5(S17〜S20)と対峙する位置に配置する。そして、基板ステージ23をY矢印方向に沿って移動して、ノズル列NL(吐出ヘッド31)を、5列目の吐出領域SA5のX矢印方向全幅にわたり、反Y矢印方向(吐出領域Sの列方向)に相対移動する。すなわち、吐出ヘッド31が吐出領域S17,S18,S19,S20の順に対峙して移動する。
【0050】
そして、Y矢印方向に搬送される各吐出領域S(S1〜S20)が吐出ヘッド31の直下に侵入すると、対応するノズルNの圧電素子35(図11参照)が収縮・伸張する。これにより液晶13のメニスカスが振動する。すると、液晶13は、ヘッドヒータ31Hの加熱によって、その粘度を低下させた分だけ、液滴Dとして円滑に吐出される。吐出された液滴Dは、対応するノズルNの反Z矢印方向に沿って飛行して、各吐出領域S1〜S20に着弾する。
【0051】
この際、従来の液滴吐出装置では、図10に示すように、各吐出領域S1〜S20に吐出される液晶13の量(吐出量P)が吐出領域S1〜S20の位置によって変化していた(1点鎖線参照)。詳しくは、吐出ヘッド31の温度変化、特に温度の低下によって液晶13の粘度が高くなるため、圧電素子35の収縮・伸張による振動によって吐出される液晶13の量が減少していた。すなわち、一つのある吐出領域Sに液晶13を吐出すると、吐出ヘッド31は放熱によって温度が低下し、吐出ヘッド31が吐出領域S1から吐出領域S20に進むに連れて、液晶13の吐出総量が増加するため、吐出ヘッド31の温度の低下が大きくなり、液晶13の粘度が高くなって液晶13の吐出量Pが徐々に減少する。この原因によって、吐出ヘッド31が吐出領域S1から吐出領域S20に進むに連れて、全体的に吐出量Pが減少していた。
【0052】
また、マザー対向基板15の外縁近傍は、中央位置近傍に比べて、外気に晒される領域が広くなる。そして、マザー対向基板15の外縁近傍は、外気に晒される領域が広い分だけ、外気との熱交換を加速して、放熱しやすくなる。従って、外気に晒される領域が広くなるに連れて、マザー対向基板15の温度の低下が大きくなる。そのため、マザー対向基板15と熱交換を行う吐出ヘッド31は、マザー対向基板15の中心位置近傍と相対向した位置よりも外縁近傍と相対向する位置の方が温度の低下が大きい。
【0053】
そして、吐出ヘッド31は、図9に示すように、外縁近傍(1行目及び4行目の吐出領域S)及び中心位置近傍(2行目及び3行目の吐出領域S)の上を略交互に通過するため、図10に1点鎖線で示すように、波打つように吐出量Pが変動する。例えば、吐出領域S1,S4はX矢印方向及びY矢印方向の外縁近傍であり、Y矢印方向の外縁近傍である吐出領域S2,S3よりも外気に晒される領域が広くなる。これにより、吐出領域S1,S4上では、吐出領域S2,S3上よりもマザー対向基板15の温度が低くなるため、そのマザー対向基板15と熱交換を行う吐出ヘッド31の温度が吐出領域S2,S3に比べて低下する。そのため、吐出領域S2,S3よりも吐出領域S1,S4に吐出される液晶13の吐出量Pが減少していた。
【0054】
上述のように、従来の液滴吐出装置では、吐出ヘッド31が相対するマザー対向基板15の位置及び液晶13の吐出によって、吐出ヘッド31の温度が変化して各吐出領域S1〜S20に吐出する液晶13の吐出量Pが変動していた。
【0055】
そこで、本実施形態の液滴吐出装置20は、液晶13の吐出による吐出ヘッド31の温度変化及びマザー対向基板15との熱交換による吐出ヘッド31の温度変化を補償するために、各X軸ヒータHX0〜HX5及び各Y軸ヒータHY0〜HY6を制御して、図10の実線に示すように、各吐出領域S1〜S20における目標温度Toを設定している。なお、本実施形態における各吐出領域S1〜S20の目標温度Toは、予め実施した試験等
に基づいて設定されて、吐出ヘッド31から各吐出領域S1〜S20に吐出する液晶13の容量が略同じとなる温度に設定されている。
【0056】
詳しくは、各Y軸ヒータHY0〜HY6は、液晶13の吐出による吐出ヘッド31の温度低下を補償するように、制御温度が、1列目の吐出領域SA1(S1〜S4)から5列目の吐出領域SA5(S17〜S20)に進む(液晶13の吐出総量が大きくなる)に連れて高くなるように設定されている。例えば、本実施形態では、Y軸ヒータHY0,HY1,HY2,HY3,HY4,HY5,HY6の制御温度をそれぞれ20℃,20℃,21℃,22℃,23℃,24℃,25℃に設定しているが、これに限られるものではない。なお、本実施形態では、液滴吐出装置20は、20℃に維持された雰囲気下に設置されている。
【0057】
一方、各X軸ヒータHX0〜HX5は、マザー対向基板15との熱交換による吐出ヘッド31の温度変化を補償するように、中心位置近傍(2行目及び3行目の吐出領域SB2,SB3)に相対するX軸ヒータHX2,HX3に比べて外縁近傍(1行目及び4行目の吐出領域SB1,SB4)に相対するX軸ヒータHX1,HX4の制御温度を高く設定している。例えば、本実施形態では、X軸ヒータHX0,HX1の制御温度を21℃、X軸ヒータHX2,HX3の制御温度を20℃、X軸ヒータHX4,HX5の制御温度を21℃としているが、これに限られるものではない。
【0058】
このように、各Y軸ヒータHY0〜HY6及び各X軸ヒータHX0〜HX5によって、各吐出領域S1〜S20の目標温度Toを図10に示すように設定すると、目標温度Toは、液晶13の吐出量Pの変動と対称線L1を中心に略対称な変動となる。これによって、マザー対向基板15上を移動する吐出ヘッド31の温度を略一定に維持することができるため、各吐出領域Sに吐出される液晶13の吐出量Pの変動を好適に抑制することができる。
【0059】
次に、上記のように構成した液滴吐出装置20の電気的構成を図11に従って説明する。
図11に示すように、制御装置40は、CPU等からなる制御部41、DRAM及びSRAM等からなり各種データを格納するRAM42、各種データや各種制御プログラムを格納するROM43を有している。また、制御装置40は、圧電素子駆動信号COMを生成する駆動信号生成回路44等を有している。そして、制御装置40では、これら制御部41、RAM42、ROM43及び駆動信号生成回路44が、図示しないバスを介して接続されている。
【0060】
制御装置40には、入力装置51が接続されている。入力装置51は、起動スイッチ、停止スイッチ等の操作スイッチを有し、各スイッチの操作による操作信号を制御装置40に出力する。また、入力装置51は、吐出面15aに吐出する液晶13の吐出位置(吐出面15aにおける各吐出領域S1〜S20の位置)やマザー対向基板15の目標温度To等を所定の形式の吐出データIaとして制御装置40に出力する。制御装置40は、入力装置51からの吐出データIaと、ROM43等に格納された制御プログラム(例えば、液晶吐出プログラム)に従って、基板ステージ23を移動させてマザー対向基板15の搬送処理動作を行い、吐出ヘッド31の各圧電素子35を駆動させて吐出面15aに対する液晶13の液滴吐出処理動作を行う。
【0061】
詳述すると、制御部41は、入力装置51からの吐出データIaに所定の展開処理を施して、二次元描画平面(吐出面15a)上における位置に、液滴Dを吐出するか否かを示すビットマップデータBMDを生成し、生成したビットマップデータBMDをRAMに格納するようになっている。このビットマップデータBMDは、各ビットの値(0あるいは
1)に応じて、圧電素子35のオンあるいはオフ(液滴Dを吐出するか否か)を規定するものである。
【0062】
また、制御部41は、入力装置51からの吐出データIaにビットマップデータBMDの展開処理と異なる展開処理を施し、圧電素子駆動信号COMの波形データを生成して駆動信号生成回路44に出力するようになっている。駆動信号生成回路44は、制御部41からの波形データを図示しない波形メモリに格納して、格納した波形データをデジタル/アナログ変換し、アナログ信号の波形信号を増幅して、圧電素子35を駆動するための圧電素子駆動信号COMを生成するようになっている。そして、制御部41は、圧電素子駆動信号COMを、吐出ヘッド駆動回路52に出力するようになっている。
【0063】
制御装置40には、吐出ヘッド駆動回路52が接続されて、その吐出ヘッド駆動回路52に、圧電素子駆動信号COMを出力するようになっている。そして、吐出ヘッド駆動回路52は、その圧電素子駆動信号COMを、対応する各圧電素子35に出力するようになっている。
【0064】
制御装置40には、X軸モータ駆動回路53が接続されて、X軸モータ駆動回路53にX軸モータ駆動制御信号を出力するようになっている。X軸モータ駆動回路53は、制御装置40からのX軸モータ駆動制御信号に応答して、キャリッジ30を往復移動させるX軸モータMXを正転又は逆転させるようになっている。そして、例えば、X軸モータMXを正転させると、キャリッジ30はX矢印方向に移動し、逆転させると、キャリッジ30は反X矢印方向に移動するようになっている。
【0065】
制御装置40には、Y軸モータ駆動回路54が接続され、Y軸モータ駆動回路54にY軸モータ駆動制御信号を出力するようになっている。Y軸モータ駆動回路54は、制御装置40からのY軸モータ駆動制御信号に応答して、基板ステージ23(マザー対向基板15)を往復移動させるY軸モータMYを正転又は逆転させるようになっている。例えば、Y軸モータMYを正転させると、基板ステージ23はY矢印方向に移動し、逆転させると、基板ステージ23は反Y矢印方向に移動する。
【0066】
制御装置40には、基板ヒータ駆動回路55が接続されて、その基板ヒータ駆動回路55に、制御部41で生成される各Y軸ヒータHY0〜HY6及び各X軸ヒータHX0〜HX5に対応する温度制御信号TPが出力されるようになっている。その基板ヒータ駆動回路55には、各吐出領域S1〜S20の温度センサTS1〜TS20が接続されて、それぞれ温度センサTS1〜TS20からの温度検出信号TA1〜TA20が入力されるようになっている。
【0067】
そして、基板ヒータ駆動回路55は、制御装置40からの温度制御信号TPと各温度センサTS1〜TS20からの温度検出信号TA1〜TA20に基づいて、各吐出領域S1〜S20の温度を目標温度Toにするためのヒータ駆動信号HCX0〜HCX5,HCY0〜HCY6を生成する。そのヒータ駆動信号HCX0〜HCX5,HCY0〜HCY6をX軸ヒータHX0〜HX5及びY軸ヒータHY0〜HY6にそれぞれ出力するようになっている。
【0068】
例えば、制御装置40からのX軸ヒータHX1及びY軸ヒータHY1の温度制御信号TPX1,TPY1と、吐出領域S1の温度センサTS1からの温度検出信号TA1とに基づいて、吐出領域S1を目標温度To(41℃:図10参照)にするためのヒータ駆動信号HCX1,HCY1を生成する。そのヒータ駆動信号HCX1,HCY1をそれぞれX軸ヒータHX1及びY軸ヒータHY1に出力するようになっている。そして、基板ヒータ駆動回路55は、各吐出領域S1〜S20の実温度が、それぞれ目標温度Toになると、
各吐出領域S1〜S20の実温度が目標温度Toに到達したことを示す目標温度到達信号TRを生成して、その目標温度到達信号TRを制御装置40に出力するようになっている。
【0069】
次に、液滴吐出装置20を使ってマザー対向基板15の各吐出領域S1〜S20に液晶13を吐出する液滴吐出方法について以下に説明する。
まず、基板ステージ23上に、吐出面15aを上側にしてマザー対向基板15を配置固定する。この状態から、入力装置51に吐出データIaを入力して、液晶吐出プログラムを開始するための操作信号を入力する。
【0070】
すると、制御装置40は、吐出データIaに基づいて、温度制御信号TPを生成する。そして、制御装置40は、基板ヒータ駆動回路55に、温度制御信号TPに基づくヒータ駆動信号HCX0〜HCX5,HCY0〜HCY6を生成させて、そのヒータ駆動信号HCX0〜HCX5,HCY0〜HCY6を、それぞれX軸ヒータHX0〜HX5及びY軸ヒータHY0〜HY6に出力させる。そして、制御装置40は、X軸ヒータHX0〜HX5及びY軸ヒータHY0〜HY6を駆動して、載置面23aに載置されたマザー対向基板15の各吐出領域S1〜S20の実温度を、それぞれ目標温度Toに昇温維持させる。
【0071】
制御装置40は、各吐出領域S1〜S20の実温度が、それぞれ目標温度Toに昇温維持されると、基板ヒータ駆動回路55からの目標温度到達信号TRを受けて、X軸モータMXを駆動制御してキャリッジ30を移動させる。そして、制御装置40は、マザー対向基板15がY矢印方向に移動したときに、吐出ヘッド31(ノズル列NL)の直下を、1列目の吐出領域SA1(S1〜S4)が通過する位置にキャリッジ30をセットさせる。また、制御装置40は、Y軸モータMYを駆動制御して、基板ステージ23(マザー対向基板15)をY矢印方向に搬送させる。すなわち、制御装置40は、吐出ヘッド31に向かって、1列目の吐出領域SA1を、吐出領域S1から吐出領域S4へ順に搬送させる。
【0072】
このとき、制御装置40は、各吐出領域S(S1〜S4)と相対する位置に吐出ヘッド31が配置されると、圧電素子駆動信号COMを吐出ヘッド駆動回路52に出力する。そして、制御装置40は、吐出ヘッド駆動回路52に、入力された圧電素子駆動信号COMを対応する圧電素子に出力させ、液滴Dを吐出させる。すなわち、吐出領域S1から吐出領域S4の順に液滴Dが吐出される。
【0073】
この際、マザー対向基板15の1列目の吐出領域SA1(S1〜S4)は、X軸ヒータHX及びY軸ヒータHY(特に、Y軸ヒータHY1)からの熱量を受けてそれぞれ目標温度Toに維持されている。
【0074】
そのため、吐出ヘッド31(各ノズルN内の液晶13)には、1列目の吐出領域SA1において、マザー対向基板15からそれぞれ異なる熱量が伝達されて、この熱量によって、各吐出領域S1〜S20の位置の違いによる熱交換量の変化及び液晶13の吐出による熱放出量の変化を補償している。これによって、吐出ヘッド31は、各吐出領域S上において略等しい温度に維持された状態で、各吐出領域Sに圧電素子駆動信号COMに対応した等しい容量の液晶13を吐出する。
【0075】
以後、同様に、制御装置40は、2列目〜5列目の各吐出領域SA2〜SA5がノズル列NLの直下に搬送される度に、圧電素子駆動信号COMに対応した等しい容量の液晶13を吐出する。そして、制御装置40は、全ての吐出領域S(S1〜S20)に略均一な容量の液晶13を吐出すると、マザー対向基板15を吐出ヘッド31の直下から退避するように基板ステージ23を移動して、液晶吐出プログラムを終了する。
【0076】
これによって、マザー対向基板15の全ての吐出領域S1〜S20に、等しい容量の液晶13を吐出することができ、対向基板4と素子基板5との間の間隙の距離(セルギャップ)を均一にした液晶パネル2を製造することができる。
【0077】
次に、上記のように構成した本実施形態の効果を以下に記載する。
(1)本実施形態によれば、Y軸ヒータHY0〜HY6の制御温度を、1列目の吐出領域SA1(S1〜S4)から5列目の吐出領域SA5(S17〜S20)に進む(液晶13の吐出総量が大きくなる)に連れて高くなるように設定した。これによって、液晶13の吐出による放熱によって生じる吐出ヘッド31の温度低下を補償することができるため、吐出ヘッド31の温度低下を好適に抑制することができる。従って、液晶13の粘度の変動を好適に抑制することができ、各吐出領域S1〜S20に吐出する液晶13の容量の均一性を向上することができる。
【0078】
(2)本実施形態によれば、中心位置近傍(2行目及び3行目の吐出領域SB2,SB3)に相対するX軸ヒータHX2,HX3に比べて外縁近傍(1行目及び4行目の吐出領域SB1,SB4)に相対するX軸ヒータHX1,HX4の制御温度を高く設定した。これによって、外気との熱交換によって温度低下の起こりやすい吐出領域S(1行目及び4行目の吐出領域SB1,SB4等)ほど温度が高くなるため、マザー対向基板15との熱交換による吐出ヘッド31の温度低下を好適に抑制することができる。従って、液晶13の粘度の変動を好適に抑制することができ、各吐出領域S1〜S20に吐出する液晶13の容量の均一性を向上することができる。
【0079】
(3)本実施形態によれば、基板ヒータHは、X軸ヒータHX0〜HX5及びY軸ヒータHY0〜HY6を備え、そのX軸ヒータHX0〜HX5とY軸ヒータHY0〜HY6とによってマトリクス状に配設された。そして、X軸ヒータHX0〜HX5は、マザー対向基板15との熱交換による吐出ヘッド31の温度低下を補償する制御温度に設定されている。また、Y軸ヒータHY0〜HY6は、液晶13の吐出による放熱によって生じる吐出ヘッド31の温度低下を補償する制御温度に設定されている。その結果、二つの異なる原因による吐出ヘッド31の温度低下を、2つの方向(X矢印方向及びY矢印方向)に沿って形成された単純な構造のX軸ヒータHX0〜HX5及びY軸ヒータHY0〜HY6によって抑制することができる。また、制御装置40は、各吐出領域S1〜S20がそれぞれ目標温度Toになるように、X軸ヒータHX0〜HX5及びY軸ヒータHY0〜HY6を制御温度に昇温するだけであるので制御が容易である。さらに、X軸ヒータHX0〜HX5及びY軸ヒータHY0〜HY6は、マトリクス状に形成されているため、制御装置40はX軸ヒータHX0〜HX5及びY軸ヒータHY0〜HY6をそれぞれ調整制御することにより自由な温度分布を作ることができる。
【0080】
なお、上記各実施形態は、以下の態様に変更してもよい。
・上記実施形態における吐出ヘッド31の動きに特に制限されない。吐出ヘッド31の動きが変更された場合は、その吐出ヘッド31の動きに応じて各吐出領域S1〜S20の目標温度Toを適宜変更する。
【0081】
・上記実施形態における各吐出領域S1〜S20の目標温度Toに特に制限されない。例えば、外気の温度、マザー対向基板15のサイズ又は液状体の種類等に応じて適宜変更してもよい。
【0082】
・上記実施形態におけるX軸ヒータHX及びY軸ヒータHYの本数に特に制限されない。例えば、各吐出領域S毎に一つの基板ヒータHを配置し、その基板ヒータHを制御することにより各吐出領域Sの温度制御を行うようにしてもよい。
【0083】
・上記実施形態では、X軸ヒータHX及びY軸ヒータHYを直交するように配設したが、これに限られるものではない。例えば、X軸ヒータHX及びY軸ヒータHYの内少なくとも一方を、X矢印方向及びY矢印方向とは異なる第3の方向に延びるように形成してもよい。
【0084】
・上記実施形態では、X軸ヒータHXをX矢印方向に延びるように形成し、Y軸ヒータHYをY矢印方向に延びるように形成したが、これに限られるものではない。例えば、X軸ヒータHX及びY軸ヒータHYに加えて、さらに第3方向に延びる第3方向ヒータを形成してもよい。また、X軸ヒータHX及びY軸ヒータHYに代えて、X軸方向及びY軸方向とは異なる複数の方向に延びるように複数のヒータを形成してもよい。
【0085】
・上記実施形態では、X軸ヒータHXをマザー対向基板15との熱交換による吐出ヘッド31の温度変化を補償するために使用し、Y軸ヒータHYを液晶13の吐出による吐出ヘッド31の温度低下を補償するために使用した。これを、Y軸ヒータHYの一部をマザー対向基板15との熱交換による吐出ヘッド31の温度変化を補償するために使用してもよい。また、X軸ヒータHXの少なくとも一部を液晶13の吐出による吐出ヘッド31の温度低下を補償するために使用してもよい。
【0086】
・上記実施形態では、基板温度制御手段を、基板ステージ23に内設した基板ヒータHとして具体化した。これに限らず、例えば、マザー対向基板15の吐出面15aから赤外線等の光を照射する光源として具体化し、マザー対向基板15の温度を、前記光の照射量によって制御するようにしてもよい。つまり、マザー対向基板15に伝達する熱量を制御可能であればよい。
【0087】
・上記実施形態では、熱交換による吐出ヘッド31の温度変化を補償するために、マザー対向基板15を加熱する構成にしたが、これに限らず、マザー対向基板15を冷却する構成にしてもよい。また、加熱手段と冷却手段とを混合して配置してもよい。
【0088】
・上記実施形態では、各吐出領域S(S1〜S20)と相対する位置に温度センサTS(TS1〜TS20)をそれぞれ設けたが、温度センサTSを設置する位置及び個数は特に制限されない。
【0089】
・上記実施形態では、吐出ヘッド31の外周のみにヘッドヒータ31Hを配設する構成にしたが、収容タンク28から吐出ヘッド31までの液晶13の供給配管等の外周にも、別途加熱ヒータを配設する構成にしてもよい。
【0090】
・上記実施形態では、液滴吐出手段として吐出ヘッド31を採用したが、これに限られず、例えば、エアー式ディスペンサ等に変更して実施してもよい。
・上記実施形態では、シール部材12をマザー対向基板15に形成し、液晶13の液滴Dを、そのマザー対向基板15に吐出する構成にした。これに限らず、例えばシール部材12をマザー素子基板16に形成し、液晶13をマザー対向基板15に吐出する構成にしてもよい。また、シール部材12をマザー対向基板15に形成し、液晶13をマザー素子基板16に吐出する構成にしてもよい。さらに、シール部材12をマザー素子基板16に形成し、液晶13をマザー素子基板16に吐出する構成にしてもよい。すなわち、シール部材12を形成する基板及び液晶13を吐出する基板は、マザー対向基板15及びマザー素子基板16のどちらの基板で構成してもよい。
【0091】
・上記実施形態では、液晶表示装置1は、画素領域10に制御素子であるTFTを備えた、いわゆるアクティブマトリクス方式の液晶表示装置としたが、これを例えばパッシブマトリクス方式の液晶表示装置に変更して実施してもよい。
【0092】
・上記実施形態では、液状体として液晶13を採用した。これに限らず、加熱することによって低粘度化して、液滴として吐出可能になる液状体であればよい。
・上記実施形態では、液晶13を吐出して液晶表示装置1を製造する構成にした。これに限らず、例えば液状体を金属インクとして具体化し、液晶表示装置1の各種金属配線や、平面状の電子放出素子を備え、同素子から放出された電子による蛍光物質の発光を利用した電界効果型装置(FEDやSED等)を備えた表示装置の金属配線を製造する構成にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本実施形態の液晶表示装置を説明するための概略斜視図。
【図2】同じく、液晶表示装置を説明するための概略断面図。
【図3】同じく、液晶表示装置の製造方法を説明するための概略斜視図。
【図4】同じく、液晶表示装置の製造方法を説明するための平面図。
【図5】同じく、液滴吐出装置を説明するための概略斜視図。
【図6】同じく、液滴吐出装置を説明するための概略断面図。
【図7】同じく、基板ヒータを説明するための平面図。
【図8】同じく、液滴吐出ヘッドを説明するための概略斜視図。
【図9】同じく、液滴吐出ヘッドの相対移動経路を説明するための作用平面図。
【図10】同じく、各吐出領域の目標温度を説明するためのグラフ図。
【図11】同じく、液滴吐出装置の電気的構成を説明するための電気ブロック回路図。
【符号の説明】
【0094】
D…液滴、H…加熱手段としての基板ヒータ、HX…第2加熱手段としてのX軸ヒータ、HY…第1加熱手段としてのY軸ヒータ、S…吐出領域、1…液晶表示装置、4…対向基板、5…素子基板、13…液状体としての液晶、15…基板としてのマザー対向基板、20…液滴吐出装置、31…液滴吐出手段としての液滴吐出ヘッド、31H…液状体加熱手段としてのヘッドヒータ、40…温度制御手段を構成する制御装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に形成された複数の吐出領域上を相対移動可能に設けられた液滴吐出手段にて、前記各吐出領域に対して予め定められた順序で液状体の液滴を吐出するとき、液状体加熱手段にて予め前記液状体を加熱して吐出するようにした液滴吐出装置の液滴吐出方法において、
前記各吐出領域での前記液状体の吐出によって放熱される前記液滴吐出手段の熱量を補償するために、前記各吐出領域を前記液状体の吐出に基づいて放熱される前記熱量に応じて温度を制御した状態で、前記液状体を前記各吐出領域に吐出するようにしたことを特徴とする液滴吐出装置の液滴吐出方法。
【請求項2】
請求項1に記載の液滴吐出装置の液滴吐出方法において、
前記各吐出領域は、外気に晒される吐出領域ほど温度を高くすることを特徴とする液滴吐出装置の液滴吐出方法。
【請求項3】
基板に形成された複数の吐出領域上を相対移動可能に設けられ、前記各吐出領域に対して予め定められた順序で液状体の液滴を吐出する液滴吐出手段と、
前記液滴吐出手段から吐出する前記液状体を加熱する液状体加熱手段と
を備えた液滴吐出装置において、
前記基板を加熱する加熱手段と、
前記各吐出領域での前記液状体の吐出によって放熱される前記液滴吐出手段の熱量を補償するために、前記各吐出領域を前記液状体の吐出に基づいて放熱される前記熱量に応じて温度を前記加熱手段によって制御する温度制御手段と
を備えたことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項4】
請求項3に記載の液滴吐出装置において、
前記温度制御手段は、さらに前記加熱手段を制御して、前記各吐出領域のうち、外気に晒される吐出領域ほど温度を高くすることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の液滴吐出装置において、
前記加熱手段は、第1方向に向かって延設され、第2方向に沿って複数並設される第1加熱手段と、前記第2方向に向かって延設され、前記第1方向に沿って複数並設される第2加熱手段とを備え、
前記温度制御手段は、前記第1加熱手段を前記各吐出領域での前記液状体の吐出によって放熱された前記液滴吐出手段の熱量を補償するように制御するとともに、前記第2加熱手段を外気に晒される吐出領域ほど温度を高くするように制御することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項6】
請求項3又は4に記載の液滴吐出装置において、
前記加熱手段は、前記各吐出領域毎に配置されたことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれか1つに記載の液滴吐出装置において、
前記液状体は、液晶であることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項1】
基板に形成された複数の吐出領域上を相対移動可能に設けられた液滴吐出手段にて、前記各吐出領域に対して予め定められた順序で液状体の液滴を吐出するとき、液状体加熱手段にて予め前記液状体を加熱して吐出するようにした液滴吐出装置の液滴吐出方法において、
前記各吐出領域での前記液状体の吐出によって放熱される前記液滴吐出手段の熱量を補償するために、前記各吐出領域を前記液状体の吐出に基づいて放熱される前記熱量に応じて温度を制御した状態で、前記液状体を前記各吐出領域に吐出するようにしたことを特徴とする液滴吐出装置の液滴吐出方法。
【請求項2】
請求項1に記載の液滴吐出装置の液滴吐出方法において、
前記各吐出領域は、外気に晒される吐出領域ほど温度を高くすることを特徴とする液滴吐出装置の液滴吐出方法。
【請求項3】
基板に形成された複数の吐出領域上を相対移動可能に設けられ、前記各吐出領域に対して予め定められた順序で液状体の液滴を吐出する液滴吐出手段と、
前記液滴吐出手段から吐出する前記液状体を加熱する液状体加熱手段と
を備えた液滴吐出装置において、
前記基板を加熱する加熱手段と、
前記各吐出領域での前記液状体の吐出によって放熱される前記液滴吐出手段の熱量を補償するために、前記各吐出領域を前記液状体の吐出に基づいて放熱される前記熱量に応じて温度を前記加熱手段によって制御する温度制御手段と
を備えたことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項4】
請求項3に記載の液滴吐出装置において、
前記温度制御手段は、さらに前記加熱手段を制御して、前記各吐出領域のうち、外気に晒される吐出領域ほど温度を高くすることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の液滴吐出装置において、
前記加熱手段は、第1方向に向かって延設され、第2方向に沿って複数並設される第1加熱手段と、前記第2方向に向かって延設され、前記第1方向に沿って複数並設される第2加熱手段とを備え、
前記温度制御手段は、前記第1加熱手段を前記各吐出領域での前記液状体の吐出によって放熱された前記液滴吐出手段の熱量を補償するように制御するとともに、前記第2加熱手段を外気に晒される吐出領域ほど温度を高くするように制御することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項6】
請求項3又は4に記載の液滴吐出装置において、
前記加熱手段は、前記各吐出領域毎に配置されたことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれか1つに記載の液滴吐出装置において、
前記液状体は、液晶であることを特徴とする液滴吐出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−54757(P2007−54757A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−244564(P2005−244564)
【出願日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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