説明

溶融樹脂材料成形装置、溶融樹脂材料成形方法、多層プリフォーム用樹脂塊、および多層プリフォーム用樹脂塊を用いて成形された多層プリフォーム

【課題】圧縮成形された後に中間層用樹脂材料が均一に配置され、品質の良い多層プリフォームを製造することができる溶融樹脂材料成形装置を提供する。
【解決手段】溶融樹脂材料成形装置10は、多層プリフォーム用樹脂塊20を成形するものである。すなわち溶融樹脂材料成形装置10は、内外層用樹脂材料11を供給する第1樹脂材料導入路13と、中間層用樹脂材料12を供給する第2樹脂材料導入路14と、第1樹脂材料導入路13および第2樹脂材料導入路14に連通する排出口15とを備えている。このうち第1樹脂材料導入路13は、第2樹脂材料導入路14の外側に配置された外側通路13aと、第2樹脂材料導入路14の内側に配置された内側通路13bとからなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮成形された後に中間層用樹脂材料が均一に配置され、品質の良い多層プリフォーム用樹脂塊を成形することができる溶融樹脂材料成形装置、溶融樹脂材料成形方法、溶融樹脂材料成形装置により成形された多層プリフォーム用樹脂塊、およびその多層プリフォーム用樹脂塊を用いて成形された多層プリフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ブロー成形により成形された多層合成樹脂ボトル等の多層合成樹脂容器が知られている。例えば、多層合成樹脂容器の内部にガスバリア性等に優れた中間層を配置したものや、多層合成樹脂容器の内部にリサイクル樹脂層からなる中間層を配置したもの等が知られている。このような多層合成樹脂容器は、中間層を有していることにより、1層からなる合成樹脂容器では実現できない機能、例えば高いガスバリア性を有している。
【0003】
またペットボトル等の合成樹脂容器は、まずプリフォームを成形した後、このプリフォームをブロー成形で膨張させることにより製造されるのが一般的である。このプリフォームを成形する方法の一つとして圧縮成形方法が知られている。すなわち、まず熱可塑性樹脂の材料を可塑化し、溶融状態として押出す。次に、このようにして押出された熱可塑性樹脂(溶融樹脂材料)がカッターにより一定の長さに切り離され、溶融樹脂塊(ビレット)が生成される。次にカッターで切り離された溶融樹脂塊は、圧縮成形用金型のメス型内に投下される。その後、メス型内の溶融樹脂塊は、圧縮成形金型のオス型により圧縮されて賦形され、更に冷却されてプリフォームとなる。
【0004】
上述した多層合成樹脂容器も、同様に圧縮成形により成形された多層プリフォームをブロー成形することにより製造することができる(例えば特許文献1参照)。すなわち内外層用樹脂材料と中間層樹脂材料とを有する多層プリフォーム用樹脂塊(多層溶融樹脂塊)をメス型内に投入し、これをオス型により圧縮して多層プリフォームを成形することができる。
【0005】
ところで、メス型内の溶融樹脂塊をオス型により圧縮する際、オス型付近に存在する溶融樹脂材料は、オス型の移動する方向(下向き)に引きずられる。これに対してメス型付近の溶融樹脂材料は、オス型に圧縮されることによりオス型とは逆向き(上向き)に流れる。すなわち、圧縮成形される際、オス型付近に存在する溶融樹脂材料とメス型付近に存在する溶融樹脂材料は、互いに逆方向に流れようとする性質がある。
【0006】
このため、上述した特許文献1に記載されているような多層プリフォーム用樹脂塊を用いた場合、圧縮成形後、中間層樹脂材料が多層プリフォームの口部まで到達しないおそれがある。またこのような多層プリフォーム用樹脂塊を用いた場合、多層プリフォームの中間層の厚みが不均一であったり、中間層が多層プリフォームの内径側に極端に偏る、等の問題がある。
【特許文献1】特開2005−125532号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、圧縮成形された後に中間層用樹脂材料が均一に配置され、品質の良い多層プリフォームを製造することができる溶融樹脂材料成形装置、溶融樹脂材料成形方法、多層プリフォーム用樹脂塊、および多層プリフォーム用樹脂塊を用いて成形された多層プリフォームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、多層プリフォーム用樹脂塊を成形する溶融樹脂材料成形装置であって、内外層用樹脂材料を供給する第1樹脂材料導入路と、中間層用樹脂材料を供給する第2樹脂材料導入路と、第1樹脂材料導入路と第2樹脂材料導入路とに連通する排出口と、を備え、第1樹脂材料導入路は、第2樹脂材料導入路の外側に配置された外側通路と、第2樹脂材料導入路の内側に配置された内側通路とからなっていることを特徴とする溶融樹脂材料成形装置である。
【0009】
本発明は、第1樹脂材料導入路の内側通路を開閉する第1の弁が設けられていることを特徴とする溶融樹脂材料成形装置である。
【0010】
本発明は、第2樹脂材料導入路を開閉する第2の弁が設けられていることを特徴とする溶融樹脂材料成形装置である。
【0011】
本発明は、溶融樹脂材料成形装置を用いて内外層用樹脂材料と中間層用樹脂材料とからなる多層プリフォーム用樹脂塊を成形する溶融樹脂材料成形方法であって、第1の弁を閉とした状態で第1樹脂材料導入路の外側通路から内外層用樹脂材料を供給するとともに、第2樹脂材料導入路から中間層用樹脂材料を供給する工程と、第1の弁を開として、第1樹脂材料導入路の外側通路から内外層用樹脂材料を中間層用樹脂材料上方へ供給する工程と、第2樹脂材料導入路からの中間層用樹脂材料の供給を停止する工程と、排出口下方へ押出された内外層用樹脂材料を切断することにより、内外層用樹脂材料と中間層用樹脂材料とからなる多層プリフォーム用樹脂塊を生成する工程と、を備えたことを特徴とする溶融樹脂材料成形方法である。
【0012】
本発明は、内外層用樹脂材料と、内外層用樹脂材料内に配置され、断面U字形状からなる中間層用樹脂材料と、を含み、中間層用樹脂材料は、内外層用樹脂材料の外面近傍に配置されていることを特徴とする多層プリフォーム用樹脂塊である。
【0013】
本発明は、多層プリフォーム用樹脂塊の任意箇所における内外層用樹脂材料の外径をφAとし、この箇所における中間層用樹脂材料の内径をφBとした場合、φB≧(φA/√2)の関係が成立することを特徴とする多層プリフォーム用樹脂塊である。
【0014】
本発明は、多層プリフォーム用樹脂塊の最大外径をφDmaxとし、多層プリフォーム用樹脂塊の全長をLmaxとした場合、Lmax/φDmax≦3.0となることを特徴とする多層プリフォーム用樹脂塊である。
【0015】
本発明は、多層プリフォーム用樹脂塊を圧縮成形して構成された多層プリフォームである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、圧縮成形された後、多層プリフォームの中間層の厚みが均一となり、中間層が多層プリフォームの内径側に偏ることがないので、品質の良い多層プリフォームを製造することができる。
【0017】
また、本発明によれば、圧縮成形された後、多層プリフォームの底部から胴部上端まで中間層が途切れることなく均一に配置された多層プリフォームを得ることができる。
【0018】
さらに、本発明によれば、溶融樹脂材料成形装置により、断面U字形状からなる中間層用樹脂材料が内外層用樹脂材料の外面近傍に配置されている多層プリフォーム用樹脂塊を容易に製造することができる。
【0019】
さらにまた、本発明によれば、溶融樹脂材料成形装置の第1樹脂材料導入路の内側通路を開閉する第1の弁が設けられているので、内側通路から供給される内外層用樹脂材料の量を容易に調整することができる。
【0020】
さらにまた、本発明によれば、第2樹脂材料導入路を開閉する第2の弁が設けられているので、第2樹脂材料導入路から供給される中間層用樹脂材料の量を容易に調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
第1の実施の形態
以下、本発明の第1の実施の形態について、図1乃至図11を参照して説明する。
ここで、図1は、本発明の第1の実施の形態を示す断面図であり、図2は、多層プリフォーム用樹脂塊を示す断面図である。また図3(a)〜(c)は、本発明の第1の実施の形態の作用を示す図であり、図4は、圧縮成型用金型を示す断面図である。また図5は、圧縮成型用金型における樹脂の流動を示す拡大図であり、図6は、多層プリフォームを示す断面図である。また図7は、内外層用樹脂材料の外径φAと中間層用樹脂材料の内径φBとの関係を説明するための多層プリフォーム用樹脂塊の断面図であり、図8は、本発明の第1の実施の形態の変形例1を示す断面図である。また図9は、本発明の第1の実施の形態の変形例2を示す断面図であり、図10および図11は、本発明の第1の実施の形態の変形例3を示す断面図である。
【0022】
まず、図1により、本実施の形態による溶融樹脂材料成形装置の概略について説明する。
図1に示すように、溶融樹脂材料成形装置(多層ダイ)10は、多層プリフォーム用樹脂塊20(図2参照)を成形するものである。すなわち溶融樹脂材料成形装置10は、溶融した内外層用樹脂材料11を供給する第1樹脂材料導入路13と、溶融した中間層用樹脂材料12を供給する第2樹脂材料導入路14と、第1樹脂材料導入路13と第2樹脂材料導入路14とに連通する排出口15とを備えている。このうち第1樹脂材料導入路13は、第2樹脂材料導入路14の外側に配置された外側通路13aと、第2樹脂材料導入路14の内側に配置された内側通路13bとからなっている。すなわち第1樹脂材料導入路13は分岐点13cで分岐し、ここで第1押出機(後述)からの内外層用樹脂材料11が外側通路13aと内側通路13bとに分岐して送られるようになっている。
【0023】
また、排出口15の上方に合流部17が設けられており、この合流部17において、外側通路13aからの内外層用樹脂材料11と、内側通路13bからの内外層用樹脂材料11と、第2樹脂材料導入路14からの中間層用樹脂材料12とが互いに合流するようになっている。
【0024】
さらに、第1樹脂材料導入路13の内側通路13b内に、上下方向に移動することによりこの内側通路13bを開閉する第1の弁16が設けられている。この第1の弁16が上下方向に移動することにより、第1樹脂材料導入路13の内側通路13bから合流部17へ供給される内外層用樹脂材料11の量を調整することができる。
【0025】
溶融樹脂材料成形装置10には、図示しない第1押出機および図示しない第2押出機が接続されている。このうち第1押出機は、内外層用樹脂材料11を溶融するとともに、内外層用樹脂材料11を第1樹脂材料導入路13に供給する。また第2押出機は、中間層用樹脂材料12を溶融するとともに、中間層用樹脂材料12を第2樹脂材料導入路14に供給する。
【0026】
ところで、内外層用樹脂材料11としては、ポリエチレンテレフタレートやポリプロピレン等の熱可塑性樹脂を用いることができる。また中間層用樹脂材料12としては、MXナイロンやエチレン−ビニルアルコール共重合樹脂等、ガスバリア性の高い熱可塑性樹脂を用いることができる。あるいは、中間層用樹脂材料12として、内外層用樹脂材料11と同種類のリサイクル材等を用いることもできる。
【0027】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について、図3(a)〜(c)を用いて述べる。
まず、第1の弁16を降下させ、第1樹脂材料導入路13の内側通路13bを閉とした状態で、内外層用樹脂材料11用の第1押出機および中間層用樹脂材料12用の第2押出機を作動させる。これにより、第1樹脂材料導入路13の外側通路13aから合流部17に内外層用樹脂材料11が供給され、第2樹脂材料導入路14から合流部17に中間層用樹脂材料12が供給される(図3(a))。
【0028】
次に、第1の弁16を上昇させて内側通路13bを開とし、これにより内側通路13bから合流部17に内外層用樹脂材料11が供給される(図3(b))。
【0029】
次に、第2押出機を停止することにより、中間層用樹脂材料12の合流部17への供給を停止する(図3(c))。この際、内外層用樹脂材料11は、外側通路13aおよび内側通路13bから合流部17へ引き続き供給される。このようにして内外層用樹脂材料11内に中間層用樹脂材料12がU字形状に配置される(図3(c)の符号12a)。
【0030】
その後、排出口15から下方に押出された内外層用樹脂材料11および中間層用樹脂材料12からなる樹脂塊を、図示しないカッターにより切断し、これにより多層プリフォーム用樹脂塊20を得ることができる。
【0031】
次に、図2を用いて、このようにして得られた多層プリフォーム用樹脂塊について説明する。
図2に示すように、多層プリフォーム用樹脂塊20は、断面略角丸矩形形状からなる内外層用樹脂材料11と、内外層用樹脂材料11内に配置され、断面U字形状からなる中間層用樹脂材料12とを含んでいる。このうち中間層用樹脂材料12は、内外層用樹脂材料11の外面11a近傍に配置されている。
【0032】
また、図2に示すように、多層プリフォーム用樹脂塊20の任意箇所(とりわけ図2において符号Mで示す部分を除く任意箇所)における内外層用樹脂材料11の外径をφAとし、この箇所における中間層用樹脂材料12の内径をφBとした場合、φB≧(φA/√2)の関係が成立する。このような関係は、第1の弁16を操作することにより、外側通路13a内の内外層用樹脂材料11の量と内側通路13b内の内外層用樹脂材料11の量との比率をコントロールすることにより実現することができる。なお、上述した符号Mで示される箇所とは、多層プリフォーム用樹脂塊20のうち、後述する圧縮成形用金型21のメス型22底部のR部分(図4の符号M)に対応する箇所である。
【0033】
ところで図2に示すように、多層プリフォーム用樹脂塊20の最大外径をφDmaxとし、多層プリフォーム用樹脂塊20の全長をLmaxとした場合、Lmax/φDmax≦3.0となるのが望ましく、Lmax/φDmax≦2.7となるのがより望ましく、Lmax/φDmax≦2.2となるのが更に望ましい。
【0034】
次に、図4を用いて、多層プリフォーム用樹脂塊を圧縮成形して多層プリフォームを生成する圧縮成形用金型について説明する。
すなわち図4に示すように、圧縮成形用金型21は、メス型22と、メス型22に対応して設けられ、メス型22との間で多層プリフォーム用樹脂塊20を圧縮成形するオス型23とを有している。また、メス型22上に、後述する多層プリフォーム30の口部31を成形する摺動可能な2つのスライド型24、24がオス型23を囲むように設けられている。
【0035】
次に、図6を用いて、圧縮成形用金型により多層プリフォーム用樹脂塊を圧縮成形して得られた多層プリフォームについて説明する。
すなわち図6に示すように、多層プリフォーム30は、口部31と、口部31に連なる胴部32と、胴部32に連なる底部35とを有している。このうち胴部32は、内外層用樹脂材料11からなる内外層33と、内外層33内に配置され、中間層用樹脂材料12からなる中間層34とを含んでいる。
【0036】
次に、圧縮成形用金型を用いて多層プリフォーム用樹脂塊を圧縮成形し、多層プリフォームを得る方法について述べる。
まず、図4に示すように、溶融樹脂材料成形装置10により成形された多層プリフォーム用樹脂塊20を、図示しない樹脂塊搬送装置を介して圧縮成形用金型21のメス型22内に投入する。
【0037】
次に、圧縮成形用金型21を閉とする。すなわち左右のスライド型24、24をいずれも中央側に寄せてオス型23とともに下降させる。これにより、多層プリフォーム用樹脂塊20はオス型23により圧縮され、メス型22、オス型23、およびスライド型24により賦形される。その後、このようにして賦形された多層プリフォーム用樹脂塊20は、冷却されて多層プリフォーム30として成形される。
【0038】
図5は、このようにして多層プリフォーム用樹脂塊20がメス型22とオス型23とに挟まれ、これにより多層プリフォーム用樹脂塊20の樹脂が流動する様子を示した図である。すなわちオス型23付近の樹脂は、オス型23が下降するのに引きずられて下方に向かって流れる。これに対し、メス型22付近の樹脂は、オス型23により押された樹脂が下から上昇してくるのに伴って上方に向かって流れる。すなわち、樹脂の流動方向が安定している(上向きの流れのみの)領域と、流動方向が逆転する境目とが存在する(図5参照)。
【0039】
ここで上述したように、多層プリフォーム用樹脂塊20のうち符号Mで示す領域以外の箇所においてφB≧(φA/√2)という関係が成立している。すなわち図7に示すように、多層プリフォーム用樹脂塊20全体の体積をVとすると、符号25で示す多層プリフォーム用樹脂塊20の中心部分(直径φA/√2)の体積は、多層プリフォーム用樹脂塊20の体積(V)の半分の体積(V/2)となる。ここで、多層プリフォーム用樹脂塊20のうち中心部分25を除いた部分26内に中間層用樹脂材料12が配置されていれば(すなわちφA>φB≧(φA/√2)の関係にあれば)、圧縮成形の際、中間層用樹脂材料12が樹脂の流動方向が安定している領域内を流れることが分かっている。このようにして、多層プリフォーム用樹脂塊20を圧縮成形した後、多層プリフォーム30の底部35から少なくとも胴部32上端まで中間層34の厚みを一定にすることができ、また中間層34を均一に途切れることなく配置することができる。
【0040】
また上述したように、多層プリフォーム用樹脂塊20の最大外径をφDmaxとし、多層プリフォーム用樹脂塊20の全長をLmaxとした場合、Lmax/φDmax≦3.0となるのが望ましく、Lmax/φDmax≦2.7となるのがより望ましく、Lmax/φDmax≦2.2となるのが更に望ましい。これに対して、Lmax/φDmaxの値が大きすぎると、上述した樹脂の流動方向が逆転する境目における剪断速度が大きくなり、樹脂の流動方向が安定している領域が狭くなる。したがって、Lmax/φDmaxはある程度小さくすることが望ましい。
【0041】
このように、本実施の形態によれば、圧縮成形された後、多層プリフォーム30の中間層34の厚みが均一となり、中間層34が多層プリフォーム30の内径側に偏ることがないので、品質の良い多層プリフォーム30を製造することができる。
【0042】
また、本実施の形態によれば、圧縮成形された後、多層プリフォーム30の底部35から胴部32上端まで中間層が途切れることなく均一に配置された多層プリフォーム30を得ることができる。
【0043】
さらに、本実施の形態によれば、溶融樹脂材料成形装置10により、断面U字形状からなる中間層用樹脂材料12が内外層用樹脂材料11の外面11a近傍に配置されている多層プリフォーム用樹脂塊20を容易に製造することができる。
【0044】
さらにまた、本実施の形態によれば、溶融樹脂材料成形装置10の第1樹脂材料導入路13の内側通路13bを開閉する第1の弁16が設けられているので、内側通路13bから供給される内外層用樹脂材料11の量を容易に調整することができる。
【0045】
変形例1
次に、本実施の形態における多層プリフォーム用樹脂塊の変形例1を図8により説明する。
図8に示す変形例1は、多層プリフォーム用樹脂塊20の中間層用樹脂材料12の量が、図2に示す多層プリフォーム用樹脂塊20の中間層用樹脂材料12の量より多くなっているものであり、他は図2に示す多層プリフォーム用樹脂塊と同一である。すなわち、多層プリフォーム30をブロー成形して得られる容器のどの部分にどの程度の厚みを有する中間層を配置するかは、その容器に求める性能やコスト等により異なっている。このような要求に応じて、図8または図9(後述)に示すような多層プリフォーム用樹脂塊20を適宜作製することもできる。
【0046】
すなわち図8において、多層プリフォーム用樹脂塊20は、断面略角丸矩形形状からなる内外層用樹脂材料11と、内外層用樹脂材料11内に配置され、断面U字形状からなる中間層用樹脂材料12とを含んでいる。このうち中間層用樹脂材料12は、内外層用樹脂材料11の外面11a近傍に配置されている。この中間層用樹脂材料12の量は、図2に示す多層プリフォーム用樹脂塊20の中間層用樹脂材料12の量より多くなっている。
【0047】
次に、図8に示す多層プリフォーム用樹脂塊20を作製する方法について述べる。
図1に示す溶融樹脂材料成形装置10において、第1の弁16を降下させ、第1樹脂材料導入路13の内側通路13bを閉とした状態で、第1押出機および第2押出機を作動させる。この際、第2樹脂材料導入路14から合流部17に、中間層用樹脂材料12をやや多めに供給する。次に、第1の弁16を上昇させて内側通路13bを開とし、内側通路13bから合流部17に、内外層用樹脂材料11をやや少なめに供給する。
【0048】
その後、第2押出機を停止させる一方、内外層用樹脂材料11は、外側通路13aおよび内側通路13bから引き続き供給する。その後、排出口15から下方に押出された樹脂塊を図示しないカッターにより切断し、これにより、図8に示す多層プリフォーム用樹脂塊20を得ることができる。
【0049】
変形例2
次に、本実施の形態における多層プリフォーム用樹脂塊の変形例2を図9により説明する。
図9に示す変形例2は、多層プリフォーム用樹脂塊20の中間層用樹脂材料12の量が、図2に示す多層プリフォーム用樹脂塊20の中間層用樹脂材料12の量より少なくなっているものであり、他は図2に示す多層プリフォーム用樹脂塊と同一である。すなわち中間層用樹脂材料12は内外層用樹脂材料11より高価な場合もあるため、中間層用樹脂材料12の使用量を少なくするように、底部の中間層を省略するものである。
【0050】
すなわち図9において、多層プリフォーム用樹脂塊20は、断面略角丸矩形形状からなる内外層用樹脂材料11と、内外層用樹脂材料11内に配置された中間層用樹脂材料12とを含んでいる。このうち中間層用樹脂材料12は、内外層用樹脂材料11の外面11a近傍に配置されている。この中間層用樹脂材料12の量は、図2に示す多層プリフォーム用樹脂塊20の中間層用樹脂材料12の量より少なくなっている。
【0051】
次に、図9に示す多層プリフォーム用樹脂塊20を作製する方法について述べる。
図1に示す溶融樹脂材料成形装置10において、第1の弁16を上昇させ、第1樹脂材料導入路13の内側通路13bを開とした状態で、第1押出機を作動させる。この際内外層用樹脂材料11は、外側通路13aおよび内側通路13bから合流部17へ供給される。次に押出機2を作動させ、第2樹脂材料導入路14から合流部17に、中間層用樹脂材料12を供給する。
【0052】
その後、第2押出機を停止させる一方、内外層用樹脂材料11は、外側通路13aおよび内側通路13bから引き続き供給する。その後、排出口15から下方に押出された樹脂塊を、図示しないカッターにより切断し、これにより、図9に示す多層プリフォーム用樹脂塊20を得ることができる。
【0053】
変形例3
次に、本実施の形態における多層プリフォーム用樹脂塊および多層プリフォームの変形例3を図10および図11により説明する。
図10および図11に示す変形例3は、多層プリフォーム30が広口かつ短長となっているものであり、多層プリフォーム用樹脂塊20もこれに対応する形状となっている。他は図2および図4に示す多層プリフォーム用樹脂塊ならびに図6に示す多層プリフォームと同一である。
【0054】
すなわち図10において、多層プリフォーム用樹脂塊20は、多層プリフォーム30を成形する圧縮成形用金型21のメス型22の形状に合わせて、下部の直径より上部の直径が大きくなっている。すなわち多層プリフォーム用樹脂塊20は、下部の直径より上部の直径が大きい内外層用樹脂材料11と、内外層用樹脂材料11内に配置され、断面U字形状からなる中間層用樹脂材料12とを含んでいる。このうち中間層用樹脂材料12は、内外層用樹脂材料11の外面11a近傍に配置されている。
【0055】
この多層プリフォーム用樹脂塊20(図10参照)を圧縮成形用金型21により圧縮成形することにより、図11に示す多層プリフォーム30が得られる。
すなわち図11に示すように、多層プリフォーム30は、口部31と、口部31に連なる胴部32と、胴部32に連なる底部35とを有している。このうち胴部32は、内外層用樹脂材料11からなる内外層33と、内外層33内に配置され、中間層用樹脂材料12からなる中間層34とを含んでいる。また口部31は、図6に示す多層プリフォームの口部より広口となっており、胴部32の直径は、口部31側(上側)から底部35側(下側)に向けて徐々に小さくなっている。
【0056】
次に、図10に示す多層プリフォーム用樹脂塊20を作製する方法について述べる。
図1に示す溶融樹脂材料成形装置10において、第1の弁16を降下させ、第1樹脂材料導入路13の内側通路13bを閉とした状態で、第1押出機および第2押出機を作動させる。次に、第1の弁16をわずかに上昇させて内側通路13bを開とし、内側通路13bから合流部17に内外層用樹脂材料11を供給する。その後、第1の弁16を次第に上昇させていき、これにより、内側通路13bから合流部17に供給される内外層用樹脂材料11の量が徐々に増加する。
【0057】
その後、第2押出機を停止させる一方、内外層用樹脂材料11は、外側通路13aおよび内側通路13bから引き続き供給する。その後、排出口15から下方に押出された樹脂塊を、図示しないカッターにより切断し、これにより、図10に示す多層プリフォーム用樹脂塊20を得ることができる。
【0058】
第2の実施の形態
次に、本発明の第2の実施の形態について図12を参照して説明する。
ここで、図12は、本発明の第2の実施の形態を示す断面図である。図12に示す第2の実施の形態は、溶融樹脂材料成形装置10が第2樹脂材料導入路14を開閉する第2の弁18を有している点が異なるものであり、他の構成や作用効果は上述した第1の実施の形態と略同一である。図12において、図1乃至図11に示す第1の実施の形態と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0059】
図12に示すように、溶融樹脂材料成形装置10の中央部に、上下方向に移動することにより第2樹脂材料導入路14を開閉する第2の弁18が設けられている。これにより、第2樹脂材料導入路14から合流部17側へ供給される中間層用樹脂材料12の量を容易に調整することができる。すなわち第2押出機の作動と非作動とを切り替えるのみで第2樹脂材料導入路14からの中間層用樹脂材料12の量を制御する場合と比較して、より精度良く中間層用樹脂材料12の量を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明による溶融樹脂材料成形装置の第1の実施の形態を示す断面図。
【図2】本発明による多層プリフォーム用樹脂塊の第1の実施の形態を示す断面図。
【図3】本発明による溶融樹脂材料成形装置の第1の実施の形態の作用を示す図。
【図4】圧縮成型用金型を示す断面図。
【図5】圧縮成型用金型における樹脂の流動を示す拡大図。
【図6】本発明による多層プリフォームの第1の実施の形態を示す断面図。
【図7】内外層用樹脂材料の外径φAと中間層用樹脂材料の内径φBとの関係を説明するための多層プリフォーム用樹脂塊の断面図。
【図8】本発明による第1の実施の形態の変形例1を示す断面図。
【図9】本発明による第1の実施の形態の変形例2を示す断面図。
【図10】本発明による第1の実施の形態の変形例3を示す断面図。
【図11】本発明による第1の実施の形態の変形例3を示す断面図。
【図12】本発明による溶融樹脂材料成形装置の第2の実施の形態を示す断面図。
【符号の説明】
【0061】
10 溶融樹脂材料成形装置
11 内外層用樹脂材料
12 中間層用樹脂材料
13 第1樹脂材料導入路
13a 外側通路
13b 内側通路
14 第2樹脂材料導入路
15 排出口
16 第1の弁
17 合流部
18 第2の弁
20 多層プリフォーム用樹脂塊
21 圧縮成形用金型
22 メス型
23 オス型
24 スライド型
30 多層プリフォーム
31 口部
32 胴部
33 内外層
34 中間層
35 底部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層プリフォーム用樹脂塊を成形する溶融樹脂材料成形装置であって、
内外層用樹脂材料を供給する第1樹脂材料導入路と、
中間層用樹脂材料を供給する第2樹脂材料導入路と、
第1樹脂材料導入路と第2樹脂材料導入路とに連通する排出口と、を備え、
第1樹脂材料導入路は、第2樹脂材料導入路の外側に配置された外側通路と、第2樹脂材料導入路の内側に配置された内側通路とからなっていることを特徴とする溶融樹脂材料成形装置。
【請求項2】
第1樹脂材料導入路の内側通路を開閉する第1の弁が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の溶融樹脂材料成形装置。
【請求項3】
第2樹脂材料導入路を開閉する第2の弁が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の溶融樹脂材料成形装置。
【請求項4】
請求項2に記載の溶融樹脂材料成形装置を用いて内外層用樹脂材料と中間層用樹脂材料とからなる多層プリフォーム用樹脂塊を成形する溶融樹脂材料成形方法であって、
第1の弁を閉とした状態で第1樹脂材料導入路の外側通路から内外層用樹脂材料を供給するとともに、第2樹脂材料導入路から中間層用樹脂材料を供給する工程と、
第1の弁を開として、第1樹脂材料導入路の外側通路から内外層用樹脂材料を中間層用樹脂材料上方へ供給する工程と、
第2樹脂材料導入路からの中間層用樹脂材料の供給を停止する工程と、
排出口下方へ押出された内外層用樹脂材料を切断することにより、内外層用樹脂材料と中間層用樹脂材料とからなる多層プリフォーム用樹脂塊を生成する工程と、を備えたことを特徴とする溶融樹脂材料成形方法。
【請求項5】
内外層用樹脂材料と、
内外層用樹脂材料内に配置され、断面U字形状からなる中間層用樹脂材料と、を含み、
中間層用樹脂材料は、内外層用樹脂材料の外面近傍に配置されていることを特徴とする多層プリフォーム用樹脂塊。
【請求項6】
多層プリフォーム用樹脂塊の任意箇所における内外層用樹脂材料の外径をφAとし、この箇所における中間層用樹脂材料の内径をφBとした場合、φB≧(φA/√2)の関係が成立することを特徴とする請求項5に記載の多層プリフォーム用樹脂塊。
【請求項7】
多層プリフォーム用樹脂塊の最大外径をφDmaxとし、多層プリフォーム用樹脂塊の全長をLmaxとした場合、Lmax/φDmax≦3.0となることを特徴とする請求項5または6に記載の多層プリフォーム用樹脂塊。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれかに記載の多層プリフォーム用樹脂塊を圧縮成形して構成された多層プリフォーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−162244(P2008−162244A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−413(P2007−413)
【出願日】平成19年1月5日(2007.1.5)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】