説明

混合現像剤、並びに、当該混合現像剤を用いる現像装置及び画像形成装置

【課題】初期印刷時に形成される現像剤像と通常印刷時に形成される現像剤像とで、現像剤の帯電量の差によって生じる印刷濃度差を低減する。
【解決手段】着色剤の濃度が低くて、帯電立ち上がりが遅く、かつ、飽和帯電量の絶対値が高い第1の現像剤(通常印刷用現像剤A)と、着色剤の濃度が高くて、帯電立ち上がりが速く、かつ、飽和帯電量の絶対値が低い第2の現像剤(初期印刷用現像剤B)と、第1の現像剤と第2の現像剤とを付着するキャリアとが混合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合現像剤、並びに、この混合現像剤を用いる現像装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置に用いる現像剤として、キャリアとの混合時に、1分間の撹拌による帯電量の絶対値及び5分間の撹拌による帯電量の絶対値をそれぞれ規定することによって、初期印刷時及び通常印刷時に、かぶりや汚れのない画像を形成できるようにした現像剤がある(特許文献1参照)。なお、「初期印刷」とは、画像形成装置がしばらく放置された後の起動直後に行われる印刷処理を意味している。また、「通常印刷」とは、画像形成装置が連続して稼動した後に行われる印刷処理を意味している。また、「かぶり」とは、現像剤が非画像部に付着する現象を意味している。また、「汚れ」とは、現像剤からなる黒点が飛散したように現れる現象を意味している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−216582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の現像剤は、以下に説明するように、初期印刷時に形成される現像剤像と通常印刷時に形成される現像剤像とで、印刷濃度(色調)差が生じることがある、という課題があった。
【0005】
例えば、現像剤は、画像形成装置がしばらく放置された場合に、放電して、帯電量が低い状態になる。しかも、現像剤は、一般的に、初期印刷時に、帯電立ち上がり性が悪化する。そのため、画像形成装置は、初期印刷時に、短時間で、良好な印刷処理が可能な飽和帯電量まで、現像剤を帯電させられず、その結果、不十分な量の現像剤で現像剤像を形成することがある。したがって、画像形成装置は、初期印刷時に、印刷濃度が低い(色調が淡い)現像剤像を形成することがある。なお、印刷濃度(色調)は、現像剤の色がブラックの場合は明度となり、現像剤の色がカラーの場合は彩度となる。
【0006】
一方、現像剤は、画像形成装置が連続して稼動された場合に、帯電量が飽和帯電量に近い状態になっている。そのため、画像形成装置は、通常印刷時に、常に、短時間で飽和帯電量まで現像剤を帯電させることができ、その結果、十分な量の現像剤で現像剤像を形成する。したがって、画像形成装置は、通常印刷時に、印刷濃度が高い(色調が濃い)現像剤像を安定して形成する。
【0007】
このように、従来の現像剤は、初期印刷時に形成される現像剤像と通常印刷時に形成される現像剤像とで、現像剤の帯電量の差によって、印刷濃度差(現像剤の色がブラックの場合は明度差、現像剤の色がカラーの場合は彩度差)が生じることがある。
【0008】
そこで、本発明は、前記した課題を解決するためになされたものであり、初期印刷時に形成される現像剤像と通常印刷時に形成される現像剤像とで、印刷濃度差を低減させる混合現像剤、並びに、この混合現像剤を用いる現像装置及び画像形成装置を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、第1発明は、混合現像剤であって、着色剤の濃度が低くて、帯電立ち上がりが遅く、かつ、飽和帯電量の絶対値が高い第1の現像剤と、前記第1の現像剤よりも、着色剤の濃度が高くて、帯電立ち上がりが速く、かつ、飽和帯電量の絶対値が低い第2の現像剤と、前記第1の現像剤と前記第2の現像剤とを付着するキャリアとが混合されている構成とする。
【0010】
この混合現像剤は、一般的に現像剤の帯電立ち上がり性が悪化する初期印刷時に、帯電立ち上がりの速い第2の現像剤が、第1の現像剤よりも優先的に使用される。第2の現像剤は、飽和帯電量の絶対値が低い第1の現像剤よりも少ないため、第1の現像剤よりも少ない量で現像剤像を形成するものの、第1の現像剤よりも着色剤の濃度が高い(色が濃い)ため、十分に印刷濃度が濃い(色調が濃い)現像剤像を形成することができる。
一方、この混合現像剤は、現像剤の帯電立ち上がり性が回復する通常印刷時に、飽和帯電量の絶対値の高い第1の現像剤が、第2の現像剤よりも優先的に使用される。第1の現像剤は、第2の現像剤よりも着色剤の濃度が低い(色が薄い)ものの、飽和帯電量の絶対値が高いため、十分な量で現像剤像を形成することができ、これにより、十分に印刷濃度が濃い(色調が濃い)現像剤像を形成することができる。
【0011】
したがって、この混合現像剤は、初期印刷時に形成される現像剤像と通常印刷時に形成される現像剤像とで、印刷濃度差(現像剤の色がブラックの場合は明度差、現像剤の色がカラーの場合は彩度差)を低減させることができる。
【0012】
また、第2発明は、現像装置であって、現像剤を収容する現像剤収容部と、表面に静電潜像が形成される像担持体と、前記現像剤収容部から前記現像剤の供給を受けて、前記像担持体の表面に形成された静電潜像に前記現像剤を付着させて現像を行う現像剤担持体とを備え、前記現像剤収容部は、前記現像剤として、着色剤の濃度が低くて、帯電立ち上がりが遅く、かつ、飽和帯電量の絶対値が高い第1の現像剤と、前記第1の現像剤よりも、着色剤の濃度が高くて、帯電立ち上がりが速く、かつ、飽和帯電量の絶対値が低い第2の現像剤と、前記第1の現像剤と前記第2の現像剤とを付着するキャリアとが混合されている混合現像剤を収容する構成とする。
【0013】
この現像装置は、第1発明に係る混合現像剤を現像剤収容部に収容しており、その混合現像剤を用いて画像を形成する。そのため、この現像装置は、第1発明と同様に、初期印刷時に形成される現像剤像と通常印刷時に形成される現像剤像とで、印刷濃度差を低減させることができる。
【0014】
また、第3発明は、画像形成装置であって、第2発明に係る現像装置と、転写部と、定着部とを有する構成とする。
【0015】
この画像形成装置は、第2発明に係る現像装置を有しており、その現像装置の現像剤収容部に収容された混合現像剤を用いて画像を形成する。そのため、この画像形成装置は、第2発明と同様に、初期印刷時に形成される現像剤像と通常印刷時に形成される現像剤像とで、印刷濃度差を低減させることができる。
【発明の効果】
【0016】
第1発明によれば、初期印刷時に形成される現像剤像と通常印刷時に形成される現像剤像とで、印刷濃度差を低減させることができる混合現像剤を提供することができる。
また、第2発明によれば、第1発明に係る混合現像剤を用いる現像装置を提供することができる。
さらに、第3発明によれば、第2発明に係る現像装置を用いる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る画像形成装置の構成を示す図である。
【図2】本発明に係る現像装置の構成を示す図である。
【図3】本発明に係る混合現像剤を構成する現像剤の特性を示すグラフ図である。
【図4】混合現像剤の撹拌に用いる振とう器の構成を示す図である。
【図5】印刷濃度の評価方法を示す説明図である。
【図6】印刷濃度の評価測定点を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と称する)につき詳細に説明する。なお、各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0019】
[実施形態1]
<画像形成装置の構成>
以下、図1を参照して、本発明に係る画像形成装置の構成につき説明する。図1は、本発明に係る画像形成装置の構成を示す図である。ここでは、本発明に係る画像形成装置100が電子写真方式のカラープリンタであるものとして説明する。また、ここでは、現像剤TNとして、ブラック(B)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、及び、シアン(C)の各色の後記する混合現像剤を用いるものとして説明する。なお、以下の説明で、各色に対応する構成要素を区別する場合に、各色を表す英文字「B」、「Y」、「M」、「C」を、各構成要素を表す符合の末尾に付加するものとする。
【0020】
図1に示すように、画像形成装置100は、給紙カセット2、排出トレイ3、給紙搬送機構4、反転ユニット8、走行ガイド9、画像形成部40、及び、定着器50を有している。
【0021】
給紙カセット2は、印刷処理に記録紙として用いられる媒体Pを収容する媒体収容部である。図1に示す例では、給紙カセット2は、反転ユニット8の下方に設けられている。
排出トレイ3は、印刷処理された媒体Pが集積される媒体集積部である。
【0022】
給紙搬送機構4は、給紙(すなわち、給紙カセット2に収容された媒体Pを画像形成装置100の内部に設けられた搬送路に繰り出す処理)を行って、媒体Pを給紙カセット2から排出トレイ3まで搬送する機構である。
給紙搬送機構4は、給紙カセット2から排出トレイ3までの搬送路上に、給紙ローラ5、搬送ローラ6、排出ローラ7、及び、転写ベルト31を備えている。
【0023】
給紙ローラ5は、給紙カセット2に収容された媒体Pを搬送路に繰り出すローラ部材である。
搬送ローラ6は、搬送路に繰り出された媒体Pを排出トレイ3に向けて搬送するローラ部材である。
排出ローラ7は、媒体Pを排出トレイ3に排出して、媒体Pを排出トレイ3上に集積させるローラ部材である。
転写ベルト31は、印刷時に、走行して、媒体Pを現像装置10の後記する感光ドラム12に接触させながら定着器50まで搬送する走行部材である。この転写ベルト31は、後記する転写ユニット30に含まれる構成要素でもある。
【0024】
反転ユニット8は、両面印刷時に、一方の面に現像剤像が転写された媒体Pを反転させて画像形成部40に誘導する機構である。媒体Pは、一方の面に対する印刷処理が行われることにより、現像剤像が一方の面に転写され、その後、反転ユニット8によって反転されて画像形成部40に誘導されて、他方の面に対する印刷処理が行われることにより、現像剤像が他方の面にも転写される。これにより、媒体Pは、現像剤像が両面に転写される。
走行ガイド9は、媒体Pの搬送をガイドする部材である。走行ガイド9は、任意の方向に回転可能な構成となっており、媒体Pの搬送方向を切り替える手段としても機能する。
【0025】
画像形成部40は、画像を形成する機構である。
画像形成部40は、現像装置10、露光ユニット20、及び、転写ユニット30を備えている。
【0026】
現像装置10は、現像剤TNを後記する感光ドラム12(図2参照)の表面に形成される静電潜像に付着させることによって、静電潜像を現像剤像として顕像化する現像部である。現像装置10は、ブラック(B)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、及び、シアン(C)の各色に応じて4つ設けられている。現像装置10の詳細については、後記する。
【0027】
露光ユニット20は、現像装置10の感光ドラム12に光を部分的に照射して、感光ドラム12の表面に静電潜像を形成する露光部である。露光ユニット20は、ブラック(B)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、及び、シアン(C)の各色に応じて4つ設けられている。
【0028】
転写ユニット30は、感光ドラム12の表面に形成された現像剤像を媒体P(又は、転写ベルト31)に転写する転写部である。
転写ユニット30は、転写ベルト31、転写ローラ32、駆動ローラ33、ベルトアイドルローラ34、クリーニングブレード35、及び、廃棄現像剤タンク36を備えている。
【0029】
転写ベルト31は、前記した通り、印刷時に、走行して、媒体Pを現像装置10の後記する感光ドラム12の表面に接触させながら定着器50まで搬送する搬送手段である。この転写ベルト31は、現像剤TNの濃度検出時に、媒体Pを未搬送な状態で走行することにより、現像剤TNが表面に転写される。転写ベルト31の表面に転写された現像剤TNは、図示せぬ濃度検出センサによって濃度が測定された後、クリーニングブレード35によって転写ベルト31から掻き落とされて、廃棄現像剤タンク36に収容される。
【0030】
転写ローラ32は、感光ドラム12の表面に形成された現像剤像を媒体P(又は、転写ベルト31)に転写させるローラ部材である。転写ローラ32は、転写ベルト31の内部に、ブラック(B)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、及び、シアン(C)の各色に応じて4つ設けられている。各転写ローラ32B,32Y,32M,32Cは、それぞれ、各現像装置10B,10Y,10M,10Cの後記する各感光ドラム12B,12Y,12M,12Cと対向している。各転写ローラ32B,32Y,32M,32Cは、各感光ドラム12B,12Y,12M,12Cの表面に形成された各色の現像剤像の極性と逆極性の電圧が印加される。これにより、各転写ローラ32B,32Y,32M,32Cは、各感光ドラム12B,12Y,12M,12Cの表面から各色の現像剤像を引き寄せて媒体P(又は、転写ベルト31)に転写させる。このとき、各感光ドラム12B,12Y,12M,12Cの表面に各色の現像剤像が形成されていれば、各色の現像剤像が重ねて転写される。これにより、カラーの現像剤像が、媒体P上に形成される。
【0031】
駆動ローラ33及びベルトアイドルローラ34は、転写ベルト32を張架するローラ部材である。駆動ローラ33は、ベルト搬送用の駆動部としての図示せぬベルトモータからの回転駆動を受けて転写ベルト32を走行させる。一方、ベルトアイドルローラ34は、転写ベルト31が弛まないように張力を与える。
【0032】
クリーニングブレード35は、転写ベルト32の表面をクリーニングする部材である。クリーニングブレード35は、転写ベルト32と接触して、転写ベルト32の表面に付着している現像剤TNを転写ベルト32から掻き落とす。クリーニングブレード35は、例えば、ウレタンゴム等によって構成されている。
廃棄現像剤タンク36は、クリーニングブレード35によって転写ベルト32から掻き落とされた現像剤TNを収容する収容部である。
【0033】
定着器50は、現像剤像が転写された媒体Pを加熱及び加圧して、現像剤像を溶融させることにより、現像剤像を媒体Pに定着させる定着部である。
【0034】
<現像装置の構成>
以下、図2を参照して、本発明に係る現像装置10の構成につき説明する。図2は、本発明に係る現像装置の構成を示す図である。
【0035】
ブラック(B)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、及び、シアン(C)の各色に対応する現像装置10B,10Y,10M,10Cは、それぞれ、収容している現像剤TNの色が異なる以外は、同じ構造となっている。
【0036】
その現像装置10は、現像剤収容器11、感光ドラム12、帯電ローラ13、現像ローラ14、供給ローラ15、現像ブレード16、クリーニングブレード17、及び、シール部材18を備えている。
【0037】
現像剤収容器11は、内部に現像剤TNを収容する容器である。現像剤収容器11は、供給ローラ15の上方に着脱自在に装着される。現像剤収容器11は、供給口を有しており、この供給口を介して現像剤TNを供給ローラ15に供給する。なお、ここでは、現像剤TNは、負極性に帯電する非磁性1成分の粉砕現像剤であるものとして説明する。
【0038】
感光ドラム12は、図2に示す矢印方向に、所定の速度で回転する感光体である。感光ドラム12は、表面に静電潜像及び現像剤像が形成される像担持体として機能する。
【0039】
帯電ローラ13は、感光ドラム12の表面を均一に帯電させるローラ部材である。帯電ローラ13は、感光ドラム12の周面に接するように設けられている。なお、帯電ローラ13と現像ローラ14との間には、露光ユニット20(図1参照)が設けられている。露光ユニット20は、帯電ローラ13によって帯電された感光ドラム12の表面に光を照射して、静電潜像を感光ドラム12の表面に形成する。帯電ローラ13は、金属シャフトと、その金属シャフトの周囲を覆う半導電性エピクロロヒドリンゴムによって形成された弾性層とを有する構成となっている。
【0040】
現像ローラ14は、所定電圧が印加可能なローラ部材である。現像ローラ14は、感光ドラム12と連れ回りで回転し、その際に、現像剤TNを感光ドラム12の表面に形成された静電潜像に付着させる。これによって、現像ローラ14は、静電潜像を現像剤像として顕像化(現像)する現像剤担持体として機能する。現像ローラ14は、例えば、表面にニッケルめっきを施した鋼を芯金とし、その芯金と、芯金の周囲を覆うウレタンゴムによって形成された弾性層と、弾性層の表面を覆うイソシアネートによって形成された表面層とを有する構成となっている。
【0041】
供給ローラ15は、現像剤収容器11から供給された現像剤TNを、現像ローラ14に供給するローラ部材である。供給ローラ15は、現像ローラ14の周面に接するように設けられており、図2に示す矢印のように、現像ローラ14と逆方向に回転する。その際に、供給ローラ15は、供給ローラ15の周囲の現像剤TNを現像ローラ14の表面に付着させる。供給ローラ15は、例えば、表面にニッケルめっきを施した鋼を芯金とし、その芯金と、芯金の周囲を覆うシリコーン発泡ゴムによって形成された弾性層とを有する構成となっている。なお、供給ローラ15のシリコーン発泡ゴムは、例えば、セル目の径を300〜500μmとする連続気泡を有している。そのため、供給ローラ15は、スポンジローラとして構成されている。
【0042】
現像ブレード16は、現像ローラ14の表面に付着した現像剤TNの層厚を規制する規制部材である。現像ブレード16は、現像ローラ14に圧接して、現像剤TNの層厚を規制するとともに、現像剤TNを所定極性に帯電させる。現像ブレード16は、例えば、厚さ0.08mmのステンレス(SUS304B−TA)材の板を、曲げR0.275mmで短辺と長辺とに分かれるように折り曲げることによって構成されている。現像ブレード16は、現像ローラ14の回転方向から見て、短辺が上流側に、長辺が下流側になるように配置され、かつ、同じ線圧(40〜70gf/cm程度)で撓むように、現像ローラ14に圧接される。
【0043】
クリーニングブレード17は、感光ドラム12の表面をクリーニングする部材である。クリーニングブレード17は、感光ドラム12と接触して、転写処理後の感光ドラム12の表面に残っている現像剤TNを感光ドラム12から掻き落とす。クリーニングブレード17は、例えば、ウレタンゴム等によって構成されている。
【0044】
シール部材18は、現像剤TNが現像装置10の外部に漏れるのを防止する封止部材である。シール部材18は、感光ドラム12の周面に接するように設けられている。
【0045】
<画像形成装置の動作>
以下、画像形成装置100の動作につき説明する。
画像形成装置100(図1参照)は、図示せぬインターフェースを介して上位装置から印刷データを受信すると、定着器50が、図示せぬヒータの加熱を開始して、図示せぬ加熱部材及びこれに連れ回る加圧部材の回転を開始する。画像形成装置100は、加熱部材の表面温度が設定温度に達すると、媒体Pの給紙搬送を開始する。
【0046】
現像装置10では、媒体Pの給紙搬送が開始すると、感光ドラム12、現像ローラ14、及び、供給ローラ15が、それぞれ、図2に示す矢印の方向に回転する。このとき、帯電ローラ13が、感光ドラム12の表面を帯電し、その後に、露光ユニット20が、感光ドラム12の表面に光を部分的に照射して、感光ドラム12の表面に静電潜像を形成する。また、このとき、供給ローラ15が、現像剤TNを現像ローラ14に供給する。現像剤TNは、現像ローラ14の表面で、現像ブレード16との相互作用により層厚を規制されながら、負極に摩擦帯電させられる。これにより、現像剤TNの層が、現像ローラ14の表面に形成される。この層を構成する現像剤TNは、現像ローラ14と感光ドラム12との間に設定された電位差によって、現像ローラ14の表面から感光ドラム12の表面に形成された静電潜像の上に付着する。その結果、感光ドラム12の表面には、現像剤像が形成される。この現像剤像は、転写ユニット30によって媒体Pに転写される。
【0047】
現像剤像が転写された媒体Pは、図1に示す矢印hの方向に搬送されて、定着器50の図示せぬ加熱部材と加圧部材との間を進む。このとき、定着器50は、加熱部材の熱が媒体Pの表面の現像剤像を溶融し、さらに、加熱部材と加圧部材との間の圧力が現像剤TN及び媒体Pに加わることにより、現像剤像を媒体Pに定着させる。
画像形成装置100は、現像剤像が定着された媒体Pを排出トレイ3まで搬送して、排出トレイ3に集積する。
【0048】
<混合現像剤の詳細>
(混合現像剤の概要)
現像剤TNは、着色剤の濃度が低い(すなわち、色が薄い)、通常印刷時に優先的に使用される通常印刷用の第1の現像剤と、着色剤の濃度が高い(すなわち、色が濃い)、初期印刷時に優先的に使用される初期印刷用の第2の現像剤と、第1の現像剤と第2の現像剤とを付着するキャリアとが混合された混合現像剤として構成されている。
【0049】
(混合現像剤を構成する現像剤の特性)
第1の現像剤(以下、「現像剤A」と称する)及び第2の現像剤(以下、「現像剤B」と称する)は、図3に示す特性を有する。なお、図3は、本発明に係る混合現像剤を構成する現像剤の特性を示すグラフ図である。
図3に示すように、現像剤Aは、帯電立ち上がりが遅く、かつ、飽和帯電量Ts1の絶対値が高いという特性を有している。
一方、現像剤Bは、帯電立ち上がりが速く、かつ、飽和帯電量Ts2の絶対値が低いという特性を有している。
【0050】
(混合現像剤の製法)
以下に、本実施形態1で用いられる混合現像剤TNの製法につき説明する。ここでは、一例として、ブラックの混合現像剤TNの製法について説明する。また、ここでは、混合現像剤TNとして最も好ましい構成のものを説明するために、表1に示すように、第1の現像剤として1種類の現像剤Aを用い、また、第2の現像剤として6種類の現像剤B1〜B6を用いて、複数の混合現像剤を精製し、各混合現像剤を比較評価するものとする。
【表1】

【0051】
混合現像剤TNの製法は、以下の通りである。
まず、以下の(1)〜(4)の処理によって、混合現像剤TNを構成する現像剤Aを精製する。
(1)表1に示すように、100重量部の結着樹脂(非晶質ポリエステル樹脂、数平均分子量Mn=3700、ガラス転移温度Tg=62℃)に、着色剤としての4.0重量部のカーボンブラック(MOGUL−L、Cabot社製)と、帯電制御剤としての1.5重量部のサリチル酸錯体(オリエント化学工業社製、ボントロンE−84)と、4級アンモニア塩を有する荷電制御樹脂としての3.5重量部のポリエステル樹脂と、離型剤としての3.0重量部のカルナウバワックス(加藤洋行社製、カルナウバワックス1号粉末)とを加える。
【0052】
(2)これらを、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製、FM500E)を使用して混合した後、二軸押出機を使用して100℃の温度環境下で熱しながら溶融混練し、冷却後、直径2mmのスクリーンを有するカッターミルで粗砕化する。
【0053】
(3)その後、これらを、衝突版式粉砕機「ディスパージョンセパレーター」(日本ニューマチック工業社製、DSX型)を用いて粉砕し、さらに風力分級機を使用して分級を行い、得られた粉体を現像剤母体aとする。
【0054】
(4)そして、外添工程として、得られた粉体(現像剤母体a)から100重量部を取り出し、解砕された(具体的には、ヘンシェルミキサー等の高速撹拌機により凝集された無機微粒子を分離された)2.5重量部の疎水性シリカR972(日本アエロジル社製、平均一次粒径16nm)と、同様に解砕された2.0重量部の疎水性シリカRY−50(日本アエロジル社製、平均一次粒径40nm)とを添加し、10リットル容量のヘンシェルミキサーを使用して3200回転/分の回転速度で2分間攪拌する。これにより、現像剤Aを得ることができる。
【0055】
他の現像剤B1〜B6についても、同じ材料を用いて、着色剤、帯電制御剤、及び、荷電制御樹脂の添加量を表1のように変えながら、前記(1)〜(3)と同じ処理を実行することによって得られる粉体を、それぞれ、現像剤母体b1〜b6とし、これら現像剤母体b1〜b6を用いて、前記(4)と同じ処理を実行することによって、得られる。
【0056】
このようにして得られた現像剤A及び現像剤B1〜B6の平均粒径は、すべて5.5μmであった。なお、平均粒径は、電解液としてISOTON II(BECKMAN COULTER社製)を用い、アパチャー径100μm、アパチャーカレント1600μA、測定レンジ2〜60μm、総カウント数30000を測定条件とし、コールターカウンター装置(精密粒度分布測定装置)としてMultisizer3(BECKMAN COULTER社製)を用いて、コールター原理法(細孔電気抵抗法)によって、測定した。
【0057】
なお、イエロー、マゼンタ又はシアンの混合現像剤を製造する場合には、ブラックの着色剤であるカーボンブラックに代えて、それぞれ、例えば、カーボンブラックと同じ重量部のピグメント・イエロー(大日精化工業社製、ECY−215)又は同じ重量部のピグメント・レッド(大日精化工業社製、ECR−101)又は同じ重量部のピグメント・ブルー(大日精化工業社製、ECB−301)を用いるとよい。
【0058】
混合現像剤TNは、現像剤Aと、現像剤B1〜B6の中の最適な1種類の現像剤Bと、キャリアとで、混合することによって精製される。現像剤A及び現像剤Bは、キャリアの表面と接触・摩擦が行われることにより電荷交換を行い、負の電荷をもつ。一方、キャリアは、それに見合う正の電荷をもつ。これにより、現像剤A及び現像剤Bは、クーロン力と短距離ファンデルワールス力とからなる付着力が発生して、キャリアに付着する。
【0059】
キャリアとしては、鉄粉、ガラスビーズ、フェライト粉、ニッケル粉、又は、それ等の表面に樹脂を被覆したものが使用される。なお、キャリアとの混合割合は、適宜設定される。本実施形態1では、キャリアとしてフェライト粉(パウダーテック社製、F−60、平均一次粒径50μm)を用い、キャリアとの混合割合を混合重量比5%とした。
【0060】
本実施形態1では、混合現像剤TNとして最も好ましい構成のものを特定するために、以下に説明する印刷濃度(色調)の評価と各現像剤の帯電特性の評価とを行った。
【0061】
(印刷濃度の評価の概要)
本実施形態1では、各現像剤A及び現像剤B1〜B6について、各現像剤A及び現像剤B1〜B6のそれぞれを単独でキャリアに混合した場合と現像剤Aと現像剤B1〜B6の中の任意の1種類の現像剤Bとをキャリアに混合した場合とでそれぞれをサンプルとし、各サンプルの印刷濃度を評価した。
【0062】
各サンプルの印刷濃度の評価は、サンプルが内部に収容された画像形成装置100に、ベタ印刷を行わせ、そのベタ印刷の濃度(以下、「ベタ濃度」と称する)の値(Optical Dencity値;OD値)を測定することによって、行った。
【0063】
(帯電特性の評価の概要)
また、本実施形態1では、各現像剤A及び現像剤B1〜B6について、同様に、各現像剤A及び現像剤B1〜B6のそれぞれを単独でキャリアに混合した場合と現像剤Aと現像剤B1〜B6の中の任意の1種類の現像剤Bとをキャリアに混合した場合とでそれぞれをサンプルとし、各サンプルの帯電特性を評価した。
【0064】
各サンプルの帯電特性の評価は、各サンプルを撹拌して帯電させ、その帯電量を測定することによって、行った。なお、各サンプルの撹拌では、撹拌機として振とう器Model−YS−LD(ヤヨイ社製)を用いた。この振とう器は、例えば、図4に示す構成となっている。図4は、混合現像剤の撹拌に用いる振とう器の構成を示す図である。図4に示すように、振とう器60は、土台となる支持部61と、各サンプルを振とうする(振る)振とう部62とを備えている。振とう部62は、振とう幅が80mm、振とう角が0°〜45°、振とう回数が200回/分となっている。振とう器60は、振とう部62の中にサンプルを収容した状態で、振とう部62を振とうする(振る)ことによって、サンプルを撹拌して帯電させる。
【0065】
各サンプルの帯電特性の評価では、帯電量測定装置として吸引ブロー式帯電量測定器TB203(京セラケミカル社製)を用いた。また、評価条件として、キャリアはF−60(パウダーテック社製、平均一次粒径50μm)を用い、キャリアとの混合割合は混合重量比5%、測定環境の温度と湿度は25℃と40%(以下、「25℃/40%」と表記する)、吸引圧力は−40kPa、ブロー圧力は7.0kPa、測定時間は10秒とした。各サンプルの帯電特性の評価は、各サンプルの撹拌時間を60秒及び600秒とし、そのときの帯電量Q60及びQ600を測定することによって、行った。その評価結果は、前記の表1に示す通りになった。なお、表1中のQ60/Q600は、帯電立ち上がり性を表している。Q60/Q600は、数値が大きいほど、帯電立ち上がり性が良好であることを示している。
【0066】
(具体的な各サンプルの評価)
以下に、具体的な各サンプルの評価について説明する。ここで、帯電量測定(キャリアとの撹拌)前の現像剤の放置環境(温度・湿度)及び放置時間は、25℃/40%に12時間以上とした。また、キャリアとの撹拌(振とう)動作を行う環境(温度・湿度)及び吸引ブロー式帯電量測定器で帯電量測定を行う環境(温度・湿度)も、それぞれ、25℃/40%とした。
【0067】
各サンプルの印刷濃度(色調)の評価では、画像形成装置100に、媒体Pを図5に示す矢印方向に搬送させながら、媒体Pの印刷可能範囲71内に、100%のdutyパターン72を印刷させる。そのdutyパターン72の濃度を測定することによって、各サンプルの印刷濃度の評価を行った。なお、図5は、印刷濃度の評価方法を示す説明図である。
【0068】
具体的には、サンプルが内部に収容された画像形成装置100を12時間放置した後に、感光ドラム12の表面での各サンプルの付着量を0.50mg/cmとし、画像形成装置100に、「放置後の評価用媒体」として、1枚の媒体Pに100%のdutyパターン72の印刷を行わせ、さらに、5000枚の媒体Pに1%のdutyパターン72の連続印刷を行わせた後に、「連続印刷後の評価用媒体」として、1枚の媒体Pに100%のdutyパターン72の印刷を行わせた。なお、dutyパターン72のdutyは、面積率100%でベタ印刷される場合(すなわち、1枚の媒体Pの印刷可能範囲71の全面にベタ印刷される場合)に、100%となる。
【0069】
各サンプルの印刷濃度の評価は、「放置後の評価用媒体」及び「連続印刷後の評価用媒体」に対して、図6に示す9点の測定点73で、印刷濃度としてベタ濃度の値(OD値)を測定して、その平均を算出することによって、行った。なお、図6は、印刷濃度の評価測定点を示す図である。
【0070】
各サンプルの印刷濃度の評価では、濃度測定装置としてX−Rite528(エックスライト社製)を用いた。また、評価条件として、キャリアはF−60(パウダーテック社製、平均一次粒径50μm)を用い、キャリアとの混合割合は混合重量比5%、画像形成装置100の印刷速度は170(mm/sec)、印刷環境(以下、「RT環境」と称する)の温度と湿度は25℃/40%、媒体PはA4サイズのエクセレントホワイト(沖データ社製)とした。なお、画像形成装置100の印刷速度は、感光ドラム12の周面の速度であり、また、媒体Pの搬送速度でもある。また、画像形成装置100及びサンプルは、環境に馴染ませるためにRT環境にて12時間放置した。なお、特記しない限り、サンプル以外の評価条件は、同じである。
【0071】
各サンプルの印刷濃度としてのベタ濃度の値(OD値)は、前記の表1に示す通りになった。ここでは、「印刷濃度」は、入射光の透過率の逆数の常用対数値(単位なし)によって表すものとする。また、ここでは、平均の印刷濃度が1.35以上でかつ1.65以下の場合は、印刷濃度が良好であるため、「合格(以下、「○」と表記する)」とする。一方、平均の印刷濃度が1.35未満若しくは1.65よりも高い場合は、印刷濃度が低すぎる若しくは高すぎるため、「不合格(以下、「×」と表記する)」とする。その評価結果を、表2に示す。
【表2】

【0072】
表2は、混合重量比5%で各現像剤A及び現像剤B1〜B6のそれぞれを単独でキャリアに混合した場合と、混合重量比5%で50重量部の現像剤Aと50重量部の現像剤B1〜B6の中の任意の1種類の現像剤Bとをキャリアに混合した場合との、それぞれを、サンプルとしている。なお、表2は、現像剤B1〜B6のそれぞれを単独でキャリアに混合した場合の評価結果がすべて同じになったため、まとめて表している。
【0073】
(1)表2は、放置後の評価用媒体の平均の印刷濃度を「放置後濃度」とし、連続印刷後の評価用媒体の平均の印刷濃度を「連続印刷後濃度」とし、サンプル毎に、「放置後濃度」及び「連続印刷後濃度」の評価結果を示している。なお、表2は、印刷濃度が1.35未満の場合を「×(低)」とし、印刷濃度が1.65よりも高い場合を「×(高)」として、表記している。
【0074】
(2)表2は、サンプル毎に、放置後の評価用媒体の平均の印刷濃度と連続印刷後の評価用媒体の平均の印刷濃度との差を「印刷濃度差」とし、「印刷濃度差」の評価結果を示している。なお、表2は、印刷濃度差が0.3未満の場合に、経時による印刷濃度差が小さく良好であるため、「○」とし、印刷濃度差が1.65よりも高い場合に、経時による印刷濃度差が大きく良好でないため、「×」として、表記している。
【0075】
(3)表2は、サンプル毎に、「総合評価」を示している。なお、表2は、サンプルが、「放置後濃度」、「連続印刷後濃度」、及び、「印刷濃度差」のすべての項目で「○」である場合に、経時においても良好な印刷濃度で安定して発色することができるため、総合評価を「○」とし、サンプルがいずれかの1つの項目で「×」である場合に、経時においても良好な印刷濃度で安定して発色することができないため、総合評価を「×」として、表記している。
【0076】
表2に示すように、現像剤Aを単独でキャリアに混合した場合のサンプル(以下、「現像剤A単独サンプル」と称する)は、放置後濃度が、低すぎるため、「×(低)」となった。
【0077】
また、現像剤B1〜B6のそれぞれを単独でキャリアに混合した場合のサンプル(以下、「現像剤Bn単独サンプル(ただし、n=1,2,…,6)」と称する)は、現像剤Bの着色剤の濃度が高い(色が濃い)ため、放置後濃度が「○」となったが、連続印刷後濃度が高すぎるため「×(高)」となった。
【0078】
また、現像剤Aと現像剤B1〜B6の中の任意の1種類の現像剤Bとをキャリアに混合した場合のサンプル(以下、「現像剤A+Bnサンプル(ただし、n=1,2,…,6)」と称する)では、現像剤A+B3サンプルが、すべての項目で「○(良好)」となった。これは、図3に示すように、一般的に現像剤の帯電立ち上がり性が悪化する初期印刷時(すなわち、画像形成装置100がしばらく放置された後の起動直後に行われる印刷処理時)に、帯電立ち上がり性が良好な初期印刷用の現像剤Bが優先的に使用され、現像剤の帯電立ち上がり性が回復する通常印刷時(すなわち、画像形成装置100が連続して稼動した後に行われる印刷処理時)に、飽和帯電量Ts1が初期印刷用の現像剤Bの飽和帯電量Ts2よりも大きな通常印刷用の現像剤Aが優先的に使用されるためである。
【0079】
また、現像剤A+Bnサンプル(ただし、n=1,2,…,6)では、現像剤Aと、帯電立ち上がり性が現像剤Aよりも悪い若しくは同等の現像剤B(具体的には、現像剤B1、B2、B4、B5、B6のいずれか1つ)とをキャリアに混合したサンプル(すなわち、現像剤A+B1サンプル、現像剤A+B2サンプル、現像剤A+B4サンプル、現像剤A+B5サンプル、現像剤A+B6サンプル)が、初期印刷時(すなわち、画像形成装置100がしばらく放置された後の起動直後に行われる印刷処理時)に、着色剤の濃度が低い現像剤Aが優先的に使用されるか、若しくは、現像剤A及び現像剤Bがほぼ同程度の割合で使用されるかするため、印刷濃度が低くなった。すなわち、現像剤A+B1サンプル、現像剤A+B2サンプル、現像剤A+B4サンプル、現像剤A+B5サンプル、及び、現像剤A+B6サンプルは、放置後濃度が「×(低)」となった。
【0080】
さらに、現像剤A+Bnサンプル(ただし、n=1,2,…,6)では、現像剤Aと、飽和帯電量が現像剤Aよりも大きい若しくは同等の現像剤B(具体的には、現像剤B4、B5、B6のいずれか1つ)とをキャリアに混合したサンプル(すなわち、現像剤A+B4サンプル、現像剤A+B5サンプル、現像剤A+B6サンプル)が、通常印刷時(すなわち、画像形成装置100が連続印刷を行った後に行われる印刷処理時)に、着色剤の濃度が高い現像剤B4、B5、B6が優先的に使用されるか、若しくは、現像剤A及び現像剤Bがほぼ同程度の割合で使用されるかするため、印刷濃度が高くなった。すなわち、現像剤A+B4サンプル、現像剤A+B5サンプル、及び、現像剤A+B6サンプルは、連続印刷後濃度が「×(高)」となった。
【0081】
なお、本評価は、ブラックの現像剤A及びBを用いて、前記したRT環境下で行ったが、他のカラーの現像剤を用いて、別の条件のRT環境下で行っても、同様の結果が得られた。
【0082】
ただし、帯電立ち上がり性及び飽和帯電量は、互いに密接に関わっている。そのため、帯電立ち上がり性及び飽和帯電量の一方を保持したまま他方を良化させる現像剤若しくは帯電立ち上がり性及び飽和帯電量の双方を良化させる現像剤は、製造することができなかった。
【0083】
このように、混合現像剤TNとして最も好適なサンプルは、現像剤A+B3サンプルである。この現像剤A+B3サンプルを定義すると、以下のようになる。
すなわち、混合現像剤TNとして最も好適なサンプルは、第1の現像剤である現像剤A及び第2の現像剤である現像剤Bの帯電特性が、それぞれ、図3に示すように、同じ材質のキャリアCRに対して現像剤Aと現像剤Bとで同じ混合重量比で単独に混合される場合で、かつ、現像剤Bが飽和帯電量に到達する飽和帯電時間Ts2よりも短い時間t撹拌した場合の現像剤Aの帯電量をqtとするとともに、現像剤Bの帯電量をQtとし、現像剤Bの飽和帯電時間Ts2以上の時間T撹拌した場合の現像剤Aの帯電量をqTとするとともに、現像剤Bの帯電量をQTとしたときに、|qT|>|QT|で、かつ、qt/qT<Qt/QTの関係を満たす組み合わせのものである。
【0084】
具体的には、現像剤A及び現像剤Bの帯電特性が、それぞれ、混合重量比を5%とする場合で、かつ、時間tを60秒とし、時間Tを600秒とする場合に、|q600|>|Q600|で、かつ、q60/q600<Q60/Q600の関係を満たす組み合わせのものである。
この関係を満たす組み合わせの混合現像剤TNは、経時においても安定して良好な印刷濃度の印刷品位を得ることができる。
【0085】
以上の通り、本実施形態1に係る混合現像剤TNによれば、一般的に現像剤の帯電立ち上がり性が悪化する初期印刷時に、帯電立ち上がりの速い第2の現像剤(現像剤B)が、第1の現像剤(現像剤A)よりも優先的に使用される。第2の現像剤は、飽和帯電量の絶対値が低い第1の現像剤よりも少ないため、第1の現像剤よりも少ない量で現像剤像を形成するものの、第1の現像剤よりも着色剤の濃度が高い(すなわち、色が濃い)ため、十分に印刷濃度が濃い(色調が濃い)現像剤像を形成することができる。
【0086】
また、この混合現像剤TNによれば、現像剤の帯電立ち上がり性が回復する通常印刷時に、飽和帯電量の絶対値の高い第1の現像剤が、第2の現像剤よりも優先的に使用される。第1の現像剤は、第2の現像剤よりも着色剤の濃度が低い(すなわち、色が薄い)ものの、飽和帯電量の絶対値が高いため、十分な量で現像剤像を形成することができ、これにより、十分に印刷濃度が濃い(色調が濃い)現像剤像を形成することができる。
【0087】
したがって、この混合現像剤TNによれば、初期印刷時に形成される現像剤像と通常印刷時に形成される現像剤像とで、印刷濃度差(現像剤の色がブラックの場合は明度差、現像剤の色がカラーの場合は彩度差)を低減させることができ、経時においても安定して良好な印刷濃度の印刷品位を得ることができる。
【0088】
また、この混合現像剤TNを現像剤収容器11に収容する現像装置10によれば、初期印刷時に形成される現像剤像と通常印刷時に形成される現像剤像とで、印刷濃度差を低減させることができる。
同様に、この現像装置10を用いる画像形成装置100によれば、初期印刷時に形成される現像剤像と通常印刷時に形成される現像剤像とで、印刷濃度差を低減させることができる。
【0089】
[実施形態2]
実施形態1は、2種類の現像剤Aと現像剤Bとを同量ずつ混合した。これに対して、本実施形態2は、目標値からずれた物性値(例えば、飽和帯電量)を持つ現像剤A(本実施形態2では、後記する現像剤A2〜A5のいずれか1種類の現像剤)に対し、現像剤B(本実施形態2では、後記する現像剤C又はD)の混合割合を変更することにより、混合現像剤TNとしての全体の物性値を調整する。
【0090】
本実施形態2は、実施形態1と同じ条件及び同じ製法にて、サンプルとして現像剤Aを5セット精製し、それらを現像剤A1〜A5とした。そして、本実施形態2は、各サンプル(現像剤A1〜A5)の飽和帯電量として600秒撹拌した場合の各サンプルの帯電量Q600を、実施形態1と同じ評価方法にて評価した。また、本実施形態2は、各サンプルを現像装置10(図2参照)に収容させて、各サンプルが飽和帯電量に達するまで、実施形態1と同じ条件のRT環境下で十分に現像装置10を稼動(空回し)させた後に、さらに、1枚の媒体Pに100%のdutyパターン72を印刷させ、実施形態1と同じ方法にて、そのdutyパターン72の9点の測定点73(図6参照)の印刷濃度を測定して平均の印刷濃度を算出することによって、各サンプルの印刷濃度(色調)を評価した。その評価結果を、表3に示す。
【表3】

【0091】
表3は、各サンプル(現像剤A1〜A5)の飽和帯電量(帯電量Q600)及びベタ濃度の値(OD値)を示している。
表3に示すように、各サンプル(現像剤A1〜A5)は、実施形態1と同じ条件及び同じ製法にて精製されているにも関わらず、帯電特性のばらつきがある。そのため、各サンプルは、ベタ濃度の値(OD値)に差が生じてしまっている。なお、各サンプル(現像剤A1〜A5)は、Q600=−30μC/g、ベタ濃度の値(OD値)1.40という物性値を目標に精製されている。
【0092】
また、本実施形態2は、帯電制御剤であるサリチル酸錯体の添加量を変更して、実施形態1と同じ製法にて、サンプルとして現像剤Bを2セット精製し、それらを現像剤C及びDとした。これらの現像剤C及びDは、帯電制御剤であるサリチル酸錯体の添加量が異なる以外は現像剤Bと同じ条件及び同じ製法で精製されている。現像剤Cは、100重量部の結着樹脂に対して、0.6重量部のサリチル酸錯体が添加され、現像剤Dは、100重量部の結着樹脂に対して、2.4重量部のサリチル酸錯体が添加されている。そして、本実施形態2は、目標値からずれた物性値を持つ現像剤A2〜A5に対し、現像剤C又はDを任意の割合で混合させて、これによって得られた各サンプルについて、現像剤A1〜A5と同様の評価方法にて、それぞれの帯電量Q600と印刷濃度とを評価した。その評価結果を、表4に示す。表4に示す例では、各サンプルは、現像剤A2と現像剤D、現像剤A3と現像剤C、現像剤A4と現像剤D、及び、現像剤A5と現像剤Cのそれぞれの組み合わせで混合された構成となっている。
【表4】

【0093】
表4は、各サンプル(現像剤A2+現像剤D、現像剤A3+現像剤C、現像剤A4+現像剤D、及び、現像剤A5+現像剤C)の飽和帯電量(帯電量Q600)及びベタ濃度の値(OD値)を示している。なお、表4は、現像剤A1〜A5単独、現像剤C単独、及び、現像剤D単独の場合の評価結果も併せて示している。表4に示す例では、現像剤Cの飽和帯電量(帯電量Q600)が−15μC/g、現像剤Dの飽和帯電量(帯電量Q600)が−45μC/gとなっている。
【0094】
表4に示すように、目標値からずれた物性値を持つ各現像剤A2〜A5は、現像剤Bとしての現像剤C又はDが任意の割合で混合されることにより、混合現像剤TNとしての全体の飽和帯電量(帯電量Q600)が一定の値(表4に示す例では、−30μC/g)に調整される。
【0095】
このように、本実施形態2は、第1の現像剤(現像剤A)が目標値からずれた物性値を持つ現像剤(ここでは、現像剤A2〜A5のいずれか1種類の現像剤)であっても、第1の現像剤に対して、飽和帯電量の異なる第2の現像剤(ここでは、現像剤C又はD)を任意の割合で混合することにより、混合現像剤TNとしての全体の飽和帯電量を第1の現像剤の飽和帯電量から第1の現像剤と第2の現像剤との混合割合に応じた帯電量に調整することができる。
【0096】
したがって、本実施形態2は、第1の現像剤(現像剤A)が目標値からずれた物性値を持つ現像剤であっても、第2の現像剤(現像剤C又はD)の混合割合を変更することにより、実施形態1と同様の特性を有する混合現像剤TNを得ることができる。これにより、本実施形態2は、実施形態1と同様に、初期印刷時に形成される現像剤像と通常印刷時に形成される現像剤像とで、印刷濃度差(現像剤の色がブラックの場合は明度差、現像剤の色がカラーの場合は彩度差)を低減させることができ、経時においても安定して良好な印刷濃度の印刷品位を得ることができる。
【0097】
なお、本評価は、ブラックの現像剤A及びBを用いて、前記したRT環境下で行ったが、他のカラーの現像剤を用いて、別の条件のRT環境下で行っても、同様の結果が得られた。
【0098】
以上の通り、実施形態2によれば、第1の現像剤が目標値からずれた物性値を持つ現像剤であっても、第2の現像剤の混合割合を変更することにより、混合現像剤TNとしての全体の特性を調整することができ、その結果、印刷濃度の調整が可能となる。
【0099】
本発明は、前記した実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更や変形を行うことができる。
例えば、本発明は、プリンタに限らず、複写機、FAX、MFP等の画像形成装置に用いることができる。なお、「MFP」とは、Multi Function Peripheral(又はProduct)の略称で、プリンタにファクシミリ機能やスキャナ機能、コピー機能等を付加した装置である。
現像装置10に収容される現像剤の色の並びは、図1に示す順番とは異なる順番にすることも可能である。
また、現像装置10に収容される現像剤の色は、ブラック(B)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、及び、シアン(C)以外の色にすることも可能である。
【符号の説明】
【0100】
2 給紙カセット(媒体収容部)
3 排出トレイ
4 給紙搬送機構
5 給紙ローラ
6 搬送ローラ
7 排出搬送ローラ
8 反転ユニット
9 走行ガイド
10(10B,Y,M,C) 現像装置
11 現像剤収容器(現像剤収容部)
12 感光ドラム(像担持体)
13 帯電ローラ(帯電部)
14 現像ローラ(現像剤担持体)
15 供給ローラ
16 現像ブレード
17 クリーニングブレード
18 シール材
20 露光ユニット(露光部)
30 転写ユニット(転写部)
31 転写ベルト(第1転写部材)
32 転写ローラ(第2転写部材)
33 駆動ローラ
34 ベルトアイドルローラ
35 転写ベルトクリーニングブレード
36 廃棄現像剤タンク
40 画像形成部
50 定着器(定着部)
51 加熱ローラ
52 加圧ローラ
60 振とう器(撹拌機)
61 支持部
62 振とう部
71 印刷可能範囲
72 dutyパターン
73 測定点
100 画像形成装置(プリンタ)
P 媒体(記録紙)
TN 現像剤(トナー)
qt、Qt,Qt,QT 帯電量
Qs1,Qs2 飽和帯電量
t,T 撹拌時間
Ts1,Ts2 飽和帯電時間


【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色剤の濃度が低くて、帯電立ち上がりが遅く、かつ、飽和帯電量の絶対値が高い第1の現像剤と、
前記第1の現像剤よりも、着色剤の濃度が高くて、帯電立ち上がりが速く、かつ、飽和帯電量の絶対値が低い第2の現像剤と、
前記第1の現像剤と前記第2の現像剤とを付着するキャリアとが混合されている
ことを特徴とする混合現像剤。
【請求項2】
請求項1に記載の混合現像剤において、
前記着色剤の色がカラーである場合に、前記第2の現像剤の彩度が前記第1の現像剤の彩度よりも濃い
ことを特徴とする混合現像剤。
【請求項3】
請求項1に記載の混合現像剤において、
前記着色剤の色が黒である場合に、前記第2の現像剤の明度が前記第1の現像剤の明度よりも高い
ことを特徴とする混合現像剤。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の混合現像剤において、
前記第1の現像剤及び前記第2の現像剤の帯電特性が、それぞれ、
同じ材質の前記キャリアに対して前記第1の現像剤と前記第2の現像剤とで同じ混合重量比で単独に混合される場合で、かつ、前記第2の現像剤が飽和帯電量に到達する前記第2の現像剤の飽和帯電時間よりも短い時間t撹拌した場合の前記第1の現像剤の帯電量をqtとするとともに、前記第2の現像剤の帯電量をQtとし、前記第2の現像剤の飽和帯電時間以上の時間T撹拌した場合の前記第1の現像剤の帯電量をqTとするとともに、前記第2の現像剤の帯電量をQTとしたときに、
|qT|>|QT|で、かつ、qt/qT<Qt/QTの関係を満たす
ことを特徴とする混合現像剤。
【請求項5】
請求項4に記載の混合現像剤において、
前記第1の現像剤及び前記第2の現像剤の帯電特性が、それぞれ、
前記混合重量比を5%とする場合で、かつ、前記時間tを60秒とし、前記時間Tを600秒とする場合に、
|q600|>|Q600|で、かつ、q60/q600<Q60/Q600の関係を満たす
ことを特徴とする混合現像剤。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の混合現像剤において、
全体の飽和帯電量が、前記第1の現像剤と前記第2の現像剤との混合割合を変更することにより、調整される
ことを特徴とする混合現像剤。
【請求項7】
現像剤を収容する現像剤収容部と、
表面に静電潜像が形成される像担持体と、
前記現像剤収容部から前記現像剤の供給を受けて、前記像担持体の表面に形成された静電潜像に前記現像剤を付着させて現像を行う現像剤担持体とを備え、
前記現像剤収容部は、
前記現像剤として、
着色剤の濃度が低くて、帯電立ち上がりが遅く、かつ、飽和帯電量の絶対値が高い第1の現像剤と、
前記第1の現像剤よりも、着色剤の濃度が高くて、帯電立ち上がりが速く、かつ、飽和帯電量の絶対値が低い第2の現像剤と、
前記第1の現像剤と前記第2の現像剤とを付着するキャリアとが混合されている混合現像剤を収容する
ことを特徴とする現像装置。
【請求項8】
請求項7に記載の現像装置において、
前記現像剤収容部は、
前記現像剤として、
前記着色剤の色がカラーである場合に、前記第2の現像剤の彩度が前記第1の現像剤の彩度よりも濃い混合現像剤を収容する
ことを特徴とする現像装置。
【請求項9】
請求項7に記載の現像装置において、
前記現像剤収容部は、
前記現像剤として、
前記着色剤の色が黒である場合に、前記第2の現像剤の明度が前記第1の現像剤の明度よりも高い混合現像剤を収容する
ことを特徴とする現像装置。
【請求項10】
請求項7乃至請求項9のいずれか一項に記載の現像装置において、
前記現像剤収容部は、
前記現像剤として、
前記第1の現像剤及び前記第2の現像剤の帯電特性が、それぞれ、
同じ材質のキャリアに対して前記第1の現像剤と前記第2の現像剤とで同じ混合重量比で単独に混合される場合で、かつ、前記第2の現像剤が飽和帯電量に到達する前記第2の現像剤の飽和帯電時間よりも短い時間t撹拌した場合の前記第1の現像剤の帯電量をqtとするとともに、前記第2の現像剤の帯電量をQtとし、前記第2の現像剤の飽和帯電時間以上の時間T撹拌した場合の前記第1の現像剤の帯電量をqTとするとともに、前記第2の現像剤の帯電量をQTとしたときに、
|qT|>|QT|で、かつ、qt/qT<Qt/QTの関係を満たす混合現像剤を収容する
ことを特徴とする現像装置。
【請求項11】
請求項10に記載の現像装置において、
前記現像剤収容部は、
前記現像剤として、
前記第1の現像剤及び前記第2の現像剤の帯電特性が、それぞれ、
前記混合重量比を5%とする場合で、かつ、前記時間tを60秒とし、前記時間Tを600秒とする場合に、
|q600|>|Q600|で、かつ、q60/q600<Q60/Q600の関係を満たす前記混合現像剤を収容する
ことを特徴とする現像装置。
【請求項12】
請求項10又は請求項11に記載の現像装置において、
前記現像剤収容部は、
前記現像剤として、
全体の飽和帯電量が、前記第1の現像剤と前記第2の現像剤との混合割合を変更することにより、調整される前記混合現像剤を収容する
ことを特徴とする現像装置。
【請求項13】
請求項7乃至請求項12のいずれか一項に記載の現像装置と、
転写部と、
定着部とを有する
ことを特徴とする画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−141479(P2011−141479A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−2936(P2010−2936)
【出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】