説明

熱伝導性多層フィルム

【解決手段】 本発明は、電気絶縁性で熱伝導性の充填物含有高弾性エラストマー層によって構成され、かつ、それのゲル特性のために電子回路の平らでない表面構造上に堅牢に成形することができる第一の層(12)、並びに第一の層(12)より実質的に薄くそして第一の層と確り結合されている第二の層(13)よりなる多層熱伝導性フィルム(1)において、第二の層(13)が第一の層(12)の上に設けられたPCM−層として形成されており、該第二の層(13)が冷却体(14)または外被要素を設ける場合に圧力および/または温度の影響によって薄くなりおよび/またはそれの集積状態の変更を生じさせることを特徴とする、上記多層熱伝導性フィルムに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気絶縁性で熱伝導性の充填物含有高弾性エラストマー層によって形成される第一層よりなる熱伝導性多層フィルムに関する。この層は、それのゲル特性のために電子回路の平らでない表面構造上に堅牢に形成することができる。更にこの熱伝導性フィルムは第一の層よりも実質的に薄く、かつ、第一の層に確り結合されている少なくとも1つの第二の層を有している。
【背景技術】
【0002】
公知の多層熱伝導性フィルムは、熱に過敏な電子要素を含有するかまたは該電子要素よりなる平らでない構造物から熱を搬出するために一般に使用される。この種類のフィルムは0.5〜5mmの厚さで製造され、0.25〜1.75k/Wの熱抵抗を有しそして0.8〜1.75W/mKの範囲ないの熱伝導性を保証する。ギャップ充填材フィルムとも称されるこの種の熱伝導性フィルムの熱的な用途分野は−60〜+200℃の範囲内にある。この種のギャップ充填材物質は例えばエッシェンバッハ(Eschenbach)のKerafol Keramische Folien GmbH社の製品一覧表に掲載されており、製品“Soft-therm”と称されている。
【0003】
この種類の公知の熱伝導性フィルムの欠点は、一般に約0.1cmの厚さを持つ支持層にある。この支持層は比較的に高い熱抵抗値を有し、その結果熱伝導は該支持層上に設けられる外被要素、冷却体等へに限られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、請求項1の上位概念の構成要件を有する多層熱伝導性フィルムを、ゲル特性を持つ高弾性エラストマー層からの良好な熱誘導を保証する様に更に改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は本発明に従って、第二の層が第一層の上に載せられているPCM−層として形成されており、それが冷却体または外被を載せる際に圧力および/または温度の影響によって薄くなりおよび/またはそれの集積状態の変更を生じさせることによって解決される。
【0006】
原則としてこの種のPCM−層自体は公知であるが、この課題を解決すのに、両方の上記の層の組合せが新規で且つ有利であることが判っている。この場合熱抵抗を高める支持体層が省かれそしてPCM−層がエラストマー層の直ぐ上に設けられている。試験で、第二の層が支持体層としてでなくPCM−層として形成されている場合に、熱抵抗値が2〜10倍程改善されることが判った。
【0007】
本発明の実施態様は従属形式の請求項2〜20から明らかである。例えば第一の層は例えばシリコーンを含有しているかまたはシリコーン不含の弾性脂肪族ポリウレタンより構成されていてもよく、その際にポリウレタンは遊離状態のイソシアネート基を有していなくてもよい。第一の層はポリジメチルシロキサンで構成されていてもよく、その際にポリウレタンまたはポリジメチルシロキサンには粉末状充填剤が50〜95%充填されている。充填剤は酸化アルミニウム粒子、酸化珪素粒子、酸化ベリリウム粒子、酸化マグネシウム粒子、窒化アルミニウム粒子、窒化硼素粒子、窒化珪素粒子、炭化珪素粒子または金属粒子でもよい。
【0008】
安定化するために、第一の層には0.5〜15%の含有量でメラミン樹脂が混入されていてもよい。第一の層のショアー硬度は5〜80であり、有利な厚さは0.3〜6mmであることが判っている。
【0009】
第二の層はワックス様物質よりなるかまたは少なくともかゝる物質を含有しているべきである。しかしながらコポリマーを第二の層として用意することも可能である。第二の層は熱可塑性シリコーンポリマーよりなっていてもまたはかゝるポリマーを含有していてもよい。40〜140℃の温度範囲では、第二の層を形成するPCM−層の固−液−相転移がある。第二の層の材料も同様に熱伝導性材料が充填されていてもよい。第一および/または第二の層の材料は例えば金属または合成樹脂、ガラス繊維、カーボンまたはグラファイトよりなる補強材を含有していてもよい。第一または第二の層の補強材は織物様に形成されていてもよい。更に、第一および/または第二の層の自由表面には接着層を設けるのも有利である。また、第一および/または第二の層の自由表面には剥離可能な保護層を設けるのも有利である。
【0010】
本発明を図面に記載の有利な実施例によって更に詳細に説明する:
図1は従来技術の多層熱伝導性フィルムを図示しており、この場合には第二層は薄い支持層として形成されている。
【0011】
図2は本発明に従う多層熱伝導性フィルムを図示している。
【0012】
図3は、本発明の多層熱伝導性フィルムが上側に設けられている、電子要素が設けられた導体プレートの切断面図である。該多層熱伝導性フィルムは導体プレートに対峙する側で外被または冷却体表面に境界を接している。
【0013】
従来技術に従う図1に記載の熱伝導性フィルム(1)は実質的に第一の層(2)とそれに直接的に隣接し且つ第一の層の上に設けられた第二の層(3)で構成されており、その際に第二の層は第一の層(1)よりも実質的に薄い。両方の層(2)と(3)の間は確り接合されている。
【0014】
概略的に図示してある、従来技術から公知の熱伝導性フィルム(1)の場合には、第一の層(2)はゲル特性を有する熱伝導性で充填物含有の電気絶縁性高弾性エラストマー層よりなり、該第二の層は一般に第一の層(2)を安定させるために役立つ支持体層である。
【0015】
本発明の熱伝導性フィルム(11)の場合には、図1に図示した熱伝導性フィルムの第一の層(2)に相当する第一の層(12)が形成されているが、支持層(3)はもはや存在しておらず、第一の層(12)の表面で第二の層が直接的に境界を接しており、この第二の層は冷却体または外被要素(14)(図3参照)を設ける場合には薄くなり、および/または圧力および/または温度の影響によってそれの凝集状態の変化が生じる。それによって第一の層と外被要素(14)との間に非常に強い熱接触がもたらされる。図3には導体板(15)も概略的に図示されており、その上には、第一の層(12)の凹みまたは窪み(17)によって多かれ少なかれ緊密に包み込まれた電子要素(16)が載せられており、その結果この電子要素(16)から、熱伝導性フィルム(11)の第一の層(12)へ良好な熱誘導が保証される。
【0016】
第一の層(12)または第二の層(13)の材料には、補強材粒子(18)が混入されていてもまたは図示してない織物様補強材が組み入れられていてもよい。
【0017】
第一および/または第二の層(12,13)の自由表面(19)および/または(20)は、図面に局所的に描かれている剥離可能な保護層(21)を備えていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】従来技術の多層熱伝導性フィルム
【図2】本発明に従う多層熱伝導性フィルム
【図3】本発明の多層熱伝導性フィルムが上側に設けられている、電子要素が設けられた導体プレートの切断面図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気絶縁性で熱伝導性の充填物含有高弾性エラストマー層によって構成され、かつ、それのゲル特性のために電子回路の平らでない表面構造上に堅牢に成形することができる第一の層(12)、並びに第一の層(12)より実質的に薄くそして第一の層と確り結合されている少なくとも1つの第二の層(13)よりなる多層熱伝導性フィルム(1)において、第二の層(13)が第一の層(12)の上に設けられたPCM−層として形成されており、該第二の層(13)が冷却体(14)または外被要素を設ける場合に圧力および/または温度の影響によって薄くなりおよび/またはそれの集積状態の変更を生じさせることを特徴とする、上記多層熱伝導性フィルム。
【請求項2】
第一の層(12)がシリコーンを含有する、請求項1に記載の熱伝導性フィルム。
【請求項3】
第一の層(12)がシリコーン不含の弾性脂肪族ポウレタンよりなる、請求項1または2に記載の熱伝導性フィルム。
【請求項4】
ポリウレタンが遊離状態のイソシアネート基を有していない請求項3に記載の熱伝導性フィルム。
【請求項5】
第一の層(12)がポリジメチルシロキサンより成る、請求項1〜4のいずれか一つに記載の熱伝導性フィルム。
【請求項6】
ポリウレタンまたはポリジメチルシロキサンに50〜95%の粉末状充填物質が充填されている請求項1〜5のいずれか一つに記載の熱伝導性フィルム。
【請求項7】
充填物質が酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、窒化硼素、窒化珪素、金属および/または炭化珪素の各粒子よりなる請求項1〜6のいずれか一つに記載の熱伝導性フィルム。
【請求項8】
第一の層(12)に0.5〜15%の含有量でメラミン樹脂が混入されている請求項1〜7のいずれか一つに記載の熱伝導性フィルム。
【請求項9】
第一の層のショアー硬度が5〜80である、請求項1〜8のいずれか一つに記載の熱伝導性フィルム。
【請求項10】
第一の層(12)の厚さが0.3〜6mmである、請求項1〜9のいずれか一つに記載の熱伝導性フィルム。
【請求項11】
第二の層(13)がワックス様物質よりなるかまたは該物質を含有する、請求項1〜10のいずれか一つに記載の熱伝導性フィルム。
【請求項12】
第二の層(13)がコポリマーよりなるかまたは該コポリマーを含有する、請求項1〜11のいずれか一つに記載の熱伝導性フィルム。
【請求項13】
第二の層(13)が熱可塑性シリコーンポリマーよりなるかまたは該ポリマーを含有する、請求項1〜11のいずれか一つに記載の熱伝導性フィルム。
【請求項14】
第二の層(13)を形成するPCM−層が40℃〜140℃の温度範囲において固−液相転換を示す、請求項1〜13のいずれか一つに記載の熱伝導性フィルム。
【請求項15】
第二の層(13)の材料に熱伝導性材料を充填する、請求項1〜14のいずれか一つに記載の熱伝導性フィルム。
【請求項16】
第一の層(12)および/または第二の層(13)の材料に補強材料(18)が入れられている請求項1〜15のいずれか一つに記載の熱伝導性フィルム。
【請求項17】
補強材料が金属材料または合成樹脂、ガラス繊維、カーボンまたはグラファイトよりなる、請求項16に記載の熱伝導性フィルム。
【請求項18】
第一の層(12)および/または第二の層(13)に織物様補強材料が導入されている、請求項1〜18のいずれか一つに記載の熱伝導性フィルム。
【請求項19】
第一の層(12)および/または第二の層(13)の自由表面(19,20)に接着層が設けられている、請求項1〜18のいずれか一つに記載の熱伝導性フィルム。
【請求項20】
第一の層(12)および/または第二の層(13)の自由表面(19,20)に剥離可能な保護層(21)が設けられている、請求項1〜19のいずれか一つに記載の熱伝導性フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−509025(P2008−509025A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−525156(P2007−525156)
【出願日】平成17年7月13日(2005.7.13)
【国際出願番号】PCT/DE2005/001234
【国際公開番号】WO2006/015569
【国際公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(507042855)ケラフォル・ケラミッシェ・フォーリエン・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (1)
【Fターム(参考)】