説明

画像形成装置

【課題】短期間に大量枚数をプリントする画像形成ジョブが繰り返し実行されても、タッキングが発生し難い画像形成装置を提供する。
【解決手段】プリンタ部2と、これの筐体上部の一部をなし定着後の記録シートを積載する排紙トレイ2aと、排紙トレイ2aの外縁の隣接する2辺から立設する両側壁の上に配された画像読取部8とを備える画像形成装置であって、画像形成ジョブが実行されて、その最後の記録シートが排紙トレイ2a上に排出された後に、側壁および側壁のなすコーナー部21を冷却する冷却ユニット19を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆる胴内排紙型の画像形成装置に関し、特に、排紙トレイ上に積み重なった記録シートにおいて、一の記録シート上のトナーが他の記録シートに付着するのを防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタとして、記録シートの表面にトナー像を形成し、これを加熱・加圧して定着させる電子写真方式の画像形成装置が広く使用されている。
このような画像形成装置においては、記録シートは、定着により160℃程度まで加熱されるので、そのまま多数枚の記録シートが排紙トレイ上に排出されて積載されると、内部に熱が蓄積されトナーが凝固せず、その面に重なっている記録シートに付着する、いわゆるタッキングが発生することがある。
【0003】
特に、近年では、設置場所の省スペース化のため、画像形成部の筺体の上面の一部を排紙トレイとして利用し、さらにその上方に画像読取部を配設する胴内排紙型の画像形成装置が普及しつつあるが、このような構成においては、排紙トレイの側方に画像読取部を保持するための側壁が形成されると共に排紙トレイの上方が画像読取部の筺体で覆われることになるため、空気が滞留して十分な放熱効果が得られない。そのため、排紙トレイに積載された記録シートの温度が十分に下がらず、タッキングがより生じやすいという問題がある。
【0004】
そのため、例えば、特許文献1に示す従来の胴内排紙型の画像形成装置では、図9に示すように、定着部1005の下流において、排出口から排出途中に記録シートに風を吹き付けて冷却する冷却装置1019を設け、記録シートが排紙トレイに排出される途中で温度を下げるようにしている。
この画像形成装置1000の冷却装置1019には、3つのファン1019a,1019bおよび1019cが設けられており、排出される記録シートサイズに応じて、記録紙の上面にのみ風を吹き下ろすように、駆動するファンの個数を切り替えている。
【0005】
このように、記録シートのサイズ毎に、風を吹きつける範囲を変更して、通過する記録シートの上面のみに送風するのは、排紙トレイ上に記録シートの端を揃えて積載させ、その整合性をよくするためである。
すなわち、排出中の記録シートの外側に風を吹き下ろすと、その風が排紙トレイの上面で跳ね返って記録シートを持上げる気流が生じるため、記録シートの状態が不安定となり、排紙トレイ上への落下位置にバラツキが生じて整合性が悪くなるためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−134484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1の画像形成装置の構成であっても、多量の枚数のプリントジョブが、短期間に繰り返し実行されると、次第にタッキングが発生する場合があることが判明した。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、胴内排紙型の画像形成装置において、たとえ短期間に多量枚数のプリントジョブが繰り返し実行されても、排出された記録シートの整合性を確保しつつ、タッキングが発生しにくいようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る画像形成装置は、画像形成部と、これの筐体上部の一部をなし定着後の記録シートを積載する排紙トレイと、当該排紙トレイの外縁の隣接する2辺から立設する側壁の上に配された画像読取部とを備える画像形成装置であって、画像形成ジョブが実行されて、その最後の記録シートが前記排紙トレイ上に排出された後に、前記2辺の側壁のなすコーナー部を冷却するコーナー冷却手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記のように記録シートが前記排紙トレイ上に排出された後に、コーナー部を冷却するように構成すれば、排出中に記録シートを持ち上げる気流が生じずに、記録シートが不安定になりにくくなるため、整合性を向上する共に、コーナー部に滞留した高温の空気を機外に追い出し、排紙トレイ周辺の雰囲気温度を低下させて記録シートの放熱を促進させることで、タッキングを防止することができる。
【0010】
また、前記コーナー冷却手段は、排出中の記録シートの冷却手段も兼用しており、ファン装置と、前記ファン装置からの送風方向を、排出口から排出される記録シートに対し当該シート面のほぼ直上から送風する第1の方向と、前記コーナー部方向に送風する第2の方向とに切り換える風向切換手段と、画像形成ジョブを実行中であって記録シートが排出されている間は、前記送風方向を第1の方向に、画像形成ジョブが終了し最後の記録シートの前記排紙トレイへの排出が完了した後は、前記送風方向を第2方向に切り換えるよう前記風向切換手段を制御する制御手段とを備え、もしくは、前記コーナー冷却手段は、排出中の記録シートの冷却手段も兼用しており、ファン装置と、前記ファン装置を、排出口から排紙トレイに排出される記録シートの上方に位置する第1ポジションと、前記コーナー部の上方に位置する第2ポジションとの間で移動させる移動手段と、画像形成ジョブを実行中であって記録シートが排出されている間は、前記ファン装置の位置を第1ポジションに位置させ、画像形成ジョブが終了し最後の記録シートの前記排紙トレイへの排出が完了した後は、前記ファン装置の位置を前記第2ポジションに移動させるよう前記移動手段を制御する制御手段とを備えることが望ましい。
【0011】
これにより、排出中の記録シートを冷却するファン装置を、記録シートを排出後にはコーナー冷却手段として利用することができ、大変効率的である。
また、前記コーナー冷却手段は、コーナー部の直上に配されたファン装置と、画像形成ジョブが終了し最後の記録シートの前記排紙トレイへの排出が完了した後に、前記ファン装置を駆動させる制御手段とからなるとしてもよい。
【0012】
これにより、前記ファン装置を駆動させることにより、容易にコーナー部を冷却することができる。
また、前記コーナー部の温度を指標する指標値を取得する指標値取得手段と、前記指標値が所定の値を越えていない場合には、前記コーナー冷却手段によるコーナー部の冷却を禁止する禁止手段とを備えるとしてもよい。
【0013】
これにより、タッキングが発生し易い条件のときのみコーナー部を冷却することができ、無駄な電力消費を回避できる。
ここで、前記コーナー部の温度を検出する温度検出手段を備え、前記指標値取得手段は、前記温度検出手段の出力信号を前記指標値として取得するとすれば、上記タッキングが発生やすい条件であるか否かを的確に判断できる。
【0014】
また、ここで、画像形成ジョブの実行に際して、連続して画像形成された記録シートの枚数をカウントするカウント手段を備え、前記指標値取得手段は、前記カウント手段によりカウントされた枚数を前記指標値として取得するとしてもよい。
通常、画像形成装置は、カウント手段を備えており、これを流用することにより、上記タッキングが発生やすい条件であるか否かの判断を行うことができる。
【0015】
さらに、前記制御手段は、前記コーナー部を冷却中に、次の画像形成ジョブが実行されようとした場合、当該画像形成ジョブの実行に先んじて、前記ファン装置からの送風方向を第1方向に変更させるか、もしくは、前記ファン装置の位置を第1ポジションに移動させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係る複写機の概略構成を示す一部切り欠き斜視図である。
【図2】(a)は、本発明の実施の形態の冷却ユニットの部分断面斜視図であり、(b)は、本発明の実施の形態の冷却ユニットの風向を変更した状態を示す部分断面斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る冷却ユニットの風向を変更した状態の風の流れを示す一部切り欠き斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る排紙トレイの温度分布を模式的に示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る制御部の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る制御部で実行されるタッキング防止処理の制御内容を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態に係る複写機の第1の変形例を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る複写機の第2の変形例を示す図である。
【図9】従来の画像形成装置における冷却装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る画像形成装置の実施の形態を、デジタル式複写機に適用した場合を例にして説明する。
図1は、当該デジタル式複写機(以下、単に「複写機」と言う。)1の部分断面斜視図である。
同図に示すように、複写機1は、プリンタ部2の上方に画像読取部8を設けており、プリンタ部2と画像読取部8の間のスペースを排紙トレイ2aとして利用する、いわゆる胴内排紙型の複写機である。
【0018】
画像読取部8は、光源と折り返しミラーを保持するスキャナ部(不図示)などを備え、当該折り返しミラーにより反射された原稿画像を、光学レンズを介してCCDセンサ(不図示)に受光させて、画像読取動作を実行する公知の構成を有する。
この画像読取部8の前面(Y方向)には、液晶ディスプレイにユーザに対する情報を表示すると共に、テンキーなどによってユーザの指示を受け付ける操作パネル73が設けられている。
【0019】
また、画像読取部8の筐体8aの下面の所定位置には、温度センサ8bが設けられている。
この温度センサ8bは、排紙トレイ2aの平面視における外縁の4辺のうち、奥側とシート排出口21a側の2辺からそれぞれ立設してなる側壁23および側壁24とが交わる部位(以下、「コーナー部21」という。)の上方に設けられている。
【0020】
なお、画像読取部8の筐体8aの上部には、原稿を載置するプラテンガラス8cが配され、このプラテンガラス8cを覆うように原稿押さえ板9が上下方向に開閉自在に設けられている。
プリンタ部2は、電子写真式のものであって、感光体ドラムの露光、現像、一次転写および二次転写を行う画像形成部(不図示)、および記録シートを加熱・加圧して未定着トナー像を定着する定着部5などを有し、制御部60(図5参照)による制御を受けて画像形成に関わる一連の動作を実施するものである。
【0021】
プリンタ部2は、画像読取部8から出力された画像データに基づき記録シートに画像を形成し、筐体上面に形成された排紙トレイ2aに排紙する。
なお、排紙トレイ2aは、その下方に設けられた画像形成部(不図示)を保護するプリンタ部1の筐体を兼ねており、この排紙トレイ2aの下部には、当該トレイ上の記録シートの有無を検出するための排紙トレイセンサ22が設けられている。
【0022】
この排紙トレイセンサ22には、たとえば反射式の光電センサが配設されている。
もっとも、他の適当なセンサ、例えば、排紙トレイ2aの載置面より上方に突出させたレバー上に記録シートが載置されると、当該レバーが揺動して後退し、これにより信号が発生するように構成されたアクチュエータ式のセンサや、場合によっては感度の高い圧電センサを用いても構わない。
【0023】
また、プリンタ部2の記録シート排出口21aの上部には冷却ユニット19が設けられており、排出途中の記録シート及び排紙トレイ2aを冷却し、タッキングの発生を防止するようになっている。
図2(a)は、当該冷却ユニット19の部分断面斜視図である。
同図に示すように冷却ユニット19は、冷却ファン101aおよび101bと、これらを支持する機枠102と、複数のルーバー103と、各ルーバー103に連結された連動バー104と、連動バー104をY軸方向に移動させるルーバー駆動部105などからなる。
【0024】
冷却ファン101aおよび101bは、これらに内蔵されているモータ(不図示)によって回転駆動されるプロペラファンであって、直下に送風したときにその直接の送風領域のY−Y’方向における幅が、本機で使用される最小の記録シートの排紙方向と直交方向における幅(本実施の形態では、A4サイズを縦方向に排出したときの横幅)以内となるようにその取付位置とファンのサイズが決定されている。
【0025】
ルーバー103は、冷却ファン101aおよび101bの吹出し口の直下に設けられており、X軸方向における両側面から軸103aが突出しており、さらに、X方向の側面からピン103bが突出している。
各ルーバー103の軸103aは、機枠102の側面に軸支されると共に、各ルーバー103のピン103bは、連動バー104に設けられた穴104aに回動自在に挿入されている。
【0026】
連動バー104は、Y軸方向に延びる棒状の部材であって、Y方向の端部がルーバー駆動部105のロッド105aに接合されている。
ルーバー駆動部105は、ソレノイド型アクチュエータであって、制御部60の指示にもとづいて電源がON・OFFされることによって、ロッド105aをY軸方向に駆動するものである。
【0027】
ここでは、電源ON時に軸芯105aをY’方向に移動させ、電源OFF時にロッド105aをY方向に移動させるものとする。
(冷却ユニット19の動作)
ルーバー駆動部105の電源がOFFされているとき、図2(a)に示すように、ルーバー駆動部105は、鉛直方向に起立した状態となっている。
【0028】
ルーバー駆動部105の電源がONされると、図2(b)に示すように、ルーバー駆動部105のロッド105aがY方向にスライドし、連動バー104もY方向に移動するので、ピン103bを介してルーバー103は、軸103aを中心に時計回りに回動する。
これにより、冷却ファン101aおよび101bから吹出した風は、Y’方向に風向が変更される。
【0029】
そして、この風は、図3に示すように、コーナー部21の下方に当たり、その後、プリンタ部2の筐体の一部を構成する奥側(Y’方向)の壁部23に沿って、X方向へと流れる。
このとき、コーナー部21に滞留している高温の空気も機外に追い出すことができ、さらに、コーナー部21および壁部23も冷却することができる。
(コーナー部21を冷却する理由について)
従来のように、排紙トレイ2aに排紙中の記録シートに風を直上から吹き降ろすだけの冷却を行った場合、一度に大量の枚数をプリントするようなプリントジョブが、短期間に繰り返し実行されると、最初のうちはタッキングが生じないが、ある程度プリントジョブが繰り返し実行された後において、次第にタッキングが発生し易くなるという現象が生じる。
【0030】
そこで、発明者らは、記録シートが排紙トレイ2aに積載されている状態においても、記録シートに直上から風を吹き付けて、タッキングの発生を防止しようとした。
しかしながら、この方法では、タッキングの発生を十分に防止できなかった。
これは、記録シートに直上から風を吹き付けても、加熱された空気が滞留している場所があり、高温の空気を追い出せないためだと考えられる。
【0031】
発明者らは、タッキングの発生を防止するためには、滞留した高温の空気を機外に追い出すことが重要であると考えた。
そこで、現状の排紙トレイ2aにおいて、高温の空気が停滞している場所を把握するために、排紙トレイ2a全体を均一な温度に加温した後、所定時間放置したときの排紙トレイ2aの温度分布を測定した。
【0032】
すると、図4に示すように、コーナー部21が最も温度が高く、そこから距離が離れるにつれ、温度が低下することが判明した。
このようにコーナー部21の温度が最も高くなっているのは、コーナー部21が、構造的に対流の滞り易い場所であるからと考えられる。
そこで、本実施の形態におけるタッキング防止処理は、一例のプリントジョブが終了して全ての記録シートが排紙トレイ2a上に排出された後に、ルーバー103の向きを変えてコーナー部21を優先的に冷却するようにしている(図3参照)。
【0033】
コーナー部21に当たった風は、そのまま奥側の側壁23に沿ってX方向に流れるため、コーナー部21に滞留した高温の空気を機外に追い出すことができ、また、コーナー部21や側壁23の熱を奪うことによって、排紙トレイ2aの温度も低下するので、記録シートの放熱を促進してタッキングを効果的に防止できると共に、当該方向への送風は、すべての記録シートが載置された後に実行されるため、当該記録シートの整合性にほとんど影響を与えない。
(制御部)
図5は、プリンタ1の制御部60の構成を示すブロック図である。
【0034】
同図に示すように、制御部60は、主な構成要素として、CPU61、インターフェース(I/F)部63、RAM64、ROM65、EEPROM66、を備えている。
CPU(Central Processing Unit)61は、ROM65から必要なプログラムを読み出して、タイミングを計りながら各種動作を統一的に制御し、処理動作を円滑に実行させる。
【0035】
さらに、本実施の形態では、CPU61は、コーナー部21を冷却して排紙トレイ2aの温度を低下させて、次のプリントジョブにおけるタッキングの発生を防止するタッキング防止処理を実行する。
インターフェース部63は、CPU61とLAN等のネットワークとを接続するためのLANカード、LANボード等であり、LAN等を介して、クライアント端末から送信されてくるプリントジョブを受信してCPU61へ送る。
【0036】
RAM(Random Access Memory)64は、揮発性のメモリであって、CPU61におけるプログラム実行時のワークエリアとなる。
ROM(Read Only Memory)65には、例えば、プリンタ部2におけるプリント処理に関するプログラム、画像安定化処理に関するプログラムおよびタッキング防止処理に関するプログラム等、各種プログラムが格納されている。
【0037】
EEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)66は、不揮発性のメモリであって、CPU61におけるプログラム実行時のデータ保存エリアとなる。
(タッキング防止処理)
本実施の形態のプリンタ1では、排紙トレイ2a上に排紙された記録シートのタッキングを防止するタッキング防止処理を実行する。
【0038】
以下、このタッキング防止処理について説明する。
図5は、CPU61で実行されるタッキング防止処理の制御内容を示すフローチャートである。
まず、CPU61は、プリントが開始されなければ(ステップS100:NO)、何も行わずに当該処理を終了する。
【0039】
一方、プリントジョブが受け付けられてプリントが開始されると(ステップS100:YES)、冷却ユニット19の冷却ファン101aおよび冷却ファン101bを起動する(ステップS101)。
このとき、冷却ユニット19のルーバー103の姿勢は、初期状態、即ち、鉛直方向に起立した状態となっており、風が真下に吹きつけられる。
【0040】
これにより、記録シートの落下位置の安定化を図りつつ記録シートを冷却することができる。
次に、実行されたプリントジョブにおける最後の記録シートが排紙トレイ2a上に排出されるまで待機し(ステップS102:NO)、この最後の記録シートが排紙トレイ2a上に排出されたとき(ステップS102:YES)、温度センサ8bの値が、タッキングが発生し易くなる温度閾値T1℃(例えば、50
℃程度)以上であるか否かを判断する(ステップS103)。
【0041】
なお、プリントジョブの最後の記録シートであるか否かの判断は、例えばプリント枚数をカウントして、その枚数が受付けたプリントジョブの枚数に達しているか否かで判断することができる。このプリントジョブの枚数は、コピーの場合には、操作パネル73からの入力されたコピー部数(初期値は1枚)により取得でき、また、他の端末からネットワークを介してプリントジョブを受付けた場合には、そのデータのヘッダ情報を参照して取得することができる。
【0042】
記録シートが排紙トレイ2a上に排出されたか否かは、例えば定着部5から排紙口8cに至るまでの排紙経路上に設けられているジャム検出用の通紙センサ(不図示)により、記録シートの先端が検出されてから、あらかじめ設定された所定の時間(例えば、1秒)経過したときに、「排紙トレイ2a上に排出された」と判定することができる。
そして、温度センサ8bの値が、閾値T1℃以上であって(ステップS103:YES)、次のプリントジョブが受け付けられていない場合には(ステップS104:NO)、ルーバー駆動部105の電源をONして、ルーバー103を傾け、コーナー部21に風を吹きつけて(ステップS105)、EEPROM66に格納されているフラグKの値(初期値0)を1にする(ステップS106)。
【0043】
このフラグKは、ルーバー103の姿勢がどのようになっているのかを示すものであり、このKの値が0の場合は、ルーバー103が鉛直方向に起立していることを示し、1の場合は、上述のように、コーナー部21の方向に傾いていることを示している。
続いて、温度センサ8bの値が、閾値T1℃未満である場合であるか否かを判断し、閾値T1℃未満でなければ(ステップS107:NO)、依然としてタッキングが発生し易い条件となっているため、次のプリントジョブが受け付けられているかどうかを判定するS104に戻り、コーナー部21の冷却を継続する。
【0044】
一方、温度センサ8bの値が、閾値T1℃未満であれば(ステップS107:YES)、タッキングが発生しにくい条件となっているため、ルーバー駆動部105の電源をOFFして、ルーバー103を初期の状態、即ち、鉛直方向に起立させて(ステップS108)、フラグKの値を0に戻し(ステップS109)、冷却ファン101aおよび101bを停止させて(ステップS110)、当該処理を終了する。
【0045】
また、温度センサ8bの値が、閾値T1℃以上である場合であるか否かを判断するステップS103において、温度センサ8bの値が、閾値T1℃以上でなければ、排紙トレイ2aの温度が低く、タッキングが発生しにくい条件となっているので、冷却ファン101aおよび101bを停止させるステップS110以降のステップに進む。
そして、次のプリントジョブが受け付けられているか否かを判断するステップS104において、次のプリントジョブが受け付けられている場合には、フラグKの値を確認し、このフラグKの値が1であれば(ステップS111:YES)、冷却ユニット19のルーバー103の姿勢を初期状態、即ち、鉛直方向に起立する状態に戻し(ステップS112)、また、フラグKの値が1でなければ(ステップS111:NO)、このステップS112の実行をパスして、次ぎのステップに進む。
【0046】
続いて、排紙トレイ2a上に記録シートが残っていれば(ステップS113:YES)、記録シートが排紙トレイ2a上に残っていることを、前のプリントジョブを実行したユーザのパソコンの画面に通知し(ステップS114)、次のプリントジョブを実行して(ステップS115)、実行されたプリントジョブにおける最後の記録シートが排紙トレイ2a上に排出されたか否かを判定するステップS102以降に進む。
【0047】
また、排紙トレイ2a上に記録シートが残っていなければ(ステップS113:NO)、次のプリントジョブを実行するステップS115以降のステップに進む。
以上のように、本実施の形態では、排紙トレイ2aの温度が高ければ、コーナー部に滞留した高温の空気を機外に追い出し、排紙トレイ2a周辺の雰囲気温度を低下させて記録シートの放熱を促進させることによって、排紙トレイ2aに積載された記録シートを冷却することができるため、タッキングが生じにくい。
(変形例)
本発明は上述のような実施の形態に限られるものではなく、次のような変形例も実施することができる。
【0048】
(1)上記実施の形態では、コーナー部21と排紙中の記録シートの中央とに選択的に風を吹きつける構成として、ルーバー103の角度を変更していたが、このような構成に限るものではない。
例えば、図7に示すように、冷却ファン121のハウジング122をガイドレール124によりY軸方向に摺動自在に支持し、2つのプーリ126(右側は図示を省略)にベルト125を巻き掛けて、いずれかのプーリ126をモータ(不図示)で回転させることにより当該ベルト125と共にハウジング122がY方向に移動するように構成してもよい。
【0049】
上記構成において、コーナー部21に風を吹き付けたい場合には、冷却ファン121をコーナー部21の直上に移動させ、排紙中の記録シートに風を吹き付けたい場合には、排紙トレイ2aのY軸方向の中央に移動させればよい。
なお、本変形例では、ハウジング122にラックアンドピニオン機構128を用いて冷却ファン121をX軸方向に駆動するステッピングモータ123を設けており、X方向における送風位置も調整できるようにしている。これにより、冷却ファン121をコーナー部21の直上まで移動させた後に、風を吹きつけながらX方向に移動させることによって、コーナー部21に滞留した高温の空気を側壁23に沿って機外に追い出すことができ、より効率的な冷却が可能となる(図1参照)。
【0050】
また、2つのプーリ126の一方は、ステッピングモータ(不図示)の回転軸に連結し、もう一方を従動する構成とする。同図では、冷却ファン121を1つ備える構成であったが、2個以上設けても構わない。
また、図8に示すように、コーナー部21の直上部分に冷却ファン131を配設し、さらに、排紙トレイ2aのY軸方向の中央を基準として対称的に冷却ファン132および133を配して、記録シートの排紙中には、冷却ファン132および133をONすると共に、冷却ファン131をOFFして、記録シートの落下位置の安定化を図りつつ記録シートを冷却し、また、記録シートの排出が終了した後には、冷却ファン132および133をOFFすると共に、冷却ファン131をONしてコーナー部21を冷却し、排紙トレイ2aを冷却するとによって、次のプリントジョブにおけるタッキングの発生の防止を図ってもよい。
【0051】
また、電力消費の増加を問題にしないならば、記録シートの排出が終了した後に、冷却ファン131、132および133を全てONすることにより、コーナー部21と記録シートの両方を冷却して、前のプリントジョブおよび次のプリントジョブにおけるタッキングの発生の防止を図ってもよい。
(2)上記実施の形態では、温度センサ8bは、画像読取部8の筐体8aの下面に設けられているとしたが、温度センサ8bの位置は、この場所に限るものではなく、温度が高いコーナー部21の上下方向のどこであっても構わず、例えば、排紙トレイ2aにおけるコーナー部21の下方に位置する部分に設置しても構わない。
(3)また、上記実施の形態では、図5のフローチャートのステップS103において、タッキングが起こり易いか否かの条件判断に、温度センサ8bの検出値を用いたが、これに限るものではない。
【0052】
例えば、一のプリントジョブにおいて連続してプリントされた枚数が所定枚数以上である場合(例えば100枚以上)には、排紙トレイ2aの温度が高くなっていることが推定できるため、プリント枚数のカウント値が所定枚数以上となったこともって、タッキングが起こり易い条件であると判断してもよく、要するに、コーナー部21の温度を指標する指標値を用いて判断すればよい。
(4)上記実施の形態においては、本発明を、複写機について説明したが、これに限らず、プリンタやファクシミリなどであってもよく、要するに、操作パネルを備えた画像形成装置であれば適用が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、プリンタ部と画像読取部との間のスペースを排紙トレイとして利用する、いわゆる胴内排紙型の画像形成装置に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 プリンタ
1 複写機
2 プリンタ部
2a 排紙トレイ
5 定着器
8 画像読取部
8a 筐体
8b 温度センサ
8c プラテンガラス
9 原稿押さえ板
19 冷却ユニット
21 コーナー部
21a 排紙口
22 排紙トレイセンサ
23 側壁
24 側壁
60 制御部
61 CPU
63 インターフェース部
64 RAM
65 ROM
66 EEPROM
73 操作パネル
101a 冷却ファン
102 機枠
103 ルーバー
103a 軸
103b ピン
104 連動バー
104a 穴
105 ルーバー駆動部
105a 軸芯
121 冷却ファン
122 ハウジング
123 ステッピングモータ
124 ガイドレール
125 ベルト
126 プーリ
131 冷却ファン
132 冷却ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成部と、これの筐体上部の一部をなし定着後の記録シートを積載する排紙トレイと、当該排紙トレイの外縁の隣接する2辺から立設する側壁の上に配された画像読取部とを備える画像形成装置であって、
画像形成ジョブが実行されて、その最後の記録シートが前記排紙トレイ上に排出された後に、前記2辺の側壁のなすコーナー部を冷却するコーナー冷却手段を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記コーナー冷却手段は、
排出中の記録シートの冷却手段も兼用しており、
ファン装置と、
前記ファン装置からの送風方向を、
排出口から排出される記録シートに対し当該シート面のほぼ直上から送風する第1の方向と、前記コーナー部方向に送風する第2の方向とに切り換える風向切換手段と、
画像形成ジョブを実行中であって記録シートが排出されている間は、前記送風方向を第1の方向に、画像形成ジョブが終了し最後の記録シートの前記排紙トレイへの排出が完了した後は、前記送風方向を第2方向に切り換えるよう前記風向切換手段を制御する制御手段と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記コーナー冷却手段は、
排出中の記録シートの冷却手段も兼用しており、
ファン装置と、
前記ファン装置を、排出口から排紙トレイに排出される記録シートの上方に位置する第1ポジションと、前記コーナー部の上方に位置する第2ポジションとの間で移動させる移動手段と、
画像形成ジョブを実行中であって記録シートが排出されている間は、前記ファン装置の位置を第1ポジションに位置させ、画像形成ジョブが終了し最後の記録シートの前記排紙トレイへの排出が完了した後は、前記ファン装置の位置を前記第2ポジションに移動させるよう前記移動手段を制御する制御手段と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記コーナー冷却手段は、
コーナー部の直上に配されたファン装置と、
画像形成ジョブが終了し最後の記録シートの前記排紙トレイへの排出が完了した後に、前記ファン装置を駆動させる制御手段と
からなることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記コーナー部の温度を指標する指標値を取得する指標値取得手段と、
前記指標値が所定の値を越えていない場合には、前記コーナー冷却手段によるコーナー部の冷却を禁止する禁止手段と
を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記コーナー部の温度を検出する温度検出手段を備え、
前記指標値取得手段は、前記温度検出手段の出力信号を前記指標値として取得することを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
画像形成ジョブの実行に際して、連続して画像形成された記録シートの枚数をカウントするカウント手段を備え、
前記指標値取得手段は、前記カウント手段によりカウントされた枚数を前記指標値として取得することを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御手段は、
前記コーナー部を冷却中に、次の画像形成ジョブが実行されようとした場合、当該画像形成ジョブの実行に先んじて、前記ファン装置からの送風方向を第1方向に変更させることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記制御手段は、
前記コーナー部を冷却中に、次の画像形成ジョブが実行されようとした場合、当該画像形成ジョブの実行に先んじて、前記ファン装置の位置を第1ポジションに移動させることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−181632(P2010−181632A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−24998(P2009−24998)
【出願日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】