説明

熱源機及びそのポンプ凍結解除方法

【課題】設置段階において熱源機の温水循環用のポンプ内の滞留水が凍結した場合に、通常の凍結防止制御によりポンプに通電するだけでは、解凍に時間がかかったり、ポンプがオーバーヒートしてポンプや基板に悪影響を及ぼす場合がある。
【解決手段】熱源機のポンプ内に凍結した滞留水の凍結を解除する為の解凍運転モードを設定するスイッチを設け、このスイッチにより解凍運転モードが設定されたとき、制御装置によりポンプに間欠的に通電させてポンプの発熱で滞留水の凍結を解凍する解凍運転を行う。この解凍運転は、ポンプを所定時間t1ONしてからt2の間OFFする解凍サイクルを3回行う運転であり、解凍運転終了後に再度解凍運転モードが設定されても、解凍運転終了から設定時間t3経過してから解凍運転を開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温水を循環させるポンプを備えた熱源機及びそのポンプ凍結解除方法に関し、特にポンプ内に凍結した滞留水を解凍する解凍運転に特徴を有するものに関する。
【背景技術】
【0002】
暖房用の温水を循環させるポンプを備えた熱源機において、外気温が低下したとき温水循環経路やポンプ内に水が凍結することがある。熱源機が一旦設置されて運転が開始された後は、外気温が低下したとき凍結予防運転が行われるため温水の循環経路やポンプ内に水が凍結することはない。しかし、熱源機の設置段階においては、熱源機の製作後の検査運転終了時にポンプ内に滞留していた約5〜10cc程度の水が凍結することがある。その凍結状態のまま熱源機の試運転を行うと、ポンプが正常に作動せずにオーバーヒートし、ポンプ内のモータやその周辺の基板に悪影響を及ぼすことがある。
【0003】
他方、外気温が低い場合に、給湯器の配管やポンプ内の水が凍結するのを予防する為の種々の凍結予防運転技術が種々提案されている。例えば、特許文献1には、給湯機器の凍結防止のため、凍結温度を検知した際には循環ポンプに通電して凍結防止運転を行い、外気温に応じてポンプへの通電率を変えて消費電力を節減する給湯機器の凍結防止装置が開示されている。
【0004】
特許文献2には、外気温が所定値以下になったとき、ポンプの容量に応じた所定周期毎にポンプに微小時間通電することにより、配管やポンプ内の水の凍結を予防するポンプの制御装置が開示されている。
特許文献3には、キャンドモータポンプ内の水温が低下したとき、低電圧電源からモータにロータを回転させない程度の電流を通電し、水温に応じて低電圧電源を制御し、モータへの通電により発生する熱で凍結を防止するキャンドモータポンプ用凍結防止装置が開示されている。
【0005】
特許文献4には、ブラシレスモータの出力をワンウェイクラッチ(正転時のみトルク伝達)を介してポンプの羽根車に連結し、低温雰囲気のとき、凍結解凍のためモータを逆転方向へ所定時間回転させることでモータの昇温を図り、その後正転方向へ回転させ、その正転によりロック電流が発生する場合には再度モータを逆転させるのを繰り返す凍結対策技術が開示されている。
【0006】
【特許文献1】実開平5−79345号公報
【特許文献2】特公平7−99157号公報
【特許文献3】特開平11−153098号公報
【特許文献4】特開2005−299617号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の給湯器の凍結防止装置は、凍結防止のための装置であって凍結を解凍する為の装置ではないので、配管やポンプ内の水が凍結した状態で、凍結防止運転を実行すると、ロック状態のモータの発熱が大きく、モータやその付近の基板を損傷する虞がある。 特許文献2の装置も、凍結防止のための装置であって凍結を解凍する為の装置ではないので、所定周期ごとの微小時間のモータへの通電では解凍に多大の時間がかかり、解凍に適するものではない。
【0008】
特許文献3の凍結防止装置も、凍結防止のための装置であって凍結を解凍する為の装置ではなく、凍結防止の為モータを回転させない程度の微小電流を供給するだけであるので、凍結を解凍するのに多大の時間がかかり、解凍に適したものではない。
特許文献4の装置は、凍結を解凍すること及び凍結を予防することが可能であるが、モータ出力軸と羽根車との間にワンウェイクラッチを装備する必要があり、ポンプの構造が複雑化し、製作コスト的に不利である。
【0009】
本発明の目的は、温水循環用のポンプを備えた熱源機において、ポンプ内に凍結した滞留水をモータへの通電を介して能率的に解凍可能にすること、モータや基板に悪影響を及ぼすことなく解凍可能にすること、雰囲気温度に応じた解凍を行えるようにすること、ポンプの構造を複雑化することなく解凍可能にすること、などである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の熱源機は、温水を循環させるポンプを備えた熱源機において、ポンプ内に凍結した滞留水の凍結を解除する為の解凍運転モードを設定するモード設定手段を設け、前記モード設定手段により解凍運転モードが設定されたとき、ポンプに間欠的に通電させてポンプの発熱で滞留水の凍結を解凍する解凍運転を行う解凍制御手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0011】
ポンプ内に凍結した滞留水の凍結を解除する為の解凍運転モードを設定するモード設定手段により、解凍運転モードが設定されたとき、解凍制御手段は、ポンプに間欠的に通電させてポンプの発熱で凍結した滞留水を解凍する解凍運転を行う。
【0012】
請求項2の熱源機は、請求項1の発明において、前記解凍運転は、ポンプを所定時間ONしてからOFFする解凍サイクルを複数回行う運転であることを特徴としている。
請求項3の熱源機は、請求項2の発明において、雰囲気温度を検知する雰囲気温度検知手段を備え、前記解凍制御手段は雰囲気温度に対応付けて予め設定された複数とおりの前記所定時間から検知された雰囲気温度に対応する前記所定時間を選択することを特徴としている。
【0013】
請求項4の熱源機は、請求項2又は3の発明において、前記解凍制御手段は、解凍サイクルの実行回数をカウントするカウント手段を備え、解凍サイクルが所定回数行われた後は解凍運転を終了することを特徴としている。
請求項5の熱源機は、請求項1〜3の何れかの発明において、凍結の解凍が完了したことを検知する解凍完了検知手段を備え、この解凍完了検知手段により解凍の完了が検知されたときには、前記解凍制御手段は解凍運転を終了することを特徴としている。
【0014】
請求項6の熱源機は、請求項1〜5の何れかの発明において、前記解凍制御手段は、解凍運転の終了後、前記モード設定手段により再度解凍運転モードが設定された場合に、前回の解凍運転終了から設定時間が経過していないときは、設定時間経過後に解凍運転を開始することを特徴としている。
【0015】
請求項7の熱源機は、請求項1〜6の何れかの発明において、解凍運転モードが設定されていることを表示する表示手段を備えたことを特徴としている。
請求項8の熱源機は、請求項1〜7の何れかの発明において、温水の循環経路に温水タンクを備え、前記解凍制御手段は、温水タンクの水位を検知する手段による検知結果に基づいて温水タンクの水位が一定以上であることを条件に解凍運転を行うことを特徴としている。
【0016】
請求項9の熱源機のポンプ凍結解除方法は、温水を循環させるポンプを備えた熱源機におけるポンプ内に凍結した滞留水の凍結を解除する方法において、前記熱源機を制御する制御手段に解凍運転モードを設定する第1工程と、次に、前記解凍運転モードにおいて前記制御手段によりポンプに間欠的に通電してポンプの発熱で滞留水の凍結を解凍する解凍運転を行う第2工程とを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば、ポンプ内に凍結した滞留水の凍結を解除する為の解凍運転モードを設定するモード設定手段と、モード設定手段により解凍運転モードが設定されたとき、ポンプに間欠的に通電させてポンプの発熱で滞留水の凍結を解凍する解凍運転を行う解凍制御手段とを備えているため、ポンプへの間欠的な通電により解凍するため、ポンプ内に凍結した滞留水の解凍を確実に行うことができ、ポンプがオーバーヒートすることもなく、ポンプや基板への悪影響を防止できる。
【0018】
請求項2の発明によれば、前記解凍運転は、ポンプを所定時間ONしてからOFFする解凍サイクルを複数回行う運転であるので、ポンプがオーバーヒートするのを防止しながらポンプを確実に温めて解凍することができる。
【0019】
請求項3の発明によれば、請求項2の発明において、雰囲気温度を検知する雰囲気温度検知手段を備え、前記解凍制御手段は雰囲気温度に対応付けて予め設定された複数とおりの前記所定時間から検知された雰囲気温度に対応する前記所定時間を選択するため、雰囲気温度が高くなるほど前記所定時間を短くすることができ、雰囲気温度に応じた解凍運転を行うことができ、ポンプがオーバーヒートするのを確実に防止することができる。
【0020】
請求項4の発明によれば、請求項2又は3の発明において、前記解凍制御手段は、解凍サイクルの実行回数をカウントするカウント手段を備え、解凍サイクルが所定回数行われた後は解凍運転を終了するため、ポンプがオーバーヒートするのを一層確実に防止することができる。
【0021】
請求項5の発明によれば、凍結の解凍が完了したことを検知する解凍完了検知手段を備え、この解凍完了検知手段より解凍の完了が検知されたときには、前記解凍制御手段は解凍運転を終了するため、解凍完了後の無駄な解凍運転を確実に防ぐことができる。
【0022】
請求項6の発明によれば、前記解凍制御手段は、解凍運転の終了後、前記モード設定手段により再度解凍モードが設定された場合に、前回の解凍運転終了から設定時間が経過していないときは、設定時間経過後に解凍運転を開始するので、解凍運転の終了後設定時間が経過しないうちに再度解凍運転を開始してポンプがオーバーヒートするのを確実に防止することができる。
【0023】
請求項7の発明によれば、解凍運転モードが設定されていることを表示する表示手段を備えているため、解凍運転モードに入っていることを確実に知ることができる。
請求項8の発明によれば、温水の循環経路に温水タンクを備え、前記解凍制御手段は、温水タンクの水位を検知する手段による検知結果に基づいて温水タンクの水位が一定以上であることを条件に解凍運転を行うため、ポンプから温水の循環経路にエア混じりの水を供給するのを確実に防止することができる。
【0024】
請求項9の熱源機のポンプ凍結解除方法は、熱源機を制御する制御手段に解凍運転モードを設定する第1工程と、次に解凍運転モードにおいて制御手段によりポンプに間欠的に通電してポンプの発熱で滞留水の凍結を解凍する解凍運転を行う第2工程とを備えているため、請求項1と同様の効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の熱源機は、温水を循環させるポンプ内に凍結した滞留水の凍結を解除する為の解凍運転モードを設定するモード設定手段を設け、このモード設定手段により解凍運転モードが設定されたとき、ポンプに間欠的に通電させてポンプの発熱で滞留水の凍結を解凍する解凍運転を行う解凍制御手段を設けたものである。
【実施例1】
【0026】
以下、本発明の実施例について図面に基づいて説明する。
図1に示す熱源機1は、暖房端末2,3に温水を供給する為のものであり、この熱源機1は、ガス供給管4に設けられたガス比例弁5、暖房温水発生装置6、給水管7と、この給水管7に接続された膨張タンク8、キャンドモータが組み込まれたポンプ9、暖房温水戻り管10、暖房低温水供給管11、暖房高温水供給管12、バイパス熱動弁32a、制御ユニット15などを有する。この熱源機1はケース16内に収容されている。
暖房低温水供給管11には低温暖房端末2が接続され、暖房高温水供給管12には高温暖房端末3が接続され、低温暖房端末2と高温暖房端末3から戻る暖房温水は暖房温水戻り管10により膨張タンク8へ還流するように構成されている。
【0027】
暖房温水発生装置6は、燃焼管17とガス電磁弁18などを含む燃焼部19、この燃焼部19に空気を送る燃焼ファン20、熱交換器21、点火プラグ22、立ち消え安全装置23、バーナンサ24、過熱防止装置25、空だき安全装置26、高温サーミスタ27、回転数センサ28など備えている。燃料ガスは、ガス導入口4aからガス供給管4に供給されガス比例弁5を経て燃焼部19に供給される。
【0028】
水は給水口7aから給水管7に供給され、水フィルター30によりろ過されて膨張タンク8へ供給される。水フィルター30のところに凍結予防ヒータ31が設けられている。 膨張タンク8から熱交換器21まで1次側入水管13が延び、この1次側入水管13から暖房低温水管11が分岐している。熱交換器21の2次側出湯管14は暖房高温水管12に接続されている。膨張タンク8の近くにポンプ9が配設され、このポンプ9が1次側入水管13に介装されている。暖房温水戻り管10はバイパス管32,33で暖房高温水供給管12又は2次側出湯管14に接続され、バイパス管32にはバイパス熱動弁32aが介装されている。上記ポンプ9には、回転数検出用のエンコーダ45が組み込まれている。
【0029】
膨張タンク8には、水フィルター35、補給水電磁弁36、手動補給口37、低温サーミスタ38、低水位電極39及び高水位電極40などが設けられている。上記の低水位電極39を介して膨張タンク8内の水位が所定の低レベル以上か否か検出され、高水位電極40を介して膨張タンク8内の水位が所定の高レベル以上か否か検出される。ケース16の下部の内部には、雰囲気温度(外気温)を検出する外気温サーミスタ41が設けられている。
【0030】
制御ユニット15(これが、解凍制御手段に相当する)は、入出力インターフェイスやマイクロコンピュータを有し、このマイクロコンピュータのROMには、後述の解凍運転制御の制御プログラムが予め格納されている。熱源機1に装備されたセンサやスイッチ類からの信号が制御ユニット15に入力され、制御ユニット15から各制御対象機器へ駆動信号が出力される。
【0031】
特に、本願の解凍運転制御に必要な制御系について説明する。
図2に示すように、制御ユニット15には、水張り試運転の運転モードを設定する水張り試運転スイッチ43からの指令信号、エラー呼び出しスイッチ44からの指令信号、外気温サーミスタ41の検出信号、ポンプ9のエンコーダ45からのエンコーダ信号、低水位電極39と高水位電極40の検出信号、その他のセンサ類やスイッチ類からの信号が供給される。制御ユニット15には、7セグメントの表示器42(表示手段)も設けられており、制御ユニット15からは、ポンプ9を駆動する駆動信号(駆動電流)と、表示器42を駆動する駆動信号が出力される。
【0032】
次に、制御ユニットのマイクロコンピュータで実行される解凍運転制御について説明する。この解凍運転制御は、熱源機1の設置段階において、ポンプ9内に滞留している滞留水(約5〜10cc)が凍結している場合に、ポンプ9へ間欠的に通電(ポンプ内のキャンドモータに通電)してポンプ9の発熱により凍結した滞留水を解凍する制御である。
【0033】
この解凍運転制御の為に、マイクロコンピュータのRAMには、解凍運転制御プログラムにより次のようなカウンタやタイマが設けられる。
「ポンプONカウンタ」・・解凍運転中のポンプ9への通電回数をカウントする。
「ポンプONタイマ」・・ポンプ9への連続的な通電時間を計時する。
「ポンプOFFタイマ」・・ポンプ9への通電停止時間を計時する。
「連続操作回避タイマ」・・複数回(本実施例では3回)の間欠的通電からなる解凍運 転の終了からの経過時間を計時する。
図3は、解凍運転においてポンプ9に間欠的に3回通電する通電動作を示すタイムチャートであり、図4、図5は、解凍運転制御のフローチャートである。
【0034】
次に、解凍運転制御のフローチャートについて図4、図5に基づいて説明する。但し、図中のSi(i=1,2・・)は各ステップを示す。また、以下の説明は、ポンプ凍結解除方法についての説明を含むものである。
制御ユニット15への電源の投入によりこの解凍運転制御が開始され、最初に解凍運転指令が入力された否か判定される(S1)。この熱源機1では、保持形の水張りスイッチ43がONのとき、エラー呼び出しスイッチ44を3秒間長押しすることで、解凍運転指令が入力されたと判定される。
解凍運転指令が入力されると、S2において、解凍運転モードフラグFが「1」にセットされると共に、表示器42に解凍運転モードに入っていることを示す「8」が表示されてその表示が保持される。次に、S3では、ポンプONカウンタNがN=0にセットされる。
【0035】
次に、S4では、前回の解凍運転の終了から設定時間(図3のt3で、例えばt3=10分)経過したか否か判定するため、連続操作回避タイマがアップしているか否か判定される。今回が最初の解凍運転である場合には、S4の判定はYesとなり、S5において低水位電極39がONか否か、つまり、膨張タンク8内に少なくとも低水位電極39のレベルまで水が入っているか判定する。この判定がNoのときはS5が繰り返され、水張りの進行によりS5の判定がYesになるとS6へ移行する。
【0036】
ここで、本実施例の場合、図3に示すように、解凍運転は、ポンプ9へ所定時間通電してから通電をOFFする解凍サイクルを複数回(本実施例では3回)行う運転である。滞留水が凍結した状態のポンプ9のキャンドモータに通電すると、キャンドモータが発熱してポンプ内部に伝熱し凍結が徐々に解凍される。
解凍運転における間欠的通電の通電時間t1は、外気温が5℃以下の場合は27分とされ、外気温が5℃より高い場合は17分とされ、通電停止時間t2は3分とされている。これは、外気温が低いときの解凍を促進すると共に外気温が高いときにポンプ9がオーバーヒートするのを防止する為である。
【0037】
次に、S6において、外気温サーミスタ41からの検出信号に基づいて外気温が5℃以下か否か判定され、外気温が5℃以下の場合にはS7においてポンプONタイマに27分がセットされてポンプ9への通電が開始される。次に、S8ではポンプONタイマがタイムアップしたか(27分経過したか)否か判定され、その判定がNoのときはS9において、ポンプ9に付設されたエンコーダ45からのエンコーダ信号に基づいて、ポンプ9が回転しているか否か判定され、最初はその判定がNoであるためS8へ戻り、S8,S9を繰り返し、27分間通電してS8の判定がYesになると、S13に移行する。
【0038】
他方、外気温が5℃よりも高い場合には、S6からS10へ移行し、S10においてポンプONタイマに17分がセットされ、ポンプ9への通電が開始される。次に、S11ではポンプONタイマがタイムアップしたか(17分経過したか)否か判定され、その判定がNoのときはS12において、ポンプ9に付設されたエンコーダ45からのエンコーダ信号に基づいて、ポンプ9が回転しているか否か判定され、最初はその判定がNoであるためS11へ戻り、S11,S12を繰り返し、17分間通電してS1の判定がYesになると、S13へ移行する。
【0039】
S13では、ポンプ9への通電が停止され且つポンプONカウンタNが「1」だけインクリメントされ、次のS14では、ポンプONカウンタのカウント値が3未満か否か判定され、その判定がYesのときはS15においてポンプOFFタイマに3分がセットされ、次にS16において3分経過した否か判定され、3分経過前はS16が繰り返され、3分の通電停止時間が経過すると、S5へ移行してS5以降が上記と同様に繰り返される。 そして、間欠的通電を実行している間に、ポンプ9内の凍結した滞留水の解凍が運行してポンプ9が回転開始した場合には、S9又はS12の判定がYesとなる。
【0040】
S9の判定がYesになると、S17においてポンプ9への通電が停止され、ポンプONカウンタがクリアされ、次のS18では解凍運転モードを解消するためにフラグFが0にリセットされ、表示器42の表示が「8」以外の表示(例えば、「0」の表示)に切り換えられる。S12の判定がYesになると、S19においてポンプ9への通電が停止され、ポンプONカウンタがクリアされ、次のS20では解凍運転モードを解消するためにフラグFが0にリセットされ、表示器42の表示が「8」以外の表示(例えば、「0」の表示)に切り換えられる。
【0041】
また、ポンプ9への通電が3回実行されると、S14の判定がNoとなってS21へ移行し、S21においてポンプ9への通電が停止され、連続操作回避タイマに10分(図3のt3)がセットされ、ポンプONカウンタがクリアされ、次にS22において、解凍運転モードを解消するためにフラグFが0にリセットされ、表示器42の表示が「8」以外の表示(例えば、「0」の表示)に切り換えられ、その後S1へリターンする。
【0042】
外気温が非常に低く、最初の解凍運転(3回の通電)を実行してもポンプ9が回転開始しない場合には、操作者は再度解凍運転指令を入力する。その場合、S1〜S3が上記と同様に実行され、S4において連続操作回避タイマがタイムアップしたか否か、つまり、前回の解凍運転終了から10分経過したか否か判定され、10分経過してない場合にはS4を繰り返しつつ待機し、連続操作回避タイマがタイムアップしてからS5へ移行する。 このように、連続操作回避タイマとS4のステップを設けたため、前回の解凍運転終了後、十分な時間経過しないうちに直ぐに、再度解凍運転が実行されるのを確実に防止して、解凍運転によるポンプ9のオーバーヒートを防止することができる。
【0043】
以上説明したように、解凍運転においては、ポンプ9への間欠的通電が最大3回実行されるが、3回通電しないうちに凍結が解凍されてポンプ9が回転開始した場合には、解凍運転が終了し、解凍運転モードが解除される。解凍運転の実行後に、再度解凍運転指令が入力されたとしても、連続操作回避タイマにセットした10分が経過しないうちは、解凍運転が実質的には開始されず、10分が経過してから解凍運転が実質的に開始される。
【0044】
ポンプ9への間欠的な通電により解凍するため、ポンプ9内に凍結した滞留水の解凍を確実に行うことができ、ポンプ9がオーバーヒートすることもなく、ポンプ9や基板への悪影響を防止できる。解凍運転は、ポンプ9を所定時間(17分又は27分間)ONしてから3分間OFFする解凍サイクルを複数回行う運転であるので、ポンプ9がオーバーヒートするのを防止しながらポンプ9を確実に温めて解凍することができる。
【0045】
雰囲気温度を検知する外気温サーミスタ41を有し、外気温に対応付けて予め設定された2とおりの通電時間(27分、17分)から、検知された外気温に対応する通電時間を選択するため、外気温が高くなるほど通電時間を短くすることができ、外気温に応じた解凍運転を行うことができ、ポンプ9がオーバーヒートするのを確実に防止することができる。解凍サイクルの実行回数をカウントするポンプONカウンタを有し、解凍サイクルが3回行われた後は解凍運転を終了するため、ポンプ9がオーバーヒートするのを一層確実に防止することができる。
【0046】
ポンプ9のエンコーダ45からのエンコーダ信号に基づいて凍結の解凍が完了したことを検知するように構成し、解凍の完了が検知されたときには解凍運転を終了するため、解凍完了後の無駄な解凍運転を確実に防ぐことができる。
解凍運転の終了後、再度解凍運転モードが設定された場合に、前回の解凍運転終了から設定時間(10分)が経過していないときは、設定時間経過後に解凍運転を開始するので、解凍運転の終了後設定時間が経過しないうちに再度解凍運転を開始してポンプ9や基板がオーバーヒートするのを確実に防止することができる。
【0047】
解凍運転モードが設定されていることを表示する表示器42を備えているため、解凍運転モードに入っていることを確実に知ることができる。温水の循環経路に膨張タンク8(これが、温水タンクに相当する)を有し、膨張タンク8の水位を検知する低水位電極39による検知結果に基づいて膨張タンク8の水位が一定以上であることを条件に解凍運転を開始するため、ポンプ9から温水の循環経路にエア混じりの水を供給するのを確実に防止することができる。
【0048】
次に、前記実施例を部分的に変更する例について説明する。
(1)前記実施例は、暖房端末2,3に温水を供給する熱源機を例にして説明したが、給湯器などの熱源機にも同様に本発明を適用可能である。
(2)解凍運転における、通電時間t1(27分又は17分)、通電停止時間t2(3分)、解凍運転終了から次回の解凍運転開始までの連続操作回避時間t3(10分)などは、一例に過ぎず、ポンプ9の容量や熱源機1の設置地域などに応じて、適宜変更することも可能であるから、t1=27分又は17分、t2=3分、t3=10分については一例を示すものに過ぎず、これらの時間に限定されるものではない。
【0049】
(3)解凍運転における通電回数3回も、前記同様にポンプ9の容量や熱源機の設置地域などに応じて、適宜変更することも可能であるから、一例を示すものに過ぎず、3回よりも少ない回数でもよく、3回よりも多い回数でもよい。
(4)外気温については、外気温を5℃以下、5℃超で仕切るのではなく、外気温を3段階以上に区分し、外気温の増大に応じて小さくなる3通り以上の通電時間を採用してもよい。
【0050】
(5)解凍運転モードを、水張りスイッチ43とエラー呼び出しスイッチ44とで設定するのではなく、解凍運転モードを設定する為の専用のスイッチを設けてもよい。
(6)解凍完了を検知する手段として、前記実施例ではポンプ9に設けたエンコーダ45のエンコーダ信号に基づいてポンプ9回転を検知することで解凍の完了を判定したが、これ以外に、例えば、循環経路(1次側入水管13など)に水流スイッチを設け、この水流スイッチにより水流が検知されたときに解凍が完了したと判定してもよい。
(7)その他、当業者ならば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施例に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような種々の変更形態をも包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施例に係る熱源機の構成図である。
【図2】解凍運転制御に関連する制御系のブロック図である。
【図3】解凍運転においてポンプへ間欠的に通電する通電動作のタイムチャートである。
【図4】解凍運転制御のフローチャートの一部である。
【図5】解凍運転制御のフローチャートの残部である。
【符号の説明】
【0052】
1 熱源機
9 ポンプ
15 制御ユニット(解凍制御手段)
39 低水位電極
40 高水位電極
41 外気温サーミスタ(雰囲気温度検知手段)
42 表示器(表示手段)
43 水張りスイッチ(解凍運転モード設定手段の一部)
44 エラー呼び出しスイッチ(解凍運転モード設定手段の一部)
45 エンコーダ(解凍完了検知手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温水を循環させるポンプを備えた熱源機において、
ポンプ内に凍結した滞留水の凍結を解除する為の解凍運転モードを設定するモード設定手段を設け、
前記モード設定手段により解凍運転モードが設定されたとき、ポンプに間欠的に通電させてポンプの発熱で滞留水の凍結を解凍する解凍運転を行う解凍制御手段と、
を備えたことを特徴とする熱源機。
【請求項2】
前記解凍運転は、ポンプを所定時間ONしてからOFFする解凍サイクルを複数回行う運転であることを特徴とする請求項1に記載の熱源機。
【請求項3】
雰囲気温度を検知する雰囲気温度検知手段を備え、前記解凍制御手段は雰囲気温度に対応付けて予め設定された複数とおりの前記所定時間から検知された雰囲気温度に対応する前記所定時間を選択することを特徴とする請求項2に記載の熱源機。
【請求項4】
前記解凍制御手段は、解凍サイクルの実行回数をカウントするカウント手段を備え、解凍サイクルが所定回数行われた後は解凍運転を終了することを特徴とする請求項2又は3に記載の熱源機。
【請求項5】
凍結の解凍が完了したことを検知する解凍完了検知手段を備え、この解凍完了検知手段により解凍の完了が検知されたときには、前記解凍制御手段は解凍運転を終了することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の熱源機。
【請求項6】
前記解凍制御手段は、解凍運転の終了後、前記モード設定手段により再度解凍運転モードが設定された場合に、前回の解凍運転終了から設定時間が経過していないときは、設定時間経過後に解凍運転を開始することを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の熱源機。
【請求項7】
解凍運転モードが設定されていることを表示する表示手段を備えたことを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の熱源機。
【請求項8】
温水の循環経路に温水タンクを備え、前記解凍制御手段は、温水タンクの水位を検知する手段による検知結果に基づいて温水タンクの水位が一定以上であることを条件に解凍運転を行うことを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の熱源機。
【請求項9】
温水を循環させるポンプを備えた熱源機におけるポンプ内に凍結した滞留水の凍結を解除する方法において、
前記熱源機を制御する制御手段に解凍運転モードを設定する第1工程と、
次に、前記解凍運転モードにおいて前記制御手段によりポンプに間欠的に通電してポンプの発熱で滞留水の凍結を解凍する解凍運転を行う第2工程と、
を備えたことを特徴とする熱源機のポンプ凍結解除方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−25882(P2008−25882A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−196684(P2006−196684)
【出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【出願人】(503116659)ノーリツエレクトロニクステクノロジー株式会社 (155)
【Fターム(参考)】