説明

熱可塑性樹脂筐体及びその製造方法

【課題】本発明は、多種多様に突出部が形成された樹脂製筐体に、滑らかに変化する玉虫色の光沢効果や、キラキラと輝く光沢効果を施す特殊な装飾技術を提供する。
【解決手段】重ねられた熱可塑性樹脂板1と偏光フィルム2が、該偏光フィルム側が所定形状の型に当てられ、真空成形、圧空成形、プレス成形のいずれかによって、突出部を有する前記所定形状の熱可塑性樹脂筐体が加熱成形される。また、所定形状の成形型に偏光フィルムを加熱成形した後に、熱可塑性樹脂を射出成形して、熱可塑性樹脂と偏光フィルムとが密着され一体化された筐体が製造される。偏光フィルムが所定形状の型内に成形された後、熱可塑性樹脂を射出成形する、或いは、偏光フィルムが該型に置かれた後、熱可塑性樹脂を射出成形することによっても、装飾効果を有する熱可塑性樹脂筐体を得られる。これらの製造方法によれば、偏向フィルムが筐体全体に皺なく被着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂筐体及びその製造方法に関し、特に、熱可塑性樹脂に偏向特性を有するフィルムを貼り合わせ、外側に突出して曲面を含む突出部が形成された立体構造を有する筐体に特殊な装飾効果を表出させた熱可塑性樹脂製の筐体と、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、物を入れる収納容器、電子部品が組み込まれるケースなど、或いは、車両のバンパー、オートバイのカウル、ヘルメットなどの筐体は、金属、合成樹脂などの素材から成る板によって立体的に組み立てられるか、或いは、一枚の板から立体的に一体成形されていた。この様に構成された筐体の外表面を色彩装飾するとき、金属素材による場合には、その筐体の表面を塗装するか、着色シートを貼着していた。また、合成樹脂素材による場合には、合成樹脂自体に着色しておくか、或いは、着色シートを貼着するようにしている。さらに、筐体表面に金属光沢を付与するために、メッキ、金属蒸着などの手法が適用されていた。
【0003】
合成樹脂による筐体の場合には、図33(a)の断面図に示されるように、筐体である樹脂板1自体を着色して、筐体に装飾性を施している。或いは、図33(b)の断面図に示されるように、筐体である樹脂板1の表面に、装飾用部材2として、着色シートを貼着し、或いは、金属薄膜を施している。
【0004】
これらの様に、従来技術により作成された筐体においては、その表面に施された装飾用の色彩は、固定的で全く変化しないか、又は、変化したとしても、その変化は限定的なものである。例えば、筐体の表面に、透明な着色シートを貼着した場合にあっては、着色シートの色と筐体自体の透けて見える色とが重なって混合色を呈するという程度であり、外観上、見方によって色彩が変化するものではない。
【0005】
そこで、その特殊な色彩効果を奏する方法として、ホログラムの原理を採用し、立体表面にあしらうべき画像平面部材を作成すれば、見る角度によって像の形や色彩等が多様に変化する筐体を実現する手法がある。しかしながら、ホログラムの原理に従った、特に、白色光再生画像の作成は技術的に高度であり、その作成にあたっては、コスト高となるため、そのホログラムの原理による手法は、安価な筐体を作製する上では得策ではない。
【0006】
このホログラムの原理による手法の他に、簡単な構成でありながら、多面体又は曲面体の色彩パターンが見る角度によって様々に変化するようにした装飾手法がある(例えば、特許文献1、2を参照)。この装飾手法では、多面体又は曲面体を有する筐体が透明又は半透明な材料で形成され、その筐体の内部又は外部の表面に、複数の偏光フィルム又はプレートの切片で被覆するようにしている。また、平板状に形成された無機又は樹脂基板の片側平面に、装飾用薄膜部材、例えば、偏光フィルムを接着して、装飾性が豊かで、模様の深み、立体感を付与する装飾手法がある。
【0007】
【特許文献1】特開2001−341500号公報
【特許文献2】特開2002−55621号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上に説明したように、特許文献1による装飾手法では、偏光フィルム又はプレートの切片が筐体の外表面又は内表面に貼り付けられており、その筐体の装飾に手間を要するものであり、筐体の外表面又は内表面の全面を被覆することができない。そのため、筐体の多面又は曲面に切片を貼り付けられたとしても、その筐体の装飾性が全面に渡って現れず、限定的なものとなる。
【0009】
一方、特許文献2による装飾手法では、基板上に偏光フィルムを接着して、模様の深み、立体感を付与している。この装飾手法に拠れば、基板が平面状に形成されている場合には、簡単に、且つ、きれいな状態で装飾性を付与できる。ところで、例えば、合成樹脂による筐体の場合には、その筐体の外面の形状は、多種多様に形成されていることが多い。図34の断面図に示されるように、筐体Bが、外側に突出する突出部を有する形状に形成され、例えば、筐体全体が皿形状又は椀形状に形成されている場合には、筐体Bの外面の全周に、曲面が存在する。
【0010】
筐体の外面に、曲面が存在していても、その曲面が一軸であれば、その外面の全面に、偏光フィルムを皺なく接着することが可能である。しかしながら、例えば、図34に示された筐体Bの場合のように、3次元曲線で表されるような、曲面が全周にわたって形成された突出部の全表面について、一枚の偏光フィルムを、皺なく、その曲面に沿って平らに接着することは困難である。また、筐体Bの平面部分のみに偏光フィルムを接着するのであれば、偏光フィルムを皺なく接着することができるが、この平面部分に、突出部がさらに形成されている場合には、その突出部の表面においても、偏光フィルムを、皺なく、その表面に沿って平らに接着することは困難である。
【0011】
そこで、本発明は、多種多様に突出部が形成された筐体の全表面を偏光フィルムで覆われた筐体とし、熱可塑性樹脂板と偏光フィルムとを接着した積層体を成形し、或いは、所定形状に成形された偏光フィルムに熱可塑性樹脂を射出成形することによって、特殊な装飾性を施した熱可塑性樹脂筐体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以上の課題を解決するため、本発明では、曲面を含む所定形状の突出部を有する熱可塑性樹脂筐体において、前記突出部を形成する熱可塑性樹脂体に、前記所定形状に合わせて偏光特性を有するフィルムを被着することとした。
【0013】
前記フィルムは、前記熱可塑性樹脂体に接着層を介して貼り合わされ、前記熱可塑性樹脂体に接着層及びビンディング層を介して貼り合わされ、前記熱可塑性樹脂体に加熱圧着され貼り合わされ、或いは、前記熱可塑性樹脂体に接着層を介して加熱圧着され貼り合わされていることとした。
【0014】
前記フィルムは、少なくとも片方の表面にエンボス加工が施されていることとし、或いは、貼り合わされた前記熱可塑性樹脂体と前記フィルムは、凹凸が施されていることとした。
【0015】
前記熱可塑性樹脂体は、着色されているか、又は、前記熱可塑性樹脂体は、前記突出部が透明な板で形成され、該突出部の内側表面が全面的又は部分的に単色又は複数色で装飾されていることとした。
【0016】
前記フィルムの表面が、捺印によって装飾されていることとした。
【0017】
前記フィルムが、前記突出部を形成する前記熱可塑性樹脂体の外面と内面の両方に被着されていることとした。
【0018】
無色又は有色の透明又は半透明のカバー層が、前記熱可塑性樹脂体に被着された前記フィルム上に施されていることとした。
【0019】
また、本発明による熱可塑性樹脂筐体の製造方法では、熱可塑性樹脂板と偏光特性を有するフィルムとが重ね合されて、該フィルム側が所定形状の型に当てられ、真空成形、圧空成形及びプレス成形のいずれかによって、外側に突出する突出部を有する前記所定形状の熱可塑性樹脂筐体が成形されることとした。
【0020】
そして、前記熱可塑性樹脂板に前記フィルムを貼り合せた積層板を生成し、該積層板のフィルム側が前記型に当てられ、真空成形、圧空成形及びプレス成形のいずれかによって、前記熱可塑性樹脂筐体が成形されることとした。
【0021】
前記フィルムは、前記熱可塑性樹脂板に接着剤で貼り合わされ、前記熱可塑性樹脂板に接着層及びビンディング層を介して貼り合わされ、前記熱可塑性樹脂板に加熱圧着され貼り合わされ、或いは、前記熱可塑性樹脂板に接着剤を介して加熱圧着され貼り合わされることとした。
【0022】
前記積層体は、凹凸が形成された前記型によって、該凹凸を有する前記所定形状に成形されることとした。
【0023】
また、本発明による熱可塑性樹脂筐体の製造方法では、偏光特性を有するフィルムが所定形状の凹部を有する成形型に当てられ、該フィルムが該凹部の形状に成形され、前記フィルムの成形後に、前記成形型に該フィルムを介して射出成形型を当て、該フィルムで形成された凹部の内側に熱可塑性樹脂を射出することにより熱可塑性樹脂筐体が成形されることとした。
【0024】
そして、前記射出成形型は、前記フィルムにより形成された前記凹部に整合した凸部を有し、更には、前記フィルムが前記成形型に当てられ、該凹部への押圧によって、該フィルムが該凹部の形状に成形されることとした。
【0025】
前記フィルムが前記成形型に当てられ、該凹部からの吸引によって、該フィルムが該凹部の形状に成形されることとし、前記凹部からの吸引は、前記成形型に設けられた複数の吸引孔を用いて行われ、さらには、前記凹部からの吸引は、前記凹部における前記フィルムの接触側の端部で行われることとした。
【0026】
前記成形型は、前記凹部と前記フィルムの接触側の端部で連通する小凹部を有し、前記凹部からの吸引は、前記小凹部に設けられた吸引孔を用いて行われることとした。
【0027】
前記フィルムの被着面には、接着層が設けられることとし、前記接着層の上面に、ビンディング層が設けられていることとし、前記フィルムの被着面は、易接着のための表面改質処理が施されていることとし、該表面改質処理が施された面上に、接着層が設けられ、或いは、ビンディング層を介して接着層が設けられていることとした。
【0028】
また、本発明による熱可塑性樹脂筐体の製造方法では、偏光特性を有する第1フィルムが所定形状の凹部を有する第1成形型に当てられ、該第1フィルムが該凹部の形状に成形され、偏光特性を有する第2フィルムが前記凹部に整合する形状の凸部を有する第2成形型に当てられ、該第2フィルムが該凸部の形状に成形され、前記第1フィルムと前記第2フィルムとの間に、熱可塑性樹脂を射出することにより熱可塑性樹脂筐体が成形されることとした。
【0029】
そして、前記第1及び第2フィルムは、吸引又は押圧によって成形されることとした。
【0030】
また、本発明による熱可塑性樹脂筐体の製造方法では、偏光特性を有するフィルムが所定形状の凹部を有する成形型に当てられ、該フィルムが該凹部の形状に成形され、該フィルムの成形後に、前記成形型に該フィルムを介して射出成形型を当て、該フィルムで形成された凹部の内側に熱可塑性樹脂を射出することにより熱可塑性樹脂板が成形され、前記フィルム上に無色又は有色の透明又は半透明のカバー層を形成することとした。
【0031】
また、本発明による熱可塑性樹脂筐体の製造方法では、熱可塑性樹脂筐体が成形された後に、不要部分をトリミングして除去するようにした。
【0032】
また、本発明による熱可塑性樹脂筐体の製造方法では、偏光特性を有するフィルムが所定形状の凹部を有する成形型上に置かれ、該フィルムを介して、前記成形型に射出成形型を当て、該フィルムと該射出成形型との間に熱可塑性樹脂を射出することにより、該フィルムと共に熱可塑性樹脂筐体が加熱成形されることとした。
【0033】
そして、前記フィルムの被着面には、接着層が設けられ、前記接着層の上面に、ビンディング層が設けられ、前記フィルムの被着面は、易接着処理がされ、或いは、該易接着処理の面上に、接着層が設けられていることとし、さらに、該易接着処理の面上に、ビンディング層を介して接着層が設けられていることとした。
【発明の効果】
【0034】
以上のように、本発明に拠れば、熱可塑性樹脂板と偏光特性を有するフィルムとを重ねた積層体を成形することによって、所定形状に成形された該フィルムに熱可塑性樹脂を射出成形することによって、或いは、偏光フィルムと熱可塑性樹脂とを同時に加熱成形することによって、樹脂筐体を製造するようにしたので、多種多様に突出部が形成された筐体であっても、その全表面について偏光特性を有するフィルムを、皺なく、きれいに貼り付けることができる。そのため、3次元構造を持つ筐体の全表面にわたって、熱可塑性樹脂板自体に施された装飾に加えて、模様の深み、立体感を付与でき、有色樹脂、塗装、メッキ、蒸着などによる手法では表現できない筐体への特殊な装飾、例えば、滑らかに変化する玉虫色の光沢効果を施した筐体を簡単に製造することができる。
【0035】
また、偏光特性を有するフィルムにエンボス加工を施すことにより、外部光の反射により、キラキラと輝くパール装飾の効果を、多種多様に突出部が形成された筐体の全面に簡単に施すことができる。さらに、熱可塑性樹脂板と偏光特性を有するフィルムとを重ねた積層体を成形するとき使用する成形型に凹凸を形成しておくことにより、特殊な装飾が施された突出部自体に凹凸の模様を作製することができる。
【0036】
また、本発明による熱可塑性樹脂筐体は、熱可塑性樹脂板と偏光特性を有するフィルムとを貼り合わせた積層構造を有するので、その特殊な装飾効果は、有色樹脂、塗装、メッキ、蒸着などによる手法による装飾のように、退色などの変化がなく、安定している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
次に、本発明による熱可塑性樹脂筐体とその製造方法に係る実施形態について、図を参照しながら説明する。図1に、第1形態例による熱可塑性樹脂筐体の断面が示されている。図1に示された熱可塑性樹脂筐体B1の形状は、図34に示された筐体Bと同様の形状を例にしている。
【0038】
なお、第1本実施形態で扱われる筐体の形状は、図34の筐体の形状に限られず、物を入れる収納容器、電子部品が組み込まれるケースなどの筐体であって、外側に突出する突出部を有する形状のものであればよく、即ち、箱状の立体的な構造を有し、外形が複雑な凹凸をし、部分的に突出していても装飾対象とすることができる。また、当該筐体が、容器の蓋部であっても、例えば、コンピュータに接続されるマウスの上部カバーケースでも適用できる。さらに、物を入れる収納容器、電子部品が組み込まれるケースなど、或いは、車両のバンパー、オートバイのカウル、ヘルメットなどの筐体にも適用することができる。
【0039】
図1の熱可塑性樹脂筐体B1は、図34の筐体Bにおいては、筐体Bが樹脂材料で成形されただけであるのに対して、図1の熱可塑性樹脂筐体B1では、一枚の偏光特性を有するフィルム2が、皺が発生することなく、筐体の全体にわたって樹脂板1の外表面を覆うように、被着されている。このフィルム2が樹脂板1の全表面に被着されていることによって、樹脂基板1自体への装飾に加えて、例えば、玉虫色の光沢効果の特殊な装飾を施すことができ、筐体をどの方向から見ても滑らかに変化する玉虫色の光沢効果が得られる。
【0040】
ここで、本発明の熱可塑性樹脂筐体に使用される偏光特性を有するフィルム(以降、偏光フィルムと称する)について、図2及び図3を参照して説明する。図2は、偏光フィルムの形成状態を示し、模式的な断面で表している。図2では、偏光フィルム2が、代表的に、薄いフィルムF1乃至F3からなる偏光フィルム2が示されている。フィルムF1乃至F3には、例えば、図2に矢印で示されるように、二軸延伸されたポリエステルフィルムが使用される。各フィルムの屈折率は、この二軸延伸の度合いに応じて変化する。フィルムF1乃至F3の二軸延伸の度合いが異なっており、これらが貼り合わされて積層されると、偏光フィルムが形成される。
【0041】
この積層にあたっては、3枚のフィルムに限られず、これ以上の複数枚が積層されてもよい。また、ここでは、この積層されるフィルムは、二軸延伸ポリエステルフィルムが積層された場合を例にしたが、積層される各フィルムの屈折率が異なっていれば、偏光フィルムを形成できるので、例えば、ポリエステルフィルムとナイロンフィルムのように、異種材料フィルムの組み合わせであってもよい。
【0042】
一般に、異なる屈折率の薄いフィルムを成層した重層薄膜においては、重層の仕方によって、可視光波長領域の光がほぼ完全に反射され、金属光沢が得られる理想型重層薄膜干渉現象と、反射光の波長域が狭まり、反射率が低下し、反射される波長域の色が得られる非理想型重層薄膜干渉現象とがあることは知られている。本発明の熱可塑性樹脂筐体に用いられる偏向フィルムは、これらの薄膜干渉現象を利用して、種々の装飾効果を発現するように、積層される各フィルムの屈折率と膜厚とが調整される。
【0043】
そこで、図3を参照して、以上のように形成された偏光フィルムによる装飾効果の発現原理について説明する。図3では、フィルムF1乃至F3で形成された偏光フィルム2の最外層のフィルムF1を代表的に示している。ここで、可視光L1が、フィルムF1の表面に到達すると、可視光L1の一部分は、光L11として反射され、その他の部分は、光L12としてフィルムF1内に屈折される。そして、屈折された光L12は、フィルムF1の裏面で反射されて、光L11の入射点に対してフィルムF1の表面に到達し、そこで、光L12は、屈折されて、フィルムF1外に出射される。勿論、フィルムの下面での反射は、膜厚によっては完全反射とはならず、光L12の一部はフィルムF2に入射されるので、実際には、反射光としての光L12は、屈折された光L12の一部分である。
【0044】
一方、光L12が出射された位置には、可視光L2が入射されるので、この可視光L2も、可視光L1と同様に、フィルムF1の表面に到達すると、可視光L2の一部分は、光L21として反射され、その他の部分は、光L22としてフィルムF1内に屈折される。そこで、可視光L2の入射点においては、薄膜干渉現象が生じて、反射光である光L21と出射光である光L12とが干渉する。この結果、可視光L1、L2の波長とは異なる波長の光が生成される。複数の薄膜フィルムが積層されている場合には、可視光の入射点では、この入射点での反射光と複数の出射光が干渉することになる。
【0045】
この様に、薄膜フィルムの積層による偏光フィルムの薄膜干渉現象を利用することにより、色素を使用しないで、異なる色の発現させることができ、或いは、金属膜を使用しないでも、金属光沢を実現できる。また、可視光の代わりに、白色光が偏光フィルムに入射される場合には、白色光が、フィルムのプリズム効果によって、長波長から短波長の虹色の光に分解され、分解された各光が白色光の入射点で互いに干渉しあい、結果として、玉虫色の装飾効果を得ることができる。
【0046】
次に、図1に示される第1形態例による筐体の形状による場合を例にして、上述した偏光フィルムを被着した熱可塑性樹脂筐体の製造方法について、図4乃至図6を参照して説明する。本発明による熱可塑性樹脂筐体を形成する素材としては、アクリル、ABS、塩ビ系樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ポリスチロールなどが使用される。また、偏光フィルムには、上述した二軸延伸ポリエステルフィルムの積層膜などを使用することができる。
【0047】
図4に示されたフローチャートに従って、第1形態例による熱可塑性樹脂筐体の製造工程について説明する。先ず、熱可塑性樹脂板1と偏光フィルム2とを貼り合わせられ、積層板を生成する(ステップS1)。ここで、熱可塑性樹脂板1の厚さは、筐体として必要な強度を有していればよく、その板は、例えば、シート状のものでもよい。熱可塑性樹脂板1と偏光フィルム2とを貼り合わせには、接着剤で接着が行われてもよく、或いは、加熱圧着で接着されてもよい。
【0048】
次に、貼り合わせて生成された積層板を所定サイズにプレス抜き加工する(ステップS2)。この加工された積層板が所定形状の凹部を有する成形型の上に載置され、そこで、この成形型を使用して、加熱成形される(ステップS3)。
【0049】
この積層板の加熱成形の様子が、図5に示される。図5では、断面図で示されているが、成形型3は、図1に示された筐体の外形形状に合致する凹部が形成されており、この凹部の上に、熱可塑性樹脂板1と偏光フィルム2とによる所定サイズの積層板が、偏光フィルム2を凹部側にして載置される。
【0050】
ここで、成形型3を用いた真空成形により、所定形状の筐体を加熱成形する場合には、図5においては図示を省略しているが、成形型3の凹部の底部に設けられた真空引き孔から空気を引き抜き、積層体の成形を行う。一方、成形型3を用いた圧空成形により、所定形状の筐体を加熱成形する場合には、成形型3の凹部に載置された積層体の上側から、風圧を加えて、積層体の成形を行う。また、成形型3を用いたプレス成形により、所定形状の筐体を加熱成形する場合には、図5においては図示を省略しているが、成形型3の凹部に見合う形状のメス型のプレス型の押圧によって、積層体の成形を行う。
【0051】
次いで、ステップS3において加熱成形された積層板を成形型3から取出し、積層板の不要部分が切除されると、図1に示されたような形状を有する熱可塑性樹脂筐体が完成する(ステップS4)。以上のような筐体の製造工程に拠れば、外側に突出する突出部を有する形状の熱可塑性樹脂板1の全表面を偏光フィルム2で均一に覆うことができ、偏光フィルムに皺が発生しないので、筐体全体にわたって、どこから見ても、玉虫色の光沢による装飾効果を施すことができる。
【0052】
これまでに説明した第1形態例による熱可塑性樹脂筐体の製造方法では、積層板を加熱成形するときには、所定サイズに切り抜いた積層板が、供給されたが、積層板の加熱成形の前に切り抜く代わりに、積層板の加熱成形にあたっては、積層板を連続シートで供給し、加熱成形後に、筐体部分のみを切り抜くようにしてもよい。
【0053】
また、上述の製造方法においては、熱可塑性樹脂板1と偏光フィルム2とによる積層板が加熱成形の前工程で、予め接着されていたが、この熱可塑性樹脂板1と偏光フィルム2との貼り合わせを、加熱成形時に行うようにしてもよい。この場合の熱可塑性樹脂筐体の製造に関する第2具体例のフローチャートが、図6に示される。ここでも、図1に示された形状の熱可塑性樹脂筐体が製造されるものとし、図5に示された成形型3が使用される。
【0054】
先ず、熱可塑性樹脂板1と偏光フィルム2とが重ねられた状態で、所定サイズにプレス抜き加工される(ステップS11)。所定サイズに加工された熱可塑性樹脂板1と偏光フィルム2とが、偏光フィルム2を下側にして重ねられて成形型3の上に載置される。このときには、熱可塑性樹脂板1と偏光フィルム2とは接着されてなく、重ねられているだけである。
【0055】
次いで、前述したプレス成形の場合と同様に、図5に示された成形型3が用いられ、成形型3に形成された凹部に見合う形状のメス型のプレス型による加圧で、熱可塑性樹脂板1と偏光フィルム2とが、加熱成形されると同時に、加圧接着される(ステップS12)。これで、成形型3の凹部内で熱可塑性樹脂筐体が加熱成形されているので、成形型3から取出し、熱可塑性樹脂板1と偏光フィルム2の不要部分が切除されると、図1に示されたような形状を有する熱可塑性樹脂筐体が完成する。
【0056】
このような筐体の製造工程に拠っても、外側に突出する突出部を有する形状の熱可塑性樹脂板1の全表面を偏光フィルム2で均一に貼り合わされて覆うことができ、偏光フィルムに皺が発生せず、筐体全体にわたって、どこから見ても、玉虫色の光沢による装飾効果を施すことができる。なお、ステップ12における加圧接着の代わりに、熱可塑性樹脂板1と偏光フィルム2との間に、接着剤を介在させて、加熱成形時に接着するようにしてもよい。
【0057】
以上に説明した熱可塑性樹脂筐体に使用される熱可塑性樹脂板1は、所望の着色が施されていても、偏光フィルム2の貼着によって、筐体全体に玉虫色の光沢を有する装飾効果を施すことができるが、この玉虫色光沢の効果を強調して表現するには、樹脂板を黒色にするとよい。樹脂板を黒以外の色で着色した場合には、玉虫色光沢の効果が着色された地色上に表現され、装飾性が多様化される。また、熱可塑性樹脂板1に無色透明な材料を使用した場合には、筐体の内面側を塗装などで着色すると、深みのある装飾に加えて、玉虫色光沢の効果による装飾を施すことができる。この場合に、熱可塑性樹脂板の内側表面を、全面的又は部分的に、そして、単色又は複数色で塗装するようにしてもよく、例えば、模様を描くこともでき、或いは、記号又は文字などによるロゴなどを含ませることができる。
【0058】
一方、熱可塑性樹脂板1に貼り合わされる偏光フィルム2の表面にエンボス加工を施しておくと、筐体の表面がキラキラと輝くパール調の装飾効果を表現することができる。このパール調の装飾効果を出すため、図7(a)には、偏光フィルム2の樹脂板側の表面に、エンボス加工が施されて微細な凹凸が形成された場合が示され、図7(b)には、偏光フィルム2の樹脂板側と反対の表面に、即ち、筐体表面となるが、エンボス加工が施されて微細な凹凸が形成された場合が示されている。
【0059】
これらのように、偏光フィルム2のいずれか一方の表面に、エンボス加工によって多数の凹凸が形成されると、外部光の反射が変化し、キラキラ感が表出される。そのため、凹凸が微細になると、全体表面がパール調の輝きとなり、熱可塑性樹脂板を白色にすると、パールピンクからパールブルーへと変化する装飾効果を際立たせることができる。
【0060】
以上に説明した熱可塑性樹脂筐体の製造工程で使用された成形型3には、図5に示されるように、所定形状の凹部が形成されているだけであったが、この成形型3の凹部の表面に細かい凹凸を形成しておくと、加熱成形時に、この凹凸に従った型押し成形を実現できる。熱可塑性樹脂板1と偏光フィルム1とによる積層板に凹凸に従った模様を形成できる。この場合には、筐体表面にこの凹凸の模様の上に、玉虫色の光沢による装飾効果を施すことができる。
【0061】
また、これまでに説明した熱可塑性樹脂筐体では、偏光フィルムが熱可塑性樹脂板の上に貼り合わされ、筐体の表面を形成していたが、熱可塑性樹脂板を透明な材料で生成されている場合には、その熱可塑性樹脂板の下側、即ち、筐体の内面側に、偏光フィルムを貼り合わせても、玉虫色の光沢による装飾効果を施すことができる。この場合の加熱成形にあたっては、熱可塑性樹脂板1と偏光フィルム2とによる積層板は、図5で示された成形型3に、図示とは反対に、偏光フィルム2を上側にして載置される。
【0062】
一方、偏光フィルムを熱可塑性樹脂基板に貼り合わせる手法により熱可塑性樹脂筐体を製造する代わりに、外側に突出する突出部を形成できる所定形状を有する成形型を用いて、偏光フィルムをその成形型で所定形状に成形した後に、その所定形状の内側に、熱可塑性樹脂で射出成形することにより、熱可塑性樹脂板を形成して、熱可塑性樹脂筐体を製造するようにしてもよい。
【0063】
図8に、この場合における熱可塑性樹脂筐体の製造工程が第3具体例として示されている。図8の(a)乃至(d)は、第3具体例による製造工程を表しており、各工程を断面図で示している。図8における(a)から(b)が製造工程順になっており、この第3具体例による熱可塑性樹脂筐体の製造には、図5に示された成形型3が使用されている。
【0064】
先ず、図8(a)において、所定形状の凹部Mを備えた成形型3に、偏光フィルム2を当てる。このとき、偏光フィルム2は、所定サイズに切り抜かれたものでも、また、連続シートの状態であってもよい。次いで、図には示されていないが、成形型3の凹部M内の空気を引き抜く孔が設けられており、この孔から空気を引き抜くことにより、偏光フィルム2を真空引きして、図8(b)に示されるように、偏光フィルム2が所定形状に加熱成形される。
【0065】
偏光フィルム2を所定形状に成形した後に、その形状を維持したまま、図8(c)に示されるように、成形型3の凹部Mの形状に適合する形状を有した射出側成形型4が、偏光フィルム2が間に介在する形態で、成形型3に合わされる。そこで、射出側成形型4に設けられた射出孔5から、熱可塑性樹脂が射出される。
【0066】
射出された熱可塑性樹脂が、成形型3の凹部において所定形状に成形された後に、射出側成形型4を取り除くと、図8(d)に示されるように、所定形状に成形されて維持された偏光フィルム2の内側に、熱可塑性樹脂板が偏光フィルム2の内面に沿って、所定形状に成形されている。そして、図8(d)において、矢印で示される位置で、偏光フィルム2をトリミングすると、図1に示された形状の熱可塑性樹脂筐体が完成する。
【0067】
なお、このトリミングは、図8(c)の段階で、射出側成形型4に、例えば、切り取り刃などのトリミング機能を備えておくこともできる。また、図8に示された熱可塑性樹脂筐体の製造方法においても、エンボス加工を施した偏光フィルムを使用することができ、筐体に特殊な装飾効果を付与できる。
【0068】
さらに、成形型3のみに、又は、成形型3と射出側成形型4の双方に、凹凸を形成しておくと、熱可塑性樹脂筐体に凹凸の模様を形成することもでき、熱可塑性樹脂の着色も任意に選択できる。樹脂可塑性樹脂が無色透明である場合には、射出成形後に、筐体の内面を全面的に又は部分的に、単色又は複数色で塗装することにより、装飾性を施すことができる。
【0069】
以上の説明では、一枚の偏光フィルムを、皺が発生することなく、筐体の全体にわたって、樹脂板の外表面に被着した熱可塑性樹脂筐体の場合であり、この偏光フィルム2が樹脂板1による筐体の全表面に被着されるように、第1具体例又は第2具体例による製造工程では、偏光フィルムと樹脂板とを予め貼り合わせた積層板が使用されており、この積層板が成形型の所定形状に成形されて、所定形状の熱可塑性樹脂筐体が形成されるものであった。
【0070】
次に説明される所定形状の熱可塑性樹脂筐体を作製する製造方法では、偏光フィルムと樹脂板とが予め貼り合わされた積層板を用いるのではなく、偏光フィルムの成形の後に、熱可塑性樹脂の射出成形を行うことによって、偏光フィルムが熱可塑性樹脂上に被着されるようにして、偏光フィルムが全面に被着された熱可塑性樹脂筐体が作製されるようにした。
【0071】
この様な、成形工程の中で偏光フィルムと樹脂板とを一体的に被着させる製造方法が適用される熱可塑性樹脂筐体の形状は、第1形態例による筐体の形状でもよく、成形型に設けられた凹部の形状を変更することにより、種々の形状の熱可塑性樹脂筐体を製造することができる。ここでは、図9に示される第2形態例の形状を有する熱可塑性樹脂筐体B2を製造する場合について説明する。
【0072】
なお、成形型の凹部形状を変更することにより、種々の形状の熱可塑性樹脂筐体を得ることができるが、この凹部形状によっては、偏光フィルムの成形時に、偏光フィルム全体に不均一な押圧力が作用する場合がある。偏光フィルム自体が元々張力の異なるフィルムの積層によるものであるが、この不均一な押圧力が部分的にその張力を変化させる。この張力変化によって、フィルムの屈折率が変化し、この屈折率が変化した部分における偏光フィルムの発色状態が、他の部分と異なることになる。
【0073】
そこで、この張力変化を積極的に利用すると、偏光フィルムの発色状態に変化を与えることができ、これを装飾に用いて、高い質感を表現することが可能となる。例えば、図9に示された第2形態例のように、偏光フィルムが小さな半径で折れ曲がるように押圧されると、部分的に偏光フィルムの張力が異なるようになり、部分的に屈折率が異なり、その部分の発色が変化する。そのため、この発色の原理を積極的に利用できるように、成形型の凹部形状に適当に凹凸を設けておくと、部分的に変化した装飾効果が得られ、装飾性を向上できる。
【0074】
次に、図9の第2形態例による熱可塑性樹脂筐体B2の製造方法において、先ず、成形型に設けられた第2形態例の形状を有する凹部M内に、偏光フィルムを成形する場合について説明する。ここでは、前述した偏光フィルム2が、図10(a)に示されるように、用意される。偏光フィルム2は、所定サイズに切り抜かれたものでも、或いは、連続するロールシート状のものでもよい。
【0075】
図10(b)に示されるように、第2形態例の形状を有する凹部Mが設けられた成形型31の上に、偏光フィルム2を載置する。このとき、偏光フィルム2を成形型31に押し付け易くするため、成形型31自体を適温に加熱しておく。次いで、図10(c)に示されるように、例えば、エアーなどの吹き付けによって押圧力を偏光フィルム2に加え、偏光フィルム2を、成形型31の凹部Mの内面に押し付け、変形させて成形する。
【0076】
一方、図10(a)乃至(c)における偏光フィルムの成形では、図10(b)において、成形型31を適温に加熱するようにしたが、偏光フィルム2自体も、図10(a)の段階で、適温に加熱しておくと、偏光フィルムを変形し易くなり、成形型に押し付け易くなる。この場合、成形型31の加熱をしなくても、偏光フィルムが変形し易くなっているので、成形型に押し付け易くなっている。なお、エアーなどの吹き付けによる押圧で偏光フィルムを成形する代わりに、成形型31に1個又は複数個の吸引孔を設けておき、この吸引孔から凹部M内の空気を吸引することによって、偏光フィルムを成形することができる。
【0077】
次に、偏光フィルム2の押圧による成形を採用した場合における熱可塑性樹脂筐体B2に係る製造工程の第4具体例を説明する。この第4具体例による製造工程が、図11に示されている。図11の(a)乃至(d)は、第4具体例による製造工程を表しており、各工程を断面図で示している。第3具体例の場合と同様に、図11における(a)から(b)が製造工程順になっており、この第4具体例による熱可塑性樹脂筐体B2の製造には、図10に示された成形型31が使用されている。
【0078】
先ず、図11(a)において、所定形状の凹部Mを備えた成形型31に、偏光フィルム2を当てる。次いで、図11(b)に示されるように、エアーなどの吹き付けによる押圧で、偏光フィルム2が所定形状に加熱成形される。
【0079】
偏光フィルム2を所定形状に成形した後に、その形状を維持したまま、図11(c)に示されるように、成形型31の凹部Mの形状に適合する形状を有した射出側成形型41が、偏光フィルム2が間に介在する形態で、成形型31に合わされる。そこで、射出側成形型41に設けられた射出孔51から、熱可塑性樹脂が射出される。
【0080】
射出された熱可塑性樹脂が、成形型31の凹部Mにおいて所定形状に成形された後に、射出側成形型41を取り除き、成形型31から取り出すと、図11(d)に示されるように、所定形状に成形されて維持された偏光フィルム2の内側に、熱可塑性樹脂が偏光フィルム2の内面に沿って、所定形状に成形される。そして、図11(d)において、矢印で示される位置で、偏光フィルム2をトリミングすると、図9に示された形状の熱可塑性樹脂筐体B2が完成する。
【0081】
一方、図12には、成形型の凹部に連通する1個又は複数個の吸引孔が設けられている場合の熱可塑性樹脂筐体の製造工程が第5具体例として示されている。図12では、成形型32に、代表的に、1個の吸引孔6が設けられている。先ず、図12(a)において、所定形状の凹部Mを備えた成形型32に、偏光フィルム2を当てる。次いで、図12(b)に示されるように、吸引孔6から、凹部M内の空気を吸引し、偏光フィルム2が所定形状に加熱成形される。
【0082】
偏光フィルム2を所定形状に成形した後に、その形状を維持したまま、図12(c)に示されるように、成形型32の凹部Mの形状に適合する形状を有した射出側成形型41が、偏光フィルム2が間に介在する形態で、成形型32に合わされる。そこで、射出側成形型41に設けられた射出孔51から、熱可塑性樹脂が射出される。
【0083】
射出された熱可塑性樹脂が、成形型32の凹部Mにおいて所定形状に成形された後に、射出側成形型41を取り除き、成形型32から取り出すと、図12(d)に示されるように、所定形状に成形されて維持された偏光フィルム2の内側に、熱可塑性樹脂が偏光フィルム2の内面に沿って、所定形状に成形される。そして、図12(d)において、矢印で示される位置で、偏光フィルム2をトリミングすると、図9に示された形状の熱可塑性樹脂筐体B2が完成する。
【0084】
ところで、第5具体例による製造工程に使用される成形型において、その凹部に連通する吸引孔が設けられている場合には、図13(a)で示された丸で囲まれた部分において、偏光フィルム2に、図13(b)に示されるような異形状部分が生起されることがある。つまり、偏光フィルム2を成形し易くするために加熱されるので、吸引孔の大きさを大きくすると、吸引孔6からの吸引力によって、平に成形されるべき偏光フィルム2の一部が変形されてしまう。
【0085】
そのため、成形型32に設けられる吸引孔6の穴径は、吸引速度に合わせて決められ、吸引が一箇所に集中しないように、複数個の吸引孔を、適宜分散して設けることで、異形状部分の発生を防止できる。
【0086】
次に、第5具体例の場合と同様に、成形型の凹部から空気を吸引して、偏光フィルムを成形する場合であるが、成形時の異形状部分が、筐体の主表面に発生しないようにし、筐体の主表面は、きれいな装飾効果を表出できる熱可塑性樹脂筐体の製造方法について説明する。
【0087】
この製造方法で製造される熱可塑性樹脂筐体の第3形態例を、図14に示した。第3形態例では、図9に示した第2形態例の場合と異なり、一つのブロックに成形された熱可塑性樹脂11が熱可塑性樹脂筐体B3の本体を形成しており、その全面に、偏光フィルム2が被着されている。余分な偏光フィルムは、第2形態例の場合と同様に、熱可塑性樹脂筐体B3の端部でトリミングされて取り除かれ、筐体の製造が完成する。
【0088】
ここで、第3形態例による熱可塑性樹脂筐体B3を製造するとき、偏光フィルムの成形時における吸引によって、図13(b)に示すような異形状部分が筐体の主表面に生起されると、装飾上、問題になることがある。この問題を回避する手法として、図13に示されるように、成形型に設ける吸引孔を複数個に分散させることもできる。これに対して、図14に示された第3形態例の場合のように、筐体の端部に異形状部分が発生していても、筐体の主表面に、異形状部分がなければ、装飾上、問題がないこともある。
【0089】
この様な場合に対処するため、図15に示された矢印のように、偏光フィルム2の成形時に使用する成形型34において、筐体の端部に該当する位置から集中して吸引することもできる。この手法によれば、筐体の端部に該当する位置に、偏光フィルム2に異形状部分が生じていても、筐体の主表面には、異形状部分が存在しないので、筐体の装飾上の問題を回避することができる。偏光フィルム2が成形型34に成形された後における筐体製造工程は、図12に示された第5具体例と同様である。
【0090】
以上では、偏光フィルム2を成形する成形型34に吸引孔を筐体端部に該当する位置に設ける場合について説明したが、次に、この吸引孔の設け方を工夫した第6具体例による熱可塑性樹脂筐体の製造方法について、図16を参照して説明する。ここでは、偏光フィルム2を成形するための成形型の凹部Mに連通する小凹部mを設けておき、この小凹部mから吸引するようにし、筐体の端部に該当する位置に、偏光フィルム2に異形状部分が生じるが、筐体の主表面には、異形状部分が存在しない状態で、製造が完成される。
【0091】
図16では、成形型35に、代表的に、凹部Mに連通する小凹部mが設けられている。この小凹部mは、凹部Mの周囲に複数箇所に設けられていてもよい。この小凹部mには、吸引孔64が設けられている。先ず、図16(a)において、所定形状の凹部Mとこれに連通する小凹部mとを備えた成形型35に、偏光フィルム2を当てる。次いで、図16(b)に示されるように、吸引孔6から、小凹部mを経由して凹部M内の空気を吸引し、偏光フィルム2が、凹部Mに対応する所定形状に従って、さらに、小凹部mの形状に従って加熱成形される。
【0092】
偏光フィルム2を所定形状に成形した後に、その形状を維持したまま、図16(c)に示されるように、平らな成形面を有した射出側成形型42が、偏光フィルム2を介在させて、成形型35に合わされる。そこで、射出側成形型42に設けられた射出孔52から、熱可塑性樹脂が射出される。
【0093】
射出された熱可塑性樹脂が、成形型35の凹部Mと小凹部mとにおいて所定形状に成形された後に、射出側成形型42を取り除き、成形型32から取り出すと、図16(d)に示されるように、所定形状に成形されて維持された偏光フィルム2の内側に、熱可塑性樹脂11が、偏光フィルム2の内面に沿って、所定形状に成形される。そして、図16(d)において、矢印で示される位置で、偏光フィルム2をトリミングすると、図14に示された第3形態例による熱可塑性樹脂筐体B3が完成する。
【0094】
ここで、図16(d)に示される丸印の位置において、偏光フィルム2に吸引孔64による異形状部分が生じてしまうが、矢印の位置でトリミングされるので、この異形状部分は、完成した熱可塑性樹脂筐体B3から切り離され、関係なくなる。さらに、熱可塑性樹脂11は、凹部Mと小凹部mと連通部分で切り離されるので、この切り離し部分だけにおいては、偏光フィルム2による装飾効果を得ることができないが、熱可塑性樹脂筐体B3の主表面に係る装飾効果には影響しない。
【0095】
なお、図16に示した第6具体例による熱可塑性樹脂筐体の製造方法では、図9に示された第3形態例の筐体が製造さわれ、一つのブロックによる熱可塑性樹脂の表面に偏光フィルムを被着させる場合であったが、図16(c)に示された射出側成形型42の代わりに、図12(c)に示された第5具体例による熱可塑性樹脂筐体の製造方法に使用された射出側成形型41を使用することにより、図9に示された第2形態例による熱可塑性樹脂筐体B2を製造することができる。
【0096】
以上に説明した製造方法で製造される熱可塑性樹脂筐体の第1乃至第3形態例では、外側に突出する所定形状の突出部を有する形態、例えば、全体として、皿型、椀型などを有する形状の熱可塑性樹脂筐体であり、その外面にのみ、偏光フィルムを被着する場合であった。次に、その両面に、偏光フィルムを被着させた熱可塑性樹脂筐体の製造方法について、図17乃至図19を参照して説明する。
【0097】
図17は、偏光フィルムが筐体の両面に被着される第4形態例の熱可塑性樹脂筐体B4の断面図を示している。熱可塑性樹脂筐体B4は、全体として、断面が樋状の形態を有し、その外側と内側の両面において、偏光フィルムによる装飾効果が期待され、その端面においては、その装飾効果を必要とされていないものである。
【0098】
そこで、図17に示された第4形態例による熱可塑性樹脂筐体B4の製造方法が、図18及び図19に、第7具体例として示されている。ここに示された第7具体例による製造方法では、前述した第3乃至第6具体例の場合と異なり、2枚の偏光フィルムが用意され、各偏光フィルムをそれぞれ成形するための成形型が必要となる。
【0099】
先ず、図18(a)において、外側用の偏光フィルム2と、外側用の偏光フィルム21が用意される。偏光フィルム2を成形する成形型32には、所定形状の凹部Mが設けられており、偏光フィルム21を成形する成形型43には、凹部Mに整合する凸部が設けられている。偏光フィルム2は、成形型32に、そして、偏光フィルム21は、成形型43にそれぞれ当てられる。
【0100】
次いで、図18(b)に示されるように、吸引孔6から、凹部M内の空気を吸引し、偏光フィルム2が、凹部Mに対応する所定形状に従って加熱成形される。一方、内側用の偏光フィルム21について、成形型43に設けられた吸引孔65から空気を吸引し、偏光フィルム21が、成形型43の形状に従って加熱成形される。なお、図18では、成形型43には、代表的に、一個の吸引孔65が示されており、実際には、成形型43の成形面の形状が凸部を有しているので、複数個の吸引孔が設けられる。或いは、偏光フィルム21の成形に当っては、吸引方式の代わりに、前述した押圧方式を採用することができる。
【0101】
偏光フィルム2を凹部Mの形状に成形し、さらに、偏光フィルム21を凸部の形状に成形した後に、それらの形状を維持したまま、図19(a)に示されるように、成形型32と成形型43とが合わされる。ここで、偏光フィルム2と偏光フィルム21との間に、第9形態例の筐体形状に従う空間が形成される。そこで、図19(a)の矢印で示されるように、その空間の端部、即ち、紙面と直角方向の部位から、熱可塑性樹脂が該空間に射出される。
【0102】
射出された熱可塑性樹脂が、成形型32の凹部Mの所定形状に成形された後に、成形型32と成形型43とを取り除き、成形型から取り出すと、図19(b)に示されるように、所定形状に成形されて維持された偏光フィルム2と偏光フィルム21との間で、熱可塑性樹脂12が、所定形状に成形される。そして、図19(b)において、矢印で示される位置で、偏光フィルム2と21をトリミングすると、図17に示された第4形態例による熱可塑性樹脂筐体B4が完成する。この熱可塑性樹脂筐体B4では、筐体の外側と内側に装飾効果を期待するものであるので、筐体の両端部において、偏光フィルムに異形状部分が存在していても、装飾上の問題にならないし、或いは、両端部が不要であれば、切り落とすこともできる。
【0103】
これまでに説明してきた熱可塑性樹脂筐体の形態例では、熱可塑性樹脂の表面上に、偏光フィルムが被着されていた。この形態例では、偏光フィルムによる装飾効果が表出されるものであり、有色樹脂、塗装、メッキ、金属などの蒸着、などでは、表現できない玉虫色、パールピンクからパールブルーへの変色などの装飾を施すことができるが、さらに、これらの装飾に深みを与え、質感を向上することが期待される場合がある。この場合には、偏光フィルムの面上に、クリアなコート層を施す。また、このコート層を施すことにより、例えば、耐候性の向上を図ることができる。
【0104】
図20に、偏光フィルムの面上にクリアなコート層を施した熱可塑性樹脂筐体の第5形態例を示した。図20(a)は、クリアコート層が施される熱可塑性樹脂筐体の構成が示されている。この筐体は、成形された熱可塑性樹脂1の外面上に偏光フィルム2が被着されている。
【0105】
図20(b)には、第5形態例による熱可塑性樹脂筐体B5の一例が示されている。ここでは、熱可塑性樹脂1に被着された偏光フィルム2の全面に、クリアコート層7が施されている。このクリアコート層7は、一定の透過率を有していればよく、有色であってもよい。
【0106】
図20(b)には、第5形態例による熱可塑性樹脂筐体B5の他の例が示されている。ここでは、熱可塑性樹脂1に被着された偏光フィルム2の全面に、熱可塑性樹脂によるコート層71が施されている。このコート層71も、コート層7と同様に、一定の透過率を有していればよく、有色であってもよい。このコート層71は、樹脂成形品を更に成形する二重成形などで形成される。
【0107】
図21は、第5形態例による熱可塑性樹脂筐体B5の他の例で用いられるコート層71に関する樹脂成形の様子を示している。成形型8には、前述した各具体例による製造方法で製造された熱可塑性樹脂筐体の内側の形状に合う凸部が設けられ、この凸部に、熱可塑性樹脂筐体が載置される。そして、その上方には、コート層を樹脂成形する凹部を有する射出側成形型44が配置される。この成形型44に備えられた射出孔53から熱可塑性樹脂を射出する。その後、成形型8と成形型44を取り外すと、図20(c)に示される熱可塑性樹脂筐体B5が完成する。
【0108】
なお、図21では、成形型44に設けられた凹部は、熱可塑性樹脂筐体の形状に沿った形状にしてあるため、樹脂で成形されコート層71は、均一な厚さを有するものとなったが、この凹部の形状に、更に凹凸を形成しておくと、また更に装飾性を追加することができる。
【0109】
以上では、各具体例を示して、熱可塑性樹脂筐体の製造方法を中心にして説明したが、次に、熱可塑性樹脂に偏光フィルムを被着するときの密着性の向上について説明する。その密着性の向上のための易接着の仕方が、図22(a)乃至(f)に示されている。各図では、積層状態が、断面で示されている。
【0110】
図22(a)では、熱可塑性樹脂1と偏光フィルム2とを密着させるため、射出成形される熱可塑性樹脂1と、偏光フィルム2とを同等材質によるものを組み合わせている。例えば、共に、ポリエステルとする。これにより、偏光フィルムと熱可塑性樹とが、射出成形時の樹脂の温度、圧力、或いは、温度と圧力の効果によって、融着し、或いは、偏光フィルムと熱可塑性樹脂が同種材料であることによる分子間引力などによる効果によって、密着する。
【0111】
図22(b)では、熱可塑性樹脂1と偏光フィルム2とを密着させるため、偏光フィルム2に予め接着層aをコーティングしている。例えば、成形樹脂を、PMMAとした場合、偏光フィルムに接着層aとして、ポリ塩化ビニル−ポリ酢酸ビニル共重合体を予めコーティングしておく。射出成形時の樹脂の温度、圧力、或いは、温度と圧力により、接着層aが接着機能を発揮し、密着性が向上する。
【0112】
図22(c)では、熱可塑性樹脂1と偏光フィルム2とを密着させるため、予め、偏光フィルム2の密着面を、例えば、易接着のための表面改質処理bを施しておく。この改質処理bが施されていることにより、射出成形時の樹脂の温度、圧力、或いは、温度と圧力により、熱可塑性樹脂1と偏光フィルム2の密着性が向上する。
【0113】
図22(d)は、図22(a)の場合における接着層aと成形樹脂1との密着性を向上するため、予め、偏光フィルム2上の接着層aの上面に、ビンディング層cをコーティングしておく。これにより、射出成形時の樹脂の温度、圧力、或いは、温度と圧力により、熱可塑性樹脂1と偏光フィルム2の密着性が向上する。
【0114】
図22(e)では、図22(a)の場合における接着層aと偏光フィルム2との密着性を向上するため、予め、偏光フィルム2の密着面を、例えば、易接着のための表面改質処理bを施しておく。この改質処理bが施されていることにより、射出成形時の樹脂の温度、圧力、或いは、温度と圧力により、熱可塑性樹脂1と偏光フィルム2の密着性が向上する。
【0115】
図22(f)では、図22(a)の場合における接着層aと偏光フィルム2との密着性を向上するため、予め、偏光フィルム2の密着面を、例えば、易接着のための表面改質処理bを施しておき、更に、この改質処理bが施された面上に、接着層aと偏光フィルム2との接着性を改善するためのビンディング層cを介在させておく。これらにより、射出成形時の樹脂の温度、圧力、或いは、温度と圧力により、熱可塑性樹脂1と偏光フィルム2の密着性が向上する。
【0116】
なお、密着性の向上対策は、図22(a)乃至(f)に示された組み合わせ例に限定されない。偏光フィルムと熱可塑性樹脂との密着性向上には、これらの組み合わせ以外にも、接着層、ビンディング層、偏光フィルム表面の改質処理の組み合わせ方がありえる。
【0117】
次に、偏光フィルムが被着された熱可塑性樹脂筐体における装飾例について、以下に、説明する。図23に、熱可塑性樹脂筐体における第2装飾例が示されている。パソコン、電化製品などに使用される樹脂筐体には、一般的に、社名、品名、ロゴなどの捺印が要求される。この様な捺印を、本発明による熱可塑性樹脂筐体への装飾として適用する場合について説明する。そこで、図23(a)に示された偏光フィルム2の成形前に、図23(b)に示されるように、偏光フィルム2の成形樹脂1との密着面側に、例えば、社名、品名、ロゴなど表す「FFFFFFFF」のように、文字又は記号、或いは、図形などを塗装などで捺印層を形成しておく。
【0118】
そこで、図23(c)に示されるように、裏面に印刷された偏光フィルム2を所定形状に成形し、熱可塑性樹脂1を射出成形することにより、熱可塑性樹脂筐体B6が完成する。図24は、図22(b)にしめされる密着向上対策を施した熱可塑性樹脂筐体に第2装飾例を適用した場合が断面図で示されている。図24は、熱か塑性樹脂筐体B6の完成状態を示し、捺印層dが接着層aと偏光フィルム2との間に挟み込まれて固定されている。
【0119】
なお、図23(c)に示されるように、捺印層は、偏光フィルムの平面に形成されるので、図23(c)に示されるように、熱可塑性樹脂筐体B6が立体的に成形されると、捺印層が歪むことがある。この場合には、この歪状態を事前に把握しておき、成形されたときに、正常な形状になるように修正しておくとよい。また、捺印層の形成は、図22(b)の場合に限られず、他の密着改善対策例の場合にも適用することができる。
【0120】
図25には、熱可塑性樹脂筐体における第2装飾例の他の具体例が示されている。第2装飾例の他の具体例では、偏光フィルム2自体に蝕刻を施して、偏光フィルム2による装飾効果に加えて、その蝕刻により装飾を表現しようとしている。図25(a)には、第3装飾例の一例として、熱可塑性樹脂筐体の完成後において、偏光フィルム2の上面に、例えば、炭酸ガスレーザ光によって蝕刻し、捺印処理層eを形成する。この捺印処理層eの形成は、偏光フィルム2の成形前に行われてもよい。
【0121】
図25(b)には、図24に示された第2装飾例の捺印層dに、更に、蝕刻による捺印処理層eを組み合わせた場合が示されている。なお、蝕刻に、炭酸ガスレーザ光が使用されているが、偏光フィルム2が透明体であるため、このレーザ光は、この透明体の加工に適している。
【0122】
これまでに、偏向フィルムの被覆又は貼着による熱可塑性樹脂筐体の装飾の仕方について、種々の形態を挙げて説明してきた。上述した第2乃至第4形態例で示された各具体例による熱可塑性樹脂筐体では、熱可塑性樹脂に装飾を施す仕方として、偏光フィルムが所定形状の凹部を有する成形型に当てられ、該凹部からの吸引により、或いは、エアーなどの吹き付けによる押圧力により、該偏光フィルムを該凹部の形状に成形した後に、熱可塑性樹脂を該凹部に射出した。これで、偏向フィルムが被着された熱可塑性樹脂筐体を得ていた。
【0123】
しかし、これらの形態例とは異なり、該偏光フィルムを該凹部の形状に成形した後に、熱可塑性樹脂を該凹部に射出して、偏向フィルムを熱可塑性樹脂に被着するのではなく、熱可塑性樹脂の射出の際に偏向フィルムを熱可塑性樹脂に皺無く被着させることもできる。この装飾の仕方によれば、成形型に空気吸引孔を設ける必要がなくなり、或いは、エアーなどの吹付け装置を特別に備える必要もなくなる。
【0124】
ここで、図11に示された熱可塑性樹脂筐体に係る第4具体例による製造工程を参考にした変形例として、図26に、熱可塑性樹脂の射出の際に偏向フィルムを熱可塑性樹脂に被着させる工程図を示した。図26に示された変形例では、図11の場合と同様に、所定形状の凹部Mを有する成形型31と、熱可塑性樹脂を凹部に射出する射出側成形型41とが使用される。この変形例による製造工程が、図26の(a)乃至(d)に示され、各製造工程を、成形型の断面図で示している。図11の場合と同様に、図26における(a)から(b)が製造工程順になっている。
【0125】
先ず、図26(a)において、所定形状の凹部Mを備えた成形型31に、偏光フィルム2を当てる。次いで、図26(b)に示されるように、射出側成形型41が、偏向フィルムを介在させて、成形型31に押し当てられる。このとき、図示のように、偏光フィルム2は、射出側成形型41によって、凹部M内に押圧されて撓む。
【0126】
その後に、この状態を維持したまま、図26(c)に示されるように、射出側成形型41に設けられた射出孔51から、熱可塑性樹脂が射出される。このとき、射出された熱可塑性樹脂の射出圧と熱とによって、偏光フィルム2が、成形型31の凹部Mの内面に押し付けられる。そのため、偏光フィルム2は、凹部Mの所定形状に成形されると同時に、熱可塑性樹脂に被着される。この成形によって、偏光フィルム2は、熱可塑性樹脂の射出圧と熱によって伸ばされて、皺が発生すること無く被着される。
【0127】
射出された熱可塑性樹脂が、成形型31の凹部Mにおいて所定形状に成形された後に、射出側成形型41を取り除き、成形型31から取り出すと、図26(d)に示されるように、所定形状に成形されて維持された偏光フィルム2の内側に、熱可塑性樹脂が偏光フィルム2の内面に沿って、所定形状に成形される。そして、図26(d)において、矢印で示される位置で、偏光フィルム2をトリミングすると、図9に示された形状の熱可塑性樹脂筐体B2が完成する。
【0128】
以上において、本発明による熱可塑性樹脂筐体は、筐体本体が連続する面を有する一枚の樹脂で形成されている場合を例にして説明されたが、この場合に限られること無く、例えば、筐体本体の中程に、所定形状の開口部が存在する場合でも、本発明による熱可塑性樹脂筐体の製造方法を適用して、筐体を製造することができる。この製造方法では、一枚の偏光フィルムを成形した後に熱可塑性樹脂を成形していることから、当該開口部にも、この偏光フィルムが存在する。この場合には、熱可塑性樹脂筐体の製造工程の最後で、余分な偏光フィルムを除去するトリミングが行われているので、このときに、当該開口部に存在する偏光フィルムもトリミングで除去すればよい。
【0129】
また、以上の夫々の製造方法による熱可塑性樹脂筐体は、物を収納するための容器に使用することができるが、太陽光などの自然光や、有機EL、発光ダイオードなどによる発光を透過するように、熱可塑性樹脂板を透明又は半透明にすることにより、自然光などの外部光は玉虫色に反射され、内部からの発光はそのまま外部に投射されるようになるので、熱可塑性樹脂筐体を、特殊な装飾効果を施した装飾物とすることもできる。
【0130】
さらに、熱可塑性樹脂筐体を電子機器のケース、パネルなどに利用するとき、該電子機器の表示機能のために、有機EL、発光ダイオードなどによる発光素子が備えられている場合には、熱可塑性樹脂板を半透明にしておくことにより、発光素子が点灯されていない時には、外部からは発光素子が隠れて見えなくなり、筐体表面には外部光による玉虫色効果が表出される。反対に、発光素子が点灯された時には、外部から、点灯による発光を認識することができ、玉虫色の装飾効果が表出された筐体表面において、発光表示を行うことができる。
【0131】
次に、以上のような装飾効果が得られる本発明による第1乃至第5形態例の製造工程による熱可塑性樹脂筐体の適用例が、図27乃至図32に示される。以下に、それらの適用例について説明する。
【0132】
図27(a)及び(b)には、第1乃至第5形態例の製造工程による熱可塑性樹脂筐体を利用したパーソナルコンピュータ及びその関連製品への適用例が示されている。図27(a)は、パーソナルコンピュータにおける本体ケース、表示パネルの収納ケース、或いは、キーボードの各キーなどに本発明による装飾効果を施す場合が示されている。これらの場合では、各ケースを一体成形する際に、平坦部だけでなく曲面部も含めて、ケース全体に渡って、装飾効果を施すことができる。図27(b)には、パーソナルコンピュータに接続される周辺機器、例えば、マウスの適用例が示される。マウスのように、その全体が複雑な曲面を有する場合でも、偏光フィルムに皺が発生せず、マウス全体に装飾効果を表出させることができる。
【0133】
次に、図28(a)乃至(c)には、第1乃至第5形態例の製造工程による熱可塑性樹脂筐体を利用した携帯電子機器への適用例が示されている。携帯電子機器として、図28(a)には、携帯電話機を例にした場合が、図28(b)には、ポータブル・オーディオプレイヤーを例にした場合が、そして図28(c)には、ポータブル・ゲームプレイヤーを例にした場合が、それぞれ示されている。これらの携帯電子機器においても、樹脂筐体が使用されることが多く、その筐体は複雑な曲面と平面で形成されているので、この筐体への装飾を施すためには、本発明による熱可塑性樹脂筐体を適用することにより、機器の筐体の装飾を、簡単に、且つ、効果的に施すことができる。
【0134】
図29(a)及び(b)には、第1乃至第5形態例の製造工程による熱可塑性樹脂筐体を利用した家電製品への適用例が示されている。家電製品の代表例として、図29(a)には、テレビジョン装置を例にした場合が、そして図29(b)には、天井取付け照明器具を例にした場合が示されている。テレビジョン装置の場合には、液晶表示パネルを収納するベゼル部や、装置の支持台などの装飾に本発明の熱可塑性樹脂筐体を使用することができる。また、図29(b)では、天井取付け照明器具が、取付け台、蛍光灯支持部、照明用カバー又はグローブに分解して示されているが、これらの部品において、装飾が必要な部分に、本発明による偏光フィルムによる装飾を適用することができる。
【0135】
図30(a)及び(b)には、第1乃至第5形態例の製造工程による熱可塑性樹脂筐体を利用した調度品又は備付け機器への適用例を説明する図である。図30(a)には、樹脂製インテリアとして、ドレッサー台を例にした場合が、そして図30(b)には、アミューズメント関連機器として、パチンコ台を例にした場合が示されている。これらの場合においても、装飾が必要な部分に、本発明による偏光フィルムによる装飾を適用することができる。
【0136】
図31(a)乃至(c)には、第1乃至第5形態例の製造工程による熱可塑性樹脂筐体を利用した事務用品、装飾具、玩具などの製品への適用例が示されている。図31(a)には、樹脂製事務用品として、ボールペンなどの筆記具を例にした場合が、図31(b)には、身体に装着する樹脂製アクセサリーとして、腕輪、ヘアバンドなどを例にした場合が、そして図31(c)には、玩具として、プラスチックモデルによるロボットを例にした場合が、それぞれ示されている。これらの場合においても、装飾が必要な部分に、樹脂製部品の成形時に、本発明による偏光フィルムによる装飾を適用することができる。
【0137】
さらに、図32(a)及び(b)には、第1乃至第5形態例の製造工程による熱可塑性樹脂筐体を利用した車両用内外装飾物への適用例が示されている。図32(a)には、車両用外装物として、乗用車などのバンパーを例にした場合が、そして図32(b)には、車両用内装物として、乗用車などにおける運転席のフロントパネルを例にした場合が示されている。これらの場合においても、装飾が必要な部分に、樹脂製部品の成形時に、本発明による偏光フィルムによる装飾を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】熱可塑性樹脂に装飾が施された本発明による熱可塑性樹脂筐体の第1形態例を説明する断面図である。
【図2】偏光フィルムの構成例を説明する図である。
【図3】多層フィルムにおける薄膜干渉の原理を説明する図である。
【図4】本発明の熱可塑性樹脂筐体に係る製造工程の第1具体例を説明するフローチャートである。
【図5】第1具体例による熱可塑性樹脂筐体の製造工程における成形工程を説明する図である。
【図6】本発明の熱可塑性樹脂筐体に係る製造工程の第2具体例を説明するフローチャート図である。
【図7】本発明の熱可塑性樹脂筐体における第1装飾例を説明する断面図である。
【図8】本発明の熱可塑性樹脂筐体に係る製造工程の第3具体例を説明する工程図である。
【図9】本発明による熱可塑性樹脂筐体の第2形態例を説明する図である。
【図10】偏光フィルムを成形型に装着する手順を説明する図である。
【図11】本発明の熱可塑性樹脂筐体に係る製造工程の第4具体例を説明する工程図である。
【図12】本発明の熱可塑性樹脂筐体に係る製造工程の第5具体例を説明する工程図である。
【図13】偏光フィルムが成形型に装着されたときにおける偏光フィルム変形の対処について説明する図である。
【図14】本発明による熱可塑性樹脂筐体の第3形態例を説明する図である。
【図15】第3形態例による熱可塑性樹脂筐体の製造工程における偏光フィルムの成形型への装着について説明する図である。
【図16】本発明の熱可塑性樹脂筐体に係る製造工程の第6具体例を説明する工程図である。
【図17】本発明による熱可塑性樹脂筐体の第4形態例を説明する図である。
【図18】本発明の熱可塑性樹脂筐体に係る製造工程の第7具体例を説明する工程図である。
【図19】第7具体例に係る製造工程の続きを説明する工程図である。
【図20】本発明による熱可塑性樹脂筐体の第5形態例を説明する図である。
【図21】第5形態例の熱可塑性樹脂筐体の製造工程について説明する図である。
【図22】本発明による熱可塑性樹脂筐体における偏光フィルムと熱可塑性樹脂との易接着の仕方について説明する図である。
【図23】本発明の熱可塑性樹脂筐体における第2装飾例を説明する図である。
【図24】第2装飾例における具体例を説明する断面図である。
【図25】第2装飾例における他の具体例を説明する断面図である。
【図26】図11に示された第4具体例による熱可塑性樹脂筐体に係る製造工程の変形例を説明する工程図である。
【図27】第1乃至第5形態例の製造工程による熱可塑性樹脂筐体を利用したパーソナルコンピュータ及びその関連製品への適用例を説明する図である。
【図28】第1乃至第5形態例の製造工程による熱可塑性樹脂筐体を利用した携帯電子機器への適用例を説明する図である。
【図29】第1乃至第5形態例の製造工程による熱可塑性樹脂筐体を利用した家電製品への適用例を説明する図である。
【図30】第1乃至第5形態例の製造工程による熱可塑性樹脂筐体を利用した調度品又は備付け機器への適用例を説明する図である。
【図31】第1乃至第5形態例の製造工程による熱可塑性樹脂筐体を利用した事務用品、装飾具、玩具などの製品への適用例を説明する図である。
【図32】第1乃至第5形態例の製造工程による熱可塑性樹脂筐体を利用した車両用内外装飾物への適用例を説明する図である。
【図33】従来技術による筐体の一部に係る断面図である。
【図34】従来技術による筐体の形状を説明する断面図である。
【符号の説明】
【0139】
1、11、12 熱可塑性樹脂
2、21 偏光フィルム
3、31〜35、8 成形型
4、41〜44 射出側成形型
5、51〜53 射出孔
6、61〜65 吸引孔
7、71 コート層
B、B1〜B6 筐体
C 凹凸部
F1〜F3 フィル
M、m 凹部
a 接着層
b 易接着処理層
c ビンディング層
d 捺印層
e 捺印処理層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲面を含む所定形状の突出部を有する熱可塑性樹脂筐体において、
前記突出部を形成する熱可塑性樹脂体に、前記所定形状に合わせて、偏光特性を有するフィルムを被着したことを特徴とする熱可塑性樹脂筐体。
【請求項2】
前記フィルムは、前記熱可塑性樹脂体に接着層を介して貼り合わされていることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂筐体。
【請求項3】
前記フィルムは、前記熱可塑性樹脂体に接着層及びビンディング層を介して貼り合わされていることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂筐体。
【請求項4】
前記フィルムは、前記熱可塑性樹脂体に加熱圧着され貼り合わされていることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂筐体。
【請求項5】
前記フィルムは、前記熱可塑性樹脂体に接着層を介して加熱圧着され貼り合わされていることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂筐体。
【請求項6】
前記フィルムは、少なくとも片方の表面にエンボス加工が施されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂筐体。
【請求項7】
貼り合わされた前記熱可塑性樹脂体と前記フィルムは、凹凸が施されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂筐体。
【請求項8】
前記熱可塑性樹脂体は、着色されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂筐体。
【請求項9】
前記熱可塑性樹脂体は、前記突出部が透明な板で形成され、該突出部の内側表面が全面的又は部分的に単色又は複数色で装飾されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂筐体。
【請求項10】
前記フィルムの表面が、捺印によって装飾されていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂筐体。
【請求項11】
前記フィルムが、前記突出部を形成する前記熱可塑性樹脂体の外面と内面の両方に被着されていることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂筐体。
【請求項12】
無色又は有色の透明又は半透明のカバー層が、前記熱可塑性樹脂体に被着された前記フィルム上に施されていることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂筐体。
【請求項13】
熱可塑性樹脂板と偏光特性を有するフィルムとが重ね合されて、該フィルム側が所定形状の型に当てられ、真空成形、圧空成形及びプレス成形のいずれかによって、外側に突出する突出部を有する前記所定形状の熱可塑性樹脂筐体が成形されることを特徴とする熱可塑性樹脂筐体の製造方法。
【請求項14】
前記熱可塑性樹脂板に前記フィルムを貼り合せた積層板を生成し、該積層板の該フィルム側が前記型に当てられ、真空成形、圧空成形及びプレス成形のいずれかによって、前記熱可塑性樹脂筐体が成形されることを特徴とする請求項13に記載の熱可塑性樹脂筐体の製造方法。
【請求項15】
前記フィルムは、前記熱可塑性樹脂板に接着剤で貼り合わされていることを特徴とする請求項14に記載の熱可塑性樹脂筐体の製造方法。
【請求項16】
前記フィルムは、前記熱可塑性樹脂板に接着層及びビンディング層を介して貼り合わされていることを特徴とする請求項14に記載の熱可塑性樹脂筐体の製造方法。
【請求項17】
前記フィルムは、前記熱可塑性樹脂板に加熱圧着され貼り合わされていることを特徴とする請求項14に記載の熱可塑性樹脂筐体の製造方法。
【請求項18】
前記フィルムは、前記熱可塑性樹脂板に接着剤を介して加熱圧着され貼り合わされていることを特徴とする請求項14に記載の熱可塑性樹脂筐体の製造方法。
【請求項19】
前記積層体は、凹凸が形成された前記型によって、該凹凸を有する前記所定形状に成形されることを特徴とする請求項14乃至18のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂筐体の製造方法。
【請求項20】
偏光特性を有するフィルムが所定形状の凹部を有する成形型に当てられ、該フィルムが該凹部の形状に成形され、
前記フィルムの成形後に、前記成形型に該フィルムを介して射出成形型を当て、該フィルムで形成された凹部の内側に熱可塑性樹脂を射出することにより熱可塑性樹脂筐体が成形されることを特徴とする熱可塑性樹脂筐体の製造方法。
【請求項21】
前記射出成形型は、前記フィルムにより形成された前記凹部に整合した凸部を有することを特徴とする請求項20に記載の熱可塑性樹脂筐体の製造方法。
【請求項22】
前記フィルムが前記成形型に当てられ、該凹部への押圧によって、該フィルムが該凹部の形状に成形されることを特徴とする請求項20又は21に記載の熱可塑性樹脂筐体の製造方法。
【請求項23】
前記フィルムが前記成形型に当てられ、該凹部からの吸引によって、該フィルムが該凹部の形状に成形されることを特徴とする請求項20又は21に記載の熱可塑性樹脂筐体の製造方法。
【請求項24】
前記凹部からの吸引は、前記成形型に設けられた複数の吸引孔を用いて行われることを特徴とする請求項23に記載の熱可塑性樹脂筐体の製造方法。
【請求項25】
前記凹部からの吸引は、前記凹部における前記フィルムの接触側の端部で行われることを特徴とする請求項23に記載の熱可塑性樹脂筐体の製造方法。
【請求項26】
前記成形型は、前記凹部と前記フィルムの接触側の端部で連通する小凹部を有し、
前記凹部からの吸引は、前記小凹部に設けられた吸引孔を用いて行われることを特徴とする請求項23に記載の熱可塑性樹脂筐体の製造方法。
【請求項27】
前記フィルムの被着面には、接着層が設けられていることを特徴とする請求項20乃至26のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂筐体の製造方法。
【請求項28】
前記接着層の上面に、ビンディング層が設けられていることを特徴とする請求項27に記載の熱可塑性樹脂筐体の製造方法。
【請求項29】
前記フィルムの被着面は、易接着のための表面改質処理が施されていることを特徴とする請求項20乃至26のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂筐体の製造方法。
【請求項30】
前記表面改質処理が施された面上に、接着層が設けられていることを特徴とする請求項29に記載の熱可塑性樹脂筐体の製造方法。
【請求項31】
前記表面改質処理が施された面上に、ビンディング層を介して接着層が設けられていることを特徴とする請求項29に記載の熱可塑性樹脂筐体の製造方法。
【請求項32】
前記熱可塑性樹脂筐体が成形された後に、不要部分をトリミングして除去することを特徴とする請求項20乃至31のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂筐体の製造方法。
【請求項33】
偏光特性を有する第1フィルムが所定形状の凹部を有する第1成形型に当てられ、該第1フィルムが該凹部の形状に成形され、
偏光特性を有する第2フィルムが前記凹部に整合する形状の凸部を有する第2成形型に当てられ、該第2フィルムが該凸部の形状に成形され、
前記第1フィルムと前記第2フィルムとの間に、熱可塑性樹脂を射出することにより熱可塑性樹脂筐体が成形されることを特徴とする熱可塑性樹脂筐体の製造方法。
【請求項34】
前記第1及び第2フィルムは、吸引又は押圧によって成形されることを特徴とする請求項32に記載の熱可塑性樹脂筐体の製造方法。
【請求項35】
前記熱可塑性樹脂筐体が成形された後に、不要部分をトリミングして除去することを特徴とする請求項33又は34に記載の熱可塑性樹脂筐体の製造方法。
【請求項36】
偏光特性を有するフィルムが所定形状の凹部を有する成形型に当てられ、該フィルムが該凹部の形状に成形され、
前記フィルムの成形後に、前記成形型に該フィルムを介して射出成形型を当て、該フィルムで形成された凹部の内側に熱可塑性樹脂を射出することにより熱可塑性樹脂板が成形され、
前記フィルム上に無色又は有色の透明又は半透明のカバー層を形成することを特徴とする熱可塑性樹脂筐体の製造方法。
【請求項37】
偏光特性を有するフィルムが所定形状の凹部を有する成形型上に置かれ、
前記フィルムを介して、前記成形型に射出成形型が当てられ、
前記フィルムと前記射出成形型との間に熱可塑性樹脂を射出することにより、該フィルムと共に熱可塑性樹脂筐体が加熱成形されることを特徴とする熱可塑性樹脂筐体の製造方法。
【請求項38】
前記フィルムの被着面には、接着層が設けられていることを特徴とする請求項37に記載の熱可塑性樹脂筐体の製造方法。
【請求項39】
前記接着層の上面に、ビンディング層が設けられていることを特徴とする請求項38に記載の熱可塑性樹脂筐体の製造方法。
【請求項40】
前記フィルムの被着面は、易接着処理がされていることを特徴とする請求項37乃至39のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂筐体の製造方法。
【請求項41】
前記易接着処理の面上に、接着層が設けられていることを特徴とする請求項40に記載の熱可塑性樹脂筐体の製造方法。
【請求項42】
前記易接着処理の面上に、ビンディング層を介して接着層が設けられていることを特徴とする請求項40に記載の熱可塑性樹脂筐体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【公開番号】特開2007−196659(P2007−196659A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−138088(P2006−138088)
【出願日】平成18年5月17日(2006.5.17)
【出願人】(501398606)富士通コンポーネント株式会社 (848)
【Fターム(参考)】