説明

無線端末装置およびゲイン調整方法

【課題】送受信信号の信号レベルを合わせるように調整することにより、信号レベル差による誤差発生を防止し、距離測定の精度を向上させることが可能である。
【解決手段】信号の送受信を行う無線通信部1と、無線通信部1による送受信信号の信号レベルを増幅する信号増幅・フィルタ部3と、増幅された送受信信号のうち、予め設定された所定の検出閾値よりも大きい信号レベルの信号を送信信号または受信信号として検出するADC4と、ADC4による検出結果に基づく無線通信の信号の往復時間から電波伝播遅延時間を計測して相手無線端末装置との間の距離を求めるとともに、信号増幅・フィルタ部3のゲイン調整を行う測定制御・時間計測部5とを備え、上記往復時間の測定時に、送信信号と受信信号との信号レベルを合わせることで、電波減衰による測定精度の低下を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は無線端末装置およびゲイン調整方法に関し、特に、無線距離測定においてゲインを調整する無線端末装置およびゲイン調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
目標物までの距離を測定する方式として、超音波の反射を利用し、超音波の送信から反射波の受信までの時間を計測することにより、目標物までの距離を計測する装置が知られている。この種の従来の測定装置において、距離による受信信号の減衰に応じて受信閾値を調整することにより、短距離、長距離ともに測距する方式が開示されている。当該方式においては、超音波の反射を前提とする距離によるレベル減衰曲線を基にして、送信から受信までの時間が長いほど、受信検出レベルの感度を高くする調整を行っている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−45188号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の従来装置における、ゲイン調整(閾値調整)方式は、超音波が空中を伝播する際のレベル減衰曲線を基に受信閾値を小さくする調整を行っている。この方式は、超音波の反射を前提としており、反射点(往路受信〜復路送信間)の処理時間がゼロであることが必要である。
【0005】
しかしながら、無線通信の場合を考えると、無線通信の場合は、往路の通信フレームを相手端末で受信・解釈し、復路の返信フレームを組立てて送出する処理が行われる。この通信処理時間はゼロではなく、かつ、通信毎に一定でなくばらつくため、電波が空中伝播する際のレベル減衰曲線を用いて調整することはできない。従って、従来のゲイン調整方式を無線通信に適用することはできないという問題点があった。
【0006】
本発明はかかる問題点を解決するためになされたものであり、送受信信号の信号レベルを合わせるように調整することにより、信号レベル差による誤差発生を防止し、距離測定の精度を向上させることが可能な、無線通信装置およびゲイン調整方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、無線通信における信号の送受信を行う無線通信手段と、前記無線通信手段による送受信信号の信号レベルを増幅する増幅手段と、前記増幅手段により増幅された前記送受信信号が入力されて、当該送受信信号のうち、予め設定された所定の検出閾値よりも大きい信号レベルの信号を送信信号または受信信号として検出する検出手段と、前記検出手段による検出結果に基づく無線通信の信号の往復時間から電波伝播遅延時間を計測して相手無線端末装置との間の距離を求めるとともに、前記増幅手段のゲイン調整を行う測定計測手段とを備え、前記往復時間の測定時に、送信信号の信号レベルと受信信号の信号レベルとを合わせることで、電波減衰による測定精度の低下を防止する無線端末装置である。
【発明の効果】
【0008】
この発明は、無線通信における信号の送受信を行う無線通信手段と、前記無線通信手段による送受信信号の信号レベルを増幅する増幅手段と、前記増幅手段により増幅された前記送受信信号が入力されて、当該送受信信号のうち、予め設定された所定の検出閾値よりも大きい信号レベルの信号を送信信号または受信信号として検出する検出手段と、前記検出手段による検出結果に基づく無線通信の信号の往復時間から電波伝播遅延時間を計測して相手無線端末装置との間の距離を求めるとともに、前記増幅手段のゲイン調整を行う測定計測手段とを備え、前記往復時間の測定時に、送信信号の信号レベルと受信信号の信号レベルとを合わせることで、電波減衰による測定精度の低下を防止する無線端末装置であるので、送受信信号の信号レベルを合わせるように調整することにより、信号レベル差による誤差発生を防止し、距離測定の精度を向上させることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1にかかる無線通信装置の構成を示した図であり、無線通信による距離測定の方法を示している。本実施の形態にかかる無線通信装置は、図1に示すように、無線通信機能を持つ無線端末装置である、無線装置1(符号11)および無線装置2(符号12)から構成されている。無線装置1はアンテナ2を有し、送信信号である送信フレーム1(符号30)を無線装置2へ向けて送信する。無線装置2は、送信されてきた送信フレーム1を受信信号である受信フレーム1(符号31)としてアンテナ2により受信する。次に、無線装置2は、送信信号である送信フレーム2(符号32)を無線装置1へ向けて送信する。無線装置1は送信フレーム2を、受信信号である受信フレーム2(符号33)として受信する。
【0010】
本実施の形態にかかる無線通信装置は、無線装置1と無線装置2との間の無線通信の往復時間から電波伝播遅延時間Tdを計測し、それを距離に換算して、無線装置1,2間の距離を求める。
【0011】
無線装置1は、送信フレーム1の送信終了から受信フレーム2の受信終了までの時間を計測し、遅延時間Aとする。無線装置2は、受信フレーム1の受信終了から送信フレーム2の送信終了までの時間を計測し、遅延時間Bとする。無線装置1,2間を電波が伝播するのに要する時間Tdと、遅延時間A、Bには、次式(1)の関係が成り立つ。
【0012】
遅延時間A=遅延時間B+Td×2 (1)
Td=(遅延時間A−遅延時間B)/2
【0013】
上記の式(1)より電波伝搬遅延時間Tdを求め、単位時間当たりの電波伝搬時間(30万km/1秒)から電波伝搬遅延時間Tdを距離換算することで、無線装置1,2間の距離を求めることができる。
【0014】
図2は、上記の距離測定方式において、受信電波の減衰に起因した誤差発生を示した図である。図2において、期待値A、Bは、測定したい遅延時間A、遅延時間Bを示す。測定結果A、Bは、実際に測定される遅延時間A、遅延時間Bを示す。
【0015】
無線装置1および2に設けられている、信号を検出するADC(A/D変換器)(図4参照)には予め検出閾値(符号40,41)がそれぞれ設定されており、入力信号の振幅レベルが当該検出閾値より大きい場合に、信号変化をデジタル信号に変換して出力する。よって、通信の終了検出(すなわち、送信信号の送信終了時点または受信信号の受信終了時点の検出)は、信号振幅が小さくなって、検出閾値の範囲から出なくなったポイント(時点)を終了時点として検知する。なお、検出閾値40または41は、上限閾値と下限閾値とを有し、それらの間の範囲を示す。ここでは、検出閾値40と41とは同じ範囲であることとする。
【0016】
一般に、電波が空中を伝播する際には信号強度が減衰する。そのため、図2に示す様に、無線装置の送信信号と受信信号の振幅レベルに差が生じる。
【0017】
送受信回路の周波数帯域が狭い場合、高周波成分(急峻な信号変化)が除去され信号終了は緩やかな減衰特性をとる。送信信号、受信信号の振幅レベルに違いがある場合には、信号終了の検出位置(信号振幅が検出閾値範囲から出なくなったポイント)が送信時と受信時でずれるため、当該ずれが期待値と測定結果の誤差となって現れる。図2の場合、期待値Aに対し、測定結果Aは「ΔTa2−ΔTa1」だけ短くなる。また、期待値Bに対し、測定結果Bは「ΔTb1−ΔTb2」だけ長くなる。なお、ここで、ΔTa1は、送信信号1の終了検出のポイントと実際の送信終了のポイントとの時間差である。また、ΔTa2は、受信信号2の終了検出のポイントと実際の受信終了のポイントとの時間差である。また、同様に、ΔTb1は、受信信号1の終了検出のポイントと実際の受信終了のポイントとの時間差であり、ΔTa2は、送信信号2の終了検出のポイントと実際の送信終了のポイントとの時間差である。このように、“期待値A−期待値B”に対し、“測定結果A−測定結果B”は誤差を含むこととなり、正しい電波伝播時間Tdを求めることができない。したがって、本実施の形態においては、以下の方法により、この誤差を低減させている。
【0018】
図3は、本実施の形態における誤差低減方式を示した図である。本実施の形態においては、無線装置1,2のそれぞれに、受信信号の振幅レベルを増幅させるためのゲイン調整機能を設け、受信信号の振幅レベルだけを増幅させて、遅延時間計測時に、送信信号の振幅レベルと受信信号の振幅レベルとが一致するように合わせることにより、誤差発生を防止する。ゲイン調整機能の働きにより、このように、送信信号と受信信号の信号レベル差が無くなることで、信号終了の検出位置(信号振幅が検出閾値範囲から出なくなったポイント)が送信時と受信時で一致し、ΔTa1'=ΔTa2'、ΔTb1'=ΔTb2'となる。これにより、ΔTa1'−ΔTa2'=0、および、ΔTb1−ΔTb2=0となり、信号レベル差に起因する誤差発生を防止し、電波伝播時間Tdの測定精度を向上できる。なお、ここで、ΔTa1’は、送信信号1の終了検出のポイントと実際の送信終了のポイントとの時間差である。また、ΔTa2’は、受信信号2の終了検出のポイントと実際の受信終了のポイントとの時間差である。また、同様に、ΔTb1’は、受信信号1の終了検出のポイントと実際の受信終了のポイントとの時間差であり、ΔTa2’は、送信信号2の終了検出のポイントと実際の送信終了のポイントとの時間差である。
【0019】
以上のように、本実施の形態においては、送受信を行うための複数の無線装置から構成され、送信側と受信側との間の無線通信の往復時間から電波伝播遅延時間を計測し、無線装置間の距離を検出する無線通信装置であって、送受信の信号レベルを設定可能なゲイン調整機能を有し、往復時間測定時に、送信信号の信号レベルと受信信号の信号レベルとを合わせるようにしたので、電波減衰による測定精度の低下が生じず、電波伝播時間を精度よく測定することができる。
【0020】
実施の形態2.
図4は、本発明の無線装置1,2のハードウエア構成を示すブロック図である。図4に示すように、無線装置1,2は、それぞれ、無線通信における送受信フレーム(送信信号および受信信号)の送受信を行う無線通信部1と、無線信号を送出・受信するアンテナ2と、送受信信号からノイズを除去し、ADC4で検出可能なレベルに増幅する信号増幅・フィルタ部3と、増幅された送受信信号のうち、検出閾値よりも大きい信号レベルの信号を“1”、それ以外を“0”のデジタル信号に変換して出力するADC(アナログ/デジタル変換器)4と、ADC4からの出力に基づいて、送受信フレームの終了検出、時間計測、および、ゲイン調整制御を行う測定制御・時間計測部5と、無線通信部1とアンテナ2間の通信信号(送受信信号)を信号増幅・フィルタ部3に分配する信号分配器6とから構成されている。また、信号増幅・フィルタ部3は、ノイズを除去するための2つのアンプ/フィルタ3aおよび3bと、それらのアンプ/フィルタ3aおよび3bの間に設けられた可変増幅器とから構成されている。尚、アンプ/フィルタの数は、無線通信部の仕様(送信電力)に応じて、数を増減させて良い。
【0021】
また、測定制御・時間計測部5は、無線通信部1による送信信号の送信終了から当該送信信号に対して送信される相手無線端末装置からの受信信号の受信終了までの遅延時間A、あるいは、無線通信部1による相手無線端末装置から送信されてきた受信信号の受信終了から当該受信信号に対して相手無線端末装置に送信する送信信号の送信終了までの遅延時間Bを測定する遅延時間測定機能と、測定された遅延時間に基づいて相手無線端末装置までの電波伝播遅延時間Tdを上述の(1)式により算出する伝播時間算出機能と、単位時間当たりの電波伝播時間(30万km/1秒)に基づき、算出された電波伝搬遅延時間Tdを距離に換算して、相手無線端末装置までの距離を求める距離算出機能と、送信信号および受信信号の信号レベルを調整するためのゲイン調整設定値を信号増幅・フィルタ部3に出力するゲイン調整機能とを備えている。なお、測定制御・時間計測部5に備えられたこれらの機能は単一の回路から構成されている。
【0022】
図5は、本実施の形態における受信信号のゲイン調整処理方式を説明した図である。図5では、図1中の無線装置1における処理を説明する。なお、送信フレーム1(符号30)は、プリアンブル30aと、スタートフラグ30bと、ペイロード30cとから構成されている。また、同様に、受信フレーム2(符号33)は、プリアンブル33aと、スタートフラグ33bと、ペイロード33cとから構成されている。
【0023】
無線通信部1は、送信フレーム1(符号30)のスタートフラグ30bを検出し、測定制御・時間計測部5に通知する。測定制御・時間計測部5は、当該通知を受けて、ADC4からの出力に基づいて、送信信号の終了検出を行う。当該終了検出ではゲイン調整の設定値は0とし、可変増幅器3bでの信号増幅は行わない。当該終了検出においては、測定制御・時間計測部5は、送信信号終了検出フェーズに移行し、ADC4の出力変化を監視する。測定制御・時間計測部5は、ADC4の出力の変化が無くなった時点(ADC4の出力が0から変化しない時点)を送信信号の終了とみなす。
【0024】
次に、無線通信部1は、受信フレーム2(符号33)のスタートフラグ33bを検出し、測定制御・時間計測部5に通知する。測定制御・時間計測部5は、当該通知を受けて、ゲイン調整フェーズに移行し、可変増幅器3bの設定を開始する。すなわち、可変増幅器3bのゲイン設定値を1ステップずつ上げ、ADC4の出力に変化が現れるかを確認する。ADC4の出力が変化したゲイン設定値(+N)を、受信レベル検知と判定する。このゲイン設定値にオフセット値αを加算し、ADC検出閾値の信号レベルと送信信号の信号レベルとのレベル差であるAαだけADC入力信号を増加させる。これにより、図5に示すように、受信信号の信号レベルは、送信信号の信号レベルと同程度になる。
【0025】
可変増幅器3bのゲイン設定の終了後、測定制御・時間計測部5は、受信信号終了検出フェーズに移行し、ADC4の出力変化を監視し、ADC4の出力の変化が無くなった時点を受信信号の終了とみなす。
【0026】
図6は、図1中の無線装置2における処理を示した図である。図6に示すように、受信フレーム1(符号31)は、プリアンブル31aと、スタートフラグ31bと、ペイロード31cとから構成されている。また、送信フレーム2(符号32)は、プリアンブル32aと、スタートフラグ32bと、ペイロード32cとから構成されている。無線装置1は、送信信号終了から受信信号終了までの時間を測定するが、無線装置2は、受信信号終了から送信信号終了までの時間を測定する。よって、無線装置1の場合とは逆に、受信信号のゲイン調整、受信信号終了検出を行った後に、送信信号の終了検出を行う。他の動作については、無線装置1と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0027】
以上の様に、本実施の形態によれば、上述の実施の形態1と同様の効果が得られるとともに、さらに、ゲイン調整、送受信フレームの終了検出(時間計測)を、同一のハードウエア構成上で実現することができる。そのため、必要なハードウエア規模を小さくできるメリットがある。
【0028】
実施の形態3.
上述の実施の形態2においては、ゲイン調整器として、可変増幅器3bを用いる例について説明したが、その場合に限らず、例えば、その他の例として、可変減衰器を使用しても良い。図7は、可変減衰器を使用した場合の、本実施の形態におけるハードウエア構成を示すブロック図である。図7の構成において、図4と異なる点は、図4における可変増幅器3bを可変減衰器3eに変更し、測定制御・時間計測部5にて可変減衰器3eの設定を行う点である。なお、図7におけるアンプ/フィルタ3dおよび3fは、図4におけるアンプ/フィルタ3aおよび3cと同等のものである。また、本実施の形態においては、信号増幅・フィルタ部の符号を、図4と区別するため、3Aとする。他の構成については、図4と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0029】
図8は、可変減衰器3eを使用した場合の、本実施の形態における受信信号のゲイン調整処理方式を説明した図である。図8では、図1中の無線装置1における処理を説明する。
【0030】
無線通信部1は、送信フレーム1(符号30)のスタートフラグ30bを検出し、測定制御・時間計測部5に通知する。測定制御・時間計測部5は、当該通知を受けて、送信信号の終了検出を行う。当該終了検出ではゲイン調整の設定値は可変減衰器3eの最大設定値M(減衰量が最大の設定)とし、信号増幅・フィルタ部3Aの信号増幅量を最小とする。当該終了検出においては、測定制御・時間計測部5は、送信信号終了検出フェーズに移行し、ADC4の出力変化を監視する。測定制御・時間計測部5は、ADC4の出力の変化が無くなった時点を送信信号の終了とみなす。
【0031】
次に、無線通信部1は、受信フレーム2(符号33)のスタートフラグ33bの検出を行い、測定制御・時間計測部5に通知する。測定制御・時間計測部5は、ゲイン調整フェーズに移行し、可変減衰器3eの設定を開始する。可変減衰器3eの設定値を、最大設定値M(減衰量が最大の設定)から1ステップずつ下げて減衰量を小さくし、ADC4の出力に変化が現れるかを確認する。ADC4の出力が変化した設定値(M−N)を、受信レベル検出とする。このゲイン設定値からオフセット値αを減算し、ADC検出閾値の信号レベルと送信信号の信号レベルとのレベル差であるAαだけADC入力信号を増加させる。これにより、送信信号の信号レベルと受信信号の信号レベルとが同程度になる。
【0032】
ゲイン設定の終了後、測定制御・時間計測部5は、受信信号終了検出フェーズに移行する。その後、ADC4の出力変化を監視し、ADC4の出力の変化が無くなった時点を受信信号の終了とみなす。
【0033】
以上の本実施の形態によれば、上述の実施の形態2と同様に、上述の実施の形態1と同様の効果が得られるとともに、さらに、ゲイン調整、送受信フレームの終了検出(時間計測)を、同一のハードウエア構成上で実現することができる。そのため、必要なハードウエア規模を小さくできるメリットがある。
【0034】
実施の形態4.
上述の実施の形態2および3においては、送信信号の振幅レベルは一定(空中の電波伝搬による減衰は無い)との前提で、受信信号の終了検出時のみゲイン調整を行う例について説明した。しかしながら、例えば、設置温度条件によって、無線通信部1の無線送信電力や、信号増幅・フィルタ部3または3Aの増幅率がばらつくなど、送信信号の振幅レベルが一定でなくなる場合が考えられる。
【0035】
図9は、送信信号の振幅レベルにばらつきが存在する場合に、送信信号および受信信号の両者の終了検出時にゲイン調整を行い、送信信号および受信信号の振幅レベルを合わせるゲイン調整処理方式を説明した図である。図9では、図1中の無線装置1における処理を例に説明する。なお、本実施の形態における無線装置1および2のハードウエア構成は、図4に記載したものと同じであるため、ここでは説明を省略し、図4を参照することとする。
【0036】
無線通信部1は、送信フレーム1(符号30)のスタートフラグ30bを検出し、測定制御・時間計測部5に通知する。測定制御・時間計測部5は、当該通知を受けて、ゲイン調整フェーズに移行し、可変増幅器3bの設定を開始する。すなわち、ゲイン設定値を1ステップずつ上げ、ADC4の出力に変化が現れるかを確認する。ADC4の出力が変化したゲイン設定値(+Ns)を、送信レベル検出とする。これにADC検出閾値に対するマージンAβだけADC入力信号レベルを増加させるため、オフセット値βを加えた値をゲイン設定値とする。測定制御・時間計測部5は、ゲイン設定の終了後、送信信号通信終了検出フェーズに移行し、ADC4の出力変化を監視する。測定制御・時間計測部5は、ADC4の出力の変化が無くなった時点を送信信号の終了とみなす。
【0037】
次に、無線通信部1は、受信フレーム2(符号33)のスタートフラグ33bを検出し、測定制御・時間計測部5に通知する。測定制御・時間計測部5は、ゲイン調整フェーズに移行し、可変増幅器3bの設定を開始する。すなわち、ゲイン設定値を1ステップずつ上げ、ADC4の出力に変化が現れるかを確認する。ADC4の出力が変化したゲイン設定値(+Nr)を、受信レベル検出とする。これにADC検出閾値に対するマージンAβだけADC入力信号レベルを増加させるため、オフセット値βを加えた値をゲイン設定値とする。ゲイン設定の終了後、測定制御・時間計測部5は、受信信号終了検出フェーズに移行する。その後、測定制御・時間計測部5は、ADC4の出力変化を監視し、出力の変化が無くなった時点を受信信号の終了とみなす。
【0038】
以上のように、本実施の形態によれば、通信中に送信信号レベルと受信信号レベルとを計測し、適切なゲイン調整レベルを通信フレーム毎に調整することにより、送信信号レベルがばらつく場合にも、送信信号レベルと受信信号レベルとを合わせることができ、電波減衰による測定精度の低下が生じず、電波伝播時間を精度よく測定することができる。
【0039】
実施の形態5.
実施の形態4は、ゲイン調整器は可変増幅器を使用しているが、可変減衰器を使用しても良い。図10は、可変減衰器を使用した場合の、本発明における受信信号のゲイン調整処理方式を説明した図である。図10では、図1中の無線装置1における処理を例に説明する。なお、本実施の形態における無線装置1および2のハードウエア構成は、図7に記載したものと同じであるため、ここでは説明を省略し、図7を参照することとする。
【0040】
本実施の形態においては、無線通信部1は、送信フレーム1(符号30)のスタートフラグ30bを検出し、測定制御・時間計測部5に通知する。測定制御・時間計測部5は、当該通知を受けて、ゲイン調整フェーズに移行し、可変減衰器3eの設定を開始する。すなわち、可変減衰器3eの設定値を、最大設定値M(減衰量が最大の設定)から1ステップずつ下げて減衰量を小さくし、ADC4の出力に変化が現れるかを確認する。ADC4の出力が変化した設定値(M−Ns)を、送信レベル検出とする。これにADC検出閾値に対するマージンAβだけADC入力信号レベルを増加させるため、オフセット値βを引いた値をゲイン設定値とする。ゲイン設定の終了後、測定制御・時間計測部5は、送信信号終了検出フェーズに移行し、ADC4の出力変化を監視する。ADC4の出力の変化が無くなった時点を送信信号の終了とみなす。
【0041】
次に、無線通信部1は、受信フレーム2(符号33)のスタートフラグ33bを検出し、測定制御・時間計測部5に通知する。測定制御・時間計測部5は、当該通知を受けて、ゲイン調整フェーズに移行し、可変減衰器3eの設定を開始する。すなわち、可変減衰器の設定値を、最大設定値M(減衰量が最大の設定)から1ステップずつ下げて減衰量を小さくし、ADC出力に変化が現れるかを確認する。ADC4の出力が変化した設定値(M−Nr)を、受信レベル検出とする。これにADC検出閾値に対するマージンAβだけADC入力信号レベルを増加させるため、オフセット値βを引いた値をゲイン設定値とする。ゲイン設定の終了後、測定制御・時間計測部5は受信信号終了検出フェーズに移行し、ADC4の出力変化を監視し、ADC4の出力の変化が無くなった時点を受信信号の終了とみなす。
【0042】
以上のように、本実施の形態によれば、上述の実施の形態4と同様に、通信中に送信信号レベルと受信信号レベルとを計測し、適切なゲイン調整レベルを通信フレーム毎に調整することにより、送信信号レベルがばらつく場合にも、送信信号レベルと受信信号レベルとを合わせることができ、電波減衰による測定精度の低下が生じず、電波伝播時間を精度よく測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施の形態1に係る無線通信装置の構成を示した構成図である。
【図2】一般的な距離測定方式において、受信電波の減衰に起因した誤差発生を示した説明図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る無線通信装置における誤差低減方式を示した説明図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係る無線通信装置における無線装置のハードウエア構成を示したブロック図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係る無線通信装置における送信側の無線装置の受信信号のゲイン調整処理方式を示した説明図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係る無線通信装置における受信側の無線装置の受信信号のゲイン調整処理方式を示した説明図である。
【図7】本発明の実施の形態3に係る無線通信装置における無線装置のハードウエア構成を示したブロック図である。
【図8】本発明の実施の形態3に係る無線通信装置における送信側の無線装置の受信信号のゲイン調整処理方式を示した説明図である。
【図9】本発明の実施の形態4に係る無線通信装置における送信側の無線装置の送受信信号のゲイン調整処理方式を示した説明図である。
【図10】本発明の実施の形態5に係る無線通信装置における送信側の無線装置の送受信信号のゲイン調整処理方式を示した説明図である。
【符号の説明】
【0044】
1 無線通信部、2 アンテナ、3,3A 信号増幅・フィルタ部、3a,3c,3d,3f アンプ/フィルタ、3b 可変増幅器、3e 可変減衰器、4 ADC(A/D変換器)、5 測定制御・時間計測部、6 信号分配器、11 無線装置1、12 無線装置2、30 送信フレーム1、30a プリアンブル、30b スタートフラグ、30c ペイロード、31 受信フレーム1、31a プリアンブル、31b スタートフラグ、31c ペイロード、32 送信フレーム2、32a プリアンブル、32b スタートフラグ、32c ペイロード、33 受信フレーム2、33a プリアンブル、33b スタートフラグ、33c ペイロード、40,41 検出閾値。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信における信号の送受信を行う無線通信手段と、
前記無線通信手段による送受信信号の信号レベルを増幅する増幅手段と、
前記増幅手段により増幅された前記送受信信号が入力されて、当該送受信信号のうち、予め設定された所定の検出閾値よりも大きい信号レベルの信号を送信信号または受信信号として検出する検出手段と、
前記検出手段による検出結果に基づく無線通信の信号の往復時間から電波伝播遅延時間を計測して相手無線端末装置との間の距離を求めるとともに、前記増幅手段のゲイン調整を行う測定計測手段と
を備え、
前記往復時間の測定時に、送信信号の信号レベルと受信信号の信号レベルとを合わせることで、電波減衰による測定精度の低下を防止する
ことを特徴とする無線端末装置。
【請求項2】
前記測定計測手段の距離検出機能とゲイン調整機能とを単一の回路にて構成することを特徴とする請求項1に記載の無線端末装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の無線端末装置において、前記ゲイン調整により、前記往復時間測定時に、前記送信信号の信号レベルと前記受信信号の信号レベルとを合わせて、前記往復時間の測定を行うことを特徴とするゲイン調整方法。
【請求項4】
通信中に前記受信信号の信号レベルを計測し、受信信号毎にゲイン調整レベルを調整することにより、通信時の電波減衰量に応じたゲイン調整値の決定を行うことを特徴とする請求項3に記載のゲイン調整方法。
【請求項5】
通信中に前記送信信号の信号レベル及び前記受信信号の信号レベルを計測し、送信信号毎および受信信号毎にゲイン調整レベルを調整することにより、信号レベルのばらつきに応じたゲイン調整値の決定を行うことを特徴とする請求項3に記載のゲイン調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−162488(P2009−162488A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−339094(P2007−339094)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、総務省、「ユビキタスセンサーネットワーク技術に関する研究開発」委託契約、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】