熱線反射膜、並びに熱線反射構造体及びその製造方法
【課題】熱線遮断性が高く、電波及び可視光を透過することができる熱線反射膜、並びに熱線反射構造体及び熱線反射構造体の製造方法の提供。
【解決手段】一の表面に、該表面を基準として複数の凹部が配列されたことによって形成された凹凸部と、該凹凸部表面に導電層とを有する熱線反射膜であって、前記凹部の深さが1μm未満であり、前記導電層の厚みが1μm以下であり、前記凹凸部が傾斜側壁を有し、前記凹部の傾斜側壁を水平面に垂直投影した投影面積Aと、前記凹部全体を水平面に垂直投影した投影面積Bとが、次式、(A/B)×100≧20%を満たす熱線反射膜である。
【解決手段】一の表面に、該表面を基準として複数の凹部が配列されたことによって形成された凹凸部と、該凹凸部表面に導電層とを有する熱線反射膜であって、前記凹部の深さが1μm未満であり、前記導電層の厚みが1μm以下であり、前記凹凸部が傾斜側壁を有し、前記凹部の傾斜側壁を水平面に垂直投影した投影面積Aと、前記凹部全体を水平面に垂直投影した投影面積Bとが、次式、(A/B)×100≧20%を満たす熱線反射膜である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱線遮断性が高く、電波及び可視光を透過することができる熱線反射膜、並びに熱線反射構造体及び熱線反射構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窓ガラスに金属薄膜を形成し、熱線を遮断することにより外部環境との熱の出入りを抑制し、空調効率を上げることが行われている。例えば、熱線遮断性の高い金属薄膜を蒸着したフィルムを窓ガラスに貼る方法が実施されている。しかし、金属薄膜は、電波も遮断してしまうため、携帯電話の電波が届きにくくなり、テレビやラジオ等が受信しにくくなるという課題がある。
前記課題を解決するため、例えば特許文献1には、凹凸構造に蒸着で導電性を遮断した熱線反射膜を2枚の透明基材中に挟みこむことにより、金属層を断続的に形成し、熱線等の光は反射させ、電波は透過させることができる熱線反射合わせ構造体について提案されている。
しかし、この提案では、凹凸部が傾斜側壁を有さず、隣接する凹部の中心間の最短距離(ピッチ)が10μm以上と大きいので、凹凸部による段差が目視で確認できてしまうと共に、高い周波数の電波の通過を阻害してしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−104793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、熱線遮断性が高く、電波及び可視光を透過することができる熱線反射膜、並びに熱線反射構造体及び熱線反射構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
<1> 一の表面に、該表面を基準として複数の凹部が配列されたことによって形成された凹凸部と、該凹凸部表面に導電層とを有する熱線反射膜であって、
前記凹部の深さが1μm未満であり、
前記導電層の厚みが1μm以下であり、
前記凹凸部が傾斜側壁を有し、前記凹部の傾斜側壁を水平面に垂直投影した投影面積Aと、前記凹部全体を水平面に垂直投影した投影面積Bとが、次式、(A/B)×100≧20%を満たすことを特徴とする熱線反射膜である。
<2> 凹部の傾斜側壁の傾斜方向と凹部の配列方向とのなす傾斜角度が、30度以上90度未満である前記<1>に記載の熱線反射膜である。
<3> 隣接する凹部の中心間の最短距離が、平均値で10μm未満である前記<1>から<2>のいずれかに記載の熱線反射膜である。
<4> 導電層の厚みが、0.5nm〜500nmである<1>から<3>のいずれかに記載の熱線反射膜である。
<5> 凹凸部上に導電層を介して平滑化層を有する前記<1>から<4>のいずれかに記載の熱線反射膜である。
<6> 基材と、該基材上に前記<1>から<5>のいずれかに記載の熱線反射膜とを有することを特徴とする熱線反射構造体である。
<7> 基材の一の表面にヒートモードの形状変化が可能な有機層を設け、該有機層に集光した光を照射することにより、傾斜側壁を有する凹凸部を形成する凹凸部形成工程と、
前記凹凸部表面に導電層を形成する導電層形成工程と、を含むことを特徴とする熱線反射構造体の製造方法である。
<8> 基材の一の表面にインプリント層を設け、該インプリント層にインプリントモールドを押し付けるインプリント法により、傾斜側壁を有する凹凸部を形成する凹凸部形成工程と、
前記凹凸部表面に導電層を形成する導電層形成工程と、を含むことを特徴とする熱線反射構造体の製造方法である。
<9> インプリントモールドが、ヒートモードの形状変化が可能な有機層に集光した光を照射して凹凸部を形成した該有機層をマスクとしてエッチングにより形成される前記<8>に記載の熱線反射構造体の製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、熱線遮断性が高く、電波及び可視光を透過することができる熱線反射膜、並びに熱線反射構造体及び熱線反射構造体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、本発明の熱線反射膜の一例を示す概略断面図である。
【図2】図2は、凹部の概略断面図と、該凹部の投影した図である。
【図3A】図3Aは、有機層の表面を平面的に見た一例を示す図である。
【図3B】図3Bは、有機層の表面を平面的に見た他の一例を示す図である。
【図3C】図3Cは、凹部が形成された有機層及び基材の一例を示す断面図である。
【図4】図4は、インプリント法により凹凸部を形成する工程を示す図である。
【図5A】図5Aは、本発明の熱線反射構造体の製造方法における凹凸部形成工程を示す模式図である。
【図5B】図5Bは、本発明の熱線反射構造体の製造方法における導電層形成工程を示す模式図である。
【図5C】図5Cは、本発明の熱線反射構造体の製造方法における平滑化層形成工程を示す模式図である。
【図6】図6は、実施例1で有機層に形成された凹部を示す電子顕微鏡写真である。
【図7】図7は、実施例1で有機層に形成された凹部の水平面への投影図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(熱線反射膜)
本発明の熱線反射膜は、凹凸部と、該凹凸部表面に導電層とを有し、平滑化層、更に必要に応じてその他の層を有してなる。
【0009】
<凹凸部>
前記凹凸部は、熱線反射膜の一の表面に、該表面を基準として複数の凹部が配列されたことによって形成されている。
ここで、図1に示すように、熱線反射膜21の一の表面20に、複数の凸部11及び凹部10が一定ピッチ(隣接する凹部の中心間の最短距離)で形成されている。この場合、凸部11と凹部10とを総称して凹凸部22とする。
前記凹凸部の断面形状は、直線的な形状に限られず、曲線的であっても構わない。
【0010】
前記凹部の深さ(凸部の高さ)は、1μm未満であり、10nm〜900nmが好ましく、50nm〜800nmがより好ましい。前記凹部の深さが、1μm以上であると、凹凸を転写などで形成する際に剥離が困難になったり、形状がくずれたりすることがある。一方、凹部が浅すぎると、導電層が導通してしまい、電波透過の効果が得られなくなることがある。
前記凹部の深さは、例えば原子間力顕微鏡(AFM)などにより測定することができる。
【0011】
前記凹凸部22は、図1に示すように、傾斜した側壁(傾斜側壁)を有しており、前記凹部の傾斜側壁の傾斜方向と前記凹部(凸部)の配列方法とのなす傾斜角度θは、30度以上90度未満であり、40度以上80度以下が好ましい。前記傾斜角度θが30度未満であると、導電層が導通してしまい、電波透過の効果が得られなくなることがあり、90度以上であると、凹凸を転写などで形成する際に剥離が困難になったり、形状がくずれたりすることがある。
前記凹部の傾斜側壁の傾斜角度θは、例えば試料を割り、その断面を走査電子顕微鏡(SEM)で観察したり、原子間力顕微鏡(AFM)などにより測定することができる。
【0012】
本発明においては、前記凹凸部が傾斜側壁を有すると共に、凹部の傾斜側壁を水平面に垂直投影した投影面積と、前記凹部全体を水平面に垂直投影した投影面積との割合が一定である。
ここで、図2上図は、凹部10の概略断面図、図2下図は、凹部10を水平面に垂直投影した図である。凹部10の傾斜側壁を水平面に垂直投影した投影面積Aは、図2下図における外周円と内周円とで囲まれた斜線部分となる。凹部全体を水平面に垂直投影した投影面積Bは外周円全体の面積となる。
前記凹部の傾斜側壁を水平面に垂直投影した投影面積Aと、前記凹部全体を水平面に垂直投影した投影面積Bとが、次式、(A/B)×100≧20%を満たし、(A/B)×100≧30%を満たすことが好ましい。前記(A/B)×100が、20%未満であると、導電層が導通してしまい、電波透過の効果が得られなくなることがある。
【0013】
前記凹凸部における隣接する凹部の中心間の最短距離(ピッチ)は、図1のPに対応し、平均値で10μm未満であることが好ましく、0.1μm〜9μmがより好ましく、1μm〜7μmが更に好ましい。前記ピッチが、10μm以上であると、目視にて凹凸パターンが目立って見えることがある。
前記ピッチは、例えば、原子間力顕微鏡(AFM)、走査型電子顕微鏡(SEM)などにより測定することができる。
【0014】
<導電層>
前記導電層は、導電材料からなり、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、適宜選択することができる。
前記導電層は、前記凹凸部表面に形成されており、通常は凹部の底辺、及び凸部の頂辺に形成されており、凹凸部の傾斜側壁には形成されていないか、形成されていても少量であることが好ましい。これにより導電層が分断され、電波透過性が向上する。
前記導電材料としては、導電性を有すれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Ni、Cu、Al、Mo、Co、Cr、Ta、Pd、Pt、Au等の各種金属、又はこれらの合金;錫ドープ酸化インジウム、アンチモンドープ酸化錫、ZnO等の酸化物などが挙げられる。
【0015】
前記導電層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば真空蒸着、スパッタリング、CVD、めっき、溶液中析出、スプレー法などが挙げられる。これらの中でも、真空蒸着、低圧力スパッタリング、スプレー法が好ましく、真空蒸着が特に好ましい。
前記導電層の厚みは、1μm以下であり、0.5nm〜500nmであることが好ましく、5nm〜500nmであることがより好ましく、10nm〜100nmであることが更に好ましい。前記導電層の厚みが、1μmを超えると、光が殆ど透過しなくなることがある。
なお、前記導電層の厚みは、凹凸部の傾斜側壁ではなく、凹部の底辺、又は凸部の頂辺における導電層の厚みを表す。
前記導電層の厚みは、例えば試料を割り、その断面を走査電子顕微鏡(SEM)で観察して測定することができる。
【0016】
−平滑化層−
前記平滑化層は、凹凸部上(導電層を有する凹凸部においては導電層上)に設けられ、前記導電層を保護し、表面を平滑化するための層である。
この場合、導電層を保護するだけであれば、平滑化層を設けることなく、例えば空気中で放置し、導電層表面を酸化させる方法があるが、更に強度を持たせるため、凹凸部上に平滑化層用組成物を塗布して平滑化層を形成することが好ましい。
【0017】
前記平滑化層用組成物は、紫外線硬化樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等の樹脂成分と溶剤とを含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
前記熱硬化性樹脂は、加熱すると重合を起こして高分子の網目構造を形成し、硬化して元に戻らなくなる樹脂を意味する。該熱硬化性樹脂の使用に際しては、流動性を有するレベルの比較的低分子の樹脂を所定の形状に成形し、その後加熱等により反応させて硬化させる。また、接着剤やパテでA液(基剤)とB液(硬化剤)を混ぜて使うタイプがあり、例えばエポキシ樹脂では、混合により重合反応が起こっている。前記熱硬化性樹脂としては、例えばフェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂(ユリア樹脂)、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、熱硬化性ポリイミドなどが挙げられる。
【0018】
前記熱可塑性樹脂は、ガラス転移温度又は融点まで加熱することによって軟らかくなり、目的の形に成形できる樹脂であり、例えば汎用プラスチック、エンジニアリング・プラスチック、スーパーエンジニアリングプラスチック、繊維強化プラスチックなどが挙げられる。
【0019】
前記汎用プラスチックとしては、例えばポリエチレン(PE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン(PS)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、テフロン(登録商標)(ポリテトラフルオロエチレン、PTFE)、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂)、AS樹脂、アクリル樹脂(PMMA)、などが挙げられる。
【0020】
前記エンジニアリング・プラスチックとしては、例えばポリアミド(PA)、ナイロン、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE、変性PPE、PPO)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、グラスファイバー強化ポリエチレンテレフタレート(GF−PET)、環状ポリオレフィン(COP)などが挙げられる。
【0021】
前記スーパーエンジニアリングプラスチックとしては、例えばポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、非晶ポリアリレート(PAR)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、熱可塑性ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)などが挙げられる。
前記繊維強化プラスチックとしては、例えばガラス繊維強化プラスチック(GFRP)、と炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、などが挙げられる。
【0022】
前記塗布方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばウェブ塗布、スピンコーティング、などが挙げられる。
【0023】
本発明の熱線反射膜は、熱線遮断性が高く、電波及び可視光を透過することができるので、そのまま窓ガラスに貼り付けてもよく、合わせガラスの中間膜に挟み込んでも構わないが、以下に説明する熱線反射構造体として用いることが特に好ましい。
【0024】
(熱反射構造体)
本発明の熱反射構造体は、基材と、該基材上に本発明の前記熱線反射膜とを有し、更に必要に応じてその他の部材を有してなる。
【0025】
−基材−
前記基材としては、その材質、形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記材質としては、金属、無機物、樹脂などが挙げられ、前記形状としては平板状などが挙げられ、前記構造としては単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、前記大きさとしては用途等に応じて適宜選択することができる。
前記金属としては、遷移金属が好ましい。該遷移金属としては、例えばNi、Cu、Al、Mo、Co、Cr、Ta、Pd、Pt、Au等の各種金属、又はこれらの合金、などが挙げられる。
前記無機物としては、例えばガラス、シリコン(Si)、石英(SiO2)などが挙げられる。
前記樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、低融点フッ素樹脂、ポリメタアクリル酸メチル(PMMA)、トリアセテートセルロース(TAC)、などが挙げられる。これらの中でも、PET、PC、TACが特に好ましい。
【0026】
−用途−
本発明の熱反射構造体は、例えば自動車、バス、トラック、電車、新幹線、飛行機、旅客機、船等の各種乗り物用窓ガラス;一般の戸建住宅、集合住宅、オフィスビス、店舗、公共施設、工場施設等の建物の開口部、間仕切り等の建材用ガラスなどの各種分野に幅広く用いることができる。
【0027】
(熱反射構造体の製造方法)
本発明の熱反射構造体の製造方法は、凹凸部形成工程と、導電層形成工程とを含み、平滑化工程、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
【0028】
<凹凸部形成工程>
前記凹凸部は、珪酸土からなる基材のように最初から凹凸部を有するものであっても構わないが、フォトリソグラフィやインプリンティングなどの方法で任意に凹凸部を形成することが好ましい。
【0029】
前記凹凸部の形成においては、基材そのものをサンドブラスト加工して凹凸部を形成しても構わないが、基材上に凹凸部を形成可能な層(有機層、インプリント層)を設けて、凹凸部を形成する以下の第1及び第2形態が好ましい。
前記凹凸部形成工程は、第1の形態では、基材の一の表面にヒートモードの形状変化が可能な有機層を設け、該有機層に集光した光を照射することにより、傾斜側壁を有する凹凸部を形成する工程である。
前記凹凸部形成工程は、第2の形態では、基材の一の表面にインプリント層を設け、該インプリント層にインプリントモールドを押し付けるインプリント法により、傾斜側壁を有する凹凸部を形成する工程である。
【0030】
−−第1形態の凹凸部の形成方法−−
前記ヒートモードの形状変化が可能な有機層は、強い光の照射により光が熱に変換されてこの熱により材料が形状変化して凹部を形成することが可能な層であり、例えば、シアニン系、フタロシアニン系、キノン系、スクワリリウム系、アズレニウム系、チオール錯塩系、メロシアニン系などを用いることができる。
好適な例としては、例えばメチン色素(シアニン色素、ヘミシアニン色素、スチリル色素、オキソノール色素、メロシアニン色素など)、大環状色素(フタロシアニン色素、ナフタロシアニン色素、ポルフィリン色素など)、アゾ色素(アゾ金属キレート色素を含む)、アリリデン色素、錯体色素、クマリン色素、アゾール誘導体、トリアジン誘導体、1−アミノブタジエン誘導体、桂皮酸誘導体、キノフタロン系色素などが挙げられる。これらの中でも、メチン色素、アゾ色素が特に好ましい。
【0031】
なお、有機層は、レーザ光源の波長に応じて適宜色素を選択したり、構造を改変することができる。
例えば、レーザ光源の発振波長が780nm付近であった場合は、ペンタメチンシアニン色素、ヘプタメチンオキソノール色素、ペンタメチンオキソノール色素、フタロシアニン色素、ナフタロシアニン色素などから選択することが有利である。
また、レーザ光源の発振波長が660nm付近であった場合は、トリメチンシアニン色素、ペンタメチンオキソノール色素、アゾ色素、アゾ金属錯体色素、ピロメテン錯体色素などから選択することが有利である。
更に、レーザ光源の発振波長が405nm付近であった場合は、モノメチンシアニン色素、モノメチンオキソノール色素、ゼロメチンメロシアニン色素、フタロシアニン色素、アゾ色素、アゾ金属錯体色素、ポルフィリン色素、アリリデン色素、錯体色素、クマリン色素、アゾール誘導体、トリアジン誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、1−アミノブタジエン誘導体、キノフタロン系色素などから選択することが有利である。
【0032】
以下、レーザ光源の発振波長が405nm付近であった場合に対し、有機層として好ましい化合物の例を挙げる。下記III−1〜III−14で表される化合物は、レーザ光源の発振波長が405nm付近であった場合の化合物である。また、レーザ光源の発振波長が780nm付近であった場合、660nm付近であった場合の好ましい化合物は、特開2008−252056号公報の段落〔0024〕〜〔0028〕に記載されている化合物が挙げられる。なお、本発明は、これらの化合物を用いた場合に限定されるものではない。
【0033】
<レーザ光源の発振波長が405nm付近であった場合の化合物例>
【化1】
【0034】
<レーザ光源の発振波長が405nm付近であった場合の化合物例>
【化2】
【0035】
また、特開平4−74690号公報、特開平8−127174号公報、特開平11−53758号公報、特開平11−334204号公報、特開平11−334205号公報、特開平11−334206号公報、特開平11−334207号公報、特開2000−43423号公報、特開2000−108513号公報、特開2000−158818号公報等に記載されている色素も好適に用いられる。
【0036】
このような色素型の有機層は、色素を、結合剤等と共に適当な溶剤に溶解して塗布液を調製し、次いで、この塗布液を、基材上に塗布して塗膜を形成した後、乾燥することにより形成できる。その際、塗布液を塗布する面の温度は、10℃〜40℃の範囲であることが好ましい。下限値が、15℃以上であることがより好ましく、20℃以上であることが更に好ましく、23℃以上であることが特に好ましい。また、上限値としては、35℃以下であることがより好ましく、30℃以下であることが更に好ましく、27℃以下であることが特に好ましい。このように被塗布面温度が上記範囲にあると、塗布ムラや塗布故障の発生を防止し、塗膜の厚みを均一にすることができる。なお、上記の上限値及び下限値は、それぞれが任意で組み合わせることができる。
ここで、有機層は、単層でも重層でもよく、重層構造の場合、塗布工程を複数回行うことによって形成される。
塗布液中の色素の濃度は、有機溶媒に対して0.3質量%以上30質量%以下で溶解することが好ましく、1質量%以上20質量%以下で溶解することがより好ましく、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノールに1質量%以上20質量%以下で溶解することが特に好ましい。
【0037】
塗布液の溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば酢酸ブチル、乳酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン;ジクロルメタン、1,2−ジクロルエタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素;ジメチルホルムアミド等のアミド;メチルシクロヘキサン等の炭化水素;テトラヒドロフラン、エチルエーテル、ジオキサン等のエーテル;エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールジアセトンアルコール等のアルコール;2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール等のフッ素系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;などが挙げられる。これらの中でも、酢酸ブチル、乳酸エチル、セロソルブアセテート、メチルエチルケトン、イソプロパノール、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノールが特に好ましい。
前記溶剤は使用する色素の溶解性を考慮して単独で、或いは二種以上を組み合わせて使用することができる。塗布液中には、更に、酸化防止剤、UV吸収剤、可塑剤、潤滑剤等各種の添加剤を目的に応じて添加してもよい。
【0038】
前記塗布方法としては、例えばスプレー法、スピンコート法、ディップ法、ロールコート法、ブレードコート法、ドクターロール法、ドクターブレード法、スクリーン印刷法等を挙げることができる。なお、生産性に優れ膜厚のコントロールが容易であるという点でスピンコート法を採用するのが好ましい。
前記有機層は、スピンコート法による形成に有利であるという点から、有機溶媒に対して0.3質量%以上30質量%以下で溶解することが好ましく、1質量%以上20質量%以下で溶解することがより好ましい。
また、色素は、熱分解温度が150℃以上500℃以下であることが好ましく、200℃以上400℃以下であることがより好ましい。
塗布の際、塗布液の温度は、23℃〜50℃であることが好ましく、24℃〜40℃であることがより好ましく、25℃〜30℃であることが更に好ましい。
【0039】
塗布液が結合剤を含有する場合、該結合剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばゼラチン、セルロース誘導体、デキストラン、ロジン、ゴム等の天然有機高分子物質;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイソブチレン等の炭化水素系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル・ポリ酢酸ビニル共重合体等のビニル系樹脂、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリビニルアルコール、塩素化ポリエチレン、エポキシ樹脂、ブチラール樹脂、ゴム誘導体、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂等の熱硬化性樹脂の初期縮合物等の合成有機高分子;を挙げることができる。
前記有機層の材料として結合剤を併用する場合に、前記結合剤の使用量は、一般に色素に対して0.01倍量〜50倍量(質量比)が好ましく、0.1倍量〜5倍量(質量比)がより好ましい。
【0040】
また、前記有機層には、該有機層の耐光性を向上させるために、種々の褪色防止剤を含有させることができる。
前記褪色防止剤としては、一般的に一重項酸素クエンチャーが用いられる。一重項酸素クエンチャーとしては、既に公知の特許明細書等の刊行物に記載のものを利用することができる。
その具体例としては、特開昭58−175693号公報、特開昭59−81194号公報、特開昭60−18387号公報、特開昭60−19586号公報、特開昭60−19587号公報、特開昭60−35054号公報、特開昭60−36190号公報、特開昭60−36191号公報、特開昭60−44554号公報、特開昭60−44555号公報、特開昭60−44389号公報、特開昭60−44390号公報、特開昭60−54892号公報、特開昭60−47069号公報、特開昭63−209995号公報、特開平4−25492号公報、特公平1−38680号公報、特公平6−26028号公報等の各公報、ドイツ特許350399号明細書、日本化学会誌1992年10月号第1141頁等に記載のものなどを挙げることができる。
前記一重項酸素クエンチャー等の褪色防止剤の使用量は、色素の量に対して、0.1質量%〜50質量%の範囲が好ましく、0.5質量%〜45質量%の範囲がより好ましく、3質量%〜40質量%の範囲が更に好ましく、5質量%〜25質量%の範囲が特に好ましい。
【0041】
以上、有機層の溶剤塗布法について述べたが、有機層は、蒸着、スパッタリング、CVD等の成膜法によって形成することもできる。
【0042】
なお、色素は、後述する凹部の加工に用いるレーザ光の波長において、他の波長よりも光の吸収率が高いものが用いられる。
この色素の吸収ピークの波長は、必ずしも可視光の波長域内であるものに限定されず、紫外域や、赤外域にあるものであっても構わない。
【0043】
色素の吸収ピーク波長λaと、レーザで凹部を形成する波長λwとが、λa<λwの関係であることが好ましい。このような関係にあれば、色素の光吸収量が適切で記録効率が高まるし、きれいな凹凸形状が形成できる場合がある。また、λw<λcの関係であることが好ましい。λwは、色素が吸収する波長であるべきなので、このλwの波長よりも長波長側に発光素子の中心波長λcがあることで、発光素子の発する光が色素に吸収されず透過率が向上し、結果として発光効率が向上できるからである。
以上のような観点から、λa<λw<λcの関係にあることが最も好ましいといえる。
【0044】
なお、凹部を形成するためのレーザ光の波長λwは、大きなレーザパワーが得られる波長であればよく、例えば、有機層に色素を用いる場合は、193nm、210nm、266nm、365nm、405nm、488nm、532nm、633nm、650nm、680nm、780nm、830nmなど、1,000nm以下が好ましい。
【0045】
また、レーザ光の種類としては、ガスレーザ、固体レーザ、半導体レーザなど、どのようなレーザであってもよい。ただし、光学系を簡単にするために、固体レーザや半導体レーザを採用するのが好ましい。レーザ光は、連続光でもパルス光でもよいが、自在に発光間隔が変更可能なレーザ光を採用するのが好ましい。例えば、半導体レーザを採用するのが好ましい。レーザを直接オンオフ変調できない場合は、外部変調素子で変調するのが好ましい。
【0046】
また、レーザパワーは、加工速度を高めるためには高い方が好ましい。ただし、レーザパワーを高めるにつれ、スキャン速度(レーザ光で有機層を走査する速度)を上げなければならない。そのため、レーザパワーの上限値は、スキャン速度の上限値を考慮して、100Wが好ましく、10Wがより好ましく、5Wが更に好ましく、1Wが特に好ましい。また、レーザパワーの下限値は、0.1mWが好ましく、0.5mWがより好ましく、1mWが更に好ましい。
【0047】
更に、レーザ光は、発信波長幅及びコヒーレンシが優れていて、波長並みのスポットサイズに絞ることができるような光であることが好ましい。また、凹部を適正に形成するための光パルス照射条件は、光ディスクで使われているようなストラテジを採用するのが好ましい。即ち、光ディスクで使われているような、記録速度や照射するレーザ光の波高値、パルス幅などの条件を採用するのが好ましい。
【0048】
前記有機層の厚みは、後述する凹部15の深さに対応させるのがよい。
この厚みは、例えば、1nm〜10,000nmの範囲で適宜設定することができ、厚みの下限は、10nm以上が好ましく、30nm以上がより好ましい。前記厚みが薄すぎると、凹部15が浅く形成されるため、光学的な効果が得られなくなることがある。また、厚みの上限は、1,000nm以下が好ましく、500nm以下がより好ましい。前記厚みが厚すぎると、大きなレーザパワーが必要になるとともに、深い穴を形成することが困難になることがあり、更には、加工速度が低下することがある。
【0049】
また、前記有機層の厚みtと、凹部の直径dとは、以下の関係であることが好ましい。即ち、前記有機層の厚みtの上限値は、t<10dを満たす値とするのが好ましく、t<5dを満たす値とするのがより好ましく、t<3dを満たす値とするのが更に好ましい。また、有機層の厚みtの下限値は、t>d/100を満たす値とするのが好ましく、t>d/10を満たす値とするのがより好ましく、t>d/5を満たす値とするのが更に好ましい。このように凹部の直径dとの関係で有機層の厚みtの上限値及び下限値を設定する理由は、前記した理由と同様である。
【0050】
前記有機層を形成するときは、色素を適当な溶剤に溶解又は分散して塗布液を調製した後、この塗布液をスピンコート、ディップコート、エクストルージョンコートなどの塗布法により基材の表面に塗布することにより形成することができる。
【0051】
前記有機層には、周期的に複数の凹部が形成されている。凹部は、有機層に集光した光を照射することで、該照射部分を変形(消失による変形を含む)させて形成されたものである。
【0052】
なお、凹部が形成される原理は、以下の通りとなっている。
前記有機層に、材料の光吸収がある波長(材料で吸収される波長)のレーザ光を照射すると、有機層によってレーザ光が吸収され、この吸収された光が熱に変換され、光の照射部分の温度が上昇する。これにより、有機層が、軟化、液化、気化、昇華、分解などの化学変化乃至物理変化を起こす。そして、このような変化を起こした材料が移動又は/及び消失することで、凹部が形成される。
【0053】
なお、凹部の形成方法としては、例えば、ライトワンス光ディスクや追記型光ディスクなどで公知となっているピットの形成方法を適用することができる。具体的には、例えば、ピットサイズによって変化するレーザの反射光の強度を検出し、この反射光の強度が一定となるようにレーザの出力を補正することで、均一なピットを形成するといった、公知のランニングOPC技術(特許第3096239号公報)を適用することができる。
【0054】
また、前記したような有機層の気化、昇華又は分解は、その変化の割合が大きく、急峻であることが好ましい。具体的には、色素の気化、昇華又は分解時の示差熱天秤(TG−DTA)による質量減少率は、5%以上であることが好ましく、10%以上がより好ましく、20%以上が更に好ましい。また、色素の気化、昇華又は分解時の示差熱天秤(TG−DTA)による質量減少の傾き(昇温1℃あたりの質量減少率が0.1%/℃以上であることが好ましく、0.2%/℃以上がより好ましく、0.4%/℃以上が更に好ましい。
【0055】
また、軟化、液化、気化、昇華、分解などの化学又は/及び物理変化の転移温度は、その上限値が、2,000℃以下であることが好ましく、1,000℃以下であることがより好ましく、500℃以下であることが更に好ましい。前記転移温度が高すぎると、大きなレーザパワーが必要となることがある。また、転移温度の下限値は、50℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましく、150℃以上であることが更に好ましい。前記転移温度が低すぎると、周囲との温度勾配が少ないため、明瞭な穴エッジ形状を形成することができなくなる場合がある。
【0056】
図3Aは、有機層を平面的に見た一例の図であり、図3Bは、有機層を平面的に見た他の一例の図であり、図3Cは、基材及び有機層の断面図である。図3Aに示すように、凹部15は、ドット状に形成され、このドットが格子状に配列されたものを採用することができる。また、図3Bに示すように、凹部15は、細長い溝状に形成され、これが断続的につながったものでもよい。更に、図示は省略するが、連続した溝形状として形成することもできる。
【0057】
隣接する凹部15同士のピッチPは、発光体であるLED素子10が発光する光の中心波長λcの0.01〜100倍である。
【0058】
凹部15のピッチPは、中心波長λcの0.05倍〜20倍が好ましく、0.1倍〜5倍がより好ましく、0.5倍〜2倍が更に好ましい。具体的には、ピッチPの下限値は、中心波長λcの0.01倍以上が好ましく、0.05倍以上がより好ましく、0.1倍以上が更に好ましく、0.2倍以上が特に好ましい。また、ピッチPの上限値は、中心波長λcの100倍以下が好ましく、50倍以下がより好ましく、10倍以下が更に好ましく、5倍以下が特に好ましい。
【0059】
凹部15の直径又は溝の幅は、中心波長λcの0.005倍〜25倍が好ましく、0.025倍〜10倍がより好ましく、0.05倍〜2.5倍が更に好ましく、0.25倍〜2倍が特に好ましい。
ここでいう直径又は溝の幅は、凹部15の半分の深さにおける大きさ、いわゆる半値幅である。
【0060】
凹部15の直径又は溝の幅は、上記の範囲で適宜設定することができるが、発光面18から離れるにつれ、巨視的に徐々に屈折率が小さくなるように、ピッチPの大きさに応じて調整するのが好ましい。即ち、ピッチPが大きい場合には、凹部15の直径又は溝の幅も大きくし、ピッチPが小さい場合には、凹部15の直径又は溝の幅も小さくするのが好ましい。この観点から、直径又は溝の幅は、ピッチPに対して2分の1程度の大きさであるのが好ましく、例えば、ピッチPの20%〜80%が好ましく、30%〜70%がより好ましく、40%〜60%が更に好ましい。
【0061】
凹部15の深さは、中心波長λcの0.01倍〜20倍が好ましく、0.05倍〜10倍がより好ましく、0.1倍〜5倍が更に好ましく、0.2倍〜2倍が特に好ましい。
【0062】
−−第2形態の凹凸部の形成方法−−
前記第2形態の凹凸部の形成方法であるインプリント方法には、熱ナノインプリント方式と、光ナノインプリント方式とがある。
前記熱ナノインプリント方式は、基体の表面に形成されたインプリント層にインプリントモールドの複数の凸部を押し当てて凹凸パターンを形成する。ここでは、系を前記インプリント層のガラス転移温度(Tg)付近に維持しておき、転写後、インプリント層に含まれる熱可塑性樹脂のガラス転移温度よりも低下することにより硬化する。インプリントモールドを剥離すると、インプリント層に凹凸パターンが形成される。
【0063】
前記光インプリント方式は、光透過性を有し、インプリントモールドとして機能する強度を有する材料(例えば、石英(SiO2)や、有機樹脂(PET、PEN、ポリカーボネート、低融点フッ素樹脂)等)からなるインプリントモールドを用いてレジスト凹凸パターンを形成する。
その後、少なくとも光硬化性樹脂を含むインプリント組成物からなるインプリント層に紫外線等を照射して転写されたパターンを硬化させる。なお、パターニング後であってモールドモールドと基体とを剥離した後に紫外線を照射して硬化してもよい。
【0064】
前記インプリントモールドとしては、ヒートモードの形状変化が可能な有機層に集光した光を照射して凹凸部を形成した該有機層をマスクとしてエッチングにより形成されたものが、傾斜側壁を有する凹凸部を形成する上で好ましい。
【0065】
ここで、図4は、インプリント方法により凹凸部を形成する方法を示す工程図である。
図4のAに示すように、アルミニウム、ガラス、シリコン、石英、又はシリコン等の基板40上に、ポリメタアクリル酸メチル(PMMA)等のインプリントレジスト液を塗布してなるインプリント層24を有する基板に対して、表面に傾斜側壁を有する凹凸部が形成されたインプリントモールド1を押し当てる。
【0066】
次に、図4のBに示すように、インプリント層24にインプリントモールド1を押し当てた際には、系を前記インプリントレジスト液のガラス転移温度(Tg)付近に維持しておき、転写後、インプリント層24が前記インプリントレジスト液のガラス転移温度よりも低下することにより硬化する。また、必要に応じて加熱又はUV照射により硬化処理を行ってもよい。これにより、インプリントモールド1上に形成された傾斜側壁を有する凹凸部がインプリント層24に転写される。
【0067】
次に、図4のCに示すように、インプリントモールド1を剥離すると、インプリント層24に傾斜側壁を有する凹凸部が形成される。
【0068】
<導電層形成工程>
前記導電層形成工程は、前記凹凸部表面に導電層を形成する工程である。
前記導電層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば真空蒸着、スパッタリング、CVD、めっき、溶液中析出、スプレー法などが挙げられる。これらの中でも、真空蒸着、低圧力スパッタリング、スプレー法が好ましく、真空蒸着が特に好ましい。
【0069】
前記真空蒸着としては、電子ビーム蒸着、イオンプレーティングなどが挙げられる。
前記スパッタリングとしては、低圧力成膜:被成膜面圧力が0.1Pa以下が好ましく、0.01Pa以下がより好ましく、0.001Pa以下が更に好ましい。被成膜面エリアのみを圧力下げるか、イオンビームスパッタのような方法により実現できる。高圧力成膜:成膜時圧力を上げ、凸部へ選択的に成膜される方法も好ましい。圧力として0.5Pa以上が好ましく、5Pa以上がより好ましい。
前記真空蒸着は、表面に凹凸部が形成された基材の該凹凸部側を真空蒸着方向に向けて、該基材の鉛直方向に行うことが好ましい。これにより、凹凸部表面(特に凹凸部の凹部の底辺及び凸部の頂辺)に厚みが1μm以下の導電層を効率よく形成することができる。
【0070】
−平滑化工程−
前記平滑化工程は、凹凸部上(導電層を有する凹凸部においては導電層上)に平滑化層を形成する工程である。
前記平滑化層は、平滑化層組成物を、ウェブ塗布、スピンコーティングすることにより形成することができる。
【0071】
ここで、本発明の熱線反射構造体の製造方法の一例について、図5A〜図5Cを参照して説明する。
図5Aは、基材の一の表面に、傾斜側壁を有する凹凸部を形成する凹凸部形成工程を示す図である。凹凸部の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択されるが、ヒートモードの形状変化が可能な有機層に集光した光を照射することで凹凸部を形成する方法、ナノインプリント方法などが挙げられる。
図5Bは、前記凹凸部表面に導電層を形成する導電層形成工程を示す図である。表面に凹凸部が形成された基材の該凹凸部側を真空蒸着装置4に向けて、該基材の鉛直方向に対して真空蒸着することにより、凹凸部表面に導電層を形成できる。
図5Cは、凹凸部上に平滑化層を形成する平滑化層形成工程を示す図である。
【0072】
本発明の熱線反射構造体の製造方法によれば、本発明の前記熱線反射構造体を効率よく製造することができる。
【実施例】
【0073】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0074】
(実施例1)
50mm×50mm×0.5mmのガラス基板を用い、該ガラス基板上に、下記構造式で表されるオキソノール有機物45mgを、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール1mlに溶解した溶液を、スピンコーターを用いて回転数300rpmで塗布し、その後回転数1,000rpmで乾燥させ、厚み220nmの有機層を形成した。
【化3】
【0075】
次に、基板上の有機層に、NEO1000(パルステック工業株式会社製)にて、5m/s、15mW、円周方向及び半径方向とも1μmピッチで、レーザ照射を行った。これにより、表面に凹部が形成された有機層を有する基板が得られた。
得られた表面に凹部が形成された有機層を有する基板をAFMで測定したところ、凹部の深さは200nm、隣接する凹部の中心間の最短距離(ピッチ)は1μmであった。凹部の傾斜側壁の傾斜角度は65度であった。
図6に表面に凹部が形成された有機層を有する基板の電子顕微鏡写真を示す。また、図7は、図6の表面に凹部が形成された有機層を有する基板の凹部の一部を水平面に垂直投影した投影図である。図7から、凹部の外径は0.8μm、傾斜側壁の内径は0.5μmであり、凹部の傾斜側壁を水平面に垂直投影した投影面積Aは(0.4×0.4−0.25×0.25)×π=0.31μm2となる。一方、凹部全体を水平面に垂直投影した投影面積Bは0.4×0.4×π=0.5μm2となる。したがって、凹部の傾斜側壁を水平面に垂直に投影した投影面積Aと、凹部全体を水平面に垂直に投影した投影面積Bとの割合〔(A/B)×100〕は62%であった。
【0076】
次に、導電材料としてアルミニウムを用いた真空蒸着を、表面に凹部が形成された基板の該凹凸部側を真空蒸着装置方向に向けて、凹凸部表面にアルミニウムからなる導電層を厚みが10nmになるように形成した。以上により、実施例1の熱線反射構造体を作製した。
【0077】
(実施例2〜9及び比較例1〜5)
実施例1において、表1に示す導電層厚み、凹部間ピッチ、凹部の傾斜側壁の傾斜角度、凹部の傾斜側壁を水平面に垂直投影した投影面積Aと、凹部全体を水平面に垂直投影した投影面積Bとの割合〔(A/B)×100〕、及び凹部深さに変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜9及び比較例1〜5の熱線反射構造体を作製した。
なお、凹部深さは、有機層中のオキソノール有機物濃度を変えて調整した。凹部深さが100nmの場合(実施例6)は、オキソノール有機物濃度を24mg/mL、凹部深さが50nmの場合(実施例7)は、オキソノール有機物濃度を15mg/mLとした。凹部深さが1200nmの場合(比較例3)は、オキソノール有機物濃度を200mg/mL以上にしようとしたが溶解しなかった(作製不能)。
【0078】
次に、実施例1〜9及び比較例1〜5について、以下のようにして、可視光透過率、電波透過性、及び熱線透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0079】
<可視光透過率>
波長550nmでの可視光透過率を、Ocean optics社製USB2000にて測定した。
【0080】
<電波透過性>
約2GHzの電波透過性を、作製した熱線反射構造体で携帯電話を囲み、受信状況を1〜5の5段階で評価した。数字が大きいほど受信状況が良好であることを示し、1は、通話ができる下限で、5は電波強度が概ね5倍である。
【0081】
<目視観察評価>
目視観察により、凹凸部に起因するスジの有無を確認し、下記基準で評価した。
〔評価基準〕
◎:スジは全くわからなく、透明感が高い
○:スジは見えず、透明感あり
△:スジがやや見える
×:スジが見える。
【0082】
<熱線透過率>
波長1〜2μmの光透過率を、Ocean optics社製USB2000にて測定した。
【0083】
【表1】
*斜面部分の割合:凹部の傾斜側壁を水平面に垂直に投影した投影面積Aと、凹部全体を水平面に垂直に投影した投影面積Bとの割合〔(A/B)×100〕
*比較例4は、設計上、熱線反射構造体として機能しなかった。
*比較例5は、凹部の数を実施例1の1/4に減らした。
【0084】
(実施例10)
−ナノインプリント法−
実施例1において、ガラス基板をシリコン基板に代えた以外は、実施例1と同様にして、表面に凹凸部が形成された基板が得られた。
その後、凹凸部を形成した該有機層をマスクとしてシリコン基板をドライエッチングして、シリコン基板上に深さ200nmの凹部を形成した。なお、ドライエッチング条件は、ガスSF6、出力150Wの反応性イオンエッチング(RIE)で行った。以上により、インプリントモールドを作製した。
【0085】
次に、ガラス基板上に、SD640(大日本インキ化学工業株式会社製)を塗布し、UV硬化させて、厚み10μmのインプリント層を形成した。
作製したインプリントモールドを、ガラス基板上のインプリント層に押し付けインプリントモールドの凹凸パターンを転写し、インプリントモールドを剥離することでガラス基板上に凹凸部を形成した(ナノインプリント法)。
【0086】
次に、導電材料としてアルミニウムを用いた真空蒸着を、表面に凹部が形成された基板の該凹凸部側を真空蒸着装置方向に向けて、凹凸部表面にアルミニウムからなる導電層を厚みが10nmになるように形成した。以上により、実施例10の熱線反射構造体を作製した。
得られた実施例10の熱線反射構造体において、凹部の深さは200nm、隣接する凹部の中心の最短距離(ピッチ)は1μmであった。凹部の傾斜側壁の傾斜角度は65度であった。また、凹部の傾斜側壁を水平面に垂直に投影した投影面積Aと、凹部全体を水平面に垂直に投影した投影面積Bとの割合〔(A/B)×100〕は62%であった。
実施例10の熱線反射構造体について、実施例1と同様にして可視光透過率、電波透過性、及び熱線透過率を測定した。その結果、実施例1と同レベルの結果であった。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の熱線反射膜及び熱線反射構造体は、例えば自動車、バス、トラック、電車、新幹線、飛行機、旅客機、船等の各種乗り物用窓ガラス;一般の戸建住宅、集合住宅、オフィスビス、店舗、公共施設、工場施設等の建物の開口部、間仕切り等の建材用ガラスなどの各種分野に幅広く用いることができる。
【符号の説明】
【0088】
1 基材
2 有機層
3 導電層
4 真空蒸着装置
10 凹部
11 凸部
12 有機層
13 凸部
15 凹部
20 熱線反射膜表面
21 凹凸部
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱線遮断性が高く、電波及び可視光を透過することができる熱線反射膜、並びに熱線反射構造体及び熱線反射構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窓ガラスに金属薄膜を形成し、熱線を遮断することにより外部環境との熱の出入りを抑制し、空調効率を上げることが行われている。例えば、熱線遮断性の高い金属薄膜を蒸着したフィルムを窓ガラスに貼る方法が実施されている。しかし、金属薄膜は、電波も遮断してしまうため、携帯電話の電波が届きにくくなり、テレビやラジオ等が受信しにくくなるという課題がある。
前記課題を解決するため、例えば特許文献1には、凹凸構造に蒸着で導電性を遮断した熱線反射膜を2枚の透明基材中に挟みこむことにより、金属層を断続的に形成し、熱線等の光は反射させ、電波は透過させることができる熱線反射合わせ構造体について提案されている。
しかし、この提案では、凹凸部が傾斜側壁を有さず、隣接する凹部の中心間の最短距離(ピッチ)が10μm以上と大きいので、凹凸部による段差が目視で確認できてしまうと共に、高い周波数の電波の通過を阻害してしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−104793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、熱線遮断性が高く、電波及び可視光を透過することができる熱線反射膜、並びに熱線反射構造体及び熱線反射構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
<1> 一の表面に、該表面を基準として複数の凹部が配列されたことによって形成された凹凸部と、該凹凸部表面に導電層とを有する熱線反射膜であって、
前記凹部の深さが1μm未満であり、
前記導電層の厚みが1μm以下であり、
前記凹凸部が傾斜側壁を有し、前記凹部の傾斜側壁を水平面に垂直投影した投影面積Aと、前記凹部全体を水平面に垂直投影した投影面積Bとが、次式、(A/B)×100≧20%を満たすことを特徴とする熱線反射膜である。
<2> 凹部の傾斜側壁の傾斜方向と凹部の配列方向とのなす傾斜角度が、30度以上90度未満である前記<1>に記載の熱線反射膜である。
<3> 隣接する凹部の中心間の最短距離が、平均値で10μm未満である前記<1>から<2>のいずれかに記載の熱線反射膜である。
<4> 導電層の厚みが、0.5nm〜500nmである<1>から<3>のいずれかに記載の熱線反射膜である。
<5> 凹凸部上に導電層を介して平滑化層を有する前記<1>から<4>のいずれかに記載の熱線反射膜である。
<6> 基材と、該基材上に前記<1>から<5>のいずれかに記載の熱線反射膜とを有することを特徴とする熱線反射構造体である。
<7> 基材の一の表面にヒートモードの形状変化が可能な有機層を設け、該有機層に集光した光を照射することにより、傾斜側壁を有する凹凸部を形成する凹凸部形成工程と、
前記凹凸部表面に導電層を形成する導電層形成工程と、を含むことを特徴とする熱線反射構造体の製造方法である。
<8> 基材の一の表面にインプリント層を設け、該インプリント層にインプリントモールドを押し付けるインプリント法により、傾斜側壁を有する凹凸部を形成する凹凸部形成工程と、
前記凹凸部表面に導電層を形成する導電層形成工程と、を含むことを特徴とする熱線反射構造体の製造方法である。
<9> インプリントモールドが、ヒートモードの形状変化が可能な有機層に集光した光を照射して凹凸部を形成した該有機層をマスクとしてエッチングにより形成される前記<8>に記載の熱線反射構造体の製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、熱線遮断性が高く、電波及び可視光を透過することができる熱線反射膜、並びに熱線反射構造体及び熱線反射構造体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、本発明の熱線反射膜の一例を示す概略断面図である。
【図2】図2は、凹部の概略断面図と、該凹部の投影した図である。
【図3A】図3Aは、有機層の表面を平面的に見た一例を示す図である。
【図3B】図3Bは、有機層の表面を平面的に見た他の一例を示す図である。
【図3C】図3Cは、凹部が形成された有機層及び基材の一例を示す断面図である。
【図4】図4は、インプリント法により凹凸部を形成する工程を示す図である。
【図5A】図5Aは、本発明の熱線反射構造体の製造方法における凹凸部形成工程を示す模式図である。
【図5B】図5Bは、本発明の熱線反射構造体の製造方法における導電層形成工程を示す模式図である。
【図5C】図5Cは、本発明の熱線反射構造体の製造方法における平滑化層形成工程を示す模式図である。
【図6】図6は、実施例1で有機層に形成された凹部を示す電子顕微鏡写真である。
【図7】図7は、実施例1で有機層に形成された凹部の水平面への投影図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(熱線反射膜)
本発明の熱線反射膜は、凹凸部と、該凹凸部表面に導電層とを有し、平滑化層、更に必要に応じてその他の層を有してなる。
【0009】
<凹凸部>
前記凹凸部は、熱線反射膜の一の表面に、該表面を基準として複数の凹部が配列されたことによって形成されている。
ここで、図1に示すように、熱線反射膜21の一の表面20に、複数の凸部11及び凹部10が一定ピッチ(隣接する凹部の中心間の最短距離)で形成されている。この場合、凸部11と凹部10とを総称して凹凸部22とする。
前記凹凸部の断面形状は、直線的な形状に限られず、曲線的であっても構わない。
【0010】
前記凹部の深さ(凸部の高さ)は、1μm未満であり、10nm〜900nmが好ましく、50nm〜800nmがより好ましい。前記凹部の深さが、1μm以上であると、凹凸を転写などで形成する際に剥離が困難になったり、形状がくずれたりすることがある。一方、凹部が浅すぎると、導電層が導通してしまい、電波透過の効果が得られなくなることがある。
前記凹部の深さは、例えば原子間力顕微鏡(AFM)などにより測定することができる。
【0011】
前記凹凸部22は、図1に示すように、傾斜した側壁(傾斜側壁)を有しており、前記凹部の傾斜側壁の傾斜方向と前記凹部(凸部)の配列方法とのなす傾斜角度θは、30度以上90度未満であり、40度以上80度以下が好ましい。前記傾斜角度θが30度未満であると、導電層が導通してしまい、電波透過の効果が得られなくなることがあり、90度以上であると、凹凸を転写などで形成する際に剥離が困難になったり、形状がくずれたりすることがある。
前記凹部の傾斜側壁の傾斜角度θは、例えば試料を割り、その断面を走査電子顕微鏡(SEM)で観察したり、原子間力顕微鏡(AFM)などにより測定することができる。
【0012】
本発明においては、前記凹凸部が傾斜側壁を有すると共に、凹部の傾斜側壁を水平面に垂直投影した投影面積と、前記凹部全体を水平面に垂直投影した投影面積との割合が一定である。
ここで、図2上図は、凹部10の概略断面図、図2下図は、凹部10を水平面に垂直投影した図である。凹部10の傾斜側壁を水平面に垂直投影した投影面積Aは、図2下図における外周円と内周円とで囲まれた斜線部分となる。凹部全体を水平面に垂直投影した投影面積Bは外周円全体の面積となる。
前記凹部の傾斜側壁を水平面に垂直投影した投影面積Aと、前記凹部全体を水平面に垂直投影した投影面積Bとが、次式、(A/B)×100≧20%を満たし、(A/B)×100≧30%を満たすことが好ましい。前記(A/B)×100が、20%未満であると、導電層が導通してしまい、電波透過の効果が得られなくなることがある。
【0013】
前記凹凸部における隣接する凹部の中心間の最短距離(ピッチ)は、図1のPに対応し、平均値で10μm未満であることが好ましく、0.1μm〜9μmがより好ましく、1μm〜7μmが更に好ましい。前記ピッチが、10μm以上であると、目視にて凹凸パターンが目立って見えることがある。
前記ピッチは、例えば、原子間力顕微鏡(AFM)、走査型電子顕微鏡(SEM)などにより測定することができる。
【0014】
<導電層>
前記導電層は、導電材料からなり、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、適宜選択することができる。
前記導電層は、前記凹凸部表面に形成されており、通常は凹部の底辺、及び凸部の頂辺に形成されており、凹凸部の傾斜側壁には形成されていないか、形成されていても少量であることが好ましい。これにより導電層が分断され、電波透過性が向上する。
前記導電材料としては、導電性を有すれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Ni、Cu、Al、Mo、Co、Cr、Ta、Pd、Pt、Au等の各種金属、又はこれらの合金;錫ドープ酸化インジウム、アンチモンドープ酸化錫、ZnO等の酸化物などが挙げられる。
【0015】
前記導電層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば真空蒸着、スパッタリング、CVD、めっき、溶液中析出、スプレー法などが挙げられる。これらの中でも、真空蒸着、低圧力スパッタリング、スプレー法が好ましく、真空蒸着が特に好ましい。
前記導電層の厚みは、1μm以下であり、0.5nm〜500nmであることが好ましく、5nm〜500nmであることがより好ましく、10nm〜100nmであることが更に好ましい。前記導電層の厚みが、1μmを超えると、光が殆ど透過しなくなることがある。
なお、前記導電層の厚みは、凹凸部の傾斜側壁ではなく、凹部の底辺、又は凸部の頂辺における導電層の厚みを表す。
前記導電層の厚みは、例えば試料を割り、その断面を走査電子顕微鏡(SEM)で観察して測定することができる。
【0016】
−平滑化層−
前記平滑化層は、凹凸部上(導電層を有する凹凸部においては導電層上)に設けられ、前記導電層を保護し、表面を平滑化するための層である。
この場合、導電層を保護するだけであれば、平滑化層を設けることなく、例えば空気中で放置し、導電層表面を酸化させる方法があるが、更に強度を持たせるため、凹凸部上に平滑化層用組成物を塗布して平滑化層を形成することが好ましい。
【0017】
前記平滑化層用組成物は、紫外線硬化樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等の樹脂成分と溶剤とを含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
前記熱硬化性樹脂は、加熱すると重合を起こして高分子の網目構造を形成し、硬化して元に戻らなくなる樹脂を意味する。該熱硬化性樹脂の使用に際しては、流動性を有するレベルの比較的低分子の樹脂を所定の形状に成形し、その後加熱等により反応させて硬化させる。また、接着剤やパテでA液(基剤)とB液(硬化剤)を混ぜて使うタイプがあり、例えばエポキシ樹脂では、混合により重合反応が起こっている。前記熱硬化性樹脂としては、例えばフェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂(ユリア樹脂)、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、熱硬化性ポリイミドなどが挙げられる。
【0018】
前記熱可塑性樹脂は、ガラス転移温度又は融点まで加熱することによって軟らかくなり、目的の形に成形できる樹脂であり、例えば汎用プラスチック、エンジニアリング・プラスチック、スーパーエンジニアリングプラスチック、繊維強化プラスチックなどが挙げられる。
【0019】
前記汎用プラスチックとしては、例えばポリエチレン(PE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン(PS)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、テフロン(登録商標)(ポリテトラフルオロエチレン、PTFE)、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂)、AS樹脂、アクリル樹脂(PMMA)、などが挙げられる。
【0020】
前記エンジニアリング・プラスチックとしては、例えばポリアミド(PA)、ナイロン、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE、変性PPE、PPO)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、グラスファイバー強化ポリエチレンテレフタレート(GF−PET)、環状ポリオレフィン(COP)などが挙げられる。
【0021】
前記スーパーエンジニアリングプラスチックとしては、例えばポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、非晶ポリアリレート(PAR)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、熱可塑性ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)などが挙げられる。
前記繊維強化プラスチックとしては、例えばガラス繊維強化プラスチック(GFRP)、と炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、などが挙げられる。
【0022】
前記塗布方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばウェブ塗布、スピンコーティング、などが挙げられる。
【0023】
本発明の熱線反射膜は、熱線遮断性が高く、電波及び可視光を透過することができるので、そのまま窓ガラスに貼り付けてもよく、合わせガラスの中間膜に挟み込んでも構わないが、以下に説明する熱線反射構造体として用いることが特に好ましい。
【0024】
(熱反射構造体)
本発明の熱反射構造体は、基材と、該基材上に本発明の前記熱線反射膜とを有し、更に必要に応じてその他の部材を有してなる。
【0025】
−基材−
前記基材としては、その材質、形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記材質としては、金属、無機物、樹脂などが挙げられ、前記形状としては平板状などが挙げられ、前記構造としては単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、前記大きさとしては用途等に応じて適宜選択することができる。
前記金属としては、遷移金属が好ましい。該遷移金属としては、例えばNi、Cu、Al、Mo、Co、Cr、Ta、Pd、Pt、Au等の各種金属、又はこれらの合金、などが挙げられる。
前記無機物としては、例えばガラス、シリコン(Si)、石英(SiO2)などが挙げられる。
前記樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、低融点フッ素樹脂、ポリメタアクリル酸メチル(PMMA)、トリアセテートセルロース(TAC)、などが挙げられる。これらの中でも、PET、PC、TACが特に好ましい。
【0026】
−用途−
本発明の熱反射構造体は、例えば自動車、バス、トラック、電車、新幹線、飛行機、旅客機、船等の各種乗り物用窓ガラス;一般の戸建住宅、集合住宅、オフィスビス、店舗、公共施設、工場施設等の建物の開口部、間仕切り等の建材用ガラスなどの各種分野に幅広く用いることができる。
【0027】
(熱反射構造体の製造方法)
本発明の熱反射構造体の製造方法は、凹凸部形成工程と、導電層形成工程とを含み、平滑化工程、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
【0028】
<凹凸部形成工程>
前記凹凸部は、珪酸土からなる基材のように最初から凹凸部を有するものであっても構わないが、フォトリソグラフィやインプリンティングなどの方法で任意に凹凸部を形成することが好ましい。
【0029】
前記凹凸部の形成においては、基材そのものをサンドブラスト加工して凹凸部を形成しても構わないが、基材上に凹凸部を形成可能な層(有機層、インプリント層)を設けて、凹凸部を形成する以下の第1及び第2形態が好ましい。
前記凹凸部形成工程は、第1の形態では、基材の一の表面にヒートモードの形状変化が可能な有機層を設け、該有機層に集光した光を照射することにより、傾斜側壁を有する凹凸部を形成する工程である。
前記凹凸部形成工程は、第2の形態では、基材の一の表面にインプリント層を設け、該インプリント層にインプリントモールドを押し付けるインプリント法により、傾斜側壁を有する凹凸部を形成する工程である。
【0030】
−−第1形態の凹凸部の形成方法−−
前記ヒートモードの形状変化が可能な有機層は、強い光の照射により光が熱に変換されてこの熱により材料が形状変化して凹部を形成することが可能な層であり、例えば、シアニン系、フタロシアニン系、キノン系、スクワリリウム系、アズレニウム系、チオール錯塩系、メロシアニン系などを用いることができる。
好適な例としては、例えばメチン色素(シアニン色素、ヘミシアニン色素、スチリル色素、オキソノール色素、メロシアニン色素など)、大環状色素(フタロシアニン色素、ナフタロシアニン色素、ポルフィリン色素など)、アゾ色素(アゾ金属キレート色素を含む)、アリリデン色素、錯体色素、クマリン色素、アゾール誘導体、トリアジン誘導体、1−アミノブタジエン誘導体、桂皮酸誘導体、キノフタロン系色素などが挙げられる。これらの中でも、メチン色素、アゾ色素が特に好ましい。
【0031】
なお、有機層は、レーザ光源の波長に応じて適宜色素を選択したり、構造を改変することができる。
例えば、レーザ光源の発振波長が780nm付近であった場合は、ペンタメチンシアニン色素、ヘプタメチンオキソノール色素、ペンタメチンオキソノール色素、フタロシアニン色素、ナフタロシアニン色素などから選択することが有利である。
また、レーザ光源の発振波長が660nm付近であった場合は、トリメチンシアニン色素、ペンタメチンオキソノール色素、アゾ色素、アゾ金属錯体色素、ピロメテン錯体色素などから選択することが有利である。
更に、レーザ光源の発振波長が405nm付近であった場合は、モノメチンシアニン色素、モノメチンオキソノール色素、ゼロメチンメロシアニン色素、フタロシアニン色素、アゾ色素、アゾ金属錯体色素、ポルフィリン色素、アリリデン色素、錯体色素、クマリン色素、アゾール誘導体、トリアジン誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、1−アミノブタジエン誘導体、キノフタロン系色素などから選択することが有利である。
【0032】
以下、レーザ光源の発振波長が405nm付近であった場合に対し、有機層として好ましい化合物の例を挙げる。下記III−1〜III−14で表される化合物は、レーザ光源の発振波長が405nm付近であった場合の化合物である。また、レーザ光源の発振波長が780nm付近であった場合、660nm付近であった場合の好ましい化合物は、特開2008−252056号公報の段落〔0024〕〜〔0028〕に記載されている化合物が挙げられる。なお、本発明は、これらの化合物を用いた場合に限定されるものではない。
【0033】
<レーザ光源の発振波長が405nm付近であった場合の化合物例>
【化1】
【0034】
<レーザ光源の発振波長が405nm付近であった場合の化合物例>
【化2】
【0035】
また、特開平4−74690号公報、特開平8−127174号公報、特開平11−53758号公報、特開平11−334204号公報、特開平11−334205号公報、特開平11−334206号公報、特開平11−334207号公報、特開2000−43423号公報、特開2000−108513号公報、特開2000−158818号公報等に記載されている色素も好適に用いられる。
【0036】
このような色素型の有機層は、色素を、結合剤等と共に適当な溶剤に溶解して塗布液を調製し、次いで、この塗布液を、基材上に塗布して塗膜を形成した後、乾燥することにより形成できる。その際、塗布液を塗布する面の温度は、10℃〜40℃の範囲であることが好ましい。下限値が、15℃以上であることがより好ましく、20℃以上であることが更に好ましく、23℃以上であることが特に好ましい。また、上限値としては、35℃以下であることがより好ましく、30℃以下であることが更に好ましく、27℃以下であることが特に好ましい。このように被塗布面温度が上記範囲にあると、塗布ムラや塗布故障の発生を防止し、塗膜の厚みを均一にすることができる。なお、上記の上限値及び下限値は、それぞれが任意で組み合わせることができる。
ここで、有機層は、単層でも重層でもよく、重層構造の場合、塗布工程を複数回行うことによって形成される。
塗布液中の色素の濃度は、有機溶媒に対して0.3質量%以上30質量%以下で溶解することが好ましく、1質量%以上20質量%以下で溶解することがより好ましく、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノールに1質量%以上20質量%以下で溶解することが特に好ましい。
【0037】
塗布液の溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば酢酸ブチル、乳酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン;ジクロルメタン、1,2−ジクロルエタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素;ジメチルホルムアミド等のアミド;メチルシクロヘキサン等の炭化水素;テトラヒドロフラン、エチルエーテル、ジオキサン等のエーテル;エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールジアセトンアルコール等のアルコール;2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール等のフッ素系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;などが挙げられる。これらの中でも、酢酸ブチル、乳酸エチル、セロソルブアセテート、メチルエチルケトン、イソプロパノール、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノールが特に好ましい。
前記溶剤は使用する色素の溶解性を考慮して単独で、或いは二種以上を組み合わせて使用することができる。塗布液中には、更に、酸化防止剤、UV吸収剤、可塑剤、潤滑剤等各種の添加剤を目的に応じて添加してもよい。
【0038】
前記塗布方法としては、例えばスプレー法、スピンコート法、ディップ法、ロールコート法、ブレードコート法、ドクターロール法、ドクターブレード法、スクリーン印刷法等を挙げることができる。なお、生産性に優れ膜厚のコントロールが容易であるという点でスピンコート法を採用するのが好ましい。
前記有機層は、スピンコート法による形成に有利であるという点から、有機溶媒に対して0.3質量%以上30質量%以下で溶解することが好ましく、1質量%以上20質量%以下で溶解することがより好ましい。
また、色素は、熱分解温度が150℃以上500℃以下であることが好ましく、200℃以上400℃以下であることがより好ましい。
塗布の際、塗布液の温度は、23℃〜50℃であることが好ましく、24℃〜40℃であることがより好ましく、25℃〜30℃であることが更に好ましい。
【0039】
塗布液が結合剤を含有する場合、該結合剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばゼラチン、セルロース誘導体、デキストラン、ロジン、ゴム等の天然有機高分子物質;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイソブチレン等の炭化水素系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル・ポリ酢酸ビニル共重合体等のビニル系樹脂、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリビニルアルコール、塩素化ポリエチレン、エポキシ樹脂、ブチラール樹脂、ゴム誘導体、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂等の熱硬化性樹脂の初期縮合物等の合成有機高分子;を挙げることができる。
前記有機層の材料として結合剤を併用する場合に、前記結合剤の使用量は、一般に色素に対して0.01倍量〜50倍量(質量比)が好ましく、0.1倍量〜5倍量(質量比)がより好ましい。
【0040】
また、前記有機層には、該有機層の耐光性を向上させるために、種々の褪色防止剤を含有させることができる。
前記褪色防止剤としては、一般的に一重項酸素クエンチャーが用いられる。一重項酸素クエンチャーとしては、既に公知の特許明細書等の刊行物に記載のものを利用することができる。
その具体例としては、特開昭58−175693号公報、特開昭59−81194号公報、特開昭60−18387号公報、特開昭60−19586号公報、特開昭60−19587号公報、特開昭60−35054号公報、特開昭60−36190号公報、特開昭60−36191号公報、特開昭60−44554号公報、特開昭60−44555号公報、特開昭60−44389号公報、特開昭60−44390号公報、特開昭60−54892号公報、特開昭60−47069号公報、特開昭63−209995号公報、特開平4−25492号公報、特公平1−38680号公報、特公平6−26028号公報等の各公報、ドイツ特許350399号明細書、日本化学会誌1992年10月号第1141頁等に記載のものなどを挙げることができる。
前記一重項酸素クエンチャー等の褪色防止剤の使用量は、色素の量に対して、0.1質量%〜50質量%の範囲が好ましく、0.5質量%〜45質量%の範囲がより好ましく、3質量%〜40質量%の範囲が更に好ましく、5質量%〜25質量%の範囲が特に好ましい。
【0041】
以上、有機層の溶剤塗布法について述べたが、有機層は、蒸着、スパッタリング、CVD等の成膜法によって形成することもできる。
【0042】
なお、色素は、後述する凹部の加工に用いるレーザ光の波長において、他の波長よりも光の吸収率が高いものが用いられる。
この色素の吸収ピークの波長は、必ずしも可視光の波長域内であるものに限定されず、紫外域や、赤外域にあるものであっても構わない。
【0043】
色素の吸収ピーク波長λaと、レーザで凹部を形成する波長λwとが、λa<λwの関係であることが好ましい。このような関係にあれば、色素の光吸収量が適切で記録効率が高まるし、きれいな凹凸形状が形成できる場合がある。また、λw<λcの関係であることが好ましい。λwは、色素が吸収する波長であるべきなので、このλwの波長よりも長波長側に発光素子の中心波長λcがあることで、発光素子の発する光が色素に吸収されず透過率が向上し、結果として発光効率が向上できるからである。
以上のような観点から、λa<λw<λcの関係にあることが最も好ましいといえる。
【0044】
なお、凹部を形成するためのレーザ光の波長λwは、大きなレーザパワーが得られる波長であればよく、例えば、有機層に色素を用いる場合は、193nm、210nm、266nm、365nm、405nm、488nm、532nm、633nm、650nm、680nm、780nm、830nmなど、1,000nm以下が好ましい。
【0045】
また、レーザ光の種類としては、ガスレーザ、固体レーザ、半導体レーザなど、どのようなレーザであってもよい。ただし、光学系を簡単にするために、固体レーザや半導体レーザを採用するのが好ましい。レーザ光は、連続光でもパルス光でもよいが、自在に発光間隔が変更可能なレーザ光を採用するのが好ましい。例えば、半導体レーザを採用するのが好ましい。レーザを直接オンオフ変調できない場合は、外部変調素子で変調するのが好ましい。
【0046】
また、レーザパワーは、加工速度を高めるためには高い方が好ましい。ただし、レーザパワーを高めるにつれ、スキャン速度(レーザ光で有機層を走査する速度)を上げなければならない。そのため、レーザパワーの上限値は、スキャン速度の上限値を考慮して、100Wが好ましく、10Wがより好ましく、5Wが更に好ましく、1Wが特に好ましい。また、レーザパワーの下限値は、0.1mWが好ましく、0.5mWがより好ましく、1mWが更に好ましい。
【0047】
更に、レーザ光は、発信波長幅及びコヒーレンシが優れていて、波長並みのスポットサイズに絞ることができるような光であることが好ましい。また、凹部を適正に形成するための光パルス照射条件は、光ディスクで使われているようなストラテジを採用するのが好ましい。即ち、光ディスクで使われているような、記録速度や照射するレーザ光の波高値、パルス幅などの条件を採用するのが好ましい。
【0048】
前記有機層の厚みは、後述する凹部15の深さに対応させるのがよい。
この厚みは、例えば、1nm〜10,000nmの範囲で適宜設定することができ、厚みの下限は、10nm以上が好ましく、30nm以上がより好ましい。前記厚みが薄すぎると、凹部15が浅く形成されるため、光学的な効果が得られなくなることがある。また、厚みの上限は、1,000nm以下が好ましく、500nm以下がより好ましい。前記厚みが厚すぎると、大きなレーザパワーが必要になるとともに、深い穴を形成することが困難になることがあり、更には、加工速度が低下することがある。
【0049】
また、前記有機層の厚みtと、凹部の直径dとは、以下の関係であることが好ましい。即ち、前記有機層の厚みtの上限値は、t<10dを満たす値とするのが好ましく、t<5dを満たす値とするのがより好ましく、t<3dを満たす値とするのが更に好ましい。また、有機層の厚みtの下限値は、t>d/100を満たす値とするのが好ましく、t>d/10を満たす値とするのがより好ましく、t>d/5を満たす値とするのが更に好ましい。このように凹部の直径dとの関係で有機層の厚みtの上限値及び下限値を設定する理由は、前記した理由と同様である。
【0050】
前記有機層を形成するときは、色素を適当な溶剤に溶解又は分散して塗布液を調製した後、この塗布液をスピンコート、ディップコート、エクストルージョンコートなどの塗布法により基材の表面に塗布することにより形成することができる。
【0051】
前記有機層には、周期的に複数の凹部が形成されている。凹部は、有機層に集光した光を照射することで、該照射部分を変形(消失による変形を含む)させて形成されたものである。
【0052】
なお、凹部が形成される原理は、以下の通りとなっている。
前記有機層に、材料の光吸収がある波長(材料で吸収される波長)のレーザ光を照射すると、有機層によってレーザ光が吸収され、この吸収された光が熱に変換され、光の照射部分の温度が上昇する。これにより、有機層が、軟化、液化、気化、昇華、分解などの化学変化乃至物理変化を起こす。そして、このような変化を起こした材料が移動又は/及び消失することで、凹部が形成される。
【0053】
なお、凹部の形成方法としては、例えば、ライトワンス光ディスクや追記型光ディスクなどで公知となっているピットの形成方法を適用することができる。具体的には、例えば、ピットサイズによって変化するレーザの反射光の強度を検出し、この反射光の強度が一定となるようにレーザの出力を補正することで、均一なピットを形成するといった、公知のランニングOPC技術(特許第3096239号公報)を適用することができる。
【0054】
また、前記したような有機層の気化、昇華又は分解は、その変化の割合が大きく、急峻であることが好ましい。具体的には、色素の気化、昇華又は分解時の示差熱天秤(TG−DTA)による質量減少率は、5%以上であることが好ましく、10%以上がより好ましく、20%以上が更に好ましい。また、色素の気化、昇華又は分解時の示差熱天秤(TG−DTA)による質量減少の傾き(昇温1℃あたりの質量減少率が0.1%/℃以上であることが好ましく、0.2%/℃以上がより好ましく、0.4%/℃以上が更に好ましい。
【0055】
また、軟化、液化、気化、昇華、分解などの化学又は/及び物理変化の転移温度は、その上限値が、2,000℃以下であることが好ましく、1,000℃以下であることがより好ましく、500℃以下であることが更に好ましい。前記転移温度が高すぎると、大きなレーザパワーが必要となることがある。また、転移温度の下限値は、50℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましく、150℃以上であることが更に好ましい。前記転移温度が低すぎると、周囲との温度勾配が少ないため、明瞭な穴エッジ形状を形成することができなくなる場合がある。
【0056】
図3Aは、有機層を平面的に見た一例の図であり、図3Bは、有機層を平面的に見た他の一例の図であり、図3Cは、基材及び有機層の断面図である。図3Aに示すように、凹部15は、ドット状に形成され、このドットが格子状に配列されたものを採用することができる。また、図3Bに示すように、凹部15は、細長い溝状に形成され、これが断続的につながったものでもよい。更に、図示は省略するが、連続した溝形状として形成することもできる。
【0057】
隣接する凹部15同士のピッチPは、発光体であるLED素子10が発光する光の中心波長λcの0.01〜100倍である。
【0058】
凹部15のピッチPは、中心波長λcの0.05倍〜20倍が好ましく、0.1倍〜5倍がより好ましく、0.5倍〜2倍が更に好ましい。具体的には、ピッチPの下限値は、中心波長λcの0.01倍以上が好ましく、0.05倍以上がより好ましく、0.1倍以上が更に好ましく、0.2倍以上が特に好ましい。また、ピッチPの上限値は、中心波長λcの100倍以下が好ましく、50倍以下がより好ましく、10倍以下が更に好ましく、5倍以下が特に好ましい。
【0059】
凹部15の直径又は溝の幅は、中心波長λcの0.005倍〜25倍が好ましく、0.025倍〜10倍がより好ましく、0.05倍〜2.5倍が更に好ましく、0.25倍〜2倍が特に好ましい。
ここでいう直径又は溝の幅は、凹部15の半分の深さにおける大きさ、いわゆる半値幅である。
【0060】
凹部15の直径又は溝の幅は、上記の範囲で適宜設定することができるが、発光面18から離れるにつれ、巨視的に徐々に屈折率が小さくなるように、ピッチPの大きさに応じて調整するのが好ましい。即ち、ピッチPが大きい場合には、凹部15の直径又は溝の幅も大きくし、ピッチPが小さい場合には、凹部15の直径又は溝の幅も小さくするのが好ましい。この観点から、直径又は溝の幅は、ピッチPに対して2分の1程度の大きさであるのが好ましく、例えば、ピッチPの20%〜80%が好ましく、30%〜70%がより好ましく、40%〜60%が更に好ましい。
【0061】
凹部15の深さは、中心波長λcの0.01倍〜20倍が好ましく、0.05倍〜10倍がより好ましく、0.1倍〜5倍が更に好ましく、0.2倍〜2倍が特に好ましい。
【0062】
−−第2形態の凹凸部の形成方法−−
前記第2形態の凹凸部の形成方法であるインプリント方法には、熱ナノインプリント方式と、光ナノインプリント方式とがある。
前記熱ナノインプリント方式は、基体の表面に形成されたインプリント層にインプリントモールドの複数の凸部を押し当てて凹凸パターンを形成する。ここでは、系を前記インプリント層のガラス転移温度(Tg)付近に維持しておき、転写後、インプリント層に含まれる熱可塑性樹脂のガラス転移温度よりも低下することにより硬化する。インプリントモールドを剥離すると、インプリント層に凹凸パターンが形成される。
【0063】
前記光インプリント方式は、光透過性を有し、インプリントモールドとして機能する強度を有する材料(例えば、石英(SiO2)や、有機樹脂(PET、PEN、ポリカーボネート、低融点フッ素樹脂)等)からなるインプリントモールドを用いてレジスト凹凸パターンを形成する。
その後、少なくとも光硬化性樹脂を含むインプリント組成物からなるインプリント層に紫外線等を照射して転写されたパターンを硬化させる。なお、パターニング後であってモールドモールドと基体とを剥離した後に紫外線を照射して硬化してもよい。
【0064】
前記インプリントモールドとしては、ヒートモードの形状変化が可能な有機層に集光した光を照射して凹凸部を形成した該有機層をマスクとしてエッチングにより形成されたものが、傾斜側壁を有する凹凸部を形成する上で好ましい。
【0065】
ここで、図4は、インプリント方法により凹凸部を形成する方法を示す工程図である。
図4のAに示すように、アルミニウム、ガラス、シリコン、石英、又はシリコン等の基板40上に、ポリメタアクリル酸メチル(PMMA)等のインプリントレジスト液を塗布してなるインプリント層24を有する基板に対して、表面に傾斜側壁を有する凹凸部が形成されたインプリントモールド1を押し当てる。
【0066】
次に、図4のBに示すように、インプリント層24にインプリントモールド1を押し当てた際には、系を前記インプリントレジスト液のガラス転移温度(Tg)付近に維持しておき、転写後、インプリント層24が前記インプリントレジスト液のガラス転移温度よりも低下することにより硬化する。また、必要に応じて加熱又はUV照射により硬化処理を行ってもよい。これにより、インプリントモールド1上に形成された傾斜側壁を有する凹凸部がインプリント層24に転写される。
【0067】
次に、図4のCに示すように、インプリントモールド1を剥離すると、インプリント層24に傾斜側壁を有する凹凸部が形成される。
【0068】
<導電層形成工程>
前記導電層形成工程は、前記凹凸部表面に導電層を形成する工程である。
前記導電層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば真空蒸着、スパッタリング、CVD、めっき、溶液中析出、スプレー法などが挙げられる。これらの中でも、真空蒸着、低圧力スパッタリング、スプレー法が好ましく、真空蒸着が特に好ましい。
【0069】
前記真空蒸着としては、電子ビーム蒸着、イオンプレーティングなどが挙げられる。
前記スパッタリングとしては、低圧力成膜:被成膜面圧力が0.1Pa以下が好ましく、0.01Pa以下がより好ましく、0.001Pa以下が更に好ましい。被成膜面エリアのみを圧力下げるか、イオンビームスパッタのような方法により実現できる。高圧力成膜:成膜時圧力を上げ、凸部へ選択的に成膜される方法も好ましい。圧力として0.5Pa以上が好ましく、5Pa以上がより好ましい。
前記真空蒸着は、表面に凹凸部が形成された基材の該凹凸部側を真空蒸着方向に向けて、該基材の鉛直方向に行うことが好ましい。これにより、凹凸部表面(特に凹凸部の凹部の底辺及び凸部の頂辺)に厚みが1μm以下の導電層を効率よく形成することができる。
【0070】
−平滑化工程−
前記平滑化工程は、凹凸部上(導電層を有する凹凸部においては導電層上)に平滑化層を形成する工程である。
前記平滑化層は、平滑化層組成物を、ウェブ塗布、スピンコーティングすることにより形成することができる。
【0071】
ここで、本発明の熱線反射構造体の製造方法の一例について、図5A〜図5Cを参照して説明する。
図5Aは、基材の一の表面に、傾斜側壁を有する凹凸部を形成する凹凸部形成工程を示す図である。凹凸部の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択されるが、ヒートモードの形状変化が可能な有機層に集光した光を照射することで凹凸部を形成する方法、ナノインプリント方法などが挙げられる。
図5Bは、前記凹凸部表面に導電層を形成する導電層形成工程を示す図である。表面に凹凸部が形成された基材の該凹凸部側を真空蒸着装置4に向けて、該基材の鉛直方向に対して真空蒸着することにより、凹凸部表面に導電層を形成できる。
図5Cは、凹凸部上に平滑化層を形成する平滑化層形成工程を示す図である。
【0072】
本発明の熱線反射構造体の製造方法によれば、本発明の前記熱線反射構造体を効率よく製造することができる。
【実施例】
【0073】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0074】
(実施例1)
50mm×50mm×0.5mmのガラス基板を用い、該ガラス基板上に、下記構造式で表されるオキソノール有機物45mgを、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール1mlに溶解した溶液を、スピンコーターを用いて回転数300rpmで塗布し、その後回転数1,000rpmで乾燥させ、厚み220nmの有機層を形成した。
【化3】
【0075】
次に、基板上の有機層に、NEO1000(パルステック工業株式会社製)にて、5m/s、15mW、円周方向及び半径方向とも1μmピッチで、レーザ照射を行った。これにより、表面に凹部が形成された有機層を有する基板が得られた。
得られた表面に凹部が形成された有機層を有する基板をAFMで測定したところ、凹部の深さは200nm、隣接する凹部の中心間の最短距離(ピッチ)は1μmであった。凹部の傾斜側壁の傾斜角度は65度であった。
図6に表面に凹部が形成された有機層を有する基板の電子顕微鏡写真を示す。また、図7は、図6の表面に凹部が形成された有機層を有する基板の凹部の一部を水平面に垂直投影した投影図である。図7から、凹部の外径は0.8μm、傾斜側壁の内径は0.5μmであり、凹部の傾斜側壁を水平面に垂直投影した投影面積Aは(0.4×0.4−0.25×0.25)×π=0.31μm2となる。一方、凹部全体を水平面に垂直投影した投影面積Bは0.4×0.4×π=0.5μm2となる。したがって、凹部の傾斜側壁を水平面に垂直に投影した投影面積Aと、凹部全体を水平面に垂直に投影した投影面積Bとの割合〔(A/B)×100〕は62%であった。
【0076】
次に、導電材料としてアルミニウムを用いた真空蒸着を、表面に凹部が形成された基板の該凹凸部側を真空蒸着装置方向に向けて、凹凸部表面にアルミニウムからなる導電層を厚みが10nmになるように形成した。以上により、実施例1の熱線反射構造体を作製した。
【0077】
(実施例2〜9及び比較例1〜5)
実施例1において、表1に示す導電層厚み、凹部間ピッチ、凹部の傾斜側壁の傾斜角度、凹部の傾斜側壁を水平面に垂直投影した投影面積Aと、凹部全体を水平面に垂直投影した投影面積Bとの割合〔(A/B)×100〕、及び凹部深さに変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜9及び比較例1〜5の熱線反射構造体を作製した。
なお、凹部深さは、有機層中のオキソノール有機物濃度を変えて調整した。凹部深さが100nmの場合(実施例6)は、オキソノール有機物濃度を24mg/mL、凹部深さが50nmの場合(実施例7)は、オキソノール有機物濃度を15mg/mLとした。凹部深さが1200nmの場合(比較例3)は、オキソノール有機物濃度を200mg/mL以上にしようとしたが溶解しなかった(作製不能)。
【0078】
次に、実施例1〜9及び比較例1〜5について、以下のようにして、可視光透過率、電波透過性、及び熱線透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0079】
<可視光透過率>
波長550nmでの可視光透過率を、Ocean optics社製USB2000にて測定した。
【0080】
<電波透過性>
約2GHzの電波透過性を、作製した熱線反射構造体で携帯電話を囲み、受信状況を1〜5の5段階で評価した。数字が大きいほど受信状況が良好であることを示し、1は、通話ができる下限で、5は電波強度が概ね5倍である。
【0081】
<目視観察評価>
目視観察により、凹凸部に起因するスジの有無を確認し、下記基準で評価した。
〔評価基準〕
◎:スジは全くわからなく、透明感が高い
○:スジは見えず、透明感あり
△:スジがやや見える
×:スジが見える。
【0082】
<熱線透過率>
波長1〜2μmの光透過率を、Ocean optics社製USB2000にて測定した。
【0083】
【表1】
*斜面部分の割合:凹部の傾斜側壁を水平面に垂直に投影した投影面積Aと、凹部全体を水平面に垂直に投影した投影面積Bとの割合〔(A/B)×100〕
*比較例4は、設計上、熱線反射構造体として機能しなかった。
*比較例5は、凹部の数を実施例1の1/4に減らした。
【0084】
(実施例10)
−ナノインプリント法−
実施例1において、ガラス基板をシリコン基板に代えた以外は、実施例1と同様にして、表面に凹凸部が形成された基板が得られた。
その後、凹凸部を形成した該有機層をマスクとしてシリコン基板をドライエッチングして、シリコン基板上に深さ200nmの凹部を形成した。なお、ドライエッチング条件は、ガスSF6、出力150Wの反応性イオンエッチング(RIE)で行った。以上により、インプリントモールドを作製した。
【0085】
次に、ガラス基板上に、SD640(大日本インキ化学工業株式会社製)を塗布し、UV硬化させて、厚み10μmのインプリント層を形成した。
作製したインプリントモールドを、ガラス基板上のインプリント層に押し付けインプリントモールドの凹凸パターンを転写し、インプリントモールドを剥離することでガラス基板上に凹凸部を形成した(ナノインプリント法)。
【0086】
次に、導電材料としてアルミニウムを用いた真空蒸着を、表面に凹部が形成された基板の該凹凸部側を真空蒸着装置方向に向けて、凹凸部表面にアルミニウムからなる導電層を厚みが10nmになるように形成した。以上により、実施例10の熱線反射構造体を作製した。
得られた実施例10の熱線反射構造体において、凹部の深さは200nm、隣接する凹部の中心の最短距離(ピッチ)は1μmであった。凹部の傾斜側壁の傾斜角度は65度であった。また、凹部の傾斜側壁を水平面に垂直に投影した投影面積Aと、凹部全体を水平面に垂直に投影した投影面積Bとの割合〔(A/B)×100〕は62%であった。
実施例10の熱線反射構造体について、実施例1と同様にして可視光透過率、電波透過性、及び熱線透過率を測定した。その結果、実施例1と同レベルの結果であった。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の熱線反射膜及び熱線反射構造体は、例えば自動車、バス、トラック、電車、新幹線、飛行機、旅客機、船等の各種乗り物用窓ガラス;一般の戸建住宅、集合住宅、オフィスビス、店舗、公共施設、工場施設等の建物の開口部、間仕切り等の建材用ガラスなどの各種分野に幅広く用いることができる。
【符号の説明】
【0088】
1 基材
2 有機層
3 導電層
4 真空蒸着装置
10 凹部
11 凸部
12 有機層
13 凸部
15 凹部
20 熱線反射膜表面
21 凹凸部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の表面に、該表面を基準として複数の凹部が配列されたことによって形成された凹凸部と、該凹凸部表面に導電層とを有する熱線反射膜であって、
前記凹部の深さが1μm未満であり、
前記導電層の厚みが1μm以下であり、
前記凹凸部が傾斜側壁を有し、前記凹部の傾斜側壁を水平面に垂直投影した投影面積Aと、前記凹部全体を水平面に垂直投影した投影面積Bとが、次式、(A/B)×100≧20%を満たすことを特徴とする熱線反射膜。
【請求項2】
凹部の傾斜側壁の傾斜方向と凹部の配列方向とのなす傾斜角度が、30度以上90度未満である請求項1に記載の熱線反射膜。
【請求項3】
隣接する凹部の中心間の最短距離が、平均値で10μm未満である請求項1から2のいずれかに記載の熱線反射膜。
【請求項4】
凹凸部上に導電層を介して平滑化層を有する請求項1から3のいずれかに記載の熱線反射膜。
【請求項5】
基材と、該基材上に請求項1から4のいずれかに記載の熱線反射膜とを有することを特徴とする熱線反射構造体。
【請求項6】
基材の一の表面にヒートモードの形状変化が可能な有機層を設け、該有機層に集光した光を照射することにより、傾斜側壁を有する凹凸部を形成する凹凸部形成工程と、
前記凹凸部表面に導電層を形成する導電層形成工程と、を含むことを特徴とする熱線反射構造体の製造方法。
【請求項7】
基材の一の表面にインプリント層を設け、該インプリント層にインプリントモールドを押し付けるインプリント法により、傾斜側壁を有する凹凸部を形成する凹凸部形成工程と、
前記凹凸部表面に導電層を形成する導電層形成工程と、を含むことを特徴とする熱線反射構造体の製造方法。
【請求項8】
インプリントモールドが、ヒートモードの形状変化が可能な有機層に集光した光を照射して凹凸部を形成した該有機層をマスクとしてエッチングにより形成される請求項7に記載の熱線反射構造体の製造方法。
【請求項1】
一の表面に、該表面を基準として複数の凹部が配列されたことによって形成された凹凸部と、該凹凸部表面に導電層とを有する熱線反射膜であって、
前記凹部の深さが1μm未満であり、
前記導電層の厚みが1μm以下であり、
前記凹凸部が傾斜側壁を有し、前記凹部の傾斜側壁を水平面に垂直投影した投影面積Aと、前記凹部全体を水平面に垂直投影した投影面積Bとが、次式、(A/B)×100≧20%を満たすことを特徴とする熱線反射膜。
【請求項2】
凹部の傾斜側壁の傾斜方向と凹部の配列方向とのなす傾斜角度が、30度以上90度未満である請求項1に記載の熱線反射膜。
【請求項3】
隣接する凹部の中心間の最短距離が、平均値で10μm未満である請求項1から2のいずれかに記載の熱線反射膜。
【請求項4】
凹凸部上に導電層を介して平滑化層を有する請求項1から3のいずれかに記載の熱線反射膜。
【請求項5】
基材と、該基材上に請求項1から4のいずれかに記載の熱線反射膜とを有することを特徴とする熱線反射構造体。
【請求項6】
基材の一の表面にヒートモードの形状変化が可能な有機層を設け、該有機層に集光した光を照射することにより、傾斜側壁を有する凹凸部を形成する凹凸部形成工程と、
前記凹凸部表面に導電層を形成する導電層形成工程と、を含むことを特徴とする熱線反射構造体の製造方法。
【請求項7】
基材の一の表面にインプリント層を設け、該インプリント層にインプリントモールドを押し付けるインプリント法により、傾斜側壁を有する凹凸部を形成する凹凸部形成工程と、
前記凹凸部表面に導電層を形成する導電層形成工程と、を含むことを特徴とする熱線反射構造体の製造方法。
【請求項8】
インプリントモールドが、ヒートモードの形状変化が可能な有機層に集光した光を照射して凹凸部を形成した該有機層をマスクとしてエッチングにより形成される請求項7に記載の熱線反射構造体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2010−202497(P2010−202497A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8945(P2010−8945)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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