説明

照明灯検出方法

【課題】駅構内等の天井部等に設置された多数の照明灯の撮影画像に基づき各々の存在を正確に検出し、照明灯の自動清掃システムを実現できる照明灯検出方法を提供する。
【解決手段】この照明灯検出方法は、照明灯を可視光カメラ22によって撮影し画像データを得るステップS11と、二次元画像領域で任意な線33を設定し線上の複数画素に係る画像データを取り出し、画像データの中から輝度極大値に係る画素を検出し、この画素を初期検索位置に設定するステップS12と、初期検索位置を基準とし、検索範囲を設定し、画像データから照明灯候補の画素を検出するステップS13と、擬似形状画素を算出し、この擬似形状画素による擬似形状と照明灯候補画素とを比較して照明灯であるか否かを判断するステップS14を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は照明灯検出方法に関し、特に、駅構内等の天井部等に設置された蛍光灯などの存在を確実に検出するのに好適な照明灯検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
駅構内等の高所の天井部には駅構内を照明するための照明灯として多数の直管形蛍光灯が設置されている。これらの多数の蛍光灯について、従来、定期的に照明機器の清掃がなされ、また蛍光灯の寿命が尽きて正常に点灯しなくなった場合には蛍光灯の交換がなされていた。照明機器の清掃、および蛍光灯の交換は作業員により人為的になされていた。しかしながら、天井部等の高所に設置されるものであるから、高所作業が求められ、照明機器等の清掃等では危険が伴っていた。
【0003】
近年、駅構内等の高所の天井部に設置された多数の照明灯の清掃については自動清掃の要請が高くなってきている。すなわち、照明灯の清掃のオートメーション化、あるいは天井部に設置された当該照明灯の清掃ロボットの開発が求められている。このような照明灯の自動清掃では、先ず、清掃ロボットの機械によって、清掃すべき照明機器の存在位置を自動的に検出し、その清掃ロボットから照明機器までの距離を計測するための技術が必要となる。
【0004】
画像処理を利用した照明灯検出の技術について、関連技術を開示する先行技術文献として例えば特許文献1がある。この特許文献1では、例えばカメラ付き携帯電話等の装置を利用し、カメラで光源が撮像された画像を取得し、その他に付加的な撮像装置を利用することなく、カメラによる画像撮像時の光源の位置、方向、輝度、スペクトル、色などの光源情報を推定する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4077869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示される技術は、カメラ付き携帯電話等で光源を撮像したとき、当該カメラによる画像撮像時の光源の位置、方向、輝度、スペクトル、色などの光源情報を推定する技術、換言すれば、光源情報を用いて画像の高解像度化を行う技術に関するものである。
これに対して、照明灯の自動清掃化を実現するため、駅構内等の高所の天井部に設置された多数の照明灯のいずれかをカメラで撮像し、その画像について画像処理を行うことにより、当該多数の照明灯の各々の存在を正確に検出するということについては有効な技術は未だ提案されていない。
【0007】
本発明の目的は、上記の課題に鑑み、駅構内等の高所の天井部等に設置された多数の照明灯(直管形または環形の蛍光灯)をカメラで撮影し、その画像に基づき当該多数の照明灯の各々の存在を正確に検出し、これにより照明灯の自動清掃システムを実現することができる照明灯検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る照明灯検出方法は、上記の目的を達成するため、次のように構成される。
【0009】
第1の照明灯検出方法(請求項1に対応)は、検出対象となる照明灯を可視光カメラによって撮影し、照明灯の画像データを得る撮影ステップと、画像データをメモリに保存する保存ステップと、画像データを含む二次元画像領域で任意な線を設定し、この線上の複数の画素に係る画像データを取り出す画像データ取出しステップと、画像データの中から輝度極大値に係る画素を検出し、この画素を初期検索位置に設定する初期検索位置決定ステップと、設定された初期検索位置を基準とし、検索範囲を設定し、画像データから照明灯候補の画素を検出する照明灯候補画素検出ステップと、基準となる擬似形状画素を算出し、この擬似形状画素による擬似形状と照明灯候補画素とを比較して照明灯であるか否かを判定する判定ステップとによって構成される。
【0010】
第2の照明灯検出方法(請求項2に対応)は、上記の方法において、好ましくは、画像データ取り出しステップにおける上記の任意の線は直線であり、照明灯候補画素検出ステップにおける検索範囲は初期検索位置の左方向または右方向であることを特徴とする。
【0011】
第3の照明灯検出方法(請求項3に対応)は、上記の方法において、好ましくは、画像データ取り出しステップにおける上記の任意の線は環状線であり、照明灯候補画素検出ステップにおける検索範囲は初期検索位置の全周囲であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、駅構内等の高所の天井部等に設置された多数の照明灯(直管形または環形の蛍光灯)を可視光カメラで撮影し、特徴のある画像処理プログラムを利用して照明灯撮影画像に基づき当該多数の照明灯の各々の存在を正確に検出することができ、これにより駅構内等の高所に設置された多数の照明灯を自動的に清掃するシステムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る照明灯検出方法を実行する照明灯検出装置の構成と検出対象である照明灯の一例を示す図である。
【図2】本発明に係る照明灯検出方法の基本のアルゴリズムを示すフローチャートである。
【図3】可視光カメラで得られた可視画像の一例を示す図である。
【図4】初期検索位置の決定のステップS12の詳細な手順を示すフローチャートである。
【図5】判別分析法を適用した結果得られる閾値Tを示すグラフである。
【図6】可視画像から輝度極大値を求める工程を説明するグラフである。
【図7】照明灯候補検出のステップS13の詳細な手順を示すフローチャートである。
【図8】第1実施形態で次期極大値の画像を検索する方法を説明する図である。
【図9】照明灯判定のステップS14の詳細な手順を示すフローチャートである。
【図10】第1実施形態における照明灯判定の詳細手順をイメージ的に示した図である。
【図11】第2実施形態で次期極大値の画像を検索する方法を説明する図である。
【図12】第2実施形態における照明灯判定の詳細手順をイメージ的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の好適な実施形態(実施例)を添付図面に基づいて説明する。
【0015】
図1〜図10を参照して本発明に係る照明灯検出方法の第1の実施形態について説明する。この実施形態では検出対象となる照明灯は直管形蛍光灯である。図1に天井部10等に設置された直管形蛍光灯の一例を示す。2本の直管形蛍光灯11(以下「蛍光灯11」と記す)が平行に配置された状態で蛍光灯取付け器12に着脱自在となるように取り付けられている。蛍光灯取付け器12は例えば駅構内の高所の天井部10に固定されている。なお、本実施形態の説明では照明灯は蛍光灯の例で説明するが、本発明はこれに限定されず、例えば同様な形状を有するLED照明器等であってもよい。
【0016】
図1に従って、先ず、本発明に係る照明灯検出方法を実行する照明灯検出装置の構成を説明する。照明灯検出装置20は、可視光カメラ21と、処理装置22と、メモリ23と、表示装置24とから構成されている。可視光カメラ21は、天井部10に設置された蛍光灯11を下方ら撮影し、蛍光灯11の可視画像を作成する。処理装置22は、可視光カメラ21による撮影で得られた2本の蛍光灯11の可視画像を取り込んで可視画像データ25としてメモリ23に保存すると共に、メモリ23に保存された可視画像データ25を用いかつ当該メモリ23に格納された照明灯検出用画像処理プログラム26の実行に基づいて蛍光灯11の存在を確認する処理を実行する。さらに処理装置22は、照明灯検出用画像処理プログラム26を実行することにより得られた蛍光灯の検出結果を必要に応じて表示装置24に表示する。なおメモリ23には、照明灯検出用画像処理プログラム26を実行する際に生じるデータを保存するデータ部27も有している。
【0017】
図2のフローチャートを参照して照明灯検出用画像処理プログラム26に基づく照明灯検出の処理の流れを説明する。照明灯検出の処理の基本的な流れは下記のステップS11〜S16によって構成されている。
【0018】
先ず最初に可視光カメラ21によって蛍光灯11が撮影され、可視画像が取得される(ステップS11)。可視画像の一例を図3に示す。この可視画像31では、2本の蛍光灯11に関する蛍光灯画像32が1つの面上に平行に配列された状態を示している。この可視画像31は上記した可視画像データ25としてメモリ23に保存される。
【0019】
可視光カメラ21による撮影条件としては、撮影を行う際、蛍光灯11の点灯時において蛍光灯の形状がおおよそ確認できる程度にカメラパラメータが調整され、設定される。また可視画像31において直線的な蛍光灯画像32に対して交差する直線33を決定することができるように、当該可視画像31を取得する。
【0020】
その後、上記の可視画像31において、蛍光灯画像32に基づいて初期検索位置が決定される(ステップS12)。次いで照明灯(蛍光灯)の候補が検出される(ステップS13)、さらにその後に照明灯判定の処理が行われる(ステップS14)。照明灯判定の処理ステップS14で、照明灯であると判定されたとき(YES)には照明灯検出の処理が行われ(ステップS15)、照明灯でないと判定されたとき(NO)には照明灯候補棄却の処理が行われる(ステップS16)。照明灯判定の結果に基づく照明灯検出の結果あるいは照明灯候補棄却の結果は、メモリ23に保存され、さらに必要に応じて表示装置24の画面に表示される。その後、ステップS11に戻り、照明灯検出装置を移動させて他の蛍光灯について可視光カメラ21による撮影を行い(ステップS11)、上記の処理(ステップS12〜S16)を繰り返す。以上の処理は天井部10に設置された多数の蛍光灯の各々について行われる。
【0021】
なお、実際上、可視光カメラ21による蛍光灯の撮影は、蛍光灯11毎に行ってよいし、あるいは、或る特定領域の複数の蛍光灯についてまとめて行ってもよい。蛍光灯毎に撮影するときには上記のようにステップS11に戻ってその後の処理を反復する。特定領域の複数の蛍光灯について撮影するときには、ステップS12に戻ってその以降の処理ステップを反復することになる。
【0022】
次に、上記の初期検索位置決定の処理(ステップS12)、照明灯候補検出の処理(ステップS13)、照明灯判定の処理(ステップS14)の各々の処理内容について詳述する。
【0023】
先ず初期検索位置決定の処理(ステップS12)の内容について説明する。初期検索位置決定の処理(ステップS12)の内容の詳細を図4のフローチャートに示す。
【0024】
図3に示した可視画像31において、画像上で任意の直線33を設定し、当該直線33の上を走査し(ステップS101)、公知の判別分析法等に基づく2値化閾値取得法により閾値Tを取得する(ステップS102)。なお「判別分析法」は、画像処理の一手法であり、分離度(クラス間分散、クラス内分散)という値が最大となるしきい値を求め、自動的に二値化を行う手法である。
【0025】
図3で示した例では、直線33は、2本の直管形の蛍光灯画像32にほぼ直交するような直線が設定されている。直線33は、x軸とy軸が定義される可視画像31において、当該x軸のほぼ中心位置に設定されている。かかる直線33を設定すると、当該直線33は2本の直管形の蛍光灯画像32と交差するので、直線33の上に2本の蛍光灯画像32の各々の一部を含むことになる。直線33の延びる方向(図3中上下方向)に沿って上記判別分析法を適用すると、直線33上に位置する多数の画素に関して「背景画素」と「蛍光灯画素」の2つの画素とに大きく分けることができる。
【0026】
図5は、画素の分布に関する濃度ヒストグラム(グラフ)を示している。図5のグラフにおいて、横軸は濃度値(0〜255)を意味し、縦軸は出現頻度(「少」〜「多」)を意味している。図5のグラフにおいて、領域41は背景画素の出現状態を示し、領域42は蛍光灯画素の出現状態を示している。判別分析方法によれば、濃度ヒストグラムのクラス間分散とクラス内分散の比(分離度)が最大となる閾値Tを求めることができる。図5では、2つの領域41,42の間に閾値Tが求められている(ステップS102)。領域41は背景画素の属する領域であり、領域42は照明灯画素の属する領域である。こうして、可視画像31に関して直線33を設定し、判別分析法を適用すると、閾値Tを求めることができ、双峰性のある2つのクラス(背景画素に係る領域41と蛍光灯画素に係る領域42)に分離することができる(ステップS103)。
【0027】
次に、上記の可視画像31における直線33上の画素に関して、求められた閾値T以上の画素を対象にして輝度の極大値(輝度値ピーク)を検出する(ステップS104)。この検出内容をイメージとして示したものが図6である。図6では、左側(A)に上記の可視画像31を示し、右側に当該可視画像31での直線33上における蛍光灯画像32の部分(画素)に基づく輝度分布のグラフ(B)を示している。このグラフ(B)において、縦軸は画素(ピクセル)の配列を示し、横軸に輝度値(1〜60)を示している。この例では、グラフ(B)に示すように例えば3つの輝度極大値(輝度値ピーク)51が生じている。3つの極大値51は2本の蛍光灯画像32に対応している。これにより、輝度の極大値を検出し(ステップS104)、当該輝度の極大値に対応する画素の座標を求めることができる(ステップS105)。なお輝度極大値の最終的な判定に関して、どのような輝度値のレベルを極大値とするかについては条件に応じて適宜に設定される。
【0028】
また3つの輝度の極大値51に対応する画素については、可視画像31でのx軸およびy軸に基づくxy座標系においてその座標(x,y)を知ることができる。
【0029】
以上によって、可視画像31において、任意の直線33上の蛍光灯らしい部分(照明灯候補)の画素の座標を検出することができる。当該画素の座標に係るデータは蛍光灯(照明灯)の初期検索位置としてメモリ23に記憶される(ステップS106)。
【0030】
上記の説明では、図1に示した2本の蛍光灯11の各々の画素の座標を当該蛍光灯の初期検索位置として求め、その座標データをメモリ23に格納した。検出対象となっている他の複数の蛍光灯のすべてについても、必要な時点で、上記同様に、蛍光灯の初期検索位置としての座標データが求められ、メモリ23に保存される。
【0031】
次に、照明灯候補検出の処理(ステップS13)の内容について説明する。照明灯候補検出の処理(ステップS13)の内容の詳細を図7のフローチャートに示す。
【0032】
この照明灯候補検出の処理では、上述した例えば1本の蛍光灯11の初期検索位置に係る座標データを用いる。この座標データに基づき、かつ、次のステップS201〜ステップ204に基づいて当該1本の蛍光灯11の候補全体の検出を行う。
ステップS201:
蛍光灯(照明灯)の候補全体の検出では、先ず、上記した初期検索位置決定の処理(ステップS12)で求められた初期検索位置(最初の輝度極大値に係る画素の座標データ)に基づき、最初の次期の輝度極大値(以下「極大値」と簡略して記す)に係る画素を求める。すなわち、次期極大値に係る画素を検出対象として、前述した処理工程と同じように閾値T以上の画素の極大値を検出する。当該次期極大値に係る画素の座標データはメモリ23に保存される。
ステップS202:
上記のステップS201で得られた極大値に対して、さらに当該極大値に基づき更なる次の次期極大値に係る画素を求める。すなわち、ステップS201で得られた極大値に基づき次期極大値に係る画素を検出対象として、前述した処理工程を繰り返して閾値T以上の画素の極大値を検出する。当該次期極大値に係る画素の座標データはメモリ23に保存される。
ステップS203:
閾値T以上の画素の極大値が他に存在するか否かを判断する。当該極大値が存在する場合(YES)には、上記のステップS202に戻り、ステップS202の処理内容を繰り返し、次々の次期の極大値に係る画素を求め、その座標データをメモリ23に保存する。当該極大値が存在しなくなった場合(NO)には、次のステップS204に移行する。
ステップS204:
蛍光灯候補の端点を確定し、照明灯候補検出の処理を終了する。
【0033】
上記のステップS201〜S204からなる照明灯候補検出の処理(ステップS13)の内容をイメージ的に示すと図8のようになる。図8では、一例として3×3の9個の画素52の配列が示されている。これらの画素52の配列において、中央のメッシュ表現の1つの画素52aが現時点での極大値検出画素を意味し、斜線表現の例えば3つの画素52bが次期時点での極大値検索画素を意味している。従って、図8の(A)では現時点での極大値検出画素52aを基準とすると、左方向検索を行うときの状態を示し、図8の(B)では右方向検索を行うときの状態を示している。この実施形態では、照明灯は直管形蛍光灯11であることを前提としているので、可視光カメラ21による撮影で得られた可視画像31において、初期検索位置に対応する画素を基準にして左方向または右方向に向かって次期極大値画素の検索が実行される。
【0034】
上記のごとくして、照明灯候補検出の処理(ステップS13)に基づいて得られた初期検索位置に対応する画素の座標データを基準にして、当該画素から順次に次期極大値に係る画素の座標データを求め、前述の端点が確定した段階で、得られた複数の極大値に係る画素座標を連結することにより、蛍光灯(照明灯)の候補全体を検出することができる。換言すれば、蛍光灯の場合には輝度値が高いという特性を有しているので、可視光カメラ21で得られた可視画像31において、任意の直線33を設定することにより最初の極大値(輝度値ピーク)を求め、これに対応する画素に基づいて、可視画像31上において輝度値ピーク(輝度中心)を連続的に検出し、かつこれらを繋げば、蛍光灯11の候補を検出することができる。
【0035】
次に照明灯判定の処理(ステップS14)の内容を説明する。照明灯判定の処理(ステップS14)の内容の詳細を図9のフローチャートに示す。
【0036】
図10に、照明灯候補検出の処理(ステップS13)で得られた蛍光灯候補画素を示す。最初のステップS301で、メモリ23に保存された複数の蛍光灯候補の画素の座標データを取り出し、図10に示すような画素領域53を形成してその中に含ませる。この画素領域53において、斜線で示された複数の画素54が蛍光灯候補画素である。次に当該画素領域53において蛍光灯端点の画素54aを通過する擬似直線55を求める(ステップS302)。この擬似直線55は、端点画素54aと、直線部分を作る一部の他の画素群54bとを直線的に繋いで擬似直線画素を想定することにより求められる。次に、得られた擬似直線55と実際の複数の蛍光灯候補画素54の各々の座標との間のユークリッド距離を算出する(ステップS303)。そして次に、算出された各々のユークリッド距離の値が例えば実験的に設定された一定値以下であるか否かを判断する(ステップS304)。判断ステップS304でYESの場合には、蛍光灯11であると判定し、その結果、前述した「照明灯検出」のステップS15が実行される。また判断ステップS304でNOの場合には、蛍光灯11でないと判定し、その結果、前述した「照明灯候補棄却」のステップS16が実行される。
【0037】
上記のごとくして、図1に示した天井部に設置される2本の直管形蛍光灯11の各々を検出し、その存在の有無を確認することができる。次に、前述した通り、他の直管形蛍光灯の検出が上記と同様な方法に基づいて実行される。こうして、対象とする領域に設置される複数の蛍光灯の各々の存在(有無)を確認することができる。
【0038】
次に、図11と図12を参照して本発明に係る照明灯検出方法の第2の実施形態について説明する。この実施形態において、検出対象となる照明灯は例えば環形(円形または楕円形)の蛍光灯である。第2の実施形態に係る照明灯検出方法について、第1実施形態の照明灯検出方法で説明したステップS11〜S16のうち、照明灯候補検出の処理(ステップS13)と照明灯判定の処理(ステップS14)の各々の内容が異なり、その他のステップ、すなわち、可視光カメラ21によって蛍光灯11を撮影して可視画像を取得するステップS11、初期検索位置決定の処理を行うステップS12、照明灯検出のステップS15、照明灯候補棄却のステップS16については第1実施形態の場合と同じである。そこで、以下では、第1の実施形態の場合と内容が異なる照明灯候補検出の処理(ステップS13)と照明灯判定の処理(ステップS14)の各内容を詳述する。
【0039】
図11を参照して、第2実施形態の場合における照明灯候補検出の処理(ステップS13)の内容および第1実施形態との相違点を説明する。図11は、第1実施形態で説明した図8に相当するものである。第1実施形態による照明灯検出方法では直管形蛍光灯を検出対象としたので、図8に示すごとく現在(現時点)の極大値検出画素を基準にして次期極大値の画素を検出とき左方向検索または右方向検索の手法を採用したが、第2実施形態による照明灯検出方法では、円環形等の蛍光灯を検出対象としているので、図11に示すごとく、現在の極大値の検出画素52aに対してその全周囲の画素52bについて次期極大値の画素を検索するようにする。但し、次期極大値において過去に既に検出された極大座標は除くものとする。このように、本実施形態の場合には、実際の円環形の蛍光灯が空間的にどの方向に延びているか不明であるので、全周囲の画素52bについて検索する必要がある。こうして、現在の極大値検出画素52aに対して次期極大値の画素を検出する。その後は、新たに検出された次期極大値の画素を再び「現在の極大値検出画素」として、図7に示した同様の手法に基づいてさらに次の更なる次期極大値の画素を検索し検出する。
【0040】
なお、所定数のいくつかの次期極大値検出画素が求められた後には、円環形の蛍光灯の円環形状が予測することも可能であるので、円環形状が予測し得る状態になった場合には、検索の範囲または方向を、全周囲ではなく円環形状が延びる方向に限定することも可能である。
【0041】
以上のようにして、最初の極大値検出画素を始点として、次々に次期極大値の画素を検出し、これらの複数の画素に係る座標データを円環形の蛍光灯の画素候補群としてメモリ23に保存する。
【0042】
次に、図12を参照して、第2実施形態の場合における照明灯判定の処理(ステップS14)の内容および第1実施形態との相違点を説明する。検出しかつメモリ23に保存された照明灯候補群に係る画素の座標データに対して最小二乗法等を適用し、擬似円または擬似楕円の画素を利用してて近似の円または楕円の検出を行う。図12に、図10と同様に画素領域53を示し、この画素領域53において複数の蛍光灯の候補画素54と検出した近似円等の軌跡56を示す。近似円等56を検出した後、当該近似円等56と検出された蛍光灯候補の画素54に係る座標データとの間でユークリッド距離を計算する。計算の結果得られたユークリッド距離と基準値との差が一定値以内である場合には実際の蛍光灯であると判断して検出し、当該差が一定より大きい場合には実際の蛍光灯ではないとして棄却する。
【0043】
上記の実施形態の説明では、第1実施形態により直管形蛍光灯の照明灯検出を説明し、第2実施形態により円環形等の蛍光灯の照明灯検出を説明したが、これは予め検出対象である照明灯の形状が分かっていることを前提としている。他の照明灯検出方法として、照明灯の形状が分かっていない場合において、途中の段階で、検出対象として照明灯の形状を予測して、すなわち直管形の照明灯であるかまたは円環形等であるかを予測して、上記の第1実施形態または第2実施形態の検出方法を選択し、当該選択した照明灯検出方法を実行するように構成することができる。
【0044】
以上の実施形態で説明された構成、手順、形状、大きさおよび配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎず、また数値および各構成の組成(材質)等については例示にすぎない。従って本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明に係る照明灯検出方法は、駅構内等の天井部等の高所に設置された多数の蛍光灯等の存在を確実に検出し、これよって蛍光灯等の自動清掃等のシステムの構築に利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
11 直管形蛍光灯
12 蛍光灯取付け器
20 照明灯検出装置
21 可視光カメラ
22 処理装置
23 メモリ
31 可視画像
32 蛍光灯画像
33 直線
51 輝度の極大値(輝度ピーク)
52 画素
53 画素領域
55 擬似直線
56 擬似円等

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象となる照明灯を可視光カメラによって撮影し、前記照明灯の画像データを得る撮影ステップと、
前記画像データをメモリに保存する保存ステップと、
前記画像データを含む二次元画像領域で任意な線を設定し、この線上の複数の画素に係る画像データを取り出す画像データ取出しステップと、
前記画像データの中から輝度極大値に係る画素を検出し、この画素を初期検索位置に設定する初期検索位置決定ステップと、
設定された前記初期検索位置を基準とし、検索範囲を設定し、前記画像データから照明灯候補の画素を検出する照明灯候補画素検出ステップと、
基準となる擬似形状画素を算出し、この擬似形状画素による擬似形状と前記照明灯候補画素とを比較して照明灯であるか否かを判定する判定ステップと、
からなることを特徴とする照明灯検出方法。
【請求項2】
前記画像データ取り出しステップにおける前記任意の線は直線であり、前記照明灯候補画素検出ステップにおける前記検索範囲は前記初期検索位置の左方向または右方向であることを特徴とする請求項1記載の照明灯検出方法。
【請求項3】
前記画像データ取り出しステップにおける前記任意の線は環状線であり、前記照明灯候補画素検出ステップにおける前記検索範囲は前記初期検索位置の全周囲であることを特徴とする請求項1記載の照明灯検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−145867(P2011−145867A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5839(P2010−5839)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】