説明

無線装置

【課題】精度の高い位置情報を取得可能な無線装置を提供する。
【解決手段】車両CA1に搭載された無線装置10は、車両CA2に搭載された無線装置10と共通して受信できるGPS信号を送信するGSP衛星R1,R3〜R6から受信したGPS信号に基づいて、車両CA1とGSP衛星R1,R3〜R6との擬似距離P1を演算し、車両CA2とGSP衛星R1,R3〜R6との擬似距離P2を車両CA2に搭載された無線装置10から受信する。また、車両CA1に搭載された無線装置10は、擬似距離P1と擬似距離P2との差である擬似距離差を演算し、車両CA1と車両CA2との高度差を3次元電子地図を用いて検出する。そして、車両CA1に搭載された無線装置10は、擬似距離差と、高度差とに基づいて、車両CA1と車両CA2との相対位置を演算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、無線装置に関し、特に、移動体の位置を推測する無線装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車車間通信ネットワークにおいて、車両間で位置情報を交換することにより運転の安全性を向上させることが検討されている。
【0003】
各車両は、車車間通信を通して得られる位置情報を基に算出した車両間の相対距離によって安全距離を保つことで、交通事故を低減できる。また、位置情報を活かすことによって、車同士だけでなく、人と車との距離を保てば、歩行者も保護できる。このような応用には、1m以内の精度の高い位置情報が必要である。
【0004】
各車両のGPS(Global Positioning System)受信機は、自車両の位置情報を算出するために、4個以上の衛星からの信号を受信することが必要である。多くの高い建物が隣接して存在する市街地では、GPS衛星からの信号が建物によって遮蔽され、GPS受信機が受信できるGPS信号を送信する衛星の数が3個以下になることが度々発生する。このような場合、GPSの単独測位では、位置情報の精度を保つことが困難である。
【0005】
そこで、差分GPSを用いて位置情報の精度を向上させることが提案されている(非特許文献1)。より具体的には、複数のGPS受信機で受信する信号の空間的な相関を用いて、電離層の影響を取り除き、位置情報の精度を向上させることが提案されている。
【0006】
また、GPS受信機が受信可能なGPS信号を送信する衛星の数が少なく、GPSの単独測位ができない場所において、車両の速度および移動速度等を用いて一時的に車両の位置を予測する手法が提案されている(非特許文献2)。
【0007】
更に、RTK(Real Time Kinematic)−GPSにおいて、高精度な3次元電子地図を用いてFIX解(再度最小二乗解)の探索範囲を縮める手法が提案されている(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】B. Hoffmann-Wellenhof, H. Lichtenegger and J. Collins, “GPS Theory and Practice,” Third edition, Springer-Verlag Wien New York, 1994.
【非特許文献2】Oliver J. Woodman, “An introduction to inertial navigation,” University of Cambridge, Technical report, UCAM-CL-TR-696, 2007.
【非特許文献3】久保信明、安田明生,“ITSにおける高度情報を利用した移動体精密位置決定,”電子情報通信学会論文誌A,Vol. J91−A, No.1, pp.122−129.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、非特許文献1においては、差分GPSが使用されているため、差分GPSの補正信号が届かない場所においては、位置情報の精度が劣化する。また、移動体が基準局から離れると、位置情報の精度が劣化する。
【0010】
また、非特許文献2においては、精度があまり高くない一方、位置情報の誤差が累積してしまう。
【0011】
更に、非特許文献3においては、差分GPSの信号が届かない場所またはGPS受信機が受信可能なGPS信号を送信するGPS衛星の数が少ない場所では、RTK−GPSが正常に動作しない。
【0012】
そこで、この発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、精度の高い位置情報を取得可能な無線装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明によれば、無線装置は、第1の移動体に搭載され、第1の移動体に隣接する第2の移動体と第1の移動体との相対位置または第1の移動体の絶対位置を求める無線装置であって、GPS受信機と、地図保持手段と、選択手段と、演算手段とを備える。GPS受信機は、GPS衛星からGPS信号を受信する。地図保持手段は、地球を表す楕円体からの高度、経度および緯度に道路の斜度を追加した座標値を地図上における各移動体の位置とする3次元電子地図を保持する。選択手段は、GPS受信機によって受信されたGPS信号に基づいて、当該無線装置と第2の移動体に搭載された他の無線装置との両方が受信できるGPS信号を送信するm(mは、4以上の整数)個のGPS衛星を選択する。演算手段は、GPS受信機がm個のGPS衛星から受信したm個のGPS信号に基づいて、参照地点を原点とし、かつ、参照地点から東方向、北方向および地球を表す楕円体に垂直な方向を向いた3個の軸によって規定される地平直交座標系において、m個のGPS衛星と第1の移動体との距離を示す第1の擬似距離と、m個のGPS衛星と第2の移動体との距離を示す第2の擬似距離とを演算するとともに、その演算した第1の擬似距離と第2の擬似距離との擬似距離差を演算し、経度および緯度によって示される第1の移動体の位置における第1の移動体の高度と経度および緯度によって示される第2の移動体の位置における第2の移動体の高度とを3次元電子地図を参照して検出し、その検出した第1の移動体の高度と第2の移動体の高度との差を地平直交座標系において地球を表す楕円体に垂直な方向における第1の移動体と第2の移動体との相対位置成分として演算し、その演算した相対位置成分と演算した擬似距離差とに基づいて第1の擬似距離の誤差と第2の擬似距離の誤差との誤差差分を演算し、その演算した誤差差分を擬似距離差から減算し、その減算結果に参照地点からGPS衛星までの真の距離の誤差を示す行列の逆行列を乗算して地平直交座標系の東方向および北方向における第1の移動体と第2の移動体との相対位置を演算する。
【0014】
好ましくは、無線装置は、位置演算手段と、受信手段とを更に備える。位置演算手段は、GPS受信機がm個のGPS衛星から受信したm個のGPS信号に基づいて、高度、経度および緯度からなる測位座標系における第1の移動体の位置を示す第1の測位位置情報と、第1の擬似距離とを演算する。受信手段は、測位座標系における第2の移動体の位置を示す第2の測位位置情報と第2の擬似距離とを含む位置情報メッセージを他の無線装置から受信する。そして、演算手段は、位置演算手段によって演算された第1の擬似距離と位置情報メッセージに含まれる第2の擬似距離とに基づいて擬似距離差を演算し、位置演算手段によって演算された第1の測位位置情報および3次元電子地図に基づいて第1の測位位置情報に含まれる経度および緯度によって示される位置における第1の移動体の高度を検出し、位置情報メッセージに含まれる第2の測位位置情報および3次元電子地図に基づいて第2の測位位置情報に含まれる経度および緯度によって示される位置における第2の移動体の高度を検出する。
【0015】
好ましくは、無線装置は、位置予測手段と、受信手段とを更に備える。位置予測手段は、GPS受信機がm個のGPS衛星から受信したm個のGPS信号に基づいて、地球の自転軸の北極方向をz軸とし、z軸に垂直なグリニッジ子午線の方向をx軸とし、z軸およびx軸に直交するように右手系を用いて決定された方向をy軸とする固定直交座標系において第1のタイミングにおける第1の移動体の位置を示す第1の固定位置情報を演算し、その演算した第1の固定位置情報を参照地点として地平直交座標において第1のタイミングにおける第1の移動体の位置を示す第1の地平位置情報を演算し、その演算した第1の地平位置情報と第1の移動体の速度および移動方法とを用いて第1のタイミングの後の第2のタイミングにおける第1の移動体の位置を示す第2の地平位置情報を予測する。受信手段は、測位座標系における第2の移動体の位置を示す第2の測位位置情報と第2の擬似距離とを含む位置情報メッセージを他の無線装置から受信する。そして、演算手段は、第2の地平位置情報を固定直交座標系において第1の移動体の位置を示す第2の固定位置情報に変換し、その変換した第2の固定位置情報を測位座標系において第1の移動体の位置を示す第1の測位位置情報に更に変換し、その変換した第1の測位位置情報および3次元電子地図に基づいて第1の測位位置情報に含まれる経度および緯度によって示される位置における高度を第1の移動体の高度として検出するとともに、位置情報メッセージに含まれる第2の測位位置情報および3次元電子地図に基づいて第2の測位位置情報に含まれる経度および緯度によって示される位置における高度を第2の移動体の高度として検出する。
【0016】
好ましくは、第2の測位位置情報は、他の無線装置において実測された測位位置情報または他の無線装置において予測された測位位置情報からなる。
【0017】
好ましくは、演算手段は、更に、演算した相対位置と、第2の移動体の絶対位置とに基づいて第1の移動体の絶対位置を演算する。
【0018】
また、この発明によれば、無線装置は、第1の移動体に搭載され、参照地点を原点とし、かつ、参照地点から東方向、北方向および地球を表す楕円体に垂直な方向を向いた3個の軸によって規定される地平直交座標系において第1の移動体の絶対位置を求める無線装置であって、GPS受信機と、地図保持手段と、演算手段とを備える。GPS受信機は、GPS衛星からGPS信号を受信する。地図保持手段は、地球を表す楕円体からの高度、経度および緯度に道路の斜度を追加した座標値を地図上における各移動体の位置とする3次元電子地図を保持する。演算手段は、GPS受信機が受信したGPS信号に基づいて、地平直交座標系において、4個以上のGPS衛星と第1の移動体との距離を示す第1の擬似距離を演算し、第1の移動体に隣接するk(kは4以上の整数)個の第2の移動体および第1の移動体とGPS衛星群との地平直交座標系における擬似距離の誤差を第1の擬似距離から減算して補正された第1の補正擬似距離を演算し、その演算した第1の補正擬似距離と4個以上のGPS衛星の位置とに基づいて第1の移動体の絶対位置を演算する。そして、擬似距離の誤差は、高度、経度および緯度からなる測位座標系における第1の移動体の位置を示す第1の測位位置情報と3次元電子地図とに基づいて検出された第1の移動体の第1の高度差と、k個の第2の移動体の測位座標系における位置を示すk個の第2の測位位置情報および3次元電子地図に基づいて検出されたk個の第2の移動体のk個の第2の高度差と、第1の移動体と4個以上のGPS衛星との第1の真の距離の参照地点における変化割合である第1の変化割合と、k個の第2の移動体の各々と4個以上のGPS衛星との真の距離であるk個の第2の真の距離の参照地点における変化割合であるk個の第2の変化割合とに基づいて求められる。また、第1の真の距離およびk個の第2の真の距離の対象となる4個以上のGPS衛星は、第1の真の距離および前記k個の第2の真の距離の相互間で異なる。
【0019】
好ましくは、演算手段は、更に、k個の第2の高度差と、第1の高度差と、第1の真の距離と、k個の第2の真の距離とに基づいて擬似距離の誤差を演算し、その演算した擬似距離の誤差を用いて第1の移動体の絶対位置を演算する。
【0020】
好ましくは、無線装置は、受信手段を更に備える。受信手段は、k個の第2の移動体のうちの任意の1つの第2の移動体から擬似距離の誤差を受信する。そして、演算手段は、更に、受信手段によって受信された擬似距離の誤差を用いて第1の移動体の絶対位置を演算する。
【発明の効果】
【0021】
この発明による無線装置は、GPS衛星から受信したGPS信号に基づいて、第1の移動体とGPS衛星との間の第1の擬似距離と、第2の移動体とGPS衛星との間の第2の擬似距離との差である擬似距離差を演算し、その演算した擬似距離差を用いて第1の移動体と第2の移動体との相対位置を演算する。その結果、第1の移動体と第2の移動体との相対位置は、電離層および対流圏の影響を抑制して演算される。
【0022】
従って、この発明によれば、相対位置の精度を高くできる。
【0023】
また、この発明による無線装置は、移動体とGPS衛星との間の擬似距離の誤差である擬似距離誤差を演算し、その演算した擬似距離誤差を擬似距離から減算して補正擬似距離を求め、その求めた補正擬似距離とGPS衛星の位置とを用いて当該無線装置が搭載された移動体の絶対位置を演算する。その結果、当該無線装置が搭載された移動体の絶対位置は、精度が高い擬似距離を用いて演算される。
【0024】
従って、この発明によれば、絶対位置の精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の実施の形態1による無線装置の構成図である。
【図2】この発明の実施の形態における車車間通信ネットワークのモデル図である。
【図3】この発明の実施の形態における座標系の概念図である。
【図4】実施の形態1における位置情報メッセージの概念図である。
【図5】相対位置を求めるときの前提を説明するための概念図である。
【図6】位置情報メッセージの具体例を示す図である。
【図7】実施の形態1による隣接車両間の相対位置を求める方法を説明するためのフローチャートである。
【図8】実施の形態2による無線装置の構成図である。
【図9】実施の形態2による隣接車両間の相対位置を求める方法を説明するためのフローチャートである。
【図10】実施の形態3による無線装置の構成図である。
【図11】実施の形態3による車両の絶対位置を演算する方法を説明するためのフローチャートである。
【図12】実施の形態4による無線装置の構成図である。
【図13】実施の形態4における位置情報メッセージの概念図である。
【図14】実施の形態4による車両の絶対位置を求める方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0027】
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1による無線装置の構成図である。図1を参照して、この発明の実施の形態1による無線装置10は、アンテナ1と、送受信手段2と、処理手段3と、地図保持手段4と、GPS受信機5と、メッセージ生成手段6とを備える。
【0028】
無線装置10は、車両に搭載される。アンテナ1は、他の無線装置から位置情報メッセージを受信し、その受信した位置情報メッセージを送受信手段2へ出力する。また、アンテナ1は、位置情報メッセージを送受信手段2から受け、その受けた位置情報メッセージを送信する。
【0029】
送受信手段2は、位置情報メッセージをメッセージ生成手段6から受け、その受けた位置情報メッセージをアンテナ1を介してブロードキャストする。また、送受信手段2は、位置情報メッセージをアンテナ1を介して受信し、その受信した位置情報メッセージを処理手段3へ出力する。
【0030】
処理手段3は、位置情報メッセージを送受信手段2から受け、地図保持手段4から3次元電子地図を読み出し、GPS受信機5からGPS信号を受ける。そして、処理手段3は、GPS信号に基づいて、後述する方法によって、無線装置10が搭載された車両CA1の位置を演算する。また、処理手段3は、GPS信号がGPS衛星から無線装置10へ伝搬する伝搬時間を用いてGPS衛星と無線装置10との間の擬似距離を演算する。そうすると、処理手段3は、その演算した車両CA1の位置を示す位置情報および擬似距離をメッセージ生成手段6へ出力する。
【0031】
更に、処理手段3は、位置情報メッセージ、GPS信号および3次元電子地図に基づいて、後述する方法によって、車両CA1と、車両CA1に隣接する車両との相対位置を演算する。
【0032】
地図保持手段4は、3次元電子地図を保持する。この3次元電子地図は、RTK−GPSによって測位された測位座標値(λ,φ,h)に車両が走行する道路の斜度βを追加した座標値(λ,φ,h,β)を地図上における各車両の位置に対応付けた構造からなる。
【0033】
ここで、λは、経度であり、φは、緯度であり、hは、地球を表す楕円体からの垂直方向における高度である。そして、(λ,φ,h)によって表される座標系は、「測位座標系」を構成する。
【0034】
GPS受信機5は、GPS衛星からGPS信号を受信するとともに、そのGPS信号を受信したときの受信時刻を検出する。そして、GPS受信機5は、その受信したGPS信号と、GPS信号を送信したGPS衛星とを対応付け、その対応付けたGPS信号:GPS衛星と、受信時刻とを処理手段3へ出力し、GPS信号:GPS衛星をメッセージ生成手段6へ出力する。
【0035】
メッセージ生成手段6は、車両CA1の位置情報および擬似距離を処理手段3から受け、GPS信号:GPS衛星をGPS受信機5から受ける。そして、メッセージ生成手段6は、その受けた車両CA1の位置情報、擬似距離およびGPS信号:GPS衛星に基づいて、後述する方法によって、位置情報メッセージを生成し、その生成した位置情報メッセージを送受信手段2へ出力する。
【0036】
図2は、この発明の実施の形態における車車間通信ネットワークのモデル図である。図2を参照して、車両CA1〜CAk(kは、4以上の整数、iは1≦i≦kを満たす整数)の各々は、無線装置10を搭載している。そして、車両CA1〜CAkは、道路を走行している。
【0037】
車両CAiに搭載された無線装置10は、m(mは、4以上の整数)個のGPS衛星R1〜RmからGPS信号を受信し、その受信したGPS信号に基づいて、後述する方法によって、車両CAiに隣接する車両と、車両CAiとの相対位置を演算する。
【0038】
車両CAi以外の車両CA1〜CAi−1,CAi+1〜CAkの各々に搭載された無線装置10も、車両CAiに搭載された無線装置10と同様にして、自己が搭載されている車両と隣接車両との間の相対位置を演算する。
【0039】
図3は、この発明の実施の形態における座標系の概念図である。図3を参照して、地球中心地球固定直交座標(ECFF)は、X軸、Y軸およびZ軸からなる座標系である。この場合、Z軸は、地球の自転軸の北極方向を向き、X軸は、Z軸に垂直にグリニッジ子午線の方向を向く。また、Y軸は、X軸およびZ軸に直交するように右手系で決定された軸である。即ち、相互に直交するように右手の親指、中指および人指し指を開き、親指をZ軸の方向に向け、人指し指をX軸の方向に向けた場合に、中指の向く方向がY軸である。
【0040】
なお、以下においては、地球中心地球固定直交座標を単に「固定直交座標」と言う。
【0041】
また、地平直交座標は、地表上の任意の点である参照地点rを基準として、東方向をe、北方向をn、地球を表す楕円体に垂直な方向をuとした場合に、(e,n,u)からなる座標系である。
【0042】
更に、測位座標は、上述したように、(λ,φ,h)からなる。
【0043】
図4は、実施の形態1における位置情報メッセージの概念図である。図4を参照して、位置情報メッセージPSMは、ヘッダ(Header)と、ペイロード1,2とを含む。ヘッダ(Header)は、送信元(SRC)と、送信先(DST)とからなる。送信元(SRC)は、位置情報メッセージを送信する無線装置のアドレスからなる。送信先(DST)は、ブロードキャストアドレス(=0xff)からなる。
【0044】
ペイロード1は、車両位置からなる。車両位置は、測位座標値(λ,φ,h)からなる。
【0045】
ペイロード2は、衛星のビットマップと、擬似距離とからなる。衛星のビットマップは、GPS受信機5によるGPS衛星R1〜RmからのGPS信号の受信の有無を表す。図4においては、衛星のビットマップは、例えば、30個のGPS衛星からのGPS信号の受信の有無を表す。そして、Aは、GPS受信機5がGPS信号を受信可能な場合、“1”からなり、GPS受信機5がGPS信号を受信できない場合、“0”からなる。
【0046】
擬似距離は、各車両と各GPS衛星との距離を表し、GPS信号がGPS衛星から無線装置10まで伝搬するときの伝搬時間を用いて計算された距離である。より具体的には、擬似距離は、無線装置10によって受信されたGPS信号を送信したGPS衛星と、各車両との距離からなり、擬似距離の個数は、衛星のビットマップに格納された“1”の個数と同じである。
【0047】
図5は、相対位置を求めるときの前提を説明するための概念図である。また、図6は、位置情報メッセージの具体例を示す図である。
【0048】
図5を参照して、車両CA1に搭載された無線装置10は、GPS衛星R1〜Rmのうち、GPS衛星R1,R3〜R7からGPS信号を受信し、車両CA2に搭載された無線装置10は、GPS衛星R1〜Rmのうち、GPS衛星R1〜R6からGPS信号を受信するものとする。
【0049】
また、車両CA1に搭載された無線装置10が車両CA1に隣接する車両CA2と車両CA1との相対位置を求める場合を例にして実施の形態1による相対位置の求め方を説明する。
【0050】
車両CA1に搭載された無線装置10のGPS受信機5は、GPS衛星R1,R3〜R7からそれぞれGPS信号GPS1,GPS3〜GPS7を受信するとともに、そのGPS信号GPS1,GPS3〜GPS7を受信したときの受信時刻tr1,tr3〜tr7を検出する。
【0051】
そして、車両CA1に搭載された無線装置10のGPS受信機5は、その受信したGPS信号GPS1,GPS3〜GPS7と、GPS信号GPS1,GPS3〜GPS7を送信したGPS衛星R1,R3〜R7とを対応付け、その対応付けたGPS信号:GPS衛星=GPS1:R1,GPS3:R3〜GPS7:R7と受信時刻tr1,tr3〜tr7とを処理手段3へ出力し、GPS信号:GPS衛星=GPS1:R1,GPS3:R3〜GPS7:R7をメッセージ生成手段6へ出力する。
【0052】
車両CA1に搭載された無線装置10の処理手段3は、GPS信号:GPS衛星=GPS1:R1,GPS3:R3〜GPS7:R7および受信時刻tr1,tr3〜tr7をGPS受信機5から受ける。この場合、GPS信号GPS1,GPS3〜GPS7の各々は、表1に示すパラメータを含む。
【0053】
【表1】

【0054】
そして、車両CA1に搭載された無線装置10の処理手段3は、GPS信号GPS1に含まれるGPS信号GPS1の送信時刻t1を検出し、その検出した送信時刻t1とGPS信号GPS1の受信時刻tr1との差を演算してGPS信号GPS1のGPS衛星R1から車両CA1までの伝搬時間を求め、その求めた伝搬時間に光速度cを乗算してGPS衛星R1と車両CA1との擬似距離P1,1を求める。
【0055】
また、車両CA1に搭載された無線装置10の処理手段3は、同様にして、GPS衛星R3〜R7と車両CA1との擬似距離P1,3〜P1,7を求める。
【0056】
更に、車両CA1に搭載された無線装置10の処理手段3は、GPS信号GPS1に含まれるパラメータを式(1)に代入してGPS衛星R1の固定直交座標値(=ECFF)=(X,Y,Z)を演算する。
【0057】
【数1】

【0058】
以下、GPS衛星R1の固定直交座標値であることを明確にするために、固定直交座標値(=ECFF)=(X,Y,Z)を(X,Y,Z)と表記する。
【0059】
車両CA1に搭載された無線装置10の処理手段3は、同様にして、GPS信号GPS3〜GPS7に基づいて、GPS衛星R3〜R7のECFF座標値=(X,Y,Z)〜(X,Y,Z)を演算する。
【0060】
そして、車両CA1に搭載された無線装置10の処理手段3は、擬似距離P1,1,P1,3〜P1,7から選択した4個の擬似距離(例えば、P1,1,P1,3,P1,4,P1,5)と、その選択した4個の擬似距離P1,1,P1,3,P1,4,P1,5に対応するGPS衛星R1,R3,R4,R5のECFF座標値=(X,Y,Z),(X,Y,Z),(X,Y,Z),(X,Y,Z)とに基づいて、車両CA1の位置を示す固定直交座標値=(x,y,z)を求める。
【0061】
この場合、ECFF座標値=(X,Y,Z),(X,Y,Z),(X,Y,Z),(X,Y,Z)をそれぞれ中心とする半径が擬似距離P1,1,P1,3,P1,4,P1,5に相当する4個の球が1点で交わるときの交点の座標値を演算することによって、固定直交座標値=(x,y,z)を求めることができる。
【0062】
なお、処理手段3は、擬似距離P1,1,P1,3,P1,4,P1,5以外の4個の擬似距離およびECFF座標値=(X,Y,Z),(X,Y,Z),(X,Y,Z),(X,Y,Z)以外の4個のECFF座標値を用いて車両CA1のECFF座標値を求めてもよく、5個以上の擬似距離および5個以上のECFF座標値を用いて車両CA1のECFF座標値を求めてもよい。
【0063】
車両CA1に搭載された無線装置10の処理手段3は、車両CA1の位置(x,y,z)を求めると、その求めた位置(x,y,z)を次式によって固定直交座標値から測位座標値(λ,φ,h)に変換する。
【0064】
【数2】

【0065】
式(2)において、aは赤道半径であり、bは、極半径である。また、Nは、図3に示すNである。即ち、Nは、車両から地球平面に垂線を引き、その垂線が地球平面と交差する交点と、その垂線がZ軸と交差する交点との間の距離である。
【0066】
その後、車両CA1に搭載された無線装置10の処理手段3は、3次元電子地図を地図保持手段4から読み出す。そして、車両CA1に搭載された無線装置10の処理手段3は、3次元電子地図を参照して、測位座標値(λ,φ,h)の座標値(λ,φ)によって示される位置における高度h’を検出する。つまり、車両CA1に搭載された無線装置10の処理手段3は、3次元電子地図に格納された座標値(λ,φ,h,β)のうち、座標値(λ,φ)と同じ(λ,φ)を持つ座標値(λ,φ,h,β)を選択し、その選択した座標値(λ,φ,h,β)から高度hを抽出することによって高度h’を検出する。
【0067】
そうすると、車両CA1に搭載された無線装置10の処理手段3は、測位座標値(λ,φ,h)、および擬似距離P1,1,P1,3〜P1,7をメッセージ生成手段6へ出力する。
【0068】
車両CA1に搭載された無線装置10のメッセージ生成手段6は、GPS信号:GPS衛星=GPS1:R1,GPS3:R3〜GPS7:R7をGPS受信機5から受け、測位座標値(λ,φ,h)、および擬似距離P1,1,P1,3〜P1,7を処理手段3から受ける。
【0069】
そして、車両CA1に搭載された無線装置10のメッセージ生成手段6は、GPS信号:GPS衛星=GPS1:R1,GPS3:R3〜GPS7:R7に基づいて、GPS受信機5がGPS衛星R1〜Rmのうち、GPS衛星R1,R3〜R7からGPS信号を受信可能であることを検知する。
【0070】
その後、車両CA1に搭載された無線装置10のメッセージ生成手段6は、送信元(SRC)に無線装置10のアドレスAdd1を格納し、送信先(DST)にブロードキャストアドレス0xffを格納する。
【0071】
また、車両CA1に搭載された無線装置10のメッセージ生成手段6は、測位座標値(λ,φ,h)をペイロード1の車両位置に格納する。
【0072】
更に、車両CA1に搭載された無線装置10のメッセージ生成手段6は、GPS受信機5がGPS衛星R1,R3〜R7からGPS信号を受信可能であることに基づいて、ビットマップ=[101111100000000000000000000000]を生成し、その生成したビットマップ=[101111100000000000000000000000]をペイロード2の衛星のビットマップに格納する。
【0073】
更に、車両CA1に搭載された無線装置10のメッセージ生成手段6は、擬似距離P1,1,P1,3〜P1,7をペイロード2の擬似距離に格納する。
【0074】
これによって、車両CA1に搭載された無線装置10のメッセージ生成手段6は、位置情報メッセージPSM1(図6の(a)参照)を生成する。そして、車両CA1に搭載された無線装置10のメッセージ生成手段6は、位置情報メッセージPSM1を送受信手段2へ出力し、送受信手段2は、アンテナ1を介して位置情報メッセージPSM1をブロードキャストする。
【0075】
車両CA2に搭載された無線装置10も、車両CA1に搭載された無線装置10と同様にして、上述した方法によって位置情報メッセージPSM2(図6の(b)参照)を生成し、その生成した位置情報メッセージPSM2をブロードキャストする。
【0076】
車両CA1に搭載された無線装置10の送受信手段2は、アンテナ1を介して位置情報メッセージPSM2を受信し、その受信した位置情報メッセージPSM2を処理手段3へ出力する。
【0077】
車両CA1に搭載された無線装置10の処理手段3は、送受信手段2から位置情報メッセージPSM2を受け、その受けた位置情報メッセージPSM2から車両CA2の車両位置(λ,φ,h)、および擬似距離P2,1〜P2,6を抽出する。
【0078】
また、車両CA1に搭載された無線装置10の処理手段3は、位置情報メッセージPSM2の衛星のビットマップを参照して、車両CA2に搭載された無線装置10がGPS衛星R1〜Rmのうち、GPS衛星R1〜R6からGPS信号を受信可能であることを検知する。
【0079】
そうすると、車両CA1に搭載された無線装置10の処理手段3は、車両CA1に搭載された無線装置10がGPS信号を受信できるGPS衛星R1,R3〜R7と、車両CA2に搭載された無線装置10がGPS信号を受信できるGPS衛星R1〜R6とに基づいて、車両CA1に搭載された無線装置10と車両CA2に搭載された無線装置10との両方が受信可能なGPS信号を送信するGPS衛星R1,R3〜R6を抽出する。
【0080】
そして、車両CA1に搭載された無線装置10の処理手段3は、GPS衛星R1,R3〜R6を抽出したことに応じて、擬似距離P1,1,P1,3〜P1,7から擬似距離P1,1,P1,3〜P1,6を選択するとともに、擬似距離P2,1〜P2,6から擬似距離P2,1,P2,3〜P2,6を選択する。即ち、車両CA1に搭載された無線装置10の処理手段3は、車両CA1,CA2の両方が受信可能なGPS信号を送信するGPS衛星R1,R3〜R6と車両CA1,CA2との擬似距離P1,1,P1,3〜P1,6;P2,1,P2,3〜P2,6を選択する。
【0081】
その後、車両CA1に搭載された無線装置10の処理手段3は、擬似距離P1,1,P1,3〜P1,6に基づいて、擬似距離行列<P1>=[P1,1,P1,3,P1,4,P1,5,P1,6を生成する。また、車両CA1に搭載された無線装置10の処理手段3は、擬似距離P2,1,P2,3〜P2,6に基づいて、擬似距離行列<P2>=[P2,1,P2,3,P2,4,P2,5,P2,6を生成する。
【0082】
なお、この明細書においては、表記<A>は、行列Aを表す。
【0083】
引き続いて、車両CA1に搭載された無線装置10の処理手段3は、既に演算したGPS衛星R1,R3〜R6のECFF座標値(X,Y,Z),(X,Y,Z),(X,Y,Z),(X,Y,Z),(X,Y,Z)を次式を用いて地平直交座標値(E,N,U),(E,N,U),(E,N,U),(E,N,U),(E,N,U)に変換する。
【0084】
【数3】

【0085】
なお、式(3)において、(x,y,z)=rは、参照地点の座標値である。
【0086】
また、車両CA1に搭載された無線装置10の処理手段3は、車両CA1のECFF座標値からなる位置(x,y,z)を式(3)によって地平直交座標値(e,n,u)に変換する。
【0087】
車両CAiとGPS衛星Rj(jは1≦j≦mを満たす整数)との間の擬似距離をPijとし、GPS信号の伝搬時間の計測誤差(Δt)の擬似距離Pijへの影響をδ=c×Δtとし、電離層および対流圏のGPS信号の伝搬に対して生じる影響による擬似距離の誤差をεijとすると、固定直交座標系(ECFF座標系)において車両CAiとGPS衛星Rjとの間に次式が成立する。
【0088】
【数4】

【0089】
そして、車両CAiから全てのGPS衛星R1〜Rmへの真の距離を<d(r)>=[d(r),d(r),・・・,d(r)]とし、車両CAiから全てのGPS衛星R1〜Rmへの擬似距離を<P>=[Pi1,Pi2,Pi3,・・・,Pimとすると、式(4)は、次式になる。
【0090】
【数5】

【0091】
なお、式(5)において、行列<1>は、単位行列である。
【0092】
地平直交座標系においても、式(5)が成立し、車両CA1および車両CA2に対して次式が得られる。
【0093】
【数6】

【0094】
式(6)において、行列<d(r)>は、参照地点r=(x,y,z)からGPS衛星(無線装置10がGPS信号を受信しているGPS衛星)までの距離を表し、行列<D(r)>は、距離d(r)の変化割合を表す。また、rは、車両CA1の位置を表し、rは、車両CA2の位置を表す。
【0095】
そして、式(6)から次の2式が得られる。
【0096】
【数7】

【0097】
【数8】

【0098】
車両CA1に搭載された無線装置10の処理手段3は、ECFF座標値(x,y,z)を式(3)によって地平直交座標値(e,n,u)に変換すると、地図保持手段4から3次元電子地図を読み出し、その読み出した3次元電子地図を参照して、測位座標値(λ,φ,h)の(λ,φ)によって表わされる位置における高度h’を検出するとともに、測位座標値(λ,φ,h)の(λ,φ)によって表わされる位置における高度h’を検出する。
【0099】
そして、車両CA1に搭載された無線装置10の処理手段3は、高度h’から高度h’を減算して高度差h’−h’を求め、その求めた高度差h’−h’をu−u(=h’−h’)とする。
【0100】
そうすると、車両CA1に搭載された無線装置10の処理手段3は、高度差h’−h’を式(8)のu−uに代入して誤差δ12を求める。即ち、車両CA1に搭載された無線装置10の処理手段3は、3行×1列の行列からなる式(8)において、第3行を用いて誤差δ12を求める。
【0101】
その後、車両CA1に搭載された無線装置10の処理手段3は、その求めた誤差δ12を式(8)に代入し、式(8)の右辺の第1行および第2行を演算することにより、Δe12=e−eおよびΔn12=n−nを求める。
【0102】
そして、車両CA1に搭載された無線装置10の処理手段3は、その求めたΔe12=e−eおよびΔn12=n−nを車両CA1と車両CA2との相対位置とする。
【0103】
図7は、実施の形態1による隣接車両間の相対位置を求める方法を説明するためのフローチャートである。
【0104】
図7を参照して、一連の動作が開始されると、車両CAiに搭載された無線装置10は、4個以上のGPS衛星からGPS信号を受信するとともに、GPS信号の受信時刻を検出する(ステップS1)。
【0105】
そして、車両CAiに搭載された無線装置10は、GPS信号の送信時刻および受信時刻に基づいて、車両CAiとGPS衛星との擬似距離Pi,1〜Pi,jを演算する(ステップS2)。
【0106】
その後、車両CAiに搭載された無線装置10は、GPS信号に基づいて、式(1)を用いてGPS信号を送信したGPS衛星の位置を示すECFF座標値を演算する(ステップS3)。
【0107】
引き続いて、車両CAiに搭載された無線装置10は、擬似距離Pi,1〜Pi,jおよびGPS衛星のECFF座標値に基づいて車両CAiの位置を示すECFF座標値を演算する(ステップS4)。
【0108】
そして、車両CAiに搭載された無線装置10は、車両CAiのECFF座標値を式(2)を用いて測位座標値(λ,φ,h)に変換する(ステップS5)。
【0109】
そうすると、車両CAiに搭載された無線装置10は、擬似距離Pi,1〜Pi,j、車両CAiの測位座標値(λ,φ,h)およびGPS受信機5が受信可能なGPS信号を送信したGPS衛星(=GPS衛星のビットマップ)を含む位置情報メッセージ1を生成してブロードキャストする(ステップS6)。
【0110】
その後、車両CAiに搭載された無線装置10は、車両CAiに隣接する車両CAi+1に搭載された無線装置から位置情報メッセージ2を受信する(ステップS7)。
【0111】
そして、車両CAiに搭載された無線装置10は、位置情報メッセージ2から擬似距離Pi+1,1〜Pi+1,jおよび車両CAi+1の測位座標値(λi+1,φi+1,hi+1)を検出する(ステップS8)。
【0112】
引き続いて、車両CAiに搭載された無線装置10は、擬似距離Pi,1〜Pi,jおよび擬似距離Pi+1,1〜Pi+1,jに基づいて、車両CAiおよび車両CAi+1に搭載された2つの無線装置10が共通に受信可能なGPS信号を送信したGPS衛星との間の擬似距離Pi,1〜Pi,J,Pi+1,1〜Pi+1,Jを抽出する(ステップS9)。
【0113】
その後、車両CAiに搭載された無線装置10は、測位座標値(λ,φ,h)、測位座標値(λi+1,φi+1,hi+1)および3次元電子地図を用いて車両CAiの高度と車両CAi+1の高度との高度差を検出する(ステップS10)。
【0114】
そして、車両CAiに搭載された無線装置10は、車両CAiとGPS衛星との擬似距離P=[Pi,1〜Pi,J]、車両CAi+1とGPS衛星との擬似距離Pi+1=[Pi+1,1〜Pi+1,J]および高度差に基づいて、式(8)を用いて車両CAiと車両CAi+1との相対位置を演算する(ステップS11)。これによって、一連の動作が終了する。
【0115】
このように、この発明の実施の形態1においては、車両CAiとGPS衛星との擬似距離Pと車両CAi+1とGPS衛星との擬似距離Pi+1との差分を演算して車両CAiと車両CAi+1との相対位置を演算するので(式(8)およびステップS11参照)、電離層および対流圏の影響を抑制して相対位置が演算される。
【0116】
従って、実施の形態1によれば、隣接する車両間の相対位置の精度を高くできる。
【0117】
また、実施の形態1においては、高精度な3次元電子地図を用いて隣接車両間の高度差を求め、その求めた高度差を用いて隣接車両間の相対位置を求めるので、相対位置の精度を向上できる。
【0118】
更に、無線装置10が受信可能なGPS信号を送信したGPS衛星の個数が少ない場合(3個)でも、相対位置を算出できる。
【0119】
なお、実施の形態1においては、衛星のビットマップに基づいて、車両CA1に搭載された無線装置10と車両CA2に搭載された無線装置10とが共通に受信できるGPS信号を送信するGPS衛星を選択する処理手段3は、「選択手段」を構成する。
【0120】
また、実施の形態1においては、図7に示すフローチャートに従って車両CAiと車両CAi+1との相対位置を演算する処理手段3は、「演算手段」を構成する。
【0121】
更に、実施の形態1においては、擬似距離Pi,1〜Pi,j、および車両CAiの測位座標値(λ,φ,h)を演算する処理手段3は、「位置演算手段」を構成する。
【0122】
更に、実施の形態1においては、位置情報メッセージ2を受信する送受信手段2は、「受信手段」を構成する。
【0123】
[実施の形態2]
図8は、実施の形態2による無線装置の構成図である。図8を参照して、実施の形態2による無線装置10Aは、図1に示す無線装置10の処理手段3を処理手段3Aに代えたものであり、その他は、無線装置10と同じである。
【0124】
処理手段3Aは、処理手段3と同じ方法によって、無線装置10Aが搭載された車両CAiの時刻tにおけるECFF座標値(x(t),y(t),z(t))を演算する。
【0125】
そして、処理手段3Aは、式(3)を用いて、ECFF座標値(x(t),y(t),z(t))をENU座標値(e(t),n(t),u(t))に変換する。また、処理手段3Aは、式(2)を用いて、ECFF座標値(x(t),y(t),z(t))を測位座標値(λ(t),φ(t),h(t))に変換する。
【0126】
その後、処理手段3Aは、3次元電子地図を地図保持手段4から読み出し、その読み出した3次元電子地図を参照して測位座標値(λ(t),φ(t),h(t))の(λ(t),φ(t))によって示される位置の時刻tにおける斜度β(t)を検出する。また、処理手段3Aは、車両CAiに搭載された速度計から時刻tにおける車両CAiの速度v(t)を受け、車両CAiに搭載されたジャイロから時刻tにおける車両CAiの移動方向α(t)を受ける。
【0127】
そうすると、処理手段3Aは、ENU座標値(e(t),n(t),u(t))、速度v(t)、移動方向α(t)および斜度β(t)を次式に代入して時刻tにおける車両CAiの位置(e(t),n(t),u(t))を予測する。
【0128】
【数9】

【0129】
そして、処理手段3Aは、ECFF座標値(x(t),y(t),z(t))を参照地点としてENU座標値(e(t),n(t),u(t))を次式によってECFF座標値へ変換し、その変換したECFF座標値を式(2)を用いて更に測位座標値(λ(t),φ(t),h(t))に変換する。
【0130】
【数10】

【0131】
そうすると、処理手段3Aは、3次元電子地図を参照して、測位座標値(λ(t),φ(t),h(t))の(λ(t),φ(t))によって示される位置の高度h’を検出する。
【0132】
また、車両CAiに隣接する車両CAi+1に搭載された無線装置10Aの処理手段3Aは、GPS信号によって車両CAi+1の位置を測位できれば、その測位した位置情報を含む位置情報メッセージを車両CAiに搭載された無線装置10Aへ送信し、GPS信号によって車両CAi+1の位置を測位できなければ、上述した方法によって、車両CAi+1の時刻tにおける位置を予測し、その予測した位置を含む位置情報メッセージを車両CAiに搭載された無線装置10Aへ送信する。
【0133】
その結果、車両CAiに搭載された無線装置10Aの処理手段3Aは、車両CAi+1に搭載された無線装置10Aから受信した位置情報メッセージから位置情報(=測位座標値)を取り出し、その取り出した測位座標値および3次元電子地図に基づいて、上述した方法によって、車両CAi+1の高度hi+1’を検出する。
【0134】
そうすると、車両CAiに搭載された無線装置10Aの処理手段3Aは、擬似距離P=[Pi,1〜Pi,J]、擬似距離Pi+1=[Pi+1,1〜Pi+1,J]、GPS衛星のENU座標値、車両CAiのENU座標値、高度h’および高度hi+1’に基づいて、式(8)を用いて、車両CAiと車両CAi+1との相対位置を演算する。
【0135】
処理手段3Aは、その他、処理手段3と同じ機能を果たす。
【0136】
図9は、実施の形態2による隣接車両間の相対位置を求める方法を説明するためのフローチャートである。
【0137】
図9に示すフローチャートは、図7に示すフローチャートのステップS4,S5をステップS4A,4B,S5Aに代えたものであり、その他は、図7に示すフローチャートと同じである。
【0138】
図9を参照して、実施の形態2における相対位置を求める動作が開始されると、上述したステップS1〜ステップS3が順次実行される。
【0139】
そして、ステップS3の後、車両CAiに搭載された無線装置10Aの処理手段3Aは、擬似距離Pi,1〜Pi,jおよびGPS衛星のECFF座標値に基づいて、上述した方法によって車両CAiのECFF座標値を演算し、その演算したECFF座標値を時刻tにおける車両CAiのECFF座標値(t)とする(ステップS4A)。
【0140】
その後、車両CAiに搭載された無線装置10Aの処理手段3Aは、車両CAiのECFF座標値(t)を参照地点として、ECFF座標値(t)を式(3)によってENU座標値(t)に変換し、その変換したENU座標値(t)、車両CAiの速度v(t)、移動方向α(t)および斜度β(t)に基づいて、車両CAiの時刻tにおける位置(=ENU座標値(t))を予測する(ステップS4B)。
【0141】
引き続いて、車両CAiに搭載された無線装置10Aの処理手段3Aは、車両CAiのENU座標値(t)を式(10)を用いてECFF座標値(t)に変換し、その変換したECFF座標値(t)を式(2)を用いて測位座標値(λ(t),φ(t),h(t))に更に変換する(ステップS5A)。
【0142】
その後、上述したステップS6〜ステップS11が順次実行され、車両CAiと車両CAi+1との相対位置が演算される。
【0143】
なお、図9に示すフローチャートが実行される場合、車両CAi+1の測位座標値(λi+1(t),φi+1(t),hi+1(t))は、実測された測位座標値または式(9)を用いて予測された測位座標値からなる。
【0144】
このように、実施の形態2においては、車両CAiに搭載された無線装置10Aは、時刻tにおいて車両CAiの位置を実測でき、時刻tにおいて車両CAiの位置を実測できない場合、時刻tにおいて実測された車両CAiの位置を用いて時刻tにおける車両CAiの位置を予測し、その予測した位置を用いて車両CAiと車両CAi+1との相対位置を演算する。
【0145】
従って、実施の形態2によれば、3個のGPS衛星からのみGPS信号を受信でき、4個以上のGPS衛星からGPS信号を受信できない場合でも、車両CAiと車両CAi+1との相対位置を高精度に取得できる。
【0146】
また、実施の形態1においては、高精度な3次元電子地図を用いて隣接車両間の高度差を求め、その求めた高度差を用いて隣接車両間の相対位置を求めるので、相対位置の精度を向上できる。
【0147】
なお、実施の形態2においては、上述した方法によって時刻tにおける車両の位置を予測する処理手段3Aは、「位置予測手段」を構成する。
【0148】
また、実施の形態2においては、上述した方法によって相対位置を演算する処理手段3Aは、「演算手段」を構成する。
【0149】
その他は、実施の形態1と同じである。
【0150】
[実施の形態3]
図10は、実施の形態3による無線装置の構成図である。図10を参照して、実施の形態3による無線装置10Bは、図1に示す無線装置10の処理手段3を処理手段3Bに代えたものであり、その他は、無線装置10と同じである。
【0151】
なお、実施の形態3においては、位置情報メッセージは、図4に示す位置情報メッセージPSMのペイロード1に測位誤差σを追加した構成からなる。
【0152】
処理手段3Bは、カルマンフィルターを内蔵している。そして、処理手段3Bは、GPS受信機5から受けたGPS信号に基づいて、GPS衛星R1〜RmのECFF座標値、車両CAiとGPS衛星R1〜Rmとの擬似距離および車両CAiのECFF座標値を演算するとともに、その演算した車両CAiのECFF座標値をカルマンフィルターによって処理し、ECFF座標値の誤差σ_selfを検出する。
【0153】
その後、処理手段3Bは、式(2)を用いて車両CAiのECFF座標値を測位座標値に変換し、その変換した測位座標値、擬似距離および誤差σ_selfをメッセージ生成手段6へ出力する。
【0154】
また、処理手段3Bは、車両CAiに隣接する複数の車両に搭載された複数の無線装置10Bの各々から位置情報メッセージを受信し、その受信した位置情報メッセージに含まれる誤差σ_otherを検出する。
【0155】
そして、処理手段3Bは、誤差σ_selfが基準値σ_std以下であるとき、実施の形態1において説明した方法によって車両CAiと車両CAiに隣接する車両CAi+1との相対位置を演算する。なお、基準値σ_stdは、例えば、1mに設定される。
【0156】
一方、処理手段3Bは、誤差σ_selfが基準値σ_stdよりも大きいとき、誤差σ_otherの中から基準値σ_std以下である誤差σ_other_preを選択し、その選択した誤差σ_other_preを有する車両を参照車両として選択する。
【0157】
そして、処理手段3Bは、実施の形態1において説明した方法によって車両CAiと参照車両との相対位置を演算する。その後、処理手段3Bは、その演算した相対位置と、参照車両の絶対位置(=参照車両からの位置情報メッセージに含まれている車両位置)とに基づいて、車両CAiの絶対位置を演算する。
【0158】
また、処理手段3Bは、車両CAiの位置をGPS受信機5からのGPS信号に基づいて独自に測位できない場合も、上述した方法によって、車両CAiの絶対位置を演算する。
【0159】
処理手段3Bは、その他、処理手段3と同じ機能を果たす。
【0160】
処理手段3Bにおける測位誤差σおよび相対位置の誤差γの演算方法について説明する。
【0161】
上述した式(8)における[D(r・(D(r)]−1を行列<A>とすると、測位誤差σは、次式によって得られる。
【0162】
【数11】

【0163】
なお、式(11)において、σは、雑音の誤差であり、例えば、0.5mからなる。
【0164】
従って、処理手段3Bは、GPS衛星のENU座標値および車両CAiのenu座標値を用いて行列<A>(=[D(r・(D(r)]−1)を演算し(式(6)参照)、その演算した行列<A>を用いて測位誤差σを演算する。
【0165】
車両間の相対位置Δe,Δuは、ほぼ線形的に変わる。そして、Δeをxとし、Δuをyとすると、y=ax+bが成立する(a,bは定数)。
【0166】
そこで、処理手段3Bは、n(nは2以上の整数)個の(Δe,Δu)をy=ax+bに代入して定数a,bを求め、その求めた定数a,bと、車両間の相対位置(Δe,Δu)=(x,y)とを次式に代入して相対位置の誤差γを演算する。
【0167】
【数12】

【0168】
図11は、実施の形態3による車両の絶対位置を演算する方法を説明するためのフローチャートである。
【0169】
図11を参照して、車両の絶対位置を演算する動作が開始されると、車両CAiに搭載された無線装置10Bの処理手段3Bは、実施の形態1において説明した方法によって車両CAiとGPS衛星との擬似距離を演算する(ステップS21)。
【0170】
そして、車両CAiに搭載された無線装置10Bの処理手段3Bは、車両CAiの絶対位置を測位可能であるか否かを判定する(ステップS22)。より具体的には、車両CAiに搭載された無線装置10Bの処理手段3Bは、4個以上の擬似距離および4個以上のGPS衛星の位置を演算できたとき、車両CAiの絶対位置を測位可能であると判定し、4個よりも少ない個数の擬似距離および4個よりも少ない個数のGPS衛星の位置しか演算できないとき、車両CAiの絶対位置を測位不可能であると判定する。
【0171】
ステップS22において、車両CAiの絶対位置を測位不可能であると判定されたとき、一連の動作は、ステップS29へ移行する。
【0172】
一方、ステップS22において、車両CAiの絶対位置を測位可能であると判定されたとき、車両CAiに搭載された無線装置10Bの処理手段3Bは、車両CAiとGPS衛星との4個以上の擬似距離、および4個以上のGPS衛星の位置を用いて上述した方法によって車両CAiの位置情報を演算するとともに、車両CAiの位置情報の誤差σ_selfを検出する(ステップS23)。
【0173】
そして、車両CAiに搭載された無線装置10Bの処理手段3Bは、擬似距離、GPS衛星のビットマップ、車両CAiの位置情報および誤差σ_selfを含む位置情報メッセージ1を生成して送受信手段2へ出力し、送受信手段2は、アンテナ1を介して位置情報メッセージ1をブロードキャストする(ステップS24)。
【0174】
その後、車両CAiに搭載された無線装置10Bの送受信手段2は、車両CAiに隣接する車両に搭載された他の無線装置10Bから位置情報メッセージ2を受信し(ステップS25)、その受信した位置情報メッセージ2を処理手段3Bへ出力する。
【0175】
車両CAiに搭載された無線装置10Bの処理手段3Bは、送受信手段2から位置情報メッセージ2を受け、その受けた位置情報メッセージ2から擬似距離、位置情報および誤差σ_otherを検出する(ステップS26)。
【0176】
そして、車両CAiに搭載された無線装置10Bの処理手段3Bは、誤差σ_selfが基準値σ_std以下であるか否かを判定する(ステップS27)。
【0177】
ステップS27において、誤差σ_selfが基準値σ_std以下であると判定されたとき、車両CAiに搭載された無線装置10Bの処理手段3Bは、図7に示すフローチャートに従って車両CAiに隣接する車両と車両CAiとの相対位置を演算する(ステップS28)。
【0178】
一方、ステップS27において、誤差σ_selfが基準値σ_stdよりも大きいと判定されたとき、またはステップS22において、車両CAiの絶対位置を測位不可能であると判定されたとき、車両CAiに搭載された無線装置10Bの処理手段3Bは、誤差σ_otherから基準値σ_std以下である誤差σ_other_preを選択する(ステップS29)。
【0179】
その後、車両CAiに搭載された無線装置10Bの処理手段3Bは、誤差σ_other_preを有する車両を参照車両として選択する(ステップS30)。
【0180】
そうすると、車両CAiに搭載された無線装置10Bの処理手段3Bは、図7に示すフローチャートに従って車両CAiと参照車両との相対位置を演算する(ステップS31)。
【0181】
引き続いて、車両CAiに搭載された無線装置10Bの処理手段3Bは、その演算した相対位置と、参照車両の絶対位置(=参照車両からの位置情報メッセージ2に含まれる車両位置)とに基づいて、車両CAiの絶対位置を演算する(ステップS32)。
【0182】
そして、ステップS28またはステップS32の後、一連の動作は終了する。
【0183】
なお、図11に示すフローチャートにおいて、一連の動作がステップS27の“NO”からステップS29へ移行した場合、車両CAiに搭載された無線装置10Bの処理手段3Bは、ステップS31において、車両CAiのENU座標値を用いて車両CAiと参照車両との相対位置を演算する。
【0184】
一方、図11に示すフローチャートにおいて、一連の動作がステップS22の“NO”からステップS29へ移行した場合、車両CAiに搭載された無線装置10Bの処理手段3Bは、ステップS31において、参照車両のENU座標値を用いて車両CAiと参照車両との相対位置を演算する。この場合、車両CAiに搭載された無線装置10Bの処理手段3Bは、参照車両からの位置情報メッセージ2に含まれる車両位置が測位座標値によって表されているので、測位座標値を式(3)を用いてENU座標値へ変換して車両CAiと参照車両との相対位置を演算する。
【0185】
一連の動作がステップS22の“NO”からステップS29へ移行した場合、車両CAiに搭載された無線装置10Bの処理手段3Bは、車両CAiの位置情報を演算できていないので、参照車両の位置情報を用いて車両CAiと参照車両との相対位置を演算することにしたものである。
【0186】
また、図11に示すフローチャートにおいては、参照車両として2台以上の車両が選択される場合もあれば、1台の参照車両が選択される場合もある。
【0187】
図11のステップS32において車両CAiの絶対位置を演算する方法について説明する。
【0188】
車両CA1が2台の車両CA2,CA3を参照車両として選択した場合、上述した方法によって演算した車両CA1の絶対位置(e’,n’)は、次式によって表される。
【0189】
【数13】

【0190】
なお、式(13)において、e31は、車両CA1と車両CA3との相対位置および車両CA3の絶対位置を用いて演算された車両CA1の絶対位置のENU座標値のE成分であり、e21は、車両CA1と車両CA2との相対位置および車両CA2の絶対位置を用いて演算された車両CA1の絶対位置のENU座標値のE成分であり、n31は、車両CA1と車両CA3との相対位置および車両CA3の絶対位置を用いて演算された車両CA1の絶対位置のENU座標値のN成分であり、n21は、車両CA1と車両CA2との相対位置および車両CA2の絶対位置を用いて演算された車両CA1の絶対位置のENU座標値のN成分であり、Δe31は、車両CA1と車両CA3との相対位置のENU座標値のE成分であり、Δe21は、車両CA1と車両CA2との相対位置のENU座標値のE成分であり、Δn31は、車両CA1と車両CA3との相対位置のENU座標値のN成分であり、Δn21は、車両CA1と車両CA2との相対位置のENU座標値のN成分であり、e,e,eは、それぞれ、車両CA1,CA2,CA3の絶対位置のENU座標値のE成分であり、n,n,nは、それぞれ、車両CA1,CA2,CA3の絶対位置のENU座標値のN成分であり、γは、相対位置の誤差である。
【0191】
また、参照車両が1台である場合、式(13)において、e31,n31,σ31の項を削除した式によって車両CA1の絶対位置が演算される。
【0192】
更に、参照車両が3台である場合、式(13)において、e41,n41,σ41の項を追加した式によって車両CA1の絶対位置が演算される。参照車両が4台以上である場合も、同様である。
【0193】
上述した方法によって求めた絶対位置の測位誤差について説明する。γ=1、σ=5、σ=σ=1とすると、(σ=25、(σ31=2、(σ21=2である。そうすると、車両CA1における測位誤差σ’は、(2/2+2/2+5/25)/(1/2+1/2+1/25)=2.1となる。その結果、測位誤差は、5mから2.1mへ減少する。
【0194】
上述したように、実施の形態3によれば、車両CAiに搭載された無線装置10Bは、独自に車両CAiの位置を測位できない場合、または測位誤差が基準値σ_stdよりも大きい場合、基準値σ_std以下の測位誤差を有する参照車両と車両CAiとの相対位置および参照車両の絶対位置を用いて車両CAiの絶対位置を演算する。そして、参照車両と車両CAiとの相対位置は、電離層および対流圏の影響を抑制して演算された精度の高い位置である。
【0195】
従って、実施の形態3によれば、絶対位置の精度を向上できる。
【0196】
なお、実施の形態2においては、上述した方法によって車両の絶対位置を演算する処理手段3Bは、「演算手段」を構成する。
【0197】
その他は、実施の形態1と同じである。
【0198】
[実施の形態4]
図12は、実施の形態4による無線装置の構成図である。図12を参照して、実施の形態4による無線装置10Cは、図1に示す無線装置10の処理手段3を処理手段3Cに代えたものであり、その他は、無線装置10と同じである。
【0199】
処理手段3Cは、無線装置10Cが搭載された車両CAiとGPS衛星との擬似距離を上述した方法によって演算する。また、処理手段3Cは、上述した方法によって、車両CAiの測位座標値(λ,φ,h)およびENU座標値(e,n,u)を演算する。
【0200】
そうすると、処理手段3Cは、地図保持手段4から3次元電子地図を読み出し、その読み出した3次元電子地図および測位座標値(λ,φ,h)に基づいて、(λ,φ)によって示される位置における高度h’を3次元電子地図から検出する。そして、処理手段3Cは、高度差Δu=u’−u=h’−hを演算する。
【0201】
上述した式(5)は、参照地点r=(x,y,z)では、次式のように線形で表現される。
【0202】
【数14】

【0203】
なお、式(5)から式(14)への変形においては、εは、無視されている。
【0204】
式(14)を変形すると、次式が得られる。
【0205】
【数15】

【0206】
式(15)によれば、車両CAiにおいては、高度差Δuと擬似距離誤差ΔPとの関係は、次式のようになる。
【0207】
【数16】

【0208】
電離層により発生した誤差を考慮すると、各車両における擬似距離誤差は、ほぼ同じであるので、式(16)が成立する。
【0209】
無線装置10CがGPS信号を受信できるGPS衛星の個数がm個であれば、k≧mを満たすk台の車両の高度差を用いれば、式(16)からΔPを求めることができる。
【0210】
そこで、式(16)からΔPを求める方法について説明する。図13は、実施の形態4における位置情報メッセージの概念図である。位置情報メッセージPSM’は、位置情報メッセージPSMのペイロード2に擬似距離誤差を追加した構成からなる。そして、擬似距離誤差は、オプションである。
【0211】
5台の車両CA1〜CA5が存在する場合を想定する。車両CA1〜CA5にそれぞれ搭載された5個の無線装置10Cは、それぞれ、位置情報メッセージPSM’1〜PSM’5を生成してブロードキャストする。
【0212】
車両CA1に搭載された無線装置10Cの送受信手段2は、アンテナ1を介して位置情報メッセージPSM’2〜PSM’5を受信し、その受信した位置情報メッセージPSM’2〜PSM’5を処理手段3Cへ出力する。
【0213】
車両CA1に搭載された無線装置10Cの処理手段3Cは、位置情報メッセージPSM’2〜PSM’5を送受信手段2から受ける。そして、車両CA1に搭載された無線装置10Cの処理手段3Cは、位置情報メッセージPSM’2〜PSM’5からそれぞれ測位座標値(λ,φ,h)、測位座標値(λ,φ,h)、測位座標値(λ,φ,h)および測位座標値(λ,φ,h)を検出する。
【0214】
そうすると、車両CA1に搭載された無線装置10Cの処理手段3Cは、測位座標値(λ,φ,h)および3次元電子地図に基づいて、(λ,φ)によって示される位置における高度h’を3次元電子地図から検出し、高度差Δu=u’−u=h’−hを演算する。
【0215】
また、車両CA1に搭載された無線装置10Cの処理手段3Cは、同様にして、高度差Δu=u’−u=h’−h、高度差Δu=u’−u=h’−h、高度差Δu=u’−u=h’−h、および高度差Δu=u’−u=h’−hを演算する。
【0216】
そして、車両CA1に搭載された無線装置10Cの処理手段3Cは、擬似距離誤差ΔPを求めるための行列<D(r)>が車両CA1〜CA5間で非常に似ているので、車両CA1〜CA5相互間で異なるGPS衛星を選択して擬似距離誤差ΔPを求める。
【0217】
例えば、車両CA1に搭載された無線装置10Cの処理手段3Cは、位置情報メッセージPSM’1〜PSM’5の衛星のビットマップを参照して、車両CA1用のGPS衛星としてGPS衛星R2〜R5を選択し、車両CA2用のGPS衛星としてGPS衛星R1,R3〜R5を選択し、車両CA3用のGPS衛星としてGPS衛星R1,R2,R4,R5を選択し、車両CA4用のGPS衛星としてGPS衛星R1,R2,R3,R5を選択し、車両CA5用のGPS衛星としてGPS衛星R1〜R4を選択する。
【0218】
その後、車両CA1に搭載された無線装置10Cの処理手段3Cは、GPS衛星R1〜R5の全てからGPS信号を受信できるので、GPS衛星R1〜R5からそれぞれ受信したGPS信号GPS1〜GPS5に基づいて、上述した方法によって、GPS衛星R1〜R5のECFF座標値(R1)〜ECFF座標値(R5)を演算し、その演算したECFF座標値(R1)〜ECFF座標値(R5)および擬似距離P1,1,P1,2,P1,3,P1,4,P1,5に基づいて、車両CA1のECFF座標値(CA1)を演算する。
【0219】
そして、車両CA1に搭載された無線装置10Cの処理手段3Cは、ECFF座標値(R1)〜ECFF座標値(R5)を式(3)によってENU座標値(E,N,U)〜ENU座標値(E,N,U)に変換し、ECFF座標値(CA1)を式(3)によってENU座標値(e,n,u)に変換する。
【0220】
また、車両CA1に搭載された無線装置10Cの処理手段3Cは、次式を用いて測位座標値(λ,φ,h)、測位座標値(λ,φ,h)、測位座標値(λ,φ,h)および測位座標値(λ,φ,h)をそれぞれECFF座標値(CA2)〜ECFF座標値(CA5)に変換する。
【0221】
【数17】

【0222】
そして、車両CA1に搭載された無線装置10Cの処理手段3Cは、式(3)によって、ECFF座標値(CA2)〜ECFF座標値(CA5)をそれぞれENU座標値(e,n,u)、ENU座標値(e,n,u)、ENU座標値(e,n,u)、およびENU座標値(e,n,u)に変換する。
【0223】
引き続いて、車両CA1に搭載された無線装置10Cの処理手段3Cは、ECFF座標値(CA1)を参照地点rとして、ENU座標値(E,N,U)〜ENU座標値(E,N,U)およびENU座標値(e,n,u)を式(6)のd’(e),d’(n),d’(u)の式に代入して、d12’,d13’,d14’,d15’を演算する。なお、d12’,d13’,d14’,d15’は、車両CA1と4個以上のGPS衛星との真の距離の参照地点における変化割合である。
【0224】
また、車両CA1に搭載された無線装置10Cの処理手段3Cは、ECFF座標値(CA1)を参照地点rとして、ENU座標値(E,N,U),(E,N,U)〜(E,N,U)およびENU座標値(e,n,u)を式(6)のd’(e),d’(n),d’(u)の式に代入して、d21’,d23’,d24’,d25’を演算する。なお、d21’,d23’,d24’,d25’は、車両CA2と4個以上のGPS衛星との真の距離の参照地点における変化割合である。
【0225】
更に、車両CA1に搭載された無線装置10Cの処理手段3Cは、ECFF座標値(CA1)を参照地点rとして、ENU座標値(E,N,U),(E,N,U),(E,N,U),(E,N,U)およびENU座標値(e,n,u)を式(6)のd’(e),d’(n),d’(u)の式に代入して、d31’,d32’,d34’,d35’を演算する。なお、d31’,d32’,d34’,d35’は、車両CA3と4個以上のGPS衛星との真の距離の参照地点における変化割合である。
【0226】
更に、車両CA1に搭載された無線装置10Cの処理手段3Cは、ECFF座標値(CA1)を参照地点rとして、ENU座標値(E,N,U),(E,N,U),(E,N,U),(E,N,U)およびENU座標値(e,n,u)を式(6)のd’(e),d’(n),d’(u)の式に代入して、d41’,d42’,d43’,d45’を演算する。なお、d41’,d42’,d43’,d45’は、車両CA3と4個以上のGPS衛星との真の距離の参照地点における変化割合である。
【0227】
更に、車両CA1に搭載された無線装置10Cの処理手段3Cは、ECFF座標値(CA1)を参照地点rとして、ENU座標値(E,N,U)〜E,N,U)およびENU座標値(e,n,u)を式(6)のd’(e),d’(n),d’(u)の式に代入して、d51’,d52’,d53’,d54’を演算する。なお、d51’,d52’,d53’,d54’は、車両CA3と4個以上のGPS衛星との真の距離の参照地点における変化割合である。
【0228】
そうすると、車両CA1に搭載された無線装置10Cの処理手段3Cは、d12’,d13’,d14’,d15’;d21’,d23’,d24’,d25’;d31’,d32’,d34’,d35’;d41’,d42’,d43’,d45’;d51’,d52’,d53’,d54’および高度差Δu〜Δuを式(18)に代入して擬似距離誤差ΔPを演算する。
【0229】
【数18】

【0230】
その後、車両CA1に搭載された無線装置10Cの処理手段3Cは、擬似距離P1,1,P1,2,P1,3,P1,4,P1,5から擬似距離誤差ΔPを減算して補正擬似距離P1,1’,P1,2’,P1,3’,P1,4’,P1,5’を求める。
【0231】
そして、車両CA1に搭載された無線装置10Cの処理手段3Cは、GPS衛星R1〜R5のECFF座標値(R1)〜ECFF座標値(R5)と、補正擬似距離P1,1’,P1,2’,P1,3’,P1,4’,P1,5’とに基づいて、車両CA1のECFF座標値(CA1)を絶対位置として演算する。より具体的には、車両CA1に搭載された無線装置10Cの処理手段3Cは、ECFF座標値(R1)〜ECFF座標値(R5)をそれぞれ中心とする半径が補正擬似距離P1,1’,P1,2’,P1,3’,P1,4’,P1,5’に相当する5個の球が1点で交わるときの交点の座標値を演算することによって、車両CA1の絶対位置を演算する。
【0232】
また、車両CA2〜CA5に搭載された無線装置10Cの処理手段3Cも、上述した方法によって、車両CA2〜CA5の絶対位置を演算する。
【0233】
なお、上記においては、車両CA1〜CA5に搭載された5個の無線装置10Cの全てが擬似距離誤差ΔPを演算すると説明したが、実施の形態4においては、これに限らず、車両CA1〜CA5に搭載された5個の無線装置10Cのうちの1個の無線装置10Cが擬似距離誤差ΔPを演算して他の無線装置10Cへ送信するようにしてもよい。
【0234】
この場合、例えば、最も小さいIDを有する車両CA1に搭載された無線装置10Cが上述した方法によって擬似距離誤差ΔPを演算し、その演算した擬似距離誤差ΔPを他の無線装置10Cへブロードキャストする。そして、他の無線装置10Cは、擬似距離誤差ΔPを受信し、その受信した擬似距離誤差ΔPを用いて上述した方法によって自己が搭載された車両の絶対位置を演算する。
【0235】
従って、実施の形態4による無線装置は、上述した方法によって擬似距離誤差ΔPを演算し、その演算した擬似距離誤差ΔPを用いて擬似距離を補正し、その補正した補正擬似距離を用いて自己が搭載された車両の絶対位置を演算するものであればよい。
【0236】
図14は、実施の形態4による車両の絶対位置を求める方法を説明するためのフローチャートである。
【0237】
図14を参照して、一連の動作が開始されると、車両CAiに搭載された無線装置10Cは、擬似距離誤差ΔPを取得する(ステップS41)。この場合、車両CAiに搭載された無線装置10Cは、上述した方法によって擬似距離誤差ΔPを演算することにより擬似距離誤差ΔPを取得してもよく、他の無線装置10Cが演算した擬似距離誤差ΔPを他の無線装置10Cから受信することにより擬似距離誤差ΔPを取得してもよい。
【0238】
ステップS41の後、車両CAiに搭載された無線装置10Cは、車両CAiにおける擬似距離Pから擬似距離誤差ΔPを減算して補正擬似距離P’を演算する(ステップS42)。
【0239】
そして、車両CAiに搭載された無線装置10Cは、GPS衛星RjのECFF座標値(Rj)と補正擬似距離P’とに基づいて、車両CAiの絶対位置を演算する(ステップS43)。これによって、一連の動作は終了する。
【0240】
上述したように、実施の形態4においては、擬似距離Pから擬似距離の誤差ΔPを減算して補正擬似距離P’を演算し、その演算した補正擬似距離P’を用いて各車両の絶対位置を演算する。その結果、車両CAiの絶対位置は、精度の高い補正擬似距離を用いて演算される。
【0241】
従って、各車両の絶対位置の精度を実施の形態3における各車両の絶対位置よりも高くできる。
【0242】
なお、実施の形態4においては、上述した方法によって絶対位置を演算する処理手段3Cは、「演算手段」を構成する。
【0243】
その他は、実施の形態1と同じである。
【0244】
なお、上述した実施の形態1においては、実施の形態3,4によって演算した絶対位置を用いて隣接する車両間の相対位置を演算してもよい。
【0245】
また、上記においては、無線装置10,10A,10B,10Cは、車両に搭載されると説明したが、この発明の実施の形態においては、これに限らず、無線装置10,10A,10B,10Cは、自動二輪車、自転車および人に搭載されてもよく、一般的には、移動体に搭載されていればよい。
【0246】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0247】
この発明は、精度の高い位置情報を取得可能な無線装置に適用される。
【符号の説明】
【0248】
1 アンテナ、2 送受信手段、3,3A,3B,3C 処理手段、4 地図保持手段、5 GPS受信機、6 メッセージ生成手段、10,10A,10B,10C 無線装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の移動体に搭載され、前記第1の移動体に隣接する第2の移動体と前記第1の移動体との相対位置または前記第1の移動体の絶対位置を求める無線装置であって、
GPS衛星からGPS信号を受信するGPS受信機と、
地球を表す楕円体からの高度、経度および緯度に道路の斜度を追加した座標値を地図上における各移動体の位置とする3次元電子地図を保持する地図保持手段と、
前記GPS受信機によって受信されたGPS信号に基づいて、当該無線装置と前記第2の移動体に搭載された他の無線装置との両方が受信できるGPS信号を送信するm(mは、4以上の整数)個のGPS衛星を選択する選択手段と、
前記GPS受信機が前記m個のGPS衛星から受信したm個のGPS信号に基づいて、参照地点を原点とし、かつ、前記参照地点から東方向、北方向および地球を表す楕円体に垂直な方向を向いた3個の軸によって規定される地平直交座標系において、前記m個のGPS衛星と前記第1の移動体との距離を示す第1の擬似距離と、前記m個のGPS衛星と前記第2の移動体との距離を示す第2の擬似距離とを演算するとともに、その演算した第1の擬似距離と第2の擬似距離との擬似距離差を演算し、前記経度および前記緯度によって示される前記第1の移動体の位置における前記第1の移動体の高度と前記経度および前記緯度によって示される前記第2の移動体の位置における前記第2の移動体の高度とを前記3次元電子地図を参照して検出し、その検出した第1の移動体の高度と前記第2の移動体の高度との差を前記地平直交座標系において前記地球を表す楕円体に垂直な方向における前記第1の移動体と前記第2の移動体との相対位置成分として演算し、その演算した相対位置成分と前記演算した擬似距離差とに基づいて前記第1の擬似距離の誤差と前記第2の擬似距離の誤差との誤差差分を演算し、その演算した誤差差分を前記擬似距離差から減算し、その減算結果に前記参照地点から前記GPS衛星までの真の距離の誤差を示す行列の逆行列を乗算して前記地平直交座標系の前記東方向および前記北方向における前記第1の移動体と前記第2の移動体との相対位置を演算する演算手段とを備える無線装置。
【請求項2】
前記GPS受信機が前記m個のGPS衛星から受信したm個のGPS信号に基づいて、前記高度、前記経度および前記緯度からなる測位座標系における前記第1の移動体の位置を示す第1の測位位置情報と、前記第1の擬似距離とを演算する位置演算手段と、
前記測位座標系における前記第2の移動体の位置を示す第2の測位位置情報と前記第2の擬似距離とを含む位置情報メッセージを前記他の無線装置から受信する受信手段とを更に備え、
前記演算手段は、前記位置演算手段によって演算された前記第1の擬似距離と前記位置情報メッセージに含まれる前記第2の擬似距離とに基づいて前記擬似距離差を演算し、前記位置演算手段によって演算された前記第1の測位位置情報および前記3次元電子地図に基づいて前記第1の測位位置情報に含まれる経度および緯度によって示される位置における前記第1の移動体の高度を検出し、前記位置情報メッセージに含まれる前記第2の測位位置情報および前記3次元電子地図に基づいて前記第2の測位位置情報に含まれる経度および緯度によって示される位置における前記第2の移動体の高度を検出する、請求項1に記載の無線装置。
【請求項3】
前記GPS受信機が前記m個のGPS衛星から受信したm個のGPS信号に基づいて、地球の自転軸の北極方向をz軸とし、前記z軸に垂直なグリニッジ子午線の方向をx軸とし、前記z軸および前記x軸に直交するように右手系を用いて決定された方向をy軸とする固定直交座標系において第1のタイミングにおける前記第1の移動体の位置を示す第1の固定位置情報を演算し、その演算した第1の固定位置情報を参照地点として前記地平直交座標において前記第1のタイミングにおける前記第1の移動体の位置を示す第1の地平位置情報を演算し、その演算した第1の地平位置情報と前記第1の移動体の速度および移動方法とを用いて前記第1のタイミングの後の第2のタイミングにおける前記第1の移動体の位置を示す第2の地平位置情報を予測する位置予測手段と、
前記測位座標系における前記第2の移動体の位置を示す第2の測位位置情報と前記第2の擬似距離とを含む位置情報メッセージを前記他の無線装置から受信する受信手段を更に備えを更に備え、
前記演算手段は、前記第2の地平位置情報を前記固定直交座標系において前記第1の移動体の位置を示す第2の固定位置情報に変換し、その変換した第2の固定位置情報を前記測位座標系において前記第1の移動体の位置を示す第1の測位位置情報に更に変換し、その変換した第1の測位位置情報および前記3次元電子地図に基づいて前記第1の測位位置情報に含まれる経度および緯度によって示される位置における高度を前記第1の移動体の高度として検出するとともに、前記位置情報メッセージに含まれる前記第2の測位位置情報および前記3次元電子地図に基づいて前記第2の測位位置情報に含まれる経度および緯度によって示される位置における高度を前記第2の移動体の高度として検出する、請求項1に記載の無線装置。
【請求項4】
前記第2の測位位置情報は、前記他の無線装置において実測された測位位置情報または前記他の無線装置において予測された測位位置情報からなる、請求項3に記載の無線装置。
【請求項5】
前記演算手段は、更に、前記演算した相対位置と、前記第2の移動体の絶対位置とに基づいて前記第1の移動体の絶対位置を演算する、請求項1に記載の無線装置。
【請求項6】
第1の移動体に搭載され、参照地点を原点とし、かつ、前記参照地点から東方向、北方向および地球を表す楕円体に垂直な方向を向いた3個の軸によって規定される地平直交座標系において前記第1の移動体の絶対位置を求める無線装置であって、
GPS衛星からGPS信号を受信するGPS受信機と、
地球を表す楕円体からの高度、経度および緯度に道路の斜度を追加した座標値を地図上における各移動体の位置とする3次元電子地図を保持する地図保持手段と、
前記GPS受信機が受信したGPS信号に基づいて、前記地平直交座標系において、4個以上のGPS衛星と前記第1の移動体との距離を示す第1の擬似距離を演算し、前記第1の移動体に隣接するk(kは4以上の整数)個の第2の移動体および前記第1の移動体とGPS衛星群との前記地平直交座標系における擬似距離の誤差を前記第1の擬似距離から減算して補正された第1の補正擬似距離を演算し、その演算した第1の補正擬似距離と前記4個以上のGPS衛星の位置とに基づいて前記第1の移動体の絶対位置を演算する演算手段とを備え、
前記擬似距離の誤差は、前記高度、前記経度および前記緯度からなる測位座標系における前記第1の移動体の位置を示す第1の測位位置情報と前記3次元電子地図とに基づいて検出された前記第1の移動体の第1の高度差と、前記k個の第2の移動体の前記測位座標系における位置を示すk個の第2の測位位置情報および前記3次元電子地図に基づいて検出された前記k個の第2の移動体のk個の第2の高度差と、前記第1の移動体と前記4個以上のGPS衛星との第1の真の距離の前記参照地点における変化割合である第1の変化割合と、前記k個の第2の移動体の各々と4個以上のGPS衛星との真の距離であるk個の第2の真の距離の前記参照地点における変化割合であるk個の第2の変化割合とに基づいて求められ、
前記第1の真の距離および前記k個の第2の真の距離の対象となる4個以上のGPS衛星は、前記第1の真の距離および前記k個の第2の真の距離の相互間で異なる、無線装置。
【請求項7】
前記演算手段は、更に、前記k個の第2の高度差と、前記第1の高度差と、前記第1の真の距離と、前記k個の第2の真の距離とに基づいて前記擬似距離の誤差を演算し、その演算した擬似距離の誤差を用いて前記第1の移動体の絶対位置を演算する、請求項6に記載の無線装置。
【請求項8】
前記k個の第2の移動体のうちの任意の1つの第2の移動体から前記擬似距離の誤差を受信する受信手段を更に備え、
前記演算手段は、更に、前記受信手段によって受信された擬似距離の誤差を用いて前記第1の移動体の絶対位置を演算する、請求項6に記載の無線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−33413(P2011−33413A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178425(P2009−178425)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度独立行政法人情報通信研究機構、研究テーマ「高レスポンスマルチホップ自律無線通信システムの研究開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(393031586)株式会社国際電気通信基礎技術研究所 (905)
【Fターム(参考)】