説明

測定装置、露光装置およびデバイス製造方法

【課題】被検光学系の透過率分布をより高精度に測定する。
【解決手段】測定装置100は、被検光学系6を透過しない基準光を形成するための第1球面ミラー13と、被検光学系6を透過した測定光を形成するための第2球面ミラー7と、第1球面ミラー6および第2球面ミラー7の反射率分布を測定するための測定ユニットと、基準光の強度分布、測定光の強度分布、第1球面ミラーの反射率分布および第2球面ミラーの反射率分布に基づいて被検光学系6の瞳面における透過率を演算する演算部90とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検光学系の透過率分布を測定する測定装置、それが組み込まれた露光装置、および、該露光装置を利用してデバイスを製造するデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図11は、被検光学系の透過率分布を測定するための測定装置の構成を示す図である。まず、基準光の強度分布を測定する方法を説明する。集光レンズ5と被検光学系6との間に、基準光を形成するためのRSミラー(第1球面ミラー)13を配置される。光源1から射出された光束は、ハーフミラー2で反射され、ビームエキスパンダ12、ミラー31、32を介して集光レンズ5に至る。集光レンズ5から出射されて、RSミラー13で反射された光束は、ハーフミラー2を透過し、結像光学系41を介して撮像センサ9の撮像面に基準光強度分布Irsa(x,y)を形成する。
【0003】
次に、測定光の強度分布を測定する方法を説明する。被検光学系6を透過した光束は、測定光を形成するためのRSミラー(第2球面ミラー)7で反射される。RSミラー7で反射された光束は、ハーフミラー2を透過して、結像光学系41を介して撮像センサ9の撮像面に測定光強度分布Irsb(x,y)を形成する。
【0004】
基準光強度分布Irsa(x,y)および測定光強度分布Irsb(x,y)に基づいて、被検光学系6の透過率分布が演算される。ここで、入射光強度をI0、測定装置のみの透過率分布をTsys(x,y)、RSミラー13の反射率をRrsaとすると、基準光強度分布Irsa(x,y)は、次の式で表される。
【0005】
Irsa(x,y) = Tsys(x,y) × Rrsa×I0
同様に、被検光学系6の透過率分布をTlens(x,y)、RSミラー7の反射率をRrsbとすると、RSミラー7からの反射光である測定光強度Irsb(x,y)は、次の式で表される。
【0006】
Irsb(x,y) = Tsys(x,y)×(Tlens(x,y))×Rrsb×I0
よって、被検光学系6の透過率分布は、次の式で表される。
【0007】
Tlens(x,y)
= (Rrsa/Rrsb)1/2 × (Irsa(x,y)/Irsb(x,y))1/2
= Const × (Irsb(x,y)/Irsa(x,y))1/2
ここで、Rrsa、Rrsbは、事前に反射率測定器等によって測定される。
【0008】
また、他にも被検光学系の透過率を測定する方法が知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−158828号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来は、RSミラー13の反射率もRSミラー7の反射率も一様であると仮定して被検光学系の透過率分布が計算されていた。しかしながら、2つのRSミラーの反射率が一様でない場合(即ち、反射率に不均一な分布がある場合)には、透過率分布の測定結果に誤差が生じる。
【0010】
本発明は、上記の課題認識を契機としてなされたものであり、例えば、被検光学系の透過率分布をより高精度に測定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の側面は、被検光学系の透過率を測定する測定装置に係り、前記測定装置は、前記被検光学系を透過しない基準光を形成するための第1球面ミラーと、前記被検光学系を透過した測定光を形成するための第2球面ミラーと、前記第1球面ミラーおよび前記第2球面ミラーの反射率分布を測定するための測定ユニットと、前記基準光の強度分布、前記測定光の強度分布、前記第1球面ミラーの反射率分布および前記第2球面ミラーの反射率分布に基づいて前記被検光学系の瞳面における透過率を演算する演算部とを備える。
【0012】
本発明の第2の側面は、原版のパターンを投影光学系によって基板に投影して該基板を露光する露光装置に係り、前記露光装置は、前記投影光学系を透過しない基準光を形成するための第1球面ミラーと、前記投影光学系を透過した測定光を形成するための第2球面ミラーと、前記第1球面ミラーおよび前記第2球面ミラーの反射率分布を測定するための測定ユニットと、前記基準光の強度分布、前記測定光の強度分布、前記第1球面ミラーの反射率分布および前記第2球面ミラーの反射率分布に基づいて前記投影光学系の瞳面における透過率を演算する演算部とを備える。
【0013】
本発明の第3の側面は、デバイス製造方法に係り、前記デバイス製造方法は、上記の露光装置によって基板を露光する工程と、該基板を現像する工程とを含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、例えば、被検光学系の透過率分布をより高精度に測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明する。
【0016】
[第1実施形態]
図1乃至図3は、本発明の第1実施形態としての測定装置の概略構成を示す図である。なお、図1乃至図3において、図11に示された測定装置における構成要素と同一の構成要素には同一の符号が付されている。測定装置100は、被検光学系6の透過率分布(瞳面における透過率分布)を測定するように構成されている。被検光学系6の一例としては、例えば、露光装置の投影光学系を挙げることができる。ここで、露光装置は、原版(レチクル、マスク)に形成されたパターンを投影光学系によって基板(ウエハ)に投影して該基板に塗布されている感光剤を露光する。測定装置100は、RSミラー13、7の反射率分布を測定するための測定ユニットを備えている。該測定ユニットは、球状ミラー10および駆動機構11を含む。球状ミラー10は、球状ミラー10は、球の中心を通る軸の周りで回転が可能である。
【0017】
以下、測定装置100によって被検光学系6の透過率分布Tlens(x,y)を測定する方法を説明する。なお、被検光学系は少なくとも1つの光学素子(レンズなど)を含む。
【0018】
まず、RSミラー13の反射率分布Rrsa(x,y)と、測定装置100の集光レンズ5から撮像センサ9に至る光路に配置された光学素子(5〜41)によって構成される測定光学系OPの透過光分布Isys(x,y)とを求める方法を説明する。なお、xおよびyは、2次元空間における位置を示す座標値である。
【0019】
集光レンズ(集光光学系)5と被検光学系6との間には、RSミラー(第1球面ミラー)13が例えば不図示の駆動ユニットによって配置される。光源1から射出された光束は、ハーフミラー2で反射され、ビームエキスパンダ12、ミラー31、32を介して集光レンズ5に至る。集光レンズ5から出射された光束は、RSミラー13で反射され、その光束は、ハーフミラー2を透過し、結像光学系41を介して撮像センサ9の撮像面に基準光強度分布Irsa(x,y)を形成する。基準光強度分布Irsa(x,y)は、撮像センサ9によって撮像される画像を構成する2次元配列された複数の画素の値として検出される。換言すると、撮像センサ9によって基準光強度分布Irsa(x,y)が撮像される。
【0020】
次に、図2に示すように、RSミラー13の代わりに球状ミラー10が不図示の駆動ユニットによって配置される。球状ミラー10は、駆動機構11によって駆動されて、球の中心を回転中心として回転する。
【0021】
球状ミラー10は、その中心が集光レンズ5の集光点と一致するように配置される。光源1から射出された光束は、ハーフミラー2で反射され、ビームエキスパンダ12、ミラー31、32、集光レンズ5を介して球状ミラー10に入射し、球状ミラー10で反射される。球状ミラー10で反射された光束は、集光レンズ5等を介して戻り、ハーフミラー2を透過し、結像光学系41を介して撮像センサ9の撮像面に、球状ミラー10からの反射光強度分布Iballa(x,y)を形成する。反射光強度分布Iballa(x,y)は、撮像センサ9によって撮像される画像を構成する2次元配列された複数の画素の値として検出される。換言すると、撮像センサ9によって反射光強度分布Iballa(x,y)が撮像される。
【0022】
ここで、撮像センサ9による反射光強度分布Iballa(x,y)の撮像において、駆動機構11によって球状ミラー10を回転させることによって、反射光強度分布Iballa(x,y)を平均化することができる。この平均化は、球状ミラー10の反射率の不均一性(不均一な分布)を除去することを意味する。
【0023】
なお、駆動機構11によって球状ミラー10を測定光学系OPの光軸周りで回転させた場合には、厳密には、球状ミラー10の反射率を該光軸周りにおける球状ミラー10の円周方向において平均化することになる。しかしながら、半径方向に対する該反射率の依存性が十分に小さい場合には、円周方向における反射率の平均化によっても、球状ミラー10の反射率の不均一性は、円周方向についても半径方向についても除去されると言える。
【0024】
駆動機構11は、球状ミラー10の球の中心を通る複数の軸の周りで球状ミラー10を回転させるように構成されてもよい。これにより、反射率の不均一性の除去効果を高めることができる。
【0025】
駆動機構11による球状ミラー10の回転駆動は、撮像センサ9による反射光強度分布Iballa(x,y)の撮像中(電荷の蓄積中)であってもよいし、撮像と撮像の間においてなされてもよい。或いは、駆動機構11によって球状ミラー10を回転駆動しながら撮像センサ9によって複数の画像(反射光強度分布Iballa(x,y))を撮像してもよい。
【0026】
反射光強度分布Iballa(x,y)の平均化によって、球状ミラー10の反射率の不均一性が除去又は低減された、光学系OPの透過光分布Isys(x,y)を取得することができる。例えば、球状ミラー10を駆動機構11によって回転させながら複数の画像(反射光強度分布Iballa(x,y))を撮像した場合には、複数の画像を撮像枚数で平均化することによって光学系OPの透過光分布Isys(x,y)を取得することができる。
【0027】
次に、測定装置100に設けられた演算部90は、RSミラー13の反射率分布Rrsa(x,y)を次の式に従って演算する。なお、C1は定数である。
【0028】
Rrsa(x,y) = C1 × Irsa(x,y)/Isys(x,y)
得られたRSミラー13の反射率分布Rrsa(x,y)は、測定装置100の不図示のメモリに登録される。該メモリは、例えば、演算部90の中に設けられ得る。なお、その登録された反射率分布Rrsa(x,y)と、その後に新たに検出される基準光強度分布Irsa(x,y)に基づいて測定光学系POの透過光強度分布Isys(x,y)を補正してもよい。
【0029】
次に、RSミラー7の反射率分布Rrsb(x,y)を求める方法を説明する。まず、集光レンズ5から出射された光束が被検光学系6を通ってRSミラー(第2球面ミラー)7に入射するように、被検光学系6およびRSミラー7を配置する。この状態で、光源1から射出された光束は、ハーフミラー2で反射され、ビームエキスパンダ12、ミラー31、32および集光レンズ5を介して被検光学系6に入射し、被検光学系6を透過してRSミラー7に入射する。RSミラー7に入射した光束は、RSミラー7で反射して、被検光学系6および集光レンズ5等を介して戻り、ハーフミラー2を透過して撮像センサ9の撮像面に測定光強度分布Irsb(x,y)を形成する。測定光強度分布Irsb(x,y)は、撮像センサ9によって撮像される画像を構成する2次元配列された複数の画素の値として検出される。換言すると、撮像センサ9によって測定光強度分布Irsb(x,y)が撮像される。
【0030】
次に、図3に示すように、RSミラー7の代わりに球状ミラー10が不図示の駆動ユニットによって配置される。RSミラー7の代わりに使用される球状ミラーは、RSミラー13の代わりに使用される球状ミラーと同一のミラーであってもよいし、別のミラーであってもよい。球状ミラー10は、駆動機構11によって駆動されて回転する。球状ミラー10は、その中心が被検光学系6の集光点と一致するように配置される。
【0031】
光源1から射出された光束は、ハーフミラー2で反射され、ビームエキスパンダ12、ミラー31、32および集光レンズ5を介して被検光学系6に入射し、被検光学系6を透過して球状ミラー10に入射し、球状ミラー10で反射される。球状ミラー10で反射された光束は、被検光学系6および集光レンズ5等を介して戻り、ハーフミラー2を透過して撮像センサ9の撮像面に、球状ミラー10からの反射光強度分布Iballb(x,y)を形成する。この際にも、駆動機構11によって球状ミラー10を回転させることによって、反射光強度分布Iballb(x,y)を平均化することができる。この平均化は、球状ミラー10の反射率の不均一性を除去することを意味する。この平均化によって、球状ミラー10の反射率の不均一性が除去又は低減された、反射光分布Ilens(x,y)を取得することができる。反射光分布Ilens(x,y)は、測定装置100の光学系OPと被検光学系6との往復分の透過光分布である。
【0032】
次に、演算部90は、RSミラー7の反射率分布Rrsb(x,y)を次の式に従って演算する。なお、C2は定数である。
【0033】
Rrsb(x,y) = C2 × Irsb(x,y)/Ilens(x,y)
得られたRSミラー7の反射率分布Rrsb(x,y)は、測定装置100の不図示のメモリに登録される。
【0034】
演算部90は、RSミラー13の反射率分布Rrsa(x,y)とRSミラー7の反射率分布Rrsb(x,y)に基づいて、被検光学系6の透過率分布Tlens(x,y)を次の式に従って演算する。なお、C3は定数である。
【0035】
Tlens(x,y) = C3×(Rrsa(x,y)/Rrsb(x,y))1/2×(Irsb(x,y)/Irsa(x,y))1/2
以上のように、RSミラー13の反射率分布Rrsa(x,y)とRSミラー7の反射率分布Rrsb(x,y)とを考慮することにより、被検光学系6の透過率分布を高精度に測定することができる。
【0036】
[第2実施形態]
図4は、本発明の第2実施形態としての測定装置110の概略構成を示す図である。この実施形態は、第1実施形態の集光レンズ5に相当する集光レンズ5’をTSレンズとしたフィゾー型の干渉計に被検光学系の透過率分布の測定機能を搭載した測定装置を提供する。TSレンズは、最終面の曲率半径と最終面−焦点間の距離とが等しい。なお、最終面は、TSレンズの最終面を意味し、焦点はTSレンズの焦点を意味する。
【0037】
被検光学系の性能の重要な項目として透過波面が挙げられる。透過波面を評価する際に干渉計測が用いられうる。この実施形態のように、干渉計に透過率分布を測定する機能を搭載することで、別々の装置を作る必要性が無くなり、コスト面で有利である。
【0038】
光源1から射出された光束は、ハーフミラー2で反射され、ビームエキスパンダ12、ミラー31、32を介して集光レンズ(TSレンズ)5’に至る。光束の一部は、集光レンズ(TSレンズ)5’を透過し、RSミラー13で反射される。集光レンズ(TSレンズ)5’は、XYZステージ(位置決め機構)3に搭載されたPZTアクチュエータ4によって駆動される。
【0039】
集光レンズ(TSレンズ)5’は、最終面以外には光源1が発生する光の波長に対する反射防止膜が施されていて、最終面からのみ光束の一部が反射される。以下、集光レンズ(TSレンズ)5’で反射される光束を参照光束、透過する光束を被検光束と呼ぶことにする。この参照光束と被検光束との干渉により被検光学系6の透過波面が測定される。
【0040】
被検光学系6の透過率分布の測定時は、波面の測定時に形成されるような干渉縞は不要である。RSミラー13とRSミラー7の反射率分布の測定方法は、第1実施形態と同様であるので、ここでは、干渉縞の除去方法について説明する。
【0041】
まず、集光レンズ(TSレンズ)5’は、その焦点とRSミラー13の曲率中心が一致するように配置される。その状態から空間フィルタ8を光軸に垂直な方向にΔspfだけシフトさせるとともに、集光レンズ(TSレンズ)5’もXYZステージ3を駆動して光軸に垂直な方向にΔだけシフトさせる。この状態では、被検光束のみが空間フィルタ8を透過する。ここで、集光レンズ(TSレンズ)5’の焦点距離をFts、ビームエキスパンダ12の焦点距離をFexpとすると、空間フィルタ8の量ΔspfとTSレンズ5’のシフト量Δは、次の式で表される。
【0042】
Δspf = 2×Δ×Fexp/Fts
図5は、シフト量Δspfによって被検光束と参照光束とを分離する空間フィルタ8の近傍を示す拡大図である。図5において、1点鎖線は光学系OPの光軸を示している。参照光束の計測時は、図5(a)に示すように、空間フィルタ8の開口8aの中心は、光学系OPの光軸上にある。一方、被検光束の測定時は、図5(b)に示すように、空間フィルタ8をΔspfだけシフトさせることにより、被検光束の位置に空間フィルタ8の開口8aの中心を移動させる。これにより、参照光束が遮光され、被検光束のみが透過する。以上の方法によって被検光束と参照光束とを分離することで、撮像センサ9の撮像面に被検光強度分布Irsa(x,y)を形成することができる。
【0043】
RSミラー13の代わりに球状ミラーを配置した場合も、同様の方法で干渉縞を除去することができる。よって、RSミラー13の反射率分布は、第1実施形態と同様の方法で得ることができる。
【0044】
また、RSミラー7から反射される被検光束の測定にも同様の方法を用いることができる。RSミラー7は、XYZステージ14に搭載されている。被検光束のみを空間フィルタ8を透過させるためには、RSミラー7を光軸に垂直な方向にΔrsbだけシフトさせればよい。被検光学系(例えば投影光学系)6の横倍率をβlensとすると、空間フィルタ8のシフト量ΔspfとRSミラー7のシフト量Δrsbとの関係は、次の式で表される。
【0045】
Δspf = 2×Δrsb/βlens×Fexp/Fts
RSミラー7の代わりに球状ミラーを配置した場合も、同様の方法で干渉縞を除去することができる。よって、RSミラー7の反射率分布は、第1実施形態と同様の方法で得ることができる。
【0046】
以上の方法で2つのRSミラーの反射率分布を測定することができるため、第1実施形態と同様の方法で高精度に被検光学系の6の透過率分布を測定することができる。
【0047】
[第3実施形態]
この実施形態は、干渉縞を平均化することによって被検光束と参照光束とを分離し、被検光学系の透過率分布を測定する方法を提供する。
【0048】
この実施形態においても、図4に示す測定装置110を使用することができる。RSミラー7としての球面ミラーの曲率中心が被検光学系6の結像点に一致するように、XYZステージ14が駆動される。また、空間フィルタ8は、その開口中心が光学系OPの光軸に位置するように配置される。このような配置において、撮像センサ9の撮像面には、被検光束と参照光束との光路長差及び被検光学系6の透過波面収差に応じて、被検光束と参照光束とが干渉した干渉縞が形成され、これが撮像される。XYZステージ3に搭載されたPZTアクチュエータ4によって集光レンズ5’を半波長の整数倍だけ直線駆動して、その間の撮像センサ9における積算光量を用いて被検光束の情報を得ることができる。
【0049】
図6は、PZTアクチュエータ4による集光レンズ5’の駆動と、撮像センサ9のある画素における干渉縞強度を示すグラフである。図6(b)に示すように、PZTアクチュエータ4による集光レンズ5’の駆動量16が波長の半整数倍になるごとに、図6(a)に示す干渉縞強度15が周期的に変動する。被検光束の光量をItest、参照光束の光量をIref、被検光束と参照光束との干渉縞のコントラストをV、被検光束と参照光束との光路長差をLとすると、干渉縞強度Ifrgは、次の式で表される。
【0050】
Ifrg = Itest + Iref + 2V(Itest × Iref)1/2cos(2πL/λ)
したがって、光路長差Lを波長の整数倍分だけスキャンさせた際に得られる積算光量は、干渉成分が打ち消され、被検光束の光量と参照光束の光量との和となる。
【0051】
この実施形態では、PZTアクチュエータ4によって集光レンズ5’を駆動することにより干渉縞の平均化を行っているが、光源1の波長を変化させることができる場合には、波長を変化させることによって干渉縞を平均化してもよい。上記の干渉縞強度Ifrgを示す式において、波長λを変化させることによって干渉縞に一周期分の変化を与えることができる。
【0052】
次に、図7に示すように、XYZステージ14に球状ミラー10と駆動機構11を搭載し、球状ミラー10の中心が被検光学系6の結像点に一致するようにXYZステージ14を駆動する。RSミラー7の場合と同様に、PZTアクチュエータ4によって球状ミラー10を駆動して積算光量を測定すると、参照光束と被検光束の光量の和が得られる。ここで、PZTアクチュエータ4による球状ミラー10の駆動中は、球状ミラー10が回転しないようにPZTアクチュエータ4と駆動機構11を同期させる必要がある。
【0053】
以上の方法で参照光束と被検光束の分離することで、2つのRSミラーの反射率分布を得ることができる。よって、第1実施形態と同様の方法で高精度に被検光学系6の透過率分布を測定することができる。
【0054】
[第4実施形態]
この実施形態は、第1乃至第3実施形態として例示した測定装置が組み込まれた露光装置を提供する。該測定装置は、露光装置の投影光学系を被検光学系として、該被検光学系の透過率分布(瞳面における透過率分布)を測定する。この実施形態の露光装置は、測定装置が組み込まれていることにより、任意のタイミングで、被検光学系としての投影光学系の性能を確認することができる。
【0055】
図8は、本発明の第4実施形態としての露光装置の構成を示す図である。この実施形態の露光装置200は、原版(レチクル、マスク)に形成されたパターンを投影光学系(被検光学系6)によって基板(ウエハ、液晶基板など)18に投影して該基板18に塗布されている感光剤を露光する。露光装置200は、RSミラー13、7の反射率分布を測定するための測定ユニットを備えている。該測定ユニットは、球状ミラー10、19およびそれらを駆動する駆動機構11、20を含む。
【0056】
基板18を露光する際には、折曲げミラー21、22と集光レンズ5が不図示の駆動ユニットによって基板18の露光のための光路から除去され、光源1から射出された光は、照明系23に提供される。照明系23から射出された光は、不図示の原版(レチクル)を介して投影光学系(被検光学系6)に入射し、ステージ17に搭載された不図示のチャックによって保持された基板18に入射する。これによって、基板18が露光される。
【0057】
被検光学系6としての投影光学系の透過率分布を測定する際には、折曲げミラー21、22と集光レンズ5が不図示の駆動ユニットによって露光のための光路に挿入されて図8に模式的に示す状態となる。
【0058】
また、集光レンズ5と被検光学系6としての投影光学系との間に不図示の駆動ユニットによってRSミラー(第1球面ミラー)13が挿入される。光源1から射出された光束は、ビームエキスパンダ24で広げられて、ハーフミラー2を透過して、集光レンズ5に至る。集光レンズ5から出射された光束は、RSミラー13で反射され、その光束は、ハーフミラー2で反射されて撮像ユニット25内に設けられた撮像センサの撮像面に基準光強度分布Irsa(x,y)を形成し、それが該撮像センサで撮像される。次いで、RSミラー13の代わりに球状ミラー(第1球状ミラー)10と駆動装置(第1駆動機構)11が不図示の駆動ユニットによって集光レンズ5と被検光学系6としての投影光学系との間に配置される。この状態で第1実施形態と同様の方法で反射光強度分布Iballa(x,y)が撮像され、これに基づいて測定用の光学系の透過光分布Isys(x,y)が得られる。そして、演算部90は、基準光強度分布Irsa(x,y)および透過光分布Isys(x,y)とに基づいて、第1実施形態に従ってRSミラー13の反射率分布Rrsa(x,y)を演算する。
【0059】
次に、測定光の測定方法について説明する。RSミラー7、並びに、球状ミラー19及び駆動機構20は、基板18を駆動するステージ17、または他のステージに搭載されていて駆動される。
【0060】
集光レンズ5を透過した光束は、投影光学系6に入射する。投影光学系6を透過した光束は、RSミラー(第2球面ミラー)7で反射され、ハーフミラー2で反射されて撮像ユニット25内に設けられた撮像センサの撮像面に測定光強度分布Irsb(x,y)を形成し、これが撮像センサによって撮像される。
【0061】
また、RSミラー7の代わりに球状ミラー(第2球状ミラー)19と駆動装置(第2駆動機構)20が配置され、球状ミラー19からの反射光強度分布Iballb(x,y)が撮像ユニット25内に設けられた撮像センサによって撮像される。演算部90は、反射光強度分布Iballb(x,y)に基づいて反射光分布Ilens(x,y)を取得する。そして、演算部90は、測定光強度分布Irsb(x,y)および反射光分布Ilens(x,y)に基づいて、第1実施形態に従ってRSミラー7の反射率分布Rrsb(x,y)を演算する。
【0062】
更に、演算部90は、第1実施形態と同様に、被検光学系6としての投影光学系の透過率分布Tlens(x,y)を次の式に従って演算する。
【0063】
Tlens(x,y) = C3×(Rrsa(x,y)/Rrsb(x,y))1/2×(Irsb(x,y)/Irsa(x,y))1/2
以上のように、この実施形態では、露光装置200に組み込まれた測定装置によって第1実施形態と同様の方法で2つのRSミラー13、7の反射率分布を考慮しながら投影光学系の透過率分布を高精度に測定することができる。
【0064】
露光装置に搭載された干渉計に第2、第3実施形態の測定装置を搭載することも可能であり、図9に構成を示す。透過率分布の測定方法と干渉縞の除去方法は、第2、第3実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0065】
透過率分布を測定する測定装置を露光装置に搭載した形態として、第1〜第3実施形態のいずれかの測定装置で反射率分布が測定されたRSミラーを使用する露光装置を図10に示す。予め第1〜第3実施形態のいずれかに従ってRSミラー13、7の反射率分布を測定し、RSミラー13、7の反射率分布Rrsa(x,y)、Rrsb(x,y)を露光装置(例えば、演算部90内のメモリ)に登録しておく。この反射率分布Rrsa(x,y)、Rrsb(x,y)を使用することで、演算部90は、投影光学系(被検光学系6)の透過率分布を高精度に演算することができる。このような構成は、図8に示されるような球状ミラー10、19、駆動機構11、20を搭載する必要が無いため、省スペース化に有利である。
【0066】
[応用例] 次に上記の露光装置を利用したデバイス製造方法を説明する。図12は、半導体デバイスの全体的な製造プロセスのフローを示す図である。ステップ1(回路設計)では半導体デバイスの回路設計を行う。ステップ2(レチクル作製)では設計した回路パターンに基づいてレチクル(原版)を作製する。一方、ステップ3(ウエハ製造)ではシリコン等の材料を用いてウエハ(基板ともいう)を製造する。ステップ4(ウエハプロセス)は前工程と呼ばれ、上記のレチクルとウエハを用いて、リソグラフィー技術によってウエハ上に実際の回路を形成する。次のステップ5(組み立て)は後工程と呼ばれ、ステップ4によって作製されたウエハを用いて半導体チップ化する工程であり、アッセンブリ工程(ダイシング、ボンディング)、パッケージング工程(チップ封入)等の組み立て工程を含む。ステップ6(検査)ではステップ5で作製された半導体デバイスの動作確認テスト、耐久性テスト等の検査を行う。こうした工程を経て半導体デバイスが完成し、これを出荷(ステップ7)する。 図13は、上記ウエハプロセスの詳細なフローを示す図である。ステップ11(酸化)ではウエハの表面を酸化させる。ステップ12(CVD)ではウエハ表面に絶縁膜を成膜する。ステップ13(電極形成)ではウエハ上に電極を蒸着によって形成する。ステップ14(イオン打込み)ではウエハにイオンを打ち込む。ステップ15(CMP)ではCMP工程によって絶縁膜を平坦化する。ステップ16(レジスト処理)ではウエハに感光剤を塗布する。ステップ17(露光)では上記の露光装置を用いて、回路パターンが形成されたマスクを介し感光剤が塗布されたウエハを露光してレジストに潜像パターンを形成する。ステップ18(現像)ではウエハ上のレジストに形成された潜像パターンを現像してレジストパターンを形成する。ステップ19(エッチング)ではレジストパターンが開口した部分を通してレジストパターンの下にある層又は基板をエッチングする。ステップ20(レジスト剥離)ではエッチングが済んで不要となったレジストを取り除く。これらのステップを繰り返し行うことによって、ウエハ上に多重に回路パターンを形成する。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第1実施形態としての測定装置の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態としての測定装置の概略構成を示す図である。
【図3】本発明の第1実施形態としての測定装置の概略構成を示す図である。
【図4】本発明の第2、第3実施形態としての測定装置の概略構成を示す図である。
【図5】本発明の第2実施形態の説明図である。
【図6】本発明の第3実施形態の説明図である。
【図7】本発明の3実施形態としての測定装置の概略構成を示す図である。
【図8】本発明の4実施形態としての測定装置の概略構成を示す図である。
【図9】本発明の4実施形態としての測定装置の概略構成を示す図である。
【図10】本発明の4実施形態としての測定装置の概略構成を示す図である。
【図11】被検光学系の透過率分布を測定するための測定装置の構成を示す図である。
【図12】デバイス製造方法を示す図である。
【図13】デバイス製造方法を示す図である。
【符号の説明】
【0068】
1 光源
2 ハーフミラー
3 XYZステージ
4 PZTアクチュエータ
5 集光レンズ
5’ 集光レンズ(TSレンズ)
6 被検光学系(投影光学系)
7 RSミラー
8 空間フィルタ
9 撮像センサ
10 球状ミラー
11 駆動機構
12 ビームエキスパンダ
13 RSミラー
14 XYZステージ
15 干渉縞強度
16 PZRアクチュエータの駆動
17 ウェハーステージ
18 ウェハーチャック
19 球状ミラー
20 駆動機構
21、22 折曲げミラー
23 照明系
24 ビームエキスパンダ
25 撮像ユニット
90 演算部
100 測定装置
110 測定装置
200 露光装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検光学系の透過率を測定する測定装置であって、
前記被検光学系を透過しない基準光を形成するための第1球面ミラーと、
前記被検光学系を透過した測定光を形成するための第2球面ミラーと、
前記第1球面ミラーおよび前記第2球面ミラーの反射率分布を測定するための測定ユニットと、
前記基準光の強度分布、前記測定光の強度分布、前記第1球面ミラーの反射率分布および前記第2球面ミラーの反射率分布に基づいて前記被検光学系の瞳面における透過率を演算する演算部と、
を備えることを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記測定ユニットは、球の中心を通る軸の周りで回転が可能な球状ミラーを含み、
前記第1球面ミラーからの反射光によって形成される光強度分布と、前記第1球面ミラーに代えて前記球状ミラーを配置して前記球状ミラーを回転させながら得られた前記球状ミラーからの反射光によって形成される光強度分布と、に基づいて前記第1球面ミラーの反射率分布が得られ、
前記第2球面ミラーからの反射光によって形成される光強度分布と、前記第2球面ミラーに代えて前記球状ミラーを配置して前記球状ミラーを回転させながら得られた前記球状ミラーからの反射光によって形成される光強度分布と、に基づいて前記第2球面ミラーの反射率分布が得られる、
ことを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記測定ユニットは、前記球状ミラーを回転させる駆動機構を含むことを特徴とする請求項2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記測定ユニットは、球の中心を通る軸の周りで回転が可能な第1球状ミラーおよび第2球状ミラーを含み、
前記第1球面ミラーからの反射光によって形成される光強度分布と、前記第1球面ミラーに代えて前記第1球状ミラーを配置して前記第1駆動機構によって前記第1球状ミラーを回転させながら得られた前記第1球状ミラーからの反射光によって形成される光強度分布と、に基づいて前記第1球面ミラーの反射率分布が得られ、
前記第2球面ミラーからの反射光によって形成される光強度分布と、前記第2球面ミラーに代えて前記第2球状ミラーを配置して前記第2駆動機構によって前記第2球状ミラーを回転させながら得られた前記第2球状ミラーからの反射光によって形成される光強度分布と、に基づいて前記第2球面ミラーの反射率分布が得られる、
ことを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項5】
前記測定ユニットは、前記第1球状ミラーおよび前記第2球状ミラーをそれぞれ回転させる第1駆動機構および第2駆動機構を含むことを特徴とする請求項4に記載の測定装置。
【請求項6】
前記被検光学系を透過した光の波面を計測するための干渉計に組み込まれていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項7】
原版のパターンを投影光学系によって基板に投影して該基板を露光する露光装置であって、
前記投影光学系を透過しない基準光を形成するための第1球面ミラーと、
前記投影光学系を透過した測定光を形成するための第2球面ミラーと、
前記第1球面ミラーおよび前記第2球面ミラーの反射率分布を測定するための測定ユニットと、
前記基準光の強度分布、前記測定光の強度分布、前記第1球面ミラーの反射率分布および前記第2球面ミラーの反射率分布に基づいて前記投影光学系の瞳面における透過率を演算する演算部と、
を備えることを特徴とする露光装置。
【請求項8】
前記測定ユニットは、球の中心を通る軸の周りで回転が可能な第1球状ミラーおよび第2球状ミラーを含み、
前記第1球面ミラーからの反射光によって形成される光強度分布と、前記第1球面ミラーに代えて前記第1球状ミラーを配置して前記第1球状ミラーを回転させながら得られた前記第1球状ミラーからの反射光によって形成される光強度分布と、に基づいて前記第1球面ミラーの反射率分布が得られ、
前記第2球面ミラーからの反射光によって形成される光強度分布と、前記第2球面ミラーに代えて前記第2球状ミラーを配置して前記第2球状ミラーを回転させながら得られた前記第2球状ミラーからの反射光によって形成される光強度分布と、に基づいて前記第2球面ミラーの反射率分布が得られる、
ことを特徴とする請求項7に記載の露光装置。
【請求項9】
前記測定ユニットは、前記第1球状ミラーおよび前記第2球状ミラーをそれぞれ回転させる第1駆動機構および第2駆動機構を含むことを特徴とする請求項4に記載の測定装置。
【請求項10】
デバイス製造方法であって、
請求項7乃至9のいずれか1項に記載の露光装置によって基板を露光する工程と、
該基板を現像する工程と、
を含むことを特徴とするデバイス製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−109414(P2009−109414A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−283792(P2007−283792)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】