説明

燃料電池システム用減圧装置及びそれに用いられるベローズ

【課題】一次側の圧力が100MPa以上の高圧水素ガスの減圧に使用される減圧装置において、電磁弁の推力を可及的に小さくした燃料電池システム用減圧装置を提供する。
【解決手段】燃料電池システム用減圧装置1は、高圧の一次側ポート3と低圧の二次側ポート4とを連通する経路5の途中に弁座6、及び、該弁座と対向する反対側に貫通孔10を設け、前記弁座に離着することで前記経路を開閉する弁体7を備え、該弁体の先端側には、ソレノイド11及び二次側の圧力を受けるベローズ16の軸方向の力を弁体に作用する伝達部材17を設け、弁体の後端側と前記貫通孔と間に封止部材を設け、該封止部材が金属材料からなる多層の成形ベローズから形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システム用減圧装置及びそれに用いられるベローズに関し、特に、一次側の圧力が100MPa以上の高圧水素ガスの減圧に使用される減圧装置及びそれに用いられるベローズに関する。
【背景技術】
【0002】
高圧の流体圧力(一次側の圧力)を、それよりも低い圧力で利用したい場合に、たとえば、図8に示すような減圧弁が用いられる
この減圧弁は、高圧(タンク元圧)P1となる一次側のポートから、低圧(制御圧)P2となる二次側のポートに至る経路の途中に設けられた弁座200に着座することによって弁を閉じ、弁座200から離れることで弁を開く弁体110を備えている。この弁体110は、軸部112と、この軸部112の先端に設けられた弁本体部111とから構成される。そして、軸部112は、その一方が前記経路内であって弁座200よりも上流側の領域Rに通じるハウジング300の貫通孔301内で、往復動自在に配置されている。この軸部112が往復移動することによって、弁が開閉される。また、貫通孔301の他方は大気圧P3となる領域に通じている
可動部品である弁体110と固定部品であるハウジング300との間の摺動部には、前記上流側の領域Rの流体が貫通孔301を通って漏洩しないように、軸部112と貫通孔301との間の環状隙間を封止する必要がある。
【0003】
そこで、従来、環状隙間を封止するためOリングなどのシールリング400が設けられている(以下、「従来技術1」という。例えば、特許文献1参照。)。これにより、弁体110が往復動した場合でも、軸部112の外周面とシールリング400の内周面とが摺動し、密封性を維持することができるものである。
しかし、従来技術1の場合、一次側の圧力がきわめて高く、一次側の圧力P1と大気圧P3との差圧が非常に大きくなる場合には、軸部112とシールリング400との摩擦力も非常に大きくなる。そのため、ヒステリスの増加や、摺動部分の固着によって、減圧弁としての圧力調整機能が低下したり、弁体110を駆動するソレノイドを大型にしなければならないなどの問題があった。
【0004】
また、従来、ゴム膜などから形成されたダイアフラム、または、金属ベローズなどによって弾性圧力隔壁を形成し、可動部品と固定部品との間を封止するものが知られている(以下、「従来技術2」という。例えば、特許文献2参照)。
しかし、従来技術2におけるダイアフラム又は金属ベローズは、耐圧強度が低く、一次側の圧力では使用することは到底できなかった。
【0005】
さらに、従来、バネ性に優れた金属材料と耐蝕性に優れた金属材料の組み合わせなどのように、異なる材質の金属を組み合わせて形成したベローズが知られている(以下、「従来技術3」という。例えば、特許文献3参照)。)
しかし、従来技術3の場合、異なる材質の金属を2重、3重に組み合わせることにより、バネ性及び耐蝕性などの異なる特性を同時に備えたベローズを提供するものであって、燃料電池車用高圧水素ガス減圧弁の一次側のように100MPa以上といった高圧に用いられることを想定したものではなかった。
【0006】
ところで、高圧制御弁に用いるベローズにおいては、耐圧強度を確保しようとするとベローズの板厚を厚くする必要があるが、板厚が厚いと容易に伸縮できず、例えば、電磁力により駆動される減圧弁などに用いる場合、電磁弁の推力を大きなもにする必要があり装置が大型になるという問題があった。また、板厚の厚いベローズは耐久寿命が短いという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−148465号公報
【特許文献2】特開2005−309983号公報
【特許文献3】実願昭56−98575号(実開昭58−4848号)のマイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記した従来技術の問題を解決するためになされたものであって、第1に、一次側の圧力が100MPa以上の高圧水素ガスの減圧に使用される減圧装置において、電磁弁の推力を可及的に小さくした燃料電池システム用減圧装置を提供することを目的とするものである。
また、本発明は、第2に、100MPa以上の高圧の作動流体に対する耐圧性と、弁体の可動を容易にする伸縮のし易さを同時に備えた燃料電池システム用減圧装置に用いられるベローズを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するために本発明の燃料電池システム用減圧装置は、高圧の一次側ポートと低圧の二次側ポートとを連通する経路の途中に弁座、及び、該弁座と対向する反対側に貫通孔を設け、前記弁座に離着することで前記経路を開閉する弁体を備え、該弁体の先端側には、ソレノイド及び二次側の圧力を受けるベローズの軸方向の力を弁体に作用する伝達部材を設け、弁体の後端側と前記貫通孔と間に封止部材を設け、該封止部材が金属材料からなる多層の成形ベローズから形成されてなることを特徴としている。
【0010】
上記の特徴により、一次側の圧力が100MPa以上の高圧水素ガスの減圧に使用される減圧装置において、電磁弁の推力を可及的に小さくした燃料電池システム用減圧装置を提供することができる。
【0011】
また、本発明の燃料電池システム用減圧装置に用いられるベローズは、第1に、前記多層の成形ベローズの蛇腹部の断面形状が、半円未満の形状の山部及び谷部が交互に接続された形状であることを特徴としている。
また、本発明の燃料電池システム用減圧装置に用いられるベローズは、第2に、前記半円未満の形状の山部と谷部との間にストレート部を介在させることを特徴としている。
これらの特徴により、高圧の作動流体に対する耐圧性と、弁体の可動を容易にする伸縮のし易さを同時に備えた高圧制御弁用ベローズを得ることができる。また、耐久寿命の長い高圧制御弁用ベローズを得ることができる。さらに、Oリングを用いた場合に比較して、摺動部の漏れがなく、また、摺動部の摩擦力によるヒステリシスの増加や固着がなく、精度が良く、信頼性の高い高圧制御弁用ベローズを提供することができる。
【0012】
また、本発明の燃料電池システム用減圧装置に用いられるベローズは、第3に、上記第1又は第2の特徴において、ベローズを保持部材を介して直列に複数個、接続することを特徴としている。
この特徴により、長いベローズを製作する場合と比較してベローズの製作が容易である。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、以下のような優れた効果を奏する。
(1)本発明の燃料電池システム用減圧装置は、弁体の先端側には、ソレノイド及び二次側の圧力を受けるベローズの軸方向の力を弁体に作用する伝達部材を設け、弁体の後端側と貫通孔と間に封止部材を設け、該封止部材が金属材料からなる多層の成形ベローズから形成されてなることにより、一次側の圧力が100MPa以上の高圧水素ガスの減圧に使用される場合にも、電磁弁の推力を可及的に小さくした燃料電池システム用減圧装置を提供することができる。
【0014】
(2)本発明の燃料電池システム用減圧装置に用いられるベローズは、多層の成形ベローズの蛇腹部の断面形状が、半円未満の形状の山部及び谷部が交互に接続された形状であることにより、高圧の作動流体に対する耐圧性と、弁体の可動を容易にする伸縮のし易さを同時に備えた高圧制御弁用ベローズを得ることができる。また、耐久寿命の長い高圧制御弁用ベローズを得ることができる。さらに、Oリングを用いた場合に比較して、摺動部の漏れがなく、また、摺動部の摩擦力によるヒステリシスの増加や固着がなく、精度が良く、信頼性の高い高圧制御弁用ベローズを提供することができる。
また、本発明の燃料電池システム用減圧装置に用いられるベローズは、は、前記半円未満の形状の山部と谷部との間にストレート部を介在させることにより、山部と谷部とを滑らかに接続することができる。
【0015】
(3)本発明の燃料電池システム用減圧装置に用いられるベローズは、ベローズを保持部材を介して直列に複数個、接続することにより、長いベローズを製作する場合に比較してベローズの製作を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態1に係る燃料電池システム用減圧装置の全体を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態1に用いられるベローズの拡大断面図である。
【図3】本発明の実施形態2に係る燃料電池システム用減圧装置の全体を示す断面図である。
【図4】本発明の実施形態3に係る燃料電池システム用減圧装置の全体を示す断面図である。
【図5】本発明の実施形態4に係る燃料電池システム用減圧装置の全体を示す断面図である。
【図6】本発明の実施形態5に係る燃料電池システム用減圧装置の全体を示す断面図である。
【図7】本発明の実施形態5に用いられるベローズの拡大断面図である。
【図8】従来技術1を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る燃料電池システム用減圧装置及びそれに用いられるベローズを実施するための形態を図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれに限定されて解釈されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加えうるものである。
【0018】
〔実施形態1〕
図1は、本発明の実施形態1に係る燃料電池システム用減圧装置の全体を示す断面図である。
図1の実施形態1において、燃料電池システム用減圧装置1としては、100MPa以上の高圧水素ガスを減圧する減圧弁が示されており、ハウジング2には、高圧P1となる一次側ポート3、低圧P2となる二次側ポート4及び一次側ポート3と二次側ポート4とを連通する経路5が形成されている。経路5の途中には円形の弁座6が設けられ、該円形の弁座6に着座することによって閉状態となり、弁座6を離れることで開状態となる弁体7が備えられている。
【0019】
この弁体7は、軸部8と、この軸部8の先端側に設けられた弁本体部9とから構成される。弁体7の軸部8は、一方が一次側ポート3と二次側ポート4との経路5内に通じ、他方が大気圧領域Aに通じる貫通孔10内で、往復動自在に配置されている。
【0020】
一方、ハウジング2の一方の側には、ソレノイド11がボルトなどの固定手段により装着されている。このソレノイド11は、コイル12、磁性体で構成された略円筒状のセンターポスト13、コイル12ヘの通電により磁気的に吸引されてセンターポスト13に向かって移動するプランジャ14及びプランジャ14に固定されたロッド15を備えている。ロッド15は、センターポスト13の中心に設けられた貫通孔を挿通するようにして設けられ、その先端が二次側の圧力P2を受ける位置に配置された受圧部材としてのベローズ16に保持部材18を介して固定されている。
【0021】
弁体7の先端側に、保持部材18から弁体7側に突出する突出部17が当接しており、この突出部17は、前記二次側の圧力P2を受ける受圧部材としてのベローズ16の保持部材18に一体に設けられている。このため、弁体7は、後端側(図1の左側)に向かう推力Fを、後述するように、ソレノイド11から受けられるようになっている。また、弁体7の後端(軸部8の後端)には、弁体7の先端側に向けて付勢するバネ19が設けられている。
本実施の形態においては、突出部17がソレノイド11及びベローズ16の軸方向の力を弁体7に伝達する伝達部材の役割を果たしている。
【0022】
一次側ポート3と二次側ポート4とを連通する経路5の流体が、貫通孔10を通って大気圧領域Aに漏洩しないように封止するための弾性圧力隔壁としてのベローズ20が弁体7の後端側と貫通孔10の穿設されたシールガイド21との間に設けられている。ベローズ20の外側には一次側の圧力P1が作用し、内側には大気圧P3が作用する。
なお、大気圧領域Aについて大気圧P3が作用する例について説明しているが、万一、ベローズが破損して高圧水素が大気に漏れ出すことがないように、大気圧領域Aに加圧ガスを作用させるようにしてもよい。
図1に示す例では、封止用のベローズ20は弁体7の軸部8の周囲を包囲するように配置され、その右端が、弁本体部9の後端側に溶接などにより気密に固定され、左端が、シールガイド21の保持部22に溶接などにより気密に固定されている。
また、弁体7の受圧領域である円の径D1と、ベローズ20における外径と内径のとの平均径D2とが等しくなるように設定されている。すなわち、弁体7の受圧面積とベローズ20の受圧面積を等しくすることにより、ベローズ20に対する一次側の圧力P1の軸方向の力は相殺され、ベローズ20には径方向の圧力のみが作用することになる。
【0023】
以上のように構成される燃料電池システム用減圧装置1は、ベローズ16が受ける圧力(制御圧力)P2と推力Fによって、弁体7の動作が制御され、その結果、弁の開閉が制御される。このため、制御圧力P2を制御することができる。
具体的には、弁体7に作用する力は、一次側の圧力P1と、二次側の圧力P2と、大気圧P3と、ベローズ16が圧力P2を受けることで弁体7に作用する力と、推力Fと、封止用のベローズ20の弾性復元力と、バネ19のバネ力である。したがって、弁体7の位置は、これらの力のバランスにより定まる。一次側の圧力P1に対して二次側の圧力P2を所望の圧力に制御するには、ベローズ16の特性、推力F、封止用のベローズ20のバネ定数及びバネ19のバネ定数を適宜設定すればよい。
【0024】
ところで、一次側の圧力P1は100MPa以上と非常に高圧であるから、封止用のベローズ20は、周囲から高圧を受けるため、この力に耐えるための耐圧性(剛性)を備える必要があると同時に、推力Fなどの力に応答して弁体7が可動する際に、弁体7の動きを容易にするための伸縮性を備える必要がある。
耐圧性の点では、封止用のベローズ20の厚さtを厚くする必要があるが、厚さtを厚くするとバネ定数が厚さtの3乗に比例して大きくなり、伸縮性が阻害されるとともに耐久寿命が低下するなど、要求される事項を同時に満たすことができないという背景がある。
本発明者は、バネ定数が厚さtの3乗に比例すること、及び、耐圧性については、ベローズの全体の厚さが同じであれば同じ耐圧性が得られることから、封止用のベローズ20を、金属材料からなる成形ベローズを複数層組み合わせた多層構造にすることにより、さらには、蛇腹部の断面形状を工夫することにより、耐圧性と伸縮性の両者を同時に満足することができるという知見を得た。
【0025】
図2は、本発明の実施形態1に係る燃料電池システム用減圧弁に用いられるベローズを説明する断面図である。
封止用のベローズ20は、ステンレス材料(SUS304)からなる外周側成形ベローズ20−1、中間成形ベローズ20−2及び内周側成形ベローズ20−3を重ね合わせた3層構造となっている。3層合計の厚さはtであり、各層の厚さは同じに設定されているから、1層の成形ベローズの厚さはt/3である。1層のバネ定数をkとすると、3層構造のベローズ20のバネ定数kは、
=k+k+k=3kとなり、1層構造の同じ厚さのベローズと比較して大幅にバネ定数を小さくできる。
一方、耐圧性(応力)は、1層であっても多層であっても、その厚さtが同じであれば、同じ耐圧性を有する。
【0026】
次に、本発明者は、100MPa以上の高圧に耐えるため、蛇腹部の断面形状に着目し、その断面形状を種々に変化させて試験したところ、従来知られているU字形と逆U字形を交互に接続したようなベローズ形状、あるいは、S字形を組み合わせたようなベローズ形状では、高圧のため、主として軸方向において潰されてしまうことがわかった。
図2に示す多層の成形ベローズの蛇腹部の断面形状は、半円未満の形状の山部及び谷部を交互に接続した形状となっており、軸方向に潰れにくいことが確認できた。
ここで、半円未満の形状とは、上限が半円未満(円周角度180゜未満)で、下限は少なくとも円弧成分を有するもので、例えば、円の1/12(円周角度30゜)である。
円周角度を何度に設定するかは、ベローズ外径、ベローズ厚み、山部高さ(あるいは谷部高さ)、ピッチ及び山部(あるいは谷部)の曲率半径などを総合して決められる。
また、半円未満の形状の山部及び谷部を交互に接続する際、該山部と谷部との間にストレート部を介在させる場合がある。この場合、ストレート部は、半円未満の形状の山部及び谷部を滑らかに接続するため、ベローズの軸方向に直角方向ではなく、直角方向と一定の角度θを有する斜め方向に向いたものとなる。
【0027】
本実施形態1による燃料電池システム用減圧装置は、耐圧性を有し、かつ、バネ定数の比較的小さい多層ベローズを用いているため、電磁弁の推力が小さくても、減圧装置を確実に作動することができる。
また、本実施形態1による燃料電池システム用減圧装置に用いられるベローズは、蛇腹部の断面形状が半円未満の形状の山部及び谷部が交互に接続された形状となっていることから、耐圧性と伸縮性の両者を同時に満たしている。
【0028】
〔実施形態2〕
図3は、本発明の実施形態2に係る燃料電池システム用減圧装置の全体を示す断面図である。
図3に示す減圧装置においては、図1で説明した減圧装置の基本的な構成を備えており、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は適宜省略する。
【0029】
弁体25は、弁本体部26とその先端側に設けられた、ソレノイド11及びベローズ16の軸方向の力を弁体25に伝達する伝達部材27とから構成され、実施形態1の弁体7における軸部8は省略されている。
伝達部材27は、その先端側において、二次側の圧力P2を受ける位置に配置された受圧部材としてのベローズ16の保持部材28に嵌入され、結合されている。
【0030】
封止用のベローズ20は、弁体25の後端側と貫通孔10の穿設されたシールガイド21との間に設けられており、その右端が、弁本体部26の後端側に溶接などにより気密に固定され、左端が、シールガイド21の保持部22に溶接などにより気密に固定されている。
シールガイド21の後端側には、シールガイド21を押圧して固定するための固定部材29が設けられ、該固定部材29はハウジング2の穴30に螺合されている。
固定部材29には、貫通孔10を大気圧領域Aに連通するための連通孔31が設けられている。ベローズ20の外側には一次側の圧P1が作用し、内側には大気圧P3が作用する。
【0031】
以上のように構成される燃料電池システム用減圧装置1は、ベローズ16が受ける圧力(制御圧力)P2と推力Fによって、弁体25の動作が制御され、その結果、弁の開閉が制御される。このため、制御圧力P2を制御することができる。具体的には、弁体25に作用する力は、一次側の圧力P1と、二次側の圧力P2と、大気圧P3と、ベローズ16が圧力P2を受けることで弁体25に作用する力と、推力Fと、封止用のベローズ20の弾性復元力である。したがって、弁体25の位置は、これらの力のバランスにより定まる。一次側の圧力P1に対して二次側の圧力P2を所望の圧力に制御するには、ベローズ16の特性、推力F及び封止用のベローズ20のバネ定数を適宜設定すればよい。
【0032】
〔実施形態3〕
図4は、本発明の実施形態3に係る燃料電池システム用減圧装置の全体を示す断面図である。
図4に示す減圧装置においては、図1で説明した減圧装置の基本的な構成を備えており、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は適宜省略する。
【0033】
本実施形態3に係る減圧装置1においては、貫通孔10の後端側に設けられたバネ19の設けられた領域は大気圧領域と遮断され、二次側のポートP2に繋がる通路32が設けられている。これにより、貫通孔10の後端側のバネ19が設けられた領域の圧力は二次側の圧力P2と等しくなる。このため、ベローズ20の内部には二次側の圧力P2が作用してベローズ20を伸張させる方向に力が働く。一方、弁体7にはその受圧領域である円の径D1に対して二次側の圧力P2が作用してベローズ20を縮める方向に力が働くため、二次側の圧力P2が相殺されて、弁体7はソレノイド力のみで作動されることになる。このように、弁体7は、二次側の圧力P2による影響をほとんど受けることなく、二次側の圧力が変動しても安定的に弁の開閉を行わせることができる。
【0034】
〔実施形態4〕
図5は、本発明の実施形態4に係る燃料電池システム用減圧装置の全体を示す断面図である。
図5に示す減圧装置においては、図3で説明した減圧装置の基本的な構成を備えており、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は適宜省略する。
【0035】
本実施形態4に係る減圧装置1においては、シールガイド21を押圧して固定するための固定部材29が設けられた穴30の領域は大気圧領域と遮断され、二次側のポートP2に繋がる通路32が設けられている。これにより、貫通孔10の後端側の固定部材29が設けられた穴30の領域の圧力は二次側の圧力P2と等しくなる。このため、ベローズ20の内部には二次側の圧力P2が作用してベローズ20を伸張させる方向に力が働く。一方、弁体7にはその受圧領域である円の径D1に対して二次側の圧力P2が作用してベローズ20を縮める方向に力が働くため、二次側の圧力P2が相殺されて、弁体7はソレノイド力のみで作動されることになる。このように、弁体7は、二次側の圧力P2による影響をほとんど受けることなく、二次側の圧力が変動しても安定的に弁の開閉を行わせることができる。
【0036】
〔実施形態5〕
図6は、本発明の実施形態5に係る燃料電池システム用減圧装置の全体を示す断面図である。
図6に示す減圧装置においては、図3で説明した減圧装置の基本的な構成を備えており、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は適宜省略する。
【0037】
本実施形態5に係る減圧装置1においては、ハウジング2には、高圧P1となる一次側ポート3が図の上側に1個、低圧P2となる二次側ポート4が図の上下に2個設けられている。また、弁本体部26の先端側に設けられた伝達部材27に、弁体25を先端側に向けて付勢するバネ33が設けられている。
封止用のベローズ35は、弁体25の後端側と貫通孔10の穿設されたシールガイド21との間に設けられており、その右端が、弁本体部26の後端側に溶接などにより気密に固定され、左端が、シールガイド21の保持部22に溶接などにより気密に固定されている。ベローズ35の外側には一次側の圧P1が作用し、内側には大気圧P3が作用する。
【0038】
図7は、本発明の実施形態5に用いられるベローズの拡大断面図である。
実施形態5の封止用のベローズ35は、実施形態1と同じく3層構造に形成されたものであるが、長手方向において等分の長さで3個に分割され、それぞれのベローズが保持部材を介して接続されてなるものである。
右側のベローズ36は、右端が弁本体部26の後端外周に圧入され、左端が保持部材39の右端に圧入され、それぞれの圧入端部が全周溶接されている。
また、中央のベローズ37は、右端が保持部材39の左端に圧入され、左端が保持部材40の右端に圧入され、それぞれの圧入端部が全周溶接されている。
さらに、左側のベローズ38は、右端が保持部材40の左端に圧入され、左端がハウジング2に気密に固定されたシールガイド21の保持部22に圧入され、それぞれの圧入端部が全周溶接されている。
保持部材39及び40には、孔41が形成されている。
【0039】
実施形態5に示すベローズ35のように、直列に3個接続された場合のバネ定数ksは、それぞれのバネ定数をkとすると、
1/ks =1/k+1/k+1/k=3/k
ks =k /3
となり、長いベローズを1個設ける場合と同じバネ定数となるから、バネ定数が増大するということはない。
【0040】
実施形態5の封止用のベローズ35のように直列に3個接続して構成すると、1個のベローズの長さを短くすることができるから、長いベローズを製作する場合に比較してベローズの製作が容易である。
【符号の説明】
【0041】
1 燃料電池システム用減圧装置
2 ハウジング
3 一次側ポート
4 二次側ポート
5 経路
6 弁座
7 弁体(実施形態1及び3)
8 軸部
9 弁本体部(実施形態1及び3)
10 貫通孔
11 ソレノイド
12 コイル
13 センターポスト
14 プランジャ
15 ロッド
16 ベローズ
17 突出部(伝達部材)
18 保持部材(実施形態1及び3)
19 バネ
20 ベローズ(実施形態1ないし4)
21 シールガイド
22 保持部
25 弁体(実施形態2及び4)
26 弁本体部(実施形態2及び4)
27 伝達部材(実施形態2及び4)
28 保持部材(実施形態2及び4)
29 固定部材
30 穴
31 連通孔
32 通路
33 バネ
35 ベローズ(実施形態5)
36 右側のベローズ
37 中央のベローズ
38 左側のベローズ
39 保持部材
40 保持部材
41 孔
A 大気圧領域
F ソレノイドの推力
P1 高圧(一次側の圧力)
P2 低圧(二次側の圧力)
P3 大気圧
















【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧の一次側ポートと低圧の二次側ポートとを連通する経路の途中に弁座、及び、該弁座と対向する反対側に貫通孔を設け、前記弁座に離着することで前記経路を開閉する弁体を備え、該弁体の先端側には、ソレノイド及び二次側の圧力を受けるベローズの軸方向の力を弁体に作用する伝達部材を設け、弁体の後端側と前記貫通孔と間に封止部材を設け、該封止部材が金属材料からなる多層の成形ベローズから形成されてなることを特徴とする燃料電池システム用減圧装置。
【請求項2】
前記多層の成形ベローズの蛇腹部の断面形状が、半円未満の形状の山部及び谷部が交互に接続された形状であることを特徴とする請求項1記載の燃料電池システム用減圧装置に用いられるベローズ。
【請求項3】
前記半円未満の形状の山部と谷部との間にストレート部を介在させることを特徴とする請求項2記載の燃料電池システム用減圧装置に用いられるベローズ。
【請求項4】
前記多層の成形ベローズを保持部材を介して直列に複数個、接続してなることを特徴とする請求項2又は3記載の燃料電池システム用減圧装置に用いられるベローズ。











【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−142179(P2012−142179A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293734(P2010−293734)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000101879)イーグル工業株式会社 (119)
【Fターム(参考)】