説明

無停電電源装置、無停電電源装置用プログラム及び無停電電源装置の制御方法

【課題】昇圧チョッパ回路とDC−ACインバータの間のコンデンサの容量を可能な限り小さく抑え、かつ、装置全体が小型で安価なものを提供すること。
【解決手段】昇圧チョッパ回路と、直流電源回路と、DC−ACインバータと、昇圧チョッパ回路とDC−ACインバータの間のコンデンサと、切り替え制御回路とを具備した無停電電源装置において、制御回路は、入力電圧検出回路の入力検出信号に基づく交流電源を回復させる信号により直流電源回路の出力電圧よりも高い電圧を出力レベルとして設定した昇圧チョッパ回路の再起動と、この昇圧チョッパ回路の再起動からDC−ACインバータのコンデンサの電圧が安定するまでの直流電源回路の継続動作とを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電源電圧が正常な範囲内に回復したときに、直流電圧を供給していた直流電源回路のオフするタイミングを制御することにより内部のコンデンサの容量を可能な限り小さくし、装置の小型化を図った無停電電源装置、無停電電源装置用プログラム及び無停電電源装置の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、図7に示す無停電の安定化電源装置をすでに提案している(特許文献1)。
この図7には、交流入力端子2、3と交流出力端子8、9のそれぞれの一方の端子3、9間を結合して共通ライン16とし、この共通ライン16と他方の入力端子2との間に入力される交流電圧に対して、昇圧チョッパ回路32では制御回路43の制御の下で昇圧チョッピングを行うことで共通ライン16の正側と負側に昇圧した直流電圧を得、この正側と負側でそれぞれ安定化された直流電圧をさらにその後段のハーフブリッジ型DC−ACインバータ37によって交流電圧に変換して出力するようにした電源回路が示されている。
【0003】
この電源回路において、昇圧チョッパ回路32は、他方の入力端子2に接続されたリアクトル11と共通ライン16との間に設けられたスイッチング素子23、24と、正側ラインに設けた整流ダイオード27と、負側ラインに設けた整流ダイオード28と、前記正側ラインと共通ライン16との間に設けたコンデンサ29と、前記負側ラインと共通ライン16との間に設けたコンデンサ30とで構成したものである。なお、昇圧チョッパ回路32は、直流出力電圧を位相調整した信号により、入力電流を入力電圧に相似した正弦波状にして力率改善用フィルタとして用いるようにしたものである。
【0004】
また、バッテリ38と逆流阻止スイッチ素子39を直列に接続した直流電源回路を交流入力端子2、3間に設け、商用電源の停電等で正常範囲から外れた時に電力を供給する。すなわち、交流入力電圧が低くなり停電と判断すると逆流阻止スイッチ39がONしてバッテリ38の電圧がスイッチ素子40に加わり、スイッチ素子40、リアクトル11及びダイオード27、28で昇圧チョッパ回路32を形成して、停電時もコンデンサ29、30に昇圧された電圧を蓄え、DC−ACインバータ37によって交流に変換して出力する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−158100号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図7に示す従来回路では、図6に示すように、低下していた交流電圧がt1時に回復したときに、実効値を算出したt2時に回復検出信号を出力し、インバータ回路37への直流電力の供給元を、バッテリ38から交流電源10に接続された昇圧チョッパ回路32側に切り替える。しかし、昇圧チョッパ回路32の出力が所望のレベルになるまでには、ある程度の時間が必要なために、バッテリ38の停止と昇圧チョッパ回路32の起動を同時に行うと、昇圧チョッパ回路32からインバータ回路37に必要な電圧が供給されない期間が生じる。その間、インバータ回路37には、コンデンサ29,30に蓄えられた電荷が供給される必要がある。このコンデンサ29,30の容量が小さいと、図6のt2後の特性線nのように最終目標値を大きく下回ってしまうので回路の誤動作の原因となる。そのため、このコンデンサ29,30は、インバータ回路37に特性線mのように最終目標値まで低下しないような電圧を供給することができるだけの十分な大容量のものを備えていなければならなかった。
【0007】
本発明は、コンデンサの容量を可能な限り小さく抑え、かつ、装置全体が小型で安価なものを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による無停電電源装置は、交流電源から入力された交流電圧を予め設定した出力レベルの直流電圧に変換する昇圧チョッパ回路と、この昇圧チョッパ回路の出力端に接続されて交流電源の低下その他の異常な電圧のときに直流電圧を出力する直流電源回路と、前記昇圧チョッパ回路の出力端にコンデンサを直列に介在して安定化した電圧を出力するDC−ACインバータと、入力電圧検出回路で検出された交流電源の交流電圧が異常か否かの検出信号により昇圧チョッパ回路と直流電源回路を切り替え制御する制御回路とを具備した無停電電源装置において、前記制御回路は、前記入力電圧検出回路の入力検出信号に基づく交流電源を回復させる信号により前記直流電源回路の出力電圧よりも高い電圧を出力レベルとして設定した前記昇圧チョッパ回路の再起動と、この昇圧チョッパ回路の再起動から前記DC−ACインバータのコンデンサの電圧が安定するまでの前記直流電源回路の継続動作とを制御するようにしたことを特徴とする。
【0009】
制御回路は、入力電圧検出回路の入力検出信号に基づき交流電源電圧の実効値を演算する実効値演算回路と、この実効値演算回路の実効値が設定された設定値内に回復したとき交流電源を回復させるための昇圧チョッパ回路の再起動信号を出力するとともに、昇圧チョッパ回路の再起動からDC−ACインバータのコンデンサの電圧が安定するまで直流電源回路を継続動作させる信号を出力する比較回路と、この比較回路の回復信号により前記直流電源回路の出力電圧よりも高い電圧を出力レベルとして設定した前記昇圧チョッパ回路の再起動を制御する昇圧チョッパ制御回路とを具備したことを特徴とする。
【0010】
比較回路に入力されて交流電源の実効値と比較するための信号は、昇圧チョッパ回路の動作を停止させ、かつ、直流電源回路の動作を開始させるための予め設定した一定の電圧とする。
また、出力電圧検出回路と出力電流検出回路からの出力電力に基づき状況によって時間毎に変化する電圧とすることもできる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、無停電電源装置において、制御回路は、入力電圧検出回路の入力検出信号に基づく交流電源を回復させる信号により直流電源回路の出力電圧よりも高い電圧を出力レベルとして設定した昇圧チョッパ回路が再起動するので、コンデンサの電圧がインバータの必要とする値を下回ることなく、かつ、コンデンサの電圧を上昇させるため、昇圧チョッパ回路を確実に動作させることができ、また、この昇圧チョッパ回路の再起動から前記DC−ACインバータのコンデンサの電圧が安定するまでの前記直流電源回路の継続動作を制御するようにしたので、直流電源回路を停止させてもインバータへの電力供給が遮断せずに継続し、コンデンサの容量、体積を従来の1/2以下に出来るなど、可能な限り小さく抑え、かつ、装置全体が小型で安価なものを提供することができる。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、制御回路は、入力電圧検出回路の入力検出信号に基づき交流電源の実効値を演算する実効値演算回路と、この実効値演算回路の実効値が設定された設定値内に回復したとき交流電源を回復させるための昇圧チョッパ回路の再起動信号を出力するとともに、昇圧チョッパ回路の再起動からDC−ACインバータのコンデンサの電圧が安定するまで直流電源回路を継続動作させる信号を出力する比較回路と、この比較回路の回復信号により前記直流電源回路の出力電圧よりも高い電圧を出力レベルとして設定した前記昇圧チョッパ回路の再起動を制御する昇圧チョッパ制御回路とを具備したので、単純な回路構成で正確に制御することができる。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、昇圧チョッパ回路を構成する部品の定格を下げ、回路の小型化やコスト削減を図ることができる。
【0014】
請求項4記載の発明によれば、停電発生してから実効値の算出(最小で半周期)よりも速く昇圧チョッパ回路の動作を停止し、直流電源回路の動作を開始することができ、インバータへの電力供給の遮断時間を最小限に抑え、コンデンサの容量を可能な限り小さくできる。また、過電圧といった交流電源の異常から回路を保護することができる。
【0015】
請求項5記載の発明によれば、コンピュータを、昇圧チョッパ手段、直流電源切り替え手段、DC−ACインバータ手段、切り替え制御手段として機能させた無停電電源装置用プログラムにおいて、前記切り替え制御手段を、実効値演算手段、比較手段、昇圧チョッパ制御手段として機能させた無停電電源装置用プログラムを得ることができる。
【0016】
請求項6記載の発明によれば、昇圧チョッパ回路と、直流電源回路と、DC−ACインバータと、切り替え制御回路とを具備した無停電電源装置の制御方法において、実効値演算回路にて交流電源の実効値を演算する工程と、この実効値演算工程による実効値が設定された設定値内に回復したとき交流電源を回復させるための昇圧チョッパ回路の再起動信号を出力する工程と、昇圧チョッパ回路の再起動からDC−ACインバータのコンデンサの電圧が安定するまで直流電源回路を継続動作させる信号を出力する工程と、前記回復信号により前記直流電源回路の出力電圧よりも高い電圧を出力レベルとして設定した前記昇圧チョッパ回路の再起動を制御する工程とにより無停電電源装置の切り替えを制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による無停電電源装置の一実施例を示す電気回路図である。
【図2】図1における直流電源回路61の電気回路図である。
【図3】図1における制御回路62の電気回路図である。
【図4】本発明による無停電電源装置の動作タイミング図である。
【図5】本発明による無停電電源装置の出力波形図である。
【図6】従来の無停電電源装置の出力波形図である。
【図7】従来の無停電電源装置の電気回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、交流電源から入力された交流電圧を予め設定した出力レベルの直流電圧に変換する昇圧チョッパ回路と、この昇圧チョッパ回路の出力端に接続されて交流電源の低下、上昇などの異常な電圧のときに直流電圧を出力する直流電源回路と、前記昇圧チョッパ回路の出力端にコンデンサを直列に介在して安定化した電圧を出力するDC−ACインバータと、入力電圧検出回路で検出された交流電源の交流電圧が異常か否かの検出信号により昇圧チョッパ回路と直流電源回路を切り替え制御する制御回路とを具備した無停電電源装置に採用される。
この無停電電源装置において、前記制御回路は、前記入力電圧検出回路の入力検出信号に基づく交流電源を回復させる信号により前記直流電源回路の出力電圧よりも高い電圧を出力レベルとして設定した前記昇圧チョッパ回路の再起動と、この昇圧チョッパ回路の再起動から前記DC−ACインバータのコンデンサの電圧が安定するまでの前記直流電源回路の継続動作とを制御する。
【0019】
前記制御回路は、より具体的には、入力電圧検出回路の入力検出信号に基づき交流電源の実効値を演算する実効値演算回路と、この実効値演算回路の実効値が設定された設定値内に回復したとき交流電源を回復させるための昇圧チョッパ回路の再起動信号を出力するとともに、昇圧チョッパ回路の再起動からDC−ACインバータのコンデンサの電圧が安定するまで直流電源回路を継続動作させる信号を出力する比較回路と、この比較回路の回復信号により前記直流電源回路の出力電圧よりも高い電圧を出力レベルとして設定した前記昇圧チョッパ回路の再起動を制御する昇圧チョッパ制御回路とを具備して構成する。
【0020】
比較回路に入力されて交流電源の実効値と比較するための信号は、昇圧チョッパ回路の動作を停止させ、かつ、直流電源回路の動作を開始させるための予め設定した一定の電圧としてもよいし、また、出力電圧検出回路と出力電流検出回路からの出力電力に基づき状況によって時間毎に変化する電圧とすることもできる。
【実施例】
【0021】
以下、本発明の実施例1を図面に基づき説明する。従来回路と同一部分には同一符号を付する。
図1において、2、3は、それぞれ交流電源10の交流入力端子であり、8、9は、それぞれ安定化後の交流出力端子である。これらの入出力端子のうち一方の交流入力端子3と一方の交流出力端子9との間を共通ライン16で接続し、また、他方の交流入力端子2と他方の交流出力端子9との間を直送ライン1と切替回路14を介して接続することで直送回路を構成している。
【0022】
前記交流入力端子2、3の間には、交流電源10の入力電圧を検出する入力電圧検出回路15が接続され、また、前記交流入力端子2の側には、交流電源10の異常を前記入力電圧検出回路15で検出したときに後述する制御回路62からの指令で交流電源10を切断するスイッチ回路60が挿入され、前記交流入力端子3の側には、カレントトランスや抵抗からなる力率改善のための入力電流検出回路17が挿入されている。
これら入力電圧検出回路15、スイッチ回路60、カレントトランス17の後段には、昇圧チョッパ回路(兼力率改善用フィルタ)32、DC−ACインバータ37、フィルタ回路96、出力電圧検出回路12、カレントトランスからなる出力電流検出回路13が順次接続されている。
【0023】
これらのうち、昇圧チョッパ回路32、DC−ACインバータ37、フィルタ回路96、出力電流検出回路13は、図7におけるスイッチング素子40を省いた従来回路と同様の回路構成である。さらに詳しくは、前記昇圧チョッパ回路32は、入力端子2に接続されたリアクトル11と、このリアクトル11の出力側と共通ライン16との間に設けられた互いに逆向きでかつ直列に接続されたフライホイールダイオード入りのMOSFETからなるスイッチング素子23、24と、前記リアクトル11の出力側から分岐した正側ラインに設けた整流ダイオード27と、前記リアクトル11の出力側から分岐した負側ラインに設けた整流ダイオード28と、前記正側ラインと共通ライン16との間に設けたコンデンサ29と、前記負側ラインと共通ライン16との間に設けたコンデンサ30とで構成されている。
【0024】
この昇圧チョッパ回路32は、共通ライン16に対して正側と負側の両方において共通に使用される構成部分であり、正側と負側のそれぞれで昇圧を行う。これらのうち、スイッチング素子23、24のゲートは、後述する制御回路62に接続されている。また、コンデンサ29、30には、フローティングされた正側の検出回路19と負側の検出回路20とがそれぞれ接続されており、これらの検出回路19、20の検出結果は、後述する制御回路62に入力される。なお、この昇圧チョッパ回路32の出力レベルは、効率を上げるため、昇圧率をむやみに高くせず、定常時は、入力電圧に比例した値に設定されている。
【0025】
前記DC−ACインバータ37は、IGBTからなるスイッチング素子33、34と、コンデンサ29、30とからなるハーフブリッジ型で構成されている。このコンデンサ29、30は、前記昇圧チョッパ回路32の構成部品と共用している。これらのうち、スイッチング素子33、34のゲートは、後述する制御回路62に接続されている。このDC−ACインバータ37によって直流を交流に変換し、さらに後段のリアクトル35とコンデンサ36とからなるフィルタ回路96によって、変換後の交流電圧の高調波成分を圧縮して出力する構成となっている。
【0026】
61は、直流電源回路で、この直流電源回路61は、図2に示すように、バッテリ38と、トランス63と、このトランス63の1次側に接続されたMOSFETなどのスイッチング素子64、65と、前記トランス63の2次側に接続されたスイッチング素子としての整流ダイオード66、67、68、69と、リアクトル70、71とからなり、出力端子72は、正側ラインの前記整流ダイオード27のカソード側に接続され、出力端子73は、負側ラインの整流ダイオード28のアノード側に接続され、アース端子74は、前記共通ライン16に接続されている。
そして、これらの素子でDC−DCコンバータを構成している。
【0027】
前記制御回路62は、図3に示すように、入力電圧検出回路15で検出した交流電源10の入力電圧の少なくとも1サイクルに基づき交流回復時の実効値aを演算する実効値演算回路76と、この実効値演算回路76からの交流回復時の実効値aと入力電圧検出回路15からの交流異常時の瞬時値bと設定値入力端子80の設定値との比較信号により、スイッチ回路60と直流電源制御回路81を制御する比較回路75と、カレントトランス17からの出力に基づき力率改善の信号を出力する力率改善回路79と、前記比較回路75と力率改善回路79の信号に基づき昇圧チョッパ回路32のスイッチング素子23、24の制御信号を出力する昇圧チョッパ制御回路77と、出力電圧検出回路12と出力電流検出回路13と正側の検出回路19と負側の検出回路20との信号に基づきDC−ACインバータ37のスイッチング素子33、34の制御信号を出力するインバータ制御回路78とを具備している。前記直流電源制御回路81は、その出力で前記直流電源回路61のスイッチング素子64、65の開閉を制御する。
なお、比較回路75で実効値と比較する値は、設定値入力端子80の設定値に代えて出力電圧検出回路12と出力電流検出回路13の電力から状況によって時間毎に変化させた値とすることができる。
【0028】
次に以上のように構成された無停電電源装置の作用を説明する。
(1)交流電源10が正常電圧のとき
昇圧チョッパ回路32は、正側と負側で共通して作用するものであり、交流電源10からの交流入力の正負によって動作する素子が若干異なるが、基本的には同じ原理に基づくものであるため、交流入力が正の場合について主に説明を行う。
制御回路62の比較回路75に接続された設定値入力端子80には、交流電源10の入力した実効値が異常か否かを検出するために、昇圧チョッパ回路32の動作を停止させ、直流電源回路61の動作を開始させる電圧下限値として一定値の設定信号を入力しておく。
【0029】
図1において、交流入力端子2、3の間に交流電源10が印加されると、入力電圧検出回路15によって入力電圧が検出されて制御回路62の実効値演算回路76に検出結果が送られ、実効値aが演算されて比較回路75に送られる。また、比較回路75には、入力電圧検出回路15からの瞬時値bも送られている。この比較回路75では、設定値入力端子80の設定値と比較し、設定値の範囲内(正常範囲)であれば、スイッチ回路60をオンし、かつ、昇圧チョッパ制御回路77を介してスイッチング素子23、24のゲートをオン、オフさせる。ここでのゲートの開閉には20kHzの高周波が用いられる。
ここで、交流入力が正側であった場合において、スイッチング素子23、24がオン状態となると、交流電源10からスイッチ回路60、リアクトル11、スイッチング素子23、24、交流電源10というループによって電流が流れ、リアクトル11にエネルギが蓄えられる。
なお、比較回路75が設定値の範囲内であれば、直流電源制御回路81からの出力がなく、直流電源回路61のスイッチング素子64、65へは信号が送られない。
【0030】
次に、スイッチング素子23、24がオフ状態になると、リアクトル11に蓄えられたエネルギが放出され、交流電源10からスイッチ回路60、リアクトル11、ダイオード27、コンデンサ29、交流電源10という経路で電流が流れて、昇圧された電圧がコンデンサ29に蓄えられる。このようにしてコンデンサ29に蓄えられた直流電圧は、DC−ACインバータ37のスイッチング素子33のスイッチング動作によってパルス幅変調され、これに対してフィルタ回路96によって高調波成分の圧縮を行ったものが、正側の交流電圧として交流出力端子8、9から出力される。
【0031】
交流電源10からの交流入力が負側の場合についても同様に、スイッチング素子23、24がオン状態となると、交流電源10、スイッチング素子24、23、リアクトル11、スイッチ回路60、交流電源10というループによって電流が流れ、リアクトル11にエネルギが蓄えられ、スイッチング素子23、24がオフ状態となると、リアクトル11に蓄えられたエネルギが放出され、交流電源10、コンデンサ30、ダイオード28、リアクトル11、スイッチ回路60、交流電源10という経路で電流が流れて、昇圧された電圧がコンデンサ30に蓄えられ、このコンデンサ30に蓄えられた直流電圧は、DC−ACインバータ37のスイッチング素子34のスイッチング動作、及び、フィルタ回路96の高調波成分の圧縮によって、負側の交流電圧として交流出力端子8、9から出力される。
以上の動作を繰り返して交流電源10からの電力に基づき交流出力端子8、9から所望の交流電圧が出力される。
【0032】
(2)交流電源10の電圧が下限値を下回るなど正常範囲から外れたとき
入力電圧検出回路15からの瞬時値bが下限値を下回ると、比較回路75からの信号でスイッチ回路60をオフし、かつ、昇圧チョッパ制御回路77を介してスイッチング素子23、24をオフさせる。
同時に、比較回路75からの信号で前記直流電源制御回路81を動作させ、この直流電源制御回路81の出力で直流電源回路61のスイッチング素子64、65を交互にオン、オフする。すると、トランス63、整流ダイオード66〜69、リアクトル70、71からなるDC−DCコンバータにより出力端子72とアース端子74間、アース端子74と出力端子73間に正負の交流出力が生じて昇圧チョッパ回路32の正側のコンデンサ29と、負側のコンデンサ30に交互に電荷が蓄えられる。
【0033】
正側では、コンデンサ29に蓄えられた直流電圧は、DC−ACインバータ37のスイッチング素子33のスイッチング動作によってパルス幅変調され、フィルタ回路96によって高調波成分の圧縮を行ったものが、正側の交流電圧として交流出力端子8、9から出力される。
負側では、コンデンサ30に蓄えられた直流電圧は、DC−ACインバータ37のスイッチング素子34のスイッチング動作、及び、フィルタ回路96の高調波成分の圧縮によって、負側の交流電圧として交流出力端子8、9から出力される。
【0034】
前記実施例では、交流電源10の電圧の瞬時値bが下限値を下回ったときについて説明したが、交流電源10の電圧の瞬時値bが上限値を上回ったときについても同様にして制御することができる。
【0035】
(3)本発明の最も特徴的な作用として、交流電源10の電圧が下限値を下回るか又は上限値を上回るかにより正常範囲を外れると、交流電源10が切断され、直流電源回路61から直流電源が供給されていた状態から代わって交流電源10が回復したときの作用を説明する。
交流電源10の電圧は、常時入力電圧検出回路15で検出され、図4(a)におけるt1時に実際に交流電源10の電圧が回復したものとする。しかし、制御回路62の比較回路75では、実際に回復してから実効値演算のための少なくとも1サイクル後のt2時に実効値演算回路76の実効値が設定値入力端子80の設定値よりも高くなると、交流電源10の電圧が回復したものと判断され、比較回路75から(b)に示すように回復検出信号が出力する。
【0036】
この回復検出信号によりスイッチ回路60がオンし、かつ、昇圧チョッパ制御回路77を介して昇圧チョッパ回路32のスイッチング素子23、24へ信号を送り、昇圧チョッパ回路32がスイッチング動作を開始する。このt2時に、本発明の無停電電源装置では、直流電源回路61が即座に遮断することはなく、図4(d)のように、動作が安定すると考えられる予め設定された一定時間だけ直流電源回路61の動作を継続し電力を供給し続ける。
このとき、直流電源回路61の出力電圧の目標値を、交流電源10の回復を検出する直前(t2時)のコンデンサ29、30の電圧より高めに設定する。すると、コンデンサ29、30に、直流電源回路61から電力を供給し続けつつ、交流電源10から電力が供給され始めるので、図5のように、t2時からt3時にかけて交流出力端子8、9間の電圧値が直流電源回路61の出力電圧値よりやや上昇する。t3時に図4(c)のように昇圧チョッパ回路32の動作が安定した後の設定されたt4時に図4(d)のように比較回路75からの指令により直流電源制御回路81の出力がなくなり、直流電源回路61のスイッチング素子64、65のスイッチング制御動作を停止し、このt4時から図5に示すように、直流出力電圧の目標値を通常時の値となるまで漸減して、昇圧チョッパ回路32を安定に動作させたまま切り替え処理を完了する。
【0037】
以上のように、本発明の無停電電源装置は、交流電源10から入力される交流電圧の異常からの回復を受け、直流電源回路61を動作させつつ同時に昇圧チョッパ回路32を動作させるので、コンデンサ29、30を小容量とすることができ、装置の小型化ができる。
【0038】
前記比較回路75では、設定値入力端子80で設定した設定値と実効値・瞬時値を比較するようにしたが、これに代えて、出力電圧検出回路12と出力電流検出回路13からの出力電力に基づき状況によって時間毎に変化する値と実効値・瞬時値を比較して切り替えの制御をするようにしてもよい。
【0039】
前記実施例において、スイッチング素子23、24は、フライホイールダイオード内蔵のMOSFETで構成したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、フライホイールダイオードを内蔵しないMOSFETのみで構成してもよいし、また、これ以外の素子としてバイポーラトランジスタ、IGBT等のスイッチング素子で構成してもよく、このバイポーラトランジスタ、IGBT等のスイッチング素子の場合にはフライホイールダイオード内蔵のものが望ましい。さらに、スイッチング素子33、34も、IGBTに限られるものではなく、バイポーラトランジスタ等のスイッチング素子を用いてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1…直送ライン、2、3…交流入力端子、8、9…交流出力端子、10…交流電源、11…リアクトル、12…出力電圧検出回路、13…出力電流検出回路、14…切換回路、15…入力電圧検出回路、16…共通ライン、17…カレントトランス、19…正側の検出回路、20…負側の検出回路、23、24…スイッチング素子、27、28…整流ダイオード、29、30…コンデンサ、32…昇圧チョッパ回路(兼力率改善用フィルタ)、33、34…スイッチング素子、35…リアクトル、36…コンデンサ、37…DC−ACインバータ、38…バッテリ、39…逆流阻止スイッチ素子、40…スイッチング素子、43…制御回路、60…スイッチ回路、61…直流電源回路、62…制御回路、63…トランス、64、65…スイッチング素子、66、67、68、69…整流ダイオード、70、71…リアクトル、72…、73…出力端子、74…アース端子、75…比較回路、76…実効値演算回路、77…昇圧チョッパ制御回路、78…インバータ制御回路、79…力率改善回路、80…設定値入力端子、81…直流電源制御回路、96…フィルタ回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源から入力された交流電圧を予め設定した出力レベルの直流電圧に変換する昇圧チョッパ回路と、この昇圧チョッパ回路の出力端に接続されて交流電源の異常な電圧のときに直流電圧を出力する直流電源回路と、前記昇圧チョッパ回路の出力端にコンデンサを直列に介在して安定化した電圧を出力するDC−ACインバータと、入力電圧検出回路で検出された交流電源の交流電圧が異常か否かの検出信号により昇圧チョッパ回路と直流電源回路を切り替え制御する制御回路とを具備した無停電電源装置において、前記制御回路は、前記入力電圧検出回路の入力検出信号に基づく交流電源を回復させる信号により前記直流電源回路の出力電圧よりも高い電圧を出力レベルとして設定した前記昇圧チョッパ回路の再起動と、この昇圧チョッパ回路の再起動から前記DC−ACインバータのコンデンサの電圧が安定するまでの前記直流電源回路の継続動作とを制御するようにしたことを特徴とする無停電電源装置。
【請求項2】
制御回路は、入力電圧検出回路の入力検出信号に基づき交流電源電圧の実効値を演算する実効値演算回路と、この実効値演算回路の実効値が設定された設定値内に回復したとき交流電源を回復させるための昇圧チョッパ回路の再起動信号を出力するとともに、昇圧チョッパ回路の再起動からDC−ACインバータのコンデンサの電圧が安定するまで直流電源回路を継続動作させる信号を出力する比較回路と、この比較回路の回復信号により前記直流電源回路の出力電圧よりも高い電圧を出力レベルとして設定した前記昇圧チョッパ回路の再起動を制御する昇圧チョッパ制御回路とを具備したことを特徴とする請求項1記載の無停電電源装置。
【請求項3】
比較回路に入力されて交流電源の実効値と比較するための信号は、直流電源回路の動作を継続したまま昇圧チョッパ回路の動作を開始させるための出力検出回路と出力電流検出回路からの出力電圧に基づき状況によって時間毎に変化する電圧としたことを特徴とする請求項2記載の無停電電源装置。
【請求項4】
比較回路に入力されて交流電源電圧の瞬時値と比較するための信号は、昇圧チョッパ回路の動作を停止させ、かつ、直流電源回路の動作を開始させるための出力電圧検出回路と出力電流検出回路からの出力電力に基づき状況によって時間毎に変化する電圧としたことを特徴とする請求項2記載の無停電電源装置。
【請求項5】
コンピュータを、交流電源から入力された交流電圧を予め設定した出力レベルの直流電圧に変換する昇圧チョッパ手段と、この昇圧チョッパ手段の出力端に接続されて交流電源の異常な電圧のときに直流電源に切り替えて直流電圧を供給する直流電源切り替え手段と、前記昇圧チョッパ手段の出力端にコンデンサを直列に介在して安定化した電圧を出力するDC−ACインバータ手段と、前記昇圧チョッパ手段と直流電源の切り替えを制御する制御手段として機能させた無停電電源装置用プログラムにおいて、前記制御手段を、交流電源の入力検出信号に基づき実効値を演算する実効値演算手段と、この実効値演算手段の実効値が予め設定された設定値内に回復したとき昇圧チョッパ手段の再起動信号を出力するとともに、昇圧チョッパ手段の再起動からDC−ACインバータ手段のコンデンサの電圧が安定するまで直流電源切り替え手段を継続動作させる信号を出力する比較手段と、この比較手段の回復信号により直流電源の出力電圧よりも高い電圧を出力レベルとして設定した前記昇圧チョッパ手段の再起動を制御する昇圧チョッパ制御手段として機能させたことを特徴とする請求項1記載の無停電電源装置のプログラム。
【請求項6】
交流電源から入力された交流電圧を予め設定した出力レベルの直流電圧に変換する昇圧チョッパ回路と、この昇圧チョッパ回路の出力端に接続されて交流電源の異常な電圧のときに直流電圧を出力する直流電源回路と、前記昇圧チョッパ回路の出力端にコンデンサを直列に介在して安定化した電圧を出力するDC−ACインバータと、入力電圧検出回路で検出された交流電源の交流電圧が異常か否かの検出信号により昇圧チョッパ回路と直流電源回路を切り替え制御する制御回路とを具備した無停電電源装置の制御方法において、実効値演算回路にて交流電源の実効値を演算する工程と、この実効値演算工程による実効値が設定された設定値内に回復したとき交流電源を回復させるための昇圧チョッパ回路の再起動信号を出力する工程と、昇圧チョッパ回路の再起動からDC−ACインバータのコンデンサの電圧が安定するまで直流電源回路を継続動作させる信号を出力する工程と、前記回復信号により前記直流電源回路の出力電圧よりも高い電圧を出力レベルとして設定した前記昇圧チョッパ回路の再起動を制御する工程とからなることを特徴とする無停電電源装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−252574(P2010−252574A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−100998(P2009−100998)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【出願人】(000138543)株式会社ユタカ電機製作所 (18)
【Fターム(参考)】