説明

画像形成装置

【課題】単色画像の形成動作と複数色画像の形成動作が種々の比率で切り替えて行われることがあっても、複数の作像装置(特に単色画像形成時に現像剤像を形成しない作像装置)における各像保持体の帯電を安定して行うことができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】単色画像の形成時に現像剤像を形成しない作像装置の帯電装置に印加する帯電用電圧について、その初期設定値から、計測手段で計測された単色画像形成時における像保持体の回転量の累積値に基づいて定められる第1補正値と計測手段で計測された複数色画像形成時における像保持体の回転量の累積値に基づいて定められる第2補正値とから得られる値に変更する制御手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、複写機、ファクシミリ等の画像形成装置には、単色(主に黒色)の画像に加えてカラー(複数色)の画像を形成することができるカラー画像形成装置がある。
【0003】
このカラー画像形成装置としては、感光体ドラム等の像保持体に所定の色の現像剤からなる現像剤像(いわゆるトナー像)を形成する作像装置を複数使用するとともにそれらを直列に並べて配置し、その各作像装置で形成される各色の現像剤像をその各作像装置の像保持体にそれぞれ接触した状態で順次通過するように回転する用紙搬送体又は中間転写体に転写する(用紙搬送体を用いる場合は用紙搬送体によって搬送される用紙に転写する)ことにより、単色画像やカラー画像形成を形成する形式(いわゆるタンデムタイプ)のものが存在する。
【0004】
このようなタンデムタイプであって、押圧部材により用紙搬送体を像保持体に当接させるカラー画像形成装置において、複数個の像保持体のうちの一部を使用して画像形成を行う場合に、画像形成を行わない像保持体に対応した転写位置では押圧部材による用紙搬送体の像保持体への当接を行わないとともに、転写装置への転写帯電バイアスの印加を行わないように構成したものが知られている(特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】特開平10−186773号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、単色画像の形成動作と複数色画像の形成動作が種々の比率で混在して切り替えながら行われることがあっても、複数の作像装置(特に単色画像形成時に現像剤像を形成しない作像装置)における各像保持体の帯電を安定して行うことができる画像形成装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明(A1)の画像形成装置は、像保持面を有するとともに回転する像保持体と、帯電用電圧が印加されて前記像保持体の像保持面を帯電する帯電装置と、前記像保持体の帯電された像保持面に形成される静電潜像を所定の色の現像剤で現像して現像剤像とする現像装置と、転写用電圧が印加されて前記現像剤像を転写する転写装置とを備えた複数の作像装置と、前記各作像装置の前記転写装置による転写が行われる転写位置で前記像保持体の像保持面にそれぞれ接触して順次通過する用紙搬送体又は中間転写体と、前記複数の作像装置のうちの1つの作像装置で形成される1色の現像剤像から構成される単色画像を形成する動作の実行時と、前記複数の作像装置で形成される各色の現像剤像を組み合わせて構成される複数色画像を形成する動作の実行時に、前記像保持体の回転量を個別に計測して累積する計測手段と、前記単色画像の形成時に現像剤像を形成しない前記作像装置の前記帯電装置に印加する帯電用電圧について、その初期設定値から、前記計測手段で計測された前記単色画像形成時における前記像保持体の回転量の累積値に基づいて定められる第1補正値と前記計測手段で計測された前記複数色画像形成時における前記像保持体の回転量の累積値に基づいて定められる第2補正値とから得られる値に変更する制御手段とを有するものである。
【0008】
また、この発明(A2)の画像形成装置は、上記発明A1の画像形成装置において、前記第1補正値が、単色画像の形成時に現像剤像を形成しない前記作像装置における前記像保持体の回転量の累積値と、当該単色画像の形成時における当該像保持体の帯電電位の変動量に応じて設定される補正係数とから得られる値であり、前記第2補正値が、複数色画像の形成時に前記現像剤像を形成しない前記作像装置における前記像保持体の回転量の累積値と、当該複数色画像の形成時における当該像保持体の帯電電位の変動量に応じて設定される補正係数とから得られる値であるとしたものである。
【0009】
また、この発明(A3)の画像形成装置は、上記発明A1又はA2の画像形成装置において、前記像保持体の回転量を、回転数又は回転時間から得るものである。
【0010】
また、この発明(A4)の画像形成装置は、上記発明A1〜A3のいずれかの画像形成装置において、前記各作像装置における少なくとも前記像保持体を装置本体に対し着脱可能に装着する交換部品として構成し、かつ、前記各交換部品に、前記計測手段で計測される単色画像形成時及び複数色画像形成時における像保持体の各回転量の累積値を個別に記憶して保持する記憶手段を取り付けるとともに、前記制御手段が前記記憶手段に記憶されている当該各回転量の累積値を読み出して使用するものである。
【0011】
また、この発明(A5)の画像形成装置は、上記発明A4の画像形成装置において、前記各作像装置における少なくとも前記像保持体を装置本体に対し着脱可能に装着する交換部品として構成するとともに、その各交換部品の像保持体ごとの回転量を前記計測手段で個別に計測して累積し、かつ、前記各交換部品が新たな交換部品に交換される際に、前記記憶手段に記憶されている当該交換された交換部品における像保持体の回転量の累積値をゼロに戻すものである。
【0012】
また、この発明(A6)の画像形成装置は、上記発明A1〜A5のいずれかの画像形成装置において、前記制御手段は、前記単色画像の形成時に、現像剤像を形成しない前記作像装置の前記転写装置に転写用電圧を印加しないか又は転写用電圧よりも低い低電圧を印加するものである。
【0013】
また、この発明(A7)の画像形成装置は、上記発明A1〜A6のいずれかの画像形成装置において、前記制御手段は、前記単色画像の形成時に現像剤像を形成する前記作像装置の前記帯電装置に印加する帯電用電圧について、その初期設定値から、前記計測手段で計測された前記単色画像形成時における前記像保持体の回転量の累積値と前記複数色画像形成時における前記像保持体の回転量の累積値を合計した値に基づいて定められる補正値を減じて得られる値に変更するものである。
【発明の効果】
【0014】
上記発明A1の画像形成装置によれば、本発明の構成を有しない場合に比べて、単色画像の形成動作と複数色画像の形成動作が種々の比率で切り替えて行われることがあっても、複数の作像装置における各像保持体の帯電を安定して行うことができる。
【0015】
上記発明A2の画像形成装置では、その構成を有しない場合に比べて、複数の作像装置における各像保持体の帯電を精度よく安定して行うことができる。
【0016】
上記発明A3の画像形成装置では、その構成を有しない場合に比べて、複数の作像装置における各像保持体の帯電を精度よく安定して行うことができる。
【0017】
上記発明A4の画像形成装置では、その構成を有しない場合に比べて、作像装置が交換されることがあっても、複数の作像装置における各像保持体の帯電を安定して行うことができる。
【0018】
上記発明A5の画像形成装置では、その構成を有しない場合に比べて、作像装置が交換された後においても、複数の作像装置における各像保持体の帯電を確実に安定して行うことができる。
【0019】
上記発明A6の画像形成装置では、その構成を有しない場合に比べて、像保持体の像保持面の帯電された表面電位が当該表面電位と逆極性の転写用電圧の印加により低下することがなくなり、その後の帯電時に像保持体に流れ込む電流による像保持面の表面劣化が抑制され、複数の作像装置における各像保持体の帯電をより安定して行うことができる。
【0020】
上記発明A7の画像形成装置では、その構成を有しない場合に比べて、複数の作像装置すべてにおける各像保持体の帯電を容易に安定して行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、この発明の実施形態に係る画像形成装置の要部を示す説明図である。
【0022】
この画像形成装置1は、例えばカラープリンタとして構成されるものであり、筐体(図示せず)の内部に、電子写真方式、静電記録方式等を利用して入力画像情報に基づいて乾式の現像剤としてのトナー(着色等された微粉体)で現像されるトナー像を形成する複数の作像装置10と、この各作像装置10で形成されたトナー像を転写させる用紙9に搬送する用紙搬送装置20と、この用紙搬送装置20で搬送されてトナー像が転写された後の用紙9を通過させてトナー像の定着を行う定着装置30が主に設置されている。図中の矢付き一点鎖線は用紙9の主な搬送経路を示す。
【0023】
作像装置10は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(黒:K)の各色のトナー像を個々に形成することができる4つの作像装置(10Y,10M,10C,10K)を適用しており、それらの作像装置10を直列に並べるような状態で配置している。また、この各作像装置(10Y,10M,10C,10K)は、以下に示すようにほぼ共通した構成のものである。
【0024】
各作像装置10は、基本的には、矢印方向(この例では図中に示す時計回りの方向)に回転する感光体ドラム12を備えており、この感光体ドラム12の周囲に、次のような各装置を主に配置した構成になっている。その主な装置とは、感光体ドラム12の表面(像保持面)を所定の電位に帯電させる帯電装置13と、帯電後の感光体ドラム12の表面に画像情報(信号)に基づく光を照射して電位差のある(各色用の)静電潜像を形成する潜像形成装置としての露光装置14と、その潜像に対して各色(Y,M,C,K)のトナーを転移付着させて顕像化するための現像を行う現像装置15(Y,M,C,K)と、そのトナー像を用紙搬送装置20(の用紙搬送ベルト21)により搬送される用紙9に対して転写する転写装置16と、転写後の感光体ドラム12の像保持面を除電する除電装置17と、感光体ドラム12の表面に残留して付着するトナー等の付着物をブレード等で掻きとって除去するドラム用の清掃装置18である。
【0025】
感光体ドラム12は、接地処理される円筒状の基材に有機感光材料からなる光導電性層(感光層)を有する像保持面を形成したものである。帯電装置13は、感光体ドラム12の像保持面に接触して回転するとともに帯電用電圧が印加される帯電ロールを備えたものである。露光装置14は、LEDアレイ、レーザ走査装置等で構成されている。このような露光装置14には、画像形成装置1に装備されているか又は接続される原稿読取装置や、記憶媒体読取装置や、パーソナルコンピュータ(PC)等の機器から入力される画像情報を図示しない画像処理装置で所要の処理を施し、その処理後に得られる各色成分ごとの画像信号がそれぞれ入力される。なお、露光装置14は、各作像装置10に1つずつ独立して配置するものでもよい。
【0026】
現像装置15は、その現像剤収容部に収容されている現像剤(トナー)を回転しながら保持して感光体ドラム12と対向する現像領域に搬送するとともに現像用電圧が印加される現像ロール15aを有している。除電装置17は、例えば、感光体ドラム12の内部空間に設置するLED等から出射される光を樹脂レンズ等の光学素子によって感光体ドラム12の像保持面に屈折させて照射する構成のものが使用されている。
【0027】
各作像装置10における帯電装置12(の帯電ロール)、現像装置15(の現像ロール15a)及び転写装置16(の転写ロール)には、作像時になると、図3等に示すように各電源装置12b,15b,16bから帯電用電圧、現像用電圧、転写用電圧が所定の時期にそれぞれ供給されて印加される。この例では、帯電用電圧及び転写用電圧として直流電圧が印加され、現像用電圧として交流電圧に直流電圧を重畳した電圧が印加される。また、感光体ドラム12と現像装置の現像ロール15aは、作像時になると原則、図示しない回転駆動装置の動力により所定の方向に回転する。
【0028】
用紙搬送装置20は、各作像装置10の感光体ドラム12と転写装置16の間(転写位置)をその各感光体ドラム12の像保持面と接触した状態でそれぞれ通過しながら矢印方向(この例では図中に示す反時計回りの方向)に回転する用紙搬送ベルト21と、この用紙搬送ベルト21を所望の状態に架け回して回転自在に支持する複数の支持ロール22、23と、図示しない給紙装置から1枚ずつ供給される用紙9を用紙搬送ベルト21の外周面に静電的に吸着させる吸着ロール25と、用紙搬送ベルト21の外周面に付着する不要なトナー、紙粉等の付着物を除去するベルト用の清掃装置26とで主に構成されている。
【0029】
用紙搬送ベルト21としては、例えばポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂等の合成樹脂にカーボン等の抵抗調整剤を所定量分散した材料を用いて所定の厚さからなる無端状のベルト形態に成形したものが使用される。支持ロール23は、図示しない回転駆動装置の動力を受けて回転する駆動ロールであり、用紙搬送ベルト21を上記の方向に回転させる。吸着ロール25には、電源装置25b(図3等)から用紙吸着用電圧が用紙9を吸着する時期に印加される。
【0030】
定着装置30は、作像装置10において用紙9に転写されたトナー像を加熱及び加圧することにより定着する方式のものである。この定着装置30としては、例えば、専用の筐体の内部に、所定の方向に回転駆動するとともに表面温度が所定の温度に保持されるように加熱手段によって加熱される加熱回転体と、その加熱回転体の軸方向にほぼ沿うように所定の圧力で接触して従動回転するロール形式、ベルト形式等の加圧回転体とを設置したものが使用される。この定着装置30による定着は、加熱回転体と加圧回転体が接触する接触部に、トナー像が転写された用紙9を導入して通過させることで行われる。
【0031】
図2は、この画像形成装置1における作像装置10の動作について主に制御する制御装置を示すものである。
【0032】
制御装置5は、論理演算処理装置、記憶手段、制御手段等で主に構成されている。この制御装置5は、各作像装置10(Y,M,C,K)における感光体ドラム12を回転させる回転駆動装置の動作を制御する感光体ドラム制御部51、その帯電装置13に帯電用電圧を印加する電源装置の動作を制御する帯電制御部52、露光装置14の動作を制御する露光制御部53、現像装置15の動作を制御する現像制御部54、転写装置16に転写用電圧を印加する電源装置の動作を制御する帯電制御部55、除電装置17の動作を制御する除電制御部56等が接続されている。現像制御部54は、現像ロール15aを回転させる回転駆動装置の動作を制御する駆動制御部54aと、現像ロール15aに現像用電圧(現像バイアス)を印加する電源装置の動作を制御するバイアス制御部54bを有している。
【0033】
また、制御装置5は、図示しない操作表示部、入出力部、各種センサ等の検出手段などにも接続されており、必要な情報の入力や出力(表示を含む)を行う。制御装置5による制御動作は、記憶手段に格納されている各種の制御プログラムやデータに従い、必要な各種の入力情報などを取り入れつつ実行される。ちなみに、この制御装置5は、用紙搬送装置20の各動作(回転動作や、用紙吸着動作など)を制御する用紙搬送制御部、定着装置30の各動作(回転動作、加熱動作など)を制御する定着制御部などを接続したものであってもよい。
【0034】
この画像形成装置1による画像形成動作(以下「プリント動作」とも称する。)は、以下のように行われる。
【0035】
まず、この画像形成装置1では、複数色画像としての前記4色(Y,M,C,K)のトナー像で構成されるフルカラー画像を形成するカラー印字モードと単色画像としての黒色画像を形成するモノクロ(黒色単独)印字モードとに区別してプリント動作が実行される。カラー印字モードとモノクロ印字モードとの選別は、入力される画像情報に組まれる選択指示情報や、画像形成装置1に接続されるPCに表示されるプリンタドライバの表示画面上でユーザが指定する情報等によって行われる。
【0036】
初めに、カラー印字モードにより用紙9の片面に対してフルカラー画像を形成するときの基本的なプリント動作について説明する。
【0037】
制御装置5がカラー印字モードによるプリント動作の開始指令を受けると、制御装置5の制御動作により、図3に示すように、各作像装置10(Y,M,C,K)の感光体ドラム12及び現像ロール15aと用紙搬送装置20の用紙搬送ベルト21とが回転し始めるとともに、各作像装置10(Y,M,C,K)の帯電装置13、現像装置15及び転写装置16に電源装置12b,15b,16bから所定の帯電用電圧、現像用電圧及び転写用電圧がそれぞれ印加され始める。この際、感光体ドラム12と用紙搬送ベルト21は互いにほぼ同じ周速度で回転する。
【0038】
これにより、作像装置10における各帯電装置13が各感光体ドラム12の像保持面を所定の極性及び電位に帯電する。続いて、その帯電した感光体ドラム12の像保持面に対して、露光装置14が画像信号に基づく露光を行うことにより所定の電位差からなる静電潜像を形成する。しかる後、各現像装置15が感光体ドラム12に形成された各静電潜像を所定の極性に帯電しているトナーで現像(例えば反転現像)することによりトナー像として顕像化する。この結果、4つの作像装置10(Y,M,C,K)のすべてにおいて、その各感光体ドラム12上に各色(Y,M,C,K)のトナー像が専用に形成される。
【0039】
一方、このトナー像の作像動作時期に合わせて、所望の寸法、種類等からなる用紙9が図示しない給紙装置から用紙搬送装置20にむけて搬送して供給され、その回転する用紙搬送ベルト21の外周面に対し吸着ロール25の静電的作用により吸着される。しかる後、その用紙9が用紙搬送ベルト21により搬送されて各作像装置10(Y,M,C,K)の転写位置を通過する際に、各作像装置10における感光体ドラム12上のトナー像が転写装置16の静電的作用を受けて用紙9側に順番に重ね合わせられるような状態で転写される。この転写の際、転写装置16には、感光体ドラム12の像保持面の帯電電位の極性(この例ではトナーの帯電極性と同じ)とは逆の極性の転写用電圧が印加される。この転写が終了した後の感光体ドラム12の表面は、除電装置17により除電されるとともに清掃装置18により清掃される。
【0040】
続いて、トナー像が転写された後の用紙9は、用紙搬送ベルト21から剥離された後、定着装置30に搬送されて導入される。定着装置30では、そのトナー像が転写された用紙9を加熱用回転体と加圧用回転体の接触部を通過させる際に加熱及び加圧させることでトナー像のトナーを溶融させて用紙9に定着させる。この定着が終了した後の用紙9は、その片面への画像形成を行うだけの場合には、定着装置30から排出された図示しない排紙部に搬送されて収容される。
【0041】
以上の一連の動作により、用紙9の片面にY,M,C,Kの4色のトナー像で構成されて発色するフルカラー画像が形成され、用紙1枚に対する基本的なカラー印字が終了する。また、複数枚分の連続するカラー印字の指示がある場合には、上記した一連の動作がその指示された枚数分だけ同様に繰り返されることになる。
【0042】
次に、モノクロ印字モードにより用紙9の片面に対して黒色画像を形成するときの基本的なプリント動作について説明する。
【0043】
制御装置5がモノクロ印字モードによるプリント動作の開始指令を受けると、制御装置5の制御動作により、図4に示すように、黒色(K)のトナー像の形成をする作像装置10Kでは、カラー印字モード時と同様に、その感光体ドラム12及び現像ロール15aが回転し始めるとともに、その帯電装置13、現像装置15及び転写装置16に所定の帯電用電圧、現像用電圧及び転写用電圧がそれぞれ印加され始める。
【0044】
一方、Y,M,Cの各色のトナー像の形成をしない作像装置10(Y,M,C)では、図4に示すように、感光体ドラム12を回転させることと、帯電装置13に(モノクロ印字モード用の)帯電用電圧を印加するとともに現像装置15の現像ロール15aに現像用電圧を印加することが行われ、その他の構成部品の動作はなされない。即ち、作像装置10(Y,M,C)における露光装置14による露光や、現像装置15の現像ロール15aの回転や、転写装置16への転写用電圧の印加がいずれも行われず、また除電装置17が作動しない。図4中の符合16dは、各電源装置16bの帯電装置16への転写用電圧の供給を遮断するスイッチ(機能)を概念的に示すものであり、実際には転写制御部55に含まれる機能に該当する。
【0045】
これにより、黒色(K)の作像装置10Kでは、前記したような帯電装置13による感光体ドラム12の帯電、露光装置14による黒色用の静電潜像の形成、現像装置15による現像で黒色トナー像の形成、転写装置16による黒色トナー像の転写が実行される。
【0046】
この際、作像装置10(Y,M,C)では、Y,M,Cの各色のトナー像が形成されない。また、この作像装置10(Y,M,C)では、その各感光体ドラム12が空回転するので、各感光体ドラム12の像保持面が回転する用紙搬送ベルト21と速度差をもって接触することがない。さらに、その各感光体ドラム12の像保持面が帯電されているとともに各現像装置の現像ロール15aに現像用電圧が印加されているので、各感光体ドラム12の保持面に各現像装置15からトナーが移行して付着することがない。しかも、その各転写装置16に転写用電圧が印加されていないので、用紙搬送ベルト21が作像装置10(Y,M,C)の転写位置を通過する際に感光体ドラム12の像保持面の帯電された表面電位に対して、当該表面電位と逆極性の転写用電圧の印加による電位低下の電気的要因がない。
【0047】
次いで、用紙搬送ベルト21により搬送されて各作像装置10(Y,M,C,K)の転写位置を通過する用紙9には、作像装置10(Y,M,C)の転写位置ではトナー像の転写がなされず、黒色の作像装置10Kの転写位置において感光体ドラム12上の黒色トナー像が転写装置16の静電的作用を受けて転写される。この黒色トナー像が転写された用紙9は、定着装置30に搬送されて定着処理された後、排出部に排出される。
【0048】
以上の一連の動作により、用紙9の片面に黒色1色のトナー像で構成されるモノクロ画像が形成され、用紙1枚に対する基本的なモノクロ印字が終了する。また、複数枚分の連続するモノクロ印字の指示がある場合には、上記した一連の動作がその指示された枚数分だけ同様に繰り返されることになる。
【0049】
ここで、図9は、モノクロ印字が繰り返して行われた場合に、4つの作像装置10(Y,M,C,K)の各帯電装置13(Y,M,C,K)に対して同じ帯電用電圧を印加したときにおける各感光体ドラム12の回転量(回転数又は回転時間)と各感光体ドラム12の帯電電位(像保持面の表面電位)とを測定した結果を模式的に示したものである。
【0050】
各感光体ドラム12における帯電電位はいずれも、感光体ドラム12の回転量が増加する(多くなる)につれて次第に増加する(高くなる)傾向を示す。これは、前述したように、感光体ドラム12の像保持面(表層)が清掃装置18との接触(摺擦)や用紙搬送ベルト21との接触により磨耗したり、あるいは、帯電装置13の帯電部材(帯電ロール等)にトナー等が付着して帯電性能が劣化することに起因していると考えられる。また、ここで注目すべきことは、Y,M,Cの3色の作像装置10(Y,M,C)における帯電電位の増加する度合い(上昇幅)が、黒色の作像装置10Kにおける帯電電位の増加する度合いよりも、感光体ドラム12の回転量の増加に伴い次第に低下する傾向にある点である。
【0051】
図10は、カラー印字時及びモノクロ印字時における作像装置10(Y,M,C,K)の各感光体ドラム12の像担持面(膜)の磨耗割合をそれぞれ測定した結果を示すものである。同図aはカラー印字時の結果、同図bはモノクロ印字時の結果である。
【0052】
測定は、新品の感光体ドラム12を装着した状態で、いずれの印字時も所定のサンプル画像の形成を感光体ドラム12の回転数が300000回転数となる分だけそれぞれ連続して行った後に、その各印字後における各感光体ドラム12の表層の膜厚を渦電流式の膜厚測定器により感光体ドラムの100000回転数分の印字終了時ごとに測定することで行った。モノクロ印字時には、前記したように転写用電圧の印加と除電装置18の除電の動作をいずれもOFF状態にしている。磨耗割合は、初期の膜厚から磨耗後の測定した膜厚を減算して得た値を感光体ドラムの回転数で除算した値により示した。カラー印字時には、4色の感光体ドラム12(Y,M,C,K)のいずれもほぼ同じ膜磨耗の割合である。また、モノクロ印字時には、黒色の感光体ドラム12Kの膜磨耗割合がカラー印字時の場合とほぼ同じであるのに対し、Y,M,C色の感光体ドラム12(Y,M,C)の膜磨耗割合がカラー印字時の場合より(約30%)低下していた。
【0053】
以上のことから、カラー印字とモノクロ印字が行われる比率によって、感光体ドラム12の膜磨耗の割合が異なり、このことも一因となって感光体ドラム12の帯電電位が変動していることが推測される。
【0054】
そこで、この画像形成装置1においては、4つの作像装置(Y,M,C,K)における帯電装置13に印加する帯電用電圧について以下に説明するように制御している。
【0055】
まず、図2に示すように、モノクロ印字モードが選択されて単色画像を形成する動作が実行される時と、カラー印字モードが選択されてカラー画像を形成する動作が実行される時に、所定の作像装置10における感光体ドラム12の回転数を個別にそれぞれ計測して累積する感光体ドラム回転数の累積カウンタ6を設けている。この例では、カウント対象の感光体ドラム12を黒色の作像装置10Kにおける感光体ドラムとしている。
【0056】
累積カウント6は、カウント対象の感光体ドラム12を回転駆動するモータの回転時間を計測し、感光ドラム12が1周するために必要な時間で除算することにより得られた情報をモノクロ印字時とカラー印字時とに分けて累積して所定の記憶手段(専用のものでも又は制御装置5や帯電制御部52の記憶手段でもよい)に記憶保持するように構成されている。累積カウント値(情報)としては、モノクロ印字の累積回転数Ekとカラー印字の累積回転数Ecが得られる。また、累積カウンタ6は、制御装置5に接続されており、そのカウント情報を制御装置5側に送信できるようになっている。
【0057】
そして、制御装置5の帯電制御部52において、モノクロ印字モードにおける単色画像の形成時にトナー像を形成しない作像装置10(Y,M,C)の帯電装置13(Y,M,C)に印加する帯電用電圧(Vhc)について、以下のように補正している。
【0058】
すなわち、上記帯電用電圧(Vhc)について、その初期設定値(Vhc0)から、累積カウンタ6で計測されたモノクロ印字時における感光体ドラム12の累積回転数(Ek)に基づいて定める第1補正値(ΔV1)とカラー印字時における感光体ドラム12の累積回転数(Ec)に基づいて定める第2補正値(ΔV2)とを減じて得られる値(=Vhc0−(ΔV1+ΔV2)=Vhc´)に変更する。初期設定値(Vhc0)は、例えば帯電制御部52の記憶手段に予め格納されている。
【0059】
その際、第1補正値(ΔV1)は、モノクロ印字時の感光体ドラム12の累積回転数Ekに、そのモノクロ印字時にトナー像を形成しないY,M,C色の作像装置10における感光体ドラム12の帯電電位の変動量に応じて設定される補正係数αを乗じて得られる値(=Ek×α)としている。また、第2補正値(ΔV2)は、カラー印字時の感光体ドラム12の累積回転数Ecに、そのカラー印字時にY,M,C色の作像装置10における感光体ドラム12の帯電電位の変動量に応じて設定される補正係数βを乗じて得られる値(=Ec×β)としている。
【0060】
また、補正係数α、βについては、次のようにして導き出している。画像形成装置1における作像装置10(Y,M,C)の感光体ドラム12に同じ帯電用電圧を印加した状態で一定量のモノクロ印字動作及びカラー印字動作を別々に実行し、その各印字動作を行ったときの感光体ドラムの初期帯電電位と最終帯電電位との差(変動量)をそれぞれ表面電位測定器で測定し、その帯電電位の変動量を感光体ドラムの回転数で除算した値として求めている。一定量の印字動作は、例えば感光体ドラム12の回転数で特定することができる。その具体例を示すと、感光体ドラムを1万回転させてモノクロ印字又はカラー印字をしたときの帯電電位の変動量が20Vであった場合は、一般にそのときの補正係数は20/10000=0.0002(V/回転数)となる。
【0061】
一方、黒色の作像装置10Kは、モノクロ印字時とカラー印字時の双方においてトナー像の形成を行うため、その作像装置10Kの帯電装置13Kに印加する帯電用電圧(Vhk)については、以下のように補正している。
【0062】
すなわち、その帯電用電圧(Vhk)の初期設定値(Vhk0)から、累積カウンタ6で計測されたモノクロ印字時における感光体ドラム12の累積回転数(Ek)とカラー印字時における感光体ドラム12の累積回転数(Ec)に基づいて定める第3補正値(ΔV3)を減じて得られる値(=Vhk0−(ΔV3)=Vhk´)に変更する。この場合、第3補正値(ΔV3)は、モノクロ印字時の感光体ドラム12の累積回転数Ekとカラー印字時の感光体ドラム12の累積回転数Ecとの合計値(Ek+Ec)に、前記補正係数βを乗じて得られる値(=(Ek+Ec)×β)としている。
【0063】
この帯電用電圧の制御は、例えば、画像形成装置1の電源の投入時、プリント動作の開始時、その終了時等の時期のうちの一部又は全部の時期に実行するように設定される。
【0064】
そして、帯電用電圧の制御は、次のように実行される。
【0065】
初めに、Y,M,C色の作像装置10(Y,M,C)の帯電装置13に印加する帯電用電圧(Vhc)の制御について説明する。まず、上記帯電用電圧の制御を実行すべき時期が到来すると、制御装置5と帯電制御部52において、図5に示すように、過去のモノクロ印字時における感光体ドラム12の累積回転数(Ek)と過去のカラー印字時における感光体ドラム12の累積回転数(Ec)が累積カウンタ6に関係する記憶手段からそれぞれ読み出される(ステップ10:S10)。
【0066】
続いて、モノクロ印字時に関する第1補正値(ΔV1)とカラー印字時に関する第2補正値(ΔV2)とが、上記各累積回転数Ek、Ecとモノクロ印字時の帯電電位の変動量に応じて設定される補正係数α及びカラー印字時の帯電電位の変動量に応じて設定される補正係数βとを用いて下記の式によりそれぞれ算出される(S11〜S12)。
ΔV1=Ek×α、 ΔV2=Ec×β
【0067】
しかる後、帯電用電圧(Vhc)の補正値(Vhc´)が、その初期設定値(Vhk0)と上記第1補正値(ΔV1)及び第2補正値(ΔV2)とを用いて下記の式により算出される(S13)。
Vhc´=Vhc0−(ΔV1+ΔV2)
【0068】
最後に、帯電用電圧(Vhc)を上記補正値(Vhc´)に置き換えて変更する(S14)。これにより、その後に実行されるモノクロ印字及びカラー印字では作像装置10(Y,M,C)の帯電装置13に帯電用電圧として補正値(Vhc´)が印加される。
【0069】
一方、K色の作像装置10Kの帯電装置13に印加する帯電用電圧(Vhk)の制御について説明する。
【0070】
この場合も、前記帯電用電圧(Vhc)の制御の場合と同様に、帯電用電圧の制御を実行すべき時期が到来すると、制御装置5と帯電制御部52において、図6に示すように、過去のモノクロ印字時における感光体ドラム12の累積回転数(Ek)と過去のカラー印字時における感光体ドラム12の累積回転数(Ec)が累積カウンタ6に関係する記憶手段からそれぞれ読み出される(S20)。実際、このステップは、帯電用電圧(Vhc)の制御動作と共通の動作として実行される。
【0071】
続いて、モノクロ印字時及びカラー印字時に関する共通した第3補正値(ΔV3)が、上記各累積回転数Ek、Ecとカラー印字時の帯電電位の変動量に応じて設定される前記補正係数βとを用いて下記の式によりそれぞれ算出される(S21)。
ΔV3=(Ek+Ec)×β
【0072】
しかる後、帯電用電圧(Vhk)の補正値(Vhk´)が、その初期設定値(Vhk0)と上記第3補正値(ΔV3)とを用いて下記の式により算出される(S22)。
Vhk´=Vhk0−(ΔV3)
【0073】
最後に、帯電用電圧(Vhk)を上記補正値(Vhk´)に置き換えて変更する(S24)。これにより、その後に実行されるモノクロ印字及びカラー印字では、作像装置10Kの帯電装置13に帯電用電圧として補正値(Vhk´)が印加される。
【0074】
例えば、上記補正係数α及びβが「α=0.00006(V/回転数)、β=0.0002(V/回転数)」であり、モノクロ印字の累積回転数Ekとカラー印字の累積回転数Ecが「Ek=100000、Ec=50000」である場合、帯電用電圧(Vhc、Vhk)は以下のように変更される。
【0075】
Y,M,C色の帯電装置13に印加する帯電用電圧(Vhc)に関しては、ΔV1=Ek×α=100000×0.00006=6(V)、ΔV2=Ec×β=50000×0.0002=10(V)となるので、その初期設定値(Vhc0)から第1補正値ΔV1と第2補正値ΔV2を減算したもの(=Vhc0−(ΔV1+ΔV2)=Vhc0−16)が、その補正値(Vhc´)となる。
【0076】
一方、K色の帯電装置13に印加する帯電用電圧(Vhk)に関しては、ΔV3=(Ek+Ec)×β=(100000+50000)×0.0002=30(V)となるので、その初期設定値(Vhk0)から第3補正値ΔV3を減算したもの(=Vhk0−ΔV3=Vhc0−30)が、その補正値(Vhk´)となる。
【0077】
この具体例の場合、補正係数α及びβについては、帯電用電圧として−900Vを印加した状態でK色の感光体ドラム12と(Y,M,C)色の感光体ドラム12を1万回転させてモノクロ印字とカラー印字を個々に行い、このときの各帯電電位の変動量がそれぞれモノクロ印字で6V、カラー印字で20Vであった結果から前記した算出式に基づいて導出した(α=6/100000、β=20/50000)。
【0078】
図7は、モノクロ印字とカラー印字が混在して行われる場合において、上記したような帯電用電圧の制御を行ったときのY,M,C色用の帯電用電圧(Vhc)と帯電電位の各推移状態を模式的に示したものである。つまり、帯電用電圧(Vhc)の推移状態については、各モノクロ印字と各カラー印字がそれぞれ終了した時点で上記の制御をその都度行った場合を想定し、各印字が開始されるときに印加される帯電用電圧とその印字が終了した時点で補正される帯電用電圧を直線で結んで表している。モノクロ印字がなされたときの補正量(変更度合い)は、図7に示すように、カラー印字がなされたときの補正量よりも相対的に少なくなる関係にある。このように、この帯電用電圧の制御では、特にY,M,C色用の帯電用電圧(Vhc)の帯電用電圧が、モノクロ印字時の動作量(感光体ドラムの累積回転数にほぼ相当する)とカラー印字時の動作量(同)とにそれぞれ基づいて適切に制御される。
【0079】
[変形例]
なお、上記実施形態においては、図1や図8に示すように、各作像装置10における感光体ドラム12、帯電装置13、現像装置15、除電装置17及び清掃装置18を一体化したプロセスカートリッジ7(Y,M,C,K)とし、そのプロセスカートリッジ7を画像形成装置1の本体(不図示)に対して着脱可能に装着する交換部品として構成することができる。
【0080】
この場合は、その各プロセスカートリッジ7(Y,M,C,K)に、累積カウンタ6で計測されるモノクロ印字時及びカラー印字時における感光体ドラム12の各累積回転数(Ek,Ec)を個別に記憶して保持するカートリッジメモリ(記憶保持可能なRAM:ランダムアクセスメモリなど)72を取り付ける。一方、画像形成装置1の本体側には、そのプロセスカートリッジの装着部に上記カートリッジメモリ72とプロセスカートリッジ装着時に接続するカートリッジメモリの読み書き装置75を設ける。読み書き装置75は、図2に示すように制御装置5と接続され、上記累積回転数を含む所要の情報を送受信できるようになっている。
【0081】
そして、このように構成した場合には、累積カウンタ6で計測される各累積回転数(Ek,Ec)が、制御装置5又は帯電制御部52の記録手段に書き込まれることに加えて、各プロセスカートリッジ7(Y,M,C,K)のカートリッジメモリ72にもそれぞれ書き込まれて記憶保持される。また、上記した帯電用電圧の制御に際しては、制御装置5と帯電制御部52がカートリッジメモリ72に記憶されている各累積回転数(Ek,Ec)を読み出して使用することになる。
【0082】
これにより、例えば、累積カウンタ6をY,M,C,K色の各感光体ドラム12に対して個別に設置し、その各感光体ドラム12(Y,M,C,K)の累積回転数をそれぞれ計測するとともにその各累積回転数の情報をカートリッジメモリ72に記憶保持すれば、各プロセスカートリッジ7(Y,M,C,K)の一部が新品のカートリッジ又は使いかけの中古のカートリッジに交換されることがあっても、その累積回転数がカートリッジ7ごとに管理されるので、その交換されたプロセスカートリッジ7に対しては他の交換されないカートリッジ7とは異なる(独自の)累積回転数に基づいて帯電用電圧の制御を行うことができる。
【0083】
また、上記構成の場合には、各プロセスカートリッジ7(Y,M,C,K)が新たなカートリッジ7に交換される際に、制御装置5又は帯電制御部52の記録手段に記憶されている交換されたプロセスカートリッジ7における感光体ドラム12の累積回転数をゼロに戻すようにする。
【0084】
これにより、交換されたプロセスカートリッジ7の感光体ドラム12の累積回転数が正しく認識されて、その後の帯電用電圧の制御が実行されることになる。ちなみに、新旧のプロセスカートリッジ7の交換時の識別については、例えば、カートリッジメモリ72に固有の識別情報を格納しておき、その交換作業時に識別情報の異同を照合することで行うことができる。また、プロセスカートリッジ7は、少なくとも感光体ドラム12を搭載していればよく、他の搭載する部品については任意に選択することができる。
【0085】
また、上記実施形態においては、第1補正値(ΔV1)と第2補正値(ΔV2)を、各累積回転数Ek、Ecと対応する補正係数α、βとから算出することで得ていたが、予め所定の累積回転数Ek、Ec毎に対する第1補正値(ΔV10)及び第2補正値(ΔV20)をそれぞれ設定しておき、その累積回転数Ek、Ec毎に達した時点で第1補正値(ΔV10)及び第2補正値(ΔV20)を照合して採用するように構成することも可能である。
【0086】
さらに、上記実施形態においては、モノクロ印字時及びカラー印字時における感光体ドラム12の各累積回転数を計測したが、そのときの感光体ドラム12の回転時間を累積して計測するようにしてもよい。
【0087】
また、上記実施形態においては、モノクロ印字時にはY,M,C色の転写装置16に転写用電圧を印加しないように構成していたが、それに代えて、転写用電圧よりも低い値の低電圧を印加するように構成してもよい。この際、低電圧とは、通常の転写用電圧を印加したときにおける感光体ドラム12の像保持面の電位が低下し、その表面電位が低下した状態の感光体ドラム12が帯電装置13で帯電される際に像保持面から帯電装置13に流れ込む電流よりも十分少なくなる像保持面の表面電位低下の状態に保持できる電圧であればよく、例えば、通常の転写時に印加する電圧値の0.05〜0.5倍程度の値である。さらに、例えば、用紙搬送ベルト21の接触による感光体ドラム12の像保持面の膜磨耗が発生するおそれが少ない場合は、モノクロ印字に、Y,M,C色の転写装置16に対しても通常の転写用電圧を印加しても構わない。
【0088】
この他、画像形成装置1については、作像装置で形成されるトナー像を一時的に保持して搬送するとともに最終的にそのトナー像を用紙等に二次転写するベルト形態等の中間転写体を用いた形式の画像形成装置を適用することもできる。また、画像形成装置1は、除電装置17を使用しない形式のものであっても構わない。さらに、作像装置10は、少なくとも2つ以上有していればよい。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】実施形態に係る画像形成装置の要部を示す説明図である。
【図2】図1の画像形成装置における主な制御系の構成を示すブロック図である。
【図3】カラー印字時における主な動作状態を示す説明図である。
【図4】モノクロ印字時における主な動作状態を示す説明図である。
【図5】Y,M,C色の帯電用電圧の制御動作を示すフローチャートである。
【図6】K色の帯電用電圧の制御動作を示すフローチャートである。
【図7】Y,M,C色の帯電用電圧の制御による推移状態を模式的に示す説明図である。
【図8】プロセスカートリッジの構成を示す説明図である。
【図9】一定の帯電用電圧を印加したときにおける各感光体ドラムの回転数と各色(Y,M,C,K)の感光体ドラムの帯電電位との関係を測定した結果を模式的に示したグラフ図である。
【図10】カラー印字時及びモノクロ印字時における各色(Y,M,C,K)用の感光体ドラムの磨耗割合をそれぞれ測定した結果を示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0090】
1…画像形成装置、5…制御装置(制御手段の一部)、6…感光体ドラム回転数の累積カウンタ(計測手段)、7…プロセスカートリッジ(交換部品)、10…作像装置、12…感光体ドラム(像保持体)、13…帯電装置、15…現像装置、16…転写装置、21…用紙搬送ベルト(用紙搬送体)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像保持面を有するとともに回転する像保持体と、帯電用電圧が印加されて前記像保持体の像保持面を帯電する帯電装置と、前記像保持体の帯電された像保持面に形成される静電潜像を所定の色の現像剤で現像して現像剤像とする現像装置と、転写用電圧が印加されて前記現像剤像を転写する転写装置とを備えた複数の作像装置と、
前記各作像装置の前記転写装置による転写が行われる転写位置で前記像保持体の像保持面にそれぞれ接触して順次通過する用紙搬送体又は中間転写体と、
前記複数の作像装置のうちの1つの作像装置で形成される1色の現像剤像から構成される単色画像を形成する動作の実行時と、前記複数の作像装置で形成される各色の現像剤像を組み合わせて構成される複数色画像を形成する動作の実行時に、前記像保持体の回転量を個別に計測して累積する計測手段と、
前記単色画像の形成時に現像剤像を形成しない前記作像装置の前記帯電装置に印加する帯電用電圧について、その初期設定値から、前記計測手段で計測された前記単色画像形成時における前記像保持体の回転量の累積値に基づいて定められる第1補正値と前記計測手段で計測された前記複数色画像形成時における前記像保持体の回転量の累積値に基づいて定められる第2補正値とから得られる値に変更する制御手段と
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第1補正値が、単色画像の形成時に現像剤像を形成しない前記作像装置における前記像保持体の回転量の累積値と、当該単色画像の形成時における当該像保持体の帯電電位の変動量に応じて設定される補正係数とから得られる値であり、
前記第2補正値が、複数色画像の形成時に前記現像剤像を形成しない前記作像装置における前記像保持体の回転量の累積値と、当該複数色画像の形成時における当該像保持体の帯電電位の変動量に応じて設定される補正係数とから得られる値である請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記像保持体の回転量を、回転数又は回転時間から得る請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記各作像装置における少なくとも前記像保持体を装置本体に対し着脱可能に装着する交換部品として構成し、
かつ、前記各交換部品に、前記計測手段で計測される単色画像形成時及び複数色画像形成時における像保持体の各回転量の累積値を個別に記憶して保持する記憶手段を取り付けるとともに、前記制御手段が前記記憶手段に記憶されている当該各回転量の累積値を読み出して使用する請求項1〜3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記各作像装置における少なくとも前記像保持体を装置本体に対し着脱可能に装着する交換部品として構成するとともに、その各交換部品の像保持体ごとの回転量を前記計測手段で個別に計測して累積し、
かつ、前記各交換部品が新たな交換部品に交換される際に、前記記憶手段に記憶されている当該交換された交換部品における像保持体の回転量の累積値をゼロに戻す請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記単色画像の形成時に、現像剤像を形成しない前記作像装置の前記転写装置に転写用電圧を印加しないか又は転写用電圧よりも低い低電圧を印加する請求項1〜5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記単色画像の形成時に現像剤像を形成する前記作像装置の前記帯電装置に印加する帯電用電圧について、その初期設定値から、前記計測手段で計測された前記単色画像形成時における前記像保持体の回転量の累積値と前記複数色画像形成時における前記像保持体の回転量の累積値を合計した値に基づいて定められる補正値を減じて得られる値に変更する請求項1〜6のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−222809(P2009−222809A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−64750(P2008−64750)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】