説明

画像処理装置

【課題】 画像読み取りガラス面の所定位置に3次元物体を時間や手間をかけずに簡単に画像を読み取り解析する画像処理装置を提供する。
【解決手段】 スキャナ装置10には画像読み取りガラス面11の周囲に設けられたスライダー20とスライダー20に連動してスライド移動して3次元物体の案内となるガイド30とスライド移動後のガイド30の座標位置を検出するカウンタ40を備えている。スキャナ装置10により読み取った画像データとガイド30の座標位置データが画像データ処理部50に送られる。座標変換機能52により読み取り画像データを座標変換する。さらにイメージノギス機能53によりあらかじめ設定されている特定個所のサイズを計測し、良品・不良品のチェックをする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、3次元物体の画像を読み取り、読み取った画像データを解析する画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生産現場において製作している加工品のサンプルを抜き取ってその切断断面を検査するというニーズが存在する。例えば、プラスチック、アルミニウム、ステンレス鋼などを材料として異形押し出し工法により加工され、押し出された連続体を切断して単品成型した設備資材、建築資材、土木資材などの切断面検査など多様な場面で求められている。異形押し出し工法により押し出し加工、切断加工された設備資材の一例を図13に示す。図13に示した例の切断面を見れば内部に多数のしきり壁(隔壁)や構造物により多数の空隙が設けられた複雑な断面となっていることが分かる。異形押し出し加工されているので押し出し方向にはこの断面構造が連続したものとなっている。
【0003】
これら設備資材などは細部に至るまで寸法が設計により定められており、押し出し加工により製作された設備資材が設計どおりの仕様にて製作されているか確認する必要がある。そこで生産現場では適宜に加工品のサンプルを抜き取って加工の出来具合を検査するが、このサンプル抜き取り検査の検査項目には様々なものがある。そのうちの一つとして切断面における外形の歪み、隔壁の肉厚など特定箇所のサイズを測り、それらサイズが仕様範囲内にあるかを調べるという検査項目がある。例えば図14の切断面において、特定箇所の隔壁間のサイズB,特定箇所の隔壁の肉厚Cなどを実測し、それら実測値が要求仕様の範囲内にあるかをチェックする。
【0004】
従来技術では、抜き取りサンプルの切断面の特定箇所を人手によりスケールなどにより実測することが多いが、抜き取りサンプルの切断面の画像をスキャナで読み取り、読み取り画像において特定箇所を計測して解析するという処理が想定できる。抜き取りサンプルの切断面画像をスキャナで読み取る処理を検討してみると、例えば、抜き取りサンプルを回転させ、読み取る切断面を下面とし、フラットベッド型スキャナの画像読み取りガラス面に切断面を密着させて読み取るという作業が想定できる。
【0005】
このフラットベッド型スキャナを用いた切断面の読み取りにおいて、後工程となる画像処理を簡素化するために、読み取り対象となる特定箇所をスキャン方向に対して傾き(スキュー)なく画像読み取りガラス面上にセットすることが好ましい。つまり、読み取り対象となる特定箇所をスキャン方向(主方向、副方向)に対して正確に0度または90度となるようにセットすることが好ましい。
【0006】
この切断面検査では切断面の内部にある隔壁の幅を正確に読み取ることに加え、切断面全体の外形エッジそのものも正確に読み取る必要がある。つまり、特定箇所の内部の隔壁の肉厚を計測する検査に加え、外形エッジ間のサイズ(全体のサイズ)や、特定箇所の外形エッジからある特定箇所の隔壁までのサイズなど、計測すべきサイズは外形エッジを基準にするものもあるからである。また、異形押し出し加工により加工・成型した設備資材の検査項目として外形エッジの歪みやバリの存在を検査する項目もあり得る。この場合外形エッジ全体を正確に読み取る必要がある。
外形エッジ部分の読み取り・解析が難しいという点については、他の先行出願でも従来技術における課題として指摘されている。例えば、特開平10−224563号には外形エッジが正しく解析されるためには、理想的にはエッジ(画像中の白黒の境界線)がスキャン方向(主方向、副方向)に対して正確に0度または90度で真っ直ぐに連続していることが好ましいと指摘されている。
【0007】
【特許文献1】特開平10−224563号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
抜き取りサンプルの切断面を下に向け、画像読み取りガラス面の所定位置へセットする作業は、サンプル品自体が立体物であるので通常のシートフィーダ搬送などは適さず、手作業で行う必要がある。
多くの場合、計測すべき特定箇所の配置方向と外形エッジのラインが水平または垂直の関係にあるので、抜き取りサンプルの外形エッジをスキャナのフレームに合わせてスキャナの画像読み取りガラス面上にセットすれば、抜き取りサンプルをスキャナのスキャン方向に対してスキューなく正確に合わせることができる。つまり、一般のスキャナでは画像読み取りガラス面の周囲に設けられたプラスチック製や金属製のフレームを読み取り対象物をセットする際のガイドとして兼用せしめている。例えば、画像読み取りガラス面の右上のフレーム隅に読み取り対象物の右上角を合わせ、読み取り対象物の上辺エッジを上端フレームガイド、右辺エッジを右端フレームガイドに合わせてセットすることとなる。
【0009】
ここで、通常のフレームガイドを用いて、設備資材などの抜き取りサンプルをセットする場合、以下のような問題が生じる。
通常のフレームガイドを用いて、設備資材などの抜き取りサンプルをセットした場合、フレームガイドと抜き取りサンプルの外形エッジが接する状態となっており、外形エッジそのものを正確に読み取るには不適切な状態にある。抜き取りサンプルの外形エッジを正確に読み取るためには、抜き取りサンプルの外形エッジをフレームガイドには直接沿わせず、多少のオフセットを設けて画像読み取りガラス面の少し中央側に載せ置けば外形エッジの読み取り条件は改善する。しかし、目測で正確な位置、正確な角度で抜き取りサンプルをスキューなく載せ置くことは難しい。特に生産現場では、画像読み取りガラス面の所定位置に3次元物体を精密に置き直したりする時間や手間を掛けている余裕はなく、簡単に抜き取りサンプルの切断面の読み取り・解析が求められる。一般に生産現場では時間コストの低減が求められる上、作業員は必ずしも熟練しているとは限らないため、短時間で誰でも簡単に作業できる環境が要求される。
【0010】
また、設備資材の外形全体が必ずしも直方形とは限らず流線型をなしている場合があり、また外形エッジの一部が曲線をなしている場合もある。このような場合、直線状のフレームガイドを用いて抜き取りサンプルをセットすることはできない。
【0011】
なお、読み取り対象物の画像読み取りガラス面への載せ置き方については自由とし、後工程の画像処理において、スキュー角を検出し、画像上での回転補正を行うという考え方がある。しかし、後の画像処理が難しい場合がある。
【0012】
まず、どの程度画像回転補正を行えば良いのかスキュー角の決定が難しい場合がある。外形エッジが綺麗な直線状であればエッジの発見が比較的容易でそのスキュー角の計算も比較的容易である。しかし、外形エッジが必ずしも直線状をなしているとは限らずエッジの発見およびスキュー角の定義づけが難しい場合がある。
【0013】
次に、3次元物体の断面形状全体をパターンマッチングすることにより画像の読み取り姿勢と位置を特定し、画像の移動補正、回転補正を行う手法があるが、パターンマッチングの計算コストが高くなったり、処理に時間がかかったり、性能の高いコンピュータの導入が必要になったりする場合がある。
上記問題点に鑑み、本発明は、生産現場において、画像読み取りガラス面の所定位置に3次元物体を精密に置き直したりする時間や手間をかけずに、簡単に画像読み取り、解析することができる画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明にかかる画像処理装置は、画像読み取りガラス面の周囲に設けられたスライダーと、前記スライダーに連動してスライド移動し、前記3次元物体を前記画像読み取りガラス面上に載せ置く際に案内となるガイドと、前記スライド移動後の前記ガイドの座標位置を検出する座標検出装置と、前記画像読み取りガラス面上に載せ置かれた前記3次元物体をスキャンして画像を読み取るスキャナと、前記スキャナにより読み取った画像データを、前記ガイドのスライド移動後の位置を基準とした相対位置に表示されるように座標変換して表示する座標変換機能を備えた画像データ処理部を備えている。
上記構成により、生産現場において、画像読み取りガラス面の所定位置に3次元物体を精密に置き直したりする時間や手間をかけずに、スキューのない同じ姿勢のサンプル品の切断面画像を簡単に画像読み取ることができ、かつ、同じ位置に表示することができ、後工程の画像処理を簡単にすることができる
【0015】
なお、上記の画像処理装置のガイドにおいて前記3次元物体と接面する部分の外形形状が前記3次元物体の外形の一部と合致し合う形状を備えたものとすることが好ましい。
上記構成により、ガイドの接面と3次元物体を合致させることにより容易に3次元物体を正しい姿勢においてセットすることができる。
【0016】
さらに、上記の画像処理装置のガイドを透明素材とすることが好ましい。
また、上記の画像処理装置のガイドを前記画像読み取りガラス面上に浮かせるように支持する構成も好ましい。
上記構成により、ガイドを案内として3次元物体に添えたままスキャナで画像を読み取った場合、3次元物体の外周形を含む全体の画像が前記ガイドに遮られることなく読み取ることができる。
【0017】
次に、本発明にかかる画像処理装置の画像処理関連のモジュールは、座標中に与えられた1セットのイメージノギス計測開始点から、与えられたイメージノギス計測方向に向けて画像中に存するイメージ境界を探索してゆき、発見した2つのイメージ境界間の距離を自動的にノギス計測するイメージノギス機能を設定する手段と、基準画像をモニタ上に表示し、前記基準画像を参照しつつ、前記イメージノギス機能を用いてサイズを計測すべき特定個所に対応する1セットの前記イメージノギス計測開始点と前記イメージノギス計測方向の設定を受け付ける利用者インターフェイスと、検査対象となる3次元物体の画像データを入力するデータ入力部と、前記画像データを、前記基準画像が表示された座標位置を基準とした相対位置に表示されるように座標変換する座標変換機能と、前記相対位置に表示された画像データに対して、前記イメージノギス機能を適用して前記指定にかかる計測すべき特定個所のサイズを自動測定するものである。
上記構成により、一番最初に基準画像を用いて、自動計測すべき特定個所を設定しておけば、次々と実際にスキャナから送られてくるサンプル品の切断面画像を受け取り、自動計測すべき特定個所の実測値を得ることができる。
【0018】
なお、基準画像に比べて、実際に製作されたサンプル品は各部において誤差を持っている。測定すべき特定個所にも誤差がある可能性は十分にあり、どの程度の大きさの誤差であるかは事前に予測できず、実測して初めて分かるものである。そこで、本発明の画像処理では、新たにイメージノギス機能を導入している。イメージノギス機能によれば、誤差として想定しうる範囲よりも十分な余裕を持たせた点をイメージノギス計測開始点として与えておき、自動的にイメージノギス計測方向に対して画素値が大きく変化する境界点を探索させて境界点を特定せしめ、2つの境界点の間の距離を測定することによりサンプル品の特定個所の実測を行しめるので、画像データごとに各々バラバラの大きさの誤差を含むであろう特定個所の実測値を自動的に正確に計測することができる。
【0019】
次に、上記画像処理関連のモジュールに加え、前記イメージノギス機能により自動測定した距離を基に前記3次元物体のばらつきを評価する評価部を備えることも好ましい。
上記構成により、特定個所の実測値を基に良品・不良品の別を自動的に評価することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の画像処理装置は、利用者の習熟を必要とせず、ガイドに沿わせて3次元物体を画像読み取りガラス面上に誰でも簡単に載せ置くことができる。
また、本発明の画像処理装置は、多様な3次元物体であっても、安定して同じ姿勢の同じ相対座標位置に揃えられた断面形状の画像データを得ることができる。
また、本発明の画像処理装置は、利用者により指定された個所の断面形状を評価して良品、不良品の別を判別することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ、本発明の画像処理装置の実施例を説明する。ただし、本発明の範囲は以下の実施例に示した具体的な用途、形状、個数などには限定されないことは言うまでもない。
【実施例1】
【0022】
実施例1にかかる本発明の画像処理装置の例を示す。
ここでは、一例として、読み取り対象物として、プラスチックを材料として異形押し出し工法により加工され、押し出された連続体を切断して単品成型した設備資材などを挙げ、本発明の画像処理装置は抜き取りサンプル品の切断面の画像を読み取り、あらかじめ指定されている特定個所のサイズを自動ノギス機能を利用して測定し、抜き取りサンプル品の良品・不良品の検査を行うものとする。
【0023】
図1は切断面の検査対象となるプラスチック材料の資材1の一例を示す図である。垂直切断面を正面から見た斜視図となっている。全体がブロック状であり、例えば、高さ(H)50mm、正面の幅(W)400mm、側面の長さ(L)500mmとする。
資材1は、上流工程において異形押し出し装置(図示せず)により押し出し加工され、切断装置(図示せず)により切断されて単品成型されたものである。押し出し工法により押し出されて当初連続体となっている状態から切断装置により垂直に切断して形成された切断面が図1では正面方向に示されている。
【0024】
なお、この例の資材1は、正面から背面にかけて貫通している多数の貫通孔2が内部に設けられている。つまり、押し出し加工の過程でこのような貫通孔2が多数形成されたものである。貫通孔2の用途は特に限定されないが、資材1の用途に応じて、例えば、ケーブルを挿入したり、パイプを挿入したり、粉体を収納したりすることも可能である。また、貫通孔2の形状も四角形に限定されず、多角形、円形、楕円形など多様な形状があり得る。また、貫通孔2は資材1の重量を小さくしつつ構造的強度を高める目的で設けられる場合もある。例えば、資材1の中にいわゆるハニカム構造を設け、全体の重量を軽くしつつ、外界からの圧力に抗する構造的強度を与えることがある。
【0025】
このように資材1の切断面の画像読み取りには、資材1の外形に基づく外形エッジの形状と、資材1の内部構造としての貫通孔2を形成する隔壁の両者を正確に読み取る必要がある。
図1に示した資材1が上流工程において押し出し加工、切断加工されて単品成型され、正面を前面として後述する画像処理装置の搬送系に受け取られ、搬送されて行く。その過程で適宜、サンプルを抜き取って切断面形状を検査するのである。
【0026】
図2は、実施例1にかかる本発明の画像処理装置100の構成例を示したブロック図である。
【0027】
10はスキャナ装置である。ここではフラットベッド型のスキャナ装置とする。その上面には画像読み取りガラス面11が設けられている。後述するように画像読み取り対象として載せ置かれたサンプルの切断面を光学的にスキャンして受光素子で受け取ることにより切断面の画像を読み取る。
【0028】
20はスライダーである。スキャナ装置10の画像読み取りガラス面11の周囲のフレーム筐体の一部に設けられている。例えば、右辺のフレーム筐体に組み込まれている場合は上下方向(Y軸方向)にスライドする機構を備え、上辺のフレーム筐体に組み込まれている場合は左右方向(X軸方向)にスライドする機構を備えている。このように1自由度のスライダーでも良く、また、上辺のフレーム筐体と右辺のフレーム筐体の双方に組み込まれ、上下左右方向(X軸−Y軸方向)の2自由度にてスライドする機構でも良い。
【0029】
30はガイドである。画像読み取り対象となる3次元物体を画像読み取りガラス面11上に載せ置く際の案内となる。ガイド30はスライダー20に連動しており、スライダー20により左右や上下など所定の1自由度または2自由度の方向で自由にスライドする。ガイド30のスライドする軌道はスキャナ装置10の画像読み取りガラス面11上を通るように設けられている。利用者はガイド30をスライドさせて画像読み取りガラス面11上の適切な位置に移動し、ガイドを案内として利用し、抜き取りサンプル品をガイド30に沿わせつつ画像読み取りガラス面11上にセットする。
【0030】
40はカウンタである。カウンタ40はスライダー20およびガイド30と連動しており、ガイド30の移動量をカウントし、ガイドのスキャナ装置10の画像読み取りガラス面11上での座標位置を検出するものである。なお、カウンタ40が検出した座標データは画像データ処理部50に対して出力する。
【0031】
図3はスキャナ装置10およびスキャナ装置10に組み込まれたスライダー20とガイド30の一構成例を具体的に示した図である。
図3の構成例では中央に画像読み取りガラス面11が設けられ、その周囲を筐体フレームが取り囲んでいる。図3の構成例では、上辺に左右スライダー、右辺と左辺に奥行き方向スライダーを備えたスライダー20が設けられ、スライダー20と連動したT字型のガイド30が設けられている。T字型の直角をなしている部分が案内となる3次元物体との接面部分であり、抜き取りサンプル品の所定の角をT字型の角に合わせるように沿わせて画像読み取りガラス面11上にセットする構成例となっている。
なお、カウンタ40はスキャナ装置10の筐体内部に設けられているため、図3では図示が省略されている。
【0032】
図4はスライダー20によりガイド30を左右方向(X軸方向)にスライドさせる様子を模式的に示す図である。この例ではスライダー20によりX軸方向にスライドさせている様子を示している。
【0033】
図4(a)のガイド30のT字型の角部分の座標位置が(X1,Y1))にあるとする。図4(b)はスライダー20を用いてガイド30を左方向(X軸方向)にスライド移動させた様子を示している。スライド移動量をカウンタ40でカウントし、スライド移動後のガイド30のT字型の角部分の座標位置が(X2,Y1)になったとする。このようにガイド30のスライド移動後の座標をカウンタ40でカウントしてガイド30の座標位置データ、つまり、ガイドを案内として画像読み取りガラス面11上に載せ置かれている抜き取りサンプル品の座標位置を画像データ処理部50に通知することができる。
【0034】
図5はガイドの3次元物体を沿わせる案内となる部分の形状の工夫を模式的に示す図である。ガイド30の3次元物体と接面する部分の外形形状が3次元物体の外形の一部と合致し合う形状を備えたものとなっている。図5(a)の例はいわゆるT字型となっており、3次元物体と接面する部分の外形形状がT字型であり、全体の外形が直方体のものに適合するガイド30の例となっている。図5(b)の例はいわゆる楕円形の一部と合致し合う形状を備えたものとなっており、全体の外形が楕円形の3次元物体の切断面画像を読み取る場合に適したものとなっている。
【0035】
図2のブロック図に戻り説明を続ける。
50は画像データ処理部である。画像データ処理部50は、データ入力部51、座標変換機能52、イメージノギス機能53、イメージノギス機能設定手段54を備えている。
【0036】
データ入力部51は、画像データをスキャナ装置10から受け取り、また、画像読み取りした際の抜き取りサンプル品の座標位置データをカウンタ40から受け取る部分である。
【0037】
座標変換機能52は、スキャナ装置10から受け取った画像データを、カウンタ40から受け取った座標位置をもとに、ガイド30のスライド移動後の位置を基準とした相対位置に座標変換する機能である。例えば、図4の例では、カウンタ40から受け取ったガイド30の座標位置は(X2,Y1)であるので、スキャナ装置10から受け取った画像データを座標位置(X2,Y1)からの相対座標として表現すると、画像データの各点のX座標をX2減じ、Y座標をY1減じたものとなる。
2自由度の場合において、カウンタ40から受け取ったスライド移動後のガイド30の座標位置が(X2,Y2)であれば、スキャナ装置10から受け取った画像データを座標位置(X2,Y2)からの相対座標として表現すると、画像データの各点のX座標をX2減じ、Y座標をY2減じたものとなる。
【0038】
イメージノギス機能53は、自動計測すべき特定個所を基準画像を用いてあらかじめ指定しておき、スキャナ装置10から実際に抜き取りサンプル品の切断面の画像を受け取ると、指定されている特定個所のサイズを自動計測する機能である。つまり、座標中に与えられた1セットのイメージノギス計測開始点から、与えられたイメージノギス計測方向に向けて画像中に存するイメージ境界を探索してゆき、発見した2つのイメージ境界間の距離を自動的にノギス計測する機能である。
【0039】
イメージノギス機能53は、誤差として想定しうる範囲よりも十分な余裕を持たせた点をイメージノギス計測開始点として与えておき、自動的にイメージノギス計測方向に対して画素値が大きく変化する境界点を探索させて境界点を特定せしめ、2つの境界点の間の距離を測定することによりサンプル品の特定個所の実測を行しめるものである。実際にスキャナ装置10から送られてくる抜き取りサンプル品の切断面の画像データに含まれる誤差が大きい場合でも、誤差の大きさよりも十分に余裕のあるイメージノギス計測開始点から範囲を狭めて境界を探索するので、特定個所の実測値を自動的に正確に計測することができる。
【0040】
イメージノギス機能設定手段54は、利用者インターフェイス70を介して、特定個所のサイズを計測するためのイメージノギス機能を設定するため、利用者にモニタ上で基準画像を提示し、イメージノギス計測開始点とイメージノギス計測方向の設定を受け付ける手段である。
【0041】
60は評価部であり、イメージノギス機能53により自動測定した特定個所のサイズを基に、3次元物体のばらつきを評価する部分である。評価部60は特定個所に対して誤差として許容されている数値範囲を保持し、実際の読み取り画像において計測した特定個所のサイズをイメージノギス機能53から受け取り、当該サイズが誤差として許容されている数値範囲内であるか否かを判断し、誤差として許容されている数値範囲であれば良品として判断し、誤差として許容されている数値範囲を超えている場合は不良品として判断する。
【0042】
70は利用者インターフェイスであり、基準画像をモニタ上に表示し、基準画像を参照しつつ、イメージノギス機能53を設定するためのイメージノギス計測開始点とイメージノギス計測方向の設定を受け付ける利用者インターフェイスである。
【0043】
次に、図6〜図10を参照しつつ、画像データ処理部50、利用者インターフェイス70の各モジュールの処理の流れを追いつつさらに説明を続ける。
図6(a)は、利用者インターフェイス70により利用者に表示される基準画像の例を模式的に示した図である。利用者はこの図6(a)を見ながら、イメージノギス機能を設定する特定個所の設定を行う。なお、この例の設計仕様では図6(b)に示すように良品・不良品の判別のために計測すべき特定個所がA〜Fの6箇所であったとする。
【0044】
図7は、利用者インターフェイス70を介して、特定個所がA〜Fの6箇所に対するイメージノギス計測開始点とイメージノギス計測方向の設定を入力した例である。
図7に示したように、利用者はマウスなどのポインティングデバイスなどを用いて、例えば特定個所Aに対して、Aに想定しうる誤差の大きさに比べて十分に余裕のある外側に位置する2点(イメージノギス計測開始点A1、イメージノギス計測開始点A2)を設定する。図7ではひし形の点として示している。また、イメージノギス計測方向として内向き方向を設定する。図7ではイメージノギス計測開始点A1とイメージノギス計測開始点A2の両側から内側に向かう矢印として示されている。また、例えば特定個所Bの場合、Bに想定しうる誤差の大きさに比べて十分に余裕のある内側に位置する2点(イメージノギス計測開始点B1、イメージノギス計測開始点B2)を設定し、イメージノギス計測方向として外向き方向を設定する。図7ではイメージノギス計測開始点B1とイメージノギス計測開始点B2の両側から外側に向かう矢印として示されている。また、例えば、肉厚である特定個所Cの場合は、Cに想定しうる肉厚の誤差の大きさに比べて十分に余裕のある外側に位置する2点(イメージノギス計測開始点C1、イメージノギス計測開始点C2)を設定し、イメージノギス計測方向として内向き方向を設定する。図7ではイメージノギス計測開始点C1とイメージノギス計測開始点C2の両側から内側に向かう矢印として示されている。このように残りのD、E、Fについてもイメージノギス計測開始点とイメージノギス計測方向を入力してゆく。
【0045】
このように、実際の抜き取りサンプル品の切断面の画像読み取りを行うのに先立ち、基準画像を用いてあらかじめ特定個所に対するイメージノギス機能を設定しておく。
次に、実際にスキャナを用いて抜き取りサンプル品の切断面の画像読み取りを行い、イメージノギス機能を用いて画像データ中の特定個所のサイズを自動計測し、良品・不良品の判別を行う手順について説明する。
【0046】
図8は、画像データ処理部50における実際の抜き取りサンプル品の良品・不良品の判別処理の基本的流れを示したフローチャートである。
上記したように、あらかじめ基準画像を用いて特定個所に対するイメージノギス機能を設定しておく(S801)。この例では図7に示した例のようにイメージノギス機能53を設定したとする。
【0047】
まず、利用者が読み取り対象であるサンプル品をガイドに沿わせつつスキャナ装置10の画像読み取りガラス面11上に載せ置いて当該位置においてサンプル品の切断面画像の読み取りを実行して、データ入力部51を介してスキャナ装置10で読み取った3次元物体の切断面の画像データ1とガイド30の座標位置データを受け取る(S803)。
【0048】
次に、3次元物体の切断面の画像データの座標をガイドの座標位置を基準とした相対位置に表示されるように座標変換する(S804)。画像データ処理部50は、受け取った画像を座標変換機能52により自動的に座標変換し、モニタ上、例えば常に原点に合わせた同じ位置に切断面の画像データが表示されるように画像処理を行う。
【0049】
図9は、座標変換機能52による座標変換機能を模式的に示した図である。
この例では、図6(a)に示した基準画像を設計仕様として製作された金型を基に異形押し出し加工により成型・切断した設備資材の切断面を読み取った例とする。いま、抜き取りサンプル品を読み取る際のガイド30の座標位置は(X2,Y1)であったとする。画像データ処理部50が座標変換前のスキャナ装置10から受け取った切断面の画像データは図9(a)に示すように(X2,Y1)を端点とする画像データとなっている。一方、画像データ処理部50はカウンタ40からガイド30の座標位置として(X2,Y1)を受け取る。
図9の例では、カウンタ40から受け取ったガイド30の座標位置は(X2,Y1)であるので、スキャナ装置10から受け取った画像データを座標位置(X2,Y1)からの相対座標として表現すると、画像データの各点のX座標をX2減じ、Y座標をY1減じたものとなる。つまり、スキャナ装置10から受け取った画像データである図9(a)の座標位置から座標変換機能52により図9(b)の座標位置へ変換される。
【0050】
次に、座標変換後の画像データに対してイメージノギス機能53により特定個所のサイズを自動計測する(S805)。
この例では図7に示したようにイメージノギス機能53の特定個所が設定されており、図9(b)に示す座標変換後の画像データに対して図7に示した特定個所に対する探索が開始される。例えば、図10(a)に示すように、特定個所Aについては、イメージノギス計測開始点A1から内向きつまり下向きに探索してゆき画素値の大きな変化が見られる位置を特定する。同様に、イメージノギス計測開始点A2から内向きつまり上向きに探索してゆき画素値の大きな変化が見られる位置を特定する。結局、特定個所A(画像1のものとしてA1とする)については図10(b)に示すように、所望のサイズが自動的に特定されて計測される。残りの特定個所B、C、D、E、Fについても、図7に示したイメージノギス計測開始点からイメージノギス計測方向に探索してゆき画素値の大きな変化が見られる位置を特定し、図10(b)に示すように画像1の特定個所B1、C1、D1、E1、F1のサイズを得る。
【0051】
画像データ処理部50は、実際にスキャナ装置10で読み取った切断面画像から計測した特定個所の計測値を評価部60に出力する。
評価部60は、これら特定個所の誤差が許容誤差範囲内にあるか否かをチェックし(S806)、許容誤差範囲内であれば(S806:Y)、良品として判別し(S807)、許容誤差範囲外であれば(S806:N)、不良品として判別する(S808)。
【0052】
図11は評価部60の評価テーブルの一例を示した模式的に示した図である。
評価部60は、当初から特定個所A〜Fについての許容誤差範囲となる基準値(ここではA0〜F0)を保持している。評価部60は画像データ処理部50から渡された切断面画像から計測した特定個所の計測値(ここではA1〜F1)を受け、図11に示すようなテーブルに入力し、実測値が基準値の範囲内にあるか否かをチェックする。許容誤差範囲内にあれば良品と判断し、許容誤差範囲を超えていれば不良品として判断する。この例では実測した肉厚C1が2.95mmであり、基準値の3.00〜3.10の許容誤差範囲を超えており不良品として判断されている。そのため総合判定として不良品として判定される。
【0053】
以上のように、画像データ処理部50は、スキャナ装置10による抜き取りサンプル品の切断面の画像データの読み取りが実行され、画像データとガイド30の座標位置データの入力を受け取るごとに、上記の座標変換機能52とイメージノギス機能53により特定個所のサイズを計測し、評価部60による良品・不良品の判断を行ってゆく。
【実施例2】
【0054】
実施例2にかかる本発明の画像処理装置を示す。
実施例2にかかる画像処理装置は、ガイド30について工夫を施した構成例である。ガイド30を案内として3次元物体に添えたままでも画像読み取りを可能としたものである。
【0055】
第1の工夫がガイド30を透明素材とする工夫である。図12(a)は透明素材とする工夫を施したガイド30の構成例を模式的に示したものである。
ガイド30を透明素材とすることにより、ガイド30を画像読み取りガラス面11上に載せ置いたままスキャナ装置10で画像を読み取ってもガイド30は映り込むことがない。つまり、ガイド30を案内として3次元物体に添えたままでも3次元物体の外周形を含む全体の画像がガイド30に遮られることなく読み取ることができる。
【0056】
第2の工夫がガイド30を画像読み取りガラス面上に浮かせるように支持する工夫である。図12(b)は画像読み取りガラス面上に浮かせるように支持する工夫を施したガイド30の構成例を模式的に示した図である。
ガイド30を画像読み取りガラス面上に浮かせるように支持することにより、ガイド30を画像読み取りガラス面11上に位置させたままスキャナ装置10で画像を読み取ってもガイド30には焦点が合っておらず映り込むことがない。つまり、ガイド30を案内として3次元物体に添えたままでも3次元物体の外周形を含む全体の画像がガイド30に遮られることなく読み取ることができる。
【0057】
以上、本発明の好ましい実施形態を図示して説明してきたが、本発明は、押し出し加工された資材などの垂直断面形状の画像読み取り用途に限られず、3次元物体の垂直断面形状の画像読み取り用途に広く適用することができる。
本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の変更が可能であることは理解されるであろう。従って本発明の技術的範囲は添付された特許請求の範囲の記載によってのみ限定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】切断面の検査対象となるプラスチック材料の資材1の一例を示す図
【図2】実施例1にかかる本発明の画像処理装置100の構成例を示したブロック図
【図3】スキャナ装置10およびスキャナ装置10に組み込まれたスライダー20とガイド30の一構成例を具体的に示した図
【図4】スライダー20によりガイド30を左右方向にスライドさせる様子を模式的に示す図
【図5】ガイドの3次元物体を沿わせる案内となる部分の形状の工夫を模式的に示す図
【図6】基準画像および測定すべき特定個所の例を模式的に示した図
【図7】イメージノギス計測開始点とイメージノギス計測方向の設定を入力した例を模式的に示す図
【図8】画像データ処理部50における実際の抜き取りサンプル品の良品・不良品の判別処理の基本的流れを示したフローチャート
【図9】座標変換機能52による座標変換機能を模式的に示した図
【図10】イメージノギス機能の働きを示す図
【図11】評価部60の評価テーブルの一例を示した模式的に示した図
【図12】実施例2にかかるガイド30に工夫を施した構成例を示す図
【図13】従来技術の異形押し出し工法により押し出し加工、切断加工された設備資材の一例を示す図
【図14】従来技術の資材設備の切断面および測定すべき個所を示す図
【符号の説明】
【0059】
1 資材
2 貫通孔
10 スキャナ装置
11 画像読み取りガラス面
20 スライダー
30 ガイド
40 カウンタ
50 画像データ処理部
51 データ入力部
52 座標変換機能
53 イメージノギス機能
54 イメージノギス機能設定手段
60 評価部
70 利用者I/F

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像読み取りガラス面の周囲に設けられたスライダーと、
前記スライダーに連動してスライド移動し、前記3次元物体を前記画像読み取りガラス面上に載せ置く際に案内となるガイドと、
前記スライド移動後の前記ガイドの座標位置を検出する座標検出装置と、
前記画像読み取りガラス面上に載せ置かれた前記3次元物体をスキャンして画像を読み取るスキャナと、
前記スキャナにより読み取った画像データを、前記ガイドのスライド移動後の位置を基準とした相対位置に表示されるように座標変換して表示する座標変換機能を備えた画像データ処理部を備えた画像処理装置。
【請求項2】
前記ガイドにおいて前記3次元物体と接面する部分の外形形状が前記3次元物体の外形の一部と合致し合う形状を備えた請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記ガイドを透明素材とし、
前記ガイドを案内として前記3次元物体に添えたまま前記スキャナで画像を読み取った場合、前記3次元物体の外周形を含む全体の画像が前記ガイドに遮られることなく読み取ることができる請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記ガイドを前記画像読み取りガラス面上に浮かせるように支持し、
前記ガイドを案内として前記3次元物体に添えたまま前記スキャナで画像を読み取った場合、前記3次元物体の外周形を含む全体の画像が前記ガイドに遮られることなく読み取ることができる請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項5】
座標中に与えられた1セットのイメージノギス計測開始点から、与えられたイメージノギス計測方向に向けて画像中に存するイメージ境界を探索してゆき、発見した2つのイメージ境界間の距離を自動的にノギス計測するイメージノギス機能を設定する手段と、
基準画像をモニタ上に表示し、前記基準画像を参照しつつ、前記イメージノギス機能を用いてサイズを計測すべき特定個所に対応する1セットの前記イメージノギス計測開始点と前記イメージノギス計測方向の設定を受け付ける利用者インターフェイスと、
検査対象となる3次元物体の画像データを入力するデータ入力部と、
前記画像データを、前記基準画像が表示された座標位置を基準とした相対位置に表示されるように座標変換する座標変換機能と、
前記相対位置に表示された画像データに対して、前記イメージノギス機能を適用して前記指定にかかる計測すべき特定個所のサイズを自動測定する画像処理装置。
【請求項6】
前記イメージノギス機能により自動測定した計測すべき個所のサイズを基に、前記3次元物体のばらつきを評価する評価部を備えた請求項5に記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−349489(P2006−349489A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−175624(P2005−175624)
【出願日】平成17年6月15日(2005.6.15)
【出願人】(501170080)株式会社創発システム研究所 (10)
【Fターム(参考)】