説明

減衰弁

【課題】 減衰力調整とフェールセーフを確実に行うことができ、減衰力調整をするポペット弁体からなる主弁の配設場所たる孔内での遊動を阻止する。
【解決手段】 緩衝器における上流側からの作動流体を緩衝器における下流側に通過させる流路Lに配設され、流路Lがこの流路Lにおける流路面積を設定する孔からなる縮径部14dおよび縮径部14dに連続する拡径部14eを有すると共に拡径部14eに収装されるポペット弁体7を有し、ポペット弁体7が縮径部14dにおける開口に尖端を臨ませる先端部7cおよび先端部7cを連設させながら摺動隙間Sを有して拡径部14eに摺動可能に収装される基端摺動部7aを有し、縮径部14dから流出する作動流体が拡径部14eを通過する際に作動流体の流れによる流体力で拡径部14eにおいて基端摺動部7aを径方向に偏芯させて基端摺動部7aの拡径部14eでの径方向への遊動を阻止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、減衰弁に関し、特に、たとえば、筒型に形成の緩衝器にあって、シリンダ体内からの作動流体をシリンダ体外のリザーバへ流出させる流路中に設けられる減衰弁の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、筒型に形成の緩衝器にあって、シリンダ体内からの作動流体をシリンダ体外のリザーバへ流出させる流路中に設けられる減衰弁としては、従来から種々提案があるが、その中で、たとえば、特許文献1に開示の提案にあっては、弁要素として、ポペット弁体からなる主弁と、任意に構成されるフェール弁とを有する。
【0003】
すなわち、上記の特許文献1に開示の減衰弁は、複筒型であってユニフロー型に形成の緩衝器におけるシリンダ体内とシリンダ体の外となるリザーバとを連通する流路を遮断するように配設されるバルブケースを有し、このバルブケース内における流路、すなわち、シリンダ体内とリザーバとを連通する流路中に上記のポペット弁体からなる主弁とこの主弁に直列する任意構成のフェール弁とを有する。
【0004】
そして、この減衰弁にあっては、バルブケースにソレノイドを有し、このソレノイドの励磁時の推力で主弁におけるバルブ開度を広狭調整する一方で、フェール弁は、ソレノイドへの供給電流が設定値以下となる場合、たとえば、システムの作動に異常があるなどでソレノイドへの供給電流が設定値以下となるときに上記の流路における流路面積を狭くするフェールポジションを有する。
【0005】
それゆえ、この特許文献1に開示の減衰弁にあっては、単一のソレノイドで主弁とフェール弁とを独立して駆動し、ソレノイドへの供給電流が所定値を超える状態では、主弁のみが流路における流路面積を制限してフェール弁は流路に影響を与えず、反対に、ソレノイドへの供給電流が所定値以下である場合にはフェール弁のみが流路における流路面積を制限して主弁は流路に影響を与えない。
【0006】
その結果、主弁とフェール弁とが互いに干渉しあうことが無く、減衰力調整とフェールセーフとを確実に実現でき、したがって、公差等による製品毎のバラツキを補正するために、たとえば、主弁たるポペット弁体にソレノイドの励磁時の推力に抗する推力を与えるための弾性体たる附勢バネにおける初期荷重を調節しても、フェール弁には影響が無く、フェール時の減衰力に影響を与えず、フェール時と通常作動時における製品のバラツキを無くせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009‐222136公報(特許請求の範囲,明細書中の段落0009,同0010,図1,図2参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記した特許文献1に開示の減衰弁にあっては、主弁とフェール弁とが互いに干渉しあうことが無く、減衰力調整とフェールセーフとを確実に実現できる点で、基本的に問題がある訳ではないが、その実施にあって、些かの不具合があると指摘される可能性がある。
【0009】
すなわち、上記の減衰弁における弁要素を構成する主弁は、ポペット弁体からなるが、このポペット弁体は、凡そこの種のポペット弁体がそうであるように、上記の流路を構成する孔内で摺動する基端摺動部を有すると共に、流路を形成する開口に尖端を臨ませる先端部とを有してなる。
【0010】
そして、このポペット弁体における基端摺動部は、孔内に摺動隙間を有して収装されるので、この摺動隙間が潤滑油の浸入を許容するほどに狭い場合には、基端摺動部が孔内で横方向に、すなわち、孔の径方向に基端摺動部が移動することをいたずらに懸念する必要はない。
【0011】
しかし、部品製作時の製作誤差や爾後の磨耗などで上記の摺動隙間が大き過ぎることになると、先端部の外周を摺るようにして流れる作動流体の流れの影響を受けて、特に、基端摺動部が孔内でこの孔の径方向に振動することが確認されている。
【0012】
そして、システムにおける圧力変化が著しくなる場合、たとえば、緩衝器のように、高圧低圧を頻繁に繰り返す場合には、上記の振動に起因する騒音発生や発生減衰力の変動に繋がる危惧がある。
【0013】
この発明は、上記した現状を鑑みて創案されたものであって、その目的とするところは、基本的には、主弁たるポペット弁体における孔内で摺動する基端摺動部が孔の径方向に振動せずして騒音発生を危惧させない構造を提案することであり、具体的には、たとえば、複筒型であってユニフロー型に形成の緩衝器における減衰部への具現化に向き、その緩衝器の汎用性の向上を期待するのに最適となる減衰弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記した目的を達成するために、この発明による減衰弁の構成を、基本的には、緩衝器における上流側からの作動流体を緩衝器における下流側に通過させる流路に配設され、この流路がこの流路における流路面積を設定する孔からなる縮径部およびこの縮径部に連続する拡径部を有すると共にこの拡径部に収装される主弁たるポペット弁体を有し、このポペット弁体が上記の縮径部における開口に尖端を臨ませる先端部およびこの先端部を連設させながら摺動隙間を有して拡径部に摺動可能に収装される基端摺動部を有してなる減衰弁において、上流側たる縮径部から流出する作動流体が拡径部を通過して下流側に流出する際に作動流体の流れによる流体力で拡径部において基端摺動部を径方向に偏芯させてポペット弁体における拡径部での径方向への遊動を阻止してなるとする。
【発明の効果】
【0015】
それゆえ、この発明にあっては、流路を形成する拡径部に摺動隙間を有して摺動可能に収装される主弁たるポペット弁体における基端摺動部が拡径部で径方向に偏芯されて遊動が阻止されるから、基端摺動部が拡径部で径方向に遊動することによる騒音発生を阻止できる。
【0016】
その結果、この発明によれば、製作誤差などで流路たる孔における拡径部とこの拡径部に収装されるポペット弁体における基端摺動部との間に出現する摺動隙間の大きさが区々になる場合や、経年使用によって摺動隙間が大きくなる場合にも、ポペット弁体を拡径部で安定させることが可能になり、所望の減衰作用の具現化を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明による減衰弁を有する緩衝器を原理的に示す縦断面図である。
【図2】この発明の一実施形態による減衰弁を示す縦断面図である。
【図3】他の実施形態によるポペット弁体を流路と共に部分的に示す拡大断面図である。
【図4】バルブハウジングに形成の縮径部における開口にポペット弁体の先端部における尖端が臨んでいる状態を示す図である。
【図5】さらに他の実施形態によるポペット弁体を図3と同様に示す図である。
【図6】さらに他の実施形態によるポペット弁体を図3と同様に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図示した実施形態に基づいて、この発明を説明するが、図1に示すように、この発明の減衰弁Vは、たとえば、複筒型であってユニフロー型に形成の緩衝器(符示せず)への利用に向く。
【0019】
すなわち、図示する緩衝器は、作動流体たる作動油を充満するシリンダ体1の外に外筒2を有し、この外筒2とシリンダ体1との間をリザーバRに設定し、シリンダ体1内にロッド体3を出没可能に挿通し、このロッド体3の図中で下端部となる先端部にシリンダ体1内に摺動可能に収装されるピストン体4を連設させる。
【0020】
そして、ピストン体4は、シリンダ体1内にピストン体4の上方となるロッド側室R1と、ピストン体4の下方となるピストン側室R2とを画成すると共に、ピストン側室R2の作動油がロッド側室R1に流入することを許容するがその逆となる流れを阻止する伸側チェック弁4aを有する。
【0021】
また、シリンダ体1は、下端部の内側にシリンダ体1の外となるリザーバRとシリンダ体1内となるピストン側室R2とを画成するベースバルブ部5を有し、このベースバルブ部5は、リザーバRからの作動油のピストン側室R2への流入を許容するがその逆となる流れを阻止する圧側チェック弁5aを有する。
【0022】
一方、シリンダ体1と外筒2との間には、隔壁体たるパイプ6を有し、このパイプ6とシリンダ体1との間をシリンダ体1内のロッド側室R1に連通する言わば上流側となる通路L1に設定する。
【0023】
そして、上記のパイプ6と外筒2との間をシリンダ体1内のピストン側室R2に連通する言わば下流側となる通路L2に設定し、この通路L2と上記の通路L1とで構成される流路L中に上記した減衰弁Vを配設する。
【0024】
なお、上記のリザーバRは、油面Oを境にする気室Aを有し、この気室Aは、封入される不活性ガスなどの気体の膨縮でエアバネ力を具有する。
【0025】
それゆえ、この緩衝器にあっては、シリンダ体1内をピストン体4が下降する収縮作動時にピストン側室R2からの作動油が伸側チェック弁4aを通過してロッド側室R1に流入する。
【0026】
このとき、ピストン側室R2において余剰となるロッド侵入体積分に相当する量の作動油も伸側チェック弁4aを通過してロッド側R1に流入するから、この緩衝器の収縮作動時には、ロッド側室R1から上記のロッド侵入体積分に相当する量の作動油が上流側となる通路L1を通過して減衰弁Vに向けて流出される。
【0027】
一方、この緩衝器にあっては、シリンダ体1内をピストン体4が上昇する伸長作動時にロッド側室R1から作動油が通路L1を通過して減衰弁Vに向けて流出され、このとき、ピストン側室R2において退出ロッド変位にシリンダ径を乗算した体積分に相当する量の作動油が不足する。
【0028】
したがって、この不足分を補うようにリザーバRからの作動油が下流側となる通路L2および圧側チェック弁5aを通過してピストン側室R2に補充され、全体として見れば、減衰弁Vは、ロッド側室R1から流出される作動油を通過させ、このとき、所定の減衰作用を具現化する。
【0029】
ちなみに、上記のロッド体3の断面積と上記のピストン側室R2の断面積とを1:2に設定する場合には、この緩衝器の伸縮作動時にシリンダ体1内から減衰弁Vに向けて流出される作動油量が同じになり、発生減衰力が同じになる。
【0030】
緩衝器が上記のように形成されるのに対して、減衰弁Vは、上記したシリンダ体1内のロッド側室R1に連通する上流側とされる通路L1と、上記したシリンダ体1内のピストン側室R2とに連通する下流側とされる通路L2とからなる流路L中に配設され、図示するところでは、主弁たるポペット弁体7を有する一方で、ソレノイド8と、弾性体9と、フェール弁10とを有してなる。
【0031】
以下に、説明すると、減衰弁Vは、外筒2に形成の開口2aを取り囲むように外筒2の外周に連設される筒状に形成のソケット21に図中で左端部となる先端部(符示せず)を螺着させるバルブケース11を有する。
【0032】
そして、このバルブケース11は、上記のソケット21に螺着される筒部111と、この筒部111の図中で右端部となる後端部(符示せず)に加締固着される蓋部112とを有していわゆるキャップ状に形成される。
【0033】
このとき、バルブケース11は、筒部111の内周のほぼ中央部にフランジ部111aを有し、このフランジ部111aにソレノイド8の言わば先端を係止させた状態でこのソレノイド8の後端を上記の蓋部112で覆う。
【0034】
そして、ソレノイド8は、巻線81と、この巻線81を内包する状態に保持するボビン82とを有し、このボビン82の先端が上記のフランジ部111aに係止されると共に後端が上記の蓋部112に当接されて固定され、このボビン82の内側にはいわゆる鉄心部(符示せず)を有する。
【0035】
鉄心部は、図中で開口を左に向かせる横向きの有底筒状に形成されてボビン82の内側に嵌着される外側固定鉄心83と、この外側固定鉄心83に直列する非磁性体からなるスペーサ84と、このスペーサ84に直列される内側固定鉄心85と、この内側固定鉄心85に直列される可動鉄心86とを有し、この可動鉄心86は、後述するフェール弁10におけるフェール弁体を構成する。
【0036】
そして、鉄心部は、外側固定鉄心83の内側に非磁性体からなるワッシャ87を挟んで可動鉄心88を有し、この可動鉄心88は、図中で開口を右に向かせる横向きの有頭筒状に形成されて、軸芯部に同じく図中で開口を右に向かせる凹部88aを有する。
【0037】
また、外側固定鉄心83は、底部の軸芯部にバネ力調整ネジ12を螺装させ、このバネ力調整ネジ12は、先端側を上記の凹部88aに臨在させ、この凹部88aには基端がバネ力調整ネジ12に担持されながら先端が凹部88aの内底に係止される遮断弾性体たる附勢バネ13が収装される。
【0038】
ちなみに、図示するところでは、前記したバルブケース11における蓋部112を筒部111に加締固定する前にのみ、バネ力調整ネジ12の操作を可能にする設定とされるが、これに代えて、図示しないが、蓋部112が筒部111に分離可能に連結され、したがって、蓋部112の連結後にバネ力調整ネジ12の操作を可能にするようにしても良い。
【0039】
それゆえ、可動鉄心88は、図中で左端部となる頭部をポペット弁体7の後端に当接し、附勢バネ13の推力をポペット弁体7に伝えると共に、附勢バネ13は、ソレノイド8の励磁時には、吸引される可動鉄心88を介してポペット弁体7に図中で左側へ向かう方向の推力を与える。
【0040】
なお、可動鉄心88のポペット弁体7側となる図中の左側への移動限界は、バルブハウジング14の図中での右端部の外周に嵌合されて膨径部14iで左方への移動が規制されている非磁性体からなる筒状のストッパ142によって規制されるが、このストッパ142および前記のワッシャ87を合成樹脂材などで形成することで、可動鉄心88の衝合時における衝撃や音の発生を抑制できる。
【0041】
そして、可動鉄心88は、図中で右側となる基端側を外側固定鉄心83の内側に摺動自在に挿入するが、ワッシャ87に当接するまで挿入されるとき、図中で左端部となる頭部の側面が内側固定鉄心85の内周に若干対向する至近に位置決められる。
【0042】
なお、可動鉄心88は、肉厚部に図中で左右側となる内外の連通を許容する透孔88bと、外周側部に同じく内外の連通を許容する溝88cとを有し、外側固定鉄心83と可動鉄心88で仕切られるワッシャ87を有する空間を密閉させない。
【0043】
ところで、内側固定鉄心85は、筒状とされ、外側固定鉄心83側の開口端は、内周側に傾斜するテーパとされ、巻線81への通電時に発生する磁束が右端内周側に集中するようになっており、この内側固定鉄心85と外側固定鉄心83との間に介装される非磁性体のスペーサ84における図中での左端の形状は、内側固定鉄心85のテーパに符合する形状とされている。
【0044】
上述したところから、このソレノイド8にあっては、磁路が外側固定鉄心83,可動鉄心88および内側固定鉄心85を通過するように形成され、巻線81が励磁されると、外側固定鉄心83寄りに配置される可動鉄心88が内側固定鉄心85側に吸引され、可動鉄心88には図中で左側へ向かう推力が作用する。
【0045】
一方、上記のバルブケース11は、上記のフランジ部111aと上記したソケット21における段部21aとの間にバルブハウジング14におけるフランジ部14aと非磁性体からなるバネホルダ101を挟持し、これによって、バルブハウジング14が緩衝器に固定される。
【0046】
このとき、バネホルダ101は、外筒2に設けたソケット21の内周にも嵌合され、外周にシール部材102を有し、このシール部材102によって、バネホルダ101の外周とソケット21の内周との間における連通、すなわち、いわゆる流路L側の作動油がソレノイド8側に浸入するのを阻止する。
【0047】
なお、図示するところにあっては、バネホルダ101は、図中で右端となる後端に前記したソレノイド8におけるボビン82の先端を当接させ、図中で右端部となる基端部にフランジ部101aを有し、このフランジ部101aの内周に内側固定鉄心85の外周に嵌合させる。
【0048】
ところで、バルブハウジング14は、前記したパイプ6、すなわち、図2中にあって、シリンダ体1と外筒2との間に配設されるパイプ6に開口(符示せず)を形成するように外側に向けて折り曲げ加工された筒部6aに図中で左端部となる先端部(符示せず)がシール部材141の配設下に嵌装されるほぼ円柱状に形成の本体部14bを有し、この本体部14bの外周であって軸線方向のほぼ中央部に前記したフランジ部14aを有する。
【0049】
ちなみに、上記のパイプ6に形成される筒部6aは、図中で右端部となる先端部が前記した外筒2に形成の開口2aに臨在されるので、この筒部6aに対する外筒2の外側からのバルブハウジング14の連結が容易に可能となり、また、上記のシール部材141の配設で通路L1と通路L2との連通が阻止される。
【0050】
そして、バルブハウジング14は、上記の本体部14bにおける図中で左端部となる先端部の軸芯部に任意の径に開穿されて図中で左右方向に延びる縦孔14cと、この縦孔14cに直列して連続する丸孔からなりながら制御対象となる流路Lにおける流路面積を設定する縮径部14dと、この縮径部14dに直列しながら連続して同じく丸孔からなる拡径部14eと、この拡径部14eに連続して本体部14bにおけるほぼ中央部に径方向に開穿されて外周に開口する横孔14fとを有する。
【0051】
そしてまた、このバルブハウジング14にあっては、上記のフランジ部14aに図中で左右側となる上流側と下流側との連通を許容する連通孔14gを有し、したがって、この減衰弁Vにおける流路Lは、通路L1に連通する筒部6aの内側となる縦孔14c,縮径部14d,拡径部14e,横孔14f,バルブハウジング14の外であってフランジ部14aの下流側,連通孔14g,バルブハウジング14の外であってフランジ部14aの上流側および通路L2に連通する外筒2の開口2aで形成される。
【0052】
ちなみに、このバルブハウジング14にあっては、縮径部14dの図中で右端となる開口端が弁座14hとされ、この弁座14hには、この縮径部14dに直列されるように形成される拡径部14eに収装の後述するポペット弁体7が対向する。
【0053】
ところで、この発明の減衰弁Vにあっては、前記した特許文献1に開示の提案たる減衰弁と同様に、弁要素として、ポペット弁体7からなる主弁と、この主弁に直列する任意構成のフェール弁10とを有する。
【0054】
以下に、説明すると、ポペット弁体7は、前記したバルブハウジング14における拡径部14eに摺動可能に収装され、図中で右端部となる大径部たる基端摺動部7aと、この基端摺動部7aの図中で左端となる先端に一体に連設される小径部7bと、この小径部7bの左端となる先端に一体に連設されて流路Lを形成する前記した縮径部14dの開口に尖端を臨ませる先端部7cとを有してなる。
【0055】
そして、このポペット弁体7にあっては、小径部7bの外側に巻装される附勢バネからなる弾性体9のバネ力によって図中で右行する方向たるいわゆる後退方向に附勢され、最も大きく後退するときに、前記した弁座14hから先端部7の尖端が大きく離れて、縮径部14dにおける開口面積を最大にする。
【0056】
また、基端摺動部7aは、図2には示さないが、拡大図たる図3に示すように、拡径部14eの内周との間に摺動隙間Sを有して収装され、そして、この拡径部14eには、弾性体9が併せて収装され、この弾性体9の図2中で右端となる基端が基端摺動部7aの先端に担持され、図2中で左端となる先端が拡径部14eと縮径部14dとの間に出現する段差部(符示せず)に係止される。
【0057】
そしてまた、この弾性体9は、ポペット弁体7を弁座14hから遠ざける方向に推力を発揮し、ポペット弁体7に流路Lにおける流路面積を最大とする方向に推力を与え、したがって、ポペット弁体7にあっては、先端部7cが弁座14hに離着座することで流路Lをリニアに開閉する。
【0058】
なお、このポペット弁体7にあっては、小径部7bが拡径部14eの内周との間に作動油の通路となる隙間を有し、ポペット弁体7がこの拡径部14eに開口する横孔14fを閉塞しないように配慮する。
【0059】
したがって、ポペット弁体7は、前記した可動鉄心88を介して弾性体9と附勢バネ13とで挟み込まれており、弾性体9によって流路Lの流路面積を最大とする方向への推力を具有する。
【0060】
そして、このポペット弁体7は、反対に可動鉄心88を介して附勢バネ13によって流路Lの流路を制限する方向への推力を具有し、したがって、ソレノイド8への通電が無い状態では、弾性体9による推力が附勢バネ13の推力に釣り合うか上回って、可動鉄心88がワッシャ87へ当接するまで外側固定鉄心83内に押し込まれ、流路Lを最大開放する位置にまで弁座14hから後退する。
【0061】
ここで、弾性体9と附勢バネ13は、上述したところから理解できるように、直列配置されているため、バネ力調整ネジ12で附勢バネ13の支承位置を調節すると、附勢バネ13の圧縮された状態における長さ、すなわち、圧縮長さを変更するだけでなく、弾性体9の圧縮長さをも調節することができ、これら弾性体9,附勢バネ13がポペット弁体7に作用させる初期推力を調節することが可能になる。
【0062】
そして、この初期推力を調節することで、ソレノイド8への供給電流量に対するポペット弁体7の位置、すなわち、流路Lにおける流路面積を調整でき、このとき、いわゆる調節部材は、附勢バネ13の支承位置を軸方向に調節することができれば良いので、上記したバネ力調整ネジ12に限定されない。
【0063】
フェール弁10は、バルブハウジング14における膨径部14iの外周に摺動自在に装着される可動鉄心86をフェール弁体とし、この可動鉄心86とバネホルダ101のフランジ部101aとの間に介装される弾性体たる附勢バネ103によって図中で左方向たる前進方向に附勢される。
【0064】
そして、このフェール弁体たる可動鉄心86は、肉厚の筒状に形成され、外周側に設けた鍔部86aと、バルブハウジング14のフランジ部14aにおける図中での右端面に対向する環状突起86bと、内周と外周とを連通するオリフィス86cと、図1中右端から開口してオリフィス86cへ通じる通孔86dとを有する。
【0065】
そしてまた、この可動鉄心86にあって、図中での右端となる後端は、内側固定鉄心85の図中での左端となる先端に隣接し、磁路が内側固定鉄心85,可動鉄心86,バルブハウジング14,ソケット21およびバルブケース11を通過するように形成される。
【0066】
上述したところから、このソレノイド8にあっては、巻線81が励磁されると、可動鉄心86が内側固定鉄心85に吸着され、可動鉄心86には図中の右側へ向かう推力が作用する。
【0067】
そして、ソレノイド8への供給電流が所定値を超えると、ソレノイド8によって可動鉄心86に作用する推力がバネ103の推力に打ち勝って内側固定鉄心85に吸着して流路Lを最大に開放する。
【0068】
反対に、ソレノイド8への供給電流が所定値以下となる場合には、ソレノイド8によって可動鉄心86に作用する推力がバネ103の推力に打ち勝つことができず、可動鉄心86は、環状突起86bをバルブハウジング14のフランジ部14aへ当接させて流路面積を制限する。
【0069】
このとき、可動鉄心86のオリフィス86cが流路Lに対向して、このオリフィス86cのみを介して流路Lを連通するようになるので流路面積をオリフィス86cの流路面積にまで制限する。
【0070】
したがって、ソレノイド8への供給電流が所定値を超えると、可動鉄心86をフェール弁体にするフェール弁10は、流路Lを開放する開放ポジションを採り、反対に、ソレノイド8への供給電流が所定値以下の状態では、オリフィス86cのみを介して流路Lを連通するフェールポジションを採る。
【0071】
なお、フェール弁10にあって、フェール弁体たる可動鉄心86が内側固定鉄心85に密着しても、通孔86dが内側固定鉄心85の端部によって閉塞されずして連通状態を保ち、可動鉄心86が内側固定鉄心85に密着した状態となっても、可動鉄心88が収容される空間が閉塞されずして、フェール弁10がロックされて移動不能になる事態が回避される。
【0072】
上述したように、この減衰弁Vにあっては、単一のソレノイド8で弁要素となる主弁を構成するポペット弁体7とフェール弁10を構成する可動鉄心86とを独立して駆動し、ソレノイド8への供給電流が所定値を超える状態では、ポペット弁体7のみが流路Lを制限して可動鉄心86は流路Lに影響を与えず、反対に、ソレノイド8への供給電流が所定値以下である場合には可動鉄心86のみが流路Lを制限してポペット弁体7は流路Lに影響を与えないようになっているので、主弁とフェール弁10とが互いに干渉しあうことが無く、減衰力調整とフェールセーフを確実に実行できる。
【0073】
それゆえ、公差等による製品毎のバラツキを補正するために、ポペット弁体7に推力を与えている弾性体9や附勢バネ13の初期荷重を調節しても、フェール弁10を構成する可動鉄心86には影響が無く、フェール時の減衰力に影響を与えることが無いから、フェール時と通常作動時における製品のバラツキを無くすことができる。
【0074】
また、ソレノイド8は、供給電流が所定値を超えるとフェール弁10を構成する可動鉄心86を吸引するので、別途の可動鉄心の設置が不要となって部品点数を削減できる。
【0075】
さらに、減衰弁Vにあって、弾性体9と附勢バネ13の圧縮長さを調節して初期推力を調節する調節部材たるバネ力調整ネジ12を備えたので、製品毎の減衰力のバラツキを無くすことができる。
【0076】
そして、図示する実施形態の場合、可動鉄心88は、附勢バネ13と可動鉄心86との間に介装されているので、可動鉄心88が外側固定鉄心83内で遊ぶことが無く、振動の入力によって可動鉄心86やワッシャ87に衝突して異音を発生する事態が阻止される。
【0077】
また、フェール弁10を構成する可動鉄心86は、フェールポジションを採ると流路に対向して流路を制限するオリフィス86cを備えているので、流路Lに別途オリフィスを備えたサブ流路を並列させるような構成を採用せずに済み、減衰弁Vの構造を複雑化せずに済む利点がある。
【0078】
ただし、流路Lに並列するようオリフィスを備えたサブ流路を設け、フェール時に流路Lを完全に可動鉄心86で遮断してサブ流路のみを機能させる構成を採用することを妨げる趣旨ではない。
【0079】
なお、可動鉄心86の環状突起86bの先端に切欠を設けてオリフィスを形成してもよいが、上記した実施形態に示した孔空け加工によって形成されるオリフィス86cを採用することで、フェール時の減衰力のばらつきを最小限に留めることができるので、狙った通りの安定した減衰力を得ることができる。
【0080】
また、ポペット弁体7は、ソレノイド8によって駆動されて開弁圧や流路面積を調節することが可能であれば良いので、弁体形式は上述したポペット弁体形式に限定されず、上述したところに代えて、図示しないが、たとえば、スプール弁体からなるとしても良い。
【0081】
ところで、この発明の減衰弁Vにあって、ポペット弁体7は、このポペット弁体7を収装するバルブハウジング14における拡径部14eで径方向への遊動が阻止されるとし、具体的には、上流側たる縮径部14dから流出する作動油が拡径部14eを通過して下流側に流出する際に、基端摺動部7aが作動油の流れによる流体力によって拡径部14eにおいて径方向に偏芯されて径方向への遊動が阻止される。
【0082】
つまり、前述したが、減衰弁における弁要素たる主弁がポペット弁体からなるとき、このポペット弁体は、凡そこの種のポペット弁体がそうであるように、流路を構成する孔内に配設されるとき、孔の内周との間に摺動隙間を有して収装される。
【0083】
それゆえ、この摺動隙間が潤滑油の浸入を許容するほどに狭い場合には、ポペット弁体が孔内で横方向に、すなわち、孔の径方向に移動する、すなわち、遊動することをいたずらに懸念する必要はない。
【0084】
しかし、部品製作時の製作誤差や爾後の磨耗などで上記の摺動隙間が大きくなると、ポペット弁体に作用する作動流体たる作動油の流れの影響を受けて、ポペット弁体が孔内でこの孔の径方向に振動することが確認されている。
【0085】
そして、システムやアクチュエータにおける圧力変化が著しくなる場合、たとえば、緩衝器のように、高圧低圧を頻繁に繰り返す場合には、上記の振動に起因する騒音発生に繋がる危惧がある。
【0086】
そこで、この発明にあっては、減衰弁Vにあって、ポペット弁体7における基端摺動部7aがこの基端摺動部7aを収装するバルブハウジング14における孔たる拡径部14eで径方向への遊動することを阻止する。
【0087】
以下に、図3以下に示す各実施形態に基づいて、基端摺動部7aの拡径部14eにおける径方向への遊動を阻止する構造について説明するが、この図3以下に示す各実施形態において、説明の都合上、弾性体9(図2参照)の配設を省略する。
【0088】
また、図3以下に示す各実施形態において、その構成が前記した図2に示すところと同様となるところについては、図中に同一の符号を付するのみとして、要する場合を除き、その説明を省略する。
【0089】
ちなみに、前記した図2に示すところでは、ポペット弁体7とバルブハウジング14との間に基端摺動部7aの拡径部14eにおける径方向への遊動を阻止する構造について開示しないが、これは、説明の都合上のことで、具体的には、図3以下の各実施形態に示すように、上記の構造を有する。
【0090】
ところで、上記のポペット弁体7は、前記した図2に示すように、バルブハウジング14における孔たる拡径部14eに摺動隙間S(図3参照)を有して摺動可能に収装される。
【0091】
そして、この状況下に、図3以下に示す各実施形態では、拡径部14eの上流側となる縮径部14dから流出する作動流体たる作動油が拡径部14eおよび横孔14fを通過して下流側たるバルブハウジング14の外周側に流出する際に、作動油の流れによる流体力を利用して拡径部14eにおいて基端摺動部7aを径方向に偏芯させて安定させ、基端摺動部7aの拡径部14eでの径方向への遊動を阻止する。
【0092】
先ず、図3に示す実施形態では、ポペット弁体7がいわゆる基準位置にあり、したがって、ポペット弁体7の軸芯位置が拡径部14eの軸芯位置に一致する状態にあるとき、縮径部14dの軸芯位置が拡径部14eの軸芯位置から径方向に偏芯されてなる、すなわち、図3中にあって、下方に偏芯されてなる。
【0093】
これによって、この縮径部14dの開口に臨むポペット弁体7における先端部7cの尖端は、図4に示すように、真円となる開口で上方側に位置決められる位置取りになり、したがって、この状態で作動油が縮径部14dから拡径部14eに流入すると、縮径部14dの開口を通過する作動油は、図3中に矢印線aで示すように、図4中で下方となる言わば広い方を優先的に通過する。
【0094】
このことから、ポペット弁体7の先端部7cを連設させる小径部7bの外周において、図中で下方となる広い方が反対側の狭い方に比較して低圧傾向になり、したがって、ポペット弁体7が図3中で下降する。
【0095】
その結果、ポペット弁体7における基端摺動部7aが拡径部14eにおいて、図3中に仮想線図で示すように、図中で下方となる内周に押し付けられて安定し、したがって、ポペット弁体7における拡径部14eでの径方向の遊動が阻止され、遊動に伴う騒音発生を回避できる。
【0096】
以上のように、図3(および図4)に示すところでは、上流側たる縮径部14dから流出する作動油が拡径部14eを通過して下流側に流れる際に、縮径部14dの開口がポペット弁体7の先端部7cに対して不均一になることによる流体力を利用する。
【0097】
それに対して、次の図5に示すところは、縮径部14dの開口は、ポペット弁体7の先端部7cに対して不均一にならないが、縮径部14dの開口に尖端を臨ませる先端部7cが作動油の不均一流れを生じさせ、この不均一流れによる流体力でポペット弁体7における拡径部14eでの径方向の遊動を阻止する。
【0098】
すなわち、この図5に示すところでは、拡径部14eに収装のポペット弁体7における先端部7cが径方向に対峙する一方のテーパ7dと他方のテーパ7e,7fとを有する。
【0099】
そして、一方のテーパ7dと他方のテーパ7eにおける縮径部14dの開口に対する傾斜角が同一になるのに対して、他方のテーパ7fにおける縮径部14dの開口に対する傾斜角が大きくなる。
【0100】
したがって、ポペット弁体7における先端部7cを全体として見るとき、図中で上方となるテーパ7dにおける縮径部14dの開口に対する傾斜角が図中で下方となるテーパ7e,7fにおける縮径部14dの開口に対する傾斜角より小さくなる。
【0101】
それゆえ、この状態で作動油が縮径部14dから拡径部14eに流入すると、縮径部14dの開口を通過する作動油は、図5中に矢印線aで示すように、縮径部14dの開口に対するテーパ7e,7fの傾斜角が大きくなる図中の言わば下方の広くなる方を優先的に通過する。
【0102】
その結果、この図5に示すところにあっても、ポペット弁体7における基端摺動部7aが拡径部14eにおいて、図中で下方となる内周に押し付けられ、したがって、ポペット弁体7における拡径部14eでの径方向の遊動が阻止される。
【0103】
ちなみに、上記の二段テーパ7e,7fの内の小径部7b寄りに設けられるテーパ7fについては、これに代えて、図中の仮想線図で示すように、小径部7bの全長に亘るテーパ7gとされても良い。
【0104】
図6は、作動油の流れによる流体力を利用する点では前記した図3および図5に示す実施形態の場合と同様であるが、ポペット弁体7のいわゆる内部に主たる加工を施し、これによって、ポペット弁体7における拡径部14eでの径方向の遊動を阻止する。
【0105】
すなわち、この図6に示すところでは、ポペット弁体7が先端部7cの図中で左端面となる端面から軸芯部に開穿される長穴からなる縦穴7hを有すると共に、この縦穴7hに内側端が連通して外側端がポペット弁体7の基端摺動部7aの外周側部に向けて延設される横穴7iを有し、この横穴7iの外側端は、ポペット弁体7における基端摺動部7aの外周部であって図中で上方側部となる部位に形成される容室7jに開口する。
【0106】
それゆえ、この実施形態にあっては、作動油が縮径部14dから拡径部14eに流入するとき、縦穴7hおよび横穴7iを通過する作動油が容室7jに流入し、この容室7jで蓄圧傾向になって流体力を具有する。
【0107】
その結果、ポペット弁体7における基端摺動部7aが図中で下方に押し下げられ、したがって、図6中に仮想線図で示すように、ポペット弁体7が図中で下降し、ポペット弁体7における拡径部14eでの径方向の遊動が阻止される。
【0108】
すなわち、上記のポペット弁体7の配設状況からすると、ポペット弁体7の軸芯線は、横方向となって縦方向となる緩衝器における軸芯線を横切る態勢になる。
【0109】
その結果、車両に搭載された緩衝器、つまり、緩衝器本体が路面振動で上下動するとき、ポペット弁体7もこの緩衝器本体の上下動の影響を受けて、細かく径方向に上下動することが懸念される。
【0110】
また、緩衝器がユニフロー型とされる場合には、緩衝器における伸縮作動が反転するときに、ポペット弁体7を通過する作動油が瞬間的にではあるが途切れ、作動油の流れが再開されるときには、急激に多量の作動油がポペット弁体7を通過し、その結果、ポペット弁体7の使用頻度が一般的に使用される緩衝器における弁体の使用頻度に比較して二倍になることが懸念される。
【0111】
そして、上記した実施形態から明らかであるが、フェール時には、可動鉄心86の通孔86dだけで減衰力を発生させるから、ポペット弁体7がガタツクと減衰力が変動し易くなり、車両における挙動が安定されなくなる懸念もある。
【0112】
それに対して、この発明にあっては、ポペット弁体7がその配設位置で安定し得るようにしたから、以上の不具合を懸念させなことが可能になり、特に車両における乗り心地を悪くしない効果を生む。
【0113】
以上のように、この発明にあっては、減衰弁Vにおいて、バルブハウジング14に形成の流路Lを構成する拡径部14eに摺動隙間Sを有して摺動可能に収装されるポペット弁体7が拡径部14eにおいて径方向にいたずらに遊動しないから、この遊動に起因する騒音発生が危惧されなくなる。
【0114】
前記したところにあって、ソレノイド8は、主弁たるポペット弁体7とフェール弁10を構成する可動鉄心86とを独立して駆動できれば良いので、前述した形状、構造および磁路は一例であって、これに限定されない。
【0115】
以上で、この発明の実施形態についての説明を終えるが、この発明の範囲は、図示され、また、説明された詳細そのものには限定されないことはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0116】
たとえば、複筒型であってユニフロー型に形成の緩衝器にあって、上流側からの作動流体を下流側に通過させる流路に配設されて、所定の減衰作用をする減衰弁への具現化に向く。
【符号の説明】
【0117】
1 シリンダ体
2 外筒
2a 開口
3 ロッド体
4 ピストン体
4a 伸側チェック弁
5 ベースバルブ部
5a 圧側チェック弁
6 パイプ
6a 筒部
7 ポペット弁体
7a 基端摺動部
7b 小径部
7c 先端部
7d,7e,7f,7g テーパ
7h 縦穴
7i 横穴
7j 容室
8 ソレノイド
9 弾性体
10 フェール弁
11 バルブケース
12 バネ力調整ネジ
13 遮断弾性体たる附勢バネ
14 バルブハウジング
14a,101a, 111a フランジ部
14b 本体部
14c 縦孔
14d 縮径部
14e 拡径部
14f 横孔
14g 連通孔
14h 弁座
14i 膨径部
21 ソケット
21a 段部
81 巻線
82 ボビン
83 外側固定鉄心
84 スペーサ
85 内側固定鉄心
86 可動鉄心
86a 鍔
86b 環状突起
86c オリフィス
86d 通孔
87 ワッシャ
88 可動鉄心
88a 凹部
88b 透孔
88c 溝
101 バネホルダ
102,141 シール部材
111 筒部
112 蓋部
142 ストッパ
L 流路
L1,L2 通路
R1 ロッド側室
R2 ピストン側室
S 摺動隙間
V 減衰弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緩衝器における上流側からの作動流体を緩衝器における下流側に通過させる流路に配設され、この流路がこの流路における流路面積を設定する孔からなる縮径部およびこの縮径部に連続する拡径部を有すると共にこの拡径部に収装される主弁たるポペット弁体を有し、このポペット弁体が上記の縮径部における開口に尖端を臨ませる先端部およびこの先端部を連設させながら摺動隙間を有して拡径部に摺動可能に収装される基端摺動部を有してなる減衰弁において、上流側たる縮径部から流出する作動流体が拡径部を通過して下流側に流出する際に作動流体の流れによる流体力で拡径部において基端摺動部を径方向に偏芯させてポペット弁体の拡径部での径方向への遊動を阻止してなることを特徴とする減衰弁。
【請求項2】
緩衝器における上流側からの作動流体を緩衝器における下流側に通過させる流路の途中に配設されてこの流路を通過する作動流体に抵抗を与える主弁たるポペット弁体と、このポペット弁体に上記の流路における面積を制限する方向に推力を与えるソレノイドと、上記のポペット弁体に後退方向に推力を与えて上記の流路における面積を大きくする弾性体と、上記の流路の途中に設けられて上記のポペット弁体に直列配置されるフェール弁と有し、上記のポペット弁体が上記の流路を形成するバルブハウジングにおける拡径部に摺動可能に収装されて後端を上記のソレノイドにおける可動鉄心に対向させる基端摺動部と、この基端摺動部の一端に一体に連設されて上記の弾性体たる附勢バネを巻装させる小径部と、この小径部の一端に一体に連設されて進退時に上記の流路における面積を広狭する先端部とを有してなる減衰弁において、上流側たる縮径部から流出する作動流体が拡径部を通過して下流側に流出する際に作動流体の流れによる流体力で拡径部において基端摺動部を径方向に偏芯させてポペット弁体の拡径部での径方向への遊動を阻止してなることを特徴とする減衰弁。
【請求項3】
上記の緩衝器において、シリンダ体の外に設けられる流路がシリンダ体内からの作動流体のシリンダ体外となるリザーバへの流出を許容する通路と、このリザーバからの作動流体のシリンダ体内への流入を許容する通路とからなり、この両通路の合流部に上記のポペット弁体が配設されてなる請求項1または請求項2に記載の減衰弁。
【請求項4】
上記のソレノイドが励磁時に可動鉄心を吸引してポペット弁体に流路面積を制限する方向に推力を与えると共に、供給電流が所定値を超えるとフェール弁を構成する可動鉄心を吸引する請求項2に記載の減衰弁。
【請求項5】
上記の拡径部に収装のポペット弁体における先端部の尖端が上記の縮径部の開口に偏芯して臨まれてなる請求項2に記載の減衰弁。
【請求項6】
上記の拡径部に収装のポペット弁体における先端部がテーパを有しながら径方向に対峙して一方となる尖端面および他方となる尖端面を有すると共に、一方の尖端面におけるテーパの縮径部の開口に対する傾斜角が他方のテーパにおける縮径部の開口に対する傾斜角がより小さくまたは大きく設定されてなる請求項2に記載の減衰弁。
【請求項7】
上記のポペット弁体が先端部の端面から軸芯部に開穿される長穴からなる縦穴と、この縦穴に内側端が連通して外側端がポペット弁体の基端摺動部の外周側部に向けて延設される横穴と、基端摺動部の外周部に形成されて上記の横穴の外側端を開口させる容室とを有し、縮径部からの作動流体を上記の縦穴および横穴を通過して上記の容室に流入させ、この容室に流体力を具有させてなる請求項2に記載の減衰弁。
【請求項8】
上記のポペット弁体が流路面積を最大とする方向に推力を与える弾性体と、ポペット弁体に流路面積を制限する方向に推力を与える遮断弾性体とを有し、上記のソレノイドへの供給電流が所定値以下となると流路面積を最大とすることを特徴とする請求項2に記載の減衰弁。
【請求項9】
上記のフェール弁が流路の面積を大きくする開放ポジションと流路の面積を小さくするフェールポジションとを有すると共に、上記のソレノイドへの供給電流が設定値以下となるときフェールポジションを採る請求項2に記載の減衰弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−185390(P2011−185390A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52909(P2010−52909)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】