説明

熱硬化性樹脂組成物、その硬化物、プリント配線板用層間接着フィルム、白色プリプレグ、白色積層板及びプリント配線基板。

【課題】 作業性に優れ、しかも、ポットライフが長いポリイミド樹脂組成物と、この組成物を用いた硬化物、プリント配線板用層間接着フィルム、白色プリプレグ、白色積層板及びプリント配線基板を提供する事。
【解決手段】 ヘミアセタールエステル構造を有するポリイミド樹脂(A)と、エポキシ樹脂(B)とを含有する熱硬化性樹脂組成物、該組成物により形成される層を、キャリアフィルム上に有するプリント配線板用層間接着フィルム、該組成物と白色顔料を含む合物を、シート状ガラス繊維基材に含浸、乾燥させてなる白色プリプレグ、該プリプレグと金属箔を組み合わせたものを加熱加圧成形して熱硬化させて得られる白色積層板、該白色積層板を使用してなるチップ型発光ダイオードを実装するためのプリント配線基板

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れたワニス流動性を有するため、半硬化(Bステージ化)したフィルムやプリプレグなどの製造時の加工性に優れ、また、優れたポットライフを有する熱硬化性樹脂組成物と、この組成物を用いて得られる硬化物、プリント配線板用層間接着フィルム、白色プリプレグ、白色積層板及びプリント配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド樹脂は、耐熱性、寸法安定性、絶縁性に優れ、ポリイミド樹脂を用いた組成物は多層プリント配線板の層間絶縁材などの電子機器に用いられている。近年、電子機器の薄型化、軽量化に伴い、電子部品の小型化、高密度化が進んでおり、使用される樹脂材料に対しても耐熱性と寸法安定性の更なる向上が求められている。一方でこれら分野に適用させるポリイミド樹脂は、樹脂の粘度が高いため加工性が劣る。そこで、前記樹脂の加工性を向上させるために有機溶剤へ溶解可能で、しかも有機溶剤に溶解した樹脂溶液の低粘度化が求められている。
【0003】
有機溶剤に可溶なポリイミド樹脂組成物として、例えば、脂肪族または脂環式イソシアネート化合物のイソシアヌレート型ポリイソシアネートと酸無水物とを反応させて得られるポリイミド樹脂とエポキシ樹脂とを含有する樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1で開示されたポリイミド樹脂組成物は、有機溶剤に可溶であり、その為に塗膜の作製などの作業性に優れると記載されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1で開示されている樹脂組成物は有機溶剤に可溶であり加工性に優れると記載されているが、性能を発現する量のポリイミド樹脂を用いて得られる組成物の溶液粘度は、例えば、25℃で100Pa・s程度である。そこで、前記樹脂組成物の溶液粘度を下げるために溶剤による希釈を行うと、にごりを生じたり揮発性の悪い溶媒を用いたりすることとなり加工性を損なうこととなる。従って、特許文献1に開示されたポリイミド樹脂組成物では、Bステージ化した塗膜の作製やプリプレグを製造するには粘度が高いため加工が困難であった。
【0005】
【特許文献1】特開2001−316469号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、樹脂溶液粘度が低く流動性に優れることから加工性に優れ、しかも、ポットライフが長いポリイミド樹脂組成物と、この組成物を用いた硬化物、プリント配線板用層間接着フィルム、白色プリプレグ、白色積層板及びプリント配線基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討した結果、ポリイミド樹脂として、ヘミアセタールエステル構造を有するポリイミド樹脂の溶液粘度が低く流動性に優れたポリイミド樹脂組成物となること、該イミド樹脂を含む熱硬化性樹脂組成部も流動性に優れ、また、ポットライフも長くなること、該組成物を用いることにより、プリント配線板用層間接着フィルム、白色プリプレグ、白色積層板及びプリント配線基板を作業性良く製造することができること等を見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、ヘミアセタールエステル構造を有するポリイミド樹脂(A)と、エポキシ樹脂(B)とを含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、前記熱硬化型樹脂組成物を熱硬化させてなることを特徴とする硬化物を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、熱硬化性樹脂組成物により形成されるBステージ塗膜をキャリアフィルム上に有することを特徴とするプリント配線板用層間接着フィルムを提供するものである。
【0011】
また、本発明は前記熱硬化性樹脂組成物と白色顔料を含む化合物をシート状ガラス繊維基材に含浸、乾燥させてなることを特徴とする白色プリプレグを提供するものである。
【0012】
また、本発明は、前記プリプレグと金属箔を組み合わせたものを加熱加圧成形して熱硬化させて得られることを特徴とする白色積層板を提供するものである。
【0013】
更に、本発明は前記白色積層板を使用してなるチップ型発光ダイオードを実装するためのプリント配線基板を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明で得られる熱硬化性樹脂組成物は、流動性に優れ、ポットライフが長い。その為、安定してBステージ化してなるフィルムやプリプレグを提供できる。加えて、硬化物の耐熱性は従来と同等の性能を保持している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明で用いるポリイミド樹脂(A)は、ヘミアセタールエステル構造を有することを特徴とする。このヘミアセタールエステル構造は、例えば、イソシアネート法で得られるポリイミドが有するカルボキシル基をアルキルビニルエーテルとを反応させることにより得られ、その結果、エポキシ樹脂との優れた相溶性やイミド樹脂の低溶液粘度化が実現され、ワニスの流動性に優れ、更にはヘミアセタールエステル構造を有するポリイミド樹脂はエポキシ樹脂との反応が抑制されるため、ワニスの可視時間(ポットライフ)に優れた組成物が得られる。
【0016】
ポリイミド樹脂とエポキシ樹脂を含有する熱硬化性樹脂組成物は、例えば、ポリイミド樹脂が有するカルボキシル基とエポキシ樹脂が有するエポキシ基とが反応することにより硬化する。一般に、カルボキシル基を有するポリイミド樹脂及びこの樹脂を含有する樹脂組成物を溶剤へ溶解したときの溶剤溶液は該ポリイミド樹脂が有するカルボキシルの水素結合により粘度が高くなる。本発明において、カルボキシル基を有するポリイミド樹脂のカルボキシル基の一部乃至全部をヘミアセタール構造へとすることにより、水素結合の形成が減少またはなくなる為、樹脂(又は樹脂組成物)の溶剤溶液の粘度が低下するこのと発明者は推察している。加えて、ヘミアセタール構造が有するアルキル鎖も樹脂(又は樹脂組成物)の溶剤溶液の粘度の低下に寄与していると発明者は考えている。
【0017】
ヘミアセタールエステル構造を有したイミド樹脂は、例えば、120℃以上の温度条件下でポリイミド樹脂(A)とアルキルビニルエーテル化合物に解離する。その為、本発明の熱硬化性樹脂組成物を熱硬化させた際にカルボキシル基が再生され、カルボキシル基を有するポリイミド樹脂とエポキシ樹脂が反応し組成物が熱硬化する。
【0018】
ヘミアセタールエステル構造が解離し生成される前記アルキルビニルエーテル化合物は樹脂組成物の熱硬化中に組成物から大気雰囲気に除去されることが好ましい。ビニルエーテル化合物のごく一部が組成物中に残存する可能性があるが、例えば、潜在硬化触媒等を用いることで、熱硬化中に前記イミド樹脂とエポキシ樹脂との熱硬化の際に生じる水酸基とアルキルビニルエーテルとが付加体を形成したり、ビニルエーテルを熱硬化させることにより、硬化物の表面にワキ、膨れ等の塗膜の外観不良を抑えることもできる。
【0019】
本発明で用いるポリイミド樹脂(A)は製膜性に優れた熱硬化性樹脂組成物が得られることから、前記樹脂溶液粘度は、10Pa・s以下が好ましく、5Pa・s以下がより好ましい。
【0020】
ポリイミド樹脂(A)は、例えば、イソシアネート化合物と酸無水物とを反応させて得られ、且つ、カルボキシル基を含有するポリイミド樹脂(a1)とアルキルビニルエーテル化合物(a2)とを反応させることにより得ることができる。
【0021】
イソシアネート化合物としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート化合物、脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂環式ポリイソシアネート化合物等が使用可能である。
【0022】
前記芳香族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3´−ジメチルジフェニル−4,4´−ジイソシアネート、3,3´−ジエチルジフェニル−4,4´−ジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート、1,3−ビス(α,α−ジメチルイソシアナートメチル)ベンゼン、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ジフェニレンエーテル−4,4´−ジイソシアネート、およびナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物等が挙げられる。
【0023】
前記脂肪族または脂環式ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4´−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネート、およびノルボヌレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0024】
また、かかるジイソシアネート類のヌレート体等のイソシアヌレート型ポリイソシアヌレートも例示することができる。イソシアヌレート型ポリイソシアヌレートとしては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート型ポリイソシアネートまたは脂環式ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート型ポリイソシアネート等が挙げられる。このようなポリイソシアネート化合物としては、例えば、IPDI3N(イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート型トリイソシアネート)、HDI3N(ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート型トリイソシアネート)、HXDI3N(水添キシレンジイソシアネートのイソシアヌレート型トリイソシアネート)、NBDI3N(ノルボルナンジイソシアネートのイソシアヌレート型トリイソシアネート)等が挙げられる。
【0025】
さらに、上記イソシアネート化合物のビュレット体や上記イソシアネート化合物と各種ポリオールとのウレタン化反応によって得られるアダクト体も使用できる。
【0026】
前記酸無水物としては、例えば、1個の酸無水物基を有する酸無水物や2個の酸無水物基を有する酸無水物等が挙げられる。前記1個の酸無水物基を有する酸無水物としては、例えば、無水トリメリット酸、ナフタレン−1,2,4−トリカルボン酸無水物等の芳香族トリカルボン酸無水物;シクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸無水物−3,4−無水物、シクロヘキサン−1,3,5−トリカルボン酸無水物−3,5−無水物、シクロヘキサン−1,2,3−トリカルボン酸無水物−2,3−無水物等の脂環構造を有するトリカルボン酸無水物等が挙げられる。
【0027】
前記2個の酸無水物基を有する酸無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノン−3,3′,4,4′−テトラカルボン酸二無水物、ジフェニルエーテル−3,3′,4,4′−テトラカルボン酸二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ビフェニル−3,3′,4,4′−テトラカルボン酸二無水物、ビフェニル−2,2′,3,3′−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、フェナントレン−1,3,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ベリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、(4,4´)−(4,4´−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸二無水物)、
【0028】
エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、プロピレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、ブタンジオールビスアンヒドロトリメリテート、ヘキサメチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、ポリエチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、ポリプロピレンレングリコールビスアンヒドロトリメリテートやその他アルキレングリコールビスアンヒドロキシトリメリテート等が挙げられる。
【0029】
本発明で用いるポリイミド樹脂(a)の中でも、脂肪族ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート型ポリイソシアネートまたは脂環式ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート型ポリイソシアネートと酸無水物とを反応させて得られるカルボキシル基含有イミド樹脂(a2)が有機溶剤溶解性に優れることから好ましい。以下、このポリイミド樹脂について詳細に説明する。
【0030】
前記カルボキシル基含有イミド樹脂(a2)において、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する脂肪族イソシアネート化合物のイソシアヌレート型ポリイソシアネート、脂環族ソシアネート化合物のイソシアヌレート型ポリイソシアネートを使用することにより、汎用の有機溶剤に対する溶解性を向上させることができる。これらの原料は全イソシアネート原料の70重量%以上であることが好ましい。また、反応時、経時的に結晶化することを考慮すると、全イソシアネート原料の80重量%以上あることが特に好ましい。
【0031】
前記分子中に2個以上のイソシアネート基を有する脂肪族イソシアネート化合物のイソシアヌレート型ポリイソシアネートまたは分子中に2個以上のイソシアネート基を有する脂環式イソシアネート化合物のイソシアヌレート型ポリイソシアネートとしては、例えば、前記脂肪族または脂環式イソシアネート化合物を例えば、第4級アンモニウム塩等のイソシアヌレート化触媒の存在下あるいは非存在下において、イソシアヌレート化することにより得られるものであって、3量体、5量体、および7量体等のイソシアヌレートの混合物からなるもの等が挙げられる。
【0032】
また、系の非結晶性を損なわない範囲で芳香族のイソシアネート類も併用可能である。
【0033】
前記イソシアヌレート型ポリイソシアネートとトリカルボン酸無水物との反応に際し、トリカルボン酸無水物のすべてのカルボン酸成分が反応すると、イミド基及びアミド基が形成され、カルボキシル基含有イミド樹脂(a1)はカルボキシル基含有イミドアミド樹脂となる。また、テトラカルボン酸無水物はイミド基のみを形成する。反応速度はイミド化が速いため、トリカルボン酸とトリイソシアネートとの反応でも、トリカルボン酸は無水酸のところで選択的にイミド基を形成する。
【0034】
分子中に2個以上のイソシアネート基を有する脂肪族イソシアネート化合物のイソシアヌレート型ポリイソシアネートまたは分子中に2個以上のイソシアネート基を有する脂環式イソシアネート化合物のイソシアヌレート型ポリイソシアネートと、トリカルボン酸無水物及び/又はテトラカルボン酸無水物とを反応させて、本発明で用いるカルボキシル基含有イミド樹脂(a1)を得る場合には非含窒素原子及び非含硫黄原子の有機溶剤中で反応させることが好ましい。窒素原子及び硫黄原子を含有した極性有機溶剤が存在すると、後述するポリイミド樹脂(A)とアルキルビニルエーテルとの反応が進行しがたいため、好ましくない。
【0035】
本発明における使用する有機溶剤は、非プロトン性有機溶剤であることがより好ましい。具体的には、例えば水酸基を有さないエーテル系、エステル系、ケトン系等の有機溶剤が挙げられ、このうち水酸基を有さないエーテル系有機溶剤が特に好ましい。
【0036】
前記エーテル系有機溶剤は、弱い極性を有し、イソシアヌレート型ポリイソシアネートと、トリカルボン酸無水物及び/又はテトラカルボン酸無水物との反応において優れた反応場を提供する。かかるエ一テル系有機溶剤としては、公知慣用のものが使用可能であるが、例えばエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル等のエチレングリコールジアルキルエーテル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル等のポリエチレングリコールジアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のポリエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル等のプロピレングリコールジアルキルエーテル類;ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールジブチルエーテル等のポリプロピレングリコールジアルキルエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のポリプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;あるいは低分子のエチレン−プロピレン共重合体の如き共重合ポリエーテルグリコールのジアルキルエーテルや、共重合ポリエーテルグリコールのモノアセテートモノアルキルエーテル類;あるいはこうしたポリエーテルグリコールのアルキルエステル類;ポリエーテルグリコールのモノアルキルエステルモノアルキルエーテル類などである。
【0037】
分子中に2個以上のイソシアネート基を有する脂肪族イソシアネート化合物のイソシアヌレート型ポリイソシアネートまたは分子中に2個以上のイソシアネート基を有する脂環式イソシアネート化合物のイソシアヌレート型ポリイソシアネートと、トリカルボン酸無水物及び/又はテトラカルボン酸無水物とを反応させる場合は、イソシアネート基のモル数(N)と、トリカルボン酸無水物及び/又はテトラカルボン酸無水物のカルボキシル基のモル数(M1)及び酸無水物基モル数(M2)が以下の式を満足させることが好ましい。3>((M1)+(M2))/(N))>1.1。特に好ましくは、2>((M1)+(M2))/(N))>1.2である。
【0038】
このとき、カルボキシル基のモル数(M1)と酸無水物基モル数(M2)の和が、イソシアネート基のモル数(N)より過剰となるように配合すると、反応系中の極性が高くなり反応が潤滑に進行する。上記比率をはずれた場合、例えば1.1以下の場合は、イソシアネート基が残存し安定性等がやや悪くなる傾向がある。また3以上の場合は、酸無水物含有化合物が残存し再結晶等の分離状態になりやすくなる。
【0039】
テトラカルボン酸無水物とトリカルボン酸無水物の配合割合(モル比)(テトラカルボン酸無水物)/(トリカルボン酸無水物))は、0〜2の割合であることが好ましい。テトラカルボン酸無水物の配合割合がこの範囲を超えて大きい場合は、イミド結合の濃度が上昇し有機溶剤溶解性や非結晶性が必ずしも十分でなくなる場合がある。
【0040】
イミド化反応は、有機溶剤中あるいは無有機溶剤中でイソシアネート化合物の一種類以上と、トリカルボン酸無水物及び/又はテトラカルボン酸無水物の1種以上とを混合し、撹拌を行いながら昇温して行うことが好ましい。反応温度は好ましくは25℃〜250℃の範囲、特に好ましくは50℃〜180℃の範囲である。反応温度が低い場合は反応速度が遅くなりやすく、また反応温度が高い場合は副反応や分解等が起こりやすい。反応は脱炭酸を伴いながら無水酸基とイソシアネート基がイミド基を形成する。反応の進行は、赤外スベクトル測定や、酸価、イソシアネート価等の定量の分析手段等により追跡することができる。前記赤外スペクトル測定はイソシアネート基の特性吸収ピークである2270cm-1が反応とともに減少し、さらに1860cm-1と850cm-1に特性吸収を有する酸無水物基が減少する。一方、725cm-1と1780cm-1と1720cm-1にイミド基の吸収が増加する。
【0041】
反応は、目的とする分子量となるまで、例えば、酸価、イソシアネート価、溶液粘度等を確認しながら、反応を終了させることが好ましい。しかしながら、経時の安定性等の面からイソシアネート基が消失するまで反応を続行させることがより好ましい。また、反応中や反応後は、合成される樹脂の物性を損なわない範囲で、触媒、酸化防止剤、界面活性剤、その他有機溶剤等を添加してもよい。
【0042】
本発明で用いるカルボキシル基含有イミド樹脂(a1)としては、例えば以下のものが挙げられる。
【0043】
(例1)脂肪族、脂環族のイソシアヌレート型トリイソシアネートと芳香族トリカルボン酸無水物の反応により得られる(式1)で表されるイミド樹脂。
【0044】
【化1】

【0045】
(Rdは、(式2)で表される3価の有機基であり、Rbは以下の構造式(式3)または(式4)で示される構造単位である。Rcは以下の構造式(式5)で表される構造単位である。nは繰り返し単位で0〜3である。
【0046】
【化2】

【0047】
Raは、2価の脂肪族、脂環式ジイソシアネートの残基を表す。nは繰り返し単位で0〜3である。
【0048】
【化3】

【0049】
【化4】

【0050】
R2は炭素原子数6〜20の置換基を有しても良い芳香族トリカルボン残基である。
【0051】
(例2)脂肪族、脂環族のイソシアヌレート型トリイソシアネートと、芳香族トリカルボン酸無水物及びテトラカルボン酸無水物との反応により得られる(式6)で表されるイミド樹脂。
【0052】
【化5】

【0053】
(Rb'は上記(式3)、(式4)または下記式(7)で表される構造単位であり、Rc'は上記(式5)、又は以下の(式8)、(式9)で表される構造単位のものである。)
【0054】
【化6】

【0055】
【化7】

【0056】
は炭素原子数6〜20の置換基を有していても良い芳香族テトラカルボン酸無水物残基を示す。
【0057】
本発明で用いるポリイミド樹脂(a)の中でも、低吸水性、低吸湿性に優れるポリイミド樹脂が得られることから下記構造(n3)で表される構造を有するポリイミド樹脂(a2)が好ましい。
【0058】
更に、本発明で用いるポリイミド樹脂(a)の中でも、透明性に優れた熱硬化性樹脂組成物が得られることから酸無水物として脂環構造を有する酸無水物を用いることが好ましく、中でも脂環構造を有するトリカルボン酸無水物を用いることが好ましい。
【0059】
本発明で用いるポリイミド樹脂(A)は、例えば、カルボキシル基を含有するポリイミド樹脂(a1)とアルキルビニルエーテル化合物(a2)とを反応させる事により得ることができる。ポリイミド樹脂(a1)が有するカルボキシル基の量としては、固形分酸価で60〜200KOHmg/gであることが架橋密度の高い熱硬化性樹脂組成物が得られることから好ましく、80〜180KOHmg/gの範囲であることがより好ましい。
【0060】
前記の通り、本発明で用いるポリイミド樹脂(A)は、カルボキシル基を含有するポリイミド樹脂(a1)とアルキルビニルエーテル化合物(a2)とを反応させることにより得られる。本発明において、ヘミアセタールエステル構造とは、式(10)で表される構造である。
【0061】
【化8】

(R2は炭素原子数が1〜18の有機基である。)
【0062】
前記有機基としては、例えば、アルキル基、アリール基、アルカリール基等が挙げられる。
【0063】
前記ポリイミド樹脂(a1)とアルキルビニルエーテル化合物(a2)との反応は、無触媒、又は触媒を用いる場合は酸触媒の存在下で行うことが好ましい。
【0064】
酸触媒としては、例えば、有機溶剤との溶解性が比較的良好で作業性に優れる酸性リン酸エステル類が挙げられる。具体的には、酸性リン酸エステル類としては、リン酸モノメチル、リン酸ジメチル、リン酸モノエチル、リン酸ジエチル、リン酸モノプロピル、リン酸ジプロピル、リン酸モノイソプロピル、リン酸ジイソプロピル、リン酸モノブチル、リン酸ジブチル、リン酸モノペンチル、リン酸ジペンチル、リン酸モノヘキシル、リン酸ジヘキシル、リン酸モノオクチル、リン酸ジオクチル、リン酸モノ2−エチルヘキシル、リン酸ジ2−エチルヘキシル、リン酸モノデシル、リン酸ジデシル、リン酸モノイソデシル、リン酸ジイソデシル、リン酸モノウンデシル、リン酸ジウンデシル、リン酸モノドデシル、リン酸ジドデシル、リン酸モノテトラデシル、リン酸ジテトラデシル、リン酸モノヘキサデシル、リン酸ジヘキサデシル、リン酸モノオクタデシル、リン酸ジオクタデシル、リン酸モノフェニル、リン酸ジフェニル、リン酸モノベンジル、リン酸ジベンジルなどが挙げられる。
【0065】
また、前記ポリイミド樹脂(a1)とアルキルビニルエーテル化合物(a2)との反応温度は0〜100℃の範囲が好ましく、30℃〜80℃の範囲で反応させることがアルキルビニルエーテル化合物の解離を抑制することからより好ましい。
【0066】
前記アルキルビニルエーテル化合物(a2)としては、例えば、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソプロピルエーテル、ビニルn−プロピルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルn−ブチルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ビニルn−アミルエーテル、ビニルイソアミルエーテル、ビニル2−エチルヘキシルエーテル、ビニルn−オクタデシルエーテル等が挙げられる。
【0067】
アルキルビニルエーテル化合物(a2)の中でも、硬化の際にBステージ化から本硬化させる間に解離し、揮発しやすいビニルn−プロピルエーテル、ビニルイソプロピルエーテル、またはビニルイソブチルエーテル、ビニルn−ブチルエーテルが特に好ましい。
【0068】
本発明で用いるポリイミド樹脂(A)の製造例を以下に説明する。まず、カルボキシル基を有するポリイミド樹脂(a1)とアルキルビニルエーテル化合物(a2)とを、攪拌装置、温度計、コンデンサーを付けた反応容器に投入する。アルキルビニルエーテル化合物(a2)の仕込み量は、ポリイミド樹脂(a1)中のカルボキシル基とアルキルビニルエーテル化合物(a2)中のビニル基との比(当量比)〔(ビニル基)/(カルボキシル基)〕が0.90〜1.10の範囲となる量が保存安定性の観点から好ましく、0.95〜1.05の範囲となる量がより好ましい。
【0069】
ここで本発明でいう保存安定性とは得られるヘミアセタールエステル構造を有したイミド樹脂において、カルボキシル基が残存しているとアルキルビニルエーテル化合物への解離反応が促進される傾向がある。そのため、得られるヘミアセタールエステル構造を有したイミド樹脂の固形分酸価は3以下が好ましく、1以下が特に好ましい。
【0070】
上記の反応は、1〜100時間の範囲内で反応させることができる。また、反応後、得られる反応液をそのままポリイミド樹脂(A)の有機溶剤溶液として使用しても良いし、反応に用いた有機溶剤を留去し、他の有機溶剤を置換させても良い。加えて、有機溶剤を留去させると、ポリイミド樹脂(a1)と未反応のアルキルビニルエーテル化合物(a2)もポリイミド樹脂(A)から除去することが期待できる。
【0071】
本発明で用いるエポキシ樹脂(B)は、例えば、分子内に2個以上のエポキシ基を有しているものを例示することができる。こうしたエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;ナフタレン型エポキシ樹脂;フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型ノボラック等のノボラック型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエンと各種フェノール類と反応させて得られる各種ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂のエポキシ化物;フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂;10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド等を用いて合成されるリン含有エポキシ樹脂;ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等の脂肪族エポキシ樹脂;3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス−(3,4−エポキヒシクロヘキシル)アジペート等の脂環式エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート等のごときヘテロ環含有エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂からなる群から選ばれる1種以上のエポキシ樹脂が、得られる硬化物が低線膨張性でありながら、低温での溶融性に優れる組成物となることから好ましい。
【0072】
また、こうしたエポキシ樹脂(B)の分子量としては、200〜5,000の範囲が溶融性と接着性の両立、さらに線膨張係数の低下の面で好ましく、200〜2,000の範囲がより好ましい。
【0073】
前記エポキシ樹脂(B)の含有量は、前記ポリイミド樹脂(A)100質量部に対して25〜200質量%の範囲が硬化物が優れた塗膜物性が得られ、なおかつ低温での溶融性に優れる熱硬化型樹脂組成物が得られることから好ましく、50〜200質量%の範囲がより好ましく、50〜150質量%の範囲が更に好ましい。
【0074】
また、エポキシ樹脂(B)の樹脂溶液粘度は、低温溶融性に優れる組成物となることから、150℃における樹脂溶液粘度が15Pa・s以下が好ましく、10Pa・s以下のがより好ましい。
【0075】
本発明の熱硬化性樹脂組成物にはマレイミド化合物を含有することができる。
【0076】
前記マレイミド化合物として分子量が200〜1,000の範囲のものが好ましい。この範囲の分子量を有するマレイミド化合物を用いることにより本発明の樹脂組成物の溶融粘度の減少、溶液での安定性向上、Bステージ状態のフィルムのカール性防止、柔軟性の確保などの効果が得られる。分子量は250〜600の範囲が好ましく、250〜400の範囲がより好ましい。
【0077】
従って、本発明の熱硬化性樹脂組成物に添加するマレイミド化合物の中でも、芳香環を有し、分子量が200〜1,000の範囲であるマレイミド化合物が好ましい。
【0078】
前記ポリマレイミド化合物としては、例えば、下記式で表される化合物を好ましく使用することができる。
【0079】
【化9】

【0080】
(R)は芳香環を有する2価の有機基を表す。
【0081】
前記式(d1)で表される化合物としては、例えば、以下の化合物等が挙げられる。
【0082】
【化10】

【0083】
〔式中、Rは、単結合あるいはメチレンを示し、Rは、それぞれ水素原子または炭素原子数1〜6のアルキル基を示し、nは0から4の整数である。〕
【0084】
前記式(d2)で表される化合物としては、例えば、以下に示す化合物等が表される。
【0085】
【化11】

【0086】
【化12】

【0087】
【化13】

【0088】
前記マレイミド化合物の中でも、Bステージ化した硬化物の溶融粘度が下がり、且つ、完全硬化した硬化物の寸法安定性にも優れる熱硬化型ポリイミド樹脂組成物が得られることからフェニレンビスマレイミドまたはメチルフェニレンビスマレイミドが好ましい。
【0089】
マレイミド化合物の使用量としては、ポリイミド樹脂(A)100質量部に対して5〜200質量部の範囲がBステージ化した硬化物の溶融粘度が下がり、且つ、完全硬化した硬化物の寸法安定性にも優れる熱硬化型ポリイミド樹脂組成物が得られることから好ましく、10〜100質量部の範囲が更に得られる硬化物の機械物性が強靭になることからより好ましい。
【0090】
更に、本発明の熱硬化性樹脂組成物にはホウ酸および/またはホウ酸エステルなどのホウ素化合物を併用することが可能である。このような化合物としては、例えば、ホウ酸;トリメチルボレート、トリエチルボレート、トリブチルボレート、トリn−オクチルボレート、トリ(トリエチレングリコールメチルエーテル)ホウ酸エステル、トリシクロヘキシルボレート、トリメンチルボレート等のトリアルキルホウ酸エステルに代表される直鎖脂肪族系ホウ酸エステル;トリo−クレジルボレート、トリm−クレジルボレート、トリp−クレジルボレート、トリフェニルボレート等の芳香族系ホウ酸エステル、トリ(1,3−ブタンジオール)ビボレート、トリ(2−メチル−2,4−ペンタンジオール)ビボレート、トリオクチレングリコールジボレートなどのホウ素原子を2個以上含み、かつ、環状構造を含むホウ酸エステル;ポリビニルアルコールホウ酸エステル、へキシレングリコール無水ホウ酸等が挙げられる。
【0091】
更に、本発明の熱硬化性樹脂組成物に保存安定性が良好な熱硬化型樹脂組成物が得られ、且つ、寸法安定性に優れる硬化塗膜が得られることからホウ酸、直鎖脂肪族系ホウ酸エステルが好ましい。直鎖脂肪族系ホウ酸エステルの中でも、炭素原子数が4〜20の範囲のトリアルキルホウ酸エステルが好ましく、中でも、トリブチルボレート(ホウ酸トリブチル)が好ましい。
【0092】
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、更に、その他の熱硬化型樹脂成分を添加することができる。具体的には、例えば、フェノール化合物、イソシアネート化合物、シリケート、およびアルコキシシラン化合物、メラミン樹脂、等が挙げられる。
【0093】
フェノール化合物の好ましい例としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSのようなフェノール性水酸基を1分子中に2個以上有するビスフェノール化合物;ハイドロキノン、4,4’−ビフェノール、3,3’−ジメチル−4,4’ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチルビフェノール、2,4−ナフタレンジオール、2,5−ナフタレンジオール、 2,6−ナフタレンジオールのようなフェノール性水酸基を1分子中に2個以上有する化合物、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシドのようなリン原子を含有するフェノール化合物; フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、t−ブチルフェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジェンクレゾールノボラック樹脂、ジシクロペンタジェンフェノールノボラック樹脂、キシリレン変性フェノールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、トリスフェノールノボラック樹脂、テトラキスフェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ポリ−p−ビニルフェノール樹脂、アミノトリアジンノボラック型フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂等のノボラック型フェノール樹脂が挙げられる。これらのフェノール樹脂は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。中でも、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシドやアミノトリアジンノボラック型フェノール樹脂が得られる硬化物が高耐熱、難燃、低線膨張でありながら、低温での溶融性に優れる組成物となることから好ましい。
【0094】
前記イソシアネート化合物としては、例えば、芳香族系のイソシアネート化合物、脂肪族系のイソシアネート化合物および脂環族系のイソシアネート化合物等が使用できる。好ましくは、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物が好ましい。また、ブロックイソシアネート化合物も使用可能である。
【0095】
上述のアルキルアルコキシシランとしては、例えば、アルキルトリアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン等が挙げられる。
【0096】
前記アルキルトリアルコキシシランとしては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、フェニルトリメトキシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、フェニルトリブトキシシラン等が挙げられる。
【0097】
前記ジアルキルジアルコキシシランとしては、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジプロポキシシラン、ジエチルジブトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジプロポキシシラン、ジフェニルジブトキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、メチルエチルジエトキシシラン、メチルエチルジプロポキシシラン、メチルエチルジブトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジプロポキシシラン、メチルフェニルジブトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン等が挙げられる。
【0098】
また、アルキルアルコキシシランの縮合物も使用可能であり例えば、前記したアルキルトリアルコキシシランの縮合物や、ジアルキルジアルコキシシランの縮合物等が挙げられる。
【0099】
前記メラミン樹脂としては、例えば、メラミンやベンゾグアナミン等のトリアジン環含有のアミノ化合物とホルムアルデヒドとの反応により得られるメチロール化物の一部乃至全部をアルコール化合物との反応により得られるアルコキシ化メラミン樹脂を使用することができる。ここで用いるアルコール化合物としては、炭素原子数が1〜4程度の低級アルコールが使用することができ具体的には、メトキシメチロール化メラミン樹脂、ブチル化メチロール化メラミン樹脂等使用することができる。分子構造としては、完全にアルコキシ化されても良く、メチロール基が残存していても良く、さらにはイミノ基が残存していても良い。
【0100】
このアルコキシ化メラミン樹脂は、本発明の熱硬化型樹脂組成物において、架橋成分としての耐熱性や物性の改良以外にもホウ酸および/またはホウ酸エステル等の添加した場合の経時析出防止効果があり、熱硬化型樹脂組成物としての安定性を改良する。
【0101】
前記アルコキシ化メラミン樹脂の樹脂構造としては、メトキシメチロール化メラミン樹脂がポリイミド樹脂との相溶性と硬化時の硬化性が良好となることから好ましく、さらに好ましくは、メトキシ化率80%以上のメトキシメチロール化メラミン樹脂がより好ましい。
【0102】
また、樹脂構造としては自己縮合して多核体であっても良い。この時の重合度は相溶性や安定性の面で1〜5の範囲が好ましく、さらに1.2〜3の範囲がより好ましい。
【0103】
前記アルコキシ化メラミン樹脂の数平均分子量としては、100〜10,000の範囲のものが使用できる。好ましくは、300〜2000の範囲がポリイミド樹脂との相溶性と硬化時の硬化性の面で好ましく、さらに400〜1000の範囲がより好ましい。
【0104】
前記アルコキシ化メラミン樹脂としては、メラミンやベンゾグアナミン、ホルマリン及びアルコールを同時に仕込んで反応させても、メラミンやベンゾグアナミンとホルマリンを予め反応させてメチロール化メラミン化合物を得てからアルコール化合物とのアルコキシ化を行っても良い。
【0105】
アルコキシ化メラミン樹脂の市販品としては、例えば、メトキシメチロール化メラミン樹脂としては、具体的には、例えば、日本サイテックインダストリーズ製の商品サイメル300、301、303、305等が挙げられる。また、メチロール基含有のメトキシメチロール化メラミン樹脂としては、例えば、日本サイテックインダストリーズ製の商品サイメル370、771等が挙げられる。イミノ基含有メトキシ化メラミン樹脂としては、例えば、三井サイテック(株)製の商品サイメル325、327、701、703、712等が挙げられる。メトキシ化ブトキシ化メラミン樹脂としては、例えば、日本サイテックインダストリーズ製の商品サイメル232、235、236、238、266、267、285等が挙げられる。ブトキシ化メラミン樹脂としては、例えば、日本サイテックインダストリーズ製の商品ユーバン20SE60等が挙げられる。
【0106】
さらに本発明の熱硬化性樹脂組成物にはポリエステル、フェノキシ樹脂、PPS樹脂、PPE樹脂、ポリアリレーン樹脂等のバインダー樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アルコキシシラン系硬化剤、多塩基酸無水物、シアネート化合物等の硬化剤あるいは反応性化合物やメラミン、ジシアンジアミド、グアナミンやその誘導体、イミダゾール類、アミン類、水酸基を1個有するフェノール類、有機フォスフィン類、ホスホニュウム塩類、4級アンモニュウム塩類、光カチオン触媒等の硬化触媒や硬化促進剤、さらにフィラー、その他の添加剤として消泡材、レベリング剤、スリップ剤、ぬれ改良剤、沈降防止剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等添加することも可能である。
【0107】
本発明の熱硬化性樹脂組成物としては、該組成物を硬化させた際の硬化物の線膨張係数が50ppm/K以下となる組成物が好ましい。
【0108】
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物には、更に必要に応じて、種々の充填材、有機顔料、無機顔料、体質顔料、防錆剤等を添加することができる。これらは単独でも2種以上を併用してもよい。
【0109】
前記充填材としては、例えば、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化けい素酸粉、微粒状酸化けい素、シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルムニウム、雲母、アルミナ等が挙げられる。
【0110】
充填材としては、各種粒子径のものが使用可能であり、本樹脂やその組成物の物性を阻害しない程度に添加することが可能である。かかる適正な量としては、質量で5〜80%程度の範囲であり、好ましくは均一に分散してから使用することが好ましい。分散方法としては、公知のロールによる分散やビーズミル、高速分散等により行うことが可能であり、粒子表面を予め分散処理剤で表面改質しても良い。
【0111】
前記有機顔料としては、アゾ顔料;フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーンの如き銅フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料等が挙げられる。
【0112】
前記無機顔料としては、例えば、黄鉛、ジンククロメート、モリブデート・オレンジの如きクロム酸塩;紺青の如きフェロシアン化物、酸化チタン、亜鉛華、ベンガラ、酸化鉄;炭化クロムグリーンの如き金属酸化物、カドミウムイエロー、カドミウムレッド;硫化水銀の如き金属硫化物、セレン化物;硫酸鉛の如き硫酸塩;群青の如き珪酸塩;炭酸塩、コバルト・バイオレッド;マンガン紫の如き燐酸塩;アルミニウム粉、亜鉛末、真鍮粉、マグネシウム粉、鉄粉、銅粉、ニッケル粉の如き金属粉;カーボンブラック等が挙げられる。
【0113】
また、その他の着色、防錆、体質顔料のいずれも使用することができる。これらは単独でも2種以上を併用してもよい。
【0114】
本発明の硬化物は本発明の熱硬化性樹脂組成物を硬化させてなる。具体的には、例えば、本発明の熱硬化性樹脂組成物は基材に塗工した後、100〜300℃の範囲で加熱することで硬化させた硬化物が挙げられる。
【0115】
前記塗膜の形成方法で用いる基材は特に制限無く用いることができる。基材としては、例えば、プラスチック、金属、木材、ガラス、無機材、およびこれら複合材料等が挙げられる。基材の形状としては、特に制限がなく、シートやフィルム状のものやチップ形状、立体形状など例示することができる。
【0116】
本発明の硬化物は、本発明の熱硬化型樹脂組成物を硬化させてなることを特徴とする。また、本発明のプリント配線板用層間接着フィルムは、熱硬化性樹脂組成物により形成されるBステージ化層を、キャリアフィルム上に有することを特徴とする。このような接着フィルムは、例えば、本発明の熱硬化型ポリイミド樹脂組成物のBステージ化層(A層)及び支持体フィルム(B層)からなるフィルム(接着フィルム)の形態を例示することができる。
【0117】
接着フィルムは、種々の方法に従って、例えば、本発明の熱硬化型ポリイミド樹脂組成物を有機溶剤に溶解した樹脂ワニスを調製し、支持体フィルムにこの樹脂ワニスを塗布し、加熱又は熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。
【0118】
支持体フィルム(B層)は、接着フィルムを製造する際の支持体となるものであり、プリント基板の製造において、最終的には剥離または除去されるものである。支持体フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、更には離型紙や銅箔等の金属箔などを挙げることができる。なお、銅箔を支持体フィルムとして使用する場合は、塩化第二鉄、塩化第二銅等のエッチング液でエッチングすることにより除去することができる。支持フィルムはマット(mat)処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよいが、剥離性を考慮すると離型処理が施されている方がより好ましい。支持フィルムの厚さは特に限定されないが、通常10〜150μmの範囲であり、好ましくは25〜50μmの範囲で用いられる。
【0119】
ワニスを調製するための有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ガンマブチロラクトン等を挙げることができる。有機溶剤は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0120】
乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物中への有機溶剤の含有割合が通常5質量%以下、好ましくは3質量%以下となるように乾燥させる。具体的な乾燥条件は、樹脂組成物の硬化性やワニス中の有機溶媒量によっても異なるが、例えば30〜60質量%の有機溶剤を含むワニスにおいては、通常80〜120℃の範囲で3〜13分程度乾燥させることができる。当業者は、簡単な実験により適宜、好適な乾燥条件を設定することができる。
【0121】
樹脂組成物層(A層)の厚さは通常5〜500μmの範囲とすることができる。A層の厚さの好ましい範囲は接着フィルムの用途により異なり、ビルドアップ工法により多層フレキシブル回路基板の製造に用いる場合は、回路を形成する導体層の厚みが通常5〜70μmであるので、層間絶縁層に相当するA層の厚さは10〜100μmの範囲であるのが好ましい。
【0122】
A層は保護フィルムで保護されていてもよい。保護フィルムで保護することにより、樹脂組成物層表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。保護フィルムはラミネートの際に剥離される。保護フィルムとしては支持フィルムと同様の材料を用いることができる。保護フィルムの厚さは特に限定されないが、好ましくは1〜40μmの範囲である。
【0123】
本発明の熱硬化型ポリイミド樹脂組成物を用いて得られる接着フィルムは特に多層プリント基板の製造に好適に使用することができる。以下に、プリント基板を製造する方法について説明する。本発明の熱硬化型ポリイミド樹脂組成物を用いて得られる接着フィルムは真空ラミネーターにより好適にプリント基板にラミネートすることができる。ここで使用するプリント基板は、主として、エポキシ基板、ガラスエポキシ基板などの繊維強化型プリプレグ、ポリエステル基板、ポリイミド基板、ポリアミドイミド基板、液晶ポリマー基板等の基板の片面又は両面にパターン加工された導体層(回路)はもちろん、回路と絶縁層が交互に層形成され、片面又は両面が回路形成されている多層プリント基板を更に多層化するために使用することもできる。なお回路表面は過酸化水素/硫酸、メックエッチボンド(メック(株)社製)等の表面処理剤により予め粗化処理が施されていた方が絶縁層の回路基板への密着性の観点から好ましい。
【0124】
市販されている真空ラミネーターとしては、例えば、ニチゴー・モートン(株)製 バキュームアップリケーター、(株)名機製作所製 真空加圧式ラミネーター、日立テクノエンジニアリング(株)製 ロール式ドライコータ、日立エーアイーシー(株)製真空ラミネーター等を挙げることができる。
【0125】
ラミネートにおいて、接着フィルムが保護フィルムを有している場合には該保護フィルムを除去した後、接着フィルムを加圧及び加熱しながら回路基板に圧着する。ラミネートの条件は、接着フィルム及び回路基板を必要によりプレヒートし、圧着温度を好ましくは70〜140℃、圧着圧力を好ましくは1〜11kgf/cmとし、空気圧20mmHg以下の減圧下でラミネートするのが好ましい。また、ラミネートの方法はバッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。
【0126】
接着フィルムを回路基板にラミネートした後、室温付近に冷却し支持体フィルムを剥離する。次いで、回路基板にラミネートされた熱硬化型ポリイミド樹脂組成物を加熱硬化させる。加熱硬化の条件は通常150℃〜220℃で20分〜180分の範囲で選択され、より好ましくは160℃〜200℃で30〜120分の範囲で選択される。なお支持体フィルムが離型処理やシリコン等の剥離層を有する場合は、熱硬化型ポリイミド樹脂組成物の加熱硬化後あるいは加熱硬化及び穴開け後に支持体フィルムを剥離することもできる。
【0127】
熱硬化型ポリイミド樹脂組成物の硬化物である絶縁層が形成された後、必要に応じて回路基板にドリル、レーザー、プラズマ、又はこれらの組み合わせ等の方法により穴開けを行いビアホールやスルーホールを形成してもよい。特に炭酸ガスレーザーやYAGレーザー等のレーザーによる穴開けが一般的に用いられる。
【0128】
次いで絶縁層(熱硬化型ポリイミド樹脂組成物の硬化物)の表面処理を行う。表面処理はデスミアプロセスで用いられる方法を採用することができ、デスミアプロセスを兼ねた形で行うことができる。デスミアプロセスに用いられる薬品としては酸化剤が一般的である。酸化剤としては、例えば、過マンガン酸塩(過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム等)、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素/硫酸、硝酸等が挙げられる。好ましくはビルドアップ工法による多層プリント配線板の製造における絶縁層の粗化に汎用されている酸化剤である、アルカリ性過マンガン酸溶液(例えば過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウムの水酸化ナトリウム水溶液)を用いて処理を行うのが好ましい。酸化剤で処理する前に、膨潤剤による処理を行うこともできる。また酸化剤による処理の後は、通常、還元剤による中和処理が行われる。
【0129】
表面処理を行った後、絶縁層表面にメッキにより導体層を形成する。導体層形成は無電解メッキと電解メッキを組み合わせた方法で実施することができる。また導体層とは逆パターンのメッキレジストを形成し、無電解メッキのみで導体層を形成することもできる。導体層形成後、150〜200℃で20〜90分アニール(anneal)処理することにより、導体層のピール強度をさらに向上、安定化させることができる。
【0130】
導体層をパターン加工し回路形成する方法としては、例えば当業者に公知のサブトラクティブ法、セミアディディブ法などを用いることができる。サブトラクティブ法の場合、無電解銅メッキ層の厚みは0.1乃至3μm、好ましくは0.3乃至2μmである。その上に電気メッキ層(パネルメッキ層)を3乃至35μm、好ましくは5乃至20μmの厚みで形成した後、エッチングレジストを形成し、塩化第二鉄、塩化第二銅等のエッチング液でエッチングすることにより導体パターンを形成した後、エッチングレジストを剥離することにより、回路基板を得ることが出来る。また、セミアディティブ法の場合には、無電解銅メッキ層の厚みを0.1乃至3μm、好ましくは0.3乃至2μmで無電解銅メッキ層を形成後、パターンレジストを形成し、次いで電気銅メッキ後に剥離することにより、回路基板を得ることができる。
【0131】
支持体フィルムを耐熱樹脂層(耐熱樹脂フィルム)で置き換えた形態のフィルム、すなわち、本発明の熱硬化型ポリイミド樹脂組成物層(A層)及び耐熱樹脂層(C層)からなるフィルムは、フレキシブル回路基板用のベースフィルムとして使用できる。本発明の熱硬化型ポリイミド樹脂組成物層(A層)、耐熱樹脂層(C層)及び銅箔(D層)からなるフィルムも同様にフレキシブル回路基板のベースフィルムとして使用できる。この場合ベースフィルムはA層、C層、D層の順の層構成を有する。以上のようなベースフィルムでは、耐熱樹脂層は剥離されずに、フレキシブル回路基板の一部を構成することとなる。
【0132】
本発明の熱硬化型ポリイミド樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層(A´層)が耐熱樹脂層(C層)上に形成されたフィルムは片面フレキシブル回路基板用のベースフィルムとして使用できる。また、A´層、C層及びA´層の順の層構成を有するフィルム、及びA´層、C層及び銅箔(D層)からなり、A´層、C層及びD層の順の層構成を有するフィルムも同様に両面フレキシブル回路基板用のベースフィルムとして使用できる。
【0133】
耐熱樹脂層に用いられる耐熱樹脂は、ポリイミド樹脂、アラミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、液晶ポリマーなどを挙げることができる。特に、ポリイミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂が好ましい。またフレキシブル回路基板に用いる特性上、破断強度が100MPa以上、破断伸度が5%以上、20〜150℃間の熱膨張係数が40ppm以下、およびガラス転移温度が200℃以上又は分解温度が300℃以上である耐熱樹脂を用いるのが好ましい。
【0134】
このような特性を満たす耐熱樹脂としては、フィルム状で市販されている耐熱樹脂を好適に用いることができ、例えば、宇部興産(株)製ポリイミドフィルム「ユーピ レックス−S」、東レ・デュポン(株)製ポリイミドフィルム「カプトン」、鐘淵化学工業(株)製ポリイミドフィルム「アピカル」、帝人アドバンストフィルム(株)製「アラミカ」、(株)クラレ製液晶ポリマーフィルム「ベクスター」、住友ベークライト(株)製ポリエーテルエーテルケトンフィルム「スミライトFS−1100C」等が知られている。
【0135】
耐熱樹脂層の厚さは、通常2〜150μmであり、好ましくは10〜50μmの範囲とするのがよい。耐熱樹脂層(C層)は表面処理を施したものを用いてもよい。表面処理としては、マット(mat)処理、コロナ放電処理、プラズマ処理等の乾式処理、有機溶剤処理、酸処理、アルカリ処理等の化学処理、サンドブラスト処理、機械研磨処理などが挙げられる。特にA層との密着性の観点から、プラズマ処理が施されているのが好ましい。
【0136】
絶縁層(A´)と耐熱樹脂層(C)からなる片面フレキシブル回路基板用のベースフィルムは以下のようにして製造することができる。まず、前述した接着フィルムと同様に、本発明の熱硬化型ポリイミド樹脂組成物を有機溶剤に溶解した樹脂ワニスを調製し、耐熱樹脂フィルム上にこの樹脂ワニスを塗布し、加熱又は熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させて熱硬化型ポリイミド樹脂組成物層を形成させる。有機溶剤、乾燥条件等の条件は前記接着フィルムの場合と同様である。樹脂組成物層の厚さは5〜15μmの範囲とするのが好ましい 。
【0137】
次に熱硬化型ポリイミド樹脂組成物層を加熱乾燥させ、熱硬化型ポリイミド樹脂組成物の絶縁層を形成させる。加熱硬化の条件は通常150℃〜220℃で20分〜180分の範囲で選択され、より好ましくは160℃〜200℃で30〜120分の範囲で選択される。
【0138】
絶縁層(A´層)、耐熱樹脂層(C)層及び銅箔(D層)の3層からなる両面フレキシブル回路基板用フィルムのベースフィルムの製造は、耐熱樹脂層(C層)と銅箔(D層)よりなる銅張積層フィルム上に樹脂組成物を層形成し、上記と同様にして製造すればよい。銅張積層フィルムとしては、キャスト法2層CCL(Copper-clad laminate)、スパッタ法2層CCL、ラミネート法2層CCL、3層CCLなどが挙げられる。銅箔の厚さは12μm、18μmのものが好適に使用される。
【0139】
市販されている2層CCLとしては、エスパネックスSC(新日鐵化学社製)、ネオフレックスI<CM>、ネオフレックスI<LM>(三井化学社製)、S´PERFLEX(住友金属鉱山社製)等が挙げられ、また市販されている3層CCLとしては、ニカフレックスF−50VC1(ニッカン工業社製)等が挙げられる。
【0140】
絶縁層(A´層)、耐熱樹脂層(C層)及び絶縁層(A´層)の3層からなる両面フレキシブル回路基板用フィルムのベースフィルムの製造は以下のようにして行うことができる。まず前述した接着フィルムと同様に、本発明の熱硬化型ポリイミド樹脂組成物を有機有機溶剤に溶解した樹脂ワニスを調製し、支持体フィルム上にこの樹脂ワニスを塗布し、加熱又は熱風吹きつけ等により有機有機溶剤を乾燥させて樹脂組成物層を形成させる。有機有機溶剤、乾燥条件等の条件は前記接着フィルムの場合と同様である。樹脂組成物層の厚さは5〜15μmの範囲とするのが好ましい。
【0141】
次に、この接着フィルムを耐熱樹脂フィルムの両面にラミネートする。ラミネートの条件は前記と同様である。また耐熱フィルムの片面に予め樹脂組成物層が設けられていれば、ラミネートは片面のみでよい。次に樹脂組成物層を加熱硬化させ、樹脂組成物の層である絶縁層を形成させる。加熱硬化の条件は通常150℃〜220℃で20分〜180分の範囲で選択され、より好ましくは160℃〜200℃で30分〜120分の範囲で選択される。
【0142】
フレキシブル回路基板用のベースフィルムからフレキシブル回路基板を製造する方法について説明する。A´層、C層及びA´層からなるベースフィルムの場合は、まず加熱硬化後、回路基板にドリル、レーザー、プラズマ等の方法により穴開けし、両面の導通のためのスルーホールを形成する。A´層、C層及びD層からなるベースフィルムの場合は、同様の方法により穴開けし、ビアホールを形成する。特に炭酸ガスレーザーやYAGレーザー等のレーザーによる穴開けが一般的に用いられる。
【0143】
次いで絶縁層(樹脂組成物の層)の表面処理を行う。表面処理については、前述した接着フィルムの場合と同様である。表面処理を行った後、絶縁層表面にメッキにより導体層を形成する。メッキによる導体層形成については、前述した接着フィルムの場合と同様である。導体層形成後、150〜200℃で20分〜90分アニール処理することにより、導体層のピール強度をさらに向上、安定化させることができる。
【0144】
次に、導体層をパターン加工し回路形成しフレキシブル回路基板とする。A層、C層及びD層からなるベースフィルムを使用した場合は、D層である銅箔にも回路形成を行う。回路形成の方法としては、例えば当業者に公知のサブトラクティブ法、セミアディディブ法などを用いることができる。詳細は前述の接着フィルムの場合と同様である。
【0145】
このようにして得られた片面又は両面フレキシブル回路基板は、例えば、前述したように、本発明の接着フィルムを用いて多層化することで、多層フレキシブル回路基板を製造することができる。
【0146】
また、本発明の樹脂組成物は半導体とサブストレート基板間の応力緩和層を形成するための材料としても有用である。例えば、前記と同様にして、本発明の樹脂組成物を用いて得られた接着フィルムによりサブストレート基板の最も上部の絶縁層の全部または一部を形成し、半導体を接続することにより、該樹脂組成物の硬化物を介して半導体とサブストレート基板が接着された半導体装置を製造することができる。この場合、接着フィルムの樹脂組成物層の厚みは10〜1000μmの範囲で適宜選択される。本発明の樹脂組成物はメッキにより導体層の形成が可能であり、サブストレート基板上に設けた応力緩和用の絶縁層上にも簡便にメッキにより導体層を形成し回路パターンを作製することも可能である。
【0147】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は流動性に優れるため、ガラス繊維へ含侵させることが容易である。その為、プリプレグの製造に好ましく用いることができる。特に、白色LEDの基板に用いる白色プリプレグの製造に好適に使用できる。
【0148】
本発明の白色プリプレグは本発明の熱硬化性樹脂組成物と白色顔料を含む合物を、シート状ガラス繊維基材に含浸、乾燥させてなることを特徴とする具体的には、本発明の熱硬化性樹脂組成物と白色顔料を含む混合物を、シート状ガラス繊維基材に含浸または塗布させた後、100〜200℃の範囲の乾燥機中で1〜60分間の範囲にて半硬化させることを特徴とする。以下に本発明の白色プリプレグを具体的に説明する。
【0149】
前記白色顔料としては、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、二酸化チタン、アルミナ、合成スメクタイトなどが例示でき、白色の無機粉末であれば特に限定されるものではないが、可視光反射率や白色度、或いは電気特性といった観点から二酸化チタンを用いるのが最も好ましい。
【0150】
二酸化チタンの結晶構造はアナターゼ型とルチル型がある。両者の特徴を挙げると、アナターゼ型は可視光短波長領域の反射率が良好であり、ルチル型は長期の耐久性や耐変色性に優れる。本発明の樹脂組成物に添加する白色顔料としてはどちらでも良く、特に限定されるものではない。両者を混合して使用することも勿論可能である。
【0151】
前記混合物に含まれる白色顔料の含有量は、配合物中10〜75質量%の範囲が良い。10質量%以上であれば十分な白色度、反射率を得ることができ、75質量%以下であればシート状ガラス繊維基材への含浸性が低下したり金属箔との接着強度が低下したりといった不具合が発生することはない。
【0152】
白色顔料として二酸化チタンを使用する場合、二酸化チタンには表面処理としてアルミナ、シリカ処理等を行っても良い。又、シラン系カップリング剤やチタネート系カップリング剤処理も可能である。
【0153】
シート状ガラス繊維基材に含浸させる混合物には、上記白色顔料以外に、必要に応じてシリカなどの無機充填材を含有することができる。含有することのできる無機充填材としては、シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、Eガラス粉末、酸化マグネシウム、チタン酸カリウム、ケイ酸カルシウム、クレイ、タルク等が挙げられ、単体で使用しても良く、又、2種類以上を併用しても良い。これらの無機充填材を含有することにより、基板の剛性率が向上する。配合量は特に限定しないが、混合物に対して50質量%以下であることが好ましい。50質量%以下であればシート状ガラス繊維基材への含浸性が低下したり金属箔との接着強度が低下したりといった不具合が発生する可能性はほとんど生じない。
【0154】
シート状ガラス繊維基材に含浸させる混合物には、上記白色顔料や無機充填材以外に、必要に応じて蛍光剤を配合することができる。蛍光剤を配合することにより、可視光短波長領域での見かけの反射率を高くすることができる。ここで、蛍光剤とは、光、放射線、紫外線等の光エネルギーを吸収し、他の波長の光に変えて放射する特性を持つ化合物であり、例えば有機物では、ジアミノスチルベン誘導体、アントラセン、サリチル酸ナトリウム、ジアミノスチルベンジスルホン酸誘導体、イミダゾール誘導体、クマリン誘導体、ピラゾリン誘導体、デカリルアミン誘導体等がある。また無機物では、ZnCdS:Ag、ZnS:Pb、ZnS:Cu等がある。蛍光剤は、反射率の低下が著しい可視光短波長領域(380〜470nm)に放射波長が存在することが好ましく、上記の蛍光剤のうち、一般的には蛍光増白剤と呼ばれているジアミノスチルベンジスルホン酸誘導体、イミダゾール誘導体、クマリン誘導体、ピラゾリン誘導体等が好適である。その添加量については、限定するものではないが、ピラゾリン誘導体の場合、混合物に対して0.1重量%程度の添加から効果を発揮し、添加量が多いほど効果が大きくなる。また、添加する蛍光増白剤は、有機溶剤に可溶であることが望ましい。
【0155】
本発明の白色プリプレグに使用するシート状ガラス繊維基材としては、ガラスクロス、不織布のいずれでもよく、ガラスクロスと不織布とを併用してもよい。ガラスクロスの場合、平織り構造を基本とするが、ななこ織り、繻子織り、綾織り等の織物構造でもよく、特に限定するものではない。外観や加工性を損なわないために経糸と緯糸の交差部の隙間が小さい織り構造を使用することが好ましい。ガラスクロスの厚みについては、特に制限はないが0.02〜0.3mmの範囲のものが取り扱いやすく好ましい。
【0156】
また、シート状ガラス繊維基材に、シランカップリング剤等による表面処理を行ってもよい。さらに、シート状ガラス繊維基材自身が白色に着色されたものでもよい。
【0157】
以上説明した混合物に必要応じてメチルエチルケトン等の有機溶剤を加え、樹脂ワニスを調製し、ガラスクロス等からなるシート状ガラス繊維基材に含浸させ、乾燥して本発明の白色プリプレグを製造する。樹脂組成物をシート状ガラス繊維基材に含浸・乾燥させる方法としては特に限定するものではなく、例えば樹脂組成物中に、シート状ガラス繊維基材を浸漬するなどして含浸させた後、100℃〜200℃程度の温度で1〜60分間加熱して有機溶剤の除去およびエポキシ樹脂を半硬化させる方法等が採用できる。シート状ガラス繊維基材に含浸・乾燥して製造する白色プリプレグの樹脂組成物含浸量は特に限定しないが30〜60重量%の範囲とするのが好ましい。前記プリプレグの乾燥条件の選定としては、例えば、予め樹脂ワニスのゲルタイムをゲルタイムテスター(安田精機製作所製)により測定しておくことが好ましい。ここで、ゲルタイムの測定条件としては、前記装置により160℃におけるゲルタイム(硬化時間:ローターのトルクが約3.3Kg・cmに達するまでに要する時間)を測定し、ワニス樹脂のゲルタイムが5分以上〜15分未満の範囲が好ましく、前記ゲルタイムが5分以上〜10分未満がより好ましい。樹脂ワニスのゲルタイムが短いと半硬化の状態を維持できず、均一なプリプレグ作製が困難となる。また、半硬化を維持できず硬化まで至ると後述する金属箔との張り合わせが困難になる。そのため、ワニスゲルタイム測定により、プロセスにあった条件で半硬化させることが好ましい。
【0158】
得られた白色プリプレグと銅箔、またはアルミ箔とを組み合わせを加熱加圧成形して本発明の白色積層板を製造する。又、重ね合わせる白色プリプレグの枚数は特に制限はないが、単層基板としては白色プリプレグ1枚、又は2〜10枚を重ね、金属箔張り白色積層板の場合はその上に、又は上下に金属箔を積層配置するのが一般的である。多層基板は、上記単層基板を複数枚積層して製造されるが、重ね合わせる枚数については特に制限はない。金属箔としては、銅箔、アルミニウム箔等が用いられる。又、金属箔の厚みは1μm〜105μmが一般的であり、特に1.5μm〜35μmの範囲とするのが好ましい。また、本発明の白色プリプレグを積層する表面層のみに使用し、中間層には従来技術によるプリプレグを使用することも可能である。このようにして得られた本発明の白色積層板、金属箔張り白色積層板は、可視光領域の反射率が高く、しかも加熱や紫外線による変色が著しく少なく、高い耐熱性を持った板厚精度に優れるプリント配線基板用白色積層板、及び金属箔張り白色積層板となる。金属箔張り積層板の積層成形条件としては、通常のプリント配線板用積層板の手法が適用でき、例えば、多段プレス、多段真空プレス、連続成形、オートクレーブ成形機などを使用し、温度:100〜300℃の範囲、圧力:2〜100kgf/cm2 、加熱時間:0.1〜5時間の範囲が一般的であるが、絶縁層厚みの均一化、気泡の除去等の点から、積層成形は70mmHg以下の真空下で行うことが好ましい。
【0159】
得られた白色積層板に、アディティブ法にて導体パターンを形成し、プリント配線基板とする。又、得られた金属箔張り白色積層板の金属箔上に回路パターンを印刷し、エッチングを施してプリント配線基板とする。チップLEDを該プリント配線基板に実装するには、先ずプリント配線基板上に半田を塗布し、その上にチップLEDを載置したのち、これをリフロー等に通して半田を溶融することでチップLEDをプリント基板に固定する。チップLEDを高密度集積させることで面光源としての利用も可能になり、このような面光源は特に薄型であることが要求される液晶ディスプレイ用バックライトに好適に利用される。その他、面発光型の照明装置として誘導表示照明灯、避難口照明灯、広告灯等へ応用される。
【0160】
チップLED実装用基板の板厚精度は、基板上に実装した素子をトランスファー成形で封止する際にきわめて重要である。ここでトランスファー成形とは、型締めした金型内に樹脂を圧入する手法のことをいう。チップLEDに用いられる基板の厚みは、0.06mmから1.0mmが一般的であるが、板厚の精度が悪ければ、トランスファー成形の際、型締め時に基板と金型との間に隙間が発生し、圧入した樹脂がその隙間から漏れて成形不良が発生する。このようなトランスファー成形における基板の板厚の要求精度は、例えば厚みが1.0mmの基板であれば許容差±0.05mm以下(範囲は0.1mm)、好ましくは許容差±0.03mm以下(範囲は0.06mm)である。従って、板厚精度の高い基板があればチップLEDの製造工程において不良率を大幅に低減でき産業上極めて有意となる。
【実施例】
【0161】
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明する。例中特に断りの無い限り「部」、「%」は重量基準である。
【0162】
合成例1〔ポリイミド樹脂(A)の合成〕
撹拌装置、温度計、コンデンサーを付けたフラスコにジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、EDGAと省略する)9,243g、IPDI3N(イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート型トリイソシアネート:NCO質量%=18.2)3,800gを加え、150℃まで昇温し、6時間反応させた。この間反応は発泡とともに進行した。得られた樹脂溶液をポリイミド樹脂(a1−1)の溶液と略記する。ポリイミド樹脂(a1−1)の溶液を赤外吸収スペクトル測定した結果、イソシアネート基の特性吸収である2270cm-1が完全に消滅し、725cm-1、1780cm-1、1720cm-1にイミド基の吸収が確認された。ポリイミド樹脂(a1−1)の溶液は、淡黄色クリア液体、固形分換算の酸価は96.5KOHmg/g、固形分含有量は40.4質量%、樹脂溶液粘度は47.3Pa・sであった。
【0163】
ポリイミド樹脂(a1−1)の溶液1000gとn−プロピルビニルエーテル60gとを撹拌装置、温度計、コンデンサーを付けたフラスコに入れ、50℃にて10時間攪拌した。ポリイミド樹脂(a1−1)のカルボキシル基とn−プロピルビニルエーテルのビニル基とを反応させ、ヘミアセタールエステル構造を有するポリイミド樹脂(A1)の溶液を得た。ポリイミド樹脂(A1)の溶液の固形分含有量は43.2質量%であり、酸価は固形分換算で0.2KOHmg/g、粘度は1mPa・s以下であった。
【0164】
合成例2(同上)
撹拌装置、温度計、コンデンサーを付けたフラスコにPGMAC(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)2260g、IPDI 888g、NBDI(ノルボルナンジイソシアネート)412g及び無水トリメリット酸960gを加え、130℃まで昇温し4時間反応させた。この間反応は発泡とともに進行した。得られた樹脂溶液をポリイミド樹脂(a1−2)の溶液と略記する。ポリイミド樹脂(a1−2)溶液の赤外吸収スペクトル測定を行った結果、イソシアネート基の特性吸収である2270cm-1が完全に消滅し、725cm-1、1780cm-1、1720cm-1にイミド基の吸収が確認された。ポリイミド樹脂(a1−2)の溶液は、薄茶色クリア液体、固形分換算の酸価は90KOHmg/g、固形分含有量は51.5質量%、樹脂溶液粘度は105Pa・sであった。
【0165】
ポリイミド樹脂(a1−2)の溶液1000gとn−プロピルビニルエーテル71gとを撹拌装置、温度計、コンデンサーを付けたフラスコに入れ、50℃にて8時間攪拌し、ポリイミド樹脂(a1−2)のカルボキシル基とn−プロピルビニルエーテルのビニル基とを反応させ、ヘミアセタールエステル構造を有するポリイミド樹脂(A2)の溶液を得た。ポリイミド樹脂(A2)の溶液の固形分含有量は55.2質量%であり、酸価は固形分換算で0.2KOHmg/g、粘度は1mPa・s以下であった。
【0166】
合成例3(同上)
撹拌装置、温度計、コンデンサーを付けたフラスコにEDGA4488部、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート型トリイソシアネート(NCO%=18.2、以下、IPDI3Nと省略する)2760g及び無水トリメリット酸1728部を加え、150℃まで昇温し、8時間反応させた。この間反応は発泡とともに進行した。得られた樹脂溶液をポリイミド樹脂(a1−3)の溶液と略記する。ポリイミド樹脂(a1−3)溶液の赤外吸収スペクトル測定を行った結果、イソシアネート基の特性吸収である2270cm-1が完全に消滅し、725cm-1、1780cm-1、1720cm-1にイミド基の吸収が確認された。ポリイミド樹脂(a1−3)の溶液は、薄茶色クリア液体、固形分換算の酸価は95KOHmg/g、固形分含有量は50.3質量%、樹脂溶液粘度は115Pa・sであった。
【0167】
ポリイミド樹脂(a1−3)の溶液1000gとイソプロピルビニルエーテル73gとを撹拌装置、温度計、コンデンサーを付けたフラスコに入れ、50℃にて8時間攪拌し、ポリイミド樹脂(a1−3)のカルボキシル基とイソプロピルビニルエーテルのビニル基とを反応させ、ヘミアセタールエステル構造を有するポリイミド樹脂(A3)の溶液を得た。ポリイミド樹脂(A3)の溶液の固形分含有量は53.1質量%であり、酸価は固形分換算で0.2KOHmg/g、粘度は1mPa・s以下であった。
【0168】
合成例4(同上)
撹拌装置、温度計、コンデンサーを付けたフラスコにEDGA3786g、IPDI3N 2076g、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート型トリイソシアネート(NC0%=24.7、以下、HDI3Nと略記する。)510g及び無水トリメリット酸の1728gを加え、150℃まで昇温し、8時間反応させた。この間反応は発泡とともに進行した。得られた樹脂溶液をポリイミド樹脂(a1−4)の溶液と略記する。ポリイミド樹脂(a1−4)の溶液の赤外吸収スペクトル測定を行った結果、イソシアネート基の特性吸収である2270cm-1が完全に消滅し、725cm-1、1780cm-1、1720cm-1にイミド基の吸収が確認された。ポリイミド樹脂(a1−4)の溶液は、茶色クリア液体、固形分換算の酸価は120KOHmg/g、固形分は54.0質量%であり、樹脂溶液粘度は64Pa・sであった。
【0169】
ポリイミド樹脂(a1−4)の溶液1000gとイソブチルビニルエーテル100gとを撹拌装置、温度計、コンデンサーを付けたフラスコに入れ、50℃にて8時間攪拌し、ポリイミド樹脂(a1−4)のカルボキシル基とイソプロピルビニルエーテルのビニル基とを反応させ、ヘミアセタールエステル構造を有するポリイミド樹脂(A4)の溶液を得た。ポリイミド樹脂(A4)の溶液の固形分含有量は57.5質量%であり、酸価は固形分換算で0.2KOHmg/g、粘度は1mPa・s以下であった。
【0170】
合成例5(同上)
撹拌装置、温度計、コンデンサーを付けたフラスコにEDGA(ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート)9,225g、IPDI3N(イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート型トリイソシアネート:NCO%=18.2)3,645g及びシクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物2,430gを加え、140℃まで昇温し、8時間反応させた。この間、反応は発泡とともに進行した。得られた樹脂溶液をポリイミド樹脂(a1−5)の溶液と略記する。ポリイミド樹脂(a1−5)の溶液の赤外吸収スペクトル測定を行った結果、イソシアネート基の特性吸収である2270cm-1が完全に消滅し、725cm-1、1780cm-1、1720cm-1にイミド基の吸収が確認された。ポリイミド樹脂(a1−5)の溶液は、淡黄色クリア液体、固形分換算の酸価は134.8KOHmg/g、固形分含有量は35.1質量%、樹脂溶液粘度は101Pa・sであった。
【0171】
ポリイミド樹脂(a1−5)の溶液1000gとn−ブチルビニルエーテルを84gとを撹拌装置、温度計、コンデンサーを付けたフラスコに入れ、50℃にて8時間攪拌し、ポリイミド樹脂(a1−5)のカルボキシル基とn−ブチルビニルエーテルのビニル基とを反応させ、ヘミアセタールエステル構造を有するポリイミド樹脂(A5)の溶液を得た。ポリイミド樹脂(A5)の溶液は、固形分含有量は40.5質量%、固形分換算の酸価は0.4KOHmg/g、樹脂溶液粘度は1mPa・s以下であった。
【0172】
上記合成例で測定した樹脂溶液の粘度と樹脂の固形分の酸価の測定方法を以下に示す。
【0173】
<樹脂溶液の粘度の測定方法>
得られた樹脂溶液の25℃における粘度をE型粘度計(東機産業社製、型式:TV−22)を用いて測定した。
【0174】
[樹脂の固形分換算の酸価の測定]
100ml三角フラスコに得られたポリイミド樹脂の溶液を約3〜5g秤量し、テトラヒドロフラン30mLを加えて溶解した。これに指示薬としてフェノールフタレイン溶液を2,3滴加えて0.1mol/L水酸化カリウム・アセトン溶液にて滴定し、次式より樹脂溶液の固形分換算した酸価を算出した。
【0175】
酸価=V×F×5.61/S/(A/100)
V:0.1mol/L水酸化カリウム・アルコール溶液の使用量(mL)
F:0.1mol/L水酸化カリウム・アルコール溶液の力価
S:試料の採取量(g)、A:試料の不揮発分(質量%)
【0176】
実施例1〜5、及び比較例1〜5
第1表及び第2表に示す配合でポリイミド樹脂、エポキシ樹脂を混合し、本発明の熱硬化性樹脂組成物1〜5、及び比較対照用熱硬化性樹脂組成物1´〜5´を得た。得られた樹脂組成物の粘度、ゲルタイムの評価し、結果を第1表及び第2表に併せて示す。また、樹脂組成物の粘度、ゲルタイム、硬化物の耐熱性の評価方法を以下に示す。
【0177】
<樹脂組成物の粘度の評価方法>
樹脂組成物の25℃における溶液粘度をE型粘度計(東機産業社製、型式:TV−22)を用いて測定し、下記の基準に従って評価した。
○:樹脂組成物の粘度が1,000mPa未満
△:樹脂組成物の粘度が1,000mPa以上5,000mPa未満
×:樹脂組成物の粘度が5,000mPa分以上
【0178】
<樹脂組成物のゲルタイムの評価方法>
樹脂組成物の可使時間(ポットライフ)をゲルタイムの測定により評価した。樹脂組成物2gを用い、ゲルタイムテスター(安田精機製作所製)により、160℃におけるゲルタイム(硬化時間:ローターのトルクが約3.3Kg・cmに達するまでに要する時間)を測定し、下記の基準に従って評価した。
◎:ゲルタイムが10分以上
○:ゲルタイムが5分以上10分未満
×:ゲルタイムが5分未満
【0179】
【表1】

【0180】
【表2】

【0181】
第1表及び第2表の脚注
エポキシ樹脂1:シクロヘキサン環含有エポキシ樹脂〔商品名:EHPE−3150、ダイセル化学工業(株)製〕
エポキシ樹脂2:ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂〔商品名:エピクロン850S、DIC(株)製〕
【0182】
実施例6
熱硬化性樹脂組成物5を用いて得られる硬化塗膜の耐熱黄変性と耐候性(耐紫外線性)を評価した。硬化塗膜(試験片)の作成方法と各試験の方法を以下に示す。また、評価結果を第3表に示す。
【0183】
<試験片の作製>
熱硬化性樹脂組成物5を熱硬化後に得られる塗膜の膜厚が30μmになるように厚み2mmのガラス板上に塗装した。次いで、この塗装板を50℃の乾燥機で30分間、100℃の乾燥機で30分間、170℃の乾燥機で60分間乾燥して熱硬化させ試験片を得た。
【0184】
<耐熱黄変性の評価方法>
試験片を180℃の熱風乾燥機に24時間入れ、試験後に分光測色計(x−rite社製、SpectroEye)を用いてb値を測定した。下記基準に従って加熱下における熱硬化組成物の色度を評価した。
◎:b値が2未満
○:b値が2以上5未満
△:b値が5以上10未満
×:b値が10以上
【0185】
<耐紫外線性の評価方法>
試験片を耐光性試験機(東洋精機社製、サンテストCPS+)にて、ブラックスタンダード温度63℃、550W/m2、40時間連続照射した。試験後、分光測色計にてb値を測定し、下記基準に従って評価した。
◎:b値が2未満
○:b値が2以上5未満
△:b値が5以上10未満
【0186】
比較例6
EHPE−3150〔ダイセル化学工業(株)製の脂環式エポキシ樹脂〕50部 、AER−6051EK75〔旭化成工業(株)製のビスフェノールA型エポキシ樹脂〕40重量部及びマープルーフG−0150M〔日本油脂(株)製のグリシジルメタクリレートコポリマー〕10重量部をメチルエチルケトン50重量部に溶解させ、ワニスAを得た。硬化剤としてジシアンジアミド3重量部、硬化促進剤としてC11Z−CN(四国化成工業(株)製、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール)0.1重量部をジメチルホルムアミド(以下DMFと表記)25重量部に溶解させ、ワニスBを得た。ワニスAとワニスBを混合し、比較対照用熱硬化性樹脂組成物6´を得た。実施例6と同様にして硬化塗膜の耐熱黄変性と耐候性(耐紫外線性)を評価し、評価結果を第3表に示す。
【0187】
【表3】

【0188】
実施例7
実施例5で得られた樹脂組成物(A5)の溶液100質量部に対して、白色顔料としてルチル型二酸化チタンR−21(堺化学工業(株)製)56.3質量部、蛍光増白剤としてHR−101(中央合成化学(株)製、ピラゾリン誘導体、放射波長:450nm)0.2重量部を添加し、室温でペイントシェーカーにて1時間攪拌して白色ワニスを得た。この白色ワニスを厚さ50μm、重量48.5g/mの平織りEガラス織布(商品名:0634NW、(株)有沢製作所製)に含浸し、150℃で8分乾燥させ、ガラス布含有量が40重量%のプリプレグを作製した。このプリプレグを2枚重ね、その上下面に厚さ12μmの電解銅箔を配置し、180℃、35kgf/cm2、30mmHg以下の真空下で2時間積層成形し、絶縁層厚み120μmの銅張積層板を得た。ついで表面の銅箔をエッチングして評価用試料とし、以下に記載した耐ハンダリフロー試験実施した。評価結果を第4表に示す。
【0189】
<耐ハンダリフロー試験の測定方法>
得られた金属箔張り白色積層板を10mmx50mmに切りだした後、260℃に加熱したハンダ浴に180秒間浸漬させてその状態を目視により観察した。
判定基準:○ 変化なし
× ふくれ、又はひび割れ発生
【0190】
比較例7
EHPE−3150〔ダイセル化学工業(株)製の脂環式エポキシ樹脂〕50部 、AER−6051EK75〔旭化成工業(株)製のビスフェノールA型エポキシ樹脂〕40重量部及びマープルーフG−0150M〔日本油脂(株)製のグリシジルメタクリレートコポリマー〕10重量部をメチルエチルケトン50重量部に溶解させ、ワニスAを得た。硬化剤としてジシアンジアミド3重量部、硬化促進剤としてC11Z−CN(四国化成工業(株)製、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール)0.1重量部をジメチルホルムアミド(以下DMFと表記)25重量部に溶解させ、ワニスBを得た。ワニスAとワニスBを混合し、白色顔料としてルチル型二酸化チタンR−21(堺化学工業(株)製)73重量部、蛍光増白剤としてHR−101(中央合成化学(株)製、ピラゾリン誘導体、放射波長:450nm)0.3重量部を添加し、室温で1時間攪拌して白色エポキシワニスを得た。ワニスAとワニスBを混合し、白色顔料としてルチル型二酸化チタンR−21(堺化学工業(株)製)73重量部、蛍光増白剤としてHR−101(中央合成化学(株)製、ピラゾリン誘導体、放射波長:450nm)0.3重量部を添加し、室温で1時間攪拌して白色エポキシワニスを得た。この白色エポキシワニスを用いて実施例7と同様にして金属箔張り白色積層板を得た。得られ白色積層板を用いて、実施例7と同様にして耐ハンダリフロー試験実施した。評価結果を第4表に示す。
【0191】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘミアセタールエステル構造を有するポリイミド樹脂(A)と、エポキシ樹脂(B)とを含有することを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリイミド樹脂(A)が酸無水物とイソシアネート化合物とを反応させて得られるカルボキシル基を有するポリイミド樹脂(a1)とアルキルビニルエーテル(a2)とを反応させて得られる請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記前記アルキルビニルエーテルがビニルn−プロピルエーテルまたはビニルイソブチルエーテルである請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリイミド樹脂(a1)が、脂肪族ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート型ポリイソシアネートまたは脂環式ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート型ポリイソシアネートと、酸無水物とを反応させて得られる請求項2記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記酸無水物が脂環構造を有する請求項4記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記エポキシ樹脂(B)の含有量がポリイミド樹脂(A)100質量部に対して25〜200である請求項1〜5のいずれか1項記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項記載の熱硬化型樹脂組成物を硬化させてなることを特徴とする硬化物。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物により形成されるB−ステージ化層を、キャリアフィルム上に有することを特徴とするプリント配線板用層間接着フィルム。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか1項記載の熱硬化性樹脂組成物と白色顔料を含む合物を、シート状ガラス繊維基材に含浸、乾燥させてなることを特徴とする白色プリプレグ。
【請求項10】
請求項9に記載のプリプレグと金属箔を組み合わせたものを加熱加圧成形して熱硬化させて得られることを特徴とする白色積層板。
【請求項11】
請求項10記載の白色積層板を使用してなるチップ型発光ダイオードを実装するためのプリント配線基板。

【公開番号】特開2013−71969(P2013−71969A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210725(P2011−210725)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】