説明

画像形成装置

【課題】ベルト部材の回転に伴う光学指標の端部の応力集中を緩和して、ベルト部材の疲労破壊を発生しにくくした画像形成装置を提供する。
【解決手段】中間転写ベルト106の幅方向の端部に均一な間隔を持たせた目盛り状のスケール7が形成され、制御部9は、光学センサ8が出力したパルス列のパルス間隔が一定になるように、パルス列をフィードバックして駆動モータの駆動を制御する。スケール7は、レーザー加工を用いて、周囲の樹脂材料面と反射率を異ならせるように形成され、中間転写ベルトの回転方向に直角な平行部に、中間転写ベルトの回転方向に直角な方向から斜めに傾けた非平行部を円弧で滑らかに接続した輪郭に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ベルト部材の端部に配列させた光学指標を光学的に検出してベルト部材の回転速度制御を行う画像形成装置、詳しくはそれぞれの光学指標の外観形状に関する。
【背景技術】
【0002】
ベルト部材(中間転写ベルト又は記録材搬送ベルト)を用いてトナー像の転写を行う画像形成装置が広く用いられている。このようなベルト部材は、複数の支持回転体に掛け渡されて張力状態で回転し、精密に速度制御されている。
【0003】
ベルト部材の速度制御に関して、ベルト部材に目盛り状の光学指標を形成し、光学指標の光学的な検出出力に応じて支持回転体の回転速度を調整する制御が実用化されている(特許文献1)。
【0004】
特許文献1に示される中間転写ベルトは、回転方向に直角な直線状の光学指標を、中間転写ベルトの端部の一周に渡って等間隔で多数配列している。ここでは、光学指標は、中間転写ベルトの表面に光学指標パターンを直接印刷するか、あるいは、光学指標パターンを印刷した薄いテープを中間転写ベルトの一周の表面に貼り付けて準備されている。
【0005】
特許文献2には、プラスチックシートにレーザ等によって目盛り状の光学指標を形成し、ベルト部材に貼り付ける方法が開示されている。
【0006】
特許文献3には、ベルト部材に直接目盛りを印刷する方法や、レーザ加工によりベルト部材に目盛り状の光学指標を直接形成する方法が開示されている。
【0007】
特許文献4には、ベルト部材上に酸化チタンや金属微粒子等、所定波長の光を吸収する材料を分散させた層を形成することで、目盛り状の光学指標を形成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−139217号公報
【特許文献2】特開平11−24507号公報
【特許文献3】特開2004−170929号公報
【特許文献4】特開2006−139029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
中間転写ベルトは高剛性の樹脂材料を用いて薄くフィルム状に形成されているため、元々印刷パターンが剥がれ易い。そして、画像形成装置の小型化に伴って支持回転体が小径化されると、印刷界面に作用する繰り返しの応力が大きくなるので印刷パターンがさらに剥がれ易くなった。
【0010】
一方、光学指標パターンを印刷したテープを貼り付ける場合、印刷パターンが剥がれる心配は無いが、貼り付け時の蛇行誤差等に起因して、中間転写ベルトに直接形成する場合よりもパターン精度が低下する。貼り付けによる方法は、直接形成する場合に比較して、材料コスト、組み立てコストも余計にかかる。
【0011】
そこで、特許文献2、3に示されるように、レーザー加工を用いて中間転写ベルトに目盛り状の光学指標を直接書き込むことが提案された。レーザー加工を用いて、指標の輪郭の内側の表面層を、ごく浅く荒らすように蒸発させることで、周囲の樹脂材料面と反射率が異なる光学指標を形成できる。
【0012】
しかし、レーザー加工を用いて光学指標を形成した中間転写ベルトで耐久試験を行ったところ、光学指標を形成していない中間転写ベルトに比較して短期間で破断する頻度が高まることが判明した。
【0013】
そして、破断した中間転写ベルトを観察したところ、光学指標の端部における輪郭の角を起点にして破断が発生していることが判明した。
【0014】
すなわち、中間転写ベルトは、高剛性の樹脂材料を用いて薄くフィルム状に形成されているため、レーザー加工によるごく浅い損傷でも、回転に伴う疲労破壊の起点となり得ることが判明した。
【0015】
本発明は、ベルト部材の回転に伴う光学指標の端部の応力集中を緩和して、ベルト部材の疲労破壊を発生しにくくした画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の画像形成装置は、樹脂材料で無端状に形成され、複数の支持回転体に掛け渡されて張力状態で回転するベルト部材と、前記ベルト部材の端部の一周に渡って樹脂材料面に形成された多数の線状の光学指標を光学的に検出する検出手段と、前記ベルト部材の回転速度を所定値に近付けるように、前記検出手段の出力に応じて前記支持回転体を駆動する制御手段とを備えたものである。そして、前記光学指標は、少なくとも前記ベルト部材の縁側が回転方向に直角な方向に対して傾いている。
【発明の効果】
【0017】
本発明の画像形成装置では、ベルト部材の縁側で光学指標の端部が回転方向に対して傾いているので、ベルト部材の回転に伴って光学指標の端部が、光学指標の他の部分と同時に支持回転体の拘束を離れることがない。このため、光学指標の他の部分におけるベルト部材の伸縮が光学指標の端部におけるベルト部材の応力に影響しにくい。
【0018】
また、ベルト部材の縁側で光学指標の端部が回転方向に対して傾いているので、光学指標の端部が、支持回転体の同一の回転位置で他の部分と同時に折り曲げられることがない。このため、少なくとも光学指標の端部では、支持回転体を通過する過程で光学指標の縁が折り線となってベルト部材に応力集中を引き起すことが無い。
【0019】
従って、ベルト部材の回転に伴う光学指標の端部での応力集中が緩和されて端部を基点とするベルト部材の疲労破壊が発生しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】画像形成装置の構成の説明図である。
【図2】中間転写ベルトの回転速度の制御の説明図である。
【図3】中間転写ベルトの寄り止め構造の説明図である。
【図4】光学センサによる光学指標の検出の説明図である。
【図5】実施例1のスケールの説明図である。
【図6】テンションローラに巻きついた状態の中間転写ベルトの断面の模式図である。
【図7】スケールを構成する1つの光学指標の拡大図である。
【図8】実施例1のスケールの変形例の説明図である。
【図9】実施例2における中間転写ベルトの回転速度の制御の説明図である。
【図10】実施例2のスケールの説明図である。
【図11】実施例2のスケールの傾き方向の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明は、光学指標の端部が回転方向に直角な方向に対して傾いている限りにおいて、実施形態の構成の一部または全部を、その代替的な構成で置き換えた別の実施形態でも実施できる。
【0022】
従って、中間転写ベルトを用いる画像形成装置に限らず、記録材搬送ベルトを用いる画像形成装置でも実施できる。複数の感光ドラムを配置したタンデム型に限らず、ベルト部材に沿って1個の感光ドラムを配置した1ドラム型でも実施できる。
【0023】
本実施形態では、トナー像の形成/転写に係る主要部のみを説明するが、本発明は、必要な機器、装備、筐体構造を加えて、プリンタ、各種印刷機、複写機、FAX、複合機等、種々の用途で実施できる。
【0024】
なお、特許文献1〜4に示される画像形成装置の一般的な事項については、図示を省略して重複する説明を省略する。
【0025】
<画像形成装置>
図1は画像形成装置の構成の説明図である。
【0026】
図1に示すように、第1実施形態の画像形成装置100は、中間転写ベルト106に沿って現像色が異なる画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdを配置したタンデム型フルカラープリンタである。
【0027】
画像形成部Paでは、感光ドラム101aにイエロートナー像が形成されて、中間転写ベルト106に一次転写される。画像形成部Pbでは、感光ドラム101bにマゼンタトナー像が形成されて中間転写ベルト106のイエロートナー像に重ねて一次転写される。画像形成部Pc、Pdでは、感光ドラム101c、101dにそれぞれシアントナー像、ブラックトナー像が形成されて、同様に中間転写ベルト106のトナー像に重ねて順次一次転写される。
【0028】
中間転写ベルト106に担持された四色のトナー像は、二次転写部T2で記録材Pへ一括二次転写された後に、定着装置109で加熱加圧を受けて、表面にトナー像を定着される。
【0029】
カセット111(112)から1枚ずつ引き出された記録材Pは、レジストローラ115で待機し、中間転写ベルト106のトナー像にタイミングを合わせて、二次転写部T2へ送り出される。
【0030】
画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdは、それぞれに付設された現像装置で用いるトナーの色がイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックと異なる以外は、ほぼ同一に構成される。以下では、画像形成部Paについて説明し、他の画像形成部Pb、Pc、Pdについては、説明中の符号末尾のaを、b、c、dに読み替えて説明されるものとする。
【0031】
画像形成部Paは、感光ドラム101aの周囲に、帯電ローラ102a、露光装置103a、現像装置104a、一次転写ローラ105a、及びクリーニング装置107aを配置している。
【0032】
感光ドラム101aは、帯電極性が負極性の感光層を表面に形成した金属円筒で構成され、所定のプロセススピードで矢印方向に回転する。
【0033】
帯電ローラ102aは、直流電圧に交流電圧を重畳した振動電圧を印加されて、感光ドラム101aの表面を一様な負極性の電位に帯電させる。
【0034】
露光装置103aは、画像データを展開した走査線画像データをON−OFF変調したレーザービームを多面体ミラーで走査して、帯電した感光ドラム101aの表面に画像の静電像を書き込む。
【0035】
現像装置104aは、負極性に帯電したトナーを現像スリーブに担持させて感光ドラム101aを摺擦し、負極性の直流電圧に交流電圧を重畳した振動電圧を現像スリーブに印加して、感光ドラム101aの静電像を反転現像する。
【0036】
一次転写ローラ105aは、中間転写ベルト106を介して感光ドラム101aに圧接して感光ドラム101aと中間転写ベルト21aとの間に一次転写部Taを形成する。一次転写ローラ105aに正極性の直流電圧106することにより、負極性に帯電して感光ドラム101aに担持されたトナー像が中間転写ベルト106に一次転写される。
【0037】
二次転写ローラ108は、中間転写ベルト106を介して対向ローラ3に圧接して、中間転写ベルト106と二次転写ローラ108との間に二次転写部T2を形成する。二次転写部T2は、トナー像を担持した中間転写ベルト106に重ね合わせて記録材Pを挟持搬送し、二次転写ローラ108に正極性の直流電圧を印加することで、中間転写ベルト106から記録材Pへトナー像が二次転写される。
【0038】
ところで、中間転写ベルト106は、その回転速度を一定に保たないと、各色のトナー像が転写される位置が回転方向にずれてしまい、各色のトナー像が副走査方向に位置ずれ状態で重ね合わせられて色ずれの問題が生じる。
【0039】
例えば、中間転写ベルト106の回転速度が正常な速度より若干遅い場合でも、感光ドラム101bには、中間転写ベルト106が正常な速度で回転することを想定した遅れ時間だけ感光ドラム101aよりも遅らせてトナー像が形成される。このとき、中間転写ベルト106の速度は正常な回転速度より若干遅いため、感光ドラム101aで一次転写されたトナー像が到着する前に、感光ドラム101bから中間転写ベルト106へのトナー像の一次転写が開始されてしまう。
【0040】
従って、中間転写ベルト106上ではイエローのトナー像よりマゼンタのトナー像が、中間転写ベルト106の回転方向に進んだ画像となって、記録材に二次転写/定着された画像に色ずれが生じる。
【0041】
ここで、中間転写ベルト106の速度が一定不変であれば、中間転写ベルト106の速度に合わせて感光ドラム101aと感光ドラム101bとにおける露光開始の遅延時間を短くすれば色ずれは解消される。
【0042】
しかし、実際には、中間転写ベルト106の駆動負荷の変動等により、中間転写ベルト106の回転速度が正常な速度を中心にして速くなったり遅くなったりして色ずれが発生している。
【0043】
また、中間転写ベルトを用いた画像形成装置と同様に、記録材搬送ベルトを用いて複数の感光ドラムからトナー像を記録材へ転写する画像形成装置でも同様な理由で色ずれが発生する。
【0044】
従って、ベルト部材を用いる画像形成装置で、副走査方向の色ずれの発生を抑えるためには、ベルト部材の速度を一定に保つことが非常に重要である。
【0045】
そこで、画像形成装置100では、ベルト部材の表面に目盛り状(多数の線状)の光学指標を形成し、検知手段で光学指標を光学的に検出する。検出パルス信号のフィードバックを用いて中間転写ベルト106の回転速度を所定値に近付けて一定に保つように駆動制御している。
【0046】
<中間転写ベルト>
図2は中間転写ベルトの回転速度の制御の説明図、図3は中間転写ベルトの寄り止め構造の説明図、図4は光学センサによる光学指標の検出の説明図である。
【0047】
図2に示すように、中間転写ベルト106は、複数の支持回転体としての駆動ローラ1、テンションローラ2、対向ローラ3に張力状態で掛け渡して支持され、駆動ローラ1に駆動されて矢印B方向へ張力状態で回転する。
【0048】
テンションローラ2は、不図示の付勢ばねによって外側へ付勢されて、中間転写ベルト106に所定の張力を付与する。
【0049】
駆動ローラ1の回転軸の一端には歯車4が取り付けられ、歯車4は、ギア列5を介して駆動モータ6に接続されている。
【0050】
中間転写ベルト106は、ポリイミド(PI)樹脂を用いて厚さ80μ、周長700mm、幅400mmの無端状のフィルム状に形成されている。
【0051】
なお、ポリアミドイミド(PAI)樹脂等の高強度の材質もしくはこれら材料の層に他の材質の層を複層させて作られた薄膜無端状ベルト部材で構成してもよい。
【0052】
図3に示すように、テンションローラ2の長手方向の両端部には、規制カラー10がテンションローラ2に対して回転可能に取り付けられている。ベルト部材106の内側面における幅方向の両端部には、ウレタンゴムの寄り止めリブ106aが一周に渡って連続的に貼り付けられている。
【0053】
駆動ローラ1、テンションローラ2、対向ローラ3等のアライメントが崩れると、中間転写ベルト106は、回転に伴って幅方向の一方へ寄っていく。中間転写ベルト106が一方に寄っていくと、寄り止めリブ106aが規制カラー10に接触してそれ以上移動しないように、中間転写ベルト106が幅方向に規制される。
【0054】
図2に示すように、中間転写ベルト106の幅方向の端部の一周に渡って均一な間隔を持たせた目盛り状(多数の線状)のスケール7が形成されている。
【0055】
スケール7は、レーザー加工を用いて、表面性状を異ならせるように、個々の輪郭の内側の表面層を、ごく浅く2μm程度荒らすように蒸発させることで、周囲の樹脂材料面と反射率を異ならせてある。
【0056】
レーザー加工は、被加工材となる中間転写ベルト106の素材表面に回転方向と直角な方向の線分としてスケール7を直接書き込むように非接触で加工するため、高精度で一定反射率のスケール7を、短時間、低コストで容易に形成できる。
【0057】
図2を参照して図4に示すように、光学センサ8は、発光素子(LED)8aから中間転写ベルト106へ照射した赤外光スポットの正反射光を受光素子(フォトトランジスタ)8bで検出する。
【0058】
中間転写ベルト106は、図3に示す寄り止めリブ106aによる規制範囲内で幅方向に位置ずれする。しかし、規制範囲内であれば、光学センサ8の赤外光スポットがスケール7の平行部(回転方向に直角な範囲)から外れないように、乱反射するように表面性状を異ならせたスケール7が形成されている。従って、光学センサ8は、必ずスケール7の平行部を読み取る。
【0059】
光学センサ8は、中間転写ベルト106における赤外光スポット照射位置の反射率に応じた信号を出力する。中間転写ベルト106が回転すると、光学センサ8は、1本1本のスケール7に対応したパルス列の出力信号を制御部9へ出力する。光学センサ8が出力した個々のパルスの時間間隔は、中間転写ベルト106の刻々の回転速度に対応したものとなっている。
【0060】
制御部9は、光学センサ8が出力したパルス列のパルス間隔が一定になるように、パルス列をフィードバックして駆動モータの駆動を制御する。
【0061】
ところで、ベルト部材にスケールを形成する方法として、特許文献2に示されるように、スケールを形成したスケールシートをベルト部材に貼り付ける方法がある。しかし、この方法では、貼り付け時にスケールシートの伸びや浮き、蛇行等が発生するため、作業性及び貼り付け精度に問題があった。スケールシートがベルト部材と別部材であるため、スケールシートの材料費がかかり、コスト高になる問題もあった。
【0062】
また、特許文献4に示されるように、ベルト部材にスケールを直接印刷して形成する方法もある。しかし、印刷形成されたスケールは、高精度な仕上がりが得られるものの、使用に伴ってベルト部材が感光ドラムやクリーニングブレードと摺擦することにより、次第に印刷パターンが剥げて薄くなる問題があった。
【0063】
そこで、特許文献3に示されるように、レーザー加工を用いて表面性状を異ならせるように回転方向に直角な方向の5〜10mmの線分を0.1〜0.5mm間隔で平行に配列して光学指標を形成することが提案された。
【0064】
しかし、レーザー加工で表面性状を異ならせるようにスケールを形成した中間転写ベルトは、ベルト部材の1周に渡って幅方向の傷が付けられたのと同様な状態となる。このため、画像形成装置の使用時間の累積に伴って、スケールの端部を起点にしてベルト部材が破断する頻度が、印刷でスケールを形成した中間転写ベルトよりも少し高くなる。
【0065】
そこで、画像形成装置100では、レーザー加工を用いて、ベルト部材の縁側でスケールの端部が、ベルト部材の回転方向に対して回転方向の反対側へ向かって傾いているようにスケールを形成した。
【0066】
<実施例1>
図5は実施例1のスケールの説明図、図6はテンションローラに巻きついた状態の中間転写ベルトの断面の模式図、図7はスケールを構成する1つの光学指標の拡大図である。
【0067】
図5に示すように、実施例1のスケール7は、それぞれの光学指標が、回転方向に直角な直線の一端が曲線を介して斜めに曲がった外観形状である。中間転写ベルトの回転方向に直角な平行部7aに、中間転写ベルトの回転方向に直角な方向から斜めに傾けた非平行部7bを円弧で滑らかに接続した輪郭に形成されている。スケール7は、ベルト部材の幅方向に平行な平行部7aと、ベルト部材の幅方向に対し角度を有する非平行部7bとからなり、両者の接続部は、円弧形状等により滑らかに接続されている。
【0068】
実施例1のスケール7は、全体的には、中間転写ベルトの回転方向に直角な長さ5mm、幅10μmの直線として形成され、中間転写ベルト106の縁から1mm離して、0.5mmピッチで配列されている。平行部7aに対する非平行部7bの傾き角度は37度である。
【0069】
なお、スケール7は、長さ1〜10mm、幅2〜20μm、中間転写ベルトの縁からの距離1〜10mm、ピッチ0.1〜1.0mm、平行部7aに対する非平行部7bの傾き角度30〜45度が好ましい。
【0070】
図6に示すように、中間転写ベルト106は、テンションローラ2に巻きついている間、中立面Aの回転方向の長さは変化しないが、中立面より外側は回転方向に伸び、中立面より内側は回転方向に圧縮される。中間転写ベルト106は、単一の材質により構成される単層のものなので、中立面Aは、中間転写ベルト106の厚みの1/2(=40μm)の深さにある。
【0071】
このため、中間転写ベルト106は、テンションローラ2に巻きついている間、その外周面には引張り応力がかかり、テンションローラ2から離れている間は引張り応力が開放される。図2に示す駆動ローラ1、対向ローラ3でも同様な引張り応力がかかるので、中間転写ベルト106の表面に形成されたスケール7には、1回転ごとに3回、繰り返し応力がかかることになる。
【0072】
図7中、(a)は端部に非平行部が無いスケール、(b)は端部に非平行部を設けた実施例1のスケールである。
【0073】
図7の(a)に示すように、非平行部が無いスケール7Aでは、スケール7Aの端部に矢印で示すような荷重Fがかかる。荷重Fを繰り返し受けていると、スケール7の端部の輪郭の隅7cを起点にして疲労破壊が発生すると考えられる。隅7cを起点にして中間転写ベルト106の縁に向かって亀裂が走って中間転写ベルト106の破断に至った例が報告されているからである。
【0074】
図7の(b)に示すように、実施例1のスケール7において平行部7aと非平行部7bの角度がθであるとする。この場合、スケール7の端部7bにかかる荷重Fは、端部7bに垂直な方向の分力と平行な方向の分力とに分けられる。
【0075】
中間転写ベルト106をスケール7の端部7bで破断しようとする力は、スケール7の端部7bに垂直な方向の分力であるため、Fcosθ(<F)となる。よって、非平行部7bを設けると、中間ベルト106を破断しようとする力は、FからFcosθへと小さくなる。
【0076】
図3を参照して図2に示すように、中間転写ベルト106の寄り方向が矢印Cであると、中間ベルト106のスケール7側の縁の寄り止めリブ106aがテンションローラ2に取り付けられた規制カラー10に一部乗り上げて移動規制される。
【0077】
このとき、中間転写ベルト106には、回転方向の下流側へ向かって縁から内側へ向かうように、スケール7の配列を斜めに横断するしわ106bが形成される。しわ106bは、駆動ローラ1の下流側でも、対向ローラ3の下流側でも寄り止め規制に伴って同様に発生する。
【0078】
そして、常態的に形成されるしわ106bをスケール7が通過する際には、中間転写ベルト106の断面が小さな曲率半径で強く曲げられ、スケール7の端部に強い曲げ応力が発生する。
【0079】
このため、非平行部7bが下流側へ向かって縁から内側へ向かうように傾いている場合、しわ106bを非平行部7bが通過する際に、非平行部7bを折り線にして中間転写ベルト106が曲がることになり、非平行部7bに応力集中し易くなる。
【0080】
そこで、実施例1では、非平行部7bを、下流側へ向かって内側から縁へ向かうように傾けて、平行部7bを折り線にして中間転写ベルト106が曲がることによる応力集中を回避している。
【0081】
また、実施例1のスケール7では、中間転写ベルト106の回転に伴ってスケール7の端部が、スケール7の平行部7aと同時にテンションローラ2等の拘束を離れることがない。このため、スケール7の平行部7aにおける中間転写ベルト106の回転方向の伸縮がスケール7の端部おける中間転写ベルト106の応力集中に影響しにくい。
【0082】
また、中間転写ベルト106の縁側で、スケール7の非平行部7bが回転方向に対して傾いているので、スケール7の端部が、テンションローラ2等の同一の回転位置で平行部7aと同時に折り曲げられることがない。このため、テンションローラ2等を通過する過程で、平行部7aが折り線となって非平行部7bの先端で中間転写ベルト106に応力集中を引き起すことがない。
【0083】
従って、中間転写ベルト106の回転に伴うスケール7の端部での応力集中が緩和されて端部を基点とする中間転写ベルト106の疲労破壊が発生しにくい。
【0084】
以上説明したように、実施例1では、スケール7におけるベルト部材の縁側にベルト部材の幅方向に対して角度を持たせた非平行部7bを設けた。これにより、ベルト部材にレーザ加工という高精度かつ安価な方法で加工したスケール7でありながら、テンションローラ2等への巻付き、開放の繰り返しにより生じる応力による破れを防ぐことが可能となる。
【0085】
なお、実施例1では、図3に示す寄り止めリブ106aでベルト幅方向の寄り規制を行う例を説明したが、テンションローラ2の傾きを制御して中間転写ベルト106を動的に幅方向に位置決めるステアリング制御を行わせてもよい。
【0086】
<変形例>
図8は実施例1のスケールの変形例の説明図である。
【0087】
図5に示すように、実施例1では、ベルト幅方向に対して平行である平行部7aに斜めに傾いた非平行部7bを滑らかに繋いだ形状のスケールを説明した。これに対して以下の比較例のスケール7B、7C、7Dでも実施例1と同様に、図7の(a)に示す比較例に比べてスケール7の端部での応力集中が緩和される。図8の(a)に示す変形例のスケール7Bは、ベルト幅方向に対して平行である平行部7aに90度傾いた非平行部7bを滑らかに繋いだ形状である。
【0088】
図8の(b)に示す変形例のスケール7Cは、ベルト幅方向に対して平行である平行部7aに円弧状の非平行部7bを滑らかに繋いだ形状である。
【0089】
図8の(c)に示す変形例のスケール7Dは、ベルト幅方向に対して平行である平行部7aに半円状の非平行部7bを滑らかに繋いだ形状である。
【0090】
<実施例2>
図9は実施例2における中間転写ベルトの回転速度の制御の説明図、図10は実施例2のスケールの説明図、図11は実施例2のスケールの傾き方向の説明図である。
【0091】
図9に示すように、実施例2のスケール7は、それぞれの光学指標が、全体を傾けた直線状の外観形状で、ベルト部材の両端部に等しい傾き角度を持たせて配列している。すなわち、中間転写ベルト106の両端部にスケール7が形成され、スケール7は、全体が回転方向に直角な方向から斜めに傾けて形成される。
【0092】
中間転写ベルト106の両端近傍に、レーザ加工による一対のスケール7が設けられ、それに対応するように一対の光学センサ8a、8bが設けられている。検知手段(8a、8b)で光学指標を光学的に検出し、検出パルス信号のフィードバックを用いて中間転写ベルト106の回転速度を所定値に近付けて一定に保つように駆動制御している。
【0093】
図10に示すように、中間転写ベルト106の両端部に設けられている一対のスケール7は、中間転写ベルト106の回転方向に直角な方向(幅方向)に対する傾き角度が同一で傾き方向が逆になっている。すなわち、一対のスケール7は、左右対称に形成されている。
【0094】
図3を参照して説明したように、中間転写ベルト106の寄り方向が矢印Cであると、図9に示すように、テンションローラ2の下流側における中間転写ベルト106の矢印Cの反対側にしわ106bが入る。
【0095】
図10に示すように、実施例2では、中間転写ベルト106の両端部にレーザ加工されたスケール7が形成され、中間転写ベルト106が矢印Bの方向に回転している。
【0096】
スケール7は、回転方向上流側かつベルト端部側から回転方向下流側かつベルト内部側に向かって幅方向から40度一定に傾けた角度で平行かつ等間隔に形成されている。
【0097】
スケール7をこのような向きにすることにより、中間転写ベルト106が一方に寄って図9に示すようなしわ106bが入った場合でも、スケール7は、しわ106bと平行にはならず、直交に近い角度を持ってしわ106bを乗り越える。
【0098】
中間転写ベルト106にしわ106bが生じているとき、図7の(a)を用いて説明した場合と同様に、しわ106bと直交する方向に繰り返しの引張り応力が働いている。このため、実施例2のような向きにスケール7を傾けて配置することで、スケール7は、引張り応力のかかる向きと略平行になるため、中間転写ベルト106を破断しようとする向きの荷重が発生しにくい。このため、中間転写ベルト106の疲労破壊が進行せず、疲労破壊による破断を防ぐことが可能となる。
【0099】
図9に示すように、実施例2のスケール7は、実施例1のような中間転写ベルト106の幅方向に対して平行な平行部(7a:図5)を持っていない。
【0100】
従って、中間転写ベルト106が幅方向に移動すると、片側の光学センサ8aにより読み取られるスケール7の間隔がずれてしまう。
【0101】
図11に示すように、中間転写ベルト106の寄り移動がなければスケール7の間隔はt1(s)である。しかし、中間転写ベルト106が矢印B方向に回転しながら矢印C方向に寄っていくと、光学センサ8aが読み取る間隔はt2(s)、光学センサ8bが読み取る間隔はt3(s)となってしまう。
【0102】
そこで、制御部9は、間隔t2と間隔t3の平均を取ることにより、中間転写ベルト106の寄り移動による影響を除去して、寄り移動がない場合と等しい間隔t1を得ている。
【0103】
制御部9は、一対の光学センサ8a、8bでそれぞれ検出したパルス間隔の加算平均を求め、加算平均値が一定になるように駆動モータ6にフィードバック制御を行なうことで、中間転写ベルト106の回転速度を一定に保つ。
【0104】
以上説明したように、実施例1、実施例2のスケール7によれば、図7の(a)に示す比較例のスケール7Aよりも中間転写ベルト106の疲労破壊の発生頻度が小さくなる。比較例の構成が有する問題点が解消される結果、簡易な加工方法かつ低コストでスケールを形成しながら、スケールの剥がれやベルト部材の破れ等の問題が生じにくい画像形成装置を提供できる。画像形成装置においてスケールを光学的に読み取ることにより、ベルト部材の速度を一定に制御して色ずれ等の問題の発生が抑えられる。
【符号の説明】
【0105】
1 駆動ローラ(支持回転体)
2 テンションローラ(支持回転体)
3 対向ローラ(支持回転体)
4 歯車
5 ギア列
6 駆動モータ
7 スケール(光学指標)
7a 平行部
7b 非平行部
8 光学センサ(検出手段)
9 制御部
100 画像形成装置
101a、101b、101c、101d 感光ドラム
106 中間転写ベルト(ベルト部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材料で無端状に形成され、複数の支持回転体に掛け渡されて張力状態で回転するベルト部材と、
前記ベルト部材の端部の一周に渡って樹脂材料面に形成された多数の線状の光学指標を光学的に検出する検出手段と、
前記ベルト部材の回転速度を所定値に近付けるように、前記検出手段の出力に応じて前記支持回転体を駆動する制御手段と、を備えた画像形成装置において、
前記光学指標は、少なくとも前記ベルト部材の縁側が回転方向に直角な方向に対して傾いていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記光学指標は、前記ベルト部材の縁側で回転方向の反対側へ向かって斜めに傾いていることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記光学指標は、回転方向に直角な直線の一端が曲線を介して斜めに曲がった外観形状であることを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記光学指標は、全体が傾いた直線状の外観形状で前記ベルト部材の両端部に等しい傾き角度を持たせて配列していることを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記光学指標は、周囲の樹脂材料面とは表面性状を異ならせるようにレーザー加工によって形成されていることを特徴とする請求項1乃至4記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−276667(P2010−276667A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−126320(P2009−126320)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】