説明

炎症性自己免疫病態を治療するための組成物

本発明は、ヒトHSPに向けられるヒトTr1細胞を含有する薬剤、および炎症性自己免疫病態を治療するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炎症性自己免疫病態(inflammatory autoimmune condition)の治療分野に関する。本発明は、特に、ヒトの熱ショックタンパク質に向けられる(directed against)ヒトTr1細胞を含有する薬剤を使用して、炎症性自己免疫病態および免疫関連疾患を治療するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炎症性自己免疫疾患は、世界中の何百万もの人々に発症しており、寿命および生活の質には壊滅的な影響を与え得る。
【0003】
ヒトにおける炎症性自己免疫疾患を治療するための既存療法は、ステロイド剤または細胞障害性薬剤に媒介されるような、非特異的な免疫抑制に基づく。最近の戦略は、TNFおよびIL−1に関わるような、いくつかの炎症促進性サイトカイン経路の遮蔽を含む。しかし、炎症促進過程を逆戻りさせたり、または疾患を治療したりする戦略はない。治療を中断すると、炎症の再活性化が何ヶ月か以内に生じ、そのため免疫抑制剤を用いた生涯にわたる治療が生じる。これは必然的に深刻な副作用をもたらす。
【0004】
従って、炎症性自己免疫疾患のための新規の治療が必要である。
【0005】
さまざまな研究により、熱ショックタンパク質(HSP)、特にHSP60およびHSP70が、炎症性自己免疫疾患の調節に関与する一群の自己抗原を構築することが実証されてきた。
【0006】
炎症性自己免疫疾患を治療するHSPを標的とする治療法は、従って、大腸菌(E.coli)溶解物、HSP60由来のペプチド、またはHSP60、HSP70、もしくはHSP90もしくはそれらの断片をコードする核酸配列を含有するDNAワクチンの使用を用いた免疫化などが提案されてきた。
【0007】
本発明では、出願人は、ヒトHSPに向けられるTr1細胞の使用に基づく、炎症性自己免疫病態のための別の治療法を提供することを目的とする。
【0008】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6746670号
【特許文献2】国際公開第02/092793号
【特許文献3】国際公開第2007/010406号
【特許文献4】国際公開第2005/000344号
【特許文献5】国際公開第2006/108882号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、ヒトHSPに向けられる少なくとも1つのヒトTr1細胞集団を含有する薬剤である。本発明の別の目的は、1つ以上の薬学的に許容される担体と組み合わせられる、ヒトHSPに向けられる少なくとも1つのヒトTr1細胞集団を含有する医薬組成物である。
【0011】
本発明の別の目的は、炎症性自己免疫病態を治療するための、薬剤または医薬組成物の調製に、ヒトHSPに向けられる少なくとも1つのヒトTr1細胞集団を含有する組成物を使用することである。
【0012】
本発明の実施形態によれば、前記炎症性自己免疫病態は関節炎の病態、好ましくは関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、および若年性突発性関節炎である。別の実施形態によれば、前記炎症性自己免疫病態は、多発性硬化症の病態である。別の実施形態によれば、前記炎症性自己免疫病態は腸炎の病態、好ましくはクローン病および潰瘍性大腸炎である。別の実施形態によれば、前記炎症性自己免疫病態は血管炎、好ましくはウェゲナー病および粥状動脈硬化症である。別の実施形態によれば、前記炎症性自己免疫病態は喘息である。別の実施形態によれば、前記炎症性自己免疫病態は、移植片拒絶または移植片対宿主病である。別の実施形態によれば、前記炎症性自己免疫病態は胆管の炎症病態、好ましくは原発性胆汁性肝硬変および原発性硬化性胆管炎である。
【0013】
別の実施形態によれば、有効量の本発明の薬剤または医薬組成物を前記対象に投与することとは、炎症性自己免疫病態を治療するために使用される、1つ以上の治療薬と組み合わせることである。
【0014】
別の実施形態によれば、有効量の薬剤または医薬組成物を前記対象に投与することとは、炎症性自己免疫病態に関与するとして知られている抗原に向けられる、少なくとも1つのTr1細胞集団またはクローンを含有する、1つ以上の薬剤または医薬組成物と組み合わせることである。
【0015】
本発明の別の目的は、その必要がある対象における炎症性自己免疫病態を治療するための工程であり、前記工程は、
―ヒトHSPに向けられるTr1細胞を取得するステップであって、前記Tr1細胞を前記対象の血液試料から取得する前記ステップと、
―ヒトHSPに向けられる前記Tr1細胞をクローニングするステップと、
―先のステップで取得したTr1クローンをさらに拡大(expand)するステップと、
―そうして取得したTr1クローンを、好ましくは静脈内注射により前記対象に注射するステップと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】HSP60活性化後におけるTr1クローンの特異的IL−10産生を示す図である。 図1は、特異的抗原HSP60の存在下において、Tr1細胞クローンによるIL−10産生の特異的増加を表す。照射した自己抗原提示細胞の存在下において、HSP60の有る場合と無い場合でクローンを活性化させた。48時間後、ELISAによりIL−10産生を測定した。
【図2】HSP60特異的Tr1クローンのサイトカイン分泌プロファイルを示す図である。 抗CD3+抗CD28のモノクローナル抗体で活性化させた細胞の48時間後の上清から、HSP60特異的Tr1細胞クローンのIL−10、IL−4、およびIFNγの分泌を測定した。
【図3】HSP60Tr1クローンのin vitroでの抑制活性を示す図である。 自己CD4+Tリンパ球増殖における、上清の抑制作用を調べることにより、HSP60Tr1クローンの抑制活性を評価した。活性化させたTr1クローンの上清の存在下又は非存在下で、抗CD3+抗CD28モノクローナル抗体およびインターロイキン2を使用して、CD4+Tリンパ球を活性化させた。自己CD4+T細胞の細胞増殖を5日後に測定した。結果は、CD4+Tリンパ球へのTr1細胞の上清の添加によりT細胞増殖が抑制されることを示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
定義
本明細書で使用される「Tr1細胞」という用語は、静止状態(at rest)でCD4+CD25−FoxP3−の表現型を有し、活性化されると高レベルのIL−10および有意なレベルのTGF−βを分泌できる細胞を言う。Tr1細胞は、独特なサイトカインプロファイルにより一部特徴付けられる。これらは、高レベルのIL−10、有意なレベルのTGF−β、および中間レベルのIFN−γを産生するが、IL−4またはIL−2はほとんど、もしくは全く産生しない。サイトカイン産生は典型的に、抗CD3+抗CD28抗体またはインターロイキン2、PMA+イオノマイシンのような、Tリンパ球のポリクローナル活性化因子を用いて活性化した後の細胞の培養物において評価される。代替的に、サイトカイン産生は、抗原提示細胞により提示される特異的T細胞抗原を用いて活性化した後の細胞の培養物において評価される。高レベルのIL−10とは、少なくとも約500pg/ml、典型的には約1000、2000、4000、6000、8000、1万、1万2000、1万4000、1万6000、1万8000、もしくは2万pg/ml、またはそれを上回る量に相当する。有意なレベルのTGF−βとは、少なくとも約100pg/ml、典型的には約200、300、400、600、800、もしくは1000pg/ml、またはそれを上回る量に相当する。中間レベルのIFN−γとは、0pg/ml〜少なくとも400pg/mlの間、典型的には約600、800、1000、1200、1400、1600、1800、もしくは2000pg/mlまたはそれを上回る量を含む濃度に相当する。IL−4またはIL−2がほとんど、もしくは全くないとは、約500pg/ml未満、好ましくは約250、100、75、もしくは50pg/mlまたはそれより少ない量に相当する。
【0018】
本明細書で使用される「抗原」という用語は、本発明の細胞が調節するように使用されるため、または本発明の任意の方法の使用のためのタンパク質またはペプチドを言う。一実施形態では、「抗原」という用語は、目的の抗原と配列相同性、もしくは目的の抗原と構造的相同性、またはそれらの組み合わせを共有する、合成由来の分子または天然由来の分子を言い得る。一実施形態では、抗原はミメトープであり得る。抗原の「断片」とは、より短いペプチドのような、抗原の任意のサブセットを言う。抗原の「変異体」とは、抗原全体またはその断片のどちらかに実質的に類似する分子を言う。変異体の抗原は、当技術分野で周知の方法を使用して、変異体のペプチドを直接化学合成することにより、便利に調製され得る。
【0019】
本明細書で使用される「対象」という用語は、ヒトを言う。
【0020】
本明細書で使用される「有効量」という用語は、有益な、または所望の臨床結果(例えば、臨床的病態の改善)を生じさせるに十分な量を言う。
【0021】
本明細書で使用される「クローン」または「クローン集団」という用語は、唯一の分化細胞に由来する分化細胞の集団を言う。
【0022】
本明細書で使用される「治療」または「治療する」という用語は、通常、治療される個体の自然経過を変えようとする臨床的介入を言い、臨床病理の過程中に行われ得る。望ましい効果とは、症状を軽減させ、いかなる直接的もしくは間接的な疾患の病理学的事象も抑制、減少、または阻害し、疾患進行率を低下させ、疾患の状態を改善もしくは緩和させ、寛解もしくは改善された予後を生じさせることを含むが、これらに限定されるものではない。本発明の文脈においては、それは自己免疫病態の臨床症状における任意の改善を言い、また、患者の健康における任意の改善を言う。
【0023】
本明細書で使用される「自己免疫疾患」という用語は、自己抗原に向けられる免疫反応を言う。
【0024】
本発明
本発明は、その必要がある対象における炎症性自己免疫病態を治療するための方法に関し、ヒトHSPに向けられる少なくとも1つのヒトTr1細胞集団を含有する組成物を前記対象に投与することを含む。
【0025】
本発明の別の目的は、ヒトHSPに向けられる少なくとも1つのヒトTr1細胞集団を含有する薬剤を提供することである。
【0026】
本発明はまた、1つ以上の薬学的に許容される担体と組み合わせる、ヒトHSPに向けられる少なくとも1つのヒトTr1細胞集団を含有する医薬組成物を提供することを目的とする。
【0027】
本発明によれば、「ヒトTr1細胞集団」とは、本明細書の定義において先に説明したTr1細胞に相当し、CD4+CD25+制御性T細胞もしくはFoxP3+制御性T細胞(天然または従来のTreg)、TGF−β分泌Th3細胞、または制御性NKT細胞を含まない。
【0028】
本発明によれば、「ヒトHSP」という用語は、ヒトHSP10、HSP40、HSP60、HSP70、HSP90、およびHSP100のファミリー、それらの断片および混合物を言う。
【0029】
本発明の好ましい実施形態では、前記Tr1細胞はHSP60、HSP70、HSP90、それらの断片および混合物に向けられる。
【0030】
本発明のより好ましい実施形態では、前記Tr1細胞は、HSP60およびその断片に向けられる。
【0031】
理論に拘束されることを望まないが、出願人は、注射されたヒトHSPに向けられるTr1細胞集団がHSPによりin vivoで活性化され、当該HSPの発現が炎症性自己免疫病態において上方制御されることを想定する。HSP特異的Tr1細胞の前記活性化によりIL−10の産生につながり、CD4+T細胞を抑制することができる。
【0032】
本発明の一実施形態では、ヒトTr1細胞は:
a)対象から前駆細胞集団を単離するステップと、
b)IL−10の存在下で、前記前駆細胞を培養することにより樹状細胞集団を取得するステップと、
c)ヒトHSPの存在下で、ステップb)の細胞を、前記対象から単離したCD4+Tリンパ球集団と接触させ、前記抗原に向けられるCD4+T細胞をTr1細胞集団に分化させるステップと、
d)ステップc)のTr1細胞集団を回収するステップと、により取得され得る。
ステップb)では、IL−10は、培地中に50〜250U/ml、好ましくは100U/ml存在する。Tr1細胞を取得するための前記方法は、Wakkachら(Immunity 2003 May;18(5):605−17)に説明されている。
【0033】
前記方法はまた、デキサメタゾンおよびビタミンD3、またはステップb)のDCの代わりに、寛容化もしくは未熟DCを使用して実行してもよい。
【0034】
本発明の別の実施形態では、ヒトTr1細胞は:
a)対象から単離したヒトHSPに向けられるCD4+T細胞集団を、適切な量のIFN−αを用いた培地で培養するステップと、
b)Tr1細胞集団を回収するステップと、により取得され得る。
【0035】
IFN−αは、好ましくは5ng/mlで培地に存在する。ステップa)では、培地は適切な量のIL−10、好ましくは100U/mlをさらに含有し得る。
ステップb)では、Tr1細胞集団は、増殖ができるようにIL−15を含有する培地で培養され、IL−15は培地中、好ましくは5ng/mlである。Tr1細胞を取得するための前記方法は、米国特許第6746670号に説明されている。
【0036】
本発明のさらに別の実施形態では、ヒトTr1細胞は、
a)人工抗原提示細胞により提示されたヒトHSPの存在下で、CD4+T細胞集団をin vitroで活性化させるステップと、
b)少なくとも10%のTr1細胞を含有する活性化させたCD4+T細胞を回収するステップと、により取得され得る。
【0037】
好ましくは、人工抗原提示細胞は、HLA II系分子およびヒトLFA−3分子を発現し、共刺激分子B7−1、B7−2、B7−H1、CD40、CD23、およびICAM−1を発現しない。
【0038】
Tr1細胞を取得するための前記工程は、国際公開第02/092793号に説明されている。
【0039】
本発明のさらに別の実施形態では、ヒトTr1細胞は、
a)ヒトHSPおよび適切な量のIL−10の存在下で、CD4+T細胞集団をin vitroで活性化させるステップと、
b)Tr1細胞集団を回収するステップと、により取得され得る。
【0040】
好ましくは、IL−10は培地中、100U/mlで存在する。前記方法は、Grouxら(Nature 1997,389(6652):737−42)に説明されている。
【0041】
本発明のさらに別の実施形態では、ヒトTr1細胞は、
a)ヒトHSPを用いて、白血球集団または末梢血単核球(PBMC)集団を刺激するステップと、
b)刺激した集団から、ヒトHSP−特異的Tr1細胞集団を回収するステップと、
c)前記ヒトHSP−特異的Tr1細胞集団を随意に拡大するステップと、により取得され得る。
【0042】
白血球は、その重要性、その分布、その数、その寿命、およびその可能性により特徴付けられる数種類の細胞を包含する。これらの種類は以下の通りである:多核白血球または顆粒白血球であり、その中には好酸球性、好中球性、および好塩基球性の白血球、並びに単核細胞、または末梢血単核球(PBMC)が見出され、これは巨大な白血球であり、免疫システム(リンパ球および単球)の主要な細胞型にある。白血球またはPBMCは、当技術分野で公知の、任意の方法により末梢血液から分離することができる。有利には、PBMCの分離には遠心分離、好ましくは密度勾配遠心分離、好ましくは非連続的な密度勾配遠心分離が使用され得る。代替手段は特異的モノクローナル抗体の使用である。ある実施形態では、PBMCは典型的に、標準的な手順を使用して、フィコール・ハイパックの手段により全血産物から単離される。別の実施形態では、PBMCは、白血球除去の手段により回収される。
【0043】
前記方法は、国際公開第2007/010406号に説明されている。
【0044】
さらに別の実施形態では、ヒトTr1細胞は、
a)白血球集団または末梢血単核球細胞(PBMC)集団を、ヒトHSPの存在下で間葉系幹細胞を用いて培養するステップと、
b)Tr1細胞集団を回収するステップと、により取得し得る。
【0045】
前記方法はまた、PBMCまたは白血球の代わりに、ナイーブT細胞またはメモリーT細胞を用いて実行することもできる。
【0046】
そうして取得したTr1細胞集団は、インターロイキン−2およびインターロイキン−4のようなサイトカインの存在下で、培養によりさらに拡大し得る。代替的に、インターロイキン−15およびインターロイキン−13もまた、Tr1細胞の拡大培養に使用し得る。
【0047】
先に説明した方法では、ヒトTr1細胞は、国際公開第2005/000344号に説明される同定方法により特徴付けられ得る。Tr1細胞の前記同定方法は、CD4分子、並びにCD18および/またはCD11a、およびCD49bを含有する群の分子をコードする遺伝子の発現産物の、同時存在性を検出することに基づく。Tr1細胞は、ELISA、フローサイトメトリー、または前記マーカーに対する抗体を用いた免疫親和性の方法により、同定および/または精製できる。
【0048】
Tr1細胞はまた、フローサイトメトリーまたは電磁ビーズを使用して、ポジティブ選択またはネガティブ選択により濃縮することができる。そのような方法はまた、国際公開第2005/000344号に説明されている。
【0049】
本発明の別の実施形態では、関節関連の抗原に向けられるTr1細胞は、国際公開第2006/108882号に説明されている、in vitroにおける方法により拡大され得る。前記方法は、:
a)35℃より下の温度T1、培地Mfにおいて、昆虫フィーダー細胞のようなフィーダー細胞を培養するステップであって、前記温度T1によりフィーダー細胞の増殖が可能となり、前記フィーダー細胞が次の細胞表面タンパク質:
―CD3/TCR複合体、
―CD28タンパク質、
―IL−2受容体、
―CD2タンパク質、および
―IL−4受容体
と相互作用する因子を発現するステップと、
b)ステップa)で取得した、その培地Mfから除去した、またはその培地Mf以外のフィーダー細胞を、培地Mpに包含されたTr1細胞集団と接触させるステップであって、前記培地Mpが、Tr1細胞集団、フィーダー細胞、および培地Mpを包含する混合物を取得するために、ステップa)で記載した因子を最初から包含していない前記ステップと、
c)ステップb)で取得した混合物を、少なくとも35℃の温度T2で培養するステップであって、Tr1細胞集団が増殖し、フィーダー細胞が増殖しないように前記温度を選択する前記ステップと、
d)そのように拡大したTr1細胞集団を回収するステップと、を含む。
【0050】
先に言及した細胞表面タンパク質と相互作用する因子の例は:
―修飾された抗CD3抗体であって、CD3重鎖の抗CD3細胞質内ドメインが膜貫通ドメインと置換された、前記修飾された抗CD3抗体と、
―CD80またはCD86タンパク質と、
―フィーダー細胞から分泌されたIL−2と、
―CD58タンパク質と、
―IL−4およびIL−13を含有する群から選択されるインターロイキンと、を含む。
【0051】
本発明の好ましい実施形態では、ヒトHSPに向けられる前記Tr1細胞は、T細胞をクローニングするための従来の方法を使用してクローニングしてよい。
【0052】
本発明の好ましい実施形態では、ヒトHSPに向けられる少なくとも1つのヒトTr1細胞集団、またはヒトHSPに向けられるヒトTr1細胞の少なくとも1つのクローンを含有する組成物は、保存のために凍結されてよい。
【0053】
好ましい実施形態によれば、前記ヒトTr1細胞集団はヒトTr1クローン集団である。
【0054】
本明細書における薬学的に許容される有用な担体は、従来の担体である。Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980)では、本発明の組成物の医薬品送達のための適した組成物および製剤を説明している。一般的に、担体の特質は、用いられる投与方法によって決まる。例えば、非経口的な製剤は、ビヒクルとして、水、生理食塩水、平衡塩類溶液、水溶性ブドウ糖、ゴマ油、グリセリン、エタノール、それらの組み合わせなどのような、薬学的および生理学的に許容される液体を含んだ注射液を通常は含む。担体および組成物は無菌にすることができ、製剤は投与方法に適合する。生物学的に中性の担体に加え、投与される医薬組成物は、湿潤剤または乳化剤、保存剤、およびpH緩衝剤など、例えば酢酸ナトリウムまたはソルビタンモノラウラートのような無毒性の補助物質を少量包含することができる。組成物は溶液、懸濁液、および乳剤にできる。
【0055】
本発明は、炎症性自己免疫病態を治療するために、本明細書で先に説明した薬剤または医薬組成物の調製に、ヒトHSPに向けられる少なくとも1つのヒトTr1細胞集団を使用することに関する。
【0056】
本発明の一目的は、炎症性自己免疫病態を治療するか、または炎症性自己免疫病態の治療において使用する、本明細書で先に説明した薬剤または医薬組成物である。
【0057】
炎症性自己免疫病態は:自己免疫性(橋本病の)甲状腺炎、甲状腺機能亢進症(グレーブス病)、自己免疫性副腎不全(アジソン病)、自己免疫性卵巣炎、自己免疫性精巣炎、自己免疫性肝炎、自己免疫性溶血性貧血、発作性寒冷ヘモグロビン尿症、自己免疫性血小板減少症、自己免疫性好中球減少症、悪性貧血、真性赤血球貧血、自己免疫性凝固障害、重症筋無力症、自己免疫性多発神経炎、多発性硬化症、天疱瘡および他の水疱症、リウマチ性心炎、グッドパスチャー症候群、開心術後症候群、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群(Sjorgen‘s syndrome)、多発性筋炎、皮膚筋炎、強皮症、炎症性腸疾患:クローン病、潰瘍性大腸炎;慢性閉塞性肺疾患、慢性炎症性疾患、セリアック病、血管炎、ウェゲナー病、チャーグ・ストラウス症候群、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、循環器疾患、関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、若年性突発性関節炎、多発性皮膚筋炎(polydermatomyositis)、敗血症性ショック、宿主対移植片病、移植片対宿主病、喘息、鼻炎、乾癬、ガンに伴う悪液質、湿疹、白斑、ライター症候群、川崎病、特発性血小板減少性紫斑病、ギランバレー症候群、抗リン脂質抗体症候群(APS)、粥状動脈硬化症、ナルコレプシーを含むがこれらに限定されるものではない。
【0058】
好ましい実施形態では、本発明は、糖尿病ではない炎症性自己免疫病態を治療するために、本明細書で先に説明した薬剤または医薬組成物の調製に、ヒトHSPに向けられる少なくとも1つのヒトTr1細胞集団を使用することに関する。
【0059】
好ましくは、前記炎症性自己免疫疾患は、クローン病および潰瘍性大腸炎のような腸炎の病態;関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、および若年性突発性関節炎のような関節炎の病態;多発性硬化症、ウェゲナー病、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、喘息、移植片拒絶反応(宿主対移植片病)、移植片対宿主病を含む群から選択される。
【0060】
より好ましくは、前記炎症性自己免疫疾患は、関節リウマチ、クローン病、潰瘍性大腸炎、喘息、および移植片拒絶反応または移植片対宿主病の群から選択される。
【0061】
好ましい実施形態では、本発明は、関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、および若年性突発性関節炎のような関節炎を治療するための薬剤または医薬組成物の調製に、本明細書で先に説明した組成物を使用することに関する。
【0062】
別の好ましい実施形態では、本発明は、多発性硬化症を治療するための薬剤または医薬組成物の調製に、本明細書で先に説明した組成物を使用することに関する。
【0063】
別の好ましい実施形態では、本発明は、腸炎の病態を治療するための、好ましくはクローン病および潰瘍性大腸炎を治療する薬剤または医薬組成物の調製に、本明細書で先に説明した組成物を使用することに関する。
【0064】
別の好ましい実施形態では、本発明は、ウェゲナー病および粥状動脈硬化症のような血管炎を治療するための薬剤または医薬組成物の調製に、本明細書で先に説明した組成物を使用することに関する。
【0065】
別の好ましい実施形態では、本発明は、原発性胆汁性肝硬変および原発性硬化性胆管炎のような、胆管または肝臓の自己免疫性炎症を治療するための薬剤または医薬組成物の調製に、本明細書で先に説明した組成物を使用することに関する。
【0066】
別の好ましい実施形態では、本発明は、宿主対移植片病および移植片対宿主病のような移植関連疾患を治療するための薬剤または医薬組成物の調製に、本明細書で先に説明した組成物を使用することに関する。
【0067】
別の好ましい実施形態では、本発明は、喘息を治療するための薬剤または医薬組成物の調製に、本明細書で先に説明した組成物を使用することに関する。
【0068】
本発明の目的はまた、その必要がある対象における炎症性自己免疫病態を治療するための方法であって、本明細書で先に説明した有効量の薬剤または医薬組成物を投与することを含む。
【0069】
組成物は、非経口的な、筋肉内、静脈内、腹腔内への注射、鼻腔内吸入、肺内吸入、皮内、関節内、くも膜下腔内への注射用に製剤され得る。
【0070】
好ましくは、本発明の薬剤または医薬組成物は、筋肉内、腹腔内、静脈内への注射により、または患者のリンパ節への直接注射、より好ましくは静脈内注射により投与され得る。
【0071】
炎症性自己免疫病態の治療において有効な、ヒトHSPに向けられるTr1細胞の量は炎症の特性によって決まり、標準の臨床技術によって決定することができる。製剤に用いられる的確な量は、投与経路、および疾患または障害の重篤度によって決まるであろうし、医師の判断および各個人の環境に応じて決定されるべきである。有効用量は、in vitroまたは動物モデル試験システムから導かれる用量反応曲線から推定することができる。
【0072】
本発明の一実施形態では、10/kg〜10/kgの細胞を対象に投与する。好ましくは、10/kg〜10/kgの細胞、より好ましくは、約10/kgの細胞を対象に投与する。
【0073】
本発明の一実施形態では、対象は、対象の臨床状態の低下によりフレアーアップが起こったとき、薬剤を投与される。
【0074】
本発明の一実施形態では、対象は、本発明の薬剤または医薬組成物を1回投与される。
【0075】
本発明の第二実施形態では、対象は、本発明の薬剤または医薬組成物を月に1回投与される。
【0076】
本発明の第三実施形態では、対象は、本発明の薬剤または医薬組成物を3ヶ月に1回投与される。
【0077】
本発明の第四実施形態では、対象は、本発明の薬剤または医薬組成物を一年に1回から2回投与される。
【0078】
本発明の別の実施形態では、その必要がある対象に投与する薬剤または医薬組成物は、前記対象の細胞が自己由来であるヒトTr1細胞を含む。
【0079】
これは、Tr1細胞がその由来する対象に投与されるか、またはTr1細胞の産生のために使用する前駆体がTr1細胞を投与する対象に由来することを意味する。
【0080】
本発明はまた、その必要がある対象の炎症性自己免疫病態を治療するための工程に関し、前記工程は:
―前記対象の血液試料を採取するステップと、
―ヒトHSPに向けられるTr1細胞を取得するステップと、
―ヒトHSPに向けられる前記Tr1細胞をクローニングするステップと、
―先のステップで取得したTr1クローンをさらに拡大するステップと、
―そうして取得したTr1クローンを前記対象に、好ましくは静脈内注射により注射するステップと、を含む。
【0081】
好ましくは、ヒトHSPに向けられるTr1クローンのクローニングおよび拡大は、以下の方法:
a)35℃より下の温度T1、培地Mfで、昆虫フィーダー細胞のようなフィーダー細胞を培養するステップであって、前記温度T1によりフィーダー細胞の増殖が可能となり、前記フィーダー細胞が次の細胞表面タンパク質:
―CD3/TCR複合体、
―CD28タンパク質、
―IL−2受容体、
―CD2タンパク質、
―IL−4受容体
と相互作用する因子を発現するステップと、
b)ステップa)で取得した、その培地Mfから除去した、またはその培地Mf以外のフィーダー細胞を、培地Mpに包含されたTr1細胞集団と接触させるステップであって、前記培地Mpが、Tr1細胞集団、フィーダー細胞、および培地Mpを包含する混合物を取得するために、ステップa)で記載した因子を最初から包含していない前記ステップと、
c)ステップb)で取得した混合物を、少なくとも35℃の温度T2で培養するステップであって、Tr1細胞集団が増殖し、フィーダー細胞が増殖しないように前記温度を選択する前記ステップと、
d)そのように拡大されたTr1細胞集団を回収するステップと、を用いて実行される。
【0082】
先に言及した細胞表面タンパク質と相互作用する因子の例は:
―修飾された抗CD3抗体であって、CD3重鎖の抗CD3細胞質内ドメインが膜貫通ドメインと置換された、前記修飾された抗CD3抗体と、
―CD80またはCD86タンパク質と、
―フィーダー細胞から分泌されたIL−2と、
―CD58タンパク質と、
―IL−4およびIL−13を含有する群から選択されるインターロイキンと、を含む。
【0083】
本発明の別の実施形態では、炎症性自己免疫病態を治療するための工程は、本明細書で後に説明するような1つ以上の治療薬との組み合わせ投与、および/または、本明細書で後に説明するような炎症性自己免疫病態に関与するとして知られている抗原に向けられる、少なくとも1つのヒトTr1細胞集団を含有する、有効量の薬剤または医薬組成物の組み合わせ投与のような追加ステップを含む。
【0084】
本発明の別の実施形態では、その必要がある対象の炎症性自己免疫病態を治療するための方法は、炎症性自己免疫病態を治療するために使用される1つ以上の治療薬と組み合わせて、有効量の本発明の薬剤または医薬組成物を前記対象に投与することを含む。
【0085】
本発明は、炎症性自己免疫病態を治療するために、本発明の医薬組成物または薬剤を使用することに関し、有効量の本発明の薬剤または医薬組成物を前記対象に投与することとは、炎症性自己免疫病態を治療するために使用される1つ以上の治療薬と組み合わせることである。
【0086】
関節炎の炎症病態を治療するために一般に使用される治療薬の例は以下が挙げられる:
―コルチコイド(プレドニゾン)、
―インフリキシマブ、アダリムマブ、エタネルセプトのようなTNF遮断薬;
―アナキンラ、AMG108、イグラチモド、アクテムラのような抗インターロイキン
―リツキシマブ、エピラツズマブのような抗Bリンパ球;
―アバタセプト、ベリムマブのような抗−共刺激分子;
―LJP394またはTV−4710のような免疫寛容薬(Bリンパ球表面のDNA受容体に向けられる合成分子);
―エクリズマブのような抗補体タンパク質;
―CP690550のようなT細胞シグナル伝達分子の阻害薬
―ケモカイン受容体の拮抗薬(マラビロク、INCB3284)のような、細胞遊走の阻害薬、
―レフルノミド、スルファサラジン、ヒドロキシクロロキン、アザチオプリン、メトトレキサート、シクロスポリン、ミノサイクリン、Dペニシラミン、
―メトトレキサート+スルファサラジン、メトトレキサート+ヒドロキシクロロキン、メトトレキサート+アザチオプリン、メトトレキサート+インフリキシマブ、メトトレキサート+レフルノミド、メトトレキサート+エタネルセプト、シクロスポリン+ヒドロキシクロロキン、シクロスポリン+メトトレキサート、メトトレキサート+スルファサラジン+ヒドロキシクロロキン、のようなそれらの併用療法。
【0087】
本発明の好ましい実施形態では、その必要がある対象における関節炎の炎症病態を治療するための方法は、コルチコイド、TNF遮断薬、抗インターロイキン、抗Bリンパ球、抗−共刺激分子、免疫寛容薬、抗補体タンパク質、T細胞シグナル伝達分子の阻害薬、細胞遊走の阻害薬、メトトレキサート、レフルノミド、スルファサラジン、ヒドロキシクロロキン、アザチオプリン、メトトレキサート、シクロスポリン、ミノサイクリン、Dペニシラミンの群から選択される、1つ以上の治療薬と組み合わせて、有効量の本発明の薬剤または医薬組成物を前記対象に投与することを含む。
【0088】
本発明は、その必要がある対象において、炎症性関節炎の病態を治療するために、本発明の医薬組成物または薬剤を使用することに関し、有効量の本発明の薬剤または医薬組成物を前記対象に投与することとは、コルチコイド、TNF遮断薬、抗インターロイキン、抗Bリンパ球、抗−共刺激分子、免疫寛容薬、抗補体タンパク質、T細胞シグナル伝達分子の阻害薬、細胞遊走の阻害薬、メトトレキサート、レフルノミド、スルファサラジン、ヒドロキシクロロキン、アザチオプリン、メトトレキサート、シクロスポリン、ミノサイクリン、Dペニシラミンの群から選択される、1つ以上の治療薬と組み合わせることである。
【0089】
多発性硬化症を治療するために一般に使用される治療薬の例は以下が挙げられる:
―インターフェロン、例えばヒトインターフェロンβ−1a(例えばAVONEX(登録商標)またはRebif(登録商標))およびインターフェロンβ−1b(BETASERON(登録商標));17位で置換されたヒトインターフェロンβ(Berlex/Chiron);
―グラチラマー酢酸塩(コポリマー1、Cop−1とも呼ばれる;COPAXONE(商標);(Teva Pharmaceutical Industries,Inc.);および誘導体、
―フマル酸、例えばフマル酸ジメチル(例えばFumaderm(登録商標));
―Rituxan(登録商標)(リツキシマブ)または別の抗CD20抗体、例えばリツキシマブとオーバーラップするエピトープと競合または結合する抗体;
―ミトキサントロン(NOVANTRONE(登録商標)、Lederle);
―化学療法薬、例えばクラドリビン(clabribine)(LEUSTATIN(登録商標))、アザチオプリン(IMURAN(登録商標))、シクロホスファミド(CYTOXAN(登録商標))、シクロスポリン−A、メトトレキサート、4−アミノピリジン、およびチザニジン;
―コルチコステロイド、例えばメチルプレドニゾロン(MEDRONE(登録商標)、Pfizer)、プレドニゾン;
―免疫グロブリン、例えばRituxan(登録商標)(リツキシマブ);CTLA4 Ig;アレムツズマブ(MabCAMPATH(登録商標))、またはダクリズマブ(CD25と結合する抗体);
―スタチン;
―静注用免疫グロブリンG(IgGIV)
―ナタリズマブ(タイサブリ)抗インテグリンα4抗体
―経口用CCケモカイン受容体1拮抗薬BX471(ZK811752)、
―FTY720(フィンゴリモド)、
―ヒトサイトカインまたは増殖因子、例えばTNF、LT、IL−1、IL−2、IL−6、IL−7、IL−8、IL−12、IL−15、IL−16、IL−17、IL−18、IL−23、EMAP−II、GM−CSF、FGF、およびPDGFの抗体または拮抗薬
―CD2、CD3、CD4、CD8、CD25、CD28、CD30、CD40、CD45、CD69、CD80、CD86、CD90のような細胞表面分子またはそれらのリガンドに対する抗体、
―FK506、ラパマイシン、ミコフェノール酸モフェチル、レフルノミド、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、例えばホスホジエステラーゼ阻害薬、アデノシン作用薬、抗血栓薬、補体阻害薬、アドレナリン作動薬、本明細書で説明される炎症誘発性サイトカインによるシグナル伝達に干渉する薬剤、IL−Iβ変換酵素阻害薬(例えばVx740)、抗P7s、PSGL、TACE阻害薬、キナーゼ阻害剤のようなT細胞シグナル伝達阻害薬、メタロプロテアーゼ(metal loproteinase)阻害薬、スルファサラジン、アザチオプリン、6−メルカプトプリン、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、
―アマンタジン、バクロフェン、パパベリン、メクリジン、ヒドロキシジン、スルファメトキサゾール、シプロフロキサシン、ドクサート、ペモリン、ダントロレン、デスモプレシン、デキサメタゾン、トルテロジン、フェニトイン、オキシブチニン、ビサコジル、ベンラファクシン、アミトリプチリン、メテナミン、クロナゼパム、イソニアジド、バルデナフィル、ニトロフラントイン、サイリウム親水性ムチロイド、アルプロスタジル、ガバペンチン、ノルトリプチリン、パロキセチン、プロパンテリン臭化物、モダフィニル、フルオキセチン、フェナゾピリジン、メチルプレドニゾロン、カルバマゼピン、イミプラミン、ジアゼパム、シルデナフィル、ブプロピオン、およびセルトラリン。
現在のところ使用される併用療法の例は:
―グラチラマー酢酸塩およびアルブテロール、
―グラチラマー酢酸塩およびミノサイクリン、
―インターフェロンβ1aおよびミコフェノール酸モフェチル、
―BHT−3009およびアトルバスタチン。
【0090】
本発明の好ましい実施形態では、その必要がある対象における多発性硬化症を治療するための方法は、インターフェロンβ、グラチラマー酢酸塩、ミトキサントロン、シクロホスファミド、メトトレキサート、アザチオプリン、またはナタリズマブの群における1つ以上の治療薬と組み合わせて、有効量の本発明の薬剤または医薬組成物を前記対象に投与することを含む。
【0091】
本発明は、多発性硬化症を治療するための本発明の医薬組成物または薬剤を使用することに関し、有効量の本発明の薬剤または医薬組成物を前記対象に投与することとは、インターフェロンβ、グラチラマー酢酸塩、ミトキサントロン、シクロホスファミド、メトトレキサート、アザチオプリン、またはナタリズマブの群における1つ以上の治療薬と組み合わせることである。
【0092】
腸炎の病態を治療するために一般に使用される治療薬の例は以下が挙げられる:
―ヒトサイトカインまたは増殖因子に対する抗体または拮抗薬であって、特にインフリキシマブ、アダリムマブ、抗IL−1、抗IL−6、抗IL−12、抗IL−17、および抗IL−23のような抗TNF抗体または拮抗薬;IL−1受容体拮抗薬の類似物(アナキンラ)、およびエタネルセプトのようなTNF遮断薬、
―抗α4インテグリン(ナタリズマブ)、CD2、CD3(ビジリズマブ)、抗CCR9、抗LFA1、および抗ICAM1のような細胞表面分子に対する抗体;
―メサラジン、スルファサラジン(sulfazaline)、オルサラジン、バルサラジドのような5アミノサリチル酸および類似物;
―プレドニゾン、ブデソニド、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ベタメタゾン、ベドメタゾン(bedomethasone)、チキソコルトールのようなコルチコイド;
―サッカロマイセス・ブラウディのようなプロバイオティクス、
―メトトレキサート、サリドマイド、レフルノミド、並びにアザチオプリンおよび6−メルカプトプリンのようなプリン類似物。
【0093】
本発明の好ましい実施形態では、その必要がある対象における腸炎の病態を治療するための方法は、抗TNFまたはTNF遮断薬、ナタリズマブ、抗IL−1、抗IL−6、抗IL−12、抗IL−17、および抗IL−23;IL−1受容体拮抗薬の類似物(アナキンラ);メサラジン、スルファサラジン、オルサラジン、バルサラジドのような5アミノサリチル酸および類似物;プレドニゾン、ブデソニド、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ベタメタゾン、ベドメタゾン、チキソコルトールのようなコルチコイドの群から選択される1つ以上の治療薬と組み合わせて、有効量の本発明の薬剤または医薬組成物の前記対象への投与を含む。
【0094】
本発明は、その必要がある対象における腸炎の病態を治療するために、本発明の医薬組成物または薬剤を使用することに関し、有効量の本発明の薬剤または医薬組成物を前記対象に投与することとは、抗TNFまたはTNF遮断薬、ナタリズマブ、抗IL−1、抗IL−6、抗IL−12、抗IL−17、および抗IL−23;IL−1受容体拮抗薬の類似物(アナキンラ);メサラジン、スルファサラジン、オルサラジン、バルサラジドのような5アミノサリチル酸および類似物;プレドニゾン、ブデソニド、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ベタメタゾン、ベドメタゾン、チキソコルトールのようなコルチコイドの群から選択される1つ以上の治療薬と組み合わせることである。
【0095】
粥状動脈硬化症およびウェゲナー病のような血管炎を治療するために一般に使用される治療薬は、粥状動脈硬化症のためのスタチン、アスピリン、ヘパリンおよびクマジンのような血液凝固薬、また、ウェゲナー病のためのコルチコイド、アザチオプリン、メトトレキサート、シクロホスファミド、抗Bリンパ球抗体(リツキシマブ)、抗TNF抗体(エタネルセプト、レミケード)および抗胸腺細胞グロブリンである。
【0096】
本発明の好ましい実施形態では、その必要がある対象における粥状動脈硬化症およびウェゲナー病のような血管炎を治療するための方法は、粥状動脈硬化症のためには、スタチン、アスピリン、ヘパリンおよびクマジンのような血液凝固薬、また、ウェゲナー病のためには、コルチコイド、アザチオプリン、メトトレキサート、シクロホスファミド、抗Bリンパ球抗体(リツキシマブ)、TNF遮断薬(エタネルセプト、レミケード)および抗胸腺細胞グロブリンと組み合わせて、有効量の本発明の薬剤または医薬組成物を前記対象に投与することを含む。
【0097】
本発明は、その必要がある対象における粥状動脈硬化症およびウェゲナー病のような血管炎を治療するために、本発明の医薬組成物または薬剤を使用することに関し、有効量の本発明の薬剤または医薬組成物を前記対象に投与することとは、粥状動脈硬化症のためには、スタチン、アスピリン、ヘパリンおよびクマジンのような血液凝固薬、また、ウェゲナー病のためには、コルチコイド、アザチオプリン、メトトレキサート、シクロホスファミド、抗Bリンパ球抗体(リツキシマブ)、TNF遮断薬(エタネルセプト、レミケード)および抗胸腺細胞グロブリンを組み合わせることである。
【0098】
原発性胆汁性肝硬変および原発性硬化性胆管炎のような、胆管または肝臓の自己免疫性炎症を治療するために一般に使用される治療薬は、ウルソデオキシコール酸(ウルソジオール)である。
【0099】
本発明の好ましい実施形態では、その必要がある対象における原発性胆汁性肝硬変および原発性硬化性胆管炎のような、胆管または肝臓の自己免疫性炎症を治療するための方法は、ウルソデオキシコール酸(ウルソジオール)と組み合わせて、有効量の本発明の薬剤または医薬組成物を前記対象に投与することを含む。
【0100】
本発明は、その必要がある対象における原発性胆汁性肝硬変および原発性硬化性胆管炎のような、胆管または肝臓の自己免疫性炎症を治療するために、本発明の医薬組成物または薬剤を使用することに関し、有効量の本発明の薬剤または医薬組成物を前記対象に投与することとは、ウルソデオキシコール酸(ウルソジオール)と組み合わせることである。
【0101】
移植片拒絶反応(宿主対移植片病または移植片対宿主病)に関連する炎症を治療するために一般に使用される治療薬は、カルシニューリン阻害薬(シクロスポリン、タクロリムス)、mTOR阻害剤(シロリムス、エベロリムス)、抗増殖阻害薬(アザチオプリン、ミコフェノール酸)、CD25に対するモノクローナル抗体(ダクルジマブ、バシリキシマブ)、または抗胸腺細胞グロブリンおよび抗リンパ球グロブリンの製剤である。
【0102】
本発明の好ましい実施形態では、その必要がある対象における移植片拒絶反応(宿主対移植片病または移植片対宿主病)に関連する炎症を治療するための方法は、カルシニューリン阻害薬(シクロスポリン、タクロリムス)、mTOR阻害剤(シロリムス、エベロリムス)、抗増殖阻害薬(アザチオプリン、メトトレキサート、ミコフェノール酸)、CD25に対するモノクローナル抗体(ダクルジマブ、バシリキシマブ)、または抗胸腺細胞グロブリンおよび抗リンパ球グロブリンの製剤と組み合わせて、有効量の本発明の薬剤または医薬組成物を前記対象へ投与することを含む。
【0103】
本発明は、その必要がある対象における移植片拒絶反応(宿主対移植片病または移植片対宿主病)に関連する炎症を治療するために、本発明の医薬組成物または薬剤を使用することに関し、有効量の本発明の薬剤または医薬組成物を前記対象に投与することとは、カルシニューリン阻害薬(シクロスポリン、タクロリムス)、mTOR阻害剤(シロリムス、エベロリムス)、抗増殖阻害薬(アザチオプリン、ミコフェノール酸)、CD25に対するモノクローナル抗体(ダクルジマブ、バシリキシマブ)、または抗胸腺細胞グロブリンおよび抗リンパ球グロブリンの製剤と組み合わせることである。
【0104】
喘息を治療するために一般に使用される治療薬は、サルブタモール(アルブテロール USAN)、レバルブテロール、テルブタリン、およびビトルテロールのような短時間作用型の、選択的β2アドレナリン受容体作動薬、並びに吸入用エピネフリンおよびエフェドリン錠剤のような他のアドレナリン作動薬、イプラトロピウム臭化物、吸入用糖質コルチコイドのような抗コリン薬である。
【0105】
本発明の好ましい実施形態では、その必要がある対象における喘息を治療するための方法は、サルブタモール(アルブテロール USAN)、レバルブテロール、テルブタリン、およびビトルテロールのような短時間作用型の、選択的β2アドレナリン受容体作動薬、並びに吸入用エピネフリンおよびエフェドリン錠剤のような他のアドレナリン作動薬、イプラトロピウム臭化物、吸入用糖質コルチコイドのような抗コリン薬と組み合わせて、有効量の本発明の薬剤または医薬組成物を前記対象に投与することを含む。
【0106】
本発明は、その必要がある対象における喘息を治療するために、本発明の医薬組成物または薬剤を使用することに関し、有効量の本発明の薬剤または医薬組成物を前記対象に投与することとは、サルブタモール(アルブテロール USAN)、レバルブテロール、テルブタリン、およびビトルテロールのような短時間作用型の、選択的β2アドレナリン受容体作動薬、並びに吸入用エピネフリンおよびエフェドリン錠剤のような他のアドレナリン作動薬、イプラトロピウム臭化物、吸入用糖質コルチコイドのような抗コリン薬と組み合わせることである。
【0107】
本発明の別の実施形態では、その必要がある対象の炎症性自己免疫病態を治療するための方法は、炎症性自己免疫病態に関与するとして知られている抗原に向けられる、少なくとも1つのヒトTr1細胞集団を含有する1つ以上の薬剤または医薬組成物と組み合わせて、有効量の本発明の薬剤または医薬組成物を前記対象に投与することを含む。
【0108】
本発明は、本発明の医薬組成物または薬剤を使用することに関し、有効量の本発明の薬剤または医薬組成物を前記対象に投与することは、炎症性自己免疫病態に関与するとして知られている抗原に向けられる、少なくとも1つのヒトTr1細胞集団を含有する1つ以上の薬剤または医薬組成物と組み合わせることである。
【0109】
関節リウマチ、強直性脊椎炎、若年性突発性関節炎、および乾癬性関節炎のような関節炎の病態を治療するために使用できる薬剤または医薬組成物の例は、関節関連の抗原に向けられる少なくとも1つのTr1細胞集団またはクローンを含有する薬剤または医薬組成物である。前記関節関連の抗原は、例えばシトルリン置換した環状および直鎖状のフィラグリンペプチド、II型コラーゲンペプチド、ヒト軟骨糖タンパク質39(HCgp39)ペプチド、不均一核内リボ核酸タンパク質(hnRNP)A2ペプチド、hnRNP B1、hnRNP D、Ro60/52、BiP、ケラチン、ビメンチン、フィブリノーゲン、カルジオリピン、I型、III型、IV型、およびV型コラーゲンペプチド、アネキシンV、グルコース6リン酸イソメラーゼ(GPI)、アセチル−カルパスタチン、ピルビン酸脱水素酵素(PDH)、アルドラーゼ、トポイソメラーゼI、snRNP、PARP、Scl−70、Scl−100、陰イオン性ホスファチジルセリン、中性に荷電したホスファチジルエタノールアミンおよびホスファチジルコリンを含むリン脂質抗原、マトリックスメタロプロテアーゼ、フィブリン、アグリカン、並びにそれらの断片、変異体、および混合物である。
【0110】
好ましい実施形態では、前記ヒトTr1細胞集団またはクローンは、II型コラーゲン、HCgp39、それらの断片および変異体から選択される関節関連の抗原に向けられる。
【0111】
本発明の好ましい実施形態では、その必要がある対象における関節炎の病態を治療するための方法は、関節関連の抗原、好ましくはII型コラーゲン、HCgp39、それらの断片、変異体、および混合物に向けられる、少なくとも1つのTr1細胞集団またはクローンを含有する、有効量の薬剤または医薬組成物と組み合わせて、有効量の本発明の薬剤または医薬組成物を前記対象に投与することを含む。
【0112】
本発明は、その必要がある対象における関節炎の病態を治療するために、本発明の医薬組成物または薬剤を使用することに関し、有効量の本発明の薬剤または医薬組成物を前記対象に投与することとは、関節関連の抗原、好ましくはII型コラーゲン、HCgp39、それらの断片、変異体、および混合物に向けられる、少なくとも1つのTr1細胞集団またはクローンを含有する、有効量の薬剤または医薬組成物と組み合わせることである。
【0113】
多発性硬化症の病態を治療するために使用できる薬剤または医薬組成物の例は、多発性硬化症関連の抗原に向けられる少なくとも1つのTr1細胞集団またはクローンを含有する薬剤または医薬組成物である。前記多発性硬化症関連の抗原は、例えばミエリン塩基性タンパク質、ミエリン関連糖タンパク質、ミエリンオリゴデンドロサイトタンパク質、プロテオリピドタンパク質、オリゴデンドロサイトミエリンオリゴタンパク質、ミエリン関連オリゴデンドロサイト塩基性タンパク質、オリゴデンドロサイト特異的タンパク質(単数および複数)、NOGO A、糖タンパク質 Po、末梢性ミエリンタンパク質22,2’3’−環状ヌクレオチド3’−ホスホジエステラーゼ、並びにそれらの断片、変異体、および混合物である。
【0114】
好ましい実施形態では、前記ヒトTr1細胞集団またはクローンは、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、プロテオリピドタンパク質(PLP)、およびミエリンオリゴデンドロサイトタンパク質(MOG)、並びにそれらの断片、変異体、および混合物の中から選択される多発性硬化症関連の抗原に向けられる。
【0115】
本発明の好ましい実施形態では、その必要がある対象における多発性硬化症の病態を治療するための方法は、多発性硬化症関連の抗原、好ましくはミエリン塩基性タンパク質(MBP)、プロテオリピドタンパク質(PLP)、およびミエリンオリゴデンドロサイトタンパク質(MOG)、並びにそれらの断片、変異体、および混合物に向けられる、少なくとも1つのTr1細胞集団またはクローンを含有する、有効量の薬剤または医薬組成物と組み合わせて、有効量の本発明の薬剤または医薬組成物を前記対象に投与することを含む。
【0116】
本発明は、その必要がある対象における多発性硬化症の病態を治療するために、本発明の医薬組成物または薬剤を使用することに関し、有効量の本発明の薬剤または医薬組成物を前記対象に投与することとは、多発性硬化症関連の抗原、好ましくはミエリン塩基性タンパク質(MBP)、プロテオリピドタンパク質(PLP)、およびミエリンオリゴデンドロサイトタンパク質(MOG)、並びにそれらの断片、変異体、および混合物に向けられる、少なくとも1つのTr1細胞集団またはクローンを含有する、有効量の薬剤または医薬組成物と組み合わせることである。
【0117】
クローン病および潰瘍性大腸炎のような、腸炎の病態を治療するために使用できる薬剤または医薬組成物の例は、一般的なヒトの食餌に由来する食品抗原に向けられる、少なくとも1つのTr1細胞集団またはクローンを含有する薬剤または医薬組成物である。前記一般的なヒトの食餌に由来する食品抗原は、例えばウシ抗原、Ca−結合SlOO、αラクトアルブミン、ラクトグロブリン、ウシ血清アルブミン、免疫グロブリンまたはカゼイン、タイセイヨウサケ抗原、ニワトリ抗原、卵白アルブミン、Ag22、コンアルブミン、リゾチームまたはニワトリ血清アルブミン、エビ抗原、コムギ抗原、セロリ抗原、ニンジン抗原、リンゴ抗原、リンゴ脂質移転タンパク質、リンゴプロフィリン、セイヨウナシ抗原、イソフラボン還元酵素、アボカド抗原、アンズ抗原、モモ抗原、ダイズ豆抗原、ピーナッツ、並びにそれらの断片、変異体、および混合物である。
【0118】
好ましい実施形態では、前記ヒトTr1細胞集団またはクローンは、卵白アルブミン、カゼイン、βラクトグロブリン、ダイズタンパク質、グリアジン、ピーナッツ、並びにそれらの断片、変異体、および混合物の中から選択される、一般的なヒトの食餌に由来する食品抗原に向けられる。
【0119】
本発明の好ましい実施形態では、その必要がある対象における腸炎の病態を治療するための方法は、一般的なヒトの食餌に由来する食品抗原、好ましくは卵白アルブミン、カゼイン、βラクトグロブリン、ダイズタンパク質、グリアジン、ピーナッツ、並びにそれらの断片、変異体、および混合物に向けられる、少なくとも1つのTr1細胞集団またはクローンを含有する、有効量の薬剤または医薬組成物と組み合わせて、有効量の本発明の薬剤または医薬組成物を前記対象に投与することを含む。
【0120】
本発明は、その必要がある対象における腸炎の病態を治療するために、本発明の医薬組成物または薬剤を使用することに関し、有効量の本発明の薬剤または医薬組成物を前記対象に投与することとは、一般的なヒトの食餌に由来する食品抗原、好ましくは卵白アルブミン、カゼイン、βラクトグロブリン、ダイズタンパク質、グリアジン、ピーナッツ、並びにそれらの断片、変異体、および混合物に向けられる、少なくとも1つのTr1細胞集団またはクローンを含有する、有効量の薬剤または医薬組成物と組み合わせることである。
【0121】
(実施例)
以下の説明では、詳細なプロトコルが与えられていない全ての実験は、標準的なプロトコルに従って行っている。
【0122】
本発明の好ましい実施形態を実証するために以下の実施例が含まれる。当業者には、発明者により見出された技術を示している実施例で開示される技術が、本発明の実施において十分に機能し、従ってその実施のための好ましい様式を構築していると考え得ることが理解されるべきである。しかし、本開示を踏まえると、当業者は、開示される特定の実施形態において多くの変更を成すことができ、また、本発明の精神および範囲から逸脱することなく同様の結果または類似の結果をさらに得られることを理解すべきである。
【0123】
(実験手順)
Tr1細胞の単離
健常な患者から血液試料を採取し、密度勾配遠心分離法により白血球を分離した。次いで、この抗原に向けられるTr1細胞の特異的増殖を誘導するために、ヒトHSP60の存在下で細胞を培養した。培養の13日後、限界希釈法により細胞集団をクローニングした。次いで、ヒトHSP60に対するそれらの特異性、および特徴的なTr1サイトカイン産生プロファイルについてクローンを評価した。
【0124】
サイトカイン分析
抗原特異性の判定のため、抗原提示細胞(4.10)の存在下、および特異的抗原(HSP60)の存在下または非存在下で刺激した、Tr1細胞クローンの48時間後の上清についてサンドイッチELISAを行った。サイトカイン産生プロファイルの決定のため、抗CD3+抗CD28モノクローナル抗体でHSP60 Tr1細胞クローンを刺激し、48時間後に上清を収集した。抗IL−4(11B11)、抗IL−10(2A5)、抗IFNγ(XGM1.2)、ビオチン抗IL−4(24G2)、抗IL−10(SXC1)、抗IFNγ(R4−6A2)(Pharmingen Becton Dickinson)を使用してELISAを行った。
【0125】
抑制研究
抑制研究のため、活性化したHSP60特異的Tr1クローン由来の上清の有る場合と無い場合で、自己CD4陽性Tリンパ球を共培養した。抗CD3+抗CD28モノクローナル抗体、およびインターロイキン2を用いて培養物を刺激した。5日後、RocheのWST−1増殖キットを使用して細胞増殖の全体を評価した。
【0126】
結果
図1は、抗原の存在または非存在下で、HSP60に特異的な4つの別々のTr1細胞集団のIL−10産生を示す。結果は、HSP60の刺激がIL−10の産生の増加を誘発することを示す。これらの結果は、HSP60に対する細胞集団の特異性を実証する。
【0127】
HSP60に特異的なこれらのTr1細胞集団のサイトカイン分泌プロファイルをさらに判定するため、抗CD3+抗CD28モノクローナル抗体の存在下で細胞を刺激した。IL−4、IL−10、およびIFNγの産生を測定するため、48時間後の上清についてELISAを行った。図2は、これらのHSP60特異的集団について観測されたサイトカイン分泌プロファイルが、Tr1サイトカイン分泌プロファイル、すなわちIL−10の高い産生、IFNγの産生、およびIL−4の無産生と一致することを示す。
【0128】
次いで、これらHSP60 Tr1集団の抑制活性を評価した。活性化したHSP60特異的Tr1クローンの上清の有る場合と無い場合で、自己CD4陽性Tリンパ球を共培養した。刺激の5日後、細胞増殖を測定した。図3は、4つのTr1集団の上清の結果を示し、これらTr1細胞の抑制活性を裏付ける。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトHSPに向けられる少なくとも1つのヒトTr1細胞集団を含有する薬剤。
【請求項2】
1つ以上の薬学的に許容される担体と組み合わせられる、ヒトHSPに向けられる少なくとも1つのヒトTr1細胞集団を含有する医薬組成物。
【請求項3】
前記ヒトTr1細胞集団がヒトTr1クローン集団である、請求項1に記載の薬剤または請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記ヒトTr1細胞集団がHSP60、HSP70、HSP90、およびそれらの断片または混合物に向けられる、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の薬剤または医薬組成物。
【請求項5】
炎症性自己免疫病態を治療するための、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の薬剤または医薬組成物。
【請求項6】
前記炎症性自己免疫病態が関節炎の病態、好ましくは関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、および若年性突発性関節炎である、請求項5に記載の薬剤または医薬組成物。
【請求項7】
前記炎症性自己免疫性が多発性硬化症の病態である、請求項5に記載の薬剤または医薬組成物。
【請求項8】
前記炎症性自己免疫病態が腸炎の病態、好ましくはクローン病および潰瘍性大腸炎である、請求項5に記載の薬剤または医薬組成物。
【請求項9】
前記炎症性自己免疫病態が血管炎、好ましくはウェゲナー病および粥状動脈硬化症である、請求項5に記載の薬剤または医薬組成物。
【請求項10】
前記炎症性自己免疫病態が喘息である、請求項5に記載の薬剤または医薬組成物。
【請求項11】
前記炎症性自己免疫病態が移植片拒絶反応または移植片対宿主病である、請求項5に記載の薬剤または医薬組成物。
【請求項12】
前記炎症性自己免疫病態が胆管の炎症病態、好ましくは原発性胆汁性肝硬変および原発性硬化性胆管炎である、請求項5に記載の薬剤または医薬組成物。
【請求項13】
その必要がある対象に投与する薬剤または医薬組成物が、前記対象の細胞に自己由来するヒトTr1細胞含む、請求項5乃至請求項12のいずれか一項に記載の薬剤または医薬組成物。
【請求項14】
10/kg〜10/kgのTr1細胞を、その必要がある対象に投与する、請求項5乃至請求項13のいずれか一項に記載の薬剤または医薬組成物。
【請求項15】
有効量の前記薬剤または医薬組成物を前記対象に投与することが、炎症性自己免疫病態を治療するために使用される1つ以上の治療薬と組み合わせることである、請求項5乃至請求項14のいずれか一項に記載の薬剤または医薬組成物。
【請求項16】
有効量の前記薬剤または医薬組成物を前記対象に投与することが、コルチコイド、TNF遮断薬、抗インターロイキン、抗Bリンパ球、抗共刺激分子、免疫寛容薬、抗補体タンパク質、T細胞シグナル伝達分子の阻害薬、細胞遊走の阻害薬、レフルノミド、スルファサラジン、ヒドロキシクロロキン、アザチオプリン、メトトレキサート、シクロスポリン、ミノサイクリン、およびDペニシラミンの群から選択される1つ以上の治療薬と組み合わせることである、関節炎の病態を治療するための請求項15に記載の薬剤または医薬組成物。
【請求項17】
有効量の前記薬剤または医薬組成物を前記対象に投与することが、インターフェロンβ、グラチラマー酢酸塩、ミトキサントロン、シクロホスファミド、メトトレキサート、アザチオプリン、またはナタリズマブの群から選択される1つ以上の治療薬と組み合わせることである、多発性硬化症の病態を治療するための請求項15に記載の薬剤または医薬組成物。
【請求項18】
有効量の前記薬剤または医薬組成物を前記対象に投与することが、TNF遮断薬、ナタリズマブ、抗IL−1、抗IL−6、抗IL−12、抗IL−17および抗IL−23;IL−1受容体拮抗薬の類似物(アナキンラ);メサラジン、スルファサラジン、オルサラジン、バルサラジドのような5アミノサリチル酸および類似物;プレドニゾン、ブデソニド、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ベタメタゾン、ベドメタゾン、チキソコルトールのようなコルチコイドの群から選択される1つ以上の治療薬と組み合わせることである、腸炎の病態を治療するための請求項15に記載の薬剤または医薬組成物。
【請求項19】
有効量の前記薬剤または医薬組成物を前記対象に投与することが、スタチン、アスピリン、血液凝固薬、クマジンおよびコルチコイド、アザチオプリン、メトトレキサート、シクロホスファミド、抗Bリンパ球抗体、抗TNFα抗体、および抗胸腺細胞グロブリンの群から選択される1つ以上の治療薬と組み合わせることである、血管炎を治療するための請求項15に記載の薬剤または医薬組成物。
【請求項20】
有効量の前記薬剤または医薬組成物を前記対象に投与することが、短時間作用型の、選択的β2アドレナリン受容体作動薬、レバルブテロール、テルブタリン、およびビトルテロール、並びに他のアドレナリン作動薬、抗コリン薬、および吸入用糖質コルチコイドの群から選択される1つ以上の治療薬と組み合わせることである、喘息を治療するための請求項15に記載の薬剤または医薬組成物。
【請求項21】
有効量の前記薬剤または医薬組成物を前記対象に投与することが、カルシニューリン阻害薬、mTOR阻害薬、抗増殖阻害薬、CD25に対するモノクローナル抗体、または抗胸腺細胞グロブリンおよび抗リンパ球グロブリンの製剤の群から選択される、1つ以上の治療薬と組み合わせることである、移植片対宿主病および移植片拒絶反応を治療するための請求項15に記載の薬剤または医薬組成物。
【請求項22】
有効量の前記薬剤または医薬組成物を前記対象に投与することが、ウルソデオキシコール酸の群から選択される、1つ以上の治療薬と組み合わせることである、原発性胆汁性肝硬変および原発性硬化性胆管炎のような、胆管または肝臓の自己免疫性炎症を治療するための請求項15に記載の薬剤または医薬組成物。
【請求項23】
有効量の前記薬剤または医薬組成物を前記対象に投与することが、炎症性自己免疫病態に関与するとして知られている抗原に向けられる、少なくとも1つのTr1細胞集団またはクローンを含有する1つ以上の薬剤または医薬組成物と組み合わせることである、請求項5乃至請求項14のいずれか一項に記載の薬剤または医薬組成物。
【請求項24】
有効量の前記薬剤または医薬組成物を前記対象に投与することが、関節関連の抗原、好ましくはII型コラーゲン、HCgp39、並びにそれらの断片、変異体、および混合物に向けられる、少なくとも1つのTr1細胞集団またはクローンを含有する1つ以上の薬剤または医薬組成物と組み合わせることである、関節炎の病態を治療するための請求項23に記載の薬剤または医薬組成物。
【請求項25】
有効量の前記薬剤または医薬組成物を前記対象に投与することが、多発性硬化症関連の抗原、好ましくはミエリン塩基性タンパク質、プロテオリピドタンパク質、ミエリンオリゴデンドロサイトタンパク質、並びにそれらの断片、変異体、および混合物に向けられる、少なくとも1つのTr1細胞集団またはクローンを含有する1つ以上の薬剤または医薬組成物と組み合わせることである、多発性硬化症の病態を治療するための請求項23に記載の薬剤または医薬組成物。
【請求項26】
有効量の前記薬剤または医薬組成物を前記対象に投与することが、ヒトの一般的な食餌に由来する食品抗原、好ましくは卵白アルブミン、カゼイン、βラクトグロブリン、ダイズタンパク質、グリアジン、ピーナッツ、並びにそれらの断片、変異体、および混合物に向けられる、少なくとも1つのTr1細胞集団またはクローンを含有する1つ以上の薬剤または医薬組成物と組み合わせである、腸炎の病態を治療するための請求項23に記載の薬剤または医薬組成物。
【請求項27】
その必要がある対象の炎症性自己免疫病態を治療するための工程であって、
―ヒトHSPに向けられるTr1細胞を取得するステップであって、前記Tr1細胞を前記対象の血液試料から取得する前記ステップと、
―ヒトHSPに向けられる前記Tr1細胞をクローニングするステップと、
―先のステップで取得したTr1クローンをさらに拡大するステップと、
―そうして取得したTr1クローンを、好ましくは静脈内注射により前記対象に注射するステップと、を含む工程。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−518796(P2011−518796A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−505458(P2011−505458)
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【国際出願番号】PCT/EP2009/054228
【国際公開番号】WO2009/132939
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(510087944)
【Fターム(参考)】