説明

現像ギャップ長測定装置及び現像ギャップ長測定方法

【課題】現像剤担持体の表面に現像剤が存在し、磁気穂立ちを形成している状態においても、適切に現像ギャップ長を測定することが可能な現像ギャップ長測定装置及び現像ギャップ長測定方法を提供する。
【解決手段】現像ユニットの現像ギャップGの上方に設置されたX線発生装置20から現像ローラ2と現像ギャップGと感光体ドラム1に対してX線を照射し、これらの物質を透過した透過X線を対向する図示しないシンチレータに照射される。透過X線を検出することによってシンチレータで発光した光は、微弱のためイメージインテンシファイヤー21を用いて光を増幅させ、この増幅光は、更に対向するCCD等の撮像装置22によって画像データとして取得し、この画像データから現像ギャップ長を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像ギャップ長測定装置及び現像ギャップ長測定方法に関し、特に、現像剤担持体が担持している現像剤を当該潜像担持体に供給する現像ギャップ長を計測する現像ギャップ長測定装置及び現像ギャップ長測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機やプリンタ等の電子写真技術を用いた画像形成装置の小型化やパーソナル化の市場要求に伴って、画像形成装置内で使用される現像装置の小型化が図られている。また、こうした要求に伴って、トナーが無くなった時点で、現像装置ごと交換する使い捨てタイプの現像装置や、この現像装置の他に、原稿画像の静電潜像が形成される潜像担持体、及び潜像担持体上に残留したトナーを除去するクリーニング装置等が一体化された、いわゆるプロセスカートリッジも一般に広く用いられるようになってきている。
【0003】
このような要求に伴って、現像剤粒子であるキャリア・トナーの小粒子径化・高線速化によって現像ギャップ長の最適値は狭くなる方向にあり、かつ、ますますその空間的精度や時間的変動に対する余裕度が厳しく要求されている。一般に、現像ギャップ長の空間的精度は、10μm程度の誤差範囲であることが要求される。
【0004】
現像ギャップ長測定の一般的な測定手段としては、シックネッスゲージを挿入して計測する手段や、半導体レーザーを用いた、いわゆる2次元走査三角測距式等がある。前者は一般に、現像剤担持体である現像ローラや潜像担持体である感光体ドラムの回転を静止させた状態で計測を行う必要があるが、後者は回転した状態で計測することができ、偏心周期を考慮した現像ギャップの計測を行うことが可能である。しかしながら、この後者の場合には、現像ローラ上に現像剤が存在しない状態で計測を行わなくてはならないという点が問題となる。その理由は、実際の画像形成時には、現像剤が現像ローラ上に汲みあがっており、現像ギャップ間で磁気穂立ちを形成している必要があるが、半導体レーザーでは波長が可視光域であるために、反射光がとらえられないためである。
【0005】
この問題点を解決するために、現像ローラの両端部にそれぞれ光学的距離センサを設置し、現像剤が供給されない感光体ドラムの両側と現像ローラの両側で感光体ドラムの表面と現像ローラとの距離、正確には予め計測していた現像ギャップとの差異を計測することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平5−72880号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記現像ローラの両端部にそれぞれ光学的距離センサを設置する技術では、画像形成時に測定は可能であるが、計測個所は現像ローラの端部であり、実際に画像形成を行っている領域、すなわち現像ローラの中央付近の現像ローラがトナーを供給している領域とは異なる個所であり、直接的な計測手法とは言いがたい。そのため、現像ローラや感光体ドラムが経年的に構造変形を生じさせた場合に、特に現像剤が充填されている状態では、現像ローラや感光体ドラムと現像剤との摩擦やその分布によって構造体の変形が生じやすく、現像剤がない状態で計測された挙動とは大きく異なるという問題点がある。
【0007】
本発明は、上記実情を考慮してなされたものであり、現像剤担持体の表面に現像剤が存在し、磁気穂立ちを形成している状態においても、適切に現像ギャップ長を測定することが可能な現像ギャップ長測定装置及び現像ギャップ長測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、表面に現像剤を担持する現像剤担持体と、画像を静電潜像として担持する潜像担持体と、前記現像剤担持体が担持している現像剤を前記潜像担持体に供給する現像ギャップ領域とに放射線を照射する放射線源と、前記現像剤担持体、潜像担持体及び現像ギャップ領域を透過した放射線を検出して前記現像剤担持体、現像ギャップ領域及び潜像担持体の画像を記録する画像記録手段と、を備えたことを特徴とする現像ギャップ長測定装置である。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の装置において、前記放射線は、X線であることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の装置において、前記現像剤担持体は、回転駆動されることを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の装置において、前記画像記録手段は、前記透過放射線によって前記画像を形成するラインセンサまたはCCD、CMOS及びイメージングプレートのいずれかから構成される面センサを具備していることを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の装置において、前記現像剤担持体と潜像担持体は、それぞれ、現像ローラ及び感光体ドラムであり、前記現像ローラと感光体ドラムを保持する保持体と前記放射線源のいずれか一方を、前記現像ローラの回転軸方向に移動させる移動手段を備えていることを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の装置において、前記画像記録手段は、前記記録された画像を時系列に保存する記録装置と、保存された時系列の画像を画像演算する画像処理装置と、を備えていることを特徴とする。
【0014】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の装置において、前記画像処理装置は、前記画像演算された結果から現像剤担持体または潜像担持体の偏心周期を計測する偏心周期計測手段を備えていることを特徴とする。
【0015】
請求項8記載の発明は、請求項6又は7に記載の装置において、前記画像処理装置は、所定のしきい値を超えた現像ギャップ長が測定された場合に警告を表示する警告表示手段を備えたことを特徴とする。
【0016】
請求項9記載の発明は、表面に現像剤を担持する現像剤担持体と、画像を静電潜像として担持する潜像担持体と、前記現像剤担持体が担持している現像剤を前記潜像担持体に供給する現像ギャップ領域とに放射線を照射する工程と、前記現像剤担持体、潜像担持体及び現像ギャップ領域を透過した放射線を検出して前記現像剤担持体と現像ギャップ領域と潜像担持体の画像を記録する工程と、前記画像から現像ギャップ長を測定する工程と、を備えたことを特徴とする現像ギャップ長測定方法である。
【0017】
請求項10記載の発明は、請求項9記載の方法において、前記測定する工程は、前記現像剤担持体を回転させながら現像ギャップ長を測定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、現像剤担持体の表面に現像剤が存在し、磁気穂立ちを形成している状態においても、適切に現像ギャップ長を測定することが可能な現像ギャップ長測定装置及び現像ギャップ長測定方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明の実施形態に係る現像ギャップ長測定装置及び現像ギャップ長測定方法を、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な実施形態であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0020】
先ず、本発明による現像ギャップ長測定装置を説明するに先立って、電子写真画像形成方法について説明する。
【0021】
図1は、電子写真画像形成装置の現像ユニット部分の概略構成を示す図で、図2は図1のL方向から観察した場合の一部を切り欠いた平面図である。図中、1は、矢印方向に図示しない駆動モータ等の駆動手段によって回転される潜像担持体である感光体ドラム、2は、矢印方向に図示しない駆動モータ等の駆動手段に回転される現像剤担持体である現像ローラである。3は、現像ローラ2の回転軸4に取り付けられ、先端が感光体ドラム1の表面に当接して現像ローラ2の表面と感光体ドラム1との表面との間に一定の間隔h(現像ギャップ)を形成するスリップリング、5は現像剤6を収納する現像剤容器、8は現像ローラ2の表面に担持された現像剤5の感光体ドラム1への現像剤5の供給量を規制するドクターブレードである。
【0022】
電子写真画像形成方法の一つ、いわゆる2成分現像方式では、一般に、現像剤6は、キャリア(直径30〜200μmの鉄粉)とトナー(直径約10μmの顔料等が分散された微小樹脂粉体)の2種が混合されて構成されている。混合体たる現像剤6は、一般に現像ローラ2の表層を覆いながら、現像ローラ2の内部に取り付けられた磁石等の磁界によって汲み上げられ、かつ磁界に沿って現像剤穂立ち7を磁極上に形成する。一般に現像剤穂立ち7は、現像ローラ2と感光体ドラム1の最近接距離(現像ギャップG)の領域において形成されている(図2参照)。
【0023】
現像装置は、図1に示すように現像剤容器5内に、回転によって現像剤攪拌、搬送するトナー補給側攪拌スクリュー9、現像ローラ側攪拌スクリュー10及び現像ローラ2を備え、これらの回転体は、図示しない駆動手段によってそれぞれ矢印方向に回転駆動される。トナー補給側攪拌スクリュー9を収納する第1の現像剤撹拌室14の容器5の外壁には、図示しない補給口を設けて図示しないトナー補給装置からトナーが供給される。トナー補給側攪拌スクリュー9は、トナー補給装置から補給されたトナーと現像剤容器5内の現像剤6(磁性粒子とトナーとを有する2成分現像剤)とを攪拌、搬送する。
【0024】
また、第2の現像剤撹拌室12の攪拌スクリュー10は、現像剤容器5内の現像剤6を攪拌、搬送する。第1の現像剤攪拌室11と第2の現像剤攪拌室12は、仕切り板13で仕切られており、両端部に現像剤6の受け渡す開口部14がある。また、例えば補給トナーは、図示しない補給口を通じて第1の現像剤攪拌室11の上方から落下させることで注入される。
【0025】
現像ローラ2と感光体ドラム1との間にスリップリング3によって形成される現像ギャップGには、現像ローラ2によって汲み上げられた現像剤6が、現像ローラ2の磁界に沿って穂立ち状態で存在し、感光体ドラム1上に形成された画像の静電潜像に供給される。そして、感光体ドラム1上の静電潜像に現像剤6が静電気的に付着して、静電潜像をトナー画像として顕像化している。
【0026】
現像ローラ2表面と感光体ドラム1表面との離間距離である現像ギャップGは、画質に大きく影響する。即ち、現像ギャップGが広い(離間距離hが長い)場合には、感光体ドラム1上の潜像端部のトナー付着量が増加する、所謂「エッジ強調画像」が発生し、画質を低下させてしまう問題がある。
【0027】
この現象を低減する方法の1つとして、現像ギャップGを狭くする措置がよく用いられる。しかしながら、現像ギャップGを狭くすると現像電界が大きくなるために現像ガンマが高くなる。この現像ガンマについては、高すぎると階調性が劣化し、低すぎると最大付着量が得られにくくなるので、当該現像ガンマは最適な範囲をもつように、現像ギャップ長hは設定される。現像ギャップ長hの最適値は、キャリア及びトナーの種類や線速によって異なるが、一般に1mm〜100μmである。このように、現像ギャップGの制御は電子写真画像の現像品質に大きく関わる因子であり、正確な計測、制御が欠かせない。
【0028】
現像ギャップGの位置決めは、スリップリングという方式が用いられる。図2は、現像ローラ1の回転軸4に設置されたスリップリング3を感光体ドラム3に当接させて現像ギャップ長hを保持する機構である。現像剤6は、現像ローラ1の表層を覆うように存在しており、特に現像ギャップGには、現像ローラ2内に設置された磁石の影響で、磁気穂立ち7を形成している。なお、現像ギャップGの間隔(長さ)hは、上述のように、現像ローラ2や感光体ドラム1等の回転体の偏心等が存在するため、現像ギャップ長hには、時間変動の要素がある。
【0029】
近年、現像剤粒子であるキャリア・トナーの小粒子径化・高線速化によって現像ギャップ長hの最適値は狭くなる方向にあり、かつ、ますますその空間的精度や時間的変動に対する余裕度が厳しく要求されている。一般に、現像ギャップ長hは、上述のスリップリング方式で10μm程度の変動が生じ、その変動要因としては、現像ローラや感光体ドラム等の回転体の軸偏心や治具の構造変形、飛散トナーのスリップリングへの付着と考えられている。
【0030】
このように、現像ギャップ長の精度を高めるには、現像ギャップ長hを高精度で測定する必要があり、しかも、画像形成時の状態、すなわち、現像ギャップGに現像剤6が存在する状態での現像ギャップ長hの測定が必要となる。そのため、検討の結果、現像ローラ2、感光体ドラム1、現像剤6が存在する現像ギャップGに、X線等の放射線を照射すると、現像ローラ2、感光体ドラム1、現像剤6が存在する現像ギャップGを透過する放射線量が異なることに着目し、この着目に基づき、さらに検討の結果、この透過放射線を検出してこれらの物体の画像を記録したときに、これらの物体間の境界を検知できることを究明した。
【0031】
本発明は、この究明に基づきなされたものである。図3は、本発明の実施形態に係る現像ギャップ長測定装置の基本的な概略構成を示す図である。図3中、20は、熱電子線をターゲットとなる重金属に当ててX線を発生させるX線発生装置、21は、図示しないシンチレータで発光した光を増幅させるイメージインテンシファイヤー、22はイメージインテンシファイヤー22からの光を検出して画像データを形成する撮像装置、Sは、X線が照射されるサンプル領域で、本実施形態においては、現像ローラ2、現像ギャップG感光体ドラム1である。
【0032】
本実施形態の現像ギャップ長測定装置においては、前述の図1で示す現像ユニットの現像ギャップGの上方に設置されたX線発生装置20から現像ローラ2と現像ギャップGと感光体ドラム1に対してX線を照射し、これらの物質を透過した透過X線を対向する図示しないシンチレータに照射される。透過X線を検出することによってシンチレータで発光した光は、微弱のためイメージインテンシファイヤー21を用いて光を増幅させ、この増幅光は、更に対向するCCD等の撮像装置22によって画像データとして取得することができる。
【0033】
ここで、透過領域にある現像ローラ2、感光体ドラム1は、円柱状であり、それぞれの断面の円の半径を40mm、60mmとする。現像ギャップG内に形成される現像穂立ち7の、透過方向の距離xは約2mmである。これらの値を用いてX線の透過率をそれぞれ計算する。この場合、現像ローラ2の主要材料はSUS(ステンレス鋼)である。現像剤6は、キャリアとトナーの混合物で、その混合比率は50%とし、現像ギャップG内部における体積率は約10%である。感光体ドラム1は、非常に薄いためその表層を無視するとほぼアルミニウム相当の金属材料である。X線の透過量Iは、次の(1)式から得られる。
【0034】
I=I0×exp(−μx) ・・・(1)
但し、I0:初期X線量、μ:線減弱係数、x:透過方向の長さである。
【0035】
現像ギャップG付近の現像剤6が磁気穂立ち7を形成している領域の長さx(約2mm)での透過方向のX線の透過率を計算する。現像ローラ2及び感光体ドラム1の半径は現像ギャップ領域Gの長さに対して十分大きいので、透過距離は2mmとして考えると、X線が気中を透過した場合を基準として、現像ローラ、現像剤領域(現像ギャップG領域)、感光体ドラム1の透過率を求めると、現像ローラ領域:0.56、現像剤領域:0.94、感光体ドラム:0.77となり、3者の層構造は明確に分離できる。この透過率の差を撮像によって認識し、現像ギャップ長の計測を行う。
【0036】
図4は、図3のA−A線上で切断した現像ローラ2、現像ギャップG、感光体ドラム1の断面構造と、これらの部材の配置位置(X軸)関係を対応させて透過X線の透過濃度(透過率)を示しており、(A)は、前述の断面構造を示し、(B)は前記配置位置関係を対応させた場合の透過X線の透過濃度の関係を示すグラフである。図4(B)におけるα及びβは、前述の(1)式を用いて算出された透過率で、これらの値を、それぞれ、現像ローラ2と現像ギャップGとの界面を示す閾値(α)及び現像ギャップGと感光体ドラム1との界面を示す閾値(β)として示している。また、曲線Aは配置位置に関して測定された各物質に応じた透過X線濃度の関係を示している。
【0037】
この図4の結果から、曲線Aとα値との交点P1及び曲線Aとβ値との交点P2との間隔dを求めることにより、所定のY軸位置(現像ローラ2の長手方向)における現像ギャップ長hを求めることができる。また、現像ローラ2及び感光体ドラム1を回転させ、同一Y軸上で現像ギャップ長hを求めれば、現像ローラ2及び感光体ドラム1の回転軸の偏心に基づくギャップ長の変動も測定することが可能である。
【0038】
なお、本実施形態においては、現像剤担持体として現像ローラ、潜像担持体として感光体ドラムの例について説明したが、これらの担持体は、ベルト等の他の形態であってもよい。
【0039】
次に、より具体的な現像ギャップ長測定装置の実施形態について実施例に基づいて説明する。
【0040】
〔実施例1〕
図5は、本発明に係る現像ギャップ長測定装置の一例を示している。現像ローラ2と感光体ドラム1は、所定の現像ギャップ長hを有して、例えば、プロセスユニットのような所定の関係で接続された状態で架台33上に保持されている。X線管20から照射されたX線は、対向するラインセンサ23に入力される。ラインセンサとは、X線の線量に応じた信号強度を発するCMOSやCCDをライン上に配置したものである。
【0041】
CMOSのサイズは、現像剤6が充填された現像剤容器5の内部に、回転する感光体ドラム1と現像ローラ2が収納されている。感光体ドラム1や現像ローラ2の駆動部や現像剤容器5等は、X線に対してほぼ100%透過する厚みの薄いプラスチック等から構成されているために、ここでは省略している。X線は、前述の図3で示すように、現像ギャップGを中心に、かつ、現像ローラ2及び感光体ドラム1の円柱の断面円の接線方向に平行に照射されるように、位置関係が決められている。
【0042】
架台33によって現像ローラ2及び感光体ドラム1は、これらの長軸方向(本図の矢印B方向)に移動可能に保持されており、その移動速度及び移動距離は、架台制御装置32によってコンピュータ30で制御されている。センサ23の取り込み速度は、約1msであるので長軸方向の計測必要精度にもよるが、1mm間隔として長軸方向(図4のY軸方向)で現像ローラ2の全長300mmに必要なスキャン時間は約0.6秒である。
【0043】
センサ23に入力されたX線の強度データは、画像データとして画像入力装置31によってコンピュータ30に取り込まれる。X線は人体に有害なので、鉛板・ガラスによるX線防護箱34によって隔離されている。
【0044】
この構成によれば、前述のように、X線透過量によって現像ローラ2の領域、現像ギャップG領域及び感光体ドラム1の領域を認識できるので、現像ギャップ長を画像計測によって精度良く得ることができる。また、そのギャップ長は現像ローラ2の長軸方向に1次元分布データとして得ることが可能である。
【0045】
図6は、画像入力装置31からの画像信号を得てコンピュータ30内で処理されるブロック図である。
【0046】
画像入力装置31は、ラインセンサ23で検出された透過X線による画像情報を、磁気ディスク記録装置や半導体記録装置等からなる画像記録装置40に入力する。画像記録装置40では、この画像情報を時系列に記録する。時系列に記録された画像情報は、画像演算装置41によって画像演算処理され、画像演算処理されたデータに基づいて現像ギャップ長計測手段42によって、現像ギャップ長の時間的変動等が出力、記録される。
【0047】
また、現像ギャップ長計測手段42によって計測された現像ギャップ長が一定の閾値γを超えた際には、警告装置43によって警告を発することによって、不良装置の特定や、メンテナンスの機会を明確に知らせることが可能となる。
【0048】
以上のように、本実施例による現像ギャップ長測定装置によって、透過X線を使用して、現像剤を含有した状態における現像ギャップ長を精度良く測定が可能となる。
【0049】
〔実施例2〕
図7は、本発明の他の実施例に係る現像ギャップ長計測装置の概略構成を示す図で、前述の実施例1の現像ギャップ長計測装置と基本的には、同一であり、同一構成については、同一符号を付している。本実施例は、実施例1に対し、透過X線の検出手段としてライセンサ23に代えてイメージインテンシファイヤー21と面センサ24を使用する点で相違する。
【0050】
X線管20から照射されたX線は対向する面センサ23に入力される。面センサとは、X線の線量に応じた信号強度を発するCMOSやCCDを面上に2次元配置したもの、もしくはイメージングプレートである。以下、図5と同様に、現像剤6が充填された現像器5内部に、回転する感光体ドラム1と現像ローラ2が収納されている。
【0051】
駆動部やケース等はX線に対してほぼ100%透過する厚みの薄いプラスチック等から構成されているために、ここでは図示しない。X線は現像ギャップGを中心に、かつ、現像ローラの断面円の接線方向に平行に照射されるように、位置関係が決められている。照射されたX線は、現像ローラ2、現像ギャップG領域、感光体ドラム1を透過後、図示しないシンチレータ面に入射され、シンチレータからの発光はイメージインテンシファイヤー21によって増幅される。
【0052】
更に増幅光は面センサ24に入力され、センサ24に入力されたX線の強度データは画像データとして画像入力装置31によってコンピュータ30に取り込まれる。X線は人体に有害なので、鉛板・ガラスによるX線防護箱34によって隔離されている。
【0053】
この構成によれば、前述のように、X線透過量によって、現像ローラ2領域、現像ギャップG領域、感光体ドラム1領域を認識できるので、現像ギャップ長を画像計測によって得ることができる。
【0054】
この場合に、面センサ24の時間解像度は約1msであるため、100Hz以上の界面の周期変動を捉えることができる。画像演算装置41によって各界面の周期変動をFFT(高速フーリエ変換手段)を使用して現像ローラ2及び感光体ドラム1の偏心として計算することが可能である。
【0055】
本実施例による現像ギャップ長測定装置を使用して、従来不可能であった現像剤6を充填した状態での現像ギャップ長を計測することができ、この測定結果を基に画像形成装置を調整することによって画質への悪影響を抑制できるという効果も得ることができる。
【0056】
また、上記効果に加えて、現像ローラ及び感光体ドラムの偏心周期も計測できるという効果を得ることができる。
【0057】
以上、本発明を好適な実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記のものに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施形態に係る現像ギャップ長測定装置の被測定物となる一形態の現像ユニット部分の概略構成を示す図である。
【図2】図1のL方向から観察した場合の一部を切り欠いた平面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る現像ギャップ長測定装置の基本構成を説明する概略構成を示す図である。
【図4】図3のA−A線上で切断した断面図(A)及び現像ローラ、現像ギャップ、感光体ドラムの配置関係を対応させた場合の透過X線の透過濃度との関係を示すグラフ(B)である。
【図5】本発明の実施例1に係る現像ギャップ長測定装置の概略構成を示す図である。
【図6】本発明の実施例1に係る現像ギャップ長測定装置に使用されるコンピュータの現像ギャップ長測定に関するブロック図である。
【図7】本発明の実施例2に係る現像ギャップ長測定装置の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
1 感光体ドラム
2 現像ローラ
3 スリップリング
4 回転軸
5 現像剤容器
6 現像剤
7 現像剤穂立ち
8 ドクターブレード
9 トナー補給側攪拌スクリュー
10 現像ローラ側攪拌スクリュー
20 X線管
21 イメージインテンシファイヤー
22 撮像装置
23 ラインセンサ
24 面センサ
30 コンピュータ
31 画像入力装置
32 架台制御装置
33 架台
34 X線防護箱
40 画像記録装置
41 画像演算装置
42 現像ギャップ長計測手段
43 警告装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に現像剤を担持する現像剤担持体と、画像を静電潜像として担持する潜像担持体と、前記現像剤担持体が担持している現像剤を前記潜像担持体に供給する現像ギャップ領域とに放射線を照射する放射線源と、
前記現像剤担持体、潜像担持体及び現像ギャップ領域を透過した放射線を検出して前記現像剤担持体、現像ギャップ領域及び潜像担持体の画像を記録する画像記録手段と、を備えたことを特徴とする現像ギャップ長測定装置。
【請求項2】
前記放射線は、X線であることを特徴とする請求項1記載の現像ギャップ長測定装置。
【請求項3】
前記現像剤担持体は、回転駆動されることを特徴とする請求項1記載の現像ギャップ長測定装置。
【請求項4】
前記画像記録手段は、前記透過放射線によって前記画像を形成するラインセンサまたはCCD、CMOS及びイメージングプレートのいずれかから構成される面センサを具備していることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の現像ギャップ長測定装置。
【請求項5】
前記現像剤担持体と潜像担持体は、それぞれ、現像ローラ及び感光体ドラムであり、
前記現像ローラと感光体ドラムを保持する保持体と前記放射線源のいずれか一方を、前記現像ローラの回転軸方向に移動させる移動手段を備えていることを特徴とする請求項4記載の現像ギャップ長測定装置。
【請求項6】
前記画像記録手段は、前記記録された画像を時系列に保存する記録装置と、保存された時系列の画像を画像演算する画像処理装置と、を備えていることを特徴とする請求項5記載の現像ギャップ長測定装置。
【請求項7】
前記画像処理装置は、前記画像演算された結果から現像剤担持体または潜像担持体の偏心周期を計測する偏心周期計測手段を備えていることを特徴とする請求項6記載の現像ギャップ長測定装置。
【請求項8】
前記画像処理装置は、所定のしきい値を超えた現像ギャップ長が測定された場合に警告を表示する警告表示手段を備えたことを特徴とする請求項6又は7に記載の現像ギャップ長測定装置。
【請求項9】
表面に現像剤を担持する現像剤担持体と、画像を静電潜像として担持する潜像担持体と、前記現像剤担持体が担持している現像剤を前記潜像担持体に供給する現像ギャップ領域とに放射線を照射する工程と、
前記現像剤担持体、潜像担持体及び現像ギャップ領域を透過した放射線を検出して前記現像剤担持体と現像ギャップ領域と潜像担持体の画像を記録する工程と、
前記画像から現像ギャップ長を測定する工程と、を備えたことを特徴とする現像ギャップ長測定方法。
【請求項10】
前記測定する工程は、前記現像剤担持体を回転させながら現像ギャップ長を測定することを特徴とする請求項9記載の現像ギャップ長測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−165064(P2008−165064A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−356410(P2006−356410)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】