説明

熱可塑性樹脂組成物の押出成形方法

【課題】溶融樹脂組成物をストランド状に押し出すための樹脂押出用ダイを用いて押出成形する方法において、樹脂成形品に比較的大きな目やにが異物として混入することを抑制可能な方法を提供する。
【解決手段】押し出された樹脂ストランド91の引き取り速度Vs(m/min)と、樹脂ストランド91の搬送経路における冷却媒体93中に設けられた、樹脂ストランド91をガイドするガイドローラー94A、94Bの外周面の移動速度Vr(m/min)の関係が、0.7≧Vr/Vs≧−0.2の関係を満たすように、引き取り速度Vr、移動速度Vsを決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱可塑性樹脂組成物の押出成形方法に関し、特には溶融樹脂組成物をストランド状に押し出すための、熱可塑性樹脂組成物の押出成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、溶融樹脂組成物をストランド状に押し出すためのダイは、樹脂の造粒(ペレタイズ)などに広く用いられている。この種のダイは、ノズル状の吐出孔を一般には複数有しており、押出機から供給される溶融樹脂組成物は、吐出孔からストランド状に押し出される。樹脂ペレットを製造する(造粒する)場合、ストランド状に押し出された樹脂組成物を、冷却しながら引き取り、カッターブレードによって所定長さごとに切断する。
【0003】
ノズル状の吐出孔から連続して樹脂組成物を押し出すと、吐出孔の縁に微量の樹脂組成物が付着する。吐出孔の縁に付着するこのような微量の樹脂組成物を喩えて「目やに」と呼ぶ。目やには時間の経過と共に堆積して大きくなり、また熱や酸化の進行により劣化、変色する。
【0004】
目やには、そのまま放置しておくと、堆積して大きくなり、ある時点で吐出孔の縁から剥がれ、押し出されるストランド状の樹脂組成物に付着して運ばれ、造粒した樹脂ペレット中に異物として混在する状況が生じる。目やに(異物)は、正常に造粒された樹脂組成物とは外観(色、形状)や物性が異なるため、大きな目やにが樹脂ペレットに混在していると、そのペレットから成形した成形品の外観や物性を損ねる原因となる。
【0005】
そのため、目やにの発生や、発生した目やに(異物)の製品(ペレット)への混入を抑制するための提案がなされている。例えば、特許文献1には、吐出孔の先端外周(ストランド表面)に気体を吹き付けることにより、目やにを吹き飛ばしたり、吐出孔の縁に付着した樹脂組成物がまだ小さく、変質が進まない段階で溶融樹脂組成物(ストランド)の表面に付着させて分散希釈し、独立した固形物としての目やに(異物)の混入や発生を抑制する押出機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3681172号公報(図2〜図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1記載の技術によれば、目やにの混入や発生をある程度抑制することができるが、それらの効果は不十分であり、完全に目やにを無くすためには吐出孔の先端外周に吹き付ける気体の流速を高くする必要があった。だが、この気体はストランド表面にも吹き付けられるため、押出されたストランドが不安定化し、ストランドが切れたり、隣り合うストランドが融着したりすることがあり、安定した押し出しは困難であった。
【0008】
本発明はこのような従来技術の課題に鑑みなされたものであり、溶融樹脂組成物をストランド状に押し出すための樹脂押出用ダイを用いて押出成形する方法において、樹脂成形品に比較的大きな目やにが異物として混入することを抑制(防止を含む)可能な方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者はストランド表面に付着した目やにを効果的に除去する方法を鋭意検討した結果、押し出されたストランドの搬送経路に設けられる冷却媒体中のガイドローラーの外周面の移動速度と、ストランドの引き取り速度との関係を制御することにより、ガイドローラーの表面でストランド表面の目やにを物理的にこすり落とし、ストランド表面に付着した目やにを効果的に、かつ容易に除去可能であることを見出し、本発明に到達した。
【0010】
すなわち、上述の目的は、熱可塑性樹脂組成物からなる溶融樹脂を、吐出ノズルを有する樹脂押出用ダイを用いて吐出ノズルからストランド状に押出成形し、ストランドを冷却媒体中に設置されたガイドローラーによってガイドしつつ冷却するにあたり、当樹脂ストランドを引き取り速度Vs(m/min)で引き取るとともに、ガイドローラーの樹脂ストランドの接する外周面の移動速度をVr(m/min)とした場合に、0.7≧Vr/Vs≧−0.2の関係を満たすように、引き取り速度及び移動速度並びにガイドローラーの回転方向を決定することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の押出成形方法によって達成される。
【発明の効果】
【0011】
このような構成により、本発明に係る熱可塑性樹脂組成物の押出成形方法によれば、押出成形された樹脂ストランド表面に付着した目やにを効率的かつ容易に除去することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る樹脂押出用ダイを押出機に取り付けた状態の構成例を示す垂直断面図である。
【図2】(a)は本発明の実施形態に係る樹脂押出用ダイに複数設けられた吐出ノズル12のうち、2つについての正面図、(b)は本発明の実施形態に係る樹脂押出用ダイのマニホールドの構成を説明するための図である。
【図3】(a)は本発明の実施形態に係る樹脂押出用ダイを用いて押し出されたストランドを、ペレット状に加工するまでの工程に係る構成を模式的に示した図、(b)はストランドを搬送するガイドローラーの構成例を示す図、(c)は図3(b)に示すガイドローラーの溝の構成を説明するための図である。
【図4】本発明の実施形態に係る樹脂押出用ダイを用いて押し出されたストランドを、ペレット状に加工するまでの工程に係る別の構成を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明についてさらに詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る樹脂押出用ダイを押出機に取り付けた状態の構成例を示す垂直断面図である。
樹脂押出用ダイ(以下、単にダイという)は、押出機のバレル1に例えばネジ21によって取り付けられるダイヘッド3と、ダイヘッド3に例えばネジ22で取り付けられるダイプレート4とから構成される。
【0014】
ダイプレート4には吐出孔15を備える吐出ノズル12が設けられており、バレル1から流路9にスクリュー(図示せず)によって供給される溶融樹脂組成物は、吐出孔15からストランド状に押し出される。リングプレート13は、バレル1とダイヘッド3の隙間を塞ぎ、ダイヘッド3とバレル1との取り付け部から高圧の溶融樹脂組成物が漏れ出すことを防止するために設けられている。流路9は、ダイプレート4に設けられたマニホールド120に接続している。マニホールド120は複数の吐出ノズル12に対して均一な圧力で溶融樹脂組成物を供給するために設けられている。吐出ノズル12は、マニホールド120と連通する細孔としてダイプレート4に設けられている。
【0015】
なお、図1は垂直断面図であるため吐出ノズル12が1つのみ示されているが、紙面と直交する方向に複数の吐出ノズル12が所定間隔で配置されてもよい。また、以下の説明においては、図1の下方向が鉛直下方であり、樹脂が水平方向よりやや下方に押し出されるものとするが、本実施形態に係るダイにおいて、樹脂の押出方向に制限はなく、ダイの取り付け角度及び/または吐出ノズル12の方向は任意に変更可能である。
【0016】
(振動の付加)
図1に示す構成では、ダイヘッド3を振動させる振動発生機30が設けられている。振動発生機30はアクチュエータのような振動部材(図示せず)を有し、図示しない制御回路によりアクチュエータの動作が制御される。振動発生機30はその動作状態において、ダイヘッド3(及びダイヘッド3に取り付けられているダイプレート4)を所定の周波数及び振幅で上下方向、又は左右方向に振動させることができる。
【0017】
これにより、ダイヘッド4を振動させない場合よりも、目やにが吐出ノズル12の先端部から早期(微小物のうち)に外れ易く(飛び易く)なり、更に、押し出されたストランドも振動するため、振動で飛ばされた目やにがストランドの表面に付着しにくくなるという相乗効果が得られる。
【0018】
ここで、ダイヘッド3に加える振動は、振幅が0.005mm〜0.2mm、振動速度が0.3mm/秒〜5mm/秒であることが好ましい。より好ましくは振幅が0.009mm〜0.1mmであり、より好ましい振動速度は0.4mm/秒〜4mm/秒であり、特に好ましい振動速度は0.5mm/秒〜3mm/秒である。なお、振動速度(mm/s)/(2π×振幅(mm))で振動周波数(Hz)を求めることができる。振幅や振動速度の上限を超えると、押し出されたストランドが大きく振動することがあり、隣接する吐出孔から押し出されるストランドがぶつかったり、ストランドと冷却水との接触が不安定となったりして安定した製造ができなくなる。また、ダイヘッド3やダイプレート4を固定するネジ21,22が緩んで、安定した製造ができなくなる原因となる場合もある。また、下限値未満の場合には、振動による溶融樹脂付着抑制効果が十分得られない。
【0019】
なお、図1に示した振動発生機30は、ダイヘッド3(及びダイプレート4)を振動させるための構成の一例であり、他の構成を採用しうることは言うまでもない。例えば、振動発生機30のような能動的な加振部材を設けずに、押出機のモーターの発生する振動を利用してダイヘッド3(及びダイプレート4)を振動させる構成であってもよい。
【0020】
(吐出ノズルの構成に関するさらなる詳細)
なお、上述の構成を有する樹脂押出用ダイを用いて溶融樹脂組成物をストランド状に成形する場合、複数の吐出ノズル12がダイプレート4に設けられるが、この吐出ノズル12を特定の構造とすることにより押出が安定し、目やに防止(除去)やストランドの切断防止に有効である。
【0021】
ここで、特定の構造とは、
(1)複数設けられる吐出ノズル12の、押出方向(樹脂の流れ方向)に直交する断面積の合計S1と、吐出ノズルの後部(押出機側)に設けられるマニホールド120の、押出方向(樹脂の流れ方向)に直交する最大断面積S2との関係が特定の関係を満たし、かつ、
(2)吐出ノズルの長さが特定の条件を満たす、
構造である。
【0022】
上述のように、ダイプレート4が複数の吐出ノズル12を備える場合、複数の吐出ノズル12の(樹脂の流れ方向における)後部には、通常、複数の吐出ノズル12に対して均一な圧力で溶融樹脂組成物を供給するための樹脂溜まりを形成するマニホールド120が設けられている。そして、すべての吐出ノズル12には共通のマニホールド120を通じて溶融樹脂組成物が供給される。押出機のバレル1からダイヘッダ3を通じてダイプレート4に供給される溶融樹脂組成物は、流路9を通じてマニホールド120に入る。マニホールド120は流路9よりもずっと大きな空間であるため、溶融樹脂組成物はそこで一旦滞留することによって圧力が均一化される。その後、細い吐出ノズル12で絞り込まれることにより吐出ノズル12からの押出し量が均一となる。
【0023】
この際、吐出ノズル12での絞り込み率が少なすぎると(あまり絞り込まないと)各吐出ノズル12に掛かる圧力が不均一となり(流量が不安定となり)、ストランドが安定せず、ストランドが切れ易くなる。また、流動が不安定になるために吐出ノズル12への目やに付着が多くなる。一方、絞り込み率が大きすぎると樹脂圧力が高くなり、押出機のスクリュー先端の樹脂充満領域が長くなり、剪断による発熱によって樹脂温度が上がり、目やに発生が多くなる。
【0024】
また、吐出ノズル12が短かすぎるとやはり各吐出ノズル12にかかる圧力が不均一となり、ストランドが安定せず、ストランドが切れ、また吐出ノズル12への目やに付着が多くなる。同様に、吐出ノズルが長すぎると樹脂圧力が高くなるため、上述のように樹脂温度が上がり、目やに発生が多くなる。
従って、マニホールド120から吐出ノズル12への絞り込み率と、吐出ノズル12長さはストランドの安定性、ひいては目やにの発生に大きく影響を与える。
【0025】
マニホールド120から吐出ノズル12への絞り込み率は、吐出ノズル12(樹脂流路)の最小断面積(樹脂の流れ方向に垂直な断面積)の合計面積S1と、マニホールド120の最大断面積S2(マニホールド120の径×マニホールド120の長さで表される、押し出し方向に垂直な断面積のうち最大のもの)との比S1/S2として表すことが可能である。本明細書において、マニホールド120から吐出ノズル12への絞り込み率を、ノズル開口率と呼ぶ。
【0026】
マニホールド120の形状によって多少の変化を生ずるが、マニホールド120の径とは図1や図2(a)に示す径d2、すなわち、樹脂の流れ方向において最大投影される上下方向の距離であり、マニホールド120長さとは、図2(b)に示すような長手方向の距離である。なお、径d2と長さの積で表されるマニホールド120の最大断面積S2は、断面積を矩形と見なした簡略的な算出方法であり、より正確に測定を行ってもよいことは言うまでもない。
このように定義される吐出ノズル12の最小断面積の合計面積S1とマニホールド120の最大面積S2との比率S1/S2であるノズル開口率は10%≧S1/S2≧1.2%であることが好ましく、8%≧S1/S2≧2%程度であることが更に好ましい。なお、ノズル開口率が大きくなれば、絞り込み率が小さくなることに留意されたい。
また、吐出ノズル12の長さは7〜35mmであり、更に好ましくは9〜30mmである。吐出ノズルが短くなると、所謂バラス効果によるストランド径の増加率(ダイスエル率)が大きくなり、目やにが吐出ノズル先端に付着しやすくなる。逆に、吐出ノズルが長くなるとスクリュー先端での樹脂滞留域が長くなって樹脂温度が上昇するため、やはり目やにが発生しやすくなる。
ノズル開口率S1/S2と吐出ノズル12の長さをこのようなバランスとすることにより、ストランドの安定した押出しが行え、ひいては目やに発生の抑制効果につながる。
【0027】
吐出ノズル12については図2(b)に示すような真円の真っ直ぐな孔が一般的であるが、吐出ノズル12の内径を変化させた構造とした場合には、吐出ノズル12の内径とは、最小径の部分を指す。ただし、この場合も、吐出ノズル12の長さは、最小径部分のみの長さではなく、マニホールド120から突出している部分全体の長さである。
【0028】
図3(a)は、吐出ノズル12から押し出されたストランドをペレット状に加工するまでの工程に係る構成を模式的に示した図である。
ストランド91は引き取りローラー95によって引き取られ、ペレタイザー96によってペレット状に加工(切断)されるが、ペレタイザー96に供給される前の搬送経路において冷却されるのが通常である。具体的には図3(a)に示すように、冷却槽92に溜められた冷却媒体(通常は水)93中を搬送されるようにして、冷却される。樹脂組成物の劣化を少なくするために、ストランド91が吐出ノズル12から押し出されてから冷却媒体93に入るまでの時間は短い方が良い。通常は、吐出ノズル12から押し出されてから1秒以内に冷却媒体93に入るのが良い。
【0029】
そのため、吐出ノズル12から短い距離で冷却媒体93へ向かうように搬送することが好ましく、また、冷却媒体93で冷却される時間が長くなるように搬送することが好ましい。
このような条件を満たす搬送経路を実現するため、ストランド91の搬送経路には94A,94Bで示すように、ストランドの表面に接しながらストランドをガイドするガイドローラーが設けられるのが一般的である。ガイドローラー94A,94Bの径は通常3〜7cm程度である。
【0030】
本発明は、このようなガイドローラー94A,94Bを利用して、ストランド91の表面に付着した目やにを除去することを特徴とする。
具体的には、ガイドローラー94A,94Bの少なくとも一方を、ストランド91の走行(搬送)方向とは逆方向に回転させるか、ストランド91の走行速度(引取り速度)よりも遅い周速度でストランド91の走行方向と同じ方向に回転させることである(あるいは、回転させない状態で保持してもよい)。
【0031】
ガイドローラー94A,94Bは通常、ストランドの走行方向と交差する方向に回転軸を有する円筒形状を有する。そして、複数本が平行して押し出されるストランド91が所望の搬送経路で搬送されるように、複数本のストランド91を円筒面(外周面)で支持する。
ガイドローラー94A,94Bの外周(円筒)面には図3(b)に示すように周方向に環状(リング状)の溝942がストランドの本数に応じ複数設けられる。溝942は走行するストランド91を受け入れて支持し、接近した位置にあるストランド91同士が接触し融着することを防ぐ。
【0032】
溝942の幅はストランド91の太さより若干広めで、溝942の底部は弧状とされていることが安定した支持を行うために好ましい。また、通常溝942の深さはストランド91の径にもよるが、2mm〜10mmである。更に、溝942のピッチ(隣り合う溝942の間隔)は、通常、ストランド91の間隔(ダイの吐出ノズル12の間隔)に合わせる。ストランド91の径にもよるがピッチは5mmから20mmである。溝942の数は押し出されるストランドの数以上であれば良い。
【0033】
ガイドローラー94A,94Bは冷却槽92のストランド走行位置に1本あるいは複数本設けられる。複数本の場合はガイドローラー94A,94B間にストランドが掛け渡されて冷却槽92中を走行し冷却される。
【0034】
ガイドローラー94A,94Bはストランドの走行方向と逆方向または走行方向と同じ方向に回転可能に支持されてもよいし、回転不能に支持されてもよい。ストランド91の走行(搬送)速度に対してガイドローラー94A,94Bの溝942の移動(回転)速度が相対的に遅くなるようにガイドローラー94A,94Bを支持(もしくは駆動)することにより、溝942のストランド91と接する面でストランド91の表面を擦り、ストランド91の表面に付着した目やにを除去することができる。なお、ガイドローラー94が搬送経路の複数箇所に設けられている場合には、その少なくとも一つを上述のように支持もしくは駆動することにより、ストランド91の表面を擦るようにすればよい。
【0035】
ガイドローラー94A,94Bをストランドの走行方向と逆方向に回転させるにはガイドローラー94A,94Bに駆動装置を設ければ良い。この場合、ストランド91と溝942の表面(ストランド91と接する面)との抵抗(摩擦)が大きすぎるとストランド91の走行が不安定になる場合が有るので、ストランド91の走行が安定する範囲で回転速度(一定時間あたりの回転量)を定める。
【0036】
ガイドローラー94A,94Bを走行方向と同じ方向に回転させる場合には駆動装置を設けなくてもよい。ガイドローラー94A,94Bを回転させるのにある程度の抵抗(少なくとも、走行するストランド91の摩擦力によりストランド91と当速度で回転することがない程度の抵抗)を与えれば良い。これにより、ガイドローラー94A,94Bはストランド91の走行に追従して回転するが、与えられた抵抗によりストランド91の走行速度より遅く(周速度が遅く)回転し、溝942の表面でストランドの表面を擦ることが可能になる。駆動装置を設けることも可能であるが、逆回転の場合と異なり、回転に抵抗を与える構成の方が簡便である。
【0037】
このように、ストランド91は冷却媒体92中を走行しながらガイドローラー94A,94Bの表面と接触し、ストランド91の走行速度とガイドローラー94A,94Bの回転速度(周速度)との差によってストランド91の表面が溝942の表面で擦られ、ストランド91の表面に付着する目やにが除去される。冷却媒体92中でストランド91をガイドローラ94A,94Bの表面で擦ることで、除去された目やには冷却媒体92中に分散され、ガイドローラー94の表面に残留したり、ストランド91の表面に再び付着したりすることが少ない。
【0038】
この効果は、ストランド91の走行速度と同じ周速度でガイドローラー94A,94Bを回転させた場合には得られないものである。ストランド91の走行速度とガイドローラー94A,94Bの周速度を略同速度とした場合には、ストランド91の表面を擦ることが出来ないだけでなく、むしろ溝942の表面によって目やにをストランドに張り付けたり、埋め込んだりすることになることも考えられる。具体的なガイドローラー94A,94Bの回転(周)速度Vrは、ストランドの速度Vsに対して0.7≧Vr/Vs≧−0.2の関係であることが好ましい。上限はより好ましくは0.5≧Vr/Vsであり、下限はより好ましくはVr/Vs≧0である。Vsはストランド91の引き取り速度とすることができ、Vrは(ガイドローラー94A,94Bの半径−溝深さ)×2π×一分間の回転数で求まる。Vr/Vsが正の場合、ガイドローラー94A,94Bがストランド走行方向と同方向に回転する場合であり、負の場合はガイドローラー94A,94Bがストランド走行方向と逆方向に回転する場合である。
【0039】
ガイドローラー94A,94Bは冷却槽中に1本あるいは複数本設けられるが、複数本の場合は全てのガイドローラー94A,94Bを上述のような回転とする必要はなく、冷却媒体93中にあり、吐出ノズル12(ダイス)に最も近いガイドローラー(図3(a)では94A)を上記のように作動させるのが目やに除去に効果的である。
【0040】
図4は、ガイドローラー94の設置例の他の態様を示す図である。この態様では、ガイドローラー94Aと94Bの間に更にガイドローラー94A’を設けている。このガイドローラー94A’は、ストランドのガイドローラー94Aと接触した側の外周面と逆側の外周面に接触するように設けられている。このような配置とすることにより、ストランドのほぼ全ての表面がガイドローラー94A及び94A’の表面によって擦られる構成となる。
ガイドローラー94A’の回転(周)速度Vr’は、ガイドローラー94Aと同様、ストランドの速度Vsに対して0.7≧Vr’/Vs≧−0.2の関係を満たす値に設定される。
【0041】
(多成分系での本発明の効果)
本発明の樹脂押出用ダイを使用してストランド状にする溶融樹脂組成物に特段の制限はない。溶融樹脂組成物はポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル、ポリアセタールなどの熱可塑性樹脂の単一成分であってもよく、複数の熱可塑性樹脂の混合物でもよい。また溶融樹脂組成物に強化充填材を配合することができる。非限定的な強化充填材の例としては、ガラス繊維、カーボン繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、ホウ素繊維、窒化ホウ素繊維、窒化ケイ素チタン酸カリウム繊維、金属繊維などの無機繊維や、芳香族ポリアミド繊維、フッ素樹脂繊維などの有機繊維などが挙げられる。これらの強化充填材は、2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0042】
強化充填材と共に、あるいは別に、他の充填材を溶融樹脂組成物に配合することができる。他の充填材の非限定的な例としては、板状無機充填材、セラミックビーズ、アスベスト、ワラストナイト、タルク、クレー、マイカ、ゼオライト、カオリン、チタン酸カリウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。これらの中でも、板状無機充填材を配合することにより、成形品の異方性およびソリを低減することができる。板状無機充填材の非限定的な例としては、ガラスフレーク、雲母、金属箔などを挙げることができる。これらの中ではガラスフレークが好適に使用される。
【0043】
また、2,6−ジ−t−ブチル−4−オクチルフェノール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3’,5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕等のフェノール化合物、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス(3−ラウリルチオジプロピオネート)等のチオエーテル化合物、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等の燐化合物などの抗酸化剤、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、モンタン酸やモンタン酸エステルに代表される長鎖脂肪酸およびそのエステル、シリコーンオイル等の離型剤などを溶融樹脂組成物に添加してもよい。
【0044】
また、樹脂に難燃性を付与するために難燃剤を配合することができる。非限定的な難燃剤の例としては、有機ハロゲン化合物、アンチモン化合物、リン化合物、その他の有機難燃剤、無機難燃剤などが挙げられる。このうち、有機ハロゲン化合物としては、例えば、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂、臭素化フェノキシ樹脂、臭素化ポリフェニレンエーテル樹脂、臭素化ポリスチレン樹脂、臭素化ビスフェノールA、ペンタブロモベンジルポリアクリレート等が挙げられる。アンチモン化合物としては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ソーダ等が挙げられる。リン化合物としては、例えば、リン酸エステル、ポリリン酸、ポリリン酸アンモニウム、赤リン等が挙げられる。その他の有機難燃剤としては、例えば、メラミン、シアヌール酸などの窒素化合物などが挙げられる。その他の無機難燃剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ケイ素化合物、ホウ素化合物などが挙げられる。
【0045】
また、必要に応じて、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸エステル、ABS樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンテレフタレート、液晶ポリエステル、等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を配合することができる。これらの熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂は、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0046】
このように、上述の樹脂押出用ダイは、様々な溶融樹脂組成物の押出に適用することが可能である。しかし、目やにの発生し易い溶融樹脂組成物に適用することが特に効果的であることはいうまでもない。
溶融樹脂組成物が単一成分で構成されていると目やにの発生は僅かである。例えばポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル、ポリアセタールなどの熱可塑性樹脂の単体で構成される溶融樹脂を押し出す場合、目やにの発生は少ない。
【0047】
しかしながら、これらの熱可塑性樹脂の溶融樹脂に、上述した強化充填材、充填材、難燃剤、他の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などの他成分を添加すると目やにの発生が目立ってくる。これらの他成分が溶融樹脂組成物中5%以上含まれると目やにの発生が多くなり、10%以上含まれると目やにの発生が顕著になる。そのため、上述した樹脂押出用ダイを、他成分が5%以上含まれる溶融樹脂組成物の押出に用いることで、目やにの発生及び混入を抑制する顕著な効果を享受することができる。
【0048】
(離型剤の効果)
上述の樹脂押出用ダイを使用してストランド状に押出す溶融樹脂組成物に、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、モンタン酸やモンタン酸エステルに代表される長鎖脂肪酸およびそのエステル、シリコーンオイル等の離型剤を添加することにより、目やにの発生をさらに低減できる。これは溶融樹脂組成物に含まれる離型剤が、吐出孔出口でノズルの表面と溶融樹脂組成物の間の潤滑剤として機能し、溶融樹脂組成物がノズルに付着しづらくなる(目やにの発生がある程度抑制される)からである。さらに、ストランドの表面にこの種の離型剤が存在することになるので、ストランドへの目やにの付着力が小さくなり、ストランドに接してガイドするガイドローラーによる目やに擦り取り(摩擦による除去)効果が増す。
離型剤を溶融樹脂組成物に対して0.03%以上添加すると含まれると目やに抑制効果や摩擦除去効果が現れ、特には0.1%以上添加すると目やに抑制効果や摩擦除去効果が顕著となる。一方、1%を超える割合で添加しても効果の向上が少ないため、コストの点から1%以下とすることが好ましい。
【実施例】
【0049】
以下に、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
【0050】
<実施例1>
ダイス鋼SKD11を使用して図1に示すような樹脂押出用ダイを作製した。ダイのマニホールドの最大断面積S2は670mm、ノズルの直径d1は3mmφ、ノズルの長さは17mmであり、そのノズルを3個横に配置した。ノズル開口率は3.2%とした。
【0051】
押出機に東芝社製TEM37BSを使用し、条件は吐出量50kg/hr(ノズルあたり16.7kg/hr)、スクリュー回転数300rpmとした。また、熱可塑性樹脂組成物には、ガラス繊維(オーエンスコーニング社製FT737)を30重量%、ポリカーボネート(三菱エンジニアリングプラスチックス社製ユーピロンS3000)を70重量%、ポリエチレン系離型剤であるヘキストワックスPE520パウダー(ヘキストインダストリー(株))を樹脂分100重量に対し0.5重量部含んだ熱可塑性樹脂組成物Aを使用した。熱可塑性樹脂組成物Aの、温度280度、せん断速度100/秒におけるせん断粘度は1300Pa・secであった。
押出機のシリンダーと樹脂押出用ダイの設定温度を250℃とし、押出成形した。なお、樹脂温度は通常、ダイの設定温度より30℃程度高い(すなわち、約280℃)と考えられる。
【0052】
ダイスから出たストランドを図3(a)に示したような搬送、造粒構成を用い、引き取り速度(Vs)=35m/minで引き取った。二本のガイドローラーの直径は40mmで溝深さは7.5mm、溝のピッチは9mmのものを使用した。冷却媒体には水を用い、冷却槽92内で最初にストランドと接するガイドローラー94Aとして、回転速度を制御可能なガイドローラーを設け、周速度(Vr)=6m/minとなるように回転させた。なお、上述の通り、正の周速度は、ガイドローラー94Aの回転方向がストランドの搬送方向に等しいことを意味する(すなわち、図3(a)におけるガイドローラー94Aとは逆の回転方向である)。
なお、ガイドローラー94Aを回転させるのに、駆動部に住友重機械工業(株)製の小型ギアモーターCNHM02-4085-AV-11を使用し、同じく住友重機械工業(株)製のインバーターHF3202-A20を使用して回転速度を制御した。
【0053】
1時間連続して押出成形を行った。押出成形中にRION株式会社製のポケッタブル振動計 VM−63A ”RIOVIBRO”をダイに押し当て、ダイの振動量、振動速度を測定した。振幅は0.008mm、振動速度は0.42mm/秒であった。
1時間連続した押出成形後、ノズルの周辺に目やにの発生が確認されたが、ペレタイザー96で製造した製品ペレット中、目やにが付着したペレットの存在は発見できなかった(0個)。1時間の連続成形後に3個のノズルの周辺に付着した目やにを捕集し、その重量を測定したところ36mgであった。
【0054】
実施例2
ガイドローラー94の周速度Vrを14m/minとした以外は実施例1と同様にして押出成形した。ダイの振動量、振動速度の測定結果も実施例1と同様であった。
1時間連続した押出成形後、ノズルの周辺に目やにの発生が確認されたが、目やにが付着した製品ペレットの存在は発見できなかった(0個)。1時間の連続成形後に3個のノズルの周辺に付着した目やにを捕集し、その重量を測定したところ39mgであった。
【0055】
実施例3
ノズル長を37mmとした以外は実施例1と同様にして押出成形した。ダイの振動量、振動速度の測定結果も実施例1と同様であった。
1時間連続した押出成形後、ノズルの周辺に目やにの発生が確認されたが、目やにが付着した製品ペレットの存在は発見できなかった(0個)。1時間の連続成形後に3個のノズルの周辺に付着した目やにを捕集し、その重量を測定したところ72mgであった。
【0056】
実施例4
ノズルの直径は変更せず、マニホールド最大断面積を352mmとしてノズル開口率を6%にした以外は実施例1と同様にして押出成形した。ダイの振動量、振動速度の測定結果も実施例1と同様であった。
1時間連続した押出成形後、ノズルの周辺に目やにの発生が確認されたが、目やにが付着した製品ペレットの存在は発見できなかった(0個)。1時間の連続成形後に3個のノズルの周辺に付着した目やにを捕集し、その重量を測定したところ42mgであった。
【0057】
実施例5
マニホールド最大断面積を470mmとし、さらにノズル直径を4.1mmとして、ノズル開口率を11%とした以外は実施例1と同様にして押出成形した。ダイの振動量、振動速度の測定結果も実施例1と同様であった。
1時間連続した押出成形後、ノズルの周辺に目やにの発生が確認されたが、目やにが付着した製品ペレットの存在は発見できなかった(0個)。1時間の連続成形後に3個のノズルの周辺に付着した目やにを捕集し、その重量を測定したところ55mgであった。
なお、押出成形中、ストランドの吐出に脈動が見られた。これは、ノズル開口率が大きい(絞り込み率が小さい)ことによるものと考えられる。長時間の運転ではストランドが切れる可能性もあった。
【0058】
実施例6
ダイヘッド3を振動させる加振機として、小型電型振動試験装置(有限会社旭製作所製 Wave Maker 01)を取り付け、上下方向に20Hz、出力50%の振動を加えた以外は実施例1と同様にして押出成形した。押出成形中にRION株式会社製のポケッタブル振動計 VM−63A ”RIOVIBRO”をダイに押し当て、ダイの振動量、振動速度を測定したところ、振幅は0.01mm、振動速度は1.0mm/秒であった。
1時間連続した押出成形後、ノズルの周辺に目やにの発生が確認されたが、目やにが付着した製品ペレットの存在は発見できなかった(0個)。1時間の連続成形後に3個のノズルの周辺に付着した目やにを捕集し、その重量を測定したところ21mgであった。
【0059】
実施例7
ダイヘッド3を振動させる加振機として、小型電型振動試験装置(有限会社旭製作所製 Wave Maker 01)を取り付け、上下方向に20Hz、出力100%の振動を加えた以外は実施例1と同様にして押出成形した。押出成形中にRION株式会社製のポケッタブル振動計 VM−63A ”RIOVIBRO”をダイに押し当て、ダイの振動量、振動速度を測定したところ、振幅は0.018mm、振動速度は2.1mm/秒であった。
1時間連続した押出成形後、ノズルの周辺に目やにの発生が確認されたが、目やにが付着した製品ペレットの存在は発見できなかった(0個)。1時間の連続成形後に3個のノズルの周辺に付着した目やにを捕集し、その重量を測定したところ15mgであった。
【0060】
実施例8
ガイドローラー94Aを停止させ、周速度Vrを0m/minにした以外は実施例6と同様にして押出成形した。押出成形中にRION株式会社製のポケッタブル振動計 VM−63A ”RIOVIBRO”をダイに押し当て、ダイの振動量、振動速度を測定したところ、振幅は0.08mm、振動速度は0.42mm/秒であった。
1時間連続した押出成形後、ノズルの周辺に目やにの発生が確認されたが、目やにが付着した製品ペレットの存在は発見できなかった(0個)。1時間の連続成形後に3個のノズルの周辺に付着した目やにを捕集し、その重量を測定したところ38mgであった。
【0061】
実施例9
ノズル長を6mmとした以外は実施例1と同様にして押出成形した。ダイの振動量、振動速度の測定結果も実施例1と同様であった。
1時間連続した押出成形後、ノズルの周辺に目やにの発生が確認されたが、目やにが付着した製品ペレットの存在は発見できなかった(0個)。1時間の連続成形後に3個のノズルの周辺に付着した目やにを捕集し、その重量を測定したところ54mgであった。
【0062】
実施例10
実施例1において、吐出ノズルのうち2つを塞ぎ、ノズル数を1つとした。これにより、樹脂吐出量はノズルあたり50kg/hr、ノズル開口率が1.06%になった。また、樹脂吐出量の増加に対応してストランドの引き取り速度Vsを105m/min、ガイドローラー94Aの周速度Vrを25m/minとした。
他の条件は実施例1と同様にして押出成形した。ダイの振動量、振動速度の測定結果も実施例1と同様であった。
1時間連続した押出成形後、ノズルの周辺に目やにの発生が確認されたが、目やにが付着した製品ペレットの存在は発見できなかった(0個)。1時間の連続成形後にノズルの周辺に付着した目やにを捕集し、その重量を測定したところ81mgであった。
【0063】
実施例11
熱可塑性樹脂組成物を、ガラス繊維(オーエンスコーニング社製183H−13P)を30重量%、ポリブチレンテレフタレート(三菱エンジニアリングプラスチックス社製ノバレックス5008)を70重量%、パラフィン系離型剤であるパラフィンワックス155(日本精蝋(株))を樹脂分100重量に対し0.5重量部含んだ熱可塑性樹脂組成物Bとした。熱可塑性樹脂組成物Bの温度280度、せん断速度100/秒におけるせん断粘度は340Pa・secであった。
他の条件は実施例1と同様にして押出成形した。ダイの振動量、振動速度の測定結果も実施例1と同様であった。
1時間連続した押出成形後、ノズルの周辺に目やにの発生が確認されたが、目やにが付着した製品ペレットの存在は発見できなかった(0個)。1時間の連続成形後に3個のノズルの周辺に付着した目やにを捕集し、その重量を測定したところ38mgであった。
【0064】
比較例1
ガイドローラー94Aの周速度を、ストランドの引き取り速度と等しい35m/minとした以外は実施例1と同様にして押出成形した。ダイの振動量、振動速度の測定結果も実施例1と同様であった。
1時間連続した押出成形後、ノズルの周辺に目やにの発生が確認され、また、目やにが付着した製品ペレットが7個見つかった。1時間の連続成形後に3個のノズルの周辺に付着した目やにを捕集し、その重量を測定したところ38mgであった。
【0065】
比較例2
ガイドローラー94Aの周速度を29m/minとした以外は実施例1と同様にして押出成形した。ダイの振動量、振動速度の測定結果も実施例1と同様であった。
1時間連続した押出成形後、ノズルの周辺に目やにの発生が確認され、また、目やにが付着した製品ペレットが3個見つかった。1時間の連続成形後に3個のノズルの周辺に付着した目やにを捕集し、その重量を測定したところ37mgであった。
【0066】
比較例3
熱可塑性樹脂組成物Bを用いた以外は、比較例1と同様にして押出成形した。ダイの振動量、振動速度の測定結果も比較例1と同様であった。
1時間連続した押出成形後、ノズルの周辺に目やにの発生が確認され、また、目やにが付着した製品ペレットが5個見つかった。1時間の連続成形後に3個のノズルの周辺に付着した目やにを捕集し、その重量を測定したところ40mgであった。
【0067】
以上の実施例、比較例の条件及び評価結果を以下に示す。
【表1】

【0068】
以上説明したように、本発明によれば、ストランド状に押し出された溶融樹脂の搬送経路中の冷却媒体中に設けられているガイドローラーを利用することで、樹脂ストランドに付着した目やにを簡単な構成で、かつ効果的に除去することが可能となるという顕著な効果を実現できる。また、押出に用いる吐出ノズルの開口率および長さが特定の条件を満たすように調整することにより、目やにの発生を抑制することが可能となり、製品ペレットへの目やに付着や混入を一層抑制することが可能になる。従って、連続して品質の良い樹脂製品を製造することが可能になる。
【0069】
以上、本発明の好ましい実施形態を添付図面の参照により説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲の記載から把握される技術的範囲において種々な形態に変更可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂組成物からなる溶融樹脂を、吐出ノズルを有する樹脂押出用ダイを用いて前記吐出ノズルからストランド状に押出成形し、該ストランドを冷却媒体中に設置されたガイドローラーによってガイドしつつ冷却するにあたり、当該樹脂ストランドを引き取り速度Vs(m/min)で引き取るとともに、
前記ガイドローラーの前記樹脂ストランドの接する外周面の移動速度をVr(m/min)とした場合に、0.7≧Vr/Vs≧−0.2の関係を満たすように、前記引き取り速度及び前記移動速度並びに前記ガイドローラーの回転方向を決定することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の押出成形方法。
【請求項2】
前記吐出ノズルの長さLが35mm≧L≧7mmであることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物の押出成形方法。
【請求項3】
前記樹脂押出用ダイが、
前記吐出ノズルを複数有する口金と、
前記溶融樹脂の圧力を均一化させて前記複数の吐出ノズルに供給するためのマニホールドと、
を有し、
前記複数の吐出ノズル各々の、前記押し出し方向と直交する最小の断面積の合計面積(S1)と、前記マニホールドの前記押し出し方向と直交する最大断面積(S2)との比S1/S2で定められるノズル開口率が、10%≧S1/S2≧1.2%であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物の押出成形方法。
【請求項4】
前記樹脂押出用ダイを
振幅:0.005mm〜0.2mm
振動速度:0.3mm/秒〜5mm/秒
の範囲内で振動させながら、前記溶融樹脂を押出成形することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物の押出成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−56145(P2012−56145A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200259(P2010−200259)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(594137579)三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社 (609)
【Fターム(参考)】