説明

熱硬化性シリコーン樹脂組成物及び光半導体装置

【課題】透明性等を保持し、かつ環境変化に対する耐久性等に優れた硬化物を与える熱硬化性シリコーン樹脂組成物及び該組成物の硬化物でLED用半導体素子が封止された半導体装置を提供する。
【解決手段】(A)下記平均組成式(1)
1aSi(OR2b(OH)c(4-a-b-c)/2 (1)
(式中、R1は同一又は異種の炭素数1〜20の有機基であって少なくとも1種はエポキシ基を含む有機基、R2は同一又は異種の炭素数1〜4の有機基を示し、a、b、cはそれぞれ1.0≦a≦1.5、0≦b≦0.3、0.001≦c≦0.5、1.001≦a+b+c<2を満たす数である。)
で表されるエポキシ当量が500〜3000g/molでかつ軟化点が60〜150℃である熱硬化性シリコーン樹脂と、
(B)縮合触媒
とを必須成分として含有することを特徴とする熱硬化性シリコーン樹脂組成物及び該組成物の硬化物でLED用半導体素子が封止された半導体装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、均一で黄変が少なく、透明性、耐熱性、耐光性を保持し、かつ環境変化に対する耐久性、信頼性に優れた硬化物を与える熱硬化性シリコーン樹脂組成物及び該組成物の硬化物でLED用半導体素子が封止された光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は、耐熱性、接着性、耐水性、機械的強度及び電気特性等に優れていることから、接着剤、塗料、土木建築用材料、電気・電子部品の絶縁材料等、様々な分野で使用されている。このような分野で使用されている常温又は加熱硬化型のエポキシ樹脂としては、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、フェノール又はクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等の芳香族エポキシ樹脂が一般的である。
【0003】
近年、種々の表示板、画像読み取り用光源、交通信号、大型ディスプレイ用ユニット等に実用化されている光半導体(LED)等の発光装置は、大部分が樹脂封止によって製造されている。このような装置に使用されている封止用の樹脂は、上記の芳香族エポキシ樹脂と、硬化剤として脂環式酸無水物を含有するものが一般的である。
また、今日のLEDの飛躍的な進歩により、LED素子の高出力化及び短波長化が急速に現実のものとなり始めていて、特に窒化物半導体を用いたLEDは、短波長でかつ高出力な発光が可能となる。しかしながら、窒化物半導体を用いたLED素子を、上述の芳香族エポキシ樹脂で封止すると、芳香環が短波長の光を吸収するため経時的に封止した樹脂の劣化が起こり、黄変により発光輝度が顕著に低下するという問題が発生する。
【0004】
そこで、特開平9−213997号公報(特許文献1)及び特開2000−196151号公報(特許文献2)には、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートで代表される、環状オレフィンを酸化して得られる脂環式エポキシ樹脂を用いて封止したLEDが提案されている。しかし、上記脂環式エポキシ樹脂で封止した硬化樹脂は非常に脆く、冷熱サイクルによって亀裂破壊を生じ易く、耐湿性も極端に悪いため、長時間の信頼特性が要求される用途には不向きであった。
【0005】
また、特開2003−12896号公報(特許文献3)には、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂を主体とし、脂環式エポキシ樹脂及びリン系酸化防止剤を配合し、無水メチルヘキサヒドロフタル酸硬化剤を用いて封止したLEDが提案されている。このエポキシ硬化物は無色透明性に優れるが、耐熱性が低下するため黄変し易いという欠点があり、熱に対する特性を要求されるLED素子を封止する用途には問題がある。
【0006】
更に、特開2003−224305号公報(特許文献4)には、トリアジン誘導体エポキシ樹脂単独と酸無水物硬化剤を用いる方法も提案されている。この硬化物の耐熱性は改善されるが、非常に脆いため前記の脂環式エポキシ樹脂と同様に冷熱サイクルによって亀裂破壊を生じ易く、かつ耐湿性も極端に悪いため、長時間の信頼特性が要求される用途には不向きであった。
【0007】
そこで、無色透明の硬化物が得られ、かつ耐熱性及び密着性に優れ、エポキシ硬化物の脆さを改善するLED封止材の根本的問題の解決方法が待たれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−213997号公報
【特許文献2】特開2000−196151号公報
【特許文献3】特開2003−12896号公報
【特許文献4】特開2003−224305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、上記透明性のエポキシ樹脂組成物に代えて透明性のシリコーン樹脂組成物を用いるもので、従来、透明性のシリコーン樹脂組成物は、透明性のエポキシ樹脂組成物に比べると、硬化後の耐光性が良好になる反面、硬化収縮率が大きく、樹脂内部のストレス(内部歪み)が大きくなるため、温度サイクル試験等の環境変化に対する信頼性試験において、樹脂内部でのボンディングワイヤーの断線や樹脂と回路基板との界面での剥離等の不具合が発生し易く、耐久性、信頼性が劣るという問題点を有するが、本発明は、特に、かかる問題点を解決した硬化物を与える熱硬化性シリコーン樹脂組成物、及び該組成物の硬化物でLED用半導体素子が封止された光半導体装置を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、
(A)下記平均組成式(1)
1aSi(OR2b(OH)c(4-a-b-c)/2 (1)
(式中、R1は同一又は異種の炭素数1〜20の有機基であって少なくとも1種はエポキシ基を含む有機基、R2は同一又は異種の炭素数1〜4の有機基を示し、a、b、cはそれぞれ1.0≦a≦1.5、0≦b≦0.3、0.001≦c≦0.5、1.001≦a+b+c<2を満たす数である。)
で表されるエポキシ当量が500〜3000g/molでかつ軟化点が60〜150℃である熱硬化性シリコーン樹脂と、
(B)縮合触媒
とを必須成分として含有することを特徴とする熱硬化性シリコーン樹脂組成物が、均一で黄変が少なく、透明性、耐熱性、耐光性を保持し、かつ環境変化に対する耐久性、信頼性に優れた硬化物を与えるので、該組成物の硬化物でLED用半導体素子を封止するのに有用であることを見出し、本発明をなすに至った。
【0011】
従って、本発明は、下記熱硬化性シリコーン樹脂組成物及び光半導体装置を提供する。
請求項1:
(A)下記平均組成式(1)
1aSi(OR2b(OH)c(4-a-b-c)/2 (1)
(式中、R1は同一又は異種の炭素数1〜20の有機基であって少なくとも1種はエポキシ基を含む有機基、R2は同一又は異種の炭素数1〜4の有機基を示し、a、b、cはそれぞれ1.0≦a≦1.5、0≦b≦0.3、0.001≦c≦0.5、1.001≦a+b+c<2を満たす数である。)
で表されるエポキシ当量が500〜3000g/molでかつ軟化点が60〜150℃である熱硬化性シリコーン樹脂と、
(B)縮合触媒
とを必須成分として含有することを特徴とする熱硬化性シリコーン樹脂組成物。
請求項2:
上記(B)成分の縮合触媒が有機金属縮合触媒であることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性シリコーン樹脂組成物。
請求項3:
上記有機金属縮合触媒がアルミキレート系触媒であることを特徴とする請求項2に記載の熱硬化性シリコーン樹脂組成物。
請求項4:
上記アルミキレート系触媒がアルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)であることを特徴とする請求項3に記載の熱硬化性シリコーン樹脂組成物。
請求項5:
上記熱硬化性シリコーン樹脂組成物を硬化させて得られた硬化物(厚さ:3mm)の初期の450〜500nmにおける光線透過率が90%以上で、180℃、24hr劣化テスト後の450〜500nmにおける光線透過率が85%以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱硬化性シリコーン樹脂組成物。
請求項6:
上記請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化物でLED用半導体素子が封止された光半導体装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、均一で黄変が少なく、透明性、耐熱性、耐光性を保持し、かつ環境変化に対する耐久性、信頼性に優れた硬化物を与える熱硬化性シリコーン樹脂組成物及び該組成物の硬化物でLED用半導体素子が封止された光半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一例による光半導体装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
図1は、本発明の一例による光半導体装置1の概略断面図である。
光半導体装置1は、内部底面にリードフレーム2を配して一体成形したカップ状のプレモールドパッケージ3内部に、光半導体素子4の図示しない電極を導電性接着剤5又はボンディングワイヤー6を介して前記リードフレーム2に接続し、光半導体素子4を実装すると共に、前記プレモールドパッケージ3内部を封止樹脂7で封止すると共にその上部にレンズ8を配置したものである。なお、カップ状のプレモールドパッケージ3内部の面は、光半導体素子4の発光を反射する白色リフレクターの役割を果たし、レンズ8は発光又は反射した光を屈折、集光して光半導体装置1から放出させる役割を果たす。また、封止樹脂7には熱硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化物を用いる。
【0015】
本発明の熱硬化性シリコーン樹脂組成物は、(A)熱硬化性シリコーン樹脂、及び(B)縮合触媒を必須成分として含有するものである。
(A)熱硬化性シリコーン樹脂
(A)成分の熱硬化性シリコーン樹脂は、下記平均組成式(1)
1aSi(OR2b(OH)c(4-a-b-c)/2 (1)
(式中、R1は同一又は異種の炭素数1〜20の有機基であって少なくとも1種はエポキシ基を含む有機基、R2は同一又は異種の炭素数1〜4の有機基を示し、a、b、cはそれぞれ1.0≦a≦1.5、0≦b≦0.3、0.001≦c≦0.5、1.001≦a+b+c<2を満たす数である。)
で表されるエポキシ当量が500〜3000g/molでかつ軟化点が60〜150℃であるシリコーンポリマーである。
【0016】
上記平均組成式(1)中、R1の同一又は異種の炭素数1〜20の有機基、エポキシ基を含む有機基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、及び炭素数7〜20のアラルキル基、エポキシ基を含むアルキル基等が挙げられる。
【0017】
上記炭素数1〜20のアルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基がより好ましく、このアルキル基は直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、エポキシ基を含むアルキル基としては、γ−グリシドキシプロピル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基等が挙げられる。
上記炭素数2〜20のアルケニル基としては、炭素数2〜10のアルケニル基がより好ましく、例えばビニル基、アリル基、プロペニル基等が挙げられる。
上記炭素数6〜20のアリール基としては、炭素数6〜10のアリール基がより好ましく、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等が挙げられる。
上記炭素数7〜20のアラルキル基としては、炭素数7〜10のアラルキル基がより好ましく、例えばベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
上記平均組成式(1)のR1は、これらの中でも、特にメチル基、フェニル基又はγ−グリシドキシプロピル基であることが好ましい。
【0018】
上記平均組成式(1)中、R2は同一又は異種の炭素数1〜4の有機基であり、例えばアルキル基又はアルケニル基が挙げられる。
また、OR2はシロキサン樹脂の末端基のうち、シラノール基(Si−OH)以外の部分を示し、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基などが挙げられ、原料の入手が容易なメトキシ基、イソプロポキシ基が好ましい。
【0019】
上記平均組成式(1)中、a、b及びcは、1.0≦a≦1.5、0≦b≦0.3、0.001≦c≦0.5、1.001≦a+b+c<2を満たす数である。
1の含有量aが1.0未満では硬くなりクラック防止性が低下し、1.5を超えると有機基が多くなって疎水性が高くなり、かつ柔らかくなるため、クラック防止効果がなくなるだけでなく、ハジキ等の概観不良が生じる。
OR2の含有量bが0.3を超えると末端基量が多くなり、分子量が小さくなる傾向であるため、クラック防止性能が発現しなくなる。
OHの含有量cが0.5を超えると加熱硬化時の縮合反応に関与してくる比率が高まり、高硬度ではあるが耐クラック性に乏しくなる。cが0.001未満では、融点が高くなる傾向があり、作業性に問題が生じる。
より好ましくは、1.01≦a≦1.3、0.001≦b≦0.2、0.01≦c≦0.3、1.021≦a+b+c≦1.8である。
【0020】
このような上記平均組成式(1)の(A)成分は、3官能シラン由来のT単位(R1SiO3/2)、2官能シラン由来のD単位(R1SiO2/2)、1官能シラン由来のM単位(R1SiO1/2)の組み合わせで表現することができるが(R1は上記の通り。以下、同様。)、(A)成分をこの表記法で表した時、全シロキサン単位の総モル数に対し、R1SiO3/2で表されるT単位の含有モル数の比率が70モル%以上であることが好ましい。T単位が70モル%未満では、硬度、密着性、概観等の総合的なバランスが崩れる場合がある。なお、残部は、M単位、D単位でよく、これらの和が30モル%以下であることが好ましい。
【0021】
このような(A)成分は、下記平均組成式(2)
1nSiX4-n (2)
(式中、R1は同一又は異種の炭素数1〜20の有機基であって少なくとも1種はエポキシ基を含む有機基、Xはハロゲン原子又はアルコキシ基であり、nは1、2又は3である。)
で示されるシラン化合物の加水分解縮合物として得ることができる。
【0022】
上記平均組成式(2)中、R1の同一又は異種の炭素数1〜20の有機基及びエポキシ基を含む有機基は、上記平均組成式(1)中のR1のそれらと同じである。また、R1の中で、特に好ましいのはメチル基、フェニル基又はγ−グリシドキシプロピル基である。
【0023】
上記平均組成式(2)中、nは1、2又は3であるが、nが2又は3である場合、即ちR1が複数ある場合、各R1は互いに同一であってもよいし異なっていてもよい。但し、nは固形状のポリシロキサンを得ることができる点で、n=1であることが好ましい。
【0024】
このような平均組成式(2)で表されるシラン化合物としては、例えば、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、メチルビニルジクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン等のオルガノジクロロシラン;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のオルガノトリアルコキシシラン;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン等のジオルガノジアルコキシシラン;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のオルガノエポキシシランが挙げられる。
特にメチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを用いることが好ましい。
【0025】
このような加水分解性基を有するシラン化合物の加水分解及び縮合は、通常の方法で行えばよいが、例えば酢酸、塩酸、硫酸等の酸触媒、又は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等のアルカリ触媒の存在下で行うことが好ましい。例えば加水分解性基としてクロル基を含有するシランを使用する場合は、水添加によって発生する塩酸を触媒として、目的とする適切な分子量の加水分解縮合物を得ることができる。
【0026】
ここで、加水分解及び縮合の際に添加される水の量は、上記加水分解性基を有するシラン化合物中の加水分解性基(例えばクロル基の場合)の合計量1モル当り、通常、0.9〜1.6モルであり、好ましくは1.0〜1.3モルである。この添加量が0.9〜1.6モルの範囲を満たすと、後述の組成物は作業性が優れ、その硬化物は強靭性が優れたものとなる。
【0027】
このような加水分解性基を有するシラン化合物は、通常、アルコール類、ケトン類、エステル類、セロソルブ類、芳香族化合物類等の有機溶剤中で加水分解して使用することが好ましい。具体的には、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、n−ブタノール、2−ブタノール等のアルコール類が好ましく、組成物の硬化性及び硬化物の強靭性が優れたものとなるので、イソプロピルアルコールがより好ましい。
この場合、加水分解及び縮合の反応温度は、好ましくは10〜120℃、より好ましくは20〜100℃である。反応温度がかかる範囲を満たすと、ゲル化することなく、次の工程に使用可能な固体の加水分解縮合物が得られる。
【0028】
このようにして得られる(A)成分の軟化点は、60〜150℃であり、好ましくは70〜120℃である。軟化点が60℃未満では、タックが残り、タブレット等の打錠が難しく、また軟化点が150℃超過では、次工程の混合・混練作業が難しくなることがある。
【0029】
また、(A)成分のエポキシ当量は、500〜3000g/molであり、好ましくは1500〜2800g/mol、より好ましくは2000〜2600g/molである。エポキシ当量が500g/mol未満では、架橋点が多くなりその結果、成形物は、クラックが入り易くなり、またエポキシ当量が3000g/mol超過では、架橋点が少ないため、製造上、安定したエポキシ当量を有するポリマーを合成できない問題点がある。
【0030】
このような上記平均組成式(1)の具体例としては、例えば下記式(3)、(4)等のシリコーンポリマーが挙げられる。
(C650.4(G)0.2(CH30.4Si(OCH30.01(OH)0.121.44
(3)
(C650.4(G)0.05(CH30.7Si(OCH30.01(OH)0.111.36
(4)
(G=γ−グリシドキシプロピル基)
【0031】
(B)縮合触媒
(B)成分の縮合触媒は、上記(A)成分の熱硬化性シリコーン樹脂を硬化させる有機金属縮合触媒である。
このような有機金属縮合触媒は、(A)成分の安定性、皮膜の硬度、無黄変性、及び硬化性等を考慮して選択され、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、ギ酸ナトリウム、ギ酸カリウム、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、n−ヘキシルアミン、トリブチルアミン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、ジシアンジアミド等の塩基性化合物類;テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、チタンアセチルアセトナート、アルミニウムトリイソブトキシド、塩化アルミニウム、コバルトオクチレート、コバルトアセチルアセトナート、鉄アセチルアセトナート、スズアセチルアセトナート、ジブチルスズオクチレート、ジブチルスズラウレート、過塩素酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムブトキシビスエチルアセトアセテート等の含金属化合物類;p−トルエンスルホン酸、トリクロル酢酸等の酸性化合物類等が挙げられる。
特にアルミキレート系触媒であるアルミニウムアセチルアセトナート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムブトキシビスエチルアセトアセテートが好ましく、より好ましくはアルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)を用いることが好ましい。
【0032】
アルミキレート触媒は、通常のシラノールの縮合触媒としての働きを有し、更にエポキシ基がある場合は、シラノールとエポキシ基との付加反応を促す付加触媒ともなる。
【0033】
このような縮合触媒の添加量は、上記(A)成分100質量部に対して、好ましくは0.01〜10.0質量部、より好ましくは0.1〜6.0質量部である。添加量がかかる範囲を満たすと、硬化性が良好であり、安定したものとなる。
【0034】
その他の成分
本発明の熱硬化性シリコーン樹脂組成物には、本発明の目的を逸脱しない範囲で必要に応じて、その他の成分を添加することもできる。
その他の成分としては、例えば該組成物の硬化物により封止される光半導体素子が発する光の波長を変更するための蛍光体や光散乱剤等が挙げられる。
蛍光体としては、例えばLEDに広く利用されている、YAG(イットリウム、アルミニウム、ガーネット)系蛍光体、ZnS系蛍光体、Y22S系蛍光体、赤色発光蛍光体、青色発光蛍光体、緑色発光蛍光体等が挙げられる。
光散乱剤としては、例えば、酸化チタン微粉末などが挙げられる。
更に、その他の成分としては、例えば、金型離型剤、変色防止剤、劣化防止剤、シリカ、酸化チタンなどの無機充填剤、シラン系カップリング剤、変性剤、可塑剤、希釈剤、接着助剤などが挙げられる。
また、本発明の熱硬化性シリコーン樹脂組成物には、必要により、フェノール系、リン系、硫黄系酸化防止剤を配合してもよいが、添加しなくても従来の熱硬化性シリコーン樹脂組成物に比べて変色性は少ない。
【0035】
このようにして得られる本発明の熱硬化性シリコーン樹脂組成物は、半導体・電子機器装置、特にはLED用、フォトカプラー用の封止材として有効に利用できる。この場合、本発明の熱硬化性シリコーン樹脂組成物の封止の最も一般的な方法としては、低圧トランスファー成形法が挙げられる。
なお、本発明の熱硬化性シリコーン樹脂組成物の成形温度は150〜185℃で30〜180秒行うことが望ましい。後硬化は150〜185℃で2〜20時間行ってもよい。
【0036】
このような熱硬化性シリコーン樹脂組成物を硬化させて得られた硬化物(厚さ:3mm)の初期の450〜500nmにおける光線透過率が90%以上で、180℃、24hr劣化テスト後の450〜500nmにおける光線透過率が85%以上であることが好ましい。光線透過率が85%未満であると、LED用半導体素子封止材として、使用上、使用期間が短くなる問題が発生するため好ましくない。
なお、このような光線透過率を有する熱硬化性シリコーン樹脂組成物は、予め上記熱硬化性シリコーン樹脂組成物の一部をサンプリングし、上記硬化条件による硬化物を作製し、該硬化物の光線透過率の測定を、例えばエス・デイ・ジー株式会社製X−rite8200等の光線透過率測定器を用いて測定することによりスクリーニングすることができる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0038】
下記実施例、比較例で使用した原料を以下に示す。
(A)熱硬化性シリコーン樹脂
[合成例1]
反応容器にイソプロピルアルコール900g、水酸化テトラメチルアンモニウムの25%水溶液13g、水91gを仕込んだ後、予め混合したγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン11.8g(0.05モル)、メチルトリメトキシシラン54.6g(0.4モル)、フェニルトリメトキシシラン79.3g(0.4モル)、及びジメチルジメトキシシラン18.0g(0.15モル)を添加し、室温で20時間攪拌し、反応させた。
反応終了後、反応系内にトルエン1200gを添加し、減圧下でイソプロピルアルコール等を除去した。分液漏斗を用いて、残渣を熱水にて洗浄した。水層が中性になるまで水で洗浄を行った後、トルエン層を無水硫酸ナトリウムで脱水した。無水硫酸ナトリウムを濾別した後、減圧下でトルエンを除去して、下記式(5)で示される無色透明の固体(融点97℃)88.1質量部の熱硬化性シリコーン樹脂(A−1、エポキシ当量:2500g/mol)を得た。
(C650.4(G)0.05(CH30.7Si(OCH30.01(OH)0.111.36
(5)
(G=γ−グリシドキシプロピル基)
【0039】
[合成例2]
反応容器にイソプロピルアルコール900g、水酸化テトラメチルアンモニウムの25%水溶液13g、水91gを仕込んだ後、予め混合したγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン47.3g(0.2モル)、メチルトリメトキシシラン54.6g(0.4モル)、フェニルトリメトキシシラン79.3g(0.4モル)を添加し、室温で20時間攪拌し、反応させた。
反応終了後、反応系内にトルエン1200gを添加し、減圧下でイソプロピルアルコール等を除去した。分液漏斗を用いて、残渣を熱水にて洗浄した。水層が中性になるまで水で洗浄を行った後、トルエン層を無水硫酸ナトリウムで脱水した。無水硫酸ナトリウムを濾別した後、減圧下でトルエンを除去して、下記式(6)で示される無色透明の固体(融点115℃)95.4質量部の熱硬化性シリコーン樹脂(A−2、エポキシ当量:624g/mol)を得た。
(C650.4(G)0.2(CH30.4Si(OCH30.01(OH)0.121.44
(6)
(G=γ−グリシドキシプロピル基)
【0040】
[比較合成例1]
メチルトリクロロシラン59.5質量部、フェニルトリクロルシラン42.4質量部、ジメチルジクロロシラン8.6質量部、トルエン200質量部を1Lのフラスコに入れ、氷冷下で水8質量部、メチルアルコール60質量部の混合液を液中滴下した。内温は−5〜0℃で5〜20hrかけて滴下し、その後加熱して還流温度で20分間攪拌した。それから室温まで冷却し、水12質量部を30℃以下、30分間で滴下し、20分間攪拌した。更に水25質量部を滴下後、40〜45℃で60分間攪拌した。その後水200質量部を入れて有機層を分離した。この有機層を中性になるまで洗浄し、その後共沸脱水、濾過、減圧ストリップをすることにより、下記式(7)で示される無色透明の固体(融点81℃)54.7質量部の熱硬化性シリコーン樹脂(A−3)を得た。
(C650.3(CH30.8Si(OCH30.07(OH)0.131.35 (7)
【0041】
[比較合成例2]
メチルトリクロロシラン20質量部、ジメチルジクロロシラン86.2質量部、トルエン200質量部を1Lのフラスコに入れ、氷冷下で水8質量部、メチルアルコール60質量部の混合液を液中滴下した。内温は−5〜0℃で5〜20hrかけて滴下し、その後加熱して還流温度で20分間攪拌した。それから室温まで冷却し、水12質量部を30℃以下、30分間で滴下し、20分間攪拌した。更に水25質量部を滴下後、40〜45℃で60分間攪拌した。その後水200質量部を入れて有機層を分離した。この有機層を中性になるまで洗浄し、その後共沸脱水、濾過、減圧ストリップをすることにより、下記式(8)で示される無色透明の粘稠な固体32.0質量部の熱硬化性シリコーン樹脂(A−4)を得た。
(CH31.8Si(OCH30.07(OH)0.121.01 (8)
【0042】
(B)縮合触媒
アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)(川研ファインケミカル(株)製、アルミキレートD)
【0043】
[実施例1〜4、比較例1〜4]
表1に示す配合において、(A)熱硬化性シリコーン樹脂、(B)縮合触媒を配合し、熱2本ロールにて均一に溶融混合し、冷却、粉砕してLED用白色シリコーン樹脂組成物を得た。
これらの組成物につき、以下の諸特性を測定した。結果を表1に併記した。
《ゲル化時間》
175℃に加熱された熱板上に組成物を薄く広げ、スパチュラで樹脂を掻き取り、熱板面から樹脂が剥がれる点をゲル化時間とした。
《室温 曲げ強度、曲げ弾性率》
EMMI規格に準じた金型を使用して、175℃,6.9N/mm2、成形時間5分、ポストキュア180℃,4hrの条件で成形した試験片を室温(25℃)にて、曲げ強度、曲げ弾性率を測定した。
《耐熱性;黄変性、光線透過率》
175℃,6.9N/mm2、成形時間5分の条件で直径50×厚さ3mmの円盤を成形し、180℃,24hr放置し、耐熱黄変性として表面の変化(色、光線透過率)を目視で測定した。
なお、光線透過率は、エス・デイ・ジー株式会社製X−rite8200を使用して、波長460nmで測定した。
《クラックテスト》
175℃の加熱されたガラス上に組成物を薄く広げ、厚さ190μmの皮膜を形成し、175℃,5分で硬化させ、その後180℃,24hr後、皮膜表面のクラックを目視で測定した。
【0044】
使用したエポキシ樹脂、硬化剤、及び触媒を下に示す。なお、これらの比較例は液状であるため、シンキーミキサーで混合し、所定サイズの金型に注型成形して、150℃,8hrで試験片を作製した。
〈1〉エポキシ樹脂:3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシ
シクロヘキセンカルボキシレート(脂環式エポキシ樹脂)、ダイセル化学工業(株
)製「セロキサイド2021」(商品名)
〈2〉硬化剤:ヘキサヒドロ無水フタル酸、新日本理化(株)製「リカシッドMH」(商
品名)
〈3〉縮合触媒:第四級ホスホニウム塩、サンアプロ(株)製「U−CAT5003」(
商品名)
【0045】
【表1】

【0046】
表1から、実施例1〜4は、ゲル化時間が短く(硬化速度が速い)、十分な曲げ強度、曲げ弾性率、耐熱性及び光線透過率を有し、かつ硬化時にクラックを生じないことがわかる。
【符号の説明】
【0047】
1 光半導体装置
2 リードフレーム
3 プレモールドパッケージ
4 光半導体素子
5 導電性接着剤
6 ボンディングワイヤー
7 封止樹脂
8 レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記平均組成式(1)
1aSi(OR2b(OH)c(4-a-b-c)/2 (1)
(式中、R1は同一又は異種の炭素数1〜20の有機基であって少なくとも1種はエポキシ基を含む有機基、R2は同一又は異種の炭素数1〜4の有機基を示し、a、b、cはそれぞれ1.0≦a≦1.5、0≦b≦0.3、0.001≦c≦0.5、1.001≦a+b+c<2を満たす数である。)
で表されるエポキシ当量が500〜3000g/molでかつ軟化点が60〜150℃である熱硬化性シリコーン樹脂と、
(B)縮合触媒
とを必須成分として含有することを特徴とする熱硬化性シリコーン樹脂組成物。
【請求項2】
上記(B)成分の縮合触媒が有機金属縮合触媒であることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性シリコーン樹脂組成物。
【請求項3】
上記有機金属縮合触媒がアルミキレート系触媒であることを特徴とする請求項2に記載の熱硬化性シリコーン樹脂組成物。
【請求項4】
上記アルミキレート系触媒がアルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)であることを特徴とする請求項3に記載の熱硬化性シリコーン樹脂組成物。
【請求項5】
上記熱硬化性シリコーン樹脂組成物を硬化させて得られた硬化物(厚さ:3mm)の初期の450〜500nmにおける光線透過率が90%以上で、180℃、24hr劣化テスト後の450〜500nmにおける光線透過率が85%以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱硬化性シリコーン樹脂組成物。
【請求項6】
上記請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化物でLED用半導体素子が封止された光半導体装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−126959(P2011−126959A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284954(P2009−284954)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】