説明

測位装置、位置データの記録方法およびプログラム

【課題】 移動体の移動速度が様々に変化する場合でも、常に適切な間隔で位置データを記録していくことのできる測位装置、位置データの記録方法およびプログラムを提供する。
【解決手段】 移動体に保持されて現在位置の測定が可能な測位手段と、この測位手段による現在位置の測定を所定間隔で行わせる測位制御手段(S1〜S11)と、前記測位手段の測定によって順次取得される一連の位置データのうち一部の位置データの記録を省いて一部の位置データの記録を行う記録制御手段(S12〜S16)とを備え、移動体の移動速度が大きいときには位置データの記録を省く割合が大きくなり、前記移動体の移動速度が小さいときには位置データの記録を省く割合が小さくなるように、前記一連の位置データの記録制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、移動体の現在位置を測定する測位装置、並びに、測定された位置データを記録する記録方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
以前より、移動体の現在位置を測定するとともに、測定された位置データを履歴として記録していく測位装置がある。記録された位置データにより移動軌跡を表わすことができる。
【0003】
また、本願発明に関連する技術として、特許文献1,2には、測位衛星(例えばGPS衛星:全地球測位システム衛星)を利用して移動体の現在位置の測定を行う装置において、移動体の移動速度や移動距離に応じて測位を実行する時間間隔を自動的に変更する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−172109号公報
【特許文献2】特開2005−250853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
測位装置において、一定時間ごとに測位を行って測定結果の一連の位置データを全て記録していった場合、移動体の速度が大きくなると、一連の位置データに対応する一連の地点間の距離は大きく開く。また、移動体の速度が小さくなると、一連の位置データに対応する一連の地点間の距離は狭まる。
【0006】
位置データは、細かい間隔で記録されると、移動軌跡を詳細に表わすことができる反面、位置データの記録量が膨大になる。一方、粗い間隔で記録されると、位置データの記録量は少なくなる反面、移動軌跡の詳細さが失われる。
【0007】
そのため、測定された一連の位置データを記録していく場合に、移動体の移動速度が大きく変化した場合でも、位置データは適切な間隔で記録されていくことが好ましい。
【0008】
しかしながら、上記従来の測位装置のように、移動速度に応じて測位を行う時間間隔を変更したのでは、例えば、移動体の速度が小さくなって測位の時間間隔が長く設定変更された状態で、移動体の速度が急激に大きく変化した場合、次の測位が行われるまで移動速度が大きくなったことを確認することができないため、その間に記録される位置データの間隔が大きく開いてしまうという課題が生じる。
【0009】
この発明の目的は、移動体の移動速度が様々に変化する場合でも、位置データの記録を適切な間隔で行っていくことのできる測位装置、位置データの記録方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、測位装置において、
移動体に保持されて現在位置の測定が可能な測位手段と、
この測位手段による現在位置の測定を所定間隔で行わせる測位制御手段と、
前記測位手段の測定によって順次取得される一連の位置データのうち一部の位置データの記録を省いて一部の位置データの記録を行う記録制御手段と、
を備え、
前記記録制御手段は、
前記移動体の移動速度が大きいときには位置データの記録を省く割合が大きくなり、前記移動体の移動速度が小さいときには位置データの記録を省く割合が小さくなるように、前記一連の位置データの記録制御を行うことを特徴としている。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の測位装置において、
前回記録された位置データに対応する第1地点から、次に記録するか否かを振り分ける対象の位置データに対応する第2地点までの移動距離を算出する移動距離算出手段を備え、
前記記録制御手段は、
前記移動距離算出手段の算出結果に基づき、前記移動距離が所定量を超えている場合に前記対象の位置データを記録し、所定量を超えていない場合に前記対象の位置データの記録を省くことを特徴としている。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の測位装置において、
前記一連の位置データに基づき前記移動体の移動速度を算出する速度算出手段を有し、
前記記録制御手段は、
前記速度算出手段の算出結果に応じて前記一連の位置データのうち記録を省く位置データの割合を変化させることを特徴としている。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の測位装置において、
前記移動体の状態を検出する状態センサを備え、
前記記録制御手段は、
前記状態センサの検出内容に基づき、前記移動体の状態が移動速度の小さな状態であれば記録の省かれる位置データが少なくなり、前記移動体の状態が移動速度の大きな状態であれば記録の省かれる位置データが多くなるように、前記移動体の状態に応じて前記一連の位置データのうち記録を省く位置データの割合を変化させることを特徴としている。
【0014】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の測位装置において、
前記状態センサは、前記移動体の加速度を検出する加速度センサを有し、この加速度センサの出力に基づいて少なくとも歩行状態と車両による移動状態とを検出することを特徴としている。
【0015】
請求項6記載の発明は、請求項1記載の測位装置において、
前記測位手段は、測位衛星から信号を受信して現在位置を測定する手段を備え、
前記測位制御手段は、
前記測位衛星の信号が受信可能な場合に、前記移動体の移動速度に因らずにほぼ一定の時間間隔で前記測位手段に現在位置の測定を行わせることを特徴としている。
【0016】
請求項7記載の発明は、
測位手段により移動体の現在位置を測定させて、この測定により取得される位置データを記録手段へ記録する位置データの記録方法であって、
前記測位手段による現在位置の測定を所定間隔で行わせる測位制御ステップと、
前記測位手段の測定によって順次取得される一連の位置データのうち一部の位置データの記録を省いて一部の位置データを前記記録手段へ記録する記録制御ステップと、
を含み、
前記記録制御ステップは、
前記移動体の移動速度が大きいときには位置データの記録を省く割合が大きくなり、前記移動体の移動速度が小さいときには位置データの記録を省く割合が小さくなるように、前記一連の位置データの記録を行うことを特徴としている。
【0017】
請求項8記載の発明は、
測位手段に移動体の現在位置を測定させるとともに、この測定により取得される位置データが供給されるコンピュータに、
前記測位手段による現在位置の測定を所定間隔で行わせる測位制御機能と、
前記測位手段の測定によって順次取得される一連の位置データのうち一部の位置データの記録を省いて一部の位置データを記録する記録制御機能と、
を実現させるプログラムであり、
前記記録制御機能は、
前記移動体の移動速度が大きいときには位置データの記録を省く割合が大きくなり、前記移動体の移動速度が小さいときには位置データの記録を省く割合が小さくなるように、前記一連の位置データの記録を行わせることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明に従うと、測位手段による測位が所定間隔で行われる一方、移動体の移動速度の大小に合わせて位置データの記録を省く割合が変化するように位置データの記録制御がおきなわれるので、移動体の移動速度が変化する場合でも、適切な間隔で位置データを記録していくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態のナビゲーション装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】高速移動中における測位点と位置データの記録点とを示す説明図である。
【図3】低速移動中における測位点と位置データの記録点とを示す説明図である。
【図4】CPUにより実行される測位記録処理の第1例の制御手順を示すフローチャートである。
【図5】測位記録処理の第2例の制御手順を示すフローチャートである。
【図6】測位記録処理の第3例の制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1には、本発明の測位装置の実施形態であるナビゲーション装置の全体構成を表わしたブロック図を示す。
【0022】
この実施形態のナビゲーション装置1は、GPS(全地球測位システム)を利用した絶対座標での現在位置の測定と、自律航法センサ(加速度センサや方位センサなど)を利用した相対的な位置変化の検出に基づく現在位置の測定とを行いつつ、測定により取得される位置データを履歴データとして記録したり表示出力したりする装置である。このナビゲーション装置1は、例えば、ユーザの体に装着して測位処理を行うことが可能な装置である。
【0023】
このナビゲーション装置1は、装置の全体的な制御を行うCPU(中央演算処理装置)10と、CPU10に作業用のメモリ空間を提供するRAM(Random Access Memory)11と、CPU10が実行する制御プログラムや制御データが格納されたROM12と、GPS衛星からの信号を受信するGPS受信アンテナ13と、GPS衛星からの信号の復調および解読を行うGPS受信器14と、地磁気を検出する3軸地磁気センサ15と、加速度を検出する3軸加速度センサ16と、3軸地磁気センサ15および3軸加速度センサ16の出力を受けて相対的な移動量と移動方向の演算を行う自律航法制御処理部17と、自律航法制御処理部17の演算結果から求められた位置データをGPSを利用した測位結果に基づき補正する自律航法誤差補正処理部18と、絶対座標に対応させて道路や通路の情報が蓄積された地図データベース19と、測定された位置データが記録・蓄積される履歴データ記録部20と、測位結果や様々な情報の表示を行う表示部21と、各部の動作電圧を供給する電源22等を備えている。この実施形態において、CPU10、RAM11、ROM12により、ROM12内の制御プログラムを実行するコンピュータが構成され、GPS受信アンテナ13およびGPS受信器14、並びに、3軸地磁気センサ15と3軸加速度センサ16および自律航法制御処理部17により測位手段が構成される。
【0024】
GPS受信器14は、CPU10からの動作指令に基づいて、GPS受信アンテナ13を介して受信される信号の復調処理を行って、GPS衛星から送られてくる各種の送信データをCPU10へ送る。CPU10は、これらの送信データに基づいて所定の測位演算を行うことで現在位置を測定して現在地点を絶対座標で表わした位置データを求めることができる。
【0025】
3軸地磁気センサ15は、互いに直交する3軸方向の地磁気の大きさをそれぞれ検出するセンサである。
【0026】
3軸加速度センサ16は、互いに直交する3軸方向の加速度の大きさをそれぞれ検出するセンサである。3軸加速度センサ16は、ユーザの移動状態を検出する状態センサとしても機能し、その出力は、ナビゲーション装置1を装着したユーザの動作状態、例えば、歩行、ランニング、電車移動の状態などを識別したり、歩行、ランニング時に上下動の検出から歩数を認識するのに使用される。
【0027】
自律航法制御処理部17は、CPU10の演算処理を補助するための演算装置である。自律航法制御処理部17は、3軸地磁気センサ15と3軸加速度センサ16の出力をそれぞれ所定周波数でサンプリングした検出データをCPU10から受け取って、これらの検出データに基づき、ユーザの移動状態(例えば歩行動作、ランニング動作、電車移動中など)の識別、ならびに、ユーザの移動量と進行方向とを連続的に計測していくことで、ユーザの現在位置の位置データを算出するものである。
【0028】
具体的には、自律航法制御処理部17は、3軸加速度データの検出データに基づきユーザの上下動の加速度パターンとその大きさとから、ユーザが歩行中であるのかランニング中であるのかを識別する。また、3軸加速度センサ16の検出データに基づき、歩行時やランニング時には検出されることのない、ほぼ一定の加速度が段階的に連続して現れる加速度パターンの認識により、ユーザが電車移動中であることを識別する。そして、これらの動作状態をCPU10に伝えるようになっている。
【0029】
また、自律航法制御処理部17は、ユーザが歩行中またはランニング中であると識別されるときで、且つ、GPS衛星からの信号が受信できない区間にあるときに、ユーザの上下動の加速度パターンから歩数をカウントし、このカウント値と歩幅長とを掛け合わせることで、ユーザの移動量を算出する。歩幅長は、予めユーザにより歩行時のものとランニング時のものとを入力させて設定しておく。さらに、自律航法制御処理部17は、3軸加速度センサ16に現れる歩行動作特有の加速度変化から移動方向を作出する。具体的には、ユーザの胴体は左足を踏み出すときに前方やや左側に大きく加速し、右足を踏み出すときに前方やや右側に大きく加速する。このとき、装置がユーザの胴体に装着されていると、装置も同様の加速度運動を行うので、この加速度変化が3軸加速度センサの水平方向の成分に現れる。そして、このように算出された移動量および進行方向から表わされるベクトルを積算していくことでユーザの現在位置を表わす位置データを求めるようになっている。
【0030】
自律航法誤差補正処理部18は、CPU10の演算処理を補助するための演算装置である。自律航法誤差補正処理部18は、GPS衛星の信号を受信できない区間で自律航法制御処理部17により求められ記録された一連の位置データを、その後、GPS衛星の信号が受信できて位置データに誤差があることが分かった場合に、この誤差に基づき記録されている一連の位置データの各々の誤差を推測して、この誤差を補正するものである。
【0031】
履歴データ記録部20は、例えば不揮発性の記憶手段(例えばフラッシュメモリなど)から構成され、GPS受信器14からの信号に基づき算出された位置データや、自律航法制御処理部17の演算により得られた位置データが、適宜な間隔で記録されていくものである。位置データは、例えば、ユーザが移動した経路に沿って、時刻情報とともに記録されていく。
【0032】
ROM12には、測位を行いながら適宜な間隔で位置データを履歴データ記録部20へ記録していく測位記録処理のプログラムが格納されている。このプログラムは、ROM12に格納するほか、例えば、データ読取装置を介してCPU10が読み取り可能な、光ディスク等の可搬型記憶媒体、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリに格納しておくことが可能である。また、このようなプログラムがキャリアウェーブ(搬送波)を媒体として通信回線を介してナビゲーション装置1にダウンロードされる形態を適用することもできる。
【0033】
次に、上記構成のナビゲーション装置1により実行される測位記録処理について説明する。
【0034】
図2と図3には、測位記録処理における測位点と位置データの記録点とを示す説明図である。図2は低速移動中のもの、図3は高速移動中のものであり、図中、黒丸と白丸により測位がなされた測位点を示し、黒丸により位置データが記録される記録点を示している。
【0035】
この実施形態の測位記録処理は、GPS受信器14を用いた測位あるいは自律航法制御処理部17による測位を所定間隔で行うとともに、測位によって求められる一連の位置データの各々に対して、履歴データ記録部20への記録を行うか、或いは、記録を省くかの振り分けを行うものである。
【0036】
位置データの記録を行うか否かの振り分けは、ユーザの移動速度が変化しても、履歴データ記録部20に記録される位置データの間隔が詰まりすぎたり広くなりすぎたりしないように適宜制御される。例えば、図2に示すように、高速に移動している際には、測位の行われる地点PR,PR…の距離間隔は広くなるので、これらの地点PR,PR…の全て或いは大部分の位置データを履歴データ記録部20へ記録する。一方、図3に示すように、低速に移動している際には、測位の行われる地点PR,PM…の距離間隔が狭くなるので、記録を省く地点PM…が多くなるように振り分けの制御が行われて、適宜な間隔で地点PR…の位置データを履歴データ記録部20へ記録する。このようにして、高速に移動しているとき(図2)と低速に移動しているとき(図3)とで、それぞれ同様の間隔で位置データが記録されるようになっている。
【0037】
以下、上記のような位置データの記録の振り分けを実現する測位記録処理の第1例〜第3例の詳細な手順についてフローチャートを参照しながら説明する。
【0038】
[測位記録処理の第1例]
図4には、CPU10により実行される測位記録処理の第1例のフローチャートを示す。
【0039】
この測位記録処理は、ナビゲーション装置1が測位モードに移行することで開始される。測位記録処理が開始されると、CPU10は、GPS受信器14に受信処理を実行させて(ステップS1)、GPS衛星からの電波が受信できたか否か判別する(ステップS2)。その結果、受信できていなければ、自律航法用の基準点が登録されているか否か判別する(ステップS3)。自律航法用の基準点とは、自律航法制御処理部17による測位の開始地点を表わす位置データのことであり、この基準点の位置データに自律航法制御処理部17が算出する移動量および進行方向からなる移動ベクトルを積算していくことで、各地点の位置データが求められるようになっている。
【0040】
ステップS3の判別処理の結果、未だ測位記録処理を開始した間際で、基準点の設定が無い場合には、現在位置の座標データは不明なので、例えば座標データ“(0,0)”など仮の基準点を登録する(ステップS4)。一方、基準点(仮の基準点を含む)の設定がある場合には、ステップS9〜S11の自律航法による測位処理へ移行する。
【0041】
自律航法による測位処理へ移行したら、先ず、3軸加速度センサ16と3軸地磁気センサ15の一定時間分のサンプリングデータをそれぞれ自律航法制御処理部17へ供給し(ステップS9,S10)、自律航法制御処理部17に進行方向と移動量の演算、ならびに、これらからなる移動ベクトルの積算による現在地点の位置データを算出させる(ステップS11)。
【0042】
一方、ステップS2の判別処理の結果、GPS電波が受信できていれば、先ず、基準点として仮基準点の登録がなされているか否かを判別し(ステップS5)、否であればGPS受信器14の受信データを用いて測位演算を行って現在地点の位置データを求める(ステップS8)。一方、仮基準点の登録がなされていれば、測位演算を行って現在地点の位置データを求めた後に(ステップS6)、この位置データに基づき仮基準点の座標データを真正なものに修正した上で基準点として確定させる(ステップS7)。
【0043】
そして、ステップS11、或いは、ステップS6,S8の何れかで位置データが求められたら、ステップS12〜S16の記録制御の処理に移行する。記録制御の処理に移行すると、CPU10は、先ず、前回測位が行われた地点からの移動量を算出する(ステップS12:移動距離算出手段)。具体的には、前回の測位結果の位置データと今回の測位結果の位置データとの差を計算してこれを移動量とする。この演算を行う必要があるため、測位で得られた位置データのうち直近の1回分は、履歴データ記録部20へ記録するか否かに拘わらずにRAM11に保存しておく。
【0044】
続いて、この移動量を前回記録点からの移動量へ加算して、前回の記録点から今回の測位点までの移動量を算出する(ステップS13)。ここで、前回記録点とは、位置データを履歴データ記録部20へ記録した直近の地点のことであり、前回記録点からの移動量とは、RAM11中に設定された変数に入力される値であり、位置データが得られるたびにこの演算処理で使用されるものである。
【0045】
そして、前回記録点から今回測位点までの移動量が求められたら、この移動量が所定の閾値を超えたか否か判別し(ステップS14)、超えていなければ、今回の測位により得られた位置データは履歴データ記録部20への記録を省くものとして、そのままステップS1に戻る。
【0046】
一方、前回記録点からの移動量が所定の閾値を超えていれば、今回の測位により得られた位置データは記録すべきと判断して、この位置データを履歴データ記録部20へ記録する(ステップS15)。そして、位置データを新たに記録したので前回記録点からの移動量を表わす変数をクリアして(ステップS16)、ステップS1に戻る。
【0047】
つまり、この測位記録処理の第1例によれば、GPS衛星の電波が届く区域では、GPS信号の受信処理(ステップS1)と測位演算処理(ステップS6又はS8)とを通るループ処理によって、GPSを利用した測位が所定の時間間隔、すなわち、連続的に処理可能な最短の周期で繰り返し行われる。
【0048】
また、GPS衛星の電波が届かない区域では、自律航法の測位処理(ステップS9〜S11)を通るループ処理によって、3軸地磁気センサ15と3軸加速度センサ16の出力に基づく自律航法制御処理部17による測位処理が所定の時間間隔、すなわち連続的に測位処理可能な最短の周期で繰り返し行われる。
【0049】
そして、これらのループ処理中、ステップS12〜S16の位置データの記録制御の処理が行われることで、ユーザの移動速度が速いときには、前回記録点から今回測位点までの移動量が早く大きくなることから、ステップS14の判別処理で多くの割合で「一定移動量あり(閾値を超えた)」と判別されて、位置データが履歴データ記録部20へ記録されることになる。一方、ユーザの移動速度が遅いときには、前回記録点から今回測位点までの移動量が直ぐに大きくならないことから、ステップS14の判別処理で多くの割合で「一定移動量なし(閾値を超えていない)」と判別されて、位置データの記録が省かれることになる。そして、このような記録制御の処理によって、ユーザの移動速度が速いときでも遅いときでも適宜な間隔で位置データが記録されていくようになっている。
【0050】
[測位記録処理の第2例]
図5には、CPU10により実行される測位記録処理の第2例のフローチャートを示す。
【0051】
この測位記録処理の第2例において、ステップS1〜S11の測位に関わる処理は、図4の第1例と同一であり、ステップS21〜S26における位置データの記録制御の処理のみが第1例と異なるものである。従って、同一の処理ステップについては説明を省略する。
【0052】
この測位記録処理の第2例においては、ステップS11、或いは、ステップS6,S8の何れかで位置データが求められたら、ステップS21〜S26の記録制御の処理に移行する。記録制御の処理に移行すると、CPU10は、先ず、前記測位が行われた地点の位置データと今回測位が行われた地点の位置データおよびその間の時間間隔とから、この間の移動速度を算出する(ステップS21:移動速度算出手段)。この移動速度の演算のため、測位で得られた位置データのうち直近の1回分は、履歴データ記録部20へ記録するか否かに拘わらず、RAM11に保存しておく。
【0053】
そして、移動速度を所定の範囲で大中小に分類して何れの範囲に属するか判別する(ステップS22)。その結果、移動速度が大の範囲に属していれば、そのまま今回の測位により得られた位置データを履歴データ記録部20へ記録する(ステップS25)。さらに、RAM11中に設定された前回の位置データの記録時点からの測位回数(図5では「前回記録からの回数」と記す)が示される変数をクリアして(ステップS26)、ステップS1に戻る。上記の前回記録からの回数は、測位が行われるごとに回数の値が加算され、位置データの記録が行われるとその回数の値がクリアされるようになっている。
【0054】
一方、ステップS22の判別の結果、移動速度が中の範囲に属していれば、RAM11中の変数の値の確認により、前回の位置データの記録時点からの測位回数が2回目以上であるか否かを判別する。そして、2回目以上であればステップS25,S26へと移行して位置データの記録と変数のクリアとを行ってステップS1に戻るが、2回目より少なければ位置データの記録は省いてそのままステップS1に戻る。
【0055】
また、ステップS22の判別の結果、移動速度が小の範囲に属していれば、RAM11中の変数の値の確認により、前回の位置データの記録時点からの測位回数が5回目以上であるか否かを判別する。そして、5回目以上であればステップS25,S26へと移行して位置データの記録と変数のクリアとを行ってステップS1に戻るが、5回目より少なければ位置データの記録は省いてそのままステップS1に戻る。
【0056】
つまり、この測位記録処理の第2例によれば、GPSによる測位や自律航法による測位が所定間隔で行われるのに伴って、ユーザの移動速度が算出され、移動速度が小さければ小さな割合で位置データが記録され、移動速度が大きければ大きな割合で位置データが記録され、移動速度が中程度であれば中程度の割合で位置データが記録される。それにより、ユーザの移動速度が速いときでも遅いときでも適宜な間隔で位置データが記録されるようになっている。
【0057】
[測位記録処理の第3例]
図6には、CPU10により実行される測位記録処理の第3例のフローチャートを示す。
【0058】
この測位記録処理の第3例は、GPS衛星の信号が受信可能な区域においても、3軸地磁気センサ15と3軸加速度センサ16との出力に基づきユーザの移動状態を識別する処理を行って、この移動状態の識別結果に基づき位置データの記録の振り分けを行うようにしたものである。
【0059】
測位記録処理が開始されると、先ず、CPU10は、GPS受信器14に受信処理を実行させて(ステップS31)、GPS衛星からの電波が受信できたか否か判別する(ステップS32)。その結果、電波の受信がなければ、ステップS31に戻って、受信できるまで受信処理を繰り返す。
【0060】
一方、電波が受信されていれば、GPS受信器14の受信データに基づき測位演算を行って現在地点の位置データを求める(ステップS33)。続いて、3軸加速度センサ16と3軸地磁気センサ15の一定時間分のサンプリングデータをそれぞれ自律航法制御処理部17へ供給し(ステップS34,S35)、自律航法制御処理部17により移動状態の識別を行わせる(ステップS36)。
【0061】
そして、自律航法制御処理部17から移動状態の識別結果を入力して、この識別結果に基づく分岐処理を行う(ステップS37)。すなわち、移動状態が電車移動と判別されれば、そのままステップS33の測位演算の結果により得られた位置データを履歴データ記録部20へ記録し(ステップS40)、さらに、RAM11中に設定された前回の位置データの記録時点からの測位回数(図6では「前回記録からの回数」と記す)が示される変数をクリアして(ステップS41)、ステップS1に戻る。
【0062】
一方、ステップS37の判別の結果、移動状態がランニングであると判別されたら、RAM11中の変数の値の確認により、前回の位置データの記録時点からの測位回数が5回目以上であるか否かを判別する。そして、5回目以上であればステップS40,S41へと移行して位置データの記録と変数のクリアとを行ってステップS1に戻るが、5回目より少なければ位置データの記録は省いてそのままステップS1に戻る。
【0063】
また、ステップS37の判別の結果、移動状態が歩行であると判別されたら、RAM11中の変数の値の確認により、前回の位置データの記録時点からの測位回数が20回目以上であるか否かを判別する。そして、20回目以上であればステップS40,S41へと移行して位置データの記録と変数のクリアとを行ってステップS1に戻るが、20回目より少なければ位置データの記録は省いてそのままステップS1に戻る。
【0064】
つまり、この測位記録処理の第3例によれば、GPSによる測位が行われるたびに、自律航法制御処理部17の演算処理によってユーザの移動状態が識別され、移動速度の大きな電車移動の際には大きな割合で位置データが記録され、移動速度が中程度のランニング移動の際には中程度の割合で位置データが記録され、移動速度が小さな歩行の際には小さな割合で位置データが記録される。それにより、ユーザの移動速度が状態変化により大きく変わったときでも適宜な間隔で位置データが記録されていくようになっている。
【0065】
以上のように、この実施形態のナビゲーション装置1、その位置データの記録方法、および測位記録処理のプログラムによれば、現在位置の測位を所定間隔で行う一方、移動速度が大きいときには位置データの記録を省く割合が小さくなり、移動速度が小さいときには位置データの記録を省く割合が大きくなるように、位置データを履歴データ記録部20へ記録する制御が行われるので、ユーザの移動速度が大きく変化した場合でも、常に、適切な距離間隔で位置データが記録されていくことになる。従って、ユーザの移動速度がどのように変化しても、位置データの記録が細かすぎて履歴データ記録部20の記憶容量を圧迫したり、位置データの記録が粗すぎて移動経路をおおまかにしか確認できないといった不都合を回避することができる。
【0066】
具体的には、図4に示した測位記録処理の第1例によれば、前回、位置データを記録した地点からの移動量に応じて、次に記録する位置データを判別するので、上記のような適宜な距離間隔での位置データの記録を確実に実現することができる。
【0067】
また、図5の測位記録処理の第2例によれば、移動速度を算出して、この移動速度に応じて位置データの記録を省く割合を変化させるようにしたので、一連の位置データが詰まりすぎたり開きすぎたりしない適宜な距離間隔になるように、これら一連の位置データの記録制御を実現することができる。また、位置データを記録する割合を、1回の測位ずつ、2回の測位ずつ、5回の測位ずつなどと、移動速度に応じて段階的に変化させるようにすることで、位置データの記録の割合が変化しない小さな範囲の速度変化があった場合に、この速度変化が位置データの距離間隔に反映されて記録されることとなる。それゆえ、履歴データ記録部20に記録された一連の位置データから小さな速度変化を読み取ることが可能となる。
【0068】
また、図6の測位記録処理の第3例によれば、移動状態を識別して、この移動状態に応じて位置データの記録を省く割合を変化させるようにしたので、この方法によっても一連の位置データが詰まりすぎたり開きすぎたりしない適宜な距離間隔になるように、これら一連の位置データの記録制御を実現することができる。また、移動状態に応じて、位置データを記録する割合を段階的に変化させているので、同じ移動状態中の小さな範囲の速度変化を、一連の位置データから読み取ることも可能となる。
【0069】
また、3軸加速度センサの出力に基づき歩行状態と電車移動中とを識別しているので、測位された位置データの間隔が最も大きく変化する2つの移動状態に対して、位置データを記録する割合を適宜変化させて、適宜な間隔で一連の位置データが記録されるようになっている。なお、3軸加速度センサの出力パターンをより詳細に認識処理させることで、自転車での走行状態や自動車での走行状態などを識別し、これらの識別に応じて位置データの記録割合を適宜調整することもできる。
【0070】
また、本実施形態のナビゲーション装置1によれば、GPS衛星の信号を受信できる区域においては、常にほぼ一定の時間間隔でGPS衛星からの信号を受信して測位を繰り返すようになっているので、例えば、測位中にGPS衛星からの時刻情報を受けて内部時計の精度を常に高く保つことができる。そして、それにより、測位の精度を常に一定の高さに保つことが可能になっている。ちなみに、GPSによる測位の時間間隔を長短に変化させた場合、測位間隔が長く設定されたときに、内部時計の誤差が僅かに大きくなって、この内部時計の僅かな誤差が次の位置測定の精度に大きく影響し、測位の精度を一定に保つことが困難になる。しかしながら、本実施形態のナビゲーション装置1は、このような困難を解消して測位の精度を一定に保つことができる。
【0071】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。例えば、上記実施形態では、測位処理を行う間隔として、測位処理を繰り返し実行できる最短周期とした例を示したが、例えば、図4〜図6のフローチャートのGPS受信処理(ステップS1,S31)の前段に所定時間(例えば数十秒〜数分など)を待機する処理を追加することで、設定された時間間隔で測位処理が実行されるように構成することもできる。
【0072】
また、上記実施形態では、測位処理によって得られた位置データを即時に記録又は記録を省くか振り分けてその処理を実行する例を示したが、一旦、測位結果である一連の位置データをバッファに溜めておき、その後、バッチ処理によってバッファに溜められた複数の位置データに対して記録又は記録を省くか振り分けてその処理を実行していくようにしても良い。振り分けの方法は、図4又は図5のフローチャートと同様の処理により実現可能である。また、ユーザの移動状態を識別して位置データの記録の振り分けに利用する図6のフローチャートの方式を採用する場合には、位置データをバッファに溜めるのと同時にそのときに識別された移動状態も位置データと対応づけて記憶させておき、ここで記憶した移動状態に基づいて位置データを記録する割合を変化させるようにすれば良い。
【0073】
また、上記の測位記録処理の第2例(図5)では、ユーザの移動速度を、移動速度を求める対象地点の位置データ、その一つ手前の測位で得た位置データ、および、これら2つの測位の時間間隔に基づき算出した例を示したが、移動速度を直接的に計測できるセンサを有している場合には、このセンサの出力に基づき移動速度を求めるようにしても良い。
【0074】
その他、実施形態で示した細部の構成および細部の制御手順は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 ナビゲーション装置(測位装置)
10 CPU(測位制御手段、記録制御手段)
11 RAM
12 ROM
13 GPS受信アンテナ
14 GPS受信器
15 3軸地磁気センサ
16 3軸加速度センサ
17 自律航法制御処理部
20 履歴データ記憶部(記録手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に保持されて現在位置の測定が可能な測位手段と、
この測位手段による現在位置の測定を所定間隔で行わせる測位制御手段と、
前記測位手段の測定によって順次取得される一連の位置データのうち一部の位置データの記録を省いて一部の位置データの記録を行う記録制御手段と、
を備え、
前記記録制御手段は、
前記移動体の移動速度が大きいときには位置データの記録を省く割合が大きくなり、前記移動体の移動速度が小さいときには位置データの記録を省く割合が小さくなるように、前記一連の位置データの記録制御を行うことを特徴とする測位装置。
【請求項2】
前回記録された位置データに対応する第1地点から、次に記録するか否かを振り分ける対象の位置データに対応する第2地点までの移動距離を算出する移動距離算出手段を備え、
前記記録制御手段は、
前記移動距離算出手段の算出結果に基づき、前記移動距離が所定量を超えている場合に前記対象の位置データを記録し、所定量を超えていない場合に前記対象の位置データの記録を省くことを特徴とする請求項1記載の測位装置。
【請求項3】
前記一連の位置データに基づき前記移動体の移動速度を算出する速度算出手段を有し、
前記記録制御手段は、
前記速度算出手段の算出結果に応じて前記一連の位置データのうち記録を省く位置データの割合を変化させることを特徴とする請求項1記載の測位装置。
【請求項4】
前記移動体の状態を検出する状態センサを備え、
前記記録制御手段は、
前記状態センサの検出内容に基づき、前記移動体の状態が移動速度の小さな状態であれば記録の省かれる位置データが少なくなり、前記移動体の状態が移動速度の大きな状態であれば記録の省かれる位置データが多くなるように、前記移動体の状態に応じて前記一連の位置データのうち記録を省く位置データの割合を変化させることを特徴とする請求項1記載の測位装置。
【請求項5】
前記状態センサは、前記移動体の加速度を検出する加速度センサを有し、この加速度センサの出力に基づいて少なくとも歩行状態と車両による移動状態とを検出することを特徴とする請求項4記載の測位装置。
【請求項6】
前記測位手段は、測位衛星から信号を受信して現在位置を測定する手段を備え、
前記測位制御手段は、
前記測位衛星の信号が受信可能な場合に、前記移動体の移動速度に因らずほぼ一定の時間間隔で前記測位手段に現在位置の測定を行わせることを特徴とする請求項1記載の測位装置。
【請求項7】
測位手段により移動体の現在位置を測定させて、この測定により取得される位置データを記録手段へ記録する位置データの記録方法であって、
前記測位手段による現在位置の測定を所定間隔で行わせる測位制御ステップと、
前記測位手段の測定によって順次取得される一連の位置データのうち一部の位置データの記録を省いて一部の位置データを前記記録手段へ記録する記録制御ステップと、
を含み、
前記記録制御ステップは、
前記移動体の移動速度が大きいときには位置データの記録を省く割合が大きくなり、前記移動体の移動速度が小さいときには位置データの記録を省く割合が小さくなるように、前記一連の位置データの記録を行うことを特徴とする位置データの記録方法。
【請求項8】
測位手段に移動体の現在位置を測定させるとともに、この測定により取得される位置データが供給されるコンピュータに、
前記測位手段による現在位置の測定を所定間隔で行わせる測位制御機能と、
前記測位手段の測定によって順次取得される一連の位置データのうち一部の位置データの記録を省いて一部の位置データを記録する記録制御機能と、
を実現させるプログラムであり、
前記記録制御機能は、
前記移動体の移動速度が大きいときには位置データの記録を省く割合が大きくなり、前記移動体の移動速度が小さいときには位置データの記録を省く割合が小さくなるように、前記一連の位置データの記録を行わせることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−117943(P2011−117943A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236961(P2010−236961)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】