説明

画像形成装置

【課題】指紋認証を行う画像形成装置の消費電力を削減する。
【解決手段】画像形成装置10は、指紋認証を実行する指紋認証モジュール113と、指紋認証モジュール113への動作電力の供給を制御する電力供給制御部114と、画像形成装置10に作用が与えられた場合に、当該作用に応答して実行すべき処理が指紋認証モジュール113による指紋認証を要求するセキュア処理であるか否かを判定するマイクロコンピュータ120とを備える。電力供給制御部114は、指紋認証モジュール113への動作電力の供給を停止している状態で画像形成装置10に作用が与えられ、当該作用に応答して実行すべき処理がセキュア処理であるとマイクロコンピュータ120により判定された場合、指紋認証モジュール113への動作電力の供給を開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指紋認証を行う画像形成装置の消費電力を削減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、MFP(Multi Function Peripherals)やコピー機等の画像形成装置において、内蔵又は外付けの指紋センサを設けて、所定の処理を行う場合に指紋認証を要求するようにしたものが用いられている。例えば、機密文書の印刷を行う場合に指紋認証を要求し、印刷ジョブの実行者以外が印刷を行うことができないようにした画像形成装置や、コピーやファクシミリ送信を行う場合に指紋認証を要求し、あらかじめ許可された者以外がコピーやファクシミリ送信を行うことができないようにした画像形成装置が従来より用いられている。
【0003】
一方、画像形成装置においては、消費電力の削減が求められており、画像形成装置の一部分への動作電力の供給を一時的に停止することも行われている。指紋認証のための構成についても同様であり、例えば、特許文献1には、指紋センサの近傍に指検出手段を設け、当該指検出手段が指を検出しているときのみ、指紋認証のための構成への動作電力の供給を行う技術を開示している。
【0004】
【特許文献1】特開2003−196647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の技術では、単に指紋センサの近傍に指を置くだけで指紋認証のための構成への動作電力の供給が行われるため、指紋認証を要求する処理を実行しないときに指紋認証のための構成への動作電力の供給が行われてしまい、消費電力の削減の面からは好ましくなかった。
【0006】
本発明は、この問題を解決するためになされたもので、指紋認証を行う画像形成装置の消費電力を削減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、画像形成装置であって、指紋認証を実行する指紋認証手段と、前記指紋認証手段への動作電力の供給を制御する制御手段と、前記画像形成装置に作用が与えられた場合に、当該作用に応答して実行すべき処理が前記指紋認証手段による指紋認証を要求する処理であるか否かを判定する判定手段とを備え、前記制御手段は、前記指紋認証手段への動作電力の供給を停止している状態で前記画像形成装置に作用が与えられ、当該作用に応答して実行すべき処理が前記指紋認証手段による指紋認証を要求する処理であると前記判定手段により判定された場合、前記指紋認証手段への動作電力の供給を開始する。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の画像形成装置において前記制御手段は、前記指紋認証手段への動作電力の供給の開始後に、前記指紋認証手段による指紋認証が所定回数以上失敗した場合に、前記指紋認証手段への動作電力の供給を停止する。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置において、前記作用が、所定の操作部材に対する操作である。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置において、前記作用が、前記画像形成装置に対する所定の情報の入力である。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の画像形成装置において、前記制御手段は、前記指紋認証手段による指紋認証の終了後に前記指紋認証手段への動作電力の供給を停止する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1ないし請求項5の発明によれば、必要な場合のみ指紋認証手段に動作電力が供給されるので、指紋認証を行う画像形成装置の消費電力を削減することができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、画像形成装置の消費電力をさらに削減することができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、所定の操作部材に対して操作が行われると自動的に指紋認証が可能な状態となる。
【0015】
請求項4の発明によれば、所定の情報が入力されると自動的に指紋認証が可能な状態となる。
【0016】
請求項5の発明によれば、指紋認証手段に動作電力が供給されたままとなることを防止可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
<1 構成>
図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置10の構成を示すブロック図である。画像形成装置10は、スキャナ機能、ファクシミリ機能、プリンタ機能及びコピー機能を有するデジタル複合機(MFP;Multi Function Peripherals)である。
【0018】
図1に示すように、画像形成装置10は、MPU(マイクロプロセッサ;MicroProcessor Unit)101、ROM102及びRAM103を備える。MPU101、ROM102及びRAM103によって実現されるマイクロコンピュータ120は、ROM102に格納されたプログラムを実行することにより、画像形成装置10の各構成を統括制御し、画像形成装置10の各種機能を実現している。また、画像形成装置10の画像メモリ104は、画像形成装置10が処理対象とする画像を画像データとして記憶する。
【0019】
また、画像形成装置10は、画像読取部109及び画像記録部110を備える。画像読取部109は、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ等により原稿上の画像を読み取る。画像読取部109は、ADF(Automatic Document Feeder)方式又はFBS(Flat Bed Scanner)方式により原稿上の画像を読み取ることができる。画像記録部110は、電子写真方式により、画像を記録媒体上に形成する。
【0020】
画像形成装置10には、ユーザインターフェースとして、操作部111及び表示部112が設けられる。操作部111は、メカニカルスイッチ等の操作部材を含んで構成され、表示部112は、液晶ディスプレイ等の表示用の部材を含んで構成される。操作部111には、機密文書の印刷指示を画像形成装置10へ与えるために用いられるセキュアプリントボタン111aが含まれている。なお、表示部112を液晶タッチパネルディスプレイ等で構成して、表示部112が操作部111の一部又は全部の機能を兼ね備えるようにしてもよい。
【0021】
ネットワークインターフェース106は、例えば、イーサネット(登録商標)により、画像形成装置10をネットワーク30に接続する。ネットワークインターフェース106により、画像形成装置10は、ネットワーク30に接続されたパーソナルコンピュータPCと通信可能となっている。
【0022】
NCU(網制御装置;Network Control Unit)107及びMODEM(モデム;MOdulator DEModulator)108は、一般公衆電話網40を経由した画像データの送受信に用いられる。NCU107は、一般公衆電話網40への接続を制御する。NCU107は、通信先の電話番号に対応したダイヤル信号を送出する機能及び着信を検出する機能を備える。MODEM108は、ITU(国際電気通信連合)−T勧告T.30にしたがったファクシミリ伝送制御手順に基づいて、V.17,V.27ter,V.29等にしたがった送信データの変調及び受信データの復調を行う。又は、MODEM108は、これらに加えて、V.34にしたがった送信データの変調及び受信データの復調を行う。
【0023】
指紋認証モジュール113は、指紋の読み取りを行う指紋センサ113aを備えて構成され、指紋センサ113aにより読み取られた指紋が事前に登録された指紋と一致するか否かを判定する指紋認証を実行する。この事前に登録されている指紋は、後述するセキュア処理の実行指示の受け付けを許可する使用者の指紋となっている。指紋認証モジュール113は、画像形成装置10に固設されていてもよいし、その一部(例えば、指紋センサ113aのみ)又は全部が、USBインターフェース等により、画像形成装置10の本体から着脱可能とされていてもよい。画像形成装置10において、指紋認証が、指紋認証モジュール113と、マイクロコンピュータ120との協働によって実現されてもよい。また、指紋認証にあたっては、指紋の画像が一致するか否かを判定するようにしてもよいし、指紋の特徴点が一致しているか否かを判定するようにしてもよい。さらに、指紋認証にあたっては、指紋センサ113aにより読み取られた指紋と、事前に登録された複数の指紋との照合を行うようにしてもよいし(1対n照合)、指紋センサ113aにより読み取られた指紋と、事前に登録された複数の指紋のうちの特定の1つの指紋との照合を行うようにしてもよい(1対1照合)。ここで、1対1照合を行う場合には、照合の対象となる指紋を特定するための情報として、ID等の情報を指紋に関連付けて登録しておくことが望ましい。
【0024】
電力供給制御部114は、マイクロコンピュータ120から与えられる指示に基づいて、指紋認証モジュール113への動作電力の供給を制御している。
【0025】
画像形成装置10は、画像読取部109が読み取った画像を、ネットワーク30を経由してパーソナルコンピュータPCへ送信したり(スキャン機能)、一般公衆電話網40を経由してファクシミリ装置FAXへ送信したり(ファクシミリ機能)することができる。また、画像形成装置10では、画像読取部109が読み取った画像を画像記録部110に与えることにより、当該画像を記録媒体に印刷することができる(コピー機能)。
【0026】
加えて、画像形成装置10は、ネットワーク30を経由してパーソナルコンピュータPCから送信されてきた印刷ジョブに関する画像を画像記録部110に与えることにより、当該画像を記録媒体に印刷することができる(プリント機能)。なお、画像形成装置10では、機密文書となっている印刷ジョブがパーソナルコンピュータPCから送信されてきた場合、当該印刷ジョブをいったん蓄積しておき、セキュアプリントボタン111aの押下が検出されるとともに指紋認証モジュール113による指紋認証が成功した後に、当該印刷ジョブに関する画像を記録媒体に印刷するように構成されている。これにより、画像形成装置10では、機密文書となっている印刷ジョブの実行者(パーソナルコンピュータPCにおいて機密文書となっている印刷ジョブを画像形成装置10へ送信する操作を行った者)のみが、当該機密文書の印刷物を得ることができるようになっている。
【0027】
さらに、画像形成装置10は、一般公衆電話網40を経由してファクシミリ装置FAXから送信されてきた画像を画像記録部110に与えることにより、当該画像を記録媒体に印刷することができる(ファクシミリ機能)。
【0028】
<2 動作>
図2は、画像形成装置10における、指紋認証モジュール113への動作電力の供給の制御に関する動作を説明するフローチャートである。
【0029】
図2を参照して説明すると、画像形成装置10への電源の投入後、指紋認証モジュール113が画像形成装置10に装着されているか否かが検出され(ステップS101)、指紋認証モジュール113の装着が検出された場合のみ、ステップS102へ移行して、電力供給制御部114による指紋認証モジュール113への動作電力の供給の制御が開始される。
【0030】
電力供給制御部114による指紋認証モジュール113への動作電力の供給の制御が開始されると、まず、電力供給制御部114は、画像形成装置10への電源の投入から所定時間が経過した時点で、指紋認証モジュール113への動作電力の供給をいったん停止する(ステップS102)。そして、画像形成装置10は、何らかの作用が与えられるまで待機状態となる(ステップS103)。なお、ここでいう「作用」とは、操作部111に対する操作や、画像形成装置10に対する情報の入力(例えば、ネットワーク30を経由した印刷ジョブの入力や一般公衆電話網40からの着信)を意味している。
【0031】
続いて、画像形成装置10に何らかの作用が与えられると、当該作用に応答して実行すべき処理が指紋認証モジュール113による指紋認証を要求する処理(以下では、「セキュア処理」とも称する)であるか否かがマイクロコンピュータ120によって判定される(ステップS104)。
【0032】
そして、応答して実行すべき処理がセキュア処理であるとマイクロコンピュータ120により判定された場合(例えば、セキュアプリントボタン111aが押下された場合)、電力供給制御部は、指紋認証モジュール113への動作電力の供給を開始し(ステップS105)、画像形成装置10を指紋認証が可能な状態とする。
【0033】
一方、ステップS104において、実行すべき処理がセキュア処理ではないとマイクロコンピュータ120により判定された場合、さらに、実行すべき処理が指紋認証モジュール113による指紋認証を要求しない処理(以下では、「非セキュア処理」とも称する)であるか否かがマイクロコンピュータ120によって判定され(ステップS106)、実行すべき処理が非セキュア処理であるとマイクロコンピュータ120によって判定された場合、画像形成装置10は、当該非セキュア処理を実行した後に(ステップS107)、ステップS102へ戻り、指紋認証モジュール113への動作電力の供給が停止された状態を継続する。
【0034】
一方、ステップS106において、実行すべき処理が非セキュア処理でもないとマイクロコンピュータ120によって判定された場合、すなわち、特に実行すべき処理が存在しない場合、ステップS102へ戻り、指紋認証モジュール113への動作電力の供給が停止された状態を継続する。
【0035】
ステップS105において指紋認証モジュール113への動作電力の供給が開始された後は、指紋認証モジュール113による指紋認証が行われ(ステップS108)、指紋認証が成功すれば(ステップS109で"YES")、セキュア処理(例えば、機密文書の印刷)が実行され(ステップS110)、ステップS102へ戻り、電力供給制御手段は、指紋認証モジュール113に動作電力が供給されたままとなることを防止するため、指紋認証モジュール113への動作電力の供給を停止する。
【0036】
一方、指紋認証が失敗すれば(ステップS109で"NO")、連続して失敗した回数が所定回数(例えば、3回)に達していなければ(ステップS111で"NO")、ステップS108へ戻って再び指紋認証が行われ、所定回数に達していれば(ステップS111で"YES")、ステップS102へ戻り、電力供給制御手段114は、指紋認証モジュール113への動作電力の供給を停止する。すなわち、電力供給制御手段114は、指紋認証モジュール113への動作電力の供給の開始後に、指紋認証モジュール113による指紋認証が所定回数以上失敗した場合に、指紋認証モジュール113への動作電力の供給を停止して、消費電力を削減するとともに、セキュリティを向上させる。
【0037】
なお、上述の説明では、セキュア処理の引き金が、セキュアプリントボタン111aの押下である場合を例にあげて説明を行ったが、セキュアプリントボタン111a以外の、操作部材に対する操作がセキュア処理の引き金である場合にも本発明は適用可能である。例えば、画像形成装置10において、コピー機能によるコピーやファクシミリ機能によるファクシミリ送信を、あらかじめ指紋が登録された者のみに許可している場合、コピーの引き金となる操作(例えば、コピーモードでのスタートボタンの押下)やファクシミリ送信の引き金となる操作(例えば、ファクシミリモードでのスタートボタンの押下)に応答して、電力供給制御手段114が、指紋認証モジュール113への動作電力の供給を開始するようにしてもよい。
【0038】
あるいは、別の例として、画像形成装置10に対する所定の情報の入力(例えば、ネットワーク30を経由した、機密文書となっている印刷ジョブの入力)に応答して、電力供給制御手段114が、指紋認証モジュール113への動作電力の供給を開始するようにしてもよい。この場合、指紋認証モジュール113への動作電力の供給の開始から所定時間経過しても指紋認証が行われなければ、指紋認証モジュール113への動作電力の供給を停止することが望ましい。これは、指紋認証モジュール113への動作電力の供給の開始から所定時間経過しても指紋認証が行われない場合、操作者が画像形成装置10の近傍にいない可能性が高いからである。
【0039】
上述の構成及び動作により、画像形成装置10では、所定の操作部材に対して操作が行われたり、所定の情報が入力されたりした場合等の必要な場合のみ指紋認証モジュール113に動作電力が供給され、自動的に指紋認証が可能な状態となるので、消費電力を削減することができるようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置10の構成を示すブロック図である。
【図2】画像形成装置10における、指紋認証モジュール113への動作電力の供給の制御に関する動作を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0041】
10 画像形成装置
111a セキュアプリントボタン
113 指紋認証モジュール
114 電力供給制御部
120 マイクロコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置であって、
指紋認証を実行する指紋認証手段と、
前記指紋認証手段への動作電力の供給を制御する制御手段と、
前記画像形成装置に作用が与えられた場合に、当該作用に応答して実行すべき処理が前記指紋認証手段による指紋認証を要求する処理であるか否かを判定する判定手段と、
を備え、
前記制御手段は、
前記指紋認証手段への動作電力の供給を停止している状態で前記画像形成装置に作用が与えられ、当該作用に応答して実行すべき処理が前記指紋認証手段による指紋認証を要求する処理であると前記判定手段により判定された場合、前記指紋認証手段への動作電力の供給を開始することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において
前記制御手段は、
前記指紋認証手段への動作電力の供給の開始後に、前記指紋認証手段による指紋認証が所定回数以上失敗した場合に、前記指紋認証手段への動作電力の供給を停止することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置において、
前記作用が、所定の操作部材に対する操作であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置において、
前記作用が、前記画像形成装置に対する所定の情報の入力であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の画像形成装置において、
前記制御手段は、
前記指紋認証手段による指紋認証の終了後に前記指紋認証手段への動作電力の供給を停止することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−34502(P2007−34502A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−214485(P2005−214485)
【出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】