説明

画像処理方法および画像処理装置

【課題】 画像形成装置内における色毎のプロセス条件が異なる場合、形成画像における白抜き文字・ラインの太さが色版ごとに異なってしまう。
【解決手段】 4ドラム系MFPにおいて、ステップS1201で処理対象となる画像データに含まれる白抜きラインを検出し、ステップS1202で該白抜きラインの背景色を検出する。そしてステップS1203で、白抜きラインのサイズおよび前記背景色に基づいてテーブルを参照することにより、画像データにおける該白抜きラインの太らせ量を算出し、ステップS1204で該太らせ量に基づいて該当画素を太らせる(S1204)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像処理方法および画像処理装置に関し、特に電子写真方式によって画像を形成する画像処理方法および画像処理装置に関する。

プロセスの違いによる線幅の違いを吸収するための画像処理技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を利用したプリンタの普及はめざましく、様々な構成が提案されている。
【0003】
例えば感光ドラムとしては、材質としてOPC(Organic Photo Conductor:有機半導体)が広く利用されているが、近年では高耐久性を特徴とするアモルファスシリコン半導体も用いられている。
【0004】
一般にOPCドラムを用いる場合、硬質のアモルファスシリコンドラムに比べ耐久性を維持するために表層膜厚を厚くする方法が取られることがある。しかしながらこの場合、潜像形成は鈍るという弊害があり、その結果、形成されるトナー像が太ってしまうなど、実際の入力データに対する再現性が悪くなる傾向が現れる場合が多い。
【0005】
これに対してアモルファスシリコンドラムでは、シャープな潜像形成が可能であるため、形成されるトナー像も入力データに対してより忠実な再現が可能となる。
【0006】
また、現像方式としては一般に、磁性トナーを用いる1成分方式と、非磁性トナーと磁性キャリアを混合した2成分方式がある。どちらの現像方式においても、トナーの極性と感光ドラムの極性の組み合わせによって次の二種類の露光方式が考えられる。一つは、均一帯電された感光ドラム上に入力データ部分(黒字部)を露光する方式であり、一般にイメージ露光方式(IAE)と呼ばれる。これに対し、入力データ部分を残して背景部分(白地部)を露光する方式は一般にバックグラウンド露光方式(BAE)と呼ばれる。図16に、露光条件と作像の関係、すなわちBAEとIAEによる作像の概略を示す。同図において、着色部が黒字部を示している。
【0007】
IAEの場合、データ部(イメージ部)を露光してトナーを現像するため、原理的にデータ部は露光による再現性が高いが、その反面、白抜き文字のような画像に対しては、未露光部である白抜き部分が細りやすいなど再現性に乏しいという課題がある。
【0008】
一方、BAEの場合、背景の白地部を露光してデータ部(イメージ部)を未露光で残すため、原理的にIAEとは逆にデータ部が細ってしまう傾向があるが、その反面、白抜き文字のような画像に対しては好ましい再現性を示す。
【0009】
このようなトナー拡散の影響から文字や線の欠落を防止するために、以下のような技術が提案されている。例えば、画像データに含まれる文字または線の濃度、太さ、色、サイズ、フォント種類等の予め定めた1つ以上の属性に関する条件判定を行い、その結果に応じて文字又は線の太さ又は濃度を変更する(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−129547号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように電子写真方式を利用したプリンタでは、感光ドラムの種類や現像剤の種類として複数が知られており、これらの組み合わせにより、特に文字や細線の再現性に顕著な差が発生する。
【0011】
例えば、ネガOPCドラムとネガトナー2成分現像方式の組み合わせでは、露光方式がIAEとなり、文字や細線は視認性が良好となる。一方、ポジ・アモルファスシリコン感光体とネガトナー1成分現像方式の組み合わせでは、露光方式がBAEとなるため、文字や細線は細りやすくなる反面、白抜き文字や白抜き細線の視認性は良好となる。
【0012】
したがって、一つの画像形成装置においてトナー色ごとに感光ドラムと露光・現像方法の組み合わせが異なるような構成を考えた場合、色版によって文字や細線の太さが変わってしまうといった問題が発生する。特に、背景に色材が載り、オブジェクト部のみ色材が載らないような、白抜き文字や細線を考えると、色版ごとに文字や細線が描かれたり描かれなかったりする可能性がある。また、二次色以上の背景色に描かれる白抜き文字・ラインの場合、色によって文字がつぶれたりつぶれなかったりするため、版ずれのような現象が起こりかねないという問題がある。
【0013】
上述した特許文献1に示したような、文字や線の欠落を防止する技術においては、電子写真プロセスの違いによる影響については考慮されておらず、一意的に画像データを変更することしかできない。したがって、上述したように一つの画像形成装置内で色材毎にプロセス条件が異なる場合、色版ごとに文字・ラインの太さが変わってしまうという問題は依然残っていた。
【0014】
本発明は上述した問題を解決するためになされたものであり、画像形成装置内における色毎のプロセス条件によらず、白抜きラインの太さを一定に保つことを可能とする画像処理方法および画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するための一手法として、本発明の画像処理方法は以下の工程を備える。
【0016】
すなわち、複数色による画像形成を可能とする画像処理装置における画像処理方法であって、処理対象となる画像データを入力する入力ステップと、前記画像データに含まれる白抜きラインを検出する白抜き部検出ステップと、前記白抜きラインの背景色を検出する背景色検出ステップと、前記白抜きラインのサイズおよび前記背景色に基づいて、前記画像データにおける該白抜きラインのサイズを補正する補正ステップと、前記補正ステップによる補正後の画像データを出力する出力ステップと、を有することを特徴とする。
【0017】
例えば、前記補正ステップにおいては、前記白抜きラインのサイズおよび前記背景色に対する該白抜きラインのサイズ補正値が示されたテーブルに基づいて、前記画像データにおける該白抜きラインのサイズを補正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
以上の構成により本発明によれば、画像形成装置内における色毎のプロセス条件によらず、白抜きラインの太さを一定に保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付の図面を参照して、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態において示す構成は一例に過ぎず、本発明は図示された構成に限定されるものではない。
【0020】
<第1実施形態>
●装置構成
図1は、4ドラムカラー系MFP(Multi Function Peripheral:マルチファンクション周辺機器)の構成を示す側断面図である。4ドラムカラー系MFPは主に、スキャナ部1、レーザ露光部2、感光ドラム3、作像部4、定着部5、給紙/搬送部6及び、これらを制御する不図示のプリンタ制御部から構成される。
【0021】
スキャナ部1は、原稿台に置かれた原稿に対して、照明を当てて原稿画像を光学的に読み取り、その像を電気信号に変換して画像データを作成する。レーザ露光部2は、スキャナ部1から出力された画像データに応じて変調されたレーザ光などの光線を、等角速度で回転する回転多面鏡(ポリゴンミラー7)に入射させ、反射走査光として感光ドラム3に照射する。
【0022】
作像部4は、電子写真プロセスの現像ユニット(現像ステーション)を4連備えている。各現像ユニットでは、それぞれの感光ドラム3を回転駆動し、帯電器によって帯電させ、レーザ露光部2によって感光ドラム3上に形成された潜像をトナーによって現像する。そして、そのトナー像をシートに転写し、その際に転写されずに感光ドラム3上に残った微小トナーを回収する、という一連の電子写真プロセスを実行する。4連の現像ユニットは、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の順に並べられており、Cステーションの作像開始から所定時間経過後に、M、Y、Kの作像動作を順次実行していく。このタイミング制御によって、シート上に色ずれのない、フルカラートナー像が転写される。
【0023】
定着部5は、ローラやベルトの組み合わせによって構成され、ハロゲンヒータなどの熱源を内蔵し、作像部4によってトナー像が転写されたシート上のトナーを、熱と圧力によって溶解、定着させる。
【0024】
給紙/搬送部6は、シートカセットやペーパーデッキに代表されるシート収納庫9を一つ以上有し、プリンタ制御部の指示に応じてシート収納庫9に収納された複数のシートの中から一枚を分離し、作像部4,定着部5へ搬送する。搬送されたシートには、現像ステーションによって各色のトナー像が転写され、最終的にフルカラートナー像がシート上に形成される。また、シートの両面に画像形成する場合は、定着部5を通過したシートを再度作像部4へ搬送する両面搬送経路8を通るように制御する。
【0025】
プリンタ制御部は、MFP全体を制御するMFP制御部と通信して、その指示に応じて制御を実行すると共に、スキャナ1、レーザ露光部2、作像部4、定着部5、給紙/搬送部6の各状態を管理しながら、全体が調和を保って円滑に動作できるよう指示を行う。
【0026】
図2は、作像部4における1ステーションの詳細構成を示す図であり、このような作像系が、各色(C,M,Y,K)ごとに用意されている。同図に示す構成においては、出力指示情報に伴い、感光ドラム3が右回り方向に回転する。以下、感光ドラム3に対向するクリーナユニット10から順次説明を行う。
【0027】
クリーナユニット10は、感光ドラム3に付着しているトナーを回収してドラム表面を清掃する。そして、感光ドラム3の残留電荷を消去するために不図示の前露光LEDによる露光が行われた後、一次帯電器11が、グリッドと呼ばれる放電装置を有し、ドラム表面電位を規定状態にする。電位センサ12は、ドラム表面のレーザで照射された部分(Vl)や露光されない一次帯電電位(Vd)の表面電位を測定する。この測定は、電源ON後や一定枚数出力時などのタイミングで行われ、該測定値は適宜、レーザ光量、帯電バイアス、現像バイアス等の補正に用いられる。現像器13は、ドラム表面の潜像部にトナー像を形成する。その後、所定のタイミングで給紙搬送され、転写帯電器14で該トナー像が静電転写され、次の色(最終色であれば定着器)へと進む。
【0028】
4色転写された転写紙は、不図示の定着装置に送られて加圧及び加熱されてトナー像が定着された後に、本体の外に排出される。
【0029】
なお、本実施形態におけるMFPとしては、画像形成に供される各色の作像系プロセスが異なる、例えば露光・現像の極性が異なる例を想定している。
【0030】
図3は、本実施形態のMFPにおけるコントローラおよび画像処理部において実行される機能構成を示すブロック図である。
【0031】
同図において、入力画像処理部15は、紙原稿をスキャナ等の画像読み取り装置で読み取り、読み取られた画像データを処理する。
【0032】
NIC/RIP部16は、ネットワークインタフェースを司るNetwork Interface Card(NIC)部と、入力された画像データを展開するRaster Image Processor(RIP)部からなる。NIC部は、ネットワークを利用して入力された画像データ(主にPDLデータ)をRIP部に渡したり、MFP内部の画像データや装置情報をネットワーク経由で外部に送信したりする。RIP部は、入力されたPDL(Page Description Language)データを解読し、ラスタイメージに展開する。
【0033】
入力画像処理部15またはNIC/RIP部16から入力された画像データは、MFP制御部18に送られる。MFP制御部18は、入力されるデータや出力するデータの宛先等を制御する交通整理の役割を果たしている。また、MFP制御部18に入力された画像データは、一旦メモリ部19に格納され、必要に応じて呼び出される。尚、メモリ部19は画像データを格納するために備えられた不揮発性の記憶手段であり、例えばハードディスク等によって構成される。
【0034】
出力画像処理部20では、画像データに対してプリントするための画像処理が施され、プリンタ部21に送られる。プリンタ部21は、上述した図1および図2に示す構成によって画像データのプリントを行う。すなわち、記録用シートを給紙し、出力画像処理部20で作成された画像データを該シート上に順次印字していく。プリントアウトされたシートは後処理部22へ送り込まれ、シートの仕分け処理やシートの仕上げ処理が行われる。
【0035】
更に、操作部17では、上記の様々な処理手順や機能について、その選択や操作指示等を行うが、操作部17の表示装置の高解像度化に伴い、メモリ部にある画像データをプレビューし、プリント前に確認するといった利用方法も考えられる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態のMFPには様々な機能がある。以下に、機能種別およびその際のデータの経路の一例を示す。なお、NIC/RIP部16についてはNIC部16と記載し、特にRIP機能を利用する場合のみ(RIP)を併記している。
【0037】
複写機能:入力画像処理部15→出力画像処理部20→プリンタ部21
ネットワークスキャン機能:入力画像処理部15→NIC部16
ネットワークプリント機能:NIC(RIP)部16→出力画像処理部20→プリンタ部21
ボックススキャン機能:入力画像処理部15→出力画像処理部20→メモリ部19
ボックスプリント機能:メモリ部19→プリンタ部21
ボックス受信機能:NIC(RIP)部16→出力画像処理部20→メモリ部19
ボックス送信機能:メモリ部19→NIC部16
プレビュー機能:メモリ部19→操作部17
●画像処理
以下、本実施形態における画像処理について詳細に説明する。ここでは有色の背景部に白抜きラインが描かれている画像データに対して、白抜き文字・ラインの太らせ処理を行う例について説明する。
【0038】
図4は、本実施形態における画像出力処理を示すフローチャートである。まずステップS1101において、処理対象となるPDLデータについて、PDLで記述された文字、線画、図形などのベクトル情報、あるいは、色、パターン、写真などの画像走査線情報を解釈する。そしてステップS1103において、解釈したPDLデータからディスプレイリストと呼ばれる中間ファイルを生成し、ステップS1104において、該ディスプレイリストをNIC/RIP部16にてビットマップ(ラスタイメージ)に展開する。
【0039】
そしてステップS1104において、白抜き文字制御フラグがONであるか否かを確認する。白抜き文字制御フラグは、図5のようなドライバUIもしくは図6のようなプリンタのタッチパネルUIにおいて、例えば「白文字・ライン補正」が選択されることによって設定される。これがONである場合はステップS1105に進み、OFFの場合はステップS1106に進む。
【0040】
ステップS1105においては、本実施形態の特徴である白抜き文字太らせ処理を行う。この処理の詳細については、図7を用いて後述する。
【0041】
そしてステップS1106においては、展開されたビットマップをプリンタ部21で出力し、処理を終了する。
【0042】
図7は、ステップS1105における白抜き文字太らせ処理の詳細を示すフローチャートである。まずステップS1201において、RIP展開済のビットマップよりパターンマッチング等の手法によって白抜き文字・ラインを検出する。そしてステップS1202において、検出された白抜き文字・ラインのサイズおよびその周囲の色値(背景色)を確認する。そしてステップS1203において、色版ごとの、白抜き文字・ラインの太らせ量を算出する。
【0043】
ここで、ステップS1203における色版ごとの太らせ量算出処理について、詳細に説明する。
【0044】
本実施形態における太らせ量算出においては、例えばメモリ部19に保持されているつぶれ倍率テーブルと太らせ量テーブルを使用する。つぶれ倍率テーブルは、背景色を各プロセスカラー100%としたとき、その中に描かれる白抜き文字・ラインのつぶれ易さを、文字サイズ・ライン幅ごとに示しており、この例を図8に示す。ここでは、CMYとKでつぶれ倍率を分けた例を示すが、色版毎に別々のテーブルを設けてもよい。太らせ量テーブルは、つぶれ指数と元の白抜き文字サイズ・ライン幅との関係から、白抜き文字・ラインの最適な太らせ量を導くためのものであり、この例を図9に示す。同図に示すつぶれ指数とは、トナー載り量と前出のつぶれ倍率とを掛け合わせたものである。
【0045】
太らせ量算出時にはまず、図8に示すつぶれ倍率テーブルから以下のように色版のつぶれ指数を求める。
【0046】
色版のつぶれ指数=(色トナー載り量%)×(該当ポイントラインのつぶれ倍率)
そして、算出されたつぶれ指数に基づき、図9に示す太らせ量テーブルから色版の太らせ量(加算すべきサイズμm)を検出する。
【0047】
ここで図10を用いて、本実施形態における太らせ量算出処理の具体例を説明する。図10は、さまざまな背景色に白抜きラインが描かれているパターン例を示す図である。同図においてパターン801,802,803はそれぞれ、背景色がシアン100%,ブラック100%,シアン100%+マゼンタ50%+ブラック20%、に対して、白抜きライン0.06ポイントが描かれている。ここで、0.06ポイントとは、1200dpiにおける1ピクセルに相当する。
【0048】
まずパターン801の場合、ステップS1202において背景色がC100%として検出されているため、C版のつぶれ指数を以下のように求める。すなわち図8に示すつぶれ倍率テーブルより、(Cトナー載り量:100%)×(C色0.06ポイントのつぶれ倍率:2)の演算を行うことで、C版のつぶれ指数は200として得られる。そして図9に示す太らせ量テーブルより、つぶれ指数が200で元のライン幅が0.06ポイントであるから、太らせ量は+30μmとなる。
【0049】
同様に、パターン802の場合、ステップS1202において背景色がK100%として検出されている。したがって、図8に示すつぶれ倍率テーブルより、K版のつぶれ指数=(Kトナー載り量:100%)×(K色0.06ポイントのつぶれ倍率:1)=100となる。そして、図9に示す太らせ量テーブルより、つぶれ指数が100で元のライン幅が0.06ポイントであるから、太らせ量は+20μmとなる。
【0050】
また、パターン803の場合、ステップS1202において背景色がC100%+M50%+K20%として検出されている。このように、背景色が混色である場合、そのトナー割合に応じて、色版ごとの太らせ量の演算を行う。まずC版について、つぶれ指数=(Cトナー載り量:100%)×(C色0.06ポイントのつぶれ倍率:2)=200となる。そして図9に示す太らせ量テーブルより、つぶれ指数が200で元のライン幅が0.06ポイントであるから、C版の太らせ量は+30μmとなる。次にM版について、つぶれ指数=(Mトナー載り量:50%)×(M色0.06ポイントのつぶれ倍率:2)=100となる。そして図9に示す太らせ量テーブルより、つぶれ指数が100で元のライン幅が0.06ポイントであるから、M版の太らせ量は+20μmとなる。そしてK版について、つぶれ指数=(Kトナー載り量:20%)×(M色0.06ポイントのつぶれ倍率:1)=20となる。そして図9に示す太らせ量テーブルより、つぶれ指数が20で元のライン幅が0.06ポイントであるから、K版の太らせ量は+20μmとなる。
【0051】
以上のようにステップS1203で色版ごとの太らせ量が算出されると、次にステップS1204において、白抜き文字・ラインが描かれている画素に対する太らせ処理を行う。ここでラインを太らせる方法としては、白画素を付加してライン幅を調整するなどの方法をとればよい。この例を図11に示す。同図によれば、1200dpiの画素ピッチであれば1ラインがほぼ20μmに相当することから、太らせ量が20μmごとに1ラインを増やすように白画素列を付加している。また、その半分の10μmごとの太らせ量については、付加する白画素を1画素おきとすることで、実質的に20μm時の半分量を太らせる。
【0052】
以上説明したように本実施形態によれば、画像形成装置におけるプロセス条件が色毎に異なる場合にも、各色とも同様の太さで白抜き文字・ラインを描くことができる。また、二次色以上の色が背景色に使用される場合にも、色版ごとに白文字の太さを変えることができるため、レジストレーションがずれてしまうような現象を防ぐことができる。
【0053】
<第2実施形態>
以下、本発明に係る第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態における画像処理装置の構成は、上述した第1実施形態における4ドラムカラー系MFPと同様であるため、第1実施形態と同一符号を参照するものとして説明を省略する。第2実施形態でも上述した第1実施形態と同様に、有色の背景部に白抜きラインが描かれている画像データに対して、白抜き文字・ラインの太らせ処理を行う。
【0054】
上述した第1実施形態では、RIP後のラスタデータにおいて白抜き文字・ラインを太らせる例を示したが、第2実施形態においては、PDLデータにおいて白抜き文字・ラインのサイズを変更することを特徴とする。
【0055】
図12は、第2実施形態における画像出力処理を示すフローチャートである。まずステップS1301において、白抜き文字制御フラグがONであるか否かを確認する。白抜き文字制御フラグは、図5のようなドライバUIもしくは図6のようなプリンタのタッチパネルUIにおいて、例えば「白文字・ライン補正」が選択されることによって設定される。これがONである場合はステップS1302に進み、OFFの場合はステップS1308に進む。
【0056】
ステップS1302では、処理対象となるPDLデータを、例えばメモリ部19のハードディスク等、不揮発性メモリに格納しておく。以下、ここで格納されたPDLデータを、オリジナルPDLと称する。通常、PDLデータはRIP処理後に消去されてしまうため、第2実施形態においては後述RIP処理後の白抜き文字・ライン置き換え処理の際に、このオリジナルPDLに対する更新を行う。
【0057】
ステップS1303では、PDLで記述された文字、線画、図形などのベクトル情報、あるいは、色、パターン、写真などの画像走査線情報を解釈する。このとき、白抜き文字・ライン部を検出し、該検出された白抜き文字・ライン部ににフラグを立て、その文字・ラインのサイズやその周囲の色値(背景色)を確認する。
【0058】
そしてステップS1304において、解釈したPDLデータからディスプレイリストと呼ばれる中間ファイルを生成する。
【0059】
そしてステップS1305において、ディスプレイリストをNIC/RIP部16にてビットマップ(ラスタイメージ)に展開した後、ステップS1306でフラグを確認し、白抜き文字・ラインが存在したか否かを確認する。白抜き文字・ラインが存在している場合にステップS1307に進むが、存在しない場合にはステップS1311に進む。
【0060】
ステップS1307では、上述したステップS1302でメモリ部19に格納されたオリジナルPDLに対する白抜き文字置き換え処理を行う。この処理の詳細については、図13を用いて後述する。
【0061】
ステップS1308においては、上述したステップS1307で更新されたオリジナルPDLを解釈する。なお、上述したステップS1301において白抜き文字制御フラグがOFFであった場合には、ここでは入力されたPDLデータを解釈する。
【0062】
以降のステップS1309,S1310においては、上述したステップS1304,S1305と同様に、オリジナルPDLに対するディスプレイリストの作成およびRIP処理を行う。
【0063】
そしてステップS1311においては、展開されたビットマップをプリンタ部21で出力する。次にステップS1312において、ステップS1302でメモリ部19に保存されたオリジナルのPDLデータを消去して、処理を終了する。
【0064】
図13は、ステップS1307における白抜き文字置き換え処理の詳細を示すフローチャートである。まずステップS1401において、白抜き文字・ラインとして検出された箇所の背景色を確認する。そしてステップS1402において、背景部のトナー載り量から、白抜き文字・ラインを太らせた後のサイズ、すなわち置き換えサイズを算出する。
【0065】
ここで、ステップS1402における置き換えサイズ算出処理について、詳細に説明する。
【0066】
第2実施形態における置き換えサイズ算出においては、例えばメモリ部19に保持されているつぶれ倍率テーブルと置き換えサイズテーブルを使用する。つぶれ倍率テーブルは、上述した第1実施形態と同様に図8に例示されたテーブルである。置き換えサイズテーブルは、つぶれ指数と元の白抜き文字サイズ・ライン幅との関係から、白抜き文字・ラインの最適な置き換えサイズを導くためのものであり、この例を図14に示す。同図に示すつぶれ指数とは、トナー載り量と前出のつぶれ倍率とを掛け合わせたものである。なお、上述した第1実施形態で図9に示した太らせ量テーブルにおいては加算すべきサイズ(μm)を示していたが、図14に示す置き換えサイズテーブルでは、置き換えるべき白抜き文字・ラインそのもののサイズ(ポイント数)を示している。
【0067】
置き換えサイズ算出時にはまず、第1実施形態と同様に、図8に示すつぶれ倍率テーブルから以下のように色版のつぶれ指数を求める。
【0068】
色版のつぶれ指数=(色トナー載り量%)×(該当ポイントラインのつぶれ倍率)
そして、算出されたつぶれ指数に基づき、図14に示す置き換えサイズテーブルから白抜き文字・ラインの置き換えサイズを検出する。
【0069】
ここで、第1実施形態で示した図10を用いて、第2実施形態における置き換えサイズ算出処理の具体例を説明する。
【0070】
まずパターン801の場合、ステップS1401において背景色がC100%として確認されるため、C版のつぶれ指数を以下のように求める。すなわち図8に示すつぶれ倍率テーブルより、(Cトナー載り量:100%)×(C色0.06ポイントのつぶれ倍率:2)の演算を行うことで、C版のつぶれ指数は200として得られる。そして図14に示す置き換えサイズテーブルより、つぶれ指数が200で元のライン幅が0.06ポイントであるから、白抜き文字・ラインの置き換えサイズは0.12ptとなる。
【0071】
同様に、パターン802の場合、ステップS1401において背景色がK100%として確認される。したがって、図8に示すつぶれ倍率テーブルより、K版のつぶれ指数=(Kトナー載り量:100%)×(K色0.06ポイントのつぶれ倍率:1)=100となる。そして、図14に示す置き換えサイズテーブルより、つぶれ指数が100で元のライン幅が0.06ポイントであるから、置き換えサイズは0.10ptとなる。
【0072】
また、パターン803の場合、ステップS1401において背景色がC100%+M50%+K20%として確認される。このように、背景色が混色である場合、各色版のトナー割合に応じたつぶれ指数を算出し、その合計に基づいて置き換えサイズを決定する。すなわち、まずC版について、つぶれ指数=(Cトナー載り量:100%)×(C色0.06ポイントのつぶれ倍率:2)=200となる。次にM版について、つぶれ指数=(Mトナー載り量:50%)×(M色0.06ポイントのつぶれ倍率:2)=100となる。そしてK版について、つぶれ指数=(Kトナー載り量:20%)×(M色0.06ポイントのつぶれ倍率:1)=20となる。したがって、各色版のつぶれ指数の合計は320であり、図14に示す置き換えサイズテーブルよれば、つぶれ指数が320で元のライン幅が0.06ポイントであるから、置き換えサイズは0.16ptとなる。
【0073】
以上のようにステップS1402で白抜き文字・ラインの置き換えサイズが算出されると、次にステップS1403において、メモリ部19に格納されているオリジナルPDLを取り出す。そして、該オリジナルPDLにおいて、白抜き文字・ラインのサイズを上記置き換えサイズで更新する。
【0074】
以上説明したように第2実施形態によれば、画像形成装置における現像条件が色毎に異なる場合にも、色版毎の白抜き文字・ラインつぶれ具合の違いと色材の総載り量を考慮したうえで、PDLデータ自体を書き換えることができる。すなわち、ベクターデータであるPDLデータの段階で補正を行うことができるため、ラスタライズ後のデータの白抜き文字・ライン部分を太らせるよりも、文字やラインのプロポーションを良好な状態で出力することが可能となる。
【0075】
なお、上述した第1および第2実施形態においては、図10に示すような白抜きライン画像に対する処理を例として説明したが、白抜き文字に対しても同様の処理を施すことが可能であることは言うまでもない。
【0076】
また、上述した第1および第2実施形態においては、白抜き文字・ラインに特化して説明を行ったが、テーブルの適用方法を変更することにより、色文字について応用することも可能である。
【0077】
また、第1および第2実施形態では4ドラムカラー系プリンタを例として説明したが、1ドラムカラー系プリンタでも本発明は実施可能であることは言うまでもない。
【0078】
また、図15に示すように複数台のMFPがネットワーク上に存在するシステムにおいて、同一の画像データを現像プロセスの異なる複数台のプリンタで出力するような場合においても、本発明は適用可能である。すなわち、上記複数台のプリンタにおいて、白抜き文字・ラインが同じ太さで出力された画像を得ることができる。
【0079】
また、本実施形態における図8のつぶれ倍率テーブル、図9の太らせ量テーブルおよび図14の置き換えサイズテーブルはあくまでも一例にすぎず、プリンタの特性変化や環境変化などの影響を反映して、その内容を更新することが可能である。また、これらのテーブルは、プリンタ毎に設定することも可能である。
【0080】
<他の実施形態>
以上、実施形態例を詳述したが、本発明は例えば、システム、装置、方法、プログラム若しくは記憶媒体(記録媒体)等としての実施態様をとることが可能である。具体的には、複数の機器(例えば、ホストコンピュータ、インタフェース機器、撮像装置、webアプリケーション等)から構成されるシステムに適用しても良いし、また、一つの機器からなる装置に適用しても良い。
【0081】
尚本発明は、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムを、システムあるいは装置に直接あるいは遠隔から供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータが該供給されたプログラムコードを読み出して実行することによっても達成される。なお、この場合のプログラムとは、実施形態において図に示したフローチャートに対応したプログラムである。
【0082】
従って、本発明の機能処理をコンピュータで実現するために、該コンピュータにインストールされるプログラムコード自体も本発明を実現するものである。つまり、本発明は、本発明の機能処理を実現するためのコンピュータプログラム自体も含まれる。
【0083】
その場合、プログラムの機能を有していれば、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラム、OSに供給するスクリプトデータ等の形態であっても良い。
【0084】
プログラムを供給するための記録媒体としては、以下に示す媒体がある。例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、MO、CD-ROM、CD-R、CD-RW、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM、DVD(DVD-ROM,DVD-R)などである。
【0085】
プログラムの供給方法としては、以下に示す方法も可能である。すなわち、クライアントコンピュータのブラウザからインターネットのホームページに接続し、そこから本発明のコンピュータプログラムそのもの(又は圧縮され自動インストール機能を含むファイル)をハードディスク等の記録媒体にダウンロードする。また、本発明のプログラムを構成するプログラムコードを複数のファイルに分割し、それぞれのファイルを異なるホームページからダウンロードすることによっても実現可能である。つまり、本発明の機能処理をコンピュータで実現するためのプログラムファイルを複数のユーザに対してダウンロードさせるWWWサーバも、本発明に含まれるものである。
【0086】
また、本発明のプログラムを暗号化してCD-ROM等の記憶媒体に格納してユーザに配布し、所定の条件をクリアしたユーザに対し、インターネットを介してホームページから暗号化を解く鍵情報をダウンロードさせることも可能である。すなわち該ユーザは、その鍵情報を使用することによって暗号化されたプログラムを実行し、コンピュータにインストールさせることができる。
【0087】
また、コンピュータが、読み出したプログラムを実行することによって、前述した実施形態の機能が実現される。さらに、そのプログラムの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOSなどが、実際の処理の一部または全部を行い、その処理によっても前述した実施形態の機能が実現され得る。
【0088】
さらに、記録媒体から読み出されたプログラムが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後、実行されることによっても、前述した実施形態の機能が実現される。すなわち、該プログラムの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明に係る一実施形態における4ドラムカラー系MFPの側断面図である。
【図2】本実施形態の作像部における1ステーションの詳細構成を示す図である。
【図3】本実施形態における機能構成を示すブロック図である。
【図4】本実施形態における画像出力処理を示すフローチャートである。
【図5】本実施形態におけるプリンタドライバのプロパティ設定画面例を示す図である。
【図6】本実施形態のタッチパネル部における白抜き文字・ライン補正設定例を示す図である。
【図7】本実施形態における白抜き文字太らせ処理を示すフローチャートである。
【図8】本実施形態におけるつぶれ倍率テーブルの一例を示す図
【図9】本実施形態における太らせ量テーブルの一例を示す図
【図10】本実施形態における白抜きライン画像例を示す図である。
【図11】本実施形態における白抜き画素の太らせ方の具体例を示す図である。
【図12】第2実施形態における画像出力処理を示すフローチャートである。
【図13】第2実施形態における白抜き文字置き換え処理を示すフローチャートである。
【図14】第2実施形態における置き換えサイズテーブルの一例を示す図
【図15】複数のMFPがネットワーク上に存在するシステム例を示す図である。
【図16】一般的なBAEとIAEによる作像の概略を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数色による画像形成を可能とする画像処理装置における画像処理方法であって、
処理対象となる画像データを入力する入力ステップと、
前記画像データに含まれる白抜きラインを検出する白抜き部検出ステップと、
前記白抜きラインの背景色を検出する背景色検出ステップと、
前記白抜きラインのサイズおよび前記背景色に基づいて、前記画像データにおける該白抜きラインのサイズを補正する補正ステップと、
前記補正ステップによる補正後の画像データを出力する出力ステップと、
を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項2】
前記補正ステップにおいては、
前記白抜きラインのサイズおよび前記背景色に対する該白抜きラインのサイズ補正値が示されたテーブルに基づいて、前記画像データにおける該白抜きラインのサイズを補正することを特徴とする請求項1記載の画像処理方法。
【請求項3】
前記テーブルには、前記白抜きラインのサイズおよび前記背景色における色剤毎濃度に対する該白抜きラインのサイズ補正値が示されていることを特徴とする請求項2記載の画像処理方法。
【請求項4】
前記テーブルは、
前記白抜きラインのサイズおよび色剤毎の該白抜きラインのつぶれ度合いを示す第1のテーブルと、
前記背景色における前記つぶれ度合いに応じた前記白抜きラインのサイズ補正値を示す第2のテーブル
からなることを特徴とする請求項3記載の画像処理方法。
【請求項5】
前記テーブルは、更新可能であることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の画像処理方法。
【請求項6】
前記入力ステップは、PDLデータを入力することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像処理方法。
【請求項7】
前記入力ステップは、ラスタライズされた画像データを入力することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像処理方法。
【請求項8】
前記白抜きラインは、白抜き文字を構成するラインであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像処理方法。
【請求項9】
前記出力ステップにおいては、前記補正ステップによる補正後の画像データに基づく可視像を形成することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像処理方法。
【請求項10】
複数色による画像形成を可能とする画像処理装置であって、
処理対象となる画像データを入力する入力手段と、
前記画像データに含まれる白抜きラインを検出する白抜き部検出手段と、
前記白抜きラインの背景色を検出する背景色検出手段と、
前記白抜きラインのサイズおよび前記背景色に基づいて、前記画像データにおける該白抜きラインのサイズを補正する補正手段と、
前記補正ステップによる補正後の画像データを出力する出力手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項11】
コンピュータで実行されることにより、該コンピュータが請求項1乃至9のいずれか1項に記載の画像処理方法を実行するように制御することを特徴とするプログラム。
【請求項12】
請求項11記載のプログラムを記録した記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−114556(P2008−114556A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−302129(P2006−302129)
【出願日】平成18年11月7日(2006.11.7)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】