説明

燃料電池システム

【課題】流路凍結によるガス流れの閉塞を抑制する。
【解決手段】本発明は、車両に搭載される燃料電池プラント11と、燃料電池プラント11を覆う筐体60と、筐体60の外部から燃料電池プラント11に接続される接続部材40,50と、を備える燃料電池システムであって、筐体60は、接続部材40,50が挿通され、その接続部材40,50の外周面を覆う挿通部61〜63を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の燃料電池システムは、走行風によって燃料電池が過度に冷却される事を防止し、かつ、燃料電池の発熱による周辺部品の過度の温度上昇を防止するため、燃料電池プラントを覆う筐体の車両進行方向に走行風導入口を設けていた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−362470号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、0℃を下回るような低温環境下で惰性走行が続いたときには、燃料電池の発熱量が少なくなるため、導入口からの走行風によって燃料電池プラントが冷却されて、プラント構成部品中の水が凍結するという問題点があった。
【0004】
本発明はこのような従来の問題点に着目してなされたものであり、走行風による燃料電池プラントの冷却を抑制し、プラント構成部品中の水の凍結を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以下のような解決手段によって前記課題を解決する。
【0006】
本発明は、車両に搭載される燃料電池プラントと、燃料電池プラントを覆う筐体と、筐体の外部から燃料電池プラントに接続される接続部材と、を備える燃料電池システムである。そして、筐体が、接続部材を挿通してその接続部材の外周面を覆う挿通部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、燃料電池プラントを筐体で覆い、筐体外部から筐体内部の燃料電池プラントに接続される接続部材を、その接続部材の外周面を覆う挿通部に挿通させたので、筐体内部に流入する走行風の流量を抑制することができる。したがって、筐体内部の燃料電池プラント構成部品中の水の凍結を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面等を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0009】
(第1実施形態)
燃料電池は電解質膜をアノード電極(燃料極)とカソード電極(酸化剤極)とによって挟み、アノード電極に水素を含有するアノードガス(燃料ガス)、カソード電極に酸素を含有するカソードガス(酸化剤ガス)を供給することによって発電する。アノード電極及びカソード電極の両電極において進行する電極反応は以下の通りである。
【0010】
アノード電極 : 2H2 →4H+ +4e- …(1)
カソード電極 : 4H+ +4e- +O2 →2H2O …(2)
【0011】
この(1)(2)の電極反応によって燃料電池は1ボルト程度の起電力を生じる。
【0012】
このような燃料電池を自動車用動力源として使用する場合には、要求される電力が大きいため、数百枚の燃料電池を積層した燃料電池スタックとして使用する。そして、燃料電池スタックにアノードガス及びカソードガスを供給する燃料電池システムを構成して、車両駆動用の電力を取り出す。
【0013】
図1は、本発明の第1実施形態による燃料電池システムを搭載した燃料電池車両1の概略構成図である。図1(A)は側面図であり、図1(B)は平面図である。
【0014】
燃料電池車両1は、車両室内空間2とアンダーカバー3との間に形成された床下スペース4と、車両の前方及び後方に形成された部品搭載スペース5,6と、を備える。
【0015】
床下スペース4には、燃料電池発電プラント11と、水素タンク12と、が設けられる。
【0016】
燃料電池発電プラント11は、車両を駆動するために必要な電力を発生する。燃料電池発電プラント11の詳細については、図2を参照して後述する。
【0017】
水素タンク12は、燃料電池発電プラント11で使用される水素を蓄える。
【0018】
車両前方の部品搭載スペース5には、空気コンプレッサ13と、ラジエータ14と、駆動モータ15と、インバータ16と、を備える。
【0019】
空気コンプレッサ13は、空気を吸入し、燃料電池発電プラント11に供給する。
【0020】
ラジエータ14は、燃料電池発電プラント11を流れる冷却水(不凍液)を冷却する。
【0021】
駆動モータ15は、燃料電池発電プラント11又はバッテリ17から電力の供給を受けて、車両を駆動する。
【0022】
インバータ16は、直流電力と交流電力とを相互に変換する。
【0023】
車両後方の部品搭載スペースには、バッテリ17と、排気マフラ18と、コントローラ19と、が設けられる。
【0024】
バッテリ17は、燃料電池プラントで発電された電気を蓄えるとともに、駆動モータ15などの車両電気負荷に電力を供給する。
【0025】
排気マフラ18は、燃料電池発電プラント11から排出される水をアノードオフガスとカソードオフガスとの混合気とともに外気へ放出する。
【0026】
コントローラ19は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。コントローラ19は、車両電気負荷に供給する電力量を制御する。
【0027】
図2は、燃料電池発電プラント11の概略構成図である。
【0028】
燃料電池発電プラント11は、燃料電池スタック20と、水素回路30と、空気回路40と、冷却水回路50と、筐体60と、を備える。
【0029】
燃料電池スタック20は、水素(アノードガス)及び空気(カソードガス)の供給を受けて発電する。
【0030】
水素回路30は、燃料電池スタック20に水素を供給するための配管や部品を備える。水素回路30の詳細については、図3を参照して後述する。
【0031】
空気回路40は、燃料電池スタック20に空気を供給するための配管や部品を備える。空気回路40の詳細については、図4を参照して後述する。
【0032】
冷却水回路50は、燃料電池スタック20を冷却する冷却水を供給するための配管や部品を備える。冷却水回路50の詳細については、図5を参照して後述する。
【0033】
筐体60は、燃料電池スタック20、水素回路30、空気回路40及び冷却水回路50を上から覆い、走行風を遮断する。筐体60の詳細については、図6を参照して後述する。
【0034】
図3は、水素回路30について説明する図である。理解を容易にするために説明に不要な部分の図示は省略する。
【0035】
水素回路30は、水素供給配管31と、循環配管32と、排水配管33と、不活性ガス排出配管34と、を備える。
【0036】
水素供給配管31は、一端が水素タンク12に接続され、他端が燃料電池スタック20のアノードガス入口部21に接続される配管である。水素供給配管31には、水素供給バルブ35が設けられる。
【0037】
水素供給バルブ35は、水素タンク12から燃料電池スタック20へ供給される水素量を調整する。
【0038】
循環配管32は、一端が燃料電池スタック20のアノードガス出口部22に接続され、他端が水素供給配管31の水素供給バルブ35の下流に接続される配管である。循環配管32には、気液分離器36と、不活性ガス排出バルブ37と、循環コンプレッサ38と、が設けられる。
【0039】
気液分離器36は、燃料電池スタック20の内部で加湿されたアノードオフガスから水を分離し、水を排水配管33へ排出する。
【0040】
不活性ガス排出バルブ37は、カソード側からアノード側にクロスリークしてきた窒素などの不活性ガスを、アノードオフガスとともに不活性ガス排出配管34へ排出する。
【0041】
循環コンプレッサ38は、アノードオフガスを圧縮して水素供給配管31に送り込む。
【0042】
排水配管33は、一端が気液分離器36に接続され、他端が後述する空気排出配管42に接続される。
【0043】
不活性ガス排出配管34は、一端が不活性ガス排出バルブ37に接続され、他端が空気排出配管42に接続される。
【0044】
循環配管32、排水配管33及び不活性ガス排出配管34を流れるアノードオフガスは、水分を含んでいるため凍結のおそれがある。したがって、走行風を遮断する必要がある部位となる。
【0045】
図4は、空気回路40について説明する図である。理解を容易にするために説明に不要な部分の図示は省略する。
【0046】
空気回路40は、空気供給配管41と、空気排出配管42と、を備える。
【0047】
空気供給配管41は、一端が空気コンプレッサ13に接続され、他端が筐体60の正面に形成された空気供給配管用の挿通部61を介して燃料電池スタック20のカソードガス入口部23に接続される。以下では、他の挿通部62,63と区別する必要があるときは、この挿通部61のことを「空気供給配管挿通部61」という。空気供給配管41には、加湿器43が設けられる。
【0048】
加湿器43は、空気排出配管42にも接続されており、燃料電池スタック20の内部で加湿されたカソードオフガス中の水分によって燃料電池スタック20に供給される空気(カソードガス)を加湿する。
【0049】
空気排出配管42は、一端が燃料電池スタック20のカソードガス出口部24に接続され、他端が排気マフラ18に接続される。空気排出配管42には、排気バルブ44が設けられる。
【0050】
排気バルブ44は、空気排出配管42を開閉してカソードオアフガスを外部へ排出する。
【0051】
空気供給配管41における加湿器43と燃料電池スタック20とを接続する部分及び空気排出配管42は、水分を含んだカソードガス又はカソードオアフガスが流れるので凍結のおそれがある。したがって、走行風を遮断する必要がある部位となる。
【0052】
図5は、冷却水回路50について説明する図である。理解を容易にするために説明に不要な部分の図示は省略する。
【0053】
冷却水回路50は、冷却水供給配管51と、冷却水排出配管52と、バイパス配管53と、を備える。
【0054】
冷却水供給配管51は、一端がラジエータ14の出口部に接続され、他端が筐体60の正面に形成された冷却水供給配管用の挿通部62を介して燃料電池スタック20の冷却水入口部25に接続される。以下では、他の挿通部61,63と区別する必要があるときは、この挿通部63のことを「冷却水供給配管挿通部62」という。冷却水供給配管51には、冷却水ポンプ54が設けられる。
【0055】
冷却水ポンプ54は、冷却水を加圧して燃料電池スタック20に供給し、冷却水を循環させる。
【0056】
冷却水排出配管52は、一端がラジエータ14の入口部に接続され、他端が筐体60の正面に形成された冷却水排出配管用の挿通部63を介して燃料電池スタック20の冷却水出口部26に接続される。以下では、他の挿通部61,62と区別する必要があるときは、この挿通部63のことを「冷却水排出配管挿通部63」という。冷却水排出配管52には、流路切替バルブ55が設けられる。
【0057】
流路切替バルブ55は、冷却水を冷却する必要がないときに冷却水がバイパス配管53を流れるように流路を切り替える。
【0058】
バイパス配管53は、一端が流路切替バルブ55に接続され、他端が冷却水供給配管51に接続される。
【0059】
図6は、筐体60について説明する図である。図6(A)は、筐体60を車両前方から見たときの斜視図である。図6(B)は、筐体60を車両後方から見たときの斜視図である。
【0060】
筐体60は、アンダーカバー3の上に設けられた額縁状の枠体7に収められる。
【0061】
図6(A)に示すように、筐体60の正面は走行風を遮るために閉塞されている。そのため、筐体60の正面には、配管を通すための空気供給配管挿通部61と、冷却水供給配管挿通部62と、冷却水排出配管挿通部63と、が形成される。各挿通部61,62,63は、筐体60の正面に一体に設けられ、筐体60の外部と内部とを連通する。各挿通部61,62,63は、布又は樹脂性である。
【0062】
一方で、図6(B)に示すように、走行風の直接の進入がないため、筐体60の背面は開放されている。
【0063】
ここで、燃料電池の電解質膜は湿潤状態で良好な電気伝導性を示す。そのため、本実施形態でも加湿器43によって燃料電池スタック20に供給する空気を加湿している。また、発電反応によっても水が生成されるので、これら空気中の水分や生成水が水素回路30や空気回路40の配管や各部品内に残留することがある。
【0064】
下り坂を走行しているときなどのアクセルペダルが踏み込まれない惰性走行(コースト走行)中は駆動力を必要としないので、燃料電池発電プラント11は発電量の少ないアイドル状態となり、発熱量も少なくなる。そのため、外気温が0℃を下回るような低温環境下において惰性走行が続くと、筐体60の正面の各挿通部61,62,63と各配管41,51,52との隙間から内部に侵入する走行風によって水素回路30及び空気回路40の内部に残留した水が凍結するおそれがある。
【0065】
図7は、車両進行方向から見たときの筐体60の正面の隙間の投影面積と、低温環境下において時速100[km/h]で走行させたときの走行風による放熱量と平衡するために必要な燃料電池スタック20の発熱量と、の関係を示した図である。図7において、実線は外気温度(−20℃)と燃料電池スタック20温度(60℃)との温度差が80℃のときの関係を示す。破線は外気温度(0℃)と燃料電池スタック20温度(60℃)との温度差が60℃のときの関係を示す。
【0066】
走行風による放熱量は、筐体60の正面の隙間の投影面積が大きいときほど大きくなる。そのため、図7に示すように、走行風による放熱量と平衡するために必要な燃料電池スタック20の発熱量も、筐体60の正面の隙間の投影面積が大きいときほど大きくなる。
【0067】
また、筐体60の正面の隙間の投影面積が同じであれば、走行風による放熱量は、外気温度と燃料電池スタック温度との温度差が大きいときほど大きくなる。そのため、図7に示すように、走行風による放熱量と平衡するために必要な燃料電池スタック20の発熱量も、外気温度と燃料電池スタック温度との温度差が大きいときほど大きくなる。
【0068】
なお、図7のグラフは以下の車両実験による算出式(3)で表わされる。
【0069】
【数1】

但し、S[cm2];隙間の投影面積
E[kW];燃料電池スタック20の発熱量
Ts[K];燃料電池スタック20の温度
Ta[K];外気温度
e;自然対数
【0070】
惰性走行中に、燃料電池スタック20で無駄な発電をさせることなく水の凍結を防止するには、アイドル時における燃料電池スタック20の発熱量よりも、走行風による放熱量が少なくなるようにしてやればよい。
【0071】
つまり、予め燃料電池車両1が使用される地域の外気温度の想定最低温度Ta1と、アイドル時の一般的な燃料電池スタック温度Ts1と、アイドル時の燃料電池スタック20の発熱量E1と、が分かっていれば、以下の(4)式を満たすように隙間の投影面積Sを調整すればよい。
【0072】
【数2】

【0073】
筐体60を設けるだけでは上記(4)式を満たすことができないときは、筐体60の正面の隙間の投影面積を小さくして内部に侵入する走行風の流量を少なくすればよい。これにより、アイドル時における燃料電池スタック20の発熱量よりも、走行風による放熱量を少なくして、配管や部品内の水の凍結を抑制する。具体的には、各挿通部61,62,63に面ファスナ100を設けて各配管41,51,52と密着させるように縛ることで、筐体60の正面の隙間の投影面積を小さくして内部に流入する走行風を少なくする。
【0074】
図8は、本実施形態による空気供給配管挿通部61に設けられた面ファスナ100について説明する図である。図8(A)は、面ファスナ100をはがした状態の図である。図8(B)は、面ファスナ100を貼り付けた状態の図である。なお、冷却水供給配管挿通部62及び冷却水排出配管挿通部63にも同様の面ファスナ100が設けられる。
【0075】
図8(A)に示すように、面ファスナ100は、フック状係合素子101と、ループ状係合素子102と、を備える。
【0076】
フック状係合素子101は、空気供給配管挿通部61の端部外周面に設けられる。
【0077】
ループ状係合素子102は、空気供給配管挿通部61の端部外周面を覆うように形成された帯部64に設けられる。
【0078】
図8(B)に示すように、張力を与えながら帯部64を空気供給配管挿通部61の端部外周面に巻きつけて、フック状係合素子101とループ状係合素子102とを接合させることで、空気供給配管41と空気供給配管挿通部61とを密着させることができる。
【0079】
以上説明した本実施形態によれば、走行風を遮断する筐体60を燃料電池スタック20、水素回路30、空気回路40及び冷却水回路50の上から覆い、筐体60の正面に配管を挿通するための挿通部を形成した。そして、挿通部の端部に面ファスナ100を設けて配管と挿通部とを密着させた。
【0080】
これにより、筐体60によって燃料電池発電プラント11に吹きつけられる走行風を積極的に遮断することができる。また、挿通部の端部に面ファスナ100を設けて配管と挿通部とを密着させることで、配管と挿通部との間にできる隙間から筐体60の内部に流入する走行風も遮断することができる。その結果、走行風によって筐体60の内部の配管や部品が冷やされて、配管や部品中の水が凍結するのを抑制できる。よって、配管内を流れるアノードガス又はカソードガスの閉塞を抑制できる。
【0081】
また、筐体60の正面の隙間の投影面積を、アイドル時の燃料電池スタック20の発熱量と、走行風による放熱量と、が平衡するときの投影面積よりも小さくした。これにより、凍結防止のため、惰性走行中に燃料電池スタック20をアイドル時の要求出力以上に発電させる必要もないので、燃費を向上させることができる。
【0082】
また、燃料電池発電プラント11を床下スペース4に配置したので、車両前方の部品搭載スペース5に配置するよりも燃料電池プラントに吹きつけられる走行風の量を低減できる。
【0083】
さらに、挿通部61,62,63を布又は樹脂性の部材で構成したので、その柔軟性により配管との隙間を少なくすることができる。また、金属等の剛体で構成した場合には、配管の位置バラツキを考慮して挿通部61,62,63を大きくする必要があるが、弾性を持たせることで挿通部61,62,63を小さくできる。
【0084】
(第2実施形態)
次に、図9を参照して本発明の第2実施形態について説明する。本発明の第2実施形態は、挿通部61,62,63を結束バンド200で締め付ける点で第1実施形態と相違する。以下、その相違点について説明する。なお、以下に示す各実施形態では前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を用いて重複する説明を適宜省略する。
【0085】
図9は、本実施形態による空気供給配管挿通部61に設けられた結束バンド200について説明する図である。図9(A)は、空気供給配管挿通部61に結束バンド200を締め付ける前の図である。図9(B)は、空気供給配管挿通部61に結束バンド200を締め付けた後の図である。なお、冷却水供給配管挿通部62及び冷却水排出配管挿通部63にも同様の結束バンド200が設けられる。
【0086】
図9(A)及び図9(B)に示すように、結束バンド200を空気供給配管挿通部61の外周から締め付けることで、空気供給配管41と空気供給配管挿通部61とを密着させることができる。
【0087】
以上説明した本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果が得られるとともに、締め付け力が弱まったときに容易に新たな結束バンド200で挿通部61,62,63を締め付けることができる。
【0088】
(第3実施形態)
次に、図10を参照して本発明の第3実施形態について説明する。本発明の第3実施形態は、挿通部挿通部61,62,63を紐301で締め付ける点で第1実施形態と相違する。以下、その相違点について説明する。
【0089】
図10は、本実施形態による空気供給配管挿通部61に設けられた内部に紐301を備えるバンド300について説明する図である。図10(A)は、紐301で空気供給配管挿通部61を締め付ける前の図である。図10(B)は、紐301で空気供給配管挿通部61を締め付けた後の図である。なお、冷却水供給配管挿通部62及び冷却水排出配管挿通部63にも同様のバンド300が設けられる。
【0090】
図10(A)に示すように、バンド300は空気供給配管挿通部61の端部外周面を覆うように設けられ、内部に紐301を備える。紐301の両端部は、バンド300の切り口302から外部に飛び出している。
【0091】
図10(B)に示すように、この紐301で空気供給配管挿通部61を締め付けて縛ることで空気供給配管41と空気供給配管挿通部61とを密着させることができる。
【0092】
以上説明した本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果が得られるとともに、締め付け力が弱まったときに、再度紐301を締め直すことで容易に挿通部61,62,63を締め付けることができる。
【0093】
(第4実施形態)
次に、図11を参照して本発明の第4実施形態について説明する。本発明の第4実施形態は、挿通部61,62,63をゴム紐401で締め付ける点で第1実施形態と相違する。以下、その相違点について説明する。
【0094】
図11は、本実施形態による空気供給配管挿通部61に設けられた内部にゴム紐401を備えるゴムバンド400について説明する図である。図11(A)は、ゴム紐401で空気供給配管挿通部61を締め付ける前の図である。図11(B)は、ゴム紐401で空気供給配管挿通部61を締め付けた後の図である。
【0095】
図11(A)に示すように、ゴムバンド400は空気供給配管挿通部61の端部外周面を覆うように設けられ、内部にゴム紐401を備える。ゴム紐401は、自然状態の外周の長さが、空気供給配管41の外周の長さよりも短くなるように予め調節されている。
【0096】
これにより、図11(B)に示すように、ゴム紐401に張力を与え、空気供給配管41を挿通した後に張力を解放することで、ゴム紐401が縮んで空気供給配管41と空気供給配管挿通部61とを密着させることができる。
【0097】
以上説明した本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0098】
(第5実施形態)
次に、図12を参照して本発明の第5実施形態について説明する。本発明の第5実施形態は、筐体60の構造が第1実施形態と相違する。以下、その相違点について説明する。
【0099】
図12は、本実施形態による筐体60の構造について説明する図であり、筐体60を車両前方から見たときの斜視図である。
【0100】
図12に示すように、筐体60は、図中左から順に第1部材601、第2部材602及び第3部材603の3つに分割されている。そして、第1部材601と第2部材602、第2部材602と第3部材603をそれぞれ分割ファスナ604で接合している。
【0101】
これにより、筐体60の内部部品を交換するときに、筐体60の全てを取り外す必要がなく、筐体60の各部材601,602,603のうち、必要な部材だけを取り外すことができる。したがって、第1実施形態と比較して部品交換時の作業性を向上させることができる。
【0102】
(第6実施形態)
次に、図13を参照して本発明の第6実施形態について説明する。本発明の第6実施形態は、筐体60の構造が第1実施形態と相違する。以下、その相違点について説明する。
【0103】
図13は、本実施形態による筐体60の構造について説明する図である。図13(A)は、筐体60を車両前方から見たときの斜視図である。図13(B)は、図13(A)のC−C断面図である。
【0104】
図13(A)に示すように、筐体60は、第1部材601、第2部材602及び第3部材603の3つに分割されている。
【0105】
図13(B)に示すように、第1部材601の平面部601aには帯状の面ファスナ100のフック状係合素子101が設けられる。同様に第3部材603の平面部603aにも連続する帯状の面ファスナ100のフック状係合素子101が設けられる。一方で、第2部材602の裏面には、第1部材601及び第3部材603のフック状係合素子101と接合する帯状のループ状係合素子102がそれぞれ設けられる。
【0106】
このような構成にすることで、第1部材601と第3部材603の上から面ファスナ100を介して第2部材602を接合することができる。これにより、筐体60の内部部品を交換するときに、筐体60の全部を取り外す必要がない。したがって、第1実施形態と比較して部品交換時の作業性を向上させることができる。
【0107】
(第7実施形態)
次に、図14を参照して本発明の第7実施形態について説明する。本発明の第7実施形態は、筐体60の固定方法が第1実施形態と相違する。以下、その相違点について説明する。
【0108】
図14は、本実施形態による筐体60の固定方法について説明する図である。図14(A)は、筐体60を車両前方から見たときの斜視図である。図14(B)は、図14(A)のC−C断面図である。
【0109】
図14(B)に示すように、筐体60は側面部にハトメ501を備える。そして、そのハトメ501を介して筐体60の内側から枠体7の内縁に形成された雌ネジ部71にボルト502を螺合する。また、アンダーカバー3にもハトメ503が設けられる。そして、そのハトメ503を介してアンダーカバー3の底面から枠体7の底面に形成された雌ネジ部72にボルト504が螺合される。
【0110】
これにより、第1実施形態と比較して筐体60を強固に固定できる。
【0111】
(第8実施形態)
次に、図15を参照して本発明の第8実施形態について説明する。本発明の第8実施形態は、筐体60の固定方法が第1実施形態と相違する。以下、その相違点について説明する。
【0112】
図15は、本実施形態による筐体60の固定方法について説明する図である。図15(A)は、筐体60を車両前方から見たときの斜視図である。図15(B)は、図15(A)のC−C断面図である。
【0113】
図15(A)に示すように、筐体60は側面部に枠体7の平面部7aに接する固定部60aを備える。
【0114】
また、図15(B)に示すように、固定部60aにはハトメ501が設けられる。そして、そのハトメを介して固定部60aの上から枠体7に形成された雌ネジ部71にボルト502を螺合する。
【0115】
枠体7については、第7実施形態と同様にアンダーカバー3に固定するので説明を省略する。
【0116】
これにより、第1実施形態と比較して筐体60を強固に固定できる。
【0117】
(第9実施形態)
次に、図16を参照して本発明の第9実施形態について説明する。本発明の第9実施形態は、筐体60の固定方法が第1実施形態と相違する。以下、その相違点について説明する。
【0118】
図16は、本実施形態による筐体60の固定方法について説明する図である。図16(A)は、筐体60を車両前方から見たときの斜視図である。図16(B)は、図16(A)のC−C断面図である。
【0119】
図16(B)に示すように、筐体60の側面裏側には、一定の角度で傾斜した後に垂直に延びて、筐体60の側面裏側との間でブラケット701を狭持する狭持部65が設けられる。ブラケット701は、枠体7の内縁に沿うようにしてアンダーカバー3の平面上に設けられる。そして、ブラケット701にボルト502を挿通して、このボルトを枠体7の側面内側に形成された雌ネジ部に螺合する。
【0120】
枠体7については、第7実施形態と同様にアンダーカバー3に固定するので説明を省略する。
【0121】
これにより、第1実施形態と比較して筐体60を強固に固定できる。
【0122】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【0123】
例えば、図17(A)及び図17(B)に示すように、筐体60の内部に挿通部を設けても良い。なお、図17(A)は、筐体60を車両前方から見たときの斜視図である。図17(B)は、図17(A)のC−C断面図である。
【0124】
また、上記各実施形態では、筐体60に3つの挿通部61,62,63を設けたが、これに限られず例えば挿通部66を1つだけ設け、その挿通部66に複数の配管を挿通させてもよい。この場合は、図18(A)及び図18(B)に示すように、挿通部66に全ての配管を束ねて挿通させた後に結束バンド200で締め付ければよい。束ねた配管同士の間に隙間がある場合は、図18(C)に示すように、予め充填用弾性材700を巻きつけておけばよい。
【0125】
また、上記各実施形態では、筐体60に配管を挿通させていたが、電気ハーネスを挿通させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】燃料電池システムを搭載した燃料電池車両の概略構成図である。
【図2】燃料電池発電プラントの概略構成図である。
【図3】水素回路について説明する図である。
【図4】空気回路について説明する図である。
【図5】冷却水回路について説明する図である。
【図6】筐体について説明する図である。
【図7】車両進行方向から見たときの筐体の正面の隙間の投影面積と、低温環境下において時速100[km/h]で走行させたときの走行風による放熱量と平衡するために必要な燃料電池スタックの発熱量と、の関係を示した図である。
【図8】第1実施形態による挿通部に設けられた面ファスナについて説明する図である。
【図9】第2実施形態による挿通部に設けられた結束バンドについて説明する図である。
【図10】第3実施形態による挿通部に設けられたバンドについて説明する図である。
【図11】第4実施形態による挿通部に設けられたゴムバンドについて説明する図である。
【図12】第5実施形態による筐体の構造について説明する図である。
【図13】第6実施形態による筐体の構造について説明する図である。
【図14】第7実施形態による筐体の固定方法について説明する図である。
【図15】第8実施形態による筐体の固定方法について説明する図である。
【図16】第9実施形態による筐体の固定方法について説明する図である。
【図17】筐体の内部に挿通部を設けた図である。
【図18】1つの挿通部に複数の配管を挿通させた場合の図である。
【符号の説明】
【0127】
2 車両室内空間(室内空間)
3 アンダーカバー
11 燃料電池発電プラント(燃料電池プラント)
14 ラジエータ(放熱器)
20 燃料電池スタック
41 空気供給配管(接続部材)
51 冷却水供給配管(接続部材、冷却水循環配管)
52 冷却水排出配管(接続部材、冷却水循環配管)
60 筐体
61 空気供給配管挿通部(挿通部)
62 冷却水供給配管挿通部(挿通部)
63 冷却水排出配管挿通部(挿通部)
100 面ファスナ(隙間調節機構)
200 結束バンド(隙間調節機構)
300 バンド(隙間調節機構)
400 ゴムバンド(隙間調節機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される燃料電池プラントと、
前記燃料電池プラントを覆う筐体と、
前記筐体の外部から前記燃料電池プラントに接続される接続部材と、
を備える燃料電池システムであって、
前記筐体は、前記接続部材が挿通され、その接続部材の外周面を覆う挿通部を有する
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記筐体は、車両進行方向に前記挿通部を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記挿通部は、
所定速度で走行しているときにその挿通部と前記接続部材との隙間から前記筐体の内部に進入する走行風による前記燃料電池プラントの放熱量が、アイドル運転時における前記燃料電池プラントの発熱量よりも小さくなるように、前記隙間を小さくする隙間調節機構を備える
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
車両進行方向から見たときの前記挿通部と前記接続部材との隙間の投影面積をS[cm2]、想定最低外気温度をTa[K]、アイドル運転時における前記燃料電池プラントの発熱量をE[kW]、アイドル運転時における前記燃料電池の通常温度をTs[K]、自然対数をeとすると、以下の(1)式を満たす
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池システム。
【数1】

【請求項5】
前記燃料電池プラントは、
車両の室内空間とアンダーカバーとの間の空間に配置される
ことを特徴とする請求項1から4までのいずれか1つに記載の燃料電池システム。
【請求項6】
燃料電池プラントよりも車両前方に設けられてその燃料電池プラントを冷却する冷却水が流れる放熱器を備え、
前記接続部材は、
前記放熱器と前記燃料電池プラントの間で冷却水を循環させる冷却水循環配管である
ことを特徴とする請求項1から5までのいずれか1つに記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記接続部材は、燃料電池プラントの発電反応に使用される反応ガスが流れる配管である
ことを特徴とする請求項1から5までのいずれか1つに記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記接続部材は、電気ハーネスである
ことを特徴とする請求項1から5までのいずれか1つに記載の燃料電池システム。
【請求項9】
前記挿通部は、布又は樹脂を材料とする
ことを特徴とする請求項1から8までのいずれか1つに記載の燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−129485(P2010−129485A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−305542(P2008−305542)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】