説明

物体検知装置、物体検知システム及び物体検知方法

【課題】位置情報を保有することのない簡単な構成によって、物体の位置、状態等の検知情報を得ることができる物体検知システムを提供する。
【解決手段】 パッシブICタグ12を貼付した一つまたは複数の被検知物体10と、前記タグ12からの電波を受信して前記被検知物体10の被検知情報を検知する一つまたは複数の探索装置20と、前記探索装置20とネットワーク40を介して接続され、前記複数の探索装置20を制御するとともに前記探索装置20が取得した前記被検知情報を得て管理する管理サーバ30と、前記管理サーバ30が取得した情報を格納するデータベース34とで構成され、前記探索装置20は、指向性アンテナ21と、指向性を変更するアクチュエータ22と、方位センサ23、傾斜センサ24と、コントローラ25と、前記指向性アンテナ21の発信電波強度および受信電波強度を制御する電波強度制御部26とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物や人にICタグを取り付けて、そのICタグの場所を特定することによって、物や人の場所を探索して通知するための物体検知装置、物体検知システム及び物体検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ICタグは現在のバーコードに取って代わる存在として、いろいろな物に取り付ける事が考えられている。バーコードとは異なり、保持できる情報量が多い上に、電波によって数メートル情報を飛ばす事が可能である。利用方法としては、例えば靴の販売時の名札タグにICタグを取り付けることによって、倉庫内の在庫状況や販売店内の在庫状況を手軽に把握する事が可能となる。今後益々大量生産が可能になれば、小型なICタグを全ての物に取り付ける事も可能となる。
【0003】
具体的なパッシブ型ICタグの仕組みとしては、マイクロ波方式の場合には、リーダ・ライターが発する電波を受信することによってICタグのアンテナが共振し、電流が発生する。その電流を利用して、データの読み出しや送信を行う。また、電磁誘導によって電流を発生させる仕組みもある(例えば非特許文献1参照)。
【非特許文献1】「無線通信で“モノ”を認識ミドルウェアがIDを変換」NIKKEI SYSTEMS 2008.1 pp.98〜103.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の利用方法では、ID情報のような、ICタグに保持されたデータが送信されてくるだけで、そのICタグの置いてある位置を特定することは難しい。そのため、ICタグが付いている物を探すためには、電波の届く範囲内全てから探す必要があった。また、電波強度を測定して、距離を測る方法もあるが、いずれにしろある程度の範囲を探す必要があり、位置を特定するには至らない。
【0005】
また、物を置いた時点でリーダ・ライターによって、置いた位置情報をICタグに書き込む方法がある。ただ、この方法は移動する度に位置情報を登録し直す必要がある。この方法では、頻繁に物を動かす場合には、手間が非常にかかる。
【0006】
さらに、従来、物体の位置情報をシステムで管理(物体IDと位置情報をセットでデータベース(DB)に格納)する必要があり、位置情報更新、特にその頻度が高い場合にシステム負荷が増大(DBが肥大化)するという問題があった。
【0007】
本発明は上記課題を解決するものであり、その目的は、位置情報をDBに格納し、更新する必要のない簡単な構成によって、物体の位置、状態等の検知情報を得ることができる物体検知装置、物体検知システム及び物体検知方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための請求項1に記載の物体検知装置は、指向性アンテナと、前記指向性アンテナからの放射電波の指向性を変更するアクチュエータと、前記アクチュエータを制御するコントローラと、前記指向性アンテナから発する電波強度および受信電波強度を制御する電波強度制御部と、前記指向性アンテナの配向角を検知する配向角検知手段とを具備し、ICタグを貼付した複数の被検知物体を検知することを特徴としている。
【0009】
また、請求項2に記載の物体検知システムは、ICタグを貼付した一つまたは複数の被検知物体と、特定空間内の所定の位置に配備され、前記ICタグからの電波を受信して前記被検知物体の被検知情報を検知する一つまたは複数の探索装置と、前記複数の探索装置の各々とネットワークを介して接続され、前記複数の探索装置を制御するとともに前記探索装置が取得した前記被検知情報を得て管理する管理サーバと、前記管理サーバが取得した情報を格納するデータベースとで構成され、前記複数の被検知物体の被検知情報を取得する物体検知システムであって、前記複数の探索装置は、指向性アンテナと、前記指向性アンテナからの放射電波の指向性を変更するアクチュエータと、前記アクチュエータを制御するコントローラと、前記指向性アンテナから発する電波強度および受信電波強度を制御する電波強度制御部と、前記指向性アンテナの配向角を検知する配向角検知手段とを各々具備することを特徴としている。
【0010】
また、請求項3に記載の物体検知方法は、ICタグを貼付した一つまたは複数の被検知物体と、特定空間内の所定の位置に配備され、前記ICタグからの電波を受信して前記被検知物体の被検知情報を検知する一つまたは複数の探索装置と、前記複数の探索装置の各々とネットワークを介して接続され、前記複数の探索装置を制御するとともに前記探索装置が取得した前記被検知情報を得て管理する管理サーバと、前記管理サーバが取得した情報を格納するデータベースとで構成され、前記複数の被検知物体の被検知情報を取得する物体検知システムにおいて、探索装置が具備する指向性アンテナを走査することによって前記ICタグからの電波を受信したときの、該アンテナの配向角と、前記指向性アンテナの送信電波強度又は受信電波強度のうちすくなくともいずれか一方に基づいて求めた、該アンテナからICタグまでの距離とから前記被検知情報を取得することを特徴としている。
また請求項4に記載の物体検知方法は、請求項3において、前記距離は、前記ICタグからの電波を受信したときの前記指向性アンテナの配向角における送信電波強度に対する前記ICタグからの受信電波強度の比に基づいて求めることを特徴としている。
【0011】
また請求項5に記載の物体検知方法は、請求項3において、前記距離は、前記指向性アンテナの受信電波強度Eを測定し、距離r=α/E(αは周波数、出力電界強度によって決まる任意の値)なる関係に基づいて求めることを特徴としている。
【0012】
また請求項6に記載の物体検知方法は、請求項3において、前記距離は、前記指向性アンテナから発する送信電波強度を制御し、ICタグからの受信電波が無しとなるときの送信電波強度に基づいて求めることを特徴としている。
【0013】
また請求項7に記載の物体検知方法は、請求項3ないし6のいずれか1項において、前記データベースには、前記被検知物体における前記ICタグの貼付部位情報と、前記被検知物体の識別情報とを関連付けたテーブルが格納され、前記複数の探索装置は、該探索装置が具備する指向性アンテナを走査することによって、前記ICタグからの受信電波強度が最大となるアンテナの配向角の情報を得、前記管理サーバは、前記アンテナの配向角の情報と、前記テーブルに格納されたICタグの貼付部位情報とを照合することによって、前記被検知物体の状態を示す前記被検知情報を取得することを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
(1)請求項1〜7に記載の発明によれば、位置情報を保有することなく物体を検知することができる。このため位置情報をデータベースに登録する必要も、これを更新する必要もなく、データベース設計(システム設計)が簡素化される。
(2)また請求項1〜7に記載の発明において、ICタグとしてパッシブICタグを採用した場合、ICタグ内に電池を内蔵する必要がないため、構成が簡素化される。すなわち、アクティブタグでは電池が必要であり、プリミティブな用途において製造コストの上昇を招き、電池寿命による使用制限も不可避であるのに対し、パッシブタグのみで物体検知システムが構成できるので、システム構築・維持コストが安価になる。
(3)また請求項2〜7に記載の発明によれば、複数の探索装置が協調して広域空間を探索するシステム構成とすることができるので、探索装置単体の電波到達距離を越えた広範囲の探索が可能となる。
【0015】
また、探索装置の制御および取得した被検知情報を、管理サーバが統括管理すること、すなわち電波送受信制御、アンテナ制御等の下位レイヤ処理機能のみを探索装置に実装し、被探索物、探索装置の位置情報等の情報処理機能を管理サーバに実装することによって、探索装置自体の構成が簡素化される。
(4)また請求項7に記載の発明によれば、被検知物体の位置情報のみならず、物体の構造情報、性状、配向、傾斜等の状態情報、属性情報を取得してイベント検知(状態の意味を検知)することが可能になる。例えば、瓶類の転倒、杖が倒れたことによる怪我人の転倒、花が傾斜、変形したことによる花の萎れ等を容易に検知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明するが、本発明は下記の実施形態例に限定されるものではない。例えば、以下の実施形態ではパッシブICタグを用いた場合を例にとって説明するが、アクティブタグを用いても何ら問題はない。
【0017】
まず、本発明の実施形態例の全体構成を、図1のシステム構成図および図2の機能ブロック図とともに説明する。
【0018】
図1において、10a〜10nは複数の被検知物体であり、図2では1個の被検知物体10のみを図示している。この被検知物体10には、特定部位に貼付された、電波を送受信するためのアンテナ11およびICタグ12が設けられている。
【0019】
ICタグ12は例えばパッシブ方式のICタグであり、固有のID情報を保持するためのID用DB、電波を受信するとID用DB上の情報を送るためのタグ処理モジュールを有している。
【0020】
20A〜20Nは、複数の探索装置(本発明の物体検知装置、探索装置)であり、図2では1個の探索装置20のみ図示している。この探索装置20は、ICタグのリーダ・ライターとしての機能を有し、ICタグ12を貼付した被検知物体10を検知する装置であり、以下のように構成されている。
【0021】
21は電波を送受信する指向性アンテナであり、22は指向性アンテナ21からの放射電波の指向性を変更するアクチュエータであり、23は指向性アンテナ21の配向角のうち、方位(水平角θ)を検知する方位センサであり、24は前記配向角のうち、傾斜(傾斜角φ)を検知する傾斜センサであり、これらの具体的構成は図3において詳述する。
【0022】
25は、管理サーバ30からの指令に基づいてアクチュエータ22を可動させて指向性アンテナ21の配向角(θ、φ)を制御するコントローラであり、方位センサ23および傾斜センサ24の各検知信号を管理サーバ30側へ出力する機能も備えている。
【0023】
26は、管理サーバ3からの指令に基づいて指向性アンテナ21の発信電波強度を制御する電波強度制御部であり、該アンテナ21の電波を受信する機能と該受信電波を管理サーバ30側へ出力する機能も備えている。
【0024】
27は、前記コントローラ25および電波強度制御部26とネットワーク40を介して接続された管理サーバ30との間で信号の授受を行うためのネットワークインターフェースである。尚コントローラ25および電波強度制御部26は例えばマイクロプロセッサとメモリで構成されている。
【0025】
管理サーバ30は、例えばコンピュータで構成され、前記ネットワーク40と接続をとるネットワークインターフェース31と、探索装置20に、被検知物体10の位置検知を指令する信号、状態検知を指令する信号、コントローラ25および電波強度制御部26の制御信号等を出力する探索装置制御部32と、探索装置20で取得した被検知物体10の被検知情報(位置検知情報、状態検知情報)を得て、位置の特定および状態の判定を行う検知情報管理部33とを備えている。
【0026】
34は、管理サーバ30が取得した情報および位置検知および状態検知のために必要な情報を格納するデータベースである。このデータベース34は、被検知物体10a〜10nを識別する物体IDとその物体に貼付けたICタグ12a〜12nの貼付部位情報(物体が設置されたときのアンテナの配向角(水平角θA,傾斜角φA))とを関連付けた被検知物体テーブル34aと、探索装置20A〜20Nを識別するID等の探索装置20に関するデータが格納された探索装置テーブル34bと、前記ICタグ12a〜12n固有のID情報とそのタグが取り付けられている被検知物体10a〜10nの名前、種類等の情報を関連付けたタグ情報テーブル(図示省略)等を備え、テーブル間のリレーションシップによって所要の情報を検索、抽出する。
【0027】
35IN(図1では35)は、被検知物体10a〜10nの位置検知指令、状態検知指令を管理サーバ30に入力する入力インターフェースである。この入力インターフェース35INに、各ICタグ12a〜12n固有のID情報や、前記タグ情報テーブルに登録されている、被検知物体10a〜10nの名前、種類等の情報を入力すると、探索装置20がその入力情報に関連するICタグが貼付けられている被検知物体を探索する。
【0028】
例えばあるICタグ固有のキーワードを入力すれば、1個のみを探索できるし、複数に関連するキーワードを入力すれば複数の被検知物体を探索することができる。
【0029】
35OUT(図1では35)は、管理サーバ30で取得した被検知情報を図示省略の端末装置に出力する結果出力インターフェースであり、該端末装置は、前記被検知情報を画面に表示したりプリントアウトする。
【0030】
例えば、自らの位置を中心として、検知されたICタグのある方向、距離の場所にそのICタグのID情報等を表示する。探索するICタグが複数ある場合には画面上にそれぞれ表示する。
【0031】
尚被検知物体10a〜10nと探索装置20A〜20Nの間の距離は、アンテナによる送受信が可能な範囲の距離とする。
【0032】
次に、探索装置20内の前記指向性アンテナ21、アクチュエータ22、方位センサ23および傾斜センサ24の詳細な構成を図3とともに説明する。
【0033】
指向性アンテナの可動機構であるアクチュエータ22は、筐体3の中央に回転可能に配設された球体4と、該筐体3内に設けられ、球体4に水平回転を与えるローラー1および鉛直回転を与えるローラー2とを備えている。
【0034】
指向性アンテナ21は、球体4の中心軸上に装着され、球体に対して水平回転を与えるローラー1と鉛直回転を与えるローラー2とによって、球体4を回転させることによって指向性アンテナ21を配向させる。
【0035】
ローラー1の回転角(θ)および回転角速度を方位センサ23によって検知し、ローラー2の傾斜角(φ)および回転角速度を傾斜センサ24によって検知し、両者の検知信号を探索装置20内のネットワークインテーフェース27からネットワーク40を介して管理サーバ30に送信する。
【0036】
次に、図1、図2のシステムにおける物体検出方法を説明する。本発明の物体検知方法において取得する物体の被検知情報は、位置検知情報と状態検知情報であるが、まず位置検知情報の取得方法について説明する。
【0037】
まず検知対象の被検知物体10に貼付されているICタグの情報(固有のID情報やICタグ固有のキーワード)を、入力インターフェース35INを介して管理サーバ30に入力する。
【0038】
管理サーバ30はネットワーク40を介して全探索装置20A〜20Nに位置検知指令を送信し、全探索装置20A〜20Nが探索を開始する。すなわち、指向性アンテナ21を水平(θ)方向に走査しながら放射電波強度最大の電波を発する。
【0039】
検知対象の被検知物体10に貼付されているICタグ12が指向性アンテナ21の送受信可能領域内にあれば、ICタグ12からのデータを受信する。そのタグのID情報が入力データと一致すれば、その指向性アンテナ21が送受信可能な方向に探索中の被検知物体がある。
【0040】
そしてその探索中のICタグから返信があった時の指向性アンテナ21の角度の重心点をICタグのある方向θと確定する。
【0041】
次に、その返信があったICタグ12と返信を受けた探索装置20との間の距離rを測定する。この距離rは探索装置20から送られてくる情報に基づいて管理サーバ30が求め、指向性アンテナ21の配向角(水平方向θ)とによって検知対象の被検知物体10の位置が特定される。
【0042】
距離rの測定方法としては、例えば前記確定された水平方向θを一定とし、指向性アンテナ21の放射電波強度(送信電波強度)を走査し、放射電波強度に対する受信電波強度比Rを検知し、該Rにより距離rを求める。
【0043】
また距離rの測定方法としては、ICタグ12から受信された電界の強度Eを電波強度制御部26で測定する方法がある。この電界強度Eの測定結果より、管理サーバ30において、距離rと電界強度Eの関係がr=α/E(αは周波数、出力電界強度によって決まる任意の値)であることから距離rを求める。
【0044】
また、ICタグ12へ電波を送信する時の出力強度を変更する方法がある。すなわちICタグの起電に必要な電波強度がICタグに届かなければ、ICタグから電波が送信されてこない事を利用する。電波強度制御部26によって送信の出力を下げていき、ICタグ12からのデータの送信が受信できなかった時の出力Pに基づいて、管理サーバ30が距離rを算出する。
【0045】
あるいは、ICタグ12のアンテナ11と探索装置20の指向性アンテナ21に、異なる周波数用のアンテナを採用する事によって距離rを測定する。すなわち周波数によって、測定可能レンジが異なることを利用する。一般的にICタグに使われる周波数はHF帯、UHF帯、マイクロ波があるが、それぞれHF帯(1m程度)、UHF帯(6m程度)、マイクロ波(2m程度)の電波を飛ばす事が可能であるので、ICタグ12よりデータが返信された電波の種類によって管理サーバ30において、三段階に距離rを求める。
【0046】
次に、被検知物体の位置を検知する具体的な処理手順を図4のフローチャートとともに説明する。図4は、前記距離rを、前述した放射電波強度に対する受信電波強度比Rに基づいて求める方式を採用した場合の処理を示している。
【0047】
まずステップS1において、入力インターフェース35INを介して検知対象の被検知物体の情報IDが入力されると、管理サーバ30は検知対象の被検知物体10の位置検知指令を全探索装置20A〜20Nに発する。
【0048】
次にステップS2において、全探索装置20A〜20Nは各指向性アンテナ21を放射電波強度最大にて水平方向(θ)に走査する。
【0049】
次にステップS3において、例えばM番目の探索装置20MがICタグ12からの返信を受けて被検知物体10を検知すると、そのときの水平方向θ0を特定し、ステップS4において被検知物体の発見を、特定した水平方向θ0とともに管理サーバ30に通知する。
【0050】
次にステップS5において、管理サーバ30はM番目の探索装置20Mに位置検知の継続を指令し、M番目以外の探索装置に探索停止を指令する。
【0051】
次にステップS6において、M番目の探索装置20Mは、指向性アンテナ21の水平方向θ0を一定とし、該アンテナから発信する電波強度を走査(制御)し、ステップS7において、放射電波強度に対するICタグ12からの受信電波の強度比Rを検知し、該RをステップS8において管理サーバ30に通知する。
【0052】
次にステップS9において、管理サーバ30は、前記通知された位置検知情報(θ0、R)に対応する被検知物体の位置を特定する。
【0053】
次に被検知物体の状態検知情報を取得する方法について説明する。本発明では、探索装置20とICタグ12双方のアンテナ(21と11)は偏波面が合っていなければロスが多くなって受信強度が減衰することを利用し、図5に示すように探索装置20の指向性アンテナ21をθ、φ方向に走査して最大受信電波強度となる配向角θ0、φ0を検知する。そしてこの検知した配向角(θ0、φ0)をネットワーク40を介して管理サーバ30に転送する。
【0054】
データベース34の被検知物体テーブル34aには、被検知物体IDとICタグの貼付部位情報(アンテナの配向角(θA、φA))をセットで格納しておき、前記(θ0、φ0)と(θA、φA)を管理サーバ30が照合することによって、当該ICタグ12を貼付した被検知物体10の状態(配向、傾斜、転倒、変形)を検知する。
【0055】
すなわち、例えば図6に示すように瓶61、杖62、花63等にICタグ12のアンテナ11を、例えば垂直に貼付けておくことにより、前記アンテナ11の配向角(θ0、φ0)の情報とICタグの貼付部位情報(θA、φA)とに基づいて、瓶61の転倒、杖62を使用する怪我人の転倒、花63の萎れ等の状態を判定することができる。
【0056】
次に、被検知物体の状態検知情報を取得する具体的な処理手順の一例を図7のフローチャートとともに説明する。
【0057】
まずステップS11において、入力インターフェース35INを介して検知対象の被検知物体の情報IDが入力されると、管理サーバ30は検知対象の被検知物体10の状態検知指令を全探索装置20A〜20Nに発する。
【0058】
次にステップS12において、全探索装置20A〜20Nは各指向性アンテナ21を放射電波強度最大にて水平方向(θ)に走査する。
【0059】
次にステップS13において、例えばK番目の探索装置20KがICタグ12からの返信を受けて被検知物体10を検知すると、ステップS14において被検知物体の発見を管理サーバ30に通知する。
【0060】
次にステップS15において、管理サーバ30はK番目の探索装置20Kに状態検知の継続を指令し、K番目以外の探索装置に探索停止を指令する。
【0061】
次にステップS16において、K番目の探索装置20Kは、指向性アンテナ21を、放射電波強度最大にて鉛直(φ)方向に走査(制御)し、ステップS17において、受信電波最大となる(θ0、φ0)を検知し、該(θ0、φ0)をステップS18において管理サーバ30に通知する。
【0062】
次にステップS19において、管理サーバ30は、前記通知された(θ0、φ0)と被検知物体テーブル34a内の(θA、φA)とを照合し、ステップS20において(θA、φA)に対応する被検知物体10の状態を判定する。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施形態例を示すシステムの構成図。
【図2】本発明の実施形態例を示す機能ブロック図。
【図3】本発明の実施形態例における指向性アンテナ可動機構の具体例を示す構成図。
【図4】本発明の実施形態例における被検知物体の位置探索処理の流れを示すフローチャート。
【図5】本発明の実施形態例における被検知物体の状態検知方法の原理を示す説明図。
【図6】本発明の実施形態例における被検知物体の状態検知の具体例を示す説明図。
【図7】本発明の実施形態例における被検知物体の状態検知処理の流れを示すフローチャート。
【符号の説明】
【0064】
1、2…ローラー、3…筐体、4…球体、10,10a〜10n…被検知物体、11,11a〜11n…アンテナ、12、12a〜12n…ICタグ、20,20A〜20N…探索装置、21…指向性アンテナ、22…アクチュエータ、23…方位センサ、24…傾斜センサ、25…コントローラ、26…電波強度制御部、27、31…ネットワークインターフェース、30…管理サーバ、32…探索装置制御部、33…検知情報管理部、34…データベース、35IN…入力インターフェース、35OUT…結果出力インターフェース、40…ネットワーク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
指向性アンテナと、前記指向性アンテナからの放射電波の指向性を変更するアクチュエータと、前記アクチュエータを制御するコントローラと、前記指向性アンテナから発する電波強度および受信電波強度を制御する電波強度制御部と、前記指向性アンテナの配向角を検知する配向角検知手段と
を具備し、ICタグを貼付した複数の被検知物体を検知することを特徴とする物体検知装置。
【請求項2】
ICタグを貼付した一つまたは複数の被検知物体と、特定空間内の所定の位置に配備され、前記ICタグからの電波を受信して前記被検知物体の被検知情報を検知する一つまたは複数の探索装置と、前記複数の探索装置の各々とネットワークを介して接続され、前記複数の探索装置を制御するとともに前記探索装置が取得した前記被検知情報を得て管理する管理サーバと、前記管理サーバが取得した情報を格納するデータベースとで構成され、前記複数の被検知物体の被検知情報を取得する物体検知システムであって、
前記複数の探索装置は、
指向性アンテナと、前記指向性アンテナからの放射電波の指向性を変更するアクチュエータと、前記アクチュエータを制御するコントローラと、前記指向性アンテナから発する電波強度および受信電波強度を制御する電波強度制御部と、前記指向性アンテナの配向角を検知する配向角検知手段と
を各々具備することを特徴とする物体検知システム。
【請求項3】
ICタグを貼付した一つまたは複数の被検知物体と、特定空間内の所定の位置に配備され、前記ICタグからの電波を受信して前記被検知物体の被検知情報を検知する一つまたは複数の探索装置と、前記複数の探索装置の各々とネットワークを介して接続され、前記複数の探索装置を制御するとともに前記探索装置が取得した前記被検知情報を得て管理する管理サーバと、前記管理サーバが取得した情報を格納するデータベースとで構成され、前記複数の被検知物体の被検知情報を取得する物体検知システムにおいて、
探索装置が具備する指向性アンテナを走査することによって前記ICタグからの電波を受信したときの、該アンテナの配向角と、前記指向性アンテナの送信電波強度又は受信電波強度のうちすくなくともいずれか一方に基づいて求めた、該アンテナからICタグまでの距離とから前記被検知情報を取得することを特徴とする物体検知方法。
【請求項4】
請求項3に記載の物体検知方法において、
前記距離は、前記ICタグからの電波を受信したときの前記指向性アンテナの配向角における送信電波強度に対する前記ICタグからの受信電波強度の比に基づいて求めることを特徴とする物体検知方法。
【請求項5】
請求項3に記載の物体検知方法において、
前記距離は、前記指向性アンテナの受信電波強度Eを測定し、距離r=α/E(αは周波数、出力電界強度によって決まる任意の値)なる関係に基づいて求めることを特徴とする物体検知方法。
【請求項6】
請求項3に記載の物体検知方法において、
前記距離は、前記指向性アンテナから発する送信電波強度を制御し、ICタグからの受信電波が無しとなるときの送信電波強度に基づいて求めることを特徴とする物体検知方法。
【請求項7】
請求項3ないし6のいずれか1項に記載の物体検知方法において、
前記データベースには、前記被検知物体における前記ICタグの貼付部位情報と、前記被検知物体の識別情報とを関連付けたテーブルが格納され、
前記複数の探索装置は、該探索装置が具備する指向性アンテナを走査することによって、前記ICタグからの受信電波強度が最大となるアンテナの配向角の情報を得、
前記管理サーバは、前記アンテナの配向角の情報と、前記テーブルに格納されたICタグの貼付部位情報とを照合することによって、前記被検知物体の状態を示す前記被検知情報を取得することを特徴とする物体検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−294114(P2009−294114A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−148605(P2008−148605)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】