説明

物質の内部の光散乱によって物質の流れを検査するための装置及び方法

組成の異なる物質(12)の流れを自動的に検査するシステム(10)であって、略一定の強さの電磁放射線を含む検出用媒質を流れの照射区域(I)へ放射する放射装置(16)を包含し、この照射区域で媒質が物質(12)の表面に透入し、照射区域(I)が流れの幅を実質的に横切って連続的に延び、表面に透入している媒質が、物質(12)によって変化され、前記システムが、照射区域(I)から実質的に離れた検出区域(D)において物質(12)から出る変化した媒質を受け入れる受け装置(32)と、変化した媒質に依存して検出データを発生する検出装置(34)とをさらに包含し、システム(10)の使用において、受け装置(32)で受け入れられる変化した媒質の少なくとも大部分がトランスフレクトした媒質である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物質を自動的に検査すること、例えば、品質及び/又は異なる組成について個別の物体を自動的に検査し選別することに関する。
【背景技術】
【0002】
US−A−5419438は、ランダムに並べられた物品の流れを運ぶためのコンベヤベルトを含む選別装置を開示しており、この物品の少なくとも幾つかはポリ塩化ビニール(PVC)で作られる後消費プラスチックであり、他のものはポリエチレンテレフタレート(PET)で作られている。コンベヤベルトは物品を照射区域へ運び、ここで、物品は紫外線を照射され、この紫外線は、PVCの後消費プラスチックに、照射終了後に残存する燐光性の光を放射するように誘導する。その後、コンベヤベルトは、紫外線から隔離された検査区域へ物品を運ぶ。ビデオカメラは、PVCで作られた後消費物品から放射された燐光性の光を受け入れるように位置されている。後消費プラスチック物品の流れに共通の他の物品(例えばPET)は、燐光性の光を放射せず、したがってPVC物品から識別可能である。
【0003】
EP−A−341096は、脈石の粒子がベルトに沿って運ばれ、レーザーからのビームを照射されるようにした、脈石からダイヤモンドを分離する方法を開示している。その後、粒子によって放射されたルミネセンスは、2つの別々に隔置された光学モジュールによって検出される。検出されたルミネセンスの差は、材料の性質に関係し、また、簡易なマイクロプロセッサ及び取出し噴流がダイヤモンドを選別貯蔵容器へ放出するために使用することができる。
【0004】
US−A−3356211は、液体蛍光材料を優先的に被覆された鉱石粒子を分離するシステムを開示している。所望の鉱物は、鉱石の部分で特有の波長を放出させるように鉱石に放射し放出された光線を検知することによって、無益な部分から分離され得る。検知された光線は、鉱石を所望部分と不要部分とに分離するための手段を操作するために使用される。所望の分離は、最初に液体で多量の鉱石を処理することによって行われ、この液体は優先的に鉱石の部分のうちの1つの粒子を覆い、また、紫外線、X線あるいは他の適切なタイプの電磁放射線への露出の際に特有の波長で放射することができる。その後、処理された鉱石は、分離区域へ移され、ここで、特有の波長に感応する電磁波手段は、どの粒子が被覆され、またどの粒子が被覆されていないかを検出する。その後、検知手段は、鉱石粒子の塊から被覆粒子を物理的に取り出す偏向手段を駆動するように機能する。被覆は、自然な蛍光を発する鉱石の場合には省いてよい。
【0005】
GB−A−2188727は、鉱石粒子をスペクトルのマイクロ波部分で電磁放射線にさらすことによって、鉱石粒子を選別するシステムを開示しており、放射線の周波数は、水の共振振動数、あるいは1つ以上の目標とする鉱石の周波数、あるいは恐らくこれら周波数の組合せである。粒子の得られた熱放射特性は、例えば赤外線検出器によって偏向され、その後に分析される。所望の熱放射特性を示す粒子は、このような特性を示さない他の粒子から分離される。
【0006】
US−A−5894345は、セラミック基板又は焼結金属製品におけるクラックの形状の欠陥を検出する光学システムを開示しており、光ビームが物体上に点線を形成するように、物体を照らすための光ビームを放射する光源を包含し、光ビームは、それらの強さが表面で互いに異なるように物体の表面に向けられる。システムは、検査される物体の表面から放出され部分的には物体に入り通過する光の強さの変化を測定する測定構造体をさらに包含する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の1つの様相によれば、組成の異なる物質の流れを自動的に検査する装置において、略一定の強さの電磁放射線を含む検出用媒質を前記流れの照射区域へ放射する放射装置を包含し、この照射区域で前記媒質が前記物質の表面に透入し、前記照射区域が前記流れの幅を実質的に横切って連続的に延び、前記表面に透入している前記媒質が、前記物質によって変化され、前記装置が、前記照射区域から実質的に離れた検出区域において前記物質から出る変化した媒質を受け入れる受け装置と、前記変化した媒質に依存して検出データを発生する検出装置とをさらに包含し、前記装置の使用において、前記受け装置で受け入れられる前記変化した媒質の少なくとも大部分がトランスフレクトした媒質であるように構成した装置が提供されている。
【0008】
本発明の第2の様相によれば、組成の異なる物質の流れを自動的に検査する方法において、前記流れの幅を実質的に横切って連続的に延びる前記流れの区域を照射するように、略一定の強さの電磁放射線を含む検出用媒質を放射し、照射区域で前記検出用媒質を前記物質の表面に透入させ、ここで前記媒質が前記物質によって変化され、受け装置で前記物質から出る変化した媒質を受け入れ、前記受け装置で受け入れられる前記変化した媒質の少なくとも大部分がトランスフレクトした媒質であり、前記変化した媒質に依存して検出データを発生する方法が提供されている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これらの2つの様相により、物質の流れは比較的広くでき、それにより、比較的高い検査率及び比較的高い測定能力を可能にする。
【0010】
有益的には、複数のセンサ及び/又は走査システムを用いることによって、多数の検出ポイントを導入することが可能となる。
【0011】
検出用媒質は、物質の流れ、例えば食品の品質における変化を検出するために、例えば赤外線のような電磁放射線とし得る。
自動検査を最も有効に行わせるために、物質 は実質的に単一層の流れの中で分配されるべきである。
【0012】
好適には、物質は、コンベヤベルト上で照射区域及び検出区域を通って前進される。代りとして、物質は、振動テーブル上で照射区域及び検出区域を通って前進させることができる。
【0013】
有益的には、検出区域は、例えばスクリーンの形状の遮蔽装置によって照射区域から実質的に分離され、このスクリーンは、迷光あるいは直接反射放射線が検出装置に達し誤った検出データを生じさせるのを防止する。
【0014】
放射装置は、好適には、照射区域が照明区域であるようなランプの列であり、照射区域の照明は、検出区域で存在し得るバックグラウンド照明の度合いよりも大きい度合いである。
【0015】
好適には、放射装置及び受け装置は、物質の同じ側に位置される。
【0016】
媒質のトランスフレクション(transflection)によって意味されることは、放射された媒質が物質に透入し、それから物質によって散乱されるということであり、その後、散乱した媒質は、照射と略同時に受け装置に受け入れられるトランスフレクトした(transflected)媒質として物質から出るので、受け装置は、物質内へ入り物質により散乱されている媒質だけを受け入れる。特に、トランスフレクトした媒質は、物質の一部分を通過し物質の内部構造により散乱された媒質である。また、トランスフレクトした媒質は、放射された媒質の波長帯と同じ波長帯にある。
【0017】
トランスフレクションは、水分含有量、タンパク質含有量、砂糖及び炭水化物含有量のようなパラメータを測定することにより、例えば食品のような物質の品質を測定するための有用な技術である。また、トランスフレクションは、魚又は肉のような製品における欠陥及び/又は表面下特性の測定、あるいは、表面下特性の測定を必要とする他の適用において有用である。このような特性の例は、材料構造における局部的な不均質性及び非等方性である。食品の品質の測定に関し、特に魚では、裂いたタラ(すなわち、塩漬けした乾燥タラ)はノールウェー国の工業製品である。顧客の容認及び価格は、許容限界以下である水分含有量に依存する。従って、水分含有量の評価は、生産において重大であり、通常は、水分含有量を手作業で評価するグレーダーとして知られている熟練工によって決定される。裂いたタラは、通常は、40−50%の範囲の水分含有量を有しており、異なる品質の自動検査及び選別は、信頼できる検査の精度及び繰返精度を改善することにより生産プロセスを改善するであろう。水分は、900nm〜l500nmの波長帯において強いスペクトル特性を有する。流れが毎秒1〜2メートルの速度で移動し、適切な走査構造体が使用される場合、検出区域を通過する個々の裂いたタラの水分含有量は、1秒未満で決定することができる。
【0018】
トランスフレクトした媒質を使用して決定できる他の有用な測定は、例えば肉や魚の脂肪含有量のような動物の組織の脂肪含有量である。更に、トランスフレクトした媒質は、人間の消費のために販売される魚の卵の中の汚染異物の存在を検出するために使用することができる。
【0019】
物質に入る放射線は、物質の本体の内部構造によって多重散乱を引き起こされ、変化した放射線のうちのいくらかは結局物質から後に散乱し、そして、分析に使用されるのはこの変化した放射線である。物質から後ろに散乱する変化した媒質の量は、伝達及び反射ロスのため、また物質による吸収のため、通常は非常に小さく、その結果、信頼できる測定は困難となり得る。物質の内部にある間の放射線の通路は完全にランダムであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明を明確且つ完全に開示するため、例として添付図面が参照される。
【0021】
図1に関し、図示のシステムは、放射装置2を含むプローブ2を包含し、この放射装置は、実質的に一定の強さの電磁放射線のビームBの形状で検出用媒質を放射し、この放射線は、本体内に多種の薄層変化を有する或る物質4に入射する。一度入射ビームBが物質4の表面に届くと、放射線のうちのいくらかは物質4の表面に透入し、物質4内で散乱し、物質4内の薄層変化によって変化される。その後、散乱し変化した媒質は、放射線Rとして上面を通って物質4から出て行き、この放射線の一部は、例えばレンズのような光学装置6を使用して、変化した放射線Rに依存した検出データを発生するための検出装置8に集中される。検出装置8は、放射された検出用媒質の波長の範囲内で波長を検出する。光学装置6の存在は、プローブ1を物質4から遠隔に位置させてプローブ1と物質4との接触を不要にすることを可能にする。
【0022】
図2及び3に関し、システム10は、裂いたタラ試料12の形状で物質をスペクトル評価するためのものである。タラ試料12は、A方向に前進するコンベヤベルト14上に皮側を下にして配置される。また、システム10は、好適には強いIR(赤外線)を発生するハロゲンランプである、ランプ16の列の形状の放射装置を含む。代りとして、放射装置は、可視波長スペクトルで検出用媒質を放射することができる。ランプ16は、実質的に一定の強さの検出用放射線をダクト18へ放射し、このダクトはルーフパネル20、ベースパネル22及びサイドパネル24で画定され、これらパネルの各々は、好適には黒色塗布された金属板で製造される。放射線ビーム26の形状の検出用媒質は、ダクト18内を水平に焦点合わせの円筒形ミラー28へ向けられ、この円筒形ミラーは好適には金属ミラーである。ビーム26は、ミラー28によって下方にコンベヤベルト14へ指向されて、照明区域Iの形状の実質的に一定の強さの照射区域を形成し、この照明区域は、コンベヤ14の幅、したがって流れを実質的に横切って連続的に延びている。照明区域Iは、好適には、コンベヤベルト14上に比較的細い照明ラインを形成し、したがって迷光放射をほとんど生成しないように、できるかぎり狭くする。
【0023】
また、システム10は、図2に示されるように、A方向に延びる回転軸Rを有する円筒状多角形ミラー32と、光学検出装置34とを含む。回転式多角形ミラー32の使用により、コンベヤベルト14の全幅、したがって物質の流れを実質的に横切って延びる検出区域を形成する通路Dに沿って、物質12の流れを走査することが可能である。代りとして、通路Dに沿った物質の流れを走査するために、回転式多角形ミラーの代わりに揺動式ミラーを使用することができる。検出区域Dは、好適には、分析される物質に依存して、0.5mm〜10cmの距離を照明区域Iから離される。トランスフレクトした物質を測定することにおけるの固有の問題は、低い信号対雑音比であり、その結果、迷光放射、例えば照明区域Iからの反射放射線が検出区域Dに達した場合、得られる値に重大な誤差を引き起こすこととなるため、照明区域Iから検出区域Dに達する迷光放射を回避することは非常に重要である。本システム10においては、迷光放射の抑制は、黒色塗布された金属スクリーン36の形状の物理的光停止部を有することによって達成されており、このスクリーンはその上端縁をルーフパネル20に取り付けられ、ルーフパネル20から下方へ実質的に垂直に突出する。
【0024】
トランスフレクトした媒質を測定する場合の最も正確な結果は、検査されている物質の表面からの拡散反射光が検出装置に入らない場合に得られる。反射面は、もちろん、検出データに誤差を引き起こし得る検出用媒質を反射し、反射面で媒質を検査する場合にスクリーン36は非常に重要になる。検査されている物質がそれほど反射しない性質である場合、或る例では、スクリーン36を必要としない可能性がある。
【0025】
代りとして、システム10は、図2に示される回転式多角形ミラー32及び光学検出装置34に基づいた走査構造体の代わりに、図3に示されるようにハウジング30有するスペクトル画像カメラ29を含んでいてよい。スペクトル画像カメラ29を有する構造体は、区域Dに沿った検出ポイントでの同時の分光分析をできるように光分散素子(図示しない)を含むであろう。理想的には、スクリーン36の底端縁は、迷光放射の最大量を確実に抑えるために、コンベヤ14上を通過する物質12の上面に接触又は垂直に接触するべきである。しかしながら、迷光放射の抑制のこの度合いは実用的ではないかもしれず、迷光放射の大部分が抑えられれば十分である。
【0026】
トランスフレクトした媒質を確実に検出するために、検査されている物体は、変化したトランスフレクトした媒質の分析が照射と略同時に生じるように、照明区域Iと検出区域Dとの間のギャップを埋めなければならない。
【0027】
特に図3に示されるシステム10の変形例に関し、スクリーン36はその下部に調整可能なサブスクリーン38を摺動可能に取り付けており、このサブスクリーンは、図3に垂直破線矢印39で示されるように、コンベヤ14上を通過する物体のサイズに応じて垂直に調整することができ、円柱状レンズ40を装着している。
【0028】
多種の代りのスクリーン構造体が可能であり、例えば、サブスクリーン38は、流れにおける物体サイズに自動的に適応可能とすることができ、あるいは、サブスクリーン38は、それぞれレンズ素子を取り付けた別個に調整可能な要素に分割することができる。レンズ40と物体表面との距離は、理想的には、できるだけ一定にしておく。
【0029】
従って、比較的水平であるが、コンベヤ14により前進されている物質が裂いたタラである場合、比較的平たいものではあるが、サイズが大きく変化する場合には、適応可能なサブスクリーン38は有益となる。そうでなければ、サブスクリーン38は、十分な量の迷光放射を抑えるために、(図3に示されるような)その許容最低位置へ下方に摺動できる。
【0030】
コンベヤ14上に搬送されている物質が、コンベヤ14の表面とサブスクリーン38のその最低位置における底端縁との間の距離より大きい最大高さを有する場合、サブスクリーン38は、十分な量の迷光放射をいまだ抑える一方で、これらの品を通過できるように垂直に上方へ移動する必要がある。
【0031】
円柱状レンズ40は、図2ではスクリーン36に装着して示され、図3ではサブスクリーン38に装着して示されており、(検出区域Dで物質12から出る光線42で図示された)変化した放射線はレンズ40を貫通し、このレンズは、光線42を回転式多角形ミラー32あるいは図3に示されるスペクトル画像カメラ29に焦点合わせさせる。その後、回転式多角形ミラー32に指向されている放射線の近赤外線(NIR)部分は、分析のために検出装置34に指向されて、裂いたタラの水分含有量のような、測定されている必要な品質を決定することができる。
【0032】
有益的には、更なる円柱状レンズ(図示しない)、あるいは代りとして回折レンズは、放射された検出用媒質のビームを、一層良く限定された、つまりより狭い、照明区域Iに焦点合わせさせるために使用することができる。好適には、この更なるレンズは、レンズ40の側とは反対側でスクリーン36あるいはサブスクリーン38に装着することができ、その結果、スクリーンが移動される場合、焦点合わせの距離が維持される。スクリーンが使用されない場合、このような更なるレンズを利用することは重要かもしれない。スクリーンにこの更なるレンズを固定することは、物質までの距離を比較的一定に確保する。
【0033】
使用において、裂いたタラ12は、コンベヤ14に沿って移動するにつれて照明区域Iを通過し、この時点で、放射線26は、裂いたタラ12の上面に透入し、その後、放射線はタラの本体内で散乱し広がり、タラ内の物質によって変化される。その後、変化した放射線のうちのいくらかは、検出区域Dでタラの上面から出て、レンズ40によって回転式多角形ミラー32に収斂される。
【0034】
回転式多角形ミラー32を、検出区域Dを横切って往復しながら走査しトランスフレクトした媒質を検出装置34に伝える光ファイバーに取り替えることは可能である。
【0035】
走査検出構造体が図2に示されるように使用される場合、検出装置34は、有益的には、ビームスプリッタと光学フィルタの組合せ、あるいは光分散素子とセンサアレイの組合せのいずれかを包含する。代りとして、トランスフレクトした放射線を複数の波長について同時に分析するために、スペクトル画像カメラ29が図3に示されるように使用される場合、光分散素子と二次元センサアレイの組合せが使用できる。代りとして、カメラあるいは図2に示される走査構造体は、白色光の代りに異なる波長の適切な照明と、検出装置の前方の光分散素子又はフィルタとを組み合わせることができる。この目的のため、1つ以上のフィルタがランプ16に使用して、或る波長だけを照明区域Iに照射することができ、例えば、フィルタホイールが、選択された波長の検出用媒質で照明区域Iを照射するのに使用することができる。代りとして、適切な発光ダイオードが、選択された波長の検出用媒質を放射するのに使用することができる。
【0036】
照明区域の照射は、図2及び3に示されるように、ランプ16で静的とすることができるし、あるいは、走査照明のように動的とすることもできる。走査照明構造体により、走査照明を検出区域の走査と同期させることが通常は必要であろう。また、同じユニットを照明と検出に使用することも可能であろう。
【0037】
検出装置34から得られたデータは、必要なパラメータを評価するためにスペクトル画像を作成するのに使用され、そして、コンベヤ14上を通過する物質12の流れが、流体及びパルプ状材料のような物質とは対立する個別の物体である場合には、関心領域上に測定されている特定のパラメータの測定が、関心領域にわたって、すなわちコンベヤベルト14を横切って行うことができるように、検出区域Dの二次元スペクトル画像を作成することはさらに望ましい。
【0038】
静的照明を備えた図3に示されるようなシステム10を使用することで、スペクトル画像は、スペクトル画像カメラの使用により、あるいは、放射線の所望の波長だけが検出されるように適切な光学フィルタを1つ以上のライン走査カメラに組み合わせることにより、得ることができる。この特定の構造体は、良好なスペクトル分解能を生じるという利点を有し、また可動部品を備えていないが、NIRの場合には、その欠点は、二次元赤外線センサのコスト及び比較的低い空間分解能である。可視スペクトル検出素子(1100nmに拡張可能な感度)、ライン及びマトリックス素子は比較的低価格で良好な分解能を与えることができる。
【0039】
測定されているパラメータのための平均値を得ることができるため、検出区域Dの二次元のシミュレーションは、区域Dを横切って分配された複数の別個の測定ポイントのマップを自動的に発生し、裂いたタラのような大きな個別の物体には特に有益である。更に、画像化した時、測定は、サンプルのモデルに応じて重みつけでき、また、完全にサンプルを乾燥させることによって手作業の水分測定のために裂いたタラに使用されるサンプル位置パターンに対応して、改善された判断のためにグループ化することができる。サンプル獲得のためのこれら位置パターンは国から国で変わり、こうして、自動的測定判断は、これらサンプル位置パターンと一致させることができる。
【0040】
検出区域におけるスポットにそれぞれ専用のポイント分光計のような複数の個別のスペクトル測定ユニットによって、検出区域Dを監視することができる。このようなスポット検出ユニットの例は、単純なビームスプリッタ・フィルタ検出ユニット、光分散素子と検出器アレイの組合せ、及びフィルタホイールユニットである。或る回折光学素子(DOEの)も、安価なスペクトルユニットを与えることができる。このようなシステムでは、単一のDOEは、区域Dを横切って分配された別個の測定ポイントのうちの1つに専用である。回折光学素子(DOE)は、入射光の選択された波長を個別の検出器又は検出器アレイにおける1セットの所定の位置に転送する受動素子である。各測定ポイントに対して専用のポイント分光計を有する代わりに、別個の分光計の数を減少させることができ、また、分光計を傾けることによって、検出器は検出区域Dの複数の部分を走査することができる。
【0041】
また、周波数の可視NIRスペクトル範囲内で特定の波長を検出するために、フィルタあるいは光分散素子と一緒に別個のシリコン検出器の列又はマトリックスを使用することが可能である。シリコン検出器は、約1100nmまでの電磁放射線を検出するのに利用でき、特に色、水分含有量及びタンパク質含有量の測定に適している。
【0042】
回転式多角形ミラー32に関する走査構造体の更なる代わりとして、検出区域Dの走査は、検出区域Dを横切って分配された各測定ポイントのための専用の光ファイバーを包含する光ファイバーマルチプレクサの利用によって行うことができ、この光ファイバーは、それぞれの測定ポイントからの変化した媒質を検出装置34に連続して伝送する。
【0043】
また、トランスフレクトした放射線が照明区域Iからの2つの異なる距離で略同時に測定されるように、第1の検出区域Dの下流側における第2の検出区域でもトランスフレクトした媒質を測定することは有益である。両検出区域から得られたデータは、距離に伴うスペクトル強さの減衰を示すために組み合わされ、したがって放射通路のマッピングを可能にすることができる。これは、スキャナに1つの2ライン検出器を使用すること、2つのスペクトル画像カメラ(これら2つの代替物はコンベヤベルト14の幅を実質的に横切って延びる2つの完全な検出区域からの放射線強さを測定する)を使用すること、あるいは、コンベヤベルト方向Aにおける放射線強さの減衰を測定する少なくとも幾つかの単一検出器又はライン検出器を使用することを含む多種の方法で達成することができる。
【0044】
材料特性の検出を改善するため、あるいは物質の表面特性を測定するために、反射測定とトランスフレクション測定を反射測定と組み合わせることも有用であり得る。例えば、魚に関して、(トランスフレクトした放射線を介して)水分含有量を測定するとともに、(反射放射線によって)血液のしみのような表面の斑点の存在を同時に調べることが可能である。これは、システム10において、スクリーン36の反対側で検出区域Dを走査するトランスフレクション検出装置に加えて、照明区域Iを走査する第2の検出ユニットを有することにより、達成することができる。しかしながら、特に魚に関しては、それらが塩の結晶の存在、皮のうろこ及びひれの表面特性のような表面特性によって強く影響を受けるので、反射スペクトル測定は必ずしも一貫しているとは限らない。
【0045】
廃棄物の選別に関して、特にプラスチック容器の選別では、容器を異なる色の小部分に分けることが望ましい場合に、わずかに有色の透明プラスチック物体の確実な識別は、疑わしいと分かる場合がある。例えば、液体収容用のプラスチックボトルでは、選別段階で、ボトル内にいくらか液体が残っていることがしばしばあり、このため、物体を通過した放射線の吸収を妨げ得る。色の決定は、コンベヤベルトから反射しているこの放射線に頼っているかもしれず、したがって、誤った決定を引き起こす場合がある。しかしながら、トランスフレクトした放射線の測定は、信頼できる色及び材料の識別、そしてわずかに有色のプラスチックと透明プラスチックとの差異を生じさせる結果となる。
【0046】
図1に関して延べたように、トランスフレクトした媒質は、PETボトルにおけるナイロン「スリーブ」(ガス障壁)の検出のように、物質における薄層の変化を検出するのに役立つことができる。
【0047】
また、トランスフレクトした媒質は、医療の適用において、特に皮膚及びその直下の細胞組織層の非侵襲性の検査に使用することができる。寝かせた位置にある患者は、現在の身体走査機械での場合と同様に、照明区域Iを通って前進され得る。このような適用では、前述したように別個に調整可能なサブスクリーン38を備えたスクリーンのような特に適応性のあるスクリーン36は、照明区域Iから検出区域Dに達する反射媒質を遮蔽するのに使用することができる。これは、患者の身体サイズにおけるだけでなく、照明区域を通って前進する際に身体がとり得る位置における大きな変化によるものである。有益的には、照明は、医学的に安全なレーザーあるいは数個の共直線形レーザーを一緒に使用し流れ(すなわち、患者が横たわっているプラットホーム)を横切って往復しながら横断する急速移動スポットから区域Iを作成する走査照明構造体によって、行われる。レーザー光線は、測定を単純化し、焦点合わせを鈍感にしそしてスクリーン36の必要な仕上を軽減させ得る非常に狭い照明区域を生起する。走査照明に関して前述したように、(図2に示したもののような)走査検出構造体は、走査照明と同期されて、単一のユニットを照明及び検出に使用可能にすることができる。このような可能な医療の適用の例は、患者における血液酸素処理の分析、及び皮膚表面より下の損傷・異常な組織構造の検出であり得る。
【0048】
また、検出区域Dからの反射放射線を同時に決定するために、検出区域D自体を電磁放射線で照射することが可能である。検出区域を照射するのに使用される電磁放射線は、光学フィルタ装置で濾過されて、トランスフレクション波長測定スペクトル(照明区域Iを照射する電磁放射線によって決定される)を除去することができる。
【0049】
トランスフレクトした媒質の検出は、物質に照射される検出用媒質の波長とは異なる波長である、検査されている物質から放射された媒質の更なる検出で補うことができる。このような媒質は、材料の識別を助け得るルミネセンス、蛍光及び燐光の検出のように、或る材料の励磁によって検出用媒質にさらされるものであり得る。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】放射線を放射しこのトランスフレクトした放射線を測定するためのシステムの概略図である。
【図2】トランスフレクションを利用する物質の自動検査システムの上方からの概略斜視図である。
【図3】図2のシステムの変形例の概略縦断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成の異なる物質の流れを自動的に検査する装置において、略一定の強さの電磁放射線を含む検出用媒質を前記流れの照射区域へ放射する放射装置を包含し、この照射区域で前記媒質が前記物質の表面に透入し、前記照射区域が前記流れの幅を実質的に横切って連続的に延び、前記表面に透入している前記媒質が、前記物質によって変化され、前記装置が、前記照射区域から実質的に離れた検出区域において前記物質から出る変化した媒質を受け入れる受け装置と、前記変化した媒質に依存して検出データを発生する検出装置とをさらに包含し、前記装置の使用において、前記受け装置で受け入れられる前記変化した媒質の少なくとも大部分がトランスフレクトした媒質であるように構成した装置。
【請求項2】
前記検出区域が前記流れの幅を横切って実質的に延びる、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記検出区域が前記流れの幅を横切って実質的に延びる、請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記放射装置が、前記検出用媒質として電磁放射線を放射し、前記検出装置が、前記検出区域から出る電磁放射線の強さを複数の選択された波長で略同時に検出する、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記放射装置が、前記流れを横切って分配されるようになっている前記電磁放射線の1つ以上の源を包含する、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記放射装置が、前記照射区域を走査する走査ビームの形状で前記検出用媒質を放射するようになっている、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記放射装置が、前記照射区域を走査し互いに共直線形である複数の走査ビームの形状で前記検出用媒質を放射するようになっている、請求項2ないし4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記放射装置が光学フィルタ装置を包含する、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記放射装置及び前記受け装置が、前記流れの同じ側に位置されている、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記放射装置及び前記受け装置が、前記流れの下側に位置されている、請求項9記載の装置。
【請求項11】
前記物質が、コンベヤベルト上で前記照射区域及び前記検出区域を前進される、請求項1ないし10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記物質が、振動テーブル上で前記照射区域及び前記検出区域を前進される、請求項1ないし10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記検出区域を前記照射区域から隔離する物理的光停止部をさらに包含する、請求項1ないし12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
前記物理的光停止部がスクリーンである、請求項13記載の装置。
【請求項15】
前記スクリーンが、前記流れの幅を実質的に横切って分配された1つ以上の調整可能なサブスクリーンをさらに包含する、請求項14記載の装置。
【請求項16】
前記スクリーンに装着された1つ以上の円柱状レンズをさらに包含する、請求項14又は15記載の装置。
【請求項17】
前記物質が動物の組織である、請求項1ないし16のいずれか1項に記載の装置。
【請求項18】
前記動物の組織がヒト組織である、請求項17記載の装置。
【請求項19】
前記照射区域及び前記検出区域が約0.5mm〜約10cmの距離を離れている、請求項1ないし18のいずれか1項に記載の装置。
【請求項20】
前記受け装置が、その回転軸線のまわりに反射縁部を有する多角形ミラーを包含し、この回転軸線が前記流れの前進方向と実質的に平行である、請求項1ないし19のいずれか1項に記載の装置。
【請求項21】
前記受け装置が揺動式ミラーを包含する、請求項1ないし19のいずれか1項に記載の装置。
【請求項22】
前記検出装置が、ビームスプリッタと光学フィルタの組合せを含む、請求項1ないし21のいずれか1項に記載の装置。
【請求項23】
前記検出装置がシリコン検出器を包含する、請求項1ないし22のいずれか1項に記載の装置。
【請求項24】
前記受け装置がスペクトル画像カメラを包含する、請求項1ないし19のいずれか1項に記載の装置。
【請求項25】
前記検出装置が光分散素子とセンサアレイの組合せを包含する、請求項24記載の装置。
【請求項26】
前記複数の個別の検出ポイントのうちの1つにそれぞれ専用の複数の光分散素子及びセンサアレイの組合せをさらに包含する、請求項3に従属する請求項25記載の装置。
【請求項27】
前記光分散素子が、複数のスペクトルを発生する回折光学素子である、請求項25又は26記載の装置。
【請求項28】
最初に記載の検出区域の下流側に第2の検出区域をさらに包含する、請求項1ないし27のいずれか1項に記載の装置。
【請求項29】
前記検出装置が2ライン検出装置である、請求項28記載の装置。
【請求項30】
前記照射区域からの反射した電磁放射線を検出する第2の検出装置をさらに包含する、請求項1ないし29のいずれか1項に記載の装置。
【請求項31】
前記検出区域を照射するために電磁放射線を含む更なる検出用媒質を放射する第2の放射装置をさらに包含し、前記第2の放射装置が、前記更なる検出用媒質からトランスフレクション測定波長スペクトルの放射を濾過する光学フィルタ装置を含み、前記検出装置が、前記流れの部分から反射した電磁放射線の強さを決定する、請求項1ないし30のいずれか1項に記載の装置。
【請求項32】
組成の異なる物質の流れを自動的に検査する方法において、前記流れの幅を実質的に横切って連続的に延びる前記流れの区域を照射するように、略一定の強さの電磁放射線を含む検出用媒質を放射し、照射区域で前記検出用媒質を前記物質の表面に透入させ、ここで前記媒質が前記物質によって変化され、受け装置で前記物質から出る変化した媒質を受け入れ、前記受け装置で受け入れられる前記変化した媒質の少なくとも大部分がトランスフレクトした媒質であり、前記変化した媒質に依存して検出データを発生する方法。
【請求項33】
前記受け入れが前記放射と略同時に生じる、請求項32記載の方法。
【請求項34】
前記物質から出る前記変化した媒質が、検出区域から出る、請求項32又は33記載の方法。
【請求項35】
前記検出区域が、前記検出区域の幅を実質的に横切って分配された複数の個別の検出ポイントを包含する、請求項34記載の方法。
【請求項36】
前記検出用媒質が、前記区域を照射する電磁放射線を含み、前記発生が、前記検出区域から出る電磁放射線の強さを決定することを含み、前記決定が、複数の選択された波長に関して各検出ポイントから同時に行われる、請求項35記載の方法。
【請求項37】
前記複数の個別の検出ポイントからの検出データが、前記検出区域を通過する前記物質の二次元のシミュレーションを行うために使用される、請求項35又は36記載の方法。
【請求項38】
前記二次元のシミュレーションが画像解釈を使用しながら分析される、請求項37記載の方法。
【請求項39】
前記検出用媒質が、前記区域を走査する走査ビームの形状で放射される、請求項32ないし38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記検出用媒質が、前記区域を走査し互いに共直線形である複数の走査ビームの形状で放射される、請求項32ないし38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記放射が、選択された波長の検出用媒質で前記区域を連続して照射することを含む、請求項32ないし40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記区域及び前記検出区域を通して前記物質を前進させることをさらに包含する、請求項34ないし41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
スクリーンを介して前記区域を前記検出区域から隔離することをさらに包含する、請求項34ないし42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記スクリーンの下を通過する前記物質のサイズに従って前記スクリーンを調整することをさらに包含する、請求項43記載の方法。
【請求項45】
前記物質が動物の組織である、請求項32ないし44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記動物の組織がヒト組織である、請求項45記載の方法。
【請求項47】
前記物質がプラスチック容器である、請求項32ないし44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記検出データが、前記プラスチック容器の材料特性及び/又は色を識別するのに利用される、請求項47記載の方法。
【請求項49】
最初に記載の検出区域の下流側における第2の検出区域から出る変化した媒質を、前記放射と略同時に受け入れることをさらに包含する、請求項34ないし48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
照射区域から反射した電磁放射線に関して更なる検出データを発生することを包含する、請求項32ないし49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記検出区域を照射するために電磁放射線を含む更なる検出用媒質を放射し、前記更なる検出用媒質からトランスフレクション測定波長スペクトルの放射を濾過することをさらに包含し、前記発生が、前記流れの部分から反射した電磁放射線の強さを決定することをさらに含む、請求項34ないし50のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−535671(P2007−535671A)
【公表日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−510122(P2007−510122)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【国際出願番号】PCT/GB2005/001660
【国際公開番号】WO2005/106438
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(504274664)
【氏名又は名称原語表記】TITECH VISIONSORT AS
【住所又は居所原語表記】RYENSVINGEN 11B, N−0680 OSLO, NORWAY
【Fターム(参考)】