説明

物品の方向転換装置及び方向転換方法

【課題】物品の姿勢を搬送途中で方向転換させる場合において、その方向転換させた物品の姿勢が所望の姿勢に対してずれを生じるようなときには、そのような姿勢のずれが後続の物品において生じないように自動的に修正することができる物品の方向転換装置及び方向転換方法を提供する。
【解決手段】箱Bが跨って載ることができるように並列に配置された左右両搬送コンベア28a,28bの速度を箱Bの搬送方向に対する姿勢を回転させて方向転換させ得る速度差がつくように設定し、その箱Bの搬送方向に対する姿勢を搬送経路の途中の検出位置で検出し、その検出結果に基づき、箱Bの姿勢が所望の姿勢でない場合は、検出位置で姿勢を検出された物品及びその物品に後続して搬送される物品のうち少なくとも一方の物品の姿勢が方向転換終了時点において所望の姿勢に適合するように、予め設定されている各搬送コンベア28a,28bの速度設定内容を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、箱などの物品を搬送途中で例えばパレットに段積するときの配列パターンに合わせた向きになるように方向転換させる物品の方向転換装置及びその方向転換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、工場で製品が詰められた箱(物品)は、フォークリフト等で運搬するのに都合がよいようにパレットに段積みされる。このような場合、各箱は荷崩れが起き難くなるようにするため、同じ段で隣接する二つの箱の境界の上にその上段の箱が跨って載るように例えば箱の長手方向の向き(すなわち、箱の姿勢)を違えた配列パターンを形成して一段ずつ段積みされることが多い。
【0003】
また、このようにして段積みされる箱は、それらが段積みされる段積み装置のある場所に向けて搬送コンベアにより順次搬送される。そして、こうした場合に、各箱は搬送コンベア上を同じ姿勢で搬送されてくるため、段積みされる配列パターンに応じて各箱の姿勢(例えば長手方向など所定方向の向き)を搬送途中で適宜に方向転換する必要がある。
【0004】
そこで、従来から、特許文献1に示すように、互いに異なる速度で同一方向に駆動される搬送コンベアを並列配置し、この両コンベアの速度差を利用して箱の姿勢を搬送途中で方向転換する物品の方向転換装置が提案されている。
【特許文献1】特許第3792403号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に示す従来の物品の方向転換装置及び方向転換方法においては、以下のような問題点があった。すなわち、例えば運転当日の温度・湿度などの環境変化によっては箱とコンベアとの摩擦係数が変動することがあり、それがために搬送途中で方向転換された箱の姿勢が回転不足や回転過多によって予め想定した所望の姿勢からずれてしまうことがあった。そして、そのような場合には姿勢のずれた状態で搬送されてきた箱を段積みすることになって、予定していた配列パターンどおりに各箱の段積み作業を適切に行えなくなる虞があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものである。その目的は、物品の姿勢を搬送途中で方向転換させる場合において、その方向転換させた物品の姿勢が予め想定した所望の姿勢に対してずれを生じるようなときには、そのような姿勢のずれが物品の方向転換終了時点において生じないように自動的に修正することができる物品の方向転換装置及び方向転換方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、物品の方向転換装置に係る請求項1に記載の発明は、物品を搬送するための搬送経路を有し、その搬送経路の途中で前記物品の搬送方向に対する姿勢を回転させて方向転換させ得る物品の方向転換装置において、前記物品が跨って載ることができるように並列に配置された複数列の搬送コンベアと、前記複数列の搬送コンベアの速度を前記物品の搬送方向に対する姿勢を回転させて方向転換させ得る速度差がつくように設定可能な速度設定手段と、前記物品の搬送経路の途中に設定された検出位置で前記物品の搬送方向に対する姿勢を検出する姿勢検出手段と、前記姿勢検出手段の検出結果に基づき、前記物品の搬送方向に対する姿勢が予め想定した姿勢でない場合は、前記検出位置で姿勢を検出された物品及びその物品に後続して搬送される物品のうち少なくとも一方の物品の姿勢が方向転換終了時点において予め想定した姿勢に適合するように、前記速度設定手段によって設定されている各搬送コンベアの速度設定内容を補正する補正手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、同じく物品の方向転換装置に係る請求項2に記載の発明は、物品を搬送するための搬送経路を有し、その搬送経路の途中で前記物品の搬送方向に対する姿勢を回転させて方向転換させ得る物品の方向転換装置において、前記物品が跨って載ることができるように並列に配置された複数列の搬送コンベアと、前記複数列の搬送コンベアの速度を前記物品の搬送方向に対する姿勢を回転させて方向転換させ得る速度差がつくように設定可能な速度設定手段と、前記速度設定手段による各搬送コンベアに対する速度設定内容に基づいた搬送コンベアの速度差制御の終了位置を前記物品の搬送経路の途中に設定する位置設定手段と、前記物品の搬送経路の途中に設定された検出位置で前記物品の搬送方向に対する姿勢を検出する姿勢検出手段と、前記姿勢検出手段の検出結果に基づき、前記物品の搬送方向に対する姿勢が予め想定した姿勢でない場合は、前記検出位置で姿勢を検出された物品及びその物品に後続して搬送される物品のうち少なくとも一方の物品の姿勢が方向転換終了時点において予め想定した姿勢に適合するように、前記位置設定手段によって設定されている前記速度差制御の終了位置の設定内容を補正する補正手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の物品の方向転換装置において、前記複数列の搬送コンベアは、前記物品の搬送方向に沿って分割された複数の小コンベアにより各々構成され、前記速度設定手段は、前記複数列の搬送コンベアにより方向転換させるべき物品が搬送されるときに、前記各小コンベアのうち、少なくとも前記方向転換させるべき物品が直接載る小コンベアにおいて必要な速度差がつくように、各搬送コンベアの速度を設定することを特徴とする。
【0010】
さらに、物品の方向転換方法に係る請求項4に記載の発明は、物品が跨って載ることができるように並列に配置された複数列の搬送コンベア上に各搬送コンベアを跨ぐように物品を載せた後、少なくとも前記各搬送コンベアを含んで構成される搬送経路の途中で前記物品の搬送方向に対する姿勢を回転させて方向転換させ得る物品の方向転換方法において、前記複数列の搬送コンベアの速度を前記物品の搬送方向に対する姿勢を回転させて方向転換させ得る速度差がつくように設定する速度設定段階と、前記物品の搬送経路の途中に設定された検出位置で前記物品の搬送方向に対する姿勢を検出する姿勢検出段階と、前記姿勢検出段階での検出結果に基づき、前記物品の搬送方向に対する姿勢が予め想定した姿勢でない場合には、前記検出位置で姿勢を検出された物品及びその物品に後続して搬送される物品のうち少なくとも一方の物品の姿勢が方向転換終了時点において予め想定した姿勢に適合するように、前記速度設定段階での各搬送コンベアの速度設定内容を補正する補正段階とを備えることを特徴とする。
【0011】
また、同じく物品の方向転換方法に係る請求項5に記載の発明は、物品が跨って載ることができるように並列に配置された複数列の搬送コンベア上に各搬送コンベアを跨ぐように物品を載せた後、少なくとも前記各搬送コンベアを含んで構成される搬送経路の途中で前記物品の搬送方向に対する姿勢を回転させて方向転換させる物品の方向転換方法において、前記複数列の搬送コンベアの速度を前記物品の搬送方向に対する姿勢を回転させて方向転換させ得る速度差がつくように設定する速度設定段階と、前記速度設定段階での各搬送コンベアに対する速度設定内容に基づいた搬送コンベアの速度差制御の終了位置を前記物品の搬送経路の途中に設定する位置設定段階と、前記物品の搬送経路の途中に設定された検出位置で前記物品の搬送方向に対する姿勢を検出する姿勢検出段階と、前記姿勢検出段階での検出結果に基づき、前記物品の搬送方向に対する姿勢が予め想定した姿勢でない場合には、前記検出位置で姿勢を検出された物品及びその物品に後続して搬送される物品のうち少なくとも一方の物品の姿勢が方向転換終了時点において予め想定した姿勢に適合するように、前記位置設定段階での前記速度差制御の終了位置の設定内容を補正する補正段階とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1及び請求項4に記載の発明によれば、速度設定手段によって各搬送コンベアの速度を速度差がつくように設定すると、それらの各搬送コンベアに跨るように載置された状態で上流側から下流側へ搬送される箱などの物品が搬送途中に回転し、その物品の搬送方向に対する姿勢を方向転換することが可能となる。そして、そのように方向転換させられた物品の姿勢が回転不足や回転過多によって予め想定した所望の姿勢からずれていることが物品の搬送経路の途中に設定された検出位置で検出されると、その検出結果に基づき各搬送コンベアの速度に関する速度差の設定内容が補正される。したがって、物品の姿勢を搬送途中で方向転換させる場合において、その方向転換させた物品の姿勢が予め想定した所望の姿勢に対してずれを生じるようなときには、そのような姿勢のずれが検出位置で姿勢を検出された物品及びその物品に後続する物品のうち少なくとも一方の物品において方向転換完了時に生じないように自動的に修正することができる。
【0013】
請求項2及び請求項5に記載の発明によれば、速度設定手段によって各搬送コンベアの速度を速度差がつくように設定すると、それらの各搬送コンベアに跨るように載置された状態で上流側から下流側へ搬送される箱などの物品が搬送途中に回転し、その物品の搬送方向に対する姿勢を方向転換することが可能となる。そして、そのように方向転換させられた物品の姿勢が回転不足や回転過多によって予め想定した所望の姿勢からずれていることが検出されると、その検出結果に基づき搬送コンベアの速度差制御の終了位置に関する位置設定内容が補正される。したがって、物品の姿勢を搬送途中で方向転換させる場合において、その方向転換させた物品の姿勢が予め想定した所望の姿勢に対してずれを生じるようなときには、そのような姿勢のずれが検出対象とされた物品及びその物品に後続する物品のうち少なくとも一方の物品において生じないように自動的に修正することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、各搬送コンベアの速度に速度差をつける速度設定手段による速度設定内容を搬送コンベアが搬送方向に沿って複数に分割されてなる小コンベア毎に設定することも可能となる。したがって、各搬送コンベアにおいて方向転換させるべき物品が直接載る小コンベアの互いに対応する小コンベア毎に速度差がつくように速度設定すれば、搬送コンベアが搬送方向の全体に亘り一体駆動のローラコンベヤ、或いは一体の無端状ベルトなどで構成される場合とは異なり、搬送途中に方向転換させる必要のある物品及びその必要のない物品が交互に搬送される場合にも、多数の物品を搬送方向に短い間隔で搬送可能となり高搬送効率のもとで方向転換することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(第1の実施形態)
以下、本発明を物品の一種である箱の方向転換装置及び箱の方向転換方法に具体化した第1の実施形態を図面に従って説明する。なお、以下の明細書中の説明において、前後方向、左右方向、上下方向をいう場合は、特に断らない限り図1,図2,図4,図5において矢印で示す方向をいうものとする。また、搬送方向の上流側という場合は装置の後方側を、搬送方向の下流側という場合は装置の前方側を、それぞれ示すものとする。
【0016】
図1及び図2に示すように、本実施形態の方向転換装置10は、パレット(図示略)に段積みされる物品としての箱Bを搬送するための搬送経路を有している。なお、本実施形態では、一例として、後述する方向転換部11の搬送コンベア28及びその下流側に隣接する排出部12により搬送経路が構成されている。そして、その搬送経路を使用して搬送される箱Bを搬送方向の上流側から下流側に搬送する途中で必要に応じて回転させることにより例示の如く箱Bの長手方向の向き(箱Bの姿勢)を方向転換可能な装置構成をしている。
【0017】
そして、この方向転換装置10では、箱Bの搬送方向の上流側に箱Bを方向転換させ得る方向転換部11が配置されると共に、その方向転換部11の下流側に箱Bの排出部12が方向転換部11に連続するように配置されている。すなわち、この方向転換装置10では、搬送する箱Bを方向転換させる必要がある場合、その箱Bを搬送経路の一部分である方向転換部11を介して搬送する途中で回転させて方向転換し、その後、方向転換部11から排出部12に受け渡したときの姿勢のまま排出部12を介して下流側に配置された段積み位置に向けて搬送するようになっている。因みに、図1及び図2は、箱Bが搬送途中で次第に回転して方向転換させられる様子を二点鎖線で示している。
【0018】
まず、方向転換部11について説明する。
図1及び図2に示すように、方向転換部11は、その長手方向が前後方向に沿って延びる平面視長方形状の基台13を備えており、この基台13上には、複数(本実施形態では左右で一対)の支持機構部14a,14bが配置されている。
【0019】
また、図2に示すように、各支持機構部14a,14bの下部には水平プレート24が各々設けられており、それら各水平プレート24の上面には前後方向に間隔をおいて複数(本実施形態では3つ)の可変速モータ(例えばサーボモータ)からなるモータ25がそれぞれ載置固定されている。また、各支持機構部14a,14bの上部にはそれぞれ複数本(本実施形態では18本ずつ)のローラ26が前後方向に沿って等間隔に並設されている。そして、これら各ローラ26は箱Bの搬送方向の上流側から下流側に連続する所定本数単位(本実施形態では6本単位)を一組とする複数(本実施形態では3つずつ)の小コンベア27に分割され、これらの各小コンベア27が前後方向に縦列配置となることで、箱Bが跨って載ることができる複数列(本実施形態では左右2列)の搬送コンベア28が構成されている。
【0020】
前記各モータ25の出力軸には駆動プーリ29が取着されると共に、前記各ローラ26の外端部には従動プーリ30が取着されている。また、各支持機構部14a,14bの上下方向の中間部には小コンベア27毎に複数(本実施形態では4つずつ)の中継プーリ31が前後方向及び上下方向に所定間隔をおいて回動自在に支持されている。そして、小コンベア27毎に、無端状をなすベルト32が駆動プーリ29と従動プーリ30及び中継プーリ31に掛け渡されることで、モータ25の駆動回転に伴い、各ローラ26からなる搬送コンベア28が左右の両搬送コンベア28a,28bに跨って載る箱Bを所定速度で搬送方向の上流側から下流側に搬送するようになっている。
【0021】
なお、図1に示すように、各支持機構部14a,14bは各プーリ29〜31やベルト32等の機構部分が外部に露出しないように被覆カバー33により覆われている。また、図2に示すように、方向転換部11における上流側端部の少し上方位置であって且つ左右方向で基台13の外側となる位置には、方向転換部11に上流側から箱Bが搬入されたか否かを検知するための搬入検知センサ35が図示しない支持ブラケットを介して支持されている。この搬入検知センサ35は、例えば投受光器からなり、搬送コンベア28を挟んで反対側に対向配置した反射板36に向けて出射した光が常には反射板36にて反射されて受光できるように構成されており、その反射光の受光が遮られた場合には、箱Bが搬入検知センサ35と反射板36の間を通過して方向転換部11に搬入されたと検知するようになっている。
【0022】
次に、前記方向転換部11の下流側に隣接する排出部12について説明する。
図1及び図2に示すように、排出部12は、方向転換部11の支持機構部14a,14bと略同一高さの基台37を備えており、その基台37の上部には方向転換部11の搬送コンベア28上から受け渡された箱Bを更に下流側へ搬送するための複数のローラ38が搬送コンベア28の延設方向となる前後方向に沿って縦列配置されている。排出部12における各ローラ38は、図示しないモータ等の駆動源からの駆動力に基づき各々回転する構成とされている。そして、図1に二点鎖線で示すように、排出部12においては、方向転換部11から受け渡しされた箱Bの搬送方向に対する姿勢を何ら方向転換することなく、受け渡し時とほぼ同じ姿勢で各ローラ38の回転により下流側へ向けて搬送するようになっている。
【0023】
また、図1及び図2に示すように、排出部12において搬送方向の途中となる基台37における前後方向の中間位置にはアーチ状の支持フレーム39が設けられている。この支持フレーム39の上部において左右方向へ水平に延びる梁部40には、方向転換部11の搬送コンベア28の延長線上となる位置(搬送経路の途中となる位置)に左右一対の姿勢検出手段としての投受光センサ41a,41bが光の出射方向を真下に向けるようにして取着されている。
【0024】
ここで、各投受光センサ41a,41bから出射された光は、図2に示すように、前後方向で隣り合う2つのローラ(本実施形態では排出部12における搬送方向の上流端側から5番目と6番目の両ローラ)38の間を通過し、その鉛直方向下方に位置する反射板42に反射された反射光を受光できるように構成されている。そして、その反射光の受光が遮られた場合には、箱Bの搬送方向下流側となる辺が左右各投受光センサ41a,41bと反射板42との間を通過したことを示す検出信号を出力するようになっている。
【0025】
因みに、左右で一対の投受光センサ41a,41bは、箱Bが通過した場合における反射光の受光が遮られるタイミングの差に基づいて、箱Bの搬送方向に対する姿勢を検出する。すなわち、左右の両投受光センサ41a,41bにおいて、同時に反射光の受光が遮られた場合には、通過する箱Bは搬送方向下流側となる辺を左右方向に沿わせた姿勢になっていると検出する。
【0026】
一方、図1に示すように、左側の投受光センサ41aの方が右側の投受光センサ41bよりも先に反射光の受光を遮られることになる場合には、通過する箱Bは搬送方向下流側となる辺を搬送方向に対して右側に傾けた姿勢になっていると検出する。そして、その逆の場合は、通過する箱Bは搬送方向下流側となる辺を搬送方向に対して左側に傾けた姿勢になっていると検出する。本実施形態の方向転換装置10は、こうした投受光センサ41a,41bからの検出信号等に基づき駆動状態が制御される。
【0027】
そこで次に、本実施形態の方向転換装置10における制御構成について説明する。
図3に示すように、方向転換装置10には、装置全体の駆動状態を制御する制御手段としてのコントローラ44が設けられている。コントローラ44は、マイクロコンピュータ45及びモータ駆動回路46を内蔵し、マイクロコンピュータ45は、中央処理装置となるCPU47、記憶手段として機能するメモリ48、及びカウンタ49を備える。メモリ48には、方向転換部11の搬送コンベア28にて箱Bを搬送方向下流側へ搬送する途中で当該箱Bの姿勢を方向転換処理するためのプログラムデータなど各種の制御プログラムデータが記憶されている。
【0028】
CPU47には、搬入検知センサ35、投受光センサ41a,41b、及び操作パネルなどからなる入力装置50が接続されている。CPU47に接続された入力装置50は、パレットに段積み予定の箱Bの配列パターンに基づく作業データをCPU47に対して送信する。そして、CPU47は、各センサ35,41a,41bにおける箱Bの検出信号、入力装置50から送信される作業データ、メモリ48に記憶した方向転換処理用のプログラムデータなどに基づき、モータ駆動回路46を介して各モータ25を速度制御する。
【0029】
次に、以上のように構成された方向転換装置10の作用に関して、特に箱Bを搬送する途中での方向転換方法に着目して以下説明する。
さて、本実施形態における方向転換装置10では、方向転換部11において搬送される箱Bが跨って載る左右の搬送コンベア28a,28bの各搬送速度が入力装置50で入力された作業データに基づきコントローラ44により設定される(速度設定段階)。すなわち、入力装置50からの作業データによれば各搬送コンベア28a,28bに跨った状態で搬送される箱Bが方向転換させる必要のないものだけであるとき、及び各搬送コンベア28a,28bが箱Bを搬送することなく空運転されている状態であるとき、左右の搬送コンベア28a,28bは速度差を付けずに同じ標準速度Vに速度制御される。
【0030】
その一方、図1に示すように、方向転換部11に搬入された箱Bを左右の搬送コンベア28a,28bによる搬送途中で方向転換させるときは、前述した標準速度Vに対して、左右各搬送コンベア28a,28bのうち一方(例えば図1では左側)の搬送速度が高速側速度VAに設定されると共に、他方(例えば図1では右側)の搬送速度が低速側速度VBに設定される。
【0031】
すなわち、搬送方向に沿って並列に配置された左右各搬送コンベア28a,28bの搬送速度が、搬送途中に箱Bの搬送方向に対する姿勢を回転させて方向転換させうる速度差のついた高速側速度VAと低速側速度VBに各々設定される。
【0032】
なお、この場合において設定される速度差は、箱Bのサイズ等の規格毎にメモリ48に予め設定記憶しておいた速度差データを入力装置50から入力された箱Bの規格識別情報に基づき検索して適用してもよく、あるいは、その運転当日の温度・湿度等の環境条件、さらには、搬送対象となる箱Bの底面形状や材質及び重量などを考慮して、入力装置50から作業者が速度差情報を直接手入力してもよい。この点で、モータ25の駆動制御を通じて各搬送コンベア28a,28bにおける速度の速度差を設定するコントローラ44は速度設定手段として機能する。
【0033】
また、この場合において両搬送コンベア28a,28bに設定される速度差は、各列の搬送コンベア28を搬送方向に各々分割している小コンベア27毎に設定される。本実施形態の場合は、一例として、左右で互いに対応する小コンベア27同士であって方向転換させるべき箱Bが搬送過程で直接載ることになる小コンベア27毎に、左右両搬送コンベア28a,28bの速度に速度差のない等速制御と速度差のついた異速制御(速度差制御)が実行可能となるように速度設定される。
【0034】
そして、異速制御が実行される場合には、搬送される箱Bの搬送経路上の位置(すなわち、その時点で箱Bが直接載っている小コンベア27)と対応するように、最上流側の小コンベア27から中流の小コンベア27そして最下流側の小コンベア27の順で、次々に異速制御が実行されるようになっている。したがって、箱Bが搬送過程において、最上流側の小コンベア27の下流端と中流の小コンベア27の上流端とを跨ぐように、または、中流の小コンベア27の下流端と最下流の小コンベア27の上流端とを跨ぐように、搬送方向の上流側と下流側で隣接する双方の小コンベア27に直接載っている場合には、その双方の小コンベア27において異速制御が実行されることになる。
【0035】
さて、本実施形態での最上流側の小コンベア27は、その領域内に搬送方向の上流側から箱Bが進入して当該最上流側の小コンベア27上に直接載った場合、その箱Bが上流側から1番目(最初)のローラ26の位置(本実施形態の場合は、一例として、ローラの中心位置)を通過するときまでは、左右で互いに対応する小コンベア27同士が同じ標準速度Vで駆動されることにより等速制御が実行されるように速度設定されている。そして、その上流側から1番目のローラ26の位置を箱Bが通過すると同時に、左右で互いに対応する小コンベア27同士のうち一方が高速側速度VAで駆動されると共に他方が低速側速度VBで駆動されるように、つまり等速制御から異速制御となるように速度設定されている。
【0036】
また、中流の小コンベア27は、最上流側の小コンベア27から受け渡しされた箱Bが最下流側の小コンベア27に受け渡しされるまでの当該中流の小コンベア27における搬送途中の全般に亘り、左右両搬送コンベア28a,28bの速度に速度差のついた異速制御となるように速度設定されている。すなわち、中流の小コンベア27では、その領域内に搬送方向の上流側から箱Bが進入して当該中流の小コンベア27上に直接載った場合、左右で互いに対応する小コンベア27同士のうち一方が高速側速度VAで駆動されると共に他方が低速側速度VBで駆動されることにより異速制御が実行されるように速度設定されている。
【0037】
そして、最下流の小コンベア27は、中流の小コンベア27から受け渡しされた箱Bが当該最下流側の小コンベア27において下流側から1番目(最後)のローラ26の位置を通過するときまでは、左右で互いに対応する小コンベア27同士のうち一方が高速側速度VAで駆動されると共に他方が低速側速度VBで駆動されることにより異速制御が実行されるように速度設定されている。そして、その下流側から1番目のローラ26の位置を箱Bが通過すると同時に、左右で互いに対応する小コンベア27同士が同じ標準速度Vで駆動されるように、つまり異速制御から等速制御となるように速度設定されている。
【0038】
したがって、箱Bは、方向転換部11における最上流側の小コンベア27の領域を通過する際において上流側から1番目のローラ26の位置を通過するときに、方向転換のために平面視における姿勢が時計方向に回転し始め、そのように姿勢を回転させつつ、中流の小コンベア27の領域へと搬送される。そして、箱Bは中流の小コンベア27においても同様に姿勢を回転させつつ、最下流の小コンベア27の領域へと搬送される。そして、箱Bは、最下流の小コンベア27の領域を通過する際において下流側から1番目のローラ26の位置を通過するときに回転を終了し、以後は方向転換のための姿勢の回転をすることなく下流側へと搬送される。
【0039】
ところで、上記のように方向転換部11において方向転換させられる箱Bの姿勢については、方向転換部11から排出部12に受け渡しされた時点で搬送方向下流側となる辺が左右方向に沿った状態になっていること、つまり回転開始時点の姿勢から90度分だけ正確に回転していることが予め想定した箱Bの姿勢として望ましい。しかしながら、前述したように、その運転当日の温度・湿度等の環境条件は必ずしも一定ではない。箱Bの重量や底面形状など箱B毎にばらつきが存在することはあり得る。そのため、各箱Bと搬送コンベア28との間に働く摩擦力が箱B毎に微妙に変化してしまい、方向転換終了時点において、箱Bの姿勢が回転不足又は回転過多により予め想定した所望の姿勢からずれてしまうことがあり得た。
【0040】
そこで、本実施形態では、方向転換終了時点において箱Bの姿勢が回転不足又は回転過多により予め想定した所望の姿勢からずれてしまっている場合、その箱Bに後続して搬送される箱Bについては、方向転換終了時点での姿勢が予め想定した所望の姿勢に適合するように各搬送コンベア28a,28bの速度設定内容を補正するようにしている。そのため、本実施形態では、まず、方向転換を終了した箱Bの搬送方向に対する姿勢を検出し、次に、その姿勢が予め想定した所望の姿勢からずれているか否かを判断し、その判断結果に基づき各搬送コンベア28a,28bにおける異速制御(速度差制御)の速度設定内容を必要に応じて補正するようにしている。但し、補正するのは、各搬送コンベア28a,28bの異速制御時の速度差であって、異速制御の開始位置や終了位置は同じである。
【0041】
例えば、図1に示す方向転換例では、箱Bが必要以上に回転した回転過多によって搬送方向に対して右側に傾いた姿勢になっている。こうした場合、箱Bは方向転換部11の下流側に位置する排出部12に方向転換部11での方向転換終了時点の姿勢のまま受け渡しされ、その後、その姿勢を維持した状態で排出部12の途中に設けられた投受光センサ41a,41bの下方を通過する。すると、この箱Bの通過タイミングで投受光センサ41a,41bにより箱Bの搬送方向に対する姿勢が検出され、その検出信号がコントローラ44のCPU47に送信される(姿勢検出段階)。
【0042】
そして、こうした左右両投受光センサ41a,41bからの検出信号が入力されるコントローラ44においては、両検出信号の入力タイミングの時間差をCPU47が算出し、その算出した時間差が例えば30ミリ秒以下であれば、方向転換された箱Bの姿勢は所望する姿勢になっており良好であると判断する。また、算出した時間差が予め設定した時間差の許容値(30ミリ秒)以上の時間差であっても、例示の許容値(30ミリ秒)以上となることが所定の閾値回数(例えば3回)連続して発生しない場合は、方向転換させられた箱Bの姿勢が予め想定した所望の姿勢に適合しており、方向転換装置10は一応良好な運転状態にあると判断する。
【0043】
そして、この場合には、対応する小コンベア27をそれぞれ駆動するモータ25の駆動速度はそのままとし、予め設定した各搬送コンベア28a,28bにおける速度設定内容の補正は実施しない。なお、このような各搬送コンベア28a,28bにおける速度設定内容の補正を行うか否かの判断基準となる前記許容値や閾値回数は、必要に応じて入力装置50から入力することで適宜に変更可能とされる。
【0044】
その一方で、コントローラ44のCPU47により算出された左右両投受光センサ41a,41bからの検出信号の入力タイミングの時間差が許容値を超えており、そのような場合が連続して複数回(例えば、3回)あった場合、コントローラ44は方向転換された箱Bの姿勢が予め想定した所望の姿勢に対してずれていると判断する。そして、その判断結果に従い、コントローラ44は前記各モータ25の駆動速度をモータ駆動回路46を介して変更し、予め設定されている各搬送コンベア28a,28bにおける異速制御(速度差制御)時の速度差を補正する(補正段階)。
【0045】
すなわち、搬送途中に箱Bを回転させるために搬送速度が高速側速度VAに設定されている(例えば図1の場合は左側の搬送コンベア28aを構成している)小コンベア27と低速側速度VBに設定されている(例えば図1の場合は右側の搬送コンベア28bを構成している)小コンベア27の各々と対応する各モータ25の異速制御(速度差制御)時の駆動速度が変更され、左右各搬送コンベア28a,28bの速度差のついた速度設定内容が後続の箱Bにおいては所望の姿勢に方向転換されるように修正される。
【0046】
例えば、幅200mmで長さ300mmの箱Bを1分間当たり60ケース分、60m/分の搬送速度で搬送しながら方向転換する場合、左右両投受光センサ41a,41bでの前記許容値(30ミリ秒)に相当する通過時刻の差は、箱Bに対して搬送方向で30mmの姿勢のずれがあることを意味している。そして、こうした30ミリ秒の時間差が、前述したように3回連続して発生した場合に、一例として、この2/3の姿勢のずれを補正するように、小コンベア27を駆動するモータ25の駆動速度を変更し、左右各搬送コンベア28,28bの各速度を補正する。
【0047】
ここで、図1の場合は、回転過多による姿勢のずれであるため、この場合は、左右各搬送コンベア28a,28bを構成する小コンベア27毎に、左右で対応する小コンベア27同士の異速制御(速度差制御)時の速度差が小さくなるように、各々の搬送速度に関する設定内容が補正される。すると、この速度差の補正により方向転換される箱Bの姿勢が後続の箱Bにおいては前記許容値及び閾値回数を基準とした判断において良好と判断される結果を導くようになる。したがって、この点で、コントローラ44は補正手段として機能している。なお、回転不足により箱Bの姿勢が予め想定した所望の姿勢からずれている場合には、上記とは逆の補正内容(すなわち、左右で対応する小コンベア27同士の異速制御(速度差制御)時の速度差が大きくなるように、各々の搬送速度に関する設定内容が補正される)が実行される。
【0048】
なお、図4に示すように、方向転換部11において箱Bを方向転換させることなく下流側の排出部12に向けて搬送する場合には、左右の両搬送コンベア28,28bの速度は速度差がつかないように設定される。しかし、前述したように、運転当日の温度・湿度等の環境条件等のばらつきが起因して、本来は回転することなく搬送されるべき箱Bが回転を伴って排出部12へ向けて搬送されることがあり得る。こうした場合、その箱Bは左右の両投受光センサ41a,41bが通過時刻の差を検出信号の送信タイミングのずれに反映するため、コントローラ44においては前述した許容値及び閾値回数と同様の判断基準に従い、搬送対象となっている箱Bの姿勢が予め想定した所望の姿勢からずれていると判断し得る。そして、姿勢のずれがあると判断された場合には、後続の箱Bにおいては姿勢が予め想定した所望の姿勢に修正されるように、コントローラ44により左右各搬送コンベア28a,28bの各速度が補正される。
【0049】
上記第1の実施形態の方向転換装置10及び方向転換方法によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)方向転換部11における左右各搬送コンベア28a,28bの各速度を速度差がつくように設定すれば、それらの両搬送コンベア28a,28bに跨るように載置された状態で上流側から下流側へ搬送される箱Bが搬送途中に回転し、搬送方向に対する姿勢が方向転換される。したがって、それらの箱Bを搬送方向の下流側でパレット上に段積みする場合、段積みする配列パターンに応じて各箱Bのうち方向転換が必要とされる適宜の箱Bを予め想定した所望の姿勢に方向転換することができる。
【0050】
(2)箱Bが搬送方向の上流側から下流側に搬送される途中で、その箱Bの搬送方向に対する姿勢が予め想定した所望の姿勢からずれているか否かが、搬送経路の途中の検出位置に設けられた投受光センサ41a,41bの検出結果に基づきコントローラ44により判断される。そして、その判断結果に従い、左右各搬送コンベア28a,28bの異速制御(速度差制御)時には速度差がつくように設定された速度設定内容がコントローラ44により補正される。すなわち、回転不足の場合は速度差が大きくなるように、また、回転過多の場合は速度差が小さくなるように補正される。したがって、箱Bの姿勢を搬送途中で方向転換させる場合において、その方向転換させた箱Bの姿勢が予め想定した所望の姿勢に対してずれを生じるようなときには、そのような姿勢のずれが後続の箱Bにおける方向転換終了時点には生じないように自動的に修正することができる。
【0051】
(3)搬送される箱Bの姿勢を搬送途中に方向転換させるために設定された各搬送コンベア28a,28bの速度設定内容を補正すべきか否かの判断基準は、複数の判断値(許容値及び閾値回数)により構成されているので、コントローラ44による判断結果を柔軟なものにできる。
【0052】
(4)さらに、各搬送コンベア28a,28bの速度に速度差をつける速度設定内容は搬送コンベア28が搬送方向に沿って複数に分割されてなる小コンベア27毎に設定することができる。すなわち、搬送方向に沿って並設された複数の小コンベア27において搬送される箱Bが搬送過程で直接載る小コンベア27毎に、左右で対応する小コンベア27同士の速度差がつく異速制御が実行可能となるように速度設定内容を設定できる。そして、そうした左右の小コンベア27同士の単位で、方向転換させられた箱Bの姿勢が回転不足の場合は速度差が大きくなるように、回転過多の場合は速度差が小さくなるように、各々の搬送速度に関する設定内容が補正される。
【0053】
したがって、各搬送コンベア28a,28bが搬送方向の上流端から下流端までの全体に亘り一体の無端状ベルトなどで構成される場合とは異なり、図5に示すように搬送途中に方向転換させる必要のある箱B及びその必要のない箱Bが交互に搬送される場合にも、方向転換させる必要のある箱Bが直接載る小コンベア27については異速制御が実行される一方、その必要のない箱Bが直接載る小コンベア27については等速制御が実行されるようにすれば、多数の箱Bを搬送方向に短い間隔で搬送可能となり高搬送効率のもとで方向転換することができる。そして、この場合において、左右で対応する小コンベア27を異速制御する際の速度差の設定内容を補正することにより、方向転換させる必要のある箱Bについては、姿勢のずれが後続の箱Bにおける方向転換終了時点には生じないように自動的に修正することができる。
【0054】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、この第2の実施形態は第1の実施形態との対比において、次の点で構成が相違している。すなわち、本実施形態では、方向転換された箱Bの姿勢が予め想定した所望の姿勢でない場合に補正される事項が、左右両搬送コンベア28a,28bにおける速度差のついた各速度ではなく、そのような速度差制御の搬送方向における終了位置(換言すると、速度差制御の終了タイミング)を補正するようにしている。そこで、以下では第1の実施形態と相違する事項を主として説明することにし、第1の実施形態と共通する部分については同一符号を付すことにより重複した説明は省略することにする。
【0055】
さて、本実施形態でも、第1の実施形態の場合と同様に、左右各搬送コンベア28a,28bの搬送速度は、コントローラ44が速度設定手段として機能することにより、箱Bを搬送途中に方向転換させ得る速度差が左右で互いに対応する小コンベア27毎につくように予め設定される(速度設定段階)。すなわち、第1の実施形態の場合と同様に、一例として、搬送される箱Bが最上流側の小コンベア27上に直接載った場合において、当該最上流側の小コンベア27における上流側から1番目のローラの中心位置を箱Bが通過したときに左右の搬送コンベア28a,28bにおいて異速制御が開始されるようになっている。
【0056】
そして、本実施形態においては、入力装置50からの入力データに基づきコントローラ44が、そのような速度差のついた異速制御の搬送経路上での終了位置を予め設定可能となっている(位置設定段階)。すなわち、コントローラ44は、各列の搬送コンベア28a,28bを搬送方向に各々分割している複数の小コンベア27のうち何れの小コンベア27における何番目のローラの位置(ローラの中心位置)を箱Bが通過したときに方向転換のための異速制御を終了するのかを設定するようになっている。したがって、この点でコントローラ44は位置設定手段としても機能する。
【0057】
そして、姿勢検出段階において、排出部12の投受光センサ41a,41bによって、方向転換部11で方向転換させられた箱Bの姿勢が回転不足又は回転過多により予め想定した所望の姿勢からずれていると検出された場合には、コントローラ44が各搬送コンベア28a,28bにおける異速制御の終了位置を必要に応じて補正し得るようになっている(補正段階)。したがって、この点でコントローラ44は補正手段としても機能する。
【0058】
そこで、本実施形態の方向転換装置10における箱Bの方向転換方法について、特に、速度差制御の終了位置を補正する場合に着目して以下説明する。なお、説明の前提として、本実施形態では、位置設定段階において、速度差制御の終了位置が最下流側の小コンベア27における下流側から2番目のローラ26の中心位置となるように予めコントローラ44により設定されていたものとする。
【0059】
さて、図1に示す方向転換例では、方向転換された箱Bの姿勢が回転過多により予め想定した所望の姿勢からずれている。そのため、それまでの位置設定内容では最下流側の小コンベア27における下流側から2番目のローラ26の位置で速度差の付いた速度制御が終了するようになっていたとすると、コントローラ44は後続の箱Bが搬送されるときには、それまでよりも搬送方向の上流側の位置で速度差のついた速度制御が終了するようにモータ駆動回路46を介して各モータ25を駆動制御する。
【0060】
すなわち、位置設定段階では、箱Bが最上流側の小コンベア27の上流側から1番目のローラ26の中心位置を通過した時点から回転を開始させ、最下流側の小コンベア27の下流側から2番目のローラ26の中心位置を通過したときに箱Bを90度方向転換させるようになっている。つまり、箱Bは、最上流側の小コンベア27における6本のローラ26と中流の小コンベア27における6本のローラ26と最下流側の小コンベア27における上流側5本のローラ26という合計17本のローラ26の中心位置を通過することにより90度方向転換させられる設定となっている。
【0061】
したがって、ローラ1本当たりでは5.3度(≒90度/17本)の回転角度となるため、いま仮に、予め想定した姿勢から1度の姿勢のずれを回転過多により生じていると検出された場合には、コントローラ44により、速度差制御の終了位置が次のように位置変更(補正)される。すなわち、互いに隣り合う2つのローラ26同士の中心位置間の距離を1/5.3倍した距離だけ、最下流側の小コンベア27における下流側から2番目のローラ26の中心位置から、速度差制御の終了位置が、同じく下流側から3番目のローラ26の中心位置の方向に変位した位置となるように上流側に位置変更(補正)される。
【0062】
その結果、搬送途中で各箱Bには、それまでよりは搬送方向で上流側となる位置で回転モーメントの付与が終了するようになるので、回転過多をすることがなくなり、予め想定した所望どおりの姿勢に方向転換される。なお、回転不足により姿勢が予め想定した所望の姿勢からずれている場合には、上記とは逆の補正内容が実行される。すなわち、予め想定した姿勢から1度の姿勢のずれを回転不足により生じていると検出された場合、コントローラ44は、上記のように、2つのローラ26同士の中心位置間の距離を1/5.3倍した距離だけ、速度差制御の終了位置が、それまでよりも下流側の位置となる下流側から2番目のローラ26の中心位置から、同じく下流側から1番目のローラ26の中心位置の方向に変位した位置となるようにモータ駆動回路46を介して各モータ25を駆動制御する。
【0063】
上記第2の実施形態の方向転換装置10及び方向転換方法によれば、更に以下のような効果を得ることができる。
(5)搬送途中で方向転換した箱Bの姿勢が予め想定した所望の姿勢に対してずれを生じるようなときには、左右両搬送コンベア28a,28bが搬送方向で速度差制御を終了する位置を設定変更する。すなわち、回転不足の場合は速度差制御の終了位置が搬送方向の下流側に位置変更するように、また、回転過多の場合は速度差制御の終了位置が搬送方向の上流側に位置変更するように、コントローラ44により補正される。したがって、そのような姿勢のずれが後続の箱Bにおける方向転換終了時点には生じないように自動的に修正することができる。
【0064】
(6)しかも、各搬送コンベア28a,28bが搬送方向において速度差制御を終了する位置については、搬送方向に沿って搬送コンベア28を複数に分割してなる小コンベア27における搬送方向で隣接するローラ26同士の中心位置間の間隔よりも短い距離の位置変更も可能であるため、きめ細かく姿勢制御を実行することができる。
【0065】
なお、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記各実施形態において、箱Bの姿勢を検出する姿勢検出手段は光学的なセンサに限定されない。すなわち、超音波センサや接触式のリミットスイッチ等のような、箱の通過を検知可能な手段であれば代用可能である。または、CCDカメラによる箱Bの撮像画像をデータ処理して予め想定した箱Bの姿勢に対するずれを算出し、その算出結果に基づき搬送コンベア28a,28bの速度差のついた速度設定内容、そのような速度差制御の開始位置又は終了位置の補正をするようにしてもよい。
【0066】
・上記各実施形態において、方向転換装置10は、方向転換部11を通過する箱Bの全てを方向転換させる方向転換装置であってもよい。この場合は、搬送する箱Bを方向転換させる必要のある箱であるか否かを識別しなくて済むため、装置の制御構成が簡単なものになる。
【0067】
・上記各実施形態において、搬送される途中で方向転換させられる物品は箱Bに限定されず、搬送途中で方向転換する必要のあるもの全てを対象とすることができる。そして、物品の形状も円柱状や三角柱状など、四角柱状以外のどんな形状であってもよい。
【0068】
・上記各実施形態において、搬送コンベアの列数は2列に限定されない。すなわち、箱Bに速度差を与えることができれば何列であってもよい。この場合、搬送途中において箱Bの回転をスムーズに行うためにその回転中心に対して外側に位置するものほど大きな速度差がつくように速度制御することが望ましい。
【0069】
・上記各実施形態において、姿勢検出手段(投受光センサ41a,41b)の設置位置(検出位置)は排出部12に限定されない。すなわち、各搬送コンベア28a,28bの速度差制御の開始位置よりも搬送方向下流側の搬送経路上であれば、方向転換部11と排出部12との接続部分や、方向転換部11における搬送経路の中間部(途中)等であってもよい。なお、このようにした場合も、その設置位置(検出位置)を通過するときの箱Bのあるべき姿勢との対比において、姿勢のずれ量が把握されて必要な補正が行われる。
【0070】
・ 上記各実施形態において、姿勢検出手段(投受光センサ41a,41b)を方向転換部11における搬送経路の中間部(途中)に設置し、その設置位置(検出位置)を通過するときに姿勢を検出される箱B自体について、その通過時点で姿勢のずれを生じていると検出された場合に、その箱B自体の姿勢のずれが方向転換終了時点には解消するように速度差制御における速度差の補正や速度差制御の終了位置の補正をするようにしてもよい。また、このように姿勢検出手段(投受光センサ41a,41b)の設置位置(検出位置)を通過する時点で姿勢を検出される箱B自体及びその箱Bに後続する箱Bの双方について、それらの方向転換終了時点での姿勢が予め想定した所望の姿勢に適合するように、速度差制御における速度差の補正や速度差制御の終了位置の補正をするようにしてもよい。
【0071】
・上記各実施形態において、各搬送コンベア28a,28bの速度差制御の開始位置や終了位置は、箱Bが直接載る小コンベア27に限定されない。速度差制御(異速制御)を実行している小コンベア27は、その時点において箱B等の物品が直接載る小コンベア27に限定せず、その物品が直接載る小コンベアの前後に隣接する他の小コンベアを含んでいてもよい。
【0072】
・上記各実施形態において、各搬送コンベア28a,28bの速度差制御(異速制御)の開始位置は、最上流側の小コンベア27における上流側から1番目のローラ26の中心位置に限定されない。例えば、最上流側の小コンベア27における上流側から2番目のローラ26の中心位置など他のローラの中心位置が速度差制御(異速制御)の開始位置として設定されるものであってもよい。
【0073】
・上記各実施形態において、各搬送コンベア28a,28bの速度差制御(異速制御)の終了位置は、最下流の小コンベア27における下流側から2番目のローラ26の中心位置に限定されない。例えば、最下流の小コンベア27における下流側から3番目のローラ26の中心位置など他のローラの中心位置が速度差制御(異速制御)の終了位置として設定されるものであってもよい。
【0074】
・上記各実施形態において、各搬送コンベア28a,28bの速度差制御(異速制御)の開始位置や終了位置の設定は、何れかのローラ26の中心位置を通過したときにという設定に限定されない。例えば、何れかのローラ26の中心位置を通過した所定時間経過後又は通過する所定時間前に速度差制御(異速制御)を開始又は終了する設定でもよい。また、ローラ26の中心位置を基準に設定するのではなく、搬送方向で互いに隣り合う2つのローラ同士の中間位置や何れか一方のローラ側に偏倚した位置を基準に設定するようにしてもよい。
【0075】
・上記第2の実施形態において、各搬送コンベア28a,28bの速度差制御(異速制御)の終了位置を設定及び設定変更する代わりに、速度差制御(異速制御)の開始位置を設定及び設定変更することにより箱Bの姿勢制御を実行するようにしても、後続の箱Bにおいて姿勢のずれが生じないように自動修正可能である。すなわち、方向転換された箱Bの姿勢が回転過多により予め想定した所望の姿勢からずれている場合には、予め設定していた開始位置よりも下流側で異速制御が開始されるように位置変更すればよく、一方、回転不足により所望の姿勢からずれている場合には、予め設定していた開始位置よりも上流側で異速制御が開始されるように位置変更すればよい。
【0076】
・また、例えば搬送方向に沿って一体的な無端状ベルトなどからなる搬送コンベア28a,28bが物品を載せて周回移動する場合に所定のタイミング(換言すると、載置された物品が搬送方向の所定位置を通過するタイミング)で左右両搬送コンベア28a,28bの速度差制御(異速制御)が開始又は終了するようにしてもよい。
【0077】
・上記各実施形態において、排出部12の各ローラ38は、モータ等の駆動源からの駆動力に基づき回転する構成でなく、方向転換部11から排出部12に所定の速度で送り出された箱Bの慣性力により転動する構成であってもよい。
【0078】
・上記各実施形態において、例えば方向転換部11では個々のローラ26毎にモータを連結し、それら全てのローラ26を個々に駆動制御できるようにしてもよい。
・上記第1及び第2の各実施形態において、速度差のついた速度の設定内容の補正制御と速度差制御の終了位置を設定変更する補正制御を併用して行うようにしてもよい。
【0079】
・上記各実施形態において、方向転換装置10は、方向転換部11は備えるものの排出部12は備えない構成であってもよい。なお、この場合は、箱(物品)Bの搬送経路が、方向転換部11の搬送コンベア28により構成されることになり、その方向転換部11における搬送経路の途中に姿勢検出手段としての投受光センサ41a,41bが設けられることになる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】方向転換装置の模式平面図。
【図2】同じく模式正面図。
【図3】方向転換装置における制御構成のブロック図。
【図4】方向転換する必要のない箱を搬送した状態を示す平面図。
【図5】方向転換する必要のある箱と必要のない箱を交互に連続搬送した状態を示す平面図。
【符号の説明】
【0081】
10…方向転換装置、27…小コンベア、28,28a,28b…搬送コンベア、41a,41b…姿勢検出手段としての投受光センサ、44…速度設定手段、位置設定手段、及び補正手段としてのコントローラ、B…物品としての箱。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を搬送するための搬送経路を有し、その搬送経路の途中で前記物品の搬送方向に対する姿勢を回転させて方向転換させ得る物品の方向転換装置において、
前記物品が跨って載ることができるように並列に配置された複数列の搬送コンベアと、
前記複数列の搬送コンベアの速度を前記物品の搬送方向に対する姿勢を回転させて方向転換させ得る速度差がつくように設定可能な速度設定手段と、
前記物品の搬送経路の途中に設定された検出位置で前記物品の搬送方向に対する姿勢を検出する姿勢検出手段と、
前記姿勢検出手段の検出結果に基づき、前記物品の搬送方向に対する姿勢が予め想定した姿勢でない場合は、前記検出位置で姿勢を検出された物品及びその物品に後続して搬送される物品のうち少なくとも一方の物品の姿勢が方向転換終了時点において予め想定した姿勢に適合するように、前記速度設定手段によって設定されている各搬送コンベアの速度設定内容を補正する補正手段と
を備えることを特徴とする物品の方向転換装置。
【請求項2】
物品を搬送するための搬送経路を有し、その搬送経路の途中で前記物品の搬送方向に対する姿勢を回転させて方向転換させ得る物品の方向転換装置において、
前記物品が跨って載ることができるように並列に配置された複数列の搬送コンベアと、
前記複数列の搬送コンベアの速度を前記物品の搬送方向に対する姿勢を回転させて方向転換させ得る速度差がつくように設定可能な速度設定手段と、
前記速度設定手段による各搬送コンベアに対する速度設定内容に基づいた搬送コンベアの速度差制御の終了位置を前記物品の搬送経路の途中に設定する位置設定手段と、
前記物品の搬送経路の途中に設定された検出位置で前記物品の搬送方向に対する姿勢を検出する姿勢検出手段と、
前記姿勢検出手段の検出結果に基づき、前記物品の搬送方向に対する姿勢が予め想定した姿勢でない場合は、前記検出位置で姿勢を検出された物品及びその物品に後続して搬送される物品のうち少なくとも一方の物品の姿勢が方向転換終了時点において予め想定した姿勢に適合するように、前記位置設定手段によって設定されている前記速度差制御の終了位置の設定内容を補正する補正手段と
を備えることを特徴とする物品の方向転換装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の物品の方向転換装置において、
前記複数列の搬送コンベアは、前記物品の搬送方向に沿って分割された複数の小コンベアにより各々構成され、
前記速度設定手段は、前記複数列の搬送コンベアにより方向転換させるべき物品が搬送されるときに、前記各小コンベアのうち、少なくとも前記方向転換させるべき物品が直接載る小コンベアにおいて必要な速度差がつくように、各搬送コンベアの速度を設定することを特徴とする物品の方向転換装置。
【請求項4】
物品が跨って載ることができるように並列に配置された複数列の搬送コンベア上に各搬送コンベアを跨ぐように物品を載せた後、少なくとも前記各搬送コンベアを含んで構成される搬送経路の途中で前記物品の搬送方向に対する姿勢を回転させて方向転換させ得る物品の方向転換方法において、
前記複数列の搬送コンベアの速度を前記物品の搬送方向に対する姿勢を回転させて方向転換させ得る速度差がつくように設定する速度設定段階と、
前記物品の搬送経路の途中に設定された検出位置で前記物品の搬送方向に対する姿勢を検出する姿勢検出段階と、
前記姿勢検出段階での検出結果に基づき、前記物品の搬送方向に対する姿勢が予め想定した姿勢でない場合には、前記検出位置で姿勢を検出された物品及びその物品に後続して搬送される物品のうち少なくとも一方の物品の姿勢が方向転換終了時点において予め想定した姿勢に適合するように、前記速度設定段階での各搬送コンベアの速度設定内容を補正する補正段階と
を備えることを特徴とする物品の方向転換方法。
【請求項5】
物品が跨って載ることができるように並列に配置された複数列の搬送コンベア上に各搬送コンベアを跨ぐように物品を載せた後、少なくとも前記各搬送コンベアを含んで構成される搬送経路の途中で前記物品の搬送方向に対する姿勢を回転させて方向転換させ得る物品の方向転換方法において、
前記複数列の搬送コンベアの速度を前記物品の搬送方向に対する姿勢を回転させて方向転換させ得る速度差がつくように設定する速度設定段階と、
前記速度設定段階での各搬送コンベアに対する速度設定内容に基づいた搬送コンベアの速度差制御の終了位置を前記物品の搬送経路の途中に設定する位置設定段階と、
前記物品の搬送経路の途中に設定された検出位置で前記物品の搬送方向に対する姿勢を検出する姿勢検出段階と、
前記姿勢検出段階での検出結果に基づき、前記物品の搬送方向に対する姿勢が予め想定した姿勢でない場合には、前記検出位置で姿勢を検出された物品及びその物品に後続して搬送される物品のうち少なくとも一方の物品の姿勢が方向転換終了時点において予め想定した姿勢に適合するように、前記位置設定段階での前記速度差制御の終了位置の設定内容を補正する補正段階と
を備えることを特徴とする物品の方向転換方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−179438(P2009−179438A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−19513(P2008−19513)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(000128131)株式会社エヌテック (16)
【Fターム(参考)】