説明

燃料電池システム用電力制御装置

【課題】燃料電池システムに含まれるコンバータを構成するコンデンサの過熱状態を抑制して、コンデンサを熱的損傷から保護する。
【解決手段】燃料電池システム用電力制御装置12は、FCコンバータ18と、インバータ14に対してFCコンバータ18と並列に接続されるバッテリコンバータ20と、FCコンバータ18およびバッテリコンバータ20の作動を制御する制御部21とを備える。FCコンバータ18は、コンデンサ22,26,30と、コンデンサ温度を検出する温度センサ23,27,31とを有する。制御部21は、コンデンサ温度Tc1,Tc2,Tc3のいずれかが閾値温度Tth以上になったとき、バッテリコンバータ20による昇圧電圧目標値または昇圧比を低下させる制御を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システム用電力制御装置に係り、特に、燃料電池側コンバータと蓄電装置側コンバータとを備える燃料電池システム用電力制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、燃料等の供給を受けて発電する燃料電池スタックと、燃料電池スタックから出力される直流電圧を昇圧可能な燃料電池用DC/DCコンバータと、蓄電デバイスである二次電池と、この二次電池から供給される直流電圧を昇圧可能な二次電池用DC/DCコンバータと、システム出力端子とを備え、前記燃料電池用DC/DCコンバータと前記二次電池用DC/DCコンバータとが前記システム出力端子に並列接続されてなる燃料電池システムが開示されている。
【0003】
この燃料電池システムでは、システム出力端子が電気機器(負荷)の直流入力端子に接続されることで、燃料電池システムから電気機器に電力が供給されるようになっており、前記電気機器に合わせて燃料電池スタック、二次電池およびDC/DCコンバータの各仕様が決定されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−310271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような燃料電池、二次電池および各DC/DCコンバータを備える燃料電池システムが電動車両の電源装置として適用された場合、走行用動力源であるモータは車両の走行状態に応じて変動するため、モータが高負荷運転されて燃料電池用DC/DCコンバータが高昇圧比に維持されたときに、コンバータを流れる電流値、とりわけ、電流リップルが大きくなることで、コンバータの構成部品であるコンデンサが過熱状態になって性能低下を来たす可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、燃料電池システムに含まれるコンバータを構成するコンデンサの過熱状態を抑制して、コンデンサを熱的損傷から保護することができる燃料電池システム用電力制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る燃料電池システム用電力制御装置は、燃料電池から供給される直流電圧を昇圧して出力可能な燃料電池側コンバータと、前記燃料電池側コンバータから供給される直流電圧を交流電圧に変換して負荷に印加するインバータと前記燃料電池側コンバータとを接続する電力ラインと、前記電力ラインに対して前記燃料電池側コンバータと並列に接続され、蓄電装置から供給される直流電圧を昇圧して出力可能な蓄電装置側コンバータと、前記燃料電池側コンバータおよび前記蓄電装置側コンバータの作動を制御する制御部と、を備える燃料電池システム用電力制御装置であって、前燃料記燃料電池側コンバータは、電荷を蓄積するコンデンサと、コンデンサの温度を検出する温度センサとを有し、前記制御部は、前記温度センサにより検出されたコンデンサ温度が閾値温度以上になったとき、前記蓄電装置側コンバータによる昇圧電圧目標値または昇圧比を低下させる制御を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る燃料電池システム用電力制御装置によれば、コンデンサ温度が所定の閾値温度以上になったとき蓄電装置側コンバータによる昇圧電圧上限値または昇圧比を低下させる制御を実行する。これにより、蓄電装置側コンバータの出力電圧が低減されることで、インバータに対して前記蓄電装置側コンバータと並列接続された燃料電池側コンバータの出力電圧も同様に制限されることになる。その結果、燃料電池側コンバータを流れる電流値の低減、とりわけ、電流リップルの低減を図ることができ、燃料電池側コンバータの構成部品であるコンデンサの過熱を抑制して熱的損傷から保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の一実施形態である燃料電池システム用電力制御装置を含む燃料電池システムの概略構成図である。
【図2】図2は、燃料電池側コンバータに含まれるコンデンサの温度保護制御の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。この説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等にあわせて適宜変更することができる。
【0011】
下記の実施の形態では、本発明に係る燃料電池システム用電力制御装置(以下、適宜に「電力制御装置」とだけいう。)が、電動車両に搭載される燃料電池システムに適用された例について説明するが、本発明の適用は電動車両に限定されるものではなく、船舶、飛行機、ロボット等の他の移動体の電源装置として用いられる燃料電池システムに適用されてもよいし、あるいは、定置型の燃料電池システムに適用されてもよい。
【0012】
図1は、電動車両に搭載される燃料電池システム1の全体構成を概略的に示す。燃料電池システム1は、燃料電池10、蓄電装置11、電力制御装置12、インバータ14およびモータ16を備える。
【0013】
図1において「FC」と表記される燃料電池10は、図示しないガス供給系を介して燃料ガスとしての水素および酸化ガスとしての酸素を含む空気がそれぞれ供給され、水素と酸素の電気化学反応に伴って生じる電気を発電電力として出力する発電装置である。燃料電池10に供給される燃料としては、高圧水素タンク等から供給される水素ガスが好適に用いられるが、メタン等の炭化水素ガスを水蒸気により改質して生成される水素リッチなガスが用いられてもよい。
【0014】
図1において「BAT」と表記される蓄電装置11は、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、鉛電池等の二次電池によって好適に構成される。ただし、二次電池に限定されるものではなく、例えば電気二重層キャパシタ等により構成されてもよい。
【0015】
電力制御装置12は、燃料電池10から供給される直流電圧を昇圧して出力可能な燃料電池側コンバータ(以下、適宜に「FCコンバータ」という。)18と、蓄電装置11から供給される直流電圧を昇圧して出力可能な蓄電装置側コンバータ(以下、適宜に「バッテリコンバータ」という。)20と、これらのコンバータ18,20の作動を制御する制御部21とを含む。
【0016】
図1において「ECU(Electronic Control Unit)」と表記される制御部21は、制御プログラム等を実行するCPU、制御プログラ等を予め格納するROM、ROMから読み出されたプログラムや、後述する温度センサによる検出データ等を一時的に記憶するRAM、および、入出力インターフェースからなるマイクロコンピュータとして構成されることができる。制御部21は、入力されるイグニッション信号IG、アクセル開度信号ACCおよび車速Svc等に基づいて、上記2つのコンバータ18,20の作動を制御するとともに、燃料電池10へのガス供給系やインバータ14を含む燃料電池システム1の全体制御を司るものである。ただし、上記2つのコンバータ18,20の作動制御だけを行う独立したECUとしてもよい。
【0017】
図1において「CNV」と表記されるバッテリコンバータ20は、リアクトル、電力用スイッチング素子(例えば、IGBT等)およびダイオードなどから構成されることができ、制御部21からの制御信号を受けて電力用スイッチング素子がオン・オフ制御されることにより、蓄電装置11から供給される直流電圧を昇圧電圧目標値に昇圧して出力する機能を有する。
【0018】
FCコンバータ18の入力端子は、一対の電力ライン、すなわち正極ライン2および負極ライン3を介して燃料電池10の出力端子に接続されている。同様に、FCコンバータ18の出力端子は、正極ライン2および負極ライン3を介してインバータ14に接続されている。
【0019】
また、バッテリコンバータ20は、インバータ14に対してFCコンバータ18と並列接続関係になるように、FCコンバータ18およびインバータ14間の正極ライン2および負極ライン3に接続されている。FCコンバータ18の詳細については、後述する。
【0020】
図1において「INV」と表記されるインバータ14は、それぞれ複数の電力用スイッチング素子(例えば、IGBT等)およびダイオードなどから構成されることができる。モータ16として例えば三相同期型交流モータが用いられる場合、インバータ14は、制御部21からの制御信号を受けて電力用スイッチング素子がオン・オフ制御されることにより、FCコンバータ18やバッテリコンバータ20から正極ライン2および負極ライン3を介して供給される直流電圧を三相交流電圧に変換してモータ16に印加する機能を有する。
【0021】
モータ16は、上述したように三相同期型交流モータにより好適に構成されることができ、いずれも図示しない減速機や車軸を介して車輪に機械的に連結されている。これにより、インバータ14から三相交流電圧が印加されてモータ16が回転駆動されると、車輪に駆動力が伝達されて車両が走行することができる。一方、車両の回生制動時には、車輪から車軸等を介してモータ16の回転軸に動力が入力されることで、モータ16は発電機として機能することもできる。このとき、モータ16により発電された回生電力は、インバータ14で交流電圧から直流電圧に変換され、バッテリコンバータ20により適度に降圧された後に、蓄電装置11に充電されることができる。
【0022】
続いて、FCコンバータ18について詳細に説明する。
【0023】
FCコンバータ18は、燃料電池10側において正極ライン2および負極ライン3間に接続された第1のコンデンサ(またはフィルタコンデンサ)22と、第2のコンデンサ(または共振コンデンサ)26を含む補助回路24と、昇圧回路28と、インバータ側において正極ライン2および負極ライン3間に接続される第3のコンデンサ(または平滑コンデンサ)30とを備える。
【0024】
各コンデンサ22,26,30は、電荷を蓄積して放出する機能を有する公知構成のもので、例えばフィルムコンデンサなどにより好適に構成されることができる。また、各コンデンサ22,26,30には、温度センサ23,27,31がそれぞれ付設されており、温度センサ23,27,31により検出されたコンデンサ温度Tc1、Tc2,Tc3が制御部21に入力されて監視されるようになっている。
【0025】
昇圧回路28は、正極ライン2に設けられた昇圧リアクトル32と、コレクタ端子が正極ライン2に接続されエミッタ端子が負極ライン3に接続された電力スイッチング用トランジスタである例えばIGBT34と、IGBT34に逆並列接続されたダイオード36とから構成されている。これにより、制御部21からIGBT34のゲート端子に制御信号が入力されてIGBT34がオン・オフ制御されることで、燃料電池10から供給される直流電圧を所望の電圧値まで昇圧して出力することができる。
【0026】
補助回路24は、アノード端子が正極ライン2に接続された第1のダイオード38と、両端が第1のダイオード38のカソード端子および負極ライン3に接続された第2のコンデンサ26と、第1のダイオード38および第2のコンデンサ26間にアノード端子が接続された第2のダイオード40と、第2のダイオード40のカソード端子にコレクタ端子が接続された電力スイッチングトランジスタ、例えばIGBT42と、IGBT42に逆並列接続された第3のダイオード44と、一端がIGBT42のエミッタ端子に接続され他端が正極ライン2に接続された共振リアクトル46とから構成されている。補助回路24のIGBT42は、制御部21からの制御信号がゲート端子に入力されることによってオン・オフ制御されるようになっている。
【0027】
このような構成を有する補助回路24は、昇圧回路28のIGBT34のオン損失を抑制する機能を有する。具体的には、補助回路24のIGBT42は、昇圧回路28のIGBT34がオン作動するのに先立って、オン状態に駆動される。これにより、共振コンデンサ26に蓄えられた電荷が共振リアクトル46との共振によって放出されて正極ライン2へと電流が流れることにより、昇圧回路28のIGBT34がオンされる際のコレクタ・エミッタ間の電位差を小さくする又は無くすことができ、その結果、昇圧回路28のIGBT34におけるオン損失を低減することが可能になる。
【0028】
次に、上記電力制御装置12の制御部21において実行されるコンバータ温度保護制御について図2を参照して説明する。図2は、制御部21のCPUにおいて実行されるコンバータ温度保護制御の処理手順を示すフローチャートである。この制御は、燃料電池システム1が運転状態にあるときに所定時間(例えば数msec)ごとに実行される。
【0029】
まず、制御部21は、各温度センサ23,27,31から送信されるコンデンサ温度Tc1,Tc2,Tc3を監視する(ステップS10)。そして、コンデンサ温度Tc1,Tc2,Tc3のいずれかが所定の閾値温度Tth以上であるか否かを判定する(ステップS12)。
【0030】
第1ないし第3のコンデンサ22,26,30の温度Tc1,Tc2,Tc3がいずれも閾値温度Tth未満であるとき(ステップS12でNo)、バッテリコンバータ20による昇圧電圧目標値は例えば600ボルトの通常制御状態に維持される(ステップS16)。
【0031】
一方、第1ないし第3のコンデンサ22,26,30の温度Tc1,Tc2,Tc3のいずれかが閾値温度Tth以上になったとき(ステップS12でYes)、バッテリコンバータ20による昇圧電圧目標値を例えば600ボルトから300ボルトに低下させる(ステップS14)。ここで、蓄電装置11から供給される直流電圧が例えば200ボルトであるとした場合、バッテリコンバータ20による昇圧比は、3倍から1.5倍に引き下げられることになる。
【0032】
このようにバッテリコンバータ20による昇圧電圧目標値または昇圧比を低下させることで、正極ライン2および負極ライン3を介してバッテリコンバータ20に接続されるFCコンバータ18の出力電圧も同様に制限されることになる。その結果、FCコンバータ18を流れる電流値の低減、とりわけ、電流リップルの低減を図ることができ、FCコンバータ18の構成部品である第1ないし第3コンデンサの22,26,30の過熱を抑制して熱的損傷から保護することができる。
【0033】
なお、上記において本発明の一実施形態である電力制御装置12について十分に説明したが、本発明に係る燃料電池システム用電力制御装置は上記構成のものに限定されるものではなく、種々の変更や改良が可能である。
【0034】
例えば、上記FCコンバータ18は、補助回路24を含むものとして説明されるが、昇圧機能を果たす限りにおいて補助回路24は必須のものではなく省略されてもよい。
【0035】
また、FCコンバータ18は、第1のコンデンサ22および第3のコンデンサ30を含むものとして説明されるが、FCコンバータは昇圧回路および補助回路だけを含んで構成されるものとして、第1のコンデンサおよび第3のコンデンサはFCコンバータとは別個に電力制御装置を構成するとしてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 燃料電池システム、2 正極ライン、3 負極ライン、10 燃料電池、11 蓄電装置、12 燃料電池システム用電力制御装置、14 インバータ、16 モータ、18 燃料電池側コンバータまたはFCコンバータ、20 蓄電装置側コンバータまたはバッテリコンバータ、21 制御部、22 第1のコンデンサ、23,27,31 温度センサ、24 補助回路、26 第2のコンデンサ、28 昇圧回路、30 第3のコンデンサ、32 昇圧リアクトル、36,38,40,44 ダイオード、46 共振リアクトル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池から供給される直流電圧を昇圧して出力可能な燃料電池側コンバータと、前記燃料電池側コンバータから供給される直流電圧を交流電圧に変換して負荷に印加するインバータと前記燃料電池側コンバータとを接続する電力ラインと、前記電力ラインに対して前記燃料電池側コンバータと並列に接続され、蓄電装置から供給される直流電圧を昇圧して出力可能な蓄電装置側コンバータと、前記燃料電池側コンバータおよび前記蓄電装置側コンバータの作動を制御する制御部と、を備える燃料電池システム用電力制御装置であって、
前記燃料電池側コンバータは、電荷を蓄積するコンデンサと、コンデンサの温度を検出する温度センサとを有し、
前記制御部は、前記温度センサにより検出されたコンデンサ温度が閾値温度以上になったとき、前記蓄電装置側コンバータによる昇圧電圧目標値または昇圧比を低下させる制御を実行することを特徴とする燃料電池システム用電力制御装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−23132(P2011−23132A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−164813(P2009−164813)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】