説明

熱安定性アニオン交換体

【課題】熱安定性アニオン交換体を提供する。
【解決手段】一般式(I):


[式中、Ak、Ak’、Ak’’は、互いに独立して、同一のまたは異なるC〜C18アルキル基であり;nは5〜18の間の偶数であり;x+y=2であり;且つXはCl、Br、OH、HCO、HSO、1/2(SO)、1/2CO、NO、F、HPO、1/2HPO、1/3POである]の構造を有する芳香族モノマー及び架橋剤に基づくアニオン交換体であって、OH形態で少なくとも60℃の作業温度に比較的長時間にわたって耐性があるアニオン交換体、その作製方法及びその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般式(I):

[式中、
Ak、Ak’、Ak’’は、それぞれの場合において、互いに独立して、同一のまたは異なるC〜C18アルキル基であり;
nは5〜18の間の偶数であり;
x+y=2であり;且つ
XはCl、Br、OH、HCO、HSO、1/2(SO)、1/2CO、NO、F、HPO、1/2HPO、1/3POである]
の構造要素を有する少なくとも1つの芳香族モノマー及び少なくとも1つの架橋剤に基づく熱安定性アニオン交換体であって、その結果、好ましくはOH形態で、少なくとも60℃、好ましくは少なくとも80℃の作業温度に比較的長時間にわたって耐性があるアニオン交換体、その作製方法、及びその使用に関する。本発明の意味において比較的長期間とは、1〜12ヶ月、好ましくは1〜10ヶ月、特に好ましくは1〜8ヶ月である。
【背景技術】
【0002】
イオン交換体は、例えば、軟水化用、水溶液の脱イオン化及び精製用、砂糖及びアミノ酸溶液の分離及び精製用、並びにエレクトロニス及び医薬品産業での高純度水の作製用等の多くの部門で使用されている。しかしながら、従来のアニオン交換体は、極端な温度条件下で使用することができない。特に、それらの熱安定性はいまひとつ物足りない。官能基の早過ぎる分解を回避することが所望される場合、長期使用のための最高温度は60℃より上であってはならない。室温でさえ、従来の樹脂では、ある程度の樹脂の分解及び樹脂成分の周囲溶液への放出、脱色と称されるものは避けられない。
【0003】
60℃より上の範囲の高い作業温度を有するある種の用途向けには、比較的長時間これらの高温に耐性があるアニオン交換体が必要とされる。そのような条件は、例えば、エンジン及び発電所(通常の及び原子力の)等の、例えば、種々の機械及び設備の熱交換における脱イオンの際に発生する。そのような用途において、アニオン交換体は通常、カチオン交換体と組み合わせて、また混床と称されるものの中の混合形態で使用される。脱イオンの仕事に応じ得るために、アニオン交換体は対イオンとしてOH(OH形態と称されるもの)とともに使用されなければならない。
【0004】
EP−A−0444643及びJP−A−2003−230881は、比較的高温においてOH形態で使用し得るアニオン交換樹脂に言及している。これらの熱に安定な樹脂の作製経路は、低収率と関係がある複雑な化学反応によって進行する。結果として、これらの樹脂の入手可能性は工業的量で保証されていない。
【0005】
従って、本発明の目的は、少なくとも60℃、好ましくは少なくとも80℃の作業温度に比較的長時間にわたって耐性があるビーズ型アニオン交換体の、それらを工業的量で入手可能にするための合成であった。
【特許文献1】EP−A−0444643
【特許文献2】JP−A−2003−230881
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的及び主題の解決は、式(I):
【化2】

[式中、
Ak、Ak’、Ak’’は、それぞれの場合において、互いに独立して、同一のまたは異なるC〜C18アルキル基であり;
nは5〜18の間の偶数であり;
x+y=2であり;且つ
XはCl、Br、OH、HCO、HSO、1/2(SO)、1/2CO、NO、F、HPO、1/2HPO、1/3POである]
の構造要素を有する少なくとも1つの芳香族モノマー及び少なくとも1つの架橋剤に基づくビーズ形態のアニオン交換体である。
【0007】
驚くべきことに、本発明に係るアニオン交換体は、特に熱安定性の特性を示し、さらに、先行技術から既知のアニオン交換体と比較して、合成するのが容易である。それらは、冷却回路中での水の脱イオン化または化学反応における触媒としての使用に非常に適している。
【0008】
本発明に係るアニオン交換体は、アミン含有ビーズポリマーのアルキル化またはアルキル化アミン含有モノマーの重合のいずれかによって得ることができる。
【0009】
従って、本発明はまた、一般式(I):
【化3】

[式中、
Ak、Ak’、Ak’’は、それぞれの場合において、互いに独立して、同一のまたは異なるC〜C18アルキル基であり;
nは5〜18の間の偶数であり;
x+y=2であり;且つ
XはCl、Br、OH、HCO、HSO、1/2(SO)、1/2CO、NO、F、HPO、1/2HPO、1/3POである]
の構造要素を含む少なくとも1つの芳香族モノマー及び少なくとも1つの架橋剤に基づく熱安定性アニオン交換体の作製方法に関するものであって、アミン含有ビーズポリマーをアルキル化する、またはアルキル化されたアミン含有モノマーを重合させるいずれかであり、且つ両変形によって得られたイオン交換体を電荷を変えることによってイオン形態に変換することを特徴とする方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
アミン含有ビーズポリマーを作製するために、好ましくはアミン含有モノマー、特に好ましくはビニルベンジルアミンを、単独または他の非官能性モノマーと組み合わせてビーズ形態に(共)重合させる。
【0011】
アミン含有ビーズポリマーの好ましい作製方法は、まず非官能化モノマーの懸濁重合によって非官能化ビーズポリマーを生成し、且つこれらに1つ以上の下流工程でアミン官能を提供することである。
【0012】
非官能化モノマーとして、一般にモノエチレン系不飽和芳香族モノマー、好ましくはスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、またはビニルナフタレンが使用される。非常に適した物質はまた、これらのモノマーの混合物、及びさらに20重量%までの他のモノエチレン系不飽和モノマー、好ましくはクロロスチレン、ブロモスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸及びメタクリル酸のエステル、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸エチルヘキシル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ステアリル、またはメタクリル酸イソボルニル等を有するモノエチレン系不飽和モノマーの混合物である。特に、スチレン及びビニルトルエンが好ましい。
【0013】
架橋剤を前記モノマーに加える。架橋剤は、一般にマルチエチレン系不飽和化合物、好ましくはジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、トリビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、オクタジエン、またはトリアリルシアヌレートである。特に好ましくは、ビニル芳香族架橋剤ジビニルベンゼンまたはトリビニルベンゼンである。さらに特に好ましくは、ジビニルベンゼンである。前記架橋剤は、単独または種々の架橋剤の混合物として使用することができる。使用されるべき架橋剤の総量は、一般に、エチレン系不飽和化合物の合計を基準にして、0.1〜80重量%、好ましくは0.5〜60重量%、特に好ましくは1〜40重量%である。
【0014】
本発明の好ましい実施態様において、ポロゲン(porogen)と称される、増孔剤もまた前記モノマーに加えることができる。ポロゲンは、非官能性ビーズポリマー中の細孔構造の形成に役立つ。ポロゲンとして、好ましくは有機希釈剤が使用される。特に好ましくは、水に10重量%未満、好ましくは1重量%未満溶解する有機希釈剤が使用される。特に適したポロゲンは、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、シクロヘキサン、オクタン、イソオクタン、デカン、ドデカン、イソドデカン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジブチルフタレート、n−ブタノール、4−メチル−2−ペンタノール、及びn−オクタノールである。トルエン、シクロヘキサン、イソオクタン、イソドデカン、4−メチル−2−ペンタノール、及びメチルイソブチルケトンが特に好ましい。しかしながら、ポロゲンとして、非架橋の線状または分枝ポリマー、例えば、ポリスチレン及びポリ(メタクリル酸メチル)等も使用することができる。
【0015】
ポロゲンは通例、エチレン系不飽和化合物の合計を基準にして、それぞれの場合において、10〜70重量%、好ましくは25〜65重量%の量で使用される。
【0016】
非官能性ビーズポリマーの作製において、前述のモノマーを、本発明のさらに好ましい実施態様において、開始剤を使用した分散助剤の存在下で、水性懸濁液中で重合させる。
【0017】
分散助剤として、好ましくは天然及び合成の水溶性ポリマーが使用される。特に好ましくは、ゼラチン、デンプン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリビニルピロリドン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、または(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリルエステルとのコポリマーが使用される。さらに特に好ましくは、ゼラチンまたはセルロース誘導体、特に、セルロースエステル及びセルロースエーテル、例えばカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、またはメチルヒドロキシエチルセルロース等が使用される。使用される分散助剤の量は、一般に、水相を基準にして0.05〜1%、好ましくは0.1〜0.5%である。
【0018】
本発明のさらに好ましい実施態様において、開始剤が使用される。適切な開始剤は、温度上昇時にフリーラジカルを形成する化合物である。好ましくは、ペルオキシ化合物、特に好ましくは、ジベンゾイルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ビス(p−クロロベンゾイル)ペルオキシド、ジシクロヘキシルペルオキシジカーボネート及びt−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサン、並びにまたアゾ化合物、特に好ましくは2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)若しくは2,2’−アゾビス(2−メチルイソブチロニトリル)、またはその他の脂肪族ペルオキシエステル、好ましくはt−ブチルペルオキシアセテート、t−ブチルペルオキシイソブチレート、t−ブチルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシオクトエート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシネオデカノエート、t−アミルペルオキシピバレート、t−アミルペルオキシオクトエート、t−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルペルオキシネオデカノエート、2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、2,5−ジピバロイル−2,5−ジメチルヘキサン、2,5−ビス(2−ネオデカノイルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、ジ−t−ブチルペルオキシアゼラート、及びジ−t−アミルペルオキシアゼラートが使用される。
【0019】
前記開始剤は、一般に、エチレン系不飽和化合物の合計を基準にして、0.05〜6.0重量%、好ましくは0.1〜5.0重量%、特に好ましくは0.2〜2重量%の量で使用される。
【0020】
当該水相は、水相のpHを12〜3、好ましくは10〜4に設定する緩衝システムを含有することができる。特に非常に適した緩衝システムは、リン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、またはホウ酸塩を含有する。
【0021】
当該水相に溶解された抑制剤を使用することが有利であり得る。考慮される抑制剤は、無機及び有機物質の両方である。無機抑制剤の例は、窒素化合物、例えば、ヒドロキシルアミン、ヒドラジン、亜硝酸ナトリウム、及び亜硝酸カリウム等である。有機抑制剤の例は、フェノール系化合物、例えば、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、レゾルシノール、ピロカテコール、t−ブチルピロカテコール、フェノール類とアルデヒドとの縮合生成物等である。さらなる有機抑制剤は、窒素化合物、例えば、ジエチルヒドロキシルアミン及びイソプロピルヒドロキシルアミン等である。レゾルシノールが抑制剤として好ましい。前記抑制剤の濃度は、水相を基準にして、5〜1000ppm、好ましくは10〜500ppm、特に好ましくは20〜250ppmである。
【0022】
前記有機相は、撹拌またはジェッティングによって小滴として水相中に分散させることができる。有機相は、モノマー及び架橋剤、さらに適切な場合には、ポロゲン及び/または開始剤の混合物を意味すると解される。伝統的な分散重合において、有機小滴は撹拌によって生成される。4リットル・スケールで、典型的には、250〜400rpmの撹拌機スピードが用いられる。小滴がジェッティングによって作製される場合、均一な小滴径を得るために、有機小滴をカプセル化することが望ましい。ジェッティングされた有機小滴のマイクロカプセル化の方法は、例えば、EP−A−0046535に記載されており、マイクロカプセル化に関するその内容は、本出願に参照により組み込まれる。
【0023】
場合によりカプセル化されたモノマー小滴の平均粒径は10〜1000μm、好ましくは100〜1000μmである。
【0024】
当該有機相対当該水相の比は、一般に1:20〜1:0.6、好ましくは1:10〜1:1、特に好ましくは1:5〜1:1.2である。
【0025】
しかしながら、シード−フィード法において、当該有機相を、EP−A−0617714に記載の有機相を吸収するシードポリマーの懸濁液に加えることができ、その教示は本出願に参照により組み込まれる。有機相によって膨潤したシードポリマーの平均粒径は、5〜1200μm、好ましくは20〜1000μmである。有機相+シードポリマーの合計対水相の比は、1:20〜1:0.6、好ましくは1:10〜1:1、特に好ましくは1:5〜1:1.2である。
【0026】
当該モノマーを高温で重合させる。重合温度は開始剤の溶解温度に依存し、典型的には50〜150℃、好ましくは60〜120℃の範囲である。重合時間は30分〜24時間、好ましくは2〜15時間である。
【0027】
重合の終わりに、非官能性ビーズポリマーを、例えば、真空フィルター上で水相から分離し、適切な場合乾燥させる。
【0028】
ジェッティングまたはシード−フィード法によって、本発明に係る好ましい単分散の熱安定性アニオン交換体が得られる。本出願において、物質は単分散として記載され、当該粒子の少なくとも90容量%または質量%は、最も高頻度の直径の±10%の幅の間隔内の最も高頻度の直径の範囲にある直径を有する。
【0029】
例えば、最も高頻度の0.5mmの直径を有する物質の場合では、少なくとも90容量%または質量%は0.45mm〜0.55mmのサイズ間隔内にあり、0.7mmの最も高頻度の直径を有する物質の場合では、少なくとも90容量%または質量%は0.77mm〜0.63mmのサイズ間隔内にある。
【0030】
アミン含有ビーズポリマーを提供するための官能化を、種々の方法によって進行させることができる。例えば、当該ビーズポリマーを、DD−79152及びIL−52121に記載のクロロメチル化、及び、例えば、ヘキサメチレンテトラミンとのその後の反応によって反応させ、アミン含有ビーズポリマーを提供することができる。
【0031】
非官能性ポリビニル芳香族ビーズポリマーを反応させてアミン含有ビーズポリマーを提供する好ましい方法は、US−4952608、DAS−2519244、及びEP−A−1078690に記載のフタルイミド法と称されるものであり、フタルイミド法に関するその教示は本出願における参照により本明細書に組み込まれる。この場合において、非官能化ポリビニル芳香族ビーズポリマーをフタルイミド誘導体と縮合させる。触媒として、発煙硫酸、硫酸、または三酸化硫黄が使用される。
【0032】
フタル酸基の除去、それによるアミノメチル基の遊離は、フタルイミドメチル化架橋ビーズポリマーを、アルカリ金属水酸化物の水性またはアルコール性溶液、例えば、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム等で、100〜250℃、好ましくは120〜190℃の温度で処理することによって実施される。前記水酸化ナトリウム溶液の濃度は、10〜50重量%、好ましくは20〜40重量%の範囲にある。この方法により、1より大きい芳香核の置換を有するアミノアルキル含有架橋ビーズポリマーの作製が可能になる。
【0033】
得られたアミノメチル化ビーズポリマーを、最後に、脱イオン水を使用することによって洗浄し、アルカリフリーにする。
【0034】
前記アミン含有モノマー及び/またはポリマーのアルキル化は、例えば、一般式(II):
【化4】

[式中、
nは5〜18の整数であり;
YはBr、Cl、I、または(SO1/2であり;
は適切な対イオン、例えば、Cl、Br、I、(SO2−1/2、NO、HCO等であり;且つ
Ak、Ak’、Ak’’は、それぞれの場合において、互いに独立して、同一のまたは異なる、官能基ありまたはなしの、1〜18個の炭素原子を有する線状または分枝アルキル基である]
のω−官能性アルキルアンモニウム塩との反応によって進行する。
【0035】
好ましくは、nは5〜11の整数であり、YはBr及び/またはClであり、XはBr及び/またはClであり、並びに、Ak、Ak’、Ak’’は、それぞれの場合において、互いに独立して、メチル、エチル、2−ヒドロキシエチル、n−プロピル、2−ヒドロキシプロピル、またはn−ブチルである、特に好ましくは、前記アルキル化は、臭化5−ブロモペンチルトリメチルアンモニウム、臭化6−ブロモヘキシルトリメチルアンモニウム、塩化5−クロロペンチルトリメチルアンモニウム、または塩化6−クロロヘキシルトリメチルアンモニウムを用いて進行する。
【0036】
前記ω−官能性アルキルアンモニウム塩は、単独、そうでなければ種々のω−官能性アルキルアンモニウム塩の混合物として使用することができる。
【0037】
アミノ官能性ビーズポリマーを膨潤させるだけでなく、ω−官能性アルキルアンモニウム塩を溶解させる溶媒中で、当該アミノ官能性ビーズポリマーをω−官能性アルキルアンモニウム塩と反応させる。そのような溶媒は、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、及びアセトニトリルである。水及びメタノールが好ましく、水が特に好ましい。
【0038】
アミノ官能性ビーズポリマーとω−官能性アルキルアンモニウム塩との前記反応は、一般に20℃〜100℃、好ましくは30℃〜80℃、特に好ましくは30℃〜70℃の温度で進行する。反応時間は、一般に0.5〜48時間、好ましくは1〜36時間、特に好ましくは1〜24時間である。当該反応をpH7〜pH11、好ましくはpH8〜pH10の一定pHで実施することが有利である。
【0039】
前記アミノ官能性ビーズポリマー中の、ω−官能性アルキルアンモニウム塩対アミノ基のモル比は、一般に0.1〜5、好ましくは0.5〜4、特に好ましくは1〜3である。
【0040】
当該反応の終わりに、一般に、樹脂を単離し、溶媒、好ましくは水で洗浄し、未反応のω−官能性アルキルアンモニウム塩を抽出する。
【0041】
樹脂を、種々のアルカリ金属水酸化物溶液、酸、及び塩を用いてそれらの電荷を変えることによって所望のイオン形態にすることができる。例えば、硫酸を用いた処理によって、アニオン交換体が対イオンとして硫酸イオンを主として有する硫酸形態と称されるものが生成され、水酸化ナトリウム溶液を用いた処理によって、アニオン交換体が対イオンとして水酸化物イオンを主として有する水酸化物形態が生成され、塩化ナトリウム溶液を用いた処理によって、アニオン交換体が対イオンとして塩化物イオンを主として有する塩化物形態が生成される等である。熱安定性アニオン交換体の合成のために、電荷をOH形態へ変えることが好ましい。
【0042】
脱ミネラル化のための用途、及び特に混床(ポリッシャー)と称されるものにおいて、対イオンとして95%までの水酸化物イオンを有する樹脂が必要とされる。
【0043】
そのような樹脂は、種々の溶液を使用する電荷の特定の順次変化によって生成することができる。例として、例えば、1〜10ベッド容量の希硫酸(1〜15重量%)、次いで1〜20ベッド容量の水酸化ナトリウム溶液(2〜15重量%)を使用する処理が、特に有効であることが証明されている。5ベッド容量の10重量%濃度の硫酸、次いで4ベッド容量の10重量%濃度の水酸化ナトリウム溶液が好ましい。ベッド容量は、一定容量まで振動させた後、樹脂充填物が水中で占める容量を意味すると解される。
【0044】
本発明に従って得られた強塩基性アニオン交換体は、高い交換容量、良好な浸透圧及び機械的安定性によって、並びに優れた熱安定性によって特徴づけされ、その理由で、それらは、冷却回路中での水の脱イオン化または化学反応中の触媒に非常に適しており、且つ使用することができる。本発明に従って得られた強塩基性アニオン交換体は、原子炉における一次及び/または二次回路システムの放射能汚染された冷却回路の処理に非常に適している。さらに、原子力発電所の燃料冷却設備におけるそれらの使用により、その熱安定性のおかげで作業サイクルを延長させ得る。
【0045】
本発明に従って得られた強塩基性アニオン交換体は、特に、脱イオン水中80℃で3600時間後に、水酸化物形態(少なくとも90%水酸化物対イオン)で、それらの元の強塩基性交換容量の80%を得ることができ、さらに脱イオン水中100℃で3600時間後に、それらの元の強塩基性交換容量の50%を得ることができる。
【0046】
迅速試験において、それらは、0.1モル/Lの水酸化ナトリウム溶液中100℃で60時間後に、水酸化物形態で、それらの元の強塩基性交換容量の95%を得ることができる。
【0047】
本発明は、実施例によって以下に記載されるであろう。これらの実施例は、本明細書に記載される本発明を決して限定するものではない。
【実施例】
【0048】
<実施例1:ヘテロ分散アミン含有ビーズポリマーの作製>
1a)ヘテロ分散ビーズポリマーの作製
室温で、1112mLの脱イオン水、150mLの2重量%濃度のメチルヒドロキシエチルセルロース溶液、及び7.5グラムのリン酸水素二ナトリウム・12HOを重合反応器へ装入する。全溶液を室温で1時間撹拌する。その後、95.37gのジビニルベンゼン80.53重量%濃度、864.63gのスチレン、576gのイソドデカン、及び7.70gのジベンゾイルペルオキシド75重量%濃度を含むモノマー混合物を続いて加える。まず、バッチを室温で20分間放置し、次いで200rpmの撹拌機スピードで室温で30分間撹拌する。当該バッチを70℃に加熱し、70℃でさらに7時間撹拌し、次いで95℃に加熱し、95℃でさらに2時間撹拌する。冷却後に、得られたビーズポリマーを濾過し、水で洗浄し、80℃で48時間乾燥させる。
【0049】
1b)ヘテロ分散アミドメチル化ビーズポリマーの作製
室温で、2000gの1,2−ジクロロエタン、608gのフタルイミド、及び423gの30.0重量%濃度のホルマリンを装入する。懸濁液のpHを、水酸化ナトリウム溶液を使用することによって5.5〜6に調整する。その後、水を蒸留によって除去する。次いで、44.6gの硫酸を加える。結果として生じた水を蒸留によって除去する。バッチを冷却する。30℃で、163gの65重量%濃度の発煙硫酸、次いで320gの実施例1a)からのヘテロ分散ビーズポリマーを加える。懸濁液を70℃に加熱し、この温度でさらに6時間撹拌する。反応液を取り出し、脱イオン水を加え、残留量のジクロロエタンを蒸留によって除去する。
【0050】
アミドメチル化ビーズポリマーの収量:1710mL
元素分析による組成:炭素:75.1重量%;水素:4.9重量%;窒素:5.9重量%
【0051】
1c)ヘテロ分散アミノメチル化ビーズポリマーの作製
920mLの20重量%濃度の水酸化ナトリウム溶液を、室温で、1000mLの実施例1b)からのアミドメチル化ビーズポリマーに加える。懸濁液を180℃に加熱し、この温度で8時間撹拌する。
【0052】
得られたビーズポリマーを脱イオン水で洗浄する。
【0053】
アミノメチル化ビーズポリマーの収量:840mL
元素分析による組成:窒素:11.5重量%
当該樹脂のアミノメチル基含有量:2.49モル/L
【0054】
<実施例2:単分散アミン含有ビーズポリマーの作製>
2a)スチレン、ジビニルベンゼン、及びエチルスチレンに基づく、単分散マクロ多孔性ビーズポリマーの作製
3000gの脱イオン水を10Lのガラス反応器に装入し、320gの脱イオン水中の10gのゼラチン、16gのリン酸水素二ナトリウム・12水和物、及び0.73gのレゾルシノールの溶液を加え、混合する。混合物を25℃に加熱する。撹拌しながら、その後、ジェッティングによって得られた、3.6重量%ジビニルベンゼン、0.9重量%エチルスチレン(80%ジビニルベンゼンを有するジビニルベンゼンの異性体とエチルスチレンとの商業的に従来の混合物として使用される)、0.5重量%ジベンゾイルペルオキシド、56.2重量%のスチレン、及び38.8重量%のイソドデカン(高分率のペンタメチルヘプタンを有する異性体の工業混合物)の狭い粒径分布を有する3200gのマイクロカプセル化モノマー小滴の混合物を、ゼラチンのホルムアルデヒド−硬化複合体コアセルベート及びアクリルアミドとアクリル酸とのコポリマーからなるマイクロカプセルとともに加え、pH12を有する3200gの水相を加える。当該モノマー小滴の平均粒径は460μmである。
【0055】
バッチを、25℃で始まり95℃で終わる温度プログラムに従った温度上昇によって、撹拌しながら完了まで重合させる。当該バッチを冷却し、32μmのふるいの上で洗浄し、次いで真空中80℃で乾燥させる。これにより、440μmの平均粒径、狭い粒径分布、及び滑らかな表面を有する1893gのビーズ型ポリマーが作製される。
【0056】
前記ポリマーは、外観がチョークのように白く、およそ370g/Lのかさ密度を有する。
【0057】
2b)単分散アミドメチル化ビーズポリマーの作製
2373gのジクロロエタン、705gのフタルイミド、及び505gの29.2重量%濃度のホルマリンを室温で装入する。懸濁液のpHを水酸化ナトリウム溶液を使用することによって5.5〜6に調整する。その後、水を蒸留によって除去する。次いで、51.7gの硫酸を加える。結果として生じた水を蒸留によって除去する。バッチを冷却する。30℃で、189gの65重量%濃度の発煙硫酸、次いで371.4gの実施例2a)からの単分散ビーズポリマーを加える。懸濁液を70℃に加熱し、この温度でさらに6時間撹拌する。反応液を取り出し、脱イオン水を加え、残留量のジクロロエタンを蒸留によって除去する。
【0058】
アミドメチル化ビーズポリマーの収量:2140mL
元素分析による組成:
炭素:75.3重量%;
水素:4.9重量%;
窒素:5.8重量%;
残部:酸素
【0059】
2c)単分散アミノメチル化ビーズポリマーの作製
1019gの45重量%濃度の水酸化ナトリウム溶液及び406mLの脱イオン水を、室温で、2100mLの実施例2b)からのアミドメチル化ビーズポリマーに加える。懸濁液を180℃に加熱し、この温度で6時間撹拌する。
【0060】
得られたビーズポリマーを脱イオン水で洗浄する。
【0061】
アミノメチル化ビーズポリマーの収量:1770mL
これは、1804mLの推定全収量を与える。
元素分析による組成:窒素:10.90重量%
アミノメチル化ビーズポリマーのリットル当たりのモル単位でのアミノメチル基の量:2.29
【0062】
元素分析によるアミノメチル化ビーズポリマーの組成から、スチレン及びジビニルベンゼン単位に由来する、芳香核当たり、統計的に平均して、1.06水素原子がアミノメチル基によって置換されていると計算されるかもしれない。
【0063】
<実施例3:臭化6−ブロモヘキシルトリメチルアンモニウム(本発明に係る)を使用することによる熱安定性アニオン交換体の作製>
250mLの実施例1c)からの樹脂を750mLの水に装入する。室温で、500mLの水中に、565gの臭化6−ブロモヘキシルトリメチルアンモニウムの溶液を加える。
懸濁液を50℃に加熱し、10重量%濃度の水酸化ナトリウム溶液を加えることによってpHをpH9に維持しながら、この温度に24時間保つ。
24時間後、320mLの10重量%濃度の水酸化ナトリウム溶液が消費される。
当該樹脂を、溶出液が臭化物フリーになるまで脱イオン水で洗浄する(臭化物イオンは硝酸銀を用いた沈澱によって検出される)。
これにより、5.7重量%窒素を含有する臭化物形態の600mLのアニオン交換体が作製される。
【0064】
水酸化物形態への変換のために、当該樹脂を以下のようにカラム中で処理する。
2時間の過程で、2150mLの5.3重量%濃度の水酸化ナトリウム溶液を70℃で樹脂に通す。
次いで、当該樹脂を70℃で脱イオン水を用いて中性まで洗浄する。
2時間の過程で、4300mLの7重量%濃度の硫酸を樹脂に通す。その後、樹脂を中性まで洗浄する。その後、2時間で4200mLの5重量%濃度の炭酸水素ナトリウム溶液を用いた処理及び中性までの洗浄が続く。その後、樹脂を2150mLの5.3重量%濃度の水酸化ナトリウム溶液で4時間の過程で溶出し、溶出液が4μS/cm未満の導電率を有するまで脱イオン水で洗浄する。
【0065】
水酸化物形態の樹脂の収量:630mL
水酸化物形態の樹脂のリットル当たりのモル単位での弱塩基性基の量:0.85
水酸化物形態の樹脂のリットル当たりのモル単位での強塩基性基の量:0.91
【0066】
<実施例4:臭化6−ブロモヘキシルトリメチルアンモニウム(本発明に係る)を使用することによる熱安定性アニオン交換体の作製>
250mLの実施例2c)からの樹脂を750mLの水に入れる。室温で、500mLの水中に、520gの臭化6−ブロモヘキシルトリメチルアンモニウムの溶液を加える。
懸濁液を50℃に加熱し、10重量%濃度の水酸化ナトリウム溶液を加えることによってpHをpH9に維持しながら、この温度に24時間保つ。
24時間後、500mLの10重量%濃度の水酸化ナトリウム溶液が消費される。
当該樹脂を、溶出液が臭化物フリーになるまで脱イオン水で洗浄する(硝酸銀を用いた沈澱による臭化物イオンの検出)。
これにより、7.3重量%窒素を含有する臭化物形態の575mLのアニオン交換体が作製される。
【0067】
水酸化物形態への変換のために、当該樹脂を以下のようにカラム中で処理する。
2時間の過程で、2050mLの5.3重量%濃度の水酸化ナトリウム溶液を70℃で樹脂に通す。
次いで、当該樹脂を70℃で脱イオン水を用いて中性まで洗浄する。
2時間の過程で、4150mLの7重量%濃度の硫酸を樹脂に通す。その後、樹脂を中性まで洗浄する。その後、2時間で4000mLの5重量%濃度の炭酸水素ナトリウム溶液を用いた処理及び中性までの洗浄が続く。その後、樹脂を2050mLの5.3重量%濃度の水酸化ナトリウム溶液で4時間の過程で溶出し、溶出液が4μS/cm未満の導電率を有するまで脱イオン水で洗浄する。
【0068】
水酸化物形態の樹脂の収量:590mL
水酸化物形態の樹脂のリットル当たりのモル単位での弱塩基性基の量:0.73
水酸化物形態の樹脂のリットル当たりのモル単位での強塩基性基の量:0.82
【0069】
<実施例5:臭化5−ブロモペンチルトリメチルアンモニウム(本発明に係る)を使用することによる熱安定性アニオン交換体の作製>
実施例2a〜c)と同様の方法で作製した、リットル当たり2.3モルのアミノメチル基を有する250mLの樹脂を、750mLの水に入れる。室温で、500mLの水中に、350gの臭化5−ブロモペンチルトリメチルアンモニウムの溶液を加える。
懸濁液を50℃に加熱し、10重量%濃度の水酸化ナトリウム溶液を加えることによってpHをpH9に維持しながら、この温度に24時間保つ。
24時間後、350mLの10重量%濃度の水酸化ナトリウム溶液が消費される。
当該樹脂を、溶出液が臭化物フリーになるまで脱イオン水で洗浄する(硝酸銀を用いた沈澱による臭化物イオンの検出)。
これにより、7.7重量%窒素を含有する臭化物形態の600mLのアニオン交換体が作製される。
【0070】
水酸化物形態への変換のために、当該樹脂を以下のようにカラム中で処理する。
2時間の過程で、2150mLの5.3重量%濃度の水酸化ナトリウム溶液を70℃で樹脂に通す。
次いで、当該樹脂を70℃で脱イオン水を用いて中性まで洗浄する。
2時間の過程で、4300mLの7重量%濃度の硫酸を樹脂に通す。その後、樹脂を中性まで洗浄する。その後、2時間で4200mLの5重量%濃度の炭酸水素ナトリウム溶液を用いた処理及び中性までの洗浄が続く。その後、樹脂を2150mLの5.3重量%濃度の水酸化ナトリウム溶液で4時間の過程で溶出し、溶出液が4μS/cm未満の導電率を有するまで脱イオン水で洗浄する。
【0071】
水酸化物形態の樹脂の収量:690mL
水酸化物形態の樹脂のリットル当たりのモル単位での弱塩基性基の量:0.81
水酸化物形態の樹脂のリットル当たりのモル単位での強塩基性基の量:0.85
【0072】
<実施例6:臭化4−ブロモブチルトリメチルアンモニウム(本発明によらない)を使用することによるアニオン交換体の作製>
実施例2a〜c)と同様の方法で作製した、リットル当たり2.3モルのアミノメチル基を有する250mLの樹脂を、750mLの水に入れる。室温で、500mLの水中に160gの臭化4−ブロモブチルトリメチルアンモニウムの溶液を加える。
当該樹脂を、溶出液が臭化物フリーになるまで脱イオン水で洗浄する(硝酸銀を用いた沈澱によって実施される臭化物イオンの検出)。
これにより、7.6重量%窒素を含有する臭化物形態の480mLのアニオン交換体が作製される。
【0073】
それを水酸化物形態に変換するために、当該樹脂をカラム中で2時間の過程で1200mLの4重量%濃度の水酸化ナトリウム溶液で処理する。
その後、樹脂を脱イオン水で溶出液が中性になるまで洗浄する。
【0074】
水酸化物形態の樹脂のリットル当たりのモル単位での弱塩基性基の量:1.01
水酸化物形態の樹脂のリットル当たりのモル単位での強塩基性基の量:0.55
【0075】
<実施例7:塩化グリシジルトリメチルアンモニウム(本発明によらない)を使用することによるアニオン交換体の作製>
実施例2a〜c)と同様の方法で作製した、リットル当たり2.3モルのアミノメチル基を有する250mLの樹脂を、カラムにおいて1500mLのメタノールで溶出し、その後、2200mLのメタノール中に入れる。室温で、131gの塩化グリシジルトリメチルアンモニウムを加える。懸濁液を12時間還流下に保つ。
反応終了後に、当該樹脂をカラム中で、まず1500mLのメタノールで、次に溶出液が塩化物フリーになるまで(硝酸銀を用いた沈澱によって実施される塩化物イオンの検出)、脱イオン水で洗浄する。
これにより、9.9重量%窒素を含有する塩化物形態の520mLのアニオン交換体が作製される。
【0076】
水酸化物形態への変換のために、当該樹脂を以下のようにカラム中で処理する。
2時間の過程で、1850mLの5.3重量%濃度の水酸化ナトリウム溶液を70℃で樹脂に通す。
次いで、当該樹脂を70℃で脱イオン水を用いて中性まで洗浄する。
2時間の過程で、3700mLの7重量%濃度の硫酸を樹脂に通す。その後、樹脂を中性まで洗浄する。その後、2時間で3650mLの5重量%濃度の炭酸水素ナトリウム溶液を用いた処理及び中性までの洗浄が続く。その後、樹脂を1850mLの5.3重量%濃度の水酸化ナトリウム溶液で4時間の過程で溶出し、溶出液が4μS/cm未満の導電率を有するまで脱イオン水で洗浄する。
【0077】
水酸化物形態の樹脂の収量:560mL
水酸化物形態の樹脂のリットル当たりのモル単位での弱塩基性基の量:0.98
水酸化物形態の樹脂のリットル当たりのモル単位での強塩基性基の量:0.56
【0078】
<実施例8:臭化6−ブロモヘキシルトリメチルアンモニウム(本発明によらない)を使用することによるアニオン交換体の作製>
(段階1)
1000mLの実施例2c)からの樹脂及び497gの30重量%濃度のホルムアルデヒド溶液を、1000mLの脱イオン水に入れる。懸濁液を40℃に加熱し、85重量%濃度のギ酸を用いてpHをpH3に調整する。その後、以下の温度プログラムを用いる。55℃に30分間保持し、70℃に30分間保持し、85℃に30分間保持し、最後に還流させる。この過程で、85重量%濃度のギ酸を加えることによってpHをpH3にさらに保持する。還流温度に達した30分後に、pHをpH2に調整する。pH調整のために、269gの85重量%濃度のギ酸が消費されるまで、85重量%濃度のギ酸を使用する。その後、pHを50重量%濃度の硫酸を用いることによって調整する。pH2での還流の30分後に、pHを1に調整する。pH1での還流をさらに10時間維持する。
【0079】
懸濁液を冷却した後、当該樹脂を脱イオン水で洗浄し、その後、カラム中で、まず3000mLの4重量%濃度の水酸化ナトリウム溶液で、その後、溶出液が中性になるまで脱イオン水で溶出する。
これにより、1150mLのジメチルアミノメチル基含有樹脂が作製される。
ビーズポリマーのリットル当たりのモル単位でのジメチルアミノメチル基の量:1.78
【0080】
(段階2)
250mLの段階1からの樹脂を、750mLの水に入れる。室温で、500mLの水中に、202gの臭化6−ブロモヘキシルトリメチルアンモニウムを加える。
懸濁液を50℃に加熱し、10重量%濃度の水酸化ナトリウム溶液を加えることによってpHをpH9に維持しながら、この温度に24時間保つ。
24時間後、200mLの10重量%濃度の水酸化ナトリウム溶液が消費される。
当該樹脂を、溶出液が臭化物フリーになるまで脱イオン水で洗浄する(硝酸銀を用いた沈澱によって実施される臭化物イオンの検出)。
これにより、7.2重量%窒素を含有する臭化物形態の420mLのアニオン交換体が作製される。
【0081】
水酸化物形態への変換のために、当該樹脂を以下のようにカラム中で処理する。
2時間の過程で、1500mLの5.3重量%濃度の水酸化ナトリウム溶液を70℃で樹脂に通す。
次いで、当該樹脂を70℃での脱イオン水で中性まで洗浄する。
2時間の過程で、3000mLの7重量%濃度の硫酸を樹脂に通す。その後、樹脂を中性まで洗浄する。その後、2時間の過程で2900mLの5重量%濃度の炭酸水素ナトリウム溶液を用いた処理及び中性までの洗浄が続く。その後、樹脂を1500mLの5.3重量%濃度の水酸化ナトリウム溶液で溶出し、溶出液が4μS/cm未満の導電率を有するまで脱イオン水で洗浄する。
【0082】
水酸化物形態の樹脂の収量:480mL
水酸化物形態の樹脂のリットル当たりのモル単位での弱塩基性基の量:0.56
水酸化物形態の樹脂のリットル当たりのモル単位での強塩基性基の量:0.73
【0083】
<実施例9:従来のアニオン交換体(本発明によらない)>
比較例として、レバチット(Lewatit)(登録商標)モノプラス(Monoplus)MP500を、ベンジルトリメチルアンモニウム基を有する従来のアニオン交換体として用いた。
【0084】
水酸化物形態の樹脂のリットル当たりのモル単位での弱塩基性基の量:0.02
水酸化物形態の樹脂のリットル当たりのモル単位での強塩基性基の量:0.91
【0085】
<実施例10:熱安定性の試験(迅速試験)>
脱イオン水中80℃で3600時間後の樹脂の挙動の推定のために、アニオン交換樹脂の熱安定性を以下の迅速試験で試験する。
それぞれの場合において、100mLの樹脂を400mLの0.1モル/Lの水酸化ナトリウム溶液中に装入し、100℃で60時間撹拌する。樹脂が冷えた後、容量を測定し、樹脂のリットル当たりの弱塩基性及び強塩基性基の量を測定する。
【0086】
(樹脂容量)×(樹脂のリットル当たりの強塩基性基の量)の積は、被験サンプル中に存在する強塩基性基の量を与える。
【0087】
熱処理前後の強塩基性基の量を比較することによって、熱処理中の強塩基性基の分解パーセンテージが算出される。
【0088】
結果を表1にまとめる。
表1:実施例4〜9からの樹脂の熱試験
【表1】

【0089】
本発明の樹脂(実施例4及び5)は、熱処理中に強塩基性基の有意の分解を全く示さないと解されてよい。対照的に、商業的に入手可能な樹脂では、強塩基性基の約1/3が分解する(実施例9)。
【0090】
ベンジルアミノと第四級アンモニウム基との間に5個より少ない炭素原子を有する樹脂は、同様に強塩基性基の有意な分解を示す(実施例6:4個の炭素原子、及び実施例7:3個の炭素原子)。
【0091】
実施例8は、ベンジルアミノ基が第四級化されていない場合のみ、熱安定性アニオン交換体が得られることをはっきりと示している。
【0092】
実施例8からの樹脂の構造:
【化5】

【0093】
<実施例11:熱安定性の試験(長期試験)>
それぞれの場合において、100mLの実施例4及び実施例9からの樹脂を、150mLの脱イオン水中に入れ、80℃で3600時間加熱した。試験の完了後に、樹脂容量、及び樹脂のリットル当たりの弱塩基性と強塩基性基の量を測定した。
【0094】
以下の結果が得られた。
表2:実施例4〜9からの樹脂の熱試験(長期試験)
【表2】

【0095】
本発明に係る樹脂におけるOH形態では(実施例4)、80℃で3600時間後に、強塩基性基の80%より多くが保持されると解されてよい。本発明によらない市販樹脂(実施例9)では、対照的に、試験後に強塩基性基の60%未満が保持される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
【化1】

[式中、
Ak、Ak’、Ak’’は、それぞれの場合において、互いに独立して、同一のまたは異なるC〜C18アルキル基であり;
nは5〜18の間の偶数であり;
x+y=2であり;且つ
XはCl、Br、OH、HCO、HSO、1/2(SO)、1/2CO、NO、F、HPO、1/2HPO、1/3POである]
の構造要素を含むことを特徴とする、少なくとも1つの芳香族モノマー及び少なくとも1つの架橋剤に基づくアニオン交換体。
【請求項2】
単分散であることを特徴とする、請求項1に記載のアニオン交換体。
【請求項3】
ビーズポリマー前駆体の単分散が、シード−フィードによってまたはジェッティングによって得られることを特徴とする、請求項2に記載のアニオン交換体。
【請求項4】
マクロ多孔性であることを特徴とする、請求項1または2に記載のアニオン交換体。
【請求項5】
一般式(I):
【化2】

[式中、
Ak、Ak’、Ak’’は、それぞれの場合において、互いに独立して、同一のまたは異なるC〜C18アルキル基であり;
nは5〜18の間の偶数であり;
x+y=2であり;且つ
XはCl、Br、OH、HCO、HSO、1/2(SO)、1/2CO、NO、F、HPO、1/2HPO、1/3POである]
の構造要素を含む少なくとも1つの芳香族モノマー及び少なくとも1つの架橋剤に基づく熱安定性アニオン交換体の作製方法であって、アミン含有ビーズポリマーをアルキル化する、またはアルキル化されたアミン含有モノマーを重合させるかいずれかであり、且つ両変形によって得られたイオン交換体を電荷を変えることによってイオン形態に変換することを特徴とする方法。
【請求項6】
冷却回路中で水を脱イオン化するための、または化学反応における触媒として用いるための、請求項1から4のいずれか一項に記載のアニオン交換体の使用。

【公開番号】特開2008−80333(P2008−80333A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−243039(P2007−243039)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(505422707)ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー (220)
【Fターム(参考)】