説明

無線通信デバイスの製造方法

【課題】製造が効率的で、アンテナと無線IC素子との接続信頼性の高い無線通信デバイスの製造方法を得る。
【解決手段】基材シート10に金属材を含む導電性インクによってアンテナ用パターン21及び接合用パターン25を形成するパターン形成工程と、接合用パターン25に無線IC素子30を搭載した状態で、アンテナ用パターン21及び接合用パターン25を熱処理して金属化するとともに、無線IC素子30の端子電極31,32と接合用パターン25とを一体化する熱処理工程とを備えた無線通信デバイスの製造方法。パターン形成工程では、接合用パターン25の厚みをアンテナ用パターン21の厚みよりも大きく形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信デバイスの製造方法、特にRFID(Radio Frequency Identification)システムに用いられる無線通信デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、物品の情報管理システムとして、電磁界を発生するリーダライタと、物品に付されたRFIDタグ(無線通信デバイスとも称する)とを電磁界を利用した非接触方式で通信し、所定の情報を伝達するRFIDシステムが実用化されている。このRFIDタグは、所定の情報を記憶し、所定の無線信号を処理する無線ICチップと、高周波信号の送受信を行うアンテナとを備え、管理対象となる種々の物品(あるいはその包装材)に貼着して使用される。
【0003】
この種のRFIDタグとして、特許文献1には、アンテナをPETフィルム上に金属箔で形成し、無線ICチップをこのアンテナの一端に金バンプを介して超音波接合によって固定する接合方法が記載されている。しかし、この接合方法では、超音波を利用しているので、アンテナと無線ICチップとの接合に時間を要し、また、超音波によって無線ICチップがダメージを受けてしまうこともある。
【0004】
特許文献2には、シート上に銀ペーストでアンテナ用パターンを印刷し、該パターンの一端に無線ICチップを載置した後、銀ペーストを加熱硬化させるとともに、無線ICチップとアンテナとを機械的・電気的に接続する製造方法が記載されている。この方法では、アンテナ用パターンの形成と無線ICチップとの実装を同じ工程で行うことができる。しかしながら、例えば、銀ペーストの印刷厚みが薄いと、無線ICチップとアンテナ用パターンとの接続信頼性が低下することがある。即ち、RFIDタグに可撓性を付与するには、アンテナを薄くしてアンテナ自身に可撓性を付与することが必要となるが、薄いと無線ICチップとの接続信頼性に欠けることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−007511号公報
【特許文献2】特開2004−013733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、製造が効率的で、アンテナと無線IC素子との接続信頼性の高い無線通信デバイスの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態である無線通信デバイスの製造方法は、
基材シートに金属材を含む導電性インクによってアンテナ用パターン及び接合用パターンを形成するパターン形成工程と、
前記接合用パターンに無線IC素子を搭載した状態で、前記アンテナ用パターン及び前記接合用パターンを熱処理して金属化するとともに、前記無線IC素子の端子電極と前記接合用パターンとを一体化する熱処理工程と、
を備え、
前記パターン形成工程では、前記接合用パターンの厚みを前記アンテナ用パターンの厚みよりも大きく形成すること、
を特徴とする。
【0008】
前記無線通信デバイスの製造方法においては、パターン形成工程と熱処理工程とが連続的に行われるため、換言すれば、パターンの金属化と無線IC素子の接合が同時に行われるため、効率的である。しかも、アンテナ用パターンを比較的薄く形成するのでデバイスの可撓性を損なうことはなく、接合用パターンを比較的厚く形成するので、該接合用パターンと無線IC素子の端子電極との機械的・電気的あるいは電磁界的な接続信頼が向上する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、製造が効率的で、アンテナと無線IC素子との接続信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施例である無線通信デバイスの製造工程を示し、(A)はパターン形成工程を示す説明図、(B)は形成されたパターンを示す平面図、(C)はその断面図である。
【図2】図1に続く無線通信デバイスの製造工程を示し、(A)は素子実装工程を示す説明図、(B)は素子が実装された状態を示す平面図、(C)はその断面図である。
【図3】第1実施例である無線通信デバイスの製造工程を示し、(A)は基材シート上に形成されたパターンの詳細を示す断面図、(B)は該パターンと実装前の無線ICチップとを示す断面図、(C)は該パターン上に無線ICチップを実装した状態を示す断面図である。
【図4】第2実施例である無線通信デバイスの製造工程を示し、(A)は形成されたパターンを示す平面図、(B)はその断面図である。
【図5】図4に続く無線通信デバイスの製造工程を示し、(A)は素子を実装した状態を示す平面図、(B)はその断面図、(C)は素子を封止した状態を示す断面図である。
【図6】接合用パターンの変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る無線通信デバイスの製造方法の実施例について添付図面を参照して説明する。なお、各図において、共通する部品、部分は同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
(第1実施例、図1〜図3参照)
第1実施例である無線通信デバイスの製造方法は、図1及び図2に示すように、概略、基材シート10に金属材を含む導電性インクによってアンテナ用パターン21及び接合用パターンを形成するパターン形成工程と、接合用パターン25に無線IC素子30を搭載した状態で、アンテナ用パターン21及び接合用パターン25を熱処理して金属化するとともに、無線IC素子30の入出力端子電極31,32と接合用パターン25とを一体化する熱処理工程と、を備えている。そして、パターン形成工程では、接合用パターン25の厚みT1(図3(A)参照)をアンテナ用パターン21の厚みT2よりも大きく形成する。
【0013】
基材シート10は、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)などの可撓性を有する樹脂製シート、あるいは、可撓性を有する紙製シートが用いられる。なお、基材シート10はリジッドなものであってもよい。導電性インクは、銀、銅などの微細金属粒子を有機系や水系などの溶媒中に分散したものであり、必要に応じてバインダ樹脂や分散剤などが添加されている。例えば、平均粒径(D50)が1〜10nmのAgやCu粉末を含むペーストを好適に用いることができる。この導電性インクはインクジェット法によってノズル15(図1(A)参照)から吐出される。ノズル15の移動速度及び吐出量を制御することにより塗布厚みT1,T2を調整することができる。
【0014】
アンテナ用パターン21は、基材シート10上に、ミアンダ状のダイポール型アンテナとして機能するように形成され、中央部分で対向する位置には矩形状の接合用パターン25が形成される。接合用パターン25の厚みT1はアンテナ用パターン21の厚みT2よりも大きく、厚みT1,T2の調整は前述のようにノズル15の移動速度及び吐出量を制御することによって行われる。接合用パターン25の厚みT1は例えば5〜40μm、アンテナ用パターン21の厚みT2は例えば2〜15μmである。なお、基材シート10が紙製であると、導電性インクが紙に浸み込むので、浸み込み量を考慮して導電性インクの噴出量を調整する必要がある。
【0015】
次に、図2(C)に示すように、接合用パターン25上に無線IC素子30を搭載する。このとき、導電性インクは未だ金属化しておらず、樹脂分が残留しており、比較的柔らかい状態になっている。即ち、無線IC素子30をその裏面に設けた入出力端子電極31,32が接合用パターン25に接するように搭載すると、端子電極31,32が接合用パターン25に緩く固定される。この仮固定状態で、アンテナ用パターン21及び接合用パターン25を熱処理(例えば、150〜250℃程度)すると、パターン21,25から揮発成分が飛散するとともに金属粒子どうしがネッキングしてパターン21,25が金属化する。これにて、無線IC素子30の裏面に形成されている入出力端子電極31,32が接合用パターン25に機械的・電気的に接続される。入出力端子電極31,32は、図3(B)に示すように、断面円弧状であり、図3(C)に示すように、接合用パターン25に半ば埋め込まれた状態で接合される。このとき、基材シート10の表面と無線IC素子30の裏面との間隔はT3(図3(C)参照)である。
【0016】
なお、パターン21,25を金属化すると比抵抗が小さくなるため、パターン21,25から有機成分を全て除去することが好ましいが、熱処理後のパターン21,25に多少の有機成分が残存していても構わない。
【0017】
ちなみに、無線IC素子30は、UHF帯の通信に用いられるものであり、シリコン半導体集積回路チップとして構成されており、クロック回路、ロジック回路、メモリ回路などを含み、必要な情報がメモリされている。なお、無線IC素子30としては、ICチップと給電回路を含む給電回路基板とを一体化したものであってもよい。
【0018】
この種の無線通信デバイスは、様々な形状をなす物品の表面に貼着されることから、可撓性を有していることが好ましい。基材シート10はこの条件を満足するように選択される。この場合、アンテナ用パターン21も極力薄くしてアンテナ自身に可撓性を付与することが必要となる。一方、アンテナ用パターン21と一体的に形成される接合用パターン25もアンテナ用パターン21と同様に薄いと、無線IC素子30(入出力端子電極31,32)との接続信頼性に欠ける。本実施例では、接合用パターン25を比較的厚く(T1>T2)形成するので、接合用パターン25と無線IC素子30の入出力端子電極との機械的・電気的な接続信頼が向上する。また、パターン形成工程と熱処理工程とが連続的に行われるため、換言すれば、パターン21,25の金属化と無線IC素子30の接合が同時に行われるため、非常に効率的である。
【0019】
また、基材シート10の表面と無線IC素子30の裏面との間隔T3も比較的大きくなるので、無線IC素子30を樹脂材で封止する際に、樹脂が無線IC素子30の裏面側にも回り込みやすくなる。無線IC素子30を樹脂材で封止することは、周囲の環境から無線IC素子30を保護する以外にも、基材シート10が反ったり曲がったりしたときに曲げ応力が無線IC素子30に伝わりにくくなる利点を有している。
【0020】
一方、無線IC素子30を接合用パターン25上に搭載する場合、無線IC素子30の上方から一定の圧力を加える。このとき、接合用パターン25は比較的厚く形成されているため、パターン25の形状が多少崩れても、パターン25と端子電極31,32との接続信頼性が劣化することはない。また、無線IC素子30の搭載時に基材シート10に振動が生じるが、アンテナ用パターン21は比較的薄いためにパターン形状が崩れにくい。即ち、印刷パターンのうち、アンテナ用パターンを薄くし、接合用パターンを厚くすることで、無線通信デバイス全体のフレキシブル性を確保しつつも、無線IC素子のアンテナへの接合信頼性を確保できる。特に、金属化された接合パターンは、比較的厚く、硬質であるため、IC素子の保護部材としても機能し、IC素子の信頼性の向上に寄与する。
【0021】
なお、無線通信デバイスは必ずしも可撓性を有していることが必須ではなく、基材シート10はリジッドであってもよい。この場合であっても、アンテナ用パターン21を比較的厚く形成すると、生産性が低下するとともに、熱硬化でシワになりやすいので、比較的薄く形成することに利点を有する。さらに、無線IC素子30の入出力端子電極は、断面形状が円弧状以外に半球状であってもよく、矩形状であってもよい。
【0022】
また、前記パターン21,25は、必ずしもインクジェット法で形成する必要はなく、導電性インクを用いて電子写真法やスクリーン印刷法などによって形成してもよい。但し、パターン21,25の厚さを容易に制御できる点でインクジェット法が好適である。電子写真法やスクリーン印刷法を用いる場合には接合用パターン25部分を重ね塗りすればよい。
【0023】
(第2実施例、図4参照)
第2実施例である無線通信デバイスの製造方法は、図4及び図5に示すように、アンテナ用パターン21をループ型としたものであり、製造工程は前記第1実施例と基本的に同様であり、作用効果も同様である。特に、UHF帯用のループアンテナは、サイズが比較的小さくて済むため、インクジェット法によって効率よくアンテナ用パターン21を形成することができる。
【0024】
また、本実施例において、接合用パターン25は無線IC素子30の一辺よりも大きなサイズに形成されている。接合用パターン25は比較的大きな厚み(T1)で形成されているため、熱処理で金属化した後は硬質化している。それゆえ、硬質化した接合用パターン25が無線IC素子30の一辺を覆うようなサイズに形成されていることにより、基材シート10が反ったり曲がったりしたとき、曲げ応力から無線IC素子30が保護される。
【0025】
図5(C)は、前記熱処理工程の後に無線IC素子30を樹脂材35で封止した状態を示している。基材シート10の表面と無線IC素子30の裏面との間隔T3が比較的大きいので、封止時に樹脂材35が無線IC素子30の裏面側に回り込みやすい。
【0026】
(変形例、図6参照)
無線IC素子30の裏面に入出力端子電極31,32以外に実装用の端子電極33,34が形成されている場合(4端子型)には、図6に示すように、接合用パターン25以外に一対の接合用パターン26を基材シート10上に形成することになる。
【0027】
(他の実施例)
なお、本発明に係る無線通信デバイスの製造方法は前記実施例に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更することができる。
【0028】
特に、基材シートの形状や構造、アンテナ用パターンの形状、サイズは任意である。また、基材シートや導電性インクの材質も任意である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
以上のように、本発明は、無線通信デバイスの製造方法に有用であり、特に、製造が効率的で、アンテナと無線IC素子との接続信頼性が向上する点で優れている。
【符号の説明】
【0030】
10…基材シート
15…インクジェット用ノズル
21…アンテナ用パターン
25…接合用パターン
30…無線IC素子
31,32…入出力端子電極
35…封止樹脂材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートに金属材を含む導電性インクによってアンテナ用パターン及び接合用パターンを形成するパターン形成工程と、
前記接合用パターンに無線IC素子を搭載した状態で、前記アンテナ用パターン及び前記接合用パターンを熱処理して金属化するとともに、前記無線IC素子の端子電極と前記接合用パターンとを一体化する熱処理工程と、
を備え、
前記パターン形成工程では、前記接合用パターンの厚みを前記アンテナ用パターンの厚みよりも大きく形成すること、
を特徴とする無線通信デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記熱処理工程の後に、前記無線IC素子を樹脂材にて封止する封止工程を備えたこと、を特徴とする請求項1に記載の無線通信デバイスの製造方法。
【請求項3】
前記パターン形成工程では、インクジェット法によって前記導電性インクを前記基材シート上に供給することにより、前記アンテナ用パターン及び前記接合用パターンを形成すること、を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の無線通信デバイスの製造方法。
【請求項4】
前記パターン形成工程では、前記接合用パターンを前記無線IC素子の一辺よりも大きなサイズに形成すること、を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の無線通信デバイスの製造方法。
【請求項5】
前記基材シートは可撓性を有するものであること、を特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の無線通信デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−137895(P2012−137895A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288995(P2010−288995)
【出願日】平成22年12月25日(2010.12.25)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】