説明

無線ネットワークプロセス監視システム

【課題】システムの簡素化と高信頼化を実現した無線ネットワークプロセス監視システムを提供する。
【解決手段】信号変換器1a〜1dに過去の変換器データと演算周期毎に更新するシーケンス番号を保存するデータ保持部と無線伝送を行うRF送受信部データと送信開始するための待ち時間を計時する送信周期タイマを設け、ゲートウェイ4に変換器データの周期更新を行う収集データテーブル5と計測データテーブル6を設け、収集データテーブル5でシーケンス番号を監視し、周期が遅延した場合センサノードの異常と判定する収集データ格納判定部を設けた。上位計算機3に、ゲートウェイの無線伝送チャネルと信号変換器種別とノードアドレスをゲートウェイに設定するID設定部と、信号変換器の演算周期から過去の変換器データの時刻を算出し収集した過去の変換器データを計測データ記録ファイルに保存するデータ収集警報チェック部を設け変換器データの欠損を補う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電対、測温抵抗体、伝送器などの各種センサからの信号を変換する信号変換器のデータを無線伝送で上位装置に送信する無線ネットワークプロセス監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、信号変換器はプロセスインターフェースと呼ばれ、センサで計測した温度、湿度、圧力、流量などを直流の4/20mA統一信号に変換し、有線にて上位計算機またはコントローラに計測データとセンサステータスデータ(以下、変換器データという)を送信し、プロセスの監視や制御を実行している。
【0003】
また、従来、センサノードと呼ばれる端末で測定した温度、湿度などの計測データを数十秒から数分の計測周期毎に間歇的に動作、サンプリングし、無線伝送を用いてリアルタイムで情報処理装置である上位計算機に取り込むネットワークシステム(以下、センサネットワークシステムという)が検討されている。センサネットワークシステムは、小型で電池動作し計測データを収集して上位計算機等と無線伝送を行うセンサノードと、センシングされたデータを無線伝送で収集して、インターネットなどの有線ネットワークに接続するゲートウェイと、センサノードとゲートウェイ間に距離がある場合などに無線伝送の中継伝送を行う中継器の3種のデバイス(ノードと呼ぶ)で構成される。
【0004】
従来、センサネットワークシステムにおいて、センサノードとゲートウェイのハードウェア構成を共有化し、基地局(ゲートウェイ)にセンサノードへのコマンドを順次、表として保持するメモリを設け、センサノードの低消費電力化を図るもの(特許文献1)と、上位計算機からの一連のコマンドを簡易言語でスクリプト化し、各ノードであるゲートウェイ、ルータ、センサノードでスクリプトを解析し、実行することにより動的にシステムの動作フローを構築するもの(特許文献2)と、無線伝送の通信規格としてジグビー(ZigBee:登録商標)を利用し、複数のセンサネットワークを情報管理サーバで統合するシステムにおけるサービス情報(信号)の授受に関するもの(特許文献3)が知られている。しかし、上記従来技術では以下の問題があった。
【0005】
信号変換器を上位計算機またはコントローラと同じ配電盤(キュービクル)内に設置する場合には、有線で接続するためにセンサ一点に対して一本の配線が必要となり、配線スペースや配線コストを要し、配線ミスの発生などの欠点がある。
【0006】
4/20mA統一信号に代わり、センサーネットネットワークシステムの無線伝送を用いると、ゲートウェイは計測周期毎に伝送されてくる複数のセンサノードの計測データを非同期にイベントとして処理する必要があり、高いリアルタイム処理性能が求められる。このため、適用できるハードウェアに制限があり、高速同時で複数非同期処理を可能とするイベント処理ソフトが必要になるという欠点がある。
【0007】
また、無線伝送は4/20mA統一信号の有線伝送と異なり、例えばIEEE802.15.4規格で規定受信レベル以上で平均パケット欠損率が1.0%以下と規定されているようにデータ伝送の誤りがある確率以下で発生し、また他のデジタル信号による有線伝送に対しても欠損率が大きい欠点を有する。さらに、信号変換器毎にポーリング方式でデータ収集を行うとパケット量が増えて欠損が増える。これらから、計測データの欠損が問題となる場合には、設置環境の他に伝送方式を考慮する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−211439号公報
【特許文献2】特開2006−344017号公報
【特許文献3】特開2007−272399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来技術のプロセス監視システムでは、プロセスインタフェースに有線を用いていた。また、センサネットワークシステムのゲートウェイはセンサノードからの計測データの収集を行うが、計測データの保持および異常を判断することなくこれらを単なるイベントとして上位計算機へ伝送していた。かつデータ伝送を無線化した場合にデータ欠損が発生していた。
【0010】
本発明は信号変換器にRF送受信部を設けるとともに過去の変換器データと合わせてデータ伝送を行い、ゲートウェイからの1つの指令で複数の信号変換器からの変換器データを無線伝送で受信し、ゲートウェイで変換器データの保持と周期更新と異常判断を行うことにより、プロセス監視システムの簡素化を図るとともに、高信頼化した無線ネットワークプロセス監視システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、プロセス状態を計測する複数のセンサと、各センサの計測データとステータスデータを集合して変換器データを含むデータパケットを作成する複数の信号変換器と、前記信号変換器からのデータパケットを無線伝送で収集するとともに接続された上位計算機に前記信号変換器の変換器データを送るゲートウェイと、ゲートウェイからの変換器データによりプロセス状態の監視を行う上位計算機を有する無線ネットワークプロセス監視システムにおいて、前記信号変換器は、前記ゲートウェイのデータ収集の際にアドレスに比例した送信間隔でデータパケットをゲートウェイに伝送する送信周期タイマを備えたことを特徴とする。
【0012】
また、無線ネットワークプロセス監視システムにおいて、前記ゲートウェイは、前記信号変換器のデータパケットの変換器データを格納する収集データテーブルと、前記変換器データのうち周期的に更新された新規な変換器データを格納する計測データテーブルを備えたことを特徴とする。
【0013】
また、無線ネットワークプロセス監視システムにおいて、前記信号変換器は演算器データとともに演算周期毎に更新するシーケンス番号を保持するデータ保持部を有し、前記信号変換器はデータ保持部に保持された変換器データとシーケンス番号を含むデータパケットを前記ゲートウェイに伝送することを特徴とする。
【0014】
また、無線ネットワークプロセス監視システムにおいて、前記ゲートウェイはシーケンス番号と変換器データ収集周期の比較から通信ステータス異常を検出する収集データ格納判定部を備えたことを特徴とする。
【0015】
また、無線ネットワークプロセス監視システムにおいて、前記ゲートウェイは変換器データと該当するノードアドレスの変換器種別の比較から通信ステータス異常を検出する収集データ格納判定部を備えたことを特徴とする。
【0016】
さらに、無線ネットワークプロセス監視システムにおいて、前記信号変換器は演算周期毎の過去の変換器データを保存するデータ保持部を有して過去の変換器データとともに新たな変換器データを前記ゲートウェイに伝送し、前記上位計算機は前記信号変換器の演算周期から過去の変換器データの時刻を算出し、収集した過去の変換器データを保存する計測データ記録ファイルを持つデータ収集警報チェック部を備え、無線伝送時のデータパケット欠損によるデータ欠損を防止することを特徴とする。
【0017】
さらに、無線ネットワークプロセス監視システムにおいて、前記信号変換器は演算周期毎の過去4データ以上の変換器データを保存するデータ保持部を有して過去の変換器データとともに新たな変換器データを前記ゲートウェイに伝送することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の無線ネットワークプロセス監視システムは、ゲートウェイの指令で送信間隔毎に各信号変換器から過去の変換器データを含む変換器データとシーケンス番号を含むデータパケットをゲートウェイに一括伝送することにより、上位計算機からのデータ収集パケットは不要となり、無線伝送パケットの低減と無線データの伝送手順の簡素化ができる。
【0019】
また、ゲートウェイは上記データパケットのデータを収集データテーブルと計測データテーブルに格納し、収集データテーブルと計測データテーブルのデータの比較から簡易にデータ処理の異常判断ができる。
【0020】
また、上位計算機はゲートウェイと信号変換器の無線ネットワークの伝送手順を意識することなく、ゲートウェイに対するデータ収集などのコマンドの発行とそのレスポンス受信を実行するのみで簡易にデータ処理ができる。
【0021】
さらに、データ収集した過去の変換器データから計測データの無線伝送時の欠損を補えることから、無線ネットワークプロセス監視システムの高信頼化が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の無線ネットワーク監視システムの基本構成を示すブロック図である。
【図2】各信号変換器とゲートウェイと上位計算機のデータ処理を示す説明図である。
【図3】データ無線伝送のタイムチャートを示す説明図である。
【図4】データ無線伝送のデータパケットと収集データテーブル5の関係を示す説明図である。
【図5】データ伝送手順を示すフロー図である。
【図6】収集データテーブルと計測データ記録ファイルへの蓄積(過去)データの格納を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を用いて、本発明の一実施例について説明する。
【実施例1】
【0024】
〔基本構成〕
図1において、複数の信号変換器1a,1b,1c,1dは、演算周期毎にセンサ2a,2b,2c,2dにより発電プラント等の各種プロセスにおける、温度、圧力、流量、レベルを計測し、計測データ(温度、圧力、流量、レベル、演算データ等)とセンサのステータスデータ(上下限アラーム、センサ異常、電波強度(RSSI)、自己診断情報等)を集合しデータ処理して変換器データを作成し、これを元に各信号変換器毎に一つのデータパケットを作成する。
【0025】
ゲートウェイ4はデータ収集コマンドを収集周期毎に信号変換器1a,1b,1c,1dに送信し、信号変換器1a,1b,1c,1dは予め指定されたアドレスから決められた送信間隔毎に、順々に作成したデータパケットをゲートウェイ4に無線伝送する。ゲートウェイ4はデータパケットを無線IF7で受信し、取り込んだデータパケットを収集データテーブル5へ格納する。収集データテーブル5は受信したデータパケットから変換器データである計測データとステータスデータを取り出し、各信号変換器のノードアドレス(無線アドレス)毎に分けて格納する。
【0026】
収集データテーブル5に格納された変換器データは信号変換器からの収集周期毎のデータパケットが来るたびに更新を行う。更新された収集データテーブル5から、各信号変換器のデータを取り出し、過去の変換器データと収集周期の更新番号であるシーケンス番号を削除し、新規に収集した変換器データを計測データテーブル6へ格納する。計測データテーブル6はデータ欠損が問題とならない場合や通信ステータスに異常のない場合の各変換器データの保持に使用する。
【0027】
PC、サーバまたはコントローラで構成する上位計算機3とゲートウェイ4は汎用規格のLANを使用して接続する。各信号変換器の変換器データを収集するため、上位計算機3に監視データ処理部10を設ける。監視データ処理部10はLAN IF9を介して、センサノードの収集周期とは独立に上位計算機3の更新周期で周期的にゲートウェイ4へポーリングを行い、データ収集コマンドを発行する。ゲートウェイ4はLAN IF8を介してデータ収集コマンドを受け、先に計測データテーブル6に格納した更新された各変換器データ(計測データ、ステータスデータ)を取り出し、レスポンスとしてLAN IF8介して上位計算機へ返信する。上位計算機3は返信された変換器データを一旦内部ファイルへ格納する。
【0028】
上位計算機3はファイルに格納された各変換器データを取り出し、GUIによって温度、圧力、流量、レベル、演算データのトレンドの表示を行い、変換器のステータスの上下限アラーム、センサ異常、自己診断情報で異常時にアラームを出力し、通信ステータスと電波強度で通信状況を表示し、上位計算機3を使用するオペレータに通知する。
【0029】
次に、各信号変換器1a,1b,1c,1dと、ゲートウェイ4と、上位計算機3の構成について具体的に説明する。
〔信号変換器〕
図2において、熱電対のセンサノードである信号変換器1aは、熱電対入力部40で熱電対2aの温度−熱起電力で決まる熱起電力を入力し、電圧増幅を行う。温度変換部41は電圧増幅した信号を受け、AD変換でデジタル信号に変換後、温度データに変換するとともに、温度が上下限警報値を超えている場合は上下限アラームを設定する。熱電対2aが断線して、温度データが振りきれた場合はセンサ異常を設定する。
【0030】
データ保持部16は温度データを計測データ0とし、温度変換演算部41の上下限アラームとセンサ異常、RF送受信部19の電波強度、駆動制御部17の自己診断情報を集合してステータスデータ0を作成する。データ保持部16は以下の手順で保持している演算データを一つずつシフトし、演算データの更新を行う。
1)計測データ4とステータスデータ4を計測データ5とステータスデータ5へ格納
2)計測データ3とステータスデータ3を計測データ4とステータスデータ4へ格納
3)計測データ2とステータスデータ2を計測データ3とステータスデータ3へ格納
4)計測データ1とステータスデータ1を計測データ2とステータスデータ2へ格納
5)計測データ0とステータスデータ0を計測データ1とステータスデータ1へ格納
本実施例では過去データを4個としたが、5個以上でも同様な手順で実行できる。データ保持部16はシーケンス番号を1つ毎加算し、格納する。電源部21は信号変換器1a内の各部にDC電源を供給する。Ch、アドレス設定部20は無線伝送の周波数チャンネルをCh SW23から取込み、自局のノードアドレスをAD SW22から取込み保持する。駆動制御部17は熱電対の入力からデータ保持までの演算周期毎の実行とゲートウェイ7からのデータ収集をRF送受信部19で受けて、送信間隔タイマ18に
タイマ時間 = (ノードアドレス−1) × 送信間隔(8ms)
を設定する。送信間隔タイマ18はタイマ時間設定後に計時を開始し、タイムアップ信号を出力する。駆動制御部17はタイムアップでデータ保持部16に保持している変換器データとシーケンス番号をRF送受信部19を介して無線出力する。RF送受信部19はデータ保持部16で作成した変換器データを送り先アドレス(Address ID)と無線伝送の制御フィールドを付加して無線伝送データパケットを作成し、ゲートウェイ4へ無線伝送する。
【0031】
測温抵抗体のセンサノードである信号変換器1bは、測温抵抗体入力部42で測温抵抗体2bへ定電流を流し、測温抵抗体2bの温度−抵抗値で決まる抵抗値変化を電圧値で入力する。温度変換演算部43は電圧信号を受け、AD変換でデジタル信号に変換後、温度データに変換するとともに、温度が上下限警報値を超えている場合は上下限アラームを設定する。測温抵抗体2bが断線して、温度データが振りきれた場合はセンサ異常を設定する。データ保持部16以降の処理は信号変換器1aと同様に構成する。
【0032】
伝送器、レベル計のセンサノードである信号変換器1cは、伝送器入力部44で伝送器、レベル計2Cへ定電圧を供給し、伝送器、レベル計2Cの圧力またはレベル変化を4/20mA統一信号で入力し、電圧信号に変換する。データ変換演算部45は電圧信号を受け、AD変換でデジタル信号に変換後、圧力またはレベルデータに変換するとともに、圧力またはレベルが上下限警報値を超えている場合は上下限アラームを設定する。伝送器、レベル計2Cへの配線が断線した場合、伝送器、レベル計2Cの自己診断で、圧力またはレベルデータが振りきれた場合はセンサ異常を設定する。データ保持部16以降の処理は信号変換器1aと同様に構成する。
【0033】
信号変換器の1種である演算器1dは、4/20mA 1/5V入力部46で各センサからの信号を4/20mAまたは1/5Vで入力する。関数演算部47は信号を受け、AD変換でデジタル信号に変換後、フィルタ演算、上下限リミット、セレクタ、バイアス演算、リニアライズ演算、上下限警報演算などの関数演算を実行し演算データを出力する。データ保持部16以降の処理は信号変換器1aと同様に構成する。
〔ゲートウェイ〕
ゲートウェイ4は無線IF7で信号変換器から無線データ伝送パケットを受信し、無線IF7は受信した無線データ伝送パケットの制御フィールドを削除して、データパケットを出力する。収集データ格納判定部15はデータパケットを受けて、データパケットに含まれる発信元アドレス(Source Address)を信号変換器のノードアドレスとして、計測データテーブル6の該当するノードアドレスのシーケンス番号とデータパケット中のシーケンス番号の差分を計算し、シーケンス番号の変化分を算出する。次いでシーケンス番号変化分と周期判定部12の収集周期とを比較する。
【0034】
収集周期 > {|シーケンス番号変化分|×演算周期(演算器)×n}
(nは2以上で設定する)
収集データ格納判定部15はシーケンス番号変化分からの時間が収集周期より小さい場合には、変換器データが更新されないため通信ステータスを異常(ERROR)と出力する。またシーケンス番号変化分からの時間が収集周期より大きい場合には正常/異常ステータスを正常(NORMAL)と出力する。
【0035】
収集データ格納判定部15はこのシーケンス番号の更新判定の他、該当するノードアドレスの変換器種別を比較し、不一致の場合は通信ステータスを異常(ERROR)と出力する。これにより、信号変換器の正常/異常の判別を可能とする。収集データ格納判定部15は計測データテーブル6のテーブル内の該当するノードアドレスへ変換器データの計測データとステータスデータを格納する。
【0036】
収集データテーブル5はテーブルデータを出力する。計測データテーブル6は出力されたテーブルデータから過去の演算器データと演算周期の更新番号であるシーケンス番号を削除して格納する。周期判定部12はデータ収集周期をデータ収集収集タイマ11に設定するとともに、データ収集収集タイマ11のタイムアップを受けて、無線IF7にデータ収集を出力し、無線IF7はデータ収集を各信号変換器に無線出力する。これをタイムアップ毎に繰り返し実行する。Ch設定部7は無線伝送の周波数チャンネルを設定する。
〔上位計算機〕
上位計算機3の無線データ処理部10のデータ収集警報チェック部26は各変換器データを収集するため、LAN IF9を介して収集するノードアドレスを含むデータ収集コマンドを発行する。ゲートウェイ4はLAN IF8介してデータ収集コマンドを受ける。LAN IF8はコマンド処理部14に上位計算機からのデータ収集コマンドを出力する。コマンド処理部14は上位計算機のコマンドの種類を判定し、計測データテーブル6または収集データテーブル5より該当するノードアドレスの計測データとステータスデータを読み出し、LAN IF8介して上位計算機へ返信する。データ収集警報チェック部26は返信された変換器データをLAN IF9を介し受け取り、RTC25の計時出力とともに計測データ記録ファイル27へ格納する。
【0037】
GUI30は計測データファイル27に格納された各変換器データを取り出し、温度、圧力、流量、レベル、演算データのトレンドの表示を行い、変換器のステータスの上下限アラーム、センサ異常、自己診断情報で異常時にアラーム表示を行う。また通信ステータスが異常の場合、センサノードの故障のアラーム表示を行う。
【0038】
上位計算機3はゲートウェイ4と信号変換器の接続情報を予め登録し、データ収集を行うため、ID設定部28を設ける。ID設定部28は上位計算機に「ゲートウェイ/信号変換器のID新規、追加、削除と収集周期設定」のために設けているマンマシンGUI31からシステムとして構成を行うノードIDに対する各ノード種別(信号変換器種別)とノードアドレスを入力し、ノード登録IDファイル29に格納する。センサデータ収集部26はデータ収集するノードIDをID設定部28を介して、ノード登録IDファイル29から読み出す。ID設定部28はノード登録IDファイル29をLAN IF9を介して、ノード登録IDファイルを含むノード登録コマンドを発行する。
【0039】
ゲートウェイ4はLAN IF8を介してノード登録コマンドを受ける。LAN IF8はコマンド処理部14に上位計算機からのノード登録コマンドを出力する。コマンド処理部14は上位計算機のコマンドの種類を判定し、収集データテーブル5へ、信号変換器種別とノードアドレスを書き込む。これにより、ゲートウェイの電源ON後の初期化時における収集データテーブル5の各ノードのIDを指定可能とする。
〔無線データ伝送〕
図3は無線データ伝送のタイムチャートを示す。ゲートウェイ4の周期判定部12が所定の収集周期でデータ収集パケットを送信する。No.1変換器からNo24演算器はデータ収集パケットを受信し、各信号変換器は送信間隔タイマ18に(ノードアドレス−1)×送信間隔(8ms)のタイマ時間を設定する。ここでは信号変換器が24個の場合について説明する。No.1変換器の送信間隔タイマ18は直ちにタイムアップし、変換器データの「SD+データフィールド+ED」のデータパケットを送信する。次にNo.3変換器の送信間隔タイマ18がタイムアップし、変換器データのデータパケットを送信する。次にNo.2変換器の送信間隔タイマ18がタイムアップし、変換器データのデータパケットを送信する。
【0040】
以下同様に動作を繰り返し、No.24演算器の送信間隔タイマ18がタイムアップし、変換器データのデータパケットを送信する。無線データ伝送の特長であるブロードキャスト性を活かし、ゲートウェイ4からの一回のデータ収集パケットを全ての信号変換器で差異無く同時に受信し、送信間隔タイマ18を起動する。各アドレスに比例してタイマ時間を変更することにより、信号変換器同士の送信したデータパケットが重複してエラーとなることはない。上記方式は、ポーリング方式と比較しゲートウェイからの信号変換器個別にデータ収集パケットの送信不要のため、、短時間ですべての変換器データを収集可能となる。これにより、収集周期を短くして細かい計測データをサンプルし、プロセスの監視をすることができる。
〔データパケット〕
図4は無線伝送のデータパケットと収集データテーブル5の関係を示す。無線伝送のデータパケットは制御フィールドとデータフィールドで構成する。同期をとるためのPreamblesに加え、制御フィールドはパケットの開始を示すSD(Start of Frame Delimiter)と、以下のパケット長を示すFrame Lengthと、パケットの種類を示すFrame Controlと、パケットの番号を示すSequence Noと、送り先アドレスを示すAddress IDと、パケットの末尾に付けてFrame Controlからデータフィールドまでのビット誤りチェックを行うFCS(Frame Check Sequence)、およびEDからなる。
【0041】
データフィールドはデータフィールドの以下の長さを示すData Lengthと、最終の受け取り手のアドレスを示すTarget Addressと、データパケットの送信元のアドレスを示すSource Addressと、データパケットの種別を示すData Typeと、送信元の種別を示す信号変換器種別と、信号変換器の演算周期で更新するシーケンス番号からなるデータヘッダと、データ収集した時点の計測データ1及び上下限アラーム、センサ異常、電波強度、自己診断情報からなるステータスデータ1、及び過去のデータである計測データ2/ステータスデータ2〜計測データ5/ステータスデータ5と、変換器種別からステータスデータ5の自己診断情報までのチェックを行うバイト加算または排他的論理和の演算結果のデータを示すSum_Checkで構成する。
【0042】
上位計算機のID設定部よりLAN IFを介してノード登録ファイル29のノードIDのノードアドレスと信号変換器種別がテーブル部5に書き込まれる。ステップ(1)で無線データパケットの受信でデータパケットのSource Addressと一致する収集データテーブル5のノードアドレスを検索する。(2)で一致したノードアドレスの項番の信号変換器種別とサンプル番号の変化分を確認する。(3)で(2)で一致した項番にデータフィールドのシーケンス番号から計測データ5の自己診断情報までを書き込む。
【0043】
以下同様に無線伝送データパケットが来る度に処理を実行する。収集データ格納判定部15はノードアドレス毎に収集データテーブル5と受信してデータパケットのシーケンス番号との変化分から計算した時間と周期判定部12の収集周期を比較し、更新チェックを実行する。更新されない場合は通信ステータスを異常(ERROR)に設定する。次に、(4)で収集データテーブル5は計測データテーブル6へデータを格納する。
〔データ伝送手順〕
図5は伝送手順(フロー)の各ステップを示す。上位計算機は(1)の起動でイニシャルを実行する。(2)でイニシャル終了後、LANを介して、ゲートウェイリセットを発行する。ゲートウェイ(以下図中でGWとする)は(1)の電源ONまたは上位計算機からのゲートウェイリセットでイニシャルを実行する。信号変換器は(1)の電源ONでイニシャルを実行し、Chデータとアドレスデータを設定する。ゲートウェイは(1)のイニシャル時に収集データテーブルのクリアを行い、通信ステータスをクリア(Null)とする。ゲートウェイは自身の通信ステータスをINITへ設定する。
【0044】
上位計算機は(3)でゲートウェイステータス確認をLANを介して行う。ゲートウェイはテーブル部よりゲートウェイの通信ステータスを読み取りINITを返す。上位計算機はゲートウェイのステータスがINITのとき以下の(4)を実行する。(4)でID設定部からノード登録ファイルを読込み、ゲートウェイへ設定する。ゲートウェイはノード登録ファイルのデータを収集データテーブルへ設定する。ゲートウェイはデータ収集タイマを起動し、自身の通信ステータスをNORMAL(正常)に設定する。以上で上位計算機からのゲートウェイ、信号変換器のイニシャルからの起動を終了する。
【0045】
信号変換器は(1)のイニシャル終了後(2)でセンサデータの収集を開始し、計測データ0とステースデータ0を作成する。(3)でデータ格納部のデータを移動した後、計測データ0とステータスデータ0を格納し、シーケンス番号を+1加算する。信号変換器は(2)、(3)を演算周期毎に繰り返す。ゲートウェイは(3)で収集周期の判定を行い、収集周期で(4)を実行する。ゲートウェイは(4)でデータ収集パケットを送信する。信号変換器はデータ収集受信で(5)の送信間隔タイマを起動する。信号変換器は送信間隔タイマのアップでデータパケットを送信する。ゲートウェイは(5)で信号変換器のデータパケットから、該当するノードアドレスの収集データテーブルのデータを更新する。また、更新したノードアドレスの信号変換器の通信ステータスをシーケンス番号の変化をチェック後、NORMAL(正常)とする。ゲートウェイは(6)で受信しなかったノードアドレスの通信ステータスをERROR(異常)に設定する。ゲートウェイは(7)で収集データテーブルのデータを計測データテーブルに保存する。ゲートウェイは(4)〜(7)を周期的に実行する。
【0046】
上位計算機はゲートウェイの収集データテーブルに格納された変換器データを以下の手順で読出し、処理を行う。(5)でゲートウェイのステータスを確認する。ゲートウェイは収集データテーブルのゲートウェイの通信ステータスを返す。上位計算機はゲートウェイのステータスがNORMALの時は(6)を行い、INIT時は(4)を実行する。ERRORの時は(2)を実行する。(6)でゲートウェイの計測データテーブルまたは収集データテーブルのデータを読み取る。ゲートウェイは指定されたノードアドレスのテーブルのデータを返信する。(7)でゲートウェイ、信号変換器の通信ステータスがERROR(異常)でないかチェックし、異常の場合はアラームを出力する。また、ステータスの上下限警報、センサ異常及び自己診断情報でアラームを出力する。(8)で変換器データを計測データ記録ファイルへデータを保存する。(9)で計測データから、トレンド/グラフなどの表示を行う。上位計算機は(5)〜(9)を繰り返す。
上位計算機が収集データテーブルの過去データを参照する場合は(6)でゲートウェイから収集データテーブルに保存されているテーブルデータを読み出す。読出したデータは計測データ番号に対応する計測データ記録ファイルへ保存する。
【0047】
図6は計測データとステータスデータ1〜5を収集データテーブルから計測データ記録ファイルへ格納する手順を示す。計測データ1とステータスデータ1をRTC25から出力する時刻データとともに現時刻(t)に格納する。計測データとステータスデータの2〜5は信号変換器の演算周期×(データ番号−1)でΔtを計算し、現時刻tからΔtを引いた(t−Δt)時刻に各々格納する。過去のデータを現在データと同一のデータパケットで一括伝送することにより、上位計算機からゲートウェイを介して信号変換器へのデータ収集パケットは不要となり、無線伝送パケットの低減と無線データの伝送手順の簡素化ができる。また過去データを4個以上の場合、平均パケット欠損率を1%ととし、収集周期を0.2sとすると5回連続してパケットが欠損するエラーの発生頻度は約30年に1回となり、信頼性の高い無線データ伝送が実現できる。
【符号の説明】
【0048】
1a:信号変換器、1b:信号変換器、1c:信号変換器、1d:信号変換器、2a:センサ、2b:センサ、2c:センサ、2d:センサ、3:上位計算機、4:ゲートウェイ、5:収集データテーブル、6:計測データテーブル、7:無線IF、8:LAN IF、9:LAN IF、10:監視データ処理部、11:データ収集周期タイマ、12:周期判定部、13:Ch設定部、14:コマンド処理部、15:収集データ格納部、16:データ格納部、17:駆動制御部、18:送信間隔タイマ、19:RF送受信部、20:Ch、アドレス設定部、21:電源部、22:AD SW、23:Ch SW、25:RTC、26:データ収集警報チェック部、27:計測データ記録ファイル、28:ID設定部、29:ノード登録IDファイル、30:GUI(トレンドグラフ、アラーム)、31:GUI GW(Ch)/変換器ノード ID(新規、追加、削除 収集周期設定)、40:熱電対入力部、41:温度変換演算部、42:測温抵抗体入力部、43:温度変換演算部、44:伝送器入力部、45:データ変換演算部、46:4/20mA 1/5V 入力部、47:関数演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセス状態を計測する複数のセンサと、各センサの計測データとステータスデータを集合して変換器データを含むデータパケットを作成する複数の信号変換器と、前記信号変換器からのデータパケットを無線伝送で収集するとともに接続された上位計算機に前記信号変換器の変換器データを送るゲートウェイと、ゲートウェイからの変換器データによりプロセス状態の監視を行う上位計算機を有する無線ネットワークプロセス監視システムにおいて、
前記信号変換器は、前記ゲートウェイのデータ収集の際にアドレスに比例した送信間隔でデータパケットをゲートウェイに伝送する送信周期タイマを備えたことを特徴とする無線ネットワークプロセス監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載された無線ネットワークプロセス監視システムにおいて、前記ゲートウェイは、前記信号変換器のデータパケットの変換器データを格納する収集データテーブルと、前記変換器データのうち周期的に更新された新規な変換器データを格納する計測データテーブルを備えたことを特徴とする無線ネットワークプロセス監視システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された無線ネットワークプロセス監視システムにおいて、前記信号変換器は演算器データとともに演算周期毎に更新するシーケンス番号を保持するデータ保持部を有し、前記信号変換器はデータ保持部に保持された変換器データとシーケンス番号を含むデータパケットを前記ゲートウェイに伝送することを特徴とする無線ネットワークプロセス監視システム。
【請求項4】
請求項3に記載された無線ネットワークプロセス監視システムにおいて、前記ゲートウェイはシーケンス番号と変換器データ収集周期の比較から通信ステータス異常を検出する収集データ格納判定部を備えたことを特徴とする無線ネットワークプロセス監視システム。
【請求項5】
請求項3に記載された無線ネットワークプロセス監視システムにおいて、前記ゲートウェイは変換器データと該当するノードアドレスの変換器種別の比較から通信ステータス異常を検出する収集データ格納判定部を備えたことを特徴とする無線ネットワークプロセス監視システム。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載された無線ネットワークプロセス監視システムにおいて、前記信号変換器は演算周期毎の過去の変換器データを保存するデータ保持部を有して過去の変換器データとともに新たな変換器データを前記ゲートウェイに伝送し、前記上位計算機は前記信号変換器の演算周期から過去の変換器データの時刻を算出し、収集した過去の変換器データを保存する計測データ記録ファイルを持つデータ収集警報チェック部を備え、無線伝送時のデータパケット欠損によるデータ欠損を防止することを特徴とする無線ネットワークプロセス監視システム。
【請求項7】
請求項6に記載された無線ネットワークプロセス監視システムにおいて、前記信号変換器は演算周期毎の過去4データ以上の変換器データを保存するデータ保持部を有して過去の変換器データとともに新たな変換器データを前記ゲートウェイに伝送することを特徴とする無線ネットワークプロセス監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−282269(P2010−282269A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−133010(P2009−133010)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【出願人】(000233549)株式会社日立ハイテクコントロールシステムズ (130)
【Fターム(参考)】