説明

炊飯器

【課題】半導体スイッチング素子のゲート端子への入力電圧をオン時間で調整し、半導体スイッチング素子の損失を低減する。
【解決手段】交流電源を直流電源に変換する第一の直流電源回路と、第一の直流電源回路より電源電圧を供給され、第一の直流電源回路の出力電圧より低い電圧にする第二の直流電源回路を有し、第一の直流電源回路は前記半導体スイッチング素子のゲート端子のスレッショルド電圧より約2倍以上の電圧を出力するように構成され、制御部は第二の直流電源回路より電源電圧を供給され、駆動回路は前記第一の直流電源回路より電力供給され、半導体スイッチング素子のゲート端子に入力する電圧は制御部が出力するオン信号の時間の長さで調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般家庭で使用する誘導加熱を利用した炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の誘導加熱式調理器には,鍋を誘導加熱する加熱コイルと,前記加熱コイルをオンオフする電圧駆動型(ゲート端子を有する)スイッチング素子(半導体スイッチング素子)と、前記スイッチング素子をオンオフする制御部と、前記制御部の信号を受け前記スイッチング素子のゲート端子を駆動する駆動部(駆動回路)で構成され、駆動部は前記スイッチング素子をオンする時に前記スイッチング素子のゲート端子への充電電流を制限する充電抵抗と、前記スイッチング素子をオフする時に前記スイッチング素子のゲート端子に充電された電荷を放電する放電抵抗を有するものがあった。(例えば特許文献1参照)
このような構成にすることでスイッチング素子をオンする時に必要な電力が低減し、電源回路の出力容量を小さくすることができた。また、スイッチング素子をオフするときに蓄積電荷が少ないのでスポット的な発熱を抑え、スポット的な発熱によるスイッチング素子の破壊を抑えることができる。
【0003】
しかし、このような電圧駆動型(ゲート端子を有する)スイッチング素子を用いてスイッチング速度を高速化していった結果、スイッチング素子をオフするときのターンオフ損失が低減されていったが、スイッチング素子のオン動作も速くなり、ターンオン時のスパイク電流が増加し、これを対策するために駆動部の充電抵抗を大きくしゲート端子への充電電流を低減することがあった。
【0004】
しかし、この対策ではスパイク電流のピーク値は抑えられても、スイッチング素子のゲート端子の電圧がスレッショルド電圧から上がらず、定常オン動作時のコレクタ−エミッタ間の電圧が上昇し、定常オン時の損失が増加するという課題が発生した。
【0005】
そこで、定常オン損失を低減するために、スイッチング素子の素子電圧を検知する素子電圧検知部を設け、素子電圧が所定値より高い時は駆動部の充電抵抗を増加させるインピーダンス可変手段を設けたものがあった。(例えば特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2870945号公報
【特許文献2】特開平11−329697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の構成では、スイッチング素子の充電抵抗を可変にしないと、スイッチング素子のターンオン時のスパイク電流によるターンオン損失の低減と、スイッチング素子の定常オン時の定常オン損失の低減を両立できないという課題を有するものであった。
【0008】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので駆動回路を介して半導体スイッチング素子に電力供給するための第一の直流電源回路を有し、前記第一の直流電源回路から制御部に電力供給するための第二の直流電源回路を構成し、半導体スイッチング素子のオン時間によって半導体スイッチング素子のゲート端子の入力電圧を調整する誘導加熱式の炊飯器を
提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記従来の課題を解決するために、本発明の誘導加熱式炊飯器は、鍋を誘導加熱する加熱コイルと、前記加熱コイルに並列接続または直列接続したコンデンサと、前記加熱コイルに接続し、前記加熱コイルを導通、遮断する半導体スイッチング素子を有するインバータ回路と,交流電源を整流し前記インバータ回路に電力供給する整流回路と、前記半導体スイッチング素子のゲート端子をオンオフする駆動回路と、前記駆動回路を介して前記半導体スイッチング素子をオンオフ制御する制御部と、前記交流電源を直流電源に変換する第一の直流電源回路と、前記第一の直流電源回路より電源電圧を供給され、前記第一の直流電源回路の出力電圧より低い電圧にする第二の直流電源回路を有し、前記第一の直流電源回路は前記半導体スイッチング素子のゲート端子のスレッショルド電圧より約2倍以上の電圧を出力するように構成され、前記制御部は前記第二の直流電源回路より電源電圧を供給され、前記駆動回路は前記第一の直流電源回路より電力供給され、前記半導体スイッチング素子のゲート端子に入力する電圧は前記制御部が出力するオン信号の時間の長さで調整するものである。
【0010】
半導体スイッチング素子(例えばIGBT)のゲート端子に電力供給する第一の直流電源回路の出力電圧はゲート端子のスレッショルド電圧より大きな電圧になるように構成されているため、ゲート端子の寄生容量や電流制限抵抗があっても、スレッショルド電圧から引き続きゲート端子電圧を上げることができる。
【0011】
従って、オン時間の長さが短い時は、半導体スイッチング素子のゲート端子に入力する電圧を小さくでき、高周波動作時に駆動回路の損失を小さくすることができる。また、半導体スイッチング素子の主経路(例えばIGBTのコレクタ−エミッタ間)の見かけ上のインピーダンスを大きくすることができ半導体スイッチング素子のターンオン時のターンオン電流を低減し、半導体スイッチング素子のピーク電流を抑えることができ、ターンオン損失を低減できる。
【0012】
次に、オン時間が長くなるのに応じて半導体スイッチング素子に流れる電流が加熱コイルのインダクタンス成分によって徐々に増加しても、その増加量とほぼ同じようにゲート端子電圧が大きくなるので、半導体スイッチング素子の主経路(例えばIGBTのコレクタ−エミッタ間の経路)の見かけ上のインピーダンスまたはオン電圧を小さくでき、定常オン損失を増加させないようにできる。
【0013】
以上のように、ゲート端子の寄生容量と電流制限抵抗があっても第一の直流電源回路の出力電圧をゲート端子のスレッショルド電圧より大きくしているので、ゲート端子電圧がオン時間に応じて徐々に大きくなることができることになり、オン時間を調整することでゲート端子電圧を調整することが可能となる。その結果、上記で示したような効果を発揮し、半導体スイッチング素子の定常オン損失を上げずにターンオン損失を低減でき、半導体スイッチング素子のトータル損失を低減することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の炊飯器は、第一の直流電源回路を半導体スイッチング素子のゲート端子のスレッショルド電圧より大きな電圧を出力するように構成し、制御部は第二の直流電源回路より電源電圧を供給され、駆動回路は第一の直流電源回路より電力供給され、前記半導体スイッチング素子のゲート端子に入力する電圧を前記制御部が出力するオン信号の時間の長さで調整することにより、半導体スイッチング素子に流す電流に応じて半導体スイッチング素子のゲート端子のオン電圧を調整し、半導体スイッチング素子のオン電圧(例えばコレクタ−エミッタ間電圧)を調整するので、半導体スイッチング素子の損失を低減するこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1における誘導加熱式炊飯器の主要部ブロック図
【図2】本発明の実施の形態1における誘導加熱式炊飯器の断面図
【図3】本発明の実施の形態1における誘導加熱式炊飯器の駆動回路の主要ブロック図
【図4】本発明の実施の形態1における誘導加熱式炊飯器の半導体スイッチング素子(IGBT)のオン時間とコレクタ電流の関係を示すグラフ
【図5】本発明の実施の形態1における誘導加熱式炊飯器の交流電源から供給される入力電流と半導体スイッチング素子(IGBT)のコレクタ電流の関係を示すグラフ
【図6】本発明の実施の形態1における誘導加熱式炊飯器の半導体スイッチング素子(IGBT)のコレクタ−エミッタ間電圧とコレクタ電流とゲート端子電圧の関係を示すグラフ
【図7】本発明の実施の形態1における誘導加熱式炊飯器の起動時の主要部動作波形図
【図8】従来の誘導加熱式炊飯器の起動時の主要部動作波形図
【図9】本発明の実施の形態1における誘導加熱式炊飯器の第二の入力電流設定値近傍での主要部動作波形図
【図10】本発明の実施の形態1における炊飯器の温度検知部と入力電流設定値と半導体スイッチング素子のオン時間を示すタイムチャート
【図11】本発明の実施の形態2における誘導加熱式炊飯器の主要部ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0016】
第1の発明は、鍋を誘導加熱する加熱コイルと、前記加熱コイルに接続し、前記加熱コイルを導通、遮断する半導体スイッチング素子を有するインバータ回路と,交流電源を整流し前記インバータ回路に電力供給する整流回路と、前記半導体スイッチング素子のゲート端子をオンオフする駆動回路と、前記駆動回路を介して前記半導体スイッチング素子をオンオフ制御する制御部と、前記交流電源を直流電源に変換する第一の直流電源回路と、前記第一の直流電源回路より電源電圧を供給され、前記第一の直流電源回路の出力電圧より低い電圧にする第二の直流電源回路を有し、前記第一の直流電源回路は前記半導体スイッチング素子のゲート端子のスレッショルド電圧より約2倍以上の電圧を出力するように構成され、前記制御部は前記第二の直流電源回路より電源電圧を供給され、前記駆動回路は前記第一の直流電源回路より電力供給され、前記半導体スイッチング素子のゲート端子に入力する電圧は前記制御部が出力するオン信号の時間の長さで調整することにより、半導体スイッチング素子(例えばIGBT)のゲート端子に電力供給する第一の直流電源回路の出力電圧はゲート端子のスレッショルド電圧より大きな電圧になるように構成されているため、ゲート端子の寄生容量や電流制限抵抗があっても、スレッショルド電圧から引き続きゲート端子電圧を上げることができる。
【0017】
従って、オン時間の長さが短い時は、半導体スイッチング素子のゲート端子に入力する電圧を小さくでき、高周波動作時に駆動回路の損失を小さくすることができる。また、半導体スイッチング素子をコレクタ・エミッタ間の見かけ上のインピーダンスを大きくすることができ半導体スイッチング素子のターンオン時のターンオン電流を低減し、半導体スイッチング素子のピーク電流を抑えることができ、ターンオン損失を低減できる。
【0018】
次に、オン時間が長くなるのに応じて半導体スイッチング素子に流れる電流が加熱コイルのインダクタンス成分によって徐々に増加しても、その増加量とほぼ同じようにゲート端子電圧が大きくなるので、半導体スイッチング素子の見かけ上のインピーダンスを小さくすることができ、定常オン損失を増加させないようにできる。
【0019】
以上のように、ゲート端子の寄生容量と電流制限抵抗があっても第一の直流電源回路の出力電圧をゲート端子のスレッショルド電圧より大きくしているので、ゲート端子電圧がオン時間に応じて徐々に大きくなることができることになり、オン時間を調整することでゲート端子電圧を調整することが可能となる。その結果、上記で示したような効果を発揮し、半導体スイッチング素子の定常オン損失を上げずにターンオン損失を低減でき、半導体スイッチング素子のトータル損失を低減することができる。
【0020】
第2の発明は、特に第1の発明の制御部が出力するオン信号の時間を長くすることで駆動回路が半導体スイッチング素子のゲート端子に出力する電圧を大きくすることにより、半導体スイッチング素子のオン時間が長くなって、半導体スイッチング素子の主経路に流れる電流(例えばIGBTのコレクタ電流)が増加しても、オン時間が長くなるほど徐々にゲート端子電圧が大きくなるので、半導体スイッチング素子の主経路のオン電圧(例えばIGBTのコレクタ−エミッタ間電圧)が小さくなり、半導体スイッチング素子の定常オン損失が増加しないようにできる。
【0021】
第3の発明は、特に第2の発明の誘導加熱式炊飯器の駆動回路が半導体スイッチング素子のゲート端子に出力する電圧に上限値を設けたことにより、半導体スイッチング素子のゲート端子の絶対最大定格電圧を越えないように、駆動回路がゲート端子に電圧を入力することが出来る。この結果より、第一の直流電源電圧回路の出力電圧を半導体スイッチング素子のゲート端子の絶対最大定格電圧を越えても、駆動回路がゲート端子への入力電圧に上限を設けているので、第一の直流電源回路の出力電圧を他の負荷にあわせることも可能となるものである。
【0022】
第4の発明は、特に第1から第3いずれかに記載の発明の誘導加熱式炊飯器が、交流電源から整流回路に供給される入力電流に相当する値を検知する入力電流検知回路を有し、制御部は炊飯シーケンスと保温シーケンスを記憶したマイクロコンピュータを有し、前記マイクロコンピュータは炊飯シーケンスと保温シーケンスに応じて所定の入力電流設定値を有し、この入力電流設定値と入力電流検知回路の出力値を比較して、入力電流検知回路の出力値が入力電流設定値になるようにオン時間を設定することにより、各シーケンスに応じて必要な炊飯電力、保温電力を供給できる。
【0023】
また、入力電流が低い時は、半導体スイッチング素子のターンオン電圧が発生するときもある。このときは、オン時間が短いのでIGBTのゲート端子への入力電圧が低くなり、半導体スイッチング素子の主経路(例えばIGBTのコレクタ−エミッタ間)の見かけ上のインピーダンスが大きくなりターンオン時の突入電流を小さくすることができ、ターンオン損失を低減できる。
【0024】
オン時間が長い時は、加熱コイルに流れる電流も増え、半導体スイッチング素子の主経路の電流(例えばIGBTのコレクタ電流)も大きくなる。しかし、第一の直流電源回路から駆動回路を介して半導体スイッチング素子のゲート端子に充電する充電電流によりゲート端子電圧が大きくなり、IGBTのコレクタ−エミッタ間の電圧は徐々に低くなり、IGBTの定常オン損失を低減できる。
【0025】
つまり、半導体スイッチング素子の損失は大きくターンオン損失、定常オン損失、ターンオフ損失に分類されるが、半導体スイッチング素子の主経路に流れる電流の大きさによって、これら三つの損失の比率が変化する。半導体スイッチング素子に流れる電流の大きさは半導体スイッチング素子のオン時間とほぼ比例関係であるので、オン時間の長さを調整することにより半導体スイッチング素子のゲート端子電圧を調整することになり、半導体スイッチング素子の損失を低減することができる。
【0026】
第5の発明は、特に第1から第3いずれかに記載の発明の誘導加熱式炊飯器が、加熱コイルの両端電圧に相当する電圧を検知する電圧検知回路を有し、制御部は炊飯シーケンスと保温シーケンスを記憶したマイクロコンピュータを有し、前記マイクロコンピュータは炊飯シーケンスと保温シーケンスに応じて所定の電圧設定値を有し、この電圧設定値と電圧検知回路の出力値を比較して、電圧検知回路の出力値が電圧設定値になるようにオン時間を設定することにより、各シーケンスに応じて必要な炊飯電力、保温電力を供給できる。
【0027】
また、加熱コイルの両端電圧に相当する電圧が低い時は、半導体スイッチング素子のターンオン電圧が発生するときもある。このときは、オン時間が短いので、例えば半導体スイッチング素子の一例であるIGBTのゲート端子への入力電圧が低くなり、半導体スイッチング素子の主経路(例えばIGBTのコレクタ−エミッタ間)の見かけ上のインピーダンスが大きくなりターンオン時の突入電流を小さくすることができ、ターンオン損失を低減できる。
【0028】
また、オン時間が長い時は、加熱コイルに流れる電流も増え、加熱コイルの両端端電圧に相当する電圧も大きくなる。加熱コイルに流れる電流が増えるということは、半導体スイッチング素子の一例であるIGBTの主経路の電流も大きくなる。しかし、第一の直流電源回路から駆動回路を介して半導体スイッチング素子のゲート端子に充電する充電電流によりゲート端子電圧が大きくなり、半導体スイッチング素子の一例であるIGBTのコレクタ−エミッタ間の電圧は徐々に低くなり、IGBTの定常オン損失を低減できる。
【0029】
つまり、半導体スイッチング素子の損失は大きくターンオン損失、定常オン損失、ターンオフ損失に分類されるが、半導体スイッチング素子の主経路に流れる電流の大きさによって、これら三つの損失の比率が変化する。半導体スイッチング素子に流れる電流の大きさは加熱コイルの両端電圧や半導体スイッチング素子のオン時間とほぼ比例関係であるので、オン時間の長さを調整することにより半導体スイッチング素子のゲート端子電圧を調整することになり、半導体スイッチング素子の損失を低減することができる。
【0030】
第6の発明は、特に第4または第5いずれかに記載の発明の誘導加熱式炊飯器が、制御部はオン時間の初期値を有し、この初期値は半導体スイッチング素子のゲート端子電圧のスレッショルド電圧を越える値であり、加熱コイルに起動する時は、半導体スイッチング素子のオン時間を初期値に設定することにより、起動直後に半導体スイッチング素子をオンしたときに、半導体スイッチング素子のゲート端子電圧を小さくして起動できるので、起動時に整流回路からコンデンサを介して半導体スイッチング素子の主経路に流れる電流を半導体スイッチング素子のインピーダンスを大きくすることで低減でき、半導体スイッチング素子の絶対最大電流定格を越えないようにすることができる。
【0031】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0032】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における炊飯器の主要部ブロック図である。
【0033】
図1において、1は鍋で、特に図示していないが、磁性金属や非磁性金属を複数用いた積層体で構成されている。加熱コイル2は、特に図示していないが鍋1の底面の中央部に対向した第一の加熱コイルと、鍋1の底面のコーナー部に対向した第二の加熱コイルで構成される。この第一の加熱コイルと第二の加熱コイルは電気的に直列接続している。
【0034】
特に図示しないが、第一の加熱コイルは渦巻き状の形状をしており、鍋1の底面中央部に一定の距離で配置される。第二の加熱コイルは第一の加熱コイルの同心円状の外側に配置され、鍋1の底面のコーナー部に一定の距離をおいて配置されている。加熱コイル2は複数の銅線を束ねたリッツ線を更に20数本で撚った線で構成されており、高周波電流が流れた時の電流分布を均一にしている。
【0035】
3はインバータ回路で、コンデンサ4と半導体スイッチング素子5とダイオード6で構成されている。コンデンサ4は、図1に示すように加熱コイル2に並列接続している。本実施例では高周波電流が流れても損失の少ないポリプロピレンコンデンサを使用している。半導体スイッチング素子5は、MOSFETやIGBTなどの半導体素子で構成されている。MOSFETやIGBTは耐圧が高く、高周波のスイッチングが可能で、ゲート端子に電圧を印加することで大電流を流すことができるので、パワートランジスタに比べ省電力で大電流を流すことができるという利点がある。なお、本実施の形態では、この半導体素子にIGBTを使用している。
【0036】
例えば、IGBTはゲート端子への印加電圧の大きさによりコレクタ電流の大きさが限定される傾向がある。なおコレクタ−エミッタ間電圧はゲート端子への印加電圧とコレクタ電流により変動するが、電流を下げてもコレクタ−エミッタ間電圧は一定以上の電圧が発生する。これは電圧駆動型トランジスタであるIGBTの一般的な特性である。IGBTのコレクタ電流とコレクタ−エミッタ間電圧とゲート端子への印加電圧の関係は図5で別途説明する。
【0037】
また、MOSFETはゲート端子への印加電圧の大きさによりドレイン電流の大きさが限定される傾向がある。MOSFETの場合、ドレイン電流の大きさに比例して、ドレイン−ソース間電圧が大きくなるが、比例定数がゲート端子への印加電圧で変化する。これはMOSFETの一般的な特性である。MOSFETのドレイン電流とドレイン−ソース間電圧とゲート端子への印加電圧の関係は図6で別途説明する。
【0038】
ダイオード6は、半導体スイッチング素子5の電流方向とは逆方向に電流が流れるように並列接続されている。一般的にこのようなインバータ回路の構成は、加熱コイル2とコンデンサ3で並列共振回路を構成しているため、1石電圧共振形インバータといわれている。
【0039】
7は炊飯器に電力を供給する交流電源である。交流電源7の電源周波数は,東日本地域では50Hz,西日本地域では60Hzとなっている。8は整流回路で、ダイオードブリッジ9、コイル10、コンデンサ11で構成されている。ここで、コンデンサ11の容量は数μFと小さく、加熱コイル2に電流を流すとリプルが生じる。本実施の形態では、このリプル電圧波形は交流電源7を全波整流した時の電圧波形と同じとなる。
【0040】
駆動回路12は、NPNトランジスタとPNPトランジスタと半導体スイッチング素子5を構成するIGBTのゲート端子の寄生容量に充電する電流を制限するための電流制限抵抗とゲート端子の寄生容量をすばやく引き抜くための放電抵抗などを有するプッシュプル回路で構成されている。駆動回路12の構成の一例は図3で説明する。入力電流検知回路13は、交流電源7から整流回路8への電流経路に接続されている。特に図示しないが、カレントトランスと、このカレントトランスが出力する交流電流を整流平滑する整流平滑回路で構成されており、入力電流値をアナログ電圧値に変換する。この入力電流値に相当するアナログ電圧を、制御部14を構成するマイクロコンピュータ15のAD変換ポートに出力する。
【0041】
制御部14は、マイクロコンピュータ15、同期信号発生回路16などにより構成され
ている。マイクロコンピュータ15は、多数のカウンタ機能やタイマー機能やメモリ機能を利用して、オン時間設定部17、パルス発生部18、入力電流設定部19、シーケンス設定部20などを構成している。
【0042】
オン時間設定部17は最小オン時間Ton1と最大オン時間Ton4の範囲内でオン時間を設定する。なお、本実施の形態では、インバータ回路3起動時は、初期値としてTon1からスタートし徐々にオン時間を長くしていく。
【0043】
パルス発生部18は同期信号発生回路16の同期信号を検知すると設定されたオン時間のハイパルスを駆動回路12に出力する。マイクロコンピュータ15は8MHz発振子と32.728kHz発振子で動作する。従って、マイクロコンピュータ15で構成されるパルス発生部18のハイパルス幅の最小設定単位は、8MHz発振子で設定される最小周期である0.125μs単位で制御される。つまり、オン時間設定部17が出力データ(8bit)を1digit変更すると、パルス発生部18のハイパルス幅が0.125μs変化するようになっている。
【0044】
入力電流設定部19は、マイクロコンピュータ15のメモリを利用して、シーケンス設定部20が設定するシーケンスごとに複数の入力電流設定値が記憶されている。本実施の形態の誘導加熱式炊飯器では、第一の入力電流設定値21(本実施の形態ではIin1とする)、第一の入力電流設定値21より低い値の第二の入力電流設定値22(本実施の形態ではIin2とする)、第二の入力電流設定値22より低い値の第三の入力電流設定値23(本実施の形態ではIin3とする)が記憶されている。
【0045】
シーケンス設定部20は、使用者が設定した操作に従って、炊飯シーケンスや保温シーケンスを設定する。また、炊飯シーケンスも保温シーケンスも動作していない時は待機状態を設定する。
【0046】
同期信号発生回路16は、コンパレータや抵抗分圧回路などで構成され、(C2)端子を所定の比率で抵抗分圧した電圧と、(CE)端子を所定の比率で抵抗分圧した電圧をコンパレータによって比較し、(C2)端子の分圧電圧の方が高いときにハイ信号をマイクロコンピュータ15に出力し、(C2)端子の分圧電圧の方が低いときにロー信号をマイクロコンピュータ15に出力する。
【0047】
第一の直流電源回路24は、特に図示しないが、スイッチング電源で構成され、交流電源7を半波整流した電圧を、約20Vの直流電圧を出力するように直流電源に変換している。
【0048】
なお、本実施の形態では、半導体スイッチング素子5を構成するIGBTのゲート端子の遮断電圧(スレッショルド電圧)のバラつき保証値は6Vである。つまり、ゲート端子に6V以上の電圧をオンすればIGBTのエミッタ−コレクタ間がオンする。約20Vにしているのは、この遮断電圧のバラついても、この遮断電圧を超える電圧を駆動回路12を介して供給できるからである。つまりIGBTを駆動する際には、IGBTに電圧供給する駆動回路12の電源である第一の直流電源回路24の出力電圧は、ゲート端子の遮断電圧より大きくすることが重要である。
【0049】
ここで、上記で簡単に説明した駆動回路12の動作について、もう少し詳しく説明する。駆動回路12は、マイクロコンピュータ15が構成するパルス発生部18の出力がハイの間、第一の直流電源回路24の電源電圧を利用して、半導体スイッチング素子5を構成するIGBTのゲート端子に電圧を印加し、IGBTのコレクタ−エミッタ間をオンし、パルス発生部18がロー出力している間はIGBTのゲート端子の電圧を0Vにして、I
GBTのコレクタ−エミッタをオフにする。なお、これは一例でプッシュプル回路を構成する部品はMOSFETなどで構成しても構わない。また、第一の直流電源回路24の出力電圧はオン時間設定部17が設定したオン時間により第一の直流電源電圧設定部20が設定した電圧となる。
【0050】
また、第一の直流電源回路24は、冷却ファン27を駆動するための電源も供給している。本実施の形態では、特に図示していないが、ファン駆動回路としてトランジスタやMOSFETをマイクロコンピュータ15でオンオフ制御することで、冷却ファン27を駆動したり停止したりすることができる。
【0051】
第二の直流電源回路28は、NPNトランジスタ29と定電圧ダイオード30と抵抗31とコンデンサ32からなるエミッタフォロア回路で定電圧回路を構成し、第一の直流電源回路24の出力電圧約20Vを約5Vに降圧している。第二の直流電源回路28は、マイクロコンピュータ15や零電圧同期信号出力回路33などの電源となっている。
【0052】
なお、この第二の直流電源回路28の構成は一例であり、例えば出力電圧のバラつきを抑えた定電圧回路を実現するために専用の電源ICを使用しても良い。
【0053】
零電圧同期信号出力回路33は、特に図示していないが、交流電源7の(u)極が抵抗を介してトランジスタのベース端子に接続している。このトランジスタのコレクタ端子は交流電源7からスイッチング電源を介して生成される第二の直流電源回路28と、抵抗を介して接続しており、(u)極の電位がもう一方の極より高いときにローを、低いときにハイをマイクロコンピュータ15に出力する。マイクロコンピュータ15はこの出力信号に同期して、所定時間後に入力電流検知回路13の出力電圧を入力し、入力電流設定部19が設定した入力電流設定値と比較して、オン時間設定部17でオン時間の設定を行う。設定されたオン時間は次の同期信号のときに更新される。またマイクロコンピュータ15は零電圧同期信号出力回路33の出力信号に同期して、現在時刻の表示や、炊飯制御に関する処理などを開始する。
【0054】
操作部34は、複数のモーメンタリスイッチで構成されている。各スイッチが使用者により押されると、マイクロコンピュータ15はスイッチが押されたことを検知し、各スイッチに応じて、所定の炊飯動作や保温動作をおこなう。表示部35は、LCDと、赤、緑、橙などの複数のLEDで構成されている。マイクロコンピュータ15は、炊飯中や保温中などの炊飯器の状態に応じて、LCDの表示内容や点灯するLEDを設定している。LCDの表示内容としては、現在時刻の表示や、炊飯終了までの時間の表示、保温経過時間の表示などがある。
【0055】
図2は本実施の形態の炊飯器の要部断面構成図である。図面を簡潔にするために、電気的接続のためのリード線や、部品を固定するためのネジは省略している。図2において、41は炊飯器のボディ(本体)である。ボディ41には、その上面を覆う蓋42が開閉自在に設置されている。ボディ41の収納部43は、その底部と側面部に加熱コイル2を配設し、加熱コイル2の外周側に放射状にフェライトコア44を配設する。加熱コイル2は鍋1の底部の中心の略真下に中心を有する巻き線である。
【0056】
鍋1は、ステンレス、鉄、銅などの磁性体によって形成される。鍋1は、上端開口部に外側にせり出したフランジ45を有し、フランジ45を収納部43の上端から浮き上がった状態で載置することにより、収納部43に着脱自在に収納される。従って、鍋1は収納時に、収納部43との間に隙間を有する。蓋42には着脱自在な蓋加熱板46が設定されている。蓋加熱板46はステンレスなどの金属で形成されている。47は蓋加熱ヒータで蓋32に内蔵され、蓋加熱板46を加熱する。なお、蓋加熱ヒータ47は図1には特に図
示していない。
【0057】
48は第一の回路基板でスイッチ、LCD、マイクロコンピュータ15などで構成されている。49は第二の回路基板で、特に図示しないが、半導体スイッチング素子5を構成するIGBT、コンデンサ4,ダイオードブリッジ9、チョークコイル10、コンデンサ11などが搭載されている。50は巻き取り式の電源コード収納部で、第二の回路基板49にリード線を介して電気的に接続している。電源コード収納部50はストッパーとばねを用いて電源コードを巻き取ることを可能にしている。
【0058】
51は温度検知部で、サーミスタで構成され、鍋1の底部の略中心に配置されている。サーミスタは温度で抵抗値が変わるので、このサーミスタと所定の抵抗値を有する抵抗で分圧回路を構成し、所定の電圧をこの分圧回路の両端に供給することで、サーミスタの抵抗値をアナログ電圧に変換できる。図1に示したマイクロコンピュータ15は、内蔵されたAD変換器を用いてこのアナログ電圧から温度を推定する。
【0059】
冷却ファン27はDCブラシレスモータの回転子にファンを取り付けたファンモータで構成されている。冷却ファン27は図1に示したように、第一の直流電源回路24より電源供給され、マイクロコンピュータ15でオンオフ制御される。
【0060】
第一の回路基板48と第二の回路基板49は、特に図示しないが、リード線で電気的に接続しており、マイクロコンピュータ15内部に構成されたオン時間設定部17、パルス発生部18により、半導体スイッチング素子5をオンオフ制御し、加熱コイル2に高周波電流を供給する。加熱コイル2は高周波電流が流れると交番磁界を発生させ,この交番磁界により鍋1に渦電流が流れ,鍋1が発熱する。
【0061】
以上のように,本実施の形態の炊飯器は、鍋1を誘導加熱し、鍋1内の調理物を加熱調理する。ここで調理物は、炊飯前の米と水又は炊き上がったご飯等である。
【0062】
図3は駆動回路12の主要部ブロック図を示している。図3において、61は抵抗内蔵NPNトランジスタで、マイクロコンピュータ15のハイローの信号を受けてオンオフする。
【0063】
62はNPNトランジスタで、抵抗内蔵NPNトランジスタ61がオフしたときに第一の直流電源回路24から抵抗63を介してベース電流を供給されオンし、抵抗内蔵トランジスタ61がオンしたときに、ベース端子電圧が約0Vとなりオフする。抵抗64はNPNトランジスタ62のベース−エミッタ間に接続された抵抗で、NPNトランジスタ62に外来ノイズが入ったときでも誤動作を防止する。
【0064】
65は半導体スイッチング素子5の一例であるIGBTのゲート端子をオンするためのNPNパワートランジスタで、半導体スイッチング素子5であるIGBTのゲート端子に充電電流を瞬時に流しこめるように0.5A〜1Aほどの瞬時電流を供給する能力があるトランジスタを使用している。NPNトランジスタ62がオフすると第一の直流電源回路24から抵抗66を介してベース電流が供給されオンする。なお、NPNパワートランジスタ65はMOSFETにしても構わない。MOSFETの方が電圧駆動型なので抵抗66の影響をパワートランジスタほどは受けない傾向があり、駆動回路を省電力化するときなどに使用すると効果がある。
【0065】
67は電流制限抵抗で、NPNパワートランジスタ65がオンするとVccから電流制限抵抗67とNPNパワートランジスタ65を介して半導体スイッチング素子5であるIGBTのゲート端子に電流供給する。NPNパワートランジスタ65のコレクタ電流はベ
ース電流と電流増幅率Hfeで定まる。本実施の形態では、電流増幅率Hfeの下限値を50程度に考えて、十分にコレクタ電流が流せるように抵抗66を決定し、IGBTのゲート端子への電流は電流制限抵抗67でおおよそ決まるようにしている。半導体スイッチング素子5のIGBTのゲート端子には寄生容量があるので、電流制限抵抗67と寄生容量値による時定数に基づいてゲート端子電圧は上昇し、IGBTのゲート端子の遮断電圧(スレッショルド電圧)を越えるとIGBTがオンする。
【0066】
68はIGBTのゲート端子をオフするためのPNPパワートランジスタで、IGBTのゲート端子の寄生容量に充電された電荷を瞬時に引き抜けるように0.5A〜1Aほどの瞬時電流を流せる能力を有する。NPNトランジスタ62がオンするとNPNパワートランジスタ65がオフするとともに、IGBTのゲート端子からPNPパワートランジスタ68のベース電流が供給されて、PNPパワートランジスタ68がオンする。図3に示すようにPNPパワートランジスタ68のベース抵抗はなく、ベース電流はNPNトランジスタ62のコレクタ電流の供給能力で決まる。なおPNPパワートランジスタ68をMOSFETにしても構わない。MOSFETの方が電圧駆動型なので抵抗66の影響をパワートランジスタほどは受けない傾向があり、駆動回路を省電力化するときなどに使用すると効果がある。
【0067】
69は放電抵抗で、PNPパワートランジスタ68がオンするとIGBTのゲート端子電圧からPNPパワートランジスタ68と放電抵抗69を介してIGBTのゲート端子の寄生容量に充電された電荷を放電し、最終的に約0Vにする。放電抵抗69を小さくするほどゲート端子電圧が0Vになるが速くなるのは、放電抵抗69とIGBTのゲート−エミッタ間の寄生容量の時定数で定まるからである。
【0068】
抵抗70は、第一の直流電源回路24が所定の電圧に立ち上がるまでにPNPトランジスタ67がオンしきれないときに、IGBTのゲート−エミッタ間に外来ノイズが入りIGBTが誤動作しないように、IGBTのゲート−エミッタ間の電圧を同電位するためのものである。
【0069】
71は定電圧ダイオードで所定値以上の電圧をクランプする。この定電圧ダイオード71のクランプする電圧を、半導体スイッチング素子5であるIGBTのゲート−エミッタ間の絶対最大電圧定格より小さくすることでIGBTの破壊を防止することができる。ただ、第一の直流電源回路24の出力電圧をIGBTのゲート−エミッタ間の絶対最大定格電圧より小さい値し、かつIGBTのゲート−エミッタ間の遮断電圧(スレッショルド電圧)より大きい値にしておけば、無理につける必要はない。この時は実装面積が小さくなるという利点がある。定電圧ダイオード71のような保護回路を入れる場合は、第一の直流電源回路24を他の負荷(特に図示していないが冷却ファンや、表示手段に使用するLEDをたくさん直列接続した回路)に必要な電圧に上げた場合になる。
【0070】
72はIGBTのゲート−エミッタ間の寄生容量である。この値は一般的にIGBTの定格電流容量や定格電圧やIGBTメーカで変動するものである。
【0071】
以上のように、図3に示した駆動回路はIGBTのゲート−エミッタ間の寄生容量72を充電するための充電電流を制限するための電流制限抵抗67と、IGBTのゲート−エミッタ間の寄生容量72に充電された電荷を放電するための放電抵抗69を有した構成で、NPNパワートランジスタ65、PNPパワートランジスタ68でプッシュプル回路の構成になるようにしている。ただし、これは一例であり、専用ICに電流制限抵抗や放電抵抗を設ける構成にしても構わないものである。
【0072】
また、定電圧ダイオード71により半導体スイッチング素子5のゲート端子の絶対最大
電圧定格を越えないようにしているが、この構成も一例であり、第一の直流電源回路24と駆動回路の間に抵抗と定電圧ダイオードで電圧を制限する回路を設けてもよいし、第二の直流電源回路のようにトランジスタのエミッタフォロア回路で定電圧回路を構成しつつ十分な供給電流を維持できるようにしてもよい。
【0073】
図4は、本実施の形態の炊飯器の半導体スイッチング素子5のオン時間と半導体スイッチング素子5に流れるコレクタ電流のピーク値の関係を示したグラフである。本実施の形態ではTon1を半導体スイッチング素子5のオン時間の初期値に設定している。図4に示しているように、オン時間が長くなるほどコレクタ電流のピーク値が大きくなる。つまり、Ton1のようにオン時間が短いときは半導体スイッチング素子5を構成するIGBTのゲート端子の電圧を低くしてコレクタ−エミッタ間電圧が上がってもスイッチング損失はそれほど大きくならない。
【0074】
図5は、本実施の形態の炊飯器の交流電源7から供給される入力電流と半導体スイッチング素子5に流れるコレクタ電流のピーク値の関係を示したグラフである。図4に示しているように、入力電流が大きくなるほどコレクタ電流が大きくなる。つまり、入力電流が第三の入力電流設定値23のように小さい時は半導体スイッチング素子5を構成するIGBTのゲート端子の電圧を低くしてコレクタ−エミッタ間電圧が上がってもスイッチング損失はそれほど大きくならない。
【0075】
図6は、本実施の形態の炊飯器の半導体スイッチング素子5を構成するIGBTのコレクタ−エミッタ間電圧とコレクタ電流の関係を示したグラフである。図6(a)はIGBTのゲート端子電圧が10Vのときのグラフである。図6(b)はIGBTのゲート端子電圧が15Vのときのグラフである。図6(c)はIGBTのゲート端子電圧が20Vのときのグラフである。図6に示しているように、ゲート端子電圧によってコレクタ−エミッタ間電圧とコレクタ電流は変動する。
【0076】
図4に示すように半導体スイッチング素子5のオン時間が長くなるほどコレクタ電流のピーク値が大きくなることを考慮すると、オン時間が短い時は半導体スイッチング素子5を構成するIGBTのゲート端子の電圧を低くしてコレクタ−エミッタ間電圧が上がってもスイッチング損失はそれほど大きくならないと判断できる。
【0077】
図5に示すように入力電流が大きくなるほどコレクタ電流が大きくなることを考慮すると、入力電流が小さい時は半導体スイッチング素子5を構成するIGBTのゲート端子の電圧を低くしてコレクタ−エミッタ間電圧が上がってもスイッチング損失はそれほど大きくならないと判断できる。
【0078】
図7は、図1および図3に示した誘導加熱式炊飯器において、マイクロコンピュータ15が半導体スイッチング素子5をTon1(初期値)でオンオフ制御したときの主要部の動作波形を示している。図7(a)はマイクロコンピュータ15が出力するオンオフ信号を示している。図7(b)は半導体スイッチング素子5であるIGBTのゲート−エミッタ間電圧を示している。図7(c)は半導体スイッチング素子5であるIGBTのコレクタ電流を示している。図7(d)は半導体スイッチング素子5であるIGBTのコレクタ−エミッタ間電圧を示している。図7(b)のIGBTのゲート−エミッタ間電圧波形は、約5V付近の電圧が寄生容量に十分に電荷がたまりIGBTのコレクタ−エミッタ間がオンできるまで維持される。十分に電荷が充電されIGBTがオンすると再びゲート−エミッタ間電圧が寄生容量72と電流制限抵抗67の時定数に従い上昇を開始する。このような波形になるためには、第一の直流電源回路24の出力電圧がIGBTのゲート端子の遮断電圧(スレッショルド電圧)の2倍以上あることが望ましい。2倍以上あることにより、ゲート−エミッタ間電圧が大きくなり、コレクタ電流をたくさん流してもコレクタ−
エミッタ間電圧が低いままになるという効果がある。
【0079】
図8は本実施の形態の誘導加熱式炊飯器の駆動回路で制御をしなかった場合に、マイクロコンピュータ15が半導体スイッチング素子5をTon1(初期値)でオンオフ制御したときの主要部の動作波形を示している。図7(a)はマイクロコンピュータ15が出力するオンオフ信号を示している。図7(b)は半導体スイッチング素子5であるIGBTのゲート−エミッタ間電圧を示している。図7(c)は半導体スイッチング素子5であるIGBTのコレクタ電流を示している。図7(d)は半導体スイッチング素子5であるIGBTのコレクタ−エミッタ間電圧を示している。図8はIGBTのゲート−エミッタ間電圧が大きいので、コレクタ電流をたくさん流してもコレクタ−エミッタ間電圧を小さく出来るが、一方でコレクタ電流が流れすぎてしまい、IGBTのコレクタ電流の絶対最大定格を越えてしまうこと考慮する必要がある。また、コレクタ−エミッタ間電圧はIGBTの特性上所定値以下にはならないので、IGBTのターンオン損失はコレクタ電流の影響を大きく受けるものとなる。
【0080】
図7、図8ともターンオン時t1において半導体スイッチング素子5であるIGBTのコレクタ−エミッタ間電圧Vonが発生しているので、ターンオン時にIGBTのコレクタ電流に突入電流Ionが流れている。この時のVonとIonにより半導体スイッチング素子5が発熱するわけだが、本実施の形態の一つである誘導加熱式炊飯器の場合は、図7に示したように、IGBTのゲート−エミッタ間電圧が小さいので図6で示したゲート−エミッタ間電圧とコレクタ電流のグラフの関係に従い、突入電流が図8のようにゲート−エミッタ間電圧が20Vの時より小さくて済む。
【0081】
図9は本実施の形態の誘導加熱式炊飯器において、マイクロコンピュータ15が半導体スイッチング素子5であるIGBTのゲート端子をTon3でオンオフ制御したときの主要部の動作波形を示している。図9(a)はマイクロコンピュータ15が出力するオンオフ信号を示している。図9(b)は半導体スイッチング素子5であるIGBTのゲート−エミッタ間電圧を示している。図9(c)は半導体スイッチング素子5であるIGBTのコレクタ電流を示している。図9(d)は半導体スイッチング素子5であるIGBTのコレクタ−エミッタ間電圧を示している。
【0082】
図9(b)に示すように、IGBTのコレクタ電流も加熱コイル2のインダクタンス成分によって徐々に上昇する。本実施の形態の誘導加熱式炊飯器の場合、コレクタ電流の時間変化量(dIc/dt)はIGBTをオンしたときに加熱コイル2の両端にかかる電圧をVc2とし、加熱コイル2のインダクタンスをL1とすると、(Vc2/L1)=(dIc/dt)という関係式になる。一方、IGBTのゲート−エミッタ間電圧は駆動回路12の電流制限抵抗67とIGBTの寄生容量72の時定数に従って上昇していき、最終的には第一の直流電源回路24の出力電圧である20Vに近づいていく。
【0083】
以上のように、IGBTのゲート−エミッタ間電圧が電流制限抵抗67とIGBTの寄生容量72の時定数に従って上昇していくので、IGBTのコレクタ−エミッタ間電圧はこのゲート−エミッタ間電圧に従って減少するので、IGBTのコレクタ電流が上記関係式に従って上昇しても、IGBTのオン損失は大きくならずに済む。
【0084】
図10は、本実施の形態の炊飯器の温度検知部のタイムチャートと入力電流設定部が設定する入力電流設定値と第一の直流電源回路24の出力電圧のタイムチャートを示している。図10(a)は温度検知部が検知した鍋底温度のタイムチャートを示している。図10(b)は入力電流設定部19が設定した入力電流設定値のタイムチャートを示している。なお、入力電流設定値のタイムチャートは、縦軸で入力電流設定値を示し、横軸に、この入力電流設定値で半導体スイッチング素子をオンオフし加熱コイルに高周波電流を流す
期間を示している。図10(c)はマイクロコンピュータ15が出力する半導体スイッチング素子5のオン時間のタイムチャートを示している。
【0085】
図1から図10を用いて、本実施の形態の炊飯器の動作を説明する。
【0086】
図10のS0において、図2に示した炊飯器の蓋内に配置された第一の回路基板48に実装された複数のモーメンタリスイッチ(操作部31)のうち、炊飯スタートを意味するモーメンタリスイッチを押すと、図1に示したマイクロコンピュータ15が操作部34の信号を検知し、シーケンス設定部20が炊飯シーケンスを設定し炊飯シーケンスを開始する。
【0087】
炊飯シーケンスは複数のサブシーケンスから構成されている。本実施の形態では、前炊き行程、炊飯量判定行程、沸騰維持行程、追い炊き行程で構成されている。
【0088】
S0からS3までの期間は前炊き行程に該当する。前炊き行程では、S0からS3の期間にお米に水が吸収されやすい温度まで、入力電流設定部19はシーケンス設定部20の信号を受けて第二の入力電流設定値22(Iin2)を設定する。
【0089】
その後、半導体スイッチング素子5のオン時間はTon1を初期値にして、入力電流検知回路13の出力電圧と第二の入力電流設定値22を比較してオン時間を設定する。このオン時間の増加時間または減少時間は所定時間以上にならないようにしている。その理由は急激な電流変化をした場合、この電流変化量によって鍋1に急峻なパワーが印加され音がするためである。は徐々にオン時間を大きくし、S1において入力電流検知回路13の出力電圧が第二の入力電流設定値22に相当する出力電圧を越えると、オン時間設定部17が、この出力電圧と第二の入力電流設定値22を比較して入力電流が第二の入力電流設定値22になるようにオン時間を調整する。マイクロコンピュータ15が、入力電流検知回路13の出力電圧の読み込みやオン時間の調整を行うタイミングは、零電圧同期信号出力回路33のローからハイになるエッジをトリガにして、所定時間後に行うようにしている。この所定時間は入力電流検知回路13の出力電圧の瞬時値がピークなるくらいの時間である。これは、交流電源7のピーク付近にあたる。
【0090】
なお、このときの動作は今後も繰り返される動作であり、図7において、これ以降この動作の説明は省略する。このとき、半導体スイッチング素子5であるIGBTのゲート−エミッタ間電圧は図7、図9に示しように、駆動回路12を構成する電流制限抵抗67とIGBTの寄生容量72の時定数によって上昇する波形となる。
【0091】
なお第二の入力電流設定値22の設定で半導体スイッチング素子5が動作する導通比は10秒/16秒である。なお、10秒/16秒で再起動するときは、マイクロコンピュータ15のオン時間設定部17は再びオン時間を初期値Ton1に設定し、入力電流検知回路13の出力電圧と第二の入力電流設定値22を比較し、第二の入力電流設定値22に相当する電圧になるようオン時間を徐々に増やしていく。
【0092】
S2で図2に示した温度検知部51が60度を検知すると、マイクロコンピュータ15は予めプログラムされた内容に従って、入力電流検知回路13の出力電圧が第二の入力電流設定値22で動作する導通比を可変にし、約60度の温度を、S3までの期間、維持するように制御する。
【0093】
S3からS5までの期間は炊飯量判定行程に該当する。炊飯量判定行程では、入力電流設定部19はシーケンス設定部20の出力に応じて入力電流の設定値を第一の入力電流設定値21(Iin1)にする。オン時間設定部17は、まずオン時間を初期値のTon1
に設定した後、入力電流検知回路13の出力電圧と第一の入力電流設定値21を比較してオン時間を長くしながら加熱コイル2に高周波電流を供給する。
【0094】
S4において、入力電流検知回路13の出力電圧が第一の入力電流設定値21に相当する電圧を超えると、オン時間設定部17が、この出力電圧と第二の入力電流設定値22を比較して入力電流が第二の入力電流設定値22になるようにオン時間を調整する。マイクロコンピュータ15が、入力電流検知回路13の出力電圧の読み込みやオン時間の調整を行うタイミングは、零電圧同期信号出力回路33のローからハイになるエッジをトリガにして、所定時間後に行うようにしている。この所定時間は入力電流検知回路13の出力電圧の瞬時値がピークなるくらいの時間である。これは、交流電源7のピーク付近にあたる。
【0095】
第一の入力電流設定値21(Iin1)は第二の入力電流設定値22(Iin2)よりも大きい電流なので加熱コイル2に供給される電流も増加し、誘導加熱量も大きくなる。つまり、鍋の温度も急激に上昇する。本実施の形態では、第一の入力電流設定値21にして加熱コイル2の駆動を開始してから、温度検知部51が100度を検知するまでの経過時間(S3からS5までの時間)から、マイクロコンピュータ15が炊飯量を判定し、その後の沸騰維持行程における加熱コイル2を駆動する導通比、追い炊き行程における加熱コイル2を駆動する導通比を設定する。なお、本実施の形態の誘導加熱式炊飯器では温度検知部51が鍋1の底温度が100℃になるまでの時間で炊飯量を判定しているが、これは一例であり、蓋の内側に新たにもう一つ温度検知部を設け、この温度検知部の温度が所定温度を超えるまでの経過時間をもとに炊飯量を判定してもよい。
【0096】
S5からS6までの期間は沸騰維持行程に該当する。沸騰維持行程では、入力電流設定部19はシーケンス設定部20の出力に応じて第二の入力電流設定値22(Iin2)に設定し、オン時間設定部17が入力電流検知回路13の出力電圧と第二の入力電流設定値22を比較して半導体スイッチング素子5のオン時間を設定し、加熱コイル2に高周波電流を流して鍋1を加熱する。本実施の形態の炊飯器では、シーケンス設定部20の指示に従い10秒/16秒の導通比で加熱コイル2を駆動する。加熱コイル2を駆動して鍋1を誘導加熱し続けると、鍋1内に残っていた水も蒸発し、鍋1の温度は100度を超え、S6では130度に達する。温度検知部51が130度を検知すると、マイクロコンピュータ15は半導体スイッチング素子5をオフして、加熱コイル2の駆動を停止するとともに沸騰維持行程を終了し、追い炊き行程に移行する。
【0097】
S6からS7までの期間は追い炊き行程に該当する。追い炊き行程では、入力電流設定部19はシーケンス設定部20の出力に応じて第二の入力電流設定値22を設定する。第二の入力電流設定値22と入力電流検知回路13の出力電圧をオン時間設定部17が比較して半導体スイッチング素子5のオン時間を設定する。パルス発生部18は同期信号発生回路16の同期信号をトリガにしてオン時間設定部17が設定した時間をハイパルスとして出力し、最終的に入力電流検知回路13の出力電圧が第二の入力電流設定値22になるように制御する。シーケンス設定部20は第二の入力電流設定値22で動作する期間を、2秒/16秒の導通比にしている。マイクロコンピュータ15のシーケンス設定部20はS6からの経過時間を計時し、S7に達すると炊飯シーケンスを終了し、炊飯終了をブザー報知するとともに表示部35を構成する炊飯中の意味を示すLEDを消灯することで炊飯が終了したことを表示する。
【0098】
同時にS7においてマイクロコンピュータ15を構成するシーケンス設定部20は表示部35を構成する保温中の意味を示すLEDを点灯し、保温シーケンスを開始する。入力電流設定部19はシーケンス設定部20の指示に応じて入力電流の設定値を第三の入力電流設定値23(Iin3)にする。その後、温度検知部51の温度が所定の温度より低く
なるまで半導体スイッチング素子5をオフし、所定の温度より低くなったところで、再び半導体スイッチング素子5をオンオフし、入力電流検知回路13の出力電圧が第三の入力電流設定値23になるようにオン時間を制御する。このとき入力電流検知回路13の出力電圧は第三の入力電流設定値23に相当する出力電圧以下である。
【0099】
第三の入力電流設定値23になるように半導体スイッチング素子5をオンオフ制御することで鍋1を誘導加熱し、この温度を維持するようにする。保温シーケンスは、炊飯シーケンスのようにお米をご飯にするためのエネルギーは必要なく、ご飯の温度を一定温度に維持するエネルギーがあれば十分なので、入力電流は炊飯シーケンスのときより小さくても十分である。
【0100】
保温シーケンスは使用者が操作部34で取消を意味するスイッチを押すか、所定時間経過すると停止する。マイクロコンピュータ15は待機状態と判別し、半導体スイッチング素子5をオフする。
【0101】
以上のように、図10においては、入力電流の設定値が第一の入力電流設定値21(Iin1)、第二の入力電流設定値22(Iin2)、第三の入力電流設定値23(Iin3)と複数設定され、炊飯シーケンス、保温シーケンスが実行できるようにしている。
【0102】
そして、これらの入力電流設定値になるように半導体スイッチング素子5をオンオフ制御するときは、半導体スイッチング素子5の起動時のオン時間の初期値をTon1にして、徐々にオン時間を長くし、入力電流検知回路13の出力電圧が、入力電流設定部19が設定した入力電流設定値になるようにオン時間設定部18がオン時間を調整する。図5に示したように所定の入力電流設定値にすれば半導体スイッチング素子5であるIGBTのコレクタ電流もほぼ一定に制御される。
【0103】
そして、第一の直流電源回路24の出力電圧を半導体スイッチング素子5のスレッショルド電圧より十分に大きくする(本実施の形態では2〜3倍程度である。)ことにより、図7、図9に示したようにオン時間の長さが長くなるほど、半導体スイッチング素子5であるIGBTのゲート−エミッタ間電圧を大きくできるようにしているので、起動時に発生するIGBTの突入電流はオン時間を短くすることで低減できる。突入電流を低減できるということは、IGBTの瞬時電流の絶対最大定格を越えないようにすることが可能であり、IGBTなどの半導体スイッチング素子の電流破壊を抑えることが出来る。
【0104】
また、IGBTのコレクタ電流が大きくなっても、オン時間を長くすることでゲート−エミッタ間電圧が大きくなりコレクタ−エミッタ間電圧が小さくなるので、半導体スイッチング素子5であるIGBTのスイッチング損失を低減できる。
【0105】
なお、本実施の形態では第一の直流電源回路の出力電圧を約20Vにしたが約15Vにしても構わない。図6に示したようにIGBTのゲート−エミッタ間電圧が20Vの時と15Vの時とでは、コレクタ電流の大きさによってはコレクタ−エミッタ電圧に殆ど差がなく第二の直流電源回路のように第一の直流電源回路から電力供給を受けている回路の損失を低くすることが出来る。なお15Vにしても本実施の形態の誘導加熱式炊飯器の半導体スイッチング素子の一例であるIGBTであれば遮断電圧(スレッショルド電圧)は6Vなので、IGBTのゲート−エミッタ間の寄生容量を充電するのに十分な出力電圧を有しているといえる。
【0106】
また、本実施の形態では駆動回路12の構成を図3のようにしたが、これはIGBT駆動用ICに変更しても構わない。この場合は、IGBTのゲート−エミッタ間の寄生容量を充電するための電流制限抵抗を駆動用ICの能力に合わせてある程度設定する必要があ
るが、第一の直流電源回路の出力電圧をIGBTの遮断電圧(スレッショルド電圧)より2〜3倍にし、駆動用ICに電力供給できるようにしておけば、同様の効果を有することが出来る。
【0107】
(実施の形態2)
図11は、本発明の第2の実施の形態における誘導加熱式炊飯器の主要部ブロック図である。図11において、制御部81は電圧検知回路82、マイクロコンピュータ83、同期信号発生回路16や特に図示していないが鍋1の温度を検知するための温度検知回路などで構成されている。
【0108】
電圧検知回路82は、加熱コイル2と半導体スイッチング素子5の接続部(CE)とグランド間の電圧に相当する値を検知するものである。この電圧を検知することで、加熱コイル2の両端電圧に相当する電圧を検知することが可能である。なぜなら、(CE)とグランド間の電圧はコンデンサ11と加熱コイル2の接続部(C2)の電圧と加熱コイル2の電圧を足したものであり、(C2)部分の電圧は交流電源7を整流した電圧であるからである。電圧検知回路82は特に図示しないが抵抗分圧回路と抵抗分圧回路が出力する電圧のピーク値をホールドするためのエミッタフォロア回路で構成され、アナログ電圧をマイクロコンピュータ83のADポートに出力する。このとき、電圧検知回路82は出力電圧が4Vを超えないように抵抗分圧回路の分圧比を設定している。
【0109】
マイクロコンピュータ83は、オン時間設定部84、パルス発生部18、電圧設定部85、シーケンス設定部20をカウンタやメモリなどで構成している。
【0110】
オン時間設定部84は電圧設定部85の出力と電圧検知回路82の出力を比較し、半導体スイッチング素子5のオン時間を設定する。オン時間設定部84最小オン時間Ton1と最大オン時間Ton4の範囲内でオン時間を設定する。なお、本実施の形態では、インバータ回路3起動時は、初期値としてTon1からスタートし徐々にオン時間を長くしていく。
【0111】
電圧設定部85には第一の電圧設定値86、第二の電圧設定値87、第三の電圧設定値88が記憶されている。各電圧設定値の関係は、第一の電圧設定値86>第二の電圧設定値87>第三の電圧設定値88となっている。
【0112】
特に図示しないが、半導体スイッチング素子5をオフしたときに加熱コイル2とコンデンサ4の共振により発生する共振電圧、すなわち加熱コイル2の両端電圧は、半導体スイッチング素子5に流れる電流や、交流電源7の電圧波形が一定であれば、交流電源7から供給される入力電流と比例関係にある。
【0113】
つまり、電圧設定部85が設定する電圧設定値と電圧検知回路82が出力する電圧が同じになるようにオン時間をオン時間設定部が調整すれば、加熱コイル2で希望する電力を得ることができる。
【0114】
その他の構成は、本実施の形態1と同様であり、ここでの説明は省略する。
【0115】
図8の誘導加熱式炊飯器の動作について説明する。
【0116】
本実施の形態1と同様に、操作部34で操作することによりシーケンス設定部20が炊飯シーケンスを設定し、シーケンス設定部20からの信号により電圧設定部85が第二の電圧設定値87を設定すると、オン時間設定部84が、まず半導体スイッチング素子5のオン時間を初期値のTon1に設定し、その後、第二の電圧設定値87になるように半導
体スイッチング素子5のオン時間を長くしていく。
【0117】
オン時間設定部84が電圧検知回路82の出力値と第二の電圧設定値87を比較しながら半導体スイッチング素子5のオン時間を長くしていき、電圧検知回路82の出力電圧が第二の電圧設定値87を超えると、電圧検知回路82の出力電圧が第二の電圧設定値87になるように短くする。
【0118】
以上のように、加熱コイルの両端電圧に相当する値を電圧検知回路で検知し、炊飯シーケンスや保温シーケンスに応じて、電圧設定部が設定した電圧設定値になるようにオン時間設定部がオン時間を調整することで、入力電流を検知しなくても必要な炊飯電力、保温電力を供給できる。この構成であれば入力電流を検知するための電流トランスなどが不要になり、実装面積が小さくでき、例えば図2に示した第二の回路基板を小さくすることも可能となり、炊飯器の小型化を実現できる。
【0119】
また、加熱コイルの両端電圧に相当する電圧が低い時は、図7に示したように半導体スイッチング素子のターンオン電圧が発生するときもある。このときは、オン時間が短いので、半導体スイッチング素子であるIGBTのゲート−エミッタ間電圧が小さくなり、図6に示したようにIGBTのコレクタ電流が制限されるので突入電流を小さくすることができ、ターンオン損失を低減できる。
【0120】
また、オン時間が長い時は、加熱コイルに流れる電流も増え、加熱コイルの両端端電圧に相当する電圧も大きくなる。加熱コイルに流れる電流が増えるということは、半導体スイッチング素子であるIGBTのコレクタ電流も大きくなる。しかし、図9に示したように第一の直流電源回路から駆動回路を介して半導体スイッチング素子のゲート端子に充電する充電電流によりゲート−エミッタ間電圧が大きくなり、IGBTのコレクタ−エミッタ間の電圧は徐々に低くなり、IGBTの定常オン損失を低減できる。
【産業上の利用可能性】
【0121】
以上のように、本発明にかかる炊飯器は、半導体スイッチング素子のゲート端子に印加する電圧を、ゲート端子をオンする時間で調整できるように駆動回路の電力を第一の直流電源回路から供給するようにしているので、半導体スイッチング素子の損失の小さい誘導加熱式炊飯器を提供できる。従って、家庭用途のみならず業務用途の炊飯器などの用途にも応用できる。
【符号の説明】
【0122】
1 鍋
2 加熱コイル
3 インバータ回路
5 半導体スイッチング素子
7 交流電源
8 整流回路
12 駆動回路
13 入力電流検知回路
14 制御部
21 第一の入力電流設定値
22 第二の入力電流設定値
23 第三の入力電流設定値
24 第一の直流電源回路
28 第二の直流電源回路
81 制御部
82 電圧検知回路
85 電圧設定部
86 第一の電圧設定値
87 第二の電圧設定値
88 第三の電圧設定値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍋を誘導加熱する加熱コイルと、前記加熱コイルに並列接続または直列接続したコンデンサと、前記加熱コイルに接続し、前記加熱コイルを導通、遮断する半導体スイッチング素子を有するインバータ回路と,交流電源を整流し前記インバータ回路に電力供給する整流回路と、前記半導体スイッチング素子のゲート端子をオンオフする駆動回路と、前記駆動回路を介して前記半導体スイッチング素子をオンオフ制御する制御部と、前記交流電源を直流電源に変換する第一の直流電源回路と、前記第一の直流電源回路より電源電圧を供給され、前記第一の直流電源回路の出力電圧より低い電圧にする第二の直流電源回路を有し、前記第一の直流電源回路は前記半導体スイッチング素子のゲート端子のスレッショルド電圧より約2倍以上の電圧を出力するように構成され、前記制御部は前記第二の直流電源回路より電源電圧を供給され、前記駆動回路は前記第一の直流電源回路より電力供給され、前記半導体スイッチング素子のゲート端子に入力する電圧は前記制御部が出力するオン信号の時間の長さで調整する炊飯器。
【請求項2】
制御部は出力するオン信号の時間が長くすることで駆動回路が半導体スイッチング素子のゲート端子に出力する電圧を大きくする請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
駆動回路が半導体スイッチング素子のゲート端子に出力する電圧に上限値を設けたことを特徴とする請求項2に記載の炊飯器。
【請求項4】
交流電源から整流回路に供給される入力電流に相当する値を検知する入力電流検知回路を有し、制御部は炊飯シーケンスと保温シーケンスを記憶したマイクロコンピュータを有し、前記マイクロコンピュータは炊飯シーケンスと保温シーケンスに応じて所定の入力電流設定値を有し、この入力電流設定値と入力電流検知回路の出力値を比較して、入力電流検知回路の出力値が入力電流設定値になるようにオン時間を設定する請求項1〜3のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項5】
加熱コイルの両端電圧に相当する電圧を検知する電圧検知回路を有し、制御部は炊飯シーケンスと保温シーケンスを記憶したマイクロコンピュータを有し、前記マイクロコンピュータは炊飯シーケンスと保温シーケンスに応じて所定の電圧設定値を有し、この電圧設定値と電圧検知回路の出力値を比較して、電圧検知回路の出力値が電圧設定値になるようにオン時間を設定する請求項1〜3のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項6】
制御部はオン時間の初期値を有し、この初期値は半導体スイッチング素子のゲート端子電圧のスレッショルド電圧を越える値であり、加熱コイルに起動する時は、半導体スイッチング素子のオン時間を初期値に設定する請求項4または5に記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−165418(P2011−165418A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25088(P2010−25088)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】