説明

熱硬化性樹脂組成物、半導体デバイス用部材、及びそれを用いた半導体デバイス

【課題】長期間使用時におけるクラックや剥離の発生がなく、ガスバリア性と密着性に優れた半導体デバイス用部材を提供することを目的とする。
【解決手段】下記(A)〜(D)を含む熱硬化性樹脂組成物であり、
該熱硬化性樹脂組成物に含まれる(A)ポリシロキサンと(B)エポキシ化合物のエポキシ当量の合計が600〜1500g/当量であり、
かつ、該熱硬化性樹脂組成物を熱処理することで形成される硬化物の、動的粘弾性測定による150℃における貯蔵弾性率が、5.00×10〜1.50×10Paであることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
(A)ポリシロキサンのエポキシ当量が800〜2000g/当量であり、かつ、下記式(1)で表されるポリシロキサン
(RSiO1/2a(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(O1/2 ・・・(1)
(B) エポキシ化合物
(C) 硬化剤
(D) 硬化触媒

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な熱硬化性樹脂組成物、半導体デバイス用部材、及びそれを用いた半導体デバイスに関する。詳しくは、密着性、耐熱性、耐光性、成膜性に優れた熱硬化性樹脂組成物、半導体デバイス用部材、及びそれを用いた半導体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス、特に発光ダイオード(light emitting diode:以下適宜「LED」と略する。)や半導体レーザー等の半導体発光デバイスにおいては、半導体発光素子を透明の樹脂等の部材(半導体デバイス用部材)によって封止したものが一般的である。
この半導体デバイス用部材としては、例えばエポキシ樹脂が用いられている。また、この封止樹脂中に蛍光体などの波長変換物質を含有させることによって、半導体発光素子からの発光波長を変換するものなどが知られている。
【0003】
しかし、エポキシ樹脂は、その硬化物が高い架橋密度を有することに由来してガスバリア性に優れることから素子、電極に使用している金属において、大気中の酸素、硫黄系化合物との接触により腐食、変色する現象については回避できるものの、可とう性が乏しく、かつ一般的に吸湿性が高いものが多いので、半導体デバイスを長時間使用した際に生ずる半導体発光素子からの熱応力によってクラックが生じたり、あるいは半導体容器からの剥離また水分の浸入により蛍光体や発光素子が劣化したりするなどの課題があった。
【0004】
また近年、発光波長の短波長化に伴いエポキシ樹脂が劣化して着色するために、長時間の点灯及び高出力での使用においては半導体デバイスの輝度が著しく低下するという課題もあった(特許文献1)。
これらの課題に対して、分子内にエポキシ基とともに耐熱性、紫外耐光性、可とう性に優れるシリコーンユニットを併せ持つエポキシシリコーン樹脂をエポキシ樹脂の代替あるいは併用アイテムとして使用することが提案されている。しかし、エポキシシリコーン樹脂は、特に半導体発光デバイス用パッケージ部材、構造が多様化するなかで、分子中のエポキシ基量を増加させるとガスバリア性は向上するものの可とう性が乏しくなることからクラック、剥離、しわなどの信頼性および外観不良が回避できなくなる。一方、エポキシ量を低減すると容器からのクラック、剥離は良化するものの、ガスバリア性が低くなるというトレードオフの関係であることから、両立についていまだ不十分であった(特許文献2)。
【0005】
また、低応力化を目的として、反応性官能基を有しない芳香族基を有するシリコーン樹脂に、Siを有しないエポキシ樹脂を複合させる方法も開示されているが、ガスバリア性およびクラック、剥離、しわなどの信頼性および外観不良の改善効果はいまだ不十分であった(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平07−309927号公報
【特許文献2】WO2007/125956国際公開パンフレット
【特許文献3】特開2006−274249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上の背景から、種々の構成材料からなる半導体発光デバイス用パッケージに対する密着性、ガスバリア性、耐熱性、耐光性、成膜性に優れ、長期間使用してもクラックや剥離、着色を生じることなく半導体デバイスを封止し、蛍光体を保持することのできる半導体デバイス用部材が求められている。また、さらに熱硬化性樹脂組成物を半導体デバイス用部材として用いるにあたり、取り扱い性の観点から硬度を改良する必要が生じてきている。
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、種々の構成材料からなる半導体発光デバイス用パッケージに対する密着性、ガスバリア性、耐熱性、耐光性、成膜性に優れ、長期間使用してもクラックや剥離、着色を生じることなく半導体デバイスを封止し、必要に応じて蛍光体を保持することができ、さらに取り扱い性にも優れた新規な熱硬化性樹脂組成物、該熱硬化性樹脂組成物を硬化させた半導体デバイス用部材、およびこれらを用いた半導体デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、熱硬化性樹脂組成物のエポキシ量とともに、実際の使用形態である硬化物の物性に着目し、動的粘弾性測定における貯蔵弾性率について、課題であるガスバリア性と密着性との相関が高いことを見出した。すなわち、特定量のエポキシ基および芳香族基を有する(A)ポリシロキサンと、前記(A)ポリシロキサンと(B)エポキシ化合物の合計のエポキシ量が特定の範囲に調整した熱硬化性樹脂組成物において、硬化物の動的粘弾性測定における貯蔵弾性率をある特定の範囲内に調整することで、はじめてガスバリア性と密着性を両立することができ、かつ、取り扱いやすい硬さとなることから、半導体デバイス用部材として優れていることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
即ち、本発明の要旨は、以下の[1]〜[6]に存する。
[1]下記(A)〜(D)を含む熱硬化性樹脂組成物であり、該熱硬化性樹脂組成物に含まれる(A)ポリシロキサンと(B)エポキシ化合物のエポキシ当量の合計が600〜1500g/当量であり、かつ、該熱硬化性樹脂組成物を熱処理することで形成される硬化物の、動的粘弾性測定による150℃における貯蔵弾性率が、5.00×10〜1.50×10Paであることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
(A)ポリシロキサンのエポキシ当量が800〜2000g/当量であり、かつ、下記式(1)で表されるポリシロキサン
(RSiO1/2a(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(O1/2 ・・・(1)
〔式(1)において、R、R、R、R、R、R、Rのうち少なくとも1つ以上がエポキシ含有基であり、エポキシ含有基以外の官能基はそれぞれ独立して1価の酸素原子、硫黄原子を含んでいてもよい炭素数1〜10の炭化水素基を示し、かつ、そのうちの10mol%以上は炭素数1〜8の置換されていてもよい芳香族基である。aは0〜0.3、bは0.2〜1.0、cは0.1〜0.7、dは0〜0.2、eはe>0の数を示し、a+b+c+d=1.0である。〕
(B) エポキシ化合物
(C) 硬化剤
(D) 硬化触媒
[2]前記熱硬化性樹脂組成物を熱処理して硬化させたときのShoreD硬度が10〜45であることを特徴とする[1]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
[3]前記式(1)で示される(A)ポリシロキサンの式中における(RSiO2/2)成分が、下記式(2)で表される構造からなることを特徴とする[1]または[2]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
(RSiO2/2(R1011SiO2/2 ・・・(2)
(式(2)において、R、Rの少なくともいずれか一方が炭素数1〜8の置換されていてもよい芳香族基であり、それ以外のR、R、R10、R11はそれぞれ独立して1価の酸素原子、硫黄原子を含んでいてもよい炭素数1〜10の炭化水素基を表す。nはn≧1、mはm≧0の数を示す。)
[4]前記式(2)が、重量平均分子量500以上のオリゴマーである
ことを特徴とする[3]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
[5][1]〜[4]のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物を硬化させた硬化物よりなることを特徴とする、半導体デバイス用部材。
[6][5]に記載の半導体デバイス用部材を少なくとも備えてなることを特徴とする半導体発光デバイス。
【発明の効果】
【0010】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、半導体デバイス容器に対する密着性、ガスバリア性、耐熱性、耐光性に優れている。さらに、成膜性も良好であり、半導体デバイス用部材として用いる際の取り扱い性にも優れている。
また、本発明の半導体発光デバイスは、上述の本発明の半導体デバイス用部材を用いているため、長期間使用しても封止材などにクラックや剥離、着色を生じることなく、長期にわたって性能を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の半導体発光デバイスの一態様を表す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内であれば種々に変更して実施することができる。 本発明の熱硬化性樹脂組成物は、下記(A)〜(D)を含むものであり、該熱硬化性樹脂組成物に含まれる(A)ポリシロキサンと(B)エポキシ化合物のエポキシ当量の合計が600〜1500g/当量であり、かつ、該熱硬化性樹脂組成物を熱処理することで形成される硬化物の、動的粘弾性測定による150℃における貯蔵弾性率が、5.00×10〜1.50×10であることを特徴とするものである。
(A)ポリシロキサンのエポキシ当量が800〜2000g/当量であり、かつ、下記式(1)で表されるポリシロキサン
(RSiO1/2a(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(O1/2 ・・・(1)
〔式(1)において、R、R、R、R、R、R、Rのうち少なくとも1つ以上がエポキシ含有基であり、エポキシ含有基以外の官能基はそれぞれ独立して1価の酸素原子、硫黄原子を含んでいてもよい炭素数1〜10の炭化水素基を示し、かつそのうちの10mol%以上は炭素数1〜8の置換されていてもよい芳香族基である。aは0〜0.3、bは0.2〜1.0、cは0.1〜0.7、dは0〜0.2、eはe>0 の数を示し、a+b+c+d=1.0である。〕
(B) エポキシ化合物
(C) 硬化剤
(D) 硬化触媒
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、その用途などに応じてその他の成分を含有させることができる。例えば、本発明の熱硬化性樹脂組成物を硬化させることにより得られる本発明の半導体デバイス用部材を半導体発光デバイス用部材として用いる場合は、本発明の熱硬化性樹脂組成物に蛍光体や無機微粒子を含有させることが好ましい。
以下、本発明の熱硬化性樹脂組成物の各成分について説明する。
[(A)ポリシロキサン]
本発明の熱硬化性樹脂組成物に用いられる(A)ポリシロキサン(以下、「(A)成分」と称する場合がある。)は、エポキシ基を必須とするポリシロキサンである。以下、(A)成分について詳細に説明する。
【0013】
(A)成分は、式:RSiO1/2で示される単位(M単位)、式:RSiO2/2で示される単位(D単位)、式:RSiO3/2で示される単位(T単位)および式:SiO4/2で示される単位(Q単位)および(O1/2)で示される
単位のうち、D単位成分とT単位成分を必須成分として選ばれるエポキシ基を有するポリシロキサンであり、下記式(1)式にて示される。
(RSiO1/2a(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(O1/2 ・・・(1)
前記式(1)中において、R、R、R、R、R、R、Rのうち少なくとも1つ以上がエポキシ含有基であり、エポキシ含有基以外の官能基はそれぞれ独立して1価の酸素原子、硫黄原子を含んでいてもよい炭素数1〜10の炭化水素基であり、かつ、エポキシ含有基以外の官能基のうちの10mol%以上は炭素数1〜8の置換されていてもよい芳香族基であることが必須の要件である。
【0014】
ここで、前記R、R、R、R、R、R、Rのうちのエポキシ含有基以外の官能基は、その15mol%以上が芳香族基であることが好ましく、その20mol%以上が芳香族基であることがより好ましい。芳香族基が10mol%以下であると、(B)エポキシ化合物との相溶性が悪化し、その硬化物が白濁する場合も発生するとともに充分なガスバリア性を付与することができなくなる傾向にある。
なお、「前記R、R、R、R、R、R、Rのうちのエポキシ含有基以外の官能基」とは、前記R、R、R、R、R、R、およびRにおいて、エポキシ基以外の官能基に対する芳香族基の割合のことである。
【0015】
前記式(1)中のa〜eについて説明する。
aは、後述するM単位のモル数を示し、通常0以上、好ましくは0.1以上であり、また、通常0.3以下、好ましくは0.2以下である。
bは、後述するD単位のモル数を示し、通常0.2以上、好ましくは0.3以上であり、また、通常1.0以下、好ましくは0.8以下である。
cは、後述するT単位のモル数を示し、通常0.1以上、好ましくは0.2以上であり、また、通常0.7以下、好ましくは0.6以下である。
dは、後述するQ単位のモル数を示し、通常0以上、また、通常0.2以下、好ましくは0.1以下である。
また、a+b+c+d=1.0である。
eは、各成分(RSiO1/2)、(RSiO2/2)、(RSiO3/2)、(SiO4/2)のうち、一部のシラン原子に直接結合する水酸基あるいはアルコキシ基単位(O1/2のモル比であり、eは0より大きいことが必要であるとともに、前記式(1)中のポリシロキサン中に通常0.001〜3wt%、好ましくは0.01〜2wt%、更に好ましくは0.01〜1.5wt%含まれていることが必要である。
【0016】
上記の範囲を外れると、硬化性が低下したり、ゲル状の化合物となったりすることがあり、半導体発光デバイス部材用として取り扱いが困難になる可能性がある。
また、前記式(1)において、(RSiO2/2成分と、(RSiO3/2成分とを必須とすることにより、ゲル化等のハンドリング性を損なうことなく、半導体発光デバイス部材として必要な密着性、ガスバリア性を付与することができるという効果が得られる。
【0017】
前記式(1)において、炭素数1〜10の1価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基などのアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基などのアリール基;ベンジル基、フェネチル基などのアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、ノナフルオロブチルエチル基などの置換アルキル基が例示される。中でも、炭素数1〜8の1価の炭化水素基が好ましく、特にメチル基やフェニル基が好ましい。
【0018】
また、前記式(1)において、エポキシ基含有基としては、2,3−エポキシプロピル基、3,4−エポキシブチル基、4,5−エポキシペンチル基などのエポキシアルキル基;2−グリシドキシエチル基、3−グリシドキシプロピル基、4−グリシドキシブチル基などのグリシドキシアルキル基;β−(または2−)(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、γ−(または3−)(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基などのエポキシシクロヘキシルアルキル基が例示される。中でも、β−(または2−)(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基が好ましい。
【0019】
また、(B)のエポキシ化合物との相溶性を確保し、かつ取り扱いが容易な粘度を確保する観点から、前記式(1)で示される(A)ポリシロキサンの式中における(RSiO2/2)成分は、下記式(2)で表される構造からなることが好ましい。
(RSiO2/2(R1011SiO2/2 ・・・(2)
(式(2)において、R、Rの少なくともいずれか一方が炭素数1〜8の置換されていてもよい芳香族基であり、それ以外のR、R、R10、R11はそれぞれ独立して1価の酸素原子、硫黄原子を含んでいてもよい炭素数1〜10の炭化水素基を表す。nはn≧1、mはm≧0の数を示す。)
さらに、前記式(2)で表される構造の重量平均分子量については、封止硬化物中から揮発することで、半導体発光装置の汚染あるいは、封止硬化物の応力を増大させる可能性がある環状体の新たな生成を抑制するという観点から500以上であることが好ましく、700以上であることがより好ましい。
【0020】
(ポリシロキサン(A)のエポキシ当量)
本発明で用いられる(A)エポキシ基を有するポリシロキサンは、その置換基の一部において、エポキシ当量が800〜2000g/当量の範囲でエポキシ基を有することが必須の要件となる。これにより、半導体発光デバイス用パッケージに対する密着性を付与するともに、(B)のエポキシ化合物添加の際に、相溶化を促進するという効果が得られる。(A)ポリシロキサンのエポキシ当量は、900〜1900g/当量がより好ましく、1000〜1800g/当量がさらに好ましく、1100〜1800g/当量が特に好ましい。エポキシ当量が800g/当量以下であると、エポキシ基を有するポリシロキサンを含む熱硬化性組成物を半導体発光デバイス用部材として熱処理にて硬化させた際、その硬化物が硬すぎることで、加熱、冷却時に発生する応力を緩和することが不十分となるため、半導体発光デバイス中に設けられた配線を切断し、半導体発光デバイスとしての機能を失ってしまう可能性がある。また、エポキシ当量が2000g/当量以上になると、その硬化物が、大気中の酸素、硫黄系ガスから半導体発光デバイス中の金属電極をバリアすることが難しくなることから、金属電極の腐食が進行することで、半導体デバイスとしての機能を失ってしまう可能性がある。
【0021】
[(A)ポリシロキサンの製造方法]
本発明で用いられる(A)エポキシ基を有するポリシロキサンは、その置換基の一部においてエポキシ基を有することが必須であるが、エポキシ基の導入方法としては、特に制限はないが、以下の方法が挙げられる。
(1)エポキシ基を有するシラン化合物をポリシロキサン製造原料として、エポキシ基を有しないシラン化合物および、またはそのオリゴマーと共加水分解、縮合反応する方法。
(2)ヒドロシラン構造を含有するポリシロキサンにエポキシ基と二重結合基を有する化合物を付加させる方法。
(3)二重結合を有するポリシロキサンの二重結合部分を酸化させることで、エポキシ基に変換する方法。
【0022】
エポキシ基を有するポリシロキサンを製造する方法は特に限定されないが、例えば、以下に示す方法をとることができる。
式:RSiO1/2で示される単位(M単位)、式:RSiO2/2で示される単位(D単位)、式:RSiO3/2で示される単位(T単位)および式:SiO4/2で示される単位(Q単位)からなる群から選択される少なくとも1種を含有するシラン化合物および/またはシラン化合物を共加水分解・重縮合反応することで得られるオリゴマーと、エポキシ基を含有するアルコキシシランまたはその部分加水分解物とを、酸性および/または塩基性触媒の存在下に反応させる方法をとることができる。ここで、前記各Rのうちのエポキシ含有基以外の官能基は、その10mol%以上が、炭素数1〜8の置換されていてもよい芳香族基であることが好ましい。
【0023】
(原料)
SiO1/2で示される単位(M単位)を導入するために使用されるシラン化合物原料としては、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルシラノールなどが例示される。
SiO2/2で示される単位(D単位)を導入するために使用されるシラン化合物原料としては、ジメチルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシランなどが例示される。
【0024】
また、RSiO2/2で示される単位(D単位)を導入するために使用される加水分解縮合物オリゴマーとしては、GE東芝シリコーン社製ヒドロキシ末端ジメチルポリシロキサンでは、例えば、XC96−723、XF3905、YF3057、YF3800、YF3802、YF3807、YF3897などが例示される。
また、ヒドロキシ末端メチルフェニルポリシロキサン、ヒドロキシ末端ポリジメチルジフェニルシロキサンも好適に使用される。
GE東芝シリコーン社製ヒドロキシ末端ポリジメチルジフェニルシロキサンでは、例えば、YF3804などが例示される。
【0025】
Gelest社製両末端シラノール ポリジメチルシロキサンでは、例えば、DMSS12、DMS−S14などが例示される。
Gelest社製両末端シラノール ジフェニルシロキサン−ジメチルシロキサン コポリマーでは、例えば、PDS−1615が例示される。
Gelest社製両末端シラノール ポリジフェニルシロキサンでは、例えば、PDS−9931が例示される。
【0026】
加水分解縮合物オリゴマーの重量平均分子量は、本発明の半導体発光デバイス用部材を得ることができる限り任意であるが、通常500以上であることが望ましい。
SiO2/2で示される単位(D単位)を導入する方法としては、特に制限はないが、シラン化合物よりも加水分解縮合オリゴマーを原料として使用するほうが好ましい。これはシラン化合物を多用すると、重縮合体中の低沸環状体が多くなる可能性があり、低沸環状体は半導体デバイス部材として、硬化物を得る際に揮発してしまうため、重量歩留まりの低下や応力発生の原因となることがあるためである。さらに、低沸環状体を多く含む半導体デバイス用部材は耐熱性が低くなることがある。
特にフェニル基を有するメチルフェニルポリシロキサン、ジフェニル−ジメチルシロキサンコポリマー、ポリジフェニルシロキサンを原料として使用することが好ましい。
【0027】
SiO3/2で示される単位(T単位)を導入するために使用されるシラン化合物原料としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシランおよびこれらの加水分解縮合物が例示される。
【0028】
SiO4/2で示される単位(Q単位)を導入するために使用されるシラン化合物原料としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシランおよびこれらの加水分解縮合物が例示される。
エポキシ基を導入するために使用されるシラン化合物原料としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、(γ−グリシドキシプロピル)(メチル)ジメトキシシラン、(γ−グリシドキシプロピル)( エチル)ジメトキシシラン、(γ−グリシドキシプロピル)(メチル)ジエトキシシラン、(γ−グリシドキシプロピル)(エチル)ジエトキシシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシルエチル〕(メチル)ジメトキシシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル〕(エチル)ジメトキシシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル〕(メチル)ジエトキシシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル〕(エチル)ジエトキシシラン、(γ−グリシドキシプロピル)(メトキシ)ジメチルシラン、(γ−グリシドキシプロピル)(メトキシ)ジエチルシラン、(γ−グリシドキシプロピル)(エトキシ)ジメチルシラン、(γ−グリシドキシプロピル)(エトキシ)ジエチルシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル〕(メトキシ)ジメチルシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル〕(メトキシ)ジエチルシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル〕( エトキシ)ジメチルシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル〕( エトキシ)ジエチルシラン、〔2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル〕(ジメチル)ジシロキサン、3−エポキシプロピル(フェニル)ジメトキシシランなどが例示される。このうち特に用いられるのは、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0029】
(触媒)
(A)エポキシ基を有するポリシロキサンの製造方法では、上述の化合物および/またはそのオリゴマーを、酸性および/または塩基性触媒の存在下に反応させる。
酸性触媒は、アルコキシシラン原料の加水分解反応させるための触媒であり、酸性触媒の例としては、無機酸、有機酸、これらの酸無水物又は誘導体等が挙げられる。
前記無機酸としては、塩酸、リン酸、ホウ酸、炭酸などが例示される。
また、前記有機酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、オレイン酸等などが挙げられる。
【0030】
塩基性触媒は、共加水分解・縮合反応させるための触媒であり、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウムなどのアルカリ金属の水酸化物;ナトリウム−t−ブトキシド、カリウム−t−ブトキシド、セシウム−t−ブトキシドなどのアルカリ金属のアルコキシド;ナトリウムシラノレート化合物、カリウムシラノレート化合物、セシウムシラノレート化合物などのアルカリ金属のシラノール化合物が挙げられる。
【0031】
なお、触媒を中和することにより、共加水分解・縮合反応を停止することができる。中和のためには、炭酸ガス、カルボン酸、炭酸水素塩、リン酸水素塩などの弱酸、アンモニア水などの弱塩基を添加することが好ましい。中和により生成した塩は、ろ過または水洗することにより、簡単に除去することができる。
(反応温度)
酸性および/または塩基性触媒による共加水分解・縮合反応において、反応温度は常圧においては、10℃〜200℃であることが好ましく、特に30℃〜150℃であることが好ましい。反応温度が低すぎると反応が充分に進行しないことがあり、また反応温度が高すぎるとケイ素原子結合有機基が熱分解することが懸念される。また、必要に応じて有機溶剤により反応系中の固形分濃度を調節し、さらに反応させてもよい。
【0032】
(溶媒)
共加水分解・縮合反応させるために、必要に応じて水を添加してもよい。共加水分解・縮合反応を行なうために使用する水の量は、原料中のすべてのアルコキシ基が変換されるのに要する水量を100%基準とした場合、通常80重量%以上、中でも100重量%以上の範囲が好ましい。加水分解率がこの範囲より少ない場合、共加水分解・縮合反応が不十分なため、硬化時に原料が揮発したり、硬化物の強度が不十分となったりする可能性がある。
【0033】
また、共加水分解・縮合反応させるために、必要に応じて有機溶媒を添加してもよい。
80℃〜200℃の沸点を有する有機溶剤を選択することにより、還流温度で容易に共加水分解・縮合反応を行うことができる。有機溶媒としては、例えば、炭素数1〜3の低級アルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン等を任意に用いることができるが、中でも強い酸性や塩基性を示さないものが共加水分解・縮合反応に悪影響を与えない理由から好ましい。有機溶媒は1種を単独で使用しても良いが、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用することもできる。
【0034】
共加水分解・縮合反応時に系内が分液し不均一となる場合には、溶媒を使用しても良い。溶媒としては、例えば、炭素数1〜3の低級アルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、水等を任意に用いることができるが、中でも強い酸性や塩基性を示さないものが共加水分解・縮合に悪影響を与えない理由から好ましい。溶媒は1種を単独で使用しても良いが、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用することもできる。
【0035】
溶媒使用量は自由に選択できるが、半導体デバイスに塗布する際には溶媒を除去することが多いため、必要最低限の量とすることが好ましい。また、溶媒除去を容易にするため、沸点が100℃以下、より好ましくは80℃以下の溶媒を選択することが好ましい。なお、外部より溶媒を添加しなくても加水分解反応によりアルコール等の溶媒が生成するため、反応当初は不均一でも反応中に均一になる場合もある。
【0036】
上記の共加水分解・縮合反応において溶媒を用いた場合には、通常、硬化させる前に共加水分解・縮合物から溶媒を留去することが好ましい。これにより、溶媒を含まない半導体発光デバイス用部材形成液(液状の共加水分解・縮合物)を得ることができる。溶媒を乾燥前に留去しておくことにより、脱溶媒収縮によるクラック、剥離、断線などを防止することができる。
【0037】
溶媒の留去を行なう際の温度条件の具体的な範囲を挙げると、共加水分解・縮合反応物の主成分が留出しない程度の減圧下において、通常60℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、また、通常150℃以下、好ましくは130℃以下、より好ましくは120℃以下である。この範囲の下限を下回ると溶媒の留去が不十分となる可能性があり、上限を上回ると共加水分解・縮合反応物がゲル化する、あるいは歩留まりが低下する可能性がある。
【0038】
(重量平均分子量)
(A)ポリシロキサンの重量平均分子量は特に限定されないが、重量平均分子量が500〜100,000の範囲であることが好ましく、特に1000〜30,000の範囲であることが好ましい。
[(B)エポキシ化合物]
(B)エポキシ化合物としては、特に制限はないものの、特に耐光性に優れている脂肪族あるいは脂環族エポキシ化合物が好ましい。また、(B)エポキシ化合物は縮合されていてもよい。
【0039】
特に好ましいエポキシ化合物としては、以下の式1、2にて例示されるシクロヘキシルエポキシ基を有する化合物、式3、4,5、6、7にて例示される脂環族グリシジルエーテル化合物、式8,9にて例示されるジシロキサン両末端エポキシ化合物、が挙げられる。
【0040】
【化1】

【0041】
また、硬化物の半田耐熱性を向上させることを目的として、脂環式エポキシ化合物の一部をフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アリールアルキレン型エポキシ樹脂等に置き換えて用いることもできる。
ここで、アリールアルキレン型エポキシ樹脂とは、繰り返し単位中に一つ以上のアリールアルキレン基を有するエポキシ樹脂を指し、例えば、キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、ビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂が好ましい。ビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂は、例えば下記一般式(II)で示すことができる。
【0042】
【化2】

【0043】
上記一般式(II)で示されるビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂の繰り返し単位nとしては、例えば、1〜10であるものを用いることができ、2〜5であるものを特に好適に用いることができる。
上記nの値が小さすぎると、結晶化しやすくなるため、汎用溶媒に対する溶解性が小さくなる傾向にあり、一方、上記nの値が大きすぎると、流動性が低下する傾向にあるため、いずれも取り扱い性が低下することがある。
【0044】
これらの他に以下の芳香族エポキシ化合物を水素化して得られる脂環族エポキシ化合物を用いてもよい。ビスフェノールAD,ビスフェノールS,テトラメチルビスフェノールA,テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールAD,テトラメチルビスフェノールS,テトラフルオロビスフェノールA などのビスフェノール類をグリシジル化したビスフェノール型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン等の2価のフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン等のトリスフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等のテトラキスフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールA、ノボラック、臭素化ビスフェノールA ノボラック等のノボラック類をグリシジル化したノボラック型エポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0045】
(エポキシ当量)
本発明で用いられる(B)エポキシ化合物については、(A)のポリシロキサンも含めた(A)と(B)の混合後のエポキシ当量が600〜1500g/当量の範囲でエポキシ基を有することが必須の要件となる。エポキシ当量については、600〜1300g/当量がより好ましく、600〜1200g/当量がさらに好ましい。
【0046】
(A)と(B)の混合後のエポキシ当量が600g/当量以下であると、熱硬化性組成物を半導体発光デバイス用部材として熱処理にて硬化させた際、その硬化物が硬すぎることで、加熱、冷却時に発生する応力を緩和することが不十分となるため、半導体デバイス中に設けられた配線にストレスがかかったり部分的に剥離が生じたりして、半導体デバイスの発光強度が低下してしまう可能性がある。また、(A)と(B)の混合後のエポキシ当量が1500g/当量以上になると、その硬化物の機械強度が著しく低下し、わずかな衝撃等の外力でクラックが発生するのみならず、大気中の酸素、硫黄系ガスから半導体発光デバイス中の金属電極をバリアすることが難しくなることから、金属電極の腐食が進行しやすくなったり、硬化物の耐熱着色性が悪化による黄変が起こりやすくなったりして半導体発光デバイスの発光強度が低下してしまう可能性がある。
【0047】
[(C)硬化剤]
本発明で用いられる(C)硬化剤については、特に制限はないものの、耐光性の観点からカルボン酸無水物が好ましい。
前記脂環式カルボン酸無水物としては、例えば、下記式(10)〜(15)で表される化合物や、4−メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルナジック酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物のほか、α − テルピネン、アロオシメン等の共役二重結合を有する脂環式化合物と無水マレイン酸とのディールス・アルダー反応生成物やこれらの水素添加物等を挙げることができる。
【0048】
【化3】

【0049】
なお、前記ディールス・アルダー反応生成物やこれらの水素添加物としては、任意の構造異性体および任意の幾何異性体を使用することができる。
また、前記脂環式カルボン酸無水物は、硬化反応を実質的に妨げない限り、適宜に化学的に変性して使用することもできる。
【0050】
これらの脂環式カルボン酸無水物のうち、組成物の流動性や透明性の点から、式(10)、式(11)、式(12)または式(13)で表される化合物等が好ましく、特に好ましくは式(10)または式(11)で表される化合物である。
本発明において、脂環式カルボン酸無水物は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0051】
硬化剤使用量は、(A)と(B)の混合後のエポキシ当量から算出されるエポキシ基1モルに対して、カルボン酸無水物基の当量比として、好ましくは0.4〜1.2、さらに好ましくは0.5〜1.0 である。この場合、該当量比が0.4未満でも1.2を超えても、得られる硬化物のガラス転移点(Tg)の低下や着色等の不都合を生じることがある。
【0052】
[(D)硬化触媒]
本発明で用いられる(D)硬化触媒については、特に限定されるものではないが、例えば、ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス( ジメチルアミノメチル) フェノール、シクロヘキシルジメチルアミン、トリエタノールアミン等の3 級アミン類;2−メチルイミダゾール、2−n−ヘプチルイミダゾール、2−n−ウンデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−n−ウンデシルイミダゾール、1−(2−シアノエチル) −2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジ(ヒドロキシメチル)イミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−フェニル−4,5−ジ〔(2’−シアノエトキシ)メチル〕イミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−n−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテート、1−(2−シアノエチル)−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾリウムトリメリテート、2,4−ジアミノ−6−〔2 ’−メチルイミダゾリル− (1' )〕エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2 ’−n−ウンデシルイミダゾリル)エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−〔2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1' )〕エチル−s−トリアジン、2−メチルイミダゾールのイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールのイソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1' )〕エチル−s−トリアジンのイソシアヌル酸付加物等のイミダゾール類;ジフェニルフォスフィン、トリフェニルフォスフィン、亜リン酸トリフェニル等の有機リン系化合物;ベンジルトリフェニルフォスフォニウムクロライド、テトラ−n− ブチルフォスフォニウムブロマイド、メチルトリフェニルフォスフォニウムブロマイド、エチルトリフェニルフォスフォニウムブロマイド、n−ブチルトリフェニルフォスフォニウムブロマイド、テトラフェニルフォスフォニウムブロマイド、エチルトリフェニルフォスフォニウムヨーダイド、エチルトリフェニルフォスフォニウムアセテート、メチルトリブチルホスホニウムジメチルホスフェート、テトラブチルホスホニウムジエチルホスホジチオネート、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムベンゾトリアゾレート、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムテトラフルオロボレート、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルフォスフォニウムテトラフェニルボレート等の4 級フォスフォニウム塩類;
1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7やその有機酸塩等のジアザビシクロアルケン類;オクチル酸亜鉛、アクチル酸錫、アルミニウムアセチルアセトン錯体等の有機金属化合物;テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド等の4 級アンモニウム塩類;三フッ化ホウ素、ホウ酸トリフェニル等のホウ素化合物;塩化亜鉛、塩化第二錫等の金属ハロゲン化合物のほか、ジシアンジアミドやアミンとエポキシ樹脂との付加物等のアミン付加型促進剤等の高融点分散型潜在性硬化促進剤; 前記イミダゾール類、有機リン系化合物や4 級フォスフォニウム塩類等の硬化促進剤の表面をポリマーで被覆したマイクロカプセル型潜在性硬化促進剤;
アミン塩型潜在性硬化剤促進剤; ルイス酸塩、ブレンステッド酸塩等の高温解離型の熱カチオン重合型潜在性硬化促進剤等の潜在性硬化促進剤等を挙げることができる。
【0053】
これらの(D)硬化触媒のうち、4級フォスフォニウム塩類、ジアザビシクロアルケン類、有機金属化合物および4級アンモニウム塩類が、無色透明で長時間加熱しても変色し難い硬化物が得られる点で好ましい。
前記(D)硬化触媒は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
(D)硬化触媒の使用量は、(A)エポキシ基を有するポリシロキサンと(B)エポキシ化合物と(C)硬化剤の合計100重量部に対して、好ましくは0.01〜3重量部、さらに好ましくは0.1〜1.5重量部である。この場合、(D)硬化触媒の使用量が0.01重量部未満であると、硬化反応の促進効果が低下する傾向があり、一方3重量部を超えると、得られる硬化物に着色などの不都合を生じることがある。
【0054】
[(A)〜(D)成分の割合]
(A)〜(D)の各成分の混合割合については、熱硬化性組成物に含まれる(A)ポリシロキサンと(B)エポキシ化合物のエポキシ当量の合計が600〜1500g/当量となり、かつ、該熱硬化性組成物を硬化した際に、150℃での貯蔵弾性率が5.00×10〜1.50×10となれば特に制限はない。好ましい混合割合としては、熱硬化性組成物全体を100重量%とした場合に(A)ポリシロキサンは50〜90重量%であり、(B)エポキシ化合物は1〜50重量%であり、(C)硬化剤は1〜50重量%であり、(D)硬化触媒は0.001〜3重量%である。
【0055】
[その他の成分]
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、上述の(A)〜(D)成分の他に、例えば、以下に例示するその他の成分を含有させることができる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、使用環境下での黄変を抑制する観点から酸化防止剤を含有することが好ましい。
上記酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等が好適に用いられる。なかでも、フェノール水酸基の片側あるいは両側のオルト位にアルキル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤が好適に用いられる。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤として、例えば2−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジ−tert−ペンチルフェノール、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス−[3,3−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチルフェニル)−ブタノイックアシッド]−グリコールエステル、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジ−tert−ペンチルフェノール、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート、ビス−[3,3−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチルフェニル)−ブタノイックアシッド]−グリコールエステル等が挙げられる。
【0056】
上記ヒンダードフェノール系化合物の商品名としては、IRGANOX 1010、IRGANOX1035、IRGANOX 1076、IRGANOX 1135、IRGANOX 245、IRGANOX 259、IRGANOX 295(以上、いずれもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、アデカスタブ AO−30、アデカスタブ AO−40、アデカスタブ AO−50、アデカスタブ AO−60、アデカスタブ AO−70、アデカスタブ AO−80、アデカスタブ AO−90、アデカスタブ AO−330(以上、いずれもADEKA社製)、Sumilizer GA−80、Sumilizer MDP−S、Sumilizer BBM−S、Sumilizer GM、Sumilizer GS(F)、Sumilizer GP(以上、いずれも住友化学工業社製)、HOSTANOX O10、HOSTANOX O16、HOSTANOX O14、HOSTANOX O3、(以上、いずれもクラリアント社製)、アンテージ BHT、アンテージ W−300、アンテージ W−400、アンテージ W500(以上、いずれも川口化学工業社製)、SEENOX 224M、SEENOX 326M(以上、いずれもシプロ化成社製)等が挙げられる。
上記フェノール系化合物の配合量としては特に限定されないが、上記熱硬化性樹脂組成物100重量部に対して、好ましい下限は0.01重量部、好ましい上限は1.0重量部である。上記フェノール系化合物の配合量が0.01重量部未満であると、上記ヒンダードフェノール系化合物を添加する効果が得られないことがあり、1.0重量部を超えると、耐光性の低下が著しくなるため好ましくない。上記フェノール系化合物の配合量のより好ましい下限は0.05重量部であり、より好ましい上限は0.7重量部である。なお、本発明の熱硬化性組成物において、上述したヒンダードフェノール系化合物は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0057】
上記リン系化合物は、ホスファイト骨格、ホスホナイト骨格、ホスフェート骨格及びホスフィネート骨格からなる群より選択される少なくとも1種の骨格を有するリン系化合物であれば特に限定されず、例えば、アデアスタブ PEP−4C、アデアスタブ PEP−8、アデアスタブ PEP−24G、アデアスタブ PEP−36、アデアスタブ HP−10、アデアスタブ 2112、アデアスタブ 260、アデアスタブ522A、アデアスタブ 1178、アデアスタブ 1500、アデアスタブ C、アデアスタブ 135A、アデアスタブ 3010、アデアスタブ TPP(以上、いずれもADEKA社製)サンドスタブ P−EPQ、ホスタノックス PAR24(以上、いずれもクラリアント社製)JP−312L、JP−318−0、JPM−308、JPM−313、JPP−613M、JPP−31、JPP−2000PT、JPH−3800(以上、いずれも城北化学工業社製) 等が挙げられる。
上記リン系化合物の配合量としては特に限定されないが、上記熱硬化性樹脂組成物100重量部に対して、好ましい下限は0.005重量部、好ましい上限は1.0重量部である。上記リン系化合物の配合量が0.005重量部未満であると、上記リン系化合物を添加する効果が得られないことがあり、1.0重量部を超えると、長期にわたる湿熱環境での使用に際して、リン酸由来の化合物に変性することで熱硬化性樹脂硬化物の分解を促進する可能性がより高くなるため好ましくない。上記リン系化合物の配合量のより好ましい下限は0.005重量部であり、より好ましい上限は0.5重量部である。なお、本発明の熱硬化性組成物において、上述したリン系化合物は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
また、上記ヒンダードフェノール系化合物とリン系化合物を併用されていてもよい。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、接着性付与のためにカップリング剤を含有することが好ましい。
【0058】
上記カップリング剤としては特に限定されず、例えば、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤等が挙げられる。
これらカップリング剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記カップリング剤の配合量としては、上記熱硬化性樹脂組成物100重量部に対して、好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が3重量部である。上記カップリング剤の配合量が0.1重量部未満であると、カップリング剤の配合効果が充分発揮されないことがあり、3重量部を超えると、余剰のカップリング剤が揮発し、本発明の熱硬化性樹脂組成物を硬化させたときに、膜減り等を起こすことがある。
【0059】
[熱処理方法]
本発明の半導体デバイス用部材は、上述の(A)ポリシロキサン、(B)エポキシ化合物、(C)硬化剤、および(D)硬化触媒を含む熱硬化性樹脂組成物を熱処理することにより得られるものである。
熱処理するための加熱方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、熱風循環式加熱、赤外線加熱、高周波加熱等の従来公知の方法を採用することができる。
熱処理条件は、熱硬化性樹脂組成物を所望の硬化状態にすることができれば特に制限はないが、例えば、90℃〜200℃で、0.2時間〜10時間程度が好ましい。
得られる硬化物の内部応力を低減させることを目的とする場合は、例えば80℃〜120℃で0.5時間〜3時間程度の条件で予備硬化させたのち、例えば120℃〜180℃で0.5時間〜3時間程度の条件で後硬化させることがさらに好ましい。
【0060】
[半導体デバイス部材の特性]
本発明においては、上述の(A)ポリシロキサン、(B)エポキシ化合物、(C)硬化剤、および(D)硬化触媒を含む熱硬化性樹脂組成物を熱処理することにより得られる硬化物が、動的粘弾性測定による150℃における10Hzにおける貯蔵弾性率が、通常5.00×10Pa以上、好ましくは8.00×10Pa以上、より好ましくは1.00×10Pa以上であり、また、通常1.50×10Pa以下、好ましくは1.00×10Pa以下である。
【0061】
ここで、前記貯蔵弾性率とは、内部に貯蔵された応力の保持に関する指標であり、貯蔵弾性率が上述の範囲であると、形状が維持でき、かつ過剰な応力の緩和が可能になるという効果が得られる。また、前記熱処理とは、熱硬化性樹脂組成物を所望の硬化状態にすることができれば特に制限はなく、90℃〜200℃で、0.2時間〜10時間程度の熱処理を行うことを言う。前記熱処理として、例えば、150℃で2時間の加熱を行えばよい。
【0062】
貯蔵弾性率が、5.00×10Paより低いと、半導体デバイス部材として硬化させた際、形状の維持が困難になり、しわなどの外観不良を引き起こす傾向にあり、また、1.50×10Paより高いと、応力の緩和が困難になり、半導体デバイス中に設けられた配線を切断することや硬化時の熱処理やその後の使用における環境温度変化によってクラックが入りやすくなり、いずれも半導体発光デバイスとしての機能を失うことがある。
【0063】
なお、貯蔵弾性率は、実施例に記載の方法で測定することができる。 また、本発明においては、上述の(A)ポリシロキサン、(B)エポキシ化合物、(C)硬化剤、および(D)硬化触媒を含む熱硬化性樹脂組成物を熱処理することにより得られる硬化物特性において重要な柔軟性を簡便に表す指標としてISO 7619に記載のデュロメータ(ショア硬さ)測定が挙げられる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物を熱処理することにより得られる硬化物については、ISO7619準拠のデュロメーター(ショア硬さ)におけるタイプDで測定した場合、ShoreD硬度が10〜45の範囲なるように、好ましくは10〜40の範囲となるように各樹脂組成物原料の組み合わせを調整することが好ましい。
このShoreD硬度が45以上である場合、応力の緩和が不十分となり、半導体デバイス用部材として用いる場合に環境温度や湿度の変化により、応力による剥れが生じたり、クラックが入りやすくなったりすることがある。一方、ShoreD硬度が10未満であると、表面に傷がつきやすくなることがあり、半導体デバイス用部材としての形状を保持しにくくなることがある。
【0064】
[半導体デバイス用部材の用途]
本発明の半導体デバイス用部材の用途は特に限定されず、各種の半導体デバイスに用いることができるが、半導体発光デバイス用部材として用いることが好ましい。半導体発光デバイス用部材としては、例えば、半導体発光素子等を封止するための部材(封止材)、ワイヤ等をリードフレーム等にボンディングする部材(ダイボンド剤)、半導体発光デバイスのパッケージの樹脂成形体を構成する部材(パッケージ材)など、各種の用途に使用することができる。用途に応じて、その他の成分を併用することができ、例えば、封止材として用いる場合は蛍光体、無機微粒子などを併用することが好ましく、ダイボンド剤と
して用いる場合は熱伝導剤、無機微粒子などを併用することが好ましく、パッケージ材として用いる場合は無機微粒子などを併用することが好ましい。
【0065】
以下、本発明の半導体デバイス用部材を封止材として用いる場合について説明する。本発明の半導体デバイス用部材は、例えば、上述の(A)ポリシロキサン、(B)エポキシ化合物、(C)硬化剤、および(D)硬化触媒を含む熱硬化性樹脂組成物に蛍光体、無機微粒子などを含有させて組成物とし、該組成物を半導体発光デバイスのパッケージのカップ内に充填後、硬化したり、適当な透明支持体上に薄層状に塗布したりすることにより、波長変換用部材として使用することができる。
【0066】
なお、蛍光体や無機微粒子などは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、蛍光体や無機微粒子の他に必要に応じてその他の成分を含有させてもよい。
(蛍光体)
蛍光体としては、後述の半導体発光素子の発する光に直接的または間接的に励起され、異なる波長の光を発する物質であれば特に制限はなく、無機系蛍光体であっても有機系蛍光体であっても用いることができる。例えば、以下に例示するような青色蛍光体、緑色蛍光体、黄色蛍光体、橙色ないし赤色蛍光体の1種または2種以上を用いることができる。
所望の発光色を得られるよう、用いる蛍光体の種類や含有量を適宜調整することが好ましい。
【0067】
<青色蛍光体>
青色蛍光体としては、発光ピーク波長が、通常420nm以上、中でも430nm以上、更には440nm以上であり、また、通常490nm以下、中でも480nm以下、更には470nm以下の範囲にあるものが好ましい。
具体的には、(Ca,Sr,Ba)MgAl1017:Eu、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO(Cl,F):Eu、(Ba,Ca,Mg,Sr)SiO:Eu、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO(Cl,F):Eu、(Ba,Ca,Sr)MgSi:Euが好ましく、(Ba,Sr)MgAl1017:Eu、(Ca,Sr,Ba)10(PO(Cl,F):Eu、BaMgSi:Euがより好ましい。
【0068】
<緑色蛍光体>
緑色蛍光体としては、発光ピーク波長が、通常500nm以上、中でも510nm以上、更には515nm以上であり、また、通常550nm以下、中でも542nm以下、更には535nm以下の範囲にあるものが好ましい。
具体的には、Y(Al,Ga)12:Ce、CaSc:Ce、Ca(Sc,Mg)Si12:Ce、(Sr,Ba)SiO:Eu、β型サイアロン、(Ba,Sr)Si12:N:Eu、SrGa:Eu、BaMgAl1017:Eu,Mnが好ましい。
【0069】
<黄色蛍光体>
黄色蛍光体としては、発光ピーク波長が、通常530nm以上、中でも540nm以上、更には550nm以上であり、また、通常620nm以下、中でも600nm以下、更には580nm以下の範囲にあるものが好適である。
黄色蛍光体としては、YAl12:Ce、(Y,Gd)Al12:Ce、(Sr,Ca,Ba,Mg)SiO:Eu、(Ca,Sr)Si:Eu、(La,Y,Gd,Lu)(Si,Ge)11:Ceが好ましい。
【0070】
<橙色ないし赤色蛍光体>
橙色ないし赤色蛍光体としては、発光ピーク波長が、通常570nm以上、中でも580nm以上、更には585nm以上であり、また、通常780nm以下、中でも700nm以下、更には680nm以下の範囲にあるものが好ましい。
具体的には、(Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O):Eu、(Sr,Ba)SiO:Eu、(Ca,Sr)S:Eu、(La,Y)S:Eu、Eu(ジベンゾイルメタン)・1,10−フェナントロリン錯体等のβ−ジケトン系Eu錯体、カルボン酸系Eu錯体、KSiF:Mnが好ましく、(Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Sr,Ca)AlSi(N,O):Eu、(La,Y)S:Eu、KSiF:Mnがより好ましい。
また、橙色蛍光体としては、(Sr,Ba)SiO:Eu、(Sr,Ba)SiO:Eu、(Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu、(Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O):Ceが好ましい。
【0071】
(無機微粒子)
無機微粒子(フィラー)の種類としては、シリカ、チタン酸バリウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化イットリウムなどの無機酸化物粒子やダイヤモンド粒子が例示されるが、目的に応じて他の物質を選択することもでき、これらに限定されるものではない。無機微粒子を含有させることで光学的特性や作業性を向上させることができる。混合する無機微粒子の種類は目的に応じて選択すればよい。
【0072】
無機微粒子の形態は粉体状、スラリー状等、目的に応じいかなる形態でもよいが、透明性を保つ必要がある場合は、本発明の半導体発光デバイス用部材と屈折率を同等としたり、水系・溶媒系の透明ゾルとして半導体発光デバイス用部材形成液に加えたりすることが好ましい。
これらの無機微粒子(一次粒子)の重量平均メジアン径(D50)は特に限定されないが、蛍光体粒子の1/10以下程度であることが好ましい。具体的には、目的に応じて以下の重量平均メジアン径(D50)のものが用いられる。
【0073】
例えば、無機粒子を光散乱材として用いるのであれば、その重量平均メジアン径(D50)は0.1〜10μmが好適である。また、例えば、無機微粒子を骨材として用いるのであれば、その重量平均メジアン径(D50)は1nm〜10μmが好適である。また、例えば、無機微粒子を増粘剤(チキソ剤)として用いるのであれば、その重量平均メジアン径(D50)は10〜100nmが好適である。また、例えば、無機粒子を屈折率調整剤として用いるのであれば、その重量平均メジアン径(D50)は1〜10nmが好適である。
【0074】
また、分散性を改善するためにシランカップリング剤などの表面処理剤で表面処理されていてもよい。
本発明の半導体発光デバイス用部材における無機粒子の含有率は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、その適用形態により自由に選定できる。例えば、無機粒子を光散乱剤として用いる場合は、その含有率は0.01〜10重量%が好適である。また、例えば、無機粒子を骨材として用いる場合は、その含有率は1〜50重量%が好適である。また、例えば、無機粒子を増粘剤(チキソ剤)として用いる場合は、その含有率は0.1〜20重量%が好適である。また、例えば、無機粒子を屈折率調整剤として用いる場合は、その含有率は10〜80重量%が好適である。無機粒子の量が少なすぎると所望の効果が得られなくなる可能性があり、多すぎると硬化物の密着性、透明性、硬度等の諸特性に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0075】
[半導体発光デバイス]
本発明の発光体発光デバイスは、半導体発光素子を有し、且つ、少なくとも本発明の半導体発光デバイス用部材を使用している他は、その構成は制限されず、公知の装置構成を任意にとることが可能である。装置構成の具体例については後述する。
本発明の発光体発光デバイスにおける本発明の半導体発光デバイス用部材の使用方法に特に制限はないが、上述の通り封止材、ダイボンド剤等として用いることができる。上述の(A)ポリシロキサン、(B)エポキシ化合物、(C)硬化剤、および(D)硬化触媒を含む熱硬化性樹脂組成物は、通常は液状であるので、必要に応じて硬化させて用いることが好ましい。前記熱硬化性樹脂組成物を目的とする形状を有する型に入れた状態で硬化させてもよいし、前記熱硬化性樹脂組成物を目的とする部位に塗布した状態で硬化を行うことにより、目的とする部位に直接、本発明の半導体発光デバイス用部材を形成することができる。
【0076】
また、半導体発光素子としては、特に制限はないが、発光ダイオード(LED)やレーザーダイオード(LD)等が使用できる。
半導体発光素子の発光ピーク波長は、上述の発光体の吸収波長と重複するものであれば、特に制限されず、幅広い発光波長領域の発光体を使用することができる。通常は、紫外領域から青色領域までの発光波長を有する発光体が使用される。
【0077】
半導体発光素子の発光ピーク波長の具体的数値としては、通常300nm以上、好ましくは330nm以上、より好ましくは360nm以上であり、また、通常510nm以下、好ましくは480nm以下、より好ましくは450nm以下の発光ピーク波長を有する
発光体を使用することが可能である。本発明の半導体発光デバイス部材は、高いガスバリア性と半導体発光デバイス用パッケージへの密着性を両立させるため、エポキシ基やフェニル基などの有機官能基あるいは有機化合物を導入しているため、耐光性の観点から、青色領域に発光を有する半導体発光素子との組み合わせが好ましいことから、430nm以上470nmの波長範囲に発光ピークを有する半導体発光素子との組み合わせが特に好ましい。
【0078】
中でも、半導体発光素子としては、GaN系化合物半導体を使用したGaN系LEDやLDが好ましい。なぜなら、GaN系LEDやLDは、この領域の光を発するSiC系LED等に比し、発光出力や外部量子効率が格段に大きく、前記蛍光体と組み合わせることによって、低電力で非常に明るい発光が得られるからである。例えば、20mAの電流負荷に対し、通常GaN系LEDやLDはSiC系の100倍以上の発光強度を有する。GaN系LEDやLDとしては、AlGaN発光層、GaN発光層又はInGaN発光層を有しているものが好ましい。中でも、発光強度が非常に高いことから、GaN系
LEDとしては、InGaN発光層を有するものが特に好ましく、InGaN層とGaN層との多重量子井戸構造のものがさらに好ましい。
【0079】
なお、上記においてX+Yの値は通常0.8〜1.2の範囲の値である。GaN系LEDにおいて、これら発光層にZnやSiをドープしたものやドーパント無しのものが発光特性を調節する上で好ましいものである。
GaN系LEDはこれら発光層、p層、n層、電極、及び基板を基本構成要素としたものであり、発光層をn型とp型のAlGaN層、GaN層、又はInGaN層などでサンドイッチにしたヘテロ構造を有しているものが、発光効率が高くて好ましく、更にヘテロ構造を量子井戸構造にしたものが、発光効率が更に高いため、より好ましい。
【0080】
なお、半導体発光素子は、1個のみを用いてもよく、2個以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
[半導体発光デバイスの実施形態]
半導体発光装置は、例えば図1に示す様に、半導体発光素子1、樹脂成形体2、ボンディングワイヤ3、蛍光体含有部(波長変換部)4、リードフレーム5等から構成される。
なお、本明細書においてリードフレーム5等の導電性材料と絶縁性の樹脂成形体からなるものを、パッケージと称することがある。
【0081】
半導体発光素子1は、近紫外領域の波長を有する光を発する近紫外半導体発光素子、紫領域の波長の光を発する紫半導体発光素子、青領域の波長の光を発する青色半導体発光素子などを用いることが可能であり、300nm以上520nm以下の波長を有する光を発する。図1においては半導体発光素子が1つのみ搭載されているが、複数個の半導体発光素子を線状に、あるいは平面状に配置することも可能である。半導体発光素子1を平面状に配置することで、面照明とすることができ、このような実施形態はより出力を強くしたい場合に好適である。
【0082】
パッケージを構成する樹脂成形体2は、リードフレーム5と共に成形されていてもよい。パッケージの形状は特段限定されず平面型でもカップ型でもよい。本発明の発光デバイス用部材は、この樹脂成形体2として用いることもできる。また、本発明の驚くべき効果の1つに、エポキシ基を有するポリシロキサンとエポキシ化合物を併用することにより、はじめて半導体発光デバイス用パッケージの材質として使用されているポリフタルアミドに対する密着性が非常に高くなることが確認されたことが挙げられる。そこで、発光デバイス用部材を蛍光体含有部に用いる場合は、パッケージを構成する樹脂成形体の材質をポリフタルアミドとすることで高い密着性を発現し、長期にわたる信頼性を確保できるという観点から好ましい。
【0083】
リードフレーム5は導電性の金属からなり、半導体発光装置外から電源を供給し、半導体発光素子1に通電する役割を果たす。
ボンディングワイヤ3は、半導体発光素子1をパッケージに固定する役割を有する。また、半導体発光素子1が電極となるリードフレームと接触していない場合には、導電性のボンディングワイヤ3が半導体発光素子1への電源供給の役割を担う。ボンディングワイヤ3は、リードフレーム5に圧着し、熱及び超音波の振動を与えることで接着させる。本発明の発光デバイス用部材は、このボンディングワイヤの接着に用いるダイボンド剤としても用いることができる。
【0084】
パッケージを構成する樹脂成形体2は、半導体発光素子1が搭載され、蛍光体を混合した蛍光体含有部(波長変換部)4により封止されている。
本発明の半導体発光デバイス用部材は、封止材として蛍光体含有部4に好適に用いることができる。蛍光体含有部4は、例えば、半導体発光デバイス用部材形成液に蛍光体、無機微粒子等を混合し、必要に応じて硬化させることで得ることができる。蛍光体含有部4に含まれる成分として本発明の半導体発光デバイス用部材を選択しない場合は、通常封止材に用いられることが知られている透光性の樹脂を適宜選択すればよく、具体的にはエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂などが挙げられ、シリコーン樹脂を用いることが好ましい。なお、これらの透光性の樹脂と、本発明の半導体発
光デバイス用部材とを併用してもよい。
【0085】
蛍光体は半導体発光素子1からの励起光を変換し、励起光と波長の異なる可視光を発する。蛍光体含有部4に含まれる蛍光体は、半導体発光素子1の励起光の波長に応じ、適宜選択される。白色光を発する半導体発光装置(白色LED)において、青色光を発する半導体発光素子を励起光源とする場合には、緑色及び赤色の蛍光体を蛍光体層に含ませることで白色光を生成することができる。紫色光を発する半導体発光素子の場合には、青色及び黄色の蛍光体を蛍光体層に含ませること、または青色、緑色及び赤色の蛍光体を蛍光体層に含ませることで白色光を生成することができる。
【0086】
[半導体発光デバイスの用途]
本発明の発光装置の用途は特に制限されず、通常の発光装置が用いられる各種の分野に使用することが可能であるが、演色性が高い、及び色再現範囲が広いことから、中でも照明装置や画像表示装置の光源として、とりわけ好適に用いられる。
【実施例】
【0087】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、それらは本発明の説明を目的とするものであって、本発明をこれらの態様に限定することを意図したものではない。
[1]測定方法
[1−1]ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定
硬化性組成物の重量平均分子量Mwおよび数平均分子量Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより下記条件で測定し、標準ポリスチレン換算値として示した。また、ポリシロキサンの1.0質量%テトラヒドロフラン(THF)溶液を調製し、その後、0.45μmのフィルターにて濾過したものを測定試料溶液とした。 装置: 2695(本体)−2410(RIユニット)(Waters社製)
カラム: KF-G + KF−602.5 + KF−603 + KF−604(昭和電工社製)
溶離液: THF、流量0.7mL/min、サンプル濃度1.0%、注入量10μL
【0088】
[1−2]エポキシ当量
以下の操作と算出法により求めた。
各実施例および比較例で用いる(A)ポリシロキサン約0.5gを2−プロパノール50mlに溶解した。この溶液に、塩酸/2−プロパノール混合溶液(体積比1:4)25ml、クレゾールレッドを添加した後、0.2規定水酸化ナトリウムにて滴定し、反応系内が赤色から黄色になり、紫色に変化した点を当量点とした。当量点より、(A)ポリシロキサンのエポキシ当量を以下の式に従って算出した。
【0089】
エポキシ当量(g/当量)=(W/(Vr−V))×(1000/0.2)

W:試料の重量(g)
Vr:塩酸/2−プロピルアルコール混合溶液25mlの滴定に必要な0.2N水酸化ナトリウムの溶液量(mL)
V:滴定量(mL)[1−3]デュロメーター(ShoreD硬度)測定
実施例及び比較例の半導体デバイス用部材(熱硬化性組成物)を80℃で1時間、さらに150℃で1時間熱処理して硬化させた硬化物について、高分子計器株式会社製アスカーゴム硬度計タイプDを用いて硬度測定を行った。
【0090】
[1−4]密着性評価方法
密着性評価方法
(1)実施例及び比較例の半導体デバイス用部材の硬化前の加水分解・重縮合液(熱硬化性樹脂組成物)を直径9mm、凹部の深さ1mmのAgメッキ表面のポリフタルアミド製カップに滴下したものについて、100℃にセットした熱風乾燥機内に0.5時間静置後、150℃に昇温後、さらに2時間静置することで硬化させて測定用サンプル(半導体デバイス用部材)を作製した。
【0091】
(2)厚さ1mm、縦25mm、横70mmのアルミ板に放熱用シリコーングリースを薄く塗り、得られた測定用サンプルを並べて温度60℃、湿度95%RHの雰囲気(以下適宜、「吸湿環境」という)下で20時間吸湿させた。
(3)吸湿させた測定用サンプルを、前記(2)の吸湿環境下から取り出し、室温(20〜25℃)まで冷却させた。260℃に設定したホットプレート上に、吸湿させ冷却した測定用サンプルをアルミ板ごと戴置し、1分間保持した。この条件において、測定用サンプル実温は約50秒で260℃に達し、その後10秒間260℃に保持されることになる。
【0092】
(4)加熱後のサンプルをアルミ板ごとステンレス製、室温の冷却板上に置き、室温まで冷却させた。目視及び顕微鏡観察により、測定用サンプルの前記ポリフタルアミド製カップからの剥離、しわ、濁りの発生が認められるものは、「外観不良」とした。
[1−5]水蒸気透過性評価
得られた硬化性組成物を乾燥膜厚が1mmとなるようにアルミカップに仕込み、100℃で1時間、150℃で3時間保持して、測定用サンプルを作製した。JISZ0208を参考に、容積20cmの容器内に2.0gの塩化カルシウムを秤量し、半径5.5mmのサンプルを用いて容器を密閉した。この容器を温度60℃および湿度95%RHで保管し、24時間、または48時間経過後、試験サンプルを秤量し重量増加で評価した。
【0093】
算出式(比較例2の透過量が100となるように定義):
(水蒸気透過量)=100×(Ws×Ds)/(Wr×Dr)
Ws:サンプルの透湿による重量変化
Wr:比較例2の透湿による重量変化
Ds:サンプルの膜厚
Dr:比較例2の膜厚
なお、この水蒸気透過量(相対比)は、低い方が好ましい。
【0094】
[1−6]動的粘弾性試験
各実施例および各比較例の熱硬化性樹脂組成物について、内径50mmのアルミ製のカップに2.0g滴下したものについて、100℃にセットした熱風乾燥機内に0.5時間静置後、150℃に昇温後、さらに2時間静置することで、硬化物を得た。その硬化物について、幅5〜10mm×長さ15〜30mm×厚み0.5〜1mmのフィルムを試験用サンプルとして作成し、下記条件により−150℃〜260℃における動的粘弾性試験を行った。条件は以下の条件となる。
測定条件−
チャック間距離: 5〜20mm
昇温速度: −150℃〜260℃の温度範囲で3℃/分
測定周波数: 10Hz
測定装置: EXSTAR6000 DMS6100
【0095】
[2](A)ポリシロキサンの合成(合成例1)
Mw=740のヒドロキシ末端メチルフェニルポリシロキサン47.4g、エポキシ基含有アルコキシシランとして2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン13.0g、1mol/L塩酸水溶液3.85gを混合し、2−プロピルアルコール32.5gを加えて25℃で3時間反応させた。
得られた反応液に、2−プロピルアルコール102gと水酸化カリウムを0.443g加えた後、加熱して8時間還流操作を行った。その後、リン酸二水素ナトリウム水溶液(10質量%)で反応液を中和してから、減圧下で揮発成分を除去し、得られたポリマーをトルエン/リン酸二水素ナトリウム水溶液(10質量%)、トルエン/水層を用いて洗浄後の水が中性になるまで洗浄後、減圧下で揮発成分を除去してMw=1380のポリシロキサン(A)−1を得た。
このポリシロキサン(A)−1のエポキシ当量を評価したところ、1245g/当量であった。
【0096】
(合成例2)
Mw=3000のヒドロキシ末端ポリジフェニルジメチルシロキサン(モメンティブ株式会社製、商品名:YF3804)30.0g、エポキシ基含有アルコキシシランとして2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン3.70g、10%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液1.17gを混合し、2−プロピルアルコール33.7gを加えて、加熱して7時間還流操作を行った。
その後、得られた反応溶液を、合成例1と同様にして、中和、減圧下での揮発成分の除去、洗浄を行い、Mw=3280のポリシロキサン(A)−2を得た。
このポリシロキサン(A)−2のエポキシ当量を評価したところ、2226g/当量であった。
(合成例3)
撹拌機、温度計、滴下漏斗、還流冷却管を備えた反応容器に、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル) エチルトリメトキシシラン20.1g 、ジメチルジメトキシシラン1.36g 、ジフェニルジメトキシシラン2.80g、メチルイソブチルケトン75.0 g 、トリエチルアミン2.60 g を加え、室温で混合した。次いで、脱イオン水20.2 g を滴下漏斗より30分間かけて滴下したのち、還流下で混合しつつ、80℃で8時間反応させた。
反応終了後、得られた反応溶液から有機層を取り出し、リン酸二水素ナトリウム水溶液(10質量%)で、洗浄後の水が中性になるまで洗浄したのち、減圧下で揮発成分を除去して、Mw=1850のポリシロキサン(A)−3を得た。
このポリシロキサン(A)−3のエポキシ当量を評価したところ、247g/当量であった。
合成例1〜3で合成したポリシロキサンをそれぞれポリシロキサン(A)−1〜(A)−3とし、実施例で用いた。使用した原料等について下表にまとめて示す。
【0097】
【表1】

【0098】
[3]実施例および比較例(半導体デバイス用部材の製造)
(実施例1〜3、比較例1〜3)
以下に示す各成分を表2に示す割合で配合し、以下に示す方法にしたがって熱硬化性樹脂組成物を調製した。
【0099】
(A)ポリシロキサン、(B)エポキシ化合物、(E)添加剤(実施例1および実施例3でのみ用いた。)、(G)無機微粒子(フィラー)(比較例3では用いていない。)を、表2に記載の量を秤量し、混合し、次いで脱泡を行った。
続いて、さらに(C)硬化剤(酸無水物)、(F)酸化防止剤、(D)硬化触媒を加えて、さらに撹拌、脱泡を行った。
(各成分の詳細)
(A) ポリシロキサン
(A)−1 合成例1で作成したポリシロキサン
(A)−2 合成例2で作成したポリシロキサン
(A)−3 合成例3で作成したポリシロキサン
(B) エポキシ化合物
(B)−1 3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3′,4′−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート
(B)−2 日本化薬株式会社製エポキシ NC−3000
(B)−3 2,2−ビス[4−(グリシジルオキシ)シクロヘキシル]プロパン (三菱化学株式会社製 jER YX8000)
(C) 硬化剤
4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸/ヘキサヒドロ無水フタル酸混合物 (新日本理化株式会社製 リカシッドMH−700)
(D) 硬化触媒
メチルトリブチルホスホニウムジメチルホスフェート(日本化学工業株式会社製 ヒシコーリン PX−4MP)
なお、(E)〜(G)成分については表2に記載の通りである。
【0100】
【表2】

【0101】
[4]評価
上述の[3]のようにして得られた実施例1〜3および比較例1〜3の熱硬化性樹脂組成物、およびその硬化物を用いて[1]に示した評価方法で物性評価を行った。得られた物性評価結果については表3に示す。なお、エポキシ当量についても併せて表3に示す。
【0102】
【表3】

【0103】
(A)エポキシ基を有するポリシロキサンのエポキシ当量および(A)と(B)エポキシ化合物のエポキシ当量の合計および、150℃での貯蔵弾性率が5.00×10〜1.50×10Paの範囲内にある実施例1、2、3については、外観が良好であり、かつ、ガス透過性の指標となる水蒸気透過量も低く、ガスバリア性に優れた半導体デバイス用部材である。一方、比較例1については(A)エポキシ基を有するポリシロキサンのエポキシ当量が大きすぎるため、外観が不良であり、かつガス透過性の指標となる水蒸気透過量も高く、ガスバリア性も劣る。また、比較例2については(A)エポキシ基を有するポリシロキサンのエポキシ当量が小さすぎ、かつ150℃での貯蔵弾性率が高すぎるため、応力が緩和できず、外観が不良である。さらに比較例3については、エポキシ基を有するポリシロキサンを含まず、また、150℃での貯蔵弾性率が高すぎることから、応力が緩和できず、外観が不良である。
また、shoreD硬度が10〜45の範囲である実施例1〜3では、応力を緩和できるため、基板への密着が良く、外観も良好であるが、ShoreD硬度が45より大きい比較例1〜3では、応力が緩和しにくい。
また、次のようにしてヒートサイクル試験を行った。実施例1〜3及び比較例2で得られた熱硬化性樹脂組成物(封止材)を市販のポリフタルアミド性パッケージにポッティングし、100℃で0.5時間静置した後、150℃で2時間静置することで硬化させた。
このようにして得られた封止材液を塗布したパッケージをタバイエスペック社製小型環境試験器SH−241に入れ、「−40℃で30分間保持し、−40℃から100℃に1時間かけて昇温し、100℃で30分間保持し、100℃から−40℃に1時間かけて降温する」という温度サイクルを1サイクルとして、100サイクルの温度サイクル試験を実施した。100サイクル後にサンプルを取り出し、顕微鏡を用いてカップと封止剤液の接触部分の剥離の有無を観察した。
その結果、実施例1〜3では割れはなく、ポリフタルアミド及び金属面への密着性も良好であった。一方で、比較例2では硬化させた封止材(封止材層)に割れが生じ、基材からの剥れが見られた。
【0104】
[5]実施例(半導体デバイスの作成)
以下のようにして、実施例2で得られた熱硬化性樹脂組成物を用いて半導体デバイスを作製し、その評価を行った。
(半導体発光素子、およびパッケージ)
半導体発光素子として、サファイア基板を用いて形成された350μm角、主発光ピーク波長450nmのInGaN系LEDチップ1個を、シリコーン樹脂ベースの透明ダイボンドペーストを用いて、3528SMD型PPA樹脂パッケージのキャビティ底面上に接着した。接着後、150℃、2時間の加熱によりダイボンドペーストを硬化させたうえで、直径25μmのAu線を用いてLEDチップ側の電極とパッケージ側の電極とを接続した。ボンディングワイヤは2本とした。
【0105】
(封止材形成液)
半導体デバイス用部材(封止材)として実施例1〜3で得られた熱硬化性樹脂組成物1重量部に対し、赤色蛍光体としてCaAlSi(ON)3:Eu(三菱化学株式会社製、BR−102C)0.00650重量部と、緑色蛍光体としてβ型サイアロン(三菱化学株式会社製、BG−601B)0.0605重量部を添加し、全体が均一になるまで攪拌を行った。次いで、(D)硬化触媒としてメチルトリブチルホスホニウムジメチルホスフェート0.002重量部をさらに加えて撹拌を行い、封止材形成液とした。
【0106】
(半導体発光デバイスの作製)
前記封止材形成液4μLを、エアーディスペンサーを用いて、前記半導体発光素子を設置した半導体発光装置に注液し、100℃で0.5時間保持、次いで150℃で2時間保持して前記封止材形成液を硬化させ、半導体発光装置(白色LED)を得た。
【0107】
(半導体発光デバイスの評価)
半導体発光装置に20mAの電流を通電したところ、白色光が得られた。
【符号の説明】
【0108】
1 半導体発光素子
2 樹脂成形体
3 ボンディングワイヤー
4 蛍光体を含む封止材層(蛍光体層)
5 リードフレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)〜(D)を含む熱硬化性樹脂組成物であり、
該熱硬化性樹脂組成物に含まれる(A)ポリシロキサンと(B)エポキシ化合物のエポキシ当量の合計が600〜1500g/当量であり、
かつ、該熱硬化性樹脂組成物を熱処理することで形成される硬化物の、動的粘弾性測定による150℃における貯蔵弾性率が、5.00×10〜1.50×10Paであることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
(A)ポリシロキサンのエポキシ当量が800〜2000g/当量であり、かつ、下記式(1)で表されるポリシロキサン
(RSiO1/2a(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(O1/2 ・・・(1)
〔式(1)において、R、R、R、R、R、R、Rのうち少なくとも1つ以上がエポキシ含有基であり、エポキシ含有基以外の官能基はそれぞれ独立して1価の酸素原子、硫黄原子を含んでいてもよい炭素数1〜10の炭化水素基を示し、かつ、そのうちの10mol%以上は炭素数1〜8の置換されていてもよい芳香族基である。aは0〜0.3、bは0.2〜1.0、cは0.1〜0.7、dは0〜0.2、eはe>0の数を示し、a+b+c+d=1.0である。〕
(B) エポキシ化合物
(C) 硬化剤
(D) 硬化触媒
【請求項2】
前記熱硬化性樹脂組成物を熱処理して硬化させたときのShoreD硬度が10〜45であることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記式(1)で示される(A)ポリシロキサンの式中における(RSiO2/2)成分が、下記式(2)で表される構造からなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
(RSiO2/2(R1011SiO2/2 ・・・(2)
(式(2)において、R、Rの少なくともいずれか一方が炭素数1〜8の置換されていてもよい芳香族基であり、それ以外のR、R、R10、R11はそれぞれ独立して1価の酸素原子、硫黄原子を含んでいてもよい炭素数1〜10の炭化水素基を表す。nはn≧1、mはm≧0の数を示す。)
【請求項4】
前記式(2)が、重量平均分子量500以上のオリゴマーであることを特徴とする請求項3に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物を硬化させた硬化物よりなることを特徴とする、半導体デバイス用部材。
【請求項6】
請求項5に記載の半導体デバイス用部材を少なくとも備えてなることを特徴とする半導体発光デバイス。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2013−57001(P2013−57001A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196086(P2011−196086)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】