説明

測定装置および測定システム

【課題】車両が進入可能であれば狭い細道であっても、かつ路面に凹凸があっても、地点間の距離などを精度よく測定することができる測定装置および測定システムを提供する。
【解決手段】測定装置5は、タイヤTを支持するホイールWとホイールハブWHとの間に、回転中心を合わせて配置された回転体51と、本体フレームFに固定された光学的検出器52とを備えている。回転体51は、ホイールWとホイールハブWHの取付面との間に装着される円盤部511と、円盤部511から本体フレームFに向かって延びてホイールハブWHの外周面を包囲する円筒部512とから形成されている。円筒部511の周囲面には、光を透過する光透過部である長孔513が設けられている。光学的検出器52としては、本体フレームFに取付金具523により固定された発光部として機能する発光素子521と受光部として機能する受光素子522とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に装着されて地点間の距離や走行スピードを測定する測定装置および測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電子地図や地図本などの作成には、地形や建造物を撮影したり、距離を測定したりするプローブカーと呼ばれる測定車両が道路を実際走行して、データの収集を行っている。測定車両が地点間の距離を測定するときには、測定車両のホイールの外側に取り付けられるロータリエンコーダが従来の測定装置として使用される。このロータリエンコーダは、円周方向に沿って所定間隔ごとにスリットが開設された円盤と、スリットの回転を検知するフォトインタラプタとが箱状の筐体に内蔵されたものである。この従来の測定装置は、円盤を回転させる回転軸がホイールの外側中心に装着され、筐体がボディのフェンダーに開設されたタイヤハウスを跨ぐ支持具により保持されることで、取り付けられている。
【0003】
ロータリエンコーダに関しては、特許文献1に記載されたものが知られている。この特許文献1に記載の回転装置は、カップ状に形成され、モータの回転軸に軸支された回転部材がモータを覆うように配置され、回転部材に装着された回転検出手段の一部に対向して回転検出手段の他の部分が容器の内壁に設けたものである。特許文献1に記載の回転装置では、回転検出手段の一部をスリット板とし、他の部分を発光素子と受光素子とによりフォトインタラプタを構成したものとしたり、回転検出手段の一部をN,S極が交互に設けられた磁気信号着磁ドラムとし、他の部分を磁束の変化によりその抵抗が変化するパーマロイ製の磁気抵抗素子としたりすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平5−23775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の測定装置では、装置自体がホイールの外側に取り付けられているため、車幅が広くなってしまうので、車両自体は進入可能な狭い細道でも進入できない場合がある。特に、測定精度を高めるために従来の測定装置を両輪に設けた場合には、更に車幅が広がってしまう。
【0006】
また、筐体が車両のボディに取り付けられて固定されているのに対し、この筐体に内蔵されたロータリエンコーダの回転軸がホイールに取り付けられているため、ショックアブソーバがホイールハブを支持する車体フレームに対して斜めに配置されている車両では、路面の凹凸に応じて車輪が傾斜した状態で上下するので、結果として車輪が楕円状に移動する。従って、従来の測定装置では、地点間の距離や、走行スピードを精度よく測定することができない。
また、従来の測定装置では、磁気的検出であることから車両の振動についても回転部材が回転していると検出してしまうことがあり、これによっても地点間の距離や、走行スピードを精度よく測定することを困難にしていた。
【0007】
そこで本発明は、車両が進入可能であれば狭い細道であっても、かつ路面に凹凸があっても、地点間の距離などを精度よく測定することができる測定装置および測定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の測定装置は、光学的被検知部が設けられ、タイヤを支持するホイールと該ホイールを車両の本体フレームに取り付けるホイールハブとの間に、回転中心を合わせて配置された回転体と、前記本体フレームに固定され、前記回転体の回転に伴う前記光学的被検知部の位置の変化を検出する光学的検出器とを備えたことを特徴とする。
本発明の測定装置によれば、回転体がタイヤを支持するホイールと該ホイールを車両の本体フレームに取り付けるホイールハブとの間に、回転中心を合わせて配置されているので、車輪から外側へ出っ張らない。従って、本発明の測定装置を車両に装着しても車幅が大幅に増加することはない。また、回転体の回転に伴う光学的被検知部の位置の変化を検出する光学的検出器が本体フレームに固定されているため、路面の凹凸に応じて回転体が揺動しても、光学的検出器も回転体に伴って揺動するので、ショックアブソーバが本体フレームに対して斜めに配置されていても影響を受けることなく測定することができる。
【0009】
前記回転体は、前記ホイールと前記ホイールハブの取付面との間に装着される円盤部と、該円盤部から前記本体フレームに向かって延びて前記ホイールハブの外周面を包囲する円筒部とから形成され、前記光学的被検知部は、前記円筒部の周囲面に沿って設けられ、前記光学的検出器は、前記本体フレームに取付具を介して取り付けられているのが望ましい。
光学的検出器は、円盤部から本体フレームに向かって延びてホイールハブの外周面を包囲する円筒部の周囲面に沿って設けられている光学的被検知部を検出するようにしたことから、光学的検出器を本体フレームから短い距離に設置することができる。従って、光学的検出器を支えるための取付具に長さが長い部材を用いなくてもよいので、振動により光学的検出器が大きく揺れることで測定誤差が発生したり、光学的検出器が回転体に衝突したりすることを防止することができる。
【0010】
前記光学的被検知部は、光を透過する光透過部であり、前記光学的検出器は、前記光透過部を挟んで対向させた、前記光透過部へ向けて発光する発光部と、前記光透過部を通過した透過光を受光する受光部であるのが望ましい。
光学的被検知部とした発光部と受光部とで、光学的被検知部とした光透過部を間に挟んで対向させて、透過型のフォトインタラプタを用いたロータリエンコーダを構成することで、車両の振動について回転体が回転していると検出してしまうことを低減することができるので、より正確な測定が可能である。
【0011】
前記光学的被検知部は、光反射させる光反射部であり、前記光学的検出器は、前記光反射部へ向けて発光する発光部と、前記光反射部からの反射光を受光する受光部であるのが望ましい。
光学的被検知部とした発光部と受光部とで、光学的被検知部とした光反射部に反射した光を検出する反射型のフォトインタラプタ(フォトリフレクタ)を用いたロータリエンコーダを構成することで、車両の振動について回転体が回転していると検出してしまうことを低減することができるので、より正確な測定が可能である。
【0012】
また、本発明の測定システムは、本発明の測定装置が前記車両の前輪および後輪のうちの少なくとも一方の左右それぞれの車輪に配置され、前記光学的検出器が出力する検知信号、および前記タイヤの円周データに基づいてそれぞれの前記タイヤの走行距離を算出する走行距離算出手段と、前記左右のタイヤの走行距離の差、および前記左右のタイヤ間の距離に基づいて前記車両の進行方向の角度変化量を推定する角度変化量推定手段とを備えたことを特徴とする。
本発明の測定システムによれば、本発明の測定装置が前記車両の前輪および後輪のうちの少なくとも一方の左右それぞれの車輪に配置されており、本発明の測定装置は車輪から外側へ出っ張らないので、車幅が大幅に増加することはない。また、走行距離算出手段が、光学的検出器が出力する検知信号、およびタイヤの円周データに基づいてそれぞれのタイヤの走行距離を算出し、角度変化量推定手段が左右のタイヤの走行距離の差、および左右のタイヤ間の距離に基づいて車両の進行方向の角度変化量を推定するので、タイヤの走行距離とその距離に応じた進行方向の変化とが一致するデータを得ることができる。従って、本発明の測定システムは、車両の走行軌跡を正確に得ることができる。
【0013】
前記車両の進行方向の角度変化を検出し角度データとして出力する角度検出手段と、前記角度データに基づく角度変化量を算出する角度変化量算出手段と、該角度変化量算出手段が算出した角度変化量と前記角度変化量推定手段が推定した角度変化量とを比較し、前記車両の走行状態を判定する走行状態判定手段とを備えるのが望ましい。角度変化量算出手段が算出する車両の角速度変化量と、角度変化量推定手段が推定した車両の進行方向の角度変化量とを走行状態判定手段が比較することにより、これらの変化量が大きく異なっている場合には、測定状態が異常であることを推定することができる。従って、車両の走行状態を判定することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、車輪から外側へ出っ張らせることなく車両に装着することができ、ショックアブソーバが車体フレームに対して斜めに配置されていても影響を受けることなく測定することができるので、車両が進入可能であれば狭い細道であっても、かつ路面に凹凸があっても、地点間の距離などを精度よく測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係る測定システム全体の構成を示す図である。
【図2】図1に示す測定システムに用いられる測定装置の分解斜視図である。
【図3】図1に示す測定システムに用いられる測定装置の構成を示すブロック図である。
【図4】走行状態判定方法を説明するためのフローチャートである。
【図5】角度変化量の算出方法を説明するための図である。
【図6】光学的被検知部として反射部を備えた回転体と光学的検出器とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態に係る測定装置およびこの測定装置を用いた測定システムを図面に基づいて説明する。
【0017】
(測定システムの構成)
図1に示す測定システム1は、例えば、道路を走行し地形や建造物を撮影して取得した画像を撮影地点の情報を関連付けて収集するプローブカーPに搭載されるものである。収集したデータは、電子地図や地図本などの作成に利用される。測定システム1は、測位装置2と、ビデオカメラ3と、角度センサ4と、2台の測定装置5と、データ収集処理装置6とを備えている。
【0018】
測位装置2は、全地球測位システム(GPS:Global Positioning System)や、衛星測位システム(ガリレオ)などが採用でき、プローブカーPの位置を示す位置データである経度データと緯度データとをデータ収集処理装置6へ出力する。
ビデオカメラ3は、車内から進行方向を一定時間毎に撮像して、撮像データをデータ収集処理装置6へ出力する。角度センサ4は、測定開始時点での方向を基準方向として、現在進行している方向の角度変化を検出し角度データとして出力する角度検出手段として機能するジャイロセンサである。
測定装置5は、両後輪に設けられている。ここで、測定装置5の構成について、図2に基づいて詳細に説明する。
【0019】
(測定装置の構成)
測定装置5は、タイヤTを支持するホイールWとホイールWをプローブカーPの本体フレームFに取り付けるホイールハブWHとの間に、回転中心を合わせて配置され、後輪と共に回転する回転体51と、回転体51の回転に伴う変化を検出する光学的検出器52とを備えている。この測定装置5は、回転体51の回転量を示す検知信号をデータ収集処理装置6へ出力する。
【0020】
回転体51は、ホイールWとホイールハブWHの取付面との間に装着される円盤部511と、円盤部511から本体フレームFに向かって延びてホイールハブWHの外周面を包囲する円筒部512とから形成されている。回転体51は、ホイールハブWHから突出した4本のハブボルトHBを、円盤部511に設けられた貫通孔511aに挿通させ、ホイールWを介在させてナットNにより固定されている。この円筒部512には、光学的検出器52によって円筒部512の回転を検出するために光学的被検知部が設けられている。本実施の形態では、光学的被検知部として、光を透過する光透過部として機能する長孔513が円筒部512の周囲面に沿って所定間隔ごとに設けられている。本実施の形態では、長孔513が円筒部512の軸線を中心として15°ごとに設けられている。
【0021】
光学的検出器52は、発光部として機能する発光素子521と、受光部として機能する受光素子522とを備えている。発光素子521は発光ダイオードが使用できる。受光素子522はフォトトランジスタが使用できる。発光素子521と受光素子522とは、取付金具523を介して対向させた状態で本体フレームFに取り付けられていることで、フォトインタラプタを構成している。取付金具523は、発光素子521と受光素子522がそれぞれ先端部に配置されたL字金具523aとこのL字金具523aを対向した状態で固定して本体フレームFに固定する取付板523bとで形成されている。受光素子522は、長孔513を透過した発光素子521からの光に基づいてデータ収集処理装置6へ検知信号を出力する。
【0022】
データ収集処理装置6は、プローブカーPを走行させることで得られる各種の情報から正確な走行軌跡を演算により算出して、撮像データと共に記録するものである。このデータ収集処理装置6は、プローブカーPの室内に設置される。ここで、データ収集処理装置6の構成について、図3に基づいて詳細に説明する。
【0023】
(データ収集処理装置の構成)
データ収集処理装置6は、測位装置2、ビデオカメラ3、角度センサ4、および測定装置5のそれぞれとケーブルにより接続された入力インタフェース手段61と、入力した各種データが記録される記憶手段62と、入力した各種データを記憶手段62に記録すると共に、入力したデータに基づいて走行軌跡を得るための演算を行うデータ処理手段63と、報知手段64とを備えている。
【0024】
入力インタフェース手段61は、測位装置2からの位置データ、ビデオカメラ3からの撮像データ、角度センサ4からの角度データ、および測定装置5からの検知信号を入力する。
記憶手段62は、各種データが記録される大容量の不揮発性メモリであり、ハードディスクドライブが使用できる。
【0025】
データ処理手段63は、走行距離算出手段631と、データ格納手段632と、角度変化量推定手段633と、角度変化量算出手段634と、走行状態判定手段635とを備えている。
【0026】
走行距離算出手段631は、2つの測定装置5からそれぞれ出力された検知信号を計数(カウント)して、測定開始から現在までの間に、回転体51の長孔513が光学的検出器52を何回通過したかの累計を計数データとして出力する。また、走行距離算出手段631は、基準地点から現時地点までの計数データと、予め設定されたタイヤの円周の長さを示す円周データとに基づいて、それぞれの後輪の走行距離を距離データとして算出する。
【0027】
データ格納手段632は、ビデオカメラ3からの撮像データの各フレームに、走行距離算出手段631により算出された計数データと、測位装置2からの位置データと、角度センサ4からの角度データとを、それぞれ関連付けて走行軌跡データとして記憶手段62に格納する。
角度変化量推定手段633は、左右のタイヤの走行距離の差、および予め設定された左右のタイヤ間の距離を示す後輪のトレッド幅に基づいてプローブカーPの進行方向の角度変化量を推定する。
【0028】
角度変化量算出手段634は、角度センサ4からの基準地点での角度データと現地点での角度データとの差からプローブカーPの角度変化量を算出する。
走行状態判定手段635は、角度変化量算出手段634が算出した角度変化量と、角度変化量推定手段633が推定した角度変化量とを比較し、プローブカーPの走行状態を判定する。
【0029】
報知手段64は、角度センサ4または測定装置5,5の異常を測定者に報知するもので、音で操作者へ報知する場合にはブザーやチャイムなどとすることができる。また、報知手段64は、表示で操作者に報知する場合には異常が発生したことを告げるメッセージを表示する表示画面とすることができる。
【0030】
(測定システムの動作および使用状態)
以上のように構成された本発明の実施の形態に係る測定システム1の動作および使用状態を、図面に基づいて説明する。
図1に示すように、プローブカーPを走行させ、データ収集処理装置6を動作可能な状態とする。ビデオカメラ3はフロントガラス越しの風景を、撮像を開始した時点から撮像データとして出力する。測位装置2からは位置データが出力され、角度センサ4からは車両の進行方向の角度変化に対応する角度データが出力される。
【0031】
プローブカーPが進行することで、図2に示すように、タイヤTが回転すると共に、回転体51が回転する。回転体51が回転することで、円筒部512の周囲面に沿って設けられた長孔513が、光学的検出器52の発光素子521と受光素子522との間を横切る。
【0032】
発光素子521と受光素子522との間に長孔513が位置したときには、発光素子521からの光が受光素子522へ到達し、長孔513以外のときには遮蔽されるので、測定装置5の光学的検出器52から出力される信号は、長孔513が発光素子521と受光素子522との間に位置したときに状態変化する検知信号となる。この検知信号はデータ収集処理装置6へ出力される。
【0033】
データ収集処理装置6では、測位装置2からの位置データ、ビデオカメラ3からの撮像データ、角度センサ4からの角度データ、および左右の後輪に配置された測定装置5からの検知信号が入力される。
【0034】
走行距離算出手段631は、測定装置5,5からのそれぞれの検知信号を計数して、計数データとして出力する。つまり、計数データは、計測を開始してから、回転体51の長孔513が光学的検出器52を何回通過したかを示す累計値である。
データ格納手段632は、撮像データのフレームごとに、計数データと、位置データと、角度データとを、それぞれに関連付けて記憶手段62に格納する。
【0035】
ここで、データ処理手段63の走行状態判定手段635が判定する走行状態の判定方法について、図4および図5に基づいて説明する。
走行距離算出手段631は、計数データに基づいて基準地点から現在地点までの走行距離を算出する(ステップS10)。この走行距離は、現在地点での計数データから基準地点での計数データを引いた値に、タイヤTの円周の長さを示す円周データを乗算することで算出することができる。本実施の形態では、円筒部512の円周面に15°ずつ長孔513が設けられているので、タイヤTの円周長さの15°分の長さ(1/24の長さ)が円周データとして使用される。つまり、走行距離算出手段631は、基準地点から現在地点までの間で、回転体51の長孔513が光学的検出器52を通過した回数に、長孔513が設けられている間隔に相当するタイヤTの円周データを乗じることにより走行距離を算出する。測定開始直後では、基準地点が走行開始地点であるため、基準地点での計数データは「0」である。従って、基準地点が走行開始地点であるときには、現在地点での計数データと円周データとを乗算した値が走行距離となる。走行距離算出手段631は、左右の後輪のそれぞれに設けられた測定装置5のそれぞれについて走行距離を算出する。
【0036】
走行距離算出手段631は、算出された走行距離が予め設定された距離(サンプリング距離)に到達したか否かを判定する(ステップS20)。判定の結果、まだサンプリング距離に達していないと判断されると、処理の終了か否かを判定する(ステップS30)。処理が終了していない場合には、走行距離の算出を繰り返す。
【0037】
サンプリング距離に達したと判断されると、角度変化量算出手段634は基準地点での角度データと、現在地点での角度データとの差をとることで、角度変化量R1を算出する(ステップS40)。また、角度変化量推定手段633は左右の距離データの差から角度変化量の推定を行う(ステップS50)。これは、図5に示すように、走行距離の変化が微小であれば、角度変化量となる角度θと左右の後輪による距離データの差分D=(d1−d2)には、角度θ=走行距離の差D/車輌トレッド幅Lの関係が成り立つ。角度変化量推定手段633は、前述の式から角度θを算出して角度変化量R2の推定を行う。
【0038】
走行状態判定手段635は、角度変化量算出手段634により算出された角度変化量R1と角度変化量推定手段633による推定された角度変化量R2との差の絶対値が、予め設定された故障閾値より大きいか否かを判定する(ステップS60)。
角度変化量の差の絶対値が故障閾値より大きい場合には、角度センサ4、測定装置5、およびこれらとデータ収集処理装置6とを接続するケーブルのいずれかに異常があったものと判断して、報知手段64により測定者に異常を報知する(ステップS70)。
角度変化量の差の絶対値が故障閾値以下である場合には、現在地点を基準地点として測定を継続する。
このようにして算出した走行距離および角度変化量を用い、基準地点の位置情報に基づいて車両が走行している位置を算出する。そして、ビデオカメラ3により取得した撮像データに位置情報を関連付ける。収集された走行軌跡データは電子地図や地図本などの作成に利用される。
【0039】
以上のように本発明の実施の形態に係る測定装置5によれば、回転体51がタイヤTを支持するホイールWとこのホイールWを車両の本体フレームFに取り付けるホイールハブWHとの間に、回転中心を合わせて配置されているので、車輪から外側へ出っ張らない。従って、測定装置5をプローブカーPに装着しても車幅が大幅に増加することはない。また、回転体51の回転に伴う長孔513の位置の変化を検出する光学的検出器52が本体フレームFに固定されているため、路面の凹凸に応じて回転体51が揺動しても、光学的検出器52も回転体51に伴って揺動するので、ショックアブソーバが本体フレームFに対して斜めに配置されていても影響を受けることなく測定することができる。よって、プローブカーPが進入可能であれば狭い細道でも測定することが可能で、かつ路面に凹凸があっても精度よく測定することができる。
【0040】
また、光学的検出器52は、ホイールハブWHの取付面に取り付けられる円盤部511から本体フレームFに向かって延びてホイールハブWHの外周面を包囲する円筒部512の長孔513を検出するようにしたことから、光学的検出器52を本体フレームFから短い距離に設置することができる。例えば、回転体51を大判の円盤部のみとし、長孔513を円盤部の円周方向に沿って設けると、本体フレームFに光学的検出器52を装着する取付金具を、本体フレームFからホイールハブWHの取付面側までの長さ以上にする必要がある。そうなると振動で取付金具が大きく揺れて測定誤差が生じたり、ホイールWに衝突したりするおそれがある。
【0041】
本実施の形態に係る回転体51は、円筒部512が円盤部511から本体フレームFに向かって延びてホイールハブWHの外周面を包囲しているので、光学的検出器52を本体フレームFから短い距離に設置することができる。従って、光学的検出器52を支えるための取付金具523に長さが長い部材を用いなくてもよいので、振動により光学的検出器52が大きく揺れることで測定誤差が発生したり、光学的検出器52が回転体51に衝突したりすることを防止することができる。
【0042】
また、回転体51は、ホイールWとホイールハブWHとの間に装着されるので、簡単にプローブカーPへ装着することができる。従って、ロータリエンコーダなどを、ホールハブWHを回転する車軸に取り付ける場合と比較して装着が容易であるため、車に関する高度な知識がなくても装着することができる。
【0043】
また、回転体51と発光素子521および受光素子522とで光学的に回転を検知する透過型のフォトインタラプタを用いたロータリエンコーダが構成されているので、プローブカーPの振動について回転体51が回転していると検出してしまうことを低減することができる。従って、測定装置5は、より正確な測定が可能である。
【0044】
また、本発明の実施の形態に係る測定システム1によれば、測定装置5がプローブカーPの後輪の左右それぞれの車輪に配置されているが、測定装置5はプローブカーPから外側へ出っ張っていないので、測定装置5が両輪に設けられていても車幅が大幅に増加することはない。また、走行距離算出手段631が、光学的検出器52が出力する検知信号を計数し、計数された回数と1回分に相当するタイヤTの円周データを乗ずることで走行距離を算出し、角度変化量推定手段633が左右のタイヤTの走行距離の差、および左右のタイヤT間の距離に基づいてプローブカーPの進行方向の角度変化量を推定するので、タイヤTの走行距離とその距離に応じた進行方向の変化とが一致するデータを得ることができる。従って、測定システム1は、プローブカーPの走行軌跡を正確に得ることができる。
【0045】
更に、角度センサ4と角度変化量算出手段634とにより算出された角度変化量と、角度変化量推定手段633により推定された角度変化量とを、走行状態判定手段635が比較することにより、これらの変化量が大きく異なっている場合には、測定状態が異常であることを検知することができる。従って、プローブカーPの走行状態を判定することができる。
【0046】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではない。例えば、本実施の形態では、光学的被検知部として複数の長孔513を設けているが、長孔513は一つでもよい。しかし、長孔513の間隔がある程度短い方が高い精度を確保することができるので、複数の長孔513を等間隔に設けるのが望ましい。
【0047】
また、光透過部として機能する長孔513の代わりに、円筒部512に反射部514(図6参照)を光学的被検知部として設けることも可能である。その場合には、受光素子522は、反射部514により反射された発光素子521からの光を受光可能な位置に配置する。反射部514は、鏡や、金属光沢による反射面を有する金属板などとすることができる。
【0048】
更に、本実施の形態では、測定装置5を走行距離の測定に利用しているが、測定装置5から出力される検知信号の時間当たりを算出することで走行スピードの測定にも利用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の測定装置およびこれを用いた測定システムは、正確な走行軌跡を得ることができるので、電子地図や地図本などの制作に最適である。
【符号の説明】
【0050】
1…測定システム、2…測位装置、3…ビデオカメラ、4…角度センサ、5…測定装置、51…回転体、511…円盤部、511a…貫通孔、512…円筒部、513…長孔、514…反射部、52…光学的検出器、521…発光素子、522…受光素子、6…データ収集処理装置、61…入力インタフェース手段、62…記憶手段、63…データ処理手段、631…走行距離算出手段、632…データ格納手段、633…角度変化量推定手段、634…角度変化量算出手段、635…走行状態判定手段、64…報知手段、W…ホイール、WH…ホイールハブ、F…本体フレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学的被検知部が設けられ、タイヤを支持するホイールと該ホイールを車両の本体フレームに取り付けるホイールハブとの間に、回転中心を合わせて配置された回転体と、
前記本体フレームに固定され、前記回転体の回転に伴う前記光学的被検知部の位置の変化を検出する光学的検出器とを備えたことを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記回転体は、前記ホイールと前記ホイールハブの取付面との間に装着される円盤部と、該円盤部から前記本体フレームに向かって延びて前記ホイールハブの外周面を包囲する円筒部とから形成され、
前記光学的被検知部は、前記円筒部の周囲面に沿って設けられ、
前記光学的検出器は、前記本体フレームに取付具を介して取り付けられている請求項1記載の測定装置。
【請求項3】
前記光学的被検知部は、光を透過する光透過部であり、
前記光学的検出器は、前記光透過部を挟んで対向させた、前記光透過部へ向けて発光する発光部と、前記光透過部を通過した透過光を受光する受光部とからなる請求項1記載の測定装置。
【請求項4】
前記光学的被検知部は、光反射させる光反射部であり、
前記光学的検出器は、前記光反射部へ向けて発光する発光部と、前記光反射部からの反射光を受光する受光部とからなる請求項1記載の測定装置。
【請求項5】
前記請求項1記載の測定装置が前記車両の前輪および後輪のうちの少なくとも一方の左右それぞれの車輪に配置され、
前記光学的検出器が出力する検知信号、および前記タイヤの円周データに基づいてそれぞれの前記タイヤの走行距離を算出する走行距離算出手段と、
前記左右のタイヤの走行距離の差、および前記左右のタイヤ間の距離に基づいて前記車両の進行方向の角度変化量を推定する角度変化量推定手段と
を備えたことを特徴とする測定システム。
【請求項6】
前記車両の進行方向の角度変化を検出し角度データとして出力する角度検出手段と、
前記角度データに基づく角度変化量を算出する角度変化量算出手段と、
該角度変化量算出手段が算出した角度変化量と前記角度変化量推定手段が推定した角度変化量とを比較し、前記車両の走行状態を判定する走行状態判定手段とを備えたことを特徴とする請求項5記載の測定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−237173(P2010−237173A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−88031(P2009−88031)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(502002186)株式会社ジオ技術研究所 (23)
【Fターム(参考)】