説明

温度補償型発振器

【課題】 実装面積の増大を抑制しつつ、温度変化による発振周波数変動を低減させる。
【解決手段】 弾性表面波装置W1、W2、W3は2次の温度特性を持つように構成し、弾性表面波装置W1、W2は、頂点温度が同一で曲率が互いに異なる特性を持つとともに、弾性表面波装置W3は、頂点温度が弾性表面波装置W1、W2のいずれか一方と同じ特性を持つように構成し、弾性表面波装置W1、W2にてSAW発振器S1、S2を構成するとともに、弾性表面波装置W3にて電圧制御SAW発振器S3を構成し、弾性表面波装置W1、W2の発振周波数f1、f2の差分(f1−F2)を周波数/電圧変換回路B3にて電圧に変換し、電圧制御SAW発振器S3の制御電圧として入力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は温度補償型発振器に関し、特に、温度補償回路が付加されたSAW(Surface Accoustic Wave)発振器に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来の温度補償型発振器では、温度変化による発振器の周波数変動を抑制するため、温度特性に優れたデバイスの特性を参照しながら、発振器の制御電圧を制御することが行われている。
また、例えば、特許文献1には、弾性表面波共振子の2次の温度特性を補償し、温度変化による発振周波数の変動を減らすために、2個のNTCサーミスタを用いて弾性表面波共振子の温度補償する方法が開示されている。
【0003】
また、例えば、特許文献2には、共振器型SAW発振器の周波数変動を抑えるために、共振器型SAW発振器が内蔵するSAW共振子の表面上に温度検出用トランスデューサを設け、温度検出用トランスデューサの共振周波数から共振器型SAW発振器の制御電圧を発生させる方法が開示されている。
【特許文献1】実開平7−231221号公報
【特許文献2】実開平9−298420号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された方法では、NTCサーミスタとSAW共振子の特性曲線を合わせ込む必要がある。特に、2次の温度特性を補償する場合、SAW共振子の特性曲線の曲率と頂点を合わせなければならず、手間のかかる入念な調整工程が必要となったり、温度補償精度の劣化を招いたりするという問題があった。また、NTCサーミスタなどの個別の部品を外付けする必要があり、実装面積の増大を招いたり、良好な温度追従性が得られないという問題があった。
【0005】
また、特許文献2に開示された方法では、共振器型SAW発振器の制御電圧を発生させるために、温度検出用トランスデューサの共振周波数の絶対値が用いられている。このため、温度検出用トランスデューサの共振周波数のばらつきによって温度補償精度の劣化を引き起こすという問題があった。また、温度補償を精度よく行うためには、非常に高精度な周波数/電圧変換回路が必要になるとともに、温度検出用トランスデューサの発振周波数を周波数から電圧に直接変換するため、取り扱い周波数が非常に高くなり、回路構成が複雑化するという問題があった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、実装面積の増大を抑制しつつ、温度変化による発振周波数変動を精度よく補償することが可能な温度補償型発振器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様に係る温度補償型発振器によれば、2次の温度特性を持つ第1および第2のSAW発振器と、前記第1および第2のSAW発振器の発振周波数の差分に対応した電圧に基づいて周波数を可変させる電圧制御SAW発振器とを備えることを特徴とする。
これにより、第1および第2のSAW発振器の発振周波数の差分に基づいて電圧制御SAW発振器の制御信号を生成することができる。このため、第1および第2のSAW発振器の製造バラツキが発生した場合においても、第1および第2のSAW発振器の発振周波数のバラツキを打ち消すことが可能となるとともに、NTCサーミスタなどの個別の部品を外付けする必要がなくなり、実装面積の増大を抑制しつつ、温度変化による発振周波数変動を精度よく補償することが可能となる。
【0008】
また、本発明の一態様に係る温度補償型発振器によれば、前記第1および第2のSAW発振器の発振周波数を混合する混合器と、前記混合器にて混合された信号から前記第1および第2のSAW発振器の発振周波数の差分を抽出するローパスフィルタと、前記ローパスフィルタにて抽出された前記第1および第2のSAW発振器の発振周波数の差分を電圧に変換する周波数/電圧変換回路とをさらに備えることを特徴とする。
【0009】
これにより、第1および第2のSAW発振器の発振周波数の差分に対応した電圧に基づいて電圧制御SAW発振器の発振周波数を制御することが可能となり、第1および第2のSAW発振器の発振周波数の差分から電圧に変換することができる。このため、周波数/電圧変換回路における取り扱い周波数を低くすることができ、回路構成を簡易化することが可能となる。
【0010】
また、本発明の一態様に係る温度補償型発振器によれば、前記第1および第2のSAW発振器は、頂点温度が同一で曲率が互いに異なる特性を持ち、前記電圧制御SAW発振器は、温度特性が前記第1または第2のSAW発振器のいずれか一方と同じ特性を持つことを特徴とする。
これにより、SAW発振器が2次の温度特性を持つ場合においても、手間のかかる入念な調整工程を不要としつつ、第1および第2のSAW発振器の発振周波数の差分を電圧制御SAW発振器の発振周波数の変動量に対応させることができ、温度変化による発振周波数変動を精度よく補償することができる。
【0011】
また、本発明の一態様に係る温度補償型発振器によれば、半導体チップ上に積層され、2次の温度特性を持つ第1、第2および第3の弾性表面波装置と、前記半導体チップに形成され、前記第1および第2の弾性表面波装置がそれぞれ組み込まれた第1および第2のSAW発振器の発振周波数の差分に対応した電圧に基づいて、前記第3の弾性表面波装置が組み込まれた電圧制御SAW発振器の発振周波数を補正する発振周波数補正部とを備えることを特徴とする。
【0012】
これにより、第1および第2のSAW発振器の発振周波数の差分に対応した電圧に基づいて電圧制御SAW発振器の発振周波数を制御することが可能となるとともに、半導体チップ上に弾性表面波装置を集積化することができる。このため、第1および第2のSAW発振器を近接して配置することが可能となり、チップ間またはウェハ間で弾性表面波装置の製造バラツキが発生した場合においても、第1および第2のSAW発振器の特性のバラツキを打ち消すことが可能となるとともに、温度追従性を向上させることが可能となり、実装面積の増大を抑制しつつ、温度特性補償を精度よく行うことが可能となる。また、第1および第2のSAW発振器の発振周波数の差分をとることで、取り扱い周波数を低くすることが可能となり、回路構成を簡略化しつつ、温度変化による発振周波数変動を低減させることができる。
【0013】
また、本発明の一態様に係る温度補償型発振器によれば、前記弾性表面波装置は、前記半導体チップ上に積層された前記薄膜圧電体と、前記薄膜圧電体上に形成されたIDT電極とを備えることを特徴とする。
これにより、薄膜圧電体を半導体チップ上に成膜することで、弾性表面波装置を半導体チップ上に積層することが可能となり、実装面積の増大を抑制しつつ、温度変化による発振周波数変動を低減させることができる。
【0014】
また、本発明の一態様に係る温度補償型発振器によれば、前記第1のSAW発振器は、前記半導体チップに形成され、前記第1の弾性表面波装置が組み込まれた発振ループを構成する第1の帰還回路を備え、前記第2のSAW発振器は、前記半導体チップに形成され、前記第2の弾性表面波装置が組み込まれた発振ループを構成する第2の帰還回路を備え、前記電圧制御SAW発振器は、前記半導体チップに形成され、前記第3の弾性表面波装置が組み込まれた発振ループを構成する第3の帰還回路と、前記電圧制御SAW発振器の発振周波数を制御する可変容量コンデンサとを備え、前記発振周波数補正部は、前記第1および第2のSAW発振器の発振周波数を混合する混合器と、前記混合器にて混合された信号から前記第1および第2のSAW発振器の発振周波数の差分を抽出するローパスフィルタと、前記ローパスフィルタにて抽出された前記第1および第2のSAW発振器の発振周波数の差分を電圧に変換する周波数/電圧変換回路とを備えることを特徴とする。
【0015】
これにより、温度補償型発振器の構成要素のうち弾性表面波装置以外の部分を半導体チップに形成することを可能としつつ、弾性表面波装置を半導体チップ上に積層することが可能となるとともに、第1および第2のSAW発振器の発振周波数の差分に対応した電圧に基づいて電圧制御SAW発振器の発振周波数を制御することが可能となる。このため、チップ間またはウェハ間での弾性表面波装置の製造バラツキに対応しつつ、温度特性補償を精度よく行うことが可能となるとともに、弾性表面波装置および回路部品を集積化することを可能として、実装面積の増大を抑制することができる。
【0016】
また、本発明の一態様に係る温度補償型発振器によれば、前記第1および第2のSAW発振器は、頂点温度が同一で曲率が互いに異なる特性を持ち、前記電圧制御SAW発振器は、温度特性が前記第1または第2のSAW発振器のいずれか一方と同じ特性を持つことを特徴とする。
これにより、SAW発振器が2次の温度特性を持つ場合においても、手間のかかる入念な調整工程を不要としつつ、第1および第2のSAW発振器の発振周波数の差分を電圧制御SAW発振器の発振周波数の変動量に対応させることができ、温度変化による発振周波数変動を精度よく補償することができる。
【0017】
また、本発明の一態様に係る温度補償型発振器によれば、前記第1および第2の弾性表面波装置の薄膜圧電体は、ゼロ温度係数を持つ誘電体の組み合わせをそれぞれ有するとともに、前記誘電体の膜厚が互いに異なることを特徴とする。
これにより、頂点温度が同一で曲率が互いに異なる特性を第1および第2のSAW発振器にそれぞれ持たせることが可能となるとともに、第1および第2のSAW発振器を同一の半導体チップ上に集積化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係る温度補償型発振器について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る温度補償型発振器の構成を示す図である。
図1において、SAW発振器S1、S2には、弾性表面波装置W1、W2が設けられるとともに、電圧制御SAW発振器S3には、弾性表面波装置W3が設けられている。ここで、弾性表面波装置W1、W2、W3には、弾性表面波を励振するIDT(インターデジタルトランスデューサ)電極が設けられるとともに、弾性表面波を反射する反射器電極が設けられている。なお、IDT電極は、互いにかみ合うように配置された1組の櫛形電極にて構成することができる。
【0019】
そして、弾性表面波装置W1の櫛形電極間には、帰還ループを構成する3段構成のインバータN1〜N3が接続され、弾性表面波装置W1およびインバータN1〜N3にてSAW発振器S1が構成されている。また、弾性表面波装置W1の櫛形電極間には抵抗R1が接続されている。
また、弾性表面波装置W2の櫛形電極間には、帰還ループを構成する3段構成のインバータN4〜N6が接続され、弾性表面波装置W2およびインバータN4〜N6にてSAW発振器S2が構成されている。また、弾性表面波装置W2の櫛形電極間には抵抗R2が接続されている。
【0020】
また、弾性表面波装置W3の櫛形電極間には、帰還ループを構成する3段構成のインバータN7〜N9が接続されるとともに、1組の櫛形電極にはバリキャップCg、Cgがそれぞれ接続され、弾性表面波装置W3、インバータN7〜N9およびバリキャップCg、Cgにて電圧制御SAW発振器S3が構成されている。また、弾性表面波装置W3の櫛形電極間には抵抗32が接続されている。なお、抵抗R1、R2、R3はなくてもよい。
【0021】
また、SAW発振器S1、S2の発振周波数f1、f2を混合する混合器B1、混合器B1にて混合された信号からSAW発振器S1、S2の発振周波数の差分(f1−f2)を抽出するローパスフィルタB2、SAW発振器S1、S2の発振周波数の差分(f1−f2)を電圧に変換する周波数/電圧変換回路B3および周波数/電圧変換回路B3から出力された電圧のレベルをシフトさせるレベルコンバータB4が設けられている。そして、レベルコンバータB4の出力は、バリキャップCg、Cgの制御電圧端子に接続されている。
【0022】
ここで、弾性表面波装置W1、W2、W3は2次の温度特性(ゼロ温度係数)を持つように構成することができる。また、弾性表面波装置W1、W2は、頂点温度が同一で曲率が互いに異なる特性を持つとともに、弾性表面波装置W3は、頂点温度が弾性表面波装置W1、W2のいずれか一方と同じ特性を持つように構成することができる。そして、弾性表面波装置W1、W2に対して頂点温度が同一で曲率が互いに異なる特性を持たせる場合、弾性表面波が励振される圧電体として、ゼロ温度係数を持つ誘電体の組み合わせのうち、誘電体の膜厚が互いに異なる組み合わせを選択することができる。例えば、弾性表面波装置W1、W2のIDT電極が配置される圧電体としてSiO2とZnOとの積層構造を用いた場合、ゼロ温度係数を持つSiO2とZnOの組み合わせのうち、SiO2とZnOとの膜厚が互いに異なる組み合わせを選択することができる。
【0023】
図2は、SIO2およびZnOの膜厚と一次温度係数(TCD[ppm/℃])との関係を示す図である。
図2において、SIO2膜上に積層されたZnO膜上にIDT電極が形成された弾性表面波装置において、SIO2膜とZnO膜との膜厚の組み合わせを適宜選択することによりゼロ温度係数(TCD=0)を実現することができる。すなわち、弾性表面波の波長をλ、SIO2膜の膜厚をt_SIO2[μm]、ZnO膜の膜厚をt_ZnO[μm]とした場合、kh(SIO2)=2π(t_SIO2/λ)、kh(ZnO)=2π(t_ZnO/λ)と表すと、kh(SIO2)を一定としたままkh(ZnO)を増加させると、一次温度係数は徐々に減少する。そして、一定のkh(SIO2)に対して一次温度係数がゼロとなるkh(ZnO)が存在することが判る。
【0024】
そして、図1において、弾性表面波装置W1からの出力はインバータN1〜N3を介して帰還され、発振周波数f1の信号が混合器B1に入力される。また、弾性表面波装置W2からの出力はインバータN4〜N6を介して帰還され、発振周波数f2の信号が混合器B1に入力される。
そして、発振周波数f1、f2の信号が混合器B1に入力されると、これらの発振周波数f1、f2の和(f1+f2)の信号と、これらの発振周波数f1、f2の差分(f1−f2)の信号が生成され、これらの信号がローパスフィルタB2に入力される。そして、発振周波数f1、f2の和(f1+f2)の信号と、これらの発振周波数f1、f2の差分(f1−f2)の信号がローパスフィルタB2に入力されると、発振周波数f1、f2の和(f1+f2)の信号が遮断され、発振周波数の差分(f1−f2)が抽出される。そして、ローパスフィルタB2にて抽出された発振周波数の差分(f1−f2)は、周波数/電圧変換回路B3に入力され、周波数/電圧変換回路B3に発振周波数の差分(f1−f2)が電圧に変換される。そして、周波数/電圧変換回路B3にて得られた電圧は、レベルコンバータB4にて電圧のレベルがシフトされた後、バリキャップCg、Cgに制御電圧として入力される。
【0025】
図3は、図1の温度補償型発振器の温度特性の補正方法を示す図である。ここで、図3(a)は、弾性表面波装置W1、W2の温度と周波数偏移との関係を示す図、図3(b)は、電圧制御SAW発振器S3の制御電圧と発振周波数との関係を示す図、図3(c)は、電圧制御SAW発振器S3の補正前と補正後の温度と周波数偏移との関係を示す図である。
【0026】
図3(a)において、弾性表面波装置W1、W2の頂点温度に対して弾性表面波装置W1、W2の温度が上昇すると、弾性表面波装置W1、W2は、頂点温度が同一で曲率が互いに異なる特性を持つことから、弾性表面波装置W1の発振周波数f1、f2は伴に下降し、弾性表面波装置W1、W2の発振周波数f1、f2の差分(f1−f2)が発生する。また、弾性表面波装置W3は弾性表面波装置W2と同じ2次の温度特性を持つものとすると、弾性表面波装置W3の発振周波数f3は、図3(c)に示すように、弾性表面波装置W2の発振周波数f2と同様に下降する。
【0027】
そして、SAW発振器S1、S2の発振周波数f1、f2の差分(f1−f2)が発生すると、発振周波数f1、f2の差分(f1−f2)が周波数/電圧変換回路B3にて電圧に変換される。そして、発振周波数f1、f2の差分(f1−f2)に対応した電圧がレベルコンバータB4を介してバリキャップCg、Cgに入力される。
ここで、バリキャップCg、Cgは、制御電圧が高くなると容量が小さくなる。このため、バリキャップCg、Cgに入力される制御電圧が高くなると、図3(b)に示すように、弾性表面波装置W3の発振周波数f3は上昇する。この結果、図3(c)に示すように、温度上昇による弾性表面波装置W3の発振周波数f3の低下を抑制することができ、温度変化による発振周波数変動を低減させることが可能となる。
【0028】
一方、弾性表面波装置W1、W2の頂点温度に対して弾性表面波装置W1、W2の温度が下降すると、弾性表面波装置W1の発振周波数f1、f2は伴に下降し、弾性表面波装置W1、W2の発振周波数f1、f2の差分(f1−f2)が発生する。また、弾性表面波装置W3は弾性表面波装置W2と同じ2次の温度特性を持つものとすると、弾性表面波装置W3の発振周波数f3は、図3(c)に示すように、弾性表面波装置W2の発振周波数f2と同様に下降する。
【0029】
そして、SAW発振器S1、S2の発振周波数f1、f2の差分(f1−f2)が発生すると、発振周波数f1、f2の差分(f1−f2)が周波数/電圧変換回路B3にて電圧に変換される。そして、発振周波数f1、f2の差分(f1−f2)に対応した電圧がレベルコンバータB4を介してバリキャップCg、Cgに入力される。
そして、発振周波数f1、f2の差分(f1−f2)に対応した電圧がバリキャップCg、Cgに入力されると、弾性表面波装置W3の発振周波数f3は上昇する。この結果、図3(c)に示すように、温度上昇による弾性表面波装置W3の発振周波数f3の低下を抑制することができ、温度変化による発振周波数変動を低減させることが可能となる。
【0030】
なお、インバータN1〜N9、混合器B1、ローパスフィルタB2、周波数/電圧変換回路B3、レベルコンバータB4、抵抗R1、R2、R3およびバリキャップCg、Cgを半導体チップに形成するとともに、これらの素子が形成された半導体チップ上に弾性表面波装置W1、W2、W3を積層するようにしてもよい。
図4は、図1の温度補償型発振器の構成例を示す断面図である。
【0031】
図4において、半導体基板1には素子形成領域2が設けられ、素子形成領域2にはトランジスタ、抵抗、容量などの素子が形成されている。また、素子形成領域2が設けられた半導体基板1上には層間絶縁膜3が形成され、層間絶縁膜3には、素子形成領域2に接続された配線層4が形成されている。また、層間絶縁膜3上には、配線層4に接続されたパッド電極5が形成されている。そして、素子形成領域2に形成された素子および配線層4にて、図1のインバータN1〜N9、混合器B1、ローパスフィルタB2、周波数/電圧変換回路B3、レベルコンバータB4、抵抗R1、R2、R3およびバリキャップCg、Cgなどを構成することができる。なお、半導体基板1の材質としては、例えば、Si、Ge、SiGe、SiC、SiSn、PbS、GaAs、InP、GaP、GaN、ZnSeなどを用いることができる。
【0032】
そして、層間絶縁膜3上には、パッド電極5を避けるようにして、SiO2層6が成膜され、SiO2層6上には、ZnO層7が積層されている。そして、ZnO層7上には、図1の弾性表面波装置W1〜W3にそれぞれ対応して配置されたIDT電極8a〜8cが形成されている。そして、IDT電極8a〜8cは、アルミ配線9を介してパッド電極5に接続されている。なお、アルミ配線9は、IDT電極8a〜8cと一括形成するようにしてもよい。
【0033】
ここで、SiO2層6、ZnO層7およびIDT電極8aにて図1の弾性表面波装置W1を構成し、SiO2層6、ZnO層7およびIDT電極8bにて図1の弾性表面波装置W2を構成し、SiO2層6、ZnO層7およびIDT電極8cにて図1の弾性表面波装置W3を構成することができる。そして、弾性表面波装置W1、W2に対して頂点温度が同一で曲率が互いに異なる特性を持たせるために、図2のゼロ温度係数を持つSiO2層6とZnO層7との膜厚の組み合わせのうち、SiO2層6とZnO層7との膜厚が互いに異なる組み合わせを選択することができる。例えば、弾性表面波装置W1のSiO2層6とZnO層7との膜厚の組み合わせとして、図2のP1点のSiO2層6とZnO層7との膜厚の組み合わせを選択し、弾性表面波装置W2のSiO2層6とZnO層7との膜厚の組み合わせとして、図2のP2点のSiO2層6とZnO層7との膜厚の組み合わせを選択することができる。また、弾性表面波装置W3の頂点温度が弾性表面波装置W1、W2のいずれか一方と同じ特性を持つようにするために、例えば、弾性表面波装置W2と同一のSiO2層6とZnO層7との膜厚の組み合わせを選択することができる。
【0034】
これにより、温度補償型発振器の構成要素のうち弾性表面波装置W1、W2、W3以外の部分を半導体チップに形成することを可能としつつ、弾性表面波装置W1、W2、W3を半導体チップ上に積層することが可能となるとともに、SAW発振器S1、S2の発振周波数の差分に対応した電圧に基づいて電圧制御SAW発振器S3の発振周波数を制御することが可能となる。このため、チップ間またはウェハ間での弾性表面波装置W1、W2、W3の製造バラツキに対応しつつ、温度特性補償を精度よく行うことが可能となるとともに、弾性表面波装置W1、W2、W3および回路部品を集積化することを可能として、実装面積の増大を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態に係る温度補償型発振器の構成を示す回路図。
【図2】SIO2およびZnOの膜厚と一次温度係数との関係を示す図。
【図3】図1の温度補償型発振器の温度特性の補正方法を示す図。
【図4】図1の温度補償型発振器の構成例を示す断面図。
【符号の説明】
【0036】
S1、S2 SAW発振器、S3 電圧制御SAW発振器、W1、W2、W3 弾性表面波装置R1、R2、R3 抵抗、Cg1、Cd1、Cg2、Cd2 バリキャップ、B1 混合器、B2 ローパスフィルタ、B3 周波数/電圧変換回路、B4 レベル変換回路、N1〜N9 インバータ、1 半導体基板、2 素子形成領域、3 層間絶縁膜、4 配線層、5 パッド電極、6 SiO2層、7 ZnO層、8a、8b、8c IDT電極、9 アルミ配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次の温度特性を持つ第1および第2のSAW発振器と、
前記第1および第2のSAW発振器の発振周波数の差分に対応した電圧に基づいて周波数を可変させる電圧制御SAW発振器とを備えることを特徴とする温度補償型発振器。
【請求項2】
前記第1および第2のSAW発振器の発振周波数を混合する混合器と、
前記混合器にて混合された信号から前記第1および第2のSAW発振器の発振周波数の差分を抽出するローパスフィルタと、
前記ローパスフィルタにて抽出された前記第1および第2のSAW発振器の発振周波数の差分を電圧に変換する周波数/電圧変換回路とをさらに備えることを特徴とする請求項1記載の温度補償型発振器。
【請求項3】
前記第1および第2のSAW発振器は、頂点温度が同一で曲率が互いに異なる特性を持ち、前記電圧制御SAW発振器は、温度特性が前記第1または第2のSAW発振器のいずれか一方と同じ特性を持つことを特徴とする請求項1または2記載の温度補償型発振器。
【請求項4】
半導体チップ上に積層され、2次の温度特性を持つ第1、第2および第3の弾性表面波装置と、
前記半導体チップに形成され、前記第1および第2の弾性表面波装置がそれぞれ組み込まれた第1および第2のSAW発振器の発振周波数の差分に対応した電圧に基づいて、前記第3の弾性表面波装置が組み込まれた電圧制御SAW発振器の発振周波数を補正する発振周波数補正部とを備えることを特徴とする温度補償型発振器。
【請求項5】
前記弾性表面波装置は、
前記半導体チップ上に積層された前記薄膜圧電体と、
前記薄膜圧電体上に形成されたIDT電極とを備えることを特徴とする請求項4記載の温度補償型発振器。
【請求項6】
前記第1のSAW発振器は、
前記半導体チップに形成され、前記第1の弾性表面波装置が組み込まれた発振ループを構成する第1の帰還回路を備え、
前記第2のSAW発振器は、
前記半導体チップに形成され、前記第2の弾性表面波装置が組み込まれた発振ループを構成する第2の帰還回路を備え、
前記電圧制御SAW発振器は、
前記半導体チップに形成され、前記第3の弾性表面波装置が組み込まれた発振ループを構成する第3の帰還回路と、
前記電圧制御SAW発振器の発振周波数を制御する可変容量コンデンサとを備え、
前記発振周波数補正部は、
前記第1および第2のSAW発振器の発振周波数を混合する混合器と、
前記混合器にて混合された信号から前記第1および第2のSAW発振器の発振周波数の差分を抽出するローパスフィルタと、
前記ローパスフィルタにて抽出された前記第1および第2のSAW発振器の発振周波数の差分を電圧に変換する周波数/電圧変換回路とを備えることを特徴とする請求項5記載の温度補償型発振器。
【請求項7】
前記第1および第2のSAW発振器は、頂点温度が同一で曲率が互いに異なる特性を持ち、前記電圧制御SAW発振器は、温度特性が前記第1または第2のSAW発振器のいずれか一方と同じ特性を持つことを特徴とする請求項5または6記載の温度補償型発振器。
【請求項8】
前記第1および第2の弾性表面波装置の薄膜圧電体は、ゼロ温度係数を持つ誘電体の組み合わせをそれぞれ有するとともに、前記誘電体の膜厚が互いに異なることを特徴とする請求項7記載の温度補償型発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−67079(P2006−67079A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−245190(P2004−245190)
【出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】