説明

画像を利用したセンサレスモータ駆動ロボット

【課題】ハンドの移動の開始からワークの把持、さらに移動、ワークの解放に至る一連のプロセスの中で、位置認識の必要度合いに応じて必要な手段を確保して、全体として多関節アームロボットの効率的な移動、動作の実現を図ることを目的とする。
【解決手段】アーム及び/又はハンドの駆動を外部センサによるフィードバック機構を有さないモータにより行い、かつ、少なくともワーク検索位置からワーク把持まで等の移動及び動作はステレオカメラで撮像したワーク等の画像と予めデータベースに保存されたワーク等のテンプレート画像とのマッチングによるワーク等検出に基づいて前記モータにより行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカメラ画像を利用したワークの把持、解放の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークを把持、解放する多軸ロボットのハンドは、一般に、ワークを正確に把持するためには、ワーク把持動作の時点に留まらず、移動開始からワークへの接近の過程においても定められた軌跡を正確に辿ることを要求される。又、ワークの解放においても、ワークを解放する地点の形状によってはワークを正確な位置で解放しなければならないので、同様に、定められた軌跡を正確に辿ることを要求される。
【0003】
このため、移動軌跡の決定に関するティーチング作業やモータの駆動に関するパラメータの設定等に長時間の作業が必要であった。さらに、移動中におけるハンド及びアームの連続する位置が設定通りであるかを検証する必要があった。
【0004】
近年、高効率、可変速、軽量化の要請からブラシレスモータが増加しつつあるが、ブラシレスモータとしては磁極の位置を検出するために外部センサによるフィードバック機構を有するタイプが多く、多軸アームロボットにおいても、上記事情からエンコーダ付きのモータが一般的に用いられている。
【0005】
しかし、エンコーダ等のセンサを備えることにより、モータの機構が複雑化し、耐環境性が低下するという問題があることから、センサレス化が望まれている。
【0006】
センサレスブラシレスモータに関して、誘起電圧の検出により磁極位置を判別する方法が従来より知られているが、電圧を検出できない停止時の磁極位置の判別が問題となっていた。
【0007】
この点について、起動時には回転子の磁極位置にかかわらず電機子巻線に回転磁界が発生するような特定の信号を与えて、回転子を強制回転させる提案がある(特許文献1)。しかし、この方法ではモータを停止したままで磁極位置を推定することができない。又、回転子を回転させずにモータを停止したままで検出する方法として、γ軸上に電流を流したときにδ軸上に観測される干渉電流を利用して磁極位置を推定する提案がある(特許文献2)しかし、推定結果が間違っていてもそれを判別できないという問題がある。これを解消するために、電流制御を変更すると共に推定動作の繰り返しにより推定の成功を判断するという提案もなされている(特許文献3)。この方法で正しい推定が担保されるが、繰り返しにより推定に時間を要するという問題点も生じる。
【特許文献1】特開平3−239186号公報
【特許文献2】特許3282657号公報
【特許文献3】特開2006−109651公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
多軸アームロボットは、ワークの把持及びワークの解放についてはワークやワーク解放地点に対する正確な自己位置認識の下に移動及び動作を行わなければならないが、その一方、ワーク又はワーク解放地点に接近するまではそれ程正確な軌跡を辿る必要がない。本発明はこのような条件に着目し、移動の開始からワークの把持、さらに移動、ワークの解放に至る一連のプロセスの中で、位置認識の必要度合いに応じて必要な手段を確保して、全体として多関節アームロボットの効率的な移動、動作の実現を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、減速機を介して回転可能に連結された複数のアームと、該減速機の入力側に接続された該アームを駆動するモータと、アーム先端に連結されたハンドと、該ハンドに装着される撮像装置と、位置決め制御部と三次元モデル検索用データベースを含む駆動指令部と、駆動指令部の指令に基づき前記アーム及び/又はハンドを駆動するドライバにより構成される多軸アームロボットにおいて、前記アーム及び/又はハンドの駆動を外部センサによるフィードバック機構を有さない前記モータにより行い、かつ、少なくともワーク検索位置からワーク把持まで及び/又はワーク解放検索位置からワーク解放までの移動及び動作は前記撮像装置で撮像したワーク及び/又はワーク解放エリア画像と予めデータベースに保存されたワーク及び/又はワーク解放エリアのテンプレート画像とのマッチングによるワーク及び/又はワーク解放エリア検出に基づいて前記モータにより行うことを特徴とするセンサレス多軸アームロボットが提供される。
【0010】
ワークの把持、移動、解放において、ハンドの位置を対象物等に対して正確に位置づけなければならないのは、ワークを把持するとき、及び移動先でワークを解放するときである。また、これらの場合にはハンドと対象物等との正確な位置づけに留まらず、ワークの傾斜や重なり等の状況に適切に対応する必要がある。このような状況下においては、外部センサによるフィードバック機構を有したモータのみでは十分な対応をすることはできない。一方、ワークに接近する移動やワーク把持後の移動は移動中のプロセスにおける正確な位置認識を必ずしも必要としない。このような状況下においては、外部センサによる移動中の正確な自己位置認識は必須ではない。したがって、駆動についてはステッピングモータ等オープン制御のモータや外部センサを有さないブラシレスモータ等を採用しつつ、ワークの把持等においてはワークの状況等の認識を行うことができる画像認識に基づく制御を行うことが効果的かつ効率的である。
【0011】
ワーク解放エリアとは、把持し・移動中のワークについて、解放するワークを収納する容器を含むワーク解放地点の周囲の領域をいう。ワークを解放する際にワーク収納容器等の画像認識を行い、正確な位置にワークを載置する。又、三次元モデル検索用データベースには、少なくともワークの三次元画像及びワーク解放エリアの三次元画像が含まれる。
【0012】
又、モータがブラシレスモータの場合、モータの電流又は誘起電圧によってロータの位置を検出する手段を備えていることが好適である。
【0013】
又、アーム及び/又はハンドの駆動において、駆動開始からワーク検索位置まで、及び/又は駆動開始からワーク解放検索位置又はワーク解放位置までの移動は前記撮像装置で撮像したワーク把持エリア及び/又はワーク解放エリア及び/又はワークの画像と予めデータベースに保存されたワーク把持エリア及び/又はワーク解放エリア及び/又はワークのテンプレート画像とのマッチングによるワーク把持エリア及び/又はワーク解放エリア及び/又はワークの検出に基づいて前記モータにより行うことが好適である。
【0014】
本発明に係る駆動モータは、予め入力された又は都度の外部入力による移動先座標に基づいて駆動、すなわちハンドの移動を行うことが可能であるが、移動先座標を入力せずに撮像装置による画像認識によって移動先の位置情報を取得することができる。この場合、距離が遠いのでワークよりもワーク把持地点の周囲の領域であるワーク把持エリアやワーク解放地点の周囲の領域であるワーク解放エリアを画像認識することが好ましい。三次元モデル検索用データベースには、ワーク把持エリアの三次元画像も含まれ、ワーク把持エリアやワーク解放エリアにはワーク収納容器も含まれる。又、ワーク解放検索位置と別にワーク解放位置と記載しているのは、ワークの材質、形状等によってはワークの解放時にワーク解放のための検索を行わずに、そのままワークを解放する場合があるので、その場合の移動先を意味するためである。なお、ワークそのものの画像認識によって移動先の位置情報を取得する場合も排除されるものではない。
【0015】
又、前記アームの回転の数値を所定の限界値とすることにより定まるアーム及びハンドの三次元座標を駆動開始位置とすることが好適である。
【0016】
又、三次元座標が既知である複数のマーキング手段を備え、該マーキング手段による複数の
画像の前記カメラ全体画像における位置関係に基づいてハンドの三次元座標を特定すること
が好適である。
【0017】
又、撮像装置で撮像したワーク及び/又はワーク解放エリアの画像と予めデータベースに保存されたワーク及び/又はワーク解放エリアのテンプレート画像とのマッチングにおいて、三次元カメラ画像に基づくマッチングを行った後に、ワーク及び/又はワーク解放エリアに向けてより接近し、細部に着目したマッチング及び/又は二次元画像認識に基づくマッチングを行うことにより、ワーク形状及び/又はワーク解放エリア形状を認識することが好適である。三次元モデル検索用データベースには、ワーク及び/又はワーク解放エリアの二次元画像も含まれる。
【0018】
又、ハンドに三次元加速度センサ、及び/又はジャイロスコープ、及び/又は地磁気センサを備
えることにより、前記ハンド及び前記撮像装置の姿勢及び/又は方向を認識するこが好適であ
る。
【発明の効果】
【0019】
本発明により多軸ロボットの作業内容に対応した必要かつ十分な動作を実現することができる。
【0020】
外部センサを用いないことによって、省配線が可能となる。エンコーダを用いる場合は、モータ1台あたり動力線(U/V/W)及びエンコーダ線(X/Y/Z/NX/NY/NZ/電源+/電源)の11本の配線が必要であるが、動力線3本のみで足りる。
【0021】
高温、低温、高湿、多ノイズ等悪環境下における耐性が向上する。エンコーダの場合は、弱電系で構成されており、耐EMCの観点よりEMC対策が必要であるが、本発明の場合は不要である。同様に、エンコーダ線は信号波形の歪みや電圧降下を考慮する必要があることにより、10m以上の長距離配線時はバッファの追加が一般的に必要になるが、本発明では考慮する必要がなく、長距離配線が可能となる。したがって、必ずしもコントローラをロボット近傍に配置する必要がなくなる。
【0022】
駆動開始からワーク検索位置まで等全体的に画像認識による制御を行う場合には、予め移動先等の座標を計測して入力する必要がない。又、少数のワークが多数の位置に載置されている場合やワーク移動先が頻繁に変更される場合には特に効果が大きい。
【0023】
自己位置を適切に認識することにより、移動開始位置の特定、作業途中における位置誤差の修正を行うことができる。又、マッチング方法を組み合わせることで正確なワーク等の認識を行うことができる。三次元加速度センサ等のセンサによる認識によって故障等の場合に対応する二重系の認識システムの構築が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の最良の実施形態に係る多軸アームロボットについて図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は本発明に係るアームロボットの全体概念図である。アームロボット10はアーム20、連結部30、ハンド40、カメラ50、コントローラ60、ドライバ31、画像処理部70により構成されている。アームは5基で、各アーム間、アームとアーム基部間、アームとハンド間にはそれぞれ連結部がある。カメラ50はハンド40に固定して連結されているが、回転又はスライド可能に連結することも可能である。図示していないが、各連結部にはブラシレスモータの1種である埋め込み磁石型同期モータ36と減速機37が備えられている。又、アーム基部にはLED光発光装置90が配されている。左向きのアームロボットは移動開始時の状態を、右向きのアームロボットはワーク検索位置における状態を示している。
【0025】
図2は、コントローラの指令に基づくドライバの埋め込み磁石型同期モータ制御に関するシステム構成図である。ドライバとモータ間は、U・V・Wの3本の動力線のみが接続されている。モータからの磁極検知センサの信号や、エンコーダ、レゾルバなどの外部センサ信号は不要である。コントローラ60は位置決め制御ユニット61、データベース62等により構成されている。コントローラには外部入力手段としてコントローラには外部入力手段として、画像処理部70を介したステレオカメラ50、ティーチング装置76が接続されている。図示していないが、キーボード等による入力も可能である。ドライバ31は、変調部32、マイコン33、駆動電流出力部34、異常値出力部35により構成されている。
【0026】
図2に基づいて、移動開始からワーク検索位置までの多軸アームロボットの駆動について説明する。多軸アームロボットの駆動、すなわちハンドの移動は移動開始位置座標と移動先座標を特定した後、位置決め制御ユニットでモータの駆動パターンを作成し、パルス信号により駆動指令を行う。コントローラからの指令に基づきドライバは変調した電力をモータに出力する。埋め込み磁石型同期モータ36は指令パルスの数に対応したロータの回転角度分回転を行い、減速機37を通じてアームを回転させる。所定の角度分回転した後、到達地点からは後述するカメラ画像に基づく移動・把持を行うことで、到達地点の設定の精度をラフなもので済ませることが可能である。なお、電流の異常値を検出した場合には異常値情報を出力し、コントローラによって駆動を非常停止させる。
【0027】
埋め込み磁石型同期モータ36の代わりに、ロータの磁極検知センサや、エンコーダ、レゾルバ等の外部センサを有しない表面貼付け磁石型同期モータを使用することも可能である。この場合、モータの回転角を検出するための代替機構が必要であるが、誘導電圧の検出等によりモータの回転角を検出する技術が既知であり、これらの技術を用いることによりハンドを移動先に移動させることが可能である。代替技術を用いた場合、外部センサに比して検出精度の低下や検出時間の長期化という問題があるが、上述のようにワーク検索位置以降及びワーク解放検索位置以降はカメラ画像に基つく移動・把持を行うことにより誤差の解消、迅速な移動を行うことが可能である。
【0028】
移動開始位置座標の特定方法について説明する。各アーム及びハンド連結部の回転角度を限界値とすることでハンドの現在位置とロボットアームの姿勢を特定することができる。各アーム及びハンド連結部の回転角度には一定方向に対してそれ以上の回転が不可能な限界値がある。図1における第1アームの水平旋回運動は左向きの図の位置より時計回りに回転させることはできない。一方、反時計回りには旋回が可能である。よって、図1に係る第1アームの回転角度を限界値とすることにより、第1アームの位置及び向きが特定される。同様に他のアーム及びハンドの回転角度の限界値を決定することにより、他のアーム及びハンドの位置と向きが特定され、多軸ロボットアーム全体の姿勢も特定されることとなる。この特定されたハンドの位置を移動開始座標として、座標が既知の移動先に対して移動を開始することが可能となる。
【0029】
図3、図4に基づいてLED90の発光に基づくハンドの座標の特定方法を説明する。図3は移動開始時の多軸アームロボットの概念図であり、多数のLEDのうち、2個のLEDが発光している。各々のLEDの三次元座標は既知である。ステレオカメラ50にLEDの画像が撮像されていない場合、画像処理部70からの情報に基づきコントローラ60がハンドを回転させて、LEDの画像が撮像された位置でハンドとアームの連結部の角度を固定する。図4はLEDの画像が撮像された位置におけるステレオカメラの画像であり、LED12Bは中央部に、LED12Aは左上の位置に撮影されている。ステレオカメラからLED12A又は12Bまでの距離はステレオマッチング法により算出することができる。カメラに配置された左右のレンズ機構によりLED12A及び12Bが同時に撮影され、カメラ内のCCD等の撮像素子に記録される。レンズ機構は平行に2組配置されており、各組におけるLED12A及び12Bの両画像の位置すなわち撮像素子上のピクセル位置の差分情報が得られる。この差分情報から各LEDの距離情報が三角関数を用いて簡単に算出できるのである。又、画面上のLED12Aと12Bの位置関係に基づいてLEDからの角度が算出できるので、ステレオカメラの三次元座標が特定できることとなり、ステレオカメラを固定しているハンドの三次元座標も特定される。なお、単レンズカメラでも、複数のLED発光により自己の三次元座標を特定することは可能であるが、ステレオカメラの方が迅速な位置特定、計測値のチエックの観点から好適である。
【0030】
移動先座標の特定について説明する。ワーク検出位置、ワーク解放検出位置、ワーク解放位置はワークの保管場所、移動後の加工又は保管場所が固定の場合は、予め座標をコントローラに入力しておくことも可能であり、移動開始の時点で入力することも可能である。
【0031】
又、カメラ画像に基ついて移動先の座標を特定することも可能である。多軸アームロボットが移動開始位置にある場合、ワークまでの距離が遠くカメラ画像によってワークを認識することは困難な場合が多い。しかし、ワークの収納容器は一般に大きくはるかに認識が容易である。コントローラのデータベースにワーク収納容器の三次元モデル検索用データベースを備え、移動開始の際にカメラに撮影されるワーク収納容器とデータベースにおける三次元テンプレート画像とのマッチングにより移動先の認識を行うことができる。移動先の認識ができた後は、上述のステレオマッチング法によりワーク収納容器の方向及び距離の算出を行う。カメラ画像に基づいて移動を行う場合は、ワーク収納容器に対する第1マッチングとワーク検索位置からワーク把持のための第2マッチングによる2種のマッチングを組み合わせることとなる。なお、ワークの大きさ、形状によってはワーク自体の形状に基づいて移動先の認識を行うことも可能である。
【0032】
図示していないが、ハンドやカメラに地磁気センサや三次元加速度センサを搭載することが好適である。地磁気センサによって絶対方位を認識でき、地磁気センサと加速度センサの組み合わせによって絶対方位とハンド部の姿勢を認識することができる。地磁気センサとジャイロスコープの組み合わせでも良く、又、それぞれの単体でも、いずれかの機能を発揮することができる。センサによる認識によってハンド部姿勢及び移動方向認識をチエック、修正して故障等の場合に対応する二重系の認識システムの構築が可能となる。
【0033】
次に、図5に基づいてワーク検索位置からワーク把持までの移動、動作について説明する。ワーク検索位置に移動(S101)後、ハンドに固定されているステレオカメラでワークを撮影し、ワーク画像を取り込む(S103)。次に撮像画像の中からデータベースに登録された三次元モデル検索用テンプレート画像に近い画像を検索する(S105)。複数のワークが映りこんでいる場合にはカメラ画面中央位置のワークを第1対象として選択する。
【0034】
次に、選択したワークの三次元画像をデータベースに登録された三次元モデル検索用テンプレート画像と対比してスコアーをとる。スコアーを基に一定時間以上に一定数以上のマッチング数がカウントされれば画像認識できたこととなり、一定時間以上に一定数以上のマッチング数がカウントされなければ画像認識できないこととなる。ワーク検索位置はワークの全体形状を撮影することが可能な距離にあるので、全体形状を一度に照合することが可能である。又、ワークが多少傾斜して設置されていてもデータベースの三次元モデル検索用テンプレート画像との照合は可能である。
【0035】
図1ではワークは溝が浅く歯数の多い歯車であるが、ワークの外形が複雑な形状の場合、ワーク検索位置における画像認識が十分にできない場合がある。このような場合には2段階アプローチを行う。ワーク把持近接エリアでは近似形状の認識を行い、接近して詳細形状の認識を行うのである。カメラをワークに接近させてワーク検索エリアを分割する。歯の部分に着目してワークの円周に沿ってエリアごとに詳細形状のスコアーをとり、マッチング数をカウントして画像認識を行う。この場合は歯数に着目すれば足り、ワークの奥行きのマッチングは必要ないので三次元画像認識を行う必要はない。二次元画像認識とすることによって計算時間を低減し迅速に画像認識を行うことができる。
【0036】
ワークの三次元画像とデータベースに登録された三次元モデル検索用テンプレート画像とのマッチングによりワークが検出される(S107)と、ワークの位置情報が取得される(S109)。位置情報は既述のステレオマッチング法により取得される。
【0037】
位置情報に基づきハンドはワーク上空へ移動し(S111)、真上からワークに接近して(S113)ワークを把持する(S115)。ワークの形状や載置されているワークの傾斜によっては、位置情報取得の後に斜め上方からワークに直線的に接近することが好適である。ワーク把持したハンドはワーク解放検索位置に移動する(S117,S119)。
【0038】
ワークを載置する場所をステレオカメラでワークを撮影し、ワーク解放エリア画像を取り込む。次に撮像画像の中からデータベースに登録されたワーク解放エリアについての三次元モデル検索用テンプレート画像に近い画像を検索する。ワーク画像のマッチングと同様に画像認識を行い、ワーク解放エリアに接近してハンドを開き、ワークを解放する(S121)。ワークを解放する場所によっては、ワーク解放検索位置で画像認識を行わずにワークを解放することも可能である。ワークの解放後、ワーク検索位置に戻り(S123)、別のワークの検索を開始する。
【0039】
ワークの三次元画像とデータベースに登録された三次元モデル検索用テンプレート画像とのマッチングによってもワークが検出されない場合は、そのワーク検出位置におけるワークは存在せず移動作業が完了した状態(S201)なので、次のワーク検出位置に移動する(S203)。すべてのワーク検出位置においてワークが検出されない場合は作業を完了する。
【0040】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、例えばステレオカメラによるステレオマッチング法の代わりにレーザ光とカメラを用いた光切断法による画像処理でも良い。また、ステレオマッチング法の代わりに線ベースステレオ法によるマッチング法でも良い。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、多軸アームロボットのワーク検索、把持、移動、解放についてカメラ画像を利用した効率的な方法を提供するもので、産業上の利用可能性は高い。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】多軸アームロボットの全体概念図である。
【図2】モータ制御のシステム構成図である。
【図3】LED光を利用して自己位置認識を行う多軸アームロボットの概念図である。
【図4】LED光のカメラ画像の概念図である。
【図5】画像認識に基づくワーク検出、移動、解放のフローチャートである。
【符号の説明】
【0043】
10 多軸アームロボット
20 アーム
30 連結部
31 ドライバ
32 変調部
33 マイコン
34 駆動電力出力部
35 異常電力出力部
36 埋め込み磁石型同期モータ
37 減速機
40 ハンド
50 ステレオカメラ
60 コントローラ
61 位置決め制御ユニット
62 データベース
70 画像処理部
76 ディーチング装置
80 ワーク
90 LED発光装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
減速機を介して回転可能に連結された複数のアームと、該減速機の入力側に接続された該アームを駆動するモータと、アーム先端に連結されたハンドと、該ハンドに装着される撮像装置と、位置決め制御部と三次元モデル検索用データベースを含む駆動指令部と、駆動指令部の指令に基づき前記アーム及び/又はハンドを駆動するドライバにより構成される多軸アームロボットにおいて、
前記アーム及び/又はハンドの駆動を外部センサによるフィードバック機構を有さない前記モータにより行い、かつ、少なくともワーク検索位置からワーク把持まで及び/又はワーク解放検索位置からワーク解放までの移動及び動作は前記撮像装置で撮像したワーク及び/又はワーク解放エリア画像と予めデータベースに保存されたワーク及び/又はワーク解放エリアのテンプレート画像とのマッチングによるワーク及び/又はワーク解放エリア検出に基づいて前記モータにより行うことを特徴とするセンサレス多軸アームロボット。
【請求項2】
前記モータがブラシレスモータであって、モータの電流又は誘起電圧によってロータの位置を検出する手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載のセンサレス多軸アームロボット。
【請求項3】
前記アーム及び/又はハンドの駆動において、駆動開始からワーク検索位置まで、及び/又は駆動開始からワーク解放検索位置又はワーク解放位置までの移動は前記撮像装置で撮像したワーク把持エリア及び/又はワーク解放エリア及び/又はワークの画像と予めデータベースに保存されたワーク把持エリア及び/又はワーク解放エリア及び/又はワークのテンプレート画像とのマッチングによるワーク把持エリア及び/又はワーク解放エリア及び/又はワークの検出に基づいて前記モータにより行うことを特徴とする請求項1ないし2に記載のセンサレス多軸アームロボット。
【請求項4】
前記アームの回転の数値を所定の限界値とすることにより定まるアーム及びハンドの三次元座標を駆動開始位置とすることを特徴とする請求項1ないし3に記載のセンサレス多軸アームロボット。
【請求項5】
三次元座標が既知である複数のマーキング手段を備え、該マーキング手段による複数の画像
の前記カメラ全体画像における位置関係に基づいてハンドの三次元座標を特定することを特
徴とする請求項1ないし4に記載のセンサレス多軸アームロボット。
【請求項6】
前記撮像装置で撮像したワーク及び/又はワーク解放エリアの画像と予めデータベースに保存されたワーク及び/又はワーク解放エリアのテンプレート画像とのマッチングにおいて、三次元カメラ画像に基づくマッチングを行った後に、ワーク及び/又はワーク解放エリアに向けてより接近し、細部に着目したマッチング及び/又は二次元画像認識に基づくマッチングを行うことにより、ワーク形状及び/又はワーク解放エリア形状を認識することを特徴とする請求項1ないし5に記載のセンサレス多軸アームロボット。
【請求項7】
前記ハンドに三次元加速度センサ、及び/又はジャイロスコープ、及び/又は地磁気センサ
を備えることにより、前記ハンド及び前記撮像装置の姿勢及び/又は方向を認識することを特
徴とする請求項1ないし6に記載のセンサレス多軸アームロボット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−152664(P2010−152664A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−330360(P2008−330360)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(591218307)株式会社ニッセイ (17)
【出願人】(501397920)旭光電機株式会社 (45)
【Fターム(参考)】