説明

物体識別装置

【課題】本発明は、物体の一部でセンサにより検出できない未検出領域を検出することで、物体の識別精度の向上を図ることができる物体識別装置を提供する。
【解決手段】本発明は、撮像カメラ2及びLRF3により検出された物体Aの特徴量に基づいて物体が識別対象物体であるか否かを判定する物体識別装置1において、物体Aの一部で撮像カメラ2及びLRF3によりにより検出できない未検出領域T4,T6を検出する未検出領域検出部15と、未検出領域検出部15の検出結果に基づいて、物体Aが識別対象物体であるか否かを判定する物体識別部16と、を備える。この物体識別装置1によれば、未検出領域が存在する場合に、この未検出領域を検出して区別することで、未検出領域において検出される特徴量すなわち遮蔽物等の特徴量を該物体の特徴量と誤認識することを回避し、これによって物体の識別精度を向上させることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体を識別する物体識別装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、例えば特開2007−334751号公報に記載されるように、カメラの撮像画像から物体の第1の特徴量(例えば、歩行者の頭部)を検出し、この第1の特徴量の下方に所定の第2の特徴量(例えば歩行者の脚部)を検出することで物体を識別する車両周辺監視装置が知られている。この車両周辺監視装置によれば、第1の特徴量に応じた所定の条件下で第2の特徴量を検出することにより、物体の識別精度の向上が図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−334751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した従来の車両周辺監視装置にあっては、物体の一部が遮蔽物等により検出できない場合に、その部分の特徴量が検出されず識別不能となったり、該物体の特徴量と遮蔽物の特徴量とを混同したりして、正確な識別が行なわれないおそれがあった。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、物体の一部でセンサにより検出できない未検出領域を検出することで、物体の識別精度の向上を図ることができる物体識別装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、センサにより検出された物体の特徴量に基づいて物体が識別対象物体であるか否かを判定する物体識別装置において、物体の一部でセンサにより検出できない未検出領域を検出する未検出領域検出手段と、未検出領域検出手段の検出結果に基づいて、物体が識別対象物体であるか否かを判定する識別手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る物体識別装置によれば、例えばセンサの検出範囲外の場合やセンサの検出範囲から物体を遮蔽する遮蔽物により、センサが検出できない物体の一部である未検出領域が存在する場合に、この未検出領域を検出して区別することで、未検出領域において検出される特徴量すなわち遮蔽物等の特徴量を該物体の特徴量と誤認識することを回避し、これによって物体の識別精度を向上させることが可能となる。
【0008】
また、予め記憶された複数の識別対象モデルにおける特徴量と物体の特徴量との一致度を算出する一致度算出手段を更に備え、識別手段は、未検出領域検出手段の検出結果に応じて一致度を補正すると共に、補正後の一致度に基づいて物体が識別対象物体であるか否かを判定することが好ましい。
【0009】
この物体識別装置では、予め記憶された複数の識別対象モデルの特徴量と物体の特徴量との一致度が算出され、この一致度に基づいて物体が識別対象物体であるか否かが判定される。ここで、物体の一部に未検出領域(例えば遮蔽物に遮蔽された領域)が検出されたときは、例えば識別に係る未検出領域の影響を少なくするように一致度を補正することで、未検出領域において検出される特徴量すなわち遮蔽物等の特徴量を該物体の特徴量と誤認識することを回避することが可能となる。
【0010】
また、一致度算出手段の算出した一致度に基づいて、複数の識別対象モデルの中から識別対象物体候補を選定する識別対象物体候補選定手段を更に備え、未検出領域検出手段は、識別対象物体候補の特徴量と物体の特徴量とを比較することで未検出領域を検出することが好ましい。
【0011】
この物体識別装置によれば、物体との一致度の高い識別対象物体候補を選定し、この識別対象物体候補の形態(例えば歩行者の全身モデル)と物体の形態(例えば遮蔽物により片腕が遮蔽された歩行者)とを比較することで、未検出領域(遮蔽物により遮蔽された片腕)を検出することができる。
【0012】
また、識別手段は、未検出領域が存在する物体の一致度を加算する補正をすることが好ましい。この場合、未検出領域が存在することによる一致度の低下を考慮して、一致度を加算する補正をすることにより、物体の識別に係る未検出領域の影響を小さくすることが可能となる。
【0013】
また、識別手段は、物体の未検出領域における一致度を除外して、物体が識別対象物体であるか否かを判定することが好ましい。この場合、未検出領域における一致度すなわち物体ではない遮蔽物等と識別対象モデルとの一致度を除外することで、遮蔽物等と識別対象モデルとの一致度を物体と識別対象モデルとの一致度と誤認識することを回避し、これによって物体の識別精度を向上させることが可能となる。
【0014】
また、識別手段は、物体の特徴量の時系列変化に基づいて、一致度を補正することが好ましい。例えば小型車等の遮蔽物の向こう側を歩く歩行者が時間の経過に伴って頭、腕、体の順に現れる場合を考えると、ある物体において歩行者モデルの頭と一致度が高い部位を検出した後、時間の経過に伴って該物体に歩行者モデルの腕と一致度が高い部位が新たに検出されたときは、歩行者モデルの頭及び腕と一致度が高い物体が一度に検出されたとき(木等の静止物の可能性があるとき)よりも歩行者である可能性が高くなると考えられるので、該物体の特徴量と歩行者モデルの特徴量との一致度を大きく補正することにより、物体の識別精度の向上を図ることができる。
【0015】
また、物体を遮蔽する遮蔽物を検出する遮蔽物検出手段を更に備え、未検出領域検出手段は、遮蔽物に遮蔽された物体の一部を未検出領域として検出することが好ましい。この場合、遮蔽物による未検出領域をより確実に検出することが可能となるので、装置の信頼性の向上を図ることができる。
【0016】
また、識別手段は、識別対象物体候補のうち遮蔽物に遮蔽された部位の大きさと遮蔽物の大きさとの差分に基づいて、一致度を補正することが好ましい。例えば歩行者モデルとの一致度が高い物体について、歩行者モデルの半身にあたる部分が遮蔽物により覆われて未検出領域となっているとき、該遮蔽物が電柱である場合と比べて該遮蔽物が大型トラックである場合にはその後ろに歩行者の半身以外の特徴量(木の根元等)が存在する可能性が高くなると考えられる。そこで、識別対象物体候補のうち遮蔽物に遮蔽された部位の大きさと遮蔽物の大きさとの差分が小さい場合には、一致度を高く補正することにより、物体の識別精度の向上を図ることができる。
【0017】
また、識別手段は、遮蔽物の種類に基づいて、一致度を補正することが好ましい。例えば検出された遮蔽物の種類が建物のドアであった場合、この遮蔽物に遮蔽されている物体はドアから出てくる歩行者である可能性が高いと考えられる。そこで、例えば遮蔽物の種類が建物のドアである場合には歩行者モデルとの一致度が高くなるように補正することにより、物体の識別精度の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、物体の一部でセンサにより検出できない未検出領域を検出することで、物体の識別精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る物体識別装置の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】(a)歩行者及び歩行者モデルを示す図である。(b)歩行者モデルを示す図である。
【図3】歩行者の未検出領域を示す図である。
【図4】図1の物体識別装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】(a)遮蔽物に遮蔽された歩行者を示す図である。(b)所定時間経過後における(a)の歩行者を示す図である。(c)所定時間経過後における(b)の歩行者を示す図である。
【図6】(a)遮蔽物に遮蔽された歩行者を示す図である。(b)(a)に示す遮蔽物より大きな遮蔽物に遮蔽された歩行者を示す図である。
【図7】建物のドアに遮蔽された歩行者を示す図である。
【図8】建物から出車する車両を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る物体識別装置の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
図1に示すように、第1の実施形態に係る物体識別装置1は、車両に設けられ、車両周囲の物体が識別対象物体(歩行者、乗用車、トラック等)であるか否かを判定するものであり、撮像カメラ(センサ)2、LRF[Laser Range Finder](センサ)3、及びECU10を備えている。
【0022】
撮像カメラ2は、車両に設けられ、車両の周囲の画像を撮像するカメラである。撮像カメラ2は、撮像した画像を画像情報(検出情報)としてECU10に送信する。LRF3は、車両に設けられ、レーザにより車両周囲の物体と車両との距離を検出するものである。LRF3は、検出した物体と車両との距離を物体距離情報としてECU10に送信する。
【0023】
ECU10は、演算処理を行うCPU[Central Processing Unit]、記憶部となるROM[Read Only Memory]及びRAM[Random Access Memory]、入力信号回路、出力信号回路、電源回路等により構成され、物体識別装置1を統括的に制御する電子制御ユニットである。ECU10は、特徴量抽出部11、識別対象モデル記憶部12、一致度算出部(一致度算出手段)13、識別対象物体候補選定部(識別対象物体候補選定手段)14、未検出領域検出部(未検出領域検出手段、遮蔽物検出手段)15、及び物体識別部(識別手段)16を有している。
【0024】
特徴量抽出部11は、撮像カメラ2から送信された画像情報に基づいて、車両の周囲に位置する物体の特徴量(輪郭や絵柄等)を抽出する。特徴量抽出部11は、例えば図2(a)に示すように、物体Aの各部(すなわち頭a1、体a2、腕a3,a4、脚a5,a6)のそれぞれにおける特徴量である局所特徴量を抽出する。
【0025】
識別対象モデル記憶部12は、物体識別装置1の識別対象物体である歩行者、乗用車、トラック等を抽象化した識別対象モデルを記憶している。この識別対象モデルには、歩行者、乗用車、トラック等の特徴量、それらを構成する各部の位置関係、及び各部の局所特徴量が含まれている。例えば、図2(b)にしめすように、歩行者に対応する歩行者モデルMは、6個の部位、頭m1、体m2、腕m3,m4、脚m5,m6から構成される。
【0026】
一致度算出部13は、特徴量抽出部11が抽出した物体の特徴量と、識別対象モデル記憶部12が記憶している識別対象モデルの特徴量との一致度を算出する。具体的には、一致度算出部13は、物体Aを構成する各部a1〜a6の局所特徴量と、歩行者モデルMを構成する各部m1〜m6の局所特徴量との一致度を算出する。識別対象物体候補選定部14は、一致度算出部13の算出した各識別対象モデルと物体Aとの一致度に基づいて、一致度の高い識別対象物体候補M1(本実施形態においては歩行者モデルMと同じ)を選定する。
【0027】
未検出領域検出部15は、撮像カメラ2から送信された画像情報とLRF3から送信された物体距離情報とに基づいて、撮像カメラ2及びLRF3により検出できない物体Aの一部である未検出領域を検出する。具体的には、図3に示すように、未検出領域検出部15は、物体距離情報に基づいて、物体Aの手前に位置する物体Sを検出する。そして、未検出領域検出部15は、画像情報に基づき物体Aの形態(すなわち物体Aの各部a1〜a6の位置関係)と識別対象物体候補M1の形態(すなわち識別対象物体候補M1の各部m1〜m6の位置関係)とを比較して、物体Sとの重複部位(図3におけるm4,m5)や画像情報に含まれない部位(撮像カメラ2やLRF3の検出範囲外の部位)を未検出領域T4,T6として検出する。同時に、未検出領域検出部15は、物体Sが物体Aの一部を遮蔽する遮蔽物であると検出する。
【0028】
物体識別部16は、未検出領域検出部15の検出した未検出領域に応じて識別対象物体候補M1の特徴量と物体Aの特徴量との一致度を補正する。具体的には、図3に示すように、物体識別部16は、物体Aの各部a1〜a6に対する未検出領域T4,T6の割合に応じて、識別対象物体候補M1の特徴量と物体Aの特徴量との一致度を加算する補正を行なう。このように、未検出領域が存在することによる物体Aと識別対象物体候補M1との一致度の低下を考慮して、一致度を加算する補正をすることにより、物体の識別に係る未検出領域の影響を小さくすることが可能となる。或いは、一致度の加算に代えて、後述する識別対象物体の判定に係る閾値を下げることによっても同様の効果を得ることができる。
【0029】
物体識別部16は、補正した一致度が所定の閾値以上であるか否かを判定する。このとき、物体識別部16は、未検出領域T4,T6において検出された特徴量を消去すなわち未検出領域T4,T6における一致度を除外して、局所一致度の和を算出し、この和が所定の閾値以上であるか否かを判定する。このように、未検出領域T4,T6における一致度すなわち遮蔽物Sと識別対象物体候補M1との一致度を除外することで、遮蔽物Sと識別対象物体候補M1との一致度を物体Aと識別対象物体候補M1との一致度であると誤認識することを回避し、これによって物体の識別精度を向上させることが可能となる。なお、未検出領域T4,T6における一致度を除外する代わりに、適切に一致度の補正を行なうことによっても同様の効果を得ることができる。
【0030】
物体識別部16は、補正した一致度が所定の閾値以上であると判定した場合、物体Aが識別対象物体候補M1と同一、すなわち物体Aは識別対象物体(この場合は歩行者)であると判定する。一方、物体識別部16は、未検出領域検出部15が未検出領域を検出しなかった場合、一致度算出部13の算出した一致度(算出した局所一致度の和)が所定の閾値以上であるか否かを判定する。物体識別部16は、補正した一致度が所定の閾値以上であると判定した場合、物体Aは識別対象物体であると判定する。
【0031】
次に、以上の構成を有する物体識別装置1の処理について図面を参照して説明する。
【0032】
図2〜図4に示すように、物体識別装置1は、撮像カメラ2により車両の周囲の画像情報を取得すると共に、LRF3により車両の周囲の物体距離情報を取得する(S1)。ECU10の特徴量抽出部11は、画像情報に基づいて、物体の特徴量を抽出する(S2)。
【0033】
続いて、一致度算出部13は、特徴量抽出部11が抽出した物体の特徴量と、識別対象モデル記憶部12が記憶している識別対象モデルの特徴量との一致度を算出する(S3)。その後、識別対象物体候補選定部14は、一致度算出部13の算出した各識別対象モデルと物体Aとの一致度に基づいて、一致度の高い識別対象物体候補M1を選定する(S4)。
【0034】
未検出領域検出部15は、撮像カメラ2から送信された画像情報とLRF3から送信された物体距離情報とに基づいて、撮像カメラ2及びLRF3により検出できない物体Aの一部である未検出領域を検出する(S5)。未検出領域検出部15が未検出領域を検出できなかった場合、ステップS7に移行する。一方、未検出領域検出部15が未検出領域を検出した場合、物体識別部16は、未検出領域に応じて識別対象物体候補M1の特徴量と物体Aの特徴量との一致度を補正する(S6)。
【0035】
ステップS7において、物体識別部16は、物体Aの特徴量と識別対象物体候補M1の特徴量との一致度が所定の閾値以上であるか否かを判定する。物体識別部16は、補正した一致度が所定の閾値以上であると判定した場合、物体Aは識別対象物体であると判定する(S8)。一方、物体識別部16は、補正した一致度が所定の閾値未満であると判定した場合、ステップS1に戻って処理を繰り返す。
【0036】
以上説明した物体識別装置1によれば、例えば撮像カメラ2やLRF3の検出範囲外の場合や遮蔽物Sの存在により、撮像カメラ2及びLRF3が検出できない物体の一部である未検出領域T4,T6が存在する場合に、この未検出領域T4,T6を検出して区別することで、未検出領域T4,T6において検出される特徴量すなわち遮蔽物S等の特徴量を該物体Aの特徴量と誤認識することを回避し、これによって物体の識別精度を向上させることが可能となる。
【0037】
また、この物体識別装置1では、識別対象モデル記憶部12に記憶された複数の識別対象モデルの特徴量と物体Aの特徴量との一致度が算出され、この一致度に基づいて物体Aが識別対象物体であるか否かが判定される。ここで、物体Aの一部に未検出領域(例えば遮蔽物に遮蔽された領域)が検出されたときは、例えば識別に係る未検出領域の影響を少なくするように一致度を補正することで、未検出領域T4,T6において検出される特徴量すなわち遮蔽物S等の特徴量を該物体の特徴量と誤認識することを回避することができる。
【0038】
また、この物体識別装置1では、遮蔽物Sを検出し、この遮蔽物Sにより遮蔽された物体の一部を未検出領域として検出するので、遮蔽物を検出しない場合と比べて、未検出領域のより確実な検出が可能となり、装置の信頼性の向上を図ることができる。
【0039】
以上、本発明に係る物体識別装置1の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、物体識別部16による一致度の補正については、上述した他に種々の方法が考えられる。
【0040】
例えば、図3に示すように、物体識別部16は、物体Aを構成する各部a1〜a6のうち、未検出領域T4,T6に対応するa4,a6の一致度を加算する補正を行なっても良い。また、物体識別部16は、未検出領域が検出された場合、その他の部位a1〜a3、a5における一致度を加算する補正を行なっても良い。
【0041】
また、物体識別部16は、例えば未検出領域検出部15の検出結果から腕a4が遮蔽物Sにより完全に覆われていると認識した場合、識別対象物体候補M1の腕m4を削除したモデルを新たに識別対象物体候補M2として構成し直しても良い。この場合、物体識別部16は、一致度算出部13の算出した一致度が新たな識別対象物体候補M2の特徴量と物体Aの特徴量との一致度となるように、各部a1〜a3,a5,a6における一致度の重み(全体の一致度における各部の一致度の割合)を変える補正を行う。
【0042】
また、物体識別部16は、一部が遮蔽物Sに覆われている脚a6について、脚a6のうち遮蔽部Sに覆われていない部分の一致度を加算する補正を行なっても良い。このとき、未検出領域T6(脚a6のうち遮蔽部Sに覆われた部分)においては、算出された一致度は遮蔽物Sとの一致度であるため、一致度を特定の値(例えば0)とする補正を行なう。同様に、遮蔽物Sにより完全に覆われている腕a4(未検出領域T4)における一致度を特定の値とする補正を行なう。このように、未検出領域T4,T6における一致度すなわち遮蔽物S等と識別対象モデルとの一致度を特定の値とすることで、物体の識別に係る未検出領域の影響を小さくすることが可能となる。
【0043】
更に、図5に示すように、物体識別部16は、特徴量抽出部11が抽出した物体Aの特徴量の時系列変化に基づいて一致度を補正しても良い。具体的には、小型車等の遮蔽物Pの向こう側で道路Rに向かって歩く歩行者Bが時間の経過に伴って頭b1、腕b3、体b2の順に現れる場合を考えると、ある物体において歩行者モデルMの頭m1と一致度が高い部位(図5におけるb1)を検出した後、時間の経過に伴って該物体に歩行者モデルMの腕m3と一致度が高い部位(図5におけるb3)が新たに検出されたときは、歩行者モデルMの頭m1及び腕m3と一致度が高い物体が同時に検出されたとき(木等の静止物の可能性があるとき)よりも歩行者である可能性が高くなると考えられるので、該物体Bの特徴量と歩行者モデルMの特徴量との一致度を大きく補正することにより、物体の識別精度の向上を図ることができる。
【0044】
また、図6に示すように、物体識別部16は、識別対象物体候補のうち遮蔽物に遮蔽された部位(本実施形態における未検出領域T4,T6)の大きさと遮蔽物の大きさとの差分に基づいて、一致度を補正しても良い。例えば歩行者モデルMとの一致度が高い物体Aについて、歩行者モデルMの腕m4,脚m5にあたる部分が遮蔽物により覆われて未検出領域となっているとき、画像上で該遮蔽物が小さい(図6(a))場合と比べて該遮蔽物が大きい(図6(b)参照)場合にはその後ろに歩行者の以外の特徴量(木の根元等)が存在する可能性が高くなると考えられる。そこで、識別対象物体候補のうち遮蔽物に遮蔽された部位の大きさと遮蔽物の大きさとの差分が小さい場合には、一致度を高く補正することにより、物体の識別精度の向上を図ることができる。
【0045】
また、図7に示すように、物体識別部16は、遮蔽物の種類に基づいて、一致度を補正しても良い。例えば未検出領域検出部15により検出された遮蔽物Dの種類が建物Hのドアであった場合、この遮蔽物Dにより遮蔽されている物体Aはドアから出てくる歩行者である可能性が高いと考えられる。同様に、図8に示すように、未検出領域検出部15により検出された遮蔽物Jの種類が乗用車専用駐車場である場合、この遮蔽物Jにより遮蔽されている物体C(車両の前部しか露出していないため乗用車とトラックとの区別ができない物体)はトラックではなく乗用車である可能性が高いと考えられる。そこで、遮蔽物の種類が建物のドアである場合には歩行者モデルMとの一致度が高くなるように補正し、遮蔽物の種類が乗用車専用駐車場である場合には乗用車モデルとの一致率が高くトラックモデルとの一致率が低くなるように補正することで、物体の識別精度の向上を図ることができる。なお、このような遮蔽物の種類に関する情報は、テンプレートを用いた画像処理により取得できる他、建物等の遮蔽物の種類を地図情報と関連付けて記憶させておき、車両の現在地から認識する態様であっても良い。或いは、RFID[Radio Frequency Identification]タグを読み取ることで情報を取得しても良く、その他路車間通信により情報を取得しても良い。
【0046】
また、物体識別装置1は、未検出領域検出部15によって未検出領域が検出された場合、物体が識別対象物体であるか否かの判定方法を変更するものであっても良い。この判定方法の変更には、識別対象物体候補M1の特徴量と物体Aの特徴量との一致度の補正や、識別対象物体の判定に係る閾値の調整、その他上述したように識別対象物体候補M1の腕m4(未検出領域)を削除したモデルとして識別対象物体候補M2を新たに構成して用いること等が相当する。
【0047】
上述した補正の方法は、全て用いられる態様であっても良いが、状況に応じ適宜組み合わせて用いられることが好ましい。また、物体を検出するセンサは、撮像カメラ2及びLRF3の組み合わせに限られない、例えば撮像カメラ2のみであってもよい。また、本発明に係る物体識別装置1は、車両に搭載される場合に限られず、例えば建物に固定された定点カメラやいわゆるロボットに対しても好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1…物体識別装置、2…撮像カメラ(センサ)、3…LRF(センサ)、10…ECU、12…識別対象モデル記憶部、13…一致度算出部(一致度算出手段)、14…識別対象物体候補選定部(識別対象物体候補選定手段)、15…未検出領域検出部(未検出領域検出手段,遮蔽物検出手段)、16…物体識別部(識別手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサにより検出された物体の特徴量に基づいて前記物体が識別対象物体であるか否かを判定する物体識別装置において、
前記物体の一部で前記センサにより検出できない未検出領域を検出する未検出領域検出手段と、
前記未検出領域検出手段の検出結果に基づいて、前記物体が前記識別対象物体であるか否かを判定する識別手段と、
を備えることを特徴とする物体識別装置。
【請求項2】
予め記憶された複数の識別対象モデルにおける特徴量と前記物体の特徴量との一致度を算出する一致度算出手段を更に備え、
前記識別手段は、前記未検出領域検出手段の検出結果に応じて前記一致度を補正すると共に、補正後の一致度に基づいて前記物体が前記識別対象物体であるか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の物体識別装置。
【請求項3】
前記一致度算出手段の算出した前記一致度に基づいて、前記複数の識別対象モデルの中から識別対象物体候補を選定する識別対象物体候補選定手段を更に備え、
前記未検出領域検出手段は、前記識別対象物体候補の形態と前記物体の形態とを比較することで前記未検出領域を検出することを特徴とする請求項2に記載の物体識別装置。
【請求項4】
前記識別手段は、前記未検出領域が存在する前記物体の前記一致度を加算する補正をすることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の物体識別装置。
【請求項5】
前記識別手段は、前記物体の前記未検出領域における前記一致度を除外して、前記物体が前記識別対象物体であるか否かを判定することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の物体識別装置。
【請求項6】
前記識別手段は、前記物体の特徴量の時系列変化に基づいて、前記一致度を補正することを特徴とする請求項2〜請求項5のうちいずれか一項に記載の物体識別装置。
【請求項7】
前記物体を遮蔽する遮蔽物を検出する遮蔽物検出手段を更に備え、
前記未検出領域検出手段は、前記遮蔽物に遮蔽された前記物体の一部を前記未検出領域として検出することを特徴とする請求項1〜請求項6のうちいずれか一項に記載の物体識別装置。
【請求項8】
前記識別手段は、前記識別対象物体候補のうち前記遮蔽物に遮蔽された部位の大きさと該遮蔽物の大きさとの差分に基づいて、前記一致度を補正することを特徴とする請求項7に記載の物体識別装置。
【請求項9】
前記識別手段は、前記遮蔽物の種類に基づいて、前記一致度を補正することを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の物体識別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−218246(P2010−218246A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−64594(P2009−64594)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】